説明

6−デオキシ−ヘキソ−2−ウロースの製造方法

【課題】 6−デオキシ−L−ソルボース、L−フクロース等の6−デオキシ−ヘキソ−2−ウロースの製造方法の提供。
【解決手段】 光学活性アルデヒド化合物(1)をヒドロキシアセトン(2)と、光学活性環状アミノ酸(3)の存在下で反応させ、光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物(4)を得る。化合物(4)から、6−デオキシ−L−ソルボース、L−フクロース等の6−デオキシ−ヘキソ−2−ウロース(7)を製造することができる。
【効果】 6−デオキシ−ヘキソ−2−ウロースの前駆体として有用な、所望の立体配置を有する光学活性化合物(4)を立体選択的に得ることができる。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6−デオキシ−L−ソルボース、L−フクロース等の6−デオキシ−ヘキソ−2−ウロースの製造方法に関する。詳細には、本発明は、6−デオキシ−ヘキソ−2−ウロースの製造方法、その方法で使用する中間体、およびその中間体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
6−デオキシ−L−ソルボースやL−フクロースに代表される6−デオキシ−ヘキソ−2−ウロースは、希少糖質である6−デオキシヘキソースや香料などの製造中間体として有用な化合物である。例えば、6−デオキシ−L−ソルボースは、カラメル様香気を有するフラネオールの製造中間体と知られている(特許文献1参照)。またL−フクロースは、医薬品としてその生理活性が注目されているL−フコースの製造中間体として有用な化合物であることが知られている(特許文献2参照)。
【0003】
6−デオキシ−L−ソルボースやL−フクロースの製法としては、ジヒドロキシアセトンリン酸等のリン酸化化合物を出発原料として、ラクトアルデヒドの存在下に酵素アルドラーゼを作用させ、得られた前駆体化合物を脱リン酸する方法が知られている(特許文献1,2参照)。しかしながら、一般に、リン酸化化合物を工業的に安価に製造することは困難であるため、より工業的生産に適した製法の開発が望まれていた。
【0004】
他方、アルドール反応において、anti−1,2−ジオールを選択的に得る方法が報告されているが(非特許文献1〜3参照)、この反応を糖類の製造に利用した例は報告されていない。
【特許文献1】国際公開第83/03846号パンフレット
【特許文献2】国際公開第97/15683号パンフレット
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,2000年,122巻,2395−2396頁
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.,2000年,122巻,7386−7387頁
【非特許文献3】Chem.Commun.,2002年,3024−3025頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、6−デオキシ−ヘキソ−2−ウロースの効率的な製造方法を提供することである。また本発明の目的は、当該製造方法で使用する中間体、および当該中間体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究をした結果、光学活性アルデヒド化合物とヒドロキシアセトンとのアルドール反応を、光学活性環状アミノ酸の存在下で行うことにより、所望の立体配置を有する光学活性化合物を立体選択的に得られることを見出し、これが6−デオキシ−ヘキソ−2−ウロースの前駆体として有用であり、この前駆体から数工程を経て、6−デオキシ−ヘキソ−2−ウロースを製造することできることを見出した。本発明の方法によれば、6−デオキシ−ヘキソ−2−ウロースを化学合成法によって効率よく製造することできる。
【0007】
本発明は、以下に関する。
[1] 一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Pは水酸基の保護基を示し、*1は不斉中心であり、R−またはS−配置であることを示す。]
で表される光学活性アルデヒド化合物(以下、光学活性アルデヒド化合物(1)ともいう)を、式(2)
【0010】
【化2】

【0011】
で表されるヒドロキシアセトン(以下、ヒドロキシアセトン(2)ともいう)と、一般式(3)
【0012】
【化3】

【0013】
[式中、Xは窒素原子、硫黄原子または酸素原子を示し、Yはアルキル基、水酸基または保護されている水酸基を示し、m、nおよびkはそれぞれ独立してm+n+k=2〜3の条件を満たす0〜2の整数を示し、jは0〜3の整数を示し、*2は不斉中心であり、R−またはS−配置であることを示す。]
で表される光学活性環状アミノ酸(以下、光学活性環状アミノ酸(3)ともいう)の存在下で反応させることを特徴とする、
一般式(4)
【0014】
【化4】

【0015】
[式中、RおよびPは前記と同じ意味を示し、*3、*4および*5はそれぞれ不斉中心であり、前記*1がS−またはR−配置のとき、*3はそれぞれS−またはR−配置であることを示し、前記*2がS−またはR−配置のとき、*4および*5はそれぞれR−およびS−配置またはS−およびR−配置であることを示す。]
で表される光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物(以下、光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物(4)ともいう)の製造方法。
[2] 以下の(a)〜(d)の工程を含むことを特徴とする、一般式(7)
【0016】
【化5】

【0017】
[式中、Rは前記と同じ意味を示し、*3、*4および*7はそれぞれ不斉中心であり、*3はS−またはR−配置であることを示し、*4および*7はR−およびS−配置、S−およびR−配置、R−およびR−配置またはS−およびS−配置であることを示す。]
で表されるテトラヒドロキシカルボニル化合物(以下、テトラヒドロキシカルボニル化合物(7)ともいう)の製造方法。
(a)光学活性アルデヒド化合物(1)を、ヒドロキシアセトン(2)と、光学活性環状アミノ酸(3)の存在下で反応させ、光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物(4)を得て、
(b)光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物(4)の少なくとも1つの水酸基もしくはカルボニル基、または少なくとも1つの水酸基とカルボニル基とを保護基で保護し、一般式(5)
【0018】
【化6】

【0019】
[式中、RおよびPは前記と同じ意味を示し、PおよびPはそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示すか、またはPおよびPが結合して環状アセタールを形成し、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にカルボニル基またはアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。但し、PおよびPが水素原子であるとき、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。*3、*4および*5はそれぞれ不斉中心であり、前記と同じ意味を示す。]
で表される化合物(以下、化合物(5)ともいう)を得て、
(c)化合物(5)を酸化剤と反応させ、一般式(6)
【0020】
【化7】

【0021】
[式中、R、P、P、P、PおよびPは前記と同じ意味を示す。*3、*4および*6はそれぞれ不斉中心であり、前記*1がS−またはR−配置のとき、*3はそれぞれS−またはR−配置であることを示す。PおよびPがそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示す場合、前記*2がS−またはR−配置のとき、*4および*6はそれぞれR−およびS−配置またはS−およびR−配置であることを示す。PおよびPが結合して環状アセタールを形成する場合、前記*2がS−またはR−配置のとき、*4および*6はそれぞれR−およびR−配置またはS−およびS−配置であることを示す。]
で表される化合物(以下、化合物(6)ともいう)を得て、
(d)化合物(6)の保護基を除去し、テトラヒドロキシカルボニル化合物(7)を得る。
[3] Rがメチル基である[1]または[2]記載の製造方法。
[4] Pがベンジル基またはtert−ブチルジメチルシリル基である[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 光学活性環状アミノ酸(3)がL−プロリンまたはD−プロリンである[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 一般式(1)−1
【0022】
【化8】

【0023】
[式中、RおよびPは前記と同じ意味を示す。]
で表される光学活性アルデヒド化合物を、式(2)
【0024】
【化9】

【0025】
で表されるヒドロキシアセトンと、一般式(3)−1
【0026】
【化10】

【0027】
[式中、X、Y、m、n、kおよびjは前記と同じ意味を示す。]
で表される光学活性環状アミノ酸の存在下で反応させることを特徴とする、
一般式(4)−1
【0028】
【化11】

【0029】
[式中、RおよびPは前記と同じ意味を示す。]
で表される光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物の製造方法。
[7] 以下の(a)〜(d)の工程を含むことを特徴とする、一般式(7)−1
【0030】
【化12】

【0031】
[式中、Rは前記と同じ意味を示し、*9は不斉中心であり、R−またはS−配置であることを示す。]
で表されるテトラヒドロキシカルボニル化合物の製造方法。
(a)一般式(1)−1
【0032】
【化13】

【0033】
[式中、RおよびPは前記と同じ意味を示す。]
で表される光学活性アルデヒド化合物を、式(2)
【0034】
【化14】

【0035】
で表されるヒドロキシアセトンと、一般式(3)−1
【0036】
【化15】

【0037】
[式中、X、Y、m、n、kおよびjは前記と同じ意味を示す。]
で表される光学活性環状アミノ酸の存在下で反応させ、一般式(4)−1
【0038】
【化16】

【0039】
[式中、RおよびPは前記と同じ意味を示す。]
で表される光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物を得て、
(b)一般式(4)−1で表される光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物の少なくとも1つの水酸基もしくはカルボニル基、または少なくとも1つの水酸基とカルボニル基とを保護基で保護し、一般式(5)−1
【0040】
【化17】

【0041】
[式中、R、P、P、P、PおよびPは前記と同じ意味を示す。]
で表される化合物を得て、
(c)一般式(5)−1で表される化合物を酸化剤と反応させ、一般式(6)−1
【0042】
【化18】

【0043】
[式中、R、P、P、P、PおよびPは前記と同じ意味を示す。*8は不斉中心であり、PおよびPがそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示す場合、R−配置であることを示し、PおよびPが結合して環状アセタールを形成する場合、S−配置であることを示す。]
で表される化合物を得て、
(d)一般式(6)−1で表される化合物の保護基を除去し、一般式(7)−1
【0044】
【化19】

【0045】
[式中、Rおよび*9は前記と同じ意味を示す。]
で表されるテトラヒドロキシカルボニル化合物を得る。
[8] Rがメチル基である[6]または[7]記載の製造方法。
[9] Pがベンジル基またはtert−ブチルジメチルシリル基である[6]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10] 一般式(3)−1で表される光学活性環状アミノ酸がD−プロリンである[6]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11] 工程(b)において、一般式(4)−1で表される光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物の少なくとも1つの水酸基もしくはカルボニル基、または少なくとも1つの水酸基とカルボニル基とを保護基で保護し、一般式(5)−2
【0046】
【化20】

【0047】
[式中、R、P、PおよびPは前記と同じ意味を示し、P2aおよびP3aはそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示す。但し、P2aおよびP3aが水素原子であるとき、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。]
で表される化合物を得て、
工程(c)において、一般式(5)−2で表される化合物を酸化剤と反応させ、一般式(6)−2
【0048】
【化21】

【0049】
[式中、R、P、P2a、P3a、PおよびPは前記と同じ意味を示す。]
で表される化合物を得て、
工程(d)において、一般式(6)−2で表される化合物の保護基を除去し、一般式(7)−2
【0050】
【化22】

【0051】
[式中、Rは前記と同じ意味を示す。]
で表されるテトラヒドロキシカルボニル化合物を得る、[7]記載の方法。
[12] 工程(b)において、一般式(4)−1で表される光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物の2つの水酸基、または2つの水酸基とカルボニル基とを保護基で保護し、一般式(5)−3
【0052】
【化23】

【0053】
[式中、R、P、PおよびPは前記と同じ意味を示し、P2bおよびP3bは結合して環状アセタールを形成する。]
で表される化合物を得て、
工程(c)において、一般式(5)−3で表される化合物を酸化剤と反応させ、一般式(6)−3
【0054】
【化24】

【0055】
[式中、R、P、P2b、P3b、PおよびPは前記と同じ意味を示す。]
で表される化合物を得て、
工程(d)において、一般式(6)−3で表される化合物の保護基を除去し、一般式(7)−3
【0056】
【化25】

【0057】
[式中、Rは前記と同じ意味を示す。]
で表されるテトラヒドロキシカルボニル化合物を得る、[7]記載の方法。
[13] [11]記載の方法により一般式(7)−2
【0058】
【化26】

【0059】
[式中、Rは前記と同じ意味を示す。]
で表されるテトラヒドロキシカルボニル化合物を製造し、このテトラヒドロキシカルボニル化合物を一般式(8)
【0060】
【化27】

【0061】
[式中、Rは前記と同じ意味を示す。]で表されるL−フコース誘導体に変換することを特徴とする、一般式(8)で表されるL−フコース誘導体の製造方法。
[14] Rがメチル基である[13]記載の製造方法。
[15] 一般式(5)
【0062】
【化28】

【0063】
[式中、R、P、P、P、PおよびPは前記と同じ意味を示す。*3、*4および*5はそれぞれ不斉中心であり、*3はS−またはR−配置であることを示し、*4および*5はR−およびS−配置またはS−およびR−配置であることを示す。]
で表される化合物。
[16] Rがメチル基である[15]記載の化合物。
[17] 一般式(5)−1
【0064】
【化29】

【0065】
[式中、R、P、P、P、PおよびPは前記と同じ意味を示す。]
で表される化合物。
[18] 一般式(4)
【0066】
【化30】

【0067】
[式中、RおよびPは前記と同じ意味を示す。*3、*4および*5はそれぞれ不斉中心であり、*3はS−またはR−配置であることを示し、*4および*5はR−およびS−配置またはS−およびR−配置であることを示す。]
で表される光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物の少なくとも1つの水酸基もしくはカルボニル基、または少なくとも1つの水酸基とカルボニル基とを保護基で保護することを特徴とする、一般式(5)
【0068】
【化31】

【0069】
[式中、R、P、P、P、PおよびPは前記と同じ意味を示す。*3、*4および*5はそれぞれ不斉中心であり、前記と同じ意味を示す。]
で表される化合物の製造方法。
[19] 一般式(4)−1
【0070】
【化32】

【0071】
[式中、RおよびPは前記と同じ意味を示す。]
で表される光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物の少なくとも1つの水酸基もしくはカルボニル基、または少なくとも1つの水酸基とカルボニル基とを保護基で保護することを特徴とする、一般式(5)−1
【0072】
【化33】

【0073】
[式中、R、P、P、P、PおよびPは前記と同じ意味を示す。]
で表される化合物の製造方法。
[20] 一般式(6)
【0074】
【化34】

【0075】
[式中、R、P、P、P、PおよびPは前記と同じ意味を示す。*3、*4および*6はそれぞれ不斉中心であり、*3はS−またはR−配置であることを示す。PおよびPがそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示す場合、*4および*6はR−およびS−配置またはS−およびR−配置であることを示す。PおよびPが結合して環状アセタールを形成する場合、*4および*6はR−およびR−配置またはS−およびS−配置であることを示す。]
で表される化合物。
[21] Rがメチル基である[20]記載の化合物。
[22] 一般式(6)−1
【0076】
【化35】

【0077】
[式中、R、P、P、P、PおよびPは前記と同じ意味を示す。*8は不斉中心であり、PおよびPがそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示す場合、R−配置であることを示し、PおよびPが結合して環状アセタールを形成する場合、S−配置であることを示す。]
で表される化合物。
[23] 一般式(5)
【0078】
【化36】

【0079】
[式中、R、P、P、P、PおよびPは前記と同じ意味を示す。*3、*4および*5はそれぞれ不斉中心であり、*3はS−またはR−配置であることを示し、*4および*5はそれぞれR−およびS−配置またはS−およびR−配置であることを示す。]
で表される化合物を酸化剤と反応させることを特徴とする、一般式(6)
【0080】
【化37】

【0081】
[式中、R、P、P、P、PおよびPは前記と同じ意味を示し、*3、*4および*6はそれぞれ不斉中心であり、*3はS−またはR−配置であることを示す。PおよびPがそれぞれ独立して水酸基の保護基を示す場合、*4および*6はR−およびS−配置またはS−およびR−配置であることを示す。PおよびPが結合して環状アセタールを形成する場合、*4および*6はR−およびR−配置またはS−およびS−配置であることを示す。]
で表される化合物の製造方法。
[24] 一般式(5)−1
【0082】
【化38】

【0083】
[式中、R、P、P、P、PおよびPは前記と同じ意味を示す。]
で表される化合物を酸化剤と反応させることを特徴とする、一般式(6)−1
【0084】
【化39】

【0085】
[式中、R、P、P、P、PおよびPは前記と同じ意味を示す。*8は不斉中心であり、PおよびPがそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示す場合、R−配置であることを示し、PおよびPが結合して環状アセタールを形成する場合、S−配置であることを示す。]
で表される化合物の製造方法。
[25] 一般式(6)
【0086】
【化40】

【0087】
[式中、R、P、P、P、PおよびPは前記と同じ意味を示す。*3、*4および*6はそれぞれ不斉中心であり、*3はS−またはR−配置であることを示す。PおよびPがそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示す場合、*4および*6はR−およびS−配置またはS−およびR−配置であることを示す。PおよびPが結合して環状アセタールを形成する場合、*4および*6はR−およびR−配置またはS−およびS−配置であることを示す。]
で表される化合物の保護基を除去し、一般式(7)
【0088】
【化41】

【0089】
[式中、Rは前記と同じ意味を示し、*3、*4および*7はそれぞれ不斉中心であり、*3はS−またはR−配置であることを示し、*4および*7はR−およびS−配置、S−およびR−配置、R−およびR−配置またはS−およびS−配置であることを示す。]
で表されるテトラヒドロキシカルボニル化合物の製造方法。
[26] 一般式(6)−1
【0090】
【化42】

【0091】
[式中、R、P、P、P、PおよびPは前記と同じ意味を示す。*8は不斉中心であり、PおよびPがそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示す場合、R−配置であることを示し、PおよびPが結合して環状アセタールを形成する場合、S−配置であることを示す。]
で表される化合物の保護基を除去し、一般式(7)−1
【0092】
【化43】

【0093】
[式中、Rは前記と同じ意味を示し、*9は不斉中心であり、R−またはS−配置であることを示す。]
で表されるテトラヒドロキシカルボニル化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0094】
本発明によれば、6−デオキシ−L−ソルボース、L−フクロース等の6−デオキシ−ヘキソ−2−ウロースを化学合成により効率的に製造することができる。本発明の方法によれば、光学活性アルデヒド化合物とヒドロキシアセトンとのアルドール反応を、D−またはL−プロリンのような光学活性環状アミノ酸の存在下で行うことにより、所望の立体配置を有する光学活性化合物を立体選択的に得ることができる。また原料の光学活性アルデヒド化合物と光学活性環状アミノ酸の立体配置の組み合わせを選択することにより、L−フクロースとは異なる立体配置の糖誘導体を合成することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0095】
本発明における式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示す。炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状または分枝状のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。Rとしては、メチル基、エチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0096】
、PおよびPにおける水酸基の保護基は特に限定されず、例えば、アシル基、アルキル基、アラルキル基、シリル基等が挙げられる。アシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等の炭素数1〜7のアシル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜7のアルキル基が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基等の炭素数7〜11のアラルキル基が挙げられる。シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基等の3置換シリル基が挙げられる。その他、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、ベンジルオキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、メトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等の水酸基の保護基を使用することができる。
【0097】
およびPが結合して環状アセタールを形成する場合としては、例えば、PおよびPが結合して、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキリデン基または置換されていてもよいベンジリデン基を形成する場合が挙げられる。アルキリデン基は、シクロアルキリデン基であってもよい。アルキリデン基またはベンジリデン基は1〜3個の置換基で置換されていてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、ニトロ基、ジメチルアミノ基等が挙げられる。置換されていてもよいアルキリデン基としては、メチレン基、エチリデン基、2,2,2−トリクロロエチリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、エトキシメチレン基、1−メトキシエチリデン基、1,2−ジメトキシエチリデン基、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基等が挙げられる。置換されていてもよいベンジリデン基としては、ベンジリデン基、4−メトキシベンジリデン基、2,4−ジメトキシベンジリデン基、4−ジメチルアミノベンジリデン基、2−ニトロベンジリデン基、α−メトキシベンジリデン基等が挙げられる。
【0098】
としては、ベンジル基またはtert−ブチルジメチルシリル基が好ましい。
およびPとしては、PおよびPがそれぞれ独立して水素原子もしくはtert−ブチルジメチルシリル基を示す場合、またはPおよびPが結合して、イソプロピリデン基を形成する場合が好ましい。
【0099】
およびPが、それらが結合する炭素原子と共に形成するアセタールで保護されたカルボニル基を示す場合としては、PおよびPがメトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基を示す場合、またはRとRが結合してエチレン基、トリメチレン基を形成する場合が挙げられる。
およびPが、それらが結合する炭素原子と共にアセタールで保護されたカルボニル基を形成する場合、PおよびPとしては、メトキシ基が好ましい。
【0100】
Yはアルキル基、水酸基または保護されている水酸基を示す。アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜7のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。保護されている水酸基における水酸基の保護基としては、例えば、アシル基、アルキル基、アラルキル基、シリル基等が挙げられる。アシル基としては、例えば、アセチル基、ベンゾイル基等の炭素数1〜7のアシル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基等の炭素数7〜11のアラルキル基が挙げられる。シリル基としては、例えば、tert−ブチルジメチルシリル基等の3置換シリル基が挙げられる。
【0101】
本発明の方法によって製造されるテトラヒドロキシカルボニル化合物(7)の好ましい例としては、下記式(7)−4で表されるL−フクロース、下記式(7)−5で表される6−デオキシ−L−ソルボースが挙げられる。
【0102】
【化44】

【0103】
【化45】

【0104】
本発明の製造方法によって光学活性テトラヒドロキシカルボニル化合物(7)を製造する場合、出発原料である光学活性アルデヒド化合物(1)と、光学活性環状アミノ酸(3)の立体配置の組み合わせにより、4種類の光学異性体を製造することができる。Rがメチルであり、光学活性環状アミノ酸(3)がプロリンである場合を例にして説明すると、以下の4種の光学異性体をそれぞれ製造することができる。
【0105】
【化46】

【0106】
テトラヒドロキシカルボニル化合物(7)は、下記の工程により製造することができる。
【0107】
【化47】

【0108】
[式中の各記号は前記と同じ意味を示す。]
【0109】
工程(a)
光学活性アルデヒド化合物(1)をヒドロキシアセトン(2)と、光学活性環状アミノ酸(3)の存在下で反応させることにより、光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物(4)を製造することができる。
例えば、ヒドロキシアセトン(2)を適当な溶媒に溶解し、光学活性環状アミノ酸(3)またはその溶液と、光学活性アルデヒド化合物(1)またはその溶液を添加し、撹拌することにより反応を行うことができる。添加順序は限定されず、どの順序で添加してもよい。
【0110】
本工程で使用する光学活性環状アミノ酸(3)としては、次のものが好ましい。一般式(3)において、m+n+k=3であることが好ましい。jは0または1が好ましい。Xとしては、硫黄原子が好ましい。Yとしては、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基で保護されている水酸基、または炭素数1〜7のアシル基で保護されている水酸基が好ましい。
【0111】
光学活性環状アミノ酸(3)の例としては、D−プロリン、L−プロリン、cis−4−ヒドロキシ−D−プロリン、cis−4−ヒドロキシ−L−プロリン、trans−4−ヒドロキシ−D−プロリン、trans−4−ヒドロキシ−L−プロリン、cis−4−tert−ブトキシ−D−プロリン、cis−4−tert−ブトキシ−L−プロリン、trans−4−tert−ブトキシ−D−プロリン、trans−4−tert−ブトキシ−L−プロリン、cis−4−アセトキシ−D−プロリン、cis−4−アセトキシ−L−プロリン、trans−4−アセトキシ−D−プロリン、trans−4−アセトキシ−L−プロリン、(S)−チアゾリジン−4−カルボン酸、(R)−チアゾリジン−4−カルボン酸、(S)−アゼチジン−2−カルボン酸、(R)−アゼチジン−2−カルボン酸、2−メチル−(S)−チアゾリジン−4−カルボン酸、2−メチル−(R)−チアゾリジン−4−カルボン酸、2−エチル−(S)−チアゾリジン−4−カルボン酸、2−エチル−(R)−チアゾリジン−4−カルボン酸、2−n−プロピル−(S)−チアゾリジン−4−カルボン酸、2−n−プロピル−(R)−チアゾリジン−4−カルボン酸、2−n−ブチル−(S)−チアゾリジン−4−カルボン酸、2−n−ブチル−(R)−チアゾリジン−4−カルボン酸、2−ヒドロキシ−(S)−チアゾリジン−4−カルボン酸、2−ヒドロキシ−(R)−チアゾリジン−4−カルボン酸、5−メチル−(S)−チアゾリジン−4−カルボン酸、5−メチル−(R)−チアゾリジン−4−カルボン酸、3−メチル−(S)−アゼチジン−2−カルボン酸、3−メチル−(R)−アゼチジン−2−カルボン酸、3−エチル−(S)−アゼチジン−2−カルボン酸、3−エチル−(R)−アゼチジン−2−カルボン酸、4−メチル−(S)−アゼチジン−2−カルボン酸、4−メチル−(R)−アゼチジン−2−カルボン酸等が挙げられる。光学活性環状アミノ酸(3)としては、D−プロリンまたはL−プロリンが好ましい。
【0112】
光学活性環状アミノ酸(3)の使用量は、光学活性アルデヒド化合物(1)に対して、通常0.01〜10モル当量、好ましくは0.1〜1モル当量である。
ヒドロキシアセトン(2)の使用量は、光学活性アルデヒド化合物(1)に対して、通常1〜100モル当量、好ましくは7〜30モル当量、より好ましくは10〜20モル当量である。
【0113】
反応は一般に溶媒中で行われる。反応溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、クロロホルム、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、水、またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0114】
反応温度は特に限定されないが、通常0℃〜80℃、好ましくは10℃〜40℃である。反応時間は特に限定されないが、通常1〜60時間、好ましくは10〜48時間である。
【0115】
工程(a)においては、*1がS−配置、*2がR−配置のとき、*3、*4および*5がS−、S−およびR−配置の化合物(4)が、*1がS−配置、*2がS−配置のとき、*3、*4および*5がS−、R−およびS−配置の化合物(4)が、*1がR−配置、*2がR−配置のとき、*3、*4および*5がR−、S−およびR−配置の化合物(4)が、*1がR−配置、*2がS−配置のとき、*3、*4および*5がR−、R−およびS−配置の化合物(4)が、それぞれ立体選択的に得られる。得られた生成物は、再結晶、クロマトグラフィーなどの常法により精製することができる。
【0116】
工程(b)
光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物(4)の少なくとも1つの水酸基もしくはカルボニル基、または少なくとも1つの水酸基とカルボニル基とを保護基で保護することにより、化合物(5)を製造することができる。
【0117】
保護基による保護は、水酸基を先に保護しても、カルボニル基を先に保護してもいずれでもよい。後の工程(c)でカルボニル基の保護基が導入されてもよい。カルボニル基は必ずしも保護する必要はない。
【0118】
水酸基の保護は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物(4)を適当な溶媒に溶解し、アシル化剤、アルコキシカルボニル化剤、アルキル化剤、アラルキル化剤、シリル化剤等の水酸基の保護化試薬を添加する。この際、通常、適当な塩基を添加する。
【0119】
水酸基の保護化試薬の例としては、無水酢酸、塩化アセチル、塩化ベンゾイル、無水トリフルオロ酢酸等のアシル化剤、塩化メトキシカルボニル、塩化tert−ブトキシカルボニル、塩化ベンジルオキシカルボニル、ジ−tert−ブチルジカルボネート等のアルコキシカルボニル化剤、臭化ベンジル等のアラルキル化剤、塩化トリメチルシリル、塩化トリエチルシリル、塩化tert−ブチルジメチルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸tert−ブチルジメチルシリルエステル等のシリル化剤等を挙げることができる。
【0120】
塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、イミダゾール、2,6−ルチジン、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
【0121】
水酸基の保護化試薬の使用量は、光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物(4)に対して、通常2〜10モル当量、好ましくは2〜3モル当量である。
塩基の使用量は、光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物(4)に対して、通常2〜10モル当量、好ましくは2〜3モル当量である。
【0122】
およびPが結合して環状アセタールを形成する場合は、光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物(4)を酸の存在下、アセタール化剤と反応させることにより、化合物(5)を製造することができる。
【0123】
アセタール化剤としては、ホルムアルデヒドジメチルアセタール、アセトアルデヒドジエチルアセタール、アセトン、2,2−ジメトキシプロパン、2,2−ジエトキシプロパン、3,3−ジメトキシペンタン、シクロペンタノン、1,1−ジメトキシシクロペンタン、シクロペンタノンエチレンケタール、シクロヘキサノン、1,1−ジメトキシシクロヘキサン、1,1−ジエトキシシクロヘキサン、シクロヘキサノンエチレンケタール等のアルデヒド、ケトンまたはアセタールが挙げられる。好ましくは2,2−ジメトキシプロパンが挙げられる。
【0124】
酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フッ化水素酸、テトラフルオロホウ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホナート、テトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、三塩化鉄、三フッ化ホウ素エーテル錯体、四塩化スズ、四塩化チタン等が挙げられる。
【0125】
アセタール化剤の使用量は、光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物(4)に対して、通常1〜10モル当量、好ましくは1〜2モル当量である。
酸の使用量は、光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物(4)に対して、通常0.01〜1モル当量、好ましくは0.01〜0.2モル当量である。
【0126】
反応は一般に溶媒中で行われる。反応溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよい。例えば、酢酸エチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。導入する保護基に応じて適当な溶媒を用いることができる。
【0127】
反応温度は特に限定されないが、通常5℃〜100℃、好ましくは10℃〜50℃である。反応時間は特に限定されないが、通常0.5〜24時間、好ましくは1〜15時間である。
【0128】
カルボニル基の保護は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物(4)を、酸の存在下、アルコールまたはグリコールと反応させ、共沸により水を取り除くことによって、カルボニル基が保護された化合物(5)を製造することができる。
【0129】
アルコールとしては、メタノール、エタノール等が挙げられる。グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0130】
酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フッ化水素酸、テトラフルオロホウ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホナート、テトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、三塩化鉄、三フッ化ホウ素エーテル錯体、四塩化スズ、四塩化チタン等が挙げられる。
【0131】
アルコールまたはグリコールの使用量は、光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物(4)に対して、通常1〜10モル当量、好ましくは1〜2モル当量である。
酸の使用量は、光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物(4)に対して、通常0.01〜3モル当量、好ましくは0.1〜1モル当量である。
【0132】
反応は一般に溶媒中で行われる。反応溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよい。例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、水、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。導入する保護基に応じて適当な溶媒を用いることができる。
【0133】
反応温度は特に限定されないが、通常0℃〜150℃、好ましくは室温〜120℃である。反応時間は特に限定されないが、通常0.5〜24時間、好ましくは1〜15時間である。
【0134】
工程(c)
化合物(5)を酸化剤と反応させることにより、化合物(6)を製造することができる。
酸化剤は、化合物(5)のカルボニル基に隣接する末端メチル基に水酸基を導入することのできる酸化剤であれば特に限定されない。
【0135】
酸化剤としては、ヨードベンゼンジアセテート、オルトヨードシル安息香酸等のヨードシルベンゼン化合物等が挙げられる。
【0136】
例えば、化合物(5)を、塩基の存在下、ヨードシルベンゼン化合物と反応させる方法が挙げられる。塩基としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物が挙げられる。
【0137】
ヨードシルベンゼン化合物の使用量は、化合物(5)に対して、通常1〜5モル当量、好ましくは1〜2モル当量である。
塩基の使用量は、化合物(5)に対して、通常1〜10モル当量、好ましくは1〜5モル当量である。
【0138】
反応は一般に溶媒中で行われる。好ましい反応溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールが挙げられる。試薬に応じて適当な溶媒を用いることができる。
【0139】
反応温度は特に限定されないが、通常0℃〜100℃、好ましくは10℃〜40℃である。反応時間は特に限定されないが、通常2〜24時間、好ましくは4〜15時間である。
【0140】
酸化剤として、ヨードシルベンゼン化合物と塩基を使用し、メタノール、エタノール等のアルコール溶媒中で反応を行う場合、PおよびPがそれぞれアルコキシ基である化合物(6)が得られる。
【0141】
工程(c)において、PおよびPがそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基である化合物(5)を用いることにより、不斉中心*3、*4および*5の立体配置が維持された化合物(6)を選択的に得ることができる。また、工程(c)において、PおよびPが結合して環状アセタールを形成する化合物(5)を用いることにより、不斉中心*3および*4の立体配置が維持され、*5の立体配置が反転した化合物(6)を選択的に得ることができる。
【0142】
例えば、一般式(5)−2で表される化合物を酸化剤と反応させることにより、一般式(6)−2で表される化合物が選択的に得られる。
【0143】
【化48】

【0144】
[式中、R、P、PおよびPは前記と同じ意味を示し、P2aおよびP3aはそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示す。但し、P2aおよびP3aが水素原子であるとき、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。]
【0145】
また、例えば、一般式(5)−3で表される化合物を酸化剤と反応させることにより、一般式(6)−3で表される化合物が選択的に得られる。
【0146】
【化49】

【0147】
[式中、R、P、PおよびPは前記と同じ意味を示し、P2bおよびP3bは結合して環状アセタールを形成する。]
【0148】
工程(d)
化合物(6)の保護基を除去することにより、テトラヒドロキシカルボニル化合物(7)を製造することができる。
保護基の除去は、水酸基の保護基を先に除去しても、カルボニル基の保護基を先に除去しても、水酸基の保護基とカルボニル基の保護基を同時に除去してもよい。また、P、P、Pで示されるそれぞれの保護基を同時に除去しても、各保護基を複数工程で除去してもよい。例えば、Pがベンジル基である場合、Pで示される保護基を除去して、一般式(9)
【0149】
【化50】

【0150】
[式中の各記号は前記と同じ意味を示す。]
で表される化合物を得て、ついでPおよびPで示される保護基と、PおよびPで表されるカルボニル基の保護基とを除去することにより、テトラヒドロキシカルボニル化合物(7)を製造することができる。
【0151】
保護基の除去は、保護基の種類に応じて公知の方法により行うことができる。例えば、還元、加水分解による方法が挙げられる。
【0152】
還元法としては、化学的還元および接触還元が挙げられる。
化学的還元で使用する還元剤としては、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム等の水素化物;またはスズ、亜鉛、鉄等の金属とギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等の酸との組み合わせが挙げられる。
【0153】
接触還元で使用する触媒としては、白金黒、酸化白金等の白金触媒;パラジウム黒、酸化パラジウム、パラジウム−炭素等のパラジウム触媒;還元ニッケル、ラネーニッケル等のニッケル触媒;還元鉄、ラネー鉄等の鉄触媒等が挙げられる。
【0154】
還元は一般に溶媒中で行われる。反応溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、トルエン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0155】
加水分解は、酸または塩基の存在下で行うことができる。
酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フッ化水素酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、テトラフルオロホウ酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホナート、テトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、三塩化鉄、三フッ化ホウ素エーテル錯体、四塩化スズ、四塩化チタン等が挙げられる。
【0156】
塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0157】
酸の使用量は、化合物(6)に対して、通常0.01〜4モル当量、好ましくは0.1〜2モル当量である。
塩基の使用量は、化合物(6)に対して、通常0.01〜4モル当量、好ましくは0.1〜2モル当量である。
【0158】
加水分解は一般に溶媒中で行われる。反応溶媒としては、本反応を阻害しない溶媒であればいずれでもよく、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、トルエン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0159】
加水分解は、酸を用いて水性溶媒中で行うのが好ましく、酸としては、塩酸、トリフルオロ酢酸、酢酸等の揮発性の酸、または酸性イオン交換樹脂が好ましい。揮発性の酸を用いると、反応終了後、減圧条件下で酸を除去することができるため、塩基を加えて中和する必要がなくなり、酸性イオン交換樹脂を用いれば加水分解反応の制御が容易である。また、水性溶媒を用いると、反応終了後の反応液を、水と混和しない有機溶媒との間で分配することにより、目的物であるテトラヒドロキシカルボニル化合物(7)が水層に、その他の不要な成分が有機層に抽出されるため、分液操作のみで、目的とするテトラヒドロキシカルボニル化合物(7)を抽出することができる。
【0160】
酸性イオン交換樹脂としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などの陽イオン交換基を有するものが挙げられる。好ましくはスルホン酸基を有する強酸性イオン交換樹脂が用いられる。スルホン酸基を有する強酸性イオン交換樹脂の例としては、Amberlite(登録商標)IR−120(H)、Amberlyst(登録商標)15、Dowex(登録商標)50W、Zeolite等が挙げられる。
【0161】
酸性イオン交換樹脂の使用量は、化合物(6)1gに対して、通常1〜10g、好ましくは2〜5gである。
【0162】
水性溶媒としては水が好ましい。
抽出に用いられる有機溶媒としては、水と混和しない有機溶媒であれば特に限定されず、酢酸エチル、クロロホルム、塩化メチレン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。
【0163】
反応終了後、反応液をろ過して酸性イオン交換樹脂を除去し、ろ液に抽出用の上記有機溶媒を加え、分液操作により、水層と有機層を分離する。水層は必要により中和する。中和に用いる酸または塩基としては、目的物に塩が混入するのを避けるため、上述した酸性イオン交換樹脂または塩基性イオン交換樹脂が好ましい。塩基性イオン交換樹脂としては、Amberlite(登録商標)IR−45(OH)等が挙げられる。加水分解反応において揮発性の酸を使用した場合、水層を減圧濃縮する等することにより酸が除去されるため、通常、中和の必要はない。水層を減圧濃縮することによりテトラヒドロキシカルボニル化合物(7)を得る。
【0164】
工程(e)
テトラヒドロキシカルボニル化合物(7)のうち、一般式(7)−2で表されるテトラヒドロキシカルボニル化合物は、公知の方法に従って、一般式(8)で表されるL−フコース誘導体に変換することができる。L−フコース誘導体に変換する方法としては、例えば、L−フコースイソメラーゼを使用する方法が挙げられる(国際公開第97/15683号パンフレット参照)。
【0165】
【化51】

【0166】
例えば、L−フコースイソメラーゼ(EC 5.3.1.3)を使用して、一般式(7)−2のテトラヒドロキシカルボニル化合物を、一般式(8)で表されるL−フコース誘導体に変換することができる。L−フコースイソメラーゼとしては、E.coli K12株由来のL−フコースイソメラーゼ(National Center for Biotechnology InformationのデータベースAccession number AAC75844)が挙げられる。
【0167】
酵素の反応条件は用いるL−フコースイソメラーゼの種類によって異なり、当業者は簡単な実験により適当な反応条件を適宜容易に設定することができる。酵素反応の反応溶液をイオン交換クロマトグラフィー処理等、当業者に公知の精製手段で処理することにより、一般式(8)で表されるL−フコース誘導体を単離、精製することができる。
【0168】
本発明の製造方法における出発物質である光学活性アルデヒド化合物(1)は、公知化合物であり、例えば、下記の工程により製造することができる(J.Org.Chem.,1980年,45巻,3846−3856頁参照)。
【0169】
【化52】

【0170】
[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Pはメチル基、エチル基、ベンジル基等のカルボキシル基の保護基を示し、Pは水酸基の保護基を示す。*1は不斉中心であり、R−またはS−配置であることを示す。]
【0171】
工程(f)
一般式(10)で表される化合物の水酸基を保護基で保護することにより、一般式(11)で表される化合物を製造することができる。
水酸基の保護は、保護基の種類に応じて、公知の方法により行うことができる。反応条件や反応試薬は、前記工程(b)を参照することができる。例えば、一般式(10)で表される化合物を塩化メチレン、N,N−ジメチルホルムアミド等の適当な溶媒中、水素化ナトリウム、イミダゾール等の適当な塩基の存在下、臭化ベンジル、塩化tert−ブチルジメチルシリル等の適当な水酸基の保護化試薬と反応させることにより、一般式(11)で表される化合物を得る。
【0172】
工程(g)
一般式(11)で表される化合物を還元することにより、光学活性アルデヒド化合物(1)を製造することができる。
例えば、一般式(11)で表される化合物をヘキサン等の適当な溶媒中、水素化ジイソブチルアルミニウム等の還元剤を用いて、−78℃〜室温で還元することにより、光学活性アルデヒド化合物(1)を製造することができる。
【実施例】
【0173】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、これら実施例はもちろん本発明を限定するものではない。
なお、参考例および実施例における式中のBnはベンジル基、Meはメチル基、Etはエチル基、TBDMSはtert−ブチルジメチルシリル基をそれぞれ示す。
【0174】
【化53】

【0175】
参考例1
(2S)−2−ベンジルオキシプロピオン酸エチルエステルの合成
アルゴン雰囲気下で水素化ナトリウム(2.75g,55mmol)に塩化メチレン(90ml,0.55M)を加え、0℃に冷却した。冷却後、L−乳酸エチルエステル(5.7ml,50mmol)の塩化メチレン(10ml)溶液をゆっくり滴下し、滴下後、数十分間撹拌した。次に臭化ベンジル(6.3ml,53mmol)をゆっくり滴下し、0℃で7時間撹拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC)(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)によるモニタリングで反応が完結したことを確認後、水を加え、塩化メチレンで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、無色透明液体の(2S)−2−ベンジルオキシプロピオン酸エチルエステルを得た(7.15g,収率68.7%)。
【0176】
参考例2
(2S)−2−(ベンジルオキシ)プロパナールの合成
アルゴン雰囲気下で(2S)−2−ベンジルオキシプロピオン酸エチルエステル(3.0g,14.4mmol)にヘキサン(17ml,0.88M)を加え、−78℃に冷却した。冷却後、水素化ジイソブチルアルミニウム(0.93Mヘキサン溶液,22ml,20mmol)を加え、−78℃で4時間撹拌した。TLC(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)によるモニタリングで反応が完結したことを確認後、水を加え、室温に戻した。反応液をろ過して、ジエチルエーテルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、無色透明液体の(2S)−2−(ベンジルオキシ)プロパナールを得た(1.86g,収率78.7%)。
【0177】
実施例1
(3R,4S,5S)−5−ベンジルオキシ−3,4−ジヒドロキシ−2−ヘキサノンの合成
ヒドロキシアセトン(32ml,0.457mol)にジメチルスルホキシド(61ml,0.5M)を加えた後、D−プロリン(3.5g,0.03mol)を加え、10分間撹拌した。次に、(2S)−2−(ベンジルオキシ)プロパナール(5.0g,0.03mol)をゆっくり加え、室温で約16時間撹拌した。TLC(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)によるモニタリングで原料である(2S)−2−(ベンジルオキシ)プロパナールが完全に消失したことを確認後、塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルにより抽出を行った。有機層を塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、淡黄色透明液体の(3R,4S,5S)−5−ベンジルオキシ−3,4−ジヒドロキシ−2−ヘキサノンを得た(2.7g,収率37.8%,ジアステレオ選択性>10:1)。ジアステレオ選択性はH−NMRの積分値を比較することにより決定した。
1H-NMR (CDCl3, 400MHz)δ1.25(d, 3H, J=6.4Hz), 2.28(s, 3H), 3.03-3.04(m, 1H), 3.03-3.04(m, 1H), 3.44(bs, 1H), 3.73-3.75(m, 1H), 3.90(dq, 1H, J=3.0Hz, 6.4Hz), 4.13-4.16(m, 1H), 4.45(d, 1H, J=11.3Hz), 4.63(d, 1H, J=11.3Hz), 7.27-7.35(m, 5H)
【0178】
実施例2
3,4−イソプロピリデン−(3R,4S,5S)−5−ベンジルオキシ−3,4−ジヒドロキシ−2−ヘキサノンの合成
(3R,4S,5S)−5−ベンジルオキシ−3,4−ジヒドロキシ−2−ヘキサノン(0.55g,2.30mmol)の酢酸エチル(2.75ml)溶液に、2,2−ジメトキシプロパン(0.43ml,3.46mmol)、メタンスルホン酸(0.03ml,0.46mmol)を加え、室温で約14時間撹拌した。TLC(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)によるモニタリングで反応が完結したことを確認後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した後、塩化ナトリウム水溶液で洗浄、硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)で精製し、無色透明液体の3,4−イソプロピリデン−(3R,4S,5S)−5−ベンジルオキシ−3,4−ジヒドロキシ−2−ヘキサノンを得た(0.35g,収率54.7%)。
1H-NMR (CDCl3, 400MHz)δ1.28(d, 3H, J=6.4Hz), 1.36(d, 3H, J=0.64Hz), 1.59(d, 3H, J=0.48Hz), 2.02(s, 3H), 3.61(dq, 1H, J=1.6Hz, 6.4Hz), 4.08(d, 1H, J=11.3Hz), 4.35-4.36(m, 2H), 4.49(d, 1H, J=11.4Hz), 7.23-7.33(m, 5H)
【0179】
実施例3
3,4−イソプロピリデン−(3S,4S,5S)−5−ベンジルオキシ−1,3,4−トリヒドロキシ−2−ヘキサノン,ジメチルアセタールの合成
3,4−イソプロピリデン−(3R,4S,5S)−5−ベンジルオキシ−3,4−ジヒドロキシ−2−ヘキサノン(1.0g,3.6mmol)のメタノール(11ml,0.33M)溶液に、水酸化カリウム(1.0g,18mmol)を加えた。溶解後、反応液を0℃に冷却し、ヨードベンゼンジアセテート(1.16g,3.6mmol)をゆっくり添加した後、室温に戻して、約14時間撹拌した。TLC(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)によるモニタリングで反応が完結したことを確認後、減圧濃縮してメタノールを除去し、純水、酢酸エチルを加えて分層した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、3,4−イソプロピリデン−(3S,4S,5S)−5−ベンジルオキシ−1,3,4−トリヒドロキシ−2−ヘキサノン,ジメチルアセタールを得た(0.30g,収率24.5%)。
1H-NMR (CDCl3, 400MHz)δ1.32(d, 3H, J=6.5Hz), 1.43(s, 3H), 1.46(s, 3H), 3.21(s, 3H), 3.32(s, 3H), 3.47(s, 1H), 3.63(dq, 1H, J=1.6Hz, 6.4Hz), 3.72-3.81(m, 2H), 4.06(dd, 1H, J=2.4Hz, 8.0Hz), 4.23-4.28(m, 1H), 4.42-4.47(m, 2H), 4.72(d, 1H, J=11.9Hz), 7.26-7.36(m, 5H)
【0180】
実施例4
3,4−イソプロピリデン−(3S,4R,5S)−1,3,4,5−テトラヒドロキシ−2−ヘキサノン,ジメチルアセタールの合成
アルゴン雰囲気下で3,4−イソプロピリデン−(3S,4S,5S)−5−ベンジルオキシ−1,3,4−トリヒドロキシ−2−ヘキサノン,ジメチルアセタール(0.30g,0.88mmol)にエタノール(15ml)を加え、溶解後、wet(52.5%)−5%Pd/C(150mg,50wt%)を加えた。その後、水素置換し、室温で約14時間撹拌した。TLC(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)によるモニタリングで反応が完結したことを確認後、アルゴン置換し、ろ過を行い、そのろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製し、3,4−イソプロピリデン−(3S,4R,5S)−1,3,4,5−テトラヒドロキシ−2−ヘキサノン,ジメチルアセタールを得た(0.22g,収率100%)。
1H-NMR (CDCl3, 400MHz)δ1.28(d, 3H, J=6.7Hz), 1.43(s, 3H), 1.47(s, 3H), 2.12(d, 1H, J=9.4Hz), 2.41(bs, 1H), 3.35(s, 3H), 3.39(s, 1H), 3.78-3.91(m, 3H), 4.05(dd, 1H, J=2.4Hz, 8.4Hz), 4.72(d, 1H, J=8.4Hz)
【0181】
実施例5
6−デオキシ−L−ソルボフラノースの合成
3,4−イソプロピリデン−(3S,4R,5S)−1,3,4,5−テトラヒドロキシ−2−ヘキサノン,ジメチルアセタール(0.22g)に純水(15ml)、強酸性イオン交換樹脂Amberlite(登録商標)IR−120(H)(0.9g)を加え3時間加熱還流した。TLC(メタノール:酢酸エチル=1:20)によるモニタリングで反応が完結したことを確認後、室温に戻した。イオン交換樹脂をろ過して取り除き、ろ液に酢酸エチルを加えて分層した。目的物である6−デオキシ−L−ソルボフラノースは水層へ、その他の成分は有機層へ抽出された。その後、水層を塩基性イオン交換樹脂Amberlite(登録商標)IR−45(OH)で中和し、減圧濃縮して、6−デオキシ−L−ソルボフラノースを得た(0.11g,収率76.1%)。
1H-NMR(D2O, 400MHz)δ1.23(d, 3H, J=6.5Hz), 3.55-3.77(m, 2H), 4.12-4.36(m, 3H); 13C-NMR(D2O, 400MHz)δ14.4, 63.7, 75.2, 76.8, 76.9, 102.1
【0182】
【化54】

【0183】
参考例3
(2S)−2−(tert−ブチルジメチルシロキシ)プロピオン酸エチルエステルの合成
L−乳酸エチルエステル(32g,0.27mol)にN,N−ジメチルホルムアミド(65ml,2ml/g)を加え、溶解した。そこへ、塩化tert−ブチルジメチルシリル(49g,0.325mol)、イミダゾール(49g,0.677mol)を加え、35℃で一晩撹拌した。反応終了後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過、減圧濃縮を行った。残渣を蒸留精製し、無色透明液体の(2S)−2−(tert−ブチルジメチルシロキシ)プロピオン酸エチルエステルを得た(60g,収率95.6%)。
【0184】
参考例4
(2S)−2−(tert−ブチルジメチルシロキシ)プロパナールの合成
アルゴン雰囲気下で(2S)−2−(tert−ブチルジメチルシロキシ)プロピオン酸エチルエステル(40g,0.172mol)にヘキサン(195ml,0.88M)を加え、−78℃に冷却した。冷却後、水素化ジイソブチルアルミニウム(0.93Mヘキサン溶液,235ml,0.223mol)を加え、−78℃で7時間撹拌した。TLC(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)によるモニタリングで反応が完結したことを確認後、水を加え、室温に戻した。反応液をろ過して、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過、減圧濃縮を行った。残渣を蒸留精製し、無色透明液体の(2S)−2−(tert−ブチルジメチルシロキシ)プロパナールを得た(28.6g,収率88.3%)。
【0185】
実施例6
(3R,4S,5S)−5−tert−ブチルジメチルシロキシ−3,4−ジヒドロキシ−2−ヘキサノンの合成
ヒドロキシアセトン(27ml,39.8mmol)にジメチルスルホキシド(5.5ml,0.5M)を加えた後、D−プロリン(0.31g,2.65mmol)を加え、10分間撹拌した。次に、(2S)−2−(tert−ブチルジメチルシロキシ)プロパナール(5.0g,2.65mmol)をゆっくり加え、室温で約16時間撹拌した。TLC(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)によるモニタリングで原料である(2S)−2−(tert−ブチルジメチルシロキシ)プロパナールが完全に消失したことを確認後、塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルにより抽出を行った。有機層を塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)で精製し、淡黄色透明液体の(3R,4S,5S)−5−tert−ブチルジメチルシロキシ−3,4−ジヒドロキシ−2−ヘキサノンを得た(0.30g,収率43.1%,ジアステレオ選択性>8:1)。ジアステレオ選択性はH−NMRの積分値を比較することにより決定した。
1H-NMR (CDCl3, 400MHz)δ0.00(s, 6H), 0.80(s, 9H), 1.09(d, 3H, J=6.4Hz), 2.25(s, 3H), 2.78(d, 1H, J=8.7Hz), 3.06(ddd, 1H, J=1.8Hz, 8.7Hz), 3.53-3.57(m, 1H), 3.83(dd, 1H, J=5.2Hz, 8.7Hz), 4.14(dq, 1H, J=1.8Hz, 6.4Hz)
【0186】
実施例7
3,4−イソプロピリデン−(3R,4S,5S)−5−tert−ブチルジメチルシロキシ−3,4−ジヒドロキシ−2−ヘキサノンの合成
(3R,4S,5S)−5−tert−ブチルジメチルシロキシ−3,4−ジヒドロキシ−2−ヘキサノン(2.3g,8.76mmol)の酢酸エチル(12ml)溶液に、2,2−ジメトキシプロパン(1.7ml,13.1mmol)、メタンスルホン酸(0.12ml,1.75mmol)を加え、室温で約14時間撹拌した。TLC(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)によるモニタリングで反応が完結したことを確認後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した後、塩化ナトリウム水溶液で洗浄、硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、無色透明液体の3,4−イソプロピリデン−(3R,4S,5S)−5−tert−ブチルジメチルシロキシ−3,4−ジヒドロキシ−2−ヘキサノンを得た(1.5g,収率56.6%)。
1H-NMR (CDCl3, 400MHz)δ0.00(d, 6H, J=2.0Hz), 0.83(s, 9H), 1.11(d, 3H, J=6.2Hz), 1.32(s, 3H), 1.54(s, 3H), 2.20(s, 3H), 3.82(dq, 1H, J=6.0Hz, 6.2Hz), 4.13(dd, 1H, J=6.0Hz, 7.6Hz), 4.29(d, 6H, 7.8Hz)
【0187】
実施例8
3,4−イソプロピリデン−(3S,4S,5S)−5−tert−ブチルジメチルシロキシ−1,3,4−トリヒドロキシ−2−ヘキサノン,ジメチルアセタールの合成
3,4−イソプロピリデン−(3R,4S,5S)−5−tert−ブチルジメチルシロキシ−3,4−ジヒドロキシ−2−ヘキサノン(2.0g,6.6mmol)のメタノール(20ml,0.33M)溶液に、水酸化カリウム(1.85g,33mmol)を加えた。溶解後、反応液を0℃に冷却し、ヨードベンゼンジアセテート(2.13g,6.6mmol)をゆっくり添加した後、室温に戻して、約14時間撹拌した。TLC(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)によるモニタリングで反応が完結したことを確認後、減圧濃縮してメタノールを除去し、純水、酢酸エチルを加えて分層した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)で精製し、3,4−イソプロピリデン−(3S,4S,5S)−5−tert−ブチルジメチルシロキシ−1,3,4−トリヒドロキシ−2−ヘキサノン,ジメチルアセタールを得た(0.68g,収率28.3%)。
1H-NMR (CDCl3, 400MHz)δ0.00(d, 6H, J=1.9Hz), 0.82(s, 9H), 1.17(d, 3H, J=6.4Hz), 1.34(s, 3H), 1.37(s, 3H), 2.34-2.36(m, 1H), 3.23(s, 3H), 3.29(s, 3H), 3.66-3.82(m, 3H), 3.86(dd, 1H, J=1.8Hz, 8.1Hz), 4.32(d, 1H, J=8.1Hz)
【0188】
実施例9
6−デオキシ−L−ソルボフラノースの合成
3,4−イソプロピリデン−(3S,4S,5S)−5−tert−ブチルジメチルシロキシ−1,3,4−トリヒドロキシ−2−ヘキサノン,ジメチルアセタール(0.11g,0.3mmol)にトリフルオロ酢酸と水(1:3 v/v)の混合溶液(4ml)を加え、室温で5時間撹拌した。TLC(クロロホルム:メタノール=10:1)によるモニタリングで反応が完結したことを確認後、反応溶液にトルエンを加えて減圧濃縮を行った。その後、トルエンを加え、減圧濃縮することを数回繰り返し、トリフルオロ酢酸を共沸により完全に留去した残渣を、減圧下で乾燥して、6−デオキシ−L−ソルボフラノースを得た(0.048g,収率96.9%)。
1H-NMR(D2O, 400MHz)δ1.23(d, 3H, J=6.5Hz), 3.55-3.77(m, 2H), 4.12-4.36(m, 3H); 13C-NMR(D2O, 400MHz)δ14.4, 63.7, 75.2, 76.8, 76.9, 102.1
【0189】
【化55】

【0190】
実施例10
(3R,4S,5S)−5−ベンジルオキシ−4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルジメチルシロキシ−2−ヘキサノンの合成
(3R,4S,5S)−5−ベンジルオキシ−3,4−ジヒドロキシ−2−ヘキサノン(0.47g,1.97mmol)に塩化メチレン(4ml)を加えた。溶解後、反応液を0℃に冷却し、2,6−ルチジン(0.87ml,7.50mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸tert−ブチルジメチルシリルエステル(0.92ml,3.94mmol)を加え、約2時間撹拌した。反応終了後、塩化ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した後、硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製して、主生成物を単離し、(3R,4S,5S)−5−ベンジルオキシ−4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルジメチルシロキシ−2−ヘキサノンを得た(0.17g,収率24.5%)。
1H-NMR(CDCl3, 400MHz)δ0.00(s, 6H), 0.87(s, 9H), 1.26(d, 3H, J=6.2Hz), 2.17(s, 3H), 2.45(d, 1H, J=7.3Hz), 3.52-3.56(m, 1H), 3.67-3.71(m, 1H), 4.00(d, 1H, J=6.2Hz), 4.44(d, 1H, J=11.1Hz), 4.60(d, 1H, J=11.1Hz), 7.27-7.31(m, 5H)
【0191】
実施例11
(3R,4S,5S)−5−ベンジルオキシ−3−tert−ブチルジメチルシロキシ−1,4−ジヒドロキシ−2−ヘキサノン,ジメチルアセタールの合成
(3R,4S,5S)−5−ベンジルオキシ−4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルジメチルシロキシ−2−ヘキサノン(0.17g,0.48mmol)のメタノール(2ml)溶液に、水酸化カリウム(0.135g,2.4mmol)を加えた。溶解後、反応液を0℃に冷却し、ヨードベンゼンジアセテート(0.16g,0.48mmol)をゆっくり添加した後、室温に戻して約14時間撹拌した。TLC(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)によるモニタリングで反応が完結したのを確認後、減圧濃縮してメタノールを除去し、純水、酢酸エチルを加えて分層した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製して、主生成物を単離し、(3R,4S,5S)−5−ベンジルオキシ−3−tert−ブチルジメチルシロキシ−1,4−ジヒドロキシ−2−ヘキサノン,ジメチルアセタールを得た(13mg,収率6.5%,ジアステレオ選択性=3:1)。ジアステレオ選択性はH−NMRの積分値を比較することにより決定した。
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δ0.00(s, 6H), 0.88(s, 9H), 1.28(d, 3H, J=6.0Hz), 3.22(s, 3H), 3.30(s, 3H), 3.41-3.48 (m, 2H), 3.62-3.69 (m, 1H), 3.85-3.95(m, 1H), 4.00(d, 1H, J=6.2Hz), 4.23-4.28(m, 1H), 4.47(d, 1H, J=11.4Hz), 4.68(d, 1H, J=11.4Hz), 7.27-7.31(m, 5H)
【0192】
実施例12
(3R,4S,5S)−5−ベンジルオキシ−1,3,4−トリヒドロキシ−2−ヘキサノンの合成
(3R,4S,5S)−5−ベンジルオキシ−3−tert−ブチルジメチルシロキシ−1,4−ジヒドロキシ−2−ヘキサノン,ジメチルアセタール(13mg,0.03mmol)の塩化メチレン(1ml)溶液にトリフルオロ酢酸と水(1:3 v/v)の混合溶液(1ml)を加え、室温で約5時間撹拌した。反応終了後、反応溶液にトルエンを加えて減圧濃縮を行った。その後、トルエンを加え、減圧濃縮することを数回繰り返し、トリフルオロ酢酸を共沸により完全に留去した残渣を、減圧下で乾燥して、(3R,4S,5S)−5−ベンジルオキシ−1,3,4−トリヒドロキシ−2−ヘキサノンを含む濃縮溶液(6mg)を得た。
【0193】
実施例13
L−フクロフラノースの合成
アルゴン雰囲気下で、実施例12で得た(3R,4S,5S)−5−ベンジルオキシ−1,3,4−トリヒドロキシ−2−ヘキサノンを含む濃縮溶液(6mg)にエタノール(1ml)を加え、溶解後、wet(52.5%)−5%−Pd/C(3mg,50wt%)を加えた。その後、水素置換し、室温で約14時間撹拌した。TLC(クロロホルム:メタノール=10:1)によるモニタリングで反応が完結したのを確認後、アルゴン置換し、ろ過を行い、そのろ液を減圧濃縮して、L−フクロフラノースを含む濃縮溶液(2mg)を得た。
【0194】
実施例14
L−フコースの製造
E.coli K12株由来のL−フコースイソメラーゼ(EC 5.3.1.3)(National Center for Biotechnology InformationのデータベースAccession number AAC75844)(以下FucIと記載)のN末端にヒスチジン−タグを挿入させるため、FucIの発現ベクターとしてQIAGEN社製pQE30を用いた。pQE30のマルチクローニングサイト中のSphI及びHindIIIサイト間にFucI遺伝子(fucI)を挿入するため、後記PCRプライマー1、2(配列番号1、2)を作成し、常法により得たE.coli W3110株由来のゲノミックDNAをテンプレートとしたPCRを行い、約1.8kbp長のフラグメントを得た。このフラグメントおよびpQE30ベクターをSphIおよびHindIIIで消化、精製後、ライゲーションし、N末端にHis−Tag配列を有するFucIタンパク質(以下FucIH6と記載)発現用のプラスミドpQE30FucIH6を作成した。このプラスミド上にコードされる遺伝子によって形成されるfucIH6の全塩基配列および予想されるアミノ酸配列を後記配列番号3、4にそれぞれ記す。本プラスミドを用いてE.coli JM109株を形質転換し、FucIH6発現株E.coli JM109/pQE30FucIH6を作成した。本菌株を、LB培地を用いて37℃で培養し、培養途中その培養液の600nmにおける吸光度がおよそ0.4となったところで終濃度1mMのIPTGを添加することによりfucIH6の発現誘導を行った。誘導後2時間培養を継続した後、得られた培養液を遠心操作により集菌し、得られた菌体を50mM Tris−HCl(pH8.0)で洗浄した。得られた洗浄菌体を200W、10分の超音波処理にて破砕し、この破砕物の遠心上清を粗酵素溶液とした。この粗酵素溶液に、それぞれ終濃度で10mMのイミダゾールと0.3MのNaClを加え、50mM Tris−HCl(pH8.0),10mM イミダゾール,0.3M NaCl(これを緩衝液Wと呼ぶ)にて平衡化した1ml容のNi−NTA resin(QIAGEN社製)と混合し、一晩振盪することによりHis−Tag配列を有するタンパク質をresinに結合させた。振盪後、遠心操作によってresinを回収し、更に緩衝液Wによって数回resinを洗浄した後、resinをカラムに移した。次に0.2M イミダゾールの添加により吸着タンパク質をresinから溶出した。得られた溶出画分は50mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM 2−メルカプトエタノール、0.1mM MnClに対して透析し、更に必要に応じて膜濃縮して次の反応に用いた。得られた酵素溶液をSDS−PAGEに供し、FucIH6の分子量およそ67kDaのバンドがほぼ単一の状態で観察された。
【0195】
次に、実施例13で得たL−フクロースを含む濃縮溶液(0.12ml)を1.45倍に希釈し、終濃度で1mM MnCl、0.1M リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、0.2mg/ml FucIH6となるように各試薬を加え、30℃で2.5時間反応した。下記条件でのHPLCによる解析の結果、L−フクロースからL−フコースへの変換収率は約89%であった。
【0196】
<HPLC条件>
カラム:Shodex製 Sugar SC1011、直径10mm、長さ300mm
カラム温度:75℃
移動相:50ppm Ca−EDTA in H
検出:示差屈折計(RIディテクター)
流速:1.2ml/min
保持時間:L−フクロース保持時間約13.6分、L−フコース保持時間約7.6分。
【0197】
配列番号1:fucI遺伝子取得用5’プライマー塩基配列
gaagcatgcatgaaaaaaatcagcttaccg
配列番号2:fucI遺伝子取得用3’プライマー塩基配列
tgttcaggcccggaagcttgagcgaccggg
配列番号3:fucIH6遺伝子塩基配列
ATGAGAGGATCGCATCACCATCACCATCACGGATCCGCATGCATGAAAAAAATCAGCTTACCGAAAATTGGTATCCGCCCGGTTATTGACGGTCGTCGCATGGGTGTTCGTGAGTCGCTTGAAGAACAAACAATGAATATGGCGAAAGCTACGGCCGCACTGCTGACCGAGAAACTGCGCCATGCCTGCGGAGCTGCCGTCGAGTGTGTCATTTCCGATACCTGTATCGCGGGTATGGCTGAAGCCGCTGCTTGCGAAGAAAAATTCAGCAGTCAGAATGTAGGCCTCACCATTACGGTAACGCCTTGCTGGTGCTATGGCAGTGAAACCATCGACATGGATCCAACCCGCCCGAAGGCCATTTGGGGCTTTAACGGCACTGAACGCCCCGGCGCTGTTTACCTGGCAGCGGCTCTGGCAGCTCACAGCCAGAAAGGCATCCCAGCATTCTCCATTTACGGTCATGACGTTCAGGATGCCGATGACACATCGATTCCTGCCGATGTTGAAGAAAAACTGCTGCGCTTTGCCCGCGCCGGTTTGGCCGTCGCCAGCATGAAAGGTAAAAGCTATCTGTCGCTGGGCGGCGTTTCGATGGGTATCGCCGGTTCCATTGTTGATCACAACTTCTTTGAATCCTGGCTGGGAATGAAAGTCCAGGCGGTGGATATGACCGAACTGCGTCGCCGTATCGATCAGAAGATTTACGACGAAGCCGAATTGGAAATGGCACTGGCCTGGGCTGATAAAAACTTCCGCTATGGCGAAGATGAAAATAACAAACAGTATCAACGTAATGCCGAGCAAAGCCGCGCAGTTCTGCGCGAAAGTTTACTGATGGCGATGTGTATCCGCGACATGATGCAAGGCAACAGCAAACTGGCCGATATTGGTCGCGTGGAAGAATCACTTGGCTACAACGCCATCGCTGCGGGCTTCCAGGGGCAACGTCACTGGACCGATCAATATCCCAATGGTGACACCGCCGAAGCGATCCTCAACAGTTCATTTGACTGGAATGGCGTGCGCGAACCCTTTGTCGTGGCGACCGAAAACGACAGTCTTAACGGCGTGGCAATGCTAATGGGTCACCAGCTCACCGGCACCGCTCAGGTATTTGCCGATGTGCGTACCTACTGGTCACCAGAAGCAATTGAGCGTGTAACGGGGCATAAACTGGATGGACTGGCAGAACACGGCATCATCCATTTGATCAACTCCGGTTCTGCTGCGCTGGACGGTTCCTGTAAACAACGCGACAGCGAAGGTAACCCGACGATGAAGCCACACTGGGAAATCTCTCAGCAAGAGGCTGACGCTTGCCTCGCCGCTACCGAATGGTGCCCGGCGATCCACGAATACTTCCGTGGCGGCGGTTACTCTTCCCGCTTCCTTACCGAAGGCGGCGTCCCGTTCACCATGACTCGTGTCAACATCATCAAAGGCCTGGGACCGGTACTGCAAATCGCGGAAGGCTGGAGCGTGGAATTGCCGAAGGATGTGCATGACATCCTCAACAAACGCACCAACTCAACCTGGCCAACCACCTGGTTTGCACCGCGCCTCACCGGTAAAGGGCCGTTTACGGATGTGTACTCGGTAATGGCGAACTGGGGCGCTAACCATGGGGTTCTGACCATCGGCCACGTTGGCGCAGACTTTATCACTCTCGCCTCCATGCTGCGTATCCCGGTATGTATGCACAACGTTGAAGAGACCAAAGTGTATCGTCCTTCTGCCTGGGCTGCGCACGGCATGGATATTGAAGGCCAGGATTACCGCGCTTGCCAGAACTACGGTCCGTTGTACAAGCGTTAA
配列番号4:fucIH6タンパク質アミノ酸配列
MRGSHHHHHHGSACMKKISLPKIGIRPVIDGRRMGVRESLEEQTMNMAKATAALLTEKLRHACGAAVECVISDTCIAGMAEAAACEEKFSSQNVGLTITVTPCWCYGSETIDMDPTRPKAIWGFNGTERPGAVYLAAALAAHSQKGIPAFSIYGHDVQDADDTSIPADVEEKLLRFARAGLAVASMKGKSYLSLGGVSMGIAGSIVDHNFFESWLGMKVQAVDMTELRRRIDQKIYDEAELEMALAWADKNFRYGEDENNKQYQRNAEQSRAVLRESLLMAMCIRDMMQGNSKLADIGRVEESLGYNAIAAGFQGQRHWTDQYPNGDTAEAILNSSFDWNGVREPFVVATENDSLNGVAMLMGHQLTGTAQVFADVRTYWSPEAIERVTGHKLDGLAEHGIIHLINSGSAALDGSCKQRDSEGNPTMKPHWEISQQEADACLAATEWCPAIHEYFRGGGYSSRFLTEGGVPFTMTRVNIIKGLGPVLQIAEGWSVELPKDVHDILNKRTNSTWPTTWFAPRLTGKGPFTDVYSVMANWGANHGVLTIGHVGADFITLASMLRIPVCMHNVEETKVYRPSAWAAHGMDIEGQDYRACQNYGPLYKR*

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】


[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Pは水酸基の保護基を示し、*1は不斉中心であり、R−またはS−配置であることを示す。]
で表される光学活性アルデヒド化合物を、式(2)
【化2】


で表されるヒドロキシアセトンと、一般式(3)
【化3】


[式中、Xは窒素原子、硫黄原子または酸素原子を示し、Yはアルキル基、水酸基または保護されている水酸基を示し、m、nおよびkはそれぞれ独立してm+n+k=2〜3の条件を満たす0〜2の整数を示し、jは0〜3の整数を示し、*2は不斉中心であり、R−またはS−配置であることを示す。]
で表される光学活性環状アミノ酸の存在下で反応させることを特徴とする、
一般式(4)
【化4】


[式中、RおよびPは前記と同じ意味を示し、*3、*4および*5はそれぞれ不斉中心であり、前記*1がS−またはR−配置のとき、*3はそれぞれS−またはR−配置であることを示し、前記*2がS−またはR−配置のとき、*4および*5はそれぞれR−およびS−配置またはS−およびR−配置であることを示す。]
で表される光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物の製造方法。
【請求項2】
以下の(a)〜(d)の工程を含むことを特徴とする、一般式(7)
【化5】


[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、*3、*4および*7はそれぞれ不斉中心であり、*3はS−またはR−配置であることを示し、*4および*7はR−およびS−配置、S−およびR−配置、R−およびR−配置またはS−およびS−配置であることを示す。]
で表されるテトラヒドロキシカルボニル化合物の製造方法。
(a)一般式(1)
【化6】


[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Pは水酸基の保護基を示し、*1は不斉中心であり、R−またはS−配置であることを示す。]
で表される光学活性アルデヒド化合物を、式(2)
【化7】


で表されるヒドロキシアセトンと、一般式(3)
【化8】


[式中、Xは窒素原子、硫黄原子または酸素原子を示し、Yはアルキル基、水酸基または保護されている水酸基を示し、m、nおよびkはそれぞれ独立して、m+n+k=2〜3の条件を満たす0〜2の整数を示し、jは0〜3の整数を示し、*2は不斉中心であり、R−またはS−配置であることを示す。]
で表される光学活性環状アミノ酸の存在下で反応させ、一般式(4)
【化9】


[式中、RおよびPは前記と同じ意味を示し、*3、*4および*5はそれぞれ不斉中心であり、前記*1がS−またはR−配置のとき、*3はそれぞれS−またはR−配置であることを示し、前記*2がS−またはR−配置のとき、*4および*5はそれぞれR−およびS−配置またはS−およびR−配置であることを示す。]
で表される光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物を得て、
(b)一般式(4)で表される光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物の少なくとも1つの水酸基もしくはカルボニル基、または少なくとも1つの水酸基とカルボニル基とを保護基で保護し、一般式(5)
【化10】


[式中、RおよびPは前記と同じ意味を示し、PおよびPはそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示すか、またはPおよびPが結合して環状アセタールを形成し、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にカルボニル基またはアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。但し、PおよびPが水素原子であるとき、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。*3、*4および*5はそれぞれ不斉中心であり、前記と同じ意味を示す。]
で表される化合物を得て、
(c)一般式(5)で表される化合物を酸化剤と反応させ、一般式(6)
【化11】


[式中、R、P、P、P、PおよびPは前記と同じ意味を示す。*3、*4および*6はそれぞれ不斉中心であり、前記*1がS−またはR−配置のとき、*3はそれぞれS−またはR−配置であることを示す。PおよびPがそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示す場合、前記*2がS−またはR−配置のとき、*4および*6はそれぞれR−およびS−配置またはS−およびR−配置であることを示す。PおよびPが結合して環状アセタールを形成する場合、前記*2がS−またはR−配置のとき、*4および*6はそれぞれR−およびR−配置またはS−およびS−配置であることを示す。]
で表される化合物を得て、
(d)一般式(6)で表される化合物の保護基を除去し、一般式(7)
【化12】


[式中、R、*3、*4および*7は前記と同じ意味を示す。]
で表されるテトラヒドロキシカルボニル化合物を得る。
【請求項3】
Rがメチル基である請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
がベンジル基またはtert−ブチルジメチルシリル基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
一般式(3)で表される光学活性環状アミノ酸がL−プロリンまたはD−プロリンである請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
一般式(1)−1
【化13】


[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Pは水酸基の保護基を示す。]
で表される光学活性アルデヒド化合物を、式(2)
【化14】


で表されるヒドロキシアセトンと、一般式(3)−1
【化15】


[式中、Xは窒素原子、硫黄原子または酸素原子を示し、Yはアルキル基、水酸基または保護されている水酸基を示し、m、nおよびkはそれぞれ独立してm+n+k=2〜3の条件を満たす0〜2の整数を示し、jは0〜3の整数を示す。]
で表される光学活性環状アミノ酸の存在下で反応させることを特徴とする、
一般式(4)−1
【化16】


[式中、RおよびPは前記と同じ意味を示す。]
で表される光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物の製造方法。
【請求項7】
以下の(a)〜(d)の工程を含むことを特徴とする、一般式(7)−1
【化17】


[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、*9は不斉中心であり、R−またはS−配置であることを示す。]
で表されるテトラヒドロキシカルボニル化合物の製造方法。
(a)一般式(1)−1
【化18】


[式中、Rは前記と同じ意味を示し、Pは水酸基の保護基を示す。]
で表される光学活性アルデヒド化合物を、式(2)
【化19】


で表されるヒドロキシアセトンと、一般式(3)−1
【化20】


[式中、Xは窒素原子、硫黄原子または酸素原子を示し、Yはアルキル基、水酸基または保護されている水酸基を示し、m、nおよびkはそれぞれ独立して、m+n+k=2〜3の条件を満たす0〜2の整数を示し、jは0〜3の整数を示す。]
で表される光学活性環状アミノ酸の存在下で反応させ、一般式(4)−1
【化21】


[式中、RおよびPは前記と同じ意味を示す。]
で表される光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物を得て、
(b)一般式(4)−1で表される光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物の少なくとも1つの水酸基もしくはカルボニル基、または少なくとも1つの水酸基とカルボニル基とを保護基で保護し、一般式(5)−1
【化22】


[式中、RおよびPは前記と同じ意味を示し、PおよびPはそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示すか、またはPおよびPが結合して環状アセタールを形成し、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にカルボニル基またはアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。但し、PおよびPが水素原子であるとき、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。]
で表される化合物を得て、
(c)一般式(5)−1で表される化合物を酸化剤と反応させ、一般式(6)−1
【化23】


[式中、R、P、P、P、PおよびPは前記と同じ意味を示す。*8は不斉中心であり、PおよびPがそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示す場合、R−配置であることを示し、PおよびPが結合して環状アセタールを形成する場合、S−配置であることを示す。]
で表される化合物を得て、
(d)一般式(6)−1で表される化合物の保護基を除去し、一般式(7)−1
【化24】


[式中、Rおよび*9は前記と同じ意味を示す。]
で表されるテトラヒドロキシカルボニル化合物を得る。
【請求項8】
Rがメチル基である請求項6または7記載の製造方法。
【請求項9】
がベンジル基またはtert−ブチルジメチルシリル基である請求項6〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
一般式(3)−1で表される光学活性環状アミノ酸がD−プロリンである請求項6〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
工程(b)において、一般式(4)−1で表される光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物の少なくとも1つの水酸基もしくはカルボニル基、または少なくとも1つの水酸基とカルボニル基とを保護基で保護し、一般式(5)−2
【化25】


[式中、RおよびPは前記と同じ意味を示し、P2aおよびP3aはそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示し、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にカルボニル基またはアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。但し、P2aおよびP3aが水素原子であるとき、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。]
で表される化合物を得て、
工程(c)において、一般式(5)−2で表される化合物を酸化剤と反応させ、一般式(6)−2
【化26】


[式中、R、P、P2a、P3a、PおよびPは前記と同じ意味を示す。]
で表される化合物を得て、
工程(d)において、一般式(6)−2で表される化合物の保護基を除去し、一般式(7)−2
【化27】


[式中、Rは前記と同じ意味を示す。]
で表されるテトラヒドロキシカルボニル化合物を得る、請求項7記載の方法。
【請求項12】
工程(b)において、一般式(4)−1で表される光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物の2つの水酸基、または2つの水酸基とカルボニル基とを保護基で保護し、一般式(5)−3
【化28】


[式中、RおよびPは前記と同じ意味を示し、P2bおよびP3bは結合して環状アセタールを形成し、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にカルボニル基またはアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。]
で表される化合物を得て、
工程(c)において、一般式(5)−3で表される化合物を酸化剤と反応させ、一般式(6)−3
【化29】


[式中、R、P、P2b、P3b、PおよびPは前記と同じ意味を示す。]
で表される化合物を得て、
工程(d)において、一般式(6)−3で表される化合物の保護基を除去し、一般式(7)−3
【化30】


[式中、Rは前記と同じ意味を示す。]
で表されるテトラヒドロキシカルボニル化合物を得る、請求項7記載の方法。
【請求項13】
請求項11記載の方法により一般式(7)−2
【化31】


[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示す。]
で表されるテトラヒドロキシカルボニル化合物を製造し、このテトラヒドロキシカルボニル化合物を一般式(8)
【化32】


[式中、Rは前記と同じ意味を示す。]で表されるL−フコース誘導体に変換することを特徴とする、一般式(8)で表されるL−フコース誘導体の製造方法。
【請求項14】
Rがメチル基である請求項13記載の製造方法。
【請求項15】
一般式(5)
【化33】


[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Pは水酸基の保護基を示し、PおよびPはそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示すか、またはPおよびPが結合して環状アセタールを形成し、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にカルボニル基またはアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。但し、PおよびPが水素原子であるとき、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。*3、*4および*5はそれぞれ不斉中心であり、*3はS−またはR−配置であることを示し、*4および*5はR−およびS−配置またはS−およびR−配置であることを示す。]
で表される化合物。
【請求項16】
Rがメチル基である請求項15記載の化合物。
【請求項17】
一般式(5)−1
【化34】


[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Pは水酸基の保護基を示し、PおよびPはそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示すか、またはPおよびPが結合して環状アセタールを形成し、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にカルボニル基またはアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。但し、PおよびPが水素原子であるとき、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。]
で表される化合物。
【請求項18】
一般式(4)
【化35】


[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Pは水酸基の保護基を示し、*3、*4および*5はそれぞれ不斉中心であり、*3はS−またはR−配置であることを示し、*4および*5はR−およびS−配置またはS−およびR−配置であることを示す。]
で表される光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物の少なくとも1つの水酸基もしくはカルボニル基、または少なくとも1つの水酸基とカルボニル基とを保護基で保護することを特徴とする、一般式(5)
【化36】


[式中、RおよびPは前記と同じ意味を示し、PおよびPはそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示すか、またはPおよびPが結合して環状アセタールを形成し、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にカルボニル基またはアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。但し、PおよびPが水素原子であるとき、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。*3、*4および*5はそれぞれ不斉中心であり、前記と同じ意味を示す。]
で表される化合物の製造方法。
【請求項19】
一般式(4)−1
【化37】


[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Pは水酸基の保護基を示す。]
で表される光学活性ジヒドロキシカルボニル化合物の少なくとも1つの水酸基もしくはカルボニル基、または少なくとも1つの水酸基とカルボニル基とを保護基で保護することを特徴とする、一般式(5)−1
【化38】


[式中、RおよびPは前記と同じ意味を示し、PおよびPはそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示すか、またはPおよびPが結合して環状アセタールを形成し、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にカルボニル基またはアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。但し、PおよびPが水素原子であるとき、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。]
で表される化合物の製造方法。
【請求項20】
一般式(6)
【化39】


[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Pは水酸基の保護基を示し、PおよびPはそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示すか、またはPおよびPが結合して環状アセタールを形成し、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にカルボニル基またはアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。但し、PおよびPが水素原子であるとき、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。*3、*4および*6はそれぞれ不斉中心であり、*3はS−またはR−配置であることを示す。PおよびPがそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示す場合、*4および*6はR−およびS−配置またはS−およびR−配置であることを示す。PおよびPが結合して環状アセタールを形成する場合、*4および*6はR−およびR−配置またはS−およびS−配置であることを示す。]
で表される化合物。
【請求項21】
Rがメチル基である請求項20記載の化合物。
【請求項22】
一般式(6)−1
【化40】


[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Pは水酸基の保護基を示し、PおよびPはそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示すか、またはPおよびPが結合して環状アセタールを形成し、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にカルボニル基またはアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。但し、PおよびPが水素原子であるとき、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。*8は不斉中心であり、PおよびPがそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示す場合、R−配置であることを示し、PおよびPが結合して環状アセタールを形成する場合、S−配置であることを示す。]
で表される化合物。
【請求項23】
一般式(5)
【化41】


[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Pは水酸基の保護基を示し、PおよびPはそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示すか、またはPおよびPが結合して環状アセタールを形成し、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にカルボニル基またはアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。但し、PおよびPが水素原子であるとき、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。*3、*4および*5はそれぞれ不斉中心であり、*3はS−またはR−配置であることを示し、*4および*5はそれぞれR−およびS−配置またはS−およびR−配置であることを示す。]
で表される化合物を酸化剤と反応させることを特徴とする、一般式(6)
【化42】


[式中、R、P、P、P、PおよびPは前記と同じ意味を示し、*3、*4および*6はそれぞれ不斉中心であり、*3はS−またはR−配置であることを示す。PおよびPがそれぞれ独立して水酸基の保護基を示す場合、*4および*6はR−およびS−配置またはS−およびR−配置であることを示す。PおよびPが結合して環状アセタールを形成する場合、*4および*6はR−およびR−配置またはS−およびS−配置であることを示す。]
で表される化合物の製造方法。
【請求項24】
一般式(5)−1
【化43】


[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Pは水酸基の保護基を示し、PおよびPはそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示すか、またはPおよびPが結合して環状アセタールを形成し、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にカルボニル基またはアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。但し、PおよびPが水素原子であるとき、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。]
で表される化合物を酸化剤と反応させることを特徴とする、一般式(6)−1
【化44】


[式中、R、P、P、P、PおよびPは前記と同じ意味を示す。*8は不斉中心であり、PおよびPがそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示す場合、R−配置であることを示し、PおよびPが結合して環状アセタールを形成する場合、S−配置であることを示す。]
で表される化合物の製造方法。
【請求項25】
一般式(6)
【化45】


[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Pは水酸基の保護基を示し、PおよびPはそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示すか、またはPおよびPが結合して環状アセタールを形成し、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にカルボニル基またはアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。但し、PおよびPが水素原子であるとき、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。*3、*4および*6はそれぞれ不斉中心であり、*3はS−またはR−配置であることを示す。PおよびPがそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示す場合、*4および*6はR−およびS−配置またはS−およびR−配置であることを示す。PおよびPが結合して環状アセタールを形成する場合、*4および*6はR−およびR−配置またはS−およびS−配置であることを示す。]
で表される化合物の保護基を除去し、一般式(7)
【化46】


[式中、Rは前記と同じ意味を示し、*3、*4および*7はそれぞれ不斉中心であり、*3はS−またはR−配置であることを示し、*4および*7はR−およびS−配置、S−およびR−配置、R−およびR−配置またはS−およびS−配置であることを示す。]
で表されるテトラヒドロキシカルボニル化合物の製造方法。
【請求項26】
一般式(6)−1
【化47】


[式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Pは水酸基の保護基を示し、PおよびPはそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示すか、またはPおよびPが結合して環状アセタールを形成し、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にカルボニル基またはアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。但し、PおよびPが水素原子であるとき、PおよびPはそれらが結合する炭素原子と共にアセタールで保護されたカルボニル基を形成する。*8は不斉中心であり、PおよびPがそれぞれ独立して水素原子または水酸基の保護基を示す場合、R−配置であることを示し、PおよびPが結合して環状アセタールを形成する場合、S−配置であることを示す。]
で表される化合物の保護基を除去し、一般式(7)−1
【化48】


[式中、Rは前記と同じ意味を示し、*9は不斉中心であり、R−またはS−配置であることを示す。]
で表されるテトラヒドロキシカルボニル化合物の製造方法。

【公開番号】特開2006−28083(P2006−28083A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208937(P2004−208937)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】