説明

64B/66B符号化試験装置

【課題】64B/66B符号化あるいは復号化の処理部に対する任意のパターンの試験を正確に且つ高い再現性で行えるようにする。
【解決手段】イーサネット(登録商標)の物理コーディングサブレイヤより上位のフレームデータをフレーム発生部21から発生させ、64B/66B符号化処理部22に入力して物理コーディングサブレイヤの64B/66Bの符号化処理を行う。一方、シーケンスパターン発生部23は予め書き込まれた任意の66Bシーケンスパターンを発生する。制御部50は、シーケンスパターン発生部23に所望のシーケンスパターンを書き込むとともに、データ選択部24を制御し、64B/66B符号化処理部22によって符号化されたデータとシーケンスパターン発生部23から出力されるシーケンスパターンとのいずれか一方を選択して被試験対象装置に与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、10ギガビット(Gigabit)のイーサネット(Ethernet:登録商標)のインタフェースを有する各種伝送機器または通信機器の、IEEE802.3で規定された10(ギガベイス)GBASE−R PCS(Physical Coding Sub layer:物理コーディングサブレイヤ)の64B/66B符号化あるいは復号化の処理部に対する任意のパターンの試験を正確に且つ高い再現性で行えるようにするための技術に関する。なお、64B/66BのBはビットを表す。
【背景技術】
【0002】
上記10GBASE−R PCSの64B/66B符号化シーケンスの基本的な流れは、下記非特許文献1に記載されているように、RX−INT(初期ステート)→RX−C(制御コード処理ステート)→RX−D(データ処理ステート)→RX−T(終了コードステート)となるが、ここで受信側のデコードシーケンスの試験のために、例えばRX−Cのステートに終了コードが入力された場合を試験しようとしても、通常の符号化処理ではRX−C→RX−E(エラーコード処理ステート)と移行してしまい、上位レイヤからのデータの符号化処理では試験することができない。
【0003】
上記のような異常な状態を発生させる場合、光出力のオン/オフまたは物理レイヤでのエラー挿入等、物理レイヤでのデータの損失を与えることで、試験を実施しているのが現状であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】IEEE802.3 Receive State Machine
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような方法による試験では、再現性が乏しく、また装置による初期化がなされてしまって意図する動作にならない場合があり、正しい試験を行えないという問題があった。
【0006】
本発明は、この問題を解決して、64B/66B符号化あるいは復号化の処理部に対する任意のパターンの試験を正確に且つ高い再現性で行える64B/66B符号化試験装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の64B/66B符号化試験装置は、
イーサネット(登録商標)の物理コーディングサブレイヤより上位のフレームデータを発生するフレーム発生部(21)と、
前記フレームデータに対して前記物理コーディングサブレイヤの64B/66Bの符号化処理を行う64B/66B符号化処理部(22)と、
予め書き込まれた任意の66Bシーケンスパターンを発生するシーケンスパターン発生部(23)と、
前記64B/66B符号化処理部によって符号化されたデータと、前記シーケンスパターン発生部から出力されるシーケンスパターンとのいずれか一方を選択して、被試験対象装置に与えるデータ選択部(24)と、
前記シーケンスパターン発生部に所望のシーケンスパターンを書き込むとともに、前記データ選択部を制御してシーケンスパターンを被試験対象装置に与える制御部(50)とを有する。
【0008】
また、本発明の請求項2の64B/66B符号化試験装置は、請求項1記載の64B/66B符号化試験装置において、
外部から入力される66Bデータのうち、所定条件を満たす66Bデータを格納するための66Bデータ格納部(30)を有し、
前記制御部は、前記66Bデータ格納部に格納した66Bデータに基づいて前記66Bシーケンシパターンを生成して前記シーケンスパターン発生部に書き込むことが可能になっていることを特徴する。
【0009】
また、本発明の請求項3の64B/66B符号化試験装置は、請求項2記載の64B/66B符号化試験装置において、
前記66Bデータ格納部は、外部から入力される66Bデータのうち、予め通過条件が設定されたフィルタ回路(32)を通過する66Bデータを格納することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4の64B/66B符号化試験装置は、請求項2または請求項3記載の64B/66B符号化試験装置において、
外部から入力される66Bデータの復号処理とエラー検出とを行う64B/66B復号化処理部(27)を有し、
前記66Bデータ格納部は、外部から入力される66Bデータのうち、前記64B/66B復号化処理部によるエラー検出の結果に応じて66Bデータを格納することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5の64B/66B符号化試験装置は、請求項2〜4のいずれかに記載の64B/66B符号化試験装置において、
前記66Bデータ格納部は、外部から入力される66Bデータが、予め設定された格納終了条件を満たすか否かをトリガ回路(33)によって判定し、その判定結果に応じて前記66Bデータの格納を停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明の64B/66B符号化試験装置は、任意の66Bシーケンスパターンを生成して被試験対象装置に与えることができるので、被試験対象装置の64B/66Bの符号化あるいは復号化の処理部に対して、光出力のオン/オフや物理レイヤでのエラー挿入等の方法を用いることなく、意図した通りの試験を、高い再現性をもって、正しく行える。
【0013】
また、外部から入力された66Bデータを格納し、これに基づいて送信に用いる66Bシーケンスパターンを生成することができるものでは、66Bシーケンスパターンの作成が容易となり、また格納時の条件を指定した場合には、所望条件の66Bデータからなるシーケンスパターンを簡単に生成することができ、試験を効率的に行える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の構成図
【図2】64B/66Bデータ構造を示す図
【図3】データ送信に関する処理を示すフローチャート
【図4】シーケンスパターンの作成・編集画面の一例を示す図
【図5】格納データの表示例を示す図
【図6】外部から入力される66Bデータの格納に関する処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した64B/66B符号化試験装置20の構成を示している。
【0016】
図1において、フレーム発生部21は、イーサネット(登録商標)の物理コーディングサブレイヤより上位のフレームデータを発生し、64B/66B符号化処理部22に与える。
【0017】
64B/66B符号化処理部22は、入力されたフレームデータに対して物理コーディングサブレイヤの64Bから66Bへの符号化処理を行う。
【0018】
なお、64B/66Bのブロック構造を図2に示す。66Bのブロックには、2ビットの(01)の同期ヘッダ(Sync)と8ビットの8つのデータコードDにより構成されたデータブロックフォーマットのブロックと、(10)の同期ヘッダをもつコントロールブロックフォーマットのブロックとに大別される。
【0019】
コントロールブロックフォーマットのブロックの先頭には、8ビットのブロックタイプフィールドがあり、その他の56ビットの領域には、コントロールコードC、オーダーセットO(リンクのステータス情報)、データコードD、スタートコードS(パケット先頭位置)、ターミネートコードT(パケット終了位置)が組み合わされて格納される。このコードの組合せは、ブロックタイプフィールドのデータにより指定されている。
【0020】
一方、シーケンスパターン発生部23は、予め書き込まれた任意の66Bシーケンスパターンを発生して、データ選択部24に与える。
【0021】
なお、このシーケンスパターン発生部23に対する66Bシーケンスパターンの書き込みは、後述する制御部50によって行われる。
【0022】
データ選択部24は、64B/66B符号化処理部22によって符号化されたデータと、シーケンスパターン発生部23から出力されるシーケンスパターンとのいずれか一方を選択的に出力して、被試験対象装置(例えば伝送機器や通信機器の64B/66B復号化処理部)に与える。
【0023】
上記各回路は、この64B/66B符号化試験装置20の送信部を構成するものであり、被試験対象装置へフレームデータを66Bデータに符号化して与えるモードと被試験対象装置へ66Bシーケンスパターンを与えるモードとを有しており、それに対する被試験対象装置の動作を確認することで試験を行える。
【0024】
また、この64B/66B符号化試験装置20は、外部の66Bデータ信号のモニタおよびフレーム解析を行うための受信機能を有している。
【0025】
即ち、64B/66B復号化処理部27は、外部から入力される66Bデータの復号化処理とエラー検出とを行う。
【0026】
この復号化処理で得られた64Bデータのイーサフレームのデータは、フレーム解析部28に与えられてそのフレーム解析処理がなされる。
【0027】
また、66Bデータ格納部30は、外部から入力される66Bデータのうち、所定条件を満たす66Bデータを格納する。
【0028】
そして、前記した制御部50は、この66Bデータ格納部30に格納された66Bデータに基づいて66Bシーケンスパターンを生成してシーケンスパターン発生部23に書き込むことが可能になっている。
【0029】
ここで、66Bデータ格納部30には、66Bデータを格納するためのデータ格納メモリ31、フィルタ回路32、トリガ回路33、格納制御回路34を有している。
【0030】
フィルタ回路32は、外部から入力される66Bデータのうち、任意に設定された通過条件を満たすデータをデータ格納メモリ31に入力させる。
【0031】
ここで通過条件の一つは、データの特定位置のパターンが、予め設定されたパターンと一致あるいは不一致の場合(パターンマッチあるいはミスマッチ)である。また別の通過条件としてはエラーの有無(どちらでもよい)であり、このエラーの有無の判別は、64B/66B復号化処理部27からのエラー検出信号を用いている。またパターンの一致/不一致の条件は、同期ヘッダ、ブロックタイプ、スタートコード、ターミネートコード等に対して任意に指定することができる。
【0032】
一方、トリガ回路33もフィルタ回路32と同様な構成となっており、上記各コードについてのパターンマッチあるいはミスマッチ、エラーの有無等、任意に設定された格納終了条件を満たすデータが入力されたときに、格納終了を指示する信号を格納制御回路34に与える。
【0033】
格納制御回路34は、後述する制御部50からデータの格納指示を受け、フィルタ回路32から出力されたデータをデータ格納メモリ31に順次記憶させ、トリガ回路33から格納終了を指示する信号を受けて、データ格納メモリ31へのデータ格納を停止させ、データ格納の停止を制御部50へ通知する。なお、ここではデータ格納メモリ31へのデータの格納処理を専用の格納制御回路34で行う例を示しているが、この処理は制御部50の処理で行うこともできる。
【0034】
制御部50は、コンピュータにより構成され、操作部51の操作にしたがい、必要な情報を表示部52に表示しながら、上記したシーケンスパターンの作成、書き込み処理、データ選択部24の切換処理、66Bデータ格納部30の各格納条件の指定処理、フレーム解析部28の解析結果の表示処理等を行うことができるように構成されている。
【0035】
図3は、試験対象装置にデータを送信する場合の制御部50の動作を示すフローチャートであり、以下、このフローチャートにしたがってこの装置のデータ送信までの処理を説明する。
【0036】
始めに、シーケンスパターンを格納するための内部メモリの領域を確保し(S1)、ユーザ設定か66Bデータ格納部30に格納されている66Bデータを用いるかを選択させる(S2、S3)。
【0037】
ここで、ユーザ設定が指定された場合には、例えば図4のようなパターンの作成編集が可能な画面を表示部52に表示し、操作部51の操作により66Bシーケンスパターンを入力させる(S4)。
【0038】
また、66Bデータ格納部30に格納されている66Bデータを用いることが指定されると、例えば図5のように66Bデータ格納部30のデータ格納メモリ31に格納されている66Bデータの一覧を表示し、そのなかの任意の66Bデータ(1つでも複数でもよい)を選択させる(S5)。この選択された66Bデータは、前記図4の作成編集画面に追加される。
【0039】
このような処理を行って、所望のシーケンスパターンを作成した後に、このシーケンスパターンを前記領域確保した内部メモリへ書き込む(S6)。
【0040】
次に、送出データをユーザに選択させ(S7)、シーケンスパターンが選択された場合には、データ選択部24をシーケンスパターン発生部23側に接続し、前記内部メモリに書き込んだシーケンスパターンをシーケンスパターン発生部23から発生させ(S8)、フレームデータが選択された場合にはデータ選択部24を64B/66B符号化処理部22側に接続し、その64B/66B符号化処理部22から出力された66Bデータを選択させ(S9)、そのデータ選択部24で選択されたデータを送出する(S10)。
【0041】
このように送信データのパターンを任意の66Bシーケンスパターンにすることができるので、通常のフレームデータを符号化して得られる66Bデータのパターンでは得られない特殊なパターンによる試験が可能となり、例えば、前記したように、RX−Cのステートに終了コードが入力された場合などのように、従来再現性よくできなかった異常な状態も、再現性よく確実に発生させることができる。
【0042】
一方、例えば66Bデータの通信を行っている回線から66Bデータを受けてモニタするような場合の66Bデータ格納部30によるデータ格納に関する処理は、例えば図6のフローチャートで示される。
【0043】
即ち、データ格納条件の設定処理が要求された場合(S11)、フィルタ条件の設定(S12a)トリガ条件の設定(S12b)のためのモードとなり、これらの条件設定が終了すれば、その条件にしたがって66Bデータ格納部30によるデータ格納処理がなされ(S13)、トリガ検出がなされると(S14)、データ格納が完了する(S15)。
【0044】
なお、このトリガ検出された際のデータ格納の終了形態は任意であり、例えばトリガ発生後にデータ格納メモリ31の領域全てにデータを書き込んでから格納を終了する形態、トリガ発生後にデータ格納メモリ31の領域の半分にデータを書き込んでから格納を終了する形態、トリガ発生後にデータ格納メモリ31に対する格納を直ちに終了する形態等のいずれであってもよい。
【0045】
このように、外部から入力された66Bデータのうち、所望条件のデータを格納し、これに基づいて送信に用いる66Bシーケンスパターンを生成することができるので、66Bシーケンスパターンの作成が容易となり、また格納時の条件を指定できるので、所望条件の66Bデータからなるシーケンスパターンを簡単に生成することができ、試験を効率的に行える。
【0046】
例えば、モニタ回線に接続された端末で異常が発生する場合にその端末に入力されたデータを選択的に格納しておき、そのデータを異常のあった端末(ネットワークから切り離しておく)に何度も連続的に与えることが可能となり、そのデータに対する端末の動作解析を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0047】
20……64B/66B符号化試験装置、21……フレーム発生部、22……64B/66B符号化処理部、23……シーケンスパターン発生部、24……データ選択部、27……64B/66B復号化処理部、28……フレーム解析部、30……66Bデータ格納部、31……データ格納メモリ、32……フィルタ回路、33……トリガ回路、34……格納制御回路、50……制御部、51……操作部、52……表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イーサネット(登録商標)の物理コーディングサブレイヤより上位のフレームデータを発生するフレーム発生部(21)と、
前記フレームデータに対して前記物理コーディングサブレイヤの64B/66Bの符号化処理を行う64B/66B符号化処理部(22)と、
予め書き込まれた任意の66Bシーケンスパターンを発生するシーケンスパターン発生部(23)と、
前記64B/66B符号化処理部によって符号化されたデータと、前記シーケンスパターン発生部から出力されるシーケンスパターンとのいずれか一方を選択して、被試験対象装置に与えるデータ選択部(24)と、
前記シーケンスパターン発生部に所望のシーケンスパターンを書き込むとともに、前記データ選択部を制御してシーケンスパターンを被試験対象装置に与える制御部(50)とを有する64B/66B符号化試験装置。
【請求項2】
外部から入力される66Bデータのうち、所定条件を満たす66Bデータを格納するための66Bデータ格納部(30)を有し、
前記制御部は、前記66Bデータ格納部に格納した66Bデータに基づいて前記66Bシーケンシパターンを生成して前記シーケンスパターン発生部に書き込むことが可能になっていることを特徴する請求項1記載の64B/66B符号化試験装置。
【請求項3】
前記66Bデータ格納部は、外部から入力される66Bデータのうち、予め通過条件が設定されたフィルタ回路(32)を通過する66Bデータを格納することを特徴とする請求項2記載の64B/66B符号化試験装置。
【請求項4】
外部から入力される66Bデータの復号処理とエラー検出とを行う64B/66B復号化処理部(27)を有し、
前記66Bデータ格納部は、外部から入力される66Bデータのうち、前記64B/66B復号化処理部によるエラー検出の結果に応じて66Bデータを格納することを特徴とする請求項2または請求項3記載の64B/66B符号化試験装置。
【請求項5】
前記66Bデータ格納部は、外部から入力される66Bデータが、予め設定された格納終了条件を満たすか否かをトリガ回路(33)によって判定し、その判定結果に応じて前記66Bデータの格納を停止させることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の64B/66B符号化試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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