説明

CADデータ作成装置、CADデータ作成方法及びコンピュータプログラム

【課題】 修正作業の要否を容易に判断することが可能になるCADデータ作成装置、CADデータ作成方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】
CADデータ作成装置100は、建築物の部材の一部を構成する線分の入力を受け付ける線分入力受付手段と、前記線分入力受付手段によって入力が受け付けられた線分が構成する部材を識別する部材識別情報を取得する部材識別情報取得手段と、前記部材識別情報取得手段によって取得された部材識別情報と前記線分とを対応付けた線分−部材データを記憶する線分情報データベース14Cとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用のCAD(Computer Aided Design)データを作成するCADデータ作成装置、CADデータ作成方法、及びその方法をコンピュータに実施させるためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築分野においてはCADが急速に普及しており、近年では様々な機能を有するCAD装置が提案されている。特に、建築分野においては、図面の修正が高い頻度で行われるという事情があるため、図面の修正機能に着目した改良が多くなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、建築物の間取りに関連する基本構造について自動診断を行い、その結果に応じて間取り設計を修正・変更することができる自動伏せ図作成処理装置が開示されている。この装置によれば、基本設計の段階で早期に問題を解決し、ほとんど問題のなくなった間取り図を作成して構造設計段階へ渡すことができるため、構造設計段階から基本設計段階への手戻りを最小化することが可能になる。
【0004】
また、特許文献2には、構造伏図上に各部材のサイズおよび高さ情報を付記することにより躯体ベース図を作成した後、各部材の図面上の幾何学的な寸法を部材リストの数値と対応させるために作成した躯体ベース図を修正する等の機能を有するCADシステムが開示されている。このCADシステムによれば、図面間の整合性を自動的にとることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−316864号公報
【特許文献2】特開2004−139241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術のように、図面の修正作業を自動的に行うことは望ましいものの、すべての修正作業を自動で行うことは極めて困難であって、実際には人手によるところが多い。そのため、人手による図面の修正作業をサポートするような機能を充実させることが望ましい。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、図面中の各線分と部材とを対応付けたデータを用いることにより、修正が必要になる箇所等を容易に確認することが可能となるCADデータ作成装置、CADデータ作成方法、及びその方法をコンピュータに実施させるためのコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様のCADデータ作成装置は、建築物の部材の一部を構成する線分の入力を受け付ける線分入力受付手段と、前記線分入力受付手段によって入力が受け付けられた線分が構成する部材を識別する部材識別情報を取得する部材識別情報取得手段と、前記部材識別情報取得手段によって取得された部材識別情報と前記線分とを対応付けた線分−部材データを記憶する線分−部材データ記憶部とを備える。
【0009】
この態様のCADデータ作成装置が、CADデータ中の線分の選択を受け付ける線分選択受付手段と、前記線分−部材データ記憶部に記憶されている線分−部材データを参照し、前記線分選択受付手段によって選択が受け付けられた線分と対応付けられた部材識別情報を出力する部材識別情報出力手段とを更に備えていてもよい。
【0010】
また、この態様のCADデータ作成装置が、前記線分−部材データ記憶部に記憶されている線分−部材データを参照し、同一の部材を構成する複数の線分を特定する第1線分特定手段と、前記第1線分特定手段によって特定された複数の線分により閉領域が形成されているか否かを判定する閉領域判定手段と、前記閉領域判定手段による判定結果を出力する判定結果出力手段とを更に備えていてもよい。
【0011】
また、この態様のCADデータ作成装置が、前記非領域判定手段によって閉領域が形成されていないと判定された場合に、閉領域を形成するために必要な線分を生成する線分生成手段を更に備えていてもよい。
【0012】
また、この態様のCADデータ作成装置が、線分の位置の移動指示を受け付けた場合に、前記線分−部材データ記憶部に記憶されている線分−部材名データを参照し、前記移動指示に係る線分と同一の部材を構成する線分を特定する第2線分特定手段と、前記移動指示に係る線分の位置と共に、前記第2線分特定手段によって特定された線分の位置を移動させる線分移動手段とを更に備えていてもよい。
【0013】
また、この態様のCADデータ作成装置が、線分の位置の削除指示を受け付けた場合に、前記線分−部材データ記憶部に記憶されている線分−部材名データを参照し、前記削除指示に係る線分と同一の部材を構成する線分を特定する第3線分特定手段と、前記削除指示に係る線分及び前記第3線分特定手段によって特定された線分を削除する線分削除手段と を更に備えていてもよい。
【0014】
また、この態様のCADデータ作成装置が、前記線分−部材データ記憶部に記憶されている線分−部材データを参照し、同一の部材を構成する線分を特定する第4線分特定手段と、前記線分−部材データ記憶部に記憶されている線分−部材データを参照し、前記第4線分特定手段によって特定された線分と対応付けられた部材識別情報をCADデータの任意のレイヤに書き込む部材識別情報書込手段とを更に備えていてもよい。
【0015】
本発明の一の態様のCADデータ作成方法は、建築物の部材の一部を構成する線分の入力を受け付けるステップと、入力を受け付けた線分が構成する部材を識別する部材識別情報を取得するステップと、取得した部材識別情報と前記線分とを対応付けた線分−部材データを所定の記憶領域に記憶するステップとを有している。
【0016】
また、本発明の一の態様のコンピュータプログラムは、記憶部を備えるコンピュータを、建築物の部材の一部を構成する線分の入力を受け付ける線分入力受付手段と、前記線分入力受付手段によって入力が受け付けられた線分が構成する部材を識別する部材識別情報を取得する部材識別情報取得手段と、前記部材識別情報取得手段によって取得された部材識別情報と前記線分とを対応付けた線分−部材データを前記記憶部に記憶させる手段として機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るCADデータ作成装置、CADデータ作成方法及びコンピュータプログラムによれば、図面中に修正が必要となる箇所があるか否かの確認等を容易に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係るCADデータ作成装置の構成を示すブロック図。
【図2】線分情報データベースのレイアウトの一例を示す図である。
【図3】CADデータ作成装置が実行する線分情報生成処理の処理手順を示すフローチャート。
【図4】CADデータ作成装置が実行する部材表示処理の処理手順を示すフローチャート。
【図5】部材表示処理の際にディスプレイに表示される画面例を示す図。
【図6】CADデータ作成装置が実行する部材検証処理の処理手順を示すフローチャート。
【図7】部材検証処理においてディスプレイにエラー情報が表示される場合の画面例を示す図。
【図8】CADデータ作成装置が線分を生成する場合の処理手順を示すフローチャート
【図9】CADデータ作成装置が実行する線分移動処理の処理手順を示すフローチャート。
【図10】CADデータ作成装置が実行する線分削除処理の処理手順を示すフローチャート。
【図11】CADデータ作成装置が実行するレイヤ追加処理の処理手順を示すフローチャート。
【図12】レイヤ追加処理の際にディスプレイに表示される画面の一例を示す図。
【図13】レイヤ追加処理の際にディスプレイに表示される画面の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
[CADデータ作成装置の構成]
図1は、本発明の実施の形態に係るCADデータ作成装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、コンピュータ(CADデータ作成装置)100は、本体1と、入力部2と、ディスプレイ3とを備えている。本体1は、CPU11、ROM12、RAM13、ハードディスク14、データ読出装置15、入出力インタフェース(I/F)16、及び画像出力インタフェース(I/F)17を備えており、これらのCPU11、ROM12、RAM13、ハードディスク14、データ読出装置15、入出力I/F16及び画像出力I/F17は、バスBSによって接続されている。
【0021】
CPU11は、RAM13にロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。このCPU11が後述するCADデータ作成プログラム14Aを実行することによって、コンピュータ100が本実施の形態のCADデータ作成装置として機能することになる。
【0022】
ROM12は、マスクROM、PROM、EPROM(Erasable PROM)、又はEEPROM(Electrically Erasable PROM)などによって構成されており、CPU11にて実行されるコンピュータプログラム及びその実行の際に用いられるデータなどが記憶されている。
【0023】
RAM13は、SRAM又はDRAMなどによって構成されている。このRAM13は、ハードディスク14に記憶されているCADデータ作成プログラム14Aの読み出し等に用いられる。また、CPU11が各種のコンピュータプログラムを実行するときに、CPU11の作業領域としても利用される。
【0024】
ハードディスク14には、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムなど、CPU11に実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータが予めインストールされている。後述するCADデータ作成プログラム14Aも、このハードディスク14にインストールされている。
【0025】
また、ハードディスク14は、DXF形式、DWG形式、JWC形式などの図面データを格納する図面データベース(DB)14Bを記憶している。この図面DB14Bに格納されている図面データは、床伏図、天井伏図及び平面詳細図等の各種の平面図のCAD図面データ、並びに各種の断面図及び立面図等のCAD図面データ等である。
【0026】
ハードディスク14は、図面DB14B以外にも、図面データ中の各線分と部材との対応関係等が示された線分情報データベース(DB)14Cを記憶している。この線分情報DB14Cの詳細については後述する。
【0027】
また、ハードディスク14には、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのマルチタスクオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態に係るCADデータ作成プログラム14Aが当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0028】
データ読出装置15は、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、又はDVD−ROMドライブなどによって構成されており、可搬型記録媒体18に記録されたコンピュータプログラム又はデータを読み出すことができる。この可搬型記録媒体18に記録されたCADデータ作成プログラム14Aがデータ読出装置15によって読み出されてハードディスク14にインストールされることで、コンピュータ100をCADデータ作成装置として機能させることが可能になる。なお、CADデータ作成プログラム14Aは、このように可搬型記録媒体18によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ100と通信可能に接続された外部の機器から当該電気通信回線を通じて提供する等の態様も可能である。例えば、CADデータ作成プログラム14Aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ100がアクセスして、当該CADデータ作成プログラム14Aをダウンロードし、これをハードディスク14にインストールすること等も可能である。
【0029】
入出力インタフェース16は、例えばUSB,IEEE1394,又はRS-232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又はIEEE1284などのパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェース等から構成されている。この入出力インタフェース16には、キーボード及びマウスからなる入力部2が接続されており、ユーザが当該入力部2を操作することにより、コンピュータ100にデータを入力することが可能になる。
【0030】
画像出力インタフェース17は、LCDまたはCRTなどで構成されたディスプレイ3に接続されており、この画像出力インタフェース17を介してCPU11から画像データに応じた映像信号等がディスプレイ3に与えられる。ディスプレイ3は、CPU11より入力された映像信号等にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0031】
以下、上記の線分情報DB14Cの詳細について説明する。
図2は、線分情報DB14Cのレイアウトの一例を示す図である。図2に示すとおり、線分情報DB14Cは、線分の始点座標が格納される始点フィールド141、線分の終点座標が格納される終点フィールド142、線分が構成する部材の部材名が格納される部材名フィールド143、同じく部材を特定するための部材IDが格納される部材IDフィールド144、線分が存在するレイヤ(画層)を特定するためのレイヤIDが格納されるレイヤフィールド145、線分の線種を示す情報が格納される線種フィールド146、線分の線幅(太さ)を示す情報が格納される線幅フィールド147、及び、線分の色を示す情報が格納される色フィールド148を有している。
【0032】
この線分情報DB14Cに格納される情報は、後述する線分情報生成処理によって生成され、線分情報DB14Cに登録される。なお、線分情報DB14Cに格納される情報が図面DB14Bに格納されていてもよい。すなわち、図面DB14Bと線分情報DB14Cとが一体的であってもよい。
【0033】
[CADデータ作成装置の動作]
次に、上述したように構成されたCADデータ作成装置100の動作について、フローチャート等を参照しながら説明する。
CADデータ作成装置100は主に、(1)線分情報を生成するための線分情報生成処理、(2)部材名及び部材IDの表示を行うための部材表示処理、(3)部材が正しく作成されているか否かを検証するための部材検証処理、(4)線分の位置を移動するための線分移動処理、(5)線分を削除するための線分削除処理、及び(6)部材名及び部材IDが書き込まれたレイヤを作成するためのレイヤ追加処理の各処理を実行する。以下では、これらの各処理の詳細について説明する。
【0034】
(1)線分情報生成処理
線分情報生成処理は、ユーザが、床伏図、天井伏図及び平面詳細図等の各種のCADデータを作成する際に実行される処理である。なお、以下では、ユーザが入力部2を操作することによってCADデータ作成装置100に対する入力が行われることとする。
【0035】
図3は、CADデータ作成装置100が実行する線分情報生成処理の処理手順を示すフローチャートである。図3に示すとおり、CADデータ作成装置100はまず、どのレイヤに線分を書き込むのかの指示、すなわちレイヤの選択をユーザから受け付ける(S101)。次に、CADデータ作成装置100は、線分の入力を受け付ける(S102)。この場合、ユーザが始点座標及び終点座標を数値入力することによって線分の入力を受け付けるようにしてもよく、また、ユーザがマウスの操作等により所望の位置に線分を書き込むことによって当該入力を受け付けてもよい。さらには、例えば建築物の構造計算を行うコンピュータプログラムの出力結果に含まれる数値を用いることによって線分の入力がなされてもよい。
【0036】
次に、CADデータ作成装置100は、柱、屋根又はスラブ等、建築物の部材の名称である部材名の入力を受け付ける(S103)。この場合、ユーザが線分毎に部材名を入力してもよく、また、予め設定された部材名が自動的に入力されるようにしてあってもよい。ここでの自動的な入力は、例えば、CADデータ作成装置100が、線分の書き込みを行う前にどの部材の線分を書き込むのかを予め設定できるような機能を有しており、その設定に変更(部材の変更)がない限り当該設定された部材の部材名がCADデータ作成装置100に入力されるような態様が考えられる。
【0037】
CADデータ作成装置100は、部材名の入力を受け付けた場合、その部材名に係る部材の部材IDを生成する(S104)。この処理は様々な態様があり得るが、例えば、部材IDをユーザから受け付けてそれを書き込まれた線分と関連付けることにより行われる。この場合、線分毎にユーザから部材IDを受け付けてもよく、また、一つの部材を構成する線分がすべて書き込まれた後にユーザから受け付けてもよい。その他にも、CADデータ作成装置100が上述したようなどの部材の線分を書き込むのかを予め設定できるような機能を有しており、その設定に変更がない限り、書き込まれる線分に対して同一の所定の部材IDを関連付けること等により行ってもよい。
【0038】
次に、CADデータ作成装置100は、線分の線種・線幅・色の選択を受け付ける(S105)。なお、これら線種・線幅・色等の線分の属性について予め設定可能な場合は、このステップS105を省略するようにしてもよい。
【0039】
CADデータ作成装置100は、上述したようにして入力を受け付けたり生成されたりした各情報を用いて線分情報を生成し(S106)、その線分情報を線分情報DB14Cに登録する(S107)。
【0040】
以上の処理の結果、線分と部材名とが対応付けられた線分情報が線分毎に生成されることになる。これ以降の各処理は、この線分情報に基づいて実行される。
【0041】
なお、上述したようにして線分が書き込まれる他、公知の方法でCADの図面データが作成される。このようにして作成された図面データは、図面DB14Bに格納される。
【0042】
(2)部材表示処理
図4は、CADデータ作成装置100が実行する部材表示処理の処理手順を示すフローチャートである。図4に示すとおり、CADデータ作成装置100は、ユーザの指示にしたがって特定の図面データを図面DB14Bから読み出し、その図面データをディスプレイ3に表示する(S201)。
【0043】
次に、CADデータ作成装置100は、表示されている図面データ中の複数の線分のうち一つの線分の選択をユーザから受け付け(S202)、その受け付けた線分の始点座標及び終点座標をキーとして線分情報DB14Cを検索することにより、当該線分に係る線分情報を特定し、これを参照する(S203)。そして、CADデータ作成装置100は、参照した線分情報に含まれている部材名及び部材IDをディスプレイ3に表示する(S204)。
【0044】
図5は、部材表示処理の際にディスプレイ3に表示される画面例を示す図であって、(a)はステップS201の処理の結果表示される画面例を、(b)はステップS204の処理の結果表示される画面例をそれぞれ示している。図5(a)に示すように、表示画面110には、ある部材を構成する4つの線分A1,A2,A3及びA4が表示されている。また、この表示画面110には、線分を特定するための矢印状のカーソルCSRが表示されている。ユーザは、このカーソルCSRを用いて、線分A1,A2,A3及びA4の何れかの線分を選択する。ここでは、線分A2が選択されたものとする。
【0045】
線分A2が選択されて上記のステップS202及びS203が実行された後、ステップS204が実行されることによって、表示画面110には、図5(b)のように線分A2が構成する部材の部材名及び部材IDが表示される。図5(b)において、符号200は部材識別情報表示欄を示しており、この部材識別情報表示欄200の表示枠201には、線分A2が構成する部材の部材名である「柱」及び部材IDである「C1」が表示されている。
【0046】
この部材表示処理の結果、ユーザは、線分A2がどの部材を構成する線分であるのかを容易に把握することができる。図面データ中に多くの部材が含まれていたり、複数の部材が重なるように配置されていたりする場合、ある線分がどの部材を構成するものであるのかが認識できない等の事態が起きることがある。このような場合に、上記の部材表示処理を実行することにより、線分と部材との関係を正確に把握することが可能になる。そのため、修正作業の要否等を確認することができる。
【0047】
なお、本実施の形態では部材識別情報表示欄200の表示枠201に部材名及び部材IDが表示されているが、何れか一方のみが表示されてもよく、また、それ以外の情報で部材を識別することができるものを表示するようにしてもよい。
【0048】
(3)部材検証処理
図6は、CADデータ作成装置100が実行する部材検証処理の処理手順を示すフローチャートである。図6に示すとおり、CADデータ作成装置100は、ユーザの指示にしたがって特定の図面データを図面DB14Bから読み出し、その図面データをディスプレイ3に表示する(S301)。
【0049】
次に、CADデータ作成装置100は、表示されている図面データ中の複数の線分のうち一つの線分の選択をユーザから受け付け(S302)、その受け付けた線分の始点座標及び終点座標をキーとして線分情報DB14Cを検索することにより、当該線分に係る線分情報を特定し、これを参照する(S303)。
【0050】
次に、CADデータ作成装置100は、参照した線分情報の部材IDをキーとして線分情報DB14Cを検索することにより、当該線分と同一の部材を構成する線分の始点座標及び終点座標を取得する(S304)。これにより、ユーザによって選択された線分、及びその線分と共に特定の部材を構成する線分の始点座標及び終点座標が得られる。
【0051】
次に、CADデータ作成装置100は、上述したようにして得られた複数の線分の始点座標及び終点座標に基づいて、これらの線分がつながることにより一つの閉領域が形成されているか否かを判定する(S305)。ここで閉領域が形成されていると判定した場合(S305でYES)、CADデータ作成装置100は正常に部材が書き込まれていると判断し、その旨を示す正常情報をディスプレイ3に表示する(S306)。他方、閉領域が形成されていない(すなわち、開口部分が設けられている)と判定した場合(S305でNO)、CADデータ作成装置100は正常に部材が書き込まれていないと判断し、その旨を示すエラー情報をディスプレイ3に表示する(S307)。
【0052】
図7は、部材検証処理においてディスプレイ3にエラー情報が表示される場合の画面例を示す図である。図7に示すように、表示画面120には、ある部材を構成する3つの線分A1,A2及びA3と、他の部材を構成する1つの線分B1が表示されている。また、この表示画面120には、線分を特定するための矢印状のカーソルCSRが表示されている。ユーザは、このカーソルCSRを用いて、線分A1,A2及びA3の何れかの線分を選択する。ここでは、線分A2が選択されたものとする。
【0053】
図7に示す例の場合、線分A2が選択されて上記のステップS303が実行された後、ステップS304において線分A1及びA3の始点座標及び終点座標が取得される。そして、ステップS305において、閉領域が形成されているか否かの判定が、線分A1乃至A3の始点座標及び終点座標に基づいて行われる。この例の場合では、閉領域が形成されていないと判定されることになる。そのため、ステップS307が実行されることになる。その結果、表示画面120には図7のようにエラー情報表示欄210が表示され、このエラー情報表示欄210には「部材が正しく入力されていません」等の情報が表示される。
【0054】
この部材検証処理の結果、ユーザは、線分が不足しているために未完成となっている部材等を容易に発見することができるようになる。図面データ中に多くの部材が含まれていたり、複数の部材が重なるように配置されていたりする場合、ある部材が正しく入力されているか否か、線分が不足していないかどうか等の判別が困難になる場合があるが、上記の部材検証処理を実行することによって、そのような判別を容易に行うことが可能になる。図7に示す例においても、線分A1乃至A3及び線分B1により正しく部材が入力されているように見えるものの、線分B1は線分A1乃至A3とは異なる部材を構成する線分であるため、実際には線分が不足していて部材が未完成な状態となっている。この部材検証処理を実行することにより、このような修正が必要な箇所を容易に発見することが可能になる。
【0055】
なお、ステップS305において、部材を構成する線分が不足している、すなわち正しく部材が入力されていないと判断した場合、CADデータ作成装置100がその不足している線分を自動的に生成するようにしてもよい。図8は、そのような線分生成を行う場合の処理手順を示すフローチャートである。図8に示すとおり、CADデータ作成装置100は、上述したステップS304で取得した各線分の始点座標及び終点座標を用いて、不足しているため追加する必要がある線分(以下、「追加線分」という)の始点座標及び終点座標を取得する(S401)。
【0056】
次に、CADデータ作成装置100は、その追加線分の線分情報を生成する(S402)。この追加線分の線分情報に含まれる部材名、部材ID、レイヤ、線種、線幅及び色の各情報は、上述したステップS303で参照した線分情報に含まれる各情報と同一のものとなる。
【0057】
次に、CADデータ作成装置100は、生成した線分情報を線分情報DB14Cに登録し(S403)、さらに、追加線分が現れる図面に係る図面データを図面DB14Bから読み出した上で、当該図面データに追加線分を加えることによって図面データを更新する(S404)。そして、CADデータ作成装置100は、その更新された図面データをディスプレイ3に表示する(S405)。その結果、部材が正しく入力されることとなり、また、そのことをユーザが確認することができる。
【0058】
(4)線分移動処理
図9は、CADデータ作成装置100が実行する線分移動処理の処理手順を示すフローチャートである。図9に示すとおり、CADデータ作成装置100は、ユーザの指示にしたがって特定の図面データを図面DB14Bから読み出し、その図面データをディスプレイ3に表示する(S501)。
【0059】
次に、CADデータ作成装置100は、表示されている図面データ中の複数の線分のうち一つの線分の移動指示をユーザから受け付ける(S502)。この移動指示は、例えばユーザが移動対象の線分(以下、「移動線分」という)をマウスでクリックすることにより移動線分を選択し、マウスのドラッグアンドドロップ操作により所望の位置に移動線分を移動させることにより行われる。
【0060】
移動線分を移動させた後、CADデータ作成装置100は、移動線分の移動前の始点座標及び終点座標をキーとして線分情報DB14Cを検索することにより、移動線分に係る線分情報を特定し、これを参照する(S503)。そして、CADデータ作成装置100は、参照した移動線分の線分情報の部材IDをキーとして線分情報DB14Cを検索することにより、移動線分と同一の部材を構成する線分を特定する(S504)。
【0061】
次に、CADデータ作成装置100は、移動線分の移動前の始点座標及び終点座標と移動後の始点座標及び終点座標との差分、すなわち移動量を算出し、ステップS504で特定した線分をその移動量と同じだけ移動させた場合の当該線分の始点座標及び終点座標を算出する(S505)。次に、CADデータ作成装置100は、算出した当該線分の始点座標及び終点座標、並びに移動線分の移動後の始点座標及び終点座標を線分情報DB14Cに書き込むことにより、線分情報DB14Cを更新する(S506)。そして、CADデータ作成装置100は、更新後の各線分の始点座標及び終点座標にしたがって、各線分が移動された後の図面データをディスプレイ3に表示する(S507)。
【0062】
以上のような線分移動処理を実行することによって、一つの線分を移動させる操作を行うのみで、その線分と同一の部材を構成する他の線分も併せて移動させることができる。その結果、部材ごと所望の位置に移動させることができる。これにより、一つの線分のみ誤って移動させてしまい、部材が正しく表されなくなってしまう等の事態を回避することができる。
【0063】
(5)線分削除処理
図10は、CADデータ作成装置100が実行する線分削除処理の処理手順を示すフローチャートである。図10に示すとおり、CADデータ作成装置100は、ユーザの指示にしたがって特定の図面データを図面DB14Bから読み出し、その図面データをディスプレイ3に表示する(S601)。
【0064】
次に、CADデータ作成装置100は、表示されている図面データ中の複数の線分のうち一つの線分の削除指示をユーザから受け付ける(S602)。この削除指示は、例えばユーザが削除対象の線分(以下、「削除線分」という)をマウスでクリックして選択することにより行われる。
【0065】
次に、CADデータ作成装置100は、削除線分の始点座標及び終点座標をキーとして線分情報DB14Cを検索することにより、削除線分に係る線分情報を特定し、これを参照する(S603)。そして、CADデータ作成装置100は、参照した削除線分の線分情報の部材IDをキーとして線分情報DB14Cを検索することにより、削除線分と同一の部材を構成する線分を特定する(S604)。
【0066】
次に、CADデータ作成装置100は、ステップS604で特定した線分及び削除線分の線分情報を線分情報DB14Cから削除し(S605)、これらの線分が削除された後の図面データをディスプレイ3に表示する(S606)。
【0067】
以上のような線分削除処理を実行することによって、一つの線分を選択して削除指示を行うのみで、その線分と同一の部材を構成する他の線分も併せて削除することができる。その結果、部材ごと削除されることになる。これにより、部材ごと削除しようとしたにも関わらず誤っていくつかの線分を残してしまう等の事態を回避することができる。
【0068】
(6)レイヤ追加処理
図11は、CADデータ作成装置100が実行するレイヤ追加処理の処理手順を示すフローチャートである。図11に示すとおり、CADデータ作成装置100はまず、線分情報DB14Cに記憶されている線分情報の中から、レイヤ追加処理の対象にまだなっていない線分を特定し、その線分の線分情報を参照する(S701)。ここでの線分の特定処理は、ユーザによって選択された線分を特定することによって行ってもよく、また、レイヤ追加処理を行ったか否かを示すフラグ情報を線分情報毎に持たせて、そのフラグ情報を用いてレイヤ追加処理が施されていない線分情報の線分を抽出すること等によって行ってもよい。
【0069】
次に、CADデータ作成装置100は、参照した線分情報の部材IDをキーとして線分情報DB14Cを検索することにより、ステップS701で特定した線分と同一の部材を構成する線分を特定し、それらすべての線分の始点座標を取得する(S702)。
【0070】
次に、CADデータ作成装置100は、ステップS702にて取得した各線分の始点座標から所定量離れた位置に各線分の部材名及び部材IDを書き込んだレイヤ(以下、「追加レイヤ」という)を生成し(S703)、その追加レイヤを図面データに登録する(S704)。そして、CADデータ作成装置100は、追加レイヤが登録された図面データをディスプレイ3に表示する(S705)。
【0071】
図12は、レイヤ追加処理の際にディスプレイ3に表示される画面例を示す図であって、(a)は部材が表されているレイヤが表示されている画面例を、(b)はステップS703の処理の結果生成される追加レイヤが表示されている画面例を、(c)はステップS705にて表示される画面例をそれぞれ示している。
【0072】
図12(a)に示すように、表示画面130には、ある部材を構成する4つの線分が表されているレイヤが表示されている。ここでは、ステップS701において、これらの4つの線分のうちの何れかの線分の線分情報が参照されたものとする。
【0073】
上述したステップS703により生成された追加レイヤには、図12(b)に示すように、各線分が構成する部材の部材名である「柱」及び部材IDである「C1」が各線分の始点付近に書き込まれている。そして、図12(c)に示すように、ステップS705にて表示される画面130には、図12(a)及び(b)の画面が重ねられて表示されている。これにより、ユーザは、各線分によって構成され、部材ID「C1」で識別される柱が図面データ中に存在することを確認することができる。
【0074】
CADデータ作成装置100が、ユーザの指示にしたがって追加レイヤを適宜表示することにより、ユーザは各線分と部材との対応を視覚的に確認することができる。そのため、図面に誤りがないかどうか等を容易に確認することが可能になる。
【0075】
なお、本実施の形態では各線分の始点座標の近くに部材名及び部材IDを表す文字が配置されているが、本発明がこの態様に限定されるわけではないことは勿論である。部材名及び部材IDは、各線分の終点座標又は中心座標の近くに配置してもよく、それ以外の位置に配置してもよい。また、引き出し線を伴って部材名及び部材IDを配置することにより各線分と部材名及び部材IDとの対応をより明確にしてもよい。さらに、上述したステップS305と同様にして各線分によって閉領域が形成されているか否かを判定し、形成されていると判定した場合に、その閉領域内に部材名及び部材IDを配置するようにしてもよい(図13を参照。)。この場合、正しく入力されている部材には部材名及び部材IDが表されており、正しく入力されていない部材には部材名及び部材IDが表されていないことになるため、図面に誤りがないかどうかを容易に確認することができる。
【0076】
また、本実施の形態では部材名及び部材IDが表示されているが、何れか一方のみが表示されてもよく、また、それ以外の情報で部材を識別することができるものを表示するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のCADデータ作成装置、CADデータ作成方法及びコンピュータプログラムは、共同住宅、個別住宅及びオフィスビル等の各種の建築物のCADデータを作成するCADデータ作成装置、CADデータ作成方法及びコンピュータプログラムなどとして有用である。
【符号の説明】
【0078】
1 本体
2 入力部
3 ディスプレイ
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 ハードディスク
14A CADデータ作成プログラム
14B 図面データベース
14C 線分情報データベース
15 データ読出装置
16 入出力インタフェース
17 画像出力インタフェース
18 可搬型記録媒体
100 設計図書管理装置
141 始点フィールド
142 終点フィールド
143 部材名フィールド
144 フィールド
145 レイヤフィールド
146 線種フィールド
147 線幅フィールド
148 色フィールド
BS バス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の部材の一部を構成する線分の入力を受け付ける線分入力受付手段と、
前記線分入力受付手段によって入力が受け付けられた線分が構成する部材を識別する部材識別情報を取得する部材識別情報取得手段と、
前記部材識別情報取得手段によって取得された部材識別情報と前記線分とを対応付けた線分−部材データを記憶する線分−部材データ記憶部と
を備える、CADデータ作成装置。
【請求項2】
CADデータ中の線分の選択を受け付ける線分選択受付手段と、
前記線分−部材データ記憶部に記憶されている線分−部材データを参照し、前記線分選択受付手段によって選択が受け付けられた線分と対応付けられた部材識別情報を出力する部材識別情報出力手段と
を更に備える、請求項1に記載のCADデータ作成装置。
【請求項3】
前記線分−部材データ記憶部に記憶されている線分−部材データを参照し、同一の部材を構成する複数の線分を特定する第1線分特定手段と、
前記第1線分特定手段によって特定された複数の線分により閉領域が形成されているか否かを判定する閉領域判定手段と、
前記閉領域判定手段による判定結果を出力する判定結果出力手段と
を更に備える、請求項1又は2に記載のCADデータ作成装置。
【請求項4】
前記非領域判定手段によって閉領域が形成されていないと判定された場合に、閉領域を形成するために必要な線分を生成する線分生成手段
を更に備える、請求項3に記載のCADデータ作成装置。
【請求項5】
線分の位置の移動指示を受け付けた場合に、前記線分−部材データ記憶部に記憶されている線分−部材名データを参照し、前記移動指示に係る線分と同一の部材を構成する線分を特定する第2線分特定手段と、
前記移動指示に係る線分の位置と共に、前記第2線分特定手段によって特定された線分の位置を移動させる線分移動手段と
を更に備える、請求項1乃至4の何れかに記載のCADデータ作成装置。
【請求項6】
線分の位置の削除指示を受け付けた場合に、前記線分−部材データ記憶部に記憶されている線分−部材名データを参照し、前記削除指示に係る線分と同一の部材を構成する線分を特定する第3線分特定手段と、
前記削除指示に係る線分及び前記第3線分特定手段によって特定された線分を削除する線分削除手段と
を更に備える、請求項1乃至5の何れかに記載のCADデータ作成装置。
【請求項7】
前記線分−部材データ記憶部に記憶されている線分−部材データを参照し、同一の部材を構成する線分を特定する第4線分特定手段と、
前記線分−部材データ記憶部に記憶されている線分−部材データを参照し、前記第4線分特定手段によって特定された線分と対応付けられた部材識別情報をCADデータの任意のレイヤに書き込む部材識別情報書込手段と
を更に備える、請求項1乃至6の何れかに記載のCADデータ作成装置。
【請求項8】
建築物の部材の一部を構成する線分の入力を受け付けるステップと、
入力を受け付けた線分が構成する部材を識別する部材識別情報を取得するステップと、
取得した部材識別情報と前記線分とを対応付けた線分−部材データを所定の記憶領域に記憶するステップと
を有する、CADデータ作成方法。
【請求項9】
記憶部を備えるコンピュータを、
建築物の部材の一部を構成する線分の入力を受け付ける線分入力受付手段と、
前記線分入力受付手段によって入力が受け付けられた線分が構成する部材を識別する部材識別情報を取得する部材識別情報取得手段と、
前記部材識別情報取得手段によって取得された部材識別情報と前記線分とを対応付けた線分−部材データを前記記憶部に記憶させる手段として機能させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−113339(P2012−113339A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259110(P2010−259110)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(398054074)システム明星株式会社 (9)
【Fターム(参考)】