3次元光共振器
【課題】レーザー光源で得られたレーザーを導いて、右偏光又は左偏光のどちらか一方に共振させると共に左右どちらにも切り替え可能な光発振器を提供する。
【解決手段】立体的に配置された1対の平面鏡と1対の凹面鏡とを備え、入射光学系から出射されるレーザーを取り込み、当該レーザーを圧電素子によって長さが調整された光路上を周回させながら前記光路の光路長に応じて右円偏光又は左円偏光を選択することによってレーザーを共振させる。
【解決手段】立体的に配置された1対の平面鏡と1対の凹面鏡とを備え、入射光学系から出射されるレーザーを取り込み、当該レーザーを圧電素子によって長さが調整された光路上を周回させながら前記光路の光路長に応じて右円偏光又は左円偏光を選択することによってレーザーを共振させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右円偏光性を自由に選択し得る偏光レーザー又は偏光放射線を発振させる光共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、偏光レーザーを発振させる光発振器として、レーザー発生器で得られたレーザーを光共振器に導いて共振させることにより偏光レーザーを発生させる光発振器が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の光発振器においては、レーザーの円偏光性を分離することができないことから、偏光子、ファラデー回転子、λ/4波長板などを使用して、円偏光を切り替えなければならず、調整作業が煩雑であるという問題があった。
【0004】
また、従来の光発振器では、偏光子、ファラデー回転子、λ/4波長板などを各々、調整して右円偏光、左円偏光を切り替えなければならないことから、切り替え速度を速くすることが難しいのみならず、純粋な円偏光レーザーを保証することが困難であるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記した従来の光発振器の課題に鑑みて、レーザー光源で得られたレーザーを、右偏光又は左偏光のどちらか一方に共振させると共に、左右どちらにも容易に切り替え可能な3次元光共振器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明は、立体的に配置された1対の平面鏡と1対の凹面鏡とを備え、入射光学系から出射されるレーザーを取り込み、当該レーザーを圧電素子によって長さが調整された光路上を周回させながら前記光路の光路長に応じて右円偏光又は左円偏光を選択することによってレーザーを共振させるように形成された3次元光共振器を提供するものである。
【0007】
ここで、前記レーザーは、CWレーザー発振器、モードロックレーザーパルス発振器の少なくとも何れかを持ち、CWレーザー形式又はパルスレーザー形式のレーザーを生成するレーザー光源から出射されるレーザーの偏光面とビーム径を整える前記入射光学系に入射される。
【0008】
そして、本発明の3次元共振器内部で共振しているレーザーの強度をモニタする共振モニタ器を備える。また、内部で共振しているレーザーのうち、前記平面鏡および前記凹面鏡の何れかを透過したレーザーをP偏光成分とS偏光成分とに分離し、その強度を測定すると共に、その差分値を求めて、ゼロクロスフィードバック信号を生成するゼロクロスフィードバック信号生成器を備える。
【0009】
さらに、前記選択される右円偏光又は左円偏光を指定する指示信号を出力する偏光切替スイッチと、前記偏光切替スイッチの出力、前記共振モニタ器の出力、前記ゼロクロスフィードバック信号生成器の出力に基づき、前記3次元光共振器に設けられた前記圧電素子の駆動電圧を制御して、前記光路長を調整させ、前記3次元光共振器内に右円偏光、又は左円偏光のレーザーを選択的に蓄積させる共振制御器と、を備えるのである。
【0010】
本発明は、さらに、前記3次元光共振器内に設定された衝突点において、ビームサイズが“10μm”以下にされ、エネルギー強度が“1mJ/パルス”以上になる右偏光のパルスレーザー又は左偏光のパルスレーザーと前記高エネルギー電子ビーム発生装置から出射される高エネルギー電子ビームとを衝突させ、極短パルス偏光放射線を生成させることを特徴とする3次元光共振器を提供するものである。
【0011】
ここで、前記極短パルス偏光放射線は、その放射線量が測定される。また、前記衝突点において、前記高エネルギー電子ビーム発生装置から出射される規格化エミッタンス“10mmmrad”以下の高品質特性を有する高エネルギー電子ビームと、前記3次元光共振器内のパルスレーザーとを衝突角度“8−20度”の範囲で、かつ“1μm”以内の衝突精度で衝突させ、エネルギーが“0.25keV”以上の特性を有する極短パルス偏光放射線を発生させ、外部に取り出すようにしている。そして、前記極短パルス偏光放射線は、X線又はγ線である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る3次元光共振器においては、レーザー光源で得られたレーザー又は放射線を右偏光又は左偏光のどちらか一方に共振させると共に、左右どちらにも容易に切り替え可能にしたことにより、従来の光発振器が有していた課題であるレーザーの円偏光性を分離できないことによる偏光子、ファラデー回転子、λ/4波長板などを使用して円偏光を切り替える必要性をなくすると共に、純粋な円偏光レーザーを得ることを実現したのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の3次元光共振器を利用した偏光レーザー発振システムの例を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る3次元光共振器の詳細な構成例を示す。
【図3】本発明の3次元光共振器を利用した偏光放射線発生システムの例を示す概略構成図である。
【図4】本願発明において提案する非平面4枚ミラーリング光共振器の構成図である。
【図5】予備実験テストで使用したシステムのレイアウトを示す概略構成図である。
【図6】入射したレーザーが線形偏光を有する場合に観察できる典型的な信号の一例を示すグラフである。
【図7】R1=0.99、T1=0.01、R=0.98であるときにおける、関数“F(δ)=Er/Ei”をプロットしたものである。
【図8】R1=0.99、T1=0.01、R=0.98、φgeo=−0.0575radにし、数式11の列ベクトルで示される反射波“Er”の成分“Esr”、“Epr”の差分信号“Esr−Epr”と、加算信号“Esr+Epr”とを計算して、プロットしたものである。
【図9】R1=0.999、T1=0.001、R=0.998、“φgeo=−0.0575rad”にし、数式11の列ベクトルで示される反射波“Er”の成分“Esr”、“Epr”の差分信号“Esr−Epr”と、加算信号“Esr+Epr”とを計算して、プロットしたものである。
【図10】本願発明者が作成した実験装置の概要を示す構成図である。
【図11】本発明の3次元光共振器を利用した実験装置の共鳴点近傍で観測された信号を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.発明の背景
高精度な光共振器は、さまざまな科学分野で使用されている。レーザー発振器からのレーザービームを光共振器に入射させることによって、ビームの強度を数段階上げることができる。加速器物理学の分野では、この技術は、レーザーコンプトン散乱方式に基づく小型のX線光源を開発するために必要とされる。
【0015】
光共振器の共鳴は、鋭いピークに維持する必要があることから、サーボシステムの移動方向を制御するために使用可能な共鳴曲線から差分信号を得るためのさまざまな方式が開発されている。
【0016】
広く利用されている方式の一つに、共鳴のピークの外側の周波数側波帯を導入し、反射波の位相シフトを測定するPound-Drever-Hall法がある。別の方式としてのTilt-locking methodでは、基本的なモードと、より高い横モードとの間の干渉を利用して、反射波の位相シフトを検出する。また、Hansch-Couillaud(HC)法は、光共振器の内部に、複屈折材を載置させて、光共振器を共鳴偏光依存構造にし、共鳴で起きた位相シフトに起因する反射波の偏光変化を測定する。角度をつけて設置したミラーを使用するマルチミラー光共振器システムにおいては、たとえ2枚ミラーシステムであっても、ミラーの応力によって、線形偏光依存構造の特性が起こり得るため、HC法の変形は、付加的材料なくして、実現することができる。
【0017】
3次元(非平面)構成の4枚ミラーリング光共振器は、光共振器の内部の1点に微小スポットを生成することができる。レーザーコンプトンX線源を使用すれば、4枚ミラーリング光共振器で、有効なレーザーエレクトロン交差を提供可能であり、生成X線性能(または収束性能)を改善することが可能となる。
【0018】
非平面光共振器は、通常、3次元光路における画像の回転により、円偏光依存特性を有する。本願発明者は、この円偏光依存特性を利用して、非平面光共振器の共鳴から差分信号を得るための新しい方法を提案する。この方法は、円偏光依存を有するHC法の変形である。
【0019】
2.実験の装置
2.1.非平面光共振器の概略
図4は、本願発明に係る非平面4枚ミラーリング光共振器の構成を示す。光路は、表面が辺“a”、“a”、“b”を有する二等辺三角形である左右対称四面体の辺に沿っている。辺“a”は420mm、辺“b”は100mmである。各頂点“P1”、“P2”、“P3”、“P4”にある各ミラーは、この順に閉光共振器を形成する。頂点“P1”と頂点“P2”のミラーは平面鏡であり、頂点“P3”と頂点“P4”のミラーは凹形鏡である。この実験で使用した各ミラー(平面鏡、凹形鏡)は全て、反射率“99%”、透過率“1%”である。点“Q1”は頂点“P1”と頂点“P3”の中点である。点“Q2”は、頂点“P2”と頂点“P4”の中点である。
【0020】
2.2.幾何学的位相の影響
非平面光共振器の独自性は、円偏光の共鳴の縮退、分離にあることから、次に述べ手順で、幾何学的位相の影響を調べた。
【0021】
頂点“P2”での影響について、単位のベクトル“k1”およびベクトル“k2”は各々、頂点“P1”から頂点“P2”への光線および頂点“P2”から頂点“P3”の光線(入射光)である。
【数1】
【0022】
ここで、頂点“P2”および頂点“P3”における反射光の通常のベクトル“n1”およびベクトル“n2”は、次式で表すことができる。
【数2】
【0023】
そして、入射光および反射光を含む面は、単位の各ベクトル“k1”、“k2”と、通常のベクトル“n1”、“n2”との定義を使用し、次式に示すベクトル“a1”、“a2”で表すことができる。
【数3】
【0024】
ここで、ベクトル“a1”と、ベクトル“a2”との間の角度“α12”は、4枚ミラー光共振器の一辺で起きたイメージの回転であり、角度“α12”は次の式で算出することができる。
【数4】
【0025】
そして、このような非平面光共振器では、各反射点におけるイメージの回転が累積されることから、非平面光共振器内の光路を1周するとき、全体的な効果は角度“4α12”(以後、適時、これを幾何学的位相“φgeo”と呼ぶ)となる。また、イメージの回転は、回転偏光波の場合における位相シフトに相当する。また、右偏光および左偏光の位相シフトの符号は逆であるため、二つの円偏光の間の共鳴の減退を分割する。
【0026】
例えば、角度“4α12”は、本願発明において提案する3次元共振器においては、“−0.0575rad(2πの整数は無視する)”である。
【0027】
2.3.光共振器の共鳴の測定
本願発明者は、予備実験テストを行って、本願発明において提案する光共振器の偏光特性を調べた。この際、作成したシステムのレイアウトを図5に示す。
【0028】
この際、シングルモードCWレーザー(イノライト製、プロメーテウス・モデル)を光源として使用した。偏光ビームスプリッタ(PBS)で、入射するレーザー光の偏光を弁別した。入射レーザーが、光共振器、固有のモードに適合するようにレンズ(matching)対を配置した。光共振器(3D-4mirror cavity)に対する入射レーザーの入射位置と角度は、一対の平面鏡で調整した。光共振器鏡の一方(concave)は、ピエゾ素子(piezo)を持つ圧電制御ステージ上に装着して、光共振器の長さ(光路長)を変更できるようにした。光共振器の共鳴は、ピエゾ素子にランプ電圧(スロープ状に順次、高くなる電圧)を印加しつつ、ピンフォトダイオード(PD)で光共振器の透過レーザーを測定することによって判定した。
【0029】
図6は、入射したレーザーが線形偏光を有する場合に観察できる典型的な信号を示す。ピエゾ素子を使って光共振器の光路長を走査させながら、光共振器の透過レーザーをフォトダイオードで測定したときのグラフである。上の図は、自由スペクトル範囲の全期間を示す。最も高いピークは、基本的な横モードに相当する。下の図は、基本的なモードのピークのうちの一つを拡大したものである。
【0030】
この図6では、2つある共鳴ピークは、一方が右偏光に相当し、他方が左偏光に相当するダブルピーク構造になっている。入射したレーザーの線形偏光が2つの円偏光を同じ量だけ含んであるので、光共振器は、両共鳴条件に基づいて、わずかに異なる位相で共鳴する。
【0031】
3.ロックする技術の方式
3.1.計算
3.1.1.反射波の説明
光共振器では、各共鳴鏡における反射波の複素共振“Er”は、次のように記述できる。
【数5】
ここで、“Ei”は、入射波の複素共振、“R1”および“T1”は光共振器の入出射口に配置された共鳴鏡の反射率および透過率である。“R”は、“F=π/(1−R)”で定義された光共振器のフィネス“(F)”との関連する値です。ここで、“R”は、4枚ミラー光共振器の場合と同じ精度を有する2枚ミラー光共振器で使用される共振鏡の反射率として考えることができる。また“δ”は、共鳴条件から導かれる位相差である。
【0032】
図7は、R1=0.99、T1=0.01、R=0.98であるときにおける、関数“F(δ)=Er/Ei”をプロットしたものである。上の線は、位相差“δ”の実数部分を示し、下の線は位相差“δ”の虚数部分を示す。
【0033】
3.1.2.偏光の説明
また、このような光共振器に対し、ジョーンズマトリックスを使用すると、波の偏光は次式を使用して、説明できる。
【数6】
ここで、列ベクトル“E”のそれぞれの要素“Ep”、“Es”は各々、P偏光、S偏光を表す。電界は、テーブルに対して平行、且つ垂直である。波がテーブル上に水平に載置した偏光ビームスプリッタ(PBS)で分波されれば、二つの要素は別々に測定することができる。
【0034】
円偏光波は次のように記述できる。
【数7】
【0035】
ここで、列ベクトル“ER”、“EL”は、それぞれ単位共振の右偏光、左偏光である。非平面光共振器の固有状態は円偏光に対応するので、入射波は、右偏光の単位共振“ER”と、左偏光の単位共振“EL”との重ね合わせとして好都合に記述できる。また、テーブル面に対して45度回転させた直線偏光の単位共振である列ベクトル“E45”は、次のように記述できる。
【数8】
【0036】
3.2.提案するシステムの方式
上述した2.2の章で説明したように、付加的幾何学的位相により、右偏光および左偏光の共鳴条件は、反対の符号にシフトする。反射波の右偏光成分“ErR”、左偏光成分“ErL”は、付加的幾何学位相“φgeo”を用いて、次のように表わすことができる。
【数9】
【数10】
【0037】
ここで、数式8が入射波の場合、反射波の右偏光成分“ErR”、左偏光成分“ErL”は、光共振器内で、相互に作用し合う。結果生成される重ね合わせの反射波“Er”は次式で表わされる。
【数11】
【0038】
図8は、“R1=0.99”、“T1=0.01”、“R=0.98”、“φgeo=−0.0575rad”にし、この数式11の列ベクトルで示される反射波“Er”の成分“Esr”、“Epr”の差分信号“Esr−Epr”と、加算信号“Esr+Epr”とを計算して、プロットしたものである。但し、図8では、図9との関係を分かり易くするため、差分信号“Esr−Epr”として、“PD1−PD2”を表示し、加算信号“Esr+Epr”として、“PD1+PD2”を表示してある。
【0039】
これは、本願発明のテスト対象となる光共振器の構成に相当するものであり、“Esr−Epr”は本願発明において提案している光共振器をロックするための差分信号である。
【0040】
さらに、より精度を上げた場合の計算を図9に示す。これは、R1=0.999、T1=0.001、R=0.998、“φgeo=−0.0575radにしたときの計算例である。
【0041】
図8及び図9の記載から明らかなように、“PD1−PD2”で表示されている差分信号“Esr−Epr”は、共鳴のピークでゼロと交差する。さらに、ゼロと交差する差分信号“Esr−Epr”の符号(マイナスからプラスか、プラスからマイナスか)を選択することによって、右円偏光および左円偏光のどちらについても、円偏光共鳴の一つでシステムをロックすることが可能になる。
【0042】
3.3.実験
計算を確認するため、本願発明者は、図10に示す装置を使って実験を行った。直線偏光波を3次元光共振器“3D-cavity”に入射させた。入射出口に配置された平面鏡“reflection”からの反射光(3次元光共振器“3D-cavity”内のレーザービーム)を偏光ビームスプリッタ“PBS”および2つのピンフォトダイオード“PD1”、“PD2”から成る検知システム“detection system”に導いた。
【0043】
ピンフォトダイオード“PD1”は、偏光ビームスプリッタ“PBS”の基準として、P偏光の強度“Ep”をモニタし、ピンフォトダイオード“PD2”はS偏光“Es”の強度をモニタした。各ピンフォトダイオード“PD1”、“PD2”からの信号は差分増幅器“differential amplifier”に供給し、差動電圧“Es−Ep”を出力信号“output”として出力した。
【0044】
検出システム“detection system”の入力側にあるλ/2波長板“λ/2”の角度を調整して、入射するレーザービームの偏光面と、検出システム“detection system”の偏光面とを整合させ、λ/2波長板“λ/2”と、3次元光共振器“3D-cavity”との距離が離れていても、2つのピンフォトダイオード“PD1”、“PD2”の出力がバランスするようにした。
【0045】
この状況は、偏光ビームスプリッタ“PBS”の入力側に入射するレーザービームが、数式8として表わされることに相当する。また、ピンフォトダイオード“PD0”を使って、3次元光共振器“3D-cavity”からの透過光(3次元光共振器“3D-cavity”内のレーザービーム)の強度を測定し、3次元光共振器“3D-cavity”の共鳴状態をモニタした。
【0046】
本願発明者は、ピエゾ素子“piezo”で位置が調整される圧電制御ミラーを使って3次元光共振器“3D-cavity”の光路長をスキャンさせながら、差分増幅器“differential amplifier”の出力信号“output”を測定した。3次元光共振器“3D-cavity”の共鳴点近傍で観測された信号を図11に示す。一番下の線は、透過光を測定したピンフォトダイオード“PD0”の信号である。これは、3次元光共振器“3D-cavity”の共鳴点を示す。中央の線は、差分増幅器“differential amplifier”の出力信号“output”であり、この出力信号の形状は図8で計算した結果と一致する。差分増幅器“differential amplifier”の出力信号“output”は、2つの共鳴点で各々、ゼロと交差し、それぞれの円偏光ピークの近傍で異なる符号となった。これにより、差分増幅器“differential amplifier”の出力信号“output”が各ゼロ交差点の何れか一方と一致するように、3次元光共振器“3D-cavity”の光路長を調整すれば、3次元光共振器“3D-cavity”が持つ2つの共鳴ピークのどちらか1つにロックさせることができる。
【0047】
本発明では、このようなロック法を使用して、3次元光共振器“3D-cavity”が持つ2つの共鳴ピークのうちの1つにロックさせることにより、3次元光共振器“3D-cavity”を右偏光、左偏光のどちらでも、共鳴させ得るようにしている。
【0048】
《本発明の実施の形態》
図1は、上述した原理を用いる本発明による光共振器を利用した偏光レーザー発振システムの例を示す概略構成図である。
【0049】
また、図3は、本発明の3次元光共振器を利用した偏光放射線発生システムの例を示す概略構成図である。
【0050】
図1に示す偏光レーザー発振システムは、CWレーザー発振器、モードロックレーザーパルス発振器を持ち、CWレーザー、又はパルスレーザーなどのレーザーを生成するレーザー光源2と、レーザー光源2から出射されるレーザーの偏光面、ビーム径を整える入射光学系3と、入射光学系3から出射されるレーザーを受光し、調整された光路長に応じて、右円偏光、又は左円偏光を選択して、蓄積する3次元光共振器4と3次元光共振器4内で共振しているレーザーの強度をモニタする共振モニタ器5と、3次元光共振器4内で共振しているレーザーのうち、平面鏡21を透過したレーザーをP偏光、S偏光に分離し、その強度を測定すると共に、その差分値を求めて、ゼロクロスフィードバック信号を生成するゼロクロスフィードバック信号生成器6と3次元光共振器4で選択される右円偏光、又は左円偏光を指定する指示信号を出力する偏光切替スイッチ7と、偏光切替スイッチ7の出力、共振モニタ器5の出力、ゼロクロスフィードバック信号生成器6の出力に基づき、3次元光共振器4の光路長を制御し3次元光共振器4内に右円偏光、又は左円偏光のレーザーを選択的に、蓄積させる共振制御器8とを備えており、偏光切替スイッチ7から出力される指示信号、共振モニタ器5のモニタ結果、ゼロクロスフィードバック信号生成器6から出力されるゼロクロス検出信号などに基づき、共振制御器8によって、レーザー光源2、3次元光共振器4を制御して、3次元光共振器4内に時間幅が30psec以内、ビームサイズが10μm以下、エネルギー強度が1mJ/パルス以上になる、左右どちらかの円偏光大強度パルスレーザーを発生させる。
【0051】
レーザー光源2は、CWレーザーを生成するCWレーザー発振器、パルスレーザーを生成するモードロックレーザーパルス発振器などを備えており、共振制御器8からの指示に基づき、CWレーザー発振器、モードロックレーザーパルス発振器の何れかを起動させて、CWレーザー、又はパルスレーザーなどのレーザーを生成し、入射光学系3に入射させる。
【0052】
入射光学系3は、レーザー光源2から出射されるレーザーを3次元光共振器4に導く複数の平面鏡9と、これら各平面鏡9で規定された光路上に配置され、レーザー光源2から出射されるレーザーのビーム径を整える複数のコリメートレンズ10と、各平面鏡9によって規定された光路上に設置され、レーザーを直線偏光にする偏光ビームスプリッタ11とを備えており、レーザー光源2から出射されるレーザーの偏光面、ビーム径を整えて、3次元光共振器4に入射させる。
【0053】
図2に示す3次元光共振器4は、熱膨張率が小さく、電子ビーム、放射線による損傷を受けにくい材料によって構成され、高エネルギー電子ビーム発生装置の出射路に設けられた衝突チャンバ内に収納可能な大きさに形成される2つのリング部材12、13と、熱膨張率が小さく、電子ビーム、放射線による損傷を受けにくい材料によって構成され、各リング部材12を所定距離だけ並行に離間させる4本の棒部材14と、熱膨張率が小さく、電子ビーム、放射線による損傷を受けにくい材料によって構成され、水平方向に対し、時計方向に45度傾くように、一方のリング部材12に取り付けられる平板15と、熱膨張率が小さく、電子ビーム、放射線による損傷を受けにくい材料によって構成され、平板15に形成された各丸穴に取り付けられる2つの反射鏡保持枠(ステージ)16、17と、熱膨張率が小さく、電子ビーム、放射線による損傷を受けにくい材料によって構成され、水平方向に対し、反時計方向に45度傾くように、他方のリング部材13に取り付けられる平板18と、熱膨張率が小さく、電子ビーム、放射線による損傷を受けにくい材料によって構成され、平板18に形成された各丸穴に取り付けられる2つの反射鏡保持枠(ステージ)19、20とを備えている。
【0054】
さらに3次元光共振器4は、反射率が“0.999”、透過率が“0.001”に設定され、各反射鏡保持枠16、17、19、20のうち、入射光学系3から出射されるレーザーの入射口に配置された反射鏡保持枠16に取り付けられ、入射光学系3から出射されるレーザーを透過させると共に、他方のリング部材13側からのレーザーを反射する平面鏡21と、反射率が“0.999”、透過率が“0.001”に設定され、各反射鏡保持枠16、17、19、20のうち、平面鏡21が設けられたリング部材12と対向するリング部材13の反射鏡保持枠19に設置され、平面鏡21を透過したレーザー、および平面鏡21で反射されたレーザーを反射する平面鏡22と、反射率が“0.999”、透過率が“0.001”に設定され、各反射鏡保持枠16、17、19、20のうち、平面鏡21が設けられたリング部材12の反射鏡保持枠17に設置され、平面鏡22で反射されたレーザーを反射し、電子ビーム通路37上に設定された衝突点で、ビームサイズが10μm以下になるように集光させる凹面鏡23と、反射率が“0.999”、透過率が“0.001”に設定され、各反射鏡保持枠16、17、19、20のうち、凹面鏡23が設けられたリング部材12と対向するリング部材13の反射鏡保持枠20に設置され、凹面鏡23でコリメートされたレーザーを並行なレーザーに戻し、平面鏡21に戻す凹面鏡24と、凹面鏡24と反射鏡保持枠20との間に配置され、共振制御器8から供給される駆動電圧に応じて、変形し、凹面鏡24の位置を調整するピエゾ素子25とを備えている。
【0055】
そして、入射光学系3から出射されるレーザーを取り込み、平面鏡21→平面鏡22→凹面鏡23→凹面鏡24→平面鏡21なる経路で、閉じ込めると共に、ピエゾ素子25によって調整された光路長に応じ、右円偏光、又は左円偏光を選択して、蓄積する。
【0056】
また、共振モニタ器5は3次元光共振器4の平面鏡22を透過したレーザーを反射する平面鏡26と、平面鏡26で反射されたレーザーを受光し、レーザー強度に応じた電圧値を持つモニタ信号(3次元光共振器4内で共振しているレーザーの強度を示す信号)を生成するピンフォトダイオード27とを備えており、3次元光共振器4の平面鏡22を透過したレーザーの強度を測定してモニタ信号(3次元光共振器4内のレーザーが共振しているとき、大きな値となる信号)を生成し、共振制御器8に供給する。
【0057】
また、ゼロクロスフィードバック信号生成器6は3次元光共振器4内で共振しているレーザーのうち、平面鏡21を透過したレーザーを反射させ3次元光共振器4から所定距離、離れた場所に導く複数の平面鏡28と3次元光共振器4から距離に応じた取り付け角度に調整され、最終段の平面鏡28で反射されたレーザーの偏光面を調整するλ/2波長板29と、λ/2波長板29で偏光面が調整されたレーザーをP偏光、S偏光に分離する偏光ビームスプリッタ30と、偏光ビームスプリッタ30で分離されたS偏光側のレーザーを反射する平面鏡31と、平面鏡31で反射されたS偏光側のレーザーを受光し、S偏光側のレーザー強度を示すS偏光強度信号を生成するピンフォトダイオード32と、偏光ビームスプリッタ30で分離されたP偏光側のレーザーを反射する平面鏡33と、平面鏡33で反射されたP偏光側のレーザーを受光し、P偏光側のレーザー強度を示すP偏光強度信号を生成するピンフォトダイオード34と、ピンフォトダイオード32から出力されるS偏光強度信号とピンフォトダイオード34から出力されるP偏光強度信号との差分を演算し、差分信号を生成する差動増幅器35と、差動増幅器35から出力される差分信号がゼロクロスしているかどうか、ゼロクロスしたとき、プラス側からマイナス側にゼロクロスしたか、マイナス側からプラス側にゼロクロスしたかどうかなどを判定し、これらの判定結果を示すゼロクロスフィードバック信号を生成するゼロクロス判定回路36とを備えており3次元光共振器4内で共振しているレーザーのうち、平面鏡21を透過したレーザーを取り込んで、P偏光、S偏光に分離し、その強度を測定すると共に、その差分値を求めて、差分信号がゼロクロスしているかどうか、ゼロクロスしたとき、プラス側からマイナス側にゼロクロスしたか、マイナス側からプラス側にゼロクロスしたかどうかなどを示すゼロクロスフィードバック信号を生成し、共振制御器8に供給する。
【0058】
また、偏光切替スイッチ7は、設定内容に応じて、右円偏光(又は、左円偏光)を指定する指示信号、又は高周波信号発生装置から出力される高周波信号に対応して、右円偏光、左円偏光を交互に指定する指示信号などを生成し、共振制御器8に供給する。
【0059】
共振制御器8は、各種の演算を行うマイクロプロセッサ、又は演算機能が組み込まれたLSIなどが搭載された演算基板を備えており、偏光切替スイッチ7から出力される指示信号、共振モニタ器5から出力されるモニタ信号、ゼロクロスフィードバック信号生成器6から出力されるゼロクロスフィードバック信号に基づき、ランプ状の電圧値、又は3次元光共振器4内に右円偏光、又は左円偏光のレーザーを選択させるのに必要な電圧値の駆動電圧を生成して3次元光共振器4のピエゾ素子25に供給することにより3次元光共振器4の光路長を制御し3次元光共振器4内に右円偏光、又は左円偏光のレーザーを選択的に、蓄積させる。
【0060】
次に、図1に示す概略構成図、図2に示す斜視図を参照しながら、偏光レーザー発振システム1の動作を説明する。
【0061】
偏光レーザー発振システム1の起動スイッチがオンされて、レーザー光源2からCWレーザーなどのレーザーの出射が開始されると、入射光学系3によって、レーザーの偏光面、ビーム径が整えられて、3次元光共振器4の平面鏡21に入射されると共に、平面鏡21を透過したレーザーが平面鏡21→平面鏡22→凹面鏡23→凹面鏡24→平面鏡21なる経路で、閉じ込められる。
【0062】
また、この動作と並行し、共振モニタ器5によって3次元光共振器4の平面鏡22を透過したレーザーの強度が測定されてモニタ信号が生成され、共振制御器8に供給される。
【0063】
また、これらの動作と並行し、ゼロクロスフィードバック信号生成器6によって、3次元光共振器4内で共振しているレーザーのうち、平面鏡21を透過したレーザーが取り込まれて、P偏光、S偏光に分離され、その強度が測定され、その差分値が求められると共に、ゼロクロスしているかどうかが判定されて、ゼロクロスフィードバック信号が生成され、共振制御器8に供給される。
【0064】
また、この動作と並行し、共振制御器8によって、ランプ状に電圧値が高くなる駆動電圧が生成されて、3次元光共振器4内のピエゾ素子25に供給され、3次元光共振器4の光路長が調整される。
【0065】
そして、偏光切替スイッチ7から出力されている指示信号で、右円偏光、又は左円偏光の何れか、例えば右円偏光が指定され、この状況で、ゼロクロスフィードバック信号生成器6によって、右円偏光が検出されたことを示すゼロクロスフィードバック信号が生成され、共振モニタ器5から3次元光共振器4内でレーザーが共振していることを示すモニタ信号が出力されたとき、共振制御器8によって、これが検知されて、駆動電圧の電圧値が固定される。
【0066】
これにより、3次元光共振器4内の光路長がその時点で固定され、3次元光共振器4内で右円偏光のレーザーに対する共振が指定された時間、維持される。
【0067】
また、レーザー光源2からモードロック発振で生成された大強度のパルスレーザーが出射されている場合も、同様な制御が行われて3次元光共振器4内に右円偏光のパルスレーザー(大強度のパルスレーザー)、又は左円偏光のパルスレーザー(大強度のパルスレーザー)が共振、蓄積されると共に、少なくとも0.001秒間、安定的に維持される。
【0068】
このとき、モードロック発振周波数とパルスレーザーの時間輻とによって、パルスレーザーの線幅が決まり、また3次元光共振器4内では、衝突点におけるパルスレーザーのビームサイズが10μm以下であることから、パルスレーザーの時間幅が30psec以内であれば、3次元光共振器4内における衝突点での、エネルギー強度を1mJ/パルス以上にすることができる。
【0069】
また、偏光切替スイッチ7から右円偏光、左円偏光を交互に指定する指示信号が出力されている場合にも、同様な制御が行われて、3次元光共振器4内に右円偏光のパルスレーザー(大強度のパルスレーザー)と、左円偏光のパルスレーザー(大強度のパルスレーザー)とが交互に、共振、蓄積される。
【0070】
このときにも、モードロック発振周波数とパルスレーザーの時間輻とによって、パルスレーザーの線幅が決まり、また3次元光共振器4内では、衝突点におけるパルスレーザーのビームサイズが10μm以下であることから、パルスレーザーの時間幅が30psec以内であれば、3次元光共振器4内における衝突点での、エネルギー強度を1mJ/パルス以上にすることができる。
【0071】
このように、この形態では、レーザー光源2で得られたレーザーを3次元光共振器4に導いて、右偏光、又は左偏光のどちらか一方に共振させることができると共に、偏光切替スイッチ7を操作するだけで、容易に切り替えさせることができる。
【0072】
また、本発明の実施の形態では、レーザー光源2で得られた大強度パルスレーザーを3次元光共振器4に導いて、右偏光、又は左偏光のどちらか一方に共振させることができると共に3次元光共振器4内に設けられた衝突点に、ビームサイズが10μm以下で、エネルギー強度が1mJ/パルス以上になるパルスレーザーを生成させることができる。
【0073】
また、この形態では、レーザー光源2で得られた、時間幅が30psec以内の大強度パルスレーザーを3次元光共振器4に導いて、右偏光、又は左偏光のどちらか一方に共振させることができると共に3次元光共振器4内に設けられた衝突点に、ビームサイズが10μm以下で、エネルギー強度が1mJ/パルス以上になるパルスレーザーを生成させることができる。
【0074】
また、この形態では、レーザー光源2で得られた大強度パルスレーザーを3次元光共振器4に導いて、3次元光共振器4内に設けられた衝突点に、ビームサイズが10μm以下で、エネルギー強度が1mJ/パルス以上になる右偏光パルスレーザー、左偏光パルスレーザーを交互に生成させることができる。
【0075】
図3は、本発明の3次元光共振器を利用した偏光放射線発生システムの例を示す概略構成図である。なお、この図において、図1、図2と対応する部分には、同じ符号が付してある。
【0076】
この図に示す偏光放射線発生システム51は、システムを同期させるのに必要な高周波信号を発生する高周波信号発生装置52と、加速器を持ち、高周波信号発生装置52から出力される高周波信号と同期した高周波電圧を使用して、電子を加速させて、電子ビームを出射する高エネルギー電子ビーム発生装置53と、レーザー光源、モードロックレーザー発振器などを持ち、CW発振で得られたレーザー又は高周波信号発生装置52から出力される高周波信号と同期したパルスレーザーを生成する偏光レーザー発振システム1と、高エネルギー電子ビーム発生装置53から出射される電子ビームと3次元光共振器4内のレーザーとの衝突角が8−20度の範囲になり、“1μm”以内の衝突精度で衝突するように、偏光レーザー発振システム1を構成する3次元光共振器4が収納され、3次元光共振器4内のレーザーと衝突させたとき生じる逆コンプトン散乱によって放射線を生成させる衝突チャンバ54と、衝突チャンバ54で生成された放射線を取り出すとともに、放射線量を測定する放射線検出装置55とを備えている。
【0077】
そして、高周波信号発生装置52から出力される高周波信号によって、高エネルギー電子ビーム発生装置53と、偏光レーザー発振システム1とを完全に同期させながら、偏光レーザー発振システム1の3次元光共振器4内に“100MHz”以上の超高繰り返しの特性を有する左円偏光特性(または、左円偏光特性)を持ち、パルスの時間幅が“30psec”以内であり、ビームサイズが“10μm”以下の大強度偏光パルスレーザーを発生させるとともに、高エネルギー電子ビーム発生装置53から規格化エミッタンス“10mmmrad”以下の高品質特性を有する高エネルギーの電子ビームを出射させ、衝突チャンバ54内でこれら高エネルギーの電子ビームと、大強度偏光パルスレーザーとを衝突させる。
【0078】
これにより、逆コンプトン散乱によって、エネルギーが“0.25keV”以上になる極短パルス偏光放射線を発生させ、放射線検出装置55によって、これを取り出させ、外部に導かせるとともに、外部に導かれた放射線の放射線量を測定させ、表示器(図示は省略する)などに表示させることができる。
【0079】
このように、この形態では、3次元光共振器4内に設定された衝突点で、高エネルギー電子ビーム発生装置53から出射される高エネルギー電子ビームと、3次元光共振器4内の衝突点に生成された、ビームサイズが“10μm”以下で、エネルギー強度が“1mJ/パルス”以上である右偏光のパルスレーザー又は左偏光のパルスレーザーとを衝突させて、極短パルス偏光放射線を発生させることができる。
【0080】
また、この形態では、3次元光共振器4内に設定された衝突点で、高エネルギー電子ビーム発生装置53から出射される規格化エミッタンス“10mmmrad”以下の高品質特性を有する高エネルギー電子ビームと、3次元光共振器4内の衝突点に生成された、ビームサイズが“10μm”以下で、エネルギー強度が“1mJ/パルス”以上である右偏光のパルスレーザー又は左偏光のパルスレーザーとを、ほぼ正面衝突に近い衝突角度“8−20度”の範囲で、かつ“1μm”以内の衝突精度で衝突させて、エネルギーが“0.25keV”以上の特性を有する極短パルス偏光放射線を発生させることができる。
【0081】
また、この形態では、3次元光共振器4内に設定された衝突点で、高エネルギー電子ビーム発生装置53から出射される規格化エミッタンス“10mmmrad”以下の高品質特性を有する高エネルギー電子ビームと、3次元光共振器4内の衝突点に生成された、ビームサイズが“10μm”以下で、エネルギー強度が“1mJ/パルス”以上であり、“100MHz”以上の超高繰り返しの特性を有する左右どちらかの円偏光を有する大強度偏光のパルスレーザーとを、ほぼ正面衝突に近い衝突角度“8−20度”の範囲で、かつ“1μm”以内の衝突精度で衝突させて、エネルギーが“0.25keV”以上の特性を有する極短パルス偏光放射線を発生させることができる。
【0082】
また、この形態では、3次元光共振器4内に設定された衝突点で、高エネルギー電子ビーム発生装置53から出射される規格化エミッタンス“10mmmrad”以下の高品質特性を有する高エネルギー電子ビームと、3次元光共振器4内の衝突点に生成された、ビームサイズが“10μm”以下で、エネルギー強度が“1mJ/パルス”以上である右偏光のパルスレーザー又は左偏光のパルスレーザーとを、ほぼ正面衝突に近い衝突角度“8−20度”の範囲で、かつ“1μm”以内の衝突精度で衝突させて、エネルギーが“0.25keV”以上の特性を有する極短パルス偏光状のX線又はγ線を発生させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、左右円偏光性を自由に、選択し得る偏光レーザー又は偏光放射線の光共振器に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0084】
1:偏光レーザー発振システム
2:レーザー光源
3:入射光学系
4:3次元光共振器
5:共振モニタ器
6:ゼロクロスフィードバック信号生成器
7:偏光切替スイッチ
8:共振制御器
9:平面鏡
10:コリメートレンズ
11:偏光ビームスプリッタ
12:リング部材
13:リング部材
14:棒部材
15:平板
16:反射鏡保持枠
17:反射鏡保持枠
18:平板
19:反射鏡保持枠
20:反射鏡保持枠
21:平面鏡
22:平面鏡
23:凹面鏡
24:凹面鏡
25:ピエゾ素子(圧電素子)
26:平面鏡
27:ピンフォトダイオード
28:平面鏡
29:λ/2波長板
30:偏光ビームスプリッタ
31:平面鏡
32:ピンフォトダイオード
33:平面鏡
34:ピンフォトダイオード
35:差動増幅器
36:ゼロクロス判定回路
37:電子ビーム通路
51:偏光放射線発生システム
52:高周波信号発生装置
53:高エネルギー電子ビーム発生装置
54:衝突チャンバ
55:放射線検出装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右円偏光性を自由に選択し得る偏光レーザー又は偏光放射線を発振させる光共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、偏光レーザーを発振させる光発振器として、レーザー発生器で得られたレーザーを光共振器に導いて共振させることにより偏光レーザーを発生させる光発振器が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の光発振器においては、レーザーの円偏光性を分離することができないことから、偏光子、ファラデー回転子、λ/4波長板などを使用して、円偏光を切り替えなければならず、調整作業が煩雑であるという問題があった。
【0004】
また、従来の光発振器では、偏光子、ファラデー回転子、λ/4波長板などを各々、調整して右円偏光、左円偏光を切り替えなければならないことから、切り替え速度を速くすることが難しいのみならず、純粋な円偏光レーザーを保証することが困難であるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記した従来の光発振器の課題に鑑みて、レーザー光源で得られたレーザーを、右偏光又は左偏光のどちらか一方に共振させると共に、左右どちらにも容易に切り替え可能な3次元光共振器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明は、立体的に配置された1対の平面鏡と1対の凹面鏡とを備え、入射光学系から出射されるレーザーを取り込み、当該レーザーを圧電素子によって長さが調整された光路上を周回させながら前記光路の光路長に応じて右円偏光又は左円偏光を選択することによってレーザーを共振させるように形成された3次元光共振器を提供するものである。
【0007】
ここで、前記レーザーは、CWレーザー発振器、モードロックレーザーパルス発振器の少なくとも何れかを持ち、CWレーザー形式又はパルスレーザー形式のレーザーを生成するレーザー光源から出射されるレーザーの偏光面とビーム径を整える前記入射光学系に入射される。
【0008】
そして、本発明の3次元共振器内部で共振しているレーザーの強度をモニタする共振モニタ器を備える。また、内部で共振しているレーザーのうち、前記平面鏡および前記凹面鏡の何れかを透過したレーザーをP偏光成分とS偏光成分とに分離し、その強度を測定すると共に、その差分値を求めて、ゼロクロスフィードバック信号を生成するゼロクロスフィードバック信号生成器を備える。
【0009】
さらに、前記選択される右円偏光又は左円偏光を指定する指示信号を出力する偏光切替スイッチと、前記偏光切替スイッチの出力、前記共振モニタ器の出力、前記ゼロクロスフィードバック信号生成器の出力に基づき、前記3次元光共振器に設けられた前記圧電素子の駆動電圧を制御して、前記光路長を調整させ、前記3次元光共振器内に右円偏光、又は左円偏光のレーザーを選択的に蓄積させる共振制御器と、を備えるのである。
【0010】
本発明は、さらに、前記3次元光共振器内に設定された衝突点において、ビームサイズが“10μm”以下にされ、エネルギー強度が“1mJ/パルス”以上になる右偏光のパルスレーザー又は左偏光のパルスレーザーと前記高エネルギー電子ビーム発生装置から出射される高エネルギー電子ビームとを衝突させ、極短パルス偏光放射線を生成させることを特徴とする3次元光共振器を提供するものである。
【0011】
ここで、前記極短パルス偏光放射線は、その放射線量が測定される。また、前記衝突点において、前記高エネルギー電子ビーム発生装置から出射される規格化エミッタンス“10mmmrad”以下の高品質特性を有する高エネルギー電子ビームと、前記3次元光共振器内のパルスレーザーとを衝突角度“8−20度”の範囲で、かつ“1μm”以内の衝突精度で衝突させ、エネルギーが“0.25keV”以上の特性を有する極短パルス偏光放射線を発生させ、外部に取り出すようにしている。そして、前記極短パルス偏光放射線は、X線又はγ線である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る3次元光共振器においては、レーザー光源で得られたレーザー又は放射線を右偏光又は左偏光のどちらか一方に共振させると共に、左右どちらにも容易に切り替え可能にしたことにより、従来の光発振器が有していた課題であるレーザーの円偏光性を分離できないことによる偏光子、ファラデー回転子、λ/4波長板などを使用して円偏光を切り替える必要性をなくすると共に、純粋な円偏光レーザーを得ることを実現したのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の3次元光共振器を利用した偏光レーザー発振システムの例を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る3次元光共振器の詳細な構成例を示す。
【図3】本発明の3次元光共振器を利用した偏光放射線発生システムの例を示す概略構成図である。
【図4】本願発明において提案する非平面4枚ミラーリング光共振器の構成図である。
【図5】予備実験テストで使用したシステムのレイアウトを示す概略構成図である。
【図6】入射したレーザーが線形偏光を有する場合に観察できる典型的な信号の一例を示すグラフである。
【図7】R1=0.99、T1=0.01、R=0.98であるときにおける、関数“F(δ)=Er/Ei”をプロットしたものである。
【図8】R1=0.99、T1=0.01、R=0.98、φgeo=−0.0575radにし、数式11の列ベクトルで示される反射波“Er”の成分“Esr”、“Epr”の差分信号“Esr−Epr”と、加算信号“Esr+Epr”とを計算して、プロットしたものである。
【図9】R1=0.999、T1=0.001、R=0.998、“φgeo=−0.0575rad”にし、数式11の列ベクトルで示される反射波“Er”の成分“Esr”、“Epr”の差分信号“Esr−Epr”と、加算信号“Esr+Epr”とを計算して、プロットしたものである。
【図10】本願発明者が作成した実験装置の概要を示す構成図である。
【図11】本発明の3次元光共振器を利用した実験装置の共鳴点近傍で観測された信号を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.発明の背景
高精度な光共振器は、さまざまな科学分野で使用されている。レーザー発振器からのレーザービームを光共振器に入射させることによって、ビームの強度を数段階上げることができる。加速器物理学の分野では、この技術は、レーザーコンプトン散乱方式に基づく小型のX線光源を開発するために必要とされる。
【0015】
光共振器の共鳴は、鋭いピークに維持する必要があることから、サーボシステムの移動方向を制御するために使用可能な共鳴曲線から差分信号を得るためのさまざまな方式が開発されている。
【0016】
広く利用されている方式の一つに、共鳴のピークの外側の周波数側波帯を導入し、反射波の位相シフトを測定するPound-Drever-Hall法がある。別の方式としてのTilt-locking methodでは、基本的なモードと、より高い横モードとの間の干渉を利用して、反射波の位相シフトを検出する。また、Hansch-Couillaud(HC)法は、光共振器の内部に、複屈折材を載置させて、光共振器を共鳴偏光依存構造にし、共鳴で起きた位相シフトに起因する反射波の偏光変化を測定する。角度をつけて設置したミラーを使用するマルチミラー光共振器システムにおいては、たとえ2枚ミラーシステムであっても、ミラーの応力によって、線形偏光依存構造の特性が起こり得るため、HC法の変形は、付加的材料なくして、実現することができる。
【0017】
3次元(非平面)構成の4枚ミラーリング光共振器は、光共振器の内部の1点に微小スポットを生成することができる。レーザーコンプトンX線源を使用すれば、4枚ミラーリング光共振器で、有効なレーザーエレクトロン交差を提供可能であり、生成X線性能(または収束性能)を改善することが可能となる。
【0018】
非平面光共振器は、通常、3次元光路における画像の回転により、円偏光依存特性を有する。本願発明者は、この円偏光依存特性を利用して、非平面光共振器の共鳴から差分信号を得るための新しい方法を提案する。この方法は、円偏光依存を有するHC法の変形である。
【0019】
2.実験の装置
2.1.非平面光共振器の概略
図4は、本願発明に係る非平面4枚ミラーリング光共振器の構成を示す。光路は、表面が辺“a”、“a”、“b”を有する二等辺三角形である左右対称四面体の辺に沿っている。辺“a”は420mm、辺“b”は100mmである。各頂点“P1”、“P2”、“P3”、“P4”にある各ミラーは、この順に閉光共振器を形成する。頂点“P1”と頂点“P2”のミラーは平面鏡であり、頂点“P3”と頂点“P4”のミラーは凹形鏡である。この実験で使用した各ミラー(平面鏡、凹形鏡)は全て、反射率“99%”、透過率“1%”である。点“Q1”は頂点“P1”と頂点“P3”の中点である。点“Q2”は、頂点“P2”と頂点“P4”の中点である。
【0020】
2.2.幾何学的位相の影響
非平面光共振器の独自性は、円偏光の共鳴の縮退、分離にあることから、次に述べ手順で、幾何学的位相の影響を調べた。
【0021】
頂点“P2”での影響について、単位のベクトル“k1”およびベクトル“k2”は各々、頂点“P1”から頂点“P2”への光線および頂点“P2”から頂点“P3”の光線(入射光)である。
【数1】
【0022】
ここで、頂点“P2”および頂点“P3”における反射光の通常のベクトル“n1”およびベクトル“n2”は、次式で表すことができる。
【数2】
【0023】
そして、入射光および反射光を含む面は、単位の各ベクトル“k1”、“k2”と、通常のベクトル“n1”、“n2”との定義を使用し、次式に示すベクトル“a1”、“a2”で表すことができる。
【数3】
【0024】
ここで、ベクトル“a1”と、ベクトル“a2”との間の角度“α12”は、4枚ミラー光共振器の一辺で起きたイメージの回転であり、角度“α12”は次の式で算出することができる。
【数4】
【0025】
そして、このような非平面光共振器では、各反射点におけるイメージの回転が累積されることから、非平面光共振器内の光路を1周するとき、全体的な効果は角度“4α12”(以後、適時、これを幾何学的位相“φgeo”と呼ぶ)となる。また、イメージの回転は、回転偏光波の場合における位相シフトに相当する。また、右偏光および左偏光の位相シフトの符号は逆であるため、二つの円偏光の間の共鳴の減退を分割する。
【0026】
例えば、角度“4α12”は、本願発明において提案する3次元共振器においては、“−0.0575rad(2πの整数は無視する)”である。
【0027】
2.3.光共振器の共鳴の測定
本願発明者は、予備実験テストを行って、本願発明において提案する光共振器の偏光特性を調べた。この際、作成したシステムのレイアウトを図5に示す。
【0028】
この際、シングルモードCWレーザー(イノライト製、プロメーテウス・モデル)を光源として使用した。偏光ビームスプリッタ(PBS)で、入射するレーザー光の偏光を弁別した。入射レーザーが、光共振器、固有のモードに適合するようにレンズ(matching)対を配置した。光共振器(3D-4mirror cavity)に対する入射レーザーの入射位置と角度は、一対の平面鏡で調整した。光共振器鏡の一方(concave)は、ピエゾ素子(piezo)を持つ圧電制御ステージ上に装着して、光共振器の長さ(光路長)を変更できるようにした。光共振器の共鳴は、ピエゾ素子にランプ電圧(スロープ状に順次、高くなる電圧)を印加しつつ、ピンフォトダイオード(PD)で光共振器の透過レーザーを測定することによって判定した。
【0029】
図6は、入射したレーザーが線形偏光を有する場合に観察できる典型的な信号を示す。ピエゾ素子を使って光共振器の光路長を走査させながら、光共振器の透過レーザーをフォトダイオードで測定したときのグラフである。上の図は、自由スペクトル範囲の全期間を示す。最も高いピークは、基本的な横モードに相当する。下の図は、基本的なモードのピークのうちの一つを拡大したものである。
【0030】
この図6では、2つある共鳴ピークは、一方が右偏光に相当し、他方が左偏光に相当するダブルピーク構造になっている。入射したレーザーの線形偏光が2つの円偏光を同じ量だけ含んであるので、光共振器は、両共鳴条件に基づいて、わずかに異なる位相で共鳴する。
【0031】
3.ロックする技術の方式
3.1.計算
3.1.1.反射波の説明
光共振器では、各共鳴鏡における反射波の複素共振“Er”は、次のように記述できる。
【数5】
ここで、“Ei”は、入射波の複素共振、“R1”および“T1”は光共振器の入出射口に配置された共鳴鏡の反射率および透過率である。“R”は、“F=π/(1−R)”で定義された光共振器のフィネス“(F)”との関連する値です。ここで、“R”は、4枚ミラー光共振器の場合と同じ精度を有する2枚ミラー光共振器で使用される共振鏡の反射率として考えることができる。また“δ”は、共鳴条件から導かれる位相差である。
【0032】
図7は、R1=0.99、T1=0.01、R=0.98であるときにおける、関数“F(δ)=Er/Ei”をプロットしたものである。上の線は、位相差“δ”の実数部分を示し、下の線は位相差“δ”の虚数部分を示す。
【0033】
3.1.2.偏光の説明
また、このような光共振器に対し、ジョーンズマトリックスを使用すると、波の偏光は次式を使用して、説明できる。
【数6】
ここで、列ベクトル“E”のそれぞれの要素“Ep”、“Es”は各々、P偏光、S偏光を表す。電界は、テーブルに対して平行、且つ垂直である。波がテーブル上に水平に載置した偏光ビームスプリッタ(PBS)で分波されれば、二つの要素は別々に測定することができる。
【0034】
円偏光波は次のように記述できる。
【数7】
【0035】
ここで、列ベクトル“ER”、“EL”は、それぞれ単位共振の右偏光、左偏光である。非平面光共振器の固有状態は円偏光に対応するので、入射波は、右偏光の単位共振“ER”と、左偏光の単位共振“EL”との重ね合わせとして好都合に記述できる。また、テーブル面に対して45度回転させた直線偏光の単位共振である列ベクトル“E45”は、次のように記述できる。
【数8】
【0036】
3.2.提案するシステムの方式
上述した2.2の章で説明したように、付加的幾何学的位相により、右偏光および左偏光の共鳴条件は、反対の符号にシフトする。反射波の右偏光成分“ErR”、左偏光成分“ErL”は、付加的幾何学位相“φgeo”を用いて、次のように表わすことができる。
【数9】
【数10】
【0037】
ここで、数式8が入射波の場合、反射波の右偏光成分“ErR”、左偏光成分“ErL”は、光共振器内で、相互に作用し合う。結果生成される重ね合わせの反射波“Er”は次式で表わされる。
【数11】
【0038】
図8は、“R1=0.99”、“T1=0.01”、“R=0.98”、“φgeo=−0.0575rad”にし、この数式11の列ベクトルで示される反射波“Er”の成分“Esr”、“Epr”の差分信号“Esr−Epr”と、加算信号“Esr+Epr”とを計算して、プロットしたものである。但し、図8では、図9との関係を分かり易くするため、差分信号“Esr−Epr”として、“PD1−PD2”を表示し、加算信号“Esr+Epr”として、“PD1+PD2”を表示してある。
【0039】
これは、本願発明のテスト対象となる光共振器の構成に相当するものであり、“Esr−Epr”は本願発明において提案している光共振器をロックするための差分信号である。
【0040】
さらに、より精度を上げた場合の計算を図9に示す。これは、R1=0.999、T1=0.001、R=0.998、“φgeo=−0.0575radにしたときの計算例である。
【0041】
図8及び図9の記載から明らかなように、“PD1−PD2”で表示されている差分信号“Esr−Epr”は、共鳴のピークでゼロと交差する。さらに、ゼロと交差する差分信号“Esr−Epr”の符号(マイナスからプラスか、プラスからマイナスか)を選択することによって、右円偏光および左円偏光のどちらについても、円偏光共鳴の一つでシステムをロックすることが可能になる。
【0042】
3.3.実験
計算を確認するため、本願発明者は、図10に示す装置を使って実験を行った。直線偏光波を3次元光共振器“3D-cavity”に入射させた。入射出口に配置された平面鏡“reflection”からの反射光(3次元光共振器“3D-cavity”内のレーザービーム)を偏光ビームスプリッタ“PBS”および2つのピンフォトダイオード“PD1”、“PD2”から成る検知システム“detection system”に導いた。
【0043】
ピンフォトダイオード“PD1”は、偏光ビームスプリッタ“PBS”の基準として、P偏光の強度“Ep”をモニタし、ピンフォトダイオード“PD2”はS偏光“Es”の強度をモニタした。各ピンフォトダイオード“PD1”、“PD2”からの信号は差分増幅器“differential amplifier”に供給し、差動電圧“Es−Ep”を出力信号“output”として出力した。
【0044】
検出システム“detection system”の入力側にあるλ/2波長板“λ/2”の角度を調整して、入射するレーザービームの偏光面と、検出システム“detection system”の偏光面とを整合させ、λ/2波長板“λ/2”と、3次元光共振器“3D-cavity”との距離が離れていても、2つのピンフォトダイオード“PD1”、“PD2”の出力がバランスするようにした。
【0045】
この状況は、偏光ビームスプリッタ“PBS”の入力側に入射するレーザービームが、数式8として表わされることに相当する。また、ピンフォトダイオード“PD0”を使って、3次元光共振器“3D-cavity”からの透過光(3次元光共振器“3D-cavity”内のレーザービーム)の強度を測定し、3次元光共振器“3D-cavity”の共鳴状態をモニタした。
【0046】
本願発明者は、ピエゾ素子“piezo”で位置が調整される圧電制御ミラーを使って3次元光共振器“3D-cavity”の光路長をスキャンさせながら、差分増幅器“differential amplifier”の出力信号“output”を測定した。3次元光共振器“3D-cavity”の共鳴点近傍で観測された信号を図11に示す。一番下の線は、透過光を測定したピンフォトダイオード“PD0”の信号である。これは、3次元光共振器“3D-cavity”の共鳴点を示す。中央の線は、差分増幅器“differential amplifier”の出力信号“output”であり、この出力信号の形状は図8で計算した結果と一致する。差分増幅器“differential amplifier”の出力信号“output”は、2つの共鳴点で各々、ゼロと交差し、それぞれの円偏光ピークの近傍で異なる符号となった。これにより、差分増幅器“differential amplifier”の出力信号“output”が各ゼロ交差点の何れか一方と一致するように、3次元光共振器“3D-cavity”の光路長を調整すれば、3次元光共振器“3D-cavity”が持つ2つの共鳴ピークのどちらか1つにロックさせることができる。
【0047】
本発明では、このようなロック法を使用して、3次元光共振器“3D-cavity”が持つ2つの共鳴ピークのうちの1つにロックさせることにより、3次元光共振器“3D-cavity”を右偏光、左偏光のどちらでも、共鳴させ得るようにしている。
【0048】
《本発明の実施の形態》
図1は、上述した原理を用いる本発明による光共振器を利用した偏光レーザー発振システムの例を示す概略構成図である。
【0049】
また、図3は、本発明の3次元光共振器を利用した偏光放射線発生システムの例を示す概略構成図である。
【0050】
図1に示す偏光レーザー発振システムは、CWレーザー発振器、モードロックレーザーパルス発振器を持ち、CWレーザー、又はパルスレーザーなどのレーザーを生成するレーザー光源2と、レーザー光源2から出射されるレーザーの偏光面、ビーム径を整える入射光学系3と、入射光学系3から出射されるレーザーを受光し、調整された光路長に応じて、右円偏光、又は左円偏光を選択して、蓄積する3次元光共振器4と3次元光共振器4内で共振しているレーザーの強度をモニタする共振モニタ器5と、3次元光共振器4内で共振しているレーザーのうち、平面鏡21を透過したレーザーをP偏光、S偏光に分離し、その強度を測定すると共に、その差分値を求めて、ゼロクロスフィードバック信号を生成するゼロクロスフィードバック信号生成器6と3次元光共振器4で選択される右円偏光、又は左円偏光を指定する指示信号を出力する偏光切替スイッチ7と、偏光切替スイッチ7の出力、共振モニタ器5の出力、ゼロクロスフィードバック信号生成器6の出力に基づき、3次元光共振器4の光路長を制御し3次元光共振器4内に右円偏光、又は左円偏光のレーザーを選択的に、蓄積させる共振制御器8とを備えており、偏光切替スイッチ7から出力される指示信号、共振モニタ器5のモニタ結果、ゼロクロスフィードバック信号生成器6から出力されるゼロクロス検出信号などに基づき、共振制御器8によって、レーザー光源2、3次元光共振器4を制御して、3次元光共振器4内に時間幅が30psec以内、ビームサイズが10μm以下、エネルギー強度が1mJ/パルス以上になる、左右どちらかの円偏光大強度パルスレーザーを発生させる。
【0051】
レーザー光源2は、CWレーザーを生成するCWレーザー発振器、パルスレーザーを生成するモードロックレーザーパルス発振器などを備えており、共振制御器8からの指示に基づき、CWレーザー発振器、モードロックレーザーパルス発振器の何れかを起動させて、CWレーザー、又はパルスレーザーなどのレーザーを生成し、入射光学系3に入射させる。
【0052】
入射光学系3は、レーザー光源2から出射されるレーザーを3次元光共振器4に導く複数の平面鏡9と、これら各平面鏡9で規定された光路上に配置され、レーザー光源2から出射されるレーザーのビーム径を整える複数のコリメートレンズ10と、各平面鏡9によって規定された光路上に設置され、レーザーを直線偏光にする偏光ビームスプリッタ11とを備えており、レーザー光源2から出射されるレーザーの偏光面、ビーム径を整えて、3次元光共振器4に入射させる。
【0053】
図2に示す3次元光共振器4は、熱膨張率が小さく、電子ビーム、放射線による損傷を受けにくい材料によって構成され、高エネルギー電子ビーム発生装置の出射路に設けられた衝突チャンバ内に収納可能な大きさに形成される2つのリング部材12、13と、熱膨張率が小さく、電子ビーム、放射線による損傷を受けにくい材料によって構成され、各リング部材12を所定距離だけ並行に離間させる4本の棒部材14と、熱膨張率が小さく、電子ビーム、放射線による損傷を受けにくい材料によって構成され、水平方向に対し、時計方向に45度傾くように、一方のリング部材12に取り付けられる平板15と、熱膨張率が小さく、電子ビーム、放射線による損傷を受けにくい材料によって構成され、平板15に形成された各丸穴に取り付けられる2つの反射鏡保持枠(ステージ)16、17と、熱膨張率が小さく、電子ビーム、放射線による損傷を受けにくい材料によって構成され、水平方向に対し、反時計方向に45度傾くように、他方のリング部材13に取り付けられる平板18と、熱膨張率が小さく、電子ビーム、放射線による損傷を受けにくい材料によって構成され、平板18に形成された各丸穴に取り付けられる2つの反射鏡保持枠(ステージ)19、20とを備えている。
【0054】
さらに3次元光共振器4は、反射率が“0.999”、透過率が“0.001”に設定され、各反射鏡保持枠16、17、19、20のうち、入射光学系3から出射されるレーザーの入射口に配置された反射鏡保持枠16に取り付けられ、入射光学系3から出射されるレーザーを透過させると共に、他方のリング部材13側からのレーザーを反射する平面鏡21と、反射率が“0.999”、透過率が“0.001”に設定され、各反射鏡保持枠16、17、19、20のうち、平面鏡21が設けられたリング部材12と対向するリング部材13の反射鏡保持枠19に設置され、平面鏡21を透過したレーザー、および平面鏡21で反射されたレーザーを反射する平面鏡22と、反射率が“0.999”、透過率が“0.001”に設定され、各反射鏡保持枠16、17、19、20のうち、平面鏡21が設けられたリング部材12の反射鏡保持枠17に設置され、平面鏡22で反射されたレーザーを反射し、電子ビーム通路37上に設定された衝突点で、ビームサイズが10μm以下になるように集光させる凹面鏡23と、反射率が“0.999”、透過率が“0.001”に設定され、各反射鏡保持枠16、17、19、20のうち、凹面鏡23が設けられたリング部材12と対向するリング部材13の反射鏡保持枠20に設置され、凹面鏡23でコリメートされたレーザーを並行なレーザーに戻し、平面鏡21に戻す凹面鏡24と、凹面鏡24と反射鏡保持枠20との間に配置され、共振制御器8から供給される駆動電圧に応じて、変形し、凹面鏡24の位置を調整するピエゾ素子25とを備えている。
【0055】
そして、入射光学系3から出射されるレーザーを取り込み、平面鏡21→平面鏡22→凹面鏡23→凹面鏡24→平面鏡21なる経路で、閉じ込めると共に、ピエゾ素子25によって調整された光路長に応じ、右円偏光、又は左円偏光を選択して、蓄積する。
【0056】
また、共振モニタ器5は3次元光共振器4の平面鏡22を透過したレーザーを反射する平面鏡26と、平面鏡26で反射されたレーザーを受光し、レーザー強度に応じた電圧値を持つモニタ信号(3次元光共振器4内で共振しているレーザーの強度を示す信号)を生成するピンフォトダイオード27とを備えており、3次元光共振器4の平面鏡22を透過したレーザーの強度を測定してモニタ信号(3次元光共振器4内のレーザーが共振しているとき、大きな値となる信号)を生成し、共振制御器8に供給する。
【0057】
また、ゼロクロスフィードバック信号生成器6は3次元光共振器4内で共振しているレーザーのうち、平面鏡21を透過したレーザーを反射させ3次元光共振器4から所定距離、離れた場所に導く複数の平面鏡28と3次元光共振器4から距離に応じた取り付け角度に調整され、最終段の平面鏡28で反射されたレーザーの偏光面を調整するλ/2波長板29と、λ/2波長板29で偏光面が調整されたレーザーをP偏光、S偏光に分離する偏光ビームスプリッタ30と、偏光ビームスプリッタ30で分離されたS偏光側のレーザーを反射する平面鏡31と、平面鏡31で反射されたS偏光側のレーザーを受光し、S偏光側のレーザー強度を示すS偏光強度信号を生成するピンフォトダイオード32と、偏光ビームスプリッタ30で分離されたP偏光側のレーザーを反射する平面鏡33と、平面鏡33で反射されたP偏光側のレーザーを受光し、P偏光側のレーザー強度を示すP偏光強度信号を生成するピンフォトダイオード34と、ピンフォトダイオード32から出力されるS偏光強度信号とピンフォトダイオード34から出力されるP偏光強度信号との差分を演算し、差分信号を生成する差動増幅器35と、差動増幅器35から出力される差分信号がゼロクロスしているかどうか、ゼロクロスしたとき、プラス側からマイナス側にゼロクロスしたか、マイナス側からプラス側にゼロクロスしたかどうかなどを判定し、これらの判定結果を示すゼロクロスフィードバック信号を生成するゼロクロス判定回路36とを備えており3次元光共振器4内で共振しているレーザーのうち、平面鏡21を透過したレーザーを取り込んで、P偏光、S偏光に分離し、その強度を測定すると共に、その差分値を求めて、差分信号がゼロクロスしているかどうか、ゼロクロスしたとき、プラス側からマイナス側にゼロクロスしたか、マイナス側からプラス側にゼロクロスしたかどうかなどを示すゼロクロスフィードバック信号を生成し、共振制御器8に供給する。
【0058】
また、偏光切替スイッチ7は、設定内容に応じて、右円偏光(又は、左円偏光)を指定する指示信号、又は高周波信号発生装置から出力される高周波信号に対応して、右円偏光、左円偏光を交互に指定する指示信号などを生成し、共振制御器8に供給する。
【0059】
共振制御器8は、各種の演算を行うマイクロプロセッサ、又は演算機能が組み込まれたLSIなどが搭載された演算基板を備えており、偏光切替スイッチ7から出力される指示信号、共振モニタ器5から出力されるモニタ信号、ゼロクロスフィードバック信号生成器6から出力されるゼロクロスフィードバック信号に基づき、ランプ状の電圧値、又は3次元光共振器4内に右円偏光、又は左円偏光のレーザーを選択させるのに必要な電圧値の駆動電圧を生成して3次元光共振器4のピエゾ素子25に供給することにより3次元光共振器4の光路長を制御し3次元光共振器4内に右円偏光、又は左円偏光のレーザーを選択的に、蓄積させる。
【0060】
次に、図1に示す概略構成図、図2に示す斜視図を参照しながら、偏光レーザー発振システム1の動作を説明する。
【0061】
偏光レーザー発振システム1の起動スイッチがオンされて、レーザー光源2からCWレーザーなどのレーザーの出射が開始されると、入射光学系3によって、レーザーの偏光面、ビーム径が整えられて、3次元光共振器4の平面鏡21に入射されると共に、平面鏡21を透過したレーザーが平面鏡21→平面鏡22→凹面鏡23→凹面鏡24→平面鏡21なる経路で、閉じ込められる。
【0062】
また、この動作と並行し、共振モニタ器5によって3次元光共振器4の平面鏡22を透過したレーザーの強度が測定されてモニタ信号が生成され、共振制御器8に供給される。
【0063】
また、これらの動作と並行し、ゼロクロスフィードバック信号生成器6によって、3次元光共振器4内で共振しているレーザーのうち、平面鏡21を透過したレーザーが取り込まれて、P偏光、S偏光に分離され、その強度が測定され、その差分値が求められると共に、ゼロクロスしているかどうかが判定されて、ゼロクロスフィードバック信号が生成され、共振制御器8に供給される。
【0064】
また、この動作と並行し、共振制御器8によって、ランプ状に電圧値が高くなる駆動電圧が生成されて、3次元光共振器4内のピエゾ素子25に供給され、3次元光共振器4の光路長が調整される。
【0065】
そして、偏光切替スイッチ7から出力されている指示信号で、右円偏光、又は左円偏光の何れか、例えば右円偏光が指定され、この状況で、ゼロクロスフィードバック信号生成器6によって、右円偏光が検出されたことを示すゼロクロスフィードバック信号が生成され、共振モニタ器5から3次元光共振器4内でレーザーが共振していることを示すモニタ信号が出力されたとき、共振制御器8によって、これが検知されて、駆動電圧の電圧値が固定される。
【0066】
これにより、3次元光共振器4内の光路長がその時点で固定され、3次元光共振器4内で右円偏光のレーザーに対する共振が指定された時間、維持される。
【0067】
また、レーザー光源2からモードロック発振で生成された大強度のパルスレーザーが出射されている場合も、同様な制御が行われて3次元光共振器4内に右円偏光のパルスレーザー(大強度のパルスレーザー)、又は左円偏光のパルスレーザー(大強度のパルスレーザー)が共振、蓄積されると共に、少なくとも0.001秒間、安定的に維持される。
【0068】
このとき、モードロック発振周波数とパルスレーザーの時間輻とによって、パルスレーザーの線幅が決まり、また3次元光共振器4内では、衝突点におけるパルスレーザーのビームサイズが10μm以下であることから、パルスレーザーの時間幅が30psec以内であれば、3次元光共振器4内における衝突点での、エネルギー強度を1mJ/パルス以上にすることができる。
【0069】
また、偏光切替スイッチ7から右円偏光、左円偏光を交互に指定する指示信号が出力されている場合にも、同様な制御が行われて、3次元光共振器4内に右円偏光のパルスレーザー(大強度のパルスレーザー)と、左円偏光のパルスレーザー(大強度のパルスレーザー)とが交互に、共振、蓄積される。
【0070】
このときにも、モードロック発振周波数とパルスレーザーの時間輻とによって、パルスレーザーの線幅が決まり、また3次元光共振器4内では、衝突点におけるパルスレーザーのビームサイズが10μm以下であることから、パルスレーザーの時間幅が30psec以内であれば、3次元光共振器4内における衝突点での、エネルギー強度を1mJ/パルス以上にすることができる。
【0071】
このように、この形態では、レーザー光源2で得られたレーザーを3次元光共振器4に導いて、右偏光、又は左偏光のどちらか一方に共振させることができると共に、偏光切替スイッチ7を操作するだけで、容易に切り替えさせることができる。
【0072】
また、本発明の実施の形態では、レーザー光源2で得られた大強度パルスレーザーを3次元光共振器4に導いて、右偏光、又は左偏光のどちらか一方に共振させることができると共に3次元光共振器4内に設けられた衝突点に、ビームサイズが10μm以下で、エネルギー強度が1mJ/パルス以上になるパルスレーザーを生成させることができる。
【0073】
また、この形態では、レーザー光源2で得られた、時間幅が30psec以内の大強度パルスレーザーを3次元光共振器4に導いて、右偏光、又は左偏光のどちらか一方に共振させることができると共に3次元光共振器4内に設けられた衝突点に、ビームサイズが10μm以下で、エネルギー強度が1mJ/パルス以上になるパルスレーザーを生成させることができる。
【0074】
また、この形態では、レーザー光源2で得られた大強度パルスレーザーを3次元光共振器4に導いて、3次元光共振器4内に設けられた衝突点に、ビームサイズが10μm以下で、エネルギー強度が1mJ/パルス以上になる右偏光パルスレーザー、左偏光パルスレーザーを交互に生成させることができる。
【0075】
図3は、本発明の3次元光共振器を利用した偏光放射線発生システムの例を示す概略構成図である。なお、この図において、図1、図2と対応する部分には、同じ符号が付してある。
【0076】
この図に示す偏光放射線発生システム51は、システムを同期させるのに必要な高周波信号を発生する高周波信号発生装置52と、加速器を持ち、高周波信号発生装置52から出力される高周波信号と同期した高周波電圧を使用して、電子を加速させて、電子ビームを出射する高エネルギー電子ビーム発生装置53と、レーザー光源、モードロックレーザー発振器などを持ち、CW発振で得られたレーザー又は高周波信号発生装置52から出力される高周波信号と同期したパルスレーザーを生成する偏光レーザー発振システム1と、高エネルギー電子ビーム発生装置53から出射される電子ビームと3次元光共振器4内のレーザーとの衝突角が8−20度の範囲になり、“1μm”以内の衝突精度で衝突するように、偏光レーザー発振システム1を構成する3次元光共振器4が収納され、3次元光共振器4内のレーザーと衝突させたとき生じる逆コンプトン散乱によって放射線を生成させる衝突チャンバ54と、衝突チャンバ54で生成された放射線を取り出すとともに、放射線量を測定する放射線検出装置55とを備えている。
【0077】
そして、高周波信号発生装置52から出力される高周波信号によって、高エネルギー電子ビーム発生装置53と、偏光レーザー発振システム1とを完全に同期させながら、偏光レーザー発振システム1の3次元光共振器4内に“100MHz”以上の超高繰り返しの特性を有する左円偏光特性(または、左円偏光特性)を持ち、パルスの時間幅が“30psec”以内であり、ビームサイズが“10μm”以下の大強度偏光パルスレーザーを発生させるとともに、高エネルギー電子ビーム発生装置53から規格化エミッタンス“10mmmrad”以下の高品質特性を有する高エネルギーの電子ビームを出射させ、衝突チャンバ54内でこれら高エネルギーの電子ビームと、大強度偏光パルスレーザーとを衝突させる。
【0078】
これにより、逆コンプトン散乱によって、エネルギーが“0.25keV”以上になる極短パルス偏光放射線を発生させ、放射線検出装置55によって、これを取り出させ、外部に導かせるとともに、外部に導かれた放射線の放射線量を測定させ、表示器(図示は省略する)などに表示させることができる。
【0079】
このように、この形態では、3次元光共振器4内に設定された衝突点で、高エネルギー電子ビーム発生装置53から出射される高エネルギー電子ビームと、3次元光共振器4内の衝突点に生成された、ビームサイズが“10μm”以下で、エネルギー強度が“1mJ/パルス”以上である右偏光のパルスレーザー又は左偏光のパルスレーザーとを衝突させて、極短パルス偏光放射線を発生させることができる。
【0080】
また、この形態では、3次元光共振器4内に設定された衝突点で、高エネルギー電子ビーム発生装置53から出射される規格化エミッタンス“10mmmrad”以下の高品質特性を有する高エネルギー電子ビームと、3次元光共振器4内の衝突点に生成された、ビームサイズが“10μm”以下で、エネルギー強度が“1mJ/パルス”以上である右偏光のパルスレーザー又は左偏光のパルスレーザーとを、ほぼ正面衝突に近い衝突角度“8−20度”の範囲で、かつ“1μm”以内の衝突精度で衝突させて、エネルギーが“0.25keV”以上の特性を有する極短パルス偏光放射線を発生させることができる。
【0081】
また、この形態では、3次元光共振器4内に設定された衝突点で、高エネルギー電子ビーム発生装置53から出射される規格化エミッタンス“10mmmrad”以下の高品質特性を有する高エネルギー電子ビームと、3次元光共振器4内の衝突点に生成された、ビームサイズが“10μm”以下で、エネルギー強度が“1mJ/パルス”以上であり、“100MHz”以上の超高繰り返しの特性を有する左右どちらかの円偏光を有する大強度偏光のパルスレーザーとを、ほぼ正面衝突に近い衝突角度“8−20度”の範囲で、かつ“1μm”以内の衝突精度で衝突させて、エネルギーが“0.25keV”以上の特性を有する極短パルス偏光放射線を発生させることができる。
【0082】
また、この形態では、3次元光共振器4内に設定された衝突点で、高エネルギー電子ビーム発生装置53から出射される規格化エミッタンス“10mmmrad”以下の高品質特性を有する高エネルギー電子ビームと、3次元光共振器4内の衝突点に生成された、ビームサイズが“10μm”以下で、エネルギー強度が“1mJ/パルス”以上である右偏光のパルスレーザー又は左偏光のパルスレーザーとを、ほぼ正面衝突に近い衝突角度“8−20度”の範囲で、かつ“1μm”以内の衝突精度で衝突させて、エネルギーが“0.25keV”以上の特性を有する極短パルス偏光状のX線又はγ線を発生させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、左右円偏光性を自由に、選択し得る偏光レーザー又は偏光放射線の光共振器に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0084】
1:偏光レーザー発振システム
2:レーザー光源
3:入射光学系
4:3次元光共振器
5:共振モニタ器
6:ゼロクロスフィードバック信号生成器
7:偏光切替スイッチ
8:共振制御器
9:平面鏡
10:コリメートレンズ
11:偏光ビームスプリッタ
12:リング部材
13:リング部材
14:棒部材
15:平板
16:反射鏡保持枠
17:反射鏡保持枠
18:平板
19:反射鏡保持枠
20:反射鏡保持枠
21:平面鏡
22:平面鏡
23:凹面鏡
24:凹面鏡
25:ピエゾ素子(圧電素子)
26:平面鏡
27:ピンフォトダイオード
28:平面鏡
29:λ/2波長板
30:偏光ビームスプリッタ
31:平面鏡
32:ピンフォトダイオード
33:平面鏡
34:ピンフォトダイオード
35:差動増幅器
36:ゼロクロス判定回路
37:電子ビーム通路
51:偏光放射線発生システム
52:高周波信号発生装置
53:高エネルギー電子ビーム発生装置
54:衝突チャンバ
55:放射線検出装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体的に配置された1対の平面鏡と1対の凹面鏡とを備え、入射光学系から出射されるレーザーを取り込み、当該レーザーを圧電素子によって長さが調整された光路上を周回させながら前記光路の光路長に応じて右円偏光又は左円偏光を選択することによってレーザーを共振させるように形成された3次元光共振器。
【請求項2】
前記レーザーは、CWレーザー発振器、モードロックレーザーパルス発振器の少なくとも何れかを持ち、CWレーザー形式又はパルスレーザー形式のレーザーを生成するレーザー光源から出射されるレーザーの偏光面とビーム径を整える前記入射光学系に入射される請求項1に記載の3次元光共振器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の3次元共振器であって、内部で共振しているレーザーの強度をモニタする共振モニタ器を備えた3次元光共振器。
【請求項4】
請求項3に記載の3次元光共振器であって、内部で共振しているレーザーのうち、前記平面鏡および前記凹面鏡の何れかを透過したレーザーをP偏光成分とS偏光成分とに分離し、その強度を測定すると共に、その差分値を求めて、ゼロクロスフィードバック信号を生成するゼロクロスフィードバック信号生成器を備えた3次元光共振器。
【請求項5】
請求項4に記載の3次元光共振器であって、前記選択される右円偏光又は左円偏光を指定する指示信号を出力する偏光切替スイッチと、
前記偏光切替スイッチの出力、前記共振モニタ器の出力、前記ゼロクロスフィードバック信号生成器の出力に基づき、前記3次元光共振器に設けられた前記圧電素子の駆動電圧を制御して、前記光路長を調整させ、前記3次元光共振器内に右円偏光、又は左円偏光のレーザーを選択的に蓄積させる共振制御器と、
を備えたことを特徴とする3次元光共振器。
【請求項6】
請求項1に記載の3次元光共振器内に設定された衝突点において、ビームサイズが“10μm”以下にされ、エネルギー強度が“1mJ/パルス”以上になる右偏光のパルスレーザー又は左偏光のパルスレーザーと前記高エネルギー電子ビーム発生装置から出射される高エネルギー電子ビームとを衝突させ、極短パルス偏光放射線を生成させることを特徴とする3次元光共振器。
【請求項7】
前記極短パルス偏光放射線は、その放射線量が測定されることを特徴とする請求項6に記載の3次元光共振器。
【請求項8】
前記衝突点において、前記高エネルギー電子ビーム発生装置から出射される規格化エミッタンス“10mmmrad”以下の高品質特性を有する高エネルギー電子ビームと、前記3次元光共振器内のパルスレーザーとを衝突角度“8−20度”の範囲で、かつ“1μm”以内の衝突精度で衝突させ、エネルギーが“0.25keV”以上の特性を有する極短パルス偏光放射線を発生させ、外部に取り出す、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の3次元光共振器。
【請求項9】
前記極短パルス偏光放射線は、X線又はγ線である、ことを特徴とする請求項8に記載の3次元光共振器。
【請求項1】
立体的に配置された1対の平面鏡と1対の凹面鏡とを備え、入射光学系から出射されるレーザーを取り込み、当該レーザーを圧電素子によって長さが調整された光路上を周回させながら前記光路の光路長に応じて右円偏光又は左円偏光を選択することによってレーザーを共振させるように形成された3次元光共振器。
【請求項2】
前記レーザーは、CWレーザー発振器、モードロックレーザーパルス発振器の少なくとも何れかを持ち、CWレーザー形式又はパルスレーザー形式のレーザーを生成するレーザー光源から出射されるレーザーの偏光面とビーム径を整える前記入射光学系に入射される請求項1に記載の3次元光共振器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の3次元共振器であって、内部で共振しているレーザーの強度をモニタする共振モニタ器を備えた3次元光共振器。
【請求項4】
請求項3に記載の3次元光共振器であって、内部で共振しているレーザーのうち、前記平面鏡および前記凹面鏡の何れかを透過したレーザーをP偏光成分とS偏光成分とに分離し、その強度を測定すると共に、その差分値を求めて、ゼロクロスフィードバック信号を生成するゼロクロスフィードバック信号生成器を備えた3次元光共振器。
【請求項5】
請求項4に記載の3次元光共振器であって、前記選択される右円偏光又は左円偏光を指定する指示信号を出力する偏光切替スイッチと、
前記偏光切替スイッチの出力、前記共振モニタ器の出力、前記ゼロクロスフィードバック信号生成器の出力に基づき、前記3次元光共振器に設けられた前記圧電素子の駆動電圧を制御して、前記光路長を調整させ、前記3次元光共振器内に右円偏光、又は左円偏光のレーザーを選択的に蓄積させる共振制御器と、
を備えたことを特徴とする3次元光共振器。
【請求項6】
請求項1に記載の3次元光共振器内に設定された衝突点において、ビームサイズが“10μm”以下にされ、エネルギー強度が“1mJ/パルス”以上になる右偏光のパルスレーザー又は左偏光のパルスレーザーと前記高エネルギー電子ビーム発生装置から出射される高エネルギー電子ビームとを衝突させ、極短パルス偏光放射線を生成させることを特徴とする3次元光共振器。
【請求項7】
前記極短パルス偏光放射線は、その放射線量が測定されることを特徴とする請求項6に記載の3次元光共振器。
【請求項8】
前記衝突点において、前記高エネルギー電子ビーム発生装置から出射される規格化エミッタンス“10mmmrad”以下の高品質特性を有する高エネルギー電子ビームと、前記3次元光共振器内のパルスレーザーとを衝突角度“8−20度”の範囲で、かつ“1μm”以内の衝突精度で衝突させ、エネルギーが“0.25keV”以上の特性を有する極短パルス偏光放射線を発生させ、外部に取り出す、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の3次元光共振器。
【請求項9】
前記極短パルス偏光放射線は、X線又はγ線である、ことを特徴とする請求項8に記載の3次元光共振器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−34006(P2011−34006A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182869(P2009−182869)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、文部科学省、科学技術試験研究委託事業「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504151365)大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構 (125)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、文部科学省、科学技術試験研究委託事業「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504151365)大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構 (125)
【Fターム(参考)】
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