説明

BCR−ABL融合遺伝子のRNAi調節およびその使用方法

【課題】p210Bcr−Ablおよびp190Bcr−Ablタンパク質レベルの下方制御を、各Bcr−Abl遺伝子変種を発現するマウス32D細胞で、ヒト白血病MEG−01、K562、およびSUP−B15細胞で、そして、白血病を患うヒト対象から新たに単離された細胞で誘導する短いdsRNAを包含する方法および薬物を提供すること。
【解決手段】本発明は、Bcr−Ablの発現を調節する組成物および方法に関し、より詳細には、RNA干渉を介した、オリゴヌクレオチド、例えば化学的に修飾されたオリゴヌクレオチドによる、Bcr−Abl mRNAおよびBcr−Ablタンパク質のレベルの下方制御に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Bcr−Ablの発現を調節する組成物および方法に関し、より詳細には、
RNA干渉を介した、オリゴヌクレオチド、例えば化学的に修飾されたオリゴヌクレオチ
ドによる、Bcr−Abl mRNAおよびBcr−Ablタンパク質のレベルの下方制
御に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の相互参照)
この出願は、2004年11月24日出願の米国特許仮出願第60/630878号お
よび2004年12月1日出願の米国特許仮出願第60/632403号に基づく優先権
を主張する。これらの仮出願の全内容を本願明細書に援用する。
【0003】
RNA干渉、もしくは「RNAi」は、2本鎖RNA(dsRNA)が線虫の体内に導
入された際に、それが遺伝子発現をブロックすることがあるという観察を説明するのに、
ファイヤー(Fire)および共同研究者らによって最初に造られた用語である(非特許
文献1)。短いdsRNAは、脊椎動物を含めた多くの生物において遺伝子特異的な転写
の後にサイレンシングを引き起こすものであり、遺伝子機能を研究するための新規なツー
ルを提供している。
【0004】
フィラデルフィア染色体(Ph)の発見は、特定のヒト癌を引き起こす最初の一貫した
染色体異常を表した(非特許文献2)。Ph染色体は、9番染色体および22番染色体の
長腕間の相互転座によって生成される(非特許文献3)。これは、慢性骨髄性白血病(C
ML)のほとんどすべての患者、急性リンパ芽球性白血病(ALL)に罹患した成人の約
10〜20%(非特許文献4)、そして急性骨髄性白血病(AML)に罹患した約2%の
患者で起こっている。t(9;22)転座は、22番染色体からのBcr遺伝子と、9番
染色体からのAbl遺伝子とを融合させ、その結果、発癌性のBcr−Abl融合遺伝子
を生じる(非特許文献5)。22番染色体におけるBcr遺伝子中の切断点の相違によっ
て、様々なタンパク質、すなわちp190Bcr−Abl(Mr190000)、p21
Bcr−Abl(Mr210000)、およびp230Bcr−Abl(Mr2300
00)をコードする様々なBcr−Abl融合遺伝子変種の形成が誘導される。CML患
者の約95%でBcr−Abl融合転写産物であるe14a2(以前はb3a2)および
e13a2(以前はb2a2)を検出することができる。(非特許文献6に概説されてい
る)。いずれの場合も、翻訳産物はp210kDのBcr−Ablタンパク質である。P
h+ALLを患っている患者では、Bcr−Abl−ela2と称される、さらに短い形
態の転写産物が優勢である(非特許文献7に概説されている)。この変種の翻訳によって
、いくらか小さいp190Bcr−Ablタンパク質が生じる。両方のBcr−Ablタ
ンパク質、すなわちp190Bcr−Ablタンパク質およびp210Bcr−Abl
ンパク質は、正常なAblタンパク質と比較して、チロシンキナーゼ活性が劇的に増大し
ており、それによって、下流標的分子の異常なリン酸化がもたらされることを特徴として
いる。
【0005】
Bcr−Ablのキナーゼ活性は、特異的なチロシンキナーゼ阻害剤であるメシル酸イ
マチニブ(STI571、グリベック(Glivec))により阻害され、この阻害剤は
、Ph+白血病の治療に有効である(非特許文献8に概説されている)。それにもかかわ
らず、ALL患者及び進行したCML患者のいずれも、初期応答後に主としてBcr−A
blキナーゼドメイン中の点変異またはBcr−Ablの過剰発現などの遺伝子異常によ
って引き起こされる薬物耐性を高い頻度で発生させている(非特許文献9に概説されてい
る)。したがって、Bcr−Ablを阻害する代替的な戦略を開発する重要性が増大して
いる。
【0006】
Bcr−Abl mRNAの切断点は、独特で、かつ白血病に特異的なヌクレオチド配
列を示している。発癌性タンパク質をコードするそのような融合転写産物は、疾病に特異
的なRNAiアプローチの理想的な標的を表している。Bcr−Abl−e14a2転写
産物変種、および他の発癌性融合タンパク質を特異的に分解するためにRNAiを使用す
ることの可能性が最近になって実証されている(非特許文献10乃至16)。Bcr−A
bl特異的なsiRNA処置による、メシル酸イマチニブに対するBcr−Abl発現細
胞の感受性を増大させる作用を、ウィルダらは観測しなかったが、他の研究者はそのよう
な効果を観測したので、提示されている結果は決定的なものではない。したがって、RN
Aiアプローチによって、e14a2転写産物変種以外の2つの重要なBcr−Abl転
写産物(e13a2およびe1a2)の発現を下方制御できるかどうかはこれまでは明ら
かではなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ファイヤーら、Nature、第391巻、806〜811頁、1998年
【非特許文献2】ノウェル ピーシー(Nowell PC)ら、1960年、Science、第132巻、1467頁
【非特許文献3】ローリー ジェイディー(Rowley JD)、1973年、Nature、第243巻、290〜293頁
【非特許文献4】ウェストブルック シーエー(Westbrook CA)ら、1992年、Blood、第80巻、2983頁
【非特許文献5】ハイスターカンプ エヌ(Heisterkamp N)ら、1983年、Nature、第306巻、239頁
【非特許文献6】バーンズ(Barnes)ら、2002年、Acta Haematologica、第108巻、180〜202頁
【非特許文献7】ファダール(Faderl)ら、2003年、Cancer、第98巻、1337頁
【非特許文献8】カーズロック(Kurzrock)ら、2003年、Ann.Intern.Med.第138巻、819頁
【非特許文献9】ロスバーグ(Rothberg)、2003年、Leukemia Res.第27巻、977頁
【非特許文献10】ウィルダ(Wilda)ら、Oncogene、2002年、第21巻、5716頁
【非特許文献11】シェル(Scherr)ら、Blood、2003年、第101巻、1566頁
【非特許文献12】ハイデンライヒ(Heidenreich)ら、Blood、2003年、第101巻、3157頁
【非特許文献13】ヴォールボルト(Wohlbold)ら、Blood、2003年、第102巻、2236頁
【非特許文献14】リッター ユー(Ritter U)ら、Oligonucleotides、2003年、第13巻、365頁
【非特許文献15】リ(Li)ら、Oligonucleotides、2003年、第13巻、401頁
【非特許文献16】チェン ジェー(Chen J)ら、J.Clin.Invest.2004年、第113巻、1784頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、p210Bcr−Ablおよびp190Bcr−Ablタンパク質レベルの下方制御を、各Bcr−Abl遺伝子変種を発現するマウス32D細胞で、ヒト白血病MEG−01、K562、およびSUP−B15細胞で、そして、白血病を患うヒト対象から新たに単離された細胞で誘導する短いdsRNAを包含する方法および薬物を提供することによって、技術を前進させるものである。これらの方法および薬物は、特定の癌の研
究および治療に使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、iRNA薬剤を用いたBcr−Abl融合遺伝子の研究と、Bcr−Abl
切断点変種の融合部位を標的とするiRNA薬剤のさらなる試験とに基づいている。これ
らの新知見に基づいて、本発明は、Bcr−Abl mRNAレベルと、Bcr−Abl
融合タンパク質レベルと、対象、例えば、ヒトなどの哺乳動物における望ましくない細胞
増殖とを低減するのに有用な組成物および方法を提供する。
【0010】
本発明は、表1、薬剤番号1〜6に記載の薬剤のうちの1つにおける少なくとも15の
連続したヌクレオチドからなるか、あるいはそれを含むiRNA薬剤を特に提供する。上
記iRNA薬剤は、1鎖当たり30未満のヌクレオチド、例えば21〜23ヌクレオチド
からなることが好ましい。2本鎖iRNA薬剤は、平滑末端を有することができ、より好
ましくは薬剤の一方または両方の3’末端からの1〜4ヌクレオチドの突出部分(ove
rhang)を有する。
【0011】
さらに、上記iRNA薬剤は、天然に存在するリボヌクレオチドサブユニットだけを含
有するものでもよく、あるいは、上記薬剤に含有されているリボヌクレオチドサブユニッ
トのうちの1つまたは複数の糖または塩基への1つまたは複数の修飾を含有するように合
成されたものでもよい。上記iRNA薬剤は、さらに、上記薬剤の安定性、分配、または
細胞性摂取を改善するように選択されたリガンド、例えばコレステロール、に結合するよ
うに修飾することができる。上記薬剤は、単離形態にあるものでもよく、あるいは本明細
書に記載の方法に使用される医薬組成物の部分であってもよい。
【0012】
本発明は、細胞内のBcr−Abl融合mRNAのレベルを低減する方法をさらに提供
する。この方法は、細胞内のBcr−Abl融合mRNAを選択的に分解するために、R
NA干渉に用いられる細胞機構を利用し、細胞を、本発明のiRNA薬剤の1つと接触さ
せる工程からなる。そのような方法は、細胞に直接的に実施することができ、また、本発
明のiRNA薬剤の1つを対象に投与することによって、哺乳動物対象に実施することも
できる。細胞内のBcr−Abl融合mRNAの減少は、産生されるBcr−Abl融合
タンパク質の量の減少をもたらし、生物体内では、望ましくない細胞増殖の減少をもたら
す可能性があり、また、別の薬剤、例えば細胞増殖抑制性または細胞傷害性の薬剤、例え
ばメシル酸イマチニブまたはγ線照射の活性に対する、増殖中の細胞の感受性を増大させ
る可能性がある。
【0013】
本発明の方法および組成物、例えば方法およびiRNA組成物は、本明細書に記載のい
かなる用量および/または処方でも、また、本明細書に記載のいかなる投与経路でも使用
できる。
【0014】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細を、添付図面および以下の説明に記載する。
本発明の他の特徴、目的、および利点は、この説明、図面、および特許請求の範囲から明
らかになるであろう。引用されたすべての参考文献、特許、および特許出願を、あらゆる
目的に、全体として本願明細書に援用する。
本願発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
配列番号2、6、12、14、16または20のうちの1つにおける15以上の連続したヌクレオチドの配列との相違が1、2、または3ヌクレオチド以下であるアンチセンス鎖からなるiRNA薬剤。
(項目2)
前記アンチセンス鎖が、配列番号2、6、12、14、16または20のうちの1つにおける少なくとも15の連続したヌクレオチドを有する、項目1に記載のiRNA薬剤。
(項目3)
配列番号1、5、11、13、15または19のうちの1つにおける15以上の連続したヌクレオチドの配列との相違が1、2、または3ヌクレオチド以下であるセンス鎖をさらに含む、項目1または2に記載のiRNA薬剤。
(項目4)
配列番号1、5、11、13、15または19のうちの1つにおける15の連続したヌクレオチドの配列を有するセンス鎖をさらに含む、項目1または2に記載のiRNA薬剤。
(項目5)
前記薬剤が薬剤番号3、4、または5のうちの1つである、項目1乃至4のいずれか1項に記載のiRNA薬剤。
(項目6)
前記センス鎖が、薬剤番号3、4、または5のセンス配列における少なくとも15の連続したヌクレオチドを有し、かつ前記アンチセンス鎖が、薬剤番号3、4、または5のアンチセンス配列における少なくとも15の連続したヌクレオチドを有する、項目1に記載のiRNA薬剤。
(項目7)
前記iRNA薬剤が、前記薬剤と共にインキュベーションした後の培養ヒト細胞中に存在するBCR−ABL融合タンパク質レベルの量を、前記薬剤と共にインキュベートされていない細胞と比較して有意に低減し、同細胞が、好ましくは32Dp210/e14a2、32Dp210−T315I、32Dp210−H396P、32Dp210/e13a2、32Dp190/e1a2、M07p210/e14a2、K562、MEG−01、またはSUP−B15であるか、あるいは白血病患者から単離されたものである、項目1乃至6のいずれか1項に記載のiRNA薬剤。
(項目8)
前記アンチセンスRNA鎖の長さが30ヌクレオチド以下であり、かつiRNA薬剤の2本鎖領域の長さが15から30ヌクレオチド対である、項目1乃至7のいずれか1項に記載のiRNA薬剤。
(項目9)
前記iRNA剤に生物試料中での高い安定性を付与する修飾を含んでなる、項目1乃至8のいずれか1項に記載のiRNA薬剤。
(項目10)
ホスホロチオエートまたは2’修飾ヌクレオチドを含む、項目9に記載のiRNA薬剤。
(項目11)
ウリジンが2’修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−ウリジン−アデニン−3’(5’−ua−3’)ジヌクレオチド;5’−ウリジンが2’修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−ウリジン−グアニン−3’(5’−ug−3’)ジヌクレオチド;5’−シチジンが2’修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−シチジン−アデニン−3’(5’−ca−3’)ジヌクレオチド;または5’−ウリジンが2’修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−ウリジン−ウリジン−3’(5’−uu−3’)ジヌクレオチドを含む、項目10に記載のiRNA薬剤。
(項目12)
前記2’修飾ヌクレオチドが、2’−デオキシ、2’−デオキシ−2’−フルオロ、2’−O−メチル、2’−O−メトキシエチル(2’−O−MOE)、2’−O−アミノプロピル(2’−O−AP)、2’−O−ジメチルアミノエチル(2’−O−DMAOE)、2’−O−ジメチルアミノプロピル(2’−O−DMAP)、2’−O−ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’−O−DMAEOE)、および2’−O−N−メチルアセトアミド(2’−O−NMA)からなる群から選択された修飾を含む、項目10または11に記載のiRNA薬剤。
(項目13)
1から4個の不対ヌクレオチドを有するヌクレオチド突出部分を含む、項目1乃至12のいずれか1項に記載のiRNA薬剤。
(項目14)
前記ヌクレオチド突出部分が、2または3個の不対ヌクレオチドを有する、項目13に記載のiRNA薬剤。
(項目15)
前記ヌクレオチド突出部分が、前記iRNA薬剤のアンチセンス鎖の3’末端にある、項目13または14に記載のiRNA薬剤。
(項目16)
リガンドを含む、項目1乃至15のいずれか1項に記載のiRNA薬剤。
(項目17)
前記リガンドが、iRNA薬剤のセンス鎖の3’末端に結合している、項目16に記載のiRNA薬剤。
(項目18)
項目1乃至17のいずれか1項に記載のiRNA薬剤と、
薬学的に許容される担体と
からなる医薬組成物。
(項目19)
対象の細胞内にあるBCR−ABL RNAの量を低減する方法であって、同細胞を、項目1乃至18のいずれか1項に記載のiRNA薬剤と接触させることからなる方法。
(項目20)
項目1乃至17のいずれか1項に記載のiRNA薬剤を作製する方法であって、前記方法は前記iRNA薬剤を合成することからなり、前記センス鎖およびアンチセンス鎖が、ヌクレオチド鎖分解に対してiRNA薬剤を安定化させる少なくとも1つの修飾を含む方法。
(項目21)
増殖性障害を有するか、同増殖性障害を発症する危険性のあるヒトを治療する方法であって、前記方法は項目1乃至17のいずれか1項に記載のiRNA薬剤を投与することからなり、好ましくは、前記iRNA薬剤が、薬剤番号1、2、3、4、5または6のiRNA薬剤のセンス鎖配列における少なくとも15の連続したヌクレオチドを有するセンス鎖と、薬剤番号1、2、3、4、5または6のiRNA薬剤のアンチセンス配列における少なくとも15の連続したヌクレオチドを有するアンチセンス鎖とからなる方法。
(項目22)
前記iRNA薬剤の前記センス鎖が、薬剤番号3、4または5のセンス配列における少なくとも15の連続したヌクレオチドからなり、前記iRNA薬剤の前記アンチセンス鎖が、薬剤番号3、4または5のアンチセンス配列における少なくとも15の連続したヌクレオチドからなる、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記iRNA薬剤の前記センス鎖が、薬剤番号3または4のセンス配列における少なくとも15の連続したヌクレオチドからなり、前記iRNA薬剤の前記アンチセンス鎖が、薬剤番号3または4のアンチセンス配列における少なくとも15の連続したヌクレオチドからなり、前記増殖性障害が慢性骨髄性白血病である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記iRNA薬剤の前記センス鎖が、薬剤番号5のセンス配列における少なくとも15の連続したヌクレオチドからなり、前記iRNA薬剤の前記アンチセンス鎖が、薬剤番号5のアンチセンス配列における少なくとも15の連続したヌクレオチドからなり、前記増殖性障害がPh+急性リンパ芽球性白血病である、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記ヒトの細胞または組織内のBCR−ABL RNAレベルを低下させるのに十分な量で、前記iRNA薬剤が投与される、項目21乃至24のいずれか1項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】約2.5Mioの32Dp210/e13a2細胞を、指示したsiRNAにて24時間間隔で1〜3回エレクトロポレーションした結果を示す図。BAF3/BAF15/BAF17/BAF19:bcr−abl−e13a2−特異的siRNA;BAF9:対照として使用するbcr−abl−e14a2−特異的siRNA;EPC:エレクトロポレーション対照。32Dp210/e13a2中のp210Bcr−ab(e13a2)の、siRNA処理から約24時間後のウェスタンブロット分析。GAPDHのレベルをローディングコントロールとして使用。レーン1:EPC、レーン2:BAF9、レーン3:BAF3、レーン4:BAF15、レーン5:BAF17、レーン6:BAF19。
【図1B】約2.5Mioの32Dp210/e13a2細胞を、指示したsiRNAにて24時間間隔で1〜3回エレクトロポレーションした結果を示す図。BAF3/BAF15/BAF17/BAF19:bcr−abl−e13a2−特異的siRNA;BAF9:対照として使用するbcr−abl−e14a2−特異的siRNA;EPC:エレクトロポレーション対照。siRNA BAF15ならびにBAF19で長時間処理すると、32Dp210/e13a2細胞で生存率の低下が生じた。指示した回数でsiRNA処理して約40時間後、細胞の生存率をMTTによって測定した。値は、3連の平均値±SDである。
【図2A】約5Mioの32Dp190/e13a2細胞を、指示したsiRNAにて24時間間隔で2回エレクトロポレーションした結果を示す図。BAF22/BAF24:bcr−abl−e1a2−特異的siRNA;BAF9:対照として使用するbcr−abl−e14a2−特異的siRNA;BAF19:対照として使用するbcr−abl−e13a2−特異的siRNA;EPC:エレクトロポレーション対照。32Dp190/e1a2細胞中のp190Bcr−abl(e1a2)の、2回目のsiRNA処理から約24時間後のウェスタンブロット分析。ローディングコントロールとして使用したGAPDHのレベル。レーン1:EPC、レーン2:BAF9、レーン3:BAF19、レーン4:BAF22、レーン5:BAF24。
【図2B】約5Mioの32Dp210/e13a2細胞を、指示したsiRNAにて24時間間隔で2回エレクトロポレーションした結果を示す図。BAF22/BAF24:bcr−abl−e1a2−特異的siRNA;BAF9:対照として使用するbcr−abl−e14a2−特異的siRNA;BAF19:対照として使用するbcr−abl−e13a2−特異的siRNA;EPC:エレクトロポレーション対照。siRNA BAF22で繰り返し処理すると、32Dp190/e1a2細胞で生存率の低下が生じた。2回目のsiRNA処理から約40時間後、細胞の生存率をMTTによって測定した。値は、3連の平均値±SDである。
【図3】ヒトB細胞前駆体白血病細胞株SUP−B15細胞(ACC389、DSMZ[ブラウンシュワイク所在]、切断点変種e1a2)を、e1a2特異的siRNA(BAF22)または対照として他の切断点変種(BAF19、e13a2に特異的)に対して指向するsiRNAで処理した結果を示す図。24時間間隔で3回BAF22処理すると、エレクトロポレーション対照(EPC)またはBAF19対照と比較してp190Bcr−Ablタンパク質レベルの著しい減少が生じた。
【図4】新たに診断された、未治療のフィラデルフィア染色体陽性bcr−abl−e14a2陽性慢性型CML患者3人から、フィコールハイパック密度勾配遠心およびアフィニティーカラム精製によって単離されたCD34陽性細胞を、siRNA BAF7(e14a2特異的、患者1)、BAF8(ミスマッチ対照、患者1)、BAF12(e14a2特異的、患者2+3)およびBAF16(e13a2特異的、患者2+3)で処理した結果を示す図。細胞を増殖培地800μlで密度2.5×10個に希釈し、4mmエレクトロポレーションキュベット内でそれぞれのsiRNAの50μM溶液12.8μlと混合し、シングルパルス法(250V、1800μF)を使用してエレクトロポレーションした。この処理を24時間後に繰り返し、細胞を洗浄して、さらに24時間インキュベートして、ウェスタンブロット分析のために収集した。BAF7またはBAF12処理したものは、ミスマッチ対照(BAF8)またはe13a2(BAF16)に相同なsiRNAで処理した細胞と比較してBcr−Ablタンパク質レベルの著しい減少が生じた。さらに、BAF12処理はBcr−Abl活性を損なわせた。Bcr−Ablのすぐ下流の基質であるCRKLのリン酸化は、BAF12で処理した細胞では著しく減少した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
解説を容易にするために、本明細書では時として、「ヌクレオチド」または「リボヌク
レオチド」という用語を、RNA薬剤の1つまたは複数の単量体サブユニットに関して使
用する。本明細書では、「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」という用語の使用
は、修飾RNAまたはヌクレオチド代替物に関する場合、以下でさらに記載するように、
1つまたは複数の位置における、修飾ヌクレオチドまたは代替置換部分も指すことがある
と理解されよう。
【0017】
本明細書で使用される場合、「RNA薬剤」は、無修飾RNA、修飾RNA、またはヌ
クレオシド代替物であり、これらはすべて本明細書に記載されているか、もしくはRNA
合成技術分野でよく知られている。多数の修飾RNAおよびヌクレオチド代替物が記載さ
れているが、好ましいものの例には、ヌクレアーゼ分解に対して、無修飾RNAが有する
ものより大きな抵抗性を有するものが含まれる。好ましいものの例には、2’糖修飾、単
一鎖突出部分内、好ましくは3’単一鎖突出部分内の修飾、あるいは、特に一本鎖の場合
、1つもしくは複数のリン酸基または1つもしくは複数のリン酸基類似体を含有する5’
修飾を有するものが含まれる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「iRNA薬剤」(「干渉RNA薬剤」の略)は、標的遺
伝子、例えばBcr−Abl融合遺伝子の発現を下方制御できるRNA薬剤である。理論
に拘泥するものではないが、iRNA薬剤は、当技術分野では時にRNAiと呼ばれる標
的mRNAの転写後の切断、または転写前もしくは翻訳前の機構を含めた多数の機構のう
ちの1つまたは複数によって作用し得る。iRNA薬剤は、2本鎖iRNA薬剤であり得
る。
【0019】
「ds iRNA薬剤」(「2本鎖iRNA薬剤」の略)は、本明細書で使用される場
合、複数、好ましくは2本の鎖を含み、その中で鎖間ハイブリダイゼーションが2本鎖構
造領域を形成できるiRNA薬剤である。本明細書では、「鎖」は、連続したヌクレオチ
ド(天然には存在しないヌクレオチドおよび修飾ヌクレオチドも含まれる)の配列を指す
。2本以上の鎖が別々の分子であっても、それらの各鎖が別々の分子の一部を形成しても
よく、また、それらが、例えばリンカー、例えばポリエチレングリコールリンカーによっ
て共有結合で相互連結され、1分子のみを形成していてもよい。少なくとも1本の鎖は、
標的RNAに十分に相補的な領域を含むものであり得る。そのような鎖は「アンチセンス
鎖」と称される。アンチセンス鎖に相補的な領域を含むdsRNA薬剤中に含まれている
第2の鎖は「センス鎖」と称されている。しかしながら、ds iRNA薬剤は、少なく
とも一部が自己相補的であり、2本鎖領域を含む、例えばヘアピンまたはフライパンハン
ドル構造を形成する単一のRNA分子から形成されていてもよい。そのような場合、「鎖
」という用語は、同一RNA分子の別の領域に相補的なRNA分子の領域の1つを指す。
【0020】
哺乳動物細胞では、長いds iRNA薬剤によってインターフェロン応答が誘導され
ることがあり、それがしばしば有害であるが、短いds iRNA薬剤は、インターフェ
ロン応答を、少なくとも細胞および/または宿主に有害となる程度までには誘導しない(
マンシュ エル(Manche,L.)ら、Mol.Cell Biol.1992年、
第12巻、5238頁;リー エスビー(Lee,SB)、エステバン エム(Este
ban,M)、Virology、1994年、第199巻、491頁;キャステリ ジ
ェーシー(Castelli,JC)ら、J.Exp.Med.1997年、第186巻
、967頁;チェン エックス(Zheng、X.)、ベビラクア ピーシー(Bevi
lacqua,PC)、RNA、2004年、第10巻、1934頁;ハイデル(Hei
del)ら、「Lack of interferon response in an
imals to naked siRNAs」、Nature Biotechn.先
行オンライン出版、2004年11月21日、doi:10.1038/nbt1038
)。本発明のiRNA薬剤は、十分に短い分子を含有しており、それらは正常な哺乳動物
細胞で有害な非特異的インターフェロン応答を誘発しない。したがって、対象へのiRN
A薬剤組成物(例えば本明細書に記載の通り製剤されたもの)の投与を用いて、インター
フェロン応答、特にBcr−Ablを発現しない他の細胞による応答を回避しながら、上
記対象に含まれているBcr−Abl発現細胞におけるBcr−Abl融合遺伝子の発現
をサイレンシングすることができる。十分に短くて、有害なインターフェロン応答を誘発
しない分子を、本明細書では、siRNA薬剤またはsiRNAと称する。「siRNA
薬剤」または「siRNA」は、本明細書で使用される場合、十分に短くて、ヒト細胞で
有害なインターフェロン応答を誘導しないiRNA薬剤、例えばds iRNA薬剤を指
し、それは例えば60ヌクレオチド対未満、好ましくは50、40、または30ヌクレオ
チド対未満の2本鎖領域を有する。
【0021】
ds iRNA薬剤およびsiRNA薬剤を含めた、本明細書に記載の単離されたiR
NA薬剤は、例えばRNA分解によるBcr−Abl融合遺伝子のサイレンシングを媒介
することができる。便宜のために、そのようなRNAは、本明細書では、サイレンシング
されるRNAとも称される。そのような遺伝子は、標的遺伝子とも称される。サイレンシ
ングされるRNAは、内因性Bcr−Abl融合遺伝子の遺伝子産物であることが好まし
い。
【0022】
本明細書で使用される場合、「RNAiを媒介する」という用語は、薬剤が標的遺伝子
を配列特異的な様式でサイレンシングする能力を指す。「標的遺伝子をサイレンシングす
る」とは、それによって、上記薬剤に接触していないときに標的遺伝子の特定の産物を含
有および/または分泌する細胞が、上記薬剤に接触しているときに、上記薬剤に接触して
いない同様な細胞と比較して、そのような遺伝子産物を少なくとも10%、20%、30
%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%少なく含有および/または
分泌するであろう過程を意味する。標的遺伝子のそのような産物は、例えば、メッセンジ
ャーRNA(mRNA)、タンパク質、または調節エレメントであり得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、「相補的」という用語は、本発明の化合物と標的RNA分
子、例えばBcr−Abl融合mRNA分子との間で安定かつ特異的な結合が生じるのに
十分な程度の相補性を示すのに使用される。特異的な結合は、特異的な結合が望ましい条
件下で、すなわちインビボアッセイまたは治療処置の場合には生理条件下で、あるいはイ
ンビトロアッセイの場合ではアッセイが実施される条件下で、非標的配列へのオリゴマー
化合物の非特異的結合を回避するのに十分な程度の相補性を必要とする。非標的配列は、
通常、少なくとも4ヌクレオチドの相違を有する。
【0024】
本明細書で使用される場合、iRNA薬剤が標的RNA、例えば標的mRNA(例えば
標的Bcr−Abl融合mRNA)に「十分に相補的である」のは、上記iRNA薬剤に
よって、細胞内での、上記標的RNAによってコードされたタンパク質の産生が減少する
場合である。上記iRNA薬剤は、標的RNAに「正確に相補的」であってもよく、例え
ば上記標的RNAと上記iRNA薬剤とがアニールするものでもよい。正確に相補的な領
域では、ワトソンクリック塩基対のみでハイブリット形成されていることが好ましい。「
十分に相補的な」iRNA薬剤は、標的Bcr−Abl融合RNAに正確に相補的な内部
領域(例えば少なくとも10ヌクレオチド)を含み得る。さらに、一部の実施形態では、
上記iRNA薬剤が単一ヌクレオチドの相違を特異的に識別する。この場合、上記iRN
A薬剤は、単一ヌクレオチド相違の(例えば7ヌクレオチド以内の)領域で正確な相補性
が存在する場合にのみRNAiを媒介する。好ましいiRNA薬剤は、表1、薬剤番号1
〜6に示すセンス配列およびアンチセンス配列に基づいているか、もしくはそれからなる
か、もしくはそれを含むであろう。
【0025】
本明細書での使用において、「本質的には同一」は、第2のヌクレオチド配列と比較し
て第1のヌクレオチド配列に関して使用される場合、最大1、2、または3ヌクレオチド
までの置換(例えばアデノシンがウラシルで置換されている)を除いて、第1のヌクレオ
チド配列が第2のヌクレオチド配列に同一であることを意味する。「培養ヒトBcr−A
bl発現細胞でBcr−Abl融合体発現を阻害する能力を本質的に保持している」とい
うことは、ヌクレオチドの欠失、添加または置換によって、表1、薬剤番号1〜6のiR
NA薬剤のうちの1つに同一ではないが、それに由来するiRNA薬剤に関して本明細書
で使用される場合、それが由来した表1、薬剤番号1〜6のiRNA薬剤との比較におけ
る、得られたiRNA薬剤の阻害活性の低下が20%阻害以下であることを意味する。例
えば、培養ヒトBcr−Abl発現細胞中に存在するBcr−Abl融合mRNAの量を
70%低下させる、表1、薬剤番号1〜6のiRNA薬剤に由来するiRNA薬剤は、培
養ヒトBcr−Abl発現細胞中でBcr−Abl融合体発現を阻害する能力を本質的に
保持しているものとみなされるためには、それ自体が、培養ヒトBcr−Abl発現細胞
中に存在するBcr−Abl融合mRNAの量を少なくとも50%低下させなければなら
ない。選択的に、本発明のiRNA薬剤は、培養ヒトBcr−Abl発現細胞中に存在す
るBcr−Abl融合mRNAの量を少なくとも50%低下させるものでもよい。
【0026】
本明細書で使用される場合、「対象」は、Bcr−Abl融合タンパク質発現によって
媒介された障害の治療を受けている哺乳類生物を指す。対象は、ウシ、ウマ、マウス、ラ
ット、イヌ、ブタ、ヤギ、または霊長類など、いかなる哺乳動物でもよい。好ましい実施
形態では、対象はヒトである。
【0027】
本明細書で使用される場合、Bcr−Abl融合発現に関連した障害は、1)Bcr−
Abl融合タンパク質の存在によって一部媒介され、かつ2)存在しているBcr−Ab
l融合タンパク質のレベルを低減することによって結果に影響を与えることができるいか
なる生物学的または病理学的状態も指す。Bcr−Abl融合発現に関連した特定の障害
について以下に述べる。
(1 iRNA薬剤の設計および選択)
【0028】
【表1】


本発明は、iRNA薬剤でインキュベートした後の培養細胞における、インビトロでの
Bcr−Abl融合遺伝子サイレンシング、およびその結果である細胞増殖の低減の実証
に基づいている。
【0029】
配列情報と望ましい特徴とに基づいて、iRNA薬剤を合理的に設計することができる
。例えば、候補となる2本鎖の相対的融解温度に従ってiRNA薬剤を設計することがで
きる。通常、2本鎖は、アンチセンス鎖の3’末端より、アンチセンス鎖の5’末端で、
より低い融解温度を有するはずである。
【0030】
また、例えば、標的遺伝子として働くであろう遺伝子の遺伝子歩行分析を行うことによ
っても、候補となるiRNA薬剤を設計することができる。転写領域のすべてまたは一部
に相当する、オーバーラップ、隣接、または近接した候補薬剤を生成させ、試験すること
ができる。各iRNA薬剤を、標的遺伝子発現を下方制御する能力に関して試験および評
価することができる(下記、「候補となるiRNA薬剤の評価」を参照)。
【0031】
ここでは、Bcr−Abl融合体変種であるBcr−Abl−e14a2、Bcr−A
bl−e13a2、およびBcr−Abl−e1a2を標的とした潜在的iRNA薬剤を
、それぞれの融合部位の既知配列(非特許文献6及び7)を用いて設計した。得られた結
果に基づいて、本発明は、これらのBcr−Abl融合遺伝子切断点変種をサイレンシン
グするiRNA薬剤を提供する。
【0032】
表1は、Bcr−Abl融合体、詳細には薬剤番号1〜6を標的とする活性iRNA薬
剤を提示する。下記の実施例に示す通り、表1、薬剤番号1〜6のiRNA薬剤は、これ
らの薬剤と共にインキュベーションした後の培養ヒトBcr−Abl発現細胞中に存在す
るBcr−Abl融合mRNAの量を、上記薬剤と共にインキュベートされていない細胞
と比較して50%超(そして一部の薬剤では80%超)低減し、かつ/または培養ヒトB
cr−Abl発現細胞によって細胞培養上清中に分泌されるBcr−Abl融合タンパク
質の量を50%超低減するという長所および驚くべき能力を有する。
【0033】
これらの結果に基づいて、本発明は、表1、薬剤番号1〜6に示されている薬剤のセン
ス鎖配列における少なくとも15の連続したヌクレオチドを有するセンス鎖と、表1、薬
剤番号1〜6に示されている薬剤のアンチセンス鎖配列における少なくとも15の連続し
たヌクレオチドを有するアンチセンス鎖とを含有するiRNA薬剤を特にに提供する。
【0034】
表1に示したiRNA薬剤は、長さ21ヌクレオチドのセンス鎖と、長さ23ヌクレオ
チドのアンチセンス鎖とで構成されており、本発明は、これらの薬剤からの15の連続し
たヌクレオチドを含む薬剤を提供する。しかしながら、これらの長さは潜在的に最適であ
り得るが、上記iRNA薬剤はこれらの長さに限定されない。長さが特定の範囲内である
場合には、有効性は鎖の長さより、むしろヌクレオチド配列の関数であるので、当業者は
、より短いiRNA薬剤またはより長いiRNA薬剤も同様に有効であり得ることを十分
に認識している。例えば、ヤン ディ(Yang,D.)ら(PNAS、2002年、第
99巻、9942〜9947頁)は、長さが21塩基対と30塩基対との間にあるiRN
A薬剤が同様な効力を有することを実証した。他では、長さ約15塩基対にまで短くした
iRNA薬剤による効果的な遺伝子サイレンシングが示されている(バイロム ダブリュ
.エム.(Byrom,W.M.)ら、「Inducing RNAi with si
RNA Cocktails Generated by RNase III」、Te
ch Notes、第10(1)巻、アンビオン社(Ambion,Inc.)、米国テ
キサス州オースティン(Austin)所在)。
【0035】
したがって、表1、薬剤番号1〜6に提示した配列の1つに由来するiRNA薬剤を産
生するために、表1、薬剤番号1〜6に提示した配列から、15〜22ヌクレオチドの間
の部分配列を選択することが可能であり、かつ本発明で企図されている。代替的に、表1
、薬剤番号1〜6に提示した配列の1つ、またはこれらの薬剤の1つからの15の連続し
たヌクレオチド、からなる薬剤に1個または数個のヌクレオチドを添加してもよい。この
場合、必須ではないが、添加されたヌクレオチドが標的遺伝子、例えばBcr−Abl融
合体のそれぞれの配列に相補的となるような様式が好ましい。例えば、上記薬剤の1つに
おける最初の15ヌクレオチドを、Bcr−Abl融合mRNAでこれらの配列の5’側
にある8ヌクレオチドと連結させて、センス鎖およびアンチセンス鎖に23ヌクレオチド
を有する薬剤を得ることができる。このようにして派生するすべてのiRNA薬剤もそれ
らが培養ヒトBcr−Abl発現細胞におけるBcr−Abl融合発現を阻害する能力を
本質的に保持するという場合には、本発明のiRNA薬剤に含まれる。
【0036】
iRNA薬剤のアンチセンス鎖は、長さが14、15、16、17、18、19、25
、29、40または50ヌクレオチド以上であるべきである。上記アンチセンス鎖は、長
さが60、50、40、または30ヌクレオチド以下であるべきである。好ましい長さの
範囲は、15〜30、17〜25、19〜23、および19〜21ヌクレオチドである。
【0037】
iRNA薬剤のセンス鎖は、長さが14、15、16、17、18、19、25、29
、40または50ヌクレオチド以上であるべきである。上記センス鎖は、長さが60、5
0、40または30ヌクレオチド以下であるべきである。好ましい長さの範囲は、15〜
30、17〜25、19〜23、および19〜21ヌクレオチドである。
【0038】
iRNA薬剤の2本鎖部分は、長さが15、16、17、18、19、20、21、2
2、23、24、25、29、40または50ヌクレオチド対以上であるべきである。上
記2本鎖部分は、長さが60、50、40または30ヌクレオチド対以下であるべきであ
る。好ましい長さの範囲は、15〜30、17〜25、19〜23、および19〜21ヌ
クレオチド対である。
【0039】
通常、本発明のiRNA薬剤は、それぞれのBcr−Abl融合遺伝子と十分な相補性
を有する領域を含み、上記iRNA薬剤またはその断片がBcr−Abl融合遺伝子の下
方制御を媒介できる十分なヌクレオチドの長さを有する。表1、薬剤番号1〜6のiRN
A薬剤のアンチセンス鎖は、それぞれのBcr−Abl融合遺伝子のmRNA配列に完全
に相補的であり、それらのセンス鎖は、上記アンチセンス鎖上の2つの3’末端ヌクレオ
チドを除いて、上記アンチセンス鎖に完全に相補的である。しかしながら、上記iRNA
薬剤と上記標的との間に完全な相補性が存在している必要はなく、但し、それらの対応性
は、上記iRNA薬剤またはそれの切断産物が、例えばBcr−Abl融合mRNAのR
NAi切断による配列特異的なサイレンシングを誘導するのを可能にするのに十分でなけ
ればならない。
【0040】
したがって、本発明のiRNA薬剤には、培養ヒトBcr−Abl発現細胞におけるB
cr−Abl発現を阻害する能力を本質的に保持しながら、それぞれ、鎖当たり1、2、
または3つ以下のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換されている(例えばアデノシン
がウラシルで置換されている)ことを除いて、下記に定義する通り、それぞれが、表1、
薬剤番号1〜6の配列の1つに本質的に同一である少なくとも16、17または18ヌク
レオチドの配列からなるセンス鎖およびアンチセンス鎖からなる薬剤が含まれる。したが
って、これらの薬剤は、表1、薬剤番号1〜6の配列の1つに同一であるが、標的Bcr
−Abl融合mRNA配列に関して、もしくはセンス鎖とアンチセンス鎖との間に、1、
2または3塩基のミスマッチが導入されている少なくとも15ヌクレオチドを有している
であろう。標的Bcr−Abl融合mRNA配列とのミスマッチ、特にアンチセンス鎖に
おけるミスマッチは、末端領域で最もよく許容され、存在する場合には、1箇所または複
数の端末領域内、例えば5’および/または3’末端の6、5、4、または3ヌクレオチ
ド以内にあることが好ましく、センス鎖の5’末端またはアンチセンス鎖の3’末端の6
、5、4、または3ヌクレオチド以内にあることが最も好ましい。上記センス鎖は、分子
の全体的な2本鎖特性を維持するのに十分なだけアンチセンス鎖に相補的であればよい。
【0041】
上記センス鎖およびアンチセンス鎖は、上記iRNA薬剤が、その分子の一端または両
端に単一鎖または不対領域を含有するように選択されることが好ましい。したがって、i
RNA薬剤は、好ましくは突出部分(overhang)、例えば1または2つの5’ま
たは3’突出部分、但し好ましくは2〜3ヌクレオチドの3’突出部分1つを含有するよ
うに対合したセンス鎖およびアンチセンス鎖を含有する。ほとんどの実施形態は3’突出
部分を有するであろう。好ましいsiRNA薬剤は、上記iRNA薬剤の一端または両端
に長さが1〜4ヌクレオチド、好ましくは2または3ヌクレオチドの1本鎖の突出部分、
好ましくは3’突出部分を有するであろう。上記突出部分は、一方の鎖がもう一方より長
い結果、または同じ長さの2本の鎖がずれている結果であり得る。5’末端はリン酸化さ
れていることが好ましい。
【0042】
2本鎖領域の好ましい長さは、15から30ヌクレオチドの間、最も好ましくは18、
19、20、21、22および23ヌクレオチドの長さ、例えば上記に論じたsiRNA
薬剤の範囲である。siRNA薬剤は、長いdsRNAからの天然Dicer調製物に長
さおよび構造が類似したものでよい。siRNA薬剤の2本の鎖が、例えば共有結合によ
って、連結されている実施形態も含まれる。ヘアピン構造、または必要な2本鎖領域と、
好ましくは3’突出部分とを提供する他の1本鎖構造も本発明に包含される。
(2 候補となるiRNA薬剤の評価)
候補となるiRNA薬剤を、それが標的遺伝子発現を下方制御する能力に関して評価す
ることができる。例えば、候補となるiRNA薬剤を用意し、標的遺伝子、例えばBcr
−Abl融合遺伝子を内因的に発現するか、あるいはBcr−Abl融合タンパク質をそ
れから発現することができるコンストラクトでトランスフェクションされていることによ
って発現する細胞に接触させることができる。上記候補となるiRNA薬剤との接触の前
および後の標的遺伝子発現のレベルを、例えばmRNAまたはタンパク質レベルで比較す
ることができる。標的遺伝子から発現されたRNAまたはタンパク質の量が、上記iRN
A薬剤と接触した後に低下していると判定された場合、上記iRNA薬剤が標的遺伝子発
現を下方制御すると結論付けることができる。細胞中の標的Bcr−Abl融合RNAま
たはBcr−Abl融合タンパク質のレベルは、いかなる望ましい方法でも測定できる。
例えば、標的RNAのレベルは、ノーザンブロット解析、逆転写連結ポリメラーゼ連鎖反
応(RT−PCR)、またはRNアーゼプロテクションアッセイで測定することができる
。タンパク質のレベルは、例えば、ウェスタンブロット解析または免疫蛍光によって測定
することができる。
(iRNA薬剤の安定性試験、修飾、および再試験)
候補となるiRNA薬剤を、そのiRNA薬剤が対象の体内に導入された際などの安定
性、例えばエンドヌクレアーゼまたはエクソヌクレアーゼによる切断に対する感受性に関
して評価することができる。同方法は、修飾、特に切断、例えば対象の体内に存在する成
分による切断の影響を受けやすい部位を同定する方法を利用することができる。
【0043】
切断の影響を受けやすい部位が同定された場合、例えば切断部位への2’修飾、例えば
2’−O−メチル基の導入によって、上記潜在的切断部位が切断に抵抗性を有するように
作製された、さらなるiRNA薬剤を設計および/または合成することができる。このさ
らなるiRNA薬剤を、安定性に関して再試験することができ、あるiRNA薬剤が望ま
しい安定性を示すことが見出されるまで、この工程を繰り返すことができる。
(インビボ試験)
Bcr−Abl融合遺伝子発現を阻害できるものとして同定されたiRNA薬剤を、動
物モデル(例えばマウスまたはラットなどの哺乳動物)中でのインビボでの機能に関して
試験することができる。例えば、上記iRNA薬剤を動物に投与して、その生体内分布、
安定性、およびそれがBcr−Abl融合遺伝子発現を阻害する能力または望ましくない
細胞増殖を低減する能力に関して評価することができる。
【0044】
上記iRNA薬剤は、注射などによって標的組織に直接投与することができ、あるいは
上記iRNA薬剤を、それがヒトに投与されるのと同じ様に動物モデルに投与することも
できる。
【0045】
上記iRNA薬剤を細胞内分布に関して評価することもできる。この評価には、上記i
RNA薬剤が細胞内に摂取されたかどうかの判定も含めることができる。この評価には、
上記iRNA薬剤の安定性(例えば半減期)の測定も含めることができる。iRNA薬剤
のインビボ評価は、追跡可能なマーカー(例えば、フルオレセインなどの蛍光マーカー:
35S、32P、33P、もしくはHなどの放射性標識;金粒子;または免疫組織化学
用抗原粒子)に結合したiRNA薬剤の使用によって容易に行うことができる。
【0046】
上記iRNA薬剤を、それがBcr−Abl融合遺伝子発現を下方制御する能力に関し
て評価することができる。インビボでのBcr−Abl融合遺伝子発現のレベルは、例え
ば、in situハイブリダイゼーション、または上記iRNA薬剤への組織の曝露の
前および後における同組織からのRNAの単離によって測定することができる。組織を採
取するために動物を屠殺する必要がある場合、未処置のコントロール動物が比較対象とな
ろう。標的Bcr−Abl融合mRNAは、限定されるものではないが、RT−PCR、
ノーザンブロット、分岐DNAアッセイ、またはRNアーゼプロテクションアッセイを含
めたいかなる望ましい方法でも検出することができる。代替的又は付随的に、上記iRN
A薬剤で処置された組織抽出物のウェスタンブロット解析を行うことによって、Bcr−
Abl融合遺伝子発現をモニタリングすることもできる。
【0047】
特定の望ましい効果を実現するのに必要な濃度(例えばEC50)を確定するのに、動
物モデルを用いることができる。そのような動物モデルには、ヒト遺伝子、例えば標的ヒ
トBcr−Abl融合RNAを産生する遺伝子を発現するトランスジェニック動物が含ま
れ得る。別の実施形態では、試験用の組成物は、少なくとも内部領域において、動物モデ
ルにおける標的Bcr−Abl融合RNAと、ヒトにおける標的Bcr−Abl融合RN
Aとの間で保存されている配列に相補的なiRNA薬剤を含有できる。
(3 iRNA化学)
ここでは、RNAiを媒介して、Bcr−Abl融合遺伝子の発現を阻害する単離され
たiRNA薬剤、例えばdsRNA薬剤について述べる。
【0048】
ここで論じるRNA薬剤には、他には無修飾のRNAに加えて、例えば効力を向上させ
るために修飾されたRNA、およびヌクレオチド代替物のポリマーも含まれる。無修飾の
RNAは、その中で、核酸成分、すなわち、糖、塩基、およびリン酸部分が天然に存在し
ているもの、好ましくはヒト体内に生来的に存在しているものと同じであるか、もしくは
本質的に同じである分子を指す。当技術分野は、まれであるか、もしくは一般的でないが
、天然に存在するRNAを修飾RNAと称することがある。例えば、リンバッハ(Lim
bach)ら(1994年)、Nucleic Acids Res.第22巻、218
3〜2196頁を参照されたい。しばしば修飾RNAと称される(明らかに、それらが通
常は転写後修飾の結果であるため)、そのようなまれであるか、もしくは一般的でないR
NAは、本明細書で使用される場合、無修飾RNAという用語の範囲内にある。本明細書
で使用される場合、修飾RNAは、その中で、1つまたは複数の核酸成分、すなわち、糖
、塩基、およびリン酸部分が、天然に存在しているもの、好ましくはヒト体内に生来的に
存在しているものと異なる分子を指す。それらは修飾「RNA」と称されるが、それらに
は修飾によりRNAではない分子も当然ながら含まれる。ヌクレオチド代替物は、その中
で、ハイブリダイゼーションが実質的にリボリン酸骨格で見られるものと類似するように
、それらの塩基の正しい空間的関係での提示が可能となっている非リボリン酸骨格構造物
、例えばリボリン酸骨格の非荷電模倣体で、リボリン酸骨格が置換されている分子である
。上記のすべての例が本明細書に論じられている。
【0049】
本明細書に記載の修飾は、本明細書に記載のいかなる2本鎖RNAおよびRNA様分子
、例えばiRNA薬剤にも組み入れら得る。上記修飾は、iRNA薬剤のアンチセンス鎖
およびセンス鎖の一方または両方を修飾することが望ましい。核酸が重合体のサブユニッ
トまたは単量体である場合には、下記の修飾の多くは核酸中で反復される位置で起こり、
例えば、塩基もしくはリン酸部分、またはリン酸部分の非結合性Oの修飾である。一部の
場合には、上記修飾が核酸中の対象となる位置のすべてで起こるであろうが、多くの場合
、そして実際にはほとんどの場合には、そうならないであろう。一例として、修飾は、3
’または5’末端位置でのみ起こることもあり、あるいは末端領域、例えば鎖の末端ヌク
レオチドの位置または最終2、3、4、5、または10ヌクレオチドでのみ起こることも
ある。修飾は、2本領域に起こっても、1本鎖領域に起こっても、あるいはそれら両方に
起こってもよい。例えば、非結合性Oの位置でのホスホロチオエート修飾は、一方または
両方の末端で起こることも、あるいは末端領域、例えば鎖の末端ヌクレオチドの位置また
は最終2、3、4、5、または10ヌクレオチドでのみ起こることも、あるいは2本鎖お
よび1本鎖領域、特に末端で起こることもある。同様に、修飾は、センス鎖で起こること
も、アンチセンス鎖で起こることも、それら両方で起こることもある。一部の場合には、
センス鎖およびアンチセンス鎖が同じ修飾または同じクラスの修飾を有するであろう。し
かしながら、他の場合には、センス鎖およびアンチセンス鎖は異なった修飾を有するであ
ろう。例えば、一部の場合には、一方の鎖、例えばセンス鎖のみを修飾することが望まし
い場合がある。
【0050】
iRNA薬剤に修飾を導入する2つの主要な目的は、生物学的環境における分解に対す
るそれらの安定化、および下記に詳細に論じる薬理学的特性、例えば薬動力学的特性の改
良である。iRNA薬剤の糖、塩基、または骨格への他の適当な修飾は、共有されている
2004年1月16日出願の国際出願第PCT/US2004/01193号パンフレッ
トに記載されている。iRNA薬剤は、共有されている2004年4月16日出願の国際
出願第PCT/US2004/011822号パンフレットに記載の塩基のような天然に
存在しない塩基を含有することもできる。iRNA薬剤は、非糖質環状担体分子のような
天然に存在しない糖を含むこともできる。iRNA薬剤で使用する天然に存在しない糖の
例示的特性は、共有されている2003年4月16日出願の国際出願第PCT/US20
04/11829号パンフレットに記載されている。
【0051】
iRNA薬剤は、ヌクレアーゼ抵抗性の増強に有用なヌクレオチド間結合(例えばキラ
ルホスホロチオエート結合)を含有できる。付随的に、又は代替的に、ヌクレアーゼ抵抗
性を増強させるために、iRNA薬剤にリボース摸倣体を含有させることができる。ヌク
レアーゼ抵抗性を増強させるための例示的ヌクレオチド間結合およびリボース模倣体は、
共有されている2004年3月8日出願の国際出願第PCT/US2004/07070
号パンフレットに記載されている。
【0052】
iRNA薬剤は、リガンド結合単量体サブユニットおよびオリゴヌクレオチド合成用の
単量体を含有できる。例示的な単量体は、共有されている2004年8月10日出願の米
国特許出願第10/916185号明細書に記載されている。
【0053】
iRNA薬剤は、共有されている2004年3月8日出願の国際出願第PCT/US2
004/07070号パンフレットに記載されているようなZXY構造を有することがで
きる。
【0054】
iRNA薬剤は、両親媒性部分と複合体形成され得る。iRNA薬剤と共に使用するた
めの例示的な両親媒性部分は、共有されている2004年3月8日出願の国際出願第PC
T/US2004/07070号パンフレットに記載されている。
【0055】
別の実施形態では、iRNA薬剤は、モジュール複合体の特性を有する送達薬剤と複合
体形成され得る。この複合体は、(a)濃縮剤(例えば、核酸を、例えばイオンまたは静
電気相互作用を介して、誘引、例えば結合できる薬剤);(b)融合誘導剤(例えば、細
胞膜に融合し、かつ/またはそれを通って輸送される性能を有する薬剤):および、(c
)標的化化学基、例えば細胞または組織標的化剤、例えば特定の細胞型に結合するレクチ
ン、糖タンパク、脂質、またはタンパク質(例えば抗体)、のうちの1つまたは複数(好
ましくは2つ以上、より好ましくは3つすべて)に結合される担体物質を含み得る。送達
物質と複合体形成されるiRNA薬剤は、共有されている2004年3月8日出願の国際
出願第PCT/US2004/07070号パンフレットに記載されている。
【0056】
iRNA薬剤は、iRNA2本鎖のセンス配列とアンチセンス配列との間などに、非標
準的な対合を備え得る。非標準的なiRNA薬剤の例示的特徴は、共有されている200
4年3月8日出願の国際出願第PCT/US2004/07070号パンフレットに記載
されている。
(ヌクレアーゼ抵抗性の強化)
iRNA薬剤、例えばBcr−Abl融合体を標的とするiRNA薬剤は、同薬剤が有
するヌクレアーゼ抵抗性を強化することができる。
【0057】
抵抗性を強化する方法の1つは、共有されている同時係属中の出願である米国特許仮出
願第60/574744号明細書および国際出願第PCT/US2005/018931
号パンフレットに記載の通り、切断部位を同定し、そのような部位を修飾して、切断を阻
害することである。例えば、ジヌクレオチド5’−ua−3’、5’−ca−3’、5’
−ug−3’、5’−uu−3’、又は5’−cc−3’を切断部位として利用できる。
特定の実施形態では、iRNA薬剤のすべてのピリミジンが、センス鎖、アンチセンス鎖
、または両方の鎖に2’修飾を有し、そのため、そのiRNA薬剤は、エンドヌクレアー
ゼに対する抵抗性が強化される。ヌクレアーゼ抵抗性の強化は、例えば、共有されている
2005年5月27日出願の国際出願第PCT/US2005/018931号パンフレ
ットに記載の通り、ウリジンが2’修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−ウ
リジン−アデニン−3’(5’−ua−3’)ジヌクレオチド;5’−シチジンが2’修
飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−シチジン−アデニン−3’(5’−ca
−3’)ジヌクレオチド;5’−ウリジンが2’修飾ヌクレオチドである、少なくとも1
つの5’−ウリジン−グアニン−3’(5’−ug−3’)ジヌクレオチド;5’−ウリ
ジンが2’修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−ウリジン−ウリジン−3’
(5’−uu−3’)ジヌクレオチド;または5’−シチジンが2’修飾ヌクレオチドで
ある、少なくとも1つの5’−シチジン−シチジン−3’(5’−cc−3’)ジヌクレ
オチドをもたらす5’ヌクレオチド修飾を行うことによって実現できる。上記iRNA薬
剤は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つのその
ようなジヌクレオチドを含み得る。特に好ましい実施形態では、センス鎖、アンチセンス
鎖、またはそれら両鎖のいずれかに存在する5’−ua−3’および5’−ca−3’と
いう配列モチーフすべてにおける5’ヌクレオチドが修飾ヌクレオチドである。好ましく
は、センス鎖、アンチセンス鎖、またはそれら両鎖のいずれかに存在する5’−ua−3
’、5’−ca−3’、および5’−ug−3’という配列モチーフのすべてにおける5
’ヌクレオチドが修飾ヌクレオチドである。より好ましくは、センス鎖におけるすべての
ピリミジンヌクレオチドが修飾ヌクレオチドであり、かつアンチセンス鎖に存在する5’
−ua−3’および5’−ca−3’という配列モチーフすべてにおける5’ヌクレオチ
ド、または上記アンチセンス鎖が5’−ua−3’も5’−ca−3’モチーフも含まな
い場合には、存在する5’−ug−3’という配列モチーフのすべてにおける5’ヌクレ
オチドが修飾ヌクレオチドである。
【0058】
ヌクレアーゼ抵抗性および/または標的への結合親和性を増大させるために、iRNA
薬剤、例えば上記iRNA薬剤のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖は、例えば2’
修飾されたリボース単位および/またはホスホロチオエート結合を含有し得る。例えば2
’ヒドロキシ基(OH)を、種々の異なった「オキシ」または「デオキシ」置換基で修飾
または置換することができる。
【0059】
「オキシ」−2’ヒドロキシ基修飾の例には、アルコキシもしくはアリールオキシ(O
R、例えばR=H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール
、または糖);ポリエチレングリコール(PEG)、すなわちO(CHCHO)
CHOR;例えばメチレン架橋によって2’ヒドロキシ基が同じリボース糖の4’
炭素に連結されている「ロックト」核酸(LNA)、O−AMINE、およびアミノアル
コキシ、すなわちO(CHAMINE(例えば、AMINE=NH;アルキルア
ミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、
ヘテロアリールアミノ、またはジへテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ
)が含まれる。メトキシエチル基(MOE)(OCHCHOCH、PEG誘導体)
のみを含有するオリゴヌクレオチドは、強固なホスホロチオエート修飾で修飾されたもの
に匹敵するヌクレアーゼ安定性を示すことは、注目に値する。
【0060】
「デオキシ」修飾には、水素(すなわち、デオキシリボース糖、これらは部分的dsR
NAの突出部分に特に重要である);ハロ(例えばフルオロ);アミノ(例えば、NH
;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールア
ミノ、ヘテロアリールアミノ、ジへテロアリールアミノ、またはアミノ酸);NH(CH
CHNH)CHCH−AMINE(AMINE=NH;アルキルアミノ、ジ
アルキルアミノ、ヘテロシクリルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロア
リールアミノ、またはジへテロアリールアミノ)、−NHC(O)R(R=アルキル、シ
クロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたは糖)、シアノ;メルカプト
;アルキル−チオ−アルキル:チオアルコキシ;及びアルキル、シクロアルキル、アリー
ル、アルケニル、およびアルキニルが含まれ、これらは、選択的に、例えばアミノ官能基
で置換することができる。
【0061】
好ましい置換基は、2’−メトキシエチル、2’−OCH、2’−O−アリル、2’
−C−アリル、および2’−フルオロである。
ヌクレアーゼ抵抗性を最大にするために、2’修飾を、1つまたは複数のリン酸リンカ
ー修飾(例えばホスホロチオエート)と併用することができる。いわゆる「キメラ」オリ
ゴヌクレオチドは、2つ以上の異なった修飾を含有するものである。
【0062】
オリゴヌクレオチド骨格におけるフラノース糖の包含も、エンドヌクレオチド鎖切断を
低減できる。iRNA薬剤は、さらに3’陽イオン基を包含させることによって、あるい
は3’−3’連結を伴う3’末端でのヌクレオシドの反転によって修飾され得る。別の代
替法では、アミノアルキル基、例えば、3’C5−アミノアルキルdTで3’末端をブロ
ックすることができる。他の3’結合体も、3’−5’エキソヌレチド分解性の切断を阻
害できる。理論に拘泥するものではないが、ナプロキセンまたはイブプロフェンなどの3
’結合体は、エクソヌクレアーゼがオリゴヌクレオチドの3’末端に結合するのを立体的
にブロックすることによって、エキソヌレチド分解性の切断を阻害し得る。小さなアルキ
ル鎖、アリール基、または複素環式結合もしくは修飾糖(D−リボース、デオキシリボー
ス、グルコースなど)でさえも、3’−5’エクソヌクレアーゼをブロックすることがで
きる。
【0063】
同様に、5’結合体は、5’−3’エキソヌレチド分解性の切断を阻害できる。理論に
拘泥するものではないが、ナプロキセンまたはイブプロフェンなどの5’結合体は、エク
ソヌクレアーゼがオリゴヌクレオチドの5’末端に結合するのを立体的にブロックするこ
とによって、エキソヌレチド分解性の切断を阻害し得る。小さなアルキル鎖、アリール基
、または複素環式結合もしくは修飾糖(D−リボース、デオキシリボース、グルコースな
ど)でさえも、3’−5’エクソヌクレアーゼをブロックすることができる。
【0064】
iRNA薬剤は、2本鎖iRNA薬剤が少なくとも一方の末端に1本鎖ヌクレオチド突
出部分を含有している場合に、ヌクレアーゼに対する抵抗性を増大させることができる。
好ましい実施形態では、上記ヌクレオチド突出部分は、1乃至4個の、好ましくは2乃至
3個の不対ヌクレオチドを含有する。好ましい実施形態では、末端ヌクレオチド対に直接
隣接している上記1本鎖の突出部分の不対ヌクレオチドがプリン塩基を含有し、上記末端
ヌクレオチド対がG−C対であるか、もしくは相補的な最終4ヌクレオチド対のうち少な
くとも2対がG−C対である。さらに別の実施形態では、上記ヌクレオチド突出部分は、
1または2つの不対ヌクレオチドを有することがあり、例示的実施形態では、上記ヌクレ
オチド突出部分が5’−GC−3’である。好ましい実施形態では、上記ヌクレオチド突
出部分が、上記アンチセンス鎖の3’端にある。一実施形態では、上記iRNA薬剤は、
2ntの突出部分5’−GC−3’が形成されるように、上記アンチセンス鎖の3’末端
に5’−CGC−3’というモチーフを含有する。
【0065】
したがって、iRNA薬剤は、例えば対象の体内に存在するヌクレアーゼ、例えば、エ
ンドヌクレアーゼまたはエクソヌクレアーゼによる分解を阻害するように修飾された単量
体を含有できる。これらの単量体は、本明細書ではNRMすなわちヌクレアーゼ抵抗性促
進単量体と称され、対応する修飾は、NRM修飾と称される。多くの場合、これらの修飾
は、iRNA薬剤の他の特性、例えばタンパク質、例えば運搬体タンパク質、例えば血清
アルブミンまたはRISCのメンバー、と相互作用する能力、または第1の配列および第
2の配列の、お互いと2本鎖を形成する能力、もしくは別の配列、例えば標的分子と2本
鎖を形成する能力、も調節するであろう。
【0066】
上述した好ましいヌクレアーゼ抵抗性の規準を満たすiRNA薬剤を産生するのに有用
であり得る修飾は、以下に示す糖、塩基、および/またはリン酸骨格の1つまたは複数の
化学修飾および/または立体化学修飾を含有し得る。
【0067】
(i)キラル(Sp)チオ酸塩。したがって、好ましいNRMは、特定のキラル形態に
ある、架橋部以外の位置、例えば通常は酸素が占めている位置である位置XにSpまたは
Rpのようなヘテロ原子を含有する修飾リン酸基に関して豊富または純粋であるヌクレオ
チド2量体を含有する。位置Xの原子は、S、Se、Nr、またはBrでもよい。X
がSである場合、Sp連結に関して豊富であるか、純粋なキラルであることが好ましい。
豊富であるとは、少なくとも70、80、90、95、または99%が好ましい形態であ
ることを意味する。
【0068】
(ii)糖、塩基および/またはリン酸若しくは修飾リン酸骨格部分のリン原子への1
つまたは複数の陽イオン基の結合。したがって、好ましいNRMは、陽イオン基で誘導体
化された単量体を末端位置に含有する。アンチセンス配列の5’末端は、末端OH基また
はリン酸基を有するべきであるので、アンチセンス配列の5’末端では、このNRMの使
用が好ましくない。この陽イオン基は、H結合形成およびハイブリダイゼーションの干渉
を最小にする塩基上の位置、例えばもう一方の鎖の相補的塩基と相互作用する面から離れ
ている位置、例えばピリミジンの5’位またはプリンの7位に結合させるべきである。
【0069】
(iii)末端における非リン酸結合。したがって、好ましいNRMは、非リン酸結合
、例えば、切断に対してリン酸結合よりも大きな抵抗性を与える4原子の結合を含有する
。一例としては、3’CH−NCH−O−CH−5’および3’CH−NH−(
O=)−CH−5’が含まれる。
【0070】
(iv)3’架橋チオリン酸塩および5’架橋チオリン酸塩。したがって、好ましいN
RMはこれらの構造を含有し得る。
(v)L−RNA、2’−5’結合、逆方向結合、a−ヌクレオシド。したがって、他
の好ましいNRMには、L−ヌクレオシドおよびL−ヌクレオシドから派生した2量体ヌ
クレオチド;2’−5’リン酸結合、非リン酸結合、および修飾リン酸結合(例えば、チ
オリン酸、ホスホラミデート、およびボロノホスフェート);逆方向結合、例えば3’−
3’結合または5’−5’結合を有する2量体;糖の1’部位にα結合を有する単量体、
例えばα結合を有する本明細書に記載の構造が含まれる。
【0071】
(vi)結合基。したがって、好ましいNRMには、例えば、単量体に、例えば糖、塩
基、または骨格を介して結合される本明細書に記載の標的化部分または結合リガンドが含
まれる。これらに関しては、以下に、より詳細に論じる。
【0072】
(vi)無塩基結合。したがって、好ましいNRMには、無塩基単量体、例えば無塩基
単量体(例えば、ヌクレオチド塩基を含まない単量体);芳香族または複素環式または芳
香族多環複素環式単量体が含まれ得る。
【0073】
(vii)5’−ホスホネートおよび5’−リン酸塩プロドラック。したがって、好ま
しいNRMには、好ましくは末端位置、例えば5’位に、リン酸基の1つまたは複数の原
子が保護基で誘導体化されている単量体を含有し、上記1つまたは複数の保護基は、対象
の体内にある成分、例えばカルボキシエステラーゼまたは対象の体内に存在している酵素
の作用の結果、除去される。例えば、その中で、カルボキシエステラーゼが、保護された
分子を切断し、その結果、チオ酸陰イオンの産生がもたらされ、このチオ酸陰イオンがリ
ン酸のOに隣接する炭素を攻撃し、その結果保護のないリン酸塩の産生をもたらすリン酸
塩プロドラック。
【0074】
1つまたは複数の異なったNRM修飾を、iRNA薬剤の中、または、iRNA薬剤の
配列の中に導入することができる。1つの配列中またはiRNA薬剤中で1つのNRM修
飾を複数回用いることができる。
【0075】
NRM修飾には、末端にのみ配置できる一部のものも、いかなる位置にも配置できる他
のものも含めることができる。一部のNRM修飾は、ハイブリダイゼーションを抑制する
可能性があり、したがって、それらは末端領域のみで使用するのが好ましく、それらを切
断部位、または対象の配列もしくは遺伝子を標的とする配列、特にアンチセンス鎖上の切
断領域にて用いないことが好ましい。それらは、上記ds iRNA薬剤の2つの鎖の間
で十分なハイブリダイゼーションが維持される場合に、センス鎖の任意の場所にて使用で
きる。一部の実施形態では、NRMが標的外のサイレンシングを最小にし得るので、NR
Mを切断部位またはセンス鎖の切断領域に配置するのが望ましい。
【0076】
ほとんどの場合、NRM修飾は、それらがセンス鎖に含まれるか、もしくはアンチセン
ス鎖に含まれるかに応じて異なって分配されるであろう。アンチセンス鎖に含まれる場合
には、エンドヌクレアーゼ切断を妨害または阻害する修飾は、RISC媒介の切断を受け
る領域、例えば切断部位または切断領域に挿入されるべきでない(本願明細書に援用する
、エルバシル(Elbashir)ら、2001年、Genes and Dev.第1
5巻、188頁に記載されている)。標的の切断は、20または21ntのアンチセンス
鎖のほぼ中央、すなわち上記アンチセンス鎖に相補的な標的mRNAの最初のヌクレオチ
ドの上流のほぼ10または11ヌクレオチドで起こる。本明細書で使用される場合、切断
部位は、標的またはそれにハイブリダイズするiRNA薬剤の鎖における、切断部位のい
ずれかの側のヌクレオチドを指す。切断領域は、いずれかの方向における、上記切断部位
の1、2、または3ヌクレオチド以内にあるヌクレオチドを意味する。
【0077】
そのような修飾は、末端領域、例えばセンス鎖またはアンチセンス鎖の末端位置、また
は上記末端の2、3、4、もしくは5番目の位置を含めた位置に導入することができる。
(テザーリガンド)
薬理学的特性を含めたiRNA薬剤の特性は、リガンド、例えば、テザーリガンドを導
入することによって、影響を受け、調整され得る。
【0078】
多種多様な構成要素、例えば、リガンドを、iRNA薬剤、例えば、リガンド結合単量
体サブユニットの担体に連結することができる。リガンド結合単量体サブユニットの場合
について以下にその例を説明するが、これは単に好適な例に過ぎず、同構成要素はiRN
A薬剤のその他の点にも結合することができる。
【0079】
好ましい部分は、干渉テザー(tether)を介して直接的または間接的に担体に、
好ましくは共有結合するリガンドである。好ましい実施形態では、このリガンドは干渉テ
ザーを介して担体に結合される。リガンド結合単量体が伸長する鎖に取り込まれるとき、
リガンドまたはテザーリガンドは、リガンド結合単量体上に存在し得る。いくつかの実施
形態では、このリガンドは、「前駆体」リガンド結合単量体サブユニットが伸長する鎖に
取り込まれた後で、同「前駆体」リガンド結合単量体サブユニットに取り込まれる。例え
ば、TAP−(CHNHなどのアミノ末端テザーなどを有する単量体は、伸長す
るセンスまたはアンチセンス鎖に取り込まれてよい。その後の操作において、すなわち、
前駆体単量体サブユニットが鎖に取り込まれた後で、求電子基、例えば、ペンタフルオロ
フェニルエステルまたはアルデヒド基を有するリガンドは、リガンドの求電子基と前駆体
リガンド結合単量体サブユニットテザーの末端求核基との結合によって、その後前駆体リ
ガンド結合単量体に結合され得る。
【0080】
好ましい実施形態では、リガンドは、取り込まれたiRNA薬剤の分布、標的化または
寿命を改変する。好ましい実施形態では、リガンドは、例えば、このようなリガンドを備
えていない種と比較して、選択した標的、例えば、分子、細胞または細胞種、細胞区画も
しくは器官区画などの区画、組織、器官または身体の領域に対する親和性を増強する。
【0081】
好ましいリガンドは、輸送、ハイブリダイゼーションおよび特異性の特性を改善するこ
とができ、得られた天然もしくは修飾オリゴリボヌクレオチド、または本明細書で説明し
た単量体および/または天然もしくは修飾リボヌクレオチドの任意の組合せを含むポリマ
ー分子のヌクレアーゼ抵抗性も改善することができる。
【0082】
一般的に、リガンドは、例えば、取り込みを高めるための治療調節剤、例えば、分布を
モニタリングするための診断用化合物もしくはレポーター群、架橋剤、ヌクレアーゼ抵抗
性を付与する部分および天然もしくは通常にはない核塩基を含むことができる。一般的な
例には、脂溶性分子、脂質、ステロイド(例えば、ウバオール、ヘシゲニン(hecig
enin)、ジオスゲニン)、テルペン(例えば、トリテルペン、例えば、サルササポゲ
ニン、フリーデリン、エピフリーデラノール誘導体化リトコール酸)、ビタミン、炭水化
物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリ
ンまたはヒアルロン酸)、タンパク質、タンパク質結合剤、インテグリン標的化分子、ポ
リカチオン、ペプチド、ポリアミンおよびペプチド模倣体が含まれる。
【0083】
リガンドは、天然物質または組換えもしくは合成分子、例えば、合成ポリアミノ酸など
の合成ポリマーであり得る。ポリアミノ酸の例には、ポリリジン(PLL)、ポリL−ア
スパラギン酸、ポリL−グルタミン酸、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、ポリ(L
−ラクチド−コ−グリコリド)コポリマー、ジビニルエーテル−無水マレイン酸コポリマ
ー、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエ
チレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(
2−エチルアクリル酸)、N−イソプロピルアクリルアミドポリマーまたはポリホスファ
ジンが含まれる。ポリアミンの例には、ポリエチレンイミン、ポリリジン(PLL)、ス
ペルミン、スペルミジン、ポリアミン、シュードペプチドポリアミン、ペプチド様ポリア
ミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、陽イオン部分、例
えば、陽イオン性脂質、陽イオン性ポルフィリン、ポリアミンの4級塩またはアルファヘ
リックスペプチドが含まれる。
【0084】
リガンドにはまた、標的化化学基、例えば、細胞または組織標的化剤、例えば、肝細胞
もしくは空腸細胞などの特異的細胞型に結合する抗体、甲状腺刺激ホルモン、メラニン細
胞刺激ホルモン、レクチン、糖タンパク質、サーファクタントタンパク質A、ムチン炭水
化物、グリコシル化ポリアミノ酸、トランスフェリン、ビスホスホン酸、ポリグルタミン
酸、ポリアスパラギン酸、またはRGDペプチドもしくはRGDペプチド模倣体が含まれ
る。
【0085】
リガンドのその他の例には、色素、挿入剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、
ソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリ
ン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンド
ヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、脂溶性分子、例えば、コレステロール、コール酸、
アダマンタン酢酸、1−ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、グリセロール(例えば、
それらのエステルおよびエーテル、例えば、C10、C11、C12、C13、C14
15、C16、C17、C18、C19またはC20アルキル、例えば、1,3−ビス
−O(ヘキサデシル)グリセロール、1,3−ビス−O−(オクタデシル)グリセロール
)、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール
、1,3−プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3−(
オレオイル)リトコール酸、O3−(オレオイル)コレン酸(cholenic aci
d)、ジメトキシトリチルまたはフェノキサジン)およびタンパク質またはペプチド結合
体(例えば、抗体、リポタンパク質、例えば、低密度リポタンパク質、アルブミン、例え
ば、ヒト血清アルブミン(HSA))、アルキル化剤、リン酸塩、アミノ、メルカプト、
PEG(例えば、PEG−40K)、MPEG、[MPEG]、ポリアミノ、アルキル
、置換アルキル、放射標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収
促進剤(例えば、アスピリン、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、
ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン−イミダゾール結
合体)、テトラアザ大環状分子のEu3+複合体、ジニトロフェニル、HRPまたはAP
が含まれる。
【0086】
リガンドは、例えば、細胞骨格を破壊することによって、例えば、細胞の微小管、微小
繊維および/または中間径繊維を破壊することによって、細胞へのiRNA薬剤の取り込
みを増加させることができる物質、例えば、薬剤であり得る。この薬剤は、例えば、タキ
ソン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャプラキノ
リド(japlakinolide)、ラトランクリンA、ファロイジン、スウィンホラ
イドA、インダノシンまたはミオセルビン(myoservin)であり得る。
【0087】
リガンドは、例えば、炎症応答を活性化することによって細胞内へのiRNA薬剤の取
り込みを増加させることができる。このような効果を有するリガンドの例には、腫瘍壊死
因子アルファ(TNFアルファ)、インターロイキン−1ベータ、またはガンマインター
フェロンが含まれる。
【0088】
一態様では、リガンドは脂質または脂質をベースにした分子である。このような脂質ま
たは脂質をベースにした分子は、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA
)に結合することが好ましい。HSA結合リガンドは、標的組織、例えば、肝臓の実質細
胞を含めた肝組織との結合体の分布を可能にする。HSAに結合できるその他の分子もリ
ガンドとして使用できる。例えば、ネプロキシン(neproxin)またはアスピリン
を使用できる。脂質または脂質をベースにしたリガンドは、(a)結合体の分解に対する
抵抗性を増強し、(b)標的細胞または細胞膜への標的化または輸送を増強し、および/
または(c)血清タンパク質、例えば、HSAへの結合を調節するために使用することが
できる。
【0089】
脂質をベースにしたリガンドは、標的組織に対する結合体の結合を調節するために、例
えば、制御するために使用され得る。例えば、HSAに一層強力に結合する脂質または脂
質をベースにしたリガンドは、腎臓を標的とする傾向が少なく、したがって、身体から排
出される傾向が低い。HSAにあまり強く結合しない脂質または脂質をベースにしたリガ
ンドは、結合体を腎臓に対する標的とするために使用することができる。
【0090】
好ましい実施形態では、脂質をベースにしたリガンドはHSAに結合する。これは、結
合体が好ましくは腎臓以外の組織に分布するような十分な親和性で同HSAに結合するこ
とが好ましい。しかしながら、この親和性はHSAリガンドの結合が離れることできない
ほど強力ではないことが好ましい。
【0091】
他の態様では、リガンドは、標的細胞によって、例えば増殖細胞によって取り込まれる
部分、例えば、ビタミンまたは栄養素である。これらは、例えば、悪性型または非悪性型
の、例えば、癌細胞の、望ましくない細胞増殖を特徴とする障害を治療するために特に有
用である。ビタミンの例には、ビタミンA、EおよびKが含まれる。その他のビタミンの
例は、ビタミンB群、例えば、葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサール
または癌細胞によって取り込まれるその他のビタミンもしくは栄養素である。
【0092】
他の態様では、リガンドは、細胞透過性薬剤、好ましくはヘリックス細胞透過性薬剤で
ある。この薬剤は両親媒性であることが好ましい。薬剤の例は、tatまたはアンテナペ
ディアなどのペプチドである。この薬剤がペプチドの場合、修飾可能であり、ペプチジル
模倣体、反転異性体(invertomer)、非ペプチドまたは偽ペプチド結合が含ま
れ、Dアミノ酸も使用できる。ヘリックス剤は、親油性相および疎油性相を有するアルフ
ァヘリックス剤であることが好ましい。
【0093】
糖、例えば、ガラクトースおよび/またはそれらの類似体を取り込む標的化剤は特に有
用である。これらの薬剤は、特に、肝臓の実質細胞を標的とする。例えば、標的化部分は
、互いに約15オングストロームの間隔がある複数の、好ましくは2個または3個のガラ
クトース部分を含み得る。あるいは、標的化部分は、ガラクトースに結合したグルコース
であるラクトース(例えば、3個のラクトース部分)であり得る。標的化部分はまた、N
−アセチル−ガラクトサミン、N−Ac−グルコサミン、多価ラクトース、多価ガラクト
ース、多価マンノースまたは多価フコースであり得る。マンノースまたはマンノース−6
−リン酸標的化部分は、マクロファージ標的化に使用することができる。
(5’−リン酸修飾)
好ましい実施形態では、iRNA薬剤は、5’がリン酸化されているか、または5’プ
ライム末端にホスホリル類似体を含む。アンチセンス鎖の5’−リン酸修飾には、RIS
C媒介遺伝子サイレンシングに適合したものが含まれる。適切な修飾には、5’−モノホ
スファート((HO)2(O)P−O−5’);5’−ジホスファート((HO)2(O
)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−トリホスファート((HO)2(O)
P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−グアノシンキャ
ップ(7−メチル化または非メチル化)(7m−G−O−5’−(HO)(O)P−O−
(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−アデノシンキャップ(A
ppp)、および任意の修飾または非修飾ヌクレオチドキャップ構造(N−O−5’−(
HO)(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−モ
ノチオホスファート(ホスホロチオエート;(HO)2(S)P−O−5’);5’−モ
ノジチオホスファート(ホスホロジチオエート;(HO)(HS)(S)P−O−5’)
、5’−ホスホロチオラート((HO)2(O)P−S−5’);酸素/硫黄で置換され
たモノホスファート、ジホスファートおよびトリホスファートの任意の更なる組み合わせ
(例えば、5’−アルファ−チオトリホスファート、5’−ガンマ−チオトリホスファー
トなど)、5’−ホスホロアミデート((HO)2(O)P−NH−5’、(HO)(N
H2)(O)P−O−5’)、5’−アルキルホスホネート(R=アルキル=メチル、エ
チル、イソプロピル、プロピルなど、例えば、RP(OH)(O)−O−5’−、(OH
)2(O)P−5’−CH2−)、5’−アルキルエーテルホスホネート(R=アルキル
エーテル=メトキシメチル(MeOCH2−)、エトキシメチル、など、例えば、RP(
OH)(O)−O−5’−)が含まれる。
【0094】
センス鎖は、同センス鎖を不活性化し、活性型RISCの形成を阻止し、それによって
標的外効果を潜在的に減少させるために修飾され得る。これは、センス鎖の5’−リン酸
化を阻止する修飾によって、例えば、5’−O−メチルリボヌクレオチドで修飾すること
によって実現することができる(ニカネン(Nykaenen)ら、2001年、「AT
P requirements and small interfering RNA
structure in the RNA interference pathw
ay.」Cell、第107巻、309〜321頁を参照のこと)。リン酸化を阻止する
その他の修飾、例えば、O−MeよりもHによる5’−OHの簡単な置換も使用され得る
。代替的に、大きな嵩高い基を5’−リン酸塩に添加して、ホスホジエステル結合に変更
してもよい。
(iRNA薬剤の細胞への輸送)
理論に結びつけることは望まないが、コレステロール結合iRNA薬剤とリポタンパク
質のある種の成分(例えば、コレステロール、コレステリルエステル、リン脂質)との間
の化学的類似性は、iRNA薬剤と血液中のリポタンパク質(例えば、LDL、HDL)
との結合および/またはiRNA薬剤とコレステロールに親和性を有する細胞成分、例え
ば、コレステロール輸送経路の成分との相互作用を引き起こす可能性がある。リポタンパ
ク質ならびにその成分は、細胞によって、様々な能動的および受動的輸送機構によって、
例えば、限定はしないが、LDL受容体結合LDLのエンドサイトーシス、酸化された、
もしくはその他の修飾をされたLDLのスカベンジャー受容体Aとの相互作用によるエン
ドサイトーシス、肝臓におけるHDLコレステロールのスカベンジャー受容体B1の媒介
による取り込み、ピノサイトーシスまたはABC(ATP結合カセット)輸送タンパク質
、例えば、ABC−A1、ABC−G1もしくはABC−G4によるコレステロールの膜
通過輸送によって取り込まれ、処理される。したがって、コレステロール結合iRNA薬
剤は、このような輸送機構を有する細胞、例えば、肝臓の細胞による取り込みの促進を受
けることができた。このように、本発明は、このような成分(例えば、コレステロール)
の天然リガンドをiRNA薬剤に結合させるか、またはこの成分(例えば、LDL、HD
L)の天然リガンドと関連する、もしくは結合するiRNA薬剤に化学的部分(例えば、
コレステロール)を結合させることによって、ある種の細胞表面成分、例えば、受容体を
発現する細胞にiRNA薬剤を標的化させる証拠および一般的方法を提供する。
(4 その他の実施形態)
RNA、例えば、iRNA薬剤は、インビボにおいて、例えば、細胞に送達された外来
DNA鋳型から細胞内で産生され得る。例えば、このDNA鋳型は、ベクターに挿入され
、遺伝子治療ベクターとして使用され得る。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈注射、
局所投与によって(米国特許第5328470号)、または定位注射によって(例えば、
チェン(Chen)ら、Proc.Natl.Acad.Sci、USA、第91巻、3
054〜3057頁、1994年)対象に送達され得る。遺伝子治療ベクターの医薬調製
物は、許容できる希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含むことができ、または遺伝子送達担
体が包埋された徐放性マトリックスを含み得る。DNA鋳型は、例えば、2個の転写単位
を含むことができ、一方はiRNA薬剤の上鎖を含む転写物を生成し、他方はiRNA薬
剤の下鎖を含む転写物を生成する。この鋳型が転写されたとき、iRNA薬剤が生成され
、遺伝子サイレンシングを媒介するsiRNA薬剤断片に処理される。
(5 製剤)
本明細書で説明したiRNAは、対象に投与するために製剤化することができる。
【0095】
説明を容易にするために、この項における製剤、組成物および方法は、ほとんどは無修
飾iRNA薬剤に関して論じる。しかしながら、これらの製剤、組成物および方法は、そ
の他のiRNA薬剤、例えば、修飾iRNA薬剤で実施することができ、このような実施
は本発明の範囲内であることを理解されたい。
【0096】
製剤化されたiRNA薬剤組成物は、様々な状態をとることができる。いくつかの例で
は、この組成物は少なくとも部分的な結晶、均一な結晶、および/または無水物(例えば
、水分が80、50、30、20または10%未満)である。他の例では、iRNA薬剤
は水相、例えば、水を含む溶液に含まれている。
【0097】
水相または結晶組成物を、例えば、送達媒体、例えば、リポソーム(特に水相用)また
は粒子(例えば、結晶組成物に適し得る微粒子)に取り込むことができる。一般的に、i
RNA薬剤組成物は、企図した投与方法に適合する方法で製剤化される。
【0098】
iRNA薬剤調製物は、他の薬剤、例えば、他の治療剤またはiRNA薬剤を安定化す
る薬剤、例えば、iRNPを形成するためにiRNA薬剤と複合体化するタンパク質と、
組み合わせて、製剤化することができる。さらに他の薬剤には、キレート剤、例えば、E
DTA(例えば、Mg2+などの2価陽イオンを除去するため)、塩、RNアーゼ阻害剤
(例えば、RNAsinなどの特異性の広いRNアーゼ阻害剤)などが含まれる。
【0099】
一実施形態では、iRNA薬剤調製物には、2個以上のiRNA薬剤(類)、例えば、
同一遺伝子もしくは遺伝子の異なる対立遺伝子に関して、または異なる遺伝子に関してR
NAiを媒介することができる2個以上のiRNAが含まれる。このような調製物には、
少なくとも3個、5個、10個、20個、50個または100個以上の異なるiRNA薬
剤種を含めることができる。このようなiRNA薬剤は、同数の異なる遺伝子に関してR
NAiを媒介することができる。
【0100】
このような調製物中の2個以上のiRNAが同一遺伝子を標的とする場合、この標的配
列は重複も隣接もしていない標的配列を有すること可能で、あるいはこの標的配列は重複
していても隣接していてもよい。
(6 Brc−Abl融合発現に関連した障害)
Bcr−Abl融合物を標的とするiRNA薬剤、例えば、本明細書で説明したiRN
A薬剤は、対象、例えば、Bcr−Abl融合遺伝子発現に関連した疾患または障害、例
えば、望ましくない細胞増殖もしくは癌、またはより具体的には白血病を発症しているヒ
ト又はその危険性のあるヒトを治療するために使用することができる。
【0101】
例えば、Bcr−Abl融合mRNAを標的とするiRNA薬剤は、望ましくない細胞
増殖に関連した障害、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML
)、または急性リンパ芽球性白血病(ALL)などの白血病を治療するために使用され得
る。この対象は、細胞増殖抑制性または細胞障害性の薬剤で現在治療されている対象、過
去に細胞増殖抑制性または細胞障害性の薬剤で治療されたことのある対象、または細胞増
殖抑制性または細胞障害性の薬剤での治療に適さない対象であることが可能である。
(7 治療方法および送達経路)
iRNA薬剤、例えば、Bcr−Abl融合物を標的とするiRNA薬剤を含む組成物
は、様々な経路によって対象に送達することができる。例示的な経路には、クモ膜下、実
質、静脈内、経鼻、経口および眼内送達が含まれる。本発明のiRNA薬剤を投与する好
ましい手段は、非経口投与によるものである。
【0102】
iRNA薬剤は、投与に適した医薬組成物に取り込むことができる。例えば、組成物は
、1種または複数種のiRNA薬剤および薬学的に許容される担体を含むことができる。
本明細書では、「薬学的に許容される担体」という用語は、医薬品投与に適合した任意の
、およびすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤及び
吸収遅延剤などを含むものとする。薬学的に活性のある物質のためにこのような媒体およ
び作用物質を使用することは、当該技術分野では周知である。従来の媒体または作用物質
が活性化合物に不適合である場合を除いて、それらは組成物に使用されるものとする。補
充的な活性化合物もこの組成物に組み入れることができる。
【0103】
本発明の医薬品組成物は、局所治療または全身治療が望ましいかどうかに応じて、およ
び治療する部位に応じていくつかの方法で投与することが可能である。投与は、局所投与
(眼内、経鼻、経皮を含む)、経口投与又は非経口投与であり得る。非経口投与には、静
脈点滴、皮下、腹腔内もしくは筋肉内注射、またはクモ膜下腔内もしくは心室内投与が含
まれる。
【0104】
送達の経路は、患者の障害に応じて変更され得る。一般的に、本発明のiRNAの送達
は、対象への全身送達を実現するために実施される。これを実現する好ましい手段は、非
経口投与による。
【0105】
非経口投与用製剤には、緩衝剤、希釈剤およびその他の適切な添加物も含有できる滅菌
水性溶液が含まれる。静脈内での使用では、溶質の総濃度は、調製物を等張にするために
制御されるべきである。
【0106】
投与は、対象によって提供され得るか、または例えば治療奉仕者のような別の人によっ
て提供され得る。治療奉仕者は、人に治療を提供することに関与する任意の存在、例えば
、病院、ホスピス、診療所、外来患者向け診療所で医療に従事する人、例えば、医者、看
護師もしくはその他の専門家などの医療従事者、または配偶者または親などの保護者であ
り得る。投薬は、測定された用量で、または計測された用量を送達する分配器で提供され
得る。
【0107】
「治療有効量」という用語は、望ましい生理学的応答をもたらすために、治療する対象
において所望するレベルの薬剤を提供するのに必要な、組成物中に存在する量のことであ
る。
【0108】
「生理学的有効量」という用語は、所望とする緩和または治療的効果を与えるために対
象に送達される量である。
「薬学的に許容される担体」という用語は、その担体が肺に著しく有害な毒性効果を与
えず肺に取り込まれることが可能であることを意味する。
【0109】
「共投与」という用語は、2種以上の薬剤、特に2種以上のiRNA薬剤を対象に投与
することである。薬剤は、単一の医薬組成物に含有され、同時に投与され得るか、または
薬剤は別々の製剤に含有され、順番に対象に投与され得る。2種の薬剤が同時に対象にて
検出されることができる限り、2種の薬剤は共投与されたと言える。
【0110】
担体として有用な医薬賦形剤の種類には、ヒト血清アルブミン(HSA)などの安定化
剤、炭水化物、アミノ酸およびポリペプチドなどの賦形剤、pH調整剤または緩衝剤;塩
化ナトリウムなどの塩などがある。これらの担体は、結晶形であっても、アモルファス形
であってもよく、2つの混合物であってもよい。
【0111】
特に有用である賦形剤には、適合性のある炭水化物、ポリペプチド、アミノ酸またはそ
れらの組合せが含まれる。適切な炭水化物には、ガラクトース、D−マンノース、ソルボ
ースなどの単糖類、ラクトース、トレハロースなどの二糖類、2−ヒドロキシプロピル−
β−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、およびラフィノース、マルトデキス
トリン、デキストランなどの多糖類、マンニトール、キシリトールなどのアルジトール類
が含まれる。好ましい炭水化物群には、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、マル
トデキストリンおよびマンニトールが含まれる。適切なポリペプチドには、アスパルテー
ムが含まれる。アミノ酸には、アラニンおよびグリシンが含まれ、グリシンが好ましい。
【0112】
適切なPH調整剤または緩衝剤には、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム
などの有機酸および塩基から調製された有機塩が含まれ、クエン酸ナトリウムが好ましい

【0113】
投与量。iRNA薬剤は、体重1kg当たり約75mg未満、または体重1kg当たり
約70、60、50、40、30、20、10、5、2、1、0.5、0.1、0.05
、0.01、0.005、0.001または0.0005mg未満の単位用量で、および
体重1kg当たりiRNA薬剤200nmol未満(例えば、約4.4×1016コピー
)の単位用量で、または体重1kg当たりiRNA薬剤1500、750、300、15
0、75、15、7.5、1.5、0.75、0.15、0.075、0.015、0.
0075、0.0015、0.00075、0.00015nmol未満の単位用量で投
与され得る。例えば、この単位用量は、注射(例えば、静脈内もしくは筋肉内注射、クモ
膜下注射、または臓器への直接注射)によって、吸入投与、または局所塗布によって投与
され得る。
【0114】
臓器へ直接(例えば、肝臓に直接)iRNA薬剤を送達することは、臓器当たり約0.
00001mg〜約3mg、または好ましくは臓器当たり約0.0001〜約0.001
mg、臓器当たり約0.03〜3.0mg、眼当たり約0.1〜3.0mgまたは臓器当
たり約0.3〜3.0mgの程度の投与量であり得る。
【0115】
投与量は、疾患または障害を治療または予防するのに有効な量であり得る。
一実施形態では、単位用量を1日1回より少ない頻度で、例えば、2日、4日、8日ま
たは30日毎に1回より少ない頻度で投与する。他の実施形態では、単位用量は一定頻度
(例えば、規則正しい頻度)では投与されない。例えば、単位用量を1回で投与すること
が可能である。iRNA薬剤が媒介するサイレンシングは、iRNA薬剤組成物を投与し
た後、数日間維持され得るので、多くの場合、1日1回より少ない頻度で、場合によって
は全治量期間中1回のみ組成物を投与することが可能である。
【0116】
一実施形態では、例えば、2本鎖iRNA薬剤、またはsiRNA薬剤(例えば、前駆
体、例えば、siRNA薬剤中に処理されることができるより大きなiRNA薬剤、また
はiRNA薬剤、例えば、2本鎖iRNA薬剤、もしくはsiRNA薬剤、もしくはそれ
らの前駆体をコードするDNA)の初回量および1回または複数の維持用量が対象に投与
される。一回又は複数回の維持用量は、一般的に初回量よりも少なく、例えば、初回量の
2分の1少ない。維持治療計画は、1日当たり体重1kgに対して0.01〜75mgの
範囲、例えば、1日当たり体重1kgに対して70、60、50、40、30、20、1
0、5、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001または
0.0005mgの一回又は複数回の用量で対象を治療することを含み得る。維持用量は
、5、10または30日毎に1回以下投与することが好ましい。さらに、治療計画は、特
定の疾患の性質、重症度および患者の全体的状態に応じて変化し得る期間の間、維持され
得る。好ましい実施形態では、投与量は1日1回以下、例えば、24、36、48時間以
上に1回以下、例えば、5日または8日毎に1回以下にて送達され得る。処置後、患者の
状態の変化および疾患状態の徴候の軽減をモニタリングすることができる。化合物の投与
量は、患者が現在の用量レベルに有意に応答しない場合増加させることができ、あるいは
疾患状態の徴候の軽減が認められた場合、疾患状態が消失した場合、または望ましくない
副作用が認められた場合、用量を減少させることができる。
【0117】
効果的な用量は、特定の環境下で所望するように、または適切だと考えられるように、
単回投与で、または2回以上の投与で投与することができる。反復注入又は頻繁な注入を
促進することが望ましい場合、送達装置、例えば、ポンプ、半永久的ステント(例えば、
静脈内、腹腔内、嚢内または関節包内)またはリザーバを埋め込むことが適切であり得る

【0118】
処理が成功した後、疾患状態の再発を防ぐために、本発明の化合物を体重1kg当たり
0.001g〜100gの範囲の維持用量で投与する維持治療を患者に受けさせることが
望ましい(米国特許第6107094号)。
【0119】
iRNA薬剤組成物の濃度は、障害を治療もしくは予防するのに有効であるか、または
ヒトの生理学的状態を調節するために十分な量である。投与するiRNAの薬剤の濃度ま
たは量は、薬剤について測定されたパラメータ、および経鼻、頬側または肺投与などの投
与方法に依存される。例えば、経鼻用製剤は、鼻孔の刺激または灼熱感を回避するために
、いくつかの成分をはるかに低い濃度にしなければならない傾向がある。適切な経鼻用製
剤を提供するために、経口用製剤を10〜100倍希釈することが時として望ましい。
【0120】
非限定的ではあるが、疾患もしくは障害の重症度、以前の治療法、対象の一般的健康状
態および/または年齢、その他の既存の疾患を含めたある種の因子が、対象を効果的に治
療するために必要な投与量に影響を及ぼし得る。治療に使用するsiRNAなどのiRN
A薬剤の効果的投与量は、特定の治療の期間中、増加または減少し得ることも理解された
い。投与量の変化は、診断試験法の結果から得られ、明らかとなり得る。例えば、iRN
A薬剤組成物投与後に対象をモニタリングすることができる。モニタリングからの情報に
基づいて、iRNA薬剤組成物の追加量を投与することができる。
【0121】
投薬は、数日から数ヶ月続く治療期間中、または全治するまで、もしくは疾患状態の消
失が実現するまで、治療する疾患状態の重症度および応答性に左右される。最適な投薬計
画は、患者の身体における薬剤蓄積の測定によって作製することができる。当業者であれ
ば、最適な投与量、投薬方法および反復率を容易に決定することができるだろう。最適な
投与量は、個々の化合物の相対的能力に応じて変更可能であり、前述したようにインビト
ロおよびインビボ動物モデルにおいて効果的であることが発見されたEC50に基づいて
一般的に判断することができる。
【0122】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示されるが、それらはさらに限定するもので
はない。
【実施例】
【0123】
試薬の入手先
試薬の入手先が本明細書に具体的に挙げられていない場合、このような試薬は、分子生
物学用試薬の任意の供給元から、分子生物学での適用に標準的な量/純度で入手すること
ができる。
【0124】
実施例1:siRNA合成
siRNA合成
1本鎖RNAは、Expedite 8909合成機(アプライドバイオシステムズ、
アプレラドイチュランド社(Applied Biosystems、Applera
Deutschland GmbH)、[ドイツ国、ダルムシュタット(Darmsta
dt)所在]および固相担体として微細孔性ガラス(CPG、500Å、グレンリサーチ
社(Glen Reserach)、[米国バージニア州スターリング(Starlin
g)所在])を使用して、1μmoleのスケールで固相合成によって作製された。RN
Aおよび2’−O−メチルヌクレオチドを含有するRNAは、それぞれ対応するホスホラ
ミダイトおよび2’−O−メチルホスホラミダイトを使用して固相合成によって作製され
た(プロリゴバイオケミ社(Proligo Biochemie GmbH)、[ドイ
ツ国、ハンブルク(Hamburg)所在])。これらの構成単位を、「Current
protocols in nucleic acid chemistry」、ボカ
ージュ エス.エル.(Beaucage、S.L.)ら(編)、John Wiley
& Sons、Inc.[アメリカ合衆国ニューヨーク]に記載されたような標準的ヌ
クレオシドホスホラミダイト化学物質を使用してオリゴリボヌクレオチド鎖の配列内の選
択部位に取り込ませた。ホスホロチオエート結合は、ヨウ素酸化剤溶液をアセトニトリル
(1%)に溶解したボカージュ試薬(クルアケム社(Chruachem Ltd)[英
国グラスゴー(Glasgow)所在])の溶液と置換することによって導入された。他
の付随する試薬は、マリンクロットベーカー社(Mallinckrodt Baker
)[ドイツ国、グリサイム(Griesheim)所在]から入手した。
【0125】
粗オリゴリボヌクレオチドの陰イオン交換HPLCによる脱保護および精製は、確立さ
れた方法に従って実施された。収率および濃度は、分光光度計(DU 640B、ベック
マンコールター社(Beckman Coulter GmbH)、[ドイツ国、アンタ
ーシュリースハイム(Unterschlieβheim)所在])を使用して、波長2
60nmでそれぞれのRNAの溶液のUV吸収によって測定した。2本鎖RNAは、アニ
ーリング緩衝液(20mMのリン酸ナトリウム、pH6.8、100mMの塩化ナトリウ
ム)中において相補鎖の等モル溶液を混合し、85〜90℃の水浴中で3分間加熱し、3
〜4時間かけて室温まで冷却することによって作製した。精製したRNA溶液を使用する
まで−20℃で保存した。
【0126】
実施例2:Bcr−Abl切断点変種を発現する細胞におけるBcr−Abl発現の阻

核酸配列は、標準的名称、具体的には表2の略語を使用して以下に表した。
【0127】
【表2】

【0128】
【表3】


表3に、合成されたBcr−Abl融合体変種Bcr−Abl−e14a2、Bcr−
Abl−e13a2およびBcr−Abl−e1a2に特異的なsiRNAの核酸配列を
挙げる。
【0129】
Bcr−AblmRNAのBcrおよびAbl配列の正確な融合部位は、白血病特異的
ヌクレオチド配列を示す。疾患特異的タンパク質をコードするこのような融合転写物は、
腫瘍特異的RNAi法の理想的な標的である。本研究の目的は、最適なインビトロBcr
−Abl RNAi法を開発することであった。したがって、いくつかの化学合成非対称
siRNA、ならびに臨床的に関係のあるBcr−Abl転写物変種(e14a2、e1
3a2またはe1a2)の融合部位を標的とする安定発現shRNAを評価した。RNA
i効率は、主にBcr−Ablタンパク質レベルのウェスタンブロット分析および処理細
胞の白血病増殖に対する影響の評価によって測定した。
【0130】
この研究の結果は、化学合成された21nt(センス鎖)−23nt(アンチセンス鎖
)siRNAで24時間間隔で繰り返しトランスフェクションすると、Bcr−Ablタ
ンパク質の下方制御および細胞死の誘導の両方においてより効果的であった。32Dp2
10/e14a2をBcr−Abl−e14a2特異的siRNAであるBAF7で1回
処理すると、Bcr−Ablタンパク質レベルの著しい減少が生じ、その後32Dp21
0/e14a2細胞の生存率がエレクトロポレーション対照細胞(EPC、100%)と
比較して約59%に減少した。対照的に、BAF7で細胞を4回連続的に処理すると、B
cr−Ablタンパク質の量が検出限界まで減少し、生存能力の実質的な損失が引き起こ
された。最後の処理の48時間後の総細胞数の測定によって同様の結論に達した。ミスマ
ッチ対照siRNA(BAF8)でトランスフェクションした細胞の数は、48時間以内
に2.5Mioの細胞から25Mioの細胞を上回るまで増加した一方で、BAF7の1
回トランスフェクションは増殖を約40%減少させるのに十分で、Bcr−Abl特異的
BAF7siRNAで4回処理を繰り返すと、細胞数増加の90%以上の阻害が生じた。
【0131】
曝露を延長するとsiRNAの効率が著しく増加するという所見は、Bcr−Ablの
長い半減期によって少なくとも部分的に説明され得る。例えば、スピラー(Spille
r)およびその共同研究者(スピラー ディージー(Spiller DG)ら、Ant
isese Nucleic Acid Drug Dev.、1998年、第8巻28
1頁)は、ヒトKYO−1細胞におけるp210Bcr−Abl(e13a2)の半減期
が48時間を上回ることを測定した。標的タンパク質の半減期は、従来のアンチセンス、
(as)−オリゴデスオキシヌクレオチド(ODN)の効果に重要であることが示された
。p210Bcr−Abl(E13a2)タンパク質レベルは、mRNAレベルが早期の
時点で実質的に減少していても、Bcr−Abl−e13a2mRNAを標的とするas
−ODNでの処理によって影響を受けなかった。第2に、哺乳類細胞で実現されたsiR
NAの標的遺伝子下方制御効果は、一般的に一時的である(概説についてはミタール ブ
イ(Mittal V)、Nat Rev Genet.、2004年、第5巻、355
頁)。したがって、Bcr−Ablタンパク質レベルは、この研究で使用した細胞株をs
iRNAで最後に処理してから48時間以内に回復した。しかしながら、本研究の結果は
、化学合成siRNAによって24時間間隔で繰り返し処理することによって、または安
定なshRNA発現によって、この限界を克服できることを示している。この最適な方法
によって、実現したBcr−Ablタンパク質レベルの減少は86%までであり、96%
までの生存率の低下を伴っていた。
【0132】
Bcr−AblのRNAi依存性不活性化がBcr−Abl発現細胞の臨床治療薬への
感作を導くかどうかを評価するために、32Dp210/e14a2細胞をanti−B
cr−AblsiRNAで繰り返し処理した後、イマチニブおよびγ線照射に対する感受
性を測定した。Bcr−Abl発現への影響によって、γ線照射およびイマチニブメシレ
ートの両方に対する細胞の感受性を高めることが可能であることを示すことができた。
【0133】
50%細胞死滅を引き起こすγ線照射線量は、Bcr−Abl相同体siRNAで処理
された32Dp210/e14a2細胞では2.5Gyであったが、一方、ミスマッチ対
照で処理された細胞は約2.5倍高い用量(6Gy)に耐性であった。Bcr−Ablタ
ンパク質の量によっても、イマチニブメシレートに対するこれらの細胞の感受性は測定さ
れた。siRNAでBcr−Ablタンパク質レベルを減少させた後では、32Dp21
0/e14a2細胞において、対照と比較して、イマチニブメシレートのIC50の3.
4倍の減少が認められた。この現象はまた、ヒトM07p210/e14a2細胞で認め
られた。イマチニブメシレート0.05μMはBAF7処理細胞においてアポトーシスの
著しい誘導をもたらし、一方同濃度ではエレクトロポレーション対照細胞にはそれほど影
響を及ぼさなかった。
【0134】
これらの結果は、K562細胞においてイマチニブメシレートとBcr−Abl特異的
siRNA薬剤とで一緒に処理しても、アポトーシスの誘導にそれ以上の効果は認められ
なかったという以前に公表されたデータ(非特許文献10)のいくつかと矛盾している。
前述の非特許文献10によって使用されたK562細胞は、イマチニブメシレート単独で
48時間処理した後8%しかアポトーシスを受けなかったという事実から明らかなように
、イマチニブメシレートに対して非常に高いレベルの耐性を示した。このような高耐性細
胞系は、その他の潜在的阻害剤による他の可能性のある効果を評価するために不十分であ
る。対照的に、我々の発見を支持する結果が、チェン(Chen)およびその共同研究者
によって最近発行され(非特許文献16)、RNA干渉による融合タンパク質TEL−P
DGFβRの下方制御は、イマチニブメシレートおよびラパマイシンについてTEL−P
DGFβR発現細胞を感作し、したがって薬剤耐性に拮抗することが示された。切断点特
異的siRNAはいずれかの側の切断点と重複しなければならないので、約10個の異な
る潜在的siRNA配列のうち限られた数のみを融合配列のRNAi特異的サイレンシン
グ用に選択することができる。
【0135】
さらに、siRNA処理は、イマチニブ耐性を与えられたBcr−Abl変種H396
Pを発現する細胞においてイマチニブ感受性を回復した。イマチニブに初応答後、再発し
た白血病患者で見いだされたイマチニブ耐性を引き起こすBcr−Abl変種の2種は、
Bcr−Abl−T315IおよびBcr−Abl−H396Pである。これらのタンパ
ク質は、Bcr−Abl(wt)と比較して、キナーゼドメインにおける1個のアミノ酸
変化を示し、イマチニブに接近しにくくなっている。したがって、32D細胞におけるB
cr−Abl−T315Iの発現は、イマチニブメシレートに対する完全な耐性をもたら
し、Bcr−Abl−H396Pの発現は、32Dp210−wtと比較したとき、イマ
チニブメシレートに対してそれぞれの細胞の感受性を約4.7倍低下させた。siRNA
処理によって、3種の細胞株すべてにおいてBcr−Ablの著しい下方制御が引き起こ
された。siRNA薬剤を使用するこのBcr−Ablタンパク質レベルの下方制御は、
イマチニブメシレートに対する32Dp210wtでは3.4倍の感作および32Dp2
10−H396Pでは4倍の感作を引き起こした。対照的に、イマチニブメシレートに対
する耐性が高い32Dp210−T315I細胞のイマチニブメシレート感受性は、おそ
らく、非特許文献10によって観察されたような著しい効果の欠如について前記と同様の
理由のため、siRNA処置によってあまり影響を受けなかった。さらに、コービン(C
orbin)らは、T315I変異Ablキナーゼドメインは、WTキナーゼのIC50
値よりも200倍高いイマチニブ濃度でもあまり阻害を示さなかったことを示し、野生型
タンパク質に対してATP親和性が2倍増加していることも示した(コービン エイ エ
ス(Corbin AS)、ブフダンガー イー(Buchdunger E)、ヒュー
レ ピー(Furet P)、ドラカー ビー ジェー(Druker BJ)、「An
alysis of the structural basis of specif
icity of the Abl kinase by STI571」、J Bio
l Chem、2001年、第277巻、32214〜9頁)。前述:32Dp210T
315Iにおけるイマチニブ処理の効果自体は、siRNA処理によって媒介されるイマ
チニブ感受性の増加を観察するには小さすぎる。
【0136】
生理学的なc−AblおよびBcr遺伝子発現の同時下方制御を導く任意の標的外への
siRNA効果は、本研究では除外された。RNAi効果の高い特異性は、siRNA配
列に1カ所変異があってもsiRNA効果の著しい損失が引き起こされたという事実によ
って確認された。また、切断点変種e13a2およびe14a2を標的とするsiRNA
は、それぞれの標的RNAだけでなく、同じa2部分を有するその他の切断点変種にも影
響を及ぼした。このことは、転座から生じる融合遺伝子がRNAiの特異的な標的となる
という見解を強く支持する。それでも、siRNA分子の効果を予測することは困難と思
われる。本研究で使用した様々なsiRNAの標的領域は、かなりの重複を示した。さら
に、siRNA効果は大きく変化した。例えば、Bcr−Abl−e13a2特異的si
RNA BAF3の標的配列は、BAF15と比較して融合部位のAbl部分のわずか2
nt下流に移動しただけである。それにもかかわらず、BAF15と対照的に、BAF3
には完全に効果がなかった。同様のことがBcr−Abl−e1a2特異的siRNA
BAF22およびBAF24についても言えた。BAF24の配列は、BAF22と非常
に類似しており、融合転写物のAbl領域にわずか3nt移動していただけである。BA
F22は、Bcr−Abl−e1a2遺伝子発現を積極的にサイレンシングしたが、BA
F24はしなかった。結局、これらの結果は、癌遺伝子融合タンパク質の切断点部位を標
的とするsiRNAの効果は予測できないことを示している。
【0137】
【表4】


細胞は、グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI/10
%FCSで培養した。初代CD34陽性細胞は、グルタミン、ペニシリン/ストレプトマ
イシン、20%FCS、組換えヒトIL−3(10ng/ml)、ヒトG−CSF(20
ng/ml)およびヒトFLT3(100ng/ml)を補充したRPMI培地で増殖さ
せた。
【0138】
タンパク質試験:最後のsiRNA処理の約24時間後、または前述のようなpSUP
ER siRNA発現ベクターでトランスフェクションした約96時間後、ウェスタンブ
ロット分析を実施した(ゲッツ エイダブリュ(Goetz AW)ら、Cancer
Res.、2001年、第61巻、7635頁)。
【0139】
生存試験:最後のsiRNA処理後、細胞を96ウェルプレートに接種し、さらに約4
8時間培養した。次に、細胞生存率を前述のようにMTT試験によって測定した(ファン
デルキップ エイチ(Van der Kuip H)ら、Blood、2001年、第
98巻、1532頁)。
【0140】
siRNAトランスフェクション:エレクトロポレーションを使用して、siRNAを
マウス細胞株32Dp210Bcr−Abl−e14a2、−e13a2、32Dp19
0Bcr−Abl−e1a2およびヒト白血病細胞株MEG−01にトランスフェクショ
ンした。細胞密度は、RPMI/10%FCSで2.5〜5×10/mlに調整した。
この細胞懸濁液800μlを4mmエレクトロポレーションキュベット内でsiRNAと
混合した。細胞は、イージージェクト(EasyJect)エレクトロポレータ(ペクラ
ボ社(peqlab)[ドイツ国、エアランゲン(erlangen)所在]によって、
シングルパルス法(250V、1800μF、8)を使用してエレクトロポレーションし
た。この処理を、指示したように24時間間隔で繰り返した。
【0141】
使用した細胞株すべてが、Bcr−Ablの活性に厳密な依存性を示す。32Dp21
0Bcr−Abl−e14a2、−e13a2および32Dp190Bcr−Abl−e
1a2では、Bcr−Ablの阻害は培地に外来性増殖因子を添加することによって補う
ことができる。したがって、組換えマウスIL−3(1ng/ml)をこれらの細胞株の
siRNA処理中に増殖培地に添加した。最後のsiRNA処理の後、細胞を洗浄し、様
々な試験操作(ウェスタンブロット/MTT)を開始する前に因子を除去した。
【0142】
siRNA分子をヒトK562細胞にトランスフェクションするために、リポフェクタ
ミンTM2000(インビトロゲン社(invitrogen)[カールスルーエ(Ka
rlsruhe)所在])を使用した。1.5Mioの細胞を6ウェルプレートのRPM
I/10%FCS w/o抗生物質1.5mlに接種した。各ウェルに、OPTI−ME
M I還元血清培地(ギブコ社(Gibco)[カールスルーエ(Karlsruhe)
所在])に溶かしたsiRNA8.4μgおよびリポフェクタミン21μlを含有するト
ランスフェクション溶液500μlを調製した。細胞をトランスフェクション溶液と共に
5時間インキュベートし、次いでこの培地をペニシリン/ストレプトマイシンを補充した
RPMI/10%FCSと交換した。数回処理する際、細胞数は処理して約24時間後に
計数し、1Mio/mlまで希釈し、6ウェルプレートに再度接種した(ウェル当たり細
胞懸濁液1.5ml)。次いで、トランスフェクションは前日のように正確に繰り返した

【0143】
これらのヒトBcr−Abl融合切断点変種のそれぞれをサイレンシングするsiRN
Aの効果を研究するために、p210Bcr−Abl(e14a2)、p210Bcr−
Abl(e13a2)またはp190Bcr−Abl(e1a2)のいずれかを発現する
3種の32Dマウス造血細胞株を使用した。さらに、実験はヒトPh+白血病細胞(K5
62、MEG−01)でも実施した。使用したsiRNAはすべて、それぞれのBcr−
Abl mRNAのBcrおよびAbl配列の切断点に特異的である。RNAi−効果は
、Bcr−Ablタンパク質レベルの分析によって、およびMTT生存率試験を使用して
生物学的効果をモニタリングすることによって試験した。
【0144】
RNA干渉に最適な条件を決定するために、24時間間隔で1回から4回siRNA処
理を繰り返した。Bcr−Abl−e14a2特異的siRNAであるBAF7で32D
p210Bcr−Abl(e14a2)を1回処理すると、Bcr−Ablタンパク質レ
ベルの著しい減少が生じた。しかしながら、Bcr−Ablタンパク質レベルは、処理前
のレベルに迅速に回復した。
【0145】
短時間にもかかわらず、対照細胞(EPC、100%)に対して約59%まで細胞の生
存率を減少させるのに活性はまだ十分であった。Bcr−Ablタンパク質の下方制御お
よび細胞死の誘導の両方のために、繰り返し処理するとより効果的であった。細胞を4回
BAF−7で処理すると、Bcr−Ablタンパク質のほとんど完全な消失が生じ、生存
能力の実質的に完全な損失が引き起こされた。BAF7で4回処理した細胞に残存する生
存率レベルは、MTT試験法で測定すると、対照細胞のレベルの約2.5%以下であった
。最後の処理の48時間後の細胞数を生物学的効果の評価のために使用したとき、同じ結
果が得られた。モック(mock)で処理した細胞およびミスマッチsiRNAで処理し
た細胞の両方とも、48時間以内に依然として細胞数が2.5Mio細胞から25Mio
細胞に増加した。Bcr−Abl−e14a2(BAF7)に相同なsiRNAを1回ト
ランスフェクションした細胞では、増殖が約40%減少した。Bcr−Abl特異的BA
F7siRNAで2回または4回繰り返し処理すると、Bcr−Abl依存性細胞増殖が
より効果的に減少し、増殖阻害は90%を上回った。さらに、これらの32Dp210B
cr−Abl(e14a2)細胞では、siRNA配列の1点の変異によりサイレンシン
グ効果を損なうことが可能であることを示すことができた。BAF7と比較して1個のミ
スマッチがあるsiRNA分子(BAF1)を使用した。BAF1で処理すると、32D
p210Bcr−Abl(e14a2)細胞における切断点特異的siRNA(BAF7
)による処理と比較してBcr−Ablタンパク質レベルの下方制御効果が低かった(図
2A)。BAF1の効果の低さは、BAF1の生物学的効果を評価したとき、さらに明ら
かになった。BAF1で4回処理した細胞でも、生存率はEPCに関して52%と中程度
の減少しか示されなかった。この大きさは、最適siRNAによる処理1回の効果に匹敵
した。
【0146】
siRNA処理を延長すると、ヒトK562細胞におけるBAF7の生物学的効果の研
究によってRNA干渉に対して一層効果的である、という所見が確認された。K562細
胞は、本発明の発明者らのエレクトロポレーション法に対してより感受性が高いことが証
明されたので、リポフェクタミン2000を使用して細胞をトランスフェクションした。
siRNAで1回処理して48時間後、細胞は最小限の増殖の低減しか示さなかった。対
照的に、24時間間隔でsiRNAでリポフェクションを3回実施した後の48時間後、
Bcr−Abl−e14a2 mRNA(BAF7)に相同なsiRNAで処理した細胞
において、生存率は45%まで著しく減少した。
【0147】
3種の主要なBcr−Abl癌遺伝子変種、−e14a2、−e13a2および−e1
a2のすべてがRNA干渉により標的化され得る。CMLに関係する第2の主要なBcr
−Abl融合遺伝子Bcr−Abl−e13a2を阻害するのに効果的なsiRNAを同
定するために、Bcr−Ab13a2 mRNA切断点の様々な配列を標的とする4種の
siRNA(BAF3、BAF15、BAF17、BAF19)で32Dp210Bcr
−Abl(e13a2)細胞を処理した。対照として、Bcr−Abl−e14a2融合
配列(BAF9)に指向するsiRNAを使用した。BAF3、BAF15、BAF17
およびBAF19は、Bcr−Ablの下方制御に非常に異なる効果を示した。siRN
A BAF15およびBAF19を繰り返しエレクトロポレーションすると、Bcr−A
blタンパク質レベルの効果的な下方制御が引き起こされた。標的配列がかなり重複して
いるにもかかわらず、BAF17およびBAF3はBcr−Ablタンパク質レベルに影
響を全く与えなかった。MTT−生存率試験によってこれらのsiRNAの生物学的効果
を研究すると、同等の結果が得られた。効果的なsiRNA BAF15およびBAF1
9で32Dp210Bcr−Abl(e13a2)細胞を3回処理すると、生存能力がほ
とんど完全に損失した。3回目の処理の48時間後、生存率は対照(EPC)の約10%
(BAF15)および約14%(BAF19)しかなかった。したがって、Bcr−Ab
lタンパク質レベルの下方制御に効果がないsiRNAであるBAF3およびBAF17
はまた、細胞の生存率にも影響を及ぼさなかった。同じ方法を使用して、siRNA B
AF19はBcr−Abl−e13a2 RNAを発現するヒト巨核球性CML細胞株、
MEG−01細胞株におけるBcr−Abl−e13a2発現を効果的にサイレンシング
した。Bcr−Abl e13a2特異的siRNAであるBAF19で3回処理したと
き、それぞれのミスマッチ対照(BAF28)でエレクトロポレーションした細胞と比較
して、細胞はBcr−Ablタンパク質レベルの著しい損失を示した。RNAiによるB
cr−Ablタンパク質レベルの下方制御はまた、MEG−01細胞の生存能力の実質的
な損失を引き起こした。効果的なBAF19 siRNAで3回処理したMEG−01細
胞では、生存率は対照細胞(EPC、100%)のレベルと比較して約28%のレベルに
減少した。
【0148】
第3の主要なBcr−Abl変種であるp190Bcr−Abl(e1a2)は、成人
型ALLのPh+患者の20〜50%で、Ph+小児型ALL患者の約90%で検出する
ことができる。このBcr−Abl融合部位もRNAiの標的として使用できるかどうか
を評価するために、2種の異なる配列に特異的なsiRNA(BAF22、BAF24)
を用いて32Dp190Bcr−Abl(e1a2)細胞を2回処理した。対照として、
Bcr−Abl−e14a2(BAF9)およびBcr−Abl−e13a2(BAF1
9)に指向する活性型siRNAを使用した。24時間間隔で繰り返し処理すると、si
RNA BAF22で処理した細胞においてのみ、Bcr−Ablタンパク質レベルの著
しい下方制御が引き起こされた。BAF24 siRNAのトランスフェクションは、全
く影響を及ぼさなかった。32Dp190Bcr−Abl(e1a2)では、BAF22
siRNAで2回目に処理した後のBcr−Ablタンパク質レベルの効果的な減少は
、EPC(100%)と比較して15%のレベルに達する生存率の減少を引き起こした。
【0149】
siRNA BAF22もBcr−Abl−e1a2 RNAを発現するヒトB細胞前
駆体白血病細胞株であるSUP−B15細胞株におけるBcr−Abl−e1a2の発現
を効果的にサイレンシングした。ヒトB細胞前駆体白血病細胞株SUP−B15は、急性
リンパ芽球性白血病(B細胞前駆体ALL)の9歳の男子の骨髄から元々確立されており
、Bcr−Abl−融合遺伝子(e1a2)のALL変種(m−bcr)を保持している
。この細胞株は、DSMZ細胞培養保存施設から入手した(ACC389、DSMZ[ブ
ラウンシュワイク(Braunschweig)所在])。
【0150】
SUP−B15細胞を、前述のようにe1a2特異的siRNA(BAF22)または
対照として他の切断点変種に指向するsiRNA(BAF19)を用いてエレクトロポレ
ーションによって処理した。24時間間隔でBAF22によって3回処理すると、エレク
トロポレーション対照(EPC)またはBAF19対照と比較してp190Bcr−Ab
lタンパク質レベルの著しい減少が生じた(図3参照)。
【0151】
長時間siRNA処理するとRNAiに関してはより効果的であるという傾向はまた、
32Dp210Bcr−Abl(e13a2)および32Dp190Bcr−Abl(e
1a2)細胞株においても認められた。24時間間隔で繰り返しsiRNAのエレクトロ
ポレーションを実施することは、Bcr−Ablタンパク質レベルの明確な下方制御を実
現するのに必要であり、1回の処理と比較してさらなる生存能力の損失を引き起こした。
【0152】
したがって、主要なBcr−Abl切断点変種すべての発現は、インビトロにおいて、
細胞のsiRNA処理によって影響を受け得ることが明らかとなった。一群のsiRNA
分子を試験して、e14a2、e13a2およびe1a2切断点変種について効果的なs
iRNAを同定することができた。これらのデータは、e14a2融合物を有するBcr
−Abl転写物の下方制御に関して他者および我々のグループによって公表された以前の
実験に適用される。
【0153】
実施例3:ヒト白血病患者から単離された細胞におけるBcr−Ablの下方制御
切断点変種e14a2に対して陽性の初代患者細胞におけるBCR−ABLの下方制御
新たに診断された、未治療のフィラデルフィア染色体陽性CML慢性患者3人から、C
D34陽性細胞を単離した。細胞を採取する前に患者からインフォームドコンセントを得
た。単核細胞をフィコールハイパック密度勾配遠心(セロメッド社(Seromed)[
ドイツ国、ベルリン所在])によって収集した。CD34陽性細胞は、幹細胞単離キット
およびMACSカラム(ミルテニーバイオテック社(Miltenyi Biotech
)[ドイツ国、ベルギッシュグラートバハ(Bergisch Gladbach)所在
])を使用して、製造者の指示に従って単離した。細胞純度は、FITC結合抗CD34
抗体(ビーディ バイオサイエンスィーズ イムノサイトメトリーシステムズ(BD B
iosciences、Immunocytometry Systems)[アメリカ
合衆国カリフォルニア州サンホゼ所在])を使用してFACS分析によって調べた。CD
34陽性細胞の画分は、96〜99%の範囲であった。
【0154】
CD34陽性細胞は、FCS20%、組換えヒトIL−3(10ng/ml、ストラト
マンバイオテック(Stratmann Biotech)社[ドイツ国、ハンブルク所
在])、ヒトG−CSF(20ng/ml、アムゲン(Amgen)社[ドイツ国、ミュ
ンヘン所在])、およびヒト組換えFLT3リガンド(100ng/ml、リサーチダイ
アグノスティックス(Research Diagnostics Inc.)社[米国
マサチューセッツ州コンコード所在])を補充したRPMI培地で500000細胞/m
lの密度まで増殖させた。siRNA処理前に、Bcr−Abl切断点変種を決定するた
めに、少量の細胞を使用した。全RNAは、RNイージーミニキット(RNeasy−M
iniKit)(キアゲン(Qiagen)社[ドイツ国、ヒルデン(Hilden)所
在])を使用して、製造者の指示に従って単離し、スーパースクリプト(SuperSc
ript)逆転写酵素(ギブコ ビーアールエル(Gibco−BRL)社[米国カリフ
ォルニア州カールスバッド(Carlsbad)所在])を使用して、製造者の方法に従
ってcDNAを作製するためにRNA1μgを使用した。次に、切断点特異的Bcr−A
blプライマー5’−Bcr−Abl(5’−CTGACATCCGTGGAGCTG−
3’)および3’−Bcr−Abl(5’−CATTGTGATTATAGCCTAAG
A−3’)によるPCRのために1マイクロリットルのcDNAを使用し、390bp断
片(e14a2)または290bp断片(e13a2)を作製した。
【0155】
細胞培養2日目に、細胞をsiRNAで処理した。細胞を増殖培地800μl中で2.
5×10個の密度まで希釈し、4mmエレクトロポレーションキュベット内でアニーリ
ング緩衝液(20mMのNaPO、100mMのNaCl、pH6.9)に溶解したそ
れぞれの50μMのsiRNA溶液12.8μlと混合した。次に、イージージェクトエ
レクトロポレーション、シングルパルス法(250V、1800μF)を使用して、細胞
をエレクトロポレーションした。この処理を24時間後に繰り返した。2回目の処理後、
細胞を洗浄し、因子を除去した。24時間さらに培養した後、ウェスタンブロット分析の
ために細胞を収集した。
【0156】
BAF7またはBAF12(いずれもe14a2特異的)処理によって、ミスマッチ対
照(BAF8)またはe13a2(BAF16)に相同なsiRNAで処理した細胞と比
較してBcr−Ablタンパク質レベルの著しい減少が生じた。さらに、BAF12処理
はBcr−Ablの活性を弱めた。Bcr−Ablのすぐ下流の基質であるCRKLのリ
ン酸化は、BAF12で処理した細胞で著しく減少した(図4参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1B】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図1A】
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【図2A】
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【公開番号】特開2011−201927(P2011−201927A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−157156(P2011−157156)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【分割の表示】特願2007−543452(P2007−543452)の分割
【原出願日】平成17年11月23日(2005.11.23)
【出願人】(505369158)アルナイラム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】ALNYLAM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】