説明

C型肝炎及びウシウイルス性下痢のウイルスのようなフラビウイルス科に分類される種によって引き起こされる感染の治療に有用な二環式炭水化物化合物

出願人は、C型肝炎ウイルスの感染の治療に対して二環式炭水化物の使用を記載する。異なる二環式炭水化物は、DNAウイルス、レトロウイルス及びフラビウイルス科、ヒト及び動物のRNA病原体の重要なファミリーに対してインビトロで試験した。有意な活性は、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)に対して観察された。BVDVのようなペスチウイルスはC型肝炎ウイルス(HCV)と多くの類似性を共有するので、一般な二環式炭水化物及び好ましくはより特異的な二環式炭水化物がC型肝炎ウイルスの感染の治療となると期待される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、一般的に、フラビウイルス科(Flaviviridae)に分類される種によって引き起こされる感染の治療に有用な二環式炭水化物化合物に関し、より具体的には、C型肝炎、ウシウイルス性下痢、ブタコレラ(classical swine fever)、ウェストナイル熱、及びデング熱ウイルスによって引き起こされる感染の治療又は改善に有用なそのような化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
C型感染は、輸血に関連した肝炎の大部分の原因が当時認定されたった2種の肝炎ウイルス、A型肝炎及びB型肝炎によって引き起こされないとことが見出された1975年に疾患の別の実体であるとして最初に認定された。疾患は、「非A非B型肝炎」と呼ばれ、チンパンジーに伝染可能であることが示された。しかしながら、1989年になって、非A非B型肝炎ウイルスのウイルスゲノムのクローニングとシークエンシングが初めて報告され、そのウイルスは、「C型肝炎ウイルス」(HCV)と新たに命名された。即座に続いたHCVに対する抗体の試験とそのような抗体のスクリーニングは、依然として主要な診断方法である。
【0003】
C型肝炎ウイルスは、フラビウイルス科とウイルス学的及び遺伝学的特徴を共有する。そのゲノム構成はフラビウイルス(flavivirus)やペスチウイルス(pestivirus)のゲノム構成と類似し、これらのウイルス、特にペスチウイルスとわずかに配列の同一性を共有する。これらのウイルスグループの各々は、フラビウイルス科に分類される別々の属:フラビウイルス属、ペスチウイルス属及びC型肝炎ウイルス属を含む。C型肝炎ウイルスは、直径が約50nmの球形のエンベロープウイルスである。HCVのゲノムは、ポジティブセンスの一本鎖の直鎖のRNAである。それはセグメント化されていない。5’の非コード(NC)領域は、約340ヌクレオチドからなる。直近の下流は、約9000ヌクレオチドの一つの大きなオープンリーディングフレーム(ORF)である。最終に、約100ヌクレオチドからなる3’NCが存在する。HCVのゲノムは、非常に異種(heterogeneous)である。ゲノムの最も高度に保存された領域は、5’NC領域と3’NC領域部分である。ORFの最も高度に保存された領域は、キャプシド遺伝子である。対象的に、ゲノムの最も異種な部分は、エンベロープタンパク質をコードする遺伝子である。それらの遺伝的不均一性に基づいて、HCV株は、主要グループ、ウイルスのいわゆる型や遺伝子型(及び別々の種として暫定的に分類された)に分けることができる。型には、HCVの分離ウイルス(isolate)は、無数のサブタイプにグループ分けされている。つまり、個々の分離ウイルスは、緊密に関連するが、しかし異なるウイルスの「擬種(quasispecies)」又は「群れ(swarms)」を含むウイルスゲノムの異種な群からなる。いくつかのHCVの遺伝子型は、地理的には制限されているように見える;他は世界的な分布を有する。HCVのより広範な遺伝的解析は、型、サブタイプ、及び分離ウイルスへの分離ウイルスの階層的な分類は、幾分人工的であり、ウイルスはおそらく遺伝的な多様性の連続体として存在する。HCVの遺伝的多様性の帰結は、高い割合(80%を超える)の慢性感染や繰返し晒された患者において再感染に対する免疫の欠如へと導く、宿主の免疫の監督を逃れる能力を有するウイルスである。慢性化と実質的な免疫の欠如は、配列において変化するウイルスの擬種の少数群の出現におそらくは起因する(www.HEPNET.com,the Hepatitis Infomation Network;Challand R.,Young R.J.(1997)Antiviral Chemotherapy.Biochemical & Medicinal Chemistry Series. Spektrum Academic Publishers,Oxford,pp.87−92;Cann A.J.(1997)Principles of Molecular Virology.Second Edition.Academic Press,San Diego,pp.230−235)。医療でまだ対処されていないという要求を生じさせる他の重要なフラビウイルス科は、ウェストナイルウイルスとデング熱の原因となるウイルスである。
【0004】
したがって、現在利用できる治療と比較して、より少ないか又は減少した副作用であって、より効率的にフラビウイルス感染を治療するために使用することができる新規な生物的に活性な分子を発見し開発するための強力な医療の要求が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要
一般式:
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、Rはアリールであり、R及びRはアルキル又はアリールのいずれかであり、Rはアリールであり、及びXはO、N又はSのいずれかである]
を有するある種の二環式の炭水化物が、C型肝炎、ウシウイルス性下痢、ブタコレラ、ウェストナイル熱及びデング熱ウイルスを含むフラビウイルス科によって引き起こされる感染に対する活性を有することを発見した。他の二環式炭水化物化合物がフラビウイルス科によって引き起こされる感染の治療に有用であろうと当業者に想起されるであろうが、代表的な、現在好ましい二環式炭水化物が本出願に記載される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
フラビウイルス科は、ヒト及び動物のRNAウイルス性病原体の重要なファミリーである(Rice CM.1996.Flaviviridae:the viruses and their replication.In:Fields BN,Knipe DM,Howley PM,eds.Fields virology.Philadelphia:Lippincott−Raven Publishers.pp931−960)。フラビウイルス科の3種の現在認定されている属が、伝染、宿主範囲及び病原性において明確な相違を示す。この伝統的フラビウイルスの一員は、黄熱ウイルス、デング熱ウイルス及びペスチウイルス、例えば、ウシウイルス性下痢のウイルス(BVDV)やブタコレラウイルス(CSFV)である。ごく最近、このファミリーの特徴付けられた一員は、共通でありヒト特有の病原体、C型肝炎ウイルス(HCV)である。フラビウイルス科は、(+)センスRNAゲノム極性を有する一本鎖RNAウイルスである。(+)センスRNAを有する他のウイルスファミリーは、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)、トガウイルス科(Togaviridae)、カリシウイルス科(Caliciviridae)及びコロナウイルス科(Coronaviridae)を含む。
【0009】
本発明の化合物は天然の形態又は塩として使用することができる。化合物が十分に塩基であるか又は酸であり、安定な非毒性の酸又は塩基性の塩を形成する場合、塩としての化合物の投与が適切であるかもしれない。薬学的に許容できる塩の例は、生理学的に許容できる陰イオンを形成する酸、例えば、酢酸、アスコルビン酸、安息香酸、クエン酸、エトグルタル酸、グリセロリン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、コハク酸、及び酒石酸とともに形成される有機酸付加塩である。重炭酸塩、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、及び硫酸塩を含む適切な無機塩も同様に形成され得る。
【0010】
本発明の化合物は、適切な賦形剤と一緒に化合物を含有する医薬組成物において都合よく投与することができ、該組成物は、ウイルス感染との奮闘に有用である。製剤が内部の又は外部のウイルス感染を治療するために使用されるかどうかに依存して、本発明の化合物及び組成物は、非経口、局所、膣内、経口、又は腸内に投与することができる。
【0011】
非経口投与の場合、活性な化合物又はその塩の溶液は、水、場合によっては、非毒性の界面活性剤と混合して調製することができる。分散剤もまた、グリセリン、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、及びその混合物中、及び油中に調製することができる。
【0012】
化合物の有効な投薬量は、それらのインビトロでの活性を比較することによって決定することができる。ヒトへの有効な投薬量を外挿する方法は、当該技術分野において既知である。
【0013】
化合物は、好ましくは単位投薬量形態で投与され;例えば、単位投薬量形態当たり活性成分の0.1−2000mg、好ましくは100−1000mg、最も好ましくは100−500mgを含有する。所望の投薬は、好ましくは、1回の投薬、又は適切な間隔、例えば、1日当たり2回、3回、4回若しくはより細かな投薬回数で投与される分けた投薬として提供してもよい。細かな投薬そのものは、さらに、例えば、多くの不連続で大雑把な間隔の投与、例えば、吸入器からの多数の吸入剤の投与、又は眼に複数の滴下による適用によって分けてもよい。
【0014】
内部感染の場合、組成物を哺乳動物の体重1kg当たり約1−30mg、好ましくは1−10mgのフリーベースとして計算された投薬量レベルで経口又は非経口で投与することができる。
【0015】
本明細書に開示された化合物及び組成物の投与のための正確な処方は、治療される個々の患者への必要性、治療形体、及び、当然に主治医の専門家の診断に必然的に依存するであろう。本発明の化合物は、治療を必要とする動物に投与することができる。大抵の場合、これはヒトであろうが、家畜や愛玩用動物の治療もまた、本発明の範囲内に含まれるので、明確に予期される。
【実施例】
【0016】
方法と材料
式Aの化合物の合成
化合物は次のように合成した:
1.化合物A1及び化合物A2の合成
化合物A1及び化合物A2の合成は図2に図解される。
【0017】
化合物1.1の合成
2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−D−グルコース(10.0g、18.5mmol)のCHCl(125ml)とDMF(6.25ml)の溶液に、臭化オキサリル(CHClの10M溶液2.5ml、1.35当量)をRT(室温)で滴下した。これは、激しい気体形成が伴う。反応混合物はAr雰囲気下でRTで60分間攪拌する。その後、反応混合物は氷水(125ml)中に注がれる。層を分離した後、有機層を氷水(2×125ml)で洗浄する。MgSO上での乾燥、ろ過、及び真空で蒸発後、化合物1.1(図1)を黄色油状物として得て、さらに精製せずに次の反応工程に使用する。
【0018】
式:C3435BrO
分子量:603.55
Rf:0.53(シクロヘキサン/酢酸エチル 85:15)
【0019】
【化2】

【0020】
化合物1.2の合成
化合物1.1(理論上は18.5mmol)の乾燥EtO(250ml)の溶液に、0℃に冷却した塩化ベンジルマグネシウム(EtOの1M−oplの150ml、8当量)をゆっくり添加する。混合物を0℃で1時間拡販し、その後、温度を室温までゆっくりと戻す。室温で一晩攪拌した後、反応混合物をHO(500ml)とAcOHに注ぎ、層を分離する。その後、有機層を3×500mlの飽和NaHCO溶液と250mlの飽和NaCl溶液で洗浄する。MgSO上での乾燥、ろ過、真空での蒸発により、粗生成物を生ずる。これをカラムクロマトグラフィー(60−230メッシュシリカ、勾配:トルエン:シクロヘキサン8:2、トルエン、シクロヘキサン:酢酸エチル9:1)で精製し、無色油状物として6.47gの化合物1.2(2工程で57%)を生ずる。
【0021】
式:C4142
分子量:614.78
Rf:0.15(シクロヘキサン/ジエチルエーテル 9:1)
[a]20=+85.3゜;[a]36520=+88.1゜(クロロホルム中c=0.60)
【0022】
【化3】

【0023】
化合物1.3の合成
化合物1.2(6.0g、9.76mmol)の無水EtOH(240ml)の溶液に、Pd/C(600mg、10mol%)を室温で添加する。Parr装置で5時間、4気圧のH気体下で震とうする。セライト(登録商標)上でのろ過と真空での濃縮によって、2.62gの白黄色の泡状物として残渣を生じる。カラムクロマトグラフィー(60−230メッシュ、CHCl:MeOH 9:1)による精製によって、白色の泡状物として2.46gの化合物1.3を生ずる(99%)。
【0024】
式:C1318
分子量:254.28
Rf:0.14(ジクロロメタン/メタノール 9:1)
【0025】
【化4】

【0026】
化合物1.4の合成
化合物1.3(1.0g、3.93mmol)のジメチルホルムアミド(38.6ml)の溶液に、ベンズアルデヒドジメチルアセタール(708μl、1.2当量)とD(+)−10−カンフルスルホン酸(274mg、0.3当量)を室温で連続的に添加する。反応混合物をAr雰囲気下で室温で2時間攪拌する。精査をEtOAc(150ml)で希釈することによって開始する。その後、溶液を1N NaOH溶液(2×150ml)、飽和NaHCO溶液(2×100ml)、及び飽和NaCl溶液(2×100ml)で洗浄する。MgSO上での乾燥、ろ過、及び真空での濃縮により、1.52gの白色の固体残渣として生ずる。カラムクロマトグラフィー(60−230メッシュシリカ、CHCl:MeOH 99:1)による精製によって、白色固体として940mgの化合物1.4(70%)を生ずる。
【0027】
式:C2022
分子量:342.39
Rf:0.20(シクロヘキサン:酢酸エチル 6:4)
融点:43−44℃
[a]20=−6.9゜;[a]36520=−10.7゜(クロロホルム中c=0.60)
【0028】
【化5】

【0029】
化合物A1の合成
化合物1.4(100mg、0.292mmol)の溶液に、0℃に冷却したNaH(51mg、60%分配、4当量)を添加する。その後、混合物をAr雰囲気下で0℃で30分間攪拌する。次いで、n−プロピルブロマイド(133μl、5当量)をゆっくり滴下して添加する。0℃で10分後、攪拌を室温で一晩続ける。TLC分析後、追加の2当量のNaHと1当量のn−PrBrを添加する。室温で4時間攪拌後、反応混合物をHO(25ml)に注ぎ、続いて3×30mlのEtOで抽出する。合わせた有機層を50mlの飽和NaCl溶液で洗浄し、MgSO上で乾燥する。ろ過と真空での濃縮により、144mgの白色結晶残渣を生ずる。カラムクロマトグラフィー(230−400メッシュシリカ、ペンタン:エーテル 9:1)による精製によって、化合物A1を白色結晶生成物(117mg、94%)として得る。
【0030】
式:C2634
分子量:426.55
Rf:0.25(ペンタン:エーテル 9:1)
融点:76−77℃
[a]20=−41.4゜;[a]36520=−127.6゜(クロロホルム中c=1.02)
【0031】
【化6】

【0032】
化合物A2の合成
化合物1.4(100mg、0.292mmol)の溶液に、0℃に冷却したNaH(51mg、60%分配、4当量)を添加する。混合物を0℃でAr雰囲気下で30分間攪拌する。その後、n−ブチルブロマイド(157μl、5当量)をゆっくり滴下して添加する。0℃で10分間攪拌後、攪拌を室温で一晩続ける。TLC分析後、追加の2当量のNaHと1当量のn−BuBrを添加する。室温で5時間攪拌後、反応混合物をHO(25ml)に注ぎ、処理した3×30mlのEtOで溶液を抽出する。合わせた有機層を50mlの飽和NaCl溶液で洗浄し、MgSO上で乾燥する。ろ過と真空での濃縮により、168mgの白黄色残渣を生ずる。カラムクロマトグラフィー(230−400メッシュシリカ、ペンタン:エーテル 92:8)による精製によって、125mgの白色結晶の化合物A2(94%)を生ずる。
【0033】
式:C2838
分子量:454.60
Rf:0.24(ペンタン:エーテル 92:8)
融点:69−70℃
[a]20=−38.7゜;[a]36520=−120.8゜(クロロホルム中c=0.98)
【0034】
【化7】

【0035】
2.化合物A3の合成
化合物A3の合成は図3に図解される。
【0036】
化合物2.1の合成
(β)−D−グルコース ペンタ−アセテート(24.6g、63.0mmol)に臭化水素の酢酸(33wt%、100ml)溶液を添加した。濃い茶色がすぐに現われる。反応混合物をアルゴン雰囲気下で室温で30分間攪拌した。その後、溶媒を真空下でトルエン(4×50ml)とともに共沸蒸留により除去し、緑茶色の固体の化合物2.1を生じた。粗生成物をさらに精製せずに次の反応工程に使用した。
【0037】
式:C1419Br
分子量:411.20
Rf:0.46(シクロヘキサン/酢酸エチル 1:1)
【0038】
【化8】

【0039】
化合物2.2の合成
臭化フェニルマグネシウム(ジエチルエーテルの3M溶液200ml、600mmol、9.5当量)の、0℃に冷却した乾燥ジエチルエーテル(500ml)の溶液に、乾燥ジエチルエーテル(500ml)中の臭化化合物1.1(理論値63.0mmol)の溶液をカニュレーションにより添加した。反応混合物をアルゴン雰囲気下で72時間室温で攪拌した。その後、反応混合物を水(2000ml)に注ぎ入れ、酢酸(200ml)を添加し、マグネシウム塩を溶解した。二層を分離し、有機層を水(3×500ml)で洗浄した。合わせた水層を減圧下で濃縮し、薄茶色の固体残渣を生じた。この残渣をピリジン(500ml)で溶解した。0℃で、無水酢酸(340ml)をゆっくり添加した。DMAP(200mg、1.64mmol)を添加した後、アルゴン雰囲気下で室温で20時間攪拌を続けた。次に、反応混合物を減圧下で濃縮し、トルエン(1×250ml)とともに共沸蒸発し、ジエチルエーテル(3l)を添加した。得られた有機層を飽和NaHCO溶液(2×1l)、1N HCl溶液(2×1l)、及び水(2×1l)で洗浄した。MgSO上での乾燥、減圧下での濃縮により、25.1gの薄茶色の結晶を生じた。これらを2−プロパノールから再結晶によって精製し、白色結晶として16.1gの化合物2.2(63%)を得た。
【0040】
式:C2024
分子量:408.40
Rf:0.42(シクロヘキサン/酢酸エチル 1:1)
融点:149−150℃
【0041】
【化9】

【0042】
化合物1.3の合成
テトラアセテートの化合物2.2(16.08g、39.4mmol)の、テトラヒドロフラン(232ml)とメタノール(232ml)の混合物の溶液に、無水炭酸カリウム(1.36g、9.84g、0.25当量)を添加した。混合物を室温でアルゴン雰囲気下で3時間攪拌した。シリカゲル(40ml)を添加し、溶媒を減圧下で除去した。生成物の化合物1.3をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール 85/15)によって精製し、9.50gの生成物の化合物2.3(99%)を得る。
【0043】
式:C1216
分子量:240.26
Rf:0.12(ジクロロメタン/メタノール 9:1)
【0044】
【化10】

【0045】
化合物2.4の合成
テトロールの化合物2.3(1.15g、4.79mmol)の乾燥アセトニトリル(3ml)にアルゴン雰囲気下で、カンフルスルホン酸(279mg、1.20mmol、0.25当量)とベンズアルデヒドジメチルアセタール(1.44ml、9.58mmol、2当量)を添加した。反応混合物を室温で3時間攪拌した。その後、混合物をトリエチルアミン(0.337ml、2.40mmol)の添加によって中和した。反応混合物を減圧下で濃縮し、2.70gの薄黄色の油状物を生ずる。カラムクロマトグラフィー(CHCl/iPrOH 1/1)による精製によって、1.53gの化合物2.4(97%)を白色固体として得る。
【0046】
式:C1920
分子量:328.36
Rf:0.27(シクロヘキサン/酢酸エチル 1:1)
融点:114−115℃
[a]20=+9.3゜;[a]36520=+10.0゜(クロロホルム中c=1.13)
【0047】
【化11】

【0048】
化合物2.5の合成
ジオールの化合物2.4(500mg;1.523mmol)の乾燥ピリジン(15ml)の氷で冷却した溶液に、連続してDMAP(20mg;0.15mmol;0.1当量)とAcO(5ml)を添加する。冷却を止め、反応混合物をアルゴン雰囲気下で18時間室温で攪拌する。その後、ピリジンとAcOをトルエンを用いて減圧下で共沸的に除去する。残渣をカラムクロマトグラフィー(Merck kieselgel;シクロヘキサン/EtOAc:85/15)によって精製する。化合物2.5を95%収率で得る(595mg;1.443mmol)。
【0049】
式:C2324
分子量:412.4
Rf:0.21(シクロヘキサン/EtOAc:85/15)
融点:>150℃昇華
[a]20:−78.46゜(c=1.010;CHCl
IR(KBr−ディスク、フィルム):
【0050】
【化12】

【0051】
化合物2.6の合成
化合物2.5(400mg;0.970mmol)を乾燥トルエン(5ml)に溶解し、トルエン中のPetasis試薬(CpTiMe)の0.5M溶液(8.15ml;4.074mmol;4.2当量)を滴下して添加する。反応混合物を遮光し、Ar雰囲気下で60分間70℃で加熱する。その後、反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(Merck kieselgel;シクロヘキサン/CHCl/EtOAc:50/50/1)によって精製する。
【0052】
化合物A3の合成
エノールエーテル2.6(320mg;0.783mmol)の乾燥EtOAc(17ml)の溶液に乾燥EtN(1.7ml)を添加する。その後、Pd/C(10%wtパラジウム;320mg)を添加し、反応混合物をH雰囲気下に置いた。室温で22時間攪拌後、結晶をセライト上でろ過により取り出し、EtOAcで洗浄する。ろ過物の濃縮後に得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(Merck kieselgel;ペンタン/CHCl/エーテル:50/50/1)によって精製する。化合物A3を82%の収率(265mg;0.642mmol)で得る。
【0053】
式:C2532
分子量:0.22(ペンタン/CHCl/エーテル:50/50/1)
融点:98−100℃
[a]20:−31.02゜(c=1.100;CHCl
【0054】
【化13】

【0055】
生物活性の化合物のスクリーニング
様々な病原性ウイルス、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純疱疹ウイルス(HSV)、ワクシニアウイルス(VV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)及びヒトサイトメガロウイルス(CMV)に対して化合物をスクリーニングした。CMVを除いた全てのウイルスに対してEC50(ヒトCEM細胞培養のHIV誘導による細胞変性、ヒト胚線維芽細胞ESM細胞培養のHSV及びVV誘導による細胞変性、及びヒト胎児肺のHEL細胞培養のVZV誘導による細胞変性を50%阻害するのに要求する有効化合物濃度)を決定した。CMVに対してIC50で発現した抗ウイルス活性を決定するために、96ウェルマイクロプレートで増殖したヒト胎児肺の線維芽細胞(HEL)を20PFUウイルス/ウェルで感染させた。
【0056】
37℃で2時間インキュベート後、感染細胞に連続希釈した試験化合物を含有する培養液0.1mlで補充した。7日目、Giemsa溶液で細胞を染色後、プラークを顕微鏡でカウントした。最小の抗ウイルス濃度は、ウイルス誘導によるプラーク形成を50%まで阻害するのに要求される投薬量として表した。
【0057】
同様に化合物をフラビウイルスに対してスクリーニングした。HCVに対するスクリーニングのために適当なインビトロアッセイがないという事実により、それがC型肝炎ウイルスと多くの類似性を共有するので、出願人はウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)に対してスクリーニングすることに決定した。抗ウイルス活性は、Madin Darbyウシ腎細胞(MDBK細胞)についてBVDVのPe515菌を用いてアッセイした。抗ウイルス活性と細胞毒性の両者は、MTS方法の手法により決定した。EC50は、ウイルスで誘導した細胞変性の効果を50%まで減少するのに要求される濃度である。MTC(最小毒性濃度)は、細胞の代謝において≧20%の減少を引き起こす濃度として定義された。
【0058】
化合物はまた、マウス白血病細胞(L1210/0)、マウス乳腺癌腫細胞(FM3A)、及びヒトTリンパ球(Molt4/C8、CEM/0)の増殖を通じて抗腫瘍活性を調べた。
【0059】
NCCLS文献M7−A4、Vol.17 No.2、M27−A、Vol.17 No.9及びM38−P、Vol.18 No.13に基づいて、抗細菌及び抗真菌スクリーニングを実行するためのマイクロ希釈法を、自動化されたリーダー−インキュベーターであるBioscreen C Analyser(Labsystems、フィンランド)を用いて開発した。それは、垂直の光度測定(光学不透明度)によって連続して増殖を測定し、データを処理し、そして結果のプリントアウトを提供する。細菌については、出願人は、第一の標的として:黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC29213、腸球菌ファエカリス(Enterococcus faecalis)ATCC29212、大腸菌(Escherichia coli)ATCC25922及びグラム陰性桿菌(Pseudomonas aeruginosa)ATCC27853を選択した。カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)ATCC24433及びクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)ATCC90112を酵母の標的として選択した。皮膚糸状菌の毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)(ATCC9533と侵襲性糸状菌のアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)ATCC2895を糸状菌として選択した。最適なインキュベーションに必要な全てのパラメータはBiolinkソフトウェア(Labsystems、フィンランド)にプログラムすることができる。全ての細菌のスクリーニングのインキュベーションは、35℃で16時間であった。カンジダ及びクリプトコッカスに対するスクリーニングのインキュベーションパラメータは、それぞれ35℃で24時間と48時間であり、侵襲性真菌アスペルギルス・フミガーツスは30℃で3日間インキュベートし、そして、皮膚糸状菌の毛瘡白癬菌は30℃で5日間インキュベートした。細菌のための成長培地として、カチオン調整Mueller−Hintonブロース(Oxoid、ベルギー)を使用した。真菌感受性試験のために、合成培地:グルタミン含有、重炭酸塩を含まず、pH指示薬(Oxoid)を含み、1%グルコースを添加したRPMI1640が推奨される。10倍の化合物濃度の25μlを各ウェルにピペットで入れる。各25μlの試験化合物に225μlの成長培地を添加した。抗細菌及び抗酵母スクリーニング用の測定手法として、成長曲線下の領域で使用し、自動的にBiolinkソフトウェアにより決定される。病原性糸状菌に対するスクリーニングについては、出願人はエンドポイントOD測定を使用した。内部精度管理については、各微生物に対する参照抗体を試験の設定に入れた。
【0060】
結果及び考察
第一セットのスクリーニング(表1)において、二環式炭水化物の抗ウイルス活性をHIV−1、HIV−2、HSV−1、HSV−2、VV、CMV及びVZVに対して調べた。化合物A3だけがVAVに対して活性を示した。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
第二セットのウイルススクリーニング(表2)は、ウシ腎(MDBK)細胞における抗ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV−菌Pe515)活性を調べるために実行した。化合物A1はそれぞれ23、4、及び3.2μg/mlのED50を示した。化合物A2はそれぞれ7、53、及び54μg/mlのED50を示した。両化合物を用いた繰返しの試験は全て独立した3回の実験であった。化合物A3はEC50 <0.8μg/mlを示した。リバビリンはHCVによって引き起こされる感染を治療するために現在使用される貴重な基準である。表2の結果から、化合物A1、A2及びA3はリバビリンより非常に活性であることは明らかである。
【0064】
MTCは、化合物A1、A2及びA3で処理した場合、MDBK細胞い対して最高濃度(100μg/ml)で達しなかった。
化合物A1の抗腫瘍活性は、L1210/0、FM3A/0、Molt4/C8及びCEM/0に対してスクリーニングした。試験した全ての細胞株に対して、化合物A1は抗腫瘍活性を示さなかった。化合物A2は、試験した細胞株に対して適度の抗腫瘍活性を示した(表3)。
【0065】
【表3】

【0066】
抗細菌活性は、参照の細菌;黄色ブドウ球菌、腸球菌ファエカリス、大腸菌及びグラム陰性桿菌に対して試験した(表4)。化合物のいずれも選択した微生物に対していかなる有意な抗細菌効果を示さなかった。両化合物の最小の阻害濃度は約25μg/mlであった。
【0067】
【表4】

【0068】
抗真菌活性を2つの病原性酵母と糸状菌に対してスクリーニングした(表5)。いずれの化合物も選択した微生物に対していかなる有意な抗真菌効果を示さなかった。両化合物の最小の阻害濃度は約25μg/mlであった。
【0069】
【表5】

【0070】
結果
DNAウイルス及びレトロウイルスに対する第一セットのスクリーニングにおいては、有意な抗ウイルス活性は観察されなかった。しかしながら、BVDV(RNAウイルス)に対する第二セットのスクリーニングにおいては、出願人は、化合物A1とA3の有意な抗ウイルス活性、及び化合物A2の適度な活性を明確に見出した。これまでに試験した他の二環式炭水化物はBVDVに対して活性を示さなかった。さらに、有意な抗腫瘍、又は抗微生物活性は観察されなかった。BVDV及びHCVは多くの類似性を共有するため、化合物A1と化合物A3、及びおそらくは他の二環式炭水化物は、HCVに対して強力でしかも選択的な抗ウイルス特性を有する。加えて、化合物A1、化合物A2及び化合物A3はまた、他のフラビウイルス科、例えば、ウェストナイル熱ウイルスやデング熱ウイルスに対しても活性を示し得る。スクリーニングから、化合物A1、A2及びA3は、例えばHCVによって引き起こされる感染を治療するために使用される現在貴重な基準であるリバビリンと比較して、フラビウイルス科に対してより強力な抗ウイルス活性を示すことは明らかである。
【0071】
本発明は、その好ましい態様に関して記載しているが、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の意図される全範囲内にある変化や修飾が本明細書においてなし得るので、それほど制限されるべきでないこともまた理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、本発明の二環式炭水化物の化学構造であり、式Aとして示される。
【図2】図2は、化合物A1と化合物A2の合成スキームの概略的描写である。
【図3】図3は、化合物A3の合成スキームの概略的描写である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

[式中、Rが、−アルキル、−アリール及び−ベンジルからなる群から選択され;
及びRが、−アルキル及び−アリールからなる群から選択され;
が、−アリールであり;
Xが、O、N及びSからなる群から選択される]
を有する二環式炭水化物、又はその薬学的に活性な誘導体の有効量を投与する工程を含む、フラビウイルス科(Flaviviridae)に分類される種によって引き起こされる感染を治療する方法。
【請求項2】
がフェニル及びベンジルからなる群から選択され、R及びRがプロピル、i−プロピル及びブチルからなる群から選択され、Rがファニルであり、及びXがOであり、又はその薬学的に受容可能な塩である、請求項1に定義される方法。
【請求項3】
感染がC型肝炎である、請求項1に定義される方法。
【請求項4】
感染がウシウイルス性下痢である、請求項1に定義される方法。
【請求項5】
有効量の請求項1の化合物を投与する工程を含む、(+)センスRNAウイルスによって引き起こされる感染を治療する方法。
【請求項6】
感染がC型肝炎である、請求項4に定義される方法。
【請求項7】
感染がウシウイルス性下痢である、請求項3に定義される方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−514070(P2006−514070A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566657(P2004−566657)
【出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/041720
【国際公開番号】WO2004/062575
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(505257556)ケミン・ファーマ・ヨーロッパ・ビー・ブイ・ビー・エイ (2)
【Fターム(参考)】