説明

5,5−二置換4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−チオカルボキサミジン塩の製造方法

本発明は、i)最初に式(II)で示される3-無置換4,5-ジヒドロイソオキサゾールを塩素化剤または臭素化剤と反応させて式(III)で示される3-ハロゲン化4,5-ジヒドロイソオキサゾールにし、ii)次いで式(III)で示される3-ハロゲン化4,5-ジヒドロイソオキサゾールをチオウレアと反応させて式(I)で示される化合物にすることを特徴とする、式(I)で示される5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルボキサミジン塩の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)
【化1】

【0002】
〔式中、R1、R2、R3、R4、およびAは、それぞれ、以下のように定義される:
R1、R2は、それぞれ独立して、C1〜C6-アルキルもしくはC1〜C4-ハロアルキルであり、
R3、R4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1〜C6-アルキル、もしくはC1〜C4-ハロアルキルであり、または
R1とR2、R3とR4、もしくはR1とR3は、一緒になって、C1〜C4-アルキルにより一置換〜四置換されていてもよいおよび/または酸素もしくは場合によりC1〜C4-アルキル置換窒素が介在していてもよいC2〜C5-アルカンジイル鎖を形成し、かつ
Aは、塩素または臭素である〕
で示される5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルボキサミジン塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
式(I)で示される5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルボキサミジン塩は、活性農業化学(agrochemical)成分および活性医薬成分を調製するための重要な中間体である(国際公開第2002/062770号パンフレット)。
【0004】
5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルボキサミジン塩およびその製造方法は、先行技術から公知である。欧州特許第1829868号明細書(1)には、酸の存在下での3-ハロゲン化4,5-ジヒドロイソオキサゾールとチオウレアとの反応が記載されている。3-ハロゲン化4,5-ジヒドロイソオキサゾールは、アルケン上へのニトリルオキシドの1,3-双極子付加環化により調製可能である(国際公開第2006/038657号パンフレット(2)、国際公開第2000/050410号パンフレット(3))。ニトリルオキシドは、好ましくは、ジハロホルムオキシムからin situで調製され、さらに直接処理される(特開2008-001597号公報(4))。他の一選択肢は、POCl3による3-イソオキサゾリジノンのハロゲン化である(国際公開第2007/096576号パンフレット(5))。
【0005】
以下のスキーム1により概要を示す。ここで、RおよびXは、先行技術文書(1)、(2)、(3)、(4)、および(5)のそれぞれに挙げられた置換基を表す。
【化2】

【0006】
アシビシンの全合成の過程では、アミノ酸エステルの4,5-ジヒドロイソオキサゾリル部分の3位は、直接塩素化された(J. Org. Chem., 53 (17), 4074-4081)。
【0007】
スキーム1によるプロセスの欠点は、不安定なジハロホルムオキシムの使用である。ジクロロ誘導体の場合、蒸留精製後でさえも、数日以内に顕著な分解を呈し(Ber. 65B, 754-759)、ジブロモ誘導では、分解は、室温ではより緩徐に進行するが、高温では激しく進行する(J. Liebigs Ann. 489, 7-30)。その結果、プロセスの収率は、多くの場合、中程度にすぎない。それに加えて、両化合物は、分解して毒性ガスを生成し、かつ強烈な皮膚刺激物質である。さらに、中間体は、化合物のエネルギー含有量が高いので、予防措置として蒸留しなければならない。3-イソオキサゾリジノンを使用する場合、出発物質の調製は、困難であることが判明している。また、3-ハロゲン置換4,5-ジヒドロイソオキサゾールの形成は、エーテル系溶媒中または酢酸エチル中で優先的に進行するが、後続のチオカルボキサミジン塩の形成は、アルコール中、ニトリル中、またはケトン中で優先的に進行することから、ジハロホルムオキシムから出発する式(I)で示される化合物の工業規模の合成は、厄介である。このため、いくつかの状況下では、溶媒交換または個別の反応槽中での実施が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2002/062770号パンフレット
【特許文献2】欧州特許第1829868号明細書
【特許文献3】国際公開第2006/038657号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2000/050410号パンフレット
【特許文献5】特開2008-001597号公報
【特許文献6】国際公開第2007/096576号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J. Org. Chem., 53 (17), 4074-4081
【非特許文献2】Ber. 65B, 754-759
【非特許文献3】J. Liebigs Ann. 489, 7-30
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、式(I)で示される5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルボキサミジン塩を調製するための工業規模の使用に好適である安価で採算の合う安全な方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、この目的は、最初に、式(II)で示される3-無置換5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾールを少なくとも等モル量のハロゲン化剤と反応させ、そして得られた式(III)で示される3-ハロゲン化5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾールを少なくとも化学量論量のチオウレアと反応させて式(I)で示される5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルボキサミジン塩を生成する方法により達成されることを見いだした。
【0012】
したがって、本出願は、式(I)
【化3】

【0013】
〔式中、R1、R2、R3、R4、およびAは、それぞれ、以下のように定義される:
R1、R2は、それぞれ独立して、C1〜C6-アルキルもしくはC1〜C4-ハロアルキルであり、
R3、R4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1〜C6-アルキル、もしくはC1〜C4-ハロアルキルであり、または
R1とR2、R3とR4、もしくはR1とR3は、一緒になって、C1〜C4-アルキルにより一置換〜四置換されていてもよいおよび/または酸素もしくは場合によりC1〜C4-アルキル置換窒素が介在していてもよいC2〜C5-アルカンジイル鎖を形成し、かつ
Aは、塩素または臭素である〕
で示される5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルボキサミジン塩の製造方法を提供する。この方法では、
i) 最初に、式(II)で示される3-無置換4,5-ジヒドロイソオキサゾールを塩素化剤または臭素化剤と反応させて式(III)で示される3-ハロゲン化4,5-ジヒドロイソオキサゾールを生成し、
【化4】

【0014】
ii) 次いで、式(III)で示される3-ハロゲン化4,5-ジヒドロイソオキサゾールをチオウレアと反応させて式(I)で示される化合物を生成する。
【化5】

【0015】
本発明のさらなる実施形態は、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、および実施例から推測可能である。以上に述べた本発明の内容の特徴およびさらに以下で説明されることは、各場合で指定された組合せだけでなく他の組合せでも本発明の範囲から逸脱することなく使用可能であることはわかるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
置換基に対して指定された有機分子部分は、個別の基のメンバーの個別のリストに対する総称名に相当する。炭化水素鎖は、直線状または分岐状でありうる。とくに明記されていないかぎり、ハロゲン化置換基は、好ましくは、1〜5個の同一のまたは異なるハロゲン原子を有する。
【0017】
「ハロゲン」の定義は、いずれの場合も、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素、好ましくはフッ素または塩素である。
【0018】
さらなる定義の例としては、以下のものが挙げられる。
【0019】
アルキル、ならびにカルボキシアルキル、スルホニルアルキル、フェニルアルキル、アリールアルキル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、ヒドロキシイミノアルキル、アルキルアミノ、アルキルカルボニルオキシ、アルキルシリル、およびアルキルシリルオキシのアルキル部分とは、それぞれ、1〜6または1〜4個の炭素原子を有する飽和の直鎖状または分岐状の炭化水素基のことであり、たとえば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、およびそれらの異性体である。C1〜C4-アルキルとしては、たとえば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、または1,1-ジメチルエチルが挙げられる。
【0020】
シクロアルキルとは、3個以上の炭素原子たとえば3〜6個の環員炭素を有する単環式飽和炭化水素基、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルを意味する。
【0021】
ハロアルキルおよびハロアルコキシのハロアルキル部分とは、それぞれ、ハロゲン原子が特定的にはフッ素、塩素、および/または臭素である部分または完全ハロゲン化アルキル、たとえば、クロロメチル、ブロモメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロフルオロメチル、ジクロロフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、1-クロロエチル、1-ブロモエチル、1-フルオロエチル、2-フルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2-クロロ-2-フルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル、1,1,2,2-テトラクロロエチル、ペンタフルオロエチル、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロピル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-プロピル、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル、ヘプタフルオロ-1-プロピル、ヘプタフルオロ-2-プロピル、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブチル、またはノナフルオロ-1-ブチルを意味する。
【0022】
アルケニルならびにフェニルアルケニルおよびアルケニルオキシのアルケニル部分とは、それぞれ、2〜6または2〜4個の炭素原子と任意の位置に1個の二重結合とを有するモノ不飽和の直鎖状または分岐状の炭化水素基のことであり、たとえば、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-メチルエテニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、3-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-2-プロペニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-プロペニル、1-エチル-2-プロペニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-メチル-1-ペンテニル、2-メチル-1-ペンテニル、3-メチル-1-ペンテニル、4-メチル-1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、1-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-3-ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-メチル-4-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、4-メチル-4-ペンテニル、1,1-ジメチル-2-ブテニル、1,1-ジメチル-3-ブテニル、1,2-ジメチル-1-ブテニル、1,2-ジメチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-3-ブテニル、1,3-ジメチル-1-ブテニル、1,3-ジメチル-2-ブテニル、1,3-ジメチル-3-ブテニル、2,2-ジメチル-3-ブテニル、2,3-ジメチル-1-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-3-ブテニル、3,3-ジメチル-1-ブテニル、3,3-ジメチル-2-ブテニル、1-エチル-1-ブテニル、1-エチル-2-ブテニル、1-エチル-3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、2-エチル-2-ブテニル、2-エチル-3-ブテニル、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-メチル-2-プロペニル、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル、1-エチル-2-メチル-2-プロペニルである。
【0023】
アルキニルおよびアルキニルオキシのアルキニル部分とは、それぞれ、2個以上の炭素原子、たとえば、2〜4、2〜6、または3〜6個の炭素原子と、隣接位置は対象外として任意の位置に1または2個の三重結合と、を有する直鎖状または分岐状の炭化水素基、たとえば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-メチル-2-プロピニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-メチル-2-ブチニル、1-メチル-3-ブチニル、2-メチル-3-ブチニル、3-メチル-1-ブチニル、1,1-ジメチル-2-プロピニル、1-エチル-2-プロピニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、5-ヘキシニル、1-メチル-2-ペンチニル、1-メチル-3-ペンチニル、1-メチル-4-ペンチニル、2-メチル-3-ペンチニル、2-メチル-4-ペンチニル、3-メチル-1-ペンチニル、3-メチル-4-ペンチニル、4-メチル-1-ペンチニル、4-メチル-2-ペンチニル、1,1-ジメチル-2-ブチニル、1,1-ジメチル-3-ブチニル、1,2-ジメチル-3-ブチニル、2,2-ジメチル-3-ブチニル、3,3-ジメチル-1-ブチニル、1-エチル-2-ブチニル、1-エチル-3-ブチニル、2-エチル-3-ブチニル、1-エチル-1-メチル-2-プロピニルを意味する。
【0024】
アリールとは、6〜14個の環員を有する単環式〜三環式の芳香族炭素環、たとえば、フェニル、ナフチル、アントラセニルを意味する。
【0025】
ヘテロアリールとは、1〜4個の窒素原子を有するまたは1〜3個の窒素原子と1個の酸素原子もしくは硫黄原子とを有するまたは1個の酸素原子もしくは硫黄原子を有する五員または六員の芳香環系を意味する。
【0026】
ヘテロシクリルとは、3個以上の炭素原子を有する飽和、部分不飽和、または芳香族のヘテロ環式環、たとえば、酸素、硫黄、および窒素の群から選択される1〜4個の同一のまたは異なるヘテロ原子を含みかつCまたはNを介して結合されうる三員、四員、五員、または六員のヘテロ環式環を意味し、ただし、ヘテロシクリル中の硫黄は、S=OまたはS(=O)2に酸化されていてもよく、また、縮合フェニル環またはC3〜C6-炭素環またはさらなる五員もしくは六員のヘテロ環と共に二環式環系を形成してもよい。
【0027】
本発明に係る方法では、好ましい選択肢としては、変数が以下のように定義される式(II)で示される化合物を、特定的にはいずれの場合も単独でまたは組合せで、使用することが挙げられる。すなわち、
R1は、C1〜C6-アルキルまたはC1〜C4-ハロアルキルであり、
R2は、C1〜C6-アルキルまたはC1〜C4-ハロアルキルであり、
R3は、水素、ハロゲン、C1〜C6-アルキル、C1〜C4-ハロアルキルであり、かつ
R4は、水素、ハロゲン、C1〜C6-アルキル、C1〜C4-ハロアルキルであり、または
R1とR2、R3とR4、もしくはR1とR3は、C2〜C5-アルカンジイル鎖を形成する。
【0028】
とくに好ましい選択肢としては、変数が以下のように定義される式(II)で示される化合物を、特定的にはいずれの場合も単独でまたは組合せで、使用することが挙げられる。すなわち、
R1は、C1〜C4-アルキル、特定的にはメチルまたはエチル、より好ましくはメチルであり、
R2は、C1〜C4-アルキル、特定的にはメチルまたはエチル、より好ましくはメチルであり、
R3は、水素、フッ素、塩素、臭素、メチル、エチル、より好ましくは水素であり、かつ
R4は、水素、フッ素、塩素、臭素、メチル、エチル、より好ましくは水素である。
【0029】
とりわけ好ましい選択肢としては、変数が以下のように定義される式(IIa)で示される化合物を使用することが挙げられる。すなわち、
R1はメチルであり、
R2はメチルであり、
R3は水素であり、
R4は水素である。
【0030】
本発明に係る方法では、式(IIa)で示される化合物を式(Ia)で示される化合物に変換する。
【化6】

【0031】
R3、R4がそれぞれ独立して水素、フッ素、または塩素として定義される式(I)で示される特定の5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルボキサミジン塩は、たとえば、式(IV)
【化7】

【0032】
〔式中、変数は、それぞれ、以下のように定義される:
nは、0、1、または2であり、
X1、X2、X3、X4は、それぞれ独立して、水素、フッ素、または塩素であり、かつ
Yは、フェニル、1〜3個の窒素原子を有する六員ヘテロアリール、または酸素、窒素、および硫黄の群から選択される1〜3個のヘテロ原子を有する五員ヘテロアリールであり、ここで、フェニルおよびヘテロアリールは、それぞれ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1〜C4-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C1〜C4-ハロアルキル、カルボキシ-C1〜C4-アルキル、スルホニル-C1〜C4-アルキル、C2〜C6-アルケニル、C2〜C6-アルキニル、C1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルコキシ、C2〜C6-アルケニルオキシ、C2〜C6-アルキニルオキシ、およびC1〜C4-アルキルカルボニルオキシの群から選択される1〜5個の置換基により置換されていてもよく、かつ
R1、R2は、それぞれ独立して、C1〜C6-アルキルもしくはC1〜C4-ハロアルキルであり、またはR1とR2は、一緒になって、C1〜C4-アルキルにより一置換〜四置換されていてもよいおよび/または酸素もしくは場合によりC1〜C4-アルキル置換窒素が介在していてもよいC2〜C5-アルカンジイル鎖を形成する〕
で示されるオキサゾール系除草剤の製造方法の中間体である。
【0033】
式(IV)で示されるオキサゾール系除草剤は、国際公開第02/062770号パンフレットおよび国際公開第01/012613号パンフレットから公知である。
【0034】
R1およびR2がそれぞれメチルとして定義されかつR3およびR4がそれぞれ水素として定義される式(Ia)で示される5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルボキサミジン塩は、好ましくは、式(IVB)
【化8】

【0035】
〔式中、
nは、1または2であり、
X1、X2は、それぞれ独立して、水素またはフッ素であり、かつ
Yは、フェニルであり、ここで、フェニルは、ハロゲン、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-ハロアルキル、およびC1〜C4-アルコキシの群から選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよい〕
で示されるオキサゾール系除草剤の製造方法の中間体として使用される。
【0036】
より特定的には、R1およびR2がそれぞれメチルとして定義されかつR3およびR4がそれぞれ水素として定義される式(Ia)で示される5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルボキサミジン塩は、式(IVA)
【化9】

【0037】
〔式中、
nは、1または2であり、
X1、X2は、それぞれ独立して、水素またはフッ素であり、かつ
Yは、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-ハロアルキル、およびC1〜C4-ハロアルコキシの群から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよいピラゾリルである〕
で示されるオキサゾール系除草剤の製造方法の中間体としても使用される。
【0038】
とりわけ好ましくは、R1およびR2がそれぞれメチルとして定義されかつR3およびR4がそれぞれ水素として定義される式(Ia)で示される5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルボキサミジン塩は、式(IVa)および(IVb)で示されるオキサゾール系除草剤の製造方法の中間体として使用される。
【化10】

【0039】
たとえば、式(Ia)で示される中間体から出発する式(IVa)で示されるオキサゾール系除草剤の製造方法のさらなる工程は、それ自体すでに当業者に公知であるか、または文献に記載されている。
【0040】
ジカルボニル化合物とヒドラジンとからのピラゾールの調製(c)は、たとえば、特開2007-031342号公報に示されている。ヒドロキシル置換ピラゾールとホルムアルデヒドとの反応およびそれに続くチオカルボキサミジン塩との反応(d)は、カナダ国特許第2560936号明細書(国際公開第2005/095352号パンフレット)に記載されている。ヒドロキシル基のアルキル化(e)は、特開2007-246396号公報から当業者に公知である。スルホンへの硫黄の最終酸化(f)は、たとえば、欧州特許第1405853号明細書で利用されている。
【0041】
式(IVa)で示される化合物の場合、利用可能な一合成法は、次のように示すことが可能である。
【化11】

【0042】
たとえば、式(Ia)で示される中間体から出発する式(IVb)で示されるオキサゾール系除草剤の製造方法のさらなる工程は、それ自体すでに当業者に公知であるか、または文献に記載されている。
【0043】
ベンジルブロミドの求核置換(g)は、たとえば、国際公開第2007/096576号パンフレットに示されている。スルホンへの硫黄の最終酸化(h)は、たとえば、欧州特許第1405853号明細書で利用されている。
【0044】
式(IVb)で示される化合物の場合、利用可能な一合成法は、次のように示すことが可能である。
【化12】

【0045】
本発明に係る方法は、次のように模式的に示すことが可能である。
【化13】

【0046】
式(II)で示される3-無置換4,5-ジヒドロイソオキサゾールは、市販品として入手可能であるかまたは他の選択肢としてGrunanger, P.; Vita-Finzi, P.: Isoxazoles in Taylor, E. C.: The Chemistry of Heterocyclic Compounds Vol. 49, Wiley&Sons. Inc., New York, 1991, p. 460-540に従って調製可能である。
【0047】
本発明に係る方法は、一般的には、以下の条件下で行われる。
【0048】
式(II)で示される化合物は、純物質としてまたは生成反応からの粗生成物として使用可能である。この目的では、式(II)で示される3-無置換4,5-ジヒドロイソオキサゾールは、好適な溶媒中に溶解もしくは懸濁させることが可能であるかまたは生成反応から好適な溶媒中に溶解もしくは懸濁された状態で存在可能であるかのいずれかである。
【0049】
工程i)およびii)に好適な溶媒または希釈剤は、反応条件下で不活性なもの、たとえば、アルコール、塩素化芳香族炭化水素または塩素化脂肪族炭化水素、エステル、エーテル、アミド、ニトリル、またはこれらの溶媒の混合物である。好ましい選択肢としては、アルコール、特定的には第三級アルコール、たとえばtert-ブタノールまたはtert-アミルアルコール、塩素化芳香族炭化水素または塩素化脂肪族炭化水素、たとえばクロロベンゼンおよびクロロホルムを溶媒として使用することが挙げられる。とりわけ好ましくは、tert-ブタノールが使用される。
【0050】
驚くべきことに、tert-ブタノールは、チオウレアとの後続反応で非反応性であることが判明している3-アルコキシ-4,5-ジヒドロイソオキサゾールを形成するごくわずかな傾向を呈するにすぎないので、第一級脂肪族アルコールと比較して有利であることが判明している(比較例1)。
【0051】
本発明に係る方法の反応工程i)およびii)では、いずれの場合も以上に挙げたものの中からさまざまな溶媒および希釈剤を使用することが可能である。好ましい実施形態では、反応工程i)およびii)は、同一の溶媒または希釈剤中で行われ、とくに好ましい実施形態では、工程i)およびiiは両方とも、tert-ブタノール中で行われる。
【0052】
溶媒または希釈剤の量は、一般的には、反応混合物が反応時に自由流動性を維持するように選択される。好ましい実施形態では、式(II)で示される3-無置換4,5-ジヒドロイソオキサゾール1モルあたり1L未満、より好ましくは500mL未満の溶媒が使用される。これらの数値は、反応工程i)およびiiの溶媒の全量に基づく。コストが理由で、最少量の溶媒が使用されるであろうことはわかるであろう。したがって、一般的には、溶媒の量は、式(II)で示される3-無置換4,5-ジヒドロイソオキサゾール1モルあたり5Lを超えることはないであろう。
【0053】
式(II)で示される化合物は、ハロゲン化剤との反応により3-ハロゲン化4,5-ジヒドロイソオキサゾールに変換され、その際、反応剤は、等モル量または10倍過剰まで、好ましくは等モル量または1.5倍過剰までで使用される。
【0054】
好適な反応剤は、たとえば、単体の塩素または臭素、次亜塩素酸塩または次亜臭素酸塩の水性溶液、酸化剤の存在下、たとえば、過酸化水素、ペルオキソ一硫酸カリウム、または有機ペルオキシド(たとえばtert-ブチルヒドロペルオキシドなど)の存在下の無機の臭化物および塩化物、たとえば、HCl、HBr、NaCl、KCl、NaBr、またはKBrなどの溶液、臭素と過酸化水素との組合せ、有機次亜塩素酸塩(たとえば次亜塩素酸tert-ブチル)、トリクロロイソシアヌル酸、チオニルクロリド、またはスルフリルクロリド、N-ブロモスクシンイミド、N-クロロスクシンイミド、または1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントインである。ハロゲン化剤は、純物質としてまたは以上に指定された溶媒の1つに添加して溶液として使用可能である。とくに好ましい選択肢としては、ハロゲンの臭素および塩素が挙げられる。
【0055】
とりわけ好ましい実施形態では、塩素ガスは、出発物質が完全に変換されるまで反応溶液中に導入される。反応の進行は、当業者に公知の方法を利用して、たとえば、得られた反応生成物のHPLC分析により、モニター可能である。
【0056】
反応は、-30℃〜150℃の温度、好ましくは-10℃〜30℃の温度で行われる。
【0057】
工程i)の反応生成物すなわち式(III)で示される3-ハロゲン化4,5-ジヒドロイソオキサゾールは、本発明に係る方法では、精製することなく直接または精製後、工程ii)でチオウレアと反応させて式(I)で示される4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルボキサミジン塩を生成することが可能である。
【0058】
工程i)の反応生成物すなわち式(III)で示される3-ハロゲン化4,5-ジヒドロイソオキサゾールは、慣例に従って、たとえば、蒸留、結晶化、沈殿、抽出、またはクロマトグラフィーにより、好ましくは蒸留により、精製可能である。
【0059】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、工程i)の反応生成物すなわち式(III)で示される3-ハロゲン化4,5-ジヒドロイソオキサゾールは、精製することなく直接、工程ii)でチオウレアと反応させて式(I)で示される4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルボキサミジン塩を生成することが可能である。
【0060】
本発明に係る方法のとくに好ましい実施形態では、工程i)の反応生成物すなわち式(III)で示される3-ハロゲン化4,5-ジヒドロイソオキサゾールは、精製することなく直接、同一の反応槽内ですなわちワンポットプロセスで、工程ii)でチオウレアと反応させて式(I)で示される4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルボキサミジン塩を生成することが可能である。
【0061】
工程i)のハロゲン化後、場合により、反応生成物の精製、窒素による反応槽のパージング、または減圧の適用を行った後、式(I)で示される5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルボキサミジン塩への変換は、チオウレアの添加により行われる。
【0062】
一般的には、チオウレアは、反応が終了するまで、工程ii)で固体形態で少しずつ何回かに分けて添加される。好ましい選択肢としては、反応混合物中に存在する3-ハロゲン化4,5-ジヒドロイソオキサゾールを基準にして等モル量または1.2倍過剰までのチオウレアを添加することが挙げられる。
【0063】
反応は、0℃〜100℃、好ましくは室温〜50℃の温度で行われる。
【0064】
驚くべきことに、tert-ブタノール中での本発明に係る方法の工程ii)のチオウレアとの反応は、酸の追加添加を行わないときでさえも円滑な反応で迅速に進行する。欧州特許第1829868号明細書の比較例では、酸添加なしのエタノール中での単離された3-クロロ-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールとチオウレアとの反応により、30℃で10時間後にわずか10%の収率で所望のチオカルボキサミジン塩が得られるにすぎない。5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルボキサミジン塩を調製するための本発明に係る方法では、非常に高い収率で対応する5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルボキサミジン塩が得られる。酸の追加添加は、本発明に係る方法では必要でない。
【0065】
工程ii)で得られた反応混合物は、慣例に従って後処理される。たとえば、本発明に係る方法の生成物すなわち式(I)で示される5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルボキサミジン塩は、溶媒の除去後、再結晶により精製可能である。好ましい実施形態では、生成物は、場合により反応溶液の濃縮後または貧溶媒たとえばアセトンやトルエンなどの非極性溶媒の添加後、結晶形態で反応媒体から沈殿する。
【0066】
本発明に係る方法の一実施形態では、式(IIb)〔式中、R1およびR2は、それぞれ、C1〜C6-アルキルまたはC1〜C4-ハロアルキルであり、またはR1とR2は、一緒になって、C1〜C4-アルキルにより一置換〜四置換されていてもよいおよび/または酸素もしくは場合によりC1〜C4-アルキル置換窒素が介在していてもよいC2〜C5-アルカンジイル鎖を形成し、かつR3およびR4は、それぞれ、水素である〕で示される3-無置換5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾールは、前段階で調製され、そして場合により溶媒交換後、さらに本発明に係る方法で直接使用される。
【0067】
本発明に係る方法の前段階は、式(IIb)
【化14】

【0068】
〔式中、
R1、R2は、それぞれ独立して、C1〜C6-アルキルまたはC1〜C4-ハロアルキルであり、あるいはR1とR2は、一緒になって、C1〜C4-アルキルにより一置換〜四置換されていてもよいおよび/または酸素もしくは場合によりC1〜C4-アルキル置換窒素が介在していてもよいC2〜C5-アルカンジイル鎖を形成する〕
で示される5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾールの製造方法であり、この方法では、式(AII)
【化15】

【0069】
〔式中、
Ra、Rbは、それぞれ独立して、水素、C1〜C6-アルキル、C1〜C4-アルキルカルボニル、ヒドロキシイミノ-C1〜C4-アルキル、フェニル、フェニル-C1〜C4-アルキル、もしくはフェニル-C2〜C4-アルケニルであり{ここで、フェニル環は、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシ、ジ-C1〜C4-アルキルアミノ、ハロゲン、ヒドロキシル、もしくはニトロにより一置換もしくは多置換されていてもよい}、またはRaとRbは、一緒になって、C2〜C5-アルカンジイル鎖を形成する〕
で示されるオキシムは、触媒の存在下でかつ場合により溶媒の存在下で、式(AIII)
【化16】

【0070】
〔式中、R1およびR2は、それぞれ、以上に定義したとおりである〕
で示されるカルボニル化合物と反応させる。
【0071】
本発明に係る方法の前段階では、好ましい選択肢としては、変数がいずれの場合も単独でまたは組合せでそれぞれ以下のように定義される式(AII)および(AIII)で示される化合物を使用することが挙げられる。すなわち、
R1は、C1〜C6-アルキルまたはC1〜C4-ハロアルキルであり、
R2は、C1〜C6-アルキルまたはC1〜C4-ハロアルキルであり、
Raは、水素、C1〜C6-アルキル、C1〜C4-アルキルカルボニル、ヒドロキシイミノ-C1〜C4-アルキルであり、かつ
Rbは、C1〜C6-アルキルであり、またはRaとRbは、C2〜C5-アルカンジイル鎖を形成する。
【0072】
とくに好ましい選択肢としては、変数がいずれの場合も単独でまたは組合せでそれぞれ以下のように定義される式(AII)および(AIII)で示される化合物を使用することが挙げられる。すなわち、
R1は、C1〜C4-アルキル、特定的にはメチルまたはエチル、より好ましくはメチルであり、
R2は、C1〜C4-アルキル、特定的にはメチルまたはエチル、より好ましくはメチルであり、
Raは、水素、C1〜C4-アルキル、特定的にはメチル、エチル、イソプロピル、もしくはイソブチル、より好ましくはメチルおよびエチルであり、かつ
Rbは、C1〜C4-アルキル、特定的にはメチルもしくはエチルであり、またはRaとRbは、C2〜C5-アルカンジイル鎖を形成する。
【0073】
とりわけ好ましい選択肢としては、変数がいずれの場合も単独でまたは組合せでそれぞれ以下のように定義される式(AII)および(AIII)で示される化合物を使用することが挙げられる。すなわち、
R1はメチルであり、
R2はメチルであり、
Raはメチルまたはエチルであり、
Rbはメチルまたはエチルである。
【0074】
本発明に係る方法の前段階では、式(AII)で示されるオキシムは、酸触媒または酸塩基触媒の存在下でかつ場合により有機溶媒の存在下で、式(AIII)で示されるカルボニル化合物と反応させる(スキーム4)。
【化17】

【0075】
式(AII)で示されるオキシムは、市販品として入手可能であるか、またはたとえば、Yamane, M.; Narasaka, K., in Science of Synthesis, 27 (2004), p. 605に従って調製可能である。
【0076】
式(AIII)で示されるカルボニル化合物は、同様に、市販品として入手可能であるか、またはたとえば、Escher, I.; Glorius, F., in Science of Synthesis, 25 (2006), p. 733に従って調製可能である。
【0077】
一般的には、式(IIb)で示される化合物を調製するための本発明に係る方法は、以下の条件下で行われる。
【0078】
式(AII)で示されるオキシムおよび式(AIII)で示されるカルボニル化合物は、本発明に係る方法では3:1〜1:3のモル比で使用される。2つの成分の一方の過剰分、特定的には式(AIII)で示されるカルボニル化合物の過剰分は、好ましくは20mol%までである。それに対応して、オキシム(AII)対カルボニル化合物(AIII)の好ましいモル比は、1.0:0.8〜1.0:1.2、より好ましくは約1.0:1.0〜1.0:1.1である。
【0079】
式(AII)で示されるオキシムと式(AIII)で示されるカルボニル化合物との反応は、触媒の存在下で行われる。好適な触媒は、特定の酸(酸触媒)または特定の酸と特定の塩基との混合物(酸塩基触媒)である。
【0080】
本発明に係る酸触媒方法は、以下のように模式的に示すことが可能である。
【化18】

【0081】
好適な酸触媒は、プロトン供与体(ブレンステッド酸)、たとえば、無機酸および有機酸である。無機酸の例は、ハロゲン化水素酸および酸素酸、特定的には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、およびホスフィン酸である。
【0082】
有機酸の例は、脂肪族酸および芳香族酸、たとえば、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、モノ-C1〜C6-アルキルホスフェート、ジ-C1〜C6-アルキルホスフェート、モノアリールホスフェート、ジアリールホスフェート、アルキルカルボン酸、ハロアルキルカルボン酸、およびヘテロシクリルカルボン酸、特定的には、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、トリフルオロ酢酸、およびプロリンである。
【0083】
一般的には、反応は、pKaが3.5未満である酸を用いて良好な収率で酸触媒作用下で進行する。
【0084】
本発明に係る方法が酸触媒下で行われる場合、好ましい選択肢としては、リン酸、モノ-C1〜C6-アルキルホスフェート、ジ-C1〜C6-アルキルホスフェート、モノアリールホスフェート、ジアリールホスフェート、硫酸、スルホン酸、またはトリフルオロ酢酸などの強酸が挙げられる。
【0085】
本発明に係る酸塩基触媒プロセスは、以下のスキームに従って進行可能である。
【化19】

【0086】
好適な酸塩基触媒は、以上に記載の酸と特定の塩基との混合物であり、この場合、酸および塩基は、それぞれ別々にまたは酸付加塩として使用可能である。
【0087】
好適な塩基は、1個以上のヘテロ原子、たとえば、窒素、酸素、硫黄、またはリンを含む化合物であることが判明した。この場合、窒素は、好ましいヘテロ原子である。
【0088】
そのような塩基の例は、式(V)
【化20】

【0089】
〔式中、
R5およびR6は、それぞれ独立して、C1〜C6-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C2〜C6-アルケニル、C2〜C6-アルキニル、トリ-C1〜C6-アルキルシリル、アリール、アリール-C1〜C6-アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリール-C1〜C6-アルキルであり、ここで、置換基のアリール部分およびヘテロアリール部分はそれ自体、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1〜C4-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C1〜C4-ハロアルキル、カルボキシ-C1〜C4-アルキル、C2〜C6-アルケニル、C2〜C6-アルキニル、C1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルコキシ、C2〜C6-アルケニルオキシ、C2〜C6-アルキニルオキシ、C1〜C4-アルキルカルボニルオキシの群から選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよく、かつ
R5は、そのほかに水素であってもよい〕
で示される第一級または第二級のアミンである。
【0090】
好ましい選択肢としては、式(V)〔式中、R5およびR6は、それぞれ独立して、C1〜C6-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、トリ-C1〜C6-アルキルシリル、アリール、またはアリール-C1〜C6-アルキルであり、ここで、置換基のアリール部分はそれ自体、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1〜C4-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C1〜C4-ハロアルキル、カルボキシ-C1〜C4-アルキル、C2〜C6-アルケニル、C2〜C6-アルキニル、C1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルコキシ、C2〜C6-アルケニルオキシ、C2〜C6-アルキニルオキシ、C1〜C4-アルキルカルボニルオキシの群から選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよく、かつR5は、そのほかに水素であってもよい〕で示される化合物が挙げられる。
【0091】
とくに好ましい選択肢としては、式(V)〔式中、R5およびR6は、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ナフチル、ベンジル、またはトリメチルシリルであり、かつR5は、そのほかに水素であってもよい〕で示される化合物、たとえば、N-メチルアニリンが挙げられる。
【0092】
他の選択肢としては、R5およびR6は、一緒になって、式(VI)
【化21】

【0093】
〔式中、
X5は、O、S、NR15、またはCR16R17であり、
qは、0または1であり、
tは、0または1であり、かつ
R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R16、R17は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、ニトロ、アミノカルボニル、C1〜C6-アルキル、C1〜C6-アルコキシ、C1〜C6-アルキルカルボニル、モノ-C1〜C6-アルキルアミノ、ジ-C1〜C6-アルキルアミノ、アリール、ヘテロアリール、アリール-C1〜C6-アルコキシから選択され、ここで、C1〜C6-アルキルはそれ自体、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはトリメチルシリルオキシにより置換されていてもよく、置換基のアリール部分、ヘテロシクリル部分、およびヘテロアリール部分はそれ自体、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1〜C4-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C1〜C4-ハロアルキル、カルボキシ-C1〜C4-アルキル、C2〜C6-アルケニル、C2〜C6-アルキニル、C1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルコキシ、C2〜C6-アルケニルオキシ、C2〜C6-アルキニルオキシ、およびC1〜C4-アルキルカルボニルオキシの群から選択される1〜3個の置換基により置換されていてもよく、
またはR11とR12および/またはR13とR14は、それらが結合されている炭素原子と一緒になって、ケト基を形成し、かつR15は、水素、C1〜C6-アルキル、アリール-C1〜C6-アルキルから選択される〕
で示される環構造を形成してもよい。
【0094】
好ましい選択肢としては、R5およびR6がNH基と一緒になって式(VII)
【化22】

【0095】
〔式中、置換基は、それぞれ、以上に定義したとおりである〕
で示されるイミダゾリン-5-オン環を形成する式(V)または(VI)で示されるアミンが挙げられる。
【0096】
とくに好ましい選択肢としては、R7およびR9がそれぞれ独立してC1〜C6-アルキルおよびアリール-C1〜C6-アルキルから、好ましくはメチル、エチル、1-メチルエチル、1,1-ジメチルエチル、およびフェニルメチルから選択される化合物が挙げられる。
【0097】
一般的には、触媒は、触媒量で反応混合物に添加される。本発明の一実施形態では、式(AII)で示される化合物と酸触媒または酸塩基触媒とのモル比は、1:0.1未満である。好ましい実施形態では、モル比は、1:0.05未満であり、とくに好ましい実施形態では、1:0.02未満である。
【0098】
式(AII)で示されるオキシムおよび式(AIII)で示されるカルボニル化合物は、溶媒の添加無しまたは好適な溶媒の添加有りのいずれかで本発明に従って変換可能である。
【0099】
本発明に係る方法の一実施形態では、式(AII)で示されるオキシムおよび式(AIII)で示されるカルボニル化合物は、溶媒を添加して互いに反応させる。
【0100】
溶媒または希釈剤の量は、一般的には、反応混合物が反応時に自由流動性を維持するように選択される。
【0101】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、反応混合物中の溶媒の割合すなわち反応開始前の割合は、80重量%未満である。
【0102】
好適な溶媒は、有機溶媒、たとえば、芳香族炭化水素、たとえば、トルエン、o-、m-、p-ジメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、o-、m-、p-ジクロロベンゼン、ハロゲン化脂肪族炭化水素、たとえば、テトラクロロエタン、トリクロロメタン、ジクロロメタン、およびジクロロエテン、脂肪族炭化水素、たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、およびシクロヘキサン、エーテル、たとえば、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびジオキサン、アルコール、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、第三級アルコール、たとえば、tert-ブタノールおよびtert-アミルアルコール、エステル、たとえば、酢酸エチル、ニトリル、たとえば、アセトニトリル、または挙げられた溶媒の混合物である。
【0103】
好ましい溶媒は、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素、エーテル、およびアルコールである。
【0104】
とくに好ましい溶媒は、芳香族炭化水素、特定的には、トルエン、クロロベンゼン、o-、m-ジクロロベンゼン、第三級アルコール、たとえば、tert-ブタノールおよびtert-アミルアルコール、ならびにこれらの溶媒の混合物である。
【0105】
本発明のとりわけ好ましい実施形態では、式(II)で示される3-無置換5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾールの製造方法は、本発明に係る方法で式(I)で示される5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルバミジン塩を調製する後続のハロゲン化およびチオカルボキサミジン塩形成と同一の溶媒中で、特定的にはtert-ブタノール中で行われる。
【0106】
一般的には、式(AII)で示されるオキシム、式(AIII)で示されるカルボニル化合物、触媒、および適切であれば溶媒を反応槽に最初に仕込むまたは添加する順序は、重要でない。本発明の一実施形態では、式(AII)で示されるオキシムおよび式(AIII)で示されるカルボニル化合物および適切であれば溶媒が、最初に仕込まれ、所望の温度に設定される。次いで、触媒が添加される。
【0107】
本発明の他の実施形態では、式(AII)で示されるオキシム、触媒、および適切であれば溶媒が、最初に仕込まれ、所望の温度に設定される。次いで、式(AIII)で示されるカルボニル化合物が添加される。
【0108】
添加とは、少しずつ何回かに分けてまたは連続的のいずれかで物質を添加することを意味するものとみなされる。触媒および式(AIII)で示されるカルボニル化合物は、好ましくは、反応の過程で溶媒無しでまたは以上に規定された有機溶媒に溶解して添加される。
【0109】
-40〜100℃、好ましくは-20〜60℃、特定的には0〜30℃の反応温度で操作するのが一般的である。
【0110】
反応混合物は、さらなる後処理を行わずにまたは形成されたカルボニル化合物を除去した後、他のプロセスに直接送ることが可能である。カルボニル化合物は、当業者に公知の方法により、たとえば蒸留または濾過により、除去される。また、反応生成物すなわち式(II)で示される5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾールは、たとえば、直接蒸留、抽出、またはクロマトグラフィーにより、好ましくは蒸留により、反応混合物から取り出すことが可能である。
【0111】
本発明に係る方法の一実施形態では、前段階の反応生成物、すなわち式(IIb)で示される5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾールは、形成されたカルボニル化合物を除去した後、式(I)で示される化合物を調製するための本発明に係る方法の工程i)で、直接さらに用いることが可能である。
【実施例】
【0112】
実施例:
実施例1:(酸塩基触媒作用)
5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールの合成
10.0g(0.137mol、100mol%)のアセトンオキシムを12.7g(0.151mol、110mol%)の3-メチル-2-ブテナールと混合し、10℃に冷却した。3時間にわたり、この混合物に0.13g(1.2mmol、0.9mol%)のN-メチルアニリンと0.14g(1.2mmol、0.9mol%)のトリフルオロ酢酸との混合物を少しずつ何回かに分けて添加し、20%添加後、温度を22℃に上昇させた。3時間後、価値ある生成物を減圧下で分別蒸留により反応混合物から単離した。17〜18mbarでの沸点44〜48℃。1H NMRに基づいて純度89%の10.0gの5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールを得た(66%)。1H NMR (CDCl3): 1.40 (s, 6H), 2.75 (d, 2H), 7.06 (br s, 1H)。
【0113】
実施例2:(酸塩基触媒作用)
5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールの合成
50.0g(0.684mol、100mol%)のアセトンオキシムを62.6g(0.744mol、109mol%)の3-メチル-2-ブテナールと混合し、10〜15℃に冷却した。48時間にわたり、この混合物に1.5g(6.8mmol、1mol%)のN-メチルアニリニウムトリフルオロアセテートを0.1gずつ添加した。続いて、価値ある生成物を減圧下で分別蒸留により反応混合物から単離した。17〜18mbarでの沸点44〜48℃。1H NMRに基づいて純度>91%の56.9gの5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールを得た(76%)。1H NMR (CDCl3): 1.40 (s, 6H), 2.75 (d, 2H), 7.06 (br s, 1H)。
【0114】
実施例3:(酸触媒作用)
5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールの合成
4.35gのアセトンオキシム(59.5mmol、100mol%)および5.27gの3-メチル-2-ブテナール(62.6mmol、105mol%)を混合し、0.13gのトリフルオロ酢酸(1.1mmol、1.9mol%)を添加した。混合物を室温で60時間攪拌し、減圧下(46℃、18mbar)で生成物を蒸留した。NMRに基づいて純度>95%の4.7gの無色油を得た(45.0mmol、76%)。
【0115】
実施例4:(酸塩基触媒作用)
5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールの合成
0.4gの(2S,5S)-2-tert-ブチル-3-メチル-5-ベンジル-4-イミダゾリノン(1.6mmol、1mol%)を50mlのn-ペンタン中に最初に仕込み、0.19gのトリフルオロ酢酸(1.6mmol、1mol%)を0℃で添加した。混合物を-3〜0℃で30分間攪拌した。得られた懸濁液に11.9gのアセトンオキシム(0.163mol、100mol%)を0℃で添加し、混合物を20℃に加温し、16.5gの3-メチル-2-ブテナール(0.196mol、120mol%)を5分間以内で滴下した。混合物をこの温度で16時間撹拌し、生成物を蒸留により単離した。純度88%(GC)の15.5gの5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールが得られた。これは84%の収率に対応する。
【0116】
実施例5: 3-クロロ-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾールの合成
0.61g(6.2mmol、100mol%)の4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾールを15mlの四塩化炭素に溶解させた。反応剤が完全に反応するまで、塩素ガスを24〜33℃で導入した。窒素ストリームにより25℃で溶媒を追い出した。これにより、GCおよびNMRに基づいて純度90%、収率75%で、0.67gの3-クロロ-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾールを無色油として得た。1H NMR (CDCl3): 1.46 (s, 6H), 2.93 (s, 2H)。
【0117】
実施例6: 蒸留された反応剤を用いる[5,5-ジメチル(4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-イル)]チオカルボキサミジン塩酸塩の合成
14.4g(HPLCに基づく純度90%、130mmol、100mol%)の4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾールを20gのtert-ブタノールに溶解させた。1時間にわたり22〜27℃で12g(170mol、130mol%)の塩素を浸漬パイプから注入し、次いで、溶液を窒素で1時間パージングした。7.1g(93mmol、72mol%)のチオウレアを固体形態で添加し、反応混合物を20℃で3時間攪拌した。反応を完了させるために、1.0g(13mmol、10mol%)のチオウレアを添加し、混合物を60時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を石油エーテル中に懸濁させた。残渣を吸引濾別し、乾燥させた(最終重量26g)。10gのサンプルをイソプロパノールから再結晶した。これにより無色固体として6.2gの生成物を得た(収率59%)。融点138〜140℃。
【0118】
実施例7: 3-メチル-2-ブテナールから出発する[5,5-ジメチル(4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-イル)]チオカルボキサミジン塩酸塩の合成
41.1g(0.56mol、100mol%)のアセトンオキシムを150mlのクロロベンゼンに溶解させ、1.0gのN-メチルアニリニウムトリフレート(4.5mmol、0.8mol%)を添加した。3時間にわたり48.7g(0.58mol、103mol%)の3-メチル-2-ブテナールを20〜23℃の温度で添加した。この温度で混合物を16時間撹拌し、反応で形成されたアセトンを留去した(50℃、120mbar)。93g(1.31mol、230mol%)の塩素を5時間にわたり0〜5℃で注入した。溶液を窒素でパージングし、200mlのエタノールを添加し、温度を45〜50℃に上昇させた。24.4g(0.32mol、57mol%)のチオウレアを固体形態で少しずつ何回かに分けて添加し、混合物を20℃で16時間攪拌した。未溶解材料を濾別し、生成物の結晶化が始まるまでエタノールを減圧下で留去した。少量のアセトンを添加し、生成物を濾別し、減圧下で乾燥させた。収量31.0g(148mmol, 26%)の微細白色結晶(HPLC純度99.3%)。1H NMR (DMSO-d6): 1.40 (s, 6H), 3.07 (s, 2H), 9.74 (br, 4H)。
【0119】
実施例8: アセトンオキシムから出発する[5,5-ジメチル(4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-イル)]チオカルボキサミジン塩酸塩の合成
0.37g(3.5mmol、1.0mol%)のN-メチルアニリンを60gのn-ペンタンに溶解させた。この溶液に0℃で0.40g(3.5mmol、1.0mol%)のトリフルオロ酢酸を添加し、得られた懸濁液を10分間撹拌した。25.0g(0.342mol、100mol%)のアセトンオキシムを添加し、混合物を24〜26℃に加熱した。続いて、温度を25℃で保ちながら、29.4g(0.350mol、102mol%)の3-メチル-2-ブテナールを2時間以内で滴下した。混合物を20℃で60時間攪拌し、1.5g(18mmol、5mol%)の3-メチル-2-ブテナールを16時間以内で添加することにより反応を完了させた。形成されたアセトンを減圧下で除去し、80gのtert-ブタノールを添加し、その10gを20cm Vigreuxカラムに通して蒸留により除去した。26.0g(0.366mol、107mol%)の塩素を15〜20℃で浸漬パイプを介して2時間以内で注入し、続いて、反応混合物を窒素で15分間パージングした。形成された3-クロロ-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾリンの完全変換がHPLCにより示されるまで、23.5g(0.31mol、90mol%)のチオウレアを20℃で少しずつ何回かに分けて添加した。減圧下で溶媒を除去し、残渣を石油エーテル中に懸濁させ、上澄み溶液を廃棄した。粗生成物を80℃で2.5:1エタノール:クロロベンゼンに溶解させ、不溶性成分を濾別し、減圧下でエタノールを除去し、冷却およびアセトン添加により結晶化を開始させた。生成物を濾過し、アセトンで洗浄し、減圧下で乾燥させた。これにより39.2g(0.187mol、収率55%)の[5,5-ジメチル(4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-イル)]チオカルボキサミジン塩酸塩を無色結晶として得た。融点146〜140℃。
【0120】
実施例9: [5,5-ジメチル-(4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-イル)]チオカルボキサミジン塩酸塩から出発する3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)-メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾールの合成
A) 3-[(5-ヒドロキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルチオ]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール
1.49g(97%、36mmol、300mol%)の水酸化ナトリウムを12gの水に溶解させ、2.0g(12mmol、100mol%)の5-ヒドロキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾールを少しずつ何回かに分けて添加した。ホルムアルデヒド溶液(水中36.5%、2.97g、36mmol、300mol%)を24℃で透明溶液に65分間以内で滴下し、この温度で混合物を90分間撹拌した。続いて、12.8gの水に溶解された3.12g(純度92%、14mmol、120mol%)の[5,5-ジメチル-(4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-イル)]チオカルボキサミジン塩酸塩を滴下した。混合物を室温で16時間攪拌した。5.9gの塩酸(37%、60mmol、500mol%)を14〜18℃で添加し、続いて12mlの水を添加した。混合物を室温で16時間攪拌した。得られた沈殿を濾別し、各回10mlの水で2回および各回15gのn-ヘキサンで2回洗浄した。乾燥後、3.08gの結晶残渣を取得し、さらに精製することなく使用した。
【0121】
B) 3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルチオ]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール
得られた残渣(3.05g、10mmol、100mol%)を30mlのアセトニトリルに溶解させ、1.22g(97%、30mmol、250mol%)の水酸化ナトリウムを20〜24℃で添加し、溶液を23℃で100分間攪拌した。混合物を5℃に冷却し、5.34g(62mmol、620mol%)のクロロジフルオロメタンを5〜15℃で45分間以内で注入した。反応混合物を室温で60時間攪拌し、15mlのトルエンおよび15mlの水を添加した。不溶性成分を溶解状態にするために1mlの塩酸(37%)を添加した。有機相を取り出し、水相を15mlのトルエンでもう1回抽出し、合わせた有機相を15mlの水および15mlの飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。これにより2.9gの茶褐色油を取得し、さらに精製することなく使用した。
【0122】
C) 3-[(5-ジフルオロメトキシ-1-メチル-3-トリフルオロメチルピラゾール-4-イル)メチルスルホニル]-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾール
2.8g(7.8mol)の得られた油を8mlの酢酸に溶解させ、80mg(0.23mmol、3mol%)のタングステン酸ナトリウム二水和物を添加した。過酸化水素(30%、2.21g、20mmol、250mol%)を23〜34℃で20分間以内で滴下し、混合物を室温で16時間攪拌した。4gの水を添加して1℃に冷却することにより生成物を沈殿させた。10℃で1時間後、固体を濾別し、各回20gの水でおよび20mlの石油エーテルで2回洗浄した。これにより1.0g(2.6mmol)の固体を得た。
【0123】
1H NMR (CDCl3): 6.82 (t, 1H), 4.60 (s, 2H), 3.87 (s, 3H), 3.10 (s, 2H), 1.51 (s, 6H)。
【0124】
比較例1: エタノール中での5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールと塩素ガスとの反応
10.0g(90.2%、91.0mmol、100mol%)の5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールを20gのエタノールに溶解させた。15〜35℃で12.0g(169mmol、190mol%)の塩素を浸漬パイプを介して注入し、続いて、溶液を窒素で1時間パージングした。定性HPLC/MSによれば、3.5:1の比の3-エトキシ-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールと3-クロロ-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールとの混合物が得られた。反応混合物を5.6g(73.6mmol、81mol%)のチオウレアと混合し、混合物を22℃で16時間攪拌した。この温度で3-エトキシ-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロイソオキサゾールは変換されず、多量のチオウレアと一緒に存在した。温度を50℃に7時間上昇させたが、その後でさえも、痕跡量の所望の[5,5-ジメチル(4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-イル)]チオカルボキサミジン塩酸塩さらには分解生成物がHPLCにより検出された。
【0125】
比較例2: 工程ii)のチオウレアとの反応での酸の影響
0.5g(純度91.4%、3.4mmol)の新たに蒸留した3-クロロ-4,5-ジヒドロ-5,5-ジメチルイソオキサゾールを5gのtert-ブタノールに溶解させ、25℃で0.25g(3.3mmol)のチオウレアおよび3滴の32%塩酸と混合した。HPLCによる反応モニタリングにより、3.5時間後、[5,5-ジメチル(4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-イル)]チオカルボキサミジン塩酸塩への転化率は39%であることが示された。塩酸の添加無しで同じように処理された比較サンプルでは、3.5時間後、生成物への変換は確認されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

〔式中、
R1、R2は、それぞれ独立して、C1〜C6-アルキルもしくはC1〜C4-ハロアルキルであり、
R3、R4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1〜C6-アルキル、もしくはC1〜C4-ハロアルキルであり、または
R1とR2、R3とR4、もしくはR1とR3は、一緒になって、C1〜C4-アルキルにより一置換〜四置換されていてもよいおよび/または酸素もしくは場合によりC1〜C4-アルキル置換窒素が介在していてもよいC2〜C5-アルカンジイル鎖を形成し、かつ
Aは、塩素または臭素である〕
で示される5,5-二置換4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルボキサミジン塩の製造方法であって、
i) 最初に、式(II)で示される3-無置換4,5-ジヒドロイソオキサゾールを塩素化剤または臭素化剤と反応させて式(III)で示される3-ハロゲン化4,5-ジヒドロイソオキサゾールを生成し、
【化2】

ii) 次いで、式(III)で示される3-ハロゲン化4,5-ジヒドロイソオキサゾールをチオウレアと反応させて式(I)で示される化合物を生成する、
【化3】

上記方法。
【請求項2】
R1、R2が、それぞれ独立して、C1〜C6-アルキルもしくはC1〜C4-ハロアルキルであり、または
R1とR2が、一緒になって、C1〜C4-アルキルにより一置換〜四置換されていてもよいおよび/または酸素もしくは場合によりC1〜C4-アルキル置換窒素が介在していてもよいC2〜C5-アルカンジイル鎖を形成し、かつ
R3、R4が、それぞれ、水素である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R1が、C1〜C4-アルキルであり、
R2が、C1〜C4-アルキルであり、
R3が、水素、フッ素、塩素、臭素、メチル、エチルであり、かつ
R4が、水素、フッ素、塩素、臭素、メチル、エチルである、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
R1がメチルであり、
R2がメチルであり、
R3が水素であり、かつ
R4が水素である、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程i)およびii)が同一溶媒中で行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒がtert-ブタノールである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
使用される前記塩素化剤または臭素化剤が単体の塩素または臭素である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
工程i)の反応生成物すなわち式(III)で示される3-ハロゲン化4,5-ジヒドロイソオキサゾールを精製せずに工程ii)でチオウレアと直接反応させて式(I)で示される4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-チオカルボキサミジン塩を生成する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
工程i)およびii)がワンポットプロセスで行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式(II)で示される3-無置換4,5-ジヒドロイソオキサゾールが、酸触媒または酸塩基触媒の存在下でかつ場合により有機溶媒の存在下で、式(AII)
【化4】

〔式中、
Ra、Rbは、それぞれ独立して、水素、C1〜C6-アルキル、C1〜C4-アルキルカルボニル、ヒドロキシイミノ-C1〜C4-アルキル、フェニル、フェニル-C1〜C4-アルキル、もしくはフェニル-C2〜C4-アルケニルであり{ここで、フェニル環は、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシ、ジ-C1〜C4-アルキルアミノ、ハロゲン、ヒドロキシル、もしくはニトロにより一置換もしくは多置換されていてもよい}、またはRaとRbは、一緒になって、C2〜C5-アルカンジイル鎖を形成する〕
で示されるオキシムと、式(AIII)
【化5】

〔式中、R1およびR2は、それぞれ、請求項2〜4で定義されたとおりである〕
で示されるカルボニル化合物と、の反応により、前段階で調製される、請求項2〜9のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2013−512201(P2013−512201A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540290(P2012−540290)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065925
【国際公開番号】WO2011/063842
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】