説明

4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの製造方法

本発明は、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−オンの製造方法に関する。本発明によれば、エチレンカーボネートは、エチレンカーボネートのための溶剤としての4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン3〜20質量%(エチレンカーボネートに対して)と反応させ、かつ、これらの溶液に、15〜45℃の温度で、フッ素または不活性ガス中にフッ素を含有する混合物を導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い選択率で、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを製造するための方法に関する。4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンは、クロロエチレンカーボネートとフッ化カリウムとの化学量論的反応によって製造することができる。ここでの反応時間は約24時間である。JP2000 309583では、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン2−オンを、エチレンカーボネートとフッ素との反応によって製造する方法が記載されている。直接的なフッ素化反応は、極めて強い発熱反応であることから、エチレンカーカーボネートを有機溶剤中に溶解し、かつフッ素ガスまたはフッ素含有ガス混合物を、エチレンカーボネート中に導入する。その際、反応温度は、20〜100℃の範囲である。直接的なフッ素化反応は強い発熱反応であるため、反応温度を、制御可能な範囲に維持することに配慮しなければならない。JP2000309583によれば、導入されたガス相を冷却する。
【0002】
本発明の課題は、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを製造するための改善された方法を提供することから成る。この方法は、高い選択率および良好な温度操作により優れている。
【0003】
本発明によれば、エチレンカーボネートを、3〜20質量%の4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(エチレンカーボネート量に対して)と混合する。この溶液は、最初に約35℃に加熱され、それによりエチレンカーボネートが溶解する。反応溶液中に、フッ素ガスまたは不活性ガス中でフッ素を含有する混合物を導入する。フッ素を、存在するエチレンカーボネートに対して化学量論量を下廻る量で、たとえば、フッ素量は、60〜95モル%、好ましくは70〜95モル%の範囲で(存在するエチレンカーボネートに対して)添加することで、副次的成分の形成が抑制される。全反応時間において、反応溶液を15〜45℃に冷却する。フッ素化の開始時にのみ、溶液の温度をエチレンカーボネートの融点を上廻る温度に短時間置く(37〜39℃)。フッ素化時間の90%を上廻って、溶液の温度は、エチレンカーボネートの融点を下廻る。一つの実施態様において、溶液の温度は20〜35℃である。これにより得られた反応溶液は、生じるフッ化水素酸の入念な中和後に、真空下で複数回に亘って精製する。エチレンカーボネート含有画分は、本発明による方法のための出発材料として使用することができる。したがって、未変換のエチレンカーボネートを工程中に再循環させることができる。
【0004】
本発明による方法に必要な4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの最初の量は、公知方法によって製造することができる。
【0005】
本発明によれば、反応混合物の融点は、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの添加によって低下することが見出された。これにより、反応パートナーがすでにエチレンカーボネートの融点温度を下廻っている場合であっても、互いに反応させることが可能である。
【0006】
さらに、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの添加によって、反応混合物を温度が低下しうるのみならず、同時に反応性も減少することが見出された。
【0007】
これにより反応の選択率は著しく改善され、その中で、少量のフッ素の添加で済むこと、ならびに生成物に変換されたフッ素の収率が増加することが示された。そのため、副次的成分の形成も同様に抑制された。このように、使用されるフッ素量を半分にすることによって、公知方法による収率を獲得することができる。
【0008】
本発明による方法の他の利点は、4−フルオロ−1,3−ジオキシサン−2−オンの合成後にさらに分離しなければならない、付加的な別個の不活性溶剤を必要としないことからなる。したがって、得られた反応溶液の後処理は簡素化される。
【0009】
本発明は以下の実施例によってさらに説明されるが、これに制限されることはない。
【0010】
例1
エチレンカーボネートは、37〜39℃の融点を有するのに対して、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンは、約17℃の融点を示す。4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンをエチレンカーボネートに添加することによって、これらの融点を低下させることができる。したがって、87%のエチレンカーボネートと13%の4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとの混合物は、約20℃の融点を示す。
【0011】
例2
エチレンカーボネート2000gを、室温で、PFA−容器中に装入した。エチレンカーボネートを含有する、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン含有溶液616gをさらに添加した。全反応溶液は、95.03質量%のエチレンカーボネート(2483.4g:28.22モル)および4.88質量%の4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(129.3g;1.22モル)を含有していた。
【0012】
これらの懸濁液を35℃に加熱し、その際、装入されたエチレンカーボネートは完全に溶解した。
【0013】
その後に、フッ素/窒素−ガス混合物(5:95体積%)を、PTFE−フリットを用いた浸漬管(Taucherrohr)を介して導入した。
【0014】
さらに、25.23モルのフッ素(100%フッ素として算定した)を導入した。
【0015】
フッ素化を開始するために、溶液の温度は、短時間、エチレンカーボネートの融点を上廻った。フッ素化時間の90%を上廻って、溶液の温度は、エチレンカーボネートの融点を下廻り、好ましくは30〜35℃である。
【0016】
反応の終了後に、反応溶液を最初にアセトンを添加することによって精製した。その後に、炭酸水素カリウムを用いて撹拌下で中和した。得られた懸濁液は、ヌッチェを介して吸引濾過し、かつ残留物を、再度アセトンを用いて洗浄した。
【0017】
これに応じて、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン 1839g(17.34モル)が得られた。元々含有する4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの量を差し引いた後に、使用したフッ素量に対して63.9%の収率で4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが得られる結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンカーボネートを、元素フッ素と反応させることによって、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを製造するための方法において、反応容器中のエチレンカーボネートに、エチレンカーボネートのための溶剤として3〜20質量%の4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(エチレンカーボネートに対して)を混合し、かつこの溶液中に、15〜45℃の温度で、フッ素ガスまたは不活性ガス中にフッ素を含有する混合物を導入することを特徴とする、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを製造するための方法。
【請求項2】
エチレンカーボネートに、エチレンカーボネートのための溶剤として4〜14質量%の4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(エチレンカーボネートに対して)を添加する、請求項1に記載の4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを製造するための方法。
【請求項3】
反応に、他の溶剤を添加しない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
反応を、エチレンカーボネートの融点を下廻って実施する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
副次的成分の形成を抑制するために、フッ素を、存在するエチレンカーボネートに対する化学量論量を下廻って、好ましくは60〜95モル%で添加する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
エチレンカーボネートの未変換の量を再循環させる、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2006−519191(P2006−519191A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501829(P2006−501829)
【出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001345
【国際公開番号】WO2004/076439
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(592165314)ゾルファイ フルーオル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (55)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Fluor GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans−Boeckler−Allee 20,D−30173 Hannover,Germany