説明

3次元医用画像データの画像処理システム、その画像処理方法及びプログラム

【課題】医用画像ボリューム・データにおける3次元関心領域を、2次元画像上で簡便に指定する技術を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態は、3次元医用画像処理システムにおける3次元医用画像データの画像表示において、ユーザによる3次元関心領域の指定を支援する。ユーザ入力に応じて3次元医用画像データにおいて表示すべき候補オブジェクトを選択し、3次元医用画像データを可視化処理して選択した候補オブジェクトを明示する画像を表示する。表示された前記候補オブジェクト画像に対するユーザ選択入力に従って、3次元関心領域を指定するためのオブジェクトを選択する。ユーザは、その選択されたオブジェクトに対して関心領域指定の入力を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元医用画像データの画像処理システム、その画像処理方法及びプログラムに関し、特に、医用画像ボリューム・データから生成した2次元画像上での3次元関心領域指定を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT(X−ray Computed Tomography)装置やMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等に代表される医用画像検査装置を用いた診断では、医者が、撮影された3次元医用画像データ(以下、「医用画像ボリューム・データ」、「ボリューム・データ」ともいう)から得られる可視化画像を診断の補助として使用する場合がある。
【0003】
可視化画像は、医用画像ボリューム・データに対して複数の医用画像処理アルゴリズムを用いて可視化処理を行うことで得られる。ここで用いる医用画像処理アルゴリズムとしては、入力ボリューム・データから必要な組織だけを抽出して表示する方法エッジを強調して表示する方法等、診断目的に応じた複数の方法が存在する。
【0004】
また近年、技術の進歩により、医用画像撮像装置が一度に撮影可能な断層画像(以下、「スライス画像」ともいう)の枚数が加速度的に増加しており、撮影結果として出力されるボリューム・データの量も膨大なサイズとなっている。
【0005】
そのため、医用画像を使用した診断において、スライス画像ごとの読影に加えて、Volume Rendering(VR)、Maximum Intensity Projection(MIP)等の3次元再構成手法を用いて再構成した2次元画像を読影することが主流になっている。しかし、3次元の情報を持つ対象物の2次元画像において対象物の3次元位置を指定するには、2次元平面内の位置情報に加え、2次元平面上で奥行き方向の情報を扱う必要がある。
【0006】
読影医は、読影結果をレポートとして主治医へ報告するが、2次元画像上で3次元的な位置を表現することは難しく、そのことが原因となり、読影医−主治医間の情報交換がスムーズにいかない場合も多い。
【0007】
また、これまでは電子カルテ(レポート)と3次元医用画像データは個別に扱われていたが、近年は電子カルテと医用画像サーバであるPACS(Picture Archiving and Communication System)を一つのシステムとして利用する場合も増えてきており、2次元画像上で3次元位置を簡易に選択することができる方法が求められている。これらの要求に対し、次に述べるような技術が、先行技術として提案されている。
【0008】
特許文献1は、医用スライス画像を積み上げて3次元対象物の画像を表示した場合、その画像上の指定した一点のスライス画像上での座標及びこの座標の属するスライス画像番号を求める技術であり、任意の視点で表示した3次元対象物の画像上での一点の座標と、回転によって得たその点の軌跡上の任意の一点の座標とから、コンピュータ内の処理により、そのスライス画像番号及び座標を算出する技術である。
【0009】
特許文献2は、複数の2次元ウインドに基づいて、点の3次元座標を確定する画像処理方法である。特許文献3は、3次元データを平面上に投影した2次元画像を表示するとき、2次元画像中の注目点とその周囲の関心領域について、その他の領域との立体的な位置関係を任意の方向から表示できるようにすることを目的とした技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−274599号公報
【特許文献2】特開平8−212390号公報
【特許文献3】特開平9−81786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、2次元平面に投影された3次元画像に対して、3次元座標で表される点又は領域を2次元平面上で指定する方法として、複数の視点から投影された複数の投影画像を利用してそれを指定する方法がこれまでに提案されてきている。しかし、医療診断の対象となる生体は多くの組織及び器官からなる複雑な構成を有しており、医療診断においては、3次元関心領域を、2次元画像を用いてより迅速かつ容易に指定することができる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、ユーザ入力を取得する入力取得部と、データ記憶装置と、画像処理部と、表示装置とを備える、3次元医用画像データの画像処理システムである。前記データ記憶装置は、前記3次元医用画像データを記憶する。前記画像処理部は、前記3次元医用画像データを可視化処理して、一つ又は複数の候補オブジェクトのそれぞれを明示する一つ又は複数の候補オブジェクト画像データを生成し、その一つ又は複数の候補オブジェクト画像データを前記データ記憶装置に記憶する。前記表示装置は、前記データ記憶装置に記憶されている前記一つ又は複数の候補オブジェクト画像データの画像を表示する 前記画像処理部は、前記表示された画像に対するユーザ選択入力に従って、前記一つ又は複数の候補オブジェクトから3次元関心領域を指定するためのオブジェクトを選択する。前記入力取得部は、前記選択したオブジェクトの表示画像に対する前記ユーザからの前記3次元関心領域の指定入力を受け付ける。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、医用画像ボリューム・データにおける3次元関心領域を、2次元画像上で簡便に指定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る医用画像処理システムの構成を模式的に示すシステム構成図である。
【図2】本実施形態において、画像処理装置で実行される3次元関心領域指定処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態に係る医用画像処理システムの一部構成を模式的に示すブロック図である。
【図4】本実施形態において、3次元関心領域指定処理に利用する2次元指定位置と判定領域を説明する図である。
【図5A】本実施形態において、オブジェクトを指定するステップにおける画面表示の一例を示す図である。
【図5B】本実施形態において、オブジェクトを指定するステップにおける画面表示の一例を示す図である。
【図5C】本実施形態において、オブジェクトを指定するステップにおける画面表示の一例を示す図である。
【図5D】本実施形態において、オブジェクトを指定するステップにおける画面表示の一例を示す図である。
【図5E】本実施形態において、オブジェクトを指定するステップにおける画面表示の一例を示す図である。
【図5F】本実施形態において、オブジェクトを指定するステップにおける画面表示の一例を示す図である。
【図6】本実施形態において、オブジェクトを指定するステップにおける画面表示の他の例を示す図である。
【図7】本実施形態において、ボクセルの輝度の変化を利用してオブジェクトを抽出する方法を説明する図である。
【図8】本実施形態において、ボクセルの輝度の分布を利用してオブジェクトを推定する方法を説明する図である。
【図9】本実施形態のボクセルの輝度分布を利用したオブジェクト推定処理が参照する、輝度とオブジェクトの対応を示すオブジェクト輝度対応表の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態を、図を参照しながら詳細に説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0016】
本実施形態の医用画像処理システムは、3次元医用画像データ(以下において医用画像ボリューム・データ又はボリューム・データとも呼ぶ)に対するユーザ(主に医師)の3次元関心領域(以下において関心領域とも呼ぶ)の指定を支援する。関心領域は、ボリューム・データが表す対象物において、ユーザが詳細な画像表示を行うことを望む領域である。
【0017】
医用画像処理システムは、ユーザ入力に応じてボリューム・データから一つ又は複数のオブジェクトの2次元画像を生成し、それらを表示する。オブジェクトは、医用画像処理システムにおいて、組織、器官又は器官における区域など、生体における一単位を表す。医用画像ボリューム・データおけるオブジェクトは、画像処理システムにおいて扱われる一纏まりのボクセルであり、生体における実際の組織や器官と一致することが好ましいが、一致していないこともある。
【0018】
本実施形態において、ユーザは、表示された一つ又は複数の表示されたオブジェクト画像から、少なくとも一つのオブジェクト画像を選択する。ユーザは、選択したオブジェクトの画像に対しする入力により関心領域を指定することができる。このように、ユーザによる関心領域の指定のため、ユーザ入力に応じてオブジェクトの画像を自動的に表示することで、ユーザは関心領域の指定を簡便かつ迅速に行うことができる。
【0019】
図1は、本実施形態の医用画像処理システムの構成を模式的に示すブロック図である。図1に示すように、医用画像処理装置システム1は、医用画像ボリューム・データ及びそれに関わるデータを記憶する不揮発性記憶媒体を備える外部記憶装置10、X線CT装置やMRI装置等の医用画像撮像装置で撮像されたボリューム・データに対して画像処理を行う画像処理装置11、画像処理された画像を表示する表示装置12、各処理の開始等の指示や、画面に対する操作を入力する入力装置13を備える。
【0020】
入力装置13の典型的な例は、キーボード及びポインタ・デバイスである。画像処理装置11は、ネットワーク及びそのネットワークに接続された入出力用計算機を介して、表示装置12及び入力装置13に接続されてもよい。利用者は、入出力用計算機を介して、画像処理装置11にアクセスする。また、外部記憶装置10は、画像処理装置11に直接に又はネットワークを介して接続することができる。典型的には、外部記憶装置10は、磁気ディスクを備えるハードディスク・ドライブ又は半導体不揮発性記憶媒体を備えるフラッシュメモリ装置である。
【0021】
画像処理装置11は、データの演算処理を実行するプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)14とCPU14が処理するデータ(実行するプログラムを含む)を記憶する内部メモリ15とを含む。CPU14は、プログラムに従って動作することで、画像処理アルゴリズム実行部141、入力操作取得部142及び指定領域算出部143として機能する。さらに、画像処理アルゴリズム実行部141としての動作において、CPU14は、可視化処理実行部144及びオブジェクト処理実行部145として機能する。CPU14の処理の少なくとも一部は、GPU(Graphics Processing Unit)が行ってもよい。特に、画像処理アルゴリズム実行部141の処理の一部をGPUが行うことで、より高速な処理を実現できる。
【0022】
画像処理アルゴリズム実行部141において、可視化処理実行部144は、ボリューム・データに対して可視化処理を実行し表示装置に表示する。オブジェクト処理実行部145は、オブジェクトに対する処理やそれに関わる判断を行う。入力操作取得部142は、入力装置13からの入力を取得する。指定領域算出部143は、入力操作取得部142から得たユーザ入力に基づき、ボリューム・データにおいてユーザが指定した領域を算出する。これらの機能部の詳細は後述する。
【0023】
CPU14は、内部メモリ15内のそれぞれの記憶領域に記憶されているプログラムから選択されたコマンドに従って動作する。従って、CPU14の動作により実現される機能部を主語とする説明は、プログラムを主語とした説明でもよい。プログラムの一部又は全部は、専用ハードウェアによって実現してもよい。プログラムは、プログラム配布サーバや、計算機読み取り可能媒体によって画像処理システム1にインストールすることができ、外部記憶装置10の記憶領域に記憶することができる。
【0024】
データ記憶装置の一例である内部メモリ20は、典型的には、RAM(Random Access Memory)であり、メインメモリとキャッシュ・メモリを含む。内部メモリ20は、プログラムの他、ボリューム・データ及びそれに関わる情報(データ)を記憶する。具体的には、入力操作取得部142が取得したデータ、画像処理アルゴリズム実行部141及び指定領域算出部143が生成したデータを、それらの記憶領域に記憶する。ボリューム・データは、外部記憶装置10から内部メモリ15にロードされる。プログラム間のデータ転送は、内部メモリ15を介して行われる。
【0025】
以下において、本実施形態の医用画像処理システム1において、ボリューム・データにおける3次元関心領域を指定する処理を説明する。医用画像処理システム1は、ボリューム・データの2次元可視化画像を表示し、その表示に対するユーザの入力に従って、一つ又は複数のオブジェクトの画像を表示する。
【0026】
オブジェクトがボリューム・データにおいて定義されている場合、医用画像処理システム1は、定義されているオブジェクトの画像を表示する。オブジェクトがボリューム・データにおいて定義されていない場合、医用画像処理システム1は、ボリューム・データからオブジェクトを推定し、そのオブジェクトの画像を表示する。
【0027】
医用画像処理システム1は、複数のオブジェクトの画像を順次又は一括して表示する。ユーザは、一つのオブジェクト画像を選択し、その選択したオブジェクトの画像において関心領域を指定する。医用画像処理システム1は、指定された関心領域を表示する。
【0028】
図2のフローチャートに従って、2次元画像上で3次元関心領域を指定する処理の全体の流れを説明する。この処理の説明において、適宜、図3を参照する。図3は、図1に示す画像処理システム1における一部の構成を示し、その一部構成における本処理でのデータの流れを模式的に示している。
【0029】
図2に示すように、画像処理装置11は、入力装置13からの入力もしくは外部システム(を介した入力装置13)からの指示で、3次元領域指定処理を開始する(S10)。図3に示すように、外部記憶装置10から内部メモリ15にボリューム・データ151が転送される。
【0030】
次に、可視化処理実行部144(画像処理アルゴリズム実行部141)は、内部メモリ15に記憶されているボリューム・データ151を取得し、そのボリューム・データに対して可視化処理を実行し、初期可視化画像データ152を生成する(S11)。図3に示すように、生成された初期可視化画像データ152は、内部メモリ15に記憶される。その後、初期可視化画像データ152は表示装置12に転送され、表示装置12が初期可視化画像を表示する(S12)。
【0031】
ステップ12において可視化処理実行部144が行う可視化処理とは、ボリューム・データ151から2次元の可視化画像(データ)を生成する処理である。この可視化処理は、例えば、3次元可視化方法及び断面生成方法を使用することができる。
【0032】
3次元可視化方法の例は、ボクセル値から透明度を設定し、各視線上にあるボクセルにおける光の吸収と拡散を考慮してボクセルの光を加算し、対象物を立体的に表示するボリューム・レンダリング(Volume Rendering:VR)、各視線上にあるボクセルの最大のボクセル値を投影するMIP(Maximum Intensity Projection)等である。
【0033】
断面生成方法の例は、Axial、Sagittal、Coronal等の規定された断面や任意断面での断面図を表示するMulti Planar Reformat(MPR)、任意曲面での断面図を表示するCureved Multi Planar Reformat(CMPR)等である。
【0034】
可視化処理実行部144は、表示装置12を使用して初期可視化画像を表示する。この初期可視化画像データ152を生成する可視化処理(S11)の対象範囲及び使用する可視化手法は、予め設定されている、若しくは、ユーザが入力装置13を介してそれらを指定することができるようにしてもよい。
【0035】
ユーザは、入力装置13によって、表示装置12に表示された2次元初期可視化画像における位置を指定する。入力操作取得部142は、表示装置12に表示された初期可視化画像に対して指定された指定2次元位置を入力装置13から受け取る。例えば、ユーザが入力装置13としてマウスを使用する場合、カーソルでの指定やクリック等で表示画面上において指定される2次元座標が、指定2次元位置である。この2次元位置は、可視化画像内における座標である。
【0036】
入力操作取得部142は、指定2次元位置の2次元座標と、現在表示されている初期可視化画像の位置を1次元座標として取得し、指定領域算出部143にその情報を転送する。初期可視化画像の位置は、初期可視化画像が断面画像である場合はそのスライス位置、初期可視化画像がVR画像やMIP画像などの投影画像である場合は、その投影面の位置である。初期可視化画像の1次元座標が規定値である場合には、指定2次元位置の2次元座標のみを指定領域算出部143に送ればよい。
【0037】
この1次元座標は、例えば、ボリューム・データ151における特定座標軸上の、初期可視化画像の中心位置の座標である。上述のように、この1次元座標(可視化画像位置)は、予め設定されている若しくはユーザの指定により決定される。1次元座標は、初期可視化画像上のいずれの点を基準として決定してもよく、上記指定座標を基準に決定してもよい。
【0038】
指定領域算出部143は、指定2次元位置の2次元座標及び初期可視化画像の1次元座標から、ボリューム・データ151における3次元座標を算出する(S13)。さらに、指定領域算出部143は、算出した3次元座標を指定位置(初期位置)として、画像処理アルゴリズム実行部141のオブジェクト処理実行部145へ転送する。
【0039】
可視化画像が平面の断面画像又は投影画像である例において、指定領域算出部143は、平面画像の中心位置における上記特定座標の座標、平面画像のボリューム・データにおける法線方向ベクトル及び指定2次元位置の2次元座標から、ボリューム・データにおける座標を算出することができる。画像が球面の一部である場合には、例えば、その画像の曲率中心のボリューム・データにおける座標を使用して座標を算出することができる。
【0040】
指定領域算出部143は、取得した初期位置から判定領域を決定し、図3に示すように、その判定領域を特定するデータ153を内部メモリ15に記憶する。さらに、図2に示すように、オブジェクト処理実行部145は、その判定領域特定データ153が示す領域内に、ボリューム・データ151内で定義されているオブジェクトが存在するか否かを決定する(S14)。オブジェクトの少なくとも一部が判定領域内にあるとき、オブジェクト処理実行部145は、そのオブジェクトが判定領域内に存在していると判定する。
【0041】
オブジェクトは、上述のように、対象物である生体の一単位であり、例えば皮膚、骨、血管、胃、肝臓、脳等といった器官や組織である。判定領域は、上記初期位置を含む、線、所定の外形を有する面又は所定の外形を有する立体領域である。判定領域及び定義されたオブジェクトの有無の決定方法の詳細は後述する。
【0042】
判定領域内において、ボリューム・データ151内で定義されているオブジェクトが存在しない場合、オブジェクト処理実行部145は、オブジェクト推定処理(S15)を実行する。オブジェクト推定処理は、ボリューム・データ151における判定領域内のオブジェクトを推定する。オブジェクト推定処理の詳細は、後に、図7〜図9を参照して説明する。
【0043】
オブジェクト処理実行部145は、図3に示すように、判定領域内にあるオブジェクト(候補オブジェクト)を特定するデータ154を内部メモリ15に記憶する。なお、図2のフローチャートには示していないが、判定領域内にボリューム・データ151内で定義されたオブジェクトも推定されるオブジェクトも存在しない場合、ユーザは、オブジェクト選択をすることなく、関心領域を指定する(S18)。
【0044】
次に、図2に示すように、可視化処理実行部144は、候補オブジェクトの画像(候補オブジェクト画像)を表示する(S16)。具体的には、図3に示すように、可視化処理実行部144は、ボリューム・データ151と候補オブジェクト特定データ154から、候補オブジェクト画像データ155を生成し、内部メモリ15に記憶する。その候補オブジェクト画像データ155は表示装置12に送られる。
【0045】
表示装置12は、オブジェクト画像データが表すオブジェクトの画像を表示する。複数の候補オブジェクトが存在する場合、候補オブジェクト画像は順次表示又は一括表示される。候補オブジェクト画像の表示方法の詳細は、図5A〜図5F及び図6を参照して、後に説明する。
【0046】
ユーザは、画像表示装置12に表示されているオブジェクトを視認し、そのオブジェクトを関心領域の指定のために使用するか否かを決定し、その決定を入力装置13により入力する(S17)。ユーザが表示された全ての候補オブジェクトの画像を使用しないと決定すると(S17におけるN)、処理は関心領域指定のステップ(S19)に移る。
【0047】
ユーザが表示されたオブジェクトの画像を関心領域の指定において利用すると決定(入力)し(S17におけるY)、利用するオブジェクトの画像を入力装置13による選択する(S18)。典型的には、ユーザによる表示されている候補オブジェクト画像の選択が、そのオブジェクト画像の利用決定の入力である。
【0048】
表示装置12が目的のオブジェクトを候補オブジェクトとして表示した時点で、ユーザは入力装置13により決定するという情報を入力する。入力操作取得部142は、候補オブジェクトが選択オブジェクトとして選択されたという情報を指定領域算出部143に転送する。指定領域算出部143は、その候補オブジェクトを選択オブジェクトとして定義する。
【0049】
その後、処理は、関心領域指定ステップ(S20)に移る。可視化処理実行部144は、選択されたオブジェクトの画像を、表示装置12により表示する。複数の候補オブジェクトの画像が画面上に表示される構成においては、典型的には、選択された一つのオブジェクトの拡大画像を新たに表示する。候補オブジェクトの画像が順次表示される構成においては、選択されたときの画像をそのまま使用する又は新たに選択画像を再表示する。
【0050】
ユーザは、表示されているオブジェクトの画像において、関心領域を指定するための入力を行う。オブジェクト画像における関心領域の指定方法の詳細は、後述する。可視化処理実行部144は、ユーザが入力装置13により指定した関心領域の画像を、表示装置12により表示する。
【0051】
具体的には、指定領域算出部143は、入力操作取得部142から取得した入力データとオブジェクト処理実行部145から取得した対象オブジェクトの座標データから、指定された関心領域を示すボリューム・データ151にける座標データを算出する。可視化処理実行部144は、指定領域算出部143から、算出された上記座標データを取得する。
【0052】
可視化処理実行部144は、指定領域算出部143から取得した座標データとボリューム・データ151から、指定された関心領域の画像データ156を生成し、内部メモリ15に記憶する。関心領域画像データ156は、表示装置12に転送され、表示装置12は関心領域画像データが表す画像を表示する。
【0053】
ユーザにとって所望の関心領域が表示されている場合(S20におけるY)、関心領域指定処理は終了(S21)する。所望の関心領域が表示されていない場合(S20におけるN)、ユーザは入力装置13により、関心領域指定処理を完了しないことを示す入力を行う。処理は、初期位置特定ステップ(S13)及びそれ以降のステップを再実行する。設計によっては、処理は、可視化処理ステップ(S11)又は可視化表示ステップ(S12)から開始してもよい。
【0054】
また、一つのボリューム・データに対して複数の関心領域を指定する場合、処理は、一旦終了(S21)した後、初期位置特定ステップ(S13)から開始する。上記と同様に、処理は、可視化処理ステップ(S11)又は可視化表示ステップ(S12)から開始してもよい。この場合、可視化処理実行部144は、例えば、すでに指定が完了している関心領域に対して色づけを行い、その領域が関心領域として既に指定されたことがあるということをユーザが視認できるようにすることが好ましい。
【0055】
また、好ましい構成において、既に関心領域として指定されている領域に含まれるボクセルを新たに指定する関心領域に含ませることができるか、若しくは一つのボクセルは一つの関心領域のみに属すのか、ということが設定可能である。指定領域算出部143は、既にいずれかの関心領域に属しているボクセルと、そうでないボクセルに対して異なる処理を行うように構成されていてもよい。
【0056】
<判定領域>
以下において、図2に示すフローチャートにおけるいくつかのステップの詳細を説明する。まず、ステップ14の判定ステップについて具体的に説明を行う。ステップ14は、判定領域(の少なくとも一部)と(少なくともその一部が)重なるオブジェクトを特定する。判定の対象となるオブジェクトは、ボリューム・データ151内で定義されているオブジェクトである。
【0057】
図4を参照して、判定領域の好ましい例を説明する。図4の左図は、頭部のボリューム・データをVRによって可視化表示した画像を模式的に示す図であり、ユーザが2次元位置を指定する初期可視化画像である。VR画像の投影面は、頭部の前に位置している。本例においては、頭部の外側から皮膚、頭骨、脳の各オブジェクトが示されている。
【0058】
図4の左図において、図に向かって左から右にX軸が延び、上から下にY軸が延びてい
る。また、図の手前から奥に向かってZ軸が延びている。Z軸の方向は、初期可視化画像(の投影面)の法線方向と一致している。ユーザが指定した2次元位置21は×で示されている。さらに、判定領域23は円で囲まれた領域であり、その指定位置21を含んでいる。
【0059】
図4の右図は、同じ頭部のボリューム・データを、X軸方向を法線とする投影面において、VRによって可視化表示した画像を模式的に示す図である。図に向かって左から右にZ軸が延び、上から下にY軸が延びている。また、図の奥から手前に向かってX軸が延びている。本例において、指定位置21のZ座標は、ボリューム・データ151における最も手前の位置(Z=0)である。指定位置21からZ軸に沿って延びる直線は、判定直線22である。図4から理解されるように、判定領域23は、判定直線22を含み、Z軸に沿って延びる円筒内の領域(円柱形状の領域)である。
【0060】
オブジェクト処理実行部145は、判定領域23が少なくともその一部を含むオブジェクトを特定する。オブジェクトは、ボリューム・データ151において定義されている。オブジェクトは、ボリューム・データ内の一つ又は複数のボクセルから構成されており、オブジェクト内のボクセルは、そのオブジェクトに属すると定義されている。
【0061】
ボリューム・データ151においてオブジェクトを定義する手法の一つは、マスクを使用する。マスクは、そのマスクが関連付けられた領域を覆い、その領域を特定し他の領域から区別するデータである。マスクは、DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)のタグ情報として保存してもよく、マスクの情報がボリューム・データとは別のフォーマットで保存されていてもよい。
【0062】
図4に示す好ましい例において、判定領域23は、指定位置21からZ軸に沿って延びる判定直線22を中心とする円柱状の立体領域である。オブジェクト処理実行部145は、判定領域23に含まれる各ボクセルについて、いずれかのオブジェクトに属していると定義されているか否かを判定する。判定領域23内のボクセルがオブジェクトに属すると定義されている場合、オブジェクト処理実行部145は、そのオブジェクトを表示すべき候補オブジェクトと決定する。
【0063】
判定領域は、典型的には、ユーザによる指定ない限り、対象物の一方の外端から他方の外端まで延びている。判定領域は、本例のような立体領域の他、連なるボクセルからなる線又は所定の形状を有する面でもよい。例えば、図4の例において、オブジェクト処理実行部145は、判定直線22を判定領域として使用することができる。判定直線22上のボクセルがオブジェクトに属する場合、オブジェクト処理実行部145は、そのオブジェクトを表示すべき候補オブジェクトと決定する。
【0064】
線は、判定領域の好ましい形状の一つである。線である判定領域は、ユーザが望む部分のみを含むことができる。判定領域と対象物との関係を把握しやすいように又処理の簡易性の点から、線は直線であることが好ましい。
【0065】
一方、判定領域が線である場合、指定位置の数ボクセルのずれによって、表示される候補オブジェクトが変わってしまう。そのため、さらに好ましい構成において、判定領域は所定の外形を有する立体領域である。これにより、指定位置のわずかなずれにより影響されることなく、ユーザが望む領域の候補オブジェクトを適切に表示することができる。
【0066】
判定領域と対象物との関係の把握容易性及び処理の簡易性の点から、立体領域は、ユーザ指定位置を含む直線方向において延び、その直線を法線とする断面形状が一定の立体であることが好ましい。典型的な断面形状は、図4の判断領域23のように、円である。
【0067】
図4の例において、判定直線22の方向は、初期可視化画像(の投影面)の法線方向である。判定領域がユーザの指定2次元位置から延びる方向は、判定領域と対象物との関係を把握容易性及び処理の簡易性の点から、この方向であることが好ましい。同様に点から、判定直線の方向を、初期可視化画像における指定位置の視線方向と一致させてもよい。初期化可視化画像が断面である場合、指定位置における視線方向は、その法線方向である、設計によっては、判定直線の方向は、これらと異なる方向であってもよい。
【0068】
また、判定領域の形状(外形及びその延びる方向を含む)は、予め設定されていてもよく、ユーザにより指定可能であってもよい。ユーザ指定可能な構成において、指定領域算出部143は、入力装置13によるユーザ入力に応じて判定領域の形状を決定する。例えば、ユーザは、直線及び円柱の一方の形状を選択する。直線を選択した場合には、その方向を指定し、円柱を選択した場合にその方向と断面の大きさを指定する。
【0069】
<オブジェクトの選択>
次に、判定領域と重なる候補オブジェクト画像の表示及びユーザによる関心領域指定のためのオブジェクトの選択(S16〜S18)について具体的に説明を行う。まず、図4に示した例に従い、判断領域23内の候補オブジェクト画像の表示及びユーザによるオブジェクトの選択の例を説明する。
【0070】
図5A〜図5Fは、表示装置12の異なる画面表示を示している。本例において、表示装置12は、図5A〜図5Fの画像を順に画面上に表示する。図5A〜図5Fにおいて、表示装置12の画面は、判定領域23内の候補オブジェクトの画像を表示している。本例においては、皮膚31、頭骨32及び脳33が、判定領域23内のオブジェクトである。皮膚31が最も外側にあり、その内側に頭骨32があり、頭骨の内側に脳33がある。
【0071】
図5A〜図5Fの各図において、左図は頭部の前に設定した投影面に対する画像であり、右図は頭部の横に設定した投影面に対する画像である。本例において、左図及び右図は、3次元情報を有する2次元画像であり、VRやMIPの手法を使用して形成された画像である。図5A〜図5Fの左図は、候補オブジェクトを強調して表示している。右図は、候補オブジェクトを指示する候補位置24を表示している。これらの点は、図4と同様である。そのため、図5A〜図5Fには、図4におけるX、Y、Z軸が適用される。
【0072】
表示装置12は、ユーザ入力に従って、図5A〜図5Fの画像を順に画面上に表示する。いずれかの画像においてオブジェクトをユーザが選択すると、画像処理装置11は、それ以降の画像を表示することなく、関心領域指定のステップ(図2におけるS19)に移る。画像処理装置11は、全ての画像を表示した後に、ユーザの選択を受け付けてもよい。
【0073】
表示装置12は、最初に、図5Aの画像を表示する。図5Aは、最も外側のオブジェクトである皮膚31を候補オブジェクトとして選択した画像を示している。可視化処理実行部144は、オブジェクト処理実行部145からオブジェクト31についての情報を取得し、図5Aにおける二つの画像51、52の画像データを生成する。
【0074】
具体的には、オブジェクト処理実行部145は、指定位置21からZ方向に伸ばした直線(判断直線22)上において、指定位置21に最も近いオブジェクト31を特定する。ボリューム・データ151においてオブジェクトが定義されている場合にはボリューム・データ151に付随するオブジェクトの情報から、定義されていない場合にはボリューム・データ151において推定したオブジェクトに関する情報から、オブジェクト処理実行部145は、指定位置21に最も近いオブジェクトを特定することができる。
【0075】
可視化処理実行部144、オブジェクト31に関する情報をオブジェクト処理実行部145から取得し、図5Aに示す二つの画像51、52の画像データを生成する。右図52の画像データは、頭部の可視化画像のデータと、その画像における候補位置24を表示するデータと含む。候補位置24は、判定直線23と候補オブジェクトである皮膚31との交差位置であって、指定位置21に最も近い位置である。図5Aに示すように、右図52は、頭部の可視化画像に加え、候補位置24を示す図形を含む。
【0076】
可視化処理実行部144は、二つの画像51、52において候補オブジェクト31を明確に視認できるよう、候補オブジェクト31を明示する。図5Aの例は、模式的に、候補オブジェクト(皮膚)31の輪郭を実線で、それ以外のオブジェクトの輪郭を点線で表示している。
【0077】
好ましい構成において、可視化処理実行部144は、画像データ51、52の生成において、候補オブジェクト31に属するボクセルと、それら以外のボクセルとに対して、異なる可視化処理を行う。例えば、可視化処理実行部144は、候補オブジェクト31に属するボクセルをVRにより可視化処理し、他のボクセルをMIPにより可視化処理して、画像データ51、52を生成する(図5Aにおける実線はVR、点線はMIP)。
【0078】
このように、候補オブジェクトとそれ以外の部分とに異なる可視化手法を適用して画像データを生成することで、可視化画像は、候補オブジェクトを他の部分共に表示すると共に、候補オブジェクトを他の部分から明確に区別して表示することができる。
【0079】
可視化処理実行部144は、他の方法により、候補オブジェクトを区別して表示してもよい。例えば、可視化処理実行部144は、候補オブジェクト31に属するボクセルのみを表示して、他の部分(図5Aにおける点線部分)を表示しない。他の例において、可視化処理実行部144は、全てのボクセルに対して同じ可視化手法を適用するが、候補オブジェクトに属するボクセルに対しては、他のボクセルとは異なる色又は透明度を設定することで、候補オブジェクトを他の部分から区別して表示することができる。
【0080】
ユーザによる視認容易性の点から、左図51の画像データの生成と右図52の画像データの生成は、同様の可視化処理を使用することが好ましい。しかし、可視化処理実行部144は、二つの画像のデータ生成において、異なる可視化処理を使用してもよい。例えば、可視化処理実行部144は、右図52において、断面図を示してもよい。若しくは、左図51の画像データの生成においては候補オブジェクトとそれ以外の部分とに対して異なる可視化手法を適用し、右図52の画像データの生成においては全てのボクセルに同一の可視化手法を適用して、候補オブジェクトに他の部分と異なる透明度を設定してもよい。
【0081】
図5Aに示す最初の候補オブジェクト31を選択しない場合、ユーザは、入力装置13により、次の候補オブジェクトを表示することを指示する。例えば、入力装置13として、マウスのホイール又はテン・キーの矢印キーを使用して、ユーザは、判定直線22において候補位置24をZ軸正方向に一段進める指示を入力する。
【0082】
入力操作取得部142は、候補位置24が判定直線22上において、Z軸正方向へ一段進んだことをオブジェクト処理実行部145へ通知する。オブジェクト処理実行部145では、判定直線22上にある次のオブジェクト32を候補オブジェクトとして決定する。オブジェクト32は、頭骨である。
【0083】
可視化処理実行部144は、オブジェクト処理実行部145から、頭骨オブジェクト32に関する情報を取得し、図5Bに示す二つの画像のデータを生成する。画像データの生成方法は、図5Aに示す画像51、52の画像データの生成と同様である。図5Bの画像53、54は、候補オブジェクト32を他の部分から区別して表示すると共に、候補オブジェクト32に対応する候補位置24を示す点を表示している。
【0084】
候補オブジェクト32を選択しない場合、ユーザは、候補位置24をZ軸正方向に一段進める指示を入力装置13から入力する。図5Bに示す画像データの生成と同様に、可視化処理実行部144は、オブジェクト処理実行部145から得たオブジェクト33の情報から、図5Cに示す画像の画像データを生成する。次の候補オブジェクト33は、脳である。
【0085】
このように、ユーザが入力装置13で一段階ずつ候補位置24を進めると、可視化処理実行部144は、図5A〜図5Fに示す画面表示1、2、3、4、5のように、表示画像を変化させる。表示装置12が目的のオブジェクトを候補オブジェクトとして表示すると、ユーザは入力装置13から表示されている候補オブジェクトを選択するという情報を入力する。入力操作取得部142は現在の候補オブジェクトが選択オブジェクトとして選択されたという情報を、指定領域算出部143に転送する。指定領域算出部143では、表示されている現在の候補オブジェクトを、選択オブジェクトとして定義する。
【0086】
上記の例において、同一のオブジェクトを表示する画像は、同一の画像である。つまり、図5Aと図5Fとは同一の画像を示し、図5Bと図5Eとは同一の画像を示し、図5Cと図5Dとは同一の画像を示している。これと異なり、可視化処理実行部144は、図5A〜図5Fの左図において、候補位置24に応じて同一オブジェクトの異なる投影面の画像を表示してもよい。
【0087】
好ましい構成において、可視化処理実行部144は、図5A〜図5Fに示すように、一つの画面において二つの画像を表示する。異なる方向からの画像を同時に表示することで、ユーザが候補オブジェクトをより的確に認識することができる。設計によっては、可視化処理実行部144は、一種類の画像のみを順次表示してもよい。例えば、上記例において、左図又は右図の一方のみを、順次表示する。
【0088】
好ましくは、一種類の画像を表示する構成においては、可視化処理実行部144は、ユーザが初期位置を指定する初期可視化画像と同一方向の画像を表示する。その一種類の画像がVRやMIPを使用した投影面での画像ある場合、同一方向の画像は、投影面及び視線が同一である。上記例においては、上記例における左図の画像が、この画像に相当する。これにより、ユーザは、初期可視化画像との関係において、候補オブジェクトを視認することができる。
【0089】
異なる画像を同時に表示する構成においては、一方の画像は判定領域内にある候補オブジェクトの位置を明示することが好ましい。上記例においては、右図における判定直線22上の候補位置24の画像が、この位置を明示している。この画像の面は、上記例の右図ように判定領域と平行であることが好ましいが、平行でなくともよい。他方の画像は、初期可視化画像と同一方向であることが好ましい。
【0090】
可視化処理実行部144は、図5A〜図5Fに示す好ましい例とは異なる方法により、候補オブジェクトの画像を表示してもよい。好ましい他の構成において、可視化処理実行部144は、複数の候補オブジェクトの画像を画面において一括表示する。図6は、図4の例に従い、頭部のボリューム・データにおけるオブジェクトの画像を表示している。図6に示す表示画面は、判断領域23内の全ての候補オブジェクトを一括表示する例を示している。
【0091】
図6の画面は、初期可視化画像61及び候補オブジェクト画像62〜64を示している。皮膚、骨、脳のオブジェクト31〜33のそれぞれの一部が、判定領域23内のボクセルであり、候補オブジェクト画像62、63、64は、それぞれ、皮膚31、頭骨32、脳33を表示している。ユーザは、表示されている候補オブジェクト画像から、入力装置13を用いて、選択する候補オブジェクト画像を指定することができる。
【0092】
可視化処理実行部144は、オブジェクト処理実行145から、判定領域23内のボクセルが属する全てのオブジェクトの情報を受け取り、それらの画像を表示する。表示された各オブジェクトの画像には、この例が1:皮膚、2:骨、3:脳と示しているように、番号やアルファベットを付すことが好ましい。
【0093】
可視化処理実行部144は、全ての候補オブジェクトの画像を一括表示することが好ましいが、判定領域23内の全ての候補オブジェクトの内、一部の複数オブジェクトの画像セットを画面上に表示してもよい。可視化処理実行部144は、ユーザ入力に応じて、別の画像セットを順次表示する。可視化処理実行部144は、初期可視化画像61も表示することが好ましいが、それを省略してもよい。可視化処理実行部144は、図5A〜図5Fに示す画像52を合わせて表示してもよい。
【0094】
<オブジェクトの推定>
以下において、図2のフローチャートに示すオブジェクトの推定(S15)及び推定したオブジェクトの画像表示方法(S16)について具体的に説明する。好ましい推定方法は、ボリューム・データにおけるボクセルの輝度を利用する。以下においては、輝度の変化を利用してオブジェクトを推定する方法と、輝度の分布を利用してオブジェクトを推定する方法を説明する。
【0095】
まず、図7を参照して、輝度の変化を利用してオブジェクトを推定する方法の一例を説明する。多くの場合、ボクセルの輝度値は、オブジェクトの境界で著しい変化を示す。つまり、隣接ボクセル間の輝度値の差分は、オブジェクトの境界で著しく大きくなる。そのため、オブジェクト処理実行部145は、ボクセル輝度値の変化を算出することで、オブジェクトを推定することができる。
【0096】
図7において、上段図は、図4と同様に、頭部、ユーザによる指定位置21、判定直線22及び判定領域23を、Z軸方向およびX軸方向から見たモデル図である。図7における中段図は、上段図の判定直線22上のボクセルの輝度Vを示すグラフのモデル図である。横軸がZ軸における座標、縦軸が輝度Vを表す。Z軸の各座標値において、輝度Vは、判定領域23内のZ軸に垂直な面を構成するボクセルの輝度値の平均値でもよい。
【0097】
図7における下段図は、隣接ボクセル間の輝度値の差を示すグラフのモデル図である。グラフにおける横軸はZ軸の座標、縦軸は輝度差分Vdifを示している。Z軸に垂直な面の輝度平均値を使用する場合、輝度差分Vdifは隣接面間における輝度平均値の差分である。Vdifが大きい位置は、Vが大きな変化を示す位置である。オブジェクト処理実行部145は、輝度差分Vdifが規定の閾値VDthを超える位置を、Zsとする。本例においては、オブジェクト処理実行部145は、六つの位置Z0〜Z5を検出する。これらの位置は、図5A〜図5Fに示した六つの候補位置に相当する。
【0098】
オブジェクト処理実行部145は、初期可視化画像における全ての画素について同様の処理を行い、頭部のボリューム・データにおけるオブジェクトの座標情報を得る。本例においては、皮膚、頭骨そして脳のそれぞれに相当するオブジェクトの座標情報を得る。可視化処理実行部144は、オブジェクト処理実行部145から、これらのオブジェクトの座標情報を取得し、図5A〜図5F及び図6に示す画像と略同様の画像のデータを生成し、ユーザ入力に応じて、それら画像を表示する。
【0099】
好ましい構成において、オブジェクト処理実行部145は、上述のように、各オブジェクトの全体を示す座標データを算出する。他の構成において、オブジェクト処理実行部145は、判断領域22内におけるボクセルについてのみ上記処理を行う。これにより、オブジェクト推定のための処理量を小さくする。
【0100】
具体的には、オブジェクト処理実行部145は、初期可視化画像において判定領域23内にある画素について輝度変化を算出する。オブジェクト処理実行部145は、判定領域23に含まれる領域においてオブジェクトを推定し、各オブジェクトの座標データを生成する。可視化処理実行部144は、オブジェクト処理実行部145から取得したオブジェクト情報とボリューム・データとから、表示画像データを生成する。
【0101】
可視化処理実行部144は、図5A〜図5Fにおける右図または左図の画像データを生成し、その画像を表示する。この際、可視化処理実行部144は図5A〜図5Fにおける左右の図の同時に表示してもよい。可視化処理実行部144は、判断領域22内において、候補オブジェクトを強調して表示し、候補オブジェクトの部分を他の部分から区別する。可視化処理実行部144は、候補位置24も合わせて表示することが好ましい。
【0102】
他の構成において、オブジェクト処理実行部145は、判定直線22上のボクセルについてのみ輝度変化を算出し、判定直線22上のみでオブジェクトを推定する。図7を参照して説明したように、オブジェクト処理実行部145は、判定直線22におけるオブジェクトの境界位置を検出する。可視化処理実行部144は、図5A〜図5Fにおける候補位置24を表示する。候補位置24の表示は候補オブジェクトを示しており、可視化処理実行部144は、候補位置24の表示により候補オブジェクトを他の部分から区別して表示する。
【0103】
入力装置13を介してユーザが一つの候補位置を選択すると、指定領域算出部143は選択された候補位置を関心領域指定(S19)のための指定位置と定義する。画像処理アルゴリズム実行部141は、この位置を基準として関心領域指定のステップ(S19)を実行する。
【0104】
次に、図8を参照して、ボクセルの輝度の分布を利用してオブジェクトを推定する(S15)方法を説明する。図8における上段図は、図7の上段図と同様に、頭部、ユーザによる指定位置21、判定直線22及び判定領域23を、Z軸方向およびX軸方向から見たモデル図である。図8における中段図は、上段図の判定直線22上のボクセルの輝度Vを示すグラフのモデル図である。横軸がZ軸における座標、縦軸が輝度Vを表す。Z軸の各座標値において、輝度Vは、判定領域23内のZ軸に垂直な面を構成するボクセルの輝度値の平均値でもよい。
【0105】
医用画像においては、オブジェクト即ち器官や組織が持つ輝度を、推測できることが多い。本推定方法は、この性質を利用する。図9に例示するような、オブジェクトとオブジェクトを構成するボクセルの輝度との間の対応表91を、画像処理アルゴリズム実行部141で利用できるように、予め用意しておく。オブジェクト輝度対応表91において、オブジェクト1、オブジェクト2、オブジェクト3は、それぞれ、皮膚オブジェクト31、脳オブジェクト33、頭骨オブジェクト32に対応する。
【0106】
オブジェクト処理実行部145は、判定直線22上の指定位置Z0からZ軸正方向に向かって、判定直線22上のボクセルの輝度を順次参照する。オブジェクト処理実行部145は、オブジェクト輝度対応表91を参照して、オブジェクトの輝度範囲内の最初のボクセルを検出すると、そのボクセルの座標値を、オブジェクト位置として保存する。図8の例においては、Z1〜Z7が示す位置(ボクセル)が、この条件を満たす位置である。
【0107】
可視化処理実行部144は、オブジェクト処理実行部145からボクセル座標Z1〜Z7を取得し、図8右図又は左図の可視化画像と共に最初に指定された初期位置Z座標Z1〜Z7のボクセルを明示することで、候補オブジェクトを示す。例えば、ユーザが入力装置13により候補位置をZ方向へ移動する指示を入力すると、入力操作取得部142がその指示を取得し、オブジェクト処理実行部145へと送る。
【0108】
この情報を得たオブジェクト処理実行部145は、候補位置がZ軸正方向へ一段進むごとに、前述したZ1〜Z7の座標を、順次、可視化処理実行部144へ送る。可視化処理実行部144は、取得した座標値のボクセルを他特別して表示することで、新たな候補位置を示す。
【0109】
このようにして、可視化処理実行部144は、表示する候補位置をZ0〜Z7へと移動する。表示候補位置が目的の位置に移動すると、ユーザは、入力装置13により表示されている候補位置を選択することを示す情報を入力する。入力操作取得部142は、表示されている候補位置を指定位置とする決定を指定領域算出部143に送る。指定領域算出部143は、その候補位置を指定位置と定義する。関心領域指定ステップ(S18)は、この指定位置に基づいて、関心領域を決定する。
【0110】
図8において、位置Z1〜Z7の全てのボクセルが、オブジェクト輝度対応表91に示す対応オブジェクトに実際に含まれるわけではない。具体的には、位置Z2及び位置Z6は、脳33内にはなく、皮膚31と頭骨32との境界近傍に現れる。明示するオブジェクトの種類を特定して表示しない場合、このような位置を明示することに問題はない。オブジェクトの境界位置近傍を明示することができれば、ユーザは、その位置を基準として、簡便に関心領域を指定することができるからである。
【0111】
可視化処理実行部144は、隣接位置間の距離を基準として、対応オブジェクト外の位置を特定し、その位置を表示すべき候補位置から除外してもよい。具体的には、オブジェクト処理実行部145は、対象位置とその次の位置との間の距離が規定の閾値以下である場合には、その対象位置を候補位置から除外する。
【0112】
好ましい構成において、可視化処理実行部144は、図5A〜図5Fのように、異なる方向における画像を同時に表示することが好ましく、さらに、表示画像においてオブジェクトにおける候補位置以外部分も強調表示することが好ましい。例えば、可視化処理実行部144は、ボリューム・データにおけるボクセルの輝度を平滑化及び解析し、候補位置付近のボクセルにおいて候補位置と同一輝度を持つボクセルを強調して表示する。可視化処理実行部144は、例えば、指定位置が位置Z4である場合は、輝度V3をもつボクセルを強調する可視化表示を行う。
【0113】
ボクセルを強調する可視化表示は、図2におけるステップ12について説明したように、その輝度値を持つボクセルにVRを適用しそれ以外のボクセルに対してはMIPを適応するように可視化手法を変えて表示する方法、同じ可視化手法において特定輝度値を持つボクセルとそれ以外のボクセルの色や透明度を変えて表示する方法などがある。
【0114】
オブジェクト処理実行部145は、オブジェクト輝度対応表91を参照して、候補位置のオブジェクトの範囲を決定してもよい。オブジェクト処理実行部145は、候補位置から連続する範囲内において、対応輝度範囲内にあるボクセルを検出する。これらボクセルが構成する範囲を、オブジェクトの範囲と推定(決定)する。
【0115】
オブジェクト処理実行部145は、判定領域23内又は頭部全体においてこの処理を行う。可視化処理実行部144は、この情報により、判定領域23内において、又は、図5A〜図5Fに示したように頭部全体において、オブジェクトを他の部分から区別して表示する。
【0116】
図7及び図8を参照して説明したボクセルの輝度に基づき推定されたオブジェクト(の少なくとも一部)は、ボリューム・データ内でオブジェクトが定義されている構成と異なり、実際のオブジェクト、つまり対象物の器官や組織と正確に一致するとは限らない。この構成におけるオブジェクト画像表示(S16)は、上述のように、オブジェクト処理実行部145が推定したオブジェクトの画像を表示する。
【0117】
オブジェクト画像表示(S16)は、その後のユーザによる関心領域指定(S18)の基準となる領域(位置)を特定するための処理である。そのため、表示する候補オブジェクトが、実際の対象物と必ずしも一致しなくともよい。しかし、関心領域の指定(S18)をより正確にサポートするためには、オブジェクト処理実行部145は、輝度に基づき推定することで候補オブジェクトを決定するのではなく、ボリューム・データ内の定義情報に従って候補オブジェクトを決定することが好ましい。なお、予め定義されているオブジェクトと推定したオブジェクトの双方を表示してもよい。
【0118】
<関心領域の指定>
次に、ユーザ入力に応じた関心領域の指定(S18)について、より詳細に説明を行う。ステップ18は、選択されたオブジェクト内で更に詳細に、関心領域の指定を行う。ユーザが表示された候補オブジェクトのいずれも利用しないという判定(S17におけるN)をした場合には、ユーザは、初期可視化画像において2次元指定位置を指定(S13)した後、ステップ14〜ステップ18をスキップして、本ステップ19を実行することになる。
【0119】
このステップ19において、ユーザは、入力装置13から、関心領域の形状、サイズ、位置を入力する。入力操作取得部142は入力装置13からの入力を取得し、指定領域算出部143は、入力操作取得部142から受け取ったユーザ入力から、関心領域を算出する。なお、関心領域の形状、位置、サイズの指定は、順序は不同であり、また関心領域の指定は表示装置に都度表示を行い、複数回の指定や修正も可能とするべきである。
【0120】
最初に、形状指定について説明する。ユーザは、関心領域の形状として、点、多面体、球、円筒、円錐等の基本図形、フリーハンドで描画される閉曲線等を利用することができる。例えば、ユーザは、予め用意した基本図形の中から一つの図形を指定する。指定領域算出部143は、その選択図形を関心領域の形状と定義する。
【0121】
フリーハンドによる閉曲線又は多面体を利用する方法の一例において、ユーザは、1視点の2次元平面上で2次元形状を描画し、指定領域算出部143は、その2次元形状を奥行き方向に伸ばした柱状の3次元形状を指定領域と定義する。他の例において、ユーザは、異なる複数視点からの断面画像、例えばMPR画像又はCMPR画像、において、それぞれ2次元形状を描画する。指定領域算出部143はそれらを輪郭とした3次元形状を関心領域の形状と定義する。
【0122】
好ましい他の指定方法は、自動抽出手法(自動抽出アルゴリズム)により、3次元領域を抽出する。典型的な自動抽出手法は、Region Growing法である。Region Growingとは、一点または複数点のシード点(起点)から、それに隣接する画素を参照し、輝度等の情報をもとに予め設定したGrowing条件に適合するか否かを判断し、適合する場合はその隣接画素を領域内とし、領域内の画素全てをシードとして領域を広げていく。
【0123】
この場合、ユーザは、入力装置13によってシード点を指定する、もしくは初期可視化画像において指定した2次元位置(S13)をシード点として使用することができる。指定領域算出部143は、指定されたシード点、及び、予め定められた閾値及び条件もしくは入力装置13を介して調整された閾値及び条件を用いて、Region Growing処理を行う。他の自動抽出手法として、Watershed法やSnakes法などを利用することができる。
【0124】
この他、対象オブジェクトが指定されている場合には(S17におけるY及びS18におけるオブジェクト指定)、ユーザは、そのオブジェクトを、関心領域として指定することができる。入力装置13及び入力操作取得部142を介して、選択オブジェクトを3次元形状として指定する旨の入力を受け取った指定領域算出部143は、オブジェクト処理実行部145から現在のオブジェクトに属するボクセルの情報を受け取り、その領域を関心領域の形状と定義する。
【0125】
関心領域の位置の指定は、ステップ13で指定された2次元位置を基準として使用することができる。そこから、MPR、CMPR等の複数視点から投影した複数の2次元画像の表示内での移動を繰り返して決定する。この他、MIPにより可視化された画面上で表示されている画素、即ち表示画面内で指定したXY位置のZ軸上の点、又は、判定領域23内での最大輝度の点を指定点として使用してもよい。関心領域のサイズの指定は、入力装置13、入力操作取得部142を介して行うが、例えばキーボードの方向キー、マウス・ホイールによる指定、直接数値による指定などを入力とする。
【0126】
選択オブジェクト及びその他の領域を含む画像において関心領域を指定する場合、ユーザが、いずれの領域において指定位置を移動するかを選択することができることが好ましい。一例において、候補オブジェクトにおける移動とそれ以外の領域における移動とに、入力装置13の異なる操作法を適用する。
【0127】
例えば、ホイールの回転のみの操作は選択オブジェクトにおける移動の入力であり、キーボードのキー(例えばCtrl)を押しながらのホイール回転は、選択オブジェクト以外の領域における移動の入力である。もしくは、ユーザは、入力装置13から、いずれか一方の領域を選択する入力をした後、入力装置13により指定位置を移動する。これらの判断は、入力操作取得部142が行う。
【0128】
<関心領域データの記憶>
指定された関心領域の記憶において、指定領域算出部143は、ボリューム・データに関連付けて関心領域を定義し、内部メモリ20(及び、必要により、外部記憶装置10)へ記憶する。その方法の一例は、関心領域情報として、関心領域内のボクセルの3次元位置(3次元座標)の全てをボリューム・データに関連付けて記憶する。他の例は、ボリューム・データと同じボクセル数のマスク・データを生成し、関心領域内のボクセルと関心領域外のボクセルとに対して異なるマスク値を与え、そのマスク・データを記憶する。
【0129】
マスク・データの生成は、例えば、関心領域内のボクセルに値1を与え、関心領域外のボクセルに値0を与える。また、関心領域が球、立方体、円柱等の規定の形状である場合には、基準座標(中心の座標や特徴点(直方体の角など)の座標)、規定形状の情報、関心領域のサイズを記憶すれば、それらの情報によりボリューム・データから関心領域を再現することができる。
【0130】
次に、Region Growing法のような3次元領域自動抽出方法で抽出した領域を関心領域とする場合には、その抽出方法における1つ又は複数の基準ボクセル(シード)を含むパラメータを記憶することにより、マスク・データを記憶するよりも少ないデータ量で同じ関心領域を定義することが可能である。なお、関心領域を3次元形状として拡大/縮小を行っている場合には、パラメータはその情報(拡大/縮小率)を含む。
【0131】
この他、3次元領域自動抽出方法としてWatershed法を利用する場合、Region Growingのように、1つまたは複数の基準ボクセル(シード)と閾値を含むパラメータを記憶し、Snakes法を使用する場合には、エネルギー関数と複数の制御点を含むパラメータを記憶する。
【0132】
関心領域の記憶においては、関心領域の細部の情報が必要ないという場合もある。臓器や疾患部位を抽出しその最大径を計測する場合にはボクセル単位での正確さが求められるが、例えば、細部の形状や詳細な位置は必要なく、大まかな位置と大まかな3次元の範囲のみ記憶できればよいという場合もある。
【0133】
このように、関心領域の指定の際には細かく見ていたとしても、記憶時には情報量を落として関心領域(を定義するデータ)を記憶する場合には、指定領域算出部143は、複雑な3次元形状を予め設定されている規定形状へ変形させ、変形した関心領域(を定義するデータ)を記憶してもよい。例えば、指定領域算出部143は、基準位置の座標(例えば中心や特徴点の座標)、規定形状の情報、関心領域のサイズを記憶する。データ・サイズ、記憶データの扱い容易性、関心領域の数等、状況により適切な記憶方法が異なるため、利用目的に合わせた記憶方法をとることが重要である。
【0134】
以上、本発明を添付の図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこのような具体的構成に限定されるものではなく、添付した請求の範囲の趣旨内における様々な変更及び同等の構成を含むものである。
【0135】
例えば、上述のように、画像処理装置は、ユーザ入力に応じて決定した判定領域と重なるオブジェクトを、候補オブジェクトとして表示することが好ましい。これにより、候補オブジェクトとして適切なオブジェクトを選択的に表示することができる。しかし、設計によっては、画像処理装置は、判定領域を使用しなくともよい。例えば、画像処理装置は、ボリューム・データにおいて定義されている全てのオブジェクトを順次又は一括表示してもよい。
【符号の説明】
【0136】
1 医用画像処理システム、10 外部記憶装置、11 画像処理装置、12 表示装置
13 入力装置、15 内部メモリ、20 内部メモリ
21 画像処理アルゴリズム実行部、21 2次元指定位置、22 判定直線
23 判定領域、24 候補位置、31 皮膚オブジェクト、31 皮膚オブジェクト
32 頭骨オブジェクト、33 脳オブジェクト、61 初期可視化画像
62〜64 候補オブジェクト画像、91 オブジェクト輝度対応表
141 画像処理アルゴリズム実行部、142 入力操作取得部
143 指定領域算出部、144 可視化処理実行部、145 オブジェクト処理実行部
151 ボリューム・データ、152 初期可視化画像データ
153 判定領域特定データ、154 候補オブジェクト特定データ
155 候補オブジェクト画像データ、156 関心領域画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ入力を取得する入力取得部と、データ記憶装置と、画像処理部と、表示装置とを備える、3次元医用画像データの画像処理システムであって、
前記データ記憶装置は、前記3次元医用画像データを記憶し、
前記画像処理部は、前記3次元医用画像データを可視化処理して、一つ又は複数の候補オブジェクトのそれぞれを明示する一つ又は複数の候補オブジェクト画像データを生成し、その一つ又は複数の候補オブジェクト画像データを前記データ記憶装置に記憶し、
前記表示装置は、前記データ記憶装置に記憶されている前記一つ又は複数の候補オブジェクト画像データの画像を表示し、
前記画像処理部は、前記表示された画像に対するユーザ選択入力に従って、前記一つ又は複数の候補オブジェクトから3次元関心領域を指定するためのオブジェクトを選択し、
前記入力取得部は、前記選択したオブジェクトの表示画像に対する前記ユーザからの前記3次元関心領域の指定入力を受け付ける、画像処理システム。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記3次元医用画像データを可視化処理して初期可視化画像データを生成し、その初期可視化画像データを前記データ記憶装置に記憶し、
前記表示装置は、前記初期可視化画像データによる画像を表示し、
前記画像処理部は、表示されている前記初期可視化画像に対するユーザ入力に従って、前記3次元医用画像データにおける判定領域を決定し、
前記一つ又は複数の候補オブジェクトのそれぞれの一部は、前記判定領域に含まれる、請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記判定領域は立体形状を有している、請求項2に記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記判定領域は、前記初期可視化処理画像におけるユーザ指定の2次元位置を含む直線に沿って延び断面が一定形状の領域である、請求項3に記載の画像処理システム。
【請求項5】
前記一つ又は複数の候補オブジェクトは、前記3次元医用画像データ内に予め定義されている、請求項1〜4のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項6】
前記画像処理部は、前記3次元医用画像データにおける一つ又は複数のオブジェクトをボクセル輝度に基づき推定し、
前記一つ又は複数の候補オブジェクトは、前記推定された一つ又は複数のオブジェクトに含まれる、請求項1〜4のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項7】
前記画像処理システムは、前記判定領域におけるボクセルの輝度に基づき、前記判定領域における前記一つ又は複数のオブジェクトを推定し、
前記画像処理システムは、前記判定領域内で前記一つ又は複数の候補オブジェクトのそれぞれを明示する一つ又は複数の画像データを生成する、請求項2〜4のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項8】
前記画像処理部は、前記一つ又は複数の候補オブジェクトのそれぞれについて、方向が異なる2つの候補オブジェクト画像データを生成して前記データ記憶装置に記憶し、
前記表示装置は、前記2つの候補オブジェクト画像を同時に表示する、請求項1〜7のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項9】
前記画像処理部は、前記一つ又は複数の候補オブジェクトのそれぞれについて、方向が異なる2つの候補オブジェクト画像データを生成して前記データ記憶装置に記憶し、
前記表示装置は、前記2つの候補オブジェクト画像を同時に表示し、
前記2つの候補オブジェクト画像の一つは、前記判定領域において前記候補オブジェクトの位置を明示する、請求項2〜4のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項10】
前記表示装置は、前記2つの候補オブジェクト画像の複数の組を順次表示する、請求項9に記載の画像処理システム。
【請求項11】
前記画像処理部は、前記3次元関心領域の画像データとして、3次元領域抽出処理のパラメータを前記データ記憶装置に記憶し、
前記画像処理部は、前記パラメータを使用して、前記3次元領域画像抽出処理により前記3次元医用画像データにおける前記3次元関心領域の画像データを生成する、請求項1〜10のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項12】
医用画像処理システムにおける3次元医用画像データの画像表示において、ユーザによる3次元関心領域の指定を支援する処理をプロセッサに実行させるプログラムであって、前記処理は、
前記3次元医用画像データを可視化処理して、一つ又は複数の候補オブジェクトのそれぞれを明示する一つ又は複数の候補オブジェクト画像データを生成し、その一つ又は複数の候補オブジェクト画像データをデータ記憶装置に記憶し、
前記データ記憶装置に記憶されている前記一つ又は複数の候補オブジェクト画像データを表示装置に出力し、
表示された前記一つ又は複数の候補オブジェクト画像に対するユーザ選択入力に従って、前記一つ又は複数の候補オブジェクトから前記3次元関心領域を指定するためのオブジェクトを選択し、
前記選択したオブジェクトの画像表示に対する前記ユーザからの前記3次元関心領域の指定入力を受け付ける、ことを含むプログラム。
【請求項13】
前記処理は、
前記3次元医用画像データを可視化処理して初期可視化画像データを生成し、その画像データを前記データ記憶装置に記憶し、
前記初期可視化画像データを前記表示装置に出力し、
表示されている前記初期可視化画像に対するユーザ入力に従って、前記3次元医用画像データにおける判定領域を決定し、
前記一つ又は複数の候補オブジェクトのそれぞれの一部は、前記判定領域に含まれる、請求項12に記載のプログラム。
【請求項14】
3次元医用画像データ処理システムにおける画像処理方法であって、
前記3次元医用画像データをデータ記憶装置に記憶し、
前記3次元医用画像データを可視化処理して一つ又は複数の候補オブジェクトのそれぞれを明示する一つ又は複数の候補オブジェクト画像データを生成し、その一つ又は複数の候補オブジェクト画像データを前記データ記憶装置に記憶し、
前記データ記憶装置に記憶されている前記一つ又は複数の候補オブジェクト画像データによる画像を表示し、
前記表示された一つ又は複数の画像に対するユーザ選択入力に従って、前記一つ又は複数の候補オブジェクトから3次元関心領域を指定するためのオブジェクトを選択し、
前記選択したオブジェクトの表示画像に対する前記ユーザからの前記3次元関心領域の指定入力を受け付ける、画像処理方法。
【請求項15】
前記3次元医用画像データを可視化処理して初期可視化画像データを生成し、その初期可視化画像データを前記データ記憶装置に記憶し、
前記初期可視化画像データを表示し、
表示されている前記初期可視化画像に対するユーザ入力に従って、前記3次元医用画像データにおける判定領域を決定し、
前記一つ又は複数の候補オブジェクトのそれぞれの一部は、前記判定領域に含まれる、請求項14に記載の画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−85833(P2012−85833A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235277(P2010−235277)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】