3次元ロードセル
【課題】荷重の測定精度を向上して実用性が高い3次元ロードセルを提供する。
【解決手段】基部12と、基部12との間に間隙Gをあけて支持された荷重受部14と、一端を基部12に固定し他端を荷重受部14に固定して荷重受部14を基部12に支持させ、荷重受部14が荷重を受けた際に歪みを生じる複数の起歪部であり、任意の第1方向と、第1方向に交差する第2方向と、第1方向と第2方向を含む平面に交差する第3方向と、の3つの方向に向けて基部14と荷重受部14との間に渡架状に設けられた第1、第2、第3起歪部161、162、163と、第1、第2、第3起歪部にそれぞれ取り付けられたひずみゲージと、を含むことを特徴とする3次元ロードセル10から構成される。
【解決手段】基部12と、基部12との間に間隙Gをあけて支持された荷重受部14と、一端を基部12に固定し他端を荷重受部14に固定して荷重受部14を基部12に支持させ、荷重受部14が荷重を受けた際に歪みを生じる複数の起歪部であり、任意の第1方向と、第1方向に交差する第2方向と、第1方向と第2方向を含む平面に交差する第3方向と、の3つの方向に向けて基部14と荷重受部14との間に渡架状に設けられた第1、第2、第3起歪部161、162、163と、第1、第2、第3起歪部にそれぞれ取り付けられたひずみゲージと、を含むことを特徴とする3次元ロードセル10から構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重の大きさ、その方向、及び3次元的な3方向の成分の分力を測定できる3次元ロードセルに関する。
【背景技術】
【0002】
ロードセルは、弾性体にひずみゲージを貼り付けて、弾性体にかかる応力とひずみゲージからの出力の関係を利用して荷重を測定する荷重測定装置であり、従来、一つの方向の荷重を測定するように設計されたものが普及している。ロードセルは、構造が簡単で低コストで製造できるとともに、比較的に測定性能、応答性、信頼性が高いことから、例えば、はかりや天秤等の計量器等に利用されている。
【0003】
また、例えば、特許文献1に開示されているように、ロードセルは、自動車や二輪車等の車輪の接地部への作用力を測定する車輪作用力測定装置にも利用されている。特許文献1では、車輪の回転軸線方向であるZ軸方向に延びる基部9からX軸およびY軸方向に沿って外方に十字状に延びる4本のアーム部10、10…が設けられ、それらの4本の各アーム部10、10…にストレインゲージ18、18…を貼着した多分力ロードセルの技術が記載されている。そして、4本のアーム部に貼着したストレインゲージ18、18…による歪検出値に基づいて、X、Y、Z各軸方向の分力Fx、Fy、Fzおよび各軸まわりの偶力Mx、My、Mzの6分力を測定するものであった。なお、符号は特許文献1記載のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−173929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロードセルは、上述のように様々な分野に広く利用されているが、3次元のように任意の方向にかかる荷重の計測を必要する場面も多い。しかしながら、従来のロードセルでは1つの方向しか測定できないので、荷重を測定するには複数のロードセルを測定しようとする各方向に沿って設置する必要があった。したがって、複数のロードセルはそれぞれ独立的に荷重を測定するので、3次元的な荷重及びその分力を測定するには精度が劣るとともに、取り付け位置が制約を受ける等の問題があった。また、特許文献1に記載されている多分力ロードセルは、車輪に適用した構成であるが、ストレインゲージが貼着されたアーム部は、X軸方向とY軸方向に沿って十字状に配置され、Z軸方向にはアーム部が配置されていない構成なので2次元的な配置構成となっていることから、3次元的な荷重を測定するには精度が劣るおそれがあった。
【0006】
一方、鍛造加工において素材を塑性変形して部品を製造する際には、表面に焼き付きや傷などが無い高精度の製品が要求されるため、潤滑剤の使用が不可欠である。素材の塑性変形過程では、摩擦係数の測定による素材表面の摩擦評価及び潤滑剤の性能評価が重要である。しかしながら、素材は3次元的に塑性変形されることが多いとともに、変形過程で高温、高面圧となる結果、素材の摩擦面の環境は複雑となり、正確な摩擦係数を測定するのは困難であった。したがって、正確な摩擦係数を測定するための技術の開発が望まれていた。
【0007】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、荷重の大きさ、その方向、及び3方向の分力を同時に測定でき、測定精度を向上させて実用性が高い3次元ロードセルを提供することにある。さらに、他の目的は、引き抜き加工や摩擦試験機等に良好に適用でき、素材の摩擦係数を正確に測定算出するために高精度な荷重の測定を実現できる3次元ロードセルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、基部12と、基部12との間に間隙Gをあけて支持された荷重受部14と、一端を基部12に固定し他端を荷重受部14に固定して荷重受部14を基部12に支持させ、荷重受部14が荷重を受けた際に歪みを生じる複数の起歪部であり、任意の第1方向と、第1方向に交差する第2方向と、第1方向と第2方向を含む平面に交差する第3方向と、の3つの方向に向けて基部14と荷重受部14との間に渡架状に設けられた第1、第2、第3起歪部161、162、163と、第1、第2、第3起歪部161、162、163にそれぞれ取り付けられたひずみゲージ18と、を含むことを特徴とする3次元ロードセル10から構成される。
【0009】
また、第1、第2、第3起歪部161、162、163は、互いに直交する3つの軸方向に沿って荷重受部14と基部12との間に渡架状に設けられたこととしてもよい。
【0010】
また、3次元ロードセルは、素材Mを直線移動させながらダイスに引き抜き通過させて該素材を所望形状に塑性加工する引き抜き加工において、ダイスに作用する荷重を計測するロードセルであり、荷重受部14は、ダイスを取り付けるダイス取り付け部(22)を有し、第1起歪部161は、素材の直線移動方向Lと平行な第1軸(x軸)方向に沿って設けられ、第2起歪部162は、第1軸方向に直交となる第2軸(y軸)方向に沿って設けられ、第3起歪部163は、第1軸方向及び第2軸方向にともに直交となる第3軸(z軸)方向に沿って設けられたこととしてもよい。例えば、引き抜き加工を行って実際に製品を製造する場合に適用しても良いし、引き抜き加工を利用した材料試験機等に適用してもよい。
【0011】
また、基部12は、一つの隅部が切欠き凹設された一部切欠き箱型形状に設けられ、荷重受部14は、基部12の切欠き凹設位置(22)に設置されたこととしてもよい。
【0012】
また、基部12と荷重受部14と第1、第2、第3起歪部161、162、163とが一体形成されたこととしてもよい。例えば、金属材料からの削り出し加工や、溶融金属や溶融合成樹脂を鋳型に入れて成型加工等により一体形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の3次元ロードセルによれば、基部と、基部との間に間隙をあけて支持された荷重受部と、一端を基部に固定し他端を荷重受部に固定して荷重受部を基部に支持させ、荷重受部が荷重を受けた際に歪みを生じる複数の起歪部であり、任意の第1方向と、第1方向に交差する第2方向と、第1方向と第2方向を含む平面に交差する第3方向と、の3つの方向に向けて基部と荷重受部との間に渡架状に設けられた第1、第2、第3起歪部と、第1、第2、第3起歪部にそれぞれ取り付けられたひずみゲージと、を含むことから、構造が簡単であるとともに、第1、第2、第3起歪部を異なる3方向に向けて設けたことにより、該荷重の3方向成分の分力、及び荷重のかかる方向を精度良く測定できる。また、測定対称の試験機や各種装置等に取り付ける際も簡単に取り付けることができ、広い分野での応用に実用できる。特に、3次元ロードセルを摩擦試験機等に応用すれば、正確な摩擦係数の測定を実現することができ、素材試験の性能、信頼性を向上させ得る。
【0014】
また、第1、第2、第3起歪部は、互いに直交する3つの軸方向に沿って荷重受部と基部との間に渡架状に設けられた構成とすることにより、測定対象の荷重のx軸、y軸、z軸方向の分力をスムーズに、高い精度で正確に測定でき、荷重分析を容易に行える。
【0015】
また、3次元ロードセルは、素材を直線移動させながらダイスに引き抜き通過させて該素材を所望形状に塑性加工する引き抜き加工において、ダイスに作用する荷重を計測する3次元ロードセルであり、荷重受部は、ダイスを取り付けるダイス取り付け部を有し、第1起歪部は、素材の直線移動方向と平行な第1軸方向に沿って設けられ、第2起歪部は、第1軸方向に直交となる第2軸方向に沿って設けられ、第3起歪部は、第1軸方向及び第2軸方向にともに直交となる第3軸方向に沿って設けられた構成とすることにより、加工機等のダイスに3次元ロードセルを具体的に組み付けて、直交する3つ軸方向の分力を正確に測定でき、ダイスに作用する荷重の分析を行える。さらには、素材とダイスとの間の摩擦係数を正確に測定でき、素材表面の摩擦特性や潤滑剤の性能評価をスムーズかつ正確に行える。
【0016】
また、基部は、一つの隅部が切欠き凹設された一部切欠き箱型形状に設けられ、荷重受部は、基部の切欠き凹設位置に設置された構成とすることにより、配置効率が良い構造を具体的に実現でき、引き抜き加工機やその他荷重測定対象物へ効率良く設置できる。
【0017】
また、荷重受部と基部と第1、第2、第3起歪部とが一体形成された構成とすることにより、構成要素どうしの接続部分で荷重が吸収されて誤差が生じる等の不具合を防止でき、精度の高い荷重測定を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る3次元ロードセルの斜視図である。
【図2】図1の3次元ロードセルの平面図である。
【図3】図1の3次元ロードセルの正面図である。
【図4】図1の3次元ロードセルの側面図である。
【図5】3次元ロードセルによる荷重測定テストを行った例を示す説明図である。
【図6】本発明の実施例に係る3次元ロードセルの荷重測定テストの結果のグラフである。
【図7】3次元ロードセルの他の実施形態の斜視図である。
【図8】図1の3次元ロードセルを引き抜き加工型の摩擦試験機に取り付けた例を説明する平面図である。
【図9】図8の摩擦試験機のダイス周辺の要部斜視説明図である。
【図10】図9の平面図である。
【図11】図9の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下添付図面を参照しつつ本発明の3次元ロードセルの実施形態について説明する。本発明に係る3次元ロードセルは、3次元の荷重計測に有利な荷重測定装置である。図1ないし図4は、本発明の3次元ロードセルの一実施形態を示している。本実施形態において、図1に示すように、3次元ロードセル10は、基部12と、荷重を受ける荷重受部14と、複数の起歪部16と、複数の起歪部16にそれぞれ取り付けられたひずみゲージ18と、を含む。
【0020】
基部12は、ある程度の剛性を備え荷重受部14及び起歪部16を一体的に組み付けて支持しているベース体である。基部12は、荷重を受ける荷重受部14に対する固定部となっており、荷重が荷重受部14から起歪部16に伝達された際に容易に変形しないような強度を有している。本実施形態では、基部12は、図1、図2、図3、図4に示すように、例えば、炭素鋼等の金属から形成され、縦方向、横方向及び高さ方向にある程度の大きさで形成された中実のブロック体からなる。基部12は、例えば、略立体矩形箱状の一つの隅部を切り欠き凹設して凹部20を形成させた一部切欠き箱型形状に設けられている。なお、平面視で基部12の横辺に沿った方向をx軸方向、平面視でx軸方向に直交する基部12の縦辺に沿った方向をy軸方向、正面視で鉛直高さ方向すなわちx軸及びy軸を含む平面に直交する方向をz軸方向としている。基部12の凹部20には、例えば、xy平面、yz平面、xz平面にそれぞれ平行な3つの凹部側面201〜203が形成されており、これらの3つの凹部側面201〜203は荷重受部14と対向している。なお、基部12の形状は荷重受部14、起歪部16を支持しうる構造であれば任意の形状でも良い。また、基部12は、例えば、図8のような引き抜き加工機や材料試験機等の他の装置へのロードセルの取り付けを可能にするために、他の装置側の構成部材等と係合する凸部、凹部や切欠き、孔、又は固定用のボルト孔等が設けられていても良い。
【0021】
図1、図2、図3、図4に示すように、荷重受部14は、測定対象物に直接又は間接に係合して荷重を受ける荷重受手段であり、基部12との間に間隙Gをあけて支持されている。荷重受部14は、該荷重受部14から脚のように3方向に延設された複数の起歪部16により基部12に対して空中位置に支持されている。荷重受部14は、固定的な基部12に対して荷重を受けた際に僅かに動き得る可動部となっており、受けた荷重を複数の起歪部16に伝達させる。本実施形態では、荷重受部14は、例えば、炭素鋼等の金属から形成されており、略立体矩形箱状の一つの隅部を切り欠き凹設して受凹部22を形成させた一部切り欠き箱型形状に設けられている。荷重受部14は、基部12の凹部20内に収容状に配置されており、受凹部22を外側に向けて露出させつつ、受凹部22が設けられていない3つの側面261〜263を基部12の凹部内面201〜203に平行状に対向させながら離隔配置される。受凹部22は、例えば、略立体矩形状の凹部空間であり、後述のようなダイス等の工具が取り付けられるダイス取り付け部を構成する。なお、荷重受部14は、本実施形態のような形状に限らず、例えば、受凹部22を設けなくてもよく、測定対象に応じてその他任意の形状に形成してもよい。
【0022】
図1、図2、図3、図4に示すように、起歪部16は、一端を基部12に固定し他端を荷重受部14に固定して荷重受部14を基部12に支持する支持手段であり、かつ荷重受部14が荷重を受けた際に歪みを生じる弾性体である。起歪部16は、固定部としての基部12と可動部としての荷重受部14との間の間隙Gに介設された梁であり、荷重受部14から荷重が伝達されると荷重の大きさに対応してひずみを生じ、荷重が解除されると弾性復帰する。それぞれの起歪部16は、例えば、炭素鋼等の金属で形成された断面正方形状の四角柱状のアームからなる。なお、起歪部16の形状は四角柱状に限らず、例えば、円柱状や、板状に形成されていても良い。
【0023】
本実施形態では、複数の起歪部16は、基部12と荷重受部14との間において異なる3つの軸方向に向けて直線状に渡架状に設けられており、第1方向となるx軸方向に向けて設けられた第1起歪部161(梁)と、第2方向となるy軸方向に向けて設けられた第2起歪部162(梁)と、第3方向となるz軸方向に向けて設けられた第3起歪部163(梁)と、を含む。第1、第2、第3起歪部161〜163は、互いに直交する3つの軸(x軸、y軸、z軸)方向に向けてそれぞれ1つずつ設けられ、起歪部は全部で3つ設けられた構成となっている。第1、第2、第3起歪部161〜163は、例えば、第1〜第3梁としてそれぞれ一端が基部12の凹部側面201〜203に一体で繋げられ、他端が荷重受部14の側面261〜263に一体で繋げられており、それらの基部12と荷重受部14の対向面に対して直交状に設けられている。直交する3つの方向に伸びた第1、第2、第3起歪部161〜163は、各方向の互いの干渉を配慮して設計されており、誤差が小さく、荷重のx軸、y軸、z軸の3次元方向の分力を簡単で正確に計測できる起歪部の配置構成を実現している。上記のように直交する3方向に向けて立体的に第1、第2、第3起歪部161、162、163を設けた構成であるから、x軸、y軸、z軸方向の分力の測定精度を向上でき、3次元の荷重測定用ロードセルとして実用性が高い。
【0024】
本実施形態では、基部12と荷重受部14と第1、第2、第3起歪部161、162、163とを含むロードセル本体は、例えば、鋼塊を上述のような所定形状に削り出し加工して一体形成されている。これにより、3次元ロードセル10は各構成要素間での継ぎ目やねじ等の接続部材が無い一体的な構造となり、荷重を受けた際に継ぎ目や接続部材の影響により荷重を吸収して測定精度を低下させるのを防止でき、高い測定精度を得ることができる。なお、ロードセル本体の材料は、例えば、ゴム、プラスチック、アルミニウム、鉄、その他合金等で形成してもよく、測定する荷重の大きさによって適宜選択するとよい。また、3次元ロードセル10は、基部12、荷重受部14、第1、第2、第3起歪部161、162、163をそれぞれ別部材で構成し、それらを所定構造に連結して製造することとしてもよいが、上述のように一体成形した構造のものの方が高い測定精度を得られる。
【0025】
図1、図2、図3、図4に示すように、ひずみゲージ18は、それぞれの起歪部161、162、163に取り付けられており、それらの起歪部に生じた歪みに応じて電気抵抗が変化するひずみ検出センサである。ひずみゲージ18は、例えば、抵抗線や金属箔を利用した従来周知のひずみゲージが利用され、それぞれの起歪部161、162、163ごとに1個又は複数個が取り付けられる。ひずみゲージ18は、ブリッジ回路24に電気的に接続される。ブリッジ回路24は、例えば、周知従来のブリッジ回路が利用されており、ひずみゲージ18の電気抵抗の変化を電圧変化に変換して出力する。なお、ブリッジ回路24には、例えば、回路出力を増幅するアンプ装置や出力を数値で表示するモニタ装置や、数値を記録するレコーダ装置等が接続されてもよい。
【0026】
よって、3次元ロードセル10は、荷重受部14が荷重を受けると、各起歪部16で荷重に対応した歪みが生じ、それらの歪みに応じてひずみゲージ18で電気抵抗の変化に変換され、その電気抵抗の変化をブリッジ回路24で電圧変化に変換し、出力電圧に応じて所定の計算が行われてロードセルにかかる荷重P及びx軸、y軸、z軸の各方向の分力Px、Py、Pzが求められる。本実施形態では、例えば、x軸方向の第1起歪部161に取り付けられた第1ひずみゲージ18からの回路の出力値εx、y軸方向の第2起歪部162に取り付けられた第2ひずみゲージ18からの回路の出力値εy、z軸方向の第3起歪部163に取り付けられた第3ひずみゲージ18からの回路の出力値εz、とすると、3次元ロードセル10にかかる荷重Pのx軸方向の分力Px、荷重Pのy軸方向の分力Py、荷重Pのz軸方向の分力Pzはそれぞれ次の計算式で近似的に求められる。
【数1】
第1、第2、第3起歪部161、162、163は全て荷重受部14に一体的に固定されているので、各方向の起歪部161、162、163どうしが互いに影響を及ぼすようになっている。なお、Ax、Ay、Az、Bx、By、Bz、Cx、Cy、Czは起歪部の形状や構成、ブリッジ回路等を含む諸条件により定まるパラメータである。そして、荷重Pは各分力Px、Py、Pzの合力として、次の計算式で求められる。
【数2】
或いは、合力Pは下記の式からも求められる。
【数3】
さらに、荷重Pのx軸、y軸、z軸方向に対する角度θx、θy、θzとすると、方向余弦及び、各角度θx、θy、θzは次の計算式で求められる。
【数4】
【数5】
【0027】
本実施形態では、第1〜第3起歪部(第1〜第3梁)161〜163のそれぞれのひずみεx、εy、εzと、分力Px、Py、Pzの関係式を、上記[数1]の計算式で表すと仮定して、x軸、y軸、z軸の各軸に対して荷重試験(圧縮試験)を行って分力Px、Py、Pzのデータをとり、それらのデータから最小2乗法により係数を求めた。
【数6】
これらの係数を[数1]の計算式に代入すると、ひずみεx、εy、εzと分力Px、Py、Pzとの関係式は次の計算式となる。
【数7】
上記計算式の確認のために、図5に示すように、3次元ロードセル10を水平方向に対して、例えば、φx=45度、φy=φz=30度傾けて鉛直方向に荷重P0を加えて実験を行った。すなわち、3次元ロードセル10に、θx=45°、θy=60°、θz=60°の方向に向けて荷重P0を加えた。理論計算結果と上式から算出される分力および合力を比較した。図6はその比較した結果を示す。図6のグラフの横軸は本実施形態に係る3次元ロードセルに実際に加えた荷重P0(重量トン(tf:ton-force))、縦軸が3次元ロードセル10が出力した各軸方向の分力Px、Py、Pz及び合力荷重P(重量トン(tf:ton-force))の結果である。なお、一例として、3次元ロードセルに、荷重P0=0.79tをθx=45°、θy=60°、θz=60°の方向に加えると[表1]の結果となった。
【表1】
図6に示すように、実線で表した出力理想値に対してロードセル10の出力結果の誤差が少なく、高い測定精度を期待できる。これにより、本実施形態では[数7]の計算式を利用して3次元ロードセルに任意に加えた荷重の分力、合力、方向等を得ることができる。
【0028】
なお、3次元ロードセル10の構成は上記実施形態に限定するものではない。例えば、第1、第2、第3起歪部161、162、163は、x軸、y軸、z軸方向に複数設けられていても良い。図7は3次元ロードセルの他の実施形態10aを示しており、図7に示すように、複数の起歪部16は、例えば、x軸方向に向けて1つの第1起歪部161が形成されるが、y軸方向に向けて2つの第2起歪部162a、162bが設けられ、z軸方向に向けて2つの第3起歪部163a、163bが設けられ、合計5つの起歪部を有している。第2起歪部162a、162bどうし、及び第2起歪部163a、163bどうしは、互いに所定の間隙をあけて離隔して平行に配置されている。各々の起歪部16は、例えば、略矩形板状に設けられている。略矩形板状の起歪部の表裏面にはひずみゲージ18がそれぞれ2箇所取り付けられ、各起歪部16ごとに計4箇所ずつ取り付けられている。この実施形態の3次元ロードセル10aでは、上記実施形態のロードセル10と比較して、起歪部の耐荷重強度を高く構成できるので、例えば、数重量トン以上の大きな荷重を測定するのに好適に利用できる。3次元ロードセル10は、起歪部16の材料、断面積、形状、個数等の構成条件を変更することにより、数gfから数千tfの計測範囲に対応した製作を行える。3次元ロードセルのサイズやロードセルの材料を変えて製造することで、数十kgの比較的小さな荷重を計測することも可能であるし、数千tfの比較的大きな荷重を計測することも可能である。
【0029】
また、第1、第2、第3起歪部161、162、163の方向は互いに直交する方向に向けて設けた構成に限らない。例えば、第1起歪部161は任意の第1方向αに向けて設け、第2起歪部162は該第1方向に直交しないθの角度で交差する第2方向βに向けて設け、第3起歪部163は第1方向と第2方向を含む平面に直交しないφの角度で交差する第3方向γに向けて設けて、互いに同一平面上で無く、かつ平行で無い3つの異なる方向に設けられるとよい。すなわち、第1、第2起歪部161、162は、互いに角度θ(0°<θ<180°)で交差する異なる第1方向αと第2方向βに向けて設けるとともに、第3起歪部163は、第1方向と第2方向を含む平面と角度φ(0°<φ<180°)で交差する第3方向γに向けて設けられるとよい。この場合でも、各方向へ向けてそれぞれ一つの起歪部が設けられても良いし、各方向に向けて複数の起歪部が設けられていても良い。
【0030】
次に図8ないし図11を参照しつつ、上記実施形態の3次元ロードセル10を引抜き加工機に利用し、ダイスに作用する荷重を測定する場合について説明する。引き抜き加工機は、例えば、素材Mを直線移動させながらダイス36に引き抜き通過させて該素材Mを所望形状に塑性加工する加工装置である。図8、図9に示すように、本実施形態では、引き抜き加工機は、例えば、引き抜き型の摩擦試験機30からなる。摩擦試験機30は、自動車部品等の鍛造のような複雑な塑性変形に酷似した塑性加工を引き抜き加工により再現し、素材Mやダイス36に作用する荷重の分析、素材とダイスとの接触面の摩擦評価、さらには素材表面に使用する潤滑剤評価等を効率的に試験、評価に利用できる。
【0031】
図8、図9に示すように、摩擦試験機30は、例えば、機枠32と、素材Mを直線移動させてダイス36に対して引き抜き動作させる駆動部34と、ダイス36が取り付けられ該ダイス36により素材Mを塑性変形させる加工部38と、を含み、加工部38のダイス36に3次元ロードセル10が組み付けられている。そして、素材Mの引き抜き動作の際に3次元ロードセル10でダイス36に作用する荷重を測定できるとともに、該荷重の測定値から所定の計算式を用いて素材の摩擦係数を求めることができる。
【0032】
本実施形態では、素材Mは、例えば、鉄や鋼等の金属又は合金からなり、直径が10〜20mm程度の長い丸棒体が利用される。素材Mの表面には、鍛造用の潤滑剤が被膜付けされている。素材に使用する潤滑剤の種類を変更しながら摩擦評価を行って、潤滑剤の性能評価を行える。機枠32は、引き抜き駆動部34と加工部38とを一体的に組み付けており、例えば、駆動部34を支持している矩形板状の駆動部支持板40と、駆動部支持板40に対して横方向に離隔して平行に対向配置された矩形板状の中間支持板42と、それらの2枚の支持板40、42を連結して支持する複数の支持ロッド44と、支持板42に固定され加工部38を支持しているコ字板状の加工部支持板46と、を含む。中間支持板42及び加工部支持板46には、素材Mを長手方向に通係させる貫通孔48が設けられている。
【0033】
駆動部34は、例えば、素材Mの一端を着脱可能に掴んで固定するチャック50がシリンダロッド先端側に設けられた駆動シリンダ52を含む。駆動シリンダ52は、チャック50で一端を固定した状態で強制的に素材Mを長手方向に沿って水平横方向に直線移動させて引き抜き駆動させる。駆動シリンダ52は、例えば、油圧シリンダからなり、駆動部支持板40にシリンダ本体を固定され、油圧コントロール用の油圧制御装置53に接続されている。駆動シリンダ52には、素材Mの移動ストローク量を計測するストローク計測システム54が設けられている。
【0034】
加工部38は、例えば、素材Mの長手方向と直交方向(素材の直径方向)に配置されて素材Mを挟持状に押圧する1対のダイス36(36a、36b)と、1対のダイス36の支持機構と、を含む。ダイス36の支持機構は、一方のダイス36aを所定位置に固定的に支持する固定台としての3次元ロードセル10と、他方のダイス36bを支持し一方のダイス36aに対して近接又は離隔方向に移動自在に支持する可動台56と、加工部支持板46に3次元ロードセル10を支持及び可動台56をガイド支持させる複数のガイドロッド58と、可動台56をガイドロッド58に沿ってスライドさせながらダイス36bに素材Mへの押圧力を作用させるための押圧用シリンダ60と、を含む。
【0035】
本実施形態では、3次元ロードセル10は、ダイスに作用する荷重測定手段とダイスの試験機への支持手段とを兼用している。3次元ロードセル10は、素材Mの長手方向に直交する一方側(図8の平面図上では、素材Mの下方側)に配置されて、その基部12が加工部支持板46、ガイドロッド58に固定されている。図8、図9、図10、図11に示すように、3次元ロードセル10は、x軸方向すなわち第1起歪部161の渡設方向が素材Mの直線移動方向L(引き抜き方向)と平行となるように設置される。第2起歪部162は、引き抜き方向Lと直交な方向で水平方向Wすなわちダイスの押圧方向に沿って設けられている。第3起歪部163は、高さ方向Hに沿って設けられている。3次元ロードセル10の荷重受部14の受凹部22には、ダイスホルダ64が嵌合状に配置されてボルト等を介して取り付けられ、該ダイスホルダ64にダイス36aが着脱交換可能に固定されている。3次元ロードセル10のひずみゲージ18は、例えば、ブリッジ回路24を内部に含み、荷重Pや分力Px、Py、Pz、角度θx、θy、θz及び摩擦係数等を計算するとともに、測定結果を出力、モニタ表示及び記録等を行う負荷荷重計測システム66に接続されている。
【0036】
可動台56は、例えば、ガイドロッド58の長手方向に沿って水平方向Wにスライド移動自在に形成された矩形板状の可動支持板56aと、可動支持板56aの一面側に固定され一部にダイス取り付け用の凹部が設けられた支持台部56bと、が一体的に組み付けられている。支持台部56bの凹部には、ダイスホルダ64が嵌合状に配置されてボルト等を介して取り付けられ、該ダイスホルダ64にダイス36bが着脱交換可能に固定されている。ガイドロッド58は、例えば、コ字状の加工部支持板46の対向板部46a、46b間に、素材Mの引き抜き方向Lと直交方向Wに向けて架設されている。押圧用シリンダ60は、例えば、油圧シリンダからなり、シリンダ本体が加工部支持板46の板部46aに固定され、伸縮されるシリンダロッドの先端64aが可動台56に固定されている。押圧用シリンダ60は、油圧コントロール用の油圧制御装置62に接続されている。
【0037】
ダイス36a、36bは、例えば、2つの平面が所定の刃先角度をなしてノミ刃状のダイス先端を形成した平面ダイスからなる。ダイス36a、36bは、直線状の刃先を素材Mの長手方向に対して直交方向に当てられている。なお、ダイスは、例えば、ダイス先端に半球状の凸部が設けられたものでも良いし、凹凸が繰り返し形成された波形状に形成されたものでも良く、その他種々の鍛造条件に応じた任意のパターンのダイス形状のものが適宜選択されるとよい。
【0038】
なお、摩擦試験機30には、図示しないが、電磁誘導によりダイス36と素材Mを加熱する加熱システム、加熱システムの温度コントロールシステム、ダイスの温度を計測する温度計測システム、ロードセル10等を冷却する冷却システム等が設けられている。
【0039】
摩擦試験を行う際には、押圧用シリンダ60を駆動して可動台56を水平方向Wに沿って移動させ、ダイス36a、36bで素材Mの両側から挟持しながら加圧する。そのダイス36a、36bにより一定の圧力で素材を加圧した状態で、駆動シリンダ52を駆動して素材Mを引き抜き方向(L)に沿って直線移動させて引き抜き駆動させることにより、該素材を長手方向に亘って平面的に押しつぶし状に塑性変形(Ma)させる。この際、ロードセル10により、ダイス36aに作用する荷重P及びそのx軸、y軸、z軸各方向の分力Px,Py,Pzを測定される。そして、荷重及び分力の測定結果を利用して、その荷重のかかる方向(θx、θy、θz)、さらには、素材表面の摩擦係数を所定の計算式を用いて求めることができる。上述のように、3次元ロードセルは、異なる3つの方向に向けて第1、第2、第3起歪部が設けられているので、荷重の測定を高い精度に正確に行える結果、摩擦係数の測定(算出)も高い精度で正確に行うことができる。なお、本実施形態では、摩擦試験機30には、図1の3次元ロードセル10を利用した例で説明したが、例えば、数tf以上の荷重がかかる場合には、図7の3次元ロードセル10aを利用してもよい。この際、x軸方向に向けて設けられた1つの第1起歪部161が素材Mの引き抜き方向に向けて平行に設定されるとよい。また、ロードセル10は、上記のような摩擦試験機30に限らず、実際に素材を所定の目的形状に塑性変形して製品を製造する引き抜き加工機に適用してもよい。さらに、3次元ロードセル10は、引き抜き加工機に限らず、例えば、加圧機、型プレス機、その他鍛造、鋳造等の生産ライン、材料や製品の試験機、等種々の荷重測定に適用することができる。
【0040】
上記のように本実施形態に係る3次元ロードセルでは、基部12と、基部12との間に間隙Gをあけて支持された荷重受部14と、一端を基部12に固定し他端を荷重受部14に固定して荷重受部を基部に支持させ、荷重受部14が荷重を受けた際に歪みを生じる複数の起歪部であり、任意の第1方向と、第1方向に交差する第2方向と、第1方向と第2方向を含む平面に交差する第3方向と、の3つの方向に向けて基部と荷重受部との間に渡架状に設けられた第1、第2、第3起歪部161、162、163と、第1、第2、第3起歪部にそれぞれ取り付けられたひずみゲージ18と、を含むことにより、従来のロードセルのように一方向の荷重測定しかできないものや、特許文献1のロードセルのようにひずみゲージが貼り付けられるアームがx軸、y軸方向の2方向のみに十字状に配置された2次元的な構成のものと比較して、荷重の3次元の各成分方向の分力を正確に計測でき、測定精度の高いロードセルを提供できる。したがって、例えば、摩擦試験機等に利用して、正確な摩擦係数の測定を可能とし、信頼度の高い摩擦試験や素材の潤滑剤の性能評価を実現できる。さらに、簡単な構造で高価値のロードセルを提供でき、荷重測定において広い分野に実用することができる。
【0041】
以上説明した本発明の3次元ロードセルは、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の3次元ロードセルは、例えば、計測機器、摩擦試験機や材料試験機等の試験機、プレス加工、鋳造又は鍛造加工等の加工機等その他任意の荷重測定に適用される。
【符号の説明】
【0043】
10 3次元ロードセル
12 基部
14 荷重受部
161〜163 第1〜第3起歪部
18 ひずみゲージ
30 摩擦試験機
G 間隙
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重の大きさ、その方向、及び3次元的な3方向の成分の分力を測定できる3次元ロードセルに関する。
【背景技術】
【0002】
ロードセルは、弾性体にひずみゲージを貼り付けて、弾性体にかかる応力とひずみゲージからの出力の関係を利用して荷重を測定する荷重測定装置であり、従来、一つの方向の荷重を測定するように設計されたものが普及している。ロードセルは、構造が簡単で低コストで製造できるとともに、比較的に測定性能、応答性、信頼性が高いことから、例えば、はかりや天秤等の計量器等に利用されている。
【0003】
また、例えば、特許文献1に開示されているように、ロードセルは、自動車や二輪車等の車輪の接地部への作用力を測定する車輪作用力測定装置にも利用されている。特許文献1では、車輪の回転軸線方向であるZ軸方向に延びる基部9からX軸およびY軸方向に沿って外方に十字状に延びる4本のアーム部10、10…が設けられ、それらの4本の各アーム部10、10…にストレインゲージ18、18…を貼着した多分力ロードセルの技術が記載されている。そして、4本のアーム部に貼着したストレインゲージ18、18…による歪検出値に基づいて、X、Y、Z各軸方向の分力Fx、Fy、Fzおよび各軸まわりの偶力Mx、My、Mzの6分力を測定するものであった。なお、符号は特許文献1記載のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−173929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロードセルは、上述のように様々な分野に広く利用されているが、3次元のように任意の方向にかかる荷重の計測を必要する場面も多い。しかしながら、従来のロードセルでは1つの方向しか測定できないので、荷重を測定するには複数のロードセルを測定しようとする各方向に沿って設置する必要があった。したがって、複数のロードセルはそれぞれ独立的に荷重を測定するので、3次元的な荷重及びその分力を測定するには精度が劣るとともに、取り付け位置が制約を受ける等の問題があった。また、特許文献1に記載されている多分力ロードセルは、車輪に適用した構成であるが、ストレインゲージが貼着されたアーム部は、X軸方向とY軸方向に沿って十字状に配置され、Z軸方向にはアーム部が配置されていない構成なので2次元的な配置構成となっていることから、3次元的な荷重を測定するには精度が劣るおそれがあった。
【0006】
一方、鍛造加工において素材を塑性変形して部品を製造する際には、表面に焼き付きや傷などが無い高精度の製品が要求されるため、潤滑剤の使用が不可欠である。素材の塑性変形過程では、摩擦係数の測定による素材表面の摩擦評価及び潤滑剤の性能評価が重要である。しかしながら、素材は3次元的に塑性変形されることが多いとともに、変形過程で高温、高面圧となる結果、素材の摩擦面の環境は複雑となり、正確な摩擦係数を測定するのは困難であった。したがって、正確な摩擦係数を測定するための技術の開発が望まれていた。
【0007】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、荷重の大きさ、その方向、及び3方向の分力を同時に測定でき、測定精度を向上させて実用性が高い3次元ロードセルを提供することにある。さらに、他の目的は、引き抜き加工や摩擦試験機等に良好に適用でき、素材の摩擦係数を正確に測定算出するために高精度な荷重の測定を実現できる3次元ロードセルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、基部12と、基部12との間に間隙Gをあけて支持された荷重受部14と、一端を基部12に固定し他端を荷重受部14に固定して荷重受部14を基部12に支持させ、荷重受部14が荷重を受けた際に歪みを生じる複数の起歪部であり、任意の第1方向と、第1方向に交差する第2方向と、第1方向と第2方向を含む平面に交差する第3方向と、の3つの方向に向けて基部14と荷重受部14との間に渡架状に設けられた第1、第2、第3起歪部161、162、163と、第1、第2、第3起歪部161、162、163にそれぞれ取り付けられたひずみゲージ18と、を含むことを特徴とする3次元ロードセル10から構成される。
【0009】
また、第1、第2、第3起歪部161、162、163は、互いに直交する3つの軸方向に沿って荷重受部14と基部12との間に渡架状に設けられたこととしてもよい。
【0010】
また、3次元ロードセルは、素材Mを直線移動させながらダイスに引き抜き通過させて該素材を所望形状に塑性加工する引き抜き加工において、ダイスに作用する荷重を計測するロードセルであり、荷重受部14は、ダイスを取り付けるダイス取り付け部(22)を有し、第1起歪部161は、素材の直線移動方向Lと平行な第1軸(x軸)方向に沿って設けられ、第2起歪部162は、第1軸方向に直交となる第2軸(y軸)方向に沿って設けられ、第3起歪部163は、第1軸方向及び第2軸方向にともに直交となる第3軸(z軸)方向に沿って設けられたこととしてもよい。例えば、引き抜き加工を行って実際に製品を製造する場合に適用しても良いし、引き抜き加工を利用した材料試験機等に適用してもよい。
【0011】
また、基部12は、一つの隅部が切欠き凹設された一部切欠き箱型形状に設けられ、荷重受部14は、基部12の切欠き凹設位置(22)に設置されたこととしてもよい。
【0012】
また、基部12と荷重受部14と第1、第2、第3起歪部161、162、163とが一体形成されたこととしてもよい。例えば、金属材料からの削り出し加工や、溶融金属や溶融合成樹脂を鋳型に入れて成型加工等により一体形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の3次元ロードセルによれば、基部と、基部との間に間隙をあけて支持された荷重受部と、一端を基部に固定し他端を荷重受部に固定して荷重受部を基部に支持させ、荷重受部が荷重を受けた際に歪みを生じる複数の起歪部であり、任意の第1方向と、第1方向に交差する第2方向と、第1方向と第2方向を含む平面に交差する第3方向と、の3つの方向に向けて基部と荷重受部との間に渡架状に設けられた第1、第2、第3起歪部と、第1、第2、第3起歪部にそれぞれ取り付けられたひずみゲージと、を含むことから、構造が簡単であるとともに、第1、第2、第3起歪部を異なる3方向に向けて設けたことにより、該荷重の3方向成分の分力、及び荷重のかかる方向を精度良く測定できる。また、測定対称の試験機や各種装置等に取り付ける際も簡単に取り付けることができ、広い分野での応用に実用できる。特に、3次元ロードセルを摩擦試験機等に応用すれば、正確な摩擦係数の測定を実現することができ、素材試験の性能、信頼性を向上させ得る。
【0014】
また、第1、第2、第3起歪部は、互いに直交する3つの軸方向に沿って荷重受部と基部との間に渡架状に設けられた構成とすることにより、測定対象の荷重のx軸、y軸、z軸方向の分力をスムーズに、高い精度で正確に測定でき、荷重分析を容易に行える。
【0015】
また、3次元ロードセルは、素材を直線移動させながらダイスに引き抜き通過させて該素材を所望形状に塑性加工する引き抜き加工において、ダイスに作用する荷重を計測する3次元ロードセルであり、荷重受部は、ダイスを取り付けるダイス取り付け部を有し、第1起歪部は、素材の直線移動方向と平行な第1軸方向に沿って設けられ、第2起歪部は、第1軸方向に直交となる第2軸方向に沿って設けられ、第3起歪部は、第1軸方向及び第2軸方向にともに直交となる第3軸方向に沿って設けられた構成とすることにより、加工機等のダイスに3次元ロードセルを具体的に組み付けて、直交する3つ軸方向の分力を正確に測定でき、ダイスに作用する荷重の分析を行える。さらには、素材とダイスとの間の摩擦係数を正確に測定でき、素材表面の摩擦特性や潤滑剤の性能評価をスムーズかつ正確に行える。
【0016】
また、基部は、一つの隅部が切欠き凹設された一部切欠き箱型形状に設けられ、荷重受部は、基部の切欠き凹設位置に設置された構成とすることにより、配置効率が良い構造を具体的に実現でき、引き抜き加工機やその他荷重測定対象物へ効率良く設置できる。
【0017】
また、荷重受部と基部と第1、第2、第3起歪部とが一体形成された構成とすることにより、構成要素どうしの接続部分で荷重が吸収されて誤差が生じる等の不具合を防止でき、精度の高い荷重測定を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る3次元ロードセルの斜視図である。
【図2】図1の3次元ロードセルの平面図である。
【図3】図1の3次元ロードセルの正面図である。
【図4】図1の3次元ロードセルの側面図である。
【図5】3次元ロードセルによる荷重測定テストを行った例を示す説明図である。
【図6】本発明の実施例に係る3次元ロードセルの荷重測定テストの結果のグラフである。
【図7】3次元ロードセルの他の実施形態の斜視図である。
【図8】図1の3次元ロードセルを引き抜き加工型の摩擦試験機に取り付けた例を説明する平面図である。
【図9】図8の摩擦試験機のダイス周辺の要部斜視説明図である。
【図10】図9の平面図である。
【図11】図9の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下添付図面を参照しつつ本発明の3次元ロードセルの実施形態について説明する。本発明に係る3次元ロードセルは、3次元の荷重計測に有利な荷重測定装置である。図1ないし図4は、本発明の3次元ロードセルの一実施形態を示している。本実施形態において、図1に示すように、3次元ロードセル10は、基部12と、荷重を受ける荷重受部14と、複数の起歪部16と、複数の起歪部16にそれぞれ取り付けられたひずみゲージ18と、を含む。
【0020】
基部12は、ある程度の剛性を備え荷重受部14及び起歪部16を一体的に組み付けて支持しているベース体である。基部12は、荷重を受ける荷重受部14に対する固定部となっており、荷重が荷重受部14から起歪部16に伝達された際に容易に変形しないような強度を有している。本実施形態では、基部12は、図1、図2、図3、図4に示すように、例えば、炭素鋼等の金属から形成され、縦方向、横方向及び高さ方向にある程度の大きさで形成された中実のブロック体からなる。基部12は、例えば、略立体矩形箱状の一つの隅部を切り欠き凹設して凹部20を形成させた一部切欠き箱型形状に設けられている。なお、平面視で基部12の横辺に沿った方向をx軸方向、平面視でx軸方向に直交する基部12の縦辺に沿った方向をy軸方向、正面視で鉛直高さ方向すなわちx軸及びy軸を含む平面に直交する方向をz軸方向としている。基部12の凹部20には、例えば、xy平面、yz平面、xz平面にそれぞれ平行な3つの凹部側面201〜203が形成されており、これらの3つの凹部側面201〜203は荷重受部14と対向している。なお、基部12の形状は荷重受部14、起歪部16を支持しうる構造であれば任意の形状でも良い。また、基部12は、例えば、図8のような引き抜き加工機や材料試験機等の他の装置へのロードセルの取り付けを可能にするために、他の装置側の構成部材等と係合する凸部、凹部や切欠き、孔、又は固定用のボルト孔等が設けられていても良い。
【0021】
図1、図2、図3、図4に示すように、荷重受部14は、測定対象物に直接又は間接に係合して荷重を受ける荷重受手段であり、基部12との間に間隙Gをあけて支持されている。荷重受部14は、該荷重受部14から脚のように3方向に延設された複数の起歪部16により基部12に対して空中位置に支持されている。荷重受部14は、固定的な基部12に対して荷重を受けた際に僅かに動き得る可動部となっており、受けた荷重を複数の起歪部16に伝達させる。本実施形態では、荷重受部14は、例えば、炭素鋼等の金属から形成されており、略立体矩形箱状の一つの隅部を切り欠き凹設して受凹部22を形成させた一部切り欠き箱型形状に設けられている。荷重受部14は、基部12の凹部20内に収容状に配置されており、受凹部22を外側に向けて露出させつつ、受凹部22が設けられていない3つの側面261〜263を基部12の凹部内面201〜203に平行状に対向させながら離隔配置される。受凹部22は、例えば、略立体矩形状の凹部空間であり、後述のようなダイス等の工具が取り付けられるダイス取り付け部を構成する。なお、荷重受部14は、本実施形態のような形状に限らず、例えば、受凹部22を設けなくてもよく、測定対象に応じてその他任意の形状に形成してもよい。
【0022】
図1、図2、図3、図4に示すように、起歪部16は、一端を基部12に固定し他端を荷重受部14に固定して荷重受部14を基部12に支持する支持手段であり、かつ荷重受部14が荷重を受けた際に歪みを生じる弾性体である。起歪部16は、固定部としての基部12と可動部としての荷重受部14との間の間隙Gに介設された梁であり、荷重受部14から荷重が伝達されると荷重の大きさに対応してひずみを生じ、荷重が解除されると弾性復帰する。それぞれの起歪部16は、例えば、炭素鋼等の金属で形成された断面正方形状の四角柱状のアームからなる。なお、起歪部16の形状は四角柱状に限らず、例えば、円柱状や、板状に形成されていても良い。
【0023】
本実施形態では、複数の起歪部16は、基部12と荷重受部14との間において異なる3つの軸方向に向けて直線状に渡架状に設けられており、第1方向となるx軸方向に向けて設けられた第1起歪部161(梁)と、第2方向となるy軸方向に向けて設けられた第2起歪部162(梁)と、第3方向となるz軸方向に向けて設けられた第3起歪部163(梁)と、を含む。第1、第2、第3起歪部161〜163は、互いに直交する3つの軸(x軸、y軸、z軸)方向に向けてそれぞれ1つずつ設けられ、起歪部は全部で3つ設けられた構成となっている。第1、第2、第3起歪部161〜163は、例えば、第1〜第3梁としてそれぞれ一端が基部12の凹部側面201〜203に一体で繋げられ、他端が荷重受部14の側面261〜263に一体で繋げられており、それらの基部12と荷重受部14の対向面に対して直交状に設けられている。直交する3つの方向に伸びた第1、第2、第3起歪部161〜163は、各方向の互いの干渉を配慮して設計されており、誤差が小さく、荷重のx軸、y軸、z軸の3次元方向の分力を簡単で正確に計測できる起歪部の配置構成を実現している。上記のように直交する3方向に向けて立体的に第1、第2、第3起歪部161、162、163を設けた構成であるから、x軸、y軸、z軸方向の分力の測定精度を向上でき、3次元の荷重測定用ロードセルとして実用性が高い。
【0024】
本実施形態では、基部12と荷重受部14と第1、第2、第3起歪部161、162、163とを含むロードセル本体は、例えば、鋼塊を上述のような所定形状に削り出し加工して一体形成されている。これにより、3次元ロードセル10は各構成要素間での継ぎ目やねじ等の接続部材が無い一体的な構造となり、荷重を受けた際に継ぎ目や接続部材の影響により荷重を吸収して測定精度を低下させるのを防止でき、高い測定精度を得ることができる。なお、ロードセル本体の材料は、例えば、ゴム、プラスチック、アルミニウム、鉄、その他合金等で形成してもよく、測定する荷重の大きさによって適宜選択するとよい。また、3次元ロードセル10は、基部12、荷重受部14、第1、第2、第3起歪部161、162、163をそれぞれ別部材で構成し、それらを所定構造に連結して製造することとしてもよいが、上述のように一体成形した構造のものの方が高い測定精度を得られる。
【0025】
図1、図2、図3、図4に示すように、ひずみゲージ18は、それぞれの起歪部161、162、163に取り付けられており、それらの起歪部に生じた歪みに応じて電気抵抗が変化するひずみ検出センサである。ひずみゲージ18は、例えば、抵抗線や金属箔を利用した従来周知のひずみゲージが利用され、それぞれの起歪部161、162、163ごとに1個又は複数個が取り付けられる。ひずみゲージ18は、ブリッジ回路24に電気的に接続される。ブリッジ回路24は、例えば、周知従来のブリッジ回路が利用されており、ひずみゲージ18の電気抵抗の変化を電圧変化に変換して出力する。なお、ブリッジ回路24には、例えば、回路出力を増幅するアンプ装置や出力を数値で表示するモニタ装置や、数値を記録するレコーダ装置等が接続されてもよい。
【0026】
よって、3次元ロードセル10は、荷重受部14が荷重を受けると、各起歪部16で荷重に対応した歪みが生じ、それらの歪みに応じてひずみゲージ18で電気抵抗の変化に変換され、その電気抵抗の変化をブリッジ回路24で電圧変化に変換し、出力電圧に応じて所定の計算が行われてロードセルにかかる荷重P及びx軸、y軸、z軸の各方向の分力Px、Py、Pzが求められる。本実施形態では、例えば、x軸方向の第1起歪部161に取り付けられた第1ひずみゲージ18からの回路の出力値εx、y軸方向の第2起歪部162に取り付けられた第2ひずみゲージ18からの回路の出力値εy、z軸方向の第3起歪部163に取り付けられた第3ひずみゲージ18からの回路の出力値εz、とすると、3次元ロードセル10にかかる荷重Pのx軸方向の分力Px、荷重Pのy軸方向の分力Py、荷重Pのz軸方向の分力Pzはそれぞれ次の計算式で近似的に求められる。
【数1】
第1、第2、第3起歪部161、162、163は全て荷重受部14に一体的に固定されているので、各方向の起歪部161、162、163どうしが互いに影響を及ぼすようになっている。なお、Ax、Ay、Az、Bx、By、Bz、Cx、Cy、Czは起歪部の形状や構成、ブリッジ回路等を含む諸条件により定まるパラメータである。そして、荷重Pは各分力Px、Py、Pzの合力として、次の計算式で求められる。
【数2】
或いは、合力Pは下記の式からも求められる。
【数3】
さらに、荷重Pのx軸、y軸、z軸方向に対する角度θx、θy、θzとすると、方向余弦及び、各角度θx、θy、θzは次の計算式で求められる。
【数4】
【数5】
【0027】
本実施形態では、第1〜第3起歪部(第1〜第3梁)161〜163のそれぞれのひずみεx、εy、εzと、分力Px、Py、Pzの関係式を、上記[数1]の計算式で表すと仮定して、x軸、y軸、z軸の各軸に対して荷重試験(圧縮試験)を行って分力Px、Py、Pzのデータをとり、それらのデータから最小2乗法により係数を求めた。
【数6】
これらの係数を[数1]の計算式に代入すると、ひずみεx、εy、εzと分力Px、Py、Pzとの関係式は次の計算式となる。
【数7】
上記計算式の確認のために、図5に示すように、3次元ロードセル10を水平方向に対して、例えば、φx=45度、φy=φz=30度傾けて鉛直方向に荷重P0を加えて実験を行った。すなわち、3次元ロードセル10に、θx=45°、θy=60°、θz=60°の方向に向けて荷重P0を加えた。理論計算結果と上式から算出される分力および合力を比較した。図6はその比較した結果を示す。図6のグラフの横軸は本実施形態に係る3次元ロードセルに実際に加えた荷重P0(重量トン(tf:ton-force))、縦軸が3次元ロードセル10が出力した各軸方向の分力Px、Py、Pz及び合力荷重P(重量トン(tf:ton-force))の結果である。なお、一例として、3次元ロードセルに、荷重P0=0.79tをθx=45°、θy=60°、θz=60°の方向に加えると[表1]の結果となった。
【表1】
図6に示すように、実線で表した出力理想値に対してロードセル10の出力結果の誤差が少なく、高い測定精度を期待できる。これにより、本実施形態では[数7]の計算式を利用して3次元ロードセルに任意に加えた荷重の分力、合力、方向等を得ることができる。
【0028】
なお、3次元ロードセル10の構成は上記実施形態に限定するものではない。例えば、第1、第2、第3起歪部161、162、163は、x軸、y軸、z軸方向に複数設けられていても良い。図7は3次元ロードセルの他の実施形態10aを示しており、図7に示すように、複数の起歪部16は、例えば、x軸方向に向けて1つの第1起歪部161が形成されるが、y軸方向に向けて2つの第2起歪部162a、162bが設けられ、z軸方向に向けて2つの第3起歪部163a、163bが設けられ、合計5つの起歪部を有している。第2起歪部162a、162bどうし、及び第2起歪部163a、163bどうしは、互いに所定の間隙をあけて離隔して平行に配置されている。各々の起歪部16は、例えば、略矩形板状に設けられている。略矩形板状の起歪部の表裏面にはひずみゲージ18がそれぞれ2箇所取り付けられ、各起歪部16ごとに計4箇所ずつ取り付けられている。この実施形態の3次元ロードセル10aでは、上記実施形態のロードセル10と比較して、起歪部の耐荷重強度を高く構成できるので、例えば、数重量トン以上の大きな荷重を測定するのに好適に利用できる。3次元ロードセル10は、起歪部16の材料、断面積、形状、個数等の構成条件を変更することにより、数gfから数千tfの計測範囲に対応した製作を行える。3次元ロードセルのサイズやロードセルの材料を変えて製造することで、数十kgの比較的小さな荷重を計測することも可能であるし、数千tfの比較的大きな荷重を計測することも可能である。
【0029】
また、第1、第2、第3起歪部161、162、163の方向は互いに直交する方向に向けて設けた構成に限らない。例えば、第1起歪部161は任意の第1方向αに向けて設け、第2起歪部162は該第1方向に直交しないθの角度で交差する第2方向βに向けて設け、第3起歪部163は第1方向と第2方向を含む平面に直交しないφの角度で交差する第3方向γに向けて設けて、互いに同一平面上で無く、かつ平行で無い3つの異なる方向に設けられるとよい。すなわち、第1、第2起歪部161、162は、互いに角度θ(0°<θ<180°)で交差する異なる第1方向αと第2方向βに向けて設けるとともに、第3起歪部163は、第1方向と第2方向を含む平面と角度φ(0°<φ<180°)で交差する第3方向γに向けて設けられるとよい。この場合でも、各方向へ向けてそれぞれ一つの起歪部が設けられても良いし、各方向に向けて複数の起歪部が設けられていても良い。
【0030】
次に図8ないし図11を参照しつつ、上記実施形態の3次元ロードセル10を引抜き加工機に利用し、ダイスに作用する荷重を測定する場合について説明する。引き抜き加工機は、例えば、素材Mを直線移動させながらダイス36に引き抜き通過させて該素材Mを所望形状に塑性加工する加工装置である。図8、図9に示すように、本実施形態では、引き抜き加工機は、例えば、引き抜き型の摩擦試験機30からなる。摩擦試験機30は、自動車部品等の鍛造のような複雑な塑性変形に酷似した塑性加工を引き抜き加工により再現し、素材Mやダイス36に作用する荷重の分析、素材とダイスとの接触面の摩擦評価、さらには素材表面に使用する潤滑剤評価等を効率的に試験、評価に利用できる。
【0031】
図8、図9に示すように、摩擦試験機30は、例えば、機枠32と、素材Mを直線移動させてダイス36に対して引き抜き動作させる駆動部34と、ダイス36が取り付けられ該ダイス36により素材Mを塑性変形させる加工部38と、を含み、加工部38のダイス36に3次元ロードセル10が組み付けられている。そして、素材Mの引き抜き動作の際に3次元ロードセル10でダイス36に作用する荷重を測定できるとともに、該荷重の測定値から所定の計算式を用いて素材の摩擦係数を求めることができる。
【0032】
本実施形態では、素材Mは、例えば、鉄や鋼等の金属又は合金からなり、直径が10〜20mm程度の長い丸棒体が利用される。素材Mの表面には、鍛造用の潤滑剤が被膜付けされている。素材に使用する潤滑剤の種類を変更しながら摩擦評価を行って、潤滑剤の性能評価を行える。機枠32は、引き抜き駆動部34と加工部38とを一体的に組み付けており、例えば、駆動部34を支持している矩形板状の駆動部支持板40と、駆動部支持板40に対して横方向に離隔して平行に対向配置された矩形板状の中間支持板42と、それらの2枚の支持板40、42を連結して支持する複数の支持ロッド44と、支持板42に固定され加工部38を支持しているコ字板状の加工部支持板46と、を含む。中間支持板42及び加工部支持板46には、素材Mを長手方向に通係させる貫通孔48が設けられている。
【0033】
駆動部34は、例えば、素材Mの一端を着脱可能に掴んで固定するチャック50がシリンダロッド先端側に設けられた駆動シリンダ52を含む。駆動シリンダ52は、チャック50で一端を固定した状態で強制的に素材Mを長手方向に沿って水平横方向に直線移動させて引き抜き駆動させる。駆動シリンダ52は、例えば、油圧シリンダからなり、駆動部支持板40にシリンダ本体を固定され、油圧コントロール用の油圧制御装置53に接続されている。駆動シリンダ52には、素材Mの移動ストローク量を計測するストローク計測システム54が設けられている。
【0034】
加工部38は、例えば、素材Mの長手方向と直交方向(素材の直径方向)に配置されて素材Mを挟持状に押圧する1対のダイス36(36a、36b)と、1対のダイス36の支持機構と、を含む。ダイス36の支持機構は、一方のダイス36aを所定位置に固定的に支持する固定台としての3次元ロードセル10と、他方のダイス36bを支持し一方のダイス36aに対して近接又は離隔方向に移動自在に支持する可動台56と、加工部支持板46に3次元ロードセル10を支持及び可動台56をガイド支持させる複数のガイドロッド58と、可動台56をガイドロッド58に沿ってスライドさせながらダイス36bに素材Mへの押圧力を作用させるための押圧用シリンダ60と、を含む。
【0035】
本実施形態では、3次元ロードセル10は、ダイスに作用する荷重測定手段とダイスの試験機への支持手段とを兼用している。3次元ロードセル10は、素材Mの長手方向に直交する一方側(図8の平面図上では、素材Mの下方側)に配置されて、その基部12が加工部支持板46、ガイドロッド58に固定されている。図8、図9、図10、図11に示すように、3次元ロードセル10は、x軸方向すなわち第1起歪部161の渡設方向が素材Mの直線移動方向L(引き抜き方向)と平行となるように設置される。第2起歪部162は、引き抜き方向Lと直交な方向で水平方向Wすなわちダイスの押圧方向に沿って設けられている。第3起歪部163は、高さ方向Hに沿って設けられている。3次元ロードセル10の荷重受部14の受凹部22には、ダイスホルダ64が嵌合状に配置されてボルト等を介して取り付けられ、該ダイスホルダ64にダイス36aが着脱交換可能に固定されている。3次元ロードセル10のひずみゲージ18は、例えば、ブリッジ回路24を内部に含み、荷重Pや分力Px、Py、Pz、角度θx、θy、θz及び摩擦係数等を計算するとともに、測定結果を出力、モニタ表示及び記録等を行う負荷荷重計測システム66に接続されている。
【0036】
可動台56は、例えば、ガイドロッド58の長手方向に沿って水平方向Wにスライド移動自在に形成された矩形板状の可動支持板56aと、可動支持板56aの一面側に固定され一部にダイス取り付け用の凹部が設けられた支持台部56bと、が一体的に組み付けられている。支持台部56bの凹部には、ダイスホルダ64が嵌合状に配置されてボルト等を介して取り付けられ、該ダイスホルダ64にダイス36bが着脱交換可能に固定されている。ガイドロッド58は、例えば、コ字状の加工部支持板46の対向板部46a、46b間に、素材Mの引き抜き方向Lと直交方向Wに向けて架設されている。押圧用シリンダ60は、例えば、油圧シリンダからなり、シリンダ本体が加工部支持板46の板部46aに固定され、伸縮されるシリンダロッドの先端64aが可動台56に固定されている。押圧用シリンダ60は、油圧コントロール用の油圧制御装置62に接続されている。
【0037】
ダイス36a、36bは、例えば、2つの平面が所定の刃先角度をなしてノミ刃状のダイス先端を形成した平面ダイスからなる。ダイス36a、36bは、直線状の刃先を素材Mの長手方向に対して直交方向に当てられている。なお、ダイスは、例えば、ダイス先端に半球状の凸部が設けられたものでも良いし、凹凸が繰り返し形成された波形状に形成されたものでも良く、その他種々の鍛造条件に応じた任意のパターンのダイス形状のものが適宜選択されるとよい。
【0038】
なお、摩擦試験機30には、図示しないが、電磁誘導によりダイス36と素材Mを加熱する加熱システム、加熱システムの温度コントロールシステム、ダイスの温度を計測する温度計測システム、ロードセル10等を冷却する冷却システム等が設けられている。
【0039】
摩擦試験を行う際には、押圧用シリンダ60を駆動して可動台56を水平方向Wに沿って移動させ、ダイス36a、36bで素材Mの両側から挟持しながら加圧する。そのダイス36a、36bにより一定の圧力で素材を加圧した状態で、駆動シリンダ52を駆動して素材Mを引き抜き方向(L)に沿って直線移動させて引き抜き駆動させることにより、該素材を長手方向に亘って平面的に押しつぶし状に塑性変形(Ma)させる。この際、ロードセル10により、ダイス36aに作用する荷重P及びそのx軸、y軸、z軸各方向の分力Px,Py,Pzを測定される。そして、荷重及び分力の測定結果を利用して、その荷重のかかる方向(θx、θy、θz)、さらには、素材表面の摩擦係数を所定の計算式を用いて求めることができる。上述のように、3次元ロードセルは、異なる3つの方向に向けて第1、第2、第3起歪部が設けられているので、荷重の測定を高い精度に正確に行える結果、摩擦係数の測定(算出)も高い精度で正確に行うことができる。なお、本実施形態では、摩擦試験機30には、図1の3次元ロードセル10を利用した例で説明したが、例えば、数tf以上の荷重がかかる場合には、図7の3次元ロードセル10aを利用してもよい。この際、x軸方向に向けて設けられた1つの第1起歪部161が素材Mの引き抜き方向に向けて平行に設定されるとよい。また、ロードセル10は、上記のような摩擦試験機30に限らず、実際に素材を所定の目的形状に塑性変形して製品を製造する引き抜き加工機に適用してもよい。さらに、3次元ロードセル10は、引き抜き加工機に限らず、例えば、加圧機、型プレス機、その他鍛造、鋳造等の生産ライン、材料や製品の試験機、等種々の荷重測定に適用することができる。
【0040】
上記のように本実施形態に係る3次元ロードセルでは、基部12と、基部12との間に間隙Gをあけて支持された荷重受部14と、一端を基部12に固定し他端を荷重受部14に固定して荷重受部を基部に支持させ、荷重受部14が荷重を受けた際に歪みを生じる複数の起歪部であり、任意の第1方向と、第1方向に交差する第2方向と、第1方向と第2方向を含む平面に交差する第3方向と、の3つの方向に向けて基部と荷重受部との間に渡架状に設けられた第1、第2、第3起歪部161、162、163と、第1、第2、第3起歪部にそれぞれ取り付けられたひずみゲージ18と、を含むことにより、従来のロードセルのように一方向の荷重測定しかできないものや、特許文献1のロードセルのようにひずみゲージが貼り付けられるアームがx軸、y軸方向の2方向のみに十字状に配置された2次元的な構成のものと比較して、荷重の3次元の各成分方向の分力を正確に計測でき、測定精度の高いロードセルを提供できる。したがって、例えば、摩擦試験機等に利用して、正確な摩擦係数の測定を可能とし、信頼度の高い摩擦試験や素材の潤滑剤の性能評価を実現できる。さらに、簡単な構造で高価値のロードセルを提供でき、荷重測定において広い分野に実用することができる。
【0041】
以上説明した本発明の3次元ロードセルは、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の3次元ロードセルは、例えば、計測機器、摩擦試験機や材料試験機等の試験機、プレス加工、鋳造又は鍛造加工等の加工機等その他任意の荷重測定に適用される。
【符号の説明】
【0043】
10 3次元ロードセル
12 基部
14 荷重受部
161〜163 第1〜第3起歪部
18 ひずみゲージ
30 摩擦試験機
G 間隙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
基部との間に間隙をあけて支持された荷重受部と、
一端を基部に固定し他端を荷重受部に固定して荷重受部を基部に支持させ、荷重受部が荷重を受けた際に歪みを生じる複数の起歪部であり、任意の第1方向と、第1方向に交差する第2方向と、第1方向と第2方向を含む平面に交差する第3方向と、の3つの方向に向けて基部と荷重受部との間に渡架状に設けられた第1、第2、第3起歪部と、
第1、第2、第3起歪部にそれぞれ取り付けられたひずみゲージと、を含むことを特徴とする3次元ロードセル。
【請求項2】
第1、第2、第3起歪部は、互いに直交する3つの軸方向に沿って荷重受部と基部との間に渡架状に設けられたことを特徴とする請求項1記載の3次元ロードセル。
【請求項3】
3次元ロードセルは、素材を直線移動させながらダイスに引き抜き通過させて該素材を所望形状に塑性加工する引き抜き加工において、ダイスに作用する荷重を計測するロードセルであり、
荷重受部は、ダイスを取り付けるダイス取り付け部を有し、
第1起歪部は、素材の直線移動方向と平行な第1軸方向に沿って設けられ、
第2起歪部は、第1軸方向に直交となる第2軸方向に沿って設けられ、
第3起歪部は、第1軸方向及び第2軸方向にともに直交となる第3軸方向に沿って設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の3次元ロードセル。
【請求項4】
基部は、一つの隅部が切欠き凹設された一部切欠き箱型形状に設けられ、
荷重受部は、基部の切欠き凹設位置に設置されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の3次元ロードセル。
【請求項5】
基部と荷重受部と第1、第2、第3起歪部とが一体形成されたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の3次元ロードセル。
【請求項1】
基部と、
基部との間に間隙をあけて支持された荷重受部と、
一端を基部に固定し他端を荷重受部に固定して荷重受部を基部に支持させ、荷重受部が荷重を受けた際に歪みを生じる複数の起歪部であり、任意の第1方向と、第1方向に交差する第2方向と、第1方向と第2方向を含む平面に交差する第3方向と、の3つの方向に向けて基部と荷重受部との間に渡架状に設けられた第1、第2、第3起歪部と、
第1、第2、第3起歪部にそれぞれ取り付けられたひずみゲージと、を含むことを特徴とする3次元ロードセル。
【請求項2】
第1、第2、第3起歪部は、互いに直交する3つの軸方向に沿って荷重受部と基部との間に渡架状に設けられたことを特徴とする請求項1記載の3次元ロードセル。
【請求項3】
3次元ロードセルは、素材を直線移動させながらダイスに引き抜き通過させて該素材を所望形状に塑性加工する引き抜き加工において、ダイスに作用する荷重を計測するロードセルであり、
荷重受部は、ダイスを取り付けるダイス取り付け部を有し、
第1起歪部は、素材の直線移動方向と平行な第1軸方向に沿って設けられ、
第2起歪部は、第1軸方向に直交となる第2軸方向に沿って設けられ、
第3起歪部は、第1軸方向及び第2軸方向にともに直交となる第3軸方向に沿って設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の3次元ロードセル。
【請求項4】
基部は、一つの隅部が切欠き凹設された一部切欠き箱型形状に設けられ、
荷重受部は、基部の切欠き凹設位置に設置されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の3次元ロードセル。
【請求項5】
基部と荷重受部と第1、第2、第3起歪部とが一体形成されたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の3次元ロードセル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−2554(P2012−2554A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135689(P2010−135689)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【Fターム(参考)】
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