説明

C−反応性タンパク質についての結合剤

本発明は、ポリペプチド二量体に関し、ここで両方のプロトマーは、配列番号1に記載の配列を有し、ここで少なくとも1つのホスホコリン誘導体が当該ポリペプチドに付着される。当該ポリペプチドは、C−反応性タンパク質(CRP)に特異的な結合を示す。本発明はさらに、CRP濃度を決定するためのアッセイ、CRPの精製、およびCRPを含む組成物におけるポリペプチドの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あるタンパク質、本発明の場合においてC−反応性タンパク質に特異的に結合する分子およびその使用の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
折り畳まれたポリペプチドのデノボ設計は、タンパク質構造の我々の理解を高めることを目的とし、そしてまた、状況に応じた機能を備える新規なタンパク質のエンジニアリングのための基盤を提供する。リガンドとの、pH制御された、部位選択的な、自己官能化を受ける、設計され、折り畳まれたポリペプチドは、種々の複雑な分子システム、例えば、モデル糖タンパク質または複雑な受容体の構築のための優れたツールボックスを構成する。
【0003】
国際公開第03/080653号パンフレットの目的は、認識およびレポートの重要なバイオセンシング事象をつなぐ、折り畳まれ、リガンド修飾された、へリックス−ループ−へリックスポリペプチド足場を提供することであった。酵素のヒト炭酸脱水素酵素II、HCAIIと、その阻害剤の4−カルボキシベンゼンスルホンアミドとの間の十分に特徴付けされた相互作用が、主な実証の証明のために選択された。
【0004】
C−反応性タンパク質は、炎症の間、および組織障害後に、増加された量において血流中を循環する血漿タンパク質である。CRP−レベルは、炎症および心血管疾患の増加された危険性の評価のために測定される。心臓手術の間にCRP−レベルを測定することもまた興味深い。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、C−反応性タンパク質(CRP)に特異的に結合するようにさらに修飾されたポリペプチド足場に関する。このような修飾ポリペプチド足場は、以後、「CRP−特異的結合剤」、「CRP−結合剤」、または単純に「結合剤」として言及され、この用語は、そうでないと示されない限り、交換可能に使用される。
【0006】
第1の局面において、本発明は、配列番号1に記載の配列を有するポリペプチドを含むCRP−特異的結合剤に関し、ここで少なくとも1つのホスホコリン誘導体が、当該ポリペプチド、および配列番号1に記載の配列を有するポリペプチドの二量体から形成される4−へリックス束からなるポリペプチド足場に付着され、この結合剤は、ホスホコリン誘導体を含む結合部分、および必要に応じて、検出可能なシグナルを与え得るレポーター基の取り込みにより修飾される。二量体の2つのプロトマーは、互いに、例えば、ジスルフィド結合を介して、供給結合的に付着されてもよく、また互いに非共有結合的に結合されてもよい。個々のプロトマーはまた、結合剤として使用され得る。
【0007】
本発明はまた、第1の実施態様に従うポリペプチドを生成するための方法に関し、当該方法は、以下の工程
− 配列番号1に記載の配列を有するポリペプチドを合成する工程;
− リジンへの、ホスホコリン誘導体の付着に適切な条件下で、ホスホコリン誘導体を、当該ポリペプチドの未ブロックのリジンと接触させる工程;
− 必要に応じて、リジンへの、レポーター基の付着に適切な条件下で、レポーター基を、当該ポリペプチドの未ブロックのリジン基と接触させる工程、を包含する。
【0008】
さらなる局面において、本発明は、治療的および診断的な適用(例えば、薬学的または診断的な組成物中へのこのような結合剤の取り込み、例えば、心臓手術を受ける、または炎症を有することが疑われる、患者からのサンプル中のCRPの濃度を決定するためのアッセイ)における、および生物工学的な適用(例えば、タンパク質の精製または結合アッセイ)における、第1の局面に従う結合剤の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
CRPとポリペプチド足場との間の結合親和性が、ある位置におけるホスホコリン誘導体の付着により劇的に増強され得ることが、本発明者らにより、驚くべきことに示された。ホスホコリン単独は、約1μMの結合親和性を有し、および足場ポリペプチドは約100〜1000μMの結合親和性を有するのに対し、ホスホコリン誘導体で修飾されたポリペプチドは、ナノモル範囲において、CRPについての結合親和性を有する。
【0010】
未修飾の足場は、CRPの表面に結合し、そしてホスホコリン誘導体は、ペプチド足場上の結合部位内の位置において、またはこれに近接して導入されるべきである。この結合部位をCRP上に到達するために、ホスホコリン誘導体は1〜12個の炭素原子、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個の炭素原子のスペーサーを含み得る。
【0011】
本発明の結合剤のさらなる驚くべき利点は、ある哺乳動物種由来のCRPに対して高い親和性を伴うが、他の種由来のCRPに対してはより低い親和性を伴って通常結合する、CRP−特異的抗体とは対照的に、それらが、異なる哺乳動物由来のCRPに対して、高い親和性を伴って結合することである。
【0012】
ポリペプチド足場はまた、CRPに対する結合親和性を最適化するために変化することを考慮して、変化され得る。このことは、好ましくは、ポリペプチド中の、荷電されたアミノ酸残基を、未荷電の残基、もしくは異なる荷電を備える残基に交換することによりなされ、または逆の場合も同じである。例えば、ValまたはAla(未荷電)は、Glu(荷電−1)またはArg(荷電+1)に交換され得る。
【0013】
本発明の実施態様によれば、ポリペプチド足場は少なくとも2つのリジン残基を有し、これに、CRP−結合部分およびレポーター基が、それぞれ、付着され得る。
【0014】
塩基性ポリペプチド足場プロトマーは、配列番号1に記載の配列を有する。このプロトマーは、組換え技術または従来の自動化固相ペプチド合成によるような、当業者に公知の任意の方法により生成され得る。1つ以上の部位がリジンを保有するべきである。これらの位置は、好ましくは、8、10、15、17、22、25、34、および37位から選択される。次いで、CRP結合部分および必要に応じたレポーター基は、以下に考察される方法に従ってリジンに付着される。
【0015】
レポーター基は、リジン残基に付着され得る任意の基であり得、そして検出可能なシグナルを与える。レポーター基の好ましい例は、ダンシル、クマリン、フルオレセイン、ローダミン、およびオレゴングリーン(Oregon Green)誘導体のような蛍光プローブである。レポーター基はまた、ホスホエノールピルビン酸キナーゼのような酵素、または金ナノ粒子のような検出可能な粒子であり得る。レポーター基は、供給者の指示に従って、または他の従来の方法により、リジン残基に付着される。好ましくは、新規に合成されるプロトマーがなお樹脂上にあるままで、レポーター基はプロトマーに付着される。
【0016】
CRP−結合部分は、ホスホコリン部分およびスペーサーを含むホスホコリン誘導体である。スペーサーの長さは、リガンドが足場に付着される場所およびリガンドがCRPに結合する場所に依存する。スペーサーは通常、1〜12個の炭素原子の脂肪族鎖であり、必要に応じて、溶解度を増すために、親水性基で置換される。
【0017】
ホスホコリン誘導体は、プロトマーを、ホスホコリン誘導体の活性なエステルと接触させることにより、プロトマーに付着される。活性なエステルは、以下の一般式を有し、
OP(OH)O(CH(CH(CHCOOR (I)
ここで1≦n≦12であり、Rは、約6〜8のpKを伴う脱離基である。活性なエステルの合成(ここで、nは4、6、または11であり、およびRはp−ニトロ−フェニルである)は、以下の実施例の節において記載される。
【0018】
ホスホコリン誘導体は、実施例の節において開示されるようにポリペプチド足場に導入される。
【0019】
本発明のCRP−結合剤はまた、固体支持体に、必要に応じてリンカーを介して、結合され得る。チップ、プレート、ビーズ、およびメンブレンのような、多くの結合支持体、およびリンカーが市販されており、そして本発明のCRP−結合剤が使用されるべき状況に依存して当業者により組み合され得る。
【0020】
結合アッセイ
本発明の1つの局面は、本発明の結合剤を使用する結合アッセイに、ならびにより詳細には、生物学的サンプル中のリウマチ様因子およびヒト抗マウス抗体(HAMA)から生じる干渉を排除するための方法に関する。
【0021】
異なるタイプのサンドイッチアッセイが広範に使用される。最も一般的なものの1つは、サンドイッチELISAであり、ここでは抗体が抗原を捕獲するために使用され、そして別の標識化抗体が結合された抗原を検出するために使用される。これらの抗体の両方は、通常、哺乳動物起源である。このようなアッセイにおいて、抗哺乳動物IgG抗体がサンプル中に存在し、これはしばしば、血液または血清のような体液に由来し、捕獲抗体に検出抗体を連結することにより抗原の挙動を模倣し得、従って偽陽性反応を引き起こし得る。このような偽陽性反応は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方に基づくサンドイッチアッセイにおいて観察される。
【0022】
益々の数の患者が、診断および治療のためにマウスモノクローナル抗体を与えられる。モノクローナル抗体の投与はしばしば、患者において抗体応答を誘導し12;ヒト抗マウス抗体(HAMA)が生成される。マウスモノクローナル抗体に基づくサンドイッチ型アッセイは、HAMAが患者の血清に存在する場合、偽陽性反応を与えることが知られる。このことは、モノクローナル抗体で処置される患者の数が増加するので、臨床化学実験室において益々高まる問題である。
【0023】
リウマチ様因子(RF)はまた、多くの免疫アッセイにおける干渉の主要な供給源である。RFは、哺乳動物IgGのFc部分と反応する自己抗体である。RFは、IgA、IgG、またはIgMクラスであり得る。関節リウマチ(RA)を伴う60%〜80%の間の患者が、それらの血清中にRF活性を有する。RFはまた、他の結合組織の疾患を伴う患者由来の血清において、および多くの他の疾患において見出されている。RFはIgGのFc部分と反応するが、それらは異なる種のIgGに対するそれらの反応性において、多様性を示す。他の種のIgGに対するこの反応性は、抗体を含むアッセイにおいて偽反応を生じ得る。RFについての伝統的な試験は、凝集試験であり、これにおいて、RFは2つの(またはこれがIgM−RFである場合、2つより多くの)異なる哺乳動物IgG分子と反応し、従って凝集を引き起こす。同じ反応は、サンドイッチELISAにおいて、偽陽性反応を与え、検出するためにアッセイが設計された抗原の不在下での、捕獲抗体に対する検出抗体の結合に起因する。
【0024】
抗IgG抗体は通常、IgG分子のFc部分に対して指向されるので、上述の問題に対する1つのアプローチは、アッセイにおけるFabフラグメントの使用である。しかし、純粋なFabフラグメントを生成するためのIgGの消化は、多大な時間を要し、ならびに、通常、抗体力価の喪失を生じ、そして抗Fab抗体により引き起こされる干渉を減少しない。さらに、干渉する抗体を取り除くためのマウスIgGもしくはマウス血清の添加、またはクロマトグラフィーが、上記の問題を回避するために使用されてきた。正常なマウスIgGまたは正常なマウス血清の添加は、時折、偽陽性反応を排除できない。クロマトグラフィーによる干渉する抗体の除去は多大な時間を要し、そして日常的な分析にあまり適切でない。
【0025】
それゆえ、本発明の1つの局面はアッセイにおける少なくとも1つの抗体を、HAMAまたはRFにより結合されない本発明の結合剤に交換することである。
【0026】
この局面の1つの実施態様において、本発明は、サンプル中のC−反応性タンパク質の濃度をアッセイするための方法に関し、以下の工程
− サンプルを、請求項1〜6のいずれかに記載の第1のポリペプチド二量体と接触させる工程であって、該第1のポリペプチドは固体支持体に結合される工程;
− サンプルを、請求項3〜6のいずれかに記載の、これに付着されるレポーター基を有する、第2のポリペプチド二量体と接触させる工程;および
− 該第2のポリペプチド二量体上のレポーター基の存在または不在を検出する工程、を包含する。
【実施例】
【0027】
ホスホコリン誘導体PC6、PC11、およびPC4の合成
ポリペプチド足場に付着されるべきホスホコリン誘導体は、上述で説明されるように、1〜12個の炭素原子のスペーサーを有し得る。これらはホスホコリンについて、PCと表わされ、スペーサーの長さを与える番号が続き、すなわちPC6は、6個の炭素原子のスペーサーを有する。
【0028】
PC6の合成のために、本発明者らは、通常、スキーム1において概説されるような単純なおよび短い経路を選択する。第1の工程において、6−ジメチルアミノヘキサン酸を、良好な収率における触媒的水素化条件の下、ホルムアルデヒドでの対応するアミノ酸のアルキル化により調製した。得られる第3級アミンを、強力な酸性カチオン交換体で単純に精製した。次いで、カルボン酸基をエステル化して、本質的に定量的収率においてメチルエステルを形成し、精製工程は必要とされなかった。続いて、臭化物(これは、ジエチルクロロホスフェートおよび2−ブロモエタノールから容易に調製された)でのアルキル化を進行して、通常、ごく中程度の収率を伴った。RP HPLC精製後、メチルエステルを、水酸化リチウムで切断し、そしてカルボン酸を、殆ど定量的収率において得、そして精製は必要とされなかった。活性なエステルの生成を、p−ニトロフェニルクロロホメート、塩基、およびDMAPを利用する、Kimらの手順に従って行った。活性なエステルを、RP HPLC精製後に、わずか28%の収率において得た。リン酸基の最終的な脱保護を、カルボン酸エステルを影響しない穏やかな条件下、TMSBrで行った。他方、この反応の間のいくつかの基質についての副生成物の形成は、この手順の公知の不利点である。しかし、本発明者らは、モノ−脱保護化リン酸およびリン酸基を伴わない第4級アミン以外は、25%の収率において所望のリン酸を得た。
【0029】
PC11の調製のために、本発明者らは、面倒な精製手順および溶解度の問題を回避するために、固相上でいくつかの工程を包含する合成経路を選択した(スキーム2)。それゆえ、DIC法を利用して、Fmoc−保護化ウンデカン酸をWang樹脂に66%の収率において結合した。ピペリジンでの脱保護後、ジメチル化を、ギ酸および水素化ホウ素ナトリウムで達成した。第4級化アミンに対するアルキル化工程は、遅い反応であり、そして10当量のホウ素および4日間の加熱を必要とした10。樹脂からの切断後、本発明者らがPC6について使用した同じ方法により、粗生成物を活性なエステルに転換した。リン酸基の最終的な脱保護工程は、PC6に類似して進行し、二次生成物の形成を伴ったが、27%の所望の生成物が得られた。
【0030】
スキーム1
PC6−pニトロフェニルエステル合成
リン酸2−ブロモ−エチルエステルジエチルエステル。乾燥ジクロロメタン(25mL)中の2−ブロモエタノール(1.42mL、20mmol)および乾燥ピリジン(3.23mL、40mmol)の溶液を、0℃に冷却した。ジエチルクロロホスファート(3.36mL、23mmol)を滴下して添加し、そして反応混合物を室温にて24時間攪拌した。ジエチルエーテル(40mL)および1N HCl(40mL)を添加し、そして有機層を分離し、続いて1N HClおよび飽和化NaHCO3で洗浄し、そしてMgSO4上で乾燥した。溶媒の蒸発後、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ペンタン 1:1)により精製して、生成物(4.85g、18.6mmol、93%)を、淡黄色がかった油として得た。
【0031】
【数1】

【0032】
6−ジメチルアミノヘキサン酸。水中のアミノ酸(1.32g、10mmol)の溶液を、過剰のホルムアルデヒド(4mL)および10% Pd/C(0.5g)の存在下、90psiのH2で、室温にて、36時間、Parr装置において、水素化した。触媒を濾過により除去し、そして熱水で2回洗浄した。合わせた水層を、DOWEX 50WX2−100イオン交換カラムを介して通過させた。水での洗浄後、カラムを2%の水性NH4OHで溶出して、純粋な生成物(1.39g、8.7mmol、87%)を、無色の結晶として得た。
【0033】
6−ジメチルアミノヘキサン酸メチルエステル。乾燥メタノール(50mL)中の6−ジメチルアミノヘキサン酸(1.37g、8.6mmol)の氷冷溶液に、塩化チオニル(9mL)を、30分間にわたって、滴下して添加した。反応混合物を室温に加温し、そして一晩攪拌した。溶媒を減圧下で蒸発した。メタノールの反復添加、およびその後の蒸発は、メチルエステルを、無色の固体として、純粋な形態において、殆ど定量的収率において得た。
【0034】
【数2】

【0035】
[2−ジエトキシ−ホスホリルオキシ]−エチル−(5−メトキシカルボニル−ペンチル)−ジメチルアンモニウムトリフルオロ酢酸。メチルエステル(1.73g、10mmol)を、乾燥アセトリトリル(15mL)中に溶解し、そしてKCO(1.38g、10mmol)を添加した。この懸濁液を、窒素ガス下で36時間、還流した。室温への冷却後、水を添加し、そしてTFAを添加することにより、pHを2に調節した。溶液を、rp HPLC(Supelco Discovery C18、21.2mm×15cm、5μm、A:5% IPA、95% HO、0.1% TFA、B:90%IPA、10% HO、0.1%TFA、0〜15% B 14分間にわたる、t=11.8分)により精製し、そして凍結乾燥して、第4級アミンのTFA塩を、淡黄色の油(1.06g、3.0mmol、30%)として得た。LC−MS(Phenomenex Gemini、C18、5μm、150×3.0mm、A:水中の0.1%ギ酸、B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸、10〜50% B、10分間にわたる)、t=6.4分(LSDシグナル)、m/z=[M+H]に対して354.2。
【0036】
【数3】

【0037】
(5−カルボキシ−ペンチル)−[2−(ジエトキシ−ホスホリルオキシ)−エチル]−ジメチルアンモニウムトリフルオロ酢酸。第4級アミン(200mg、0.56mmol)のTFA塩を、t−ブタノール/水(2:1,9mL)およびLiOH・HO(47mg、1.12mmol)の混合液中に溶解した。反応混合物を3時間、室温にて攪拌し、そして有機溶媒を減圧下で除去した。0.1N HClで水溶液のpHを7に調節し、そして混合物を続いて凍結乾燥して、精製を伴わずにさらに使用した。LC−MS(Phenomenex Gemini、C18、5μm、150×3.0mm、A:水中の0.1%ギ酸、B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸、10〜40% B、10分間にわたる)、t=6.8分(LSDシグナル)、m/z=[M+H]について、340.2;
【0038】
【数4】

【0039】
[2−(ジメトキシ−ホスホリルオキシ)−エチル]−ジメチル−[5−(4−ニトロ−フェノキシカルボニル)−ペンチル]−アンモニウムトリフルオロアセタート。乾燥アセトニトリル(3mL)中のカルボン酸(26mg、0.076mmol)の溶液に、トリエチルアミン(0.01mL、0.084mmol)、p−ニトロフェニルクロロホルマート(31mg、0.15mmol)、およびDMAP(1mg)を続けて添加した。反応を、水中の0.1%TFAの添加により4時間後に停止し、その後rp HPLC(Supelco Discovery C18、21.2mm×15cm、5μm、A:5%IPA、95%HO、0.1%TFA、B:90% IPA、10% HO、0.1%TFA、20〜40% B 12分間にわたる、t=10.3分)により精製して、p−ニトロフェニルエステルを無色の油として得た(10mg、0.022mmol、28%)。LC−MS(Phenomenex Gemini、C18、5μm、150×3.0mm、A:水中の0.1%ギ酸、B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸、10〜90% B 8分間にわたる)t=4.3分(UVシグナル)、m/z=[M+H]について、461.5。
【0040】
【数5】

【0041】
ジメチル−[5−(4−ニトロ−フェノキシカルボニル)−ペンチル]−(2−ホスホノオキシ−エチル)−アンモニウムトリフルオロアセタート。保護されたp−ニトロフェニルエステル(20mg、0.043mmol)を、乾燥アセトニトリル(3mL)中に溶解し、そしてトリメチルシリルブロミド(0.11mL、0.87mmol)を添加した。反応混合物を室温にて24時間攪拌した。水中(1mL)の0.1%TFAを添加した後、溶液をrp HPLC(Supelco Discovery C18、21.2mm×15cm、5μm、A:水中の0.1%TFA、B:アセトニトリル中の0.1%TFA、17〜30% B 14分間にわたる、t=12.7分)により精製して、ホスホコリン誘導体のPC6−pニトロフェニルエステル(4.6mg、0.011mmol、25%)をTFA塩として得た。LC−MS(Phenomenex Gemini、C18、5μm、150×3.0mm、A:水中の0.1%ギ酸、B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸、10〜90% B 10分間にわたる)、t=3.8分(UVシグナル)、m/z=[M+H]について、405.5。
【0042】
スキーム2
【0043】
【化1】

【0044】
(10−カルボキシ−デシル)−[2−(ジエトキシ−ホスホリルオキシ)−エチル]−ジメチル−アンモニウムトリフルオロアセタート
Fmoc−ウンデカン酸(635mg、1.5mmol)を乾燥DMF(2ml)中に溶解し、そして乾燥ジクロロメタン(10ml)中のジイソプロピルカルボジイミド(0.12ml、0.75mmol)の溶液を添加した。得られる黄色の混合物を、0℃にて20分間攪拌した。揮発性ジクロロメタンの除去後、対称無水物の溶液をWang樹脂(250mg、1.2mmol/g、0.3mmol)に添加した。DMAP(18mg、0.15mmol)を添加し、そして反応混合物を一晩攪拌した(W.C.Chan,P.D.White Fmoc固相ペプチド合成、実践的なアプローチにおいて(W.C.Chan,P.D.White編)Oxford University Press、Oxford 2000、55〜56頁)。樹脂をDMF(5×2分間)、ジクロロメタン(5×2分間)で洗浄し、そしてジエチルエーテルで収縮した。手順を1回反復し、そして0.8mmol/g(66%)の最終置換レベルを、Fmoc−ピペリジン付加物のUV分光光度法に基づいて決定した(同書、62〜63頁)。
【0045】
20%ピペリジン/DMFでのFmocの脱保護後、樹脂をTHF中で膨張した。THF(2ml)、ホルムアルデヒド(40%、0.7ml、1mmol)、および酢酸(0.7ml)の混合物を添加し、そして樹脂を5分間インキュベートした。次いで、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(62mg、1mmol)を添加し、そして樹脂を室温にて一晩攪拌した。その後、樹脂をTHF、HO、およびMeOHで続けて洗浄した。
【0046】
E.G.Brown、J.M.Nuss Tetrahedron Lett.1997年、38、8457−8460。
【0047】
樹脂を、DMF中で膨張させ、そしてリン酸ジエチルエステル−(2−ブロモ−エチルエステル)/リン酸2−ブロモ−エチルエステルジエチルエステル(520mg、2mmol)およびDIEA(0.03ml、0.2mmol)を添加し、そして反応混合物を60℃にて4dの間加熱した。樹脂をDMF、DCMで洗浄し、そしてMeOHで収縮した。
【0048】
J.Cai,B、Wathey Tetrahedron Lett.2001、42、1383−1385。
【0049】
生成物を最終的に、TFA/HO/TIS(95:2.5:2.5)の混合物で、2時間、これを攪拌することにより樹脂から切断した。カルボン酸を、有機溶媒の蒸発後に使用し、水を添加し、そしてさらなる精製を伴わずに凍結乾燥した。
【0050】
【化2】

【0051】
[2−(ジエトキシ−ホスホリルオキシ)−エチル]−ジメチル−[10−(4−ニトロ−フェノキシカルボニル)−デシル]−アンモニウムトリフルオロアセタート
乾燥アセトニトリル(5ml)中のカルボン酸Xの溶液に、トリエチルアミン(0.03ml、0.2mmol)、p−ニトロフェニルクロロホルマート(80mg、0.39mmol)、およびDMAP(7mg)を続けて添加した。4時間後、水中の0.1%TFAの添加により反応を停止し、そして続いてRP HPLC(Supelco Discovery C18、21.2mm×15cm、5μm、A:IPA/HO 5:95中の0.1%TFA、B:IPA/HO 90:10中の0.1%TFA、15〜45% B 20分間にわたる、t=16.5分)により精製して、p−ニトロフェニルエステルXを無色の油として得た(4mg、0.007mmol、%)。LC−MS(Phenomenex Gemini、C18、5μm、150×3.0mm、A:水中の0.1%ギ酸、B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸、10〜90% B 10分間にわたる)、t=5.2分(UVシグナル)、M=531.5(M)。
【0052】
【化3】

【0053】
ジメチル−[10−(4−ニトロ−フェノキシカルボニル)−デシル]−(2−ホスホノオキシ−エチル)−アンモニウムトリフルオロアセタート
保護化p−ニトロフェニルエステル(4mg、0.007mmol)を、乾燥アセトニトリル(3ml)中に溶解し、そしてトリメチルシリルブロミド(0.11ml、0.07mmol)を、0、12、および24時間後に、それぞれ添加した。反応混合物を室温にて、合計36時間攪拌した。水中(1ml)の0.1% TFAの添加後、溶液をrp HPLC(Hichrom C8、21.2mm×25cm、10μm、A:ACN/HO 10:90中の0.1%TFA、B:ACN/HO 90:10中の0.1%TFA、40〜60% B 15分間にわたる、t=14.2分)により精製して、ホスホコリン誘導体(1.1mg、0.002mmol、27%)をTFA塩として得た。
【0054】
LC−MS(Phenomenex Gemini、C18、5μm、150×3.0mm、A:水中の0.1%ギ酸、B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸、10〜90% B 10分間にわたる)、t=5.9分(UVシグナル)、M=475.4[M]。
【0055】
PC4
【0056】
【化4】

【0057】
4−ジメチルアミノ酪酸メチルエステル
PC6についてと同じ手順
【0058】
【数6】

【0059】
LC−MS(Phenomenex Gemini、C18、5μm、150×3.0mm、A:水中の0.1%ギ酸、B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸、10〜50% B 10分間にわたる)、t=1.3分(ELSDシグナル)、M=146.4([M+H])。
【0060】
【化5】

【0061】
[2−ジエトキシ−ホスホリルオキシ)−エチル]−(3−メトキシカルボニル−プロピル)−ジメチルアンモニウムトリフルオロアセタート
メチルエステルX(516mg、3.5mmol)を、乾燥アセトニトリル(8ml)中に溶解し、そしてKCO(484mg、3.5mmol)を添加した。この懸濁液を窒素ガス下で24時間、還流した。室温への冷却後、水を添加し、そしてpHをTFAの添加により2に調節した。溶液をrp HPLC(Supelco Discovery C18、21.2mm×15cm、5μm、A:HO中の0.1% TFA、5% IPA、B:IPA中の0.1%TFA、10% HO、0〜10% B 10分間にわたる、t=8.8分)により精製し、そして凍結乾燥して、第4級アミンのTFA塩を、淡黄色の油として得た。
【0062】
【数7】

【0063】
【化6】

【0064】
(3−カルボキシ−プロピル)−[2−(ジエトキシ−ホスホリルオキシ)−エチル]−ジメチルアンモニウムトリフルオロアセタート
PC6についてと同じ手順。
【0065】
LC−MS(Phenomenex Gemini、C18、5μm、150×3.0mm、A:水中の0.1%ギ酸、B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸、10〜50% B 10分間にわたる)、t=1.8分(ELSDシグナル)、M=312.3[M]。
【0066】
【化7】

【0067】
[2−(ジメトキシ−ホスホリルオキシ)−エチル]−ジメチル−[3−(4−ニトロ−フェノキシカルボニル)−プロピル]−アンモニウムトリフルオロアセタート
乾燥アセトニトリル(5ml)中のカルボン酸の溶液に、トリエチルアミン、p−ニトロフェニルクロロホルマート、およびDMAPを連続的に添加した。反応を、水中の0.1%TFAの添加により4時間後に停止し、続いてRP HPLC(Supelco Discovery C18、21.2mm×15cm、5μm、A:HO中の0.1% TFA、5% IPA、B:IPA中の、0.1%TFA、10% HO、10〜30% B 13分間にわたる、t=11.8分)により精製して、p−ニトロフェニルエステルを、無色の油として得た。
【0068】
LC−MS(Phenomenex Gemini、C18、l5μm、150×3.0mm、A:水中の0.1%ギ酸、B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸、10〜90% B 10分間にわたる)、t=3.1分(UVシグナル);M=433.2(M)。
【0069】
PC6の調製のための代替のスキーム
優先年の間に、ホスホコリンリガンドPC6を調製するための代替のストラテジーが開発された。これは以下に概説される。PC6(化合物9)の調製のためのこのストラテジーは、スキーム3において概説される。リン酸化は、この基が、保護化形態にあっても、他の必要な転換工程を通じて保有するには問題があると考慮されたので、最終工程として選択された。
【0070】
市販のアミノヘキサン酸2を、Eschweiler−Clarke−型手順(ホルムアルデヒドおよび水素/パラジウム/炭素での処理)によりN,N−ジメチル化11 12し、そして得られる生成物(3、86%)をメタノール塩酸での処理によりエステル化して、メチルエステル4(96%)を得た。第4級化は、4と、モノメトキシトリチル保護化ブロモエタノール1とを反応することにより達成し、誘導体5を形成した(73%)。未保護のブロモエタノールはまた、4と反応し得たが、反応収率はより低く、そして生成物を検出および精製することはより困難であった。モノメトキシトリチル保護は、重要中間体5に対して、親油性およびTLC検出能(UV可視および酸染色可能)を付与した。水酸化リチウム/水/t−ブタノールでの5の鹸化は、対応する酸6(95%)を与え、これはピリジン中のp−ニトロフェノールおよびジイソプロピルカルボジイミドでの単離を伴わないで処理されて、p−ニトロフェニルエステル7を与えた(86%)。ギ酸での7の短い処理は、対応するアルコール8を与え、これは、その自己縮合に対する感受性のために次の工程において直接的に使用された。アセトニトリル中、0℃での、先ず過剰なオキシ塩化リンおよびトリエチルアミンとの、次いで水との、粗8の反応は、HPLC精製後に、7から、22%の収率において所望のモノリン酸9を与えた。化合物9は、予測されるNMRおよびLC−MSスペクトルを与え、そして酸性pH(0.1% TFA)にて、水溶液中で安定であった。しかし、簡便な保存のために、材料を、冷凍庫において、DMSOストック溶液として維持した。
【0071】
【化8】

【0072】
スキーム3、試薬、条件、および収率:a:CHO、H、Pd/C(86%);b:CHOH、HCl(96%);c:NaCO、CHCN(73%);d:LiOH、t−BuOH/HO(95%);e:DIPCDI、ピリジン(86%);f:HCOOH/HO;g:POCl,TEA;h:HO(7からの22%)。
【0073】
一般的な手順 − 濃縮を、減圧下で行った(浴温40℃未満)。NMRスペクトルを、298°Kにて、Varian Unity 500 MHz分光器を用いて、記録した。選択されたNMRデータのみが報告された。配置を、適切な2−D実験により確認した。希釈エタノールまたはアセトニトリル溶液についてのエレクトロスプレイ質量分析(ES−MS)を、Perkin−Elmer SCIEX API 150−EX質量分光器を使用して、直接導入態様において行った。陽イオン態様スペクトルを記録し、そしてApple MacIntosh Quadraコンピューター上で製造業者のソフトウェアを使用してプロセスした。
【0074】
TLCを、Silica Gel F254(Merck、Darmstadt、Germany)プレートにおいて行い、UV光線による、および/またはブタノール中の5%ニンヒドリンもしくはエタノール中の5%硫酸のいずれかでの染色による検出を伴った。カラムクロマトグラフィーを、そうでないと言及しない限り、Matrexシリカゲル60Å(オングストローム)(35〜70μm、Amicon)上で行った。分取HPLCを、9012勾配ポンプ、9065ダイオードアレイ検出器、およびVarian Star HPLCソフトウェアを動作するPCコンピューター系からなるVarian HPLC系を使用して行った。International Sorbent Technology Ltd (Mid Glamorgan、UK)からのIsolute C−18 EC 逆相シリカ(40〜70ミクロン粒径)を、特定の溶媒で、充填し、そして開口ガラスカラム中に抽出した。他の試薬および溶媒を、高い業務用品質で購入し、そしてそうでないと言及しない限り、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0075】
2−モノメトキシトリチルオキシ−1−ブロモエタノール(1) − この化合物を、対応するトリチル誘導体13と同じように調製した。簡潔には、モノメトキシトリチルクロリド(3.09g、10mmol)を、乾燥ピリジン(5mL)中のブロモエタノール(1.0g、8.0mmol)の溶液に、室温にて添加した。12時間後、TLC(ヘキサン−酢酸エチル、9:1)は、2つのUV吸収点の存在を示し、1つ(大きい方)は、rf 0.9を伴い、1つ(小さい方)はrf 0.7を伴った。水(0.1mL)を添加し、そして室温にて15分の攪拌後、混合物を、酢酸エチルと2M 硫酸水溶液との間に分配し、有機層を重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、そして濃縮した。ペンタン−酢酸エチル95:5中に充填し、そしてペンタン−酢酸エチル95:5−90:10の段階的勾配で溶出した、シリカゲル(160g)上でのカラムクロマトグラフィーにより、残渣を精製した。主要なバンドの回収物は、1をシロップとして与え(2.75g、87%)、これは静置の際に結晶化した。あるいは、クロマトグラフィーを省略し得、そしてメタノールから直接的に結晶化された粗シロップは、純粋な結晶を、40−50%の収率において与えた。直接導入ES−MSは、m/z 273(モノメトキシトリチル陽イオン)にて大きなピークを示したが、わずかに2つの非常に小さなピークを419/421(M+Na)にて示した。H−NMRデータ(CDCl):
【0076】
【数8】

【0077】
6−(N,N−ジメチルアミノ)−N−[2−(モノメトキシトリチルオキシ)−エチル]−ヘキサン酸メチルエステル(5) −
水性ホルムアルデヒド(37%、40mL)中の6−アミノヘキサン酸(2、13.2g)の溶液を、Pd/C(1.0g)と混合し、混合物を、磁性攪拌を備えるParrステンレススチール装置において、一晩、室温および50バールにて水素化した。TLC(酢酸エチル−メタノール−酢酸−水、6:3:3:2、ニンヒドリン検出)による確認は、開始材料(rf 0.7)からよりゆっくりと移動する生成物(rf 0.5、茶味を帯びた色)へのほとんど完全な変換を明らかにした。反応混合物を、Celiteの層を介して濾過し、フィルター層を水(20mL)で洗浄し、希釈し(60mL)、そして溶液をDowex−50 W×2−100メッシュのカラム(H+ホルム、0.7meq/mL、150mL、ミリ−Q水で注意深く予洗した)を介して、ゆっくりと通過させた。次いで、カラムをミリ−Q水で洗浄し(200+100mL)、次いで生成物を2%アンモニア水溶液(400mL)で溶出した。溶出物を、TLC(酢酸エチル−メタノール−酢酸−水、6:3:3:2、ニンヒドリン検出)によりモニターした。適切な画分を部分的に蒸発し、次いで凍結乾燥して、半固体の残渣の状態にした(13.7g、86%)。直接導入ES−MSは、m/z 160.2(M+H)での強力なピークを明らかにし、N,N−ジメチル化生成物に対応した(3)。
【0078】
メタノール(75mL)中のこの粗材料(3.97g、25mmol)の画分を、氷中で冷却し、そして塩化チオニル(10mL、134mmol)を、30分間、滴下して添加しながら、攪拌し、その後、冷却を止め、そして混合物を室温にて一晩、そのままにした。TLC(酢酸エチル−メタノール−酢酸−水、10:3:3:2、ニンヒドリン検出)による確認は、わずかにより早く移動する化合物への変換を明らかにし、より弱い染色および異なる色合いを伴った。また以前の工程から持ち越された、少量のより早く移動する不純物があった。16時間後、反応混合物を濃縮し、そしてメタノールと、数回、共濃縮して残渣(5.05g)を得、これは静置の際に部分的に結晶化した。この材料の直接導入ES−MSは、m/z 174.0(M+H)での強力なピークを明らかにし、6−(N,N−ジメチルアミノ)−ヘキサン酸メチルエステル(4)に対応した。
【0079】
この粗材料(1.12g、純度約75%、4.0mmol)の画分、乾燥アセトニトリル(25mL)、2−(モノメトキシトリチルオキシ)−2−ブロモエタノール((1、1.60g、4.0mmol)、および固体無水炭酸ナトリウム(800mg)を、一晩、還流(浴温70℃)し、その後TLCは、部分的な変換のみを示し、従ってより多くの1(800mg、2.0mmol)および炭酸ナトリウム(500mg)を添加し、そして還流をさらに24時間継続した。次いで、TLCは、開始材料の大部分が消失したこと、そして新しい、より早く移動するニンヒドリン染色およびUV−吸収のスポットがあったことを示した。混合物を、ジクロロメタンと水との間に分配し(所望の材料は、有機相中にあった)、水相を少量のジクロロメタンで洗浄し、そして合わせた有機層を、少量の水で洗浄し、次いで小容量(10mL)に濃縮し、これを、メチル−t−ブチルエーテルと水との間に分配した(所望の金属はここで水相中にあった)。有機相を少量の水で洗浄し、そして合わせた水層を少量のメチル−t−ブチルエーテルで洗浄した。合わせた水溶液を短時間、回転蒸発して、非水性溶媒を除去し(約1/3の容量が除去された)、そして残余の溶液を、Bond−Elut C−18−ECカラム(35g、メタノール中に充填され、次いで水で平衡化される)を介して通過させ、水での洗浄後、水中の、最初に20%、50、次いで最終的に60%のメタノールで洗浄した。所望の材料は、60%メタノール溶出で、純粋なバンドとして溶出された。適切な画分を回収し、数滴のピリジンを添加し、そして溶液を凍結乾燥して、化合物5を白色の固体として残した(1.53g、73%)ES−MSは、強力な490ピーク[M+]を示した。H−NMRデータ(CDCl3):
【0080】
【数9】

【0081】
6−(N,N−ジメチルアミノ)−N−[2−(モノメトキシトリチルオキシ)−エチル]ヘキサン酸 p−ニトロフェニルエステル(7) − 2:1ブタノール−水(6.0mL)中の化合物5(420mg、0.86mmol)の溶液を、水酸化リチウム(72mg)と混合し、そして溶液を、室温にて3時間、攪拌し、その後TLC(酢酸エチル−メタノール−酢酸−水、12:3:3:2)は、僅かにより低いrf.を伴う化合物への完全な変換を示した。この段階でのES−MSスペクトルは、m/z 476.0および482.3ピーク(それぞれ、M+HおよびM+Li)を示した。混合物を水(10mL)で希釈し、pHを、0.1M 塩酸により7.5に調節し、次いで溶液を凍結乾燥して、粗6(510mg、塩化リチウムが混入された)を得た。この材料(約0.86mmol)を乾燥ピリジン(6.0mL)中に溶解し、次いでp−ニトロフェノール(400mg、2.86mmol)、およびジイソプロピルカルボジイミド(270マイクロL、0.176mmol)を添加した。室温での3時間の攪拌後、ジイソプロピルカルボジイミドのさらなる分量(200マイクロL)を添加し、そして混合物をさらに24時間、室温にて攪拌し、その後、TLC(酢酸エチル−メタノール−酢酸−水、15:3:3:2)は、完全な反応を示した。混合物を蒸発し、そしてジクロロメタン−トルエンとともに共蒸発×3して、ピリジンを除去した。残渣を、0.2M酢酸トリエチルアンモニウム水溶液(pH5.0)とメチル t−ブチルエーテルとの間で分配した(約100mLの各溶媒、および激しい振盪が、すべてを溶解するために必要であった)。TLC(酢酸エチル−メタノール−酢酸−水、10:3:3:2、UVおよびニンヒドリン検出)は、生成物が、水相中にもっぱらあるのに対し、大部分のp−ニトロフェノール、およびまたUV吸収不純物は、有機相中にあったことを示した。有機層を、少量の水性緩衝液で洗浄し、そして合わせた有機層を、メチル t−ブチルエーテルで洗浄し、次いでジクロロメタンで抽出した(TLCは、ここで有機層への生成物の完全な移行を示した)。水層を少量のジクロロメタンで洗浄し、そして合わせた有機層を小量の緩衝液で洗浄し、そして注意深く分離した。この時に、TLCは、非常に純粋な材料の存在を明らかにし、そしてH−NMRはまたこのことを確認した。材料を、溶液中で、冷凍庫において維持したが、必要であれば濃縮され、シロップ状の、粗7(440mg、86%)を得ることができた。この形態において、材料はまた、数週間、冷凍温度にて、未変化のままであった。材料のES−MSは、m/z 596.8(M+)にて強力なシグナルを示した。HNMRデータ(CDCl3):
【0082】
【数10】

【0083】
6−(N,N−ジメチルアミノ)−N−[2−(ホスホリルオキシ)−エチル]ヘキサン酸 p−ニトロフェニルエステル(9) − 化合物7(55mg、0.10mmol)の溶液を、ギ酸(2mL)中に溶解し、そして室温にて60分間維持し、次いでこれを濃縮し、そして乾燥アセトニトリルで共濃縮×3した。残余の化合物8は、TLC(酢酸エチル−メタノール−酢酸‐水、6:3:3:2、ニンヒドリンおよびUV検出)およびES−MS(m/z 325.2、M+)により理想的な純度を示し、乾燥アセトニトリル(0.5mL)中に溶解し、そして乾燥アセトニトリル(0.5mL)中のオキシ塩化リン(0.019mL、0.2mmol、新鮮に希釈した)およびトリエチルアミン(0.069mL、0.5mmol)の冷却(0℃)溶液に添加した。0℃にて1時間後、追加のオキシ塩化リン(0.05mL)およびトリエチルアミン(0.05mL)を添加し、さらに1時間後、水(0.05mL)を添加し、そして混合物をさらに0℃にて1時間、攪拌し、その後TLCは、大部分の開始材料の消失、および非常に低い(rf 0.05)移動度を伴う、UV吸収スポットの出現を示した。反応混合物を、0.2% TFA水溶液(3.8mL)で希釈し、メチル−t−ブチルエーテル(3.5mL)で洗浄し、そして水相を注意深く分離し、短時間、35℃にて回転蒸発し(約2/3の容量に減少)、そして得られる溶液を、400マイクロL分量において、8.0mL/分の流動、および40分間にわたるアセトニトリル中の82%〜58%水の勾配を使用して(0.1% TFA濃度を全体を通して維持した)、Supelco Discovery C−18カラム(15×21.2cm、5マイクロM)上に注入した。1つの大きなおよび1つの小さなUV吸収(300nm)ピークが、18〜20分、および24〜26分にて、それぞれ見られ、所望の化合物9および開始材料8に、それぞれ対応した。9を含有する画分をプールし、小容量に濃縮し、そして凍結乾燥して、純粋な9を非晶質な材料として得た(9mg、7からの22%)、LC−MSスペクトルは、優先的なm/z 405.2シグナル(M+)を示した。H−NMRデータ(DMSO−d6):
【0084】
【数11】

【0085】
ペプチド合成
16個の42残基ペプチドのライブラリー(図1)を、固相ペプチド合成により調製した。ライブラリーの成分は、荷電される残基の数およびリガンドの取り込みの部分に関して変化した。合成手順は、各場合において同じであり、そして3−C15L8Cys24(TA4Cys(Acm))の手順により本明細書中で例示される。
【0086】
ポリペプチドを、標準的なFmoc化学を使用して、Pioneer自動化ペプチド合成器(Applied Biosystems)において合成した。合成は、Fmoc−PAL−PEG−PS樹脂上で、0.2mmol/gの置換レベルを伴って、0.1mmolスケールにおいて行った。以下のアミノ酸誘導体(Novabiochem AG)を使用した:Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−Asn(Trt)−OH、Fmoc−Asp(tBu)−OH、Fmoc−Cys(Acm)−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Glu(tBu)−OH、Fmoc−Gly−OH、Fmoc−His(Trt)−OH、Fmoc−Ile−OH、Fmoc−Leu−OH、Fmoc−Lys(Aloc)−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OH、Fmoc−Nle−OH、Fmoc−Phe−OH、Fmoc−Pro−OH、Fmoc−Val−OH。Lys15の側鎖はAloc保護され、一方Boc保護が、Lys8について使用された。4倍過剰のアミノ酸誘導体を各カップリング工程について使用した。TBTU(O−(7−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート、DMF中の0.5M)を、DIEA(ジイソプロピルエチルアミン、DMF中の1M)と組み合わせたカップリング試薬として使用した。Gln、Cys、Pro、およびHis(90分間)、ならびに最初の残基、Arg、およびAsn(2h)以外は、60分間の標準的なカップリング時間を使用した。従来の自動化固相ペプチド合成を完了した後、遊離N−末端を、酢酸無水物/ジクロロメタン(3:1)の混合物で2時間処理して、酢酸無水物でアセチル化し、そして樹脂を、ジクロロメタンで洗浄し(×6)、そしてジエチルエーテルで収縮した。Aloc保護基を、2.5時間、クロロホルム/酢酸/NMM(N−メチルモルホリン(18:2:1)中の3当量のテトラキス(トリフェニル)パラジウム(0)で除去した。樹脂を、DIEA(DMF中の0.5%)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(DMF中の0.5%)。DMF、ジクロロメタンで続けて洗浄し、そしてジエチルエーテルで収縮した。7−メトキシクマリン−3−カルボン酸(3当量)を、4時間、DMF中のHBTU(3当量)、HOBt(3当量)、およびDIEA(6当量)で、Lys15の側鎖に結合した。樹脂を、DMF、ジクロロメタンで洗浄し、そしてジエチルエーテルで収縮した。ペプチドを、2時間にわたって、室温にて、TFA、TIS(トリイソプロピルシラン)、および水(95:2.5:2.5、100mgの樹脂あたり1ml)で樹脂から切り出した。TFAを減圧下で蒸発し、そしてペプチドを冷却ジエチルエーテルの添加により沈殿し、遠心分離し、洗浄し、そして凍結乾燥した。粗生成物を、RP HPLC(Hichrom C8、21.2mm×25cm、10μm、A:HO中の0.1%TFA、10%ACN、B:ACN中の0.1%TFA、10%HO、38〜46% B 18分間にわたる、t=16.0分)によって精製した。
【0087】
ペプチド足場二量体の調製
ジスルフィド結合形成(H.Tamamura、A.Otaka、J.Nakamura、K.Okubo、T.Koide、K.Ikeda、T.Ibuka、N.Fuji Int.J.Peptide Protein Res.1995、45、312−319):
ペプチド(2.4mg(0.51μmol)の3−C15L8Cys(Acm)24)を、TFA(200μl)中に溶解し、そして銀トリフラート(5mg、20μmol)およびアニソール(1滴)を添加した。反応混合物を、冷蔵庫中、4℃にて24時間、インキュベートした。ジエチルエーテルの添加後、ペプチドは沈殿し、そして冷却ジエチルエーテルで3回洗浄した。沈殿物にDMSO(0.25ml)および1N HCl(1ml)を添加した。反応混合物を室温にて22時間攪拌した。懸濁液を遠心分離し、そして沈殿物を廃棄した。液体を希釈NaOHで中和化し、そしてRP−HPLC(分析等級:Varian C18、150×4.6mm、5μm、A:HO中の0.1%TFA、10%ACN、B:ACN中の0.1%TFA、10% HO、30〜60% B 30分間にわたる、t=23.4分)によって解析した。
【0088】
TA+Cys(Acm)とPC−pニトロフェニルエステルとの反応
これは、ホスホコリン誘導体をペプチドに取り込むためのプロトコルの具体例であり、この場合において、TA+は、Cys−残基上に保護基Acmを備える。100μLの0.1Mリン酸緩衝液 pH8中のTACys(Acm)ペプチド(500μg、0.1μモル)の溶液に、DMSO中の2.8μLの0.1M PC6−pニトロフェニルエステル(0.3μモル、3当量)を添加した。反応混合物を、4℃にてインキュベートした。LC−MS(Phenomenex Gemini、C18、5μm、150×3.0mm、A:水中の0.1%ギ酸、B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸、10〜90% B、10分間にわたる)、t=4.1分(UVシグナル)、m/z=[M+8H]8+について670.5、[M+7H]7+について766.1、[M+6H]6+について893.3、[M+5H]5+について1071.9。
【0089】
F108−2ピリジルジスルフィドでコート化された多孔性ポリスチレン上へのTA4+PC6Cys(Acm)ペプチドの固定化
18μLの0.1Mリン酸緩衝液pH8中のTA+PC6Cys(Acm)ペプチド(90μg、18nmol)の溶液に、水中の50%MeOH中の1.8μLの5mg/mLヨウ素(8.6μg、34nmol、チオール基に比較して2倍過剰)を添加した。反応混合物を、25℃にて20分間インキュベートし、PepClean C18カラム(Pierce)で洗浄し、そしてリン酸緩衝液中の10mgのF108−PDSコート化多孔性粒子を含有する50μL懸濁液に直接的に添加した。
【0090】
キナーゼ−ペプチド結合
18μLの0.1Mリン酸緩衝液pH8中のTA+PC6Cys(Acm)ペプチド(90μg、18nmol)の溶液に、水中の50%MeOH中の1.8μLの5mg/mLヨウ素(8.6μg、34nmol、チオール基に比較して2倍過剰)を添加した。反応混合物を、25℃にて20分間インキュベートし、PepClean C18カラム(Pierce)で洗浄し、そしてリン酸緩衝液中の1.5mLの1.3mg/mlのキナーゼ−PDSに直接的に添加した。
【0091】
TAPC6CysHの形成
TACys(Acm)とPC−pニトロフェニルエステルとの反応。1mLの0.1Mリン酸緩衝液pH8中のTACys(Acm)ペプチド(1mg、0.2μmol)の溶液に、10μLのDMSO中の0.1MPC6−pニトロフェニルエステル(0.8μmol、5当量)を添加した。反応混合物を4℃にて2日間インキュベートし、NAP−10カラム(GE Healthcare)を使用するゲル濾過により精製して、水中の1.5mLのTAPC6Cys(Acm)を得、そして最後に凍結乾燥した。LC−MS(Phenomenex Gemini、C18、5μm、150×3.0mm、A:水中の0.1%ギ酸、B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸、10〜90% B、10分間にわたる)、t=4.1分(UVシグナル)m/z=[M+6H]6+について856.0、[M+5H]5+について1026.8、[M+4H]4+について1282.6。
【0092】
システイン脱保護。TAPC6Cys(Acm)を、1mLのTFA/アニソール(99:1)中に溶解し、そして6mgのAgOTfを添加した(20μmol、100当量)。4℃にて2時間後、ペプチド銀塩を、冷却エーテルで沈殿し、遠心分離により単離し、そしてエーテルで2回洗浄した。1M 酢酸中の116μLの10mg/ml DTTを添加し、そして溶液の容量を、1M 酢酸で1mLに拡張した。25℃にて一晩後、ペプチドを、NAP−15カラムを使用するゲル濾過により精製して、水中の1.5mLのTA4PC6CysHを得、そして凍結乾燥した。LC−MS(Phenomenex Gemini、C18、5μm、150×3.0mm、A:水中の0.1%ギ酸、B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸、10〜90% B、10分間にわたる)、t=4.6分(UVシグナル)m/z=[M+6H]6+に対して843.5、[M+5H]5+に対して1012.3、[M+4H]4+に対して1264.6。
【0093】
TA+PC6CysHの形成
TA+Cys(Acm)とPC−pニトロフェニルエステルとの反応。1mLの0.1Mリン酸緩衝液pH8中のTA+Cys(Acm)ペプチド(1mg、0.2μmol)の溶液に、DMSO中の10μLの0.1M PC6−pニトロフェニルエステル(0.8μmol、5当量)を添加した。反応混合物を4℃にて一晩インキュベートし、NAP−10カラム(GE Healthcare)を使用するゲル濾過により精製して、水中の1.5mLのTA+PC6Cys(Acm)を有し、そして最後に凍結乾燥した。LC−MS(Phenomenex Gemini、C18、5μm、150×3.0mm、A:水中の0.1%ギ酸、B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸、10〜90% B、10分間にわたる)、t=4.0分(UVシグナル)、m/z=[M+8H]8+について670.3、[M+7H]7+について766.1、[M+6H]6+について893.4。
【0094】
システイン脱保護。TA+PC6Cys(Acm)を、1mLのTFA/アニソール(99:1)中に溶解し、そして6mgのAgOTfを添加した(20μmol、100当量)。4℃にて2時間後、ペプチド銀塩を、冷却エーテルで沈殿し、遠心分離により単離し、そしてエーテルで2回洗浄した。1M 酢酸中の116μLの10mg/ml DTTを添加し、そして溶液の容量を、1M 酢酸で1mLに拡張した。25℃にて一晩後、ペプチドを、NAP−15カラムを使用するゲル濾過により精製して、水中の1.5mLのTA+PCCysHを得、そして凍結乾燥した。LC−MS(Phenomenex Gemini、C18、5μm、150×3.0mm、A:水中の0.1%ギ酸、B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸、10〜90% B、10分間にわたる)、t=4.6分(UVシグナル)、m/z=[M+8H]8+について661.5、[M+7H]7+について755.9、[M+6H]6+について881.6。
【0095】
ペプチドライブラリーの各ポリペプチド足場へのリガンドの取り込み
ホスホコリン誘導体の取り込みのためのより一般的なプロトコルが以下に与えられる。当業者は、このプロトコルを、適用され得る特定の状態についてこれを最適化するために、適合し得る。
【0096】
ライブラリーからの各ペプチドを、1mL 50mM リン酸緩衝液、pH8中に、1mMの濃度に溶解して、ストック溶液を形成する。ストック溶液を形成するために必要な量は、その分子量から、25%の含水量を推量することにより算定する。各ストック溶液の濃度は、355nmでの203000M−1cm−1の吸光係数を使用して決定する。100μLの各ストック溶液を、マイクロタイタープレートのウェルに移し、そして試験されるリガンド(100mMの初期濃度でDMSO中に溶解される)の2当量の活性なエステルを添加し、そして1時間反応させたままにする。
【0097】
親和性測定
マイクロタイタープレートのウェルの別個のセットにおいて、C−反応性タンパク質(CRP)を、pH7.4にて、10mM HEPES、150mM NaCl、および5mM CaCl中に500nMの濃度に溶解した。リガンドおよび蛍光因子で官能化されたポリペプチドのそれぞれを、希釈し、そして標的タンパク質を含有する各ウェルに添加して、500nMのペプチドの最終濃度を得た。
【0098】
ネガティブコントロールとして、並行実験において、蛍光因子を伴うが、リガンドを伴わないペプチドを使用して、同じ手順を適用した。マイクロタイタープレートを、355nmでの励起および420nmでの発光に設定された、蛍光ベースのプレート読み取り器に導入した。蛍光発光が、リガンドで官能化されたポリペプチドと、リガンドを伴わないポリペプチドとの間で異なるペプチドは、「当たり」と見なされ、より注意深い解析に選択された。
【0099】
蛍光光度計を使用する親和性の注意深い解析についての実験プロトコルは、表1および図2において与えられる。使用したポリペプチドは、3−C15L8と命名される配列を有する。蛍光データの解析は、C−反応性タンパク質がホスホコリンについての5つの結合部位を有することにより複雑化されるが、5mM CaClの存在下での官能化ポリペプチドについての親和性は、低いnMの、またはより良好な解離定数に適合することが明らかである。
【0100】
蛍光因子を保有するが、リガンドを保有しないポリペプチドでの対応する実験は、CRPの濃度の関数としての蛍光における変化を何ら示さず、ポリペプチド足場自体は、CRPについて非常に低い親和性を有することを示す。従って、ポリペプチドとホスホコリン誘導体との組み合わせは、CRPについての結合剤を形成し、ここでは官能化ポリペプチドの成分とCRPとの間の共同的な相互作用が、非常に高い総合的な親和性を生じる。
【0101】
【表1】

【0102】
固相CRP検出アッセイ
固相に結合される本発明の結合剤を有するCRP検出アッセイの1つの実施態様は、図3において模式的に示される。
【0103】
このアッセイにおいて、CRPの捕獲は、ラテックス粒子に付着されるCRP−結合剤により達成され、そして認識シグナルは、酵素ピルビン酸キナーゼに結合される結合剤により作製される。キナーゼは、添加されるPEP(ホスホエノールピルビン酸塩)の補助を伴って、ADPをリン酸化して、ATPを形成する。次いで、ATPは、酵素ルシフェラーゼと複合体を形成し、これはルシフェリンの、オキシルシフェリンへの酸化を触媒することを可能にする。この反応は光を生じる。光の強度は、サンプル中のキナーゼの量の直接的な尺度になり、これは言い換えると、CRP結合の尺度である。
【0104】
ラテックス粒子に結合されるCRP−結合剤の調製
239nmの直径を備える単分散ポリスチレンラテックス粒子を、高分子界面活性剤Pluronic F108(チオールを含有するリガンドの連結を許容するためにピリジルジスルフィド(PDS)結合化末端基を含有する)を含有する超純粋(MilliQ)水中に懸濁した。界面活性剤分子は、それらの疎水性中心ブロックを介して、粒子を吸着する14。各粒子により、一晩の吸着を介して、取り込まれるPluronic分子の数は、沈降場流動分画、SdFFFにより、16500であると決定した15。次いで、PDS基を、それぞれCys含有CRP結合剤により置き換えた。結合剤(Ta4+)を固定化するためのプロトコルは上述に与えられる。SdFFFによる解析は、各粒子が2560の結合剤を取り込んだことを示した。
【0105】
酵素ピルビン酸キナーゼ(ウサギ筋肉由来のIII型;Sigma−Aldrich製品番号 P9136−5KU)を、入手されるように、または二官能性リンカー分子、SPDP(Pierce Biotechnology、製品番号21857)での処理後、またはジスルフィド結合架橋を介する結合剤への付着後(例示的なプロトコルは上述に与えられる)のいずれかで、アッセイした。酵素の3つの形態を、以下の様式において、ADPをリン酸化するそれらのそれぞれの能力についてアッセイした:pH7.6の50mM グリシン−TRIS緩衝液中に0.36mgキナーゼを含有するアリコートを、それぞれ、「発光試薬」、すなわち、0.5mg/mLでの40μLルシフェラーゼ(「Thermostable」、BioThema AB、Stockholmから)、8.9mg/mLでの10μL PEP(Sigma−Aldrich)、10□L 15mM ルシフェリン(Sigma−Aldrich)の混合物に添加した。t=0時に、10μL ADP(Sigma−Aldrich,2.6mg/mL)のアリコートを各サンプル混合物に添加し、そして発光を、CCDカメラで300秒間、追った。結果を図4において示す。3つの形態は、おおむね比較可能な活性であった。市販の製品は、予期されないことに、その修飾された形態よりもいくらか少ない活性であり、おそらくプロセシングの間のいくつかの微量のインヒビターの(意図されない)除去により引き起こされる。
【0106】
図3において例示されるタイプの反応混合物からの、そして比較のために、本発明のCRP−結合剤の代わりにCRP−結合剤としてCRP−特異的IgY抗体を有する反応混合物からの光子束を、CCDカメラにより測定した。試薬の濃度および総量は、図4における「発光試薬」について記載されるのと同じであった。サンプルは、CRP−非含有血清または12mg CRP/Lを含有する血清のいずれかであった。最も高い光子束は、混合物(ここでは、粒子表面上のCRP−結合剤が、濃縮された血清サンプル由来のCRPを捕獲した)によって提供される光子束であった。3サイクルの洗浄および遠心分離後、複合サンプルに、結合剤−キナーゼ結合体を取り込ませ;次いで、これを上述の発光試薬と混合して、その光子束を生成させた。同様に、抗体(IgY抗−CRP、A.Larsson、Uppsala Academic Hospitalからの贈物)を含有する粒子に、公知の濃度(12mg/L)の血清由来のCRPを結合させた。抗体−キナーゼ結合体を添加して、記載されるように、光子束を生成した。CRP非含有血清を、ブランクとして使用した。このような4つのサンプルに加えて、4つの実際のサンプル中の結合剤および抗体を保有する粒子と同じ大きさの、界面活性剤コート化ナノ粒子のみからなるサンプルがあった。結果は図5において示される。図は明らかに、CRPの結合剤ベースの検出が強力なシグナルを与えるのに対し、CRP−非含有血清からの結合剤ベースのシグナルは、ゼロ光強度の真っ直ぐなベースラインを与えることを示した。抗体ベースの検出は、CRP−含有血清においていくらかより弱いシグナルを与えるが、CRP−非含有血清から得られるシグナルから判断すると、結合剤−類似体よりも高い非特異的吸着を実証した。
【0107】
界面活性剤コート化粒子は、本研究において明白なブランクであった。
【0108】
図5の実験に類似する実験を、結合剤−結合性ラテックス粒子(10μL、239nm直径を備える10% w/vポリスチレン粒子)上で行った。粒子を、イヌ、ウマ、ヒト被験体由来の100μLの血清に添加し、ここで前者の2つは、未知の濃度のCRPを有し、後者は12mg/Lを含んだ。10分間のインキュベーション後、粒子を遠心分離を伴って3回洗浄し、次いで結合剤−キナーゼ結合体とともに、15分間インキュベートした。3倍洗浄手順、および図4の下に記載される「発光試薬」の添加後、累積的光子生成を測定し、そしてキナーゼ濃度の尺度として、言い換えるとサンプル中のCRPの量に比例して、ATP生成の速度をコンピューター計算する、BioThemaからの照度計により、サンプルを走査した。結果を、図6および表1において示す。この分析から、結合剤は、ヒト由来のCRPのみでなく、イヌおよびウマ由来のCRPも同様に、捕獲する能力を有することが明らかである。
【0109】
【表2】

【参考文献】
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14Bohner,M.、Ring,T.A.,Rapoport,N.、およびCaldwell,K.D.「種々の量のPEO/PPO/PEOトリブロック共重合体でコート化されたPSラテックス粒子によるフィブリノゲンの取り込み」、J.Biomaterials Sci.、Polymer編、13(2002)、733−746。
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15Andersson,M.、Fromell,K.、Gullberg,E.、Artursson、P.、およびCaldwell,K.D.「インビボ生体相互作用における表面修飾化ナノ粒子の特徴付け−沈降場流動分画研究」、Analytical Chemistry(2005)77、5488−5493。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明において使用されるペプチド足場のライブラリーの概観を示す。
【図2】CRPに対する本発明のCRP−結合剤の親和性を示す。
【図3】本発明のCRP−結合剤を使用するCRP検出アッセイの模式図を示す。
【図4】それぞれ、ネイティブなピルビン酸キナーゼ、リンカーに結合されるピルビン酸キナーゼ、およびCRP−結合剤に結合されるピルビン酸キナーゼの活性を示す。
【図5】それぞれ、本発明のキナーゼ結合性CRP−結合剤、およびキナーゼ結合性CRP−抗体により生成されたシグナルの比較である。
【図6】ヒト、ウマ、およびイヌ由来のCRPの検出のために使用された、本発明のキナーゼ結合性CRP−結合剤により生成されたシグナルの比較である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に記載の配列を有するポリペプチドであって、ここで少なくとも1つのホスホコリン誘導体が該ポリペプチドに付着されるポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載の2つの二量体化ポリペプチドからなり、ここで2つのプロトマーは、同じであるかまたは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチド。
【請求項3】
ホスホコリン誘導体が、プロトマーのうちの1つの8位、17位、22位、または34位においてリジンに付着される請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記ポリペプチドに、好ましくは、プロトマーのうちの1つの10位、15位、25位、または37位においてリジンに付着されるレポーター基をさらに有する請求項1〜3のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項5】
ホスホコリン誘導体が、1〜12個の炭素原子の長さを備える炭素鎖を含むスペーサーを介してポリペプチドに付着される請求項1〜4のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項6】
C−反応性結合タンパク質について、100ナノモル未満の結合親和性を有する請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記プロトマーが同じ配列または異なる配列を有し、そして該配列が配列番号3〜18から選択される、請求項1〜6のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれかに記載のポリペプチド二量体を生成するための方法であって、該方法は、以下の工程
− 配列番号1に記載の配列を有する少なくとも2つのポリペプチドを合成する工程;
− リジンへの、ホスホコリン誘導体の付着に適切な条件下で、ホスホコリン誘導体を、該ポリペプチドのうちの1つの未ブロックのリジンと接触させる工程;
− 必要に応じて、リジンへの、レポーター基の付着に適切な条件下で、レポーター基を、該ポリペプチドのうちの1つの未ブロックリジン基と接触させる工程;および
− ポリペプチドが、ポリペプチド二量体を形成することを許容する工程、
を包含する方法。
【請求項9】
サンプル中のC−反応性タンパク質の濃度をアッセイするための方法であって、該方法は、サンプルを、請求項1〜7のいずれかに記載のポリペプチドと接触させる工程を包含する方法。
【請求項10】
サンプルが哺乳動物患者に由来する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリペプチド二量体が、固体支持体に結合される請求項9〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、以下の工程
− サンプルを、請求項1〜7のいずれかに記載の第1のポリペプチドと接触させる工程であって、該第1のポリペプチドは固体支持体に結合される工程;
− サンプルを、請求項4〜7のいずれかに記載の、これに付着されるレポーター基を有する、第2のポリペプチドと接触させる工程;および
− 該第2のポリペプチド上のレポーター基の存在または不在を検出する工程、
を包含する方法。
【請求項13】
C−反応性タンパク質を含む組成物を、請求項1〜7のいずれかに記載のポリペプチドと接触させる工程を包含するC−反応性タンパク質の精製のための方法。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリペプチドを含む薬学的組成物。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリペプチドを含む診断用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−533339(P2009−533339A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504167(P2009−504167)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050227
【国際公開番号】WO2007/117215
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508300127)モドプロ アーベー (1)
【氏名又は名称原語表記】MODPRO AB
【Fターム(参考)】