AV結節を調節するために細胞介入を用いる心房細動中の心拍制御
生物学的介入方法及び装置が、薬剤が成熟した後に生理的に安定しているが、その後、薬剤を投与することにより変更可能である、AV結節への永続的な調節を生み出す。具体的には、K+チャネル又は等価物のファミリーのうちの1つ又はその組み合わせを用いて心拍制御することを含む、心臓伝導系において結節を調節するために、遺伝子薬剤が用いられる。具体的には、そのチャネルは、活動電位の最適化及び再分極相中に外向き電流を生成し、それにより、下流細胞を興奮させるために利用可能である電流を減少させることによって伝導を遅くするように実施される。たとえば、Kv1.3チャネルが生物学的チャネルとして用いられることがある。本発明によれば、医療及び患者特有の必要性に基づいて、種々の心拍数(BPM)を得るために調節又は調整を逆転できるようになる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包括的には、正常洞調律をもたらすための心不整脈制御に関する。具体的には、本発明は、生物学的介入を用いて、心房細動を制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓はいくつかの別個の領域からなり、各領域は、その固有の電気生理的特徴及び機能を有する。具体的には、心臓活動は、自然な内因性ペーシングを与えるために心筋の分極及び脱分極をトリガする極めて特殊化した細胞によって制御される。洞房(SA)結節が心臓の主なペースメーキングユニットであるとき、房室(AV)結節は心房と心室との間のゲートキーパ又は弁としての役割を果たし、上心室活性化への心室応答を制御する。AV結節の弁機能は、再分極後不応状態が長く、且つ興奮性が非常に低く、それにより心室まで横断することができるインパルスの最大数を制限する細胞から生じる。AV結節はナトリウム(Na+)チャネルを欠いており、AV結節内の伝導は主にL型Ca2+チャネルによって支配される。
【0003】
心臓の伝導系を生物学的に処置するには、極めて特殊化した心臓細胞に適合性があり、順応することができる生物学的薬剤を導入する必要がある。さらに、心臓細胞は、伝導域にわたって大きく分化されている。たとえば、SA結節内のチャネルは、AV結節内のチャネルとは異なる。同様に、チャネルの型及びその組成は心臓の伝導系にわたって変化し、心筋に様々な収縮性を与える。したがって、チャネルを管理することは、心不整脈を制御する上で重要である。この事実を踏まえて、Donahue他(Mature Medicine; 6(2) 1395-1398)は、β−アドレナリン応答を調節し、最終的にはAV結節内の伝導を遅くする、G−タンパク質の阻害成分を過剰発現させることによって、L型Ca2+電流を減少させる手法を開示している。
【0004】
現在、たとえば頻脈性不整脈及び徐脈性不整脈のような不整脈は、埋め込み可能デバイスを用いて管理される。これらのデバイスは、心臓疾患を管理するための優れた治療送達手段であることがわかっているが、それらのデバイスは、損なわれた伝導細胞構造を、その正常な状態に再構成又は修復しない。AV結節を含む、心臓組織内の伝導は、細胞間電荷移動を伴う。SA結節から開始される波面によって既に興奮している上流細胞からの電荷が、下流の次の非興奮性細胞まで移送され、それにより、その細胞内及び膜貫通電位を上昇させる。下流細胞は、その膜貫通電位がNa+チャネルしきい値又はL型Ca2+チャネル)しきい値(AV結節の場合)まで上昇するときに興奮する。この下流細胞が興奮すると、その細胞は、さらに下流の次の非興奮性細胞まで電荷を中継する。この過程が続けられて、結果として、巨視的なレベルにおいて連続的な伝導が行われるようになるが、微視的な規模における伝導は事実上、ほぼ間違いなく跳躍的である(Spach MS他、1990. Ann NY Acad Sci; 591:62-74)。
【0005】
微視的な細胞による伝導は、その伝導がいかに影響を及ぼされることがあるかに関する洞察を与える。心臓伝導を操作するための1つの手法は、次の非興奮性細胞までの下流への電荷移動が遅くなるように、各細胞に、より大きな負荷をかけ、それにより、その細胞の興奮しきい値への上昇を遅らせて、巨視的な伝導速度を減少させることである。電流を吸い込むことができるが、活動電位を発射することができないことに起因して電流を供給することができない興奮しにくい細胞をAV結節内に移植することによって、AV結節細胞に、より大きな電気緊張性負荷をかけることができる。患者に自己由来であるか(たとえば、筋生検を行うことによる)、又は市販で入手される線維芽細胞が、1つのそのような細胞型であり得る。しかしながら、その自然形態のまま移植されるとき、線維芽細胞は、AV結節細胞と十分に結合しないことがあるか、又は結合し損なうことがある。結合を容易にするために、線維芽細胞は、AV結節内に移植される前に、生体外で、Cx43(又はCx40及びCx45のような他のCxアイソフォーム)をトランスフェクトされ得る。それらの細胞が有する電気緊張性負荷の効果をさらに高めるために、線維芽細胞は、電位開口型カリウムチャネルをトランスフェクトされてよい(たとえば、IK1を得るためにコード化するKv2.1、及び別の型の電位依存性K+チャネルを得るためにコードするKv1.3(Field Y他 2002. Circulation. 105: 522-529))。電荷が線維芽細胞に移送され、その膜貫通電位が上昇するのに応じて、これらのチャネルが開き、外向き電流を生成し、それゆえ、線維芽細胞によって提供される負荷効果を増幅するように作用することができる。
【0006】
心房細動(AF)は広く蔓延している疾患であり、米国だけでも200万人の人々が患っており、この数は2050年までに500万人にもなると予想される。その有病率は、50歳における約0.5%から、80歳における9%まで10歳毎に2倍になる。現在の処置は不十分である。心室性不整脈とは異なり、主に心房性不整脈の再発性に起因して、埋め込み可能デバイスは、心房性不整脈を処置するのに効果がない。大部分の患者にとって、薬物療法が最も一般的な治療過程である。2つの異なる治療法(treatment regimen)、すなわち調律制御及び心拍制御が用いられる。調律制御では、カーディオバージョン、及びアミオダロン、ソタロール及び他のクラスIII薬剤のような抗不整脈薬を用いて、患者の洞調律を保持する努力がなされる。心拍制御では、AFを持続させながら、AV結節を調節することによって、心室心拍を制御することに重点が置かれる。心拍制御を達成するために、β遮断薬、ジルチアゼム及びベラパミル(verapimil)のような薬剤が一般的に用いられる。AFFIRMトライアル、すなわち2つの処置戦略を比較する大規模(患者数4060人)多施設治験では、調律制御群と心拍制御群との間に違いは見られなかった。実際には、心拍制御群は、わずかに低い死亡率を示したが(プライマリーエンドポイント)、統計的有意性には達しなかった。3つの他の小さなトライアル(PIAF、RACE及びSTAF)も同じ結論に達しており、すなわち調律制御群と心拍制御群との間に違いは見られなかった。さらに、入院患者を追跡したAFFIRMトライアル及びPIAFトライアルでは、入院率が、心拍制御群よりも、調律制御群において統計的に高かった。
【0007】
したがって、心拍制御はAFのための効果的な治療である。それにもかかわらず、薬物療法には、いくつかの制約がある。患者の一部(約5%)は、一般的に処方される薬剤に耐容性を示さず、薬物療法は最終的には、70〜90%の患者において失敗する。薬剤は系統的に投薬されるので、副作用は一般的である。さらに、患者(一般的には、心室性不整脈の症状を示す患者よりも若い)の生涯全体にわたって常用されるときの薬剤の累積的なコストは、膨大な額になる可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それゆえ、損なわれているか、又は機能不全に陥っていることがあるAV結節及び他の心臓伝導要素を調節することができるシステムが必要とされている。さらに、心臓内の自然伝導チャネルと協調するか、又は自然伝導チャネルに作用する生物学的要素を用いて、心臓伝導組織の全身治療(systemic treatment)を施すことが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、これらの要求のうちの1つ又は複数に対処する。さらに、本発明の他の望ましい特徴及び特性が、添付の図面及び本発明のこの背景技術と共に、本発明の後続の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0010】
例示的な一実施の形態では、各AV結節細胞への電気緊張性負荷が高められ、それによりAV結節内の細胞間伝導及び全体的な巨視的伝導を減少させる。
【0011】
別の例示的な実施の形態では、心房細動中に、AV結節伝導を遅くして、心室心拍を制御するための生物学的技法が実施される。
【0012】
さらに別の例示的な実施の形態では、心臓伝導系の心拍制御のダイナミックレンジを広げるために、線維芽細胞内のチャネルのトランスフェクション及び発現レベルの制御が実施される。
【0013】
本発明の一態様は、コネキシンだけ、又は電位開口型カリウムチャネルをトランスフェクトされた線維芽細胞(細胞数約1×106〜100×106)を移植するための方法及び過程を利用して、AV結節内の伝導を調節し、AF中に心拍制御を提供する。これらのチャネルの移植は、AV結節に特に灌流させるか、又はAV結節内への直接の心内膜注射を使用する、経血管的手法、又はAV結節動脈経由のいずれかによって実行することができる。
【0014】
本発明の別の態様は、AF中の心拍制御のために、AV結節を調節するための1回限りの生物学的介入を提供する。具体的には、活動電位プラトー及び再分極相中に外向き電流を通過させることによって伝導を遅くすることになるK+チャネルが実現されて、下流細胞を興奮させるために利用することができる電流を減少させる。たとえば、本発明は、Kv1.3チャネル、すなわち脳を含むいくつかの器官系において非常に豊富であるShakerファミリーチャネルを実現する。Luo−Rudyモデル細胞の鎖におけるモデル化研究は、チャネル用量が、用量に依存して伝導の遅れを引き起こすことを示す。
【0015】
これ以降、本発明は、添付の図面と共に説明される。ただし、符号は同様の要素を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の以下の詳細な説明は単なる例示であり、本発明、又は本発明の応用形態及び用途を限定することは意図していない。さらに、本発明の前述の(preceding)背景技術及び以下の図面の詳細な説明において提示されるいかなる理論によっても縛られることは意図していない。
【0017】
本発明は、AV結節及び特定のチャネルを参照しながら開示されるが、同じように他のチャネルが用いられることがあり、ヒス束及びプルキンエ線維のような伝導系を、同じ、又は同等の方法及び装置を用いてモデル化することができることに留意されたい。
【0018】
図1を参照すると、4つの心腔、及び種々の電気生理的特徴が示される。具体的には、SA結節、AV結節及びヒス−プルキンエにおいて活動電位が示される。図から明らかなように、心臓の種々の領域は、プロファイル及び大きさの両方に関して、異なる活動電位を有する。種々の伝導域におけるこれらの電気生理的挙動を理解することは、結節の機能的な態様を変更するために特注される修飾剤を設計上で重要である。
【0019】
図2Aを参照すると、心臓細胞の直鎖が表される。鎖内の細胞C1、すなわち最も左側にある細胞が興奮するとき、その細胞は活動電位を発射する。これは、細胞C2に対する細胞C1の細胞内電位を高める。結果として、細胞C1から細胞C2に電流が流れ、細胞C2の細胞内電位は、細胞C2が活動電位を発射することができる点まで高められる。鎖内の全ての細胞が興奮するまで、このように上流細胞が順次に興奮し、下流細胞を興奮させるために下流細胞に電流が流れることが繰返し行われる。右枠はこれらの細胞の場合の活性化時間を示しており、各細胞及び鎖全体の長さがわかると、伝導速度(CV)を計算するために用いることができる(ただし、CV=1/tcであり、1は鎖の長さであり、tcは制御鎖の全活性化時間である)。
【0020】
図2Bは、鎖内の細胞のうちのいくつかが遺伝子Kv1.3を輸送する外来細胞に結合されている心臓細胞の鎖を示す。上記で開示されたのと同様に、細胞C1が興奮するとき、細胞C1及び細胞C2の細胞内空間の間の電位差が、細胞C2を興奮させるために必要とされる電流を与える。しかしながら、ギャップ結合チャネルを介して心臓細胞に接続される外来細胞に起因して、細胞C2には電気緊張性負荷がかけられる。結果として、細胞C2を興奮させるために利用することができる正味の電流が減少し、細胞が興奮しきい値(Na+チャネル又はCa2+チャネルの再生開口のためのしきい値)に達するのにより長い時間がかかる。同じ現象は、細胞C3から細胞C4に興奮が伝達される場合にも観察される。図2Cは、心臓細胞の鎖において同様に遅くなることを示す。図2Dは、活性化時間を示しており、トランスフェクトされた鎖の活性化が制御鎖に比べて大きく遅れることを示す。トランスフェクトされた鎖の全活性化時間(tt)は、制御鎖と比べて大きく遅れる(制御鎖の活性化曲線とトランスフェクトされた鎖の活性化曲線との間に延在する破線によって示される)。それゆえ、伝導速度も同じように遅れる(CV=1/tt)。図2は細胞手法を用いる概念を説明するが、同様の効果が遺伝子手法(図2C)でも観察されることになる。図2Cでは、細胞#2及び細胞#4はKv1.3チャネルを発現し、他の細胞は発現しない。Kv1.3の発現が鎖にわたって均一である場合には(いくつかの細胞だけがトランスフェクトされた場合に点状になるのとは対照的である)、興奮の伝達の遅れは、さらに強められるであろう。
【0021】
図3Aは、Luo−Rudyイオンモデルを示す。そのモデルは、単一の細胞内の心臓活動電位をシミュレートするために実施される。ナトリウム電流及びカリウム電流に加えて、そのモデルは、細胞内カルシウムチャネル、ナトリウムチャネル及びカリウムチャネルを調節する過程も表現する。
【0022】
図3Bは、Luo−Rudyモデル細胞からなるモデル鎖において伝導が遅くなることを示す。これらの細胞の電気生理的基礎は、6つの異なる電流からなる。10個の細胞からなる鎖がモデル化されており、矢印は電流が流れる方向を示す。上記のように、最も左側にある細胞が興奮し(電流注入手法を用いる)、細胞から細胞への興奮の伝達が観察される。
【0023】
図3Cは、制御鎖の活動電位、及び鎖内の細胞がKv1.3チャネルを均一に組み込まれているときのシミュレーションの活動電位を示す。その鎖内の細胞は、20nSのギャップ結合コンダクタンスによって結合されるものと仮定される。図3Dは、(対照)Kv1.3を用いる場合、及び用いない場合の鎖の活性化時間を示す。Kv1.3鎖の場合の活性化時間は、10個の細胞にわたって約1msだけ遅れ、3%の減少がある。
【0024】
図4は、図3Bと同じ鎖へのKv1.3トランスフェクションの影響を示すが、この場合には細胞間結合が(20nSから)10nSに低減されていることが異なる。こうして、Kv1.3トランスフェクションと共に、ギャップ結合調節を用いて、AV結節内の伝導、又は心臓の任意の他の領域内の伝導を遅くすることができる。細胞間結合が低減されている図4に示される事例では、10個の細胞の空間にわたる伝導遅延は、約10msまで増加した。10個の細胞にわたる伝導時間の増加率は約20%であった。
【0025】
図5は、直線鎖をトランスフェクトする用量反応効果を示す。Kv1.3の等倍コンダクタンスを有する曲線は、図4に示される曲線と同じである。他の曲線は、鎖内のKv1.3の量が2倍、3倍及び4倍だけ増加する効果を示す。その伝導は用量に依存して遅くなっており、Kv1.3の用量が増えるにつれて、益々遅くなっていく。これらのシミュレーションの場合に、Kv1.3電流が、以下のように、Luo−Rudyモデルに組み入れられた。
【0026】
【数1】
ギャップ結合コンダクタンスは、これらの結合の形成の根底を成すコネキシン(Cx)分子の発現を調節することによって調節することができる。AV結節伝導を遅くする応用形態の場合、心臓伝導系において見られる主なCxアイソフォームであるので、Cx40が主なターゲットである。しかしながら、他の応用形態では、他のコネキシンアイソフォームをターゲットにすることができる。たとえば、心室頻拍を開始すると共に持続する原因となることがある梗塞領域の伝導が遅くなる境界域において、Cx43をダウンレギュレーションすることができる。コネキシンダウンレギュレーションは、ウイルスベクター又は任意の他の手段を介して送達されるsiRNAによって達成することができる。代替的に、特定のコネキシン(たとえば、Cx40又はCx43)の翻訳ステップを妨げるために、適当な低分子ヘアピン型RNAを送達することができる。他の手法は、コネキシン分子の発現を制御するドミナントネガティブ型の転写制御因子(たとえば、Nkx2−5及び/又はGATA4(Linhares他、Cardiovasc Res. 64 (2004) 402-411; Kasahara他、J. Clinical Invst. 108:2 (2001) 189-209)を対象領域にトランスフェクトすることを含んでよい。
【0027】
図6A及び図6Bは、パッチクランプ技法を用いて、HEK細胞にトランスフェクトされるKv1.3チャネルの評価を示す。具体的には、図6Aは、−100mVで開始して、40mVまでの急上昇を達成する挿入図に示される電圧プロトコルによって引き出される生電流トレースを示す。図6Bは、処理されたデータに関連し、その電圧プロトコルのステップ段階中の電流が膜貫通電圧と共に単調に増加することを示す。
【0028】
ここで図7A及び図7Bを参照すると、パッチクランプ実験を用いて瞬時のI−V関係を測定するための電圧プロトコルが示される。詳細には、図7Aは、パルスが測定された後のテール電流を提供し(左枠内に破線で示される)、パルス電圧に対してプロットされている。図7Bに示される直線のI−V関係は、約−72mVにおいてx軸(0電流)を通過し、その電位は、Kv1.3チャネルの逆転電位(Vrev)である。
【0029】
図8Aを参照すると、遺伝子用量を評価し、判定するためのシステム10が実施される。遺伝子の用量は、患者の必要性に応じて、注意深く滴定されるべきである。本発明の一実施形態では、遺伝子の用量は、患者のAV結節の内因性伝導による。Kv1.3をAV結節に送達する方法は、介入を成功させる上で重要である。したがって、カテーテル/リード線12が心臓14の右心房及び右心室内に配置され、その後、カテーテル/リード線12は、試験を自動的に実行するデバイス16に接続され、内因性AV結節伝導が評価され、図8B〜図8Eのグラフに従って、所定の公式に基づいて遺伝子用量が推奨される。AV結節伝導を評価するために、たとえば、デバイス16はEP調査を実行して、有効不応期(ERP)及びウェンケバッハレートに基づいて、不応性を判定する。ERPを測定するために、心房が10〜30パルスにわたって速いレートでペーシングされ、早熟(prematurity)を促進させるパルスを送達して、図8Bに示される図と一致する、心室への伝導が遮断される結合間隔を評価する。ウェンケバッハレートを測定するために、心房が速いレートで連続ペーシングされ、図8Cに示されるように、心室と1:1になるようにAV結節が伝導し損なうまで、このレートが徐々に高められる。生物学的薬剤の用量は、ERP(図8D)で、又はウェンケバッハ現象を引き起こす最も低いペーシングレート(図8E)で滴定することができる。
【0030】
図9Aを参照すると、カテーテル22を介して、外来遺伝子をAV結節に導入するための送達システム20が示される。リード線が心臓24内の右心房(RA)及び右心室(RV)に配置される。遺伝子ベクター(又は任意の他の生物学的薬剤)を送達し、電気的活動を測定することができるカテーテル22が、当業者に既知の静脈内カテーテル配置手順を用いてAV結節(コッホの三角形)領域内に配置される。カテーテル22は、必要な場合に、アセチルコリン(acetylocholine)又は任意の他の薬剤を送達するためにも用いられることがある。注射器26が、薬剤を送達するためにカテーテル22と連通している。
【0031】
図9Bは、生物学的薬剤を心臓伝導結節内に導入する方法の流れ図を示す。具体的には、ステップ30のもとで、カテーテル22が、右心房内及び右心室内に配置される。その後、ステップ32のもとで、AV結節領域の付近にカテーテル22が配置され、そのことは、ステップ34のもとで、局所ECGにおける良好なHis信号を記録/確認することで確実にされる。その配置は、心房及び心室信号の振幅が、できれば概ね等しくなるようにすべきである。ステップ36のもとで、所定の一回分の量のアセチルコリン、すなわち陰性変時薬剤が、AV結節に送達される。一回分を送達する前に、心臓24が、所定のレートでペーシングされ、洞調律に変動があれば除去する。(AV結節の内因性伝導と共に)心室心拍の減少の持続期間及び程度を用いて、カテーテルが本当のAV結節に近いことを評価する。これを用いて、遺伝子ベクターが右領域内に確実に送達されているようにし、必要な場合、生物学的薬剤用量の滴定をさらに実行する。心房から心室への伝導が確実に遅くなると、ステップ38のもとで、カテーテル22の位置が設定される。その後、ステップ40のもとで、生物学的薬剤がAV結節に送達される。心拍を遅くするための用量は、正常な物理的活動、たとえば運動が許されるようにして滴定されることに留意されたい。したがって、滴定は、120BPM以下の範囲において設定することができる。調節は可逆的であるので、患者の必要性及び医療上の検討すべき事柄に基づいて用量を変更することによって、心拍数を高くすることも、低くすることもできる。心房(RA)及び心室(RV)リード線28は、当業者に既知のようにバックアップぺーシングすることができる小型デバイス(図示せず)に接続される。過量の生物学的薬剤が送達され、結果として、AV結節の2度又は3度のブロックが生じる場合に、ペーシングオプションが実施される。さらに、ペーシングオプションは、外来チャネルの発現が確立されるまで継続する、生物学的薬剤の成熟のモニタリング時間中に必要とされることがある。
【0032】
図10は、図9A及び図9Bにおいて説明されたのに類似のシステム及び過程を用いて、アセチルコリンがAV結節に局所的に送達された実験の結果を示す。制御条件下で、AV結節にアセチルコリンを局所的に注入すると、AFの急性エピソードが誘発され、心室心拍が遅くなるのが観測された。図示されるように、心室心拍は、機能的な影響を及ぼすアセチルコリンの最大及び最小の用量の両方において減少した。
【0033】
本発明の別の態様は、遺伝子の心拍調節効果が望みよりも大きいことがわかった場合に、遺伝子相互浸透の効果を生物学的に調節することである。大部分のイオンチャネル及びトランスポータが、そのβサブユニットによって調節される。これらのサブユニットのための遺伝子を送達して、主チャネル(通常、チャネルのαサブユニット)の効果を増減することができる。Kv1.3の事例では、サブユニットKCNE4は、チャネルの主αサブユニットのコンダクタンスを減少させる。したがって、Kv1.3の送達時に、チャネルの効果が望みよりも大きいことがわかった場合には、KCNE4サブユニットの場合にコード化するベクターを送達して、Kv1.3の効果を低減し、AV結節伝導への調節効果を減少させることができる。
【0034】
上記の開示では、Kv1.3が例示的なチャネル(複数の場合もあり)であるが、同じファミリー/サブファミリーの他のK+チャネルを用いることもできる。さらに、異なるサブファミリーのKvチャネルの共集合体(co-assembly)(たとえば、Kv1.3とKv1.4)によって形成されるヘテロマーチャネルを用いて、結果として形成されるチャネルのコンダクタンス及び開閉動態を調節することができる。
【0035】
図11(表1)は、本発明において用いるために提示される、種々の調節サブユニットを有するチャネルのリストを提供する。種々のサブユニットは、野生型又は適当な変異型において用いることができる。さらに、β−サブユニット(調節サブユニット)による調節に加えて、主サブユニットのチャネル活動は、その基礎リン酸化状態及び/又はプロテインキナーゼA(PKA)及びプロテインキナーゼB(PKB)のような酵素によるそのリン酸化反応が、変更又は修飾されるように、そのチャネルを突然変異させることによって調節することもできる。
【0036】
本発明のこれまでの詳細な説明において例示的な実施形態が提示されてきたが、莫大な数の変形形態が存在することは理解されたい。また、これらの例示的な実施形態は単なる例であり、本発明の範囲、適用性又は構成をいかなる形でも限定することは意図していない。むしろ、これまでの詳細な説明は、当業者に、本発明の好ましい実施形態を実施するための便利なロードマップを提供するであろう。添付の特許請求の範囲において述べられるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、例示的な好ましい一実施形態において説明される機能及び構成要素の配列を様々に変更することができることは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】心臓の種々の領域の異なる電気生理的特徴を示す概略図である。
【図2A】線維芽細胞によって電気緊張性負荷をかけて、細胞間伝導を遅くし、それにより巨視的な伝導に影響を与える過程の概略図であり、具体的には、正常な組織における伝導を示す図である。ギャップ結合を貫通する矢印の長さがイオン電流(I)の振幅を表す。
【図2B】線維芽細胞によって電気緊張性負荷をかけて、細胞間伝導を遅くし、それにより巨視的な伝導に影響を与える過程の概略図であり、具体的には、線維芽細胞の存在時に伝導の遅れが増加することを示す図である。ギャップ結合を貫通する矢印の長さがイオン電流(I)の振幅を表す。
【図2C】線維芽細胞によって電気緊張性負荷をかけて、細胞間伝導を遅くし、それにより巨視的な伝導に影響を与える過程の概略図であり、具体的には、正常な組織における伝導を示す図である。ギャップ結合を貫通する矢印の長さがイオン電流(I)の振幅を表す。
【図2D】線維芽細胞によって電気緊張性負荷をかけて、細胞間伝導を遅くし、それにより巨視的な伝導に影響を与える過程の概略図であり、具体的には、線維芽細胞の存在時に伝導の遅れが増加することを示す図である。
【図3A】本発明において実施されるような、AV結節の調節を説明するために用いられるLuo−Rudyモデル細胞を示す図である。
【図3B】本発明において実施されるような、Luo−Rudyモデルを用いるモデル化結果を示す図である。
【図3C】本発明において実施されるような、Luo−Rudyモデルを用いるモデル化結果を示す図である。
【図3D】本発明において実施されるような、Luo−Rudyモデルを用いるモデル化結果を示す図である。
【図4A】本発明において実施されるような、Luo−Rudyモデルを用いるさらなるモデル化結果を示す図である。
【図4B】本発明において実施されるような、Luo−Rudyモデルを用いるさらなるモデル化結果を示す図である。
【図4C】本発明において実施されるような、Luo−Rudyモデルを用いるさらなるモデル化結果を示す図である。
【図5A】本発明において実施されるような、Luo−Rudyモデルを用いるさらなるモデル化結果を示す図である。
【図5B】本発明において実施されるような、Luo−Rudyモデルを用いるさらなるモデル化結果を示す図である。
【図5C】本発明において実施されるような、Luo−Rudyモデルを用いるさらなるモデル化結果を示す図である。
【図6】本発明によるKv1.3の評価を示す図である。
【図7】本発明によるKv1.3の評価を示す図である。
【図8A】患者の状態に合わせて遺伝子用量又は生物学的用量を求めるための装置及び過程を示す図である。
【図8B】患者の状態に合わせて遺伝子用量又は生物学的用量を求めるための装置及び過程を示す図である。
【図8C】患者の状態に合わせて遺伝子用量又は生物学的用量を求めるための装置及び過程を示す図である。
【図8D】患者の状態に合わせて遺伝子用量又は生物学的用量を求めるための装置及び過程を示す図である。
【図8E】患者の状態に合わせて遺伝子用量又は生物学的用量を求めるための装置及び過程を示す図である。
【図9A】AV結節に生物学的薬剤を大量瞬間投与する装置及び過程を示す図である。
【図9B】AV結節に一回分の生物学的薬剤を注入する装置及び過程を示す図である。
【図10】心室心拍へのアセチルコリンの影響を示す図である。
【図11】本発明において実施されるようなKvαサブユニットのファミリーを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は包括的には、正常洞調律をもたらすための心不整脈制御に関する。具体的には、本発明は、生物学的介入を用いて、心房細動を制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓はいくつかの別個の領域からなり、各領域は、その固有の電気生理的特徴及び機能を有する。具体的には、心臓活動は、自然な内因性ペーシングを与えるために心筋の分極及び脱分極をトリガする極めて特殊化した細胞によって制御される。洞房(SA)結節が心臓の主なペースメーキングユニットであるとき、房室(AV)結節は心房と心室との間のゲートキーパ又は弁としての役割を果たし、上心室活性化への心室応答を制御する。AV結節の弁機能は、再分極後不応状態が長く、且つ興奮性が非常に低く、それにより心室まで横断することができるインパルスの最大数を制限する細胞から生じる。AV結節はナトリウム(Na+)チャネルを欠いており、AV結節内の伝導は主にL型Ca2+チャネルによって支配される。
【0003】
心臓の伝導系を生物学的に処置するには、極めて特殊化した心臓細胞に適合性があり、順応することができる生物学的薬剤を導入する必要がある。さらに、心臓細胞は、伝導域にわたって大きく分化されている。たとえば、SA結節内のチャネルは、AV結節内のチャネルとは異なる。同様に、チャネルの型及びその組成は心臓の伝導系にわたって変化し、心筋に様々な収縮性を与える。したがって、チャネルを管理することは、心不整脈を制御する上で重要である。この事実を踏まえて、Donahue他(Mature Medicine; 6(2) 1395-1398)は、β−アドレナリン応答を調節し、最終的にはAV結節内の伝導を遅くする、G−タンパク質の阻害成分を過剰発現させることによって、L型Ca2+電流を減少させる手法を開示している。
【0004】
現在、たとえば頻脈性不整脈及び徐脈性不整脈のような不整脈は、埋め込み可能デバイスを用いて管理される。これらのデバイスは、心臓疾患を管理するための優れた治療送達手段であることがわかっているが、それらのデバイスは、損なわれた伝導細胞構造を、その正常な状態に再構成又は修復しない。AV結節を含む、心臓組織内の伝導は、細胞間電荷移動を伴う。SA結節から開始される波面によって既に興奮している上流細胞からの電荷が、下流の次の非興奮性細胞まで移送され、それにより、その細胞内及び膜貫通電位を上昇させる。下流細胞は、その膜貫通電位がNa+チャネルしきい値又はL型Ca2+チャネル)しきい値(AV結節の場合)まで上昇するときに興奮する。この下流細胞が興奮すると、その細胞は、さらに下流の次の非興奮性細胞まで電荷を中継する。この過程が続けられて、結果として、巨視的なレベルにおいて連続的な伝導が行われるようになるが、微視的な規模における伝導は事実上、ほぼ間違いなく跳躍的である(Spach MS他、1990. Ann NY Acad Sci; 591:62-74)。
【0005】
微視的な細胞による伝導は、その伝導がいかに影響を及ぼされることがあるかに関する洞察を与える。心臓伝導を操作するための1つの手法は、次の非興奮性細胞までの下流への電荷移動が遅くなるように、各細胞に、より大きな負荷をかけ、それにより、その細胞の興奮しきい値への上昇を遅らせて、巨視的な伝導速度を減少させることである。電流を吸い込むことができるが、活動電位を発射することができないことに起因して電流を供給することができない興奮しにくい細胞をAV結節内に移植することによって、AV結節細胞に、より大きな電気緊張性負荷をかけることができる。患者に自己由来であるか(たとえば、筋生検を行うことによる)、又は市販で入手される線維芽細胞が、1つのそのような細胞型であり得る。しかしながら、その自然形態のまま移植されるとき、線維芽細胞は、AV結節細胞と十分に結合しないことがあるか、又は結合し損なうことがある。結合を容易にするために、線維芽細胞は、AV結節内に移植される前に、生体外で、Cx43(又はCx40及びCx45のような他のCxアイソフォーム)をトランスフェクトされ得る。それらの細胞が有する電気緊張性負荷の効果をさらに高めるために、線維芽細胞は、電位開口型カリウムチャネルをトランスフェクトされてよい(たとえば、IK1を得るためにコード化するKv2.1、及び別の型の電位依存性K+チャネルを得るためにコードするKv1.3(Field Y他 2002. Circulation. 105: 522-529))。電荷が線維芽細胞に移送され、その膜貫通電位が上昇するのに応じて、これらのチャネルが開き、外向き電流を生成し、それゆえ、線維芽細胞によって提供される負荷効果を増幅するように作用することができる。
【0006】
心房細動(AF)は広く蔓延している疾患であり、米国だけでも200万人の人々が患っており、この数は2050年までに500万人にもなると予想される。その有病率は、50歳における約0.5%から、80歳における9%まで10歳毎に2倍になる。現在の処置は不十分である。心室性不整脈とは異なり、主に心房性不整脈の再発性に起因して、埋め込み可能デバイスは、心房性不整脈を処置するのに効果がない。大部分の患者にとって、薬物療法が最も一般的な治療過程である。2つの異なる治療法(treatment regimen)、すなわち調律制御及び心拍制御が用いられる。調律制御では、カーディオバージョン、及びアミオダロン、ソタロール及び他のクラスIII薬剤のような抗不整脈薬を用いて、患者の洞調律を保持する努力がなされる。心拍制御では、AFを持続させながら、AV結節を調節することによって、心室心拍を制御することに重点が置かれる。心拍制御を達成するために、β遮断薬、ジルチアゼム及びベラパミル(verapimil)のような薬剤が一般的に用いられる。AFFIRMトライアル、すなわち2つの処置戦略を比較する大規模(患者数4060人)多施設治験では、調律制御群と心拍制御群との間に違いは見られなかった。実際には、心拍制御群は、わずかに低い死亡率を示したが(プライマリーエンドポイント)、統計的有意性には達しなかった。3つの他の小さなトライアル(PIAF、RACE及びSTAF)も同じ結論に達しており、すなわち調律制御群と心拍制御群との間に違いは見られなかった。さらに、入院患者を追跡したAFFIRMトライアル及びPIAFトライアルでは、入院率が、心拍制御群よりも、調律制御群において統計的に高かった。
【0007】
したがって、心拍制御はAFのための効果的な治療である。それにもかかわらず、薬物療法には、いくつかの制約がある。患者の一部(約5%)は、一般的に処方される薬剤に耐容性を示さず、薬物療法は最終的には、70〜90%の患者において失敗する。薬剤は系統的に投薬されるので、副作用は一般的である。さらに、患者(一般的には、心室性不整脈の症状を示す患者よりも若い)の生涯全体にわたって常用されるときの薬剤の累積的なコストは、膨大な額になる可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それゆえ、損なわれているか、又は機能不全に陥っていることがあるAV結節及び他の心臓伝導要素を調節することができるシステムが必要とされている。さらに、心臓内の自然伝導チャネルと協調するか、又は自然伝導チャネルに作用する生物学的要素を用いて、心臓伝導組織の全身治療(systemic treatment)を施すことが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、これらの要求のうちの1つ又は複数に対処する。さらに、本発明の他の望ましい特徴及び特性が、添付の図面及び本発明のこの背景技術と共に、本発明の後続の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0010】
例示的な一実施の形態では、各AV結節細胞への電気緊張性負荷が高められ、それによりAV結節内の細胞間伝導及び全体的な巨視的伝導を減少させる。
【0011】
別の例示的な実施の形態では、心房細動中に、AV結節伝導を遅くして、心室心拍を制御するための生物学的技法が実施される。
【0012】
さらに別の例示的な実施の形態では、心臓伝導系の心拍制御のダイナミックレンジを広げるために、線維芽細胞内のチャネルのトランスフェクション及び発現レベルの制御が実施される。
【0013】
本発明の一態様は、コネキシンだけ、又は電位開口型カリウムチャネルをトランスフェクトされた線維芽細胞(細胞数約1×106〜100×106)を移植するための方法及び過程を利用して、AV結節内の伝導を調節し、AF中に心拍制御を提供する。これらのチャネルの移植は、AV結節に特に灌流させるか、又はAV結節内への直接の心内膜注射を使用する、経血管的手法、又はAV結節動脈経由のいずれかによって実行することができる。
【0014】
本発明の別の態様は、AF中の心拍制御のために、AV結節を調節するための1回限りの生物学的介入を提供する。具体的には、活動電位プラトー及び再分極相中に外向き電流を通過させることによって伝導を遅くすることになるK+チャネルが実現されて、下流細胞を興奮させるために利用することができる電流を減少させる。たとえば、本発明は、Kv1.3チャネル、すなわち脳を含むいくつかの器官系において非常に豊富であるShakerファミリーチャネルを実現する。Luo−Rudyモデル細胞の鎖におけるモデル化研究は、チャネル用量が、用量に依存して伝導の遅れを引き起こすことを示す。
【0015】
これ以降、本発明は、添付の図面と共に説明される。ただし、符号は同様の要素を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の以下の詳細な説明は単なる例示であり、本発明、又は本発明の応用形態及び用途を限定することは意図していない。さらに、本発明の前述の(preceding)背景技術及び以下の図面の詳細な説明において提示されるいかなる理論によっても縛られることは意図していない。
【0017】
本発明は、AV結節及び特定のチャネルを参照しながら開示されるが、同じように他のチャネルが用いられることがあり、ヒス束及びプルキンエ線維のような伝導系を、同じ、又は同等の方法及び装置を用いてモデル化することができることに留意されたい。
【0018】
図1を参照すると、4つの心腔、及び種々の電気生理的特徴が示される。具体的には、SA結節、AV結節及びヒス−プルキンエにおいて活動電位が示される。図から明らかなように、心臓の種々の領域は、プロファイル及び大きさの両方に関して、異なる活動電位を有する。種々の伝導域におけるこれらの電気生理的挙動を理解することは、結節の機能的な態様を変更するために特注される修飾剤を設計上で重要である。
【0019】
図2Aを参照すると、心臓細胞の直鎖が表される。鎖内の細胞C1、すなわち最も左側にある細胞が興奮するとき、その細胞は活動電位を発射する。これは、細胞C2に対する細胞C1の細胞内電位を高める。結果として、細胞C1から細胞C2に電流が流れ、細胞C2の細胞内電位は、細胞C2が活動電位を発射することができる点まで高められる。鎖内の全ての細胞が興奮するまで、このように上流細胞が順次に興奮し、下流細胞を興奮させるために下流細胞に電流が流れることが繰返し行われる。右枠はこれらの細胞の場合の活性化時間を示しており、各細胞及び鎖全体の長さがわかると、伝導速度(CV)を計算するために用いることができる(ただし、CV=1/tcであり、1は鎖の長さであり、tcは制御鎖の全活性化時間である)。
【0020】
図2Bは、鎖内の細胞のうちのいくつかが遺伝子Kv1.3を輸送する外来細胞に結合されている心臓細胞の鎖を示す。上記で開示されたのと同様に、細胞C1が興奮するとき、細胞C1及び細胞C2の細胞内空間の間の電位差が、細胞C2を興奮させるために必要とされる電流を与える。しかしながら、ギャップ結合チャネルを介して心臓細胞に接続される外来細胞に起因して、細胞C2には電気緊張性負荷がかけられる。結果として、細胞C2を興奮させるために利用することができる正味の電流が減少し、細胞が興奮しきい値(Na+チャネル又はCa2+チャネルの再生開口のためのしきい値)に達するのにより長い時間がかかる。同じ現象は、細胞C3から細胞C4に興奮が伝達される場合にも観察される。図2Cは、心臓細胞の鎖において同様に遅くなることを示す。図2Dは、活性化時間を示しており、トランスフェクトされた鎖の活性化が制御鎖に比べて大きく遅れることを示す。トランスフェクトされた鎖の全活性化時間(tt)は、制御鎖と比べて大きく遅れる(制御鎖の活性化曲線とトランスフェクトされた鎖の活性化曲線との間に延在する破線によって示される)。それゆえ、伝導速度も同じように遅れる(CV=1/tt)。図2は細胞手法を用いる概念を説明するが、同様の効果が遺伝子手法(図2C)でも観察されることになる。図2Cでは、細胞#2及び細胞#4はKv1.3チャネルを発現し、他の細胞は発現しない。Kv1.3の発現が鎖にわたって均一である場合には(いくつかの細胞だけがトランスフェクトされた場合に点状になるのとは対照的である)、興奮の伝達の遅れは、さらに強められるであろう。
【0021】
図3Aは、Luo−Rudyイオンモデルを示す。そのモデルは、単一の細胞内の心臓活動電位をシミュレートするために実施される。ナトリウム電流及びカリウム電流に加えて、そのモデルは、細胞内カルシウムチャネル、ナトリウムチャネル及びカリウムチャネルを調節する過程も表現する。
【0022】
図3Bは、Luo−Rudyモデル細胞からなるモデル鎖において伝導が遅くなることを示す。これらの細胞の電気生理的基礎は、6つの異なる電流からなる。10個の細胞からなる鎖がモデル化されており、矢印は電流が流れる方向を示す。上記のように、最も左側にある細胞が興奮し(電流注入手法を用いる)、細胞から細胞への興奮の伝達が観察される。
【0023】
図3Cは、制御鎖の活動電位、及び鎖内の細胞がKv1.3チャネルを均一に組み込まれているときのシミュレーションの活動電位を示す。その鎖内の細胞は、20nSのギャップ結合コンダクタンスによって結合されるものと仮定される。図3Dは、(対照)Kv1.3を用いる場合、及び用いない場合の鎖の活性化時間を示す。Kv1.3鎖の場合の活性化時間は、10個の細胞にわたって約1msだけ遅れ、3%の減少がある。
【0024】
図4は、図3Bと同じ鎖へのKv1.3トランスフェクションの影響を示すが、この場合には細胞間結合が(20nSから)10nSに低減されていることが異なる。こうして、Kv1.3トランスフェクションと共に、ギャップ結合調節を用いて、AV結節内の伝導、又は心臓の任意の他の領域内の伝導を遅くすることができる。細胞間結合が低減されている図4に示される事例では、10個の細胞の空間にわたる伝導遅延は、約10msまで増加した。10個の細胞にわたる伝導時間の増加率は約20%であった。
【0025】
図5は、直線鎖をトランスフェクトする用量反応効果を示す。Kv1.3の等倍コンダクタンスを有する曲線は、図4に示される曲線と同じである。他の曲線は、鎖内のKv1.3の量が2倍、3倍及び4倍だけ増加する効果を示す。その伝導は用量に依存して遅くなっており、Kv1.3の用量が増えるにつれて、益々遅くなっていく。これらのシミュレーションの場合に、Kv1.3電流が、以下のように、Luo−Rudyモデルに組み入れられた。
【0026】
【数1】
ギャップ結合コンダクタンスは、これらの結合の形成の根底を成すコネキシン(Cx)分子の発現を調節することによって調節することができる。AV結節伝導を遅くする応用形態の場合、心臓伝導系において見られる主なCxアイソフォームであるので、Cx40が主なターゲットである。しかしながら、他の応用形態では、他のコネキシンアイソフォームをターゲットにすることができる。たとえば、心室頻拍を開始すると共に持続する原因となることがある梗塞領域の伝導が遅くなる境界域において、Cx43をダウンレギュレーションすることができる。コネキシンダウンレギュレーションは、ウイルスベクター又は任意の他の手段を介して送達されるsiRNAによって達成することができる。代替的に、特定のコネキシン(たとえば、Cx40又はCx43)の翻訳ステップを妨げるために、適当な低分子ヘアピン型RNAを送達することができる。他の手法は、コネキシン分子の発現を制御するドミナントネガティブ型の転写制御因子(たとえば、Nkx2−5及び/又はGATA4(Linhares他、Cardiovasc Res. 64 (2004) 402-411; Kasahara他、J. Clinical Invst. 108:2 (2001) 189-209)を対象領域にトランスフェクトすることを含んでよい。
【0027】
図6A及び図6Bは、パッチクランプ技法を用いて、HEK細胞にトランスフェクトされるKv1.3チャネルの評価を示す。具体的には、図6Aは、−100mVで開始して、40mVまでの急上昇を達成する挿入図に示される電圧プロトコルによって引き出される生電流トレースを示す。図6Bは、処理されたデータに関連し、その電圧プロトコルのステップ段階中の電流が膜貫通電圧と共に単調に増加することを示す。
【0028】
ここで図7A及び図7Bを参照すると、パッチクランプ実験を用いて瞬時のI−V関係を測定するための電圧プロトコルが示される。詳細には、図7Aは、パルスが測定された後のテール電流を提供し(左枠内に破線で示される)、パルス電圧に対してプロットされている。図7Bに示される直線のI−V関係は、約−72mVにおいてx軸(0電流)を通過し、その電位は、Kv1.3チャネルの逆転電位(Vrev)である。
【0029】
図8Aを参照すると、遺伝子用量を評価し、判定するためのシステム10が実施される。遺伝子の用量は、患者の必要性に応じて、注意深く滴定されるべきである。本発明の一実施形態では、遺伝子の用量は、患者のAV結節の内因性伝導による。Kv1.3をAV結節に送達する方法は、介入を成功させる上で重要である。したがって、カテーテル/リード線12が心臓14の右心房及び右心室内に配置され、その後、カテーテル/リード線12は、試験を自動的に実行するデバイス16に接続され、内因性AV結節伝導が評価され、図8B〜図8Eのグラフに従って、所定の公式に基づいて遺伝子用量が推奨される。AV結節伝導を評価するために、たとえば、デバイス16はEP調査を実行して、有効不応期(ERP)及びウェンケバッハレートに基づいて、不応性を判定する。ERPを測定するために、心房が10〜30パルスにわたって速いレートでペーシングされ、早熟(prematurity)を促進させるパルスを送達して、図8Bに示される図と一致する、心室への伝導が遮断される結合間隔を評価する。ウェンケバッハレートを測定するために、心房が速いレートで連続ペーシングされ、図8Cに示されるように、心室と1:1になるようにAV結節が伝導し損なうまで、このレートが徐々に高められる。生物学的薬剤の用量は、ERP(図8D)で、又はウェンケバッハ現象を引き起こす最も低いペーシングレート(図8E)で滴定することができる。
【0030】
図9Aを参照すると、カテーテル22を介して、外来遺伝子をAV結節に導入するための送達システム20が示される。リード線が心臓24内の右心房(RA)及び右心室(RV)に配置される。遺伝子ベクター(又は任意の他の生物学的薬剤)を送達し、電気的活動を測定することができるカテーテル22が、当業者に既知の静脈内カテーテル配置手順を用いてAV結節(コッホの三角形)領域内に配置される。カテーテル22は、必要な場合に、アセチルコリン(acetylocholine)又は任意の他の薬剤を送達するためにも用いられることがある。注射器26が、薬剤を送達するためにカテーテル22と連通している。
【0031】
図9Bは、生物学的薬剤を心臓伝導結節内に導入する方法の流れ図を示す。具体的には、ステップ30のもとで、カテーテル22が、右心房内及び右心室内に配置される。その後、ステップ32のもとで、AV結節領域の付近にカテーテル22が配置され、そのことは、ステップ34のもとで、局所ECGにおける良好なHis信号を記録/確認することで確実にされる。その配置は、心房及び心室信号の振幅が、できれば概ね等しくなるようにすべきである。ステップ36のもとで、所定の一回分の量のアセチルコリン、すなわち陰性変時薬剤が、AV結節に送達される。一回分を送達する前に、心臓24が、所定のレートでペーシングされ、洞調律に変動があれば除去する。(AV結節の内因性伝導と共に)心室心拍の減少の持続期間及び程度を用いて、カテーテルが本当のAV結節に近いことを評価する。これを用いて、遺伝子ベクターが右領域内に確実に送達されているようにし、必要な場合、生物学的薬剤用量の滴定をさらに実行する。心房から心室への伝導が確実に遅くなると、ステップ38のもとで、カテーテル22の位置が設定される。その後、ステップ40のもとで、生物学的薬剤がAV結節に送達される。心拍を遅くするための用量は、正常な物理的活動、たとえば運動が許されるようにして滴定されることに留意されたい。したがって、滴定は、120BPM以下の範囲において設定することができる。調節は可逆的であるので、患者の必要性及び医療上の検討すべき事柄に基づいて用量を変更することによって、心拍数を高くすることも、低くすることもできる。心房(RA)及び心室(RV)リード線28は、当業者に既知のようにバックアップぺーシングすることができる小型デバイス(図示せず)に接続される。過量の生物学的薬剤が送達され、結果として、AV結節の2度又は3度のブロックが生じる場合に、ペーシングオプションが実施される。さらに、ペーシングオプションは、外来チャネルの発現が確立されるまで継続する、生物学的薬剤の成熟のモニタリング時間中に必要とされることがある。
【0032】
図10は、図9A及び図9Bにおいて説明されたのに類似のシステム及び過程を用いて、アセチルコリンがAV結節に局所的に送達された実験の結果を示す。制御条件下で、AV結節にアセチルコリンを局所的に注入すると、AFの急性エピソードが誘発され、心室心拍が遅くなるのが観測された。図示されるように、心室心拍は、機能的な影響を及ぼすアセチルコリンの最大及び最小の用量の両方において減少した。
【0033】
本発明の別の態様は、遺伝子の心拍調節効果が望みよりも大きいことがわかった場合に、遺伝子相互浸透の効果を生物学的に調節することである。大部分のイオンチャネル及びトランスポータが、そのβサブユニットによって調節される。これらのサブユニットのための遺伝子を送達して、主チャネル(通常、チャネルのαサブユニット)の効果を増減することができる。Kv1.3の事例では、サブユニットKCNE4は、チャネルの主αサブユニットのコンダクタンスを減少させる。したがって、Kv1.3の送達時に、チャネルの効果が望みよりも大きいことがわかった場合には、KCNE4サブユニットの場合にコード化するベクターを送達して、Kv1.3の効果を低減し、AV結節伝導への調節効果を減少させることができる。
【0034】
上記の開示では、Kv1.3が例示的なチャネル(複数の場合もあり)であるが、同じファミリー/サブファミリーの他のK+チャネルを用いることもできる。さらに、異なるサブファミリーのKvチャネルの共集合体(co-assembly)(たとえば、Kv1.3とKv1.4)によって形成されるヘテロマーチャネルを用いて、結果として形成されるチャネルのコンダクタンス及び開閉動態を調節することができる。
【0035】
図11(表1)は、本発明において用いるために提示される、種々の調節サブユニットを有するチャネルのリストを提供する。種々のサブユニットは、野生型又は適当な変異型において用いることができる。さらに、β−サブユニット(調節サブユニット)による調節に加えて、主サブユニットのチャネル活動は、その基礎リン酸化状態及び/又はプロテインキナーゼA(PKA)及びプロテインキナーゼB(PKB)のような酵素によるそのリン酸化反応が、変更又は修飾されるように、そのチャネルを突然変異させることによって調節することもできる。
【0036】
本発明のこれまでの詳細な説明において例示的な実施形態が提示されてきたが、莫大な数の変形形態が存在することは理解されたい。また、これらの例示的な実施形態は単なる例であり、本発明の範囲、適用性又は構成をいかなる形でも限定することは意図していない。むしろ、これまでの詳細な説明は、当業者に、本発明の好ましい実施形態を実施するための便利なロードマップを提供するであろう。添付の特許請求の範囲において述べられるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、例示的な好ましい一実施形態において説明される機能及び構成要素の配列を様々に変更することができることは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】心臓の種々の領域の異なる電気生理的特徴を示す概略図である。
【図2A】線維芽細胞によって電気緊張性負荷をかけて、細胞間伝導を遅くし、それにより巨視的な伝導に影響を与える過程の概略図であり、具体的には、正常な組織における伝導を示す図である。ギャップ結合を貫通する矢印の長さがイオン電流(I)の振幅を表す。
【図2B】線維芽細胞によって電気緊張性負荷をかけて、細胞間伝導を遅くし、それにより巨視的な伝導に影響を与える過程の概略図であり、具体的には、線維芽細胞の存在時に伝導の遅れが増加することを示す図である。ギャップ結合を貫通する矢印の長さがイオン電流(I)の振幅を表す。
【図2C】線維芽細胞によって電気緊張性負荷をかけて、細胞間伝導を遅くし、それにより巨視的な伝導に影響を与える過程の概略図であり、具体的には、正常な組織における伝導を示す図である。ギャップ結合を貫通する矢印の長さがイオン電流(I)の振幅を表す。
【図2D】線維芽細胞によって電気緊張性負荷をかけて、細胞間伝導を遅くし、それにより巨視的な伝導に影響を与える過程の概略図であり、具体的には、線維芽細胞の存在時に伝導の遅れが増加することを示す図である。
【図3A】本発明において実施されるような、AV結節の調節を説明するために用いられるLuo−Rudyモデル細胞を示す図である。
【図3B】本発明において実施されるような、Luo−Rudyモデルを用いるモデル化結果を示す図である。
【図3C】本発明において実施されるような、Luo−Rudyモデルを用いるモデル化結果を示す図である。
【図3D】本発明において実施されるような、Luo−Rudyモデルを用いるモデル化結果を示す図である。
【図4A】本発明において実施されるような、Luo−Rudyモデルを用いるさらなるモデル化結果を示す図である。
【図4B】本発明において実施されるような、Luo−Rudyモデルを用いるさらなるモデル化結果を示す図である。
【図4C】本発明において実施されるような、Luo−Rudyモデルを用いるさらなるモデル化結果を示す図である。
【図5A】本発明において実施されるような、Luo−Rudyモデルを用いるさらなるモデル化結果を示す図である。
【図5B】本発明において実施されるような、Luo−Rudyモデルを用いるさらなるモデル化結果を示す図である。
【図5C】本発明において実施されるような、Luo−Rudyモデルを用いるさらなるモデル化結果を示す図である。
【図6】本発明によるKv1.3の評価を示す図である。
【図7】本発明によるKv1.3の評価を示す図である。
【図8A】患者の状態に合わせて遺伝子用量又は生物学的用量を求めるための装置及び過程を示す図である。
【図8B】患者の状態に合わせて遺伝子用量又は生物学的用量を求めるための装置及び過程を示す図である。
【図8C】患者の状態に合わせて遺伝子用量又は生物学的用量を求めるための装置及び過程を示す図である。
【図8D】患者の状態に合わせて遺伝子用量又は生物学的用量を求めるための装置及び過程を示す図である。
【図8E】患者の状態に合わせて遺伝子用量又は生物学的用量を求めるための装置及び過程を示す図である。
【図9A】AV結節に生物学的薬剤を大量瞬間投与する装置及び過程を示す図である。
【図9B】AV結節に一回分の生物学的薬剤を注入する装置及び過程を示す図である。
【図10】心室心拍へのアセチルコリンの影響を示す図である。
【図11】本発明において実施されるようなKvαサブユニットのファミリーを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓伝導結節(cardiac conduction node)を永続的に調節するための生物学的介入システムであって、
或る用量の外来遺伝子を滴定するための手段と、
バックアップペーシングのための手段と
を備える、心臓伝導結節を永続的に調節するための生物学的介入システム。
【請求項2】
前記滴定するための手段は、ERPを測定するための手段を含む、請求項1に記載の心臓伝導結節を永続的に調節するための生物学的介入システム。
【請求項3】
前記滴定するための手段は、ウェンケバッハ現象を引き起こす最も低いペーシングレートを測定するための手段を含む、請求項1に記載の心臓伝導結節を永続的に調節するための生物学的介入システム。
【請求項4】
前記バックアップペーシングのための手段は、前記心臓伝導結節において前記外来遺伝子が成熟するまでペーシングするペースメーカを含む、請求項1に記載の心臓伝導結節を永続的に調節するための生物学的介入システム。
【請求項5】
前記バックアップペーシングのための手段は、前記心臓伝導結節の外来遺伝子過量投与時にペーシングするためのペースメーカを含む、請求項1に記載の心臓伝導結節を永続的に調節するための生物学的介入システム。
【請求項6】
前記外来遺伝子は、種々のKv2サブユニット及びその調節サブユニットを含む、請求項1に記載の心臓伝導結節を永続的に調節するための生物学的介入システム。
【請求項7】
心臓組織の興奮性を調節するために心臓伝導結節に注入される生物学的薬剤であって、
Kv1.3チャネルから形成される複数の生物学的薬剤(biologic agent)と、
前記複数の生物学的薬剤を前記伝導結節に注入するための注射器と
を含む、心臓組織の興奮性を調節するために心臓伝導結節に注入される生物学的薬剤。
【請求項8】
Kv1(Shaker)、Kv2(Shab)、Kv3(Shaw)、Kv4(Shal)及びKv5−9のファミリーのうちの1つから選択される、請求項7に記載の心臓組織の興奮性を調節するために心臓伝導結節に注入される生物学的薬剤。
【請求項9】
選択される前記ファミリーのうちの少なくとも1つは、変更又は修飾された、基礎リン酸化状態、及びプロテインキナーゼA(PKA)及びプロテインB(PKB)のような酵素によるリン酸化反応から形成される突然変異したチャネルのうちの1つを含む、請求項8に記載の心臓組織の興奮性を調節するために心臓伝導結節に注入される生物学的薬剤。
【請求項10】
心臓伝導を操作するための方法であって、
心臓伝導結節に非興奮性細胞を導入すること、
前記伝導結節において、より大きな電圧負荷をかけて、隣接する細胞への電荷移動を抑制すること
を含む、心臓伝導を操作するための方法。
【請求項11】
前記導入することは、線維芽細胞を電圧開口型カリウムチャネルによりトランスフェクトすることにより外向き電流を生成することを含む、請求項10に記載の心臓伝導を操作するための方法。
【請求項12】
前記導入することは、EP調査を実行することであって、それによって、ERPを求める、実行すること、及び前記心臓伝導結節内に前記非興奮性細胞を注入する前に、ウェンケバッハレートを測定することを含む、請求項11に記載の心臓伝導を操作するための方法。
【請求項13】
前記導入することは、種々の物理的活動を行うために考慮すべき心拍(BPM)要件を含む患者の結節調節要求に基づいて、或る用量の遺伝子を滴定することを含む、請求項12に記載の心臓伝導を操作するための方法。
【請求項14】
前記導入することは、前記ERP及びウェンケバッハ現象を引き起こす前記最も低いペーシングレートのうちの1つに基づいて生物学的薬剤を滴定することによる、請求項12に記載の心臓伝導を操作するための方法。
【請求項15】
心臓結節調節のための遺伝子薬剤を導入するシステムであって、
前記結節内の伝導を遅くするための一回分(bolus)の薬剤を送達するための手段と、
前記結節において伝導が遅くなったのを確認した後に、該結節に前記遺伝子薬剤を送達するための手段と
を備える、心臓結節調節のための遺伝子薬剤を導入するシステム。
【請求項16】
前記一回分の薬剤は、或る用量のアセチルコリン(acotylocholine)を含む、請求項15に記載の心臓結節調節のための遺伝子薬剤を導入するシステム。
【請求項17】
前記遺伝子薬剤は、Kv1、Kv2、Kv3、Kv4及びKv5−9のファミリーのうちの1つから選択される、請求項15に記載の心臓結節調節のための遺伝子薬剤を導入するシステム。
【請求項18】
前記遺伝子薬剤は、AV結節に送達される、請求項15に記載の心臓結節調節のための遺伝子薬剤を導入するシステム。
【請求項19】
バックアップペースメーカが接続され、前記一回分の薬剤及び前記遺伝子薬剤の送達後に起動される、請求項15に記載の心臓結節調節のための遺伝子薬剤を導入するシステム。
【請求項20】
前記バックアップペースメーカは、前記生物学的薬剤の用量が高い場合に起動される、請求項19に記載の心臓結節調節のための遺伝子薬剤を導入するシステム。
【請求項1】
心臓伝導結節(cardiac conduction node)を永続的に調節するための生物学的介入システムであって、
或る用量の外来遺伝子を滴定するための手段と、
バックアップペーシングのための手段と
を備える、心臓伝導結節を永続的に調節するための生物学的介入システム。
【請求項2】
前記滴定するための手段は、ERPを測定するための手段を含む、請求項1に記載の心臓伝導結節を永続的に調節するための生物学的介入システム。
【請求項3】
前記滴定するための手段は、ウェンケバッハ現象を引き起こす最も低いペーシングレートを測定するための手段を含む、請求項1に記載の心臓伝導結節を永続的に調節するための生物学的介入システム。
【請求項4】
前記バックアップペーシングのための手段は、前記心臓伝導結節において前記外来遺伝子が成熟するまでペーシングするペースメーカを含む、請求項1に記載の心臓伝導結節を永続的に調節するための生物学的介入システム。
【請求項5】
前記バックアップペーシングのための手段は、前記心臓伝導結節の外来遺伝子過量投与時にペーシングするためのペースメーカを含む、請求項1に記載の心臓伝導結節を永続的に調節するための生物学的介入システム。
【請求項6】
前記外来遺伝子は、種々のKv2サブユニット及びその調節サブユニットを含む、請求項1に記載の心臓伝導結節を永続的に調節するための生物学的介入システム。
【請求項7】
心臓組織の興奮性を調節するために心臓伝導結節に注入される生物学的薬剤であって、
Kv1.3チャネルから形成される複数の生物学的薬剤(biologic agent)と、
前記複数の生物学的薬剤を前記伝導結節に注入するための注射器と
を含む、心臓組織の興奮性を調節するために心臓伝導結節に注入される生物学的薬剤。
【請求項8】
Kv1(Shaker)、Kv2(Shab)、Kv3(Shaw)、Kv4(Shal)及びKv5−9のファミリーのうちの1つから選択される、請求項7に記載の心臓組織の興奮性を調節するために心臓伝導結節に注入される生物学的薬剤。
【請求項9】
選択される前記ファミリーのうちの少なくとも1つは、変更又は修飾された、基礎リン酸化状態、及びプロテインキナーゼA(PKA)及びプロテインB(PKB)のような酵素によるリン酸化反応から形成される突然変異したチャネルのうちの1つを含む、請求項8に記載の心臓組織の興奮性を調節するために心臓伝導結節に注入される生物学的薬剤。
【請求項10】
心臓伝導を操作するための方法であって、
心臓伝導結節に非興奮性細胞を導入すること、
前記伝導結節において、より大きな電圧負荷をかけて、隣接する細胞への電荷移動を抑制すること
を含む、心臓伝導を操作するための方法。
【請求項11】
前記導入することは、線維芽細胞を電圧開口型カリウムチャネルによりトランスフェクトすることにより外向き電流を生成することを含む、請求項10に記載の心臓伝導を操作するための方法。
【請求項12】
前記導入することは、EP調査を実行することであって、それによって、ERPを求める、実行すること、及び前記心臓伝導結節内に前記非興奮性細胞を注入する前に、ウェンケバッハレートを測定することを含む、請求項11に記載の心臓伝導を操作するための方法。
【請求項13】
前記導入することは、種々の物理的活動を行うために考慮すべき心拍(BPM)要件を含む患者の結節調節要求に基づいて、或る用量の遺伝子を滴定することを含む、請求項12に記載の心臓伝導を操作するための方法。
【請求項14】
前記導入することは、前記ERP及びウェンケバッハ現象を引き起こす前記最も低いペーシングレートのうちの1つに基づいて生物学的薬剤を滴定することによる、請求項12に記載の心臓伝導を操作するための方法。
【請求項15】
心臓結節調節のための遺伝子薬剤を導入するシステムであって、
前記結節内の伝導を遅くするための一回分(bolus)の薬剤を送達するための手段と、
前記結節において伝導が遅くなったのを確認した後に、該結節に前記遺伝子薬剤を送達するための手段と
を備える、心臓結節調節のための遺伝子薬剤を導入するシステム。
【請求項16】
前記一回分の薬剤は、或る用量のアセチルコリン(acotylocholine)を含む、請求項15に記載の心臓結節調節のための遺伝子薬剤を導入するシステム。
【請求項17】
前記遺伝子薬剤は、Kv1、Kv2、Kv3、Kv4及びKv5−9のファミリーのうちの1つから選択される、請求項15に記載の心臓結節調節のための遺伝子薬剤を導入するシステム。
【請求項18】
前記遺伝子薬剤は、AV結節に送達される、請求項15に記載の心臓結節調節のための遺伝子薬剤を導入するシステム。
【請求項19】
バックアップペースメーカが接続され、前記一回分の薬剤及び前記遺伝子薬剤の送達後に起動される、請求項15に記載の心臓結節調節のための遺伝子薬剤を導入するシステム。
【請求項20】
前記バックアップペースメーカは、前記生物学的薬剤の用量が高い場合に起動される、請求項19に記載の心臓結節調節のための遺伝子薬剤を導入するシステム。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−539234(P2008−539234A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508896(P2008−508896)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/013594
【国際公開番号】WO2006/115776
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(591007804)メドトロニック・インコーポレーテッド (243)
【住所又は居所原語表記】710Medtronic Parkway,Minneapolis,Minnesota 55432,U.S.A
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/013594
【国際公開番号】WO2006/115776
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(591007804)メドトロニック・インコーポレーテッド (243)
【住所又は居所原語表記】710Medtronic Parkway,Minneapolis,Minnesota 55432,U.S.A
【Fターム(参考)】
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