説明

C反応性タンパク質結合性アプタマー及びその用途

【課題】C反応性タンパク質(CRP)の迅速且つ簡便な検出手段として有用な、CRPに結合するアプタマーを提供すること。
【解決手段】CRPとその他のタンパク質とを固定化した担体を用いて、ssDNAとタンパク質とのハイブリダイズを競合的に行なわせる手法でランダムssDNAライブラリーのスクリーニングを行ない、CRPに結合するアプタマーを取得した。これらのCRPアプタマーを改変し、結合能が特に優れたアプタマーを作出した。さらに、本願発明者らが開発したアプタマー酵素サブユニットを利用したCRP測定系を構築した。該測定系によれば、酵素活性を指標として検体中のCRPを迅速且つ簡便に測定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C反応性タンパク質(以下CRPと略すことがある)に結合するアプタマー及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
CRPはある種の炎症性・退行性・腫瘍性疾患患者の血清中にみられるβ-グロブリンであり、疾病マーカーとして臨床・診断分野で用いられている。一般に、CRP等の疾病マーカーの測定は、抗体を用いた免疫測定法により行なわれている。抗体を用いた測定系では、標的分子上の異なるエピトープを認識する2つの抗体が用いられる。放射性同位体や酵素等で標識した抗体Abと、固定化された抗体Abを用い、Ab-Tg-Ab複合体を形成させ、その放射活性や酵素活性等を測定することで標的分子の濃度を決定する。
【0003】
抗体は標的と結合した際に信号発信を行わないので、免疫測定に利用する場合、標的分子の異なる箇所に結合する二種類の抗体が必要となる。一つの標的分子の異なる箇所に結合する二種類の抗体を作製することは難しく、また抗体はそもそも作成に時間と労力がかかり、値段も高価である。
【0004】
また、先に述べた通り、抗体による検出法では、固定化されたキャプチャー用の抗体AbにCRPが結合し、更にそのCRPに検出用の抗体Abが結合し、Ab-Tg-Ab複合体が形成されたとき、Abの放射活性などでCRPの存在を検出する。そのため、結合しなかった遊離の標識抗体Abを取り除くB/F分離の操作が必須となり、簡便な系とは言えない。
【0005】
一方、任意の分子と特異的に結合するオリゴヌクレオチドであるアプタマーが知られている。アプタマーは、市販の核酸合成機を用いて化学的に全合成できるので、特異抗体に比べてはるかに安価であり、修飾が容易であるため、センシング素子としての応用が期待されている。所望の標的分子と特異的に結合するアプタマーは、SELEX (Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichment)と呼ばれる方法により作出可能である(非特許文献1)。この方法では、標的分子を担体に固定化し、これに膨大な種類のランダムな塩基配列を有する核酸から成る核酸ライブラリを添加し、標的分子に結合する核酸を回収し、これをPCRにより増幅して再び標的分子を固定化した担体に添加する。この工程を5〜10回程度繰り返すことにより、標的分子に対して結合力の高いアプタマーを濃縮し、その塩基配列を決定して、標的分子を認識するアプタマーを取得する。なお、上記核酸ライブラリーは、核酸の自動化学合成装置により、ランダムにヌクレオチドを結合していくことにより容易に調製可能である。このように、ランダムな塩基配列を有する核酸ライブラリーを用いた、偶然を積極的に利用する方法により、任意の標的物質と特異的に結合するアプタマーを作出できる。
【0006】
本願発明者らは、B/F分離の操作が不要な疾病マーカー検出技術として、対象分子を認識する認識アプタマーと、酵素に結合してその酵素の活性に変化を及ぼす酵素制御アプタマーとを連結することで、アプタマーを酵素のサブユニットとして用いたセンシング技術であるAES(Aptameric Enzyme Subunit)を構築している(特許文献1、2)。検出原理は、測定対象の分子が存在した場合、その分子が認識アプタマーに結合することで、これに連結されている酵素制御アプタマーの構造に変化が生じ、その結果AES中に含まれる酵素の活性に変化が生じるので、その活性の変化を測定することにより対象分子を検出するというものである。この検出法の利点として、ELISAによる検出と異なり、標的分子の結合を直接、酵素活性のシグナルとして検出するため、B/F分離を必要としない、迅速で簡便な検出が可能である点が挙げられる。また、一度、酵素活性を阻害するアプタマーを獲得してしまえば、検出したい標的分子に結合するアプタマーを任意に選択し、様々な標的分子の検出が可能になる。そのような酵素活性を阻害するアプタマーは既に種々のものが公知である。さらに、アプタマーは抗体に比べ、作成が簡単で安価である。
【0007】
CRPに結合するアプタマーを取得することができれば、上記したAESによる検出系を構築することができ、疾病の診断に貢献することができる。しかしながら、CRPの測定に応用し得るCPRアプタマーはこれまでに報告されていない。アプタマーの創製方法は、上記した通り偶然を積極的に利用する方法であるので、標的物質に対して高い結合能を有するアプタマーが得られるかどうかは、実際に膨大な実験を行なってみなければわからない。一旦創製され、その塩基配列が明らかになれば、常法により容易に調製可能であるが、創製には膨大な実験と試行錯誤が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開WO/2005/049826号公報
【特許文献2】国際公開WO/2007/032359号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Tuerk, C. and Gold L. (1990), Science, 249, 505-510
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、CRPの迅速且つ簡便な検出手段として有用な、CRPに結合するアプタマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、CRPに特異的に結合するアプタマーを取得することに成功し、さらに、該アプタマーを利用したAESの構築に成功し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の(a)〜(e)のいずれかのポリヌクレオチドから成るC反応性タンパク質結合性アプタマーを提供する:(a) 配列表の配列番号2、26〜31、33〜37、40、50、51、54、56、57及び65のいずれかに示される塩基配列から成るポリヌクレオチド;(b) (a)のポリヌクレオチドにおいて、1個又は数個の塩基が置換し、欠失し及び/又は挿入され、且つC反応性タンパク質と結合する能力を有するポリヌクレオチド;(c) (a)又は(b)のポリヌクレオチドにおいて、5'末端側及び/又は3'末端側の塩基が10〜18個欠失した塩基配列から成り、C反応性タンパク質と結合する能力を有するポリヌクレオチド;(d) (a)〜(c)のいずれかのポリヌクレオチド中に存在するステムループ構造単位を少なくとも一つ含む構造領域から成り、C反応性タンパク質と結合する能力を有するポリヌクレオチド;(e) (a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドを部分領域として含み、C反応性タンパク質と結合する能力を有するポリヌクレオチド。また、本発明は、上記本発明のC反応性タンパク質結合性アプタマーを含むC反応性タンパク質認識アプタマー部位と、酵素と結合し該酵素の活性を変化させる能力を有する酵素制御アプタマー部位とを含むポリヌクレオチドであって、C反応性タンパク質が前記C反応性タンパク質認識アプタマー部位に結合することにより、前記酵素制御アプタマー部位が前記酵素の活性を変化させる能力が変化するポリヌクレオチドを提供する。さらに、本発明は、上記本発明のポリヌクレオチドと、該ポリヌクレオチドの前記酵素制御アプタマー部位に結合した酵素とを含む、C反応性タンパク質測定試薬を提供する。さらに、本発明は、上記本発明のC反応性タンパク質測定試薬を、C反応性タンパク質を含み得る検体と接触させる工程と、前記酵素制御アプタマー部位に結合した前記酵素の酵素活性の変化を測定する工程と、該変化を指標として該検体中のC反応性タンパク質を測定する工程とを含む、C反応性タンパク質の測定方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、検体中のCRPの測定に有用なCRP結合性アプタマーが初めて提供された。また、該CRP結合性アプタマーを利用した、AES法によるCRP測定試薬が提供された。本発明のアプタマーとCRPとの特異的な結合性を利用することにより、CRP特異的抗体を用いることなく、CRPを高感度・高精度且つ簡便に測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1で得られたアプタマーについて、アプタマーブロッティング法によりCRPへの結合能を評価した結果を示す。
【図2】実施例1で得られたアプタマーCap 9について、CRPへの結合能をSPRにより評価した結果を示す。(A)SPRセンサーグラム、(B)ΔRUのCRP濃度依存性曲線。
【図3】実施例1で得られたCap 9と実施例4で構築したdel 2-1のm-fold(商品名)による二次構造予測図を示す。(A)Cap 9、(B)del 2-1。
【図4】del 2-1のCRPへの結合能をアプタマーブロッティング法により評価した結果を示す。
【図5】del 2-1のCRPへの結合能をSPRにより評価した結果を示す。(A)SPRセンサーグラム、(B)ΔRUのCRP濃度依存性曲線。
【図6】実施例5で構築したCRP測定AESの想定される測定スキームを示す。
【図7】実施例5で構築したCRP測定AES(相補的塩基配列13mer)を用いて、CRP存在下における該AESのトロンビン活性を調べた結果を示す。
【図8】実施例5で構築したAESについて、AESシグナルのCRP濃度依存性を検討した結果を示す。
【図9】再スクリーニングで新規に得られた45個のアプタマーについて、アプタマーブロッティング法によりCRPへの結合能を評価した結果を示す。
【図10】m-fold(商品名)によるCap 2-6(配列番号27)の二次構造予測図を示す。
【図11】m-fold(商品名)によるCap 2-7(配列番号28)の二次構造予測図を示す。
【図12】m-fold(商品名)によるCap 2-12(配列番号33)の二次構造予測図を示す。
【図13】m-fold(商品名)によるCap 2-13(配列番号34)の二次構造予測図を示す。
【図14】m-fold(商品名)によるCap 2-15(配列番号36)の二次構造予測図を示す。
【図15】m-fold(商品名)によるCap 2-16(配列番号37)の二次構造予測図を示す。
【図16】m-fold(商品名)によるCap 3-11(配列番号50)の二次構造予測図を示す。
【図17】m-fold(商品名)によるCap 3-12(配列番号51)の二次構造予測図を示す。
【図18】m-fold(商品名)によるCap 3-16(配列番号54)の二次構造予測図を示す。
【図19】m-fold(商品名)によるCap 3-18(配列番号56)の二次構造予測図を示す。
【図20】m-fold(商品名)によるCap 4-3(配列番号65)の二次構造予測図を示す。
【図21】実施例9において、アプタマーの競合関係をアプタマーブロッティング法により検討した結果を示す(Cap 9にFITC標識)。
【図22】実施例9において、アプタマーの競合関係をアプタマーブロッティング法により検討した結果を示す(Cap 2-6、2-7、2-12、2-13、2-15、2-16、3-11、3-12、3-16、3-18にFITC標識)。
【図23】実施例10において、アプタマーCap 9の数塩基を置換又は欠失した変異体の結合能を評価した結果を示す。
【図24】実施例11において、アプタマーCap 9の短縮型変異体の結合能をCRP固定化プレートにより評価した結果を示す。(A)は5'にチミンを付加した短縮型変異体の結合を示す蛍光強度データ、(B)は短縮型変異体の結合を示す正規化データである。
【図25】実施例12において、Cap 9短縮型変異体の結合能をSPRにより評価した結果を示すSPRセンサーグラムである。グラフ中の破線はfittingしたデータを示す。(A)はCap9t30、(B)は9R3t30、(C)は9R10t30。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のC反応性タンパク質(CRP)結合性アプタマーは下記(a)〜(e)のいずれかのポリヌクレオチドから成る。
(a) 配列表の配列番号2、26〜31、33〜37、40、50、51、54、56、57及び65のいずれかに示される塩基配列から成るポリヌクレオチド。
(b) (a)のポリヌクレオチドにおいて、1個又は数個の塩基が置換し、欠失し及び/又は挿入され、且つC反応性タンパク質と結合する能力を有するポリヌクレオチド。
(c) (a)又は(b)のポリヌクレオチドにおいて、5'末端側及び/又は3'末端側の塩基が10〜18個欠失した塩基配列から成り、C反応性タンパク質と結合する能力を有するポリヌクレオチド。
(d) (a)〜(c)のいずれかのポリヌクレオチド中に存在するステムループ構造単位を少なくとも一つ含む構造領域から成り、C反応性タンパク質と結合する能力を有するポリヌクレオチド。
(e) (a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドを部分領域として含み、C反応性タンパク質と結合する能力を有するポリヌクレオチド。
【0016】
ポリヌクレオチドはDNAでもRNAでもよく、またPNA等の人工核酸でもよいが、化学的に安定で自動化学合成も容易なDNAが好ましい。
【0017】
上記(a)として挙げられている配列番号2〜14、22〜66に示される塩基配列は、30mer(「mer」はヌクレオチド残基数を示す)のランダム領域を含む一本鎖DNA(ssDNA)ライブラリー(配列番号1)のスクリーニングにより得られたssDNAの塩基配列である。これらのうち、上記(a)に挙げられる配列番号2、26〜31、33〜37、40、50、51、54、56、57及び65に示される塩基配列から成るssDNAは、アプタマーブロッティング法による結合能評価において、CRPに結合するが競合タンパク質への結合がほとんど見られなかったものであり、CRPへの特異性が高いと考えられる(下記実施例参照)。さらにその中でも、配列番号2、27、28、33、34、36、37、50、51、54、56及び65に示される塩基配列から成るssDNAは、二次構造の予測から安定な構造をとると考えられ、本発明のCRP結合性アプタマーとして好ましい一例である。
【0018】
アプタマーが所定の条件下(フォールディング条件下)で形成する二次構造は、コンピューターを用いた常法により容易に決定することができる。核酸の二次構造予測に用いられるプログラムは種々のものが公知であり、例えば最近接塩基対法を用いた周知の核酸構造予測プログラムであるm-fold(商品名、Nucleic Acids Res. 31 (13), 3406-15, (2003)、The Bioinformatics Center at Rensselaer and Wadsworth のウェブサイトからダウンロード可能)を利用することができるが、これに限定されない。図3(A)、10〜20に示される二次構造図は、配列番号2、27、28、33、34、36、37、50、51、54、56及び65に示す塩基配列から成るアプタマーのm-fold(商品名)による二次構造予測図である。
【0019】
なお、「フォールディング条件」とは、1分子のアプタマーの一部の相補的な領域同士が分子内で塩基対合して二本鎖から成るステム部を形成する条件であり、公知の通常のアプタマーの使用条件でもある。通常、室温下で、所定の塩濃度を有し、所望により界面活性剤を含む水系緩衝液中である。例えば、TBS(10〜20mM Tris-HCl, 100〜150mM NaCl, 0〜5mM KCl, pH 7.0程度)やTBST(0.05v/v%程度のTween 20を含むTBS)の他、10mM MOPS及び1mM CaCl2を含む水溶液などの緩衝液を用いることができる。これらの緩衝液中で95℃程度に加熱して熱変性した後、室温まで徐々に(100μL程度の量であれば30分間程度かけて)冷却することにより、アプタマー分子のフォールディングを行なうことができる。なお、本明細書において、「フォールディングする」という語は、1分子のアプタマーの分子内において塩基対を形成させることのみならず、複数のポリヌクレオチド分子の分子間において塩基対を形成させることも包含する意味で用いる。例えば、後述するとおり、公知のAES法を利用したCRP測定試薬を調製する場合、該試薬のポリヌクレオチド部分は2分子のポリヌクレオチドにより構成され得るが、この場合、上記したフォールディング条件下におくと、2分子のポリヌクレオチドが分子内及び/又は分子間で塩基対を形成することにより、固有の立体構造を形成する。
【0020】
アプタマーは、その立体構造においてステム部及びループ部の位置関係及びサイズが等しいものであれば、通常、標的分子に対する結合能も同様に発揮し得る。例えば、末端から少数の塩基を欠失させても、もとのアプタマーと同様の結合能を維持し得る。ステム部を形成する塩基については、対合する塩基の位置を相互に入れ替えた塩基配列としてもよいし、また、対合する塩基対を例えばa-t対からg-c対に置き換えてもよい。また、ループ部を形成する塩基については、その位置に同じサイズのループが形成される限り、他の塩基配列を採用してもよい。また、アプタマーの結合能に重要ではない領域であれば、少数の塩基を挿入しても、通常、もとのアプタマーと同様の結合能を維持し得る。従って、上記(a)のポリヌクレオチドにおいて、1又は数個(好ましくは1又は2個)の塩基が上記に例示したように置換し、欠失し及び/又は挿入されたポリヌクレオチド(上記(b)のポリヌクレオチド)から成るアプタマーも、CRPと結合する能力を有する限り、本発明の範囲に包含される。なお、このような(b)のポリヌクレオチドについて、公知の核酸構造予測プログラムを用いて改めてその二次構造を確認してもよい。
【0021】
例えば、配列番号2に示す塩基配列から成るアプタマーCap 9について、(b)に属するアプタマーの具体例を挙げると、配列番号67〜79に示すものが挙げられる(後掲の表4参照)。これらの配列は、配列番号2のうちで30merランダム領域に由来する領域内(すなわち、プライマー領域に挟まれた領域内)の2〜9塩基が置換又は欠失している配列である。図23には、これらの塩基配列から成るアプタマーの結合能を評価した結果が示されている。9R3(配列番号68)及び9R10(配列番号74)は、Cap 9の配列に対しそれぞれ4塩基及び7塩基の変異を有する配列であるが、このように数個の変異を含んでいてももとのアプタマーと同程度の結合能を有し得る。CRPへの結合能が同程度以上のものが好ましく、例えば配列番号67〜79のうちでは、もとのCap 9の60%程度以上の結合能を維持している配列番号68〜71、74及び76〜78のいずれかに示される塩基配列、中でも配列番号68及び74に示される塩基配列から成るアプタマーが好ましい。もっとも、もとのアプタマーに対し結合能がかなり低下している場合でも、検体中のCRPを測定できる程度の結合能を有していれば十分に有用である。なお、実施例で作製されたこれらの具体例は、30merランダム領域内に塩基の変異を有するものであるが、変異部位はプライマー領域であってもよい。
【0022】
ポリヌクレオチドがCRPと結合する能力を有するか否かは、例えば下記実施例に記載されるアプタマーブロッティング法により容易に評価することができる。具体的には、例えば、CRPと、それ以外の任意のタンパク質(競合タンパク質)とを、ニトロセルロース膜等の支持体に常法により固定化し、このタンパク質固定化支持体とアプタマーとをTBS等の適当な緩衝液中で反応させ、CRPと競合タンパク質とのそれぞれにどの程度のアプタマー分子が結合しているかを調べることにより、アプタマーのCRPに対する結合能を評価することができる。CRPへの結合量が競合タンパク質への結合量よりも多いポリヌクレオチドは、CRPへの好ましい結合能を有すると評価することができる。特に、競合タンパク質にはほとんど結合しないポリヌクレオチドは、CRPに対する特異性が高く、本発明のアプタマーとして好ましい。競合タンパク質は特に限定されず、例えば下記実施例でも用いられているPQQGDH(ピロロキノリンキノングルコースデヒドロゲナーゼ)等を用いることができる。アプタマー分子の結合量は、例えば、アプタマー分子を予めビオチンやFITC等で標識しておき、タンパク質固定化支持体との反応後、該標識物質に対する抗体を用いた常法による免疫測定を行なうことで、アプタマー結合量を調べることができる。
【0023】
あるいは、下記実施例でも行なっているように、支持体としてマイクロタイタープレートを用い、プレート上に固定化されたCPRとアプタマーを反応させ、上記と同様にアプタマーの結合量を測定することによって、アプタマーの結合能を評価することもできる。
【0024】
SELEXではスクリーニング過程にPCRを利用するため、ランダム領域を含むssDNAライブラリーには、配列が固定されたプライマー領域が両端に設けられる。スクリーニング時には、このプライマー領域が存在する状態で標的分子に結合するものを選択するため、このプライマー領域もアプタマーの標的分子への結合能に寄与し得るが、このようなプライマー領域の一部又は全部を削除しても、標的分子であるCRPへの結合能を発揮できる場合がある。そのような短縮型の配列から成るアプタマーも、CRPへの結合能を有する限り、(c)のポリヌクレオチドから成るアプタマーとして本発明の範囲に包含される。
【0025】
上記した短縮型の配列は、(a)又は(b)のポリヌクレオチドにおいて、5'末端側及び/又は3'末端側の塩基が10〜18個欠失した塩基配列から成る。例えば、両末端が10〜18塩基欠失した配列、片末端が18塩基欠失した配列が挙げられるが、両末端が18塩基欠失した配列がより好ましい。(a)のポリヌクレオチドから成るアプタマーが有するプライマー領域のサイズは両末端共に18merである。
【0026】
例えば、配列番号2に示す塩基配列から成るアプタマーCap 9について、(c)に属するアプタマーの具体例を挙げると、下記実施例で作製された配列番号80〜82に示すものが挙げられる。これらのアプタマーは、Cap 9及びその置換又は欠失変異体(9R3、9R10)の両末端のプライマー領域を削除した塩基配列から成るものであるが、解離定数が40 nM程度と結合能が非常に高く、CPR結合性アプタマーとして非常に優れている。もっとも、本発明の範囲はこれらの具体例には限定されない。なお、下記実施例では5'側にチミンを付加した短縮型のアプタマーも記載されているが、このようなアプタマーは後述する(e)のポリヌクレオチドから成るアプタマーに包含される。
【0027】
アプタマーは、通常、ステムループやグアニンカルテット等の立体構造部分がアプタマー活性に重要な役割を果たしている。本発明のアプタマーは、いずれも1個ないし数個のステムループ構造を有しているので、分子末端の一本鎖構造領域を削除してステムループ構造部分のみを取り出しても、もとのアプタマーと同様に標的分子に対する結合能を発揮し得る。そのような、上記した(a)〜(c)のポリヌクレオチド中に存在するステムループ構造単位を少なくとも一つ含む構造領域から成るポリヌクレオチドも、C反応性タンパク質と結合する能力を有する限り、本発明の範囲に包含される(上記(d))。
【0028】
ここでいう「ステムループ構造単位」とは、主鎖となる一本鎖構造上の一箇所に存在している一群のステムループ構造を指す。例えば、配列番号54(図18)の例では、21nt〜31ntの領域が形成するステムループ構造と、36nt〜61ntの領域が形成するステムループ構造が、それぞれ1単位のステムループ構造である(なお、「X nt」は5'末端からX番目の塩基を示す)。配列番号33(図12)の例では、4nt〜47ntの領域が形成する複合したステムループ構造が全体で1単位である。「構造領域」とは、ステムループ構造単位を少なくとも1単位含む、1分子のポリヌクレオチド上の一連の部分領域をいう。該構造領域から成るポリペプチドは、その末端の領域に、もとのポリヌクレオチドにおける一本鎖構造領域の塩基を1ないし数個含んでいてもよい。
【0029】
配列番号2(図3(A))を例に用いて(d)のポリヌクレオチドを説明すると以下の通りである。配列番号2の塩基配列から成るポリヌクレオチドは3単位のステムループ構造(4nt〜25nt、28nt〜40nt、46nt〜61nt)を有する。従って、1単位のステムループ構造を含むものとしては、4nt〜25ntから成るポリヌクレオチド、28nt〜40ntから成るポリヌクレオチド、46nt〜61ntから成るポリヌクレオチド等が挙げられる。もとのポリヌクレオチド(配列番号2)における一本鎖構造領域の塩基も1ないし数個含んでいてもよいので、例えば1nt〜27ntから成るポリヌクレオチドも挙げられる。2単位のステムループ構造を含むものとしては4nt〜40ntから成るポリヌクレオチド、28nt〜61ntから成るポリヌクレオチド等が挙げられる。ステムループ構造単位を全て含むものとしては、4nt〜61ntから成るポリヌクレオチド等が挙げられる。
【0030】
上記(d)のポリヌクレオチドとしては、配列番号2に示される塩基配列から成るポリヌクレオチド中に存在するステムループ構造単位を少なくとも一つ含む構造領域から成るものが好ましい。特に、配列番号2の4nt〜25ntのステムループ構造単位と28nt〜40ntのステムループ構造単位の2つを含む構造領域から成るものが好ましく、中でも配列番号15に示される塩基配列から成るものが好ましい。
【0031】
また、アプタマーは、一端又は両端に任意の塩基配列を付加させても、アプタマー領域においてステム部及びループ部の位置関係及びサイズが等しい限り、もとのアプタマーと同様に標的分子への結合能を発揮し得る。例えば、本願発明者らが構築した公知のAES(特許文献1)では、異なる標的分子に結合するアプタマー同士を連結しても、それぞれがもとのアプタマー活性(標的分子に対する結合能、及び、標的分子が酵素である場合には酵素の活性を上昇又は低下させる能力)を発揮する。このことは、アプタマーの末端に任意の配列を付加してももとの結合能が維持され得ることを示している。従って、上記した(a)〜(d)のポリヌクレオチドの一端又は両端に任意の配列が付加されていても、もとの(a)〜(d)のポリヌクレオチドと同様にCRPへの結合能を発揮し得る。そのような、上記した(a)〜(d)のポリヌクレオチドを部分領域として含むポリヌクレオチドも、CRPに結合する能力を有する限り、本発明の範囲に包含される(上記(e))。
【0032】
付加させる任意の配列は、アプタマーのCRPへの結合能を完全に喪失させる等、CRPへの結合能に悪影響を及ぼすものでない限り、いかなる塩基配列であってもよく、その鎖長も特に限定されない。ただし、アプタマー全長があまりに長くなると合成の手間とコストがかかる。従って、付加配列のサイズは、通常、合計で40塩基程度以下、好ましくは10塩基程度以下、より好ましくは1〜2塩基程度である。ただし、付加配列がアプタマー配列である場合にはこの限りではなく、付加されるアプタマー配列の鎖長に応じてサイズが定まる。アプタマー分子全長のサイズとしては、通常200mer程度以下、好ましくは150mer程度以下である。なお、アプタマーのサイズの下限は特に限定されないが、通常15mer程度以上である。
【0033】
上記(e)のポリヌクレオチドのうち、任意のアプタマー配列が付加されたポリヌクレオチドとしては、例えば、(a)〜(d)のポリヌクレオチドが数個程度連結した構造を有するポリヌクレオチド(以下、便宜的に「多量体」ということがある)、(a)〜(d)のポリヌクレオチドにCRP以外の物質を標的とするアプタマー配列を付加したポリヌクレオチド等が挙げられる。
【0034】
アプタマーを多量体化して用いる技術は公知である(Sensors, 8, p.1090-1098 (2008))。本発明においても、(a)〜(d)のアプタマー(以下、便宜的に「単量体」ということがある)を数個程度連結して用いることができる。特に、CRP上の異なる部位に結合するアプタマーを連結すれば、個々のアプタマー(以下「単量体」ということがある)を単独で用いた場合よりもCRPへの結合能を高めることができる。アプタマーがCRPへの結合に関して競合するか否かは、例えば下記実施例9に記載される競合実験で調べることができる。具体的には、例えば、異なる標識(例えばビオチン標識とFITC標識)を付した異なるアプタマーを種々の濃度比で混合し、これを固相上に固定化したCRPと反応させ、一方の標識(例えばFITC)を検出して一方のアプタマーの結合量を測定する。標識を入れ替えた条件でもう一方のアプタマーの結合量を同様に測定する。ビオチン標識アプタマーの濃度比が大きい条件下でも検出されるFITCのシグナルが低下しない場合には、そのアプタマー同士はCRP上の異なる部位に結合している可能性が高い。従って、そのような組み合わせでアプタマーを連結すれば、単量体として用いた場合よりも結合能を向上させることができる。例えば、本発明では、配列番号2(Cap 9)と配列番号54(Cap 3-16)の組み合わせ、及び配列番号2(Cap 9)と配列番号56(Cap 3-18)の組み合わせが、相互に競合しないと考えられるので(下記実施例9参照)、多量体を作る組み合わせとして好ましい。
【0035】
アプタマーを多量体化する場合、単量体を直接連結させた構造としてもよいが、必要に応じリンカーを介して連結することができる。例えば、5'上流側のアプタマー単量体の3'末端領域及び/又は3'下流側のアプタマー単量体の5'末端領域にステムループ構造が存在する場合には、直接連結させるとステムループ構造が望ましく形成されないおそれがあるため、かかる場合にはリンカーを介して連結させることが好ましい。また、単量体が認識する部位がCRP上の離れた位置にある場合には、十分な鎖長のリンカーを挿入し、多量体化した個々のアプタマーがそれぞれの認識部位に結合できるようにすると、アプタマーの結合能を好ましく向上することができる(Sensors, 8, p.1090-1098 (2008)、上掲)。リンカーの鎖長は適宜定めることができ、特に限定されないが、通常は1mer〜20mer程度、好ましくは5mer〜15mer程度である。特に限定されないが、リンカーとしてはアデニン又はチミンのみから成るものが好ましい。
【0036】
連結する単量体の数は数個程度であり、好ましくは2個である。
【0037】
(e)のポリヌクレオチドのうち、CRP以外の物質を標的とするアプタマー配列を付加したポリヌクレオチドとしては、例えば後述するAESを利用した酵素制御ポリヌクレオチドが挙げられる。
【0038】
本発明のアプタマーは、それ自体周知の方法により、公知のフォールディング条件下でフォールディングさせ、標的分子であるCRPの測定(検出、定量、半定量)に使用することができる。被検試料としては、血清や血漿等の体液やその希釈物を用いることができる。本発明のアプタマーを用いた被検試料中のCRPの測定は、アプタマーによる周知の通常の方法により行なうことができ、例えば抗体の代わりに本発明のアプタマーを利用した免疫測定法(イムノクロマトグラフィーやELISA(Enzyme linked Immunosorbent Assay))に準じる方法で行なうことができる。特に、相互に競合しないと考えられるアプタマーの組み合わせ(配列番号9と配列番号54、及び配列番号9と配列番号56)であれば、異なる2つのエピトープに結合する2種類の抗体を用いたサンドイッチ法と同様の検出系を組むことができる。また、CRPの測定は、下記実施例に具体的に記載するアプタマーブロッティングや、表面プラズモン共鳴法(SPR)等の周知の方法によっても行なうことができる。
【0039】
また、本発明のCRP結合性アプタマーを用いれば、本願発明者らが開発したアプタマー酵素サブユニット(AES)(特許文献1)を利用したCRP測定試薬を調製することができる。該試薬中のポリヌクレオチド部分は、上記本発明のCRP結合性アプタマーを含むCRP認識アプタマー部位(以下、単に「認識アプタマー部位」ということがある)と、酵素と結合し該酵素の活性を変化させる能力を有する酵素制御アプタマー部位とを含むポリヌクレオチドであって、CRPがCRP認識アプタマー部位に結合することにより、酵素制御アプタマー部位が酵素の活性を変化させる能力が変化するポリヌクレオチドから成る(以下、このポリヌクレオチドを「酵素制御ポリヌクレオチド」と呼ぶ)。本発明はまた、かかる酵素制御ポリヌクレオチドをも提供する。
【0040】
なお、「酵素の活性を変化させる」とは、酵素制御アプタマー部位に結合していない状態の酵素と比較して、酵素の活性を上昇又は低下させることをいう。以下、本明細書において、このような酵素活性を変化させる能力のことを「酵素制御能」といい、酵素制御能を有するアプタマーを「酵素制御アプタマー」という。
【0041】
酵素制御ポリヌクレオチドは、1分子又は2分子のポリヌクレオチド鎖から成り(以下、1分子からなるものを「1分子性酵素制御ポリヌクレオチド」、2分子からなるものを「2分子性酵素制御ポリヌクレオチド」ということがある)、標的物質たるCRPが認識アプタマー部位へ結合することにより、酵素制御アプタマー部位が酵素活性を変化させる能力が変化することを特徴とする。酵素制御アプタマー部位が有する酵素活性を変化させる能力の変化は、該部位に結合した酵素の活性の変化を調べることで知ることができる。酵素制御アプタマー部位に結合している酵素は、該部位の作用により、酵素活性が上昇又は低下した状態にあるが、この状態で、認識アプタマー部位にCRPが結合すると、酵素活性がさらに変化する(すなわち、酵素制御アプタマー部位が有する「酵素活性を変化させる能力」が変化する)。通常は、酵素制御アプタマー部位に結合している酵素の酵素活性は、活性が上昇又は低下した状態から、もとの活性に戻る(すなわち、酵素制御アプタマー部位が有する「酵素活性を変化させる能力」が低下する)。この、酵素活性を変化させる能力の低下の原理は、例えば、図6に示されるように、認識アプタマー部位へのCRPの結合により、酵素制御ポリヌクレオチドの立体構造が変化し、酵素制御アプタマー部位から酵素が離脱することによるものと考えられるが、これに限定されない。
【0042】
具体的には、例えば、酵素制御アプタマー部位が酵素の活性を上昇させる能力を有する場合、CRPが認識アプタマー部位に結合することにより、通常、酵素活性を上昇させる能力が低下し、酵素制御アプタマー部位に結合している酵素の活性は、認識アプタマー部位へのCRPの結合により低下することになる。また、酵素制御アプタマー部位が酵素の活性を低下させる能力を有する場合、CRPが認識アプタマー部位に結合することにより、通常、酵素活性を低下させる能力が低下し、酵素制御アプタマー部位に結合している酵素の活性は、認識アプタマー部位へのCRPの結合により上昇することになる。従って、上記本発明の酵素制御ポリヌクレオチドの酵素制御アプタマー部位に対応する酵素を結合させて調製した酵素−ポリヌクレオチド複合体を用いれば、酵素活性の変化を指標として、検体中のCRPの測定を行なうことができる。すなわち、本発明は、上記した本発明の酵素制御ポリヌクレオチドと、該ポリヌクレオチドの酵素制御アプタマー部位に結合した酵素とを含む、CRP測定試薬をも提供する。なお、本発明において、「測定」には検出、定量及び半定量が包含される。
【0043】
酵素制御アプタマー部位は、酵素制御アプタマー分子の立体構造(平面的な二次構造も包含する)に基づいて構成される。採用される酵素制御アプタマー分子は特に限定されず、上記した酵素制御能を有するアプタマーであればいかなるものであってもよい。そのような酵素制御アプタマーとしては、例えば、特許文献1に記載されるようにトロンビン阻害アプタマーが公知である。
【0044】
ここで、「アプタマー分子の立体構造に基づいて構成される」とは、上記酵素制御ポリヌクレオチド中で酵素制御アプタマー部位がとる立体構造が、1分子で構成される酵素制御アプタマー分子がとる立体構造と近似するようにして構成されることをいう。従って、酵素制御アプタマー部位を構成する領域は、上記酵素制御ポリヌクレオチドを構成するポリヌクレオチド鎖中において、必ずしも連続する1つの領域として存在する必要はなく、1分子又は2分子のポリヌクレオチド鎖中に分断して存在するものであってもよい。分断して存在していても、ポリヌクレオチド鎖をフォールディング条件下でハイブリダイズさせ、分子内及び/又は分子間の適当な部位において塩基対を形成させることにより、それらの領域が組み合わされて、もとにしたアプタマー分子の立体構造と近似した立体構造を形成することが可能な限り、酵素制御アプタマー部位の構成態様として許容される。具体的には、例えば下記実施例に記載されるように、酵素制御アプタマーとしてトロンビン阻害アプタマー(配列番号17)を利用する場合、配列番号17の塩基配列を1nt〜20ntと21nt〜31ntの2つの領域に分断し、これらの断片を2分子のポリヌクレオチド鎖に分けて含ませた構成(配列番号18〜20のいずれか及び配列番号13)としてもよい。このように構成しても、酵素制御ポリヌクレオチド中で望ましく酵素制御能を発揮できる。
【0045】
酵素制御アプタマー分子の塩基配列を分断する位置としては、ループ構造内のいずれかの部位が好ましい。ループ構造内で分断すれば、分断後の断片をそれぞれ含む2分子のポリヌクレオチド鎖を調製しても、これらのポリヌクレオチド鎖をフォールディング条件下で塩基対形成させることにより、グアニンカルテット構造やステム部等が望ましく形成され、もとにしたアプタマー分子の立体構造を再現できる(もとにしたアプタマー分子の立体構造と近似した立体構造を形成する)可能性が高く、ひいては酵素制御アプタマー部位がもとのアプタマー分子の有する結合能及び酵素制御能を維持する可能性が高くなる(以下、このような、もとの1分子のアプタマーと近似した立体構造をとり得る、2分子のポリヌクレオチド鎖から成るポリヌクレオチドを「分割アプタマー」と呼ぶことがある)。例えば、上述した通り、実施例ではトロンビン阻害アプタマー(配列番号17)を20ntと21ntの間で分断しているが、該トロンビン阻害アプタマーのループ構造を形成する領域は11nt〜12nt、15nt〜17nt、及び20nt〜21ntの領域であり、これはループ構造内での分断である。このようにして構築した2分子性の酵素制御ポリヌクレオチドは、後述するとおり、認識アプタマー部位へのCRPの結合により、酵素制御アプタマー部位が酵素の活性を変化させる能力を好ましく低下させることができる。アプタマー分子がフォールディング条件下でとる立体構造は、上述したように、m-fold(商品名)等の周知のプログラムを用いた常法により容易に決定することができる。
【0046】
酵素制御ポリヌクレオチド分子中において、認識アプタマー部位を設ける位置は特に限定されず、酵素制御アプタマー構造の末端部であってもよく、また、酵素制御アプタマー部位のループ構造に付加するようにして設けてもよい。例えば、ループ構造内で分断した分割アプタマーの、一方のポリヌクレオチド鎖の分断部位側末端にCRP結合性アプタマーを連結させることにより、酵素制御アプタマーのループ構造部にCRP認識アプタマー部位を設定した2分子性の酵素制御ポリヌクレオチドを得ることができる。この際、他方の断片の分断部位側末端に、CRP結合性アプタマー配列中の少なくとも一部の領域と相補的な配列から成る断片を連結させると、CRP結合性アプタマーと該相補配列断片とがハイブリダイズして塩基対を形成するので、酵素制御アプタマー部位の立体構造を安定させることができ好ましい。該相補配列断片のサイズは、CRP結合性アプタマーの全長と同一以下の任意のサイズを選択することができ、特に限定されないが、通常3mer以上20mer以下(ないしはCRP結合性アプタマーの全長の半分以下)程度である。このように、ループ構造内で分断した酵素制御アプタマーを用いて調製した本発明の2分子性の酵素制御ポリヌクレオチドは、後述するとおり、CRP認識アプタマー部位の構造変化を効率的に酵素制御アプタマーに伝えることができるため、1分子の酵素制御アプタマーの末端に認識アプタマーを連結して調製される1分子性の酵素制御ポリヌクレオチドよりも好ましい。
【0047】
酵素制御アプタマー部位とCRP認識アプタマー部位とは、直接連結してもよいが、リンカーを介して連結させてもよい。例えば、酵素制御アプタマーとCRP結合性アプタマーとをそれぞれの末端部で連結させて1分子性の酵素制御ポリヌクレオチドを調製する場合には、連結部近傍の立体構造を保持する観点から、適当な鎖長のリンカーを介して連結させてもよい。また、ループ部で分断した分割アプタマーを用いて2分子性の酵素制御ポリヌクレオチドを調製する場合にも、CRP結合性アプタマーをリンカーを介して分断部末端に連結させることができる。リンカーを介する場合、上記相補配列断片には、リンカーと相補的な領域を含ませてもよい。なお、相補配列断片の連結もリンカーを介するものであってよい。リンカーは、アデニンのみ又はチミンのみから成ることが好ましい。リンカーの鎖長は、酵素制御アプタマーとCRP結合性アプタマーとをそれぞれの末端部で連結させる場合には、それぞれのアプタマーが所期の立体構造をとるために十分なだけのスペースを確保できる鎖長であればよく、特に限定されないが、通常は1mer〜20mer程度、好ましくは5mer〜15mer程度である。また、分割アプタマーを用いてループ部分にCRP認識アプタマー部位を設ける場合には、特に限定されないが、通常1mer〜10mer程度、好ましくは1mer〜5mer程度である。
【0048】
CRP認識アプタマー部位は、CRP結合性アプタマー配列のみから成るものであってもよいが、末端に任意の塩基を少数(1個ないし数個程度)含んでいても差し支えない。例えば、酵素制御ポリヌクレオチドが2分子性である場合、CRP結合性アプタマーのうち分割アプタマーと連結していないフリーの末端部に、無関係な塩基が1個ないし数個程度付加していても、酵素制御ポリヌクレオチドの機能に支障はない。
【0049】
酵素制御アプタマー部位のループ構造にCRP認識アプタマー部位を連結した2分子性のポリヌクレオチドに酵素を結合させた、本発明のCRP測定試薬の想定される測定スキームを図6に示す。図6中に例示する本発明の試薬は、酵素制御アプタマー部位としてトロンビン阻害アプタマー(配列番号17)由来の分割アプタマー、CRP認識アプタマー部位として配列番号15に示される塩基配列から成るCRP結合性アプタマーを用いたものである。配列番号17の塩基配列から成るトロンビン阻害アプタマーは、特許文献1に記載される通り、トロンビンの活性を低下させる作用を有する。CRPの非存在下では、CRP結合性アプタマーが部分相補鎖とハイブリ形成して、トロンビン阻害アプタマーは安定した構造をとり、トロンビンと結合してその酵素活性を阻害する。一方で、CRP存在下ではCRP結合性アプタマーがCRPと結合し、リジットな構造を形成することで、連結しているトロンビン阻害アプタマーの構造が不安定になり、トロンビン活性阻害能が減少する。即ち、CRPをトロンビン活性の上昇で検出する系が想定される。
【0050】
本発明のCRP測定試薬は、本発明の酵素制御ポリヌクレオチドと、該ポリヌクレオチド中の酵素制御アプタマー部位に結合した酵素とを含むものである。該酵素は、上記した通り、試薬中の認識アプタマー部位へのCRPの結合により、酵素活性が変化する。具体的には、酵素制御ポリヌクレオチドに採用される酵素制御アプタマーが、酵素の活性を上昇させる作用を有する場合、CRP測定試薬では、認識アプタマー部位へのCRPの結合により、酵素の活性が低下する。これとは逆に、採用される酵素制御アプタマーが酵素の活性を低下させる作用を有する場合、CRP測定試薬では、認識アプタマー部位へのCRPの結合により、酵素の活性が上昇する。従って、CRPを含み得る検体と本発明の試薬を接触させ、試薬の酵素活性の変化を調べることにより、検体中のCRPを測定することができる。すなわち、本発明は、上記本発明のCRP測定試薬を、CRPを含み得る検体と接触させる工程と、上記酵素制御アプタマー部位に結合した上記酵素の酵素活性の変化を測定する工程と、該変化を指標として該検体中のCRPを測定する工程とを含む、CRPの測定方法をも提供する。
【0051】
酵素活性の変化の測定は、例えば、検体と接触させない試薬と、検体と接触させた試薬とを別個に調製し、両者の酵素活性を比較することによって行なうことができる。検体との接触の前後の時点で酵素活性を測定して両者を比較してもよいし、また、検体と接触させる前から接触後までの酵素活性を継続的に測定して変化を測定してもよい。本発明のCRP測定試薬により、CRP濃度が既知の試料を用いて酵素活性を調べ、検量線を作成すれば、検体中のCRPを定量することも可能である。
【0052】
酵素活性の測定は、採用される酵素の種類に応じて、この分野の技術常識に基づき常法により容易に行うことができる。例えば、酵素としてトロンビンを用いる場合、基質としてN-ベンゾイル-Phe-Val-Arg-p-ニトロアニリドを用い、遊離したp-ニトロアニリンの吸光度(410nm)を測定することによってトロンビンの活性を測定できる。あるいは、フィブリノーゲンを用いて、トロンビンによるフィブリノーゲンの切断によって開始されるフィブリノーゲン溶液の凝固の時間を測定し、凝固時間を指標としてトロンビン活性を測定することができる。溶液の凝固の測定は、周知の常法により行なうことができ、例えば、分光学的方法により屈折率の変化を測定する方法、溶液に金属球を添加して溶液凝固に伴うその運動の停止を観察する方法等が挙げられるが、これらに限定されない。あるいはまた、酵素活性の変化を電気化学的に測定することにより標的物質の測定を行なう、グルコースセンサー等の測定手段が公知なので、本発明のCRP測定試薬に採用する酵素制御アプタマー及び酵素を適当に選択することで、そのような電気化学的な測定手段を応用することもできる。
【0053】
本発明のアプタマー分子及び酵素制御ポリヌクレオチドは、市販の核酸合成機を用いて常法により容易に調製することができる。また、CRP測定試薬に含まれる、酵素とポリヌクレオチドとの複合体(酵素−ポリヌクレオチド複合体)は、下記実施例に詳述されるように、酵素制御ポリヌクレオチドをフォールディング後、該ポリヌクレオチドの酵素制御部位に結合させるべき酵素と混合し、室温で5分〜30分程度インキュベートすることにより、容易に調製することができる。なお、結合させるべき酵素が、活性を発揮するために補酵素や金属を必要とするものである場合、特に限定されないが、通常、補酵素や金属と結合させて活性化形態にしてから上記酵素制御ポリヌクレオチドと混合する。
【0054】
CRP測定試薬は、上記した酵素−ポリヌクレオチド複合体のみからなるものであってもよいし、また、該複合体の安定化等に有用な他の成分を含んでいてもよい。例えば、上記複合体のみを適当な緩衝液中に溶解させた溶液の形態であってもよいし、該溶液中に該複合体の安定化のために有用な成分をさらに含んでいてもよい。あるいは、本発明のCRP測定試薬は、上記本発明の酵素制御ポリヌクレオチドとこれに結合させるべき酵素とを別個に含んだ試薬のセットの形態で提供することもできる。この場合は使用者が使用時に各試薬を混合してCRP測定試薬を調製することができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0056】
実施例1 CRPを標的としたDNAアプタマーの探索
本実施例においては、CRPに対してSELEXを5ラウンド行った。なお、CRPの検出を目的としているため、競合タンパク質として肝細胞癌の腫瘍マーカーであるAFP(Alpha-fetoprotein)、PQQを補酵素とたグルコース脱水素酵素(PQQGDH)を用いた。また、一本鎖DNAランダムライブラリーは18残基のプライマー配列と30残基のランダム配列を有する合計66残基の長さのものを用いた(配列番号1)。
【0057】
具体的な方法について以下に示す。CRP、AFP、ホロ化PQQGDH(終濃度1 mM CaCl2、1μM PQQを加え室温で10分間静置してホロ化したもの)をニトロセルロース膜に固定化した後、その膜を10%の血清500μl中に浸しブロッキングした。その後、Binding Buffer(10 mM Tris-HCl, 150 mM NaCl, 5 mM KCl, 0.05 % tween)で洗浄した。FITC修飾されたDNAライブラリーをBinding Buffer中で95℃に加熱した後、30分かけてゆっくり25℃まで冷却することで、フォールディングさせた。フォールディングさせたDNAライブラリーと、タンパク質を固定化した膜と室温で1時間インキュベートした。その後、フェノールクロロホルム処理することにより、各タンパク質に結合したssDNAを抽出し、FITC修飾プライマー及びビオチン修飾プライマーを用いてPCR増幅した(反応条件:95℃1分、52℃1分、72℃1分の35サイクル)。その後、一本鎖調製を行い、次のラウンドのライブラリーを調製した。一本鎖調製は、具体的には次のようにして行った。すなわち、PCR産物に、その1/10倍量の×50 TE Bufferおよび1/5倍量の5 M NaClを添加し、この溶液をアビジン固定化アガロースに加え、30分インキュベートした。その後、上清を取り除き、Column buffer (30 mM HEPES、500 mM NaCl、5mM EDTA、pH7.0)で2回洗浄した。上清を取り除いた後、0.15 M NaOHを加えて10分間攪拌し、上清を回収する操作を2回繰り返し行うことにより、ssDNAを溶出させた。ssDNAを含む上清を2M HClで中和し、エタノール沈殿によりssDNAを回収した。
【0058】
上記の操作を1ラウンドとして、CRPに対するアプタマーのスクリーニングを計5ラウンド行った。なお、各ラウンドにおいて、タンパク質に結合したDNA量を確認するために、上記と同様の方法で検出用の膜を用意し、DNAとインキュベートさせた後に、二次抗体としてHRP(Horseradish peroxidase)修飾した抗FITC抗体を用いてタンパク質に結合したDNA量を化学発光により確認した。
【0059】
全てのラウンドで、CRPを固定化した部位においてssDNAの結合を検出することができた。1〜3ラウンド目においてCRPとPQQGDHに対するライブラリーの結合能は同等であった。しかし、4ラウンド目においては、CRPの固定化量を減らしたにも関わらず、PQQGDHよりもCRPを固定化した部位のスポットの方が濃かった。PQQGDHよりもCRPに対して特異性が高いssDNAが濃縮していると考えられる。
【0060】
4、5ラウンド目のライブラリーでは、CRPに対して親和性の高いアプタマーが濃縮されていると考えられたので、これらのライブラリーの塩基配列解析を行った。各クローンの名称は、"Cap (シークエンスされた順番)"とした。配列解析の結果を下記表1に示す(なお、表1中にはプライマー領域の配列を省略して示す)。20種のコロニーからプラスミド抽出を行い、4ラウンド目のCRPライブラリーの塩基配列は16本、5ラウンド目のCRPライブラリーの塩基配列は19本決定することができた。4ラウンド目のCRPライブラリーのシークエンス解析の結果、重複する配列(Cap 9)が見られた。また5ラウンド目のCRPライブラリーのシークエンス解析の結果、全てが、Cap 9に収束していた。これより、Cap 9がCRPに対して高い親和性・特異性を示すと考えられる。結果として、13種類のアプタマー配列が得られた。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例2 Aptamer blotting法による13個のアプタマーの結合能評価
本実施例においては、得られた13個のアプタマーのCRPに対する結合能の評価をAptamer blotting法により行った。
【0063】
具体的な方法を以下に示す。CRPを1μg(8.7 pmolに相当)、PQQGDHを3μg(30 pmolに相当)ニトロセルロース膜の片面に固定化した後、10 % 血清でブロッキングした。5'末端にFITC修飾された各アプタマーをBinding buffer中でフォールディングし、Binding buffer中で終濃度80 nMになるように調製した。調製した各アプタマーと膜に固定化されたCRPを室温で1時間インキュベートした。HRP修飾された抗FITC抗体を用い、化学発光により各アプタマーのCRPへの結合能を評価した。
【0064】
それぞれのアプタマーのCRP、PQQGDHに対する結合能を、化学発光により検出した結果を図1に示す。全てのアプタマーにおいて、CRPを固定化した部位にスポットを検出することができた。特に、Cap 9を添加した場合、PQQGDH(図1中では「GDH」)よりもCRPを固定化した部位のスポットの方が濃いことから、Cap 9はPQQGDHよりもCRPに対して親和性及び特異性が高いと考えられる。
【0065】
実施例3 SPRによるアプタマーの結合能評価
本実施例では、実施例3においてCRPに対して高い結合能を有することが明らかになったCap 9について、SPR(表面プラズモン共鳴法)を用いて解離定数の算出を行った。
【0066】
具体的な方法を以下に示す。5' 末端にビオチン修飾されたCap 9をフォールディングした後、Sensor chip SAのFc-1に1260RU固定化した。また、コントロールDNA (5'-ACTAGTTCAGAACTAGTTGCCAGAAAGCTACCTTGACGTCAGGGCCTACTGACC-3':配列番号16)を Fc-2に1160RU固定化した。その後、種々の濃度に調製したCRPを100μl注入し、Cap 9とCRPの相互作用を観察した。なお、SPRの測定は、室温、流速5μl/minで行い、固定化buffer、Running bufferは、Binding buffer(tween 21は含まない)を、再生bufferは0.1 % SDS、0.25 % SDS、0.5 % SDS を用いた。DNAとCRPの調製には、Binding bufferを用いた。
【0067】
測定結果を図2に示す。CRP濃度依存的なシグナルの上昇が観察された。この結果をもとにスキャッチャードプロットから解離定数を算出したところ、Cap 9のCRPに対する解離定数は166.7 nMと算出された。
【0068】
実施例4 Cap 9の最小単位の検討
本実施例においては、Cap 9(配列番号2)の二次構造予測を元にdeletion mutantであるdel 2-1(配列番号15、Cap 9の4nt〜40ntから成る)を作製し、CRPに対する結合能の評価を(1)Aptamer blotting法、(2)SPRにより行った。なお、最近接塩基対法を用いた核酸構造予測プログラムであるm-fold(商品名)を用いてCap 9及びdel 2-1が形成する二次構造を予測した結果を図3に示す。
【0069】
(1) Aptamer blotting法による評価
具体的な方法は実施例2と同様である。CRPを1μg(8.7 pmolに相当)ニトロセルロース膜の片面に固定化し、終濃度80 nMのdel 2-1と室温にて1時間インキュベートした。
【0070】
結果を図4に示す。スポットが観察されたことからdel 2-1はCRPに対して結合能を有すると考えられる。
【0071】
(2) SPRによる評価
具体的な方法は実施例3と同様である。5' 末端にビオチン修飾されたdel 2-1をフォールディングした後、Sensor chip SAのFc-1に1420RU固定化した。また、コントロールDNA(配列番号16)をFc-2に930RU固定化した。その後、種々の濃度に調製したCRP(50μl)を流速5μl/minで注入した。
【0072】
測定結果を図5に示す。CRP濃度依存的なシグナルの上昇が観察された。この結果をもとにスキャッチャードプロットから解離定数を算出したところ、del 2-1のCRPに対する解離定数は1400 nM程度と算出された。
【0073】
実施例5 del 2-1を用いた酵素活性を指標にしたAESセンサーシステムの構築
本実施例においては、CRPの検出を目的として、del 2-1を用いたセンサーシステムを構築した。本研究室では、これまでに、トロンビン阻害DNAアプタマーにタ−ゲット結合するDNAアプタマーを挿入し、トロンビンの酵素活性を指標に標的分子を検出するセンサー素子Aptameric Enzyme Subunit(AES)を開発している(特許文献1)。
【0074】
具体的な方法を以下に示す。トロンビンに結合しその活性を阻害する能力を有する公知のトロンビンアプタマー(配列番号17)の3'側のTT loop部位(配列番号17中の20-21nt間)でアプタマーを2つに分割した。分割部位の一方にはリンカー(t)を介してCRPアプタマーdel 2-1を付加した(3' thrombin-del 2-1 aptamer)。もう一方の分割部位には、del 2-1の3'末端側の一部領域との相補的塩基配列をリンカー(t)を介して付加した(5' thrombin-del 2-1 aptamer)。相補的塩基配列の鎖長としては、11mer, 12mer, 13merの3通りを検討した。これら2つのポリヌクレオチドから成るCRP測定用AESの塩基配列を下記表2に、予想される測定スキームを図6に示す。3' thrombin-del 2-1 aptamerと5' thrombin-del 2-1 aptamerがハイブリダイズしている状態では、トロンビンアプタマー部位がGカルテット構造を形成し、このトロンビンアプタマー部位に結合するトロンビンの活性が阻害される。しかし、CRP存在下では、CRPがdel 2-1部位に結合してdel 2-1が高次構造を形成し、3' thrombin-del 2-1 aptamerと5' thrombin-del 2-1 aptamerが解離する。これにより、トロンビンアプタマー部位のGカルテット構造が崩壊し、ここに結合していたトロンビンが解離するため、阻害されていたトロンビンの活性が回復する。すなわち、このAESによる測定系は、CRPの存在によりトロンビンアプタマー部位のトロンビン阻害能が減少し、トロンビン活性が上昇する系である。なお、表2の塩基配列中、大文字で示す領域がCRPアプタマーの部分相補鎖である。
【0075】
【表2】

【0076】
トロンビンの酵素活性は、フィブリノーゲン溶液が固まる時間を指標として測定した。フィブリノーゲンは測定buffer(10 mM Tris-HCl, 5 mM KCl, 150 mM NaCl, pH 7.4)を用い2 mg/mlになるように調整した。AES(終濃度250 nM)はBinding bufferを用い、熱処理によりフォールディングさせた。トロンビン(10μl、終濃度54 nM)、AES(50μl、終濃度250 nM)、Binding bufferに溶解したCRP(40μl、終濃度 1μM)混合溶液とフィブリノーゲン溶液100μlを別々に、37℃で5分間インキュベートした後に、フィブリノーゲン溶液に(1)トロンビンのみ、(2)トロンビン+AES、又は(3)トロンビン+AES+CRPを加え、37℃において溶液が固まる時間を測定した。
【0077】
5' thrombin-del 2-1 aptamer 13merを用いたAESによる測定結果を図7に示す。トロンビンのみを加えた場合、血液凝固時間は十数秒程度であったのに対して、トロンビンとAESとを加えた場合には凝固時間の延長が観察された。さらに、トロンビンとAESにCRPを加えた場合には、トロンビンとAESを加えた時に比べて凝固時間の減少が観察された。以上のことから、構築したAESはCRP存在下で想定した構造変化が起きていることが考えられる。5' thrombin-del 2-1 aptamer 11mer及び5' thrombin-del 2-1 aptamer 12merを用いたAESでも同様の結果が得られた。
【0078】
実施例6 構築したAESセンサーシグナルの濃度依存性の検討
本実施例では、構築したAESセンサーシグナルのCRP濃度依存性を検討した。
【0079】
具体的な方法を以下に示す。CRPをBinding bufferを用いて種々の濃度に調製し、トロンビンの酵素活性を測定し、CRPを検出できるか検討した。また、コントロールとしてIgGを用いて同様の実験を行った。酵素活性の測定の詳細な方法は、実施例5と同様であった。
【0080】
測定結果を図8に示す。CRP濃度依存的に凝固時間の減少が観察され、さらにネガティブコントロールとして種々の濃度のIgGを加えても、凝固時間に変化は見られなかった。以上のことから、構築したAESによりCRPを特異的に検出でき、定量も可能であると考えられる。
【0081】
実施例7 CRPを標的としたDNAアプタマーの再スクリーニング
本実施例においては、CRPを実施例6より高感度に検出することを目的とし、より結合能の高いCRPに結合するDNAアプタマーを再度スクリーニングした。
【0082】
具体的な方法を以下に示す。CRPとホロ化したPQQGDHをそれぞれニトロセルロース膜に固定化した後、その膜を10 %の血清でブロッキングして、TBST (10 mM Tris-HCl, 150 mM NaCl, 5 mM KCl, 0.05 % tween, pH 7.4)で洗浄した。FITC修飾されたssDNAライブラリーをTBS中でフォールディングさせた後に終濃度80 nM 500μlスケールとなるように調製し、タンパク質を固定化した膜と室温で1時間インキュベートした。その後、フェノールクロロホルム処理することにより、CRPに結合したssDNAを抽出し、FITC修飾プライマー及びビオチン修飾プライマーを用いてPCR増幅した。その後、一本鎖調製を行い、次のラウンドのライブラリーを調製した。なお、用いたDNAライブラリーは実施例1と同様(配列番号1)である。上記の操作を1ラウンドとして、CRPに対するアプタマーのスクリーニングを計5ラウンド行った。
【0083】
ネガティブコントロールと比較して、2ラウンド目以降のssDNAライブラリーはCRPを固定化した部位のスポット強度が濃く、CRPへのssDNAの結合が明瞭に確認できた。4、5ラウンド目においては、CRPの固定化量を減らしたにも関わらず、CRPを固定化した部位のスポットが濃かった。さらに、2ラウンド目以降においてPQQGDHよりもCRPを固定化した部位のスポットの方が濃いことから、ラウンドを重ねることでCRP特異的なssDNAが濃縮できていると考えられる。
【0084】
2、3、4ラウンド目のライブラリーでは、CRPに対して親和性の高いアプタマーが濃縮されていると考えられたので、これらのライブラリーの塩基配列解析を行った。各クローンの名称は、"Cap (シークエンスされた順番)"とした。
【0085】
配列解析の結果を下記表3に示す(なお、表3中にはプライマー領域の配列を省略して示す)。2ラウンド目のライブラリーの塩基配列は19本、3ラウンド目のライブラリーの塩基配列は26本、4ラウンド目のライブラリーの塩基配列は19本決定することができた。2、3ラウンド目のライブラリーにおいて、収束している配列や明らかな相同性も確認されず、多様性をもつクローンが得られたと考えられる。4ラウンド目のライブラリーでは、2種類の配列に収束していた。19本中8本が重複していた配列Cap 4-1は、前回のスクリーニングで得たCap 9と同様の配列であった。さらに、8本が重複した配列Cap 4-2が得られた。今回の4ラウンドのスクリーニングによりCap 4-1(Cap 9)とCap 4-2に収束したと考えられる。さらに、Cap 4-3とCap 4-1の塩基配列間に高い相同性が確認された。結果として、再スクリーニングにより新たに45種類のアプタマーが得られた。
【0086】
【表3−1】

【0087】
【表3−2】

【0088】
【表3−3】

【0089】
実施例8 Aptamer blotting法による45個のアプタマーの結合能評価
本実施例においては、新規に得られた45個のアプタマーのCRPに対する結合能の評価をAptamer blotting法により行った。
【0090】
具体的な方法を以下に示す。CRPを1μg(8.7 pmolに相当)、PQQGDHを3μg(30 pmolに相当)ニトロセルロース膜の片面に固定化した後、10 % 血清でブロッキングした。5'末端にFITC修飾された各アプタマーをBinding buffer中でフォールディングし、Binding buffer中で終濃度80 nMになるように調製した。調製した各アプタマーと膜に固定化されたCRPを室温で1時間インキュベートした。HRP修飾された抗FITC抗体を用い、化学発光により各アプタマーのCRPへの結合能を評価した。
【0091】
それぞれのアプタマーのCRP、PQQGDHに対する結合能を、化学発光により検出した結果を図9に示す。Cap 2-5, 2-6, 2-7, 2-8, 2-9, 2-10, 2-12, 2-13, 2-14, 2-15, 2-16, 3-1, 3-11, 3-12, 3-16, 3-18, 3-19, 4-3を添加した膜では、PQQGDHを固定化した部位にスポットは見られなかったのに対し、CRPを固定化した部位にのみスポットが観察された。これらのクローンは、CRP特異的に結合するアプタマーであると考えられる。さらに、これらのクローンを添加した膜において、CRPを固定化した部位のスポット強度はネガティブコントロールと比較して濃かった。以下の実験では、二次構造が安定と考えられるCap 4-3、2-6、2-7、2-12、2-13、2-15、2-16、3-11、3-12、3-16、3-18の11種類について評価を行なう。これら11種類について、m-fold(商品名)により二次構造を予測した図を図10〜20に示す。
【0092】
実施例9 Aptamer blotting法によるCap 9と11種類のCRPアプタマーの競合検討
本実施例においては、再スクリーニングによって得られた上記11種類のCRPアプタマーと既に得られているCRPアプタマーであるCap 9が、CRPに対して競合して結合するかどうかをAptamer blottingにより検討した。競合検討は、(1)Cap 9にFITCを修飾、(2)Cap 4-3、2-6、2-7、2-12、2-13、2-15、2-16、3-11、3-12、3-16、3-18にFITCを修飾し、実験を行った。
【0093】
(1) Cap 9にFITCを修飾
1μg(8.5 pmol)のCRPをニトロセルロース膜に固定化した後、その膜を10 %の血清でブロッキングして、TBST (10 mM Tris-HCl, 150 mM NaCl, 5 mM KCl, 0.05 % tween, pH 7.4)で洗浄した。アプタマーをTBS中でフォールディングさせた後に、FITC修飾されたCap 9 (終濃度 1 nM)とCap 4-3、2-6、2-7、2-12、2-13、2-15、2-16、3-11、3-12、3-16、3-18 (終濃度 0 nM, 10 nM, 100 nM)の混合溶液を500μlスケールとなるように調製し、タンパク質を固定化した膜と室温で1時間インキュベートした。その後、HRP修飾された抗FITC抗体を用いて化学発光を検出し、Cap 9のCRPへの結合を確認した。
【0094】
化学発光を検出した結果を図21に示す。FITC修飾されたCap 9とFITC修飾されていないCap 4-3を1:100の濃度比で混合させた時、FITC修飾されたCap 9とCRPの結合を示すスポットの強度が、混合させなかった時と比べて弱かった。Cap 4-3とCap 9は、CRPの同じ領域に結合していると考えられる。Cap 4-3以外のアプタマーを混合させても、スポットの強度に変化がなかったことから、これらのアプタマーはCap 9と競合しないと考えられる。しかし、これらのアプタマーのCRPへの結合能がCap 9よりも非常に低い場合、競合していてもスポットの強度に変化が見られない可能性がある。
【0095】
(2) Cap 2-6、2-7、2-12、2-13、2-15、2-16、3-11、3-12、3-16、3-18にFITCを修飾
1μg(8.5 pmol)のCRPをニトロセルロース膜に固定化した後、その膜を10 %の血清でブロッキングして、TBST (10 mM Tris-HCl, 150 mM NaCl, 5 mM KCl, 0.05 % tween, pH 7.4)で洗浄した。アプタマーをTBS中でフォールディングさせた後に、FITC修飾されたCap 2-6、2-7、2-12、2-13、2-15、2-16、3-11、3-12、3-16、3-18 (それぞれ終濃度 80 nM)とCap 9の混合溶液を図22に示す濃度比で500μlスケールとなるように調製し、CRPを固定化した膜と室温で1時間インキュベートした。その後、HRP修飾された抗FITC抗体を用いて化学発光を検出し、FITC修飾されたアプタマーのCRPへの結合を確認した。
【0096】
化学発光を検出した結果を図22に示す。FITC修飾されたCap 3-16、3-18以外のアプタマーを添加した膜において、FITC修飾されていないCap 9を混合させるとスポットの強度が弱かった。Cap 3-16、3-18以外のアプタマーとCap 9は競合してCRPに結合すると考えられる。一方で、FITC修飾されたCap 3-16、3-18とFITC修飾されていないCap 9の混合溶液において、スポットの強度に変化がなかった。このことから、Cap 3-16、3-18とCap 9は競合しないと考えられる。
【0097】
以上の結果より、Cap 3-16とCap 9あるいはCap 3-18とCap 9を連結したアプタマーダイマーは、Cap 9よりも結合能が高いと推測される。
【0098】
実施例10 アプタマーCap 9変異体の結合能
上記実施例1で得られたアプタマーCap 9について、数個の塩基が置換又は欠失した変異体を作製し、結合能を評価した。作製したCap 9の変異体を下記表4に示す。なお、表4中にはプライマー領域の配列を省略して示す。
【0099】
【表4】

【0100】
TBS(10 mM Tris-HCl、150 mM NaCl、5 mM KCl pH 7.4)を用いて10μg/mlに調製したCRPを、マイクロタイタープレート(Nunc イムノプレート、polysorp)に200μl/well加えて、4℃で一晩かけてwell上に固相化した。その後、4 %(w/v)スキムミルク(in TBST)を200μl/well加えて室温で1時間ブロッキングした。洗浄後、FITC修飾した各アプタマーをTBSで1μMに調製したものを200μl/well加えて室温で1時間インキュベートした。洗浄後、TBSTで100倍に希釈したHRP修飾抗FITC抗体を200μl/well加えて室温で1時間インキュベートし、洗浄後、発光基質(ロシュ社製)を200μL加えて、HRPの発光量を測定した。なお、コントロールとして、CRPを固定化せずにDNAを加えたwell(CRP−)、タンパク質を固定化後にDNAを加えないwell(No DNA)も評価し、洗浄はTBST (0.05 % tween in TBS)を用いて3回行った。
【0101】
結果を図23に示す。9R3および9R10を加えた時に得られた発光量は、wild type(もとのCap 9)と同程度であったが、それ以外のクローンを加えた時に得られた発光量は減少していた。結合能を維持していた9R3および9R10は、wild typeと比べて4塩基および7塩基変異が入ったクローンである。また、9R13は、9R12および9R16と1塩基変異が入ったクローンであり、1塩基変異が入ることで半分程度シグナルが減少していた。
【0102】
実施例11 アプタマーCap 9の短縮型変異体の結合能
アプタマーCap 9並びに実施例10で作製した変異体9R3及び9R10について、プライマー領域の配列を削除した短縮型変異体及び短縮型変異体の5'側にTを付加した変異体を作製し、結合能を調べた。作製したプライマーの配列を下記表5に示す。
【0103】
【表5】

【0104】
TBS(10 mM Tris-HCl、150 mM NaCl、5 mM KCl pH 7.4)を用いて10μg/mlに調製したCRPを、マイクロタイタープレート(Nunc イムノプレート、polysorp)に200μl/well加えて、4℃で一晩かけてwell上に固相化した。その後、4 %(w/v)スキムミルク(in TBST)を200μl/well加えて室温で1時間ブロッキングした。洗浄後、FITC修飾した各アプタマーをTBSで1μMに調製したものを200μl/well加えて室温で1時間インキュベートした。洗浄後、TBSTで100倍に希釈したHRP修飾抗FITC抗体を200μl/well加えて室温で1時間インキュベートし、洗浄後、発光基質(ロシュ社製)を200μL加えて、HRPの発光量を測定した。なお、コントロールとしてCRPを固定化せずにDNAを加えたwell(CRP−)、タンパク質を固定化後にDNAを加えないwell(No DNA)も評価し、洗浄はTBST (0.05 % tween in TBS)を用いて3回行った。
【0105】
結果を図24に示す。いずれのアプタマーでも、短縮型では66 merのアプタマーより発光量が2倍程度上昇していた。プライマー領域を除いた短縮型変異体は、CRPに対する結合能が66 merと比べて上昇していることが示唆された。
【0106】
実施例12 SPRによる短縮型変異体の結合能評価
短縮型変異体Cap9t30、9R3t30、9R10t30のCRPに対する結合能をSPRにより評価した。なお、測定には、10 mM 酢酸 Buffer(pH6.0、pH5.5)を用いて、50μg/mlに調製したCRPを、アミンカップリングによりチップのフローセル1に1900RU程度固定化した。その後、種々の濃度に調製した短縮型変異体を流速 20μl/minで100μl注入し、相互作用を確認した。なお、SPRの測定には、CM5チップよりも表面の負電荷を抑えたCM4チップを用い、固定化BufferとしてPBS(8.10 mM Na2HPO4、1.47 mM KH2PO4、137 mM NaCl、2.68 mM KCl、pH 7.4)、Running Bufferとして、TBS(10 mM Tris-HCl、150 mM NaCl、5 mM KCl、pH 7.4)、再生Bufferとして10 mM NaOHと1 M NaClの混合溶液を用いた。
【0107】
SPRセンサーグラムを図25に示す。DNAを注入することでシグナルが観察され、DNA濃度依存的なシグナルの上昇が見られた。得られたセンサーグラムから市販のソフトウェアBIAevaluation 3.1によりグローバルフィッティングを行い、結合カイネティックパラメーターを算出した。フィッティングモデルには、Heterogenous ligandを用いた。短縮型変異体の解離定数は、Cap9t30では3.3-42 nM程度、9R3t30では4.9-48 nM程度、9R10t30では1.5-38 nM程度と算出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(e)のいずれかのポリヌクレオチドから成るC反応性タンパク質結合性アプタマー。
(a) 配列表の配列番号2、26〜31、33〜37、40、50、51、54、56、57及び65のいずれかに示される塩基配列から成るポリヌクレオチド。
(b) (a)のポリヌクレオチドにおいて、1個又は数個の塩基が置換し、欠失し及び/又は挿入され、且つC反応性タンパク質と結合する能力を有するポリヌクレオチド。
(c) (a)又は(b)のポリヌクレオチドにおいて、5'末端側及び/又は3'末端側の塩基が10〜18個欠失した塩基配列から成り、C反応性タンパク質と結合する能力を有するポリヌクレオチド。
(d) (a)〜(c)のいずれかのポリヌクレオチド中に存在するステムループ構造単位を少なくとも一つ含む構造領域から成り、C反応性タンパク質と結合する能力を有するポリヌクレオチド。
(e) (a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドを部分領域として含み、C反応性タンパク質と結合する能力を有するポリヌクレオチド。
【請求項2】
以下の(a)、(b)、(d)、(e)のいずれかのポリヌクレオチドから成る請求項1記載のアプタマー。
(a) 配列表の配列番号2、26〜31、33〜37、40、50、51、54、56、57及び65のいずれかに示される塩基配列から成るポリヌクレオチド。
(b) (a)のポリヌクレオチドにおいて、1個又は数個の塩基が置換し、欠失し及び/又は挿入され、且つC反応性タンパク質と結合する能力を有するポリヌクレオチド。
(d) (a)又は(b)のポリヌクレオチド中に存在するステムループ構造単位を少なくとも一つ含む構造領域から成り、C反応性タンパク質と結合する能力を有するポリヌクレオチド。
(e) (a)、(b)、(d)のいずれかのポリヌクレオチドを部分領域として含み、C反応性タンパク質と結合する能力を有するポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記(a)のポリヌクレオチドが配列番号2に示される塩基配列から成る請求項1又は2記載のアプタマー。
【請求項4】
前記(b)のポリヌクレオチドが配列番号67〜79のいずれかに示される塩基配列から成る請求項3記載のアプタマー。
【請求項5】
前記(b)のポリヌクレオチドが配列番号68〜71、74、76〜78のいずれかに示される塩基配列から成る請求項4記載のアプタマー。
【請求項6】
前記(b)のポリヌクレオチドが配列番号68又は74に示される塩基配列から成る請求項5記載のアプタマー。
【請求項7】
前記(c)のポリヌクレオチドが、前記(a)のポリヌクレオチドの5'末端側及び3'末端側の塩基が18個欠失した塩基配列から成る請求項1記載のアプタマー。
【請求項8】
前記(c)のポリヌクレオチドが配列番号80〜82のいずれかに示される塩基配列から成る請求項7記載のアプタマー。
【請求項9】
前記(b)のポリヌクレオチドが、前記(a)のポリヌクレオチドのうち1個又は2個の塩基が置換し、欠失し及び/又は挿入されたポリヌクレオチドである請求項1又は2記載のアプタマー。
【請求項10】
配列表の配列番号2、26〜31、33〜37、40、50、51、54、56、57及び65のいずれかに示される塩基配列から成るポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを部分領域として含み、C反応性タンパク質と結合する能力を有するポリヌクレオチドから成る請求項1記載のアプタマー。
【請求項11】
配列表の配列番号68、74及び80〜82のいずれかに示される塩基配列から成るポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを部分領域として含み、C反応性タンパク質と結合する能力を有するポリヌクレオチドから成る請求項1記載のアプタマー。
【請求項12】
前記ポリヌクレオチドのサイズが150mer以下である請求項1ないし11のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項13】
配列表の配列番号2、26〜31、33〜37、40、50、51、54、56、57及び65のいずれかに示される塩基配列から成る請求項10記載のアプタマー。
【請求項14】
配列表の配列番号2、27、28、33、34、36、37、50、51、54、56及び65のいずれかに示される塩基配列から成る請求項13記載のアプタマー。
【請求項15】
配列表の配列番号68、74及び80〜82のいずれかに示される塩基配列から成る請求項11記載のアプタマー。
【請求項16】
配列表の配列番号80〜82のいずれかに示される塩基配列から成る請求項15記載のアプタマー。
【請求項17】
配列表の配列番号2に示される塩基配列から成るポリヌクレオチド中に存在するステムループ構造単位を少なくとも一つ含む構造領域から成り、C反応性タンパク質と結合する能力を有するポリヌクレオチドから成る請求項1記載のアプタマー。
【請求項18】
配列表の配列番号15に示される塩基配列から成る請求項17記載のアプタマー。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれか1項に記載のC反応性タンパク質結合性アプタマーを含むC反応性タンパク質認識アプタマー部位と、酵素と結合し該酵素の活性を変化させる能力を有する酵素制御アプタマー部位とを含むポリヌクレオチドであって、C反応性タンパク質が前記C反応性タンパク質認識アプタマー部位に結合することにより、前記酵素制御アプタマー部位が前記酵素の活性を変化させる能力が変化するポリヌクレオチド。
【請求項20】
1分子から成る酵素制御アプタマーのループ構造内のいずれかの部位で分断して得られる断片をそれぞれ含む2分子のポリヌクレオチド鎖から成り、一方のポリヌクレオチド鎖の分断側末端には前記C反応性タンパク質結合性アプタマーがリンカーを介して又は介さずに連結され、他方のポリヌクレオチド鎖の分断側末端には該C反応性タンパク質結合性アプタマー中の部分領域と相補的な領域がリンカーを介して又は介さずに連結され、2分子のポリヌクレオチド鎖の分子内及び/又は分子間の塩基対形成により前記酵素制御アプタマー部位の立体構造が形成される請求項19記載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
前記酵素がトロンビンである請求項19又は20記載のポリヌクレオチド。
【請求項22】
前記酵素制御アプタマー部位は、配列表の配列番号17に示される塩基配列中の11nt〜12ntの領域、15nt〜17ntの領域、又は20nt〜21ntの領域で形成されるループ構造内のいずれかの部位で該塩基配列を分断して得られる2つの断片を含んで成る請求項21記載のポリヌクレオチド。
【請求項23】
配列表の配列番号18〜20のいずれかに示される塩基配列から成るポリヌクレオチド鎖と、配列番号21に示される塩基配列から成るポリヌクレオチド鎖とから成る請求項22記載のポリヌクレオチド。
【請求項24】
請求項19ないし23のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドと、該ポリヌクレオチドの前記酵素制御アプタマー部位に結合した酵素とを含む、C反応性タンパク質測定試薬。
【請求項25】
請求項24記載のC反応性タンパク質測定試薬を、C反応性タンパク質を含み得る検体と接触させる工程と、前記酵素制御アプタマー部位に結合した前記酵素の酵素活性の変化を測定する工程と、該変化を指標として該検体中のC反応性タンパク質を測定する工程とを含む、C反応性タンパク質の測定方法。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図1】
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【図4】
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【図9】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−158238(P2010−158238A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278620(P2009−278620)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18〜20年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 産業技術研究助成事業「酵素活性制御アプタマーを用いた疾病マーカー迅速検出システムの開発」委託研究 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】