説明

ACアダプタ、電子装置ユニット

【課題】より互換性を向上させたACアダプタ、並びにこれを利用した電子装置ユニットを提供すること。
【解決手段】入力端子に入力された交流を直流に変換する変換手段と、外部の電子装置に前記直流を供給するための出力端子と、当該ACアダプタが前記電子装置に接続されてから所定時間経過するまでの間、前記出力端子における電圧を通常供給電圧から所定電圧分低下させる電圧調整手段と、を備えるACアダプタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流を直流に変換して電子装置に供給するACアダプタ、及び当該ACアダプタと電子装置を含む電子装置ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭用のコンセントを介して供給される商用電源等の交流電源が広く普及する一方、コンピュータ等の電子装置は直流で作動することが多い。このため、交流を直流に変換して電子装置(以下、本体機器と称する)に供給するACアダプタが用いられている。
【0003】
ところで、ACアダプタは、そのサイズ等に応じて定格電流やタイプ等が異なっており、これによって供給可能電力も異なるものとなっている。しかしながら、従来はACアダプタの定格電流やタイプを本体機器側で判定することができないため、本体機器とACアダプタの対応関係が固定的であった。このため、モデル間、メーカー間の互換性が無く、それらの間でACアダプタの流用を行うことができなかった。
【0004】
また、ACアダプタから本体機器への電力供給の状態としては、電力消費が小さい状態から順に、(1)本体機器の内部バッテリの充電のための電力供給のみ行う状態、(2)本体機器の実稼働のための電力供給のみ行う状態等をとり得る。更に、電力消費が大きい状態として、(3)本体機器の実稼働及び内部バッテリの充電のための電力供給を行う状態をとり得る。しかしながら、ACアダプタの供給可能電力が全ての状態を賄えるものであるとは限らない。
【0005】
こうした課題に関連したものとして、以下のものが知られている。
【0006】
例えば、外部電源装置の電力供給能力情報を、本体機器が検出可能としたシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このシステムでは、通常の電力供給用端子とは別の端子を設け、本体機器側から供給した電圧が外部電源側に設けられた抵抗で低下した程度を本体機器で検出することによって、外部電源の電力供給能力を検出している。
【0007】
また、供給可能な電流値に対応した発振周波数の信号電圧を発生させる発振手段を備え、この信号電圧を、本来の直流電圧に重畳させて出力するACアダプタが知られている(例えば、特許文献2参照)。当該文献に記載された本体機器では、信号電圧を分離すると共に、この信号電圧を測定して本体機器の動作状態を変更している。
【0008】
また、ACアダプタや外部バッテリ等の複数種類の電源が接続されていることを想定し、電源電圧に基づいてどの種類の電源が接続されたかを判別する本体機器が知られている(例えば、特許文献3参照)。この本体機器では、判別した電源の種類に応じて、上記(1)〜(3)のような態様で消費電力を調整している。
【0009】
また、ACアダプタの接続時に、本体機器において電源出力ライン上のインピーダンスを一定時間変動させて、自機器の電源入力仕様をACアダプタ側に知らせるようにしたシステムが知られている(例えば、特許文献4参照)。当該文献に記載されたACアダプタでは、通知された電源入力仕様に基づき動作用電源を生成して出力している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−341592号公報
【特許文献2】特開平7−143749号公報
【特許文献3】特開平5−184065号公報
【特許文献4】特開2000−134816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムでは、ACアダプタの出力端子数が増加するため、コストやサイズが増大するという不都合が生じる。
【0012】
また、特許文献2に記載のACアダプタでは、信号電圧を発生させる発振手段が必要となり、コストやサイズが増大するという不都合が生じる。
【0013】
また、特許文献3に記載の本体機器では、出力電圧の同じ電源を判別することができない。このため、異なる種類のACアダプタを判別することができない場合が生じる。
【0014】
また、特許文献4に記載のシステムでは、本体機器の要求する仕様に基づきACアダプタが動作用電源を生成する必要があるため、結局のところ、ACアダプタが本体機器の仕様に従属することとなる。このため、そのような仕組みを有さないACアダプタは本体機器に接続することができず、様々な仕様のACアダプタを本体機器が許容することができる仕組みではない。
【0015】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、より互換性を向上させたACアダプタ、並びにこれを利用した電子装置ユニットを提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための一態様は、
入力端子に入力された交流を直流に変換する変換手段と、
外部の電子装置に前記直流を供給するための出力端子と、
当該ACアダプタが前記電子装置に接続されてから所定時間経過するまでの間、前記出力端子における電圧を通常供給電圧から所定電圧分低下させる電圧調整手段と、
を備えるACアダプタである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、より互換性を向上させたACアダプタ、並びにこれを利用した電子装置ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施例に係るACアダプタ1(又は第2実施例に係るACアダプタ2)が電子装置101に接続される様子を示す外観図である。
【図2】第1実施例に係るACアダプタ1の回路構成例である。
【図3】ACアダプタ1がACコンセントに接続されてから電子装置101に装着され、電子装置101に電力供給を開始するまでの、ACアダプタ1の各構成要素の状態変化を示す図である。
【図4】電子装置101の回路構成例である。
【図5】常備電源回路140の回路構成例である。
【図6】充電回路150の回路構成例である。
【図7】電源回路160の回路構成例である。
【図8】本実施例の電子装置101がACアダプタ1の仕様を判別する仕組みを説明するための説明図である。
【図9】所定電圧VhとACアダプタ1の供給可能電流の関係を示す図である。
【図10】本実施例に係るEC/KBC120により実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】ACアダプタ1の接続時に表示されるポップアップ画面の例である。
【図12】本実施例による効果を説明するための説明図である。
【図13】第2実施例に係るACアダプタ2が電子装置102に接続された状態を示す部分構成例である。
【図14】本実施例に係るACアダプタ2が電子装置102に接続されたタイミングからの、電圧調整回路50の抵抗値の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0020】
<第1実施例>
以下、図面を参照し、本発明の第1実施例に係るACアダプタ1、及びこれを利用する電子装置101について説明する。
【0021】
図1は、第1実施例に係るACアダプタ1(又は後述する第2実施例に係るACアダプタ2)が電子装置101に接続される様子を示す外観図である。図示するように、ACアダプタ1、2は、家庭用のACコンセント等に一方のコンタクト10が接続され、電子装置101の入力端子110に他方のコンタクト20が接続されて機能する。電子装置101は、例えばノートパソコンであり、ACアダプタ1又は2を利用する本体機器として機能する。電子装置101の他の例としては、デスクトップパソコン、ゲーム機、テレビ等のAV機器、携帯電話等が考えられる。
【0022】
[ACアダプタ]
図2は、第1実施例に係るACアダプタ1の回路構成例である。図示するように、ACアダプタ1は、例えば、入力端子であるコンタクト10と、出力端子であるコンタクト20と、トランス30と、整流・平滑回路35と、電圧調整回路40と、を備える。
【0023】
トランス30は、コンタクト10に入力された交流を、例えばAC19/(√2)[V]に電圧低下させる。コンタクト10に入力される交流は、例えば商用電源であるAC100[V]の電力である。
【0024】
整流・平滑回路35は、ダイオード36、コンデンサ37等を含み、トランス30が出力する交流を、直流に変換して電圧調整回路40側に出力する。なお、図2に示す整流・平滑回路35の構成はあくまで一例であり、ブリッジ回路等を備える他の構成であってもよい。
【0025】
電圧調整回路40は、抵抗41A、41B、41C、41D、41Eと、PチャネルFET(Field Effect Transistor)42と、トランジスタ43A、43B、43Cと、コンデンサ44と、を備える。電圧調整回路40は、ACアダプタ1が電子装置101に接続されてから所定時間T1の間、コネクタ20における電圧を、通常供給電圧Vn(例えば、19[V])から所定電圧Vh分低下させる。
【0026】
抵抗41Aは、上記所定電圧Vhを決定する出力インピーダンス要素である。この所定電圧Vhは、ACアダプタ1の仕様(例えば供給可能電流であり、出力電圧、型格、ベンダ名、その他の情報を含んでもよい)を電子装置101側に通知するための情報値となっている。詳しくは、後述する。
【0027】
PチャネルFET42は、ACアダプタ1が電子装置101に接続されてから所定時間T1が経過するとオフ状態からオン状態に変化する。これによって、PチャネルFET42を介してコネクタ20に電流が流れ、コネクタ20における電圧が通常供給電圧Vnまで上昇する。
【0028】
電圧調整回路40のその他の構成は、上記説明したように抵抗41A及びPチャネルFET42を動作させるためのものである。以下、ACアダプタ1の各構成要素の具体的な状態変化について説明する。図3は、ACアダプタ1がACコンセントに接続されてから電子装置101に装着され、電子装置101に電力供給を開始するまでの、ACアダプタ1の各構成要素の状態変化を示す図である。
【0029】
図示するように、ACアダプタ1がACコンセントに接続されると(時刻t1)、コネクタ20における電圧が通常供給電圧Vnまで上昇する。その後、コネクタ20が電子装置101に接続されると(時刻t2)、ACアダプタ1から電子装置101に電流が流れ、これによる電圧低下を受けてトランジスタ43Aがオフ状態からオン状態に変化する。トランジスタ43Aがオン状態になると、抵抗41A、41Bの抵抗値で決定される電流がコンデンサ44に流れ、コンデンサ44が充電される。
【0030】
そして、時刻t2から所定時間T1経過し、コンデンサ44の充電電圧が一定電圧Vbe以上になると(時刻t3)、トランジスタ43Cがオフ状態からオン状態に変化し、PチャネルFET42のゲート電圧を0[V]に低下させる。この結果、PチャネルFET42が、オフ状態からオン状態に変化し、コネクタ20における電圧が通常供給電圧Vnまで上昇する。
【0031】
なお、トランジスタ43Cがオン状態となると、トランジスタ43Bがオン状態となり、トランジスタ43Cのベース電流を供給する。これによって、トランジスタ43Cがオン状態に維持される。
【0032】
このように、コネクタ20が電子装置101に接続されると、コンデンサ44が充電され、一定時間経過して充電電圧が一定電圧Vbeに達すると、トランジスタ43Cがオン状態に維持される。この結果、コネクタ20における電圧が通常供給電圧Vnまで上昇し、電子装置101への電力供給が開始される。
【0033】
係る構成によって、抵抗41Aの抵抗値を適切に選択することにより、所望の電圧低下Vhを実現することができる。そして、ACアダプタ1の仕様に応じた所定電圧Vhを設定することによって、ACアダプタ1の仕様を電子装置101に通知することができる。また、係る通知のために端子数を増加させる必要がないため、コストやサイズの増大を抑制することができる。
【0034】
[電子装置(本体機器)]
{構成}
図4は、電子装置101の回路構成例である。図示するように、電子装置101は、入力端子110と、プルダウン抵抗112と、EC(Enabled Controller)/KBC(Keyboard Controller)120と、バッテリ130と、常備電源回路140と、充電回路150と、電源回路160と、を備える。また、これらの構成要素間には、スイッチ170、172、174、176が取り付けられている。
【0035】
EC/KBC120は、CPU(Central Processing Unit)やA/D変換器120Aを内蔵し、キーボード(KB)やマウス他のポインティングデバイスの制御を行う。また、EC/KBC120は、その処理能力を利用した様々な処理を行っており、独立した電源回路である常備電源回路140からの電力供給によって作動する。
【0036】
図5は、常備電源回路140の回路構成例である。常備電源回路140は、常に電源を供給する小規模な電流を出力する電源回路であり、例えば、バッテリ130からの電圧を入力Vinとし、3.3[V]の電圧を出力するドロッパ型の回路である。常備電源回路140は、ツェナーダイオード141によってベース電圧が4[V]に維持されるトランジスタ142、コンデンサ143、減圧抵抗144等を備える。
【0037】
図6は、充電回路150の回路構成例である。充電回路150は、例えばCC(Constant Current)/CV(Constant Voltage)方式の回路であり、定電流充電回路151、定電圧充電回路152、充電電圧検出回路153、終止電流検出回路154を有する。
【0038】
定電流充電回路151は、例えば、ツェナーダイオード151A、トランジスタ151B、151C、及び抵抗151D、151E、151F、151Gを備える。ツェナーダイオード151Aのカソード側、トランジスタ151B、及び抵抗151Dは、入力電圧Vinに対して並列に接続されている。トランジスタ151Bのベースは抵抗151Gを介して充電電圧検出回路153の出力端に接続され、エミッタは入力電圧Vinに接続され、コレクタは抵抗151Eを介してツェナーダイオード151Aのアノード側に接続される。また、トランジスタ151Cのベースはトランジスタ151Bのコレクタに接続され、エミッタは抵抗151Dを介して入力電圧Vinに接続され、コレクタは充電電圧の出力端に接続される。
【0039】
定電圧充電回路152は、例えば、ツェナーダイオード152A、トランジスタ152B、及び抵抗152C、152D、152Eを備える。ツェナーダイオード152Aのカソード側は、抵抗152Cを介して入力電圧Vinに接続される他、抵抗152Dを介してトランジスタ152Bのベースに接続される。トランジスタ152Bのコレクタは入力電圧Vinに接続され、エミッタは終止電流検出回路154のオペアンプ154Bのマイナス端子に接続される他、抵抗152Eを介して充電電圧の出力端に接続される。
【0040】
充電電圧検出回路153は、ダイオード153A、オペアンプ153B、インバータ153C、及び抵抗153Dを備える。ダイオード153Aのアノード側は終止電流検出回路154の出力端に接続され、カソード側は抵抗153Dを介して入力電圧Vinに接続される他、オペアンプ153Bの出力端と共にインバータ153Cの入力側に接続される。オペアンプ153Bのプラス端子は抵抗152Cを介して入力電圧Vinに接続され、マイナス端子には充電電圧が負帰還される。
【0041】
終止電流検出回路154は、定電流源154A、オペアンプ154B、及び抵抗154Cを備える。定電流源154Aは、入力電圧Vinが入力される。定電流源154Aの出力端は、オペアンプ154Bのプラス端子に接続される他、抵抗154Cを介して充電電圧の出力端に接続される。
【0042】
充電回路150は、充電の第一段階として定格出力電流と同じ充電電圧で充電を行い、電池の電圧が定格電圧に達すると、第二段階の定電圧による充電を行う。そして充電電流がある一定電圧以下となると充電を終了する。なお、本実施例の充電回路150は、充電対象のバッテリ130が、4直14.4[V]、2200[mAH]のリチウムイオン型二次電池であることを想定している。
【0043】
図7は、電源回路160の回路構成例である。電源回路160は、例えばPWM(Pulse Width Modulation)回路161、P−MOS(Metal Oxide Semiconductor)162、N−MOS163、コイル164、165、及びコンデンサ166、167を備える。電源回路160は、PWM方式、同期整流型の電源回路であり、装置内の基本的な電力を供給する。
【0044】
また、電子装置101は、PCH(Platform Controller Hub)200、CPU202、ROM(Read Only Memory)204、MEM(Memory)206を備える。更に、電子装置101は、Disp(Display)208、HDD(Hard Disk Drive)210、KB(Keyboard)/マウス212等を備える。
【0045】
PCH200は、一般にチップセットと称され、周辺装置とのインタフェース機能を担う回路である。CPU202は、演算処理機能とメモリコントロール機能を内蔵した周知のプロセッサである。ROM204は、OS(オペレーティングシステム)をHDD210からロードし、システムを立ち上げるためのプログラムであるBIOSを格納する不揮発性メモリである。MEM206は、例えばEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memoryであり)、CPU202に接続され、OSやアプリケーションプログラム、データを格納する。DISP208は、マンマシンインタフェースの表示機能を担う表示装置である。HDD210は、OSやアプリケーションプログラム、データを格納する補助記憶装置である。
【0046】
{ACアダプタの仕様判別}
以下、本実施例の電子装置101によるACアダプタ1の仕様判別について説明する。図8は、本実施例の電子装置101がACアダプタ1の仕様を判別する仕組みを説明するための説明図である。ACアダプタ1が電子装置101に接続されると、コンタクト20が入力端子110に接続される。そして、ACアダプタ1の出力インピーダンス41Aと電子装置101側のプルダウン抵抗112によって分圧されたプルダウン抵抗112の両端電圧が、EC/KBC120のA/Dコンバータ120Aに入力される。なお、入力端子110にコンタクト20が接続されていなければ、検出電圧はグランドレベル(0[V])となる。
【0047】
EC/KBC120は、ACアダプタ1が接続されてから所定時間の間、プルダウン抵抗112を流れる電流によってプルダウン抵抗112に発生する電圧を観測し、その電圧によってACアダプタ1の仕様を判別する。
【0048】
前述のように、ACアダプタ1は、電子装置101に接続されてから所定時間の間、コネクタ20における電圧を通常供給電圧Vnから所定電圧Vh分低下させる。この所定電圧Vhは、例えばACアダプタ1の供給可能電流が、規格によって大、中、小の三段階に分類されているとすれば、以下のように決定される。
【0049】
供給可能電流−大 : Vh=Vn×(9/12)〜Vn×(11/12)の範囲内
供給可能電流−中 : Vh=Vn×(4/12)〜Vn×(7/12)の範囲内
供給可能電流−小 : Vh=Vn×(1/12)〜Vn×(3/12)の範囲内。
【0050】
図9は、所定電圧VhとACアダプタ1の供給可能電流の関係を示す図である。図示するように、Vh=Vn×(11/12)〜Vnの範囲内、Vh=Vn×(7/12)〜Vn×(8/12)の範囲内、Vh=0〜Vn×(1/12)の範囲内は、ACアダプタ1の仕様が不明なゾーンとする(図中、ガードバンドと表記した)。これによって、測定誤差による不適切な電子装置101の動作を抑制することができる。上記の範囲をメインの判別条件とし、各範囲内でサブの判別条件を設定してもよい。
【0051】
なお、前述のように、EC/KBC120によって判別されるACアダプタ1の仕様は、供給可能電流に限らず、出力電圧、型格、ベンダ名等を示すものであっても構わない。
【0052】
これによって、ACアダプタ1の仕様を電子装置101が検知することができる。この結果、以下に説明するような適切な制御を行うことができる。
【0053】
{状態制御}
以下、EC/KBC120によって判別されたACアダプタ1の仕様に応じた電子装置101の動作制御について説明する。電子装置101は、ACアダプタ1の仕様に応じて、(1)バッテリ130の充電のみ、(2)実稼働のみ、(3)バッテリ130の充電+実稼働の三パターンで動作態様を決定する。なお、「実稼働」を行っている状態とは、バッテリ130の充電のための動作以外の、通常の動作を行っている状態をいう。
【0054】
図10は、本実施例に係るEC/KBC120により実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【0055】
まず、EC/KBC120は、入力端子110の検出電圧が0[V]から上昇するまで、すなわちACアダプタ1の接続を検知するまで待機する(S200)。
【0056】
ACアダプタ1の接続を検知すると、入力端子110の検出電圧に基づきACアダプタ1の供給可能電流が「小」であるか否かを判定する(S202)。なお、ACアダプタ1の供給可能電流が「小」でない場合は、続いて、ACアダプタ1の供給可能電流が「中」であるか否か、更に「中」でない場合はACアダプタ1の供給可能電流が「大」であるか否かを判定する(S210、S218)。
【0057】
ACアダプタ1の供給可能電流が「小」である場合は、スイッチ172がオン状態であるか否か、すなわち、電子装置101が稼働中であるか否かを判定する(S204)。電子装置101が稼働中でない場合は、スイッチ170及び174をオン状態とし、アダプタ1からの供給電力によってバッテリ130を充電する(S206)。一方、電子装置101が稼働中である場合は、スイッチ170をオフ状態としてアダプタ1からの供給電力を遮断して、バッテリ130による稼働を継続する(S208)。
【0058】
ACアダプタ1の供給可能電流が「中」である場合は、スイッチ172がオン状態であるか否か、すなわち、電子装置101が稼働中であるか否かを判定する(S212)。電子装置101が稼働中でない場合は、スイッチ170及び174をオン状態とし、アダプタ1からの供給電力によってバッテリ130を充電する(S214)。一方、電子装置101が稼働中である場合は、スイッチ170をオン状態とすると共にスイッチ174及び176をオフ状態とし、バッテリからの供給電力を遮断して、アダプタ1による稼働に切り替える(S216)。
【0059】
ACアダプタ1の供給可能電流が「大」である場合は、スイッチ172の状態に拘わらず、スイッチ170及び174をオン状態とすると共にスイッチ176をオフ状態とする(S220)。これによって、アダプタ1からの供給電力によってバッテリ130を充電すると共に電子装置101の稼働を可能とする。
【0060】
ACアダプタ1の供給可能電流が「小」、「中」、「大」のいずれでもなく、不明である場合は、スイッチ172がオン状態であるか否か、すなわち、電子装置101が稼働中であるか否かを判定する(S222)。電子装置101が稼働中でない場合は、スイッチ170をオフ状態とする(S224)。この場合、バッテリ130の充電、電子装置101の稼働用電力の供給のいずれも行われない。一方、電子装置101が稼働中である場合は、後述するポップアップ画面の表示、ユーザによる状態選択等の例外処理を行う(S226)。
【0061】
係る処理によって、ACアダプタ1の仕様に応じた適切な状態制御を行うことができる。これによって、ACアダプタ1の供給可能電力が不足することにより電子装置101の稼働が停止したり、バッテリ130が十分に充電されないといった不都合を防止することができる。従って、充電用にのみ用いられる小型・軽量のACアダプタ1を電子装置101が許容することも可能となり、製品ラインナップの幅を拡げることができる。
【0062】
{画面表示処理}
以下、電子装置101がACアダプタ1の接続を検知した際の画面表示処理について説明する。EC/KBC120は、ACアダプタ1の接続を検出すると、電子装置101のOSが起動していれば割り込みを発生し、ACアダプタ1の判別結果をOSに通知する(図4の検出情報)。そして、電子装置101のOSは、割り込み通知を受けると、Disp208にその旨を表示させる(図4のポップアップ画面)。
【0063】
図11は、ACアダプタ1の接続時に表示されるポップアップ画面の例である。図10(A)は、「供給可能電流−小」のACアダプタ1が接続された場合の画面例であり、図10(B)は、「供給可能電流−不明」のACアダプタ1が接続された場合の画面例である。これによって、ユーザに対して例えばラジオボタンの選択を促し、その決定情報(図4の選択情報)をEC/KBC120に送信する。EC/KBC120は、OSからの情報を受けて、OSからの指示に基付いてスイッチ170〜176の操作を行う。この場合、ユーザによる選択が一定時間なければ、スイッチ170をオフ状態としてACアダプタ1を遮断してもよい。
【0064】
[まとめ]
以上説明した本実施例のACアダプタ1によれば、ACアダプタ1の仕様に応じた所定電圧Vhを設定することによって、ACアダプタ1の仕様を本体機器である電子装置101に通知することができる。また、係る通知のために出力端子数を増加させる必要がないため、コストやサイズが増大するのを抑制することができる。
【0065】
また、本実施例の電子装置101によれば、ACアダプタ1の仕様に応じた適切な状態制御を行うことができる。これによって、ACアダプタ1の供給可能電力が不足することにより電子装置101の稼働が停止したり、バッテリ130が十分に充電されないといった不都合を防止することができる。
【0066】
図12は、本実施例による効果を説明するための説明図である。図中、ACアダプタ1*は供給可能電流が「大」であるACアダプタ1の適用例であり、ACアダプタ1**は供給可能電流が「小」であるACアダプタ1の適用例である。また、電子装置101*は消費電力の大きい電子装置101の適用例であり、電子装置101**は消費電力の小さい電子装置101の適用例である。この場合、ACアダプタ1*を電子装置101*に接続する場合は、バッテリ130の充電及び稼働用の電力供給を行うことができる。一方、ACアダプタ1**を電子装置101*に接続する場合はバッテリ130の充電のみ行うことができるが、ACアダプタ1**を電子装置101**に接続する場合はバッテリ130の充電及び稼働用の電力供給を行うことができる。このように、ACアダプタ1が自己の仕様を本体機器である電子装置101に通知することができれば、電子装置101ではACアダプタ1の仕様に応じた状態制御が可能となるため、ACアダプタ1と電子装置101の組み合わせの幅を拡げることが可能となる。すなわち、ACアダプタ1の互換性を高めることができる。
【0067】
なお、本実施例のACアダプタ1と電子装置101を合わせたものが、特許請求の範囲における「電子装置ユニット」の一例である。
【0068】
<第2実施例>
以下、図面を参照し、本発明の第2実施例に係るACアダプタ2、及びこれを利用する電子装置102について説明する。
【0069】
図13は、第2実施例に係るACアダプタ2が電子装置102に接続された状態を示す部分構成例である。図示するように、ACアダプタ2は、例えば、入力端子であるコンタクト10と、出力端子であるコンタクト20と、トランス30と、整流・平滑回路35と、電圧調整回路50と、を備える。電圧調整回路50以外の構成要素については第1実施例と同様であるため、説明を省略する。
【0070】
第2実施例に係る電圧調整回路50は、抵抗52と、PTC(Positive Thermal Constant;過電流保護ヒューズ)54と、を備える。PTC54は、温度の上昇に伴って抵抗値が増加する正の温度係数を有する素子である。
【0071】
また、第2実施例に係る電子装置102は、第1実施例の電子装置101が有する構成要素に加えて、プルダウン抵抗112と並行にコンデンサ114を備える。
【0072】
図14は、本実施例に係るACアダプタ2が電子装置102に接続されたタイミングからの、電圧調整回路50の抵抗値の変化を示す図である。ここでは、抵抗52の抵抗値をR1、PTC54の抵抗値をR2、これらの合成抵抗をRとする。図中、R1を細実線で、R2を破線で、Rを太実線で示す。
【0073】
ACアダプタ2にAC100[V]が供給されている状態でACアダプタ2が電子装置102に接続されると、図13にIsで示す急な過渡電流がコンデンサ114に向けて流れる。これによって、PTC54が発熱し、抵抗値R2が増加する。
【0074】
抵抗値R2が十分に増加すると、合成抵抗RはR1にほぼ等しくなり、PTC54には電流がほとんど流れなくなる。更に、コンデンサ114の充電が終了すると過渡電流Isが流れなくなる。これらの結果、PTC54の温度は徐々に低下し、抵抗値R2は0[Ω]に近づく。
【0075】
抵抗値R2が0[Ω]に近づくと、合成抵抗Rも、0[Ω]に近づく。但し、この定常状態では、ACアダプタ2が電子装置102に接続された直後のような急な過渡電流Isは流れないため、抵抗値R2は抵抗値R1に比して十分に低く維持され、通常の電力供給が継続される。
【0076】
第2実施例のACアダプタ2は、ACアダプタ2が電子装置102に接続された直後に生じる過渡電流によるPTC54の発熱を利用して、一時的に抵抗値を上昇させる。そして、係る抵抗値の一時的上昇により、コレクタ20の電圧を通常供給電圧Vn(例えば、19[V])から所定電圧Vh分低下させる。所定電圧Vhは、専ら抵抗52の抵抗値R1によって決定される。従って、抵抗52の抵抗値R1を適切に選択することによって、所望の所定電圧Vhを実現することができる。
【0077】
なお、図14において「判定」と表記したタイミングは、実験等により、予め合成抵抗Rが抵抗値R1に等しくなる時間帯に含まれるように、電子装置102側で設定されている。
【0078】
電子装置102側における、コンデンサ114以外の{構成}、{ACアダプタの仕様判別}、{状態制御}、{画面表示処理}等の内容については、第1実施例と同様であるため、説明を省略する。本実施例においても、第1実施例と同様に、ACアダプタ2の仕様に応じて、(1)バッテリ130の充電のみ、(2)実稼働のみ、(3)バッテリ130の充電+実稼働の三パターンで動作態様を決定するものとしてよい。
【0079】
以上説明した本実施例のACアダプタ2によれば、ACアダプタ2の仕様に応じた所定電圧Vhを設定することによって、ACアダプタ2の仕様を本体機器である電子装置102に通知することができる。また、係る通知のために出力端子数を増加させる必要がないため、コストやサイズが増大するのを抑制することができる。
【0080】
また、本実施例の電子装置102によれば、ACアダプタ2の仕様に応じた適切な状態制御を行うことができる。これによって、ACアダプタ2の供給可能電力が不足することにより電子装置102の稼働が停止したり、バッテリ130が十分に充電されないといった不都合を防止することができる。
【0081】
また、図12を用いて説明した効果についても、第1実施例と同様であり、ACアダプタ2の互換性を高めることができる。
【0082】
なお、本実施例のACアダプタ2と電子装置102を合わせたものが、特許請求の範囲における「電子装置ユニット」の一例である。
【0083】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0084】
以上の説明に関し、さらに以下の項を開示する。
(付記1)
入力端子に入力された交流を直流に変換する変換手段と、
外部の電子装置に前記直流を供給するための出力端子と、
当該ACアダプタが前記電子装置に接続されてから所定時間経過するまでの間、前記出力端子における電圧を通常供給電圧から所定電圧分低下させる電圧調整手段と、
を備えるACアダプタ。
(付記2)
付記1に記載のACアダプタであって、
前記所定電圧は、当該ACアダプタの仕様を示す電圧であるACアダプタ。
(付記3)
付記1又は2に記載のACアダプタであって、
前記電圧調整手段は、コンデンサの充電電圧変化に応じて半導体スイッチの状態が切り替わることにより、抵抗値が増減する時限作動回路である、
ACアダプタ。
(付記4)
付記1又は2に記載のACアダプタであって、
前記電圧調整手段は、前記出力端子に対して過電流保護ヒューズと抵抗が並列に接続された回路を含む、
ACアダプタ。
(付記5)
付記1ないし4のいずれかに記載のACアダプタと、
前記ACアダプタの出力端子が接続されることにより電力供給を受ける電子装置であって、前記ACアダプタの出力端子の接続時における電圧低下量に基づき前記ACアダプタの仕様を判別する制御手段を備える電子装置と、
を備える電子装置ユニット。
(付記6)
付記5に記載の電子装置ユニットであって、
前記制御手段は、前記判別する前記ACアダプタの仕様に基づき、当該電子装置の内部電池の充電のみ行う状態、当該電子装置の実稼働のみ行う状態、当該電子装置の内部電池の充電及び実稼働を行う状態の中から、当該電子装置の状態を選択する手段である、
電子装置ユニット。
(付記7)
付記4に記載のACアダプタと、
前記ACアダプタの出力端子が接続されることにより電力供給を受ける電子装置であって、前記ACアダプタの出力端子の接続時における電圧低下量に基づき前記ACアダプタの仕様を判別する制御手段と、前記ACアダプタの出力端子が接続される端子に取り付けられたコンデンサと、を有する電子装置と、
を備える電子装置ユニット。
(付記8)
ACアダプタの出力端子が接続されることにより電力供給を受ける電子装置であって、前記ACアダプタの出力端子の接続時における、前記ACアダプタの出力端子の電圧低下量に基づき、前記ACアダプタの仕様を判別する制御手段を備える電子装置。
(付記9)
付記8に記載の電子装置であって、前記制御手段は、前記判別する前記ACアダプタの仕様に基づき、当該電子装置の内部電池の充電のみ行う状態、当該電子装置の実稼働のみ行う状態、当該電子装置の内部電池の充電及び実稼働を行う状態の中から、当該電子装置の状態を選択する手段である、電子装置。
(付記10)
ACアダプタの出力端子が接続されることにより電力供給を受ける電子装置であって、前記ACアダプタの出力端子の接続時における電圧低下量に基づき前記ACアダプタの仕様を判別する制御手段と、前記ACアダプタの出力端子が接続される端子に取り付けられたコンデンサと、を備える電子装置。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、パーソナルコンピュータに代表される電子装置、並びにその周辺装置であるACアダプタの製造産業等に利用できる。
【符号の説明】
【0086】
1、2 ACアダプタ
10、20 コンタクト
30 トランス
35 整流・平滑回路
40 電圧調整回路
41A 抵抗
42 PチャネルFET
43A、43B、43C トランジスタ
44 コンデンサ
50 電圧調整回路
52 抵抗
54 PTC
101、102 電子装置
110 入力端子
112 プルダウン抵抗
114 コンデンサ
120 EC/KBC
120A A/Dコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子に入力された交流を直流に変換する変換手段と、
外部の電子装置に前記直流を供給するための出力端子と、
当該ACアダプタが前記電子装置に接続されてから所定時間経過するまでの間、前記出力端子における電圧を通常供給電圧から所定電圧分低下させる電圧調整手段と、
を備えるACアダプタ。
【請求項2】
請求項1に記載のACアダプタであって、
前記所定電圧は、当該ACアダプタの仕様を示す電圧である、
ACアダプタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のACアダプタであって、
前記電圧調整手段は、コンデンサの充電電圧変化に応じて半導体スイッチの状態が切り替わることにより、抵抗値が増減する時限作動回路である、
ACアダプタ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のACアダプタであって、
前記電圧調整手段は、前記出力端子に対して過電流保護ヒューズと抵抗が並列に接続された回路を含む、
ACアダプタ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のACアダプタと、
前記ACアダプタの出力端子が接続されることにより電力供給を受ける電子装置であって、前記ACアダプタの出力端子の接続時における電圧低下量に基づき前記ACアダプタの仕様を判別する制御手段を備える電子装置と、
を備える電子装置ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の電子装置ユニットであって、
前記制御手段は、前記判別する前記ACアダプタの仕様に基づき、当該電子装置の内部電池の充電のみ行う状態、当該電子装置の実稼働のみ行う状態、当該電子装置の内部電池の充電及び実稼働を行う状態の中から、当該電子装置の状態を選択する手段である、
電子装置ユニット。
【請求項7】
請求項4に記載のACアダプタと、
前記ACアダプタの出力端子が接続されることにより電力供給を受ける電子装置であって、前記ACアダプタの出力端子の接続時における電圧低下量に基づき前記ACアダプタの仕様を判別する制御手段と、前記ACアダプタの出力端子が接続される端子に取り付けられたコンデンサと、を有する電子装置と、
を備える電子装置ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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