説明

Aβ及びシヌクレイン凝集の阻害剤

或る特定のグアニルヒドラゾン化合物を用いて、アミロイド−ベータ(Aβ)の凝集、又は凝集したAβの蓄積を阻害する方法が提供される。グアニルヒドラゾン化合物を用いて、哺乳動物においてアミロイド関連疾患を治療又は予防する方法、アルツハイマー病の被験体を治療する方法、アルツハイマー病の危険性がある被験体を治療する方法、シヌクレインの凝集又は蓄積を阻害する方法、シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患の被験体を治療する方法、シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患の危険性がある被験体を治療する方法、及びコンフォメーション病に関与するタンパク質の凝集又は蓄積を阻害する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、タンパク質の凝集を伴う疾患の治療に関する。より具体的には、本発明は、或る特定の化合物を用いて、これらのタンパク質の凝集及びこのようなタンパク質凝集体の蓄積を阻害する方法に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2006年6月23日に提出された米国特許仮出願第60/816,132号明細書の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
過去20年にわたって、多くの研究によって、アルツハイマー病(AD)の進行における約4kDaのアミロイドβタンパク質(Aβ)の影響が研究されている。AD患者の脳において、Aβがアミロイドとして老人斑及び脳血管壁で、並びにより広範性の免疫反応性沈着で蓄積する。この蓄積は病理学的カスケードをもたらし、最終的に神経機能障害及び細胞死を引き起こすと考えられる(非特許文献1、非特許文献2)。様々なアミノ末端及びカルボキシル末端を有する複数のAβ種が、β−セクレターゼ及びγ−セクレターゼによる連続的なタンパク質分解切断によって、アミロイドβタンパク質前駆体(APP)から生成される(非特許文献3)。40アミノ酸型(Aβ40)が、最も豊富に生成されるAβペプチドであるのに対して、わずかに長く且つあまり豊富ではない42アミノ酸型(Aβ42)は、より病原性の高い種であるとされている(非特許文献4)。in vitro条件下で、Aβ42は、Aβ40及び他のより短いAβペプチドより極めて迅速に凝集体を形成し、これらの凝集体は培養物中の様々な細胞に毒性である。主要ではないAβ種であるにもかかわらず、AD脳において、Aβ42はAβ40より早期に且つ一貫して沈着する。
【0004】
Aβ沈着、神経原線維濃縮体(tangle)の蓄積、及び神経細胞の欠損に加えて、ADの末期病状において、Aβ沈着に関与することが多い炎症応答の多くの細胞マーカー及び分子マーカーの存在が顕著である(非特許文献5)。細胞炎症応答は、広範な星膠症(astrogliosis)及び小膠細胞症から成る。複数のサイトカイン、インターロイキン、他の急性期タンパク質及び補体成分を含む多くの炎症の分子マーカーがあるが、未だに増えている。Aβ凝集体には炎症応答刺激能があると考えられており、炎症がAβ生成の増大を促進し、またAβ沈着を高める可能性があることが証明されている(同上)。したがって、Aβ誘導性炎症応答は、さらなるAβ蓄積及び炎症増大を促進する可能性がある。代替的に、或る特定の状況下では、炎症応答が有益であり、実際にAβ除去を促進することもある(非特許文献6)。
【0005】
Aβに対する炎症応答が有害であるという概念を考慮して、抗炎症薬が、AD療法に有益な作用因子として提示されている(非特許文献7、非特許文献8)。この考えは、非アスピリンNSAIDの長期使用がADの進行からの保護に関与することを一貫して示す疫学データによって支持される(非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11)。実際に、この証拠は、ADにおける選択NSAIDの以前の臨床試験及び進行中の臨床試験に対する原理として使用されている。CNI−1493は、p38 MAPK、c−Rafのリン酸化を阻害し、単球及びマクロファージからの炎症誘発性サイトカインの放出を抑制する四価のグアニルヒドラゾンである(非特許文献12、非特許文献13、非特許文献14、非特許文献15、非特許文献16)。CNI−1493の全身投与は、実験的自己免疫性脳脊髄炎、脳虚血、クローン病及び関節炎の治療に効果的である(非特許文献17、非特許文献18、非特許文献13、非特許文献19)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Selkoe, 2001
【非特許文献2】Hardy及びHiggins, 1992
【非特許文献3】Golde他, 2000
【非特許文献4】Younkin, 1998
【非特許文献5】Akiyama他, 2000
【非特許文献6】Wyss-Coray他, 2002
【非特許文献7】Aisen, 1997
【非特許文献8】McGeer他, 1996
【非特許文献9】in t'Veld他, 2001
【非特許文献10】Stewart他, 1997
【非特許文献11】Zandi他, 2002
【非特許文献12】Cohen他, 1997
【非特許文献13】Lowenberg他, 2005
【非特許文献14】Bianchi他, 1996
【非特許文献15】Wang他, 1988
【非特許文献16】Tracy, 1998
【非特許文献17】Martiney他, 1998
【非特許文献18】Meistrell他, 1997
【非特許文献19】Akerlund他, 1999
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明者は、或る特定の化合物が様々なタンパク質(例えばアミロイド−ベータ(Aβ)及びシヌクレイン)の凝集、及びこのようなタンパク質凝集体の蓄積を阻害することを発見している。したがって、本発明は、アミロイド−ベータ(Aβ)の凝集又は凝集したAβの蓄積を阻害する方法に関する。この方法は、Aβの凝集又は凝集したAβの蓄積を阻害するのに十分な様式で、Aβを化合物Iと接触させることを含む。これらの方法で、化合物Iは、
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。
【0010】
本発明は、哺乳動物におけるアミロイド関連疾患を治療又は予防する方法にも関する。この方法は、疾患を治療又は予防するのに十分な様式で、化合物Iを哺乳動物に投与することを含み、化合物Iは、
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。
【0013】
さらに本発明は、アルツハイマー病の被験体を治療する方法に関する。この方法は、疾患を治療するのに十分な様式で、化合物Iを被験体に投与することを含み、化合物Iは、
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。
【0016】
さらに本発明は、アルツハイマー病の危険性がある被験体を治療する方法に関する。この方法は、化合物Iを被験体に投与することを含み、化合物Iは、
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。
【0019】
さらに本発明は、シヌクレインの凝集及び/又は凝集したシヌクレインの蓄積を阻害する方法に関する。この方法は、シヌクレインの凝集又は蓄積を阻害するのに十分な様式で、シヌクレインを化合物Iと接触させることを含み、化合物Iは、
【0020】
【化5】

【0021】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。
【0022】
本発明は、シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患の被験体を治療する方法にも関する。この方法は、化合物Iを被験体に投与することを含み、化合物Iは、
【0023】
【化6】

【0024】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。
【0025】
さらに本発明は、シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患の危険性がある被験体を治療する方法に関する。この方法は、化合物Iを被験体に投与することを含み、化合物Iは、
【0026】
【化7】

【0027】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。
【0028】
さらに本発明は、コンフォメーション病に関与するタンパク質の凝集及び/又はタンパク質の凝集体の蓄積を阻害する方法に関する。この方法は、タンパク質の凝集又は蓄積を阻害するのに十分な様式で、タンパク質を化合物Iと接触させることを含み、化合物Iは、
【0029】
【化8】

【0030】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。
【0031】
さらに本発明は、哺乳動物においてアミロイド関連疾患を治療又は予防するための薬物の製造に対する化合物Iの使用に関する。ここで、化合物Iは、
【0032】
【化9】

【0033】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。
【0034】
さらに本発明は、アルツハイマー病の被験体を治療するための薬物の製造に対する化合物Iの使用に関する。これらの使用に関して、化合物Iは、
【0035】
【化10】

【0036】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。
【0037】
さらに本発明は、シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患の被験体を治療するための薬物の製造に対する化合物Iの使用に関する。ここで、化合物Iは、
【0038】
【化11】

【0039】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。
【0040】
さらに本発明は、哺乳動物においてアミロイド関連疾患を治療又は予防するための化合物Iの使用に関する。ここで、化合物Iは、
【0041】
【化12】

【0042】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。
【0043】
また本発明は、アルツハイマー病の被験体を治療するための化合物Iの使用に関する。ここで、化合物Iは、
【0044】
【化13】

【0045】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。
【0046】
さらに本発明は、シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患の被験体を治療するための化合物Iの使用に関する。これらの使用に関して、化合物Iは、
【0047】
【化14】

【0048】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。
【0049】
さらに本発明は、コンフォメーション病の被験体を治療するための薬物の製造に対する化合物Iの使用に関する。ここで、化合物Iは、
【0050】
【化15】

【0051】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】トランスジェニックAPP発現TgCRND8マウスにおいて、CNI−1493がAβ病変プラークを低減させることを示す実験結果の顕微鏡写真図である。TgCRND8マウスをCNI−1493又はビヒクルで処理した後、処理の2ヵ月後に屠殺した。マウス抗ヒトAβモノクローナル抗体6F/3Dを用いて、ビヒクル処理マウス又はCNI−1493処理マウスの矢状断面をAβに関して免疫組織化学的に染色した。
【図2】ビヒクル及びCNI−1493で処理したトランスジェニックAPP発現TgCRND8マウスにおけるAβプラーク評価を示す実験結果のグラフ図であり、これがCNI−1493処理後のプラーク沈着の強い低減を示す。皮質及び海馬のデジタル画像を撮影し、画像解析ソフトウェア「SIS解析Auto Software3.2」で解析した。プラークの数を対象の領域(mm2)で割ることによって、プラーク数を算出した。CNI−1493は、プラーク数を皮質で57%(p<0.01)、及び海馬で60%(p<0.01)低減させた。プラーク面積は、コンピュータを用いて、対象の領域1mm2当たりのプラークの面積(μm2)で表した。CNI−1493は、プラーク面積を皮質で70%(p<0.01)、及び海馬で86%(p<0.01)低減させた。それぞれの棒は4体の動物で表される。
【図3】トランスジェニックAPP発現TgCRND8マウスにおける可溶性Aβに対するCNI−1493の影響を示すウェスタンブロット図である。パネルA:プレキャストNuPAGE Novex 4%〜12%Bis−Trisゲルによって、1つのレーン当たりタンパク質20μgを分離し、XCell II(商標)ブロットシステムを用いて、ニトロセルロース膜上に転写した。膜結合した可溶性Aβの検出のために、6E10モノクローナル抗体を用いた。4体のCNI−1493処理動物の内の2体の脳で、可溶性Aβアイソフォームの大量欠損を測定した。GAPDHに対するモノクローナル抗体で膜を再びプローブすることによって、等しいタンパク質充填を評価した(パネルB)。
【図4】CNI−1493が、CNI−1493処理トランスジェニックAPP発現TgCRND8マウスにおいて小膠細胞を不活性化することを示すウェスタンブロット図である。プレキャストNuPAGE Novex 4%〜12%Bis−Trisゲルによって、1つのレーン当たりタンパク質60μgを分離し、XCell II(商標)ブロットシステムを用いて、ニトロセルロース膜上に転写した。F4/80抗原に対する抗体で、マクロファージ活性化に関して染色することによって、膠細胞の活性化を評価した。ウェスタンブロット分析によって、全てのCNI−1493動物においてF4/80の減少が示された。GAPDHに対するモノクローナル抗体で膜を再びプローブすることによって、等しいタンパク質充填を評価した。
【図5】野生型APP695を発現するN2a細胞におけるAPPプロセシングに対するCNI−1493の影響を示すウェスタンブロット図である。指示濃度のCNI−1493で24時間、細胞を処理した。培地を変え、さらに4時間、薬物処理を続けて、Aβを分泌させた。6E10抗体を用いるウェスタンブロットによって、総分泌Aβ(総sAβ)を分析した(パネルa)。それぞれ6E10抗体及びR1抗体を用いて、APPのC末端断片C99(パネルb)及びC83(パネルc)を分析した。抗体LN27で全長APP(パネルd)を試験した。
【図6】抗オリゴマー抗体による認識を妨げるCNI−1492によって示されるように、CNI−1493が、Aβ42、Aβ40及びシヌクレインの凝集を妨げることを示す実験結果のグラフ図である。
【図7】AβのCNI−1493への曝露がAβオリゴマーアセンブリを破壊することを示す、実験結果のグラフ図及び電子顕微鏡写真図である。パネルAは、漸増CNI−1493濃度の溶液中で、(ELISAにおいて光学密度[OD]の低減として示される)抗Aβオリゴマー抗体を用いる、ELISAにおけるAβオリゴマーの認識の低減を示すグラフ図である。パネルBは、CNI−1493への曝露によるAβ42オリゴマーのフィブリル化(fibrilization)の阻害を示す電子顕微鏡写真図である。パネルCは、漸増濃度のCNI−1493の添加に対するAβ曝露神経芽腫細胞の細胞生存率の増大を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
したがって、本発明者は、或る特定の化合物が、in vitro及びin vivoの両方で様々なタンパク質(例えばアミロイドベータ(Aβ)及びシヌクレイン)の凝集を阻害することを発見した。実施例を参照されたい。これらの実施例では、化合物CNI−1493、即ちN,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩を用いて、この凝集の阻害が示された。さらに、CNI−1493を含む広範な種類のグアニルヒドラゾン化合物は、CNI−1493と同様の特性を有していることが知られている。米国特許第5,599,984号明細書、同第5,750,573号明細書、同第5,753,684号明細書、同第5,849,794号明細書、同第5,854,289号明細書、同第5,859,062号明細書、同第6,008,255号明細書、同第6,022,900号明細書、同第6,180,676(B1)号明細書及び同第6,248,787(B1)号明細書を参照されたい。
【0054】
したがって本発明は、アミロイドベータ(Aβ)の凝集又は凝集したAβの蓄積を阻害する方法に関する。この方法は、Aβの凝集又は凝集したAβの蓄積を阻害するのに十分な様式で、Aβを化合物Iと接触させることを含む。これらの方法において、化合物Iは、
【0055】
【化16】

【0056】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。好ましくは、これらの方法で用いられる化合物Iは、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である。
【0057】
生きた哺乳動物の外部にあるAβ、又は好ましくは生きた哺乳動物部分にあるAβに、これらの方法を用いることができる。この方法は、Aβ40及びAβ42を含む任意の型のAβに有用である。この方法を生きた哺乳動物に用いる場合、哺乳動物は、アルツハイマー病の危険性があるか、又はアルツハイマー病であることが好ましい。最も好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0058】
本明細書で用いられるように、「アルツハイマー病」は、Aβペプチドから成る神経原線維プラークを特徴とするよく知られたヒト疾患、並びにこの疾患の任意の既知の動物モデルである(例えば実施例1を参照されたい)。
【0059】
生きた哺乳動物に用いる場合、これらの方法における化合物は、医薬的に許容可能な賦形剤中で配合することが好ましい。「医薬的に許容可能」とは、(i)組成物をその本来の目的に対して不適にすることなく、組成物の他の成分に適合する、且つ(ii)過度の有害な副作用(例えば毒性、炎症及びアレルギー反応)もなく、本明細書で与えられるように被験体に用いるのに好適である材料を意味する。副作用が「過度」であるとは、危険性が組成物によって与えられる利点を上回る場合である。医薬的に許容可能な担体の非限定的な例としては、リン酸緩衝生理食塩溶液、水、油/水エマルション等のエマルション、マイクロエマルション等の任意の標準的な医薬担体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
ヒトを含む哺乳動物への投与、必要に応じて特定用途のために、余計な実験をせずに上記の化合物を配合することができる。さらに、標準的な用量反応プロトコルを用いて余計な実験をせずに、組成物の正確な投与量を求めることができる。
【0061】
したがって、余計な実験をせずに、当該技術分野で既知の手段、例えば不活性希釈剤又は食用担体によって、経口投与、舌投与、舌下投与、口腔投与及び口腔内投与のために設計された組成物を作製することができる。組成物は、ゼラチンカプセルに封入されるか、又は錠剤に圧縮されてもよい。経口治療投与のために、本発明の医薬組成物を賦形剤と組合せて、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハース、チューイングガム等の形態で用いてもよい。
【0062】
錠剤、ピル、カプセル、トローチ等は、結合剤、レシピエント(recipients:受容体)、崩壊剤、滑剤、甘味剤及び香料添加剤も含有し得る。結合剤の幾つかの例としては、微結晶性セルロース、トラガカントゴム又はゼラチンが挙げられる。賦形剤の例としては、デンプン又はラクトースが挙げられる。崩壊剤の幾つかの例としては、アルギン酸、コーンスターチ等が挙げられる。滑剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カリウムが挙げられる。流動促進剤(glidant:滑剤)の例としては、コロイド状二酸化ケイ素が挙げられる。甘味剤の幾つかの例としては、スクロース、サッカリン等が挙げられる。香料添加剤の例としては、ペパーミント、サルチル酸メチル、オレンジ風味料等が挙げられる。これらの様々な組成物を調製するのに用いられる材料は、医薬的に純粋であり、使用される量で非毒性である必要がある。
【0063】
非経口で(例えば静脈内注射、筋肉内注射、髄腔内注射、又は皮下注射によって)、化合物を容易に投与することができる。溶液又は懸濁液に化合物を組み込むことによって、非経口投与を行うことができる。このような溶液又は懸濁液としては、注射用水等の殺菌希釈剤、生理食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒も挙げられ得る。非経口製剤としては、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン等の抗菌剤、例えばアスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤、及びEDTA等のキレート剤も挙げられ得る。酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩等の緩衝液、及び塩化ナトリウム又はデキストロース等の等張化剤を添加してもよい。非経口調剤は、アンプル、使い捨てシリンジ、又はガラス若しくはプラスチック製の複数回投与バイアル中に入れることができる。
【0064】
直腸投与は、医薬組成物中の化合物を直腸又は大腸に投与することを含む。これは、坐薬又は浣腸剤を用いて行うことができる。当該技術分野で既知の方法によって、坐薬製剤を容易に製造することができる。例えば、約120℃までグリセリンを加熱し、グリセリン中に組成物を溶解し、加熱したグリセリンを混合し(その後、精製水を添加してもよい)、加熱した混合物を坐薬鋳型に流し込むことによって、坐薬製剤を調製することができる。
【0065】
経皮投与は、皮膚を介した組成物の経皮吸収を含む。経皮製剤としては、パッチ(例えば既知のニコチンパッチ)、軟膏(ointmemts)、クリーム、ジェル、軟膏(salves)等が挙げられる。
【0066】
本発明は、治療的に有効な量の化合物を哺乳動物に経鼻投与することを含む。本明細書で用いられるように、経鼻投与すること又は経鼻投与は、化合物を患者の鼻道又は鼻腔の粘膜に投与することを含む。本明細書で用いられるように、化合物の経鼻投与用の医薬組成物には、例えば鼻噴霧液、鼻液滴、懸濁液、ジェル、軟膏、クリーム又は粉末として投与される、既知の方法で調製された治療的に有効な量の化合物が含まれる。鼻タンポン又は鼻スポンジを用いて、化合物の投与を行ってもよい。
【0067】
血液脳関門を通す必要があるような化合物を末梢投与する場合、化合物の哺乳動物の血液脳関門を透過する能力を高める医薬組成物中に化合物を配合することが好ましい。このような製剤は当該技術分野で既知であり、吸収を促進する親油性化合物が挙げられる。非親油性化合物の取り込みは、親油性物質と組合せることによって高めることができる。鼻粘膜を通る化合物の送達を高めることができる親油性物質としては、脂肪酸(例えば、パルミチン酸)、ガングリオシド(例えば、GM−1)、リン脂質(例えば、ホスファチジルセリン)、及び乳化剤(例えば、ポリソルベート80)、デオキシコール酸ナトリウム等の胆汁塩、並びに例えばトゥイーン(商標)等のポリソルベート80、トリトン(商標)X−100等のオクトキシノール、及びタウロ−24,25−ジヒドロフシジン酸ナトリウム(STDHF)を含む界面活性剤様物質が挙げられるが、これらに限定されない。Lee他, Biopharm., April 1988 issue:3037を参照されたい。
【0068】
本発明の特定の実施形態では、化合物を親油性物質から成るミセルと組合せる。このようなミセルは、鼻粘膜の浸透性を変更し、化合物の吸収を高めることができる。好適な親油性ミセルとしては、ガングリオシド(例えば,GM−1ガングリオシド)、及びリン脂質(例えば、ホスファチジルセリン)が挙げられるが、これらに限定されない。胆汁塩及びその誘導体並びに界面活性剤様物質は、ミセル製剤中にも含まれることができる。化合物を1つ又は複数の種類のミセルと組合せることができ、さらにミセル内に含入するか、又はミセル表面と結び付けることができる。
【0069】
代替的に、化合物をリポソーム(脂質小胞)と組合せて、吸収を高めることができる。化合物をリポソーム内に含入若しくは溶解するか、及び/又はリポソーム表面に結び付けることができる。好適なリポソームとしては、リン脂質(例えば、ホスファチジルセリン)及び/又はガングリオシド(例えば、GM−1)が挙げられる。リン脂質小胞を作製する方法に関しては、例えばRoberts他への米国特許第4,921,706号明細書、及びYiournas他への米国特許第4,895,452号明細書を参照されたい。胆汁塩及びその誘導体並びに界面活性剤様物質は、リポソーム製剤中にも含まれることができる。
【0070】
本発明は、哺乳動物においてアミロイド関連疾患を治療又は予防する方法にも関する。この方法は、疾患を治療又は予防するのに十分な様式で、化合物Iを哺乳動物に投与することを含み、化合物Iは、
【0071】
【化17】

【0072】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。好ましくは、化合物Iは、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である。
【0073】
これらの方法において、哺乳動物は、アルツハイマー病の危険性があるか、又はアルツハイマー病であることが好ましい。最も好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0074】
さらに本発明は、アルツハイマー病の被験体を治療する方法に関する。この方法は、疾患を治療するのに十分な様式で、化合物Iを被験体に投与することを含み、化合物Iは、
【0075】
【化18】

【0076】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。上記の方法と同様に、化合物Iは、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩であることが好ましい。
【0077】
さらに本発明は、アルツハイマー病の危険性がある被験体を治療する方法に関する。この方法は、化合物Iを被験体に投与することを含み、化合物Iは、
【0078】
【化19】

【0079】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。上記の方法と同様に、化合物Iは、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩であることが好ましい。
【0080】
さらに本発明は、シヌクレインの凝集及び/又は凝集したシヌクレインの蓄積を阻害する方法に関する。この方法は、シヌクレインの凝集又は蓄積を阻害するのに十分な様式で、シヌクレインを化合物Iと接触させることを含み、化合物Iは、
【0081】
【化20】

【0082】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。これらの方法における化合物Iは、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩であることが好ましい。
【0083】
これらの方法を生きた哺乳動物の外部にあるシヌクレインに、又は好ましくは生きた哺乳動物部分にあるシヌクレインに用いることができる。この方法を生きた哺乳動物に用いる場合、哺乳動物は、シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患であるか、又はその危険性があることが好ましい。このような疾患の例は、パーキンソン病及び或る特定の神経変性疾患である。したがって、より好ましくは、哺乳動物は、パーキンソン病若しくは神経変性疾患であるか、又はその危険性がある。最も好ましくは、哺乳動物は、パーキンソン病であるか、又はその危険性がある。
【0084】
本発明は、シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患の被験体を治療する方法にも関する。この方法は、化合物Iを被験体に投与することを含み、化合物Iは、
【0085】
【化21】

【0086】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。好ましくは、化合物Iは、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である。より好ましくは、シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患は、パーキンソン病又は神経変性疾患、最も好ましくはパーキンソン病である。
【0087】
さらに本発明は、シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患の危険性がある被験体を治療する方法に関する。この方法は、化合物Iを被験体に投与することを含み、化合物Iは、
【0088】
【化22】

【0089】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。
【0090】
上記の方法におけるグアニルヒドラゾン化合物がAβ及びシヌクレインの凝集を阻害するので、この化合物は概して、コンフォメーション病に関与するタンパク質の凝集又は蓄積を阻害すると考えられる。本明細書で用いられるように、「コンフォメーション病」は、少なくとも1つのミスフォールドしたタンパク質又はペプチドを伴う疾患である。コンフォメーション病に関与するタンパク質の例としては、セルピン、プリオン、グルタミン反復タンパク質、タウタンパク質、ヘモグロビン、シヌクレイン、免疫グロブリンの軽鎖、血清アミロイドAタンパク質、β2ミクログロブリン、シスタチンC、ハンチンチン、アポリポタンパク質A1、リゾチーム、トランスサイレチン、Aβ、β−アミロイドペプチド、プロカルシトニン、アミリン及び膵島アミロイドポリペプチドが挙げられる。コンフォメーション病の例としては、パーキンソン病、アルツハイマー病、プリオン病、及び2型真性糖尿病が挙げられる。
【0091】
したがって、本発明は、コンフォメーション病に関与するタンパク質の凝集又は蓄積を阻害する方法にさらに関する。この方法は、タンパク質の凝集又は蓄積を阻害するのに十分な様式で、タンパク質を化合物Iと接触させることを含み、化合物Iは、
【0092】
【化23】

【0093】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。好ましくは、化合物Iは、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である。
【0094】
これらの方法におけるタンパク質は、セルピン、プリオン、グルタミン反復タンパク質、タウヘモグロビン、シヌクレイン、免疫グロブリンの軽鎖、血清アミロイドAタンパク質、β2ミクログロブリン、シスタチンC、ハンチンチン、アポリポタンパク質A1、リゾチーム、トランスサイレチン、Aβ、β−アミロイドペプチド、プロカルシトニン、アミリン又は膵島アミロイドポリペプチドであることが好ましい。
【0095】
これらの方法を生きた哺乳動物の外部タンパク質に、又は好ましくは生きた哺乳動物部分にあるタンパク質に用いることができる。この方法を生きた哺乳動物に用いる場合、哺乳動物は、このタンパク質によって少なくとも部分的に媒介される疾患であるか、又はその危険性があることが好ましい。最も好ましくは、哺乳動物は、パーキンソン病、アルツハイマー病、プリオン病若しくは2型真性糖尿病であるか、又はその危険性がある。
【0096】
さらに本発明は、哺乳動物においてアミロイド関連疾患の治療又は予防のための薬物の製造に対する化合物Iの使用に関する。ここで、化合物Iは、
【0097】
【化24】

【0098】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。
【0099】
これらの使用に関して、化合物Iは、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩であることが好ましい。哺乳動物がアルツハイマー病の危険性があるか、又はアルツハイマー病であることも好ましい。
【0100】
これらの使用は、哺乳動物のいずれかに適用することができる。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0101】
さらに本発明は、アルツハイマー病の被験体を治療するための薬物の製造に対する化合物Iの使用に関する。これらの使用に関して、化合物Iは、
【0102】
【化25】

【0103】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。好ましくは、化合物Iは、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である。哺乳動物がヒトであることも好ましい。
【0104】
さらに本発明は、シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患の被験体を治療するための薬物の製造に対する化合物Iの使用に関する。ここで、化合物Iは、
【0105】
【化26】

【0106】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。好ましくは、ここで化合物Iは、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である。疾患がパーキンソン病又は神経変性疾患であることも好ましい。さらに疾患が、シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介され、パーキンソン病であることが好ましい。
【0107】
さらに本発明は、哺乳動物におけるアミロイド関連疾患の治療又は予防のための化合物Iの使用に関する。ここで、化合物Iは、
【0108】
【化27】

【0109】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。好ましくは、化合物Iは、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である。
【0110】
また本発明は、アルツハイマー病の被験体を治療するための化合物Iの使用に関する。ここで、化合物Iは、
【0111】
【化28】

【0112】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。好ましくは、化合物Iは、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である。
【0113】
さらに本発明は、シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患の被験体を治療するための化合物Iの使用に関する。これらの使用に関して、化合物Iは、
【0114】
【化29】

【0115】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。好ましくは、化合物Iは、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である。
【0116】
さらに本発明は、コンフォメーション病の被験体を治療するための薬物の製造に対する化合物Iの使用に関する。ここで、化合物Iは、
【0117】
【化30】

【0118】
(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である。好ましくは、化合物Iは、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である。コンフォメーション病がタンパク質の凝集を伴うことも好ましく、このタンパク質は、セルピン、プリオン、グルタミン反復タンパク質、タウヘモグロビン、シヌクレイン、免疫グロブリンの軽鎖、血清アミロイドAタンパク質、β2ミクログロブリン、シスタチンC、ハンチンチン、アポリポタンパク質A1、リゾチーム、トランスサイレチン、Aβ、β−アミロイドペプチド、プロカルシトニン、アミリン又は膵島アミロイドポリペプチドであることが好ましい。
【0119】
本発明の好ましい実施形態は、以下の実施例で説明される。本明細書における特許請求の範囲内の他の実施形態は、本明細書で開示される本発明の詳述又は実践を考慮して、当業者には明らかである。実施例と共に与えられる詳述は、単に例示目的であると考えられ、本発明の範囲及び精神は、添付の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【実施例】
【0120】
(実施例1)
CNI−1493は、アルツハイマー病の動物モデルにおいてAβ生成を阻害し、プラークの形成を防ぐ
実施例の要約
アルツハイマー病(AD)は、脳における広範なアミロイド沈着によって引き起こされる小膠媒介性炎症応答を特徴とする。非ステロイド系抗炎症剤処理によって、ADの危険性が低減し、疾患の進行が遅くなり、小膠の活性化が低減するが、これらの効果の分子基盤は知られていない。本発明者らは、わずか8週の治療期間で効力のあるマクロファージ不活性化剤CNI−1493による、ヒトのアミロイド前駆体タンパク質(APP)を過剰発現する4ヶ月齢のTgCRND8マウスの処理によって、Aβ沈着が劇的に低減したと報告している。CNI−1493処理によって、これらの動物の皮質においてアミロイドプラーク面積が70%低減し、海馬では87%低減した。さらに、CNI−1493処理によって、F4/80発現によって測定されるように、TgCRND8マウスにおいて小膠の活性化が有意に低減した。
【0121】
本発明者らのAPP過剰発現細胞株におけるAPPプロセシングに対するCNI−1493処理のin vitro分析によって、総Aβ蓄積の強い用量依存的な低減が示唆される。この効果は、APPの生成、及びβ−セクレターゼ又はγ−セクレターゼの活性変化の両方と完全に無関係であると考えられる。
【0122】
この研究によって、ADの治療及び予防に非常に効力がある候補物質として抗炎症剤CNI−1493が特定される。
【0123】
導入
この研究の目的は、CNI−1493が、APP発現TgCRND8トランスジェニックマウスの脳においてアミロイド病変の発達及び炎症応答を抑制するように作用するか否かを調べることであった。本明細書に記載される研究は、わずか2ヶ月のCNI−1493処理によって、これらのマウスにおいてプラーク量(plaque burden)が大幅に低減し、小膠の活性化が低減したことを確立している。
【0124】
材料及び方法
動物。全ての動物手順が、地方長官室(office of the district president)及びマンスター大学の動物管理使用委員会(institutional animal care and use committee)によって承認されていた。本発明者らは、TgCRND8マウス株(カナダのオンタリオ州トロントにあるトロント大学のDavid Westawayによる無償提供)を用いた。TgCRND8マウスは、PrP遺伝子プロモータ(Chishti他, 2001)の制御下で二重変異型のアミロイド前駆体タンパク質695(KM670/671NL+V717F)をコードする。チオフラビンS陽性Aβアミロイド沈着物は3ヶ月目で存在し、5ヶ月齢で有芯プラーク及び神経炎病変が明らかになる。TgCRND8マウスは、6ヶ月齢で脳1g当たり3200pmol〜4600pmolのAβ42を示し、Aβ42はAβ40よりも過剰である。
【0125】
TgCRND8マウスの薬物処理。4ヶ月齢のAPPトランスジェニックTgCRND8マウスに、8週間、CNI−1493 200μg(8mg/kg)を含有する200μlの腹腔内注射を1週間に2回行った。それぞれの処理群には、4体の動物が存在した。動物は、個々のケージに1体ずつ収容した。実験期間の終わりに、動物を断頭によって屠殺した。脳を解剖し、正中線に沿って半球に分断した。一方の半球を24時間、4%緩衝ホルムアルデヒドで固定した後、脱水してパラフィン包埋を行った。もう一方の半球を液体窒素中で即座に急速凍結し、−80℃に維持した。
【0126】
免疫組織化学。それぞれのトランスジェニック動物の3対の矢状脳切片2μmをAβ免疫反応性に関して染色した。正中矢状索裂から横に100μm、200μm及び300μmで、これらの対(10μm間隔)を定めた。全ての切片をギ酸で前処理し、残基8〜17に対する6F/3D抗Aβモノクローナル抗体(Dako、1:100)によって、TechMate機器(Dako Cytomation、ドイツのハンブルグ)で自動染色した。さらなる工程では、DakoのStreptABC複合体−ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合「Duet」抗マウス/ウサギ抗体キットを用い、色原体として3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)を用いて発色させた。ヘマトキシリンを用いて、対比染色を行った。2回の連続した手順で全ての切片を染色し、両方の実験群の脳が両方の出順に等しく分配されたことを確認した。
【0127】
画像解析。Aβプラーク量を定量するために、一定の光及びフィルタ設定で、3.3メガピクセルのCCDカメラColorView IIによって、全ての染色切片の皮質及び海馬をデジタル画像化した。カラー画像をグレースケールに変換し、陽性の免疫反応性とバックグラウンドとの間で最良のコントラストを得た。全ての画像で免疫反応性染色を検出するように、コントラスト閾値を選択した。
【0128】
画像解析ソフトウェア「SIS解析Auto Software3.2」(Soft Imaging System GmbH、http://www.soft-imaging.org/)によって、形態学的測定を行った。プラークの総数及び表面が、解析された総面積と関連していた。
【0129】
生化学分析。脳の半分を秤量して、製造業者のガイドラインに従って、適量のT−PER(Perbio、ドイツのボン)でホモジナイズした。BCAキット(Perbio)によって、溶解タンパク質濃度を測定した。1つのサンプル当たり15μg〜60μgのタンパク質をプレキャストNuPAGE Novex 4%〜12%Bis−Trisゲル上に充填し、Novex電気泳動システム(Invitrogen、ドイツのカールスルーエ(Karsruhe))を用いて分離した。続いて、XCell II(商標)ブロット(Invitrogen)を用いて、タンパク質をニトロセルロース膜(Invitrogen)上に転写した。MemCode可逆タンパク質染色キット(Perbio)を用いて、固定タンパク質を可視化した。Roti−Block(Roth、ドイツのカールスルーエ)で4℃で一晩、膜を遮断した。膜結合Aβの検出のために、回転振盪機において周囲温度で1時間、一次検出抗体として、1000倍希釈の6E10モノクローナル抗体(Dunn Labortechnikによって株式分配されたBiodesign(ドイツのアスバッハ))を用いた。0.05%トゥイーン20を含有するPBSで4回、膜を洗浄し、1時間、250000倍希釈のホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次ヤギ抗マウスIgG(Perbio)でインキュベートした。ブロットを10分間4回洗浄し、5分間、SuperSignal West Dura Extended Duration Substrate希釈標準溶液(Perbio)でインキュベートして、オートラジオグラフィフィルム(KodakによるT−Mat Plus DGフィルム)に露光した。代替的に、膜をラット抗マウスF4/80抗体(Serotec、ドイツのデュッセルドルフ)とハイブリダイズした。GAPDH(Acris、ドイツのヒッデンハウセン(Hiddenhausen))に対するモノクローナル抗体によって再びプローブすることによって、全ての膜の等しいタンパク質充填を評価した。
【0130】
N2a細胞におけるAPPプロセシング分析。APP695トランスフェクトN2a細胞(Marambaud他, 2005)を5%FBS、ペニシリン及びストレプトマイシン並びに0.2mg/mlのG418を補充した1:1のDMEM/Opti−MEMで増殖させた。指示濃度のCNI−1493で24時間、細胞を密集して処理した。それから、培地を変え、さらに2時間、処理を続けて、Aβを分泌させた。調整培地20μlを16.5%トリス−トリシンゲル上で電気泳動して、0.2μmのニトロセルロース膜上に転写した。それから、PBS中で5分間、膜をマイクロ波にかけて、TBS中の5%無脂肪乳で遮断して、4℃で一晩、6E10(Signet、PierceのSuperBlock中で1000倍希釈)とインキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、1%SDSを含有する氷冷HEPES緩衝液(25mMのHEPES(pH7.4)、150mMのNaCl、1×完全プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche))で溶解した。6E10、R1(抗APPのC末端ドメイン、参考文献番号21)、及びLN27(抗APP1-200、Zymed)によるウェスタンブロットによって、抽出物10μgを分析した。
【0131】
結果及び考察
CNI−1493は、APP発現TgCRND8トランスジェニックマウスにおいてAβプラークの形成を防ぐ。マウスが、このモデルにおいて典型的にプラークの沈着が始まるおよそ4ヶ月齢になったときに処理を開始した。ビヒクル処理マウスは、CNI−1493処理動物よりも有意に多くのプラークを発現した(図1及び図2)。アミロイド沈着の評価は、CNI−1493処理によって、プラーク数(対象の面積(mm2)で割ったプラークの数)が、対照の動物に比べて皮質で57%、及び海馬で60%低減したことを示した。本発明者らが、プラーク領域(対象の面積(mm2)で割ったプラークの面積(μm2))を算出すると、CNI−1493によるこの効果はさらに一層顕著であった。ここでは、本発明者らは、対照の動物に比べて、皮質で70%、及び海馬で86%の低減を得た。本発明者らは、CNI−1493によるAβプラークの低減の程度が、NSAIDイブプロフェンで近年報告されているものよりも高かっただけでなく、4ヶ月又は6ヶ月のイブプロフェン処理に比べて、わずか2ヶ月の処理で達したことを強調したい(Lim他, 2000、Yan他, 2003)。
【0132】
APP発現TgCRND8トランスジェニックマウスにおける可溶性Aβ含量に対するCNI−1493の効果。2ヶ月の比較的短い治療期間でのプラーク沈着に対するCNI−1493の潜在的な効果を示した後に、続いて本発明者らは、見込み可溶性AβのCNI−1493依存性調節に関して、脳細胞質画分を分析した。本発明者らは、ウェスタンブロットによる4体のCNI−1493処理動物の内の2体で、可溶性Aβアイソフォームのほとんど完全な低減を得たのに対し、残りの2対の動物は、ビヒクル処理動物に比べて、可溶性Aβ含量の明らかな変化は見られなかった(図3)。注目すべき点は、CNI−1493を受けた4体全ての動物が、Aβプラークレベルの有意な低減を示したことである。その一方で、本発明者らが可溶性Aβアイソフォームのほぼ完全な欠損を検出した動物は、プラーク減少率が最も高い動物でもあった。抗炎症剤(例えばCNI−1493)がヒトにおけるADの危険性、及び疾患の動物モデルにおけるアミロイド病変に効果がある機構は、複雑且つ多様であると考えられる。2体のCNI−1493処理動物における可溶性Aβアイソフォームのレベルが変わらなかったことは、CNI−1493依存性のプラーク沈着障害の動的プロセスを示唆し、この障害は可溶性Aβレベルに少なくとも部分的に依存すると考えられる。
【0133】
CNI−1493は、APP発現TgCRND8トランスジェニックマウスにおいて小膠細胞を不活性化する。NSAIDの主な細胞標的は、アミロイド沈着の結果として表現型的に活性化する小膠であることが論じられている。CNI−1493は、p38 MAPK、c−Rafのリン酸化を阻害し、単球及びマクロファージからの炎症誘発性サイトカインの放出を抑制する四価のグアニルヒドラゾンである(Cohen他, 1997、Lowenberg他, 2005、Bianchi他, 1996、Wang他, 1988、Tracy, 1998)。CNI−1493の全身投与は、実験的自己免疫性脳脊髄炎、クローン病、脳虚血及び関節炎の治療に有効である(Martiney他, 1998、Meistrell他, 1997、Lowenberg他, 2005、Akerlund他, 1999)。
【0134】
本発明者らは、小膠細胞の活性化の後に上昇する、マクロファージ表面マーカーF4/80の発現を分析することによって小膠の活性化を評価した(Ezekowitz他, 1981)。本発明者らは、対照の動物に比べて、全てのCNI−1493処理動物の脳細胞質内でF4/80シグナルの低減を得た(図4)。
【0135】
N2a細胞における総AβのCNI−1493依存的な低減は、セクレターゼ(secretease)活性とは無関係である。APPのプロセシングを選択的に調節NSAIDが近年数多く報告されており、この効果が、ADにおけるそれらの有益な効果の基礎となり得ることが主張されている(Weggen他, 2001)。APP過剰発現細胞のNSAID処理は、Aβ42の生成の選択的低減、及び平行したAβ38の増大をもたらすことが報告されたが、Aβ40に対する影響はなかった(同上)。
【0136】
この最初の研究において、本発明者らは、CNI−1493がヒトAPPを過剰発現するN2a細胞において生成される総Aβを変化させるか否かを調べた。CNI−1493処理によって、培地に分泌される総Aβレベルが用量依存的に劇的に低減した(図5a)。この結果は、APPプロセシングに対するCNI−1493の効果が、Aβ42の低減に制限されず、Aβ40の低減も含まれることをはっきりと示している。観察された総Aβの低減は、APP生成レベルの低減と同時には起こらなかった(図5d)。さらに、CNI−1493は、APPのβ−セクレターゼ又はγ−セクレターゼの切断に対して全く効果がなく(図5b、図5c)、このことが、イブプロフェンによるAβ低減の作用形態に対して近年示唆されている(Yan他, 2003)。
【0137】
本研究によって生じる主な考察は、マウスのAβプラーク沈着モデルにおいて効力があるマクロファージ不活性化剤CNI−1493の有効性である。本発明者らは、APP発現トランスジェニックTgCRND8マウスにおけるCNI−1493処理の主な効果が、処理のわずか2ヶ月後でのプラーク沈着の非常に有意な低減であるという有力な証拠を提示している。予想される通り、CNI−1493処理は、小膠の不活性化と同時に起こる。本発明者らのAPP過剰発現細胞株におけるAPPプロセシングに対するCNI−1493処理のin vitro分析によって、分泌された総Aβの強い用量依存的な低減が示される。この効果は、APPの生成、及びβ−セクレターゼ又はγ−セクレターゼの活性変化の両方と完全に無関係であると考えられる。
【0138】
(実施例2)
CNI−1492とシヌクレインとの相互作用
ELISAアッセイにおける抗オリゴマー抗体(アーヴィンにあるカルフォルニア大学のC. Glabe博士の寄贈)によるシヌクレインの認識を測定することによって、シヌクレインの凝集を防ぐCNI−1493の能力を調べた。CNI−1492又はペンタミジン(陽性対照)のいずれかを、Aβ42、Aβ40又はシヌクレインのいずれかと組合せることによって、抗体による認識が低減し(図6)、このことは、CNI−1492がこれらのタンパク質の凝集を防ぐことを示している。
【0139】
(実施例3)
in vitro及び細胞におけるCNI−1493とAβ42との相互作用
Aβ42を様々な濃度のCNI−1493と組合せて、Aβオリゴマー特異的抗体を用いてELISAによって、Aβオリゴマーを定量した。漸増濃度のCNI−1493によって、ELISAにおける最終ODが低減し(図7A)、このことは、CNI−1493への曝露が、Aβオリゴマーアセンブリ又は抗Aβオリゴマー抗体によるオリゴマーの認識を破壊することを示す。電子顕微鏡観察によって、Aβオリゴマーは、CNI−1493処理では(左側のパネル、図7B)、CNI−1493の非存在下で(右側のパネル)形成される線維凝集体を形成しないことが確認された。
【0140】
CNI−1493処理形態のAβが毒性であるか否かを求めるために、CNI−1493で前処理した、又は前処理しなかったAβをSY5Y神経芽細胞腫細胞と組合せた。MTT(チアゾリルブルー)の還元(ミトコンドリアコハク酸デヒドロゲナーゼ活性)及び乳酸デヒドロゲナーゼ活性(LDH)を用いて、毒性をモニタリングした。MTTアッセイとLDHアッセイとは、互いに相関性があった。図7Cで示されるように、可溶性Aβオリゴマーは毒性であり、CNI−1493の添加によって、用量依存的にこの毒性が低減された。さらに、初代神経細胞を用いた同様のアッセイで、CNI−1493の保護効果を調べた。SY5Y細胞と同様に、CNI−1493はAβ毒性から神経細胞を保護した。
【0141】
(参考文献)
【表1】

【0142】
【表2】

【0143】
【表3】

【0144】
米国特許第5,599,984号明細書
米国特許第5,750,573号明細書
米国特許第5,753,684号明細書
米国特許第5,849,794号明細書
米国特許第5,854,289号明細書
米国特許第5,859,062号明細書
米国特許第6,008,255号明細書
米国特許第6,022,900号明細書
米国特許第6,180,676(B1)号明細書
米国特許第6,248,787(B1)号明細書
【0145】
上記を考慮すると、本発明の幾つかの利点が達成され、他の利点も実現されると考えられる。
【0146】
本発明の範囲を逸脱することなく、上記の方法及び組成物において様々な変更を行うことができるので、上記の記載に含まれ、添付の図面で示される全ての内容が限定の意味ではなく、例示的なものとして解釈されるべきであることが意図される。
【0147】
本明細書で言及される全ての参考文献は、参照により本明細書中に援用される。本明細書中での参考文献の考察は、著者によって為される主張を単に要約するように意図されるものであり、任意の参照が従来技術を構成することを認めるものではない。出願人は、言及される参考文献の正確性及び適切性を疑う権利を留保する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミロイド−ベータ(Aβ)の凝集又は凝集したAβの蓄積を阻害する方法であって、Aβの凝集又は凝集したAβの蓄積を阻害するのに十分な様式で、該Aβを化合物Iと接触させることを含み、該化合物Iが、
【化1】

(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である、アミロイド−ベータ(Aβ)の凝集又は凝集したAβの蓄積を阻害する方法。
【請求項2】
前記化合物Iが、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Aβが生きた哺乳動物の外部にある、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記Aβが生きた哺乳動物部分にある、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記哺乳動物がアルツハイマー病の危険性がある、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記哺乳動物がアルツハイマー病である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記哺乳動物がヒトである、請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
哺乳動物においてアミロイド関連疾患を治療又は予防する方法であって、該疾患を治療又は予防するのに十分な様式で、化合物Iを該哺乳動物に投与することを含み、該化合物Iが、
【化2】

(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である、哺乳動物においてアミロイド関連疾患を治療又は予防する方法。
【請求項9】
前記化合物Iが、N,N'−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記哺乳動物がアルツハイマー病の危険性がある、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記哺乳動物がアルツハイマー病である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項12】
前記哺乳動物がヒトである、請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
アルツハイマー病の被験体を治療する方法であって、該疾患を治療するのに十分な様式で、化合物Iを該被験体に投与することを含み、該化合物Iが、
【化3】

(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である、アルツハイマー病の被験体を治療する方法。
【請求項14】
前記化合物Iが、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
アルツハイマー病の危険性がある被験体を治療する方法であって、化合物Iを該被験体に投与することを含み、該化合物Iが、
【化4】

(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である、アルツハイマー病の危険性がある被験体を治療する方法。
【請求項16】
前記化合物Iが、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
シヌクレインの凝集、及び/又は凝集したシヌクレインの蓄積を阻害する方法であって、該シヌクレインの凝集又は蓄積を阻害するのに十分な様式で、該シヌクレインを化合物Iと接触させることを含み、該化合物Iが、
【化5】

(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である、シヌクレインの凝集、及び/又は凝集したシヌクレインの蓄積を阻害する方法。
【請求項18】
前記化合物Iが、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記シヌクレインが生きた哺乳動物の外部にある、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記シヌクレインが生きた哺乳動物内にある、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項21】
前記哺乳動物が、シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患であるか、又はその危険性がある、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記哺乳動物が、パーキンソン病若しくは神経変性疾患であるか、又はその危険性がある、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記哺乳動物が、パーキンソン病であるか、又はその危険性がある、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記哺乳動物がパーキンソン病である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記哺乳動物がパーキンソン病の危険性がある、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患である被験体を治療する方法であって、化合物Iを該被験体に投与することを含み、該化合物Iが、
【化6】

(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である、シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患である被験体を治療する方法。
【請求項27】
前記化合物Iが、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される前記疾患がパーキンソン病又は神経変性疾患である、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される前記疾患がパーキンソン病である、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項30】
シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患の危険性がある被験体を治療する方法であって、化合物Iを該被験体に投与することを含み、該化合物Iが、
【化7】

(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である、シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患の危険性がある被験体を治療する方法。
【請求項31】
前記化合物Iが、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される前記疾患がパーキンソン病又は神経変性疾患である、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される前記疾患がパーキンソン病である、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項34】
コンフォメーション病に関与するタンパク質の凝集、及び/又はタンパク質の凝集体の蓄積を阻害する方法であって、該タンパク質の凝集又は蓄積を阻害するのに十分な様式で、該タンパク質を化合物Iと接触させることを含み、該化合物Iが、
【化8】

(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である、コンフォメーション病に関与するタンパク質の凝集、及び/又はタンパク質の凝集体の蓄積を阻害する方法。
【請求項35】
前記化合物Iが、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記タンパク質が、セルピン、プリオン、グルタミン反復タンパク質、タウヘモグロビン、シヌクレイン、免疫グロブリンの軽鎖、血清アミロイドAタンパク質、β2ミクログロブリン、シスタチンC、ハンチンチン、アポリポタンパク質A1、リゾチーム、トランスサイレチン、Aβ、β−アミロイドペプチド、プロカルシトニン、アミリン又は膵島アミロイドポリペプチドである、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
前記タンパク質が生きた哺乳動物の外部にある、請求項34〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記タンパク質が生きた哺乳動物内にある、請求項34〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記哺乳動物が、前記タンパク質によって少なくとも部分的に媒介される疾患であるか、又はその危険性がある、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記哺乳動物が、パーキンソン病、アルツハイマー病、プリオン病若しくは2型真性糖尿病であるか、又はその危険性がある、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
哺乳動物において、アミロイド関連疾患を治療又は予防するための薬物の製造に対する化合物Iの使用であって、該化合物Iが、
【化9】

(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である、哺乳動物において、アミロイド関連疾患を治療又は予防するための薬物の製造に対する化合物Iの使用。
【請求項42】
前記化合物Iが、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記哺乳動物がアルツハイマー病の危険性がある、請求項41又は42に記載の使用。
【請求項44】
前記哺乳動物がアルツハイマー病である、請求項41又は42に記載の使用。
【請求項45】
前記哺乳動物がヒトである、請求項41〜44のいずれか一項に記載の使用。
【請求項46】
アルツハイマー病の被験体を治療するための薬物の製造に対する化合物Iの使用であって、該化合物Iが、
【化10】

(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である、アルツハイマー病の被験体を治療するための薬物の製造に対する化合物Iの使用。
【請求項47】
前記化合物Iが、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
前記哺乳動物がヒトである、請求項46又は47に記載の使用。
【請求項49】
シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患の被験体を治療するための薬物の製造に対する化合物Iの使用であって、該化合物Iが、
【化11】

(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である、シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患の被験体を治療するための薬物の製造に対する化合物Iの使用。
【請求項50】
前記化合物Iが、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
前記疾患がパーキンソン病又は神経変性疾患である、請求項49又は50に記載の使用。
【請求項52】
シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される前記疾患がパーキンソン病である、請求項49又は50に記載の使用。
【請求項53】
哺乳動物においてアミロイド関連疾患を治療又は予防するための化合物Iの使用であって、該化合物Iが、
【化12】

(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である、哺乳動物においてアミロイド関連疾患を治療又は予防するための化合物Iの使用。
【請求項54】
前記化合物Iが、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である、請求項53に記載の使用。
【請求項55】
アルツハイマー病の被験体を治療するための化合物Iの使用であって、該化合物Iが、
【化13】

(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である、アルツハイマー病の被験体を治療するための化合物Iの使用。
【請求項56】
前記化合物Iが、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である、請求項55に記載の使用。
【請求項57】
シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患の被験体を治療するための化合物Iの使用であって、該化合物Iが、
【化14】

(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である、シヌクレインによって少なくとも部分的に媒介される疾患の被験体を治療するための化合物Iの使用。
【請求項58】
前記化合物Iが、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である、請求項57に記載の使用。
【請求項59】
コンフォメーション病の被験体を治療するための薬物の製造に対する化合物Iの使用であって、該化合物Iが、
【化15】

(式中、X1、X2、X3及びX4が独立して、GhyCH−、GhyCCH3−、redGhyCH−若しくはredGhyCCH3−、又はHであり、GhyCHがNH2(CNH)−NH−N=CH−であり、GhyCCH3がNH2(CNH)−NH−N=C(CH3)−であり、redGhyCHがNH2(CNH)−NH−NH−CH2−であり、redGhyCCH3がNH2(CNH)−NH−NH−CH(CH3)−であり、但しX1、X2、X3及びX4の少なくとも1つはHではない)である、コンフォメーション病の被験体を治療するための薬物の製造に対する化合物Iの使用。
【請求項60】
前記化合物Iが、N,N’−ビス(3,5−ジアセチルフェニル)デカンジアミドテトラキス(アミジノヒドラゾン)四塩酸塩である、請求項59に記載の使用。
【請求項61】
前記コンフォメーション病がタンパク質の凝集を伴い、該タンパク質が、セルピン、プリオン、グルタミン反復タンパク質、タウヘモグロビン、シヌクレイン、免疫グロブリンの軽鎖、血清アミロイドAタンパク質、β2ミクログロブリン、シスタチンC、ハンチンチン、アポリポタンパク質A1、リゾチーム、トランスサイレチン、Aβ、β−アミロイドペプチド、プロカルシトニン、アミリン又は膵島アミロイドポリペプチドである、請求項59に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−541483(P2009−541483A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518170(P2009−518170)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/014527
【国際公開番号】WO2008/002465
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(501324834)ザ・フェインスタイン・インスティチュート・フォー・メディカル・リサーチ (14)
【氏名又は名称原語表記】The Feinstein Institute for Medical Research
【住所又は居所原語表記】350 Community Drive, Manhasset, NY 11030, U.S.A.
【Fターム(参考)】