CADデータ同一性検証装置、CADデータ同一性検証方法、及びCADデータ同一性検証プログラム
【課題】意味的な情報を含めてCADデータの同一性を検証すること。
【解決手段】本実施の形態で同一性検証の対象となるCADデータは、フィーチャを規定した図形データと属性情報を規定した属性データを用いて構成されている。フィーチャと、属性情報は、識別番号によって対応づけられており、フィーチャに意味的な情報を付与することができる。CADデータ同一性検証装置は、このような構成を有する2つのCADデータの同一性を検証する。CADデータ同一性検証装置は、まず、2つのCADデータにおいて、フィーチャを対応させ、このフィーチャの対応から、それぞれのフィーチャの属性情報を対応させる。そして、CADデータ同一性検証装置は、対応する属性情報の同一性を検証することにより、意味的な情報を含めたCADデータの同一性検証を行う。
【解決手段】本実施の形態で同一性検証の対象となるCADデータは、フィーチャを規定した図形データと属性情報を規定した属性データを用いて構成されている。フィーチャと、属性情報は、識別番号によって対応づけられており、フィーチャに意味的な情報を付与することができる。CADデータ同一性検証装置は、このような構成を有する2つのCADデータの同一性を検証する。CADデータ同一性検証装置は、まず、2つのCADデータにおいて、フィーチャを対応させ、このフィーチャの対応から、それぞれのフィーチャの属性情報を対応させる。そして、CADデータ同一性検証装置は、対応する属性情報の同一性を検証することにより、意味的な情報を含めたCADデータの同一性検証を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CADデータ同一性検証装置、CADデータ同一性検証方法、及びCADデータ同一性検証プログラムに関し、例えば、図面要素に属性情報が対応づけられたCADデータの同一性を検証するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、業務の効率化やメンテナンス時におけるデータの再利用性の向上を目的として、情報の電子化が進められており、公共事業などでは、例えば、設計図面やその他の情報を電子納品することが定められている。
特に、CADデータについては、特定のアプリケーションに依存しないデータ交換を実現するためにフォーマットとしてSXF(SCADEC data eXchange Format)と呼ばれる規格に準拠することが定められている。
また、電子納品を効率的に行うための様々なソフトウェアが発売され、業務を効率的に行うための努力がなされている。
【0003】
例えば、本願出願人は、次の特許文献1によって、SXF準拠のCADデータの同一性を自動的に検証するCADデータ同一性検証装置を提案した。
【特許文献1】特開2004−259087公報 この技術は、SXF規格に準拠したデータ形式であるP21形式やSFC形式などで構成された2つのCADデータの同一性を検証するものである。 これによって、例えば、複数の流通経路を辿るなどして、同一図面のCADデータが2つ存在した場合、自動的に同一性を検証することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在は、主にSXF規格のバージョン2.0が用いられているが、近い将来、最新のバージョンであるバージョン3.0への移行が予定されている。
バージョン3.0では、バージョン2.0の機能に加え、図面要素に新たに意味的な情報(メタ情報)を属性として付与することができる。
このため、バージョン3.0では、例えば、線分を表す図面要素に「鉄筋」といった意味的な情報を付与することができる。
このようなバージョンの移行に伴って、意味的な情報を含めて2つのCADデータの同一性を検証するCADデータ同一性検証装置が求められていた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、意味的な情報を含めてCADデータの同一性を検証することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、図形情報と、前記図形情報が表す対象に関する意味的な内容を前記図形情報に付与する意味情報と、を用いて構成されたCADデータの同一性を検証するCADデータ同一性検証装置であって、第1のCADデータと、第2のCADデータを取得してメモリに展開するCADデータ取得手段と、前記展開した第1のCADデータの図形情報と前記第2のCADデータの図形情報の対応を特定し、当該特定した対応をメモリに記憶する対応特定手段と、前記対応特定手段にて対応が特定された第1のCADデータの図形情報と第2のCADデータの図形情報のそれぞれの意味情報を、前記メモリに展開した意味情報から取得する意味情報取得手段と、前記取得した意味情報の同一性を判断する同一性判断手段と、前記同一性判断手段による判断結果を出力する出力手段と、を具備したことを特徴とするCADデータ同一性検証装置を提供する。
請求項2に記載の発明では、前記出力は、前記第1のCADデータと前記第2のCADデータにおいて、前記意味情報が同一でないと判断された差分を出力することを特徴とする請求項1に記載のCADデータ同一性検証装置を提供する。
請求項3に記載の発明では、前記同一性判断手段は、予め意味情報の類似を規定した類似辞書を用いて、類似する意味情報を同一と判断することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のCADデータ同一性検証装置を提供する。
請求項4に記載の発明では、前記意味情報は、階層構造を有しており、前記同一性判断手段は、前記階層構造を数値化し、当該数値化した数値を用いて前記取得した意味情報の同一性を判断することを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載のCADデータ同一性検証装置を提供する。
請求項5に記載の発明では、図形情報と、前記図形情報が表す対象に関する意味的な内容を前記図形情報に付与する意味情報と、を用いて構成されたCADデータの同一性を検証するCADデータ同一性検証方法であって、CADデータ取得手段と、対応特定手段と、意味情報取得手段と、同一性判断手段と、出力手段と、を備えたコンピュータにおいて、前記CADデータ取得手段によって、第1のCADデータと、第2のCADデータを取得してメモリに展開するCADデータ取得ステップと、前記対応特定手段によって、前記展開した第1のCADデータの図形情報と前記第2のCADデータの図形情報の対応を特定し、当該特定した対応をメモリに記憶する対応特定ステップと、前記意味情報取得手段によって、前記対応特定手段にて対応が特定された第1のCADデータの図形情報と第2のCADデータの図形情報のそれぞれの意味情報を、前記メモリに展開した意味情報から取得する意味情報取得ステップと、前記同一性判断手段によって、前記取得した意味情報の同一性を判断する同一性判断ステップと、前記出力手段によって、前記同一性判断手段による判断結果を出力する出力ステップと、から構成されたことを特徴とするCADデータ同一性検証方法を提供する。
請求項6に記載の発明では、図形情報と、前記図形情報が表す対象に関する意味的な内容を前記図形情報に付与する意味情報と、を用いて構成されたCADデータの同一性を検証する機能をコンピュータに発揮させるCADデータ同一性検証プログラムであって、第1のCADデータと、第2のCADデータを取得してメモリに展開するCADデータ取得機能と、前記展開した第1のCADデータの図形情報と前記第2のCADデータの図形情報の対応を特定し、当該特定した対応をメモリに記憶する対応特定機能と、前記対応特定機能にて対応が特定された第1のCADデータの図形情報と第2のCADデータの図形情報のそれぞれの意味情報を、前記メモリに展開した意味情報から取得する意味情報取得機能と、前記取得した意味情報の同一性を判断する同一性判断機能と、前記同一性判断機能による判断結果を出力する出力機能と、をコンピュータに発揮させるCADデータ同一性検証プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自然言語処理を活用するなどして、意味的な情報を含めてCADデータの同一性を検証することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(1)実施の形態の概要
本実施の形態で同一性検証の対象となるCADデータは、図面要素(フィーチャ)を規定した図形データと属性情報を規定した属性データを用いて構成されている。
フィーチャは、例えば、線分や円といった幾何学的な要素などから構成され、属性情報は、例えば、「鉄筋」、「中心線」などと、図面要素の意味的な情報から構成されている。
フィーチャと、属性情報は、識別番号によって対応づけられており、これによって、線分要素に「鉄筋」であるとか、曲線に「標高30メートルの等高線」といったように、フィーチャに意味的な情報を付与することができる。
【0009】
CADデータ同一性検証装置は、このような構成を有する2つのCADデータの同一性を検証する。
CADデータ同一性検証装置は、まず、2つのCADデータにおいて、フィーチャを対応させ、このフィーチャの対応から、それぞれのフィーチャの属性情報を対応させる。
そして、CADデータ同一性検証装置は、対応する属性情報の同一性を検証することにより、意味的な情報を含めたCADデータの同一性検証を行う。
【0010】
(2)実施の形態の詳細
まず、同一性の検証対象であるCADデータについて説明する。
本実施の形態では、一例として、バージョン3.0以降のSXF規格(以下、単にバージョン3と記す)に準拠した2次元CADデータを対象とする。
バージョン3のCADデータでは、図形データに意味的な情報を属性データを付加する属性付加機構と呼ばれる規格が規定されている。図形データは後述のフィーチャ(図形情報)から構成されており、属性データは、後述の属性情報(意味情報)から構成されている。
【0011】
これによって、図形データで規定された直線や曲線、円といった図面要素(以下、フィーチャと呼ぶ)などに「橋」、「鉄筋」、「中心線」、「等高線」などといった意味的な情報を属性情報として付与することができる。
なお、同一フィーチャに対して複数の属性付加機構を適用することはできず、何れかの属性付加機構が図面作成者によって選択されて使用される。
【0012】
このように、本実施の形態のCADデータは、図形などからなる図形データと、これに意味情報を属性として付与した属性データから構成されるが、属性付加機構には、図形データと属性データを別データとして構成するもの(属性ファイル用属性付加機構)と、図形データ中に属性データを書き込むもの(単一属性用属性付加機構、及び文字フィーチャ用属性付加機構)が存在する。
以下に、これらの属性付加機構について説明する。
【0013】
属性ファイル用属性付加機構では、図形データを格納した図形ファイルと、属性データを格納した属性ファイルを同じディレクトリに格納して管理する。
図面ファイルは、例えば、SFC形式やP21形式と呼ばれるSXF規格に対応したファイル形式で構成されており、それぞれ「(図面ファイル名).sfc」、「(図面ファイル目手).p21」なる拡張子にてファイル名が設定されている。
一方、属性ファイルは、例えば、マークアップ言語の一種であるXML(Extensible Markup Language)で構成され、「(図面ファイル名).saf」なる拡張子にてファイル名が設定されている。
【0014】
単一属性用属性付加機構では、フィーチャに1つの意味情報を属性として付与する場合に用いられ、図形データ中に属性情報とフィーチャが対応づけられて書き込まれる。
このように、属性情報(属性データを構成する情報であり、後述のように属性名、属性値などがある)が1つの場合は、属性ファイルを作成せずに、直接図形データに属性データ書き込むことにより、冗長性を回避することができる。
文字フィーチャ用属性付加機構は、図形データ中に記載されている文字列そのものを意味的な情報として利用するものであり、これに属性名を付与するものである。
【0015】
次に、図1を用いて図形データの概念的な構成について説明する。
図形データでは、仮想上の用紙の上に、点マーカ、線分、円、寸法線、などを配置していくことにより設計図面が描かれる。
この仮想的な用紙10には、座標系19が設定してあり、この用紙10上に図形を描くことにより、座標空間中に図形を配置することができる。
また、この仮想の用紙10はレイヤと呼ばれる複数の層(レイヤ11a、11b、11c…)から構成されており、ユーザは、レイヤを選択して、そのレイヤ上に設計図面を描くことができる。
【0016】
レイヤは、選択的に操作することができるようになっている。そのため、例えば、幾何学的な形状をレイヤ1に描き、寸法線をレイヤ2に描いておき、レイヤ1とレイヤ2を同時に表示して寸法線が描かれた図面を表示したり、あるいは、レイヤ2を非表示にしてレイヤ1に描かれた幾何学的な形状のみを表示したりすることができ、製図作業や図面の利用効率を高めることができる。
【0017】
用紙上に配置されるフィーチャは、例えば、線分12a、12b、12c、円15a、15b、といった幾何学的な形状を持ったものや、点マーカ17のような座標空間中での位置を示すもの、また、寸法線、角度寸法線、テキストデータ、シンボル(例えば、屋根の傾きを表す記号表記)など各種のものがある。
このように、図形データは、仮想上の用紙、レイヤといった図面構造を表すフィーチャや、点マーカ、線分といった幾何学的な形状や表記を表すフィーチャ、及びシンボル、記号といった構造化された(例えば、バルーンは円、矢線、円中のテキストデータが構造化されて構成されている)フィーチャなどから構成されている。
【0018】
図2は、フィーチャの構成を説明するための図である。
図形データは、図面要素の管理単位であるフィーチャの集合から構成されている。
フィーチャは大きく分類して、図面構造フィーチャ群、幾何表記要素フィーチャ群、構造化要素フィーチャ群の3種類に区分され、図形情報に該当する。
図面構造フィーチャ群は、図形データを構成する上で基本となる情報を規定するフィーチャから構成されており、用紙フィーチャ、レイヤフィーチャ、既定義線種フィーチャ、ユーザ定義線種フィーチャ、既定義色フィーチャ、ユーザ定義色フィーチャ、線幅フィーチャ、文字フォントフィーチャなどから構成されている。
【0019】
幾何表記要素フィーチャ群は、基本的な幾何図形などを表現するフィーチャから構成されており、点マーカフィーチャ、線分フィーチャ、折れ線フィーチャ、円フィーチャ、円弧フィーチャ、楕円フィーチャ、楕円弧フィーチャ、文字フィーチャ、スプラインフィーチャなどから構成されている。
【0020】
構造化要素フィーチャ群を構成する各フィーチャは、複数の幾何表既要素フィーチャで構成されるフィーチャで、複数のデータを特定の単位データとして扱えるように定義したフィーチャである。例えば、寸法線は、線分フィーチャや文字フィーチャなどが組み合わされて構成されている。
【0021】
このように、各フィーチャは、フィーチャ名を持つと共に、設計図面上で図面要素の表現を特定するパラメータと、フィーチャを一意に識別するための識別情報である識別番号が付属している。
例えば、線分フィーチャの場合、線分が描かれているレイヤ、線分の始点終点の座標値、線種、線幅などがパラメータとして設定され、更に当該線分フィーチャを特定する識別番号が設定される。
【0022】
次に、図3を用いて属性データについて説明する。
属性データは、識別番号が付与された属性情報から構成されている。属性情報は単独でも存在できるが、本実施の形態では、属性情報に、図3に示したように階層構造(ツリー構造)を設定することができる。
識別番号は、図形データで規定されたフィーチャの識別番号と対応しており、当該フィーチャの属性と属性情報が対応づけられている。
【0023】
図3の例では、属性情報「道路横断図形」をルートノードとして、その下層に「測点」、「舗装」なる属性情報が設定されている。更に、「測点」の下層には、「測点名」、「現地盤高」、「計画高」、「追加距離」なる属性情報が設定されている。
【0024】
これら各属性情報は、属性名、属性値、属性タイプ、単位などの情報から構成されている。なお、図3の各ノードは、属性名にて記載されている。
例えば、属性情報「計画高」の場合、図示しないが、(属性名、属性値、属性タイプ、単位)が(計画高、30、LEN、m)などとなっている。
ここで、属性値の30は、計画高の高さであり、属性タイプのLENは、この属性が長さを意味する。なお、文字列の場合は属性タイプをSTRにするなど、予め属性タイプは決められている。単位のmは、属性値の単位がメートルであることを表している。
【0025】
このように、属性名は、例えば、「等高線」、「画像」、「中心線」など、フィーチャの意味的な内容を端的に表す名称が用いられ、更に属性の詳細な内容が、属性値、属性タイプ、単位などの各項目にて規定される。
なお、属性情報は、これら全ての項目を具備する必要はなく、例えば、属性名だけ設定し、他の項目を設定しないといった属性情報を設定することもできる。
【0026】
図4は、図形データと属性データの対応関係を模式的に表した図である。
例えば、識別番号100で規定されるフィーチャ(円)の属性情報は、属性データの識別番号100の箇所に規定されており、同様に、識別番号200で規定されるフィーチャ(三角)の属性情報は、属性データの識別番号200の箇所に規定されている。このように、フィーチャと属性情報は識別番号によってリンクされる。
【0027】
次に、図5を用いて、本実施の形態に係るCADデータ同一性検証装置のハードウェア的な構成について説明する。
CADデータ同一性検証装置1は、以上に説明したようなCADデータの同一性を、属性データの表す意味的な情報を加味しながら検証する装置である。
CADデータ同一性検証装置1は、制御部21にバスライン28を介して入力部25、出力部26、通信制御部27、記憶部31、記憶媒体駆動部30、入出力I/F(インターフェース)29などが接続して構成されている。
【0028】
制御部21は、複数のCADデータを読み込み、これらの同一性を検証、及び検証結果を提示を行う他、CADデータ同一性検証装置1全体の制御などを行う。
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)23、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)24などから構成されている。
【0029】
CPU23は、所定のプログラムに従って、情報処理やCADデータ同一性検証装置1の制御を行ったりする。CPU23は、レジスタと呼ばれる記憶部を有しており、このレジスタにROM22やRAM24などからプログラムを読み込んで、このプログラムに従って動作することにより制御部21の各種機能が発揮される。
【0030】
ROM22は、CPU23が各種演算や制御を行うための各種プログラム、データ及びパラメータなどを格納したリードオンリーメモリである。CPU23は、ROM22からプログラムやデータ、パラメータなどを読み込むことはできるが、これらを書き換えたり消去することは行わない。
【0031】
RAM24は、CPU23にワーキングメモリとして使用されるランダムアクセスメモリである。CPU23は、RAM24にプログラムやデータなどを書き込んだり消去したりすることができる。本実施の形態では、RAM24には、同一性検証対象である図形データや属性データを展開するためのエリアが確保可能となっている。
【0032】
入力部25は、例えばキーボードやマウスなどの入力装置から構成されている。入力部25は、CADデータ同一性検証装置1に対して文字や数字などの各種データを入力するための装置であり、ユーザがCADデータ同一性検証装置1にコマンドを入力したり、同一性を検証するファイルを選択したりなど、CADデータ同一性検証装置1に対して所定の入力操作を行う際に使用する。
キーボードは、カナや英文字などを入力するためのキーや数字を入力するためのテンキー、各種機能キー、カーソルキー及びその他のキーによって構成されている。
【0033】
マウスは、ポインティングデバイスである。GUI(Graphical User Interface)などを用いてCADデータ同一性検証装置1を操作する場合、表示装置上に表示されたボタンやアイコンなどをマウスでクリックすることにより、所定の情報の入力を行うことができる。
【0034】
出力部26は、例えば表示装置、印刷装置などから構成されており、CADデータ同一性検証装置1が検証した検証結果を出力する際に使用する。
表示装置は、例えば例えばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどで構成された情報を画面上に提示するための装置である。
表示装置には、同一性を検証するファイルを選択するためのファイル選択画面や、検証結果を表示する結果表示画面などが表示される。
印刷装置は、例えば、インクジェットプリンタ、レーザプリンタ、熱転写プリンタ、ドットプリンタなどの各種プリンタ装置によって構成されている。
【0035】
通信制御部27は、CADデータ同一性検証装置1をインターネットなどのネットワークに接続するための装置であって、モデム、ターミナルアダプタ、その他の接続装置によって構成されている。
CADデータ同一性検証装置1は、通信制御部27を用いて、外部の端末やサーバにアクセスすることが可能である。
そのため、他のコンピュータに格納されている図形データを通信制御部27を介して受信し、これに対して同一性を検証することもできる。
【0036】
記憶部31は、読み書き可能な記憶媒体と、その記憶媒体に対してプログラムやデータを読み書きするための駆動装置によって構成されている。当該記憶媒体として主にハードディスクが使用されるが、その他に、例えば、光磁気ディスク、磁気ディスク、半導体メモリなどの他の読み書き可能な記憶媒体によって構成することも可能である。
【0037】
記憶部31には、プログラム格納部32、データ格納部33などが形成されており、それぞれ、プログラム、データが格納されている。
プログラム格納部32には、CADデータ同一性検証装置1にCADデータ同一性検証機能を発揮させるためのCADデータ同一性検証プログラムや、メモリ管理や入出力管理などCADデータ同一性検証装置1を動作させるための基本的なプログラムであるOS(Operating System)、通信制御部27を制御する通信プログラム、その他の各種プログラムが記憶されている。
【0038】
また、プログラム格納部32には、図形データを操作するためのツール群がライブラリ(共通ライブラリと呼ばれる)として格納されており、CADデータ同一性検証装置1は、共通ライブラリを利用して図形データの読み込みその他の処理を行う。
なお、SXF規格に準拠した図形データのファイル形式は、SFC形式、P21形式など存在し、共通ライブラリはこれらの各ファイル形式に対応している。
【0039】
データ格納部33には、同一性検証の対象となる図形データや属性データが複数格納されている。
CPU23は、データ格納部33に記憶されている図形データや属性データのうち、ユーザが選択した2組の図形データと属性データについて同一性を検証する。
【0040】
記憶媒体駆動部30は、着脱可能な記憶媒体を駆動してデータの読み書きを行うための駆動装置である。着脱可能な記憶媒体としては、例えば、光磁気ディスク、磁気ディスク、磁気テープ、半導体メモリ、データをパンチした紙テープ、CD−ROMなどがある。なお、CD−ROMや紙テープは、読み込みのみ可能である。
記憶媒体駆動部32から、記憶媒体に記憶された図形データを読み込んで同一性を判断することもできる。
【0041】
入出力I/F29は、例えば、シリアルインターフェースやその他の規格のインターフェースにより構成されている。入出力I/F29に当該インターフェースに対応した外部機器を接続することにより、CADデータ同一性検証装置1の機能を拡張することができる。
【0042】
図6は、CADデータ同一性検証装置1の機能的な構成の1例を示したブロック図である。
CADデータ同一性検証装置1は、初期設定機能部40、同一性レベル設定機能部41、データ読込機能部42、同一性検証機能部43、結果出力機能部47から構成されており、同一性検証機能部43は、更にバイナリ比較機能部44、論理比較機能部45、意味比較機能部46などから構成されている。
これらの機能部は、プログラム格納部32に記憶されているCADデータ同一性検証プログラムをCPU23で実行することにより構成される。
【0043】
初期設定機能部40は、CADデータにアクセスするためのファイルパスの設定や、2つのCADデータのうちの同一性検証の基準とするCADデータの指定、検証結果の出力形式や出力状態などの初期設定をユーザから受け付ける機能部である。
【0044】
同一性レベル設定機能部41は、2つのCADデータを同一と検証する同一性レベルをユーザが設定する機能部である。
本実施の形態では、図形データ、属性データそれぞれにおいて、図7に示した3段階の比較レベルの設定を可能にする。
即ち、2つのデータがバイナリレベルで完全同一となる高レベルと、論理レベルで同一となる中レベルと、意味レベルで同一となる低レベルである。
高レベル、中レベル、低レベルの順で同一の程度は低くなる。これらの同一性レベルの詳細について後述する。
【0045】
データ読込機能部42(CADデータ取得手段)は、同一性レベル設定機能部41で設定されたファイルパスを用いてCADデータを記憶装置(記憶部33など)から読み出し、メモリ(RAM24など)に展開する。
CADデータが属性ファイル用属性付加機構によって属性情報が与えられている場合、データ読込機能部42は、図形ファイルと属性ファイルを読み込み、単一属性用属性付加機構や文字フィーチャ用属性付加機構によって属性情報が与えられている場合、データ読込機能部42は、図形ファイル(属性データが書き込まれている)を読み込む。
【0046】
同一性検証機能部43(同一性判断手段)は、バイナリ比較機能部44、論理比較機能部45、意味比較機能部46を備えている。そして、同一性検証機能部43は、メモリに展開した図形データと属性データの同一性を同一性レベル設定機能部41で設定された同一性レベルにて検証する。
即ち、高レベルが設定されている場合は、バイナリ比較機能部44によってバイナリレベルでの検証を行い、中レベルが設定されている場合は、論理比較機能部45により論理レベルでの検証を行い、低レベルが設定されている場合は、意味比較機能部46によって意味レベルでの検証を行う。
【0047】
まず、バイナリ比較機能部44が行うバイナリレベルでの同一性検証処理について説明する。
(図形データの場合)
2つの図形データに対してバイナリレベルでの比較を行い、バイナリ情報に差分がないかを完全に比較する。
(属性データの場合)
属性データをバイナリ比較する場合、2つの属性データに対してバイナリレベルでの比較を行い、バイナリ情報に差分がないかを完全に比較する。
【0048】
次に、論理比較機能部45が行う論理レベルでの同一性検証処理について説明する。
(図形データの場合)
論理比較機能部45における図形情報の比較では、データ読込機能部42で読み込んだ情報を論理的に比較することで同一性の判定及び差分の検出を行う。ここで、論理的な比較とは、フィーチャが同一であるかどうかを比較するものである。
【0049】
例えば、見た目では全く同じ四角形が、1つは4本の線分で構成されており、他の1つは1本の折れ線で構成された場合を考える。
このように、形成される図形の外観は同じでも、これを構成するフィーチャの種類が異なる場合(前者は線分、後者は折れ線)、論理比較機能部45は、これを論理的に同一でないと判断して差分を検出する。
【0050】
論理的な比較を行うためには、一方の図形データの4本の単線から構成された四角形と、他方の図形データの折れ線から構成された四角形を対応づけるといったように、両図形データのフィーチャを対応づけする必要がある。
このようなフィーチャ対応づけに関しては、特許文献1で開示されている技術など、公知の技術を用いて行うことができる。
なお、特許文献1では、SFCファイルとP21ファイルの場合の対応づけを主として説明しているが、SFCファイル同士、あるいはP21ファイル同士のフィーチャ対応づけを行うこともできる。
【0051】
なお、論理比較はユーザによって異なる判定基準を持つことが考えられる。このため、判定基準を初期設定にて外部定義できる機構を備えることにより、ユーザに応じたシステムのカスタマイズが可能となる。
例えば、特許文献1の技術では、基本的にフィーチャを比較の単位とするが、これを任意に拡張し、フィーチャ集合の単位を定義して、集合を比較単位とすることも可能である。
また、ユーザが指定したレイヤ上のフィーチャに対して同一性を検証したり、あるいは文字フィーチャだけ同一性を検証するといったように、検証対象とするフィーチャを限定することもできる。
更に、処理速度を重視して簡易な同一性判別を行うユーザのために、複合図形名称の一意性チェックを行わないなど、特定のフィーチャを検証対象からはずす設定を行うことも可能である。
【0052】
(属性の場合)
先に説明したように、属性付加機構には、3種類あるが、これらのうち、単一属性用属性付加機構と文字フィーチャ用属性付加機構に関しては、図形データ上に意味的な情報が属性情報として付加されるため、特許文献1などの公知技術で図形データのフィーチャを対応させた後(対応特定手段)、属性情報の一致を検証することができる。
属性ファイル用属性付加機構の場合は、図形データの同一性を検証する際にフィーチャの対応が得られるので、CADデータ同一性検証装置1は、これを用いて対応する2つの属性情報を取得する(意味情報取得手段)。
【0053】
即ち、第1のCADデータのフィーチャと第2のCADデータのフィーチャがあり、これらのフィーチャにそれぞれ対応づけられている第1の属性情報と第2の属性情報があったとする。
この場合、第1の図形データのフィーチャと第1の属性情報は識別番号によって対応づけられており、同様に第2の図形データのフィーチャと第2の属性情報も識別番号によって対応づけられている。
このため、第1の図形データのフィーチャと第2の図形データのフィーチャが対応づけられれば、第1の属性情報と第2の属性情報を対応づけることができる。
【0054】
なお、意味情報としては実質同一の内容であったとしても異なった階層構造で属性情報が保持されることがある。
論理比較機能部45は、親階層に差分がある場合、その子階層の検証は行わず、差分として検出して出力するようになっている。
また、単一属性用属性付加機構、文字フィーチャ用属性付加機構ともデータの形状が異なる可能性があるために、統一的に比較を行うことができる中間データへとデータの変換を行うように構成することもできる。この場合、その中間データ同士の属性情報を比較する。
【0055】
次に、意味比較機能部46が行う意味レベルでの同一性検証処理について説明する。
(図形データの場合)
先に説明した論理レベルの比較では、外観上は同じでも、線分で構成した四角形と折れ線で構成した四角形を差分として認識したが、意味レベルでの検証ではこれを同一であると判定する。
即ち、意味レベルでの検証では、論理的にはフィーチャが異なっていても可視的に同一であるか否か(外観上同一であるか否か)の比較を行い、外観形状が同じであれば同一であると判定する。
可視形状の抽出は、例えば、連続して接続するフィーチャを辿って輪郭を抽出し、その輪郭を比較するなど、一般に用いられている技術を用いて行うことができる。
このように論理比較機能部45は、データ読込機能部42で読み込んだ図形データの可視形状を比較することにより可視的な違いを差分として検出する。
【0056】
(属性の場合)
属性情報の比較を行う場合、同一の言葉でなくても、意味的には同一であると判定すべき場合がある。
例えば、「橋梁」と「橋」は異なる言葉であるが意味的には同一である。このため、意味比較機能部46は、自然言語処理を行うことにより、言葉の意味的な同一性を判断する。
【0057】
具体的には、意味比較機能部46は、類義語を関連づけた類義語辞書を参照し、意味的な同一性を判断する。例えば、この類義語辞書では「橋梁」と「橋」が類義語として関連づけられており、意味比較機能部46は、この関連づけにより両者の意味が同一であると判断する。
また、属性の階層構造だけが異なり、意味的には同一である場合もある。
そこで、意味比較機能部46は、属性情報の意味的な比較が可能となる中間データを生成し、この中間データを用いて属性情報の同一性を検証する。
【0058】
中間データとしては各種のものが考えられるが、意味比較機能部46は、一例として、属性情報にカテゴリと数値を設定することにより中間データを生成するものとする。
例えば、図8(a)に示した属性情報は、あるフィーチャAの属性情報であり、属性Aをルートノードとし、その下の階層に属性B、Cが設けられている。
【0059】
意味比較機能部46は、ルートノード(属性A)で用いられている属性名を、カテゴリを予め定義したカテゴリ辞書で検索して当該属性情報のカテゴリを設定する。
例えば、属性Aの属性名が「橋梁」、「鉄橋」、「吊橋」、「トラス橋」、「アーチ橋」などであった場合、カテゴリ辞書によって、当該属性情報のカテゴリは例えば、「橋梁」に設定される。
【0060】
次に、属性情報の数値(以下、意味強度と呼ぶ)は、例えば、次のようにして計算することができる。
まず、意味比較機能部46は、言葉間の関係値を定義した辞書を用いて、属性Aと属性Bの関係値(辞書に定義してある値)と、属性Aと属性Cの関係値を求める。例えば、この辞書が類義語辞書であった場合、関係値は、言葉間の類義の程度となる。
なお、類義語辞書(更には、活用辞書なども活用可能である)を用いることにより、表記ゆれや同義語の吸収を行った比較を行うことができる。
【0061】
今、属性Aと属性Bの関係値が0.9であり、属性Aと属性Cの関係値が0.7であったとする。
次に、意味比較機能部46は、階層構造の親子間の係数を0.5とし、関係値に親子間の係数を乗じた値を属性情報全体に対して加算する。意味比較機能部46は、この値を属性情報の意味強度とする。
図8(a)の例では、意味強度=0.9×0.5+0.7×0.5=0.8となる。
以上のようにして、この属性のカテゴリは「橋梁」であり、意味強度は0.8となる。
【0062】
意味比較機能部46は、このようにして属性情報ごとにカテゴリと意味強度を求めた中間データを、2つの属性データについて作成し、これを用いて属性情報の同一性を次のように判定する。
まず、意味比較機能部46は、対応する2つの属性情報を中間データから抽出する。そして、これらのカテゴリが同一であり、意味強度の差が所定値の範囲内であれば、この2つの属性情報が同一であると判定する。
意味比較機能部46は、この処理を全ての中間データの全ての属性に対して行う。
ここで、関係値や親子間の係数、あるいは同一と判定する意味強度の差の範囲などをユーザが初期設定にて設定できるように構成することもできる。
【0063】
更に、複雑な場合として、例えば、図8(a)に示したフィーチャAの属性情報と、図8(b)に示したフィーチャAaの属性情報のように、階層構造が異なる属性情報の同一性を検証したい場合、例えば、次のようにして行うことができる。
ここで、フィーチャAは、一方の図形データのフィーチャであり、フィーチャAaは、もう一方の図形データで、フィーチャAに対応するフィーチャであるとする。
【0064】
意味比較機能部46は、まず、比較を行う両属性情報において、ルートノードの粒度判定を行う。ここで粒度とは、属性情報が分類されたカテゴリの意味の細かさを意味する。
そして、意味比較機能部46は、この粒度を用いてルートノードの対応を検索する。
例えば、属性Aと属性Dの粒度が同じであった場合、意味比較機能部46は、属性Aと属性Dを対応させる(カテゴリが同一であるとする)。
また、属性Aと属性Eの粒度が同じであった場合、意味比較機能部46は、属性Aと属性Eを対応させる。
属性情報は、下層ほど粒度が小さくなる傾向があるため、このようにして粒度濃度によってルートノードの対応づけを行うことができる。
【0065】
次に、属性Aと属性Dがルートノードとして対応した場合、意味比較機能部46は、属性B、Cに対応する属性を属性E、F、Gから検索する。
この検索は、例えば、類似辞書などを用いて意味が類似するもの検索する。そして、意味比較機能部46は、類似辞書などで定義されている類似度を用いて、適当な方法によって属性情報全体としての類似度を算出する。
また、属性Hや属性Iのように比較対象と階層的に一致しない属性情報がある場合は、リスク値として類似度から所定値を減算する。
そして、意味比較機能部46は、類似度が所定範囲にある場合に、両者を同一として判定する。
【0066】
次に、結果出力機能部47(出力手段)について説明する。
結果出力機能部47は、同一性検証結果として2つのCADデータの差分を出力する。また、2つのCADデータにおけるフィーチャの対応関係を出力することもできる。
差分の出力は、フィーチャ単位で行い、HTML(Hypertext Markup Language)形式、CSV(Comma Separated Value)形式、あるいは、SXF規格に準拠したデータであるSFC形式とSAF形式などでの出力が可能である。
【0067】
HTML形式での出力では、例えば、表示画面を左右のフレームに分割し、左側のフレームに、比較したファイルの情報や、テーブル要素、複合曲線定義、複合図形定義などに関する差分箇所の件数を表示し、右側のフレームに差分箇所の詳細情報を表示する。
CSV形式での出力では、比較したファイルの情報や、テーブル要素、複合曲線定義、複合図形定義などに関する差分箇所、及び差分箇所の詳細情報などが出力され、表計算ソフトなどを用いて表形式で表示することができる。
【0068】
SFC形式での出力では、結果出力機能部47は、差分として検出された個々のフィーチャをそれぞれ異なるレイヤにコピーしたデータを生成する。
レイヤ名称には、フィーチャが追加されている場合は「add」、フィーチャが削除されている場合は「delete」、フィーチャが変更されている場合は「change」、属性情報が変化している場合は「attribute」の接頭辞を付与し、更にこれら接頭辞に3桁の連番をつけて設定する。
【0069】
例えば、図9(a)に示したように、Aレイヤ〜Cレイヤからなる図形データがあったとする。
この図形データは、同一性検証対象となるもう一方の図形データを基準として、レイヤAではフィーチャ51が追加され、レイヤBではフィーチャ52が追加、及びフィーチャ53が変更され、レイヤCでは、フィーチャ54が削除、及びフィーチャ55が変更されている。
【0070】
この図形データに対して、CADデータ同一性検証装置1は、図9(b)に示したようなSFC形式のデータを生成して出力する。
即ち、フィーチャ51に関しては、レイヤAにて追加されたものであるので、このフィーチャがコピーされ、「add001」をレイヤAの接頭辞としたレイヤ「add001_Aレイヤ」が生成される。
フィーチャ52に関しては、レイヤBにて追加されたものであるので、このフィーチャがコピーされ、「add002」をレイヤBの接頭辞としたレイヤ「add002_Bレイヤ」が生成される。
【0071】
フィーチャ53に関しては、レイヤBにて変更されたものであるので、このフィーチャがコピーされ、「change001」をレイヤBの接頭辞としたレイヤ「change001_Bレイヤ」が生成される。
フィーチャ54に関しては、レイヤCにて変更されたものであるので、このフィーチャがコピーされ、「change002」をレイヤCの接頭辞としたレイヤ「change002_Cレイヤ」が生成される。
【0072】
フィーチャ55に関しては、レイヤCにて削除されたものであるので、このフィーチャがコピーされ、「delete001」をレイヤCの接頭辞としたレイヤ「delete001_Cレイヤ」が生成される。
なお、図示しないが、属性情報が一致しないフィーチャには、「attribute001_Dレイヤ」などが生成される。
また、フィーチャと属性情報の両方が一致しないものは、例えば、「both001_Eレイヤ」などと、接頭辞「both」を付与する。
【0073】
このようにして生成されたSFC形式のデータをSXFブラウザで表示すると、図10に示したように、差分として検出されたフィーチャが表示される。
図示しないが、追加・削除・変更されたフィーチャがそれぞれ赤色・青色・緑色で表示されている。また、図示しないが、属性情報が一致しないフィーチャは、紫色で表示され、フィーチャと属性情報の両方が一致しないフィーチャは、黄色で表示される。
これらの表示色・線幅・線種は、CADデータ同一性検証装置1の初期設定で変更することができる。
また、図示しないが、これら差分となるフィーチャの属性情報がSAF形式のデータで出力されるため、これらの情報をSXFブラウザを用いてその情報を確認することもできる。
【0074】
次に、図11のフローチャートを用いてCADデータ同一性検証装置1が図形データの同一性を検証する手順について説明する。
まず、初期設定機能部40がユーザから初期設定の入力を受け付ける(ステップ10)。
初期設定の受け付けでは、まず、ユーザから比較対象となる2つの図形データが格納されている箇所を特定するファイルパスを受け付ける。
通常、図形データはデータ格納部33(図5)に記憶されているが、この他に記憶媒体駆動部30を介して記憶媒体に記憶されている図形データを指定したり、あるいは、通信制御部27を介してネットワーク経由でサーバに記憶されている図形データを指定することもできる。
【0075】
また、初期設定では、例えば、検証結果の出力形式(HTML形式、CSV形式、SFC・SAF形式など)の選択や、差分を表示する場合に、その色や線種といった表示状態などの設定を受け付ける。
更に、初期設定では、2つのCADデータのうち、比較の基準とするものの指定も受け付ける。
デフォルトでは、作成日時が古い方の図形データと属性データを基準として、作成日時が新しい方の図形データと属性データの差分を抽出するようになっている。
【0076】
次に、ユーザにより同一性レベルの設定が行われる(ステップ15)。ユーザは、高レベル、中レベル、及び低レベルの中から所望の同一性レベルを選択し、選択された同一性レベルは同一性レベル設定機能部41(図6)に設定される。
以上の設定がなされると、CADデータ同一性検証装置1は、2つの図形データの同一性の判定処理を開始する。
【0077】
まず、データ読込機能部42が、ステップ10で入力された2つのファイルパスを用いて、図形データが格納されている記憶エリアにアクセスし、図形データと属性データを読み込んで、メモリ(例えば、RAM24)に展開する(ステップ20)。
なお、図形データは、SFCファイルやP21ファイルから読み込み、属性データに関しては、属性ファイル用属性付加機構の場合はSAFファイルから読み込み、単一属性用属性付加機構と文字フィーチャ属性付加機構の場合は図形データから読み込む。
【0078】
次に、データ読込機能部42は、2つのファイルパスについて図形データと属性データを読み込んだか確認し、何れか読み込んでないデータがある場合は(ステップ25;N)、ステップ20に戻り、再度データの読み込みを行う。2つのファイルパスについて図形データと属性データを読み込んだ場合(ステップ25;Y)、データ読込機能部42は、読み込みエラーがあるか否かを確認する(ステップ30)。
読み込みエラーがある場合(ステップ30;Y)、データ読込機能部42は、ステップ20に戻り、再度2つのファイルパスから図形データと属性データを読み込む。
【0079】
読み込みエラーがない場合(ステップ30;N)、同一性検証機能部43がメモリに展開した図形データと属性データの同一性の判定を行う。
同一性検証機能部43は、同一性レベルが何に設定されているかを判断する(ステップ35)。
同一性レベルが高レベルの場合(ステップ35;高レベル)、バイナリ比較機能部44が2つのCADデータのバイナリレベルでの検証を行い、差分を結果出力機能部47に出力する。
同一性レベルが中レベルの場合(ステップ35;中レベル)、論理比較機能部45が2つのCADデータの論理レベルでの検証を行い、差分を結果出力機能部47に出力する。
同一性レベルが低レベルの場合(ステップ35;低レベル)、意味比較機能部46が2つのCADデータの意味レベルでの検証を行い、差分を結果出力機能部47に出力する。
次に、検証サーバ55が、同一性検証機能部43から出力された差分を、初期設定で設定された出力形式にて出力する(ステップ55)。
【0080】
以上のCADデータ同一性検証装置1では、2つのCADデータの同一性をユーザから指定された同一性レベルにて検証したが、変形例として、図12のフローチャートに示したように、各同一性レベルでの同一性を検証を行い、各同一性レベルでの差分を出力するように構成することもできる。
【0081】
図12において、図11と対応するステップには同じステップ番号を付し、説明を簡略化することにする。
ステップ10〜30は、図11と同じである。なお、図11のステップ15の同一性レベルの設定は行わない。
【0082】
2つのCADデータをメモリに展開すると、同一性検証機能部43のが各同一性レベルでの同一性を検証する。
まず、バイナリ比較機能部44が、バイナリレベルでの比較を行い、差分がない場合(ステップ60;N)、差分がない旨を結果出力機能部47に通知する。
差分がある場合(ステップ60;Y)、バイナリ比較機能部44は、その差分を論理比較機能部45に出力する。
【0083】
論理比較機能部45は、バイナリ比較機能部44から2つのCADデータの差分を受け取ると、これに対して論理レベルでの比較を行い、差分がない場合(ステップ65;N)、差分がない旨を結果出力機能部47に通知する。
差分がある場合(ステップ65;Y)、論理比較機能部45は、その差分を意味比較機能部46に出力する。
【0084】
意味比較機能部46は、論理比較機能部45から2つのCADデータの差分を受け取ると、これに対して意味レベルでの比較を行い、差分がない場合(ステップ70;N)、差分がない旨を結果出力機能部47に通知する。
差分がある場合(ステップ70;Y)、論理比較機能部45は、その差分を結果出力機能部47に出力する。
【0085】
結果出力機能部47は、同一性検証機能部43から、差分を受け取り、検証結果を作成して出力する(ステップ55)。
検証結果では、2つのCADデータの各同一性レベルでの同一性と、差分が記述される。
具体的には、2つのCADデータのバイナリレベルでの同一性、論理レベルでの同一性とその差分、及び意味レベルでの同一性とその差分が記述される。
【0086】
次に、CADデータ同一性検証装置1の利用例について説明する。
(修正箇所チェック)
CADデータ同一性検証装置1は、CADデータ修正時のチェックに利用することができる。
例えば、建設業のライフサイクルにおいて、受発注者間でCADデータのやり取りが頻繁に行われる。
その中で、受注者から納品された修正CADデータが、発注者の指示書通り修正されているかどうかを確認するのにCADデータ同一性検証装置1を利用することができる。
即ち、修正前のCADデータを基準として修正後のCADデータの差分をCADデータ同一性検証装置1に出力させ、その検証結果を指示書と比較すればよい。
これによって、図形データと属性データの確認を行うと共に、修正箇所のチェックも容易に行うことができる。
また、受注者が、CADデータの納品前にチェックするのにも用いることができる。
【0087】
(バージョンチェック)
電子納品ツールでは、多くのバージョンのCADデータが保存される。例えば、バージョン2ではなく、間違えてバージョン1のCADデータを更新してバージョン3になっていた場合、既存のファイルのタイムスタンプによるチェックのみでは、最新版の判別が不可能になる。
そこで、CADデータ同一性検証装置1を用いて各バージョン間の差分情報を取得し、修正指示書や作業履歴など資料と照合することで、正しいバージョンを判別することが可能になる。
【0088】
(改竄防止)
改竄の可能性のあるCADデータと、改竄されていないCADデータの同一性をCADデータ同一性検証装置1で検証することにより、改竄を容易に発見することができる。
【0089】
(複数図面間の自動統一)
CADデータの作成において1つの構造物を様々な側面から設計し、複数のCADデータを作成することが多々ある。
そのため、あるCADデータにおいて寸法線の値を変更した場合に、他のCADデータにおいて同様の構造物に設定している寸法線の情報を修正する必要がある。
この場合、CADデータ同一性検証装置1を用いて複数CADデータ間にまたがった同一のフィーチャを論理的に検出し、値の差異をチェックすることができる。このことにより、CADデータ間の統一漏れや品質向上に役立てることができる。
【0090】
(バージョン管理)
CADデータの作成の現場では、設計が進むにつれて、CADデータが複数の人間を介して随時更新される。その中で、バージョンごとにどのような内容を変更したかなどを把握することが困難になる。
この場合、CADデータ同一性検証装置1で3つの同一性レベルの差分データ(図形データの差分、属性データの差分)をバージョンごとに蓄積することにより、多面的に変更内容を把握することができる。これによって、CADデータの品質管理の向上を図ることができる。
【0091】
(バージョン間での取捨選択)
CADデータの作成の現場では、複数の作業者が共同で作業を行い、チェック・更新が反復して反映されるケースがある。
この場合、CADデータが複数人で更新されるため、不適切な更新の内容が混在する可能性がある。
この場合の対応として、現在では、古いバージョンにデグレードし、必要な内容を再度記述して新しいCADデータを作成するか、最新バージョンから不適切な更新内容を削除又は修正している。
そこで、CADデータ同一性検証装置を利用することにより、必要な差分データのみを抽出し、元データに反映することで、必要な更新情報のみを反映した図面を生成することができる。このことにより、作業内容の更新・反映をスムーズに実施することができ、品質の高い図面を自動的に生成することが可能となる。
【0092】
(7)(修正ミスの検出)
CADデータの修正作業を行う際、画面に表示されていない箇所を誤って変更してしまう場合がある。通常、このようなミスは発見されないことが多い。そこで、CADデータ同一性検証装置1を用いて、修正後のCADデータと修正元のCADデータの差分を出力すると、修正範囲外で差分情報が検出され、修正ミスとして発見することができる。
【0093】
以上に説明した本実施の形態により、次のような効果を得ることができる。
(1)意味情報が属性情報として付属した2つのCADデータに対して意味的な同一性の判定を行うことができる。
(2)バイナリレベル、論理レベル、意味レベルの各同一性レベルにおける同一性を判定することができる。
(3)類義語辞書や活用辞書などの辞書を用いて、属性データを自然言語処理することができる。
(4)属性情報の階層構造を数値化し、これによって同一性を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図形データの概念的な構成について説明するための図である。
【図2】フィーチャの構成を説明するための図である。
【図3】属性データについて説明するための図である。
【図4】図形データと属性データの対応関係を模式的に表した図である。
【図5】CADデータ同一性検証装置のハードウェア的な構成を示した図である。
【図6】CADデータ同一性検証装置の機能的な構成を示したブロック図である。
【図7】同一性レベルについて説明するための図である。
【図8】中間データを説明するための図である。
【図9】検証結果の作成方法を説明するための図である。
【図10】検証結果の表示例を示した図である。
【図11】CADデータ同一性検証装置の同一性検証手順を説明するためのフローチャートである。
【図12】同一性検証手順の変形例を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
1 CADデータ同一性検証装置
21 CPU
22 ROM
23 CPU
24 RAM
25 入力部
26 出力部
27 通信制御部
28 バスライン
29 入出力I/F
30 記憶媒体駆動装置
31 記憶部
32 プログラム格納部
33 データ格納部
41 同一性レベル設定機能部
42 データ読込機能部
43 同一性検証機能部
44 バイナリ比較機能部
45 論理比較機能部
46 意味比較機能部
47 結果出力機能部
【技術分野】
【0001】
本発明は、CADデータ同一性検証装置、CADデータ同一性検証方法、及びCADデータ同一性検証プログラムに関し、例えば、図面要素に属性情報が対応づけられたCADデータの同一性を検証するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、業務の効率化やメンテナンス時におけるデータの再利用性の向上を目的として、情報の電子化が進められており、公共事業などでは、例えば、設計図面やその他の情報を電子納品することが定められている。
特に、CADデータについては、特定のアプリケーションに依存しないデータ交換を実現するためにフォーマットとしてSXF(SCADEC data eXchange Format)と呼ばれる規格に準拠することが定められている。
また、電子納品を効率的に行うための様々なソフトウェアが発売され、業務を効率的に行うための努力がなされている。
【0003】
例えば、本願出願人は、次の特許文献1によって、SXF準拠のCADデータの同一性を自動的に検証するCADデータ同一性検証装置を提案した。
【特許文献1】特開2004−259087公報 この技術は、SXF規格に準拠したデータ形式であるP21形式やSFC形式などで構成された2つのCADデータの同一性を検証するものである。 これによって、例えば、複数の流通経路を辿るなどして、同一図面のCADデータが2つ存在した場合、自動的に同一性を検証することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在は、主にSXF規格のバージョン2.0が用いられているが、近い将来、最新のバージョンであるバージョン3.0への移行が予定されている。
バージョン3.0では、バージョン2.0の機能に加え、図面要素に新たに意味的な情報(メタ情報)を属性として付与することができる。
このため、バージョン3.0では、例えば、線分を表す図面要素に「鉄筋」といった意味的な情報を付与することができる。
このようなバージョンの移行に伴って、意味的な情報を含めて2つのCADデータの同一性を検証するCADデータ同一性検証装置が求められていた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、意味的な情報を含めてCADデータの同一性を検証することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、図形情報と、前記図形情報が表す対象に関する意味的な内容を前記図形情報に付与する意味情報と、を用いて構成されたCADデータの同一性を検証するCADデータ同一性検証装置であって、第1のCADデータと、第2のCADデータを取得してメモリに展開するCADデータ取得手段と、前記展開した第1のCADデータの図形情報と前記第2のCADデータの図形情報の対応を特定し、当該特定した対応をメモリに記憶する対応特定手段と、前記対応特定手段にて対応が特定された第1のCADデータの図形情報と第2のCADデータの図形情報のそれぞれの意味情報を、前記メモリに展開した意味情報から取得する意味情報取得手段と、前記取得した意味情報の同一性を判断する同一性判断手段と、前記同一性判断手段による判断結果を出力する出力手段と、を具備したことを特徴とするCADデータ同一性検証装置を提供する。
請求項2に記載の発明では、前記出力は、前記第1のCADデータと前記第2のCADデータにおいて、前記意味情報が同一でないと判断された差分を出力することを特徴とする請求項1に記載のCADデータ同一性検証装置を提供する。
請求項3に記載の発明では、前記同一性判断手段は、予め意味情報の類似を規定した類似辞書を用いて、類似する意味情報を同一と判断することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のCADデータ同一性検証装置を提供する。
請求項4に記載の発明では、前記意味情報は、階層構造を有しており、前記同一性判断手段は、前記階層構造を数値化し、当該数値化した数値を用いて前記取得した意味情報の同一性を判断することを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載のCADデータ同一性検証装置を提供する。
請求項5に記載の発明では、図形情報と、前記図形情報が表す対象に関する意味的な内容を前記図形情報に付与する意味情報と、を用いて構成されたCADデータの同一性を検証するCADデータ同一性検証方法であって、CADデータ取得手段と、対応特定手段と、意味情報取得手段と、同一性判断手段と、出力手段と、を備えたコンピュータにおいて、前記CADデータ取得手段によって、第1のCADデータと、第2のCADデータを取得してメモリに展開するCADデータ取得ステップと、前記対応特定手段によって、前記展開した第1のCADデータの図形情報と前記第2のCADデータの図形情報の対応を特定し、当該特定した対応をメモリに記憶する対応特定ステップと、前記意味情報取得手段によって、前記対応特定手段にて対応が特定された第1のCADデータの図形情報と第2のCADデータの図形情報のそれぞれの意味情報を、前記メモリに展開した意味情報から取得する意味情報取得ステップと、前記同一性判断手段によって、前記取得した意味情報の同一性を判断する同一性判断ステップと、前記出力手段によって、前記同一性判断手段による判断結果を出力する出力ステップと、から構成されたことを特徴とするCADデータ同一性検証方法を提供する。
請求項6に記載の発明では、図形情報と、前記図形情報が表す対象に関する意味的な内容を前記図形情報に付与する意味情報と、を用いて構成されたCADデータの同一性を検証する機能をコンピュータに発揮させるCADデータ同一性検証プログラムであって、第1のCADデータと、第2のCADデータを取得してメモリに展開するCADデータ取得機能と、前記展開した第1のCADデータの図形情報と前記第2のCADデータの図形情報の対応を特定し、当該特定した対応をメモリに記憶する対応特定機能と、前記対応特定機能にて対応が特定された第1のCADデータの図形情報と第2のCADデータの図形情報のそれぞれの意味情報を、前記メモリに展開した意味情報から取得する意味情報取得機能と、前記取得した意味情報の同一性を判断する同一性判断機能と、前記同一性判断機能による判断結果を出力する出力機能と、をコンピュータに発揮させるCADデータ同一性検証プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自然言語処理を活用するなどして、意味的な情報を含めてCADデータの同一性を検証することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(1)実施の形態の概要
本実施の形態で同一性検証の対象となるCADデータは、図面要素(フィーチャ)を規定した図形データと属性情報を規定した属性データを用いて構成されている。
フィーチャは、例えば、線分や円といった幾何学的な要素などから構成され、属性情報は、例えば、「鉄筋」、「中心線」などと、図面要素の意味的な情報から構成されている。
フィーチャと、属性情報は、識別番号によって対応づけられており、これによって、線分要素に「鉄筋」であるとか、曲線に「標高30メートルの等高線」といったように、フィーチャに意味的な情報を付与することができる。
【0009】
CADデータ同一性検証装置は、このような構成を有する2つのCADデータの同一性を検証する。
CADデータ同一性検証装置は、まず、2つのCADデータにおいて、フィーチャを対応させ、このフィーチャの対応から、それぞれのフィーチャの属性情報を対応させる。
そして、CADデータ同一性検証装置は、対応する属性情報の同一性を検証することにより、意味的な情報を含めたCADデータの同一性検証を行う。
【0010】
(2)実施の形態の詳細
まず、同一性の検証対象であるCADデータについて説明する。
本実施の形態では、一例として、バージョン3.0以降のSXF規格(以下、単にバージョン3と記す)に準拠した2次元CADデータを対象とする。
バージョン3のCADデータでは、図形データに意味的な情報を属性データを付加する属性付加機構と呼ばれる規格が規定されている。図形データは後述のフィーチャ(図形情報)から構成されており、属性データは、後述の属性情報(意味情報)から構成されている。
【0011】
これによって、図形データで規定された直線や曲線、円といった図面要素(以下、フィーチャと呼ぶ)などに「橋」、「鉄筋」、「中心線」、「等高線」などといった意味的な情報を属性情報として付与することができる。
なお、同一フィーチャに対して複数の属性付加機構を適用することはできず、何れかの属性付加機構が図面作成者によって選択されて使用される。
【0012】
このように、本実施の形態のCADデータは、図形などからなる図形データと、これに意味情報を属性として付与した属性データから構成されるが、属性付加機構には、図形データと属性データを別データとして構成するもの(属性ファイル用属性付加機構)と、図形データ中に属性データを書き込むもの(単一属性用属性付加機構、及び文字フィーチャ用属性付加機構)が存在する。
以下に、これらの属性付加機構について説明する。
【0013】
属性ファイル用属性付加機構では、図形データを格納した図形ファイルと、属性データを格納した属性ファイルを同じディレクトリに格納して管理する。
図面ファイルは、例えば、SFC形式やP21形式と呼ばれるSXF規格に対応したファイル形式で構成されており、それぞれ「(図面ファイル名).sfc」、「(図面ファイル目手).p21」なる拡張子にてファイル名が設定されている。
一方、属性ファイルは、例えば、マークアップ言語の一種であるXML(Extensible Markup Language)で構成され、「(図面ファイル名).saf」なる拡張子にてファイル名が設定されている。
【0014】
単一属性用属性付加機構では、フィーチャに1つの意味情報を属性として付与する場合に用いられ、図形データ中に属性情報とフィーチャが対応づけられて書き込まれる。
このように、属性情報(属性データを構成する情報であり、後述のように属性名、属性値などがある)が1つの場合は、属性ファイルを作成せずに、直接図形データに属性データ書き込むことにより、冗長性を回避することができる。
文字フィーチャ用属性付加機構は、図形データ中に記載されている文字列そのものを意味的な情報として利用するものであり、これに属性名を付与するものである。
【0015】
次に、図1を用いて図形データの概念的な構成について説明する。
図形データでは、仮想上の用紙の上に、点マーカ、線分、円、寸法線、などを配置していくことにより設計図面が描かれる。
この仮想的な用紙10には、座標系19が設定してあり、この用紙10上に図形を描くことにより、座標空間中に図形を配置することができる。
また、この仮想の用紙10はレイヤと呼ばれる複数の層(レイヤ11a、11b、11c…)から構成されており、ユーザは、レイヤを選択して、そのレイヤ上に設計図面を描くことができる。
【0016】
レイヤは、選択的に操作することができるようになっている。そのため、例えば、幾何学的な形状をレイヤ1に描き、寸法線をレイヤ2に描いておき、レイヤ1とレイヤ2を同時に表示して寸法線が描かれた図面を表示したり、あるいは、レイヤ2を非表示にしてレイヤ1に描かれた幾何学的な形状のみを表示したりすることができ、製図作業や図面の利用効率を高めることができる。
【0017】
用紙上に配置されるフィーチャは、例えば、線分12a、12b、12c、円15a、15b、といった幾何学的な形状を持ったものや、点マーカ17のような座標空間中での位置を示すもの、また、寸法線、角度寸法線、テキストデータ、シンボル(例えば、屋根の傾きを表す記号表記)など各種のものがある。
このように、図形データは、仮想上の用紙、レイヤといった図面構造を表すフィーチャや、点マーカ、線分といった幾何学的な形状や表記を表すフィーチャ、及びシンボル、記号といった構造化された(例えば、バルーンは円、矢線、円中のテキストデータが構造化されて構成されている)フィーチャなどから構成されている。
【0018】
図2は、フィーチャの構成を説明するための図である。
図形データは、図面要素の管理単位であるフィーチャの集合から構成されている。
フィーチャは大きく分類して、図面構造フィーチャ群、幾何表記要素フィーチャ群、構造化要素フィーチャ群の3種類に区分され、図形情報に該当する。
図面構造フィーチャ群は、図形データを構成する上で基本となる情報を規定するフィーチャから構成されており、用紙フィーチャ、レイヤフィーチャ、既定義線種フィーチャ、ユーザ定義線種フィーチャ、既定義色フィーチャ、ユーザ定義色フィーチャ、線幅フィーチャ、文字フォントフィーチャなどから構成されている。
【0019】
幾何表記要素フィーチャ群は、基本的な幾何図形などを表現するフィーチャから構成されており、点マーカフィーチャ、線分フィーチャ、折れ線フィーチャ、円フィーチャ、円弧フィーチャ、楕円フィーチャ、楕円弧フィーチャ、文字フィーチャ、スプラインフィーチャなどから構成されている。
【0020】
構造化要素フィーチャ群を構成する各フィーチャは、複数の幾何表既要素フィーチャで構成されるフィーチャで、複数のデータを特定の単位データとして扱えるように定義したフィーチャである。例えば、寸法線は、線分フィーチャや文字フィーチャなどが組み合わされて構成されている。
【0021】
このように、各フィーチャは、フィーチャ名を持つと共に、設計図面上で図面要素の表現を特定するパラメータと、フィーチャを一意に識別するための識別情報である識別番号が付属している。
例えば、線分フィーチャの場合、線分が描かれているレイヤ、線分の始点終点の座標値、線種、線幅などがパラメータとして設定され、更に当該線分フィーチャを特定する識別番号が設定される。
【0022】
次に、図3を用いて属性データについて説明する。
属性データは、識別番号が付与された属性情報から構成されている。属性情報は単独でも存在できるが、本実施の形態では、属性情報に、図3に示したように階層構造(ツリー構造)を設定することができる。
識別番号は、図形データで規定されたフィーチャの識別番号と対応しており、当該フィーチャの属性と属性情報が対応づけられている。
【0023】
図3の例では、属性情報「道路横断図形」をルートノードとして、その下層に「測点」、「舗装」なる属性情報が設定されている。更に、「測点」の下層には、「測点名」、「現地盤高」、「計画高」、「追加距離」なる属性情報が設定されている。
【0024】
これら各属性情報は、属性名、属性値、属性タイプ、単位などの情報から構成されている。なお、図3の各ノードは、属性名にて記載されている。
例えば、属性情報「計画高」の場合、図示しないが、(属性名、属性値、属性タイプ、単位)が(計画高、30、LEN、m)などとなっている。
ここで、属性値の30は、計画高の高さであり、属性タイプのLENは、この属性が長さを意味する。なお、文字列の場合は属性タイプをSTRにするなど、予め属性タイプは決められている。単位のmは、属性値の単位がメートルであることを表している。
【0025】
このように、属性名は、例えば、「等高線」、「画像」、「中心線」など、フィーチャの意味的な内容を端的に表す名称が用いられ、更に属性の詳細な内容が、属性値、属性タイプ、単位などの各項目にて規定される。
なお、属性情報は、これら全ての項目を具備する必要はなく、例えば、属性名だけ設定し、他の項目を設定しないといった属性情報を設定することもできる。
【0026】
図4は、図形データと属性データの対応関係を模式的に表した図である。
例えば、識別番号100で規定されるフィーチャ(円)の属性情報は、属性データの識別番号100の箇所に規定されており、同様に、識別番号200で規定されるフィーチャ(三角)の属性情報は、属性データの識別番号200の箇所に規定されている。このように、フィーチャと属性情報は識別番号によってリンクされる。
【0027】
次に、図5を用いて、本実施の形態に係るCADデータ同一性検証装置のハードウェア的な構成について説明する。
CADデータ同一性検証装置1は、以上に説明したようなCADデータの同一性を、属性データの表す意味的な情報を加味しながら検証する装置である。
CADデータ同一性検証装置1は、制御部21にバスライン28を介して入力部25、出力部26、通信制御部27、記憶部31、記憶媒体駆動部30、入出力I/F(インターフェース)29などが接続して構成されている。
【0028】
制御部21は、複数のCADデータを読み込み、これらの同一性を検証、及び検証結果を提示を行う他、CADデータ同一性検証装置1全体の制御などを行う。
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)23、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)24などから構成されている。
【0029】
CPU23は、所定のプログラムに従って、情報処理やCADデータ同一性検証装置1の制御を行ったりする。CPU23は、レジスタと呼ばれる記憶部を有しており、このレジスタにROM22やRAM24などからプログラムを読み込んで、このプログラムに従って動作することにより制御部21の各種機能が発揮される。
【0030】
ROM22は、CPU23が各種演算や制御を行うための各種プログラム、データ及びパラメータなどを格納したリードオンリーメモリである。CPU23は、ROM22からプログラムやデータ、パラメータなどを読み込むことはできるが、これらを書き換えたり消去することは行わない。
【0031】
RAM24は、CPU23にワーキングメモリとして使用されるランダムアクセスメモリである。CPU23は、RAM24にプログラムやデータなどを書き込んだり消去したりすることができる。本実施の形態では、RAM24には、同一性検証対象である図形データや属性データを展開するためのエリアが確保可能となっている。
【0032】
入力部25は、例えばキーボードやマウスなどの入力装置から構成されている。入力部25は、CADデータ同一性検証装置1に対して文字や数字などの各種データを入力するための装置であり、ユーザがCADデータ同一性検証装置1にコマンドを入力したり、同一性を検証するファイルを選択したりなど、CADデータ同一性検証装置1に対して所定の入力操作を行う際に使用する。
キーボードは、カナや英文字などを入力するためのキーや数字を入力するためのテンキー、各種機能キー、カーソルキー及びその他のキーによって構成されている。
【0033】
マウスは、ポインティングデバイスである。GUI(Graphical User Interface)などを用いてCADデータ同一性検証装置1を操作する場合、表示装置上に表示されたボタンやアイコンなどをマウスでクリックすることにより、所定の情報の入力を行うことができる。
【0034】
出力部26は、例えば表示装置、印刷装置などから構成されており、CADデータ同一性検証装置1が検証した検証結果を出力する際に使用する。
表示装置は、例えば例えばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどで構成された情報を画面上に提示するための装置である。
表示装置には、同一性を検証するファイルを選択するためのファイル選択画面や、検証結果を表示する結果表示画面などが表示される。
印刷装置は、例えば、インクジェットプリンタ、レーザプリンタ、熱転写プリンタ、ドットプリンタなどの各種プリンタ装置によって構成されている。
【0035】
通信制御部27は、CADデータ同一性検証装置1をインターネットなどのネットワークに接続するための装置であって、モデム、ターミナルアダプタ、その他の接続装置によって構成されている。
CADデータ同一性検証装置1は、通信制御部27を用いて、外部の端末やサーバにアクセスすることが可能である。
そのため、他のコンピュータに格納されている図形データを通信制御部27を介して受信し、これに対して同一性を検証することもできる。
【0036】
記憶部31は、読み書き可能な記憶媒体と、その記憶媒体に対してプログラムやデータを読み書きするための駆動装置によって構成されている。当該記憶媒体として主にハードディスクが使用されるが、その他に、例えば、光磁気ディスク、磁気ディスク、半導体メモリなどの他の読み書き可能な記憶媒体によって構成することも可能である。
【0037】
記憶部31には、プログラム格納部32、データ格納部33などが形成されており、それぞれ、プログラム、データが格納されている。
プログラム格納部32には、CADデータ同一性検証装置1にCADデータ同一性検証機能を発揮させるためのCADデータ同一性検証プログラムや、メモリ管理や入出力管理などCADデータ同一性検証装置1を動作させるための基本的なプログラムであるOS(Operating System)、通信制御部27を制御する通信プログラム、その他の各種プログラムが記憶されている。
【0038】
また、プログラム格納部32には、図形データを操作するためのツール群がライブラリ(共通ライブラリと呼ばれる)として格納されており、CADデータ同一性検証装置1は、共通ライブラリを利用して図形データの読み込みその他の処理を行う。
なお、SXF規格に準拠した図形データのファイル形式は、SFC形式、P21形式など存在し、共通ライブラリはこれらの各ファイル形式に対応している。
【0039】
データ格納部33には、同一性検証の対象となる図形データや属性データが複数格納されている。
CPU23は、データ格納部33に記憶されている図形データや属性データのうち、ユーザが選択した2組の図形データと属性データについて同一性を検証する。
【0040】
記憶媒体駆動部30は、着脱可能な記憶媒体を駆動してデータの読み書きを行うための駆動装置である。着脱可能な記憶媒体としては、例えば、光磁気ディスク、磁気ディスク、磁気テープ、半導体メモリ、データをパンチした紙テープ、CD−ROMなどがある。なお、CD−ROMや紙テープは、読み込みのみ可能である。
記憶媒体駆動部32から、記憶媒体に記憶された図形データを読み込んで同一性を判断することもできる。
【0041】
入出力I/F29は、例えば、シリアルインターフェースやその他の規格のインターフェースにより構成されている。入出力I/F29に当該インターフェースに対応した外部機器を接続することにより、CADデータ同一性検証装置1の機能を拡張することができる。
【0042】
図6は、CADデータ同一性検証装置1の機能的な構成の1例を示したブロック図である。
CADデータ同一性検証装置1は、初期設定機能部40、同一性レベル設定機能部41、データ読込機能部42、同一性検証機能部43、結果出力機能部47から構成されており、同一性検証機能部43は、更にバイナリ比較機能部44、論理比較機能部45、意味比較機能部46などから構成されている。
これらの機能部は、プログラム格納部32に記憶されているCADデータ同一性検証プログラムをCPU23で実行することにより構成される。
【0043】
初期設定機能部40は、CADデータにアクセスするためのファイルパスの設定や、2つのCADデータのうちの同一性検証の基準とするCADデータの指定、検証結果の出力形式や出力状態などの初期設定をユーザから受け付ける機能部である。
【0044】
同一性レベル設定機能部41は、2つのCADデータを同一と検証する同一性レベルをユーザが設定する機能部である。
本実施の形態では、図形データ、属性データそれぞれにおいて、図7に示した3段階の比較レベルの設定を可能にする。
即ち、2つのデータがバイナリレベルで完全同一となる高レベルと、論理レベルで同一となる中レベルと、意味レベルで同一となる低レベルである。
高レベル、中レベル、低レベルの順で同一の程度は低くなる。これらの同一性レベルの詳細について後述する。
【0045】
データ読込機能部42(CADデータ取得手段)は、同一性レベル設定機能部41で設定されたファイルパスを用いてCADデータを記憶装置(記憶部33など)から読み出し、メモリ(RAM24など)に展開する。
CADデータが属性ファイル用属性付加機構によって属性情報が与えられている場合、データ読込機能部42は、図形ファイルと属性ファイルを読み込み、単一属性用属性付加機構や文字フィーチャ用属性付加機構によって属性情報が与えられている場合、データ読込機能部42は、図形ファイル(属性データが書き込まれている)を読み込む。
【0046】
同一性検証機能部43(同一性判断手段)は、バイナリ比較機能部44、論理比較機能部45、意味比較機能部46を備えている。そして、同一性検証機能部43は、メモリに展開した図形データと属性データの同一性を同一性レベル設定機能部41で設定された同一性レベルにて検証する。
即ち、高レベルが設定されている場合は、バイナリ比較機能部44によってバイナリレベルでの検証を行い、中レベルが設定されている場合は、論理比較機能部45により論理レベルでの検証を行い、低レベルが設定されている場合は、意味比較機能部46によって意味レベルでの検証を行う。
【0047】
まず、バイナリ比較機能部44が行うバイナリレベルでの同一性検証処理について説明する。
(図形データの場合)
2つの図形データに対してバイナリレベルでの比較を行い、バイナリ情報に差分がないかを完全に比較する。
(属性データの場合)
属性データをバイナリ比較する場合、2つの属性データに対してバイナリレベルでの比較を行い、バイナリ情報に差分がないかを完全に比較する。
【0048】
次に、論理比較機能部45が行う論理レベルでの同一性検証処理について説明する。
(図形データの場合)
論理比較機能部45における図形情報の比較では、データ読込機能部42で読み込んだ情報を論理的に比較することで同一性の判定及び差分の検出を行う。ここで、論理的な比較とは、フィーチャが同一であるかどうかを比較するものである。
【0049】
例えば、見た目では全く同じ四角形が、1つは4本の線分で構成されており、他の1つは1本の折れ線で構成された場合を考える。
このように、形成される図形の外観は同じでも、これを構成するフィーチャの種類が異なる場合(前者は線分、後者は折れ線)、論理比較機能部45は、これを論理的に同一でないと判断して差分を検出する。
【0050】
論理的な比較を行うためには、一方の図形データの4本の単線から構成された四角形と、他方の図形データの折れ線から構成された四角形を対応づけるといったように、両図形データのフィーチャを対応づけする必要がある。
このようなフィーチャ対応づけに関しては、特許文献1で開示されている技術など、公知の技術を用いて行うことができる。
なお、特許文献1では、SFCファイルとP21ファイルの場合の対応づけを主として説明しているが、SFCファイル同士、あるいはP21ファイル同士のフィーチャ対応づけを行うこともできる。
【0051】
なお、論理比較はユーザによって異なる判定基準を持つことが考えられる。このため、判定基準を初期設定にて外部定義できる機構を備えることにより、ユーザに応じたシステムのカスタマイズが可能となる。
例えば、特許文献1の技術では、基本的にフィーチャを比較の単位とするが、これを任意に拡張し、フィーチャ集合の単位を定義して、集合を比較単位とすることも可能である。
また、ユーザが指定したレイヤ上のフィーチャに対して同一性を検証したり、あるいは文字フィーチャだけ同一性を検証するといったように、検証対象とするフィーチャを限定することもできる。
更に、処理速度を重視して簡易な同一性判別を行うユーザのために、複合図形名称の一意性チェックを行わないなど、特定のフィーチャを検証対象からはずす設定を行うことも可能である。
【0052】
(属性の場合)
先に説明したように、属性付加機構には、3種類あるが、これらのうち、単一属性用属性付加機構と文字フィーチャ用属性付加機構に関しては、図形データ上に意味的な情報が属性情報として付加されるため、特許文献1などの公知技術で図形データのフィーチャを対応させた後(対応特定手段)、属性情報の一致を検証することができる。
属性ファイル用属性付加機構の場合は、図形データの同一性を検証する際にフィーチャの対応が得られるので、CADデータ同一性検証装置1は、これを用いて対応する2つの属性情報を取得する(意味情報取得手段)。
【0053】
即ち、第1のCADデータのフィーチャと第2のCADデータのフィーチャがあり、これらのフィーチャにそれぞれ対応づけられている第1の属性情報と第2の属性情報があったとする。
この場合、第1の図形データのフィーチャと第1の属性情報は識別番号によって対応づけられており、同様に第2の図形データのフィーチャと第2の属性情報も識別番号によって対応づけられている。
このため、第1の図形データのフィーチャと第2の図形データのフィーチャが対応づけられれば、第1の属性情報と第2の属性情報を対応づけることができる。
【0054】
なお、意味情報としては実質同一の内容であったとしても異なった階層構造で属性情報が保持されることがある。
論理比較機能部45は、親階層に差分がある場合、その子階層の検証は行わず、差分として検出して出力するようになっている。
また、単一属性用属性付加機構、文字フィーチャ用属性付加機構ともデータの形状が異なる可能性があるために、統一的に比較を行うことができる中間データへとデータの変換を行うように構成することもできる。この場合、その中間データ同士の属性情報を比較する。
【0055】
次に、意味比較機能部46が行う意味レベルでの同一性検証処理について説明する。
(図形データの場合)
先に説明した論理レベルの比較では、外観上は同じでも、線分で構成した四角形と折れ線で構成した四角形を差分として認識したが、意味レベルでの検証ではこれを同一であると判定する。
即ち、意味レベルでの検証では、論理的にはフィーチャが異なっていても可視的に同一であるか否か(外観上同一であるか否か)の比較を行い、外観形状が同じであれば同一であると判定する。
可視形状の抽出は、例えば、連続して接続するフィーチャを辿って輪郭を抽出し、その輪郭を比較するなど、一般に用いられている技術を用いて行うことができる。
このように論理比較機能部45は、データ読込機能部42で読み込んだ図形データの可視形状を比較することにより可視的な違いを差分として検出する。
【0056】
(属性の場合)
属性情報の比較を行う場合、同一の言葉でなくても、意味的には同一であると判定すべき場合がある。
例えば、「橋梁」と「橋」は異なる言葉であるが意味的には同一である。このため、意味比較機能部46は、自然言語処理を行うことにより、言葉の意味的な同一性を判断する。
【0057】
具体的には、意味比較機能部46は、類義語を関連づけた類義語辞書を参照し、意味的な同一性を判断する。例えば、この類義語辞書では「橋梁」と「橋」が類義語として関連づけられており、意味比較機能部46は、この関連づけにより両者の意味が同一であると判断する。
また、属性の階層構造だけが異なり、意味的には同一である場合もある。
そこで、意味比較機能部46は、属性情報の意味的な比較が可能となる中間データを生成し、この中間データを用いて属性情報の同一性を検証する。
【0058】
中間データとしては各種のものが考えられるが、意味比較機能部46は、一例として、属性情報にカテゴリと数値を設定することにより中間データを生成するものとする。
例えば、図8(a)に示した属性情報は、あるフィーチャAの属性情報であり、属性Aをルートノードとし、その下の階層に属性B、Cが設けられている。
【0059】
意味比較機能部46は、ルートノード(属性A)で用いられている属性名を、カテゴリを予め定義したカテゴリ辞書で検索して当該属性情報のカテゴリを設定する。
例えば、属性Aの属性名が「橋梁」、「鉄橋」、「吊橋」、「トラス橋」、「アーチ橋」などであった場合、カテゴリ辞書によって、当該属性情報のカテゴリは例えば、「橋梁」に設定される。
【0060】
次に、属性情報の数値(以下、意味強度と呼ぶ)は、例えば、次のようにして計算することができる。
まず、意味比較機能部46は、言葉間の関係値を定義した辞書を用いて、属性Aと属性Bの関係値(辞書に定義してある値)と、属性Aと属性Cの関係値を求める。例えば、この辞書が類義語辞書であった場合、関係値は、言葉間の類義の程度となる。
なお、類義語辞書(更には、活用辞書なども活用可能である)を用いることにより、表記ゆれや同義語の吸収を行った比較を行うことができる。
【0061】
今、属性Aと属性Bの関係値が0.9であり、属性Aと属性Cの関係値が0.7であったとする。
次に、意味比較機能部46は、階層構造の親子間の係数を0.5とし、関係値に親子間の係数を乗じた値を属性情報全体に対して加算する。意味比較機能部46は、この値を属性情報の意味強度とする。
図8(a)の例では、意味強度=0.9×0.5+0.7×0.5=0.8となる。
以上のようにして、この属性のカテゴリは「橋梁」であり、意味強度は0.8となる。
【0062】
意味比較機能部46は、このようにして属性情報ごとにカテゴリと意味強度を求めた中間データを、2つの属性データについて作成し、これを用いて属性情報の同一性を次のように判定する。
まず、意味比較機能部46は、対応する2つの属性情報を中間データから抽出する。そして、これらのカテゴリが同一であり、意味強度の差が所定値の範囲内であれば、この2つの属性情報が同一であると判定する。
意味比較機能部46は、この処理を全ての中間データの全ての属性に対して行う。
ここで、関係値や親子間の係数、あるいは同一と判定する意味強度の差の範囲などをユーザが初期設定にて設定できるように構成することもできる。
【0063】
更に、複雑な場合として、例えば、図8(a)に示したフィーチャAの属性情報と、図8(b)に示したフィーチャAaの属性情報のように、階層構造が異なる属性情報の同一性を検証したい場合、例えば、次のようにして行うことができる。
ここで、フィーチャAは、一方の図形データのフィーチャであり、フィーチャAaは、もう一方の図形データで、フィーチャAに対応するフィーチャであるとする。
【0064】
意味比較機能部46は、まず、比較を行う両属性情報において、ルートノードの粒度判定を行う。ここで粒度とは、属性情報が分類されたカテゴリの意味の細かさを意味する。
そして、意味比較機能部46は、この粒度を用いてルートノードの対応を検索する。
例えば、属性Aと属性Dの粒度が同じであった場合、意味比較機能部46は、属性Aと属性Dを対応させる(カテゴリが同一であるとする)。
また、属性Aと属性Eの粒度が同じであった場合、意味比較機能部46は、属性Aと属性Eを対応させる。
属性情報は、下層ほど粒度が小さくなる傾向があるため、このようにして粒度濃度によってルートノードの対応づけを行うことができる。
【0065】
次に、属性Aと属性Dがルートノードとして対応した場合、意味比較機能部46は、属性B、Cに対応する属性を属性E、F、Gから検索する。
この検索は、例えば、類似辞書などを用いて意味が類似するもの検索する。そして、意味比較機能部46は、類似辞書などで定義されている類似度を用いて、適当な方法によって属性情報全体としての類似度を算出する。
また、属性Hや属性Iのように比較対象と階層的に一致しない属性情報がある場合は、リスク値として類似度から所定値を減算する。
そして、意味比較機能部46は、類似度が所定範囲にある場合に、両者を同一として判定する。
【0066】
次に、結果出力機能部47(出力手段)について説明する。
結果出力機能部47は、同一性検証結果として2つのCADデータの差分を出力する。また、2つのCADデータにおけるフィーチャの対応関係を出力することもできる。
差分の出力は、フィーチャ単位で行い、HTML(Hypertext Markup Language)形式、CSV(Comma Separated Value)形式、あるいは、SXF規格に準拠したデータであるSFC形式とSAF形式などでの出力が可能である。
【0067】
HTML形式での出力では、例えば、表示画面を左右のフレームに分割し、左側のフレームに、比較したファイルの情報や、テーブル要素、複合曲線定義、複合図形定義などに関する差分箇所の件数を表示し、右側のフレームに差分箇所の詳細情報を表示する。
CSV形式での出力では、比較したファイルの情報や、テーブル要素、複合曲線定義、複合図形定義などに関する差分箇所、及び差分箇所の詳細情報などが出力され、表計算ソフトなどを用いて表形式で表示することができる。
【0068】
SFC形式での出力では、結果出力機能部47は、差分として検出された個々のフィーチャをそれぞれ異なるレイヤにコピーしたデータを生成する。
レイヤ名称には、フィーチャが追加されている場合は「add」、フィーチャが削除されている場合は「delete」、フィーチャが変更されている場合は「change」、属性情報が変化している場合は「attribute」の接頭辞を付与し、更にこれら接頭辞に3桁の連番をつけて設定する。
【0069】
例えば、図9(a)に示したように、Aレイヤ〜Cレイヤからなる図形データがあったとする。
この図形データは、同一性検証対象となるもう一方の図形データを基準として、レイヤAではフィーチャ51が追加され、レイヤBではフィーチャ52が追加、及びフィーチャ53が変更され、レイヤCでは、フィーチャ54が削除、及びフィーチャ55が変更されている。
【0070】
この図形データに対して、CADデータ同一性検証装置1は、図9(b)に示したようなSFC形式のデータを生成して出力する。
即ち、フィーチャ51に関しては、レイヤAにて追加されたものであるので、このフィーチャがコピーされ、「add001」をレイヤAの接頭辞としたレイヤ「add001_Aレイヤ」が生成される。
フィーチャ52に関しては、レイヤBにて追加されたものであるので、このフィーチャがコピーされ、「add002」をレイヤBの接頭辞としたレイヤ「add002_Bレイヤ」が生成される。
【0071】
フィーチャ53に関しては、レイヤBにて変更されたものであるので、このフィーチャがコピーされ、「change001」をレイヤBの接頭辞としたレイヤ「change001_Bレイヤ」が生成される。
フィーチャ54に関しては、レイヤCにて変更されたものであるので、このフィーチャがコピーされ、「change002」をレイヤCの接頭辞としたレイヤ「change002_Cレイヤ」が生成される。
【0072】
フィーチャ55に関しては、レイヤCにて削除されたものであるので、このフィーチャがコピーされ、「delete001」をレイヤCの接頭辞としたレイヤ「delete001_Cレイヤ」が生成される。
なお、図示しないが、属性情報が一致しないフィーチャには、「attribute001_Dレイヤ」などが生成される。
また、フィーチャと属性情報の両方が一致しないものは、例えば、「both001_Eレイヤ」などと、接頭辞「both」を付与する。
【0073】
このようにして生成されたSFC形式のデータをSXFブラウザで表示すると、図10に示したように、差分として検出されたフィーチャが表示される。
図示しないが、追加・削除・変更されたフィーチャがそれぞれ赤色・青色・緑色で表示されている。また、図示しないが、属性情報が一致しないフィーチャは、紫色で表示され、フィーチャと属性情報の両方が一致しないフィーチャは、黄色で表示される。
これらの表示色・線幅・線種は、CADデータ同一性検証装置1の初期設定で変更することができる。
また、図示しないが、これら差分となるフィーチャの属性情報がSAF形式のデータで出力されるため、これらの情報をSXFブラウザを用いてその情報を確認することもできる。
【0074】
次に、図11のフローチャートを用いてCADデータ同一性検証装置1が図形データの同一性を検証する手順について説明する。
まず、初期設定機能部40がユーザから初期設定の入力を受け付ける(ステップ10)。
初期設定の受け付けでは、まず、ユーザから比較対象となる2つの図形データが格納されている箇所を特定するファイルパスを受け付ける。
通常、図形データはデータ格納部33(図5)に記憶されているが、この他に記憶媒体駆動部30を介して記憶媒体に記憶されている図形データを指定したり、あるいは、通信制御部27を介してネットワーク経由でサーバに記憶されている図形データを指定することもできる。
【0075】
また、初期設定では、例えば、検証結果の出力形式(HTML形式、CSV形式、SFC・SAF形式など)の選択や、差分を表示する場合に、その色や線種といった表示状態などの設定を受け付ける。
更に、初期設定では、2つのCADデータのうち、比較の基準とするものの指定も受け付ける。
デフォルトでは、作成日時が古い方の図形データと属性データを基準として、作成日時が新しい方の図形データと属性データの差分を抽出するようになっている。
【0076】
次に、ユーザにより同一性レベルの設定が行われる(ステップ15)。ユーザは、高レベル、中レベル、及び低レベルの中から所望の同一性レベルを選択し、選択された同一性レベルは同一性レベル設定機能部41(図6)に設定される。
以上の設定がなされると、CADデータ同一性検証装置1は、2つの図形データの同一性の判定処理を開始する。
【0077】
まず、データ読込機能部42が、ステップ10で入力された2つのファイルパスを用いて、図形データが格納されている記憶エリアにアクセスし、図形データと属性データを読み込んで、メモリ(例えば、RAM24)に展開する(ステップ20)。
なお、図形データは、SFCファイルやP21ファイルから読み込み、属性データに関しては、属性ファイル用属性付加機構の場合はSAFファイルから読み込み、単一属性用属性付加機構と文字フィーチャ属性付加機構の場合は図形データから読み込む。
【0078】
次に、データ読込機能部42は、2つのファイルパスについて図形データと属性データを読み込んだか確認し、何れか読み込んでないデータがある場合は(ステップ25;N)、ステップ20に戻り、再度データの読み込みを行う。2つのファイルパスについて図形データと属性データを読み込んだ場合(ステップ25;Y)、データ読込機能部42は、読み込みエラーがあるか否かを確認する(ステップ30)。
読み込みエラーがある場合(ステップ30;Y)、データ読込機能部42は、ステップ20に戻り、再度2つのファイルパスから図形データと属性データを読み込む。
【0079】
読み込みエラーがない場合(ステップ30;N)、同一性検証機能部43がメモリに展開した図形データと属性データの同一性の判定を行う。
同一性検証機能部43は、同一性レベルが何に設定されているかを判断する(ステップ35)。
同一性レベルが高レベルの場合(ステップ35;高レベル)、バイナリ比較機能部44が2つのCADデータのバイナリレベルでの検証を行い、差分を結果出力機能部47に出力する。
同一性レベルが中レベルの場合(ステップ35;中レベル)、論理比較機能部45が2つのCADデータの論理レベルでの検証を行い、差分を結果出力機能部47に出力する。
同一性レベルが低レベルの場合(ステップ35;低レベル)、意味比較機能部46が2つのCADデータの意味レベルでの検証を行い、差分を結果出力機能部47に出力する。
次に、検証サーバ55が、同一性検証機能部43から出力された差分を、初期設定で設定された出力形式にて出力する(ステップ55)。
【0080】
以上のCADデータ同一性検証装置1では、2つのCADデータの同一性をユーザから指定された同一性レベルにて検証したが、変形例として、図12のフローチャートに示したように、各同一性レベルでの同一性を検証を行い、各同一性レベルでの差分を出力するように構成することもできる。
【0081】
図12において、図11と対応するステップには同じステップ番号を付し、説明を簡略化することにする。
ステップ10〜30は、図11と同じである。なお、図11のステップ15の同一性レベルの設定は行わない。
【0082】
2つのCADデータをメモリに展開すると、同一性検証機能部43のが各同一性レベルでの同一性を検証する。
まず、バイナリ比較機能部44が、バイナリレベルでの比較を行い、差分がない場合(ステップ60;N)、差分がない旨を結果出力機能部47に通知する。
差分がある場合(ステップ60;Y)、バイナリ比較機能部44は、その差分を論理比較機能部45に出力する。
【0083】
論理比較機能部45は、バイナリ比較機能部44から2つのCADデータの差分を受け取ると、これに対して論理レベルでの比較を行い、差分がない場合(ステップ65;N)、差分がない旨を結果出力機能部47に通知する。
差分がある場合(ステップ65;Y)、論理比較機能部45は、その差分を意味比較機能部46に出力する。
【0084】
意味比較機能部46は、論理比較機能部45から2つのCADデータの差分を受け取ると、これに対して意味レベルでの比較を行い、差分がない場合(ステップ70;N)、差分がない旨を結果出力機能部47に通知する。
差分がある場合(ステップ70;Y)、論理比較機能部45は、その差分を結果出力機能部47に出力する。
【0085】
結果出力機能部47は、同一性検証機能部43から、差分を受け取り、検証結果を作成して出力する(ステップ55)。
検証結果では、2つのCADデータの各同一性レベルでの同一性と、差分が記述される。
具体的には、2つのCADデータのバイナリレベルでの同一性、論理レベルでの同一性とその差分、及び意味レベルでの同一性とその差分が記述される。
【0086】
次に、CADデータ同一性検証装置1の利用例について説明する。
(修正箇所チェック)
CADデータ同一性検証装置1は、CADデータ修正時のチェックに利用することができる。
例えば、建設業のライフサイクルにおいて、受発注者間でCADデータのやり取りが頻繁に行われる。
その中で、受注者から納品された修正CADデータが、発注者の指示書通り修正されているかどうかを確認するのにCADデータ同一性検証装置1を利用することができる。
即ち、修正前のCADデータを基準として修正後のCADデータの差分をCADデータ同一性検証装置1に出力させ、その検証結果を指示書と比較すればよい。
これによって、図形データと属性データの確認を行うと共に、修正箇所のチェックも容易に行うことができる。
また、受注者が、CADデータの納品前にチェックするのにも用いることができる。
【0087】
(バージョンチェック)
電子納品ツールでは、多くのバージョンのCADデータが保存される。例えば、バージョン2ではなく、間違えてバージョン1のCADデータを更新してバージョン3になっていた場合、既存のファイルのタイムスタンプによるチェックのみでは、最新版の判別が不可能になる。
そこで、CADデータ同一性検証装置1を用いて各バージョン間の差分情報を取得し、修正指示書や作業履歴など資料と照合することで、正しいバージョンを判別することが可能になる。
【0088】
(改竄防止)
改竄の可能性のあるCADデータと、改竄されていないCADデータの同一性をCADデータ同一性検証装置1で検証することにより、改竄を容易に発見することができる。
【0089】
(複数図面間の自動統一)
CADデータの作成において1つの構造物を様々な側面から設計し、複数のCADデータを作成することが多々ある。
そのため、あるCADデータにおいて寸法線の値を変更した場合に、他のCADデータにおいて同様の構造物に設定している寸法線の情報を修正する必要がある。
この場合、CADデータ同一性検証装置1を用いて複数CADデータ間にまたがった同一のフィーチャを論理的に検出し、値の差異をチェックすることができる。このことにより、CADデータ間の統一漏れや品質向上に役立てることができる。
【0090】
(バージョン管理)
CADデータの作成の現場では、設計が進むにつれて、CADデータが複数の人間を介して随時更新される。その中で、バージョンごとにどのような内容を変更したかなどを把握することが困難になる。
この場合、CADデータ同一性検証装置1で3つの同一性レベルの差分データ(図形データの差分、属性データの差分)をバージョンごとに蓄積することにより、多面的に変更内容を把握することができる。これによって、CADデータの品質管理の向上を図ることができる。
【0091】
(バージョン間での取捨選択)
CADデータの作成の現場では、複数の作業者が共同で作業を行い、チェック・更新が反復して反映されるケースがある。
この場合、CADデータが複数人で更新されるため、不適切な更新の内容が混在する可能性がある。
この場合の対応として、現在では、古いバージョンにデグレードし、必要な内容を再度記述して新しいCADデータを作成するか、最新バージョンから不適切な更新内容を削除又は修正している。
そこで、CADデータ同一性検証装置を利用することにより、必要な差分データのみを抽出し、元データに反映することで、必要な更新情報のみを反映した図面を生成することができる。このことにより、作業内容の更新・反映をスムーズに実施することができ、品質の高い図面を自動的に生成することが可能となる。
【0092】
(7)(修正ミスの検出)
CADデータの修正作業を行う際、画面に表示されていない箇所を誤って変更してしまう場合がある。通常、このようなミスは発見されないことが多い。そこで、CADデータ同一性検証装置1を用いて、修正後のCADデータと修正元のCADデータの差分を出力すると、修正範囲外で差分情報が検出され、修正ミスとして発見することができる。
【0093】
以上に説明した本実施の形態により、次のような効果を得ることができる。
(1)意味情報が属性情報として付属した2つのCADデータに対して意味的な同一性の判定を行うことができる。
(2)バイナリレベル、論理レベル、意味レベルの各同一性レベルにおける同一性を判定することができる。
(3)類義語辞書や活用辞書などの辞書を用いて、属性データを自然言語処理することができる。
(4)属性情報の階層構造を数値化し、これによって同一性を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図形データの概念的な構成について説明するための図である。
【図2】フィーチャの構成を説明するための図である。
【図3】属性データについて説明するための図である。
【図4】図形データと属性データの対応関係を模式的に表した図である。
【図5】CADデータ同一性検証装置のハードウェア的な構成を示した図である。
【図6】CADデータ同一性検証装置の機能的な構成を示したブロック図である。
【図7】同一性レベルについて説明するための図である。
【図8】中間データを説明するための図である。
【図9】検証結果の作成方法を説明するための図である。
【図10】検証結果の表示例を示した図である。
【図11】CADデータ同一性検証装置の同一性検証手順を説明するためのフローチャートである。
【図12】同一性検証手順の変形例を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
1 CADデータ同一性検証装置
21 CPU
22 ROM
23 CPU
24 RAM
25 入力部
26 出力部
27 通信制御部
28 バスライン
29 入出力I/F
30 記憶媒体駆動装置
31 記憶部
32 プログラム格納部
33 データ格納部
41 同一性レベル設定機能部
42 データ読込機能部
43 同一性検証機能部
44 バイナリ比較機能部
45 論理比較機能部
46 意味比較機能部
47 結果出力機能部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図形情報と、前記図形情報が表す対象に関する意味的な内容を前記図形情報に付与する意味情報と、を用いて構成されたCADデータの同一性を検証するCADデータ同一性検証装置であって、
第1のCADデータと、第2のCADデータを取得してメモリに展開するCADデータ取得手段と、
前記展開した第1のCADデータの図形情報と前記第2のCADデータの図形情報の対応を特定し、当該特定した対応をメモリに記憶する対応特定手段と、
前記対応特定手段にて対応が特定された第1のCADデータの図形情報と第2のCADデータの図形情報のそれぞれの意味情報を、前記メモリに展開した意味情報から取得する意味情報取得手段と、
前記取得した意味情報の同一性を判断する同一性判断手段と、
前記同一性判断手段による判断結果を出力する出力手段と、
を具備したことを特徴とするCADデータ同一性検証装置。
【請求項2】
前記出力手段は、前記第1のCADデータと前記第2のCADデータにおいて、前記意味情報が同一でないと判断された差分を出力することを特徴とする請求項1に記載のCADデータ同一性検証装置。
【請求項3】
前記同一性判断手段は、予め意味情報の類似を規定した類似辞書を用いて、類似する意味情報を同一と判断することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のCADデータ同一性検証装置。
【請求項4】
前記意味情報は、階層構造を有しており、
前記同一性判断手段は、前記階層構造を数値化し、当該数値化した数値を用いて前記取得した意味情報の同一性を判断することを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載のCADデータ同一性検証装置。
【請求項5】
図形情報と、前記図形情報が表す対象に関する意味的な内容を前記図形情報に付与する意味情報と、を用いて構成されたCADデータの同一性を検証するCADデータ同一性検証方法であって、
CADデータ取得手段と、対応特定手段と、意味情報取得手段と、同一性判断手段と、出力手段と、を備えたコンピュータにおいて、
前記CADデータ取得手段によって、第1のCADデータと、第2のCADデータを取得してメモリに展開するCADデータ取得ステップと、
前記対応特定手段によって、前記展開した第1のCADデータの図形情報と前記第2のCADデータの図形情報の対応を特定し、当該特定した対応をメモリに記憶する対応特定ステップと、
前記意味情報取得手段によって、前記対応特定手段にて対応が特定された第1のCADデータの図形情報と第2のCADデータの図形情報のそれぞれの意味情報を、前記メモリに展開した意味情報から取得する意味情報取得ステップと、
前記同一性判断手段によって、前記取得した意味情報の同一性を判断する同一性判断ステップと、
前記出力手段によって、前記同一性判断手段による判断結果を出力する出力ステップと、
から構成されたことを特徴とするCADデータ同一性検証方法。
【請求項6】
図形情報と、前記図形情報が表す対象に関する意味的な内容を前記図形情報に付与する意味情報と、を用いて構成されたCADデータの同一性を検証する機能をコンピュータに発揮させるCADデータ同一性検証プログラムであって、
第1のCADデータと、第2のCADデータを取得してメモリに展開するCADデータ取得機能と、
前記展開した第1のCADデータの図形情報と前記第2のCADデータの図形情報の対応を特定し、当該特定した対応をメモリに記憶する対応特定機能と、
前記対応特定機能にて対応が特定された第1のCADデータの図形情報と第2のCADデータの図形情報のそれぞれの意味情報を、前記メモリに展開した意味情報から取得する意味情報取得機能と、
前記取得した意味情報の同一性を判断する同一性判断機能と、
前記同一性判断機能による判断結果を出力する出力機能と、
をコンピュータに発揮させるCADデータ同一性検証プログラム。
【請求項1】
図形情報と、前記図形情報が表す対象に関する意味的な内容を前記図形情報に付与する意味情報と、を用いて構成されたCADデータの同一性を検証するCADデータ同一性検証装置であって、
第1のCADデータと、第2のCADデータを取得してメモリに展開するCADデータ取得手段と、
前記展開した第1のCADデータの図形情報と前記第2のCADデータの図形情報の対応を特定し、当該特定した対応をメモリに記憶する対応特定手段と、
前記対応特定手段にて対応が特定された第1のCADデータの図形情報と第2のCADデータの図形情報のそれぞれの意味情報を、前記メモリに展開した意味情報から取得する意味情報取得手段と、
前記取得した意味情報の同一性を判断する同一性判断手段と、
前記同一性判断手段による判断結果を出力する出力手段と、
を具備したことを特徴とするCADデータ同一性検証装置。
【請求項2】
前記出力手段は、前記第1のCADデータと前記第2のCADデータにおいて、前記意味情報が同一でないと判断された差分を出力することを特徴とする請求項1に記載のCADデータ同一性検証装置。
【請求項3】
前記同一性判断手段は、予め意味情報の類似を規定した類似辞書を用いて、類似する意味情報を同一と判断することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のCADデータ同一性検証装置。
【請求項4】
前記意味情報は、階層構造を有しており、
前記同一性判断手段は、前記階層構造を数値化し、当該数値化した数値を用いて前記取得した意味情報の同一性を判断することを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載のCADデータ同一性検証装置。
【請求項5】
図形情報と、前記図形情報が表す対象に関する意味的な内容を前記図形情報に付与する意味情報と、を用いて構成されたCADデータの同一性を検証するCADデータ同一性検証方法であって、
CADデータ取得手段と、対応特定手段と、意味情報取得手段と、同一性判断手段と、出力手段と、を備えたコンピュータにおいて、
前記CADデータ取得手段によって、第1のCADデータと、第2のCADデータを取得してメモリに展開するCADデータ取得ステップと、
前記対応特定手段によって、前記展開した第1のCADデータの図形情報と前記第2のCADデータの図形情報の対応を特定し、当該特定した対応をメモリに記憶する対応特定ステップと、
前記意味情報取得手段によって、前記対応特定手段にて対応が特定された第1のCADデータの図形情報と第2のCADデータの図形情報のそれぞれの意味情報を、前記メモリに展開した意味情報から取得する意味情報取得ステップと、
前記同一性判断手段によって、前記取得した意味情報の同一性を判断する同一性判断ステップと、
前記出力手段によって、前記同一性判断手段による判断結果を出力する出力ステップと、
から構成されたことを特徴とするCADデータ同一性検証方法。
【請求項6】
図形情報と、前記図形情報が表す対象に関する意味的な内容を前記図形情報に付与する意味情報と、を用いて構成されたCADデータの同一性を検証する機能をコンピュータに発揮させるCADデータ同一性検証プログラムであって、
第1のCADデータと、第2のCADデータを取得してメモリに展開するCADデータ取得機能と、
前記展開した第1のCADデータの図形情報と前記第2のCADデータの図形情報の対応を特定し、当該特定した対応をメモリに記憶する対応特定機能と、
前記対応特定機能にて対応が特定された第1のCADデータの図形情報と第2のCADデータの図形情報のそれぞれの意味情報を、前記メモリに展開した意味情報から取得する意味情報取得機能と、
前記取得した意味情報の同一性を判断する同一性判断機能と、
前記同一性判断機能による判断結果を出力する出力機能と、
をコンピュータに発揮させるCADデータ同一性検証プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−193578(P2007−193578A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11218(P2006−11218)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(500063228)
【出願人】(500333316)
【出願人】(505110011)
【出願人】(501367299)
【出願人】(506021905)
【出願人】(501097503)
【出願人】(502341144)
【出願人】(506021927)
【出願人】(501069555)株式会社関西総合情報研究所 (6)
【出願人】(394024477)福井コンピュータ株式会社 (18)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(500063228)
【出願人】(500333316)
【出願人】(505110011)
【出願人】(501367299)
【出願人】(506021905)
【出願人】(501097503)
【出願人】(502341144)
【出願人】(506021927)
【出願人】(501069555)株式会社関西総合情報研究所 (6)
【出願人】(394024477)福井コンピュータ株式会社 (18)
【Fターム(参考)】
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