説明

CD19xCD3二重特異性抗体を投与するための投与計画

ヒト患者に対するCD19xCD3二重特異性抗体の投与により仲介される、患者についての潜在的な有害反応のリスクを評価(分析)するための方法であって、患者のB細胞のT細胞に対する比率を測定する工程を含み、約1:5以下の比率が患者についての潜在的な有害反応のリスクについての指標となっている方法に関する。よって、B:T細胞比が約1:5以下のヒト患者に対してCD19xCD3二重特異性抗体を投与するための方法(投与計画)であって、(a)第1用量の抗体を第1期間に投与する工程と、続いて、(b)第2用量の抗体を第2期間に投与する工程とを含み、第2用量は、第1用量よりも多い方法(投与計画)に関する。第3用量の抗体を第3期間に投与する実施形態もある。この投与計画は、悪性CD19陽性リンパ球を治療するため、または、二重特異性抗体の投与により仲介される有害反応を改善および/または防止するための方法において適用することができる。さらに、本発明の方法において使用される医薬組成物を調製するためのCD19xCD3二重特異性抗体の使用に関する。また、本発明の方法/投与計画において定義されるような、第1用量、第2用量、および、任意で第3用量の抗体を含む医薬パッケージまたはキットを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト患者に対するCD19xCD3二重特異性抗体の投与により仲介される、前記患者についての潜在的な有害反応のリスクを評価(分析)するための方法であって、前記患者のB細胞のT細胞に対する比率を測定する工程を含み、約1:5以下の比率が前記患者についての潜在的な有害反応のリスクについての指標となっている方法に関する。したがって、本発明は、B:T細胞比が約1:5以下のヒト患者に対してCD19xCD3二重特異性抗体を投与するための方法(投与計画)であって、(a)第1用量の前記抗体を第1期間に投与する工程と、続いて、(b)第2用量の前記抗体を第2期間に投与する工程とを含み、前記第2用量は、第1用量よりも多い方法(投与計画)に関する。第3用量の抗体を第3期間に投与する実施形態もある。この投与計画は、悪性CD19陽性リンパ球を治療するため、または、前記二重特異性抗体の投与により仲介される有害反応を改善および/または防止するための方法において適用することができる。さらに、本発明は、本発明の方法において使用される医薬組成物を調製するためのCD19xCD3二重特異性抗体の使用に関する。また、本発明の方法/投与計画において定義されるような、第1用量、第2用量、および、任意で第3用量の前記抗体を含む医薬パッケージまたはキットを開示する。
【背景技術】
【0002】
抗体ベースの癌治療法は、活性であるために癌細胞の表面にしっかりと結合される標的抗原を必要とする。表面標的との結合により、抗体は、致死信号を癌細胞へ直接、または、二重特異性抗体の場合は例えば細胞障害性T細胞を動員することによって間接的に送達することができる。理想的な治療計画では、標的抗原は、各癌細胞には多数存在して到達可能であり、正常細胞には存在せず、遮蔽され、または、それほど多数ではない。この状況は、抗体ベースの治療法の規定量が癌細胞を効果的に攻撃するが正常細胞は攻撃しない治療域についての基準を規定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
抗体は、多くの障害、特に癌を治療する際の効果的な手段であるが、その投与は必ずしも副作用が無いわけではない。有害反応は、患者の健康状態に可逆的または不可逆的な変化を引き起こすこともある。有害反応は、有害で不都合なものなので、これを回避することが非常に望ましい。しかしながら、薬剤が有害反応を引き起こす可能性があることは知られているにもかかわらず、その処方および投与は回避できず、または、許容されている。なぜなら、薬剤は、極めて有効な治療効果を有し、または、命を救うこともあるからである。
【0004】
臨床治験では、有害反応(AE)と重篤な有害反応(SAE)とを一般的に区別することができる。具体的には、有害反応は、有害事象共通用語規準(CTCAE)に従って5つのグレードに分類することができる。Grade1は軽度のAE、Grade2は中等度のAE、Grade3は高度のAE、Grade4は生命を脅かすまたは活動不能とするAEに関し、Grade5はAEによる死亡を意味する。
【0005】
抗体治療法において観察される有害反応は、サイトカイン放出症候群(「CRS」)などの輸液関連の副作用の発生である。CRSに関連すると記載されている他の有害な副作用は、疲労、嘔吐、心頻拍、高血圧、背痛であり、発作、脳症、脳浮腫、無菌髄膜炎、頭痛などの中枢神経系反応(CNS反応)でもある。
【0006】
サイトカイン放出および神経性反応は、T細胞受容体と結合するモノクローナル抗体だけではなく、T細胞受容体のCD3部分と結合するCD19xCD3二重特異性単鎖抗体(ブリナツモマブ(MT103)と呼ばれる)でも観察されている。
【0007】
ブリナツモマブ(MT103)は、リンパ腫を標的とする組換型二重特異性単鎖CD19xCD3抗体であり、この抗体は、ほぼ全てのB細胞およびB腫瘍細胞の表面においてCD19と結合し、同時にT細胞を連結することができ、これにより、T細胞をトリガして標的B細胞またはB腫瘍細胞を殺す。ブリナツモマブは、一本鎖ポリペプチドに集成される4つの免疫グロブリン可変ドメインからなる。可変ドメインうちの2つは、CD19に対する、すなわちほとんどのB細胞およびB腫瘍細胞に発現する細胞表面抗体に対する結合部位を形成する。他の2つの可変ドメインは、T細胞におけるCD3錯体に対する結合部位を形成する。ブリナツモマブは、体の細胞障害性または細胞破壊性のT細胞を腫瘍細胞へ向けるように設計されており、癌治療法に対する新しい治療的アプローチである。ブリナツモマブは、現在臨床治験中である。
【0008】
例えば国際公開第99/54440号に記載されているように、有害反応は、B細胞性慢性リンパ性白血病(B−CLL)を有する患者に対する反復ボーラス輸液に適用されたブリナツモマブを用いて行われた過去の研究において観察されている。国際公開第99/54440号の図19および図20に示されているように、TNF、IL−6、およびIL−8の放出は、3マイクログラムおよび10マイクログラムの上記二重特異性単鎖抗体の20分輸液の各々に反応して見られ、各投与後にサイトカイン放出を伴った。最大サイトカイン放出は、10マイクログラムの二重特異性単鎖抗体の投与後に観察された。有害反応は、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の用量を増加させながらボーラス輸液としてB細胞悪性腫瘍を有する患者に投与する以下の臨床治験研究においても観察された。後向き分析によると、22人中7人の患者が、例えば、錯乱、運動失調、言語障害、または見当識障害を含む早期神経性反応を示した。
【0009】
これらの不都合な副作用によりよく対処しようとするために、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与モードは、ボーラス輸液からより長期間の前記抗体の持続的静脈投与に切り替えたという点で変更されている。Bargouet al.(Science 321 (2008): 974-7)に示すように、非ホジキンリンパ腫患者に4週間に亘って1日につき1平方メートル当り0.005ミリグラムといった低い用量を持続的に投与することで、血液中のリンパ腫標的細胞の排除につながった。部分的および完全な腫瘍退縮は、0.015ミリグラム/m/dの用量レベルで初めて観察され、0.06ミリグラム/m/dの用量レベルで治療された7人の患者全員の腫瘍が退縮した(上記のBargouet al.)。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体も、骨髄および肝臓からの腫瘍細胞のクリアランスにつながった。しかしながら、この(続行中の)研究が、血液細胞に由来する癌の治療におけるCD19xCD3二重特異性単鎖抗体フォーマットの治療可能性についての概念を臨床により実証したにもかかわらず、神経性反応が上記臨床治験の途中で見つかった。したがって、ブリナツモマブは、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、および/または、マントル細胞リンパ腫を治療するための非常に有望な候補薬剤なので、これを必要とする患者の治療においてCD19xCD3二重特異性単鎖抗体による不都合な副作用を低減または完全に回避することが非常に望ましい。
【0010】
神経性反応を含むCNS(神経性)反応を引き起こさないCD19xCD3抗体ベースの治療法を設計することは明らかに困難である、または、言い換えれば、患者許容度を上げた、すなわち、CNS反応などの不都合な有害反応を低減した、または、無くしたCD19xCD13抗体ベースの薬物療法を提供することが望ましい。
【0011】
T細胞群のより漸進的な活性化を可能にする薬物手段および方法(国際公開第2007/068354号参照)は、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体にょって治療される患者における著しく有害な副作用を回避するために既に役立ったが、これらの措置では、特に、1日(すなわち、24時間)につき平方メートル当り5〜10マイクログラムを上回る用量の抗体が投与された場合には、神経性反応を残念ながら防止できなかった。
【0012】
よって、本発明の技術的課題は、上記問題を解決する投与計画、および、方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、この必要性に対応するものであり、したがって、ヒト患者にCD19xCD3二重特異性抗体を投与するための方法および投与計画に関する実施形態を提供する。
【0014】
これらの実施形態は、本明細書に特性が示され且つ説明されており、請求項に反映されている。
【0015】
なお、本明細書では、単数形の「ある(a,an)」「前記(the)」は、文脈が明確に示さない限り複数を指すことも含む。したがって、例えば、「ある試薬」は、1つ以上のこのような異なる試薬を含み、「前記方法」は、本明細書で説明した方法に変更または置換することのできる当業者の知る同等のステップおよび方法への言及を含む。
【0016】
本開示において引用される全ての発行物および特許は、参照によりその全内容がここに引用される。参照により引用される材料が本明細書と矛盾する、または、整合しない場合には、このような材料よりも本明細書が優先される。
【0017】
特記しない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の各要素を指すものとする。当業者は、本明細書に記載された発明の具体的実施形態の多くの均等物を、ルーチン実験だけで認識するであろう、または、確認することができるであろう。このような均等物は、本発明に含まれるものとする。
【0018】
本明細書、および、続く請求項を通して、文脈上必要でない限り、「含む」という用語、および、「含み」「含んでいる」などの変化形は、表記された値、ステップ、または、値若しくはステップのグループを含むことを意味し、その他の値、ステップ、または、値若しくはステップのグループを除外しないものとする。
【0019】
本明細書の文中にいくつかの文献が引用されている。ここに引用した各文献(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造業者の仕様書、指示書などを含む)は、本明細書の前後を問わず、参照によりその全内容がここに引用される。これらにおける何れも、先行発明により本発明がこのような開示に先行しない、ということを認めているものとして解釈されるべきではない。
【0020】
有害事象、特に、CD19xCD3二重特異性抗体も含めて抗体で観察される神経性反応を含むCNS事象を考慮すると、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体をここに提供したような投与計画に従って投与すれば患者が許容するように投与できる、という発見は、確かに注目に値する。
【0021】
具体的には、本発明者らは、CD19xCD3二重特異性抗体が投与された患者らは約1:5以下のB:T細胞比率を有している場合はCNS事象を経験した、ということを観察した。したがって、本発明は、低いB:T細胞比率を、白血病およびリンパ腫において生じる悪性CD19陽性リンパ球の治療における神経性反応を含む有害反応の発生についての潜在的な高リスク因子として初めて確立する(例2、例3および例4参照)。
【0022】
特に、本願の発明者らは、抹消血において低いB:T細胞比率を有する非ホジキンリンパ腫(NHL)患者および急性リンパ芽球性白血病(ALL)患者は早期神経性反応の発症のリスク増加を有している、ということを観察した。この神経性反応は、主に、CD19xCD13二重特異性抗体による治療の最初の(数)日に起こる。特に、神経性反応の大部分は、治療開始から約12時間〜120時間後に起きた。これらの神経性反応は、一過性のものであり、完全に可逆性があり、治療停止後3時間〜72時間以内に続発症なく解消した。
【0023】
発明者らは、CD19xCD3二重特異性抗体を用いる様々な臨床治験研究において、以下のような予想外のことを観察した。すなわち、「短期」(ボーラス)輸液治験を見てみると、22人中7人の患者は早期神経性反応を示した。この7人中6人の患者は、治療前に低いB:T細胞比率、すなわち、約1:5以下のB:T細胞比率を有していた。神経性反応の無かった残りの15人のうち、低いB:T細胞比率を有していたのはたった1人であった。
【0024】
NHL臨床治験(Bargou他、上記参照)において、2008年8月までに合計39人の患者を治療した。この時点で、CD19xCD3二重特異性抗体治療の恒久的な中止につながった神経性反応のあった全ての患者が低いB:T細胞比率(すなわち、1:5未満のB:T細胞比率閾値)を有していた、ということが分かった。特に、低いB:T細胞比率を有する10人の患者のうち5人に神経性反応が観察された(5/10)。その一方で、高いB:T細胞比率(すなわち、1:5を上回るB:T細胞比率)を有する患者でCD19xCD3二重特異性抗体治療の恒久的な中止につながる神経性反応のあった者はいなかった(0/29)。
【0025】
その後、概略的な理論を前向き分析するため、および、リスクの増加した患者のための緩和ステップを具体的に見出すために、低いB:T細胞比率を有する、すなわち、早期神経性反応の増加リスクを有する患者について具体的なコホートを確立した。
【0026】
高リスク患者についてこれらの分離コホートを確立してから、8人のNHL患者、つまり、低いB:T細胞比率を有する6人の患者と高いB:T細胞比率を有する2人の患者とを前向き治療した(2009年7月のデータ)。同じく、高いB:T細胞比率を有する患者で神経性反応のあったものはいなかった。その一方で、低いB:T細胞比率を有する6人の患者のうち3人は、治療の中断につながる神経性反応があった。
【0027】
つまり、B細胞慢性リンパ球性白血病(CLL)およびマントル細胞リンパ腫(MCL)を含む69人のNHL患者を、ボーラス輸液および持続的輸液の双方でCD19xCD3二重特異性抗体により治療した。低いB:T細胞比率を有する患者の61%において神経性反応が観察された。これに対し、高いB:T細胞比率を有する患者のたった2%しかこのような有害事象を示さなかった(以下の例を参照)。
【0028】
別の臨床治験フェーズII研究では、1日につき患者の体表面積1平方メートル当り15μgのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体を、少なくとも4週間、持続的輸液によって成人のALL患者に投与した。1:5未満のB:T細胞比率を有する高リスクグループの11人のALL患者のうち1人が、治療の中断につながる神経性反応を示した。これに対し、1:5を上回るB:T細胞比率を有する低リスクグループの6人の患者は誰も神経性反応を示さなかった。
【0029】
また、39人のNHL患者の後向き分析において、抹消血中のB細胞のT細胞に対する(B:T)比率1:5〜1:10以下というベースラインは結果として生じる神経系AEの唯一の予測因子として特定された。その後、この予測値は、8人のさらなる患者において前向きに確認された(例1参照)。
【0030】
つまり、これらのデータは、低いB:T細胞比率、すなわち、約1:5以下のB:T細胞比率を、有害反応の発生についての潜在的な高リスク因子として確立している。なお、有害反応は、CD19xCD3二重特異性抗体によって治療される患者のNHL、MCL、CLLおよびALLなどの白血病およびリンパ腫に生じる悪性CD19陽性リンパ球を治療する際の神経性反応を含む(例1および例4参照)。
【0031】
したがって、CD19xCD3二重特異性抗体によって治療される際に有害反応に苦しむリスクがあるかもしれない患者を特定できるようにする方法を提供することが本発明の目的であった。この方法は、服薬順守を改善するであろう。なぜなら、有害反応に苦しむリスクのある患者を特定することで、CD19xCD3二重特異性抗体の投与計画を調整できるからである。実際に、本発明者らは、約1:5以下のB:T細胞比率が有害反応に苦しむ潜在的なリスク因子であり得る、という自身の発見をCD19xCD3二重特異性抗体による治療に適用し、これらの有害反応を防止および/または改善することを目的とした投与計画を開発した。
【0032】
したがって、第1観点において、本発明は、ヒト患者に対するCD19xCD3二重特異性抗体の投与により仲介される、前記患者についての潜在的な有害反応のリスクを評価(分析)するための方法であって、前記患者のB細胞のT細胞に対する比率を前記患者からのサンプルにおいて測定する工程を含み、約1:5の比率が前記患者についての潜在的な有害反応のリスクについての指標となっている方法を提供する。
【0033】
「リスクを評価(分析)する」とは、本発明の第1観点の方法は患者の有害反応を経験する確度または可能性が比較的高いのか比較的低いのか(すなわち、リスク増加を有しているのかリスク減少を有しているのか)について評価または分析することを目的とする、ということを意味している。したがって、一般に知られているように、リスクは患者が有害反応を経験するかどうかを必ずしも意味していない。
【0034】
本発明では、患者は、約1:5以下のB:T細胞比率を有している場合、潜在的な有害反応の発現も含めて潜在的な有害反応のリスク増加を有し(リスクが増加し)、その一方で、1:5を上回るB:T細胞比率を有する患者は、有害反応の発現も含めて潜在的な有害反応のリスクを有していない(リスクがない)、または、少なくともリスク減少を有している(リスクが減少している)。
【0035】
したがって、約1:5以下のB:T細胞比率は、有害反応のリスクについての指標となり、その一方で、1:5を上回るB:T細胞比率は、有害反応のリスクについての指標とならない。
【0036】
したがって、「についての指標」という用語は、本発明の第1観点の方法との関連で使用される場合、B:T細胞比率が約1:5以下であれば患者は潜在的な有害反応のリスク増加を有し、または、B:T細胞比率が1:5を上回っていれば患者は潜在的な有害反応のリスク減少を有している、ということを意味する。
【0037】
「有害反応」は、CD19xCD3二重特異性抗体による患者の治療において医薬品の結果として生じる有害で不都合な反応である。有害反応は、「副作用」とも呼ばれる。いくつかの有害反応は、治療を開始、増強、または中断した場合にのみ生じる。発明者らは、CD19xCD3二重特異性抗体による患者の治療において見られた有害反応は治療の開始から約12時間〜120時間後に生じ、可逆性である、ということを観察した。
【0038】
有害反応は、合併症を引き起こす可能性がある。発明者らは、CD19xCD3二重特異性抗体によって治療された患者の神経性反応を観察した。これらの神経性反応は、止めることができない、または、回避することができない限り、CD19xCD3二重特異性抗体治療に対する服薬ノンコンプライアンスにつながる。
【0039】
しかしながら、本明細書に記載のとおり、発明者らは、B:T細胞比率が患者に潜在的な有害な副作用のリスクがあるかどうかについての指標である、ということを見出した。具体的には、約1:5以下のB:T細胞比率は患者に潜在的な副作用のリスクがある、ということの指標であり、約1:5を上回るB:T細胞比率は患者が潜在的な副作用のリスクを有していない、または、少なくともリスク減少を有している、ということの指標である。
【0040】
上述のとおり、本発明の第1観点の方法は、有害反応のリスクを評価(分析)するためのものであり、リスクは、確度または可能性の評価/分析を含む。したがって、「潜在的な」という用語は、有害反応との関連で使用される場合、患者が約1:5以下のB:T細胞比率を有しているとしても該患者は必ずしも有害反応を経験するとは限らない、ということを意味する。
【0041】
同様に、患者は約1:5を上回るB:T細胞比率を有しているとしても、該患者は必ずしも有害反応を経験しないわけではない。したがって、「潜在的な」という用語は、本発明の第1観点の方法は患者が有害反応を経験する可能性があるかどうかについての予測を提供するが、当然自明のことながら、100%安全な予測を提供することはできない、ということを意味している。なぜなら、B:T細胞比率とは別に、性別、年齢、体重、栄養状態、健康状態、前投薬などの個人的要因が、患者が有害反応を経験するかどうかについて影響を有している可能性があるからである。
【0042】
本発明によれば、有害反応は、神経性反応(本明細書においては「CNS反応」または「CNS事象」とも呼ばれ、それゆえ、これらの用語は同等に使用される)によって特徴付けられることが好ましい。前記神経性反応は、錯乱、運動失調、見当識障害、不全失語、失語、言語障害、小脳症状、振戦、失行症、発作、痙攣大発作、麻痺、および平衡障害からなる群より選択される1つ以上の反応であることが好ましい。
【0043】
有害反応の程度は、例えば、NCI有害事象共通用語規準(CTCAE)v3.0(出版日:2003年12月12日)に従ってグレードで測定することができる。Gradeは、有害反応の重症度を意味する。CTCAEv3.0は、グレード1から5を、各有害反応の重症度の独自の臨床記述で記載している。
Grade1:軽度の有害反応
Grade2:中等度の有害反応
Grade3:高度の有害反応
Grade4:生命を脅かすまたは活動不能とする有害反応
Grade5:患者の死亡
「患者」は、CD19xCD3二重特異性抗体によって治療される予定の、または治療されている人間である。本発明によれば、患者は、悪性CD19陽性リンパ球(特にB細胞)を有していると疑われる/推定される、または、既に有している。後者の場合、患者は、このような細胞を有していると既に診断されている。悪性CD19陽性リンパ球(特にB細胞)は、白血病、および/または、リンパ腫を発症する、および/または、患っている患者に存在している。したがって、本発明によると、患者は悪性CD19陽性リンパ球の治療を必要としている。CD19xCD3二重特異性抗体によって治療される予定の、または、治療されている患者は、本明細書に記載のような本発明の第1観点の方法に従って診断される(されている)ことが好ましい。
【0044】
「によって仲介される」は、本発明の第1観点の方法に関連して使用される場合は、患者が経験するかもしれないししないかもしれない有害反応がCD19xCD3二重特異性抗体の投与によって引き起こされる、ということを意味している。言い換えれば、CD19xCD3抗体は、患者に潜在的な有害反応を引き起こす可能性のある原因因子である。
【0045】
投与は、ボーラス投与または持続的投与の形態でもよいが、持続的投与が好ましい。
【0046】
本発明では、「サンプル」という用語は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドまたはその部分を含むヒト患者から得た生体サンプルを意味する。生体サンプルは、体液(血液、血清、血漿、尿、唾液、滑液および脊髄液など)および悪性CD19陽性リンパ球に対して見出された組織起源を含む。患者から組織生検および体液を得るための方法は、当分野において周知である。一般的に、抹消血単核細胞(PBMC)、特にB細胞とT細胞とを含む生体サンプルがソースとして好ましい。
【0047】
抹消血単核細胞(PBMC)、特にB細胞とT細胞とを含むサンプルを、ヒト患者の抹消血から採取することが好ましい。
【0048】
他の好ましいサンプルは、全血、血清、血漿または滑液であるが、血漿または血清が最も好ましい。しかしながら、ヒト患者の抹消血からのサンプルは特に好ましい。
【0049】
「B:T細胞比率」とは、本明細書中で使用される場合は、B細胞の数とT細胞の数との比率を指す。この比率は、ヒト患者から採取されたサンプルで測定されることが好ましい。サンプルは、ヒト患者の抹消血から採取されることが好ましい。例えば、抹消血サンプル中のB細胞またはT細胞の数は、当分野で通常採用されるどのような手段によって測定されてもよく、例えば、FACS分析によって測定されてもよい。
【0050】
B:T細胞比率は、約1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:20、1:100、1:200、1:400、1:500、1:1000、1:2000、1:3000、1:4000、1:5000、またはより低いB:T細胞比率を含めて約1:5以下であることが好ましい。ただし、1:9、1:10、1:50、1:100、1:500、1:1000であることが好ましく、1:9であることが特に好ましい。
【0051】
「B:T細胞比率を測定する」ことは、
(a)患者のサンプル中、好ましくは患者の抹消血サンプル中のB細胞の総数を測定する工程と、
(b)患者のサンプル中、好ましくは患者の抹消血サンプル中のT細胞の総数を測定する工程と、
(c)工程(a)のB細胞数と工程(b)のT細胞数との比率を計算してB:T細胞比率を取得する工程とを含む。
【0052】
なお、低いB:T細胞比率を高いT:B比率として捉えることも、またその逆も可能である。したがって、その場合は、低いB:T細胞比率について本明細書で提供される比率を逆にする必要がある。
【0053】
これに対し、約1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、またはより高いB:T細胞比率も含めて約1:5(好ましくは1:9)を上回るB:T細胞比率を示す患者は、CD19xCD3二重特異性抗体の投与時に潜在的な有害反応に苦しむリスクが減少している。
【0054】
したがって、本発明は、ヒト患者に対するCD19xCD3二重特異性抗体の投与により仲介される、該患者についての潜在的な有害反応のリスクの評価(分析)のための方法であって、該患者のB細胞のT細胞に対する比率を該患者からのサンプルで測定する工程を含み、約1:5(好ましくは1:9)を上回る比率が該患者についての潜在的な有害反応のリスク減少の指標となっている方法も想定している。
【0055】
発明者らは、約1:5以下のB:T細胞比率を有する患者は潜在的な有害反応のリスクが増加している、ということを観察したので、CD19xCD3二重特異性抗体によるこれら患者の治療を可能にするコンセプトを開発した。このことを考えると、用量を増量できるようになる前に数日間低用量の抗体を投与することによってこのような高リスク患者のT細胞を前適応または部分的に活性化させておく必要がある、ということが明らかになった。したがって、時間単位の投与量を著しく下げることで高リスク患者における該抗体の許容度が潜在的に上がる、ということが分かった。
【0056】
基本的に、発明者らは、CD19xCD3二重特異性抗体による治療以前に患者をCD19xCD3二重特異性抗体に「適応させる」ことは不都合な有害反応(特に、不都合な神経性反応)を回避するために有用である、ということを見出した(例6および例7参照)。
【0057】
したがって、本発明は、第2観点において、約1:5以下のB:T細胞比率を有するヒト患者にCD19xCD3二重特異性抗体を投与するための方法(投与計画)であって、
(a)第1用量の前記抗体を第1期間に投与する工程と、続いて、
(b)第2用量の前記抗体を第2期間に投与する工程とを含み、
前記第2用量は、前記第1用量を上回る方法に関する。
【0058】
本発明に関しては、「方法」という用語は、本発明の方法において使用される「投与計画」を含むものとする。
【0059】
本発明に関しては、「CD19xCD3二重特異性抗体の投与」または「CD19xCD3二重特異性抗体を投与すること」、または、その他の文法形式は、CD19xCD3抗体が薬剤的に許容可能な仲介物を任意に含む医薬組成物の形態である、ということを意味している。したがって、CD19xCD3二重特異性抗体を含む医薬組成物がヒト患者に投与されるものとする。
【0060】
「投与」という用語は、その全ての文法形式において、(医薬組成物の形態の)CD19xCD3二重特異性抗体を単独の治療薬として、または、別の治療薬と組み合わせて投与することを意味している。
【0061】
したがって、本発明の医薬組成物は、併用療法アプローチにおいて、すなわち、他の薬剤または薬物、例えば、患者の悪性CD19陽性リンパ球を治療するための他の薬剤、および/または、本発明の方法に関して有用であろう他の治療薬との同時投与において採用される、ということが想定される。
【0062】
例えば、本発明の方法は、B系統急性リンパ芽球性白血病または侵攻性NHLの治療のために実施する場合、CNSから標的B細胞を除去するための髄腔内化学療法に組み合わせることができることが有利である。例えば、本明細書に記載の方法に従ってCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与の前に髄腔内化学療法を行うことができるであろう。
【0063】
本明細書における医薬組成物の投与は、静脈内投与であることが好ましい。これは、本発明の方法において工程(a)における投与の経路、および/または、工程(b)における投与の経路が静脈内であることを意味する。ボーラス注射として、または、連続的(持続的)に投与されてもよいが、連続的に投与することが好ましい。
【0064】
CD19xCD3二重特異性抗体の(例えば、医薬組成物の形態での)投与は、ボーラス注射であってもよいし、または、連続的に、または本明細書においても使用されるように持続的に行われてもよいが、連続的または持続的に行うことが好ましい。連続的な投与は、実質的に中断のない投与を指す。「実質的に中断が無い」とは、通常はフローまたは空間的広がりの中断を伴う連続的な投与を含む。
【0065】
いくつかの実施形態においては、前記第1用量は、治療効果の無い、すなわち、有効量以下の用量である。厳密に決められてはいないが、本発明については、5μg/m/d以下の用量は有効量以下とされる。
【0066】
本発明の好ましい実施形態では、第2用量は治療効果がある。
【0067】
「治療効果のある量」または「治療効果がある」とは、投与されたものに対して治療効果を生じるCD19xCD3二重特異性抗体の用量を意味する。
【0068】
正確な用量は、治療の目的に応じて決まり、周知の技術を用いる当業者によって確定可能になるであろう。当技術分野において周知のように、且つ、上述の通り、年齢、体重、一般的健康、性別、治療食、薬物相互作用および状態の深刻度に対する調整は必要であろうし、当業者によるルーチン実験によって確定可能になるであろう。本発明の各方法または方法工程の治療効果は、治療効果を示すであろう全ての確立された方法およびアプローチによって更に検出可能である。例えば、治療効果は患部組織/臓器を外科的切除または生検し、続いて免疫組織化学的(IHC)または同等の免疫学的方法による分析を行うことで検出される、ということが想定される。あるいは、患者の血清中の腫瘍マーカー(存在していれば)を治療的アプローチが既に有効かどうかを診断するために検出する、ということも想定される。さらに、または、代替として、当業者が治療効果が既にあるかどうかを評価するのを助けるであろう患者の一般的外見(フィットネス、ウェルビーイング、腫瘍により仲介された病気の減少など)を評価することも可能である。本発明の化合物の治療効果を観察できるようにする多くの他の方法は、当業者には周知である。
【0069】
第3観点によれば、本発明は、約1:5以下のB:T細胞比率を有するヒト患者における悪性CD19陽性リンパ球を治療するための方法であって、
(a)第1用量のCD19xCD3二重特異性抗体を第1期間に投与する工程と、続いて、
(b)第2用量の前記抗体を第2期間に投与する工程とを含み、
前記第2用量は、前記第1用量を上回る方法に関する。
【0070】
悪性CD19陽性リンパ球(特に、B細胞)は、白血病、および/または、リンパ腫において見出される。したがって、CD19陽性リンパ球は、好ましい実施形態では、リンパ腫または白血病の細胞である。
【0071】
「悪性」とは、次第に悪化する疾患、特に、リンパ腫または白血病、および、本明細書に記載の疾患に寄与するリンパ球(特に、B細胞)を説明するものである。この用語は、癌、ここではリンパ腫および白血病および本明細書に記載の疾患の説明として最もなじみのあるものである。悪性CD19陽性リンパ球(特に、B細胞)は、その成長が自己限定的なものではなく、周囲組織に侵入することができ、遠方組織へ広がる能力のある場合もある(転移)。悪性とは、本明細書において使用される場合、癌性と同義である。
【0072】
しかしながら、「正常」(非悪性)リンパ球(特に、B細胞)もCD19を発現するので、CD19xCD3二重特異性抗体はこれら正常リンパ球(特に、B細胞)にも結合し、細胞障害性T細胞の動員時に(二重特異性CD19xCD13抗体の第2特異性のせいで)これら正常B細胞を除去するということが考えられる。しかしながら、これら正常B細胞の個体群はCD19xCD3二重特異性抗体が存在していない場合は再構成される、ということが考えられる。Leandroおよび共働者らによって、B細胞は抗CD20抗体によって除去された後にリューマチ性関節炎患者において再構成された、ということが観察された(Arthritis Rheum. 2006 Feb; 54(2): 613-20)。CD20、同様にCD19は、ほぼ全てのB細胞において発現するので、B細胞は二重特異性CD19xCD3抗体による除去時にも再構成されるということが期待できる。
【0073】
リンパ腫は、遅発性または侵攻性のB細胞非ホジキンリンパ腫(BNHL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、または慢性リンパ性白血病(CLL)であることが好ましい。本発明の意味において、「B細胞非ホジキンリンパ腫」または「B細胞由来の非ホジキンリンパ腫」という用語は、遅発性および侵攻性双方のB細胞非ホジキンリンパ腫(BNHL)を含む。「遅発性または侵攻性のB細胞非ホジキンリンパ腫(BNHL)」という用語は、本明細書中で使用される場合は、悪性B細胞由来の腫瘍性疾患を代表している。遅発性BNHLは、低悪性リンパ腫である。侵攻性B−NHLは、高悪性リンパ腫である。B細胞非ホジキンリンパ腫(BNHL)は、濾胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、辺縁帯細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫(SLL/CLL)、および他のB細胞由来の亜型であれば有利である。「B細胞白血病」という用語は、本明細書中で使用される場合は、何らかのB細胞白血病(例えば、慢性リンパ性白血病または急性リンパ性白血病)であれば有利である。詳細は、例えば
1338533958773_0を参照。遅発性非ホジキンB細胞リンパ腫は、以下の例において立証されたようにヒトCD3およびヒトCD19の双方に対する二重特異性単鎖抗体によって治療されてもよいことが好ましい。
【0074】
白血病は、B系統急性リンパ芽球性白血病(ALL)であることが好ましい。
【0075】
第4観点において、本発明は、約1:5以下のB:T細胞比率を有するヒト患者に対するCD19xCD3二重特異性抗体の投与によって仲介される有害反応を改善および/または防止するための方法であって、
(a)第1用量の前記抗体を第1期間に投与する工程と、続いて、
(b)第2用量の前記抗体を第2期間に投与する工程とを含み、
前記第2用量は、前記第1用量を上回る方法に関する。
【0076】
有害反応は、神経性反応であることが好ましく、錯乱、運動失調、見当識障害、不全失語、失語、言語障害、小脳症状、振戦、失行症、発作、痙攣大発作、麻痺、および平衡障害からなる群より選択される1つ以上の反応であることが好ましい(例2および例3も参照)。
【0077】
具体的には、CD19xCD3二重特異性抗体による治療の開始段階において観察される神経性反応は、例えば、錯乱および見当識障害を含む。「錯乱」とは、本明細書中で使用される場合は、見当識、および、多くの場合は記憶の喪失のことを指し、見当識とは、時間、場所、および個人のアイデンティティーによって世間に自身を正しく位置付ける能力のことであり、記憶とは、以前の出来事を正しく思い出す、または、新しい教材を学習する能力のことである。通常、集中や思考の困難な患者は、ぼんやりしてはっきりしていないだけでなく、多くの場合は著しく活力が衰えている。神経性反応を有する患者は、記憶喪失にも苦しんでいる。多くの場合、錯乱は、人、および/または、場所を認識する、または、時刻や日付を理解する能力の喪失につながる。見当識障害の感覚は、錯乱において共通のものであり、意思決定能力が低下する。神経性反応は、ぼんやりした話し方、および/または、単語発見の困難をさらに含む。この障害は、読み書きだけでなく、言語の表現および理解の双方を低下させる可能性がある。尿失禁の他に、眩暈症およびめまいも、幾人かの患者における神経性反応に伴う可能性がある。
【0078】
B細胞依存のリンパ性または白血病性の悪性腫瘍をCD19xCD3二重特異性抗体によって治療する際の神経性反応の発生は、以下の因子によってもさらに影響を受けている可能性がある。
【0079】
1.薬物の存在
CD19xCD3二重特異性抗体は、T細胞細胞障害性を、例えば、B細胞リンパ腫または白血病細胞中に存在する悪性CD19陽性リンパ球に対して再標的化する。これを踏まえて、患者の体内にCD19xCD3二重特異性抗体が存在することが有害反応の原因である、ということが合理的に推定される。さらに、副作用は、CD19xCD3二重特異性抗体が生物学的に活性である体の部分においてのみ観察される。したがって、CD19xCD3二重特異性抗体による治療の際の神経性反応は、患者の脳脊髄液(CSF;溶液)中の前記抗体の存在に依存していると推定される。このことは、CD19xCD3二重特異性抗体およびT細胞は低いB:T細胞比率を有するNHL患者のCSF中にしか発見されていない、という事実によって支持されるであろう。本明細書において説明されるように、この患者個体群は、抗体治療の際に神経性反応を生じるリスク増加を有している。この発見は、高リスクNHLおよびALL患者においてはCD19xCD3二重特異性抗体が血管を分割している血管周囲腔および(脳を含む)CNSに入ることができる、ということ示唆しているかもしれない。その後、これらの場所において、CD19xCD3二重特異性抗体がT細胞と結合して局所B細胞(良性または悪性)を標的化するかもしれず、これにより、局所サイトカイン放出につながる可能性があり、神経性反応を引き起こすのであろう。
【0080】
2.薬用量
さらに、神経性反応は、CD19xCD3二重特異性抗体の用量に応じていると思われる。例えば、神経性反応は、高リスク群の患者においては、体表面積当り5μg/mのCD19xCD3二重特異性抗体の持続投与の際には観察されていないが、体表面積当り15μg/m以上のCD19xCD3二重特異性抗体で観察された。このことから、本明細書において言及したように、5μg/d/m未満の用量は、治療量以下とみなされる。薬用量の影響は、添付の例に示すデータから明らかである。この観察は、低いB:T細胞比率を有する高リスク患者における神経性反応の用量依存性を示唆するものであろう。
【0081】
3.標的細胞およびエフェクター細胞の存在
上記のとおり、CD19xCD3二重特異性抗体治療の際の神経性反応は、PVS/CNSにおける、i)標的細胞、すなわち、CD19−抗原担持B細胞、および、ii)エフェクター細胞、すなわち、CD3抗原を担持する細胞障害性活性T細胞の存在に依存していると推定される。
【0082】
この点から見て、PVS/CNSから例えば標的B細胞が除去されれば神経性反応が回避されるはずだ、と仮定することは興味深い。実際、これは、まさしく、B系統急性リンパ芽球性白血病(ALL)患者をCD19xCD3二重特異性抗体によって治療中である上記フェーズII研究において観察されたことである。
【0083】
ALLでは、CNSにおける白血病性病変の発生率が一般的に高い。したがって、本明細書に示す臨床フェーズII研究に登録した各ALL患者は、中枢神経系再発を防止するために、メトトレキセート静注、および/または、髄腔内化学療法を含む標準的なALL治療法を過去に受けている。これら患者の幾人かは、神経軸索の照射を更に受けた。その後、ALL患者は、強化療法を受けた、すなわち、患者らは、15μg/d/mのCD19xCD3二重特異性抗体の持続投与の4週間治療サイクルを数回受けた。CD19xCD3二重特異性抗体によって治療されたこれまでに登録された17人のALL患者のうち1人しか神経性反応を発症しなかった。この患者は、1:5未満のB:T細胞比率を有する高リスク群に属する11人の患者のうちの1人であった。1:5を上回るB:T細胞比率を有する低リスク群の6人の患者は誰も神経性反応を示さなかった。したがって、Bリンパ球性標的細胞が脳を含むPVSおよびCNSから除去されていたという点で前記の(発症前)中枢神経系(CNS)治療はALL患者における神経性反応のリスクを低減した、と仮定される。しかしながら、これら組織中にB標的細胞が無い場合、細胞障害性T細胞の完全な活性化は無い。したがって、前記患者個体群において比較的低頻度の神経性反応が観察されたのであろう。
【0084】
したがって、上記因子の1つ、上述の場合ではPVS/CNS中の標的B細胞の存在、の欠落は、神経性反応の防止に役立つ可能性がある。しかしながら、例えば、髄腔内化学療法は、NHL治療における治療の選択肢ではない。例えば、髄腔内化学療法は、遅発性NHL治療法においては効果がなく、侵攻性NHLに対する治療オプションになり得るかどうか未だ知られていない。さらに、髄腔内化学療法は、ALL患者にとっては中毒性が高く、それゆえ、相当な健康上のリスクに関連している。
【0085】
上記を鑑みて、治療効果を失うことなく上記因子のいずれか1つを除去することは簡単な課題ではない。なぜなら、例えば、NHLのPVS/CNS中のB細胞の存在は簡単に回避できないからである。さらに、高用量のステロイドの事前投与または同時投与を含む他の措置は、高リスク患者における神経性反応を防止できない、ということも発見された。
【0086】
しかしながら、本発明の方法/投与計画を適用することにより、このような有害反応のリスクが増加した患者について、これら患者が約1:5以下のB:T細胞比率を有しているならば、有害反応を改善、および/または、防止することができる。本発明は、CD19xCD3二重特異性抗体による治療に影響を及ぼす可能性のある上記因子とは関係なく投与計画(方法)を提供することも想定している。
【0087】
したがって、好ましい観点の本発明は、ヒト患者にCD19xCD3二重特異性抗体を投与することにより仲介される、前記患者にとっての潜在的な有害反応のリスクを評価(分析)するための方法であって、前記患者からのサンプルにおいて決まるB細胞のT細胞に対する比率を測定する工程を含み、約1:5以下の比率が、前記患者にとっての潜在的な有害反応のリスクの指標となり、前記患者には、
(i)悪性CD19陽性リンパ球を治療するため、および/または、
(ii)CD19xCD3二重特異性抗体の投与により仲介される有害反応を改善および/または防止するために、
(a)第1用量の前記抗体を第1期間に投与し、続いて、
(b)第2用量の前記抗体を第2期間に投与し、
第2用量は、第1用量を上回る方法に関する。
【0088】
この好ましい観点においては、本明細書において以下で説明されるように、第3用量の前記抗体を第3期間に患者に投与することが好ましい。したがって、3段階方法(用法)に関して本明細書に記載の実施形態および観点は、この好ましい観点に適用可能である。
【0089】
本発明の方法の一観点では、前記第2期間は、前記第1期間を上回る。「上回る」という用語は、第2期間が第1期間よりも少なくとも1日長いということを意味する。
【0090】
本発明の各方法(投与計画)は、例えば、1、2、3、4、5、6回またはそれ以上の回数、および、いずれにしても、悪性CD19陽性リンパ球を改善および/または治療している患者にとって有用な効果のある頻度で繰り返されてもよく、これにより、リンパ腫または白血病が治療される。本発明の教示によると、当業者は、本発明の投与計画を適用して患者をCD19xCD3二重特異性抗体による更なる治療に事前に「適応」させる(すなわち、比較的高い容量を投与する前に、患者を「適応」させるために低い用量のCD19xCD3二重特異性抗体を投与する)必要があるかどうかを、患者のB:T細胞比率の比率に基づいて判断できる。
【0091】
本明細書における用量または日数範囲は、1、2、3、4または5の増加量によって表されているものとする。しかしながら、これらの範囲は、1を上回る増加量の場合は、比較的小さな増加量、例えば、1の増加量によって例示される増加量(10から30は、例えば、10、11、12、13、14など30まで)、または、さらに小さな増加量、例えば、小数点以下の値も含む。
【0092】
本発明の別な観点では、前記第1期間は、少なくとも3日間であり、これにより、例えば、8、9、10、11、12、13日または14日というより長い期間も除外されない、ということが想定される。「より長い」は、ここでは、最小時間単位として全(1)日に限らず、すなわち、1/2日、または、十分に時間も考えられる。しかしながら、最小時間単位は丸一日であることが好ましい。
【0093】
したがって、前記第1期間は、3日を越える。前記第1期間は3日〜10日の間であることがより好ましく、7日が特に好ましい、ということが想定される。
【0094】
本明細書中で使用される場合、「X〜Y(X to Y)」と定義される時間間隔は、「X〜Yの間(between X and Y)」と定義される時間間隔と同じである。両時間間隔は、具体的には、上限と下限とを含む。このことは、例えば、時間間隔「3日〜10日」または「3日〜10日」の間は、1、2、3、4、5、6、7日および/または8日の期間を含む、ということを意味する。
【0095】
本明細書において言及するように、発明者らは、約1:5以下のB:T細胞比率を有するヒト患者を第1期間中にCD19xCD3二重特異性抗体による治療に「適応」させることで、第2期間に増加した第2容量の抗体でヒト患者を治療することができ、これにより、有害反応(特に、神経性反応)をよりよくコントロールすることができる、すなわち、回避、または、少なくとも、CTCAEにおける許容可能なグレード内に収めることができる、ということを観察した。
【0096】
しかしながら、この改善を達成するためには、約1:5以下のB:T細胞比率を有するヒト患者を、第1期間に第1用量のCD19xCD3二重特異性抗体を投与することにより該抗体に「適応」させる必要がある(ただし、第1用量は、続く(第2)用量よりも少ない)。投与はボーラス注射でも持続投与でもよいが、持続投与が好ましい。
【0097】
第1期間の継続期間同様に、第2期間の継続期間は、ヒト患者の年齢、性別、体重などに応じて可変であってもよい。
【0098】
したがって、本発明の別な観点では、前記第2期間は、少なくとも18日間であり、これにより、例えば19、20、25、30、35、40、45、49、50、55、60、65、60、65、70、75、80、81、82、83、84、85、86、87、88日または90日といったより長い期間も排除されない、ということが想定される。「より長い」は、この場合は、最小時間単位として、全(1)日に限らず、すなわち、1/2日、または、十分に時間も考えられる。しかしながら、最小の時間単位は、丸一日であることが好ましい。
【0099】
したがって、前記第2期間は、18日を上回る。第2期間は、18日〜81日の間であることがより好ましく、21日または49日が特に好ましいと想定される。
【0100】
本明細書で使用される場合、「X〜Y」として定義される時間間隔は、「X〜Yの間」として定義される時間間隔と同じである。両時間間隔は、具体的には、上限と下限とを含む。このことは、例えば、時間間隔「18日〜81日」または「18日〜81日」の間は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、61、62、63日、および/または、64日の期間を含むことを意味している。
【0101】
本発明の方法/投与計画のより好ましい実施形態において、前記第1期間は、3日〜10日の間であり、第2期間は、18日〜81日の間である。
【0102】
よりいっそう好ましい実施形態においては、前記第1期間は、7日であり、第2期間は、21日または49日である。
【0103】
本明細書で言及する臨床治験において、NHLの治療における5μg/m/dの用量は腫瘍の縮小にコンピュータトモグラフィーにおいて視覚化できるほど影響を及ぼした、ということが観察された。また、ALLの治療における15μg/m/dの用量は微小残存疾患となり、MRDを排除することさえできる、ということも観察された。
【0104】
微小残存疾患(MRD)は、治療中、または、患者が寛解状態である(疾患の症状またはサインがない)治療後に、患者に残る少数の白血病性/リンパ腫の細胞に与えられた名称である。10年前まで、癌の評価/検出に使用されたテストのいずれもMRDを検出するのに十分な感度ではなかった。しかしながら、現在は、DNA、RNAまたはタンパク質に基づいた非常に感度のよい分子生物テストが利用可能であり、これらテストは、組織サンプル中の微小レベルの癌細胞、時には、100万の正常細胞中の1つの癌細胞ほどの低いレベルを測定することができる。
【0105】
癌治療において、特に、白血病では、MRDテストは、いくつかの重要な役割、すなわち、治療が癌を絶滅させたかどうか、または、痕跡が残っているかどうかを決定すること、異なる治療の効果を比較すること、患者の寛解状態および白血病または癌の再発を監視すること、および、これらの必要性に最適な治療を選択すること(治療の個別化)を含んでいる。
【0106】
したがって、本発明の方法/投与計画の更なる観点では、第1用量は、1μg/m/d〜15μg/m/dの間、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15μg/m/dである。5μg/m/dまたは15μg/m/dの用量が特に好ましい。
【0107】
本明細書中で使用される場合、「X〜Yの間」として定義される用量間隔は、「X〜Y」として定義される用量間隔と同じである。両用量間隔は、具体的には、上限および下限を含む。このことは、例えば、用量間隔「1〜15の間」または「1〜15」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15μg/m/dの用量を含むことを意味している。
【0108】
「d」は1日を示す。
【0109】
「m」は、平方メートルの患者の体表面(BSA)を示す。「通常の」平均BSAは、一般的に、成人については約1.73m、新生児については約0.25m、2歳児については約0.5m、9歳児については約1.07m、10歳児については約1.14m、12〜13歳児については約1.33m、男性については約1.9m、および、女性については約1.6mである。
【0110】
しかしながら、BSAは、以下の式の1つによってより正確に計算することができる(これらの式の各々は、BSAを計算する際に適用され得る)。
【0111】
Mosteller式(Mosteller, N Engl J Med 1987 Oct 22; 317(17): 1098):
BSA(m)=([身長(cm)×体重(kg)]/3600)1/2または、インチ単位およびポンド単位では
BSA(m)=([身長(in)×体重(lbs)]/3131)1/2
DuBois式(DuBois, Arch Int Med 191617: 863-871):
BSA(m)=0.007184×身長(cm)0.725×体重(kg)0.425
Haycock式(Haycock, The Journal of Pediatrics 1978 93:1: 62-66):
BSA(m)=0.024265×身長(cm)0.3964×体重(kg)0.5378
Gehan式(Gehan, Cancer Chemother Rep 1970 54: 225-35):
BSA(m)=0.0235×身長(cm)0.42246×体重(kg)0.51456
Boyd式(Boyd,University of Minnesota Press, 1935)
BSA(m)=0.0003207×身長(cm)0.3×体重(グラム)(0.7285−(0.0188×log10(グラム)
「μg」という用語は、「μgのCD19xCD3二重特異性抗体製剤」を含む。不正確に折り畳まれるのは前記CD19xCD3二重特異性抗体製剤の多くとも10%であることが好ましい。したがって、好ましい実施形態では、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のCD19xCD3二重特異性抗体が正しく折り畳まれる。抗体製剤は、例えば、溶解防止剤、界面活性剤、増量剤、結着剤、および/または、増量剤などの更なる配合剤を任意で含んでいてもよい、ということも考えられる。このような更なる配合剤の量は、本発明の「用量」および/または、方法(投与計画)に関して使用されているような「μg」に含まれないことが好ましい。
【0112】
例えば、1μg/m/dの用量とは、1μgのCD19xCD3二重特異性抗体が体表面積1平方メートル当り1日に亘って均等または持続的に投与されることを意味する。「1日に亘って持続的に」とは、中断なく恒久的に行える輸液のことを指す。
【0113】
本発明の方法/投与計画の更なる観点では、前記第2用量は、15μg/m/d〜60μg/m/dの間、または、15μg/m/d〜90μg/m/dの間、すなわち、15、20、25、30、35、40、45、50、55μg/m/d〜60μg/m/dの間、または、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80μg/m/d〜90μg/m/dの間である。60μg/m/dまたは90μg/m/dの用量が特に好ましい。したがって、前記第2用量は、治療効果がある。
【0114】
好ましい実施形態では、前記第1用量は5μg/m/d〜15μg/m/dの間であり、前記第2用量は15μg/m/d〜60μg/m/dの間、または、15μg/m/d〜90μg/m/dの間である。
【0115】
本明細書中で使用される場合、「X〜Yの間」として定義される用量間隔は、「X〜Y」として定義される用量間隔と同じである。両用量間隔は、具体的には、上限および下限を含む。このことは、例えば、用量間隔「15〜60の間」または「15〜60」は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59μg/m/d、および/または、60μg/m/dの用量を含むことを意味する。
【0116】
本明細書における範囲は5の増加量で示されているものとする。しかしながら、これらの範囲は、比較的小さな増加量、例えば1によって例示される増加量(10から30は、例えば、10、11、12、13、14など30まで含む)、または、さらに小さな増加量、例えば、小数点以下の値も含む。
【0117】
以下の投与スキームは、CD19xCD3二重特異性抗体を投与するため、悪性CD19陽性リンパ球を治療するため、または、CD19xCD3二重特異性抗体の投与によって仲介される有害反応を改善および/または防止するための方法に含まれないことが好ましい。
【0118】
(i)5μg/mの二重特異性抗体を1日間投与し、その後、1日量として15μg/mを残りの期間(2日目以降)投与する;および/または、
(ii)15μg/mの二重特異性抗体を1日間投与し、その後、1日量として45μg/mを残りの期間(2日目以降)投与する;および/または、
(iii)5μg/mの二重特異性抗体を1日間投与し、その後、15μg/mを1日間投与してから、1日量として45μg/mを残りの期間(3日目以降)投与する;および/または、
(iv)10μg/m〜80μg/m未満の二重特異性抗体を1日間投与し、その後、10μg/m〜80μg/mの用量を(2日目以降)投与する;および/または、
(v)10μg/m〜80μg/m未満の二重特異性抗体を1日間投与し、その後、10μg/m〜80μg/m未満の用量を1日間投与してから、10μg/m〜80μg/m未満の用量を(3日目以降)投与する。
【0119】
本明細書で言及されるように、1:5を上回るB:T細胞比率を有する患者を本発明の投与計画を用いてCD19XCD3二重特異性抗体での治療に適応させることは必ずしも必要ではない。潜在的な有害反応のリスク減少を有するこれらの患者は、少なくとも4週間の間、1日につき体表面積1平方メートル当り5μg〜75μgの一定容量でCD19xCD3二重特異性抗体を投与することにより治療され得る。投与は、持続投与であることが好ましい。
【0120】
本願の方法(投与計画)の他の実施形態では、前記方法は、第1および第2用量を第1および第2期間に投与した後、第3用量の前記抗体を第3期間に投与することをさらに含む。したがって、本発明は、3段階方法(投与計画)を提供する。
【0121】
第3用量は、経静脈投与される。第3用量は、ボーラス注射の形態で、または、持続的に投与されてもよいが、持続的に投与されることが好ましい。
【0122】
本発明の方法の一観点では、前記第3期間は、前記第1および第2期間を上回る。「上回る」という用語は、第3期間が、第1および第2期間よりも少なくとも1日長いことを意味している。
【0123】
第1および第2期間の持続期間と同様に、第3期間の持続期間は、例えば、ヒト患者の年齢、性別、体重などを考慮して可変であってもよい。
【0124】
本発明の3段階投与計画の観点では、前記第1期間は、少なくとも3日間であり、これにより、例えば、8、9、10、11、12、13日または14日というより長い期間も除外されない、ということが想定される。「より長い」は、ここでは、最小時間単位として全(1)日に限らず、すなわち、1/2日、または、十分に時間も考えられる。しかしながら、最小時間単位は丸一日であることが好ましい。
【0125】
したがって、前記第1期間は、3日を越える。前記第1期間は3日と10日との間であることがより好ましく、7日が特に好ましい、ということが想定される。
【0126】
本明細書中で使用される場合、「X〜Y」と定義される時間間隔は、「X〜Yの間」と定義される時間間隔と同じである。両時間間隔は、具体的には、上限と下限とを含む。このことは、例えば、時間間隔「3日〜10日」または「3日〜10日」の間は、1、2、3、4、5、6、7日、および/または8日の期間を含む。
【0127】
本発明の3段階投与計画の観点では、前記第2期間は、少なくとも3日間であり、これにより、例えば、8、9、10、11、12、13日または14日というより長い期間も除外されない、ということが想定される。「より長い」は、ここでは、最小時間単位として全(1)日に限らず、すなわち、1/2日、または、十分に時間も考えられる。しかしながら、最小時間単位は丸一日であることが好ましい。
【0128】
したがって、前記第2期間は、3日を越える。前記第2期間は3日〜10日の間であることがより好ましく、7日が特に好ましい、ということが想定される。
【0129】
本明細書中で使用される場合、「X〜Y」と定義される時間間隔は、「X〜Yの間」と定義される時間間隔と同じである。両時間間隔は、具体的には、上限と下限とを含む。このことは、例えば、時間間隔「3日〜10日」または「3日〜10日」の間は、1、2、3、4、5、6、7日、および/または8日の期間を含む。
【0130】
本発明3段階投与計画の観点では、前記第3期間は、少なくとも8日間であり、これにより、例えば8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70日、および/または、71日といったより長い期間も排除されない、ということが想定される。「より長い」は、この場合は、最小時間単位として、全(1)日に限らず、すなわち、1/2日、または、十分に時間も考えられる。しかしながら、最小の時間単位は、丸一日であることが好ましい。
【0131】
したがって、前記第3期間は、8日を上回る。第3期間は、8日〜78日の間であることがより好ましく、14日または42日が特に好ましいと想定される。
【0132】
本明細書で使用される場合、「X〜Y」として定義される時間間隔は、「X〜Yの間」として定義される時間間隔と同じである。両時間間隔は、具体的には、上限と下限とを含む。このことは、例えば、時間間隔「18日〜78日」または「18日〜78日」の間は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70日、および/または、71日の期間を含むことを意味している。
【0133】
本発明の3段階方法/投与計画のより好ましい実施形態において、前記第1期間は3日〜10日の間であり、前記第2期間は3日〜10日の間であり、前記第3期間は8日〜78日の間である。
【0134】
よりいっそう好ましい実施形態において、前記第1期間は7日であり、第2期間は7日であり、前記第3期間は14日または42日である。
【0135】
本発明の3段階方法/投与計画の一実施形態では、前記第3用量は、前記第1および第2用量を上回る。前記第2および第3用量は、治療効果のあるものであることが好ましい。なお、前記第2用量は、前記第1用量を上回る。
【0136】
したがって、本発明の3段階方法/投与計画の更なる観点では、前記第1用量は、1μg/m/d〜15μg/m/dの間であり、好ましくは5μg/m/d〜15μg/m/dの間、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15μg/m/dである。5μg/m/dまたは10μg/m/dの用量が特に好ましい。
【0137】
本発明の3段階方法/投与計画の更なる観点では、前記第2用量は、1μg/m/d〜15μg/m/dの間であり、好ましくは5μg/m/d〜15μg/m/dの間、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15μg/m/dである。15μg/m/dの用量が特に好ましい。
【0138】
本明細書中で使用される場合、「X〜Yの間」として定義される用量間隔は、「X〜Y」として定義される用量間隔と同じである。両用量間隔は、具体的には、上限および下限を含む。このことは、例えば、用量間隔「1〜15の間」または「1〜15」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15μg/m/dの用量を含むことを意味している。
【0139】
本発明の3段階方法/投与計画の更なる観点では、前記第3用量は、15μg/m/d〜60μg/m/dの間であり、より好ましくは20μg/m/d〜60μg/m/dの間、すなわち、15、20、25、30、35、40、45、50、55μg/m/dおよび60μg/m/dである。60μg/m/dの用量が特に好ましい。あるいは、前記第3用量は、15μg/m/d〜90μg/m/dの間であり、より好ましくは60μg/m/d〜90μg/m/dの間、すなわち、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80μg/m/dおよび90μg/m/dである。
【0140】
本発明の3段階方法/投与計画の好ましい実施形態では、前記第1用量は1μg/m/d〜15μg/m/dの間であり、前記第2用量は1μg/m/d〜15μg/m/dの間であり、前記第3用量は15μg/m/d〜60μg/m/dの間、または、15μg/m/d〜90μg/m/dの間である。
【0141】
前記第1用量は5μg/m/dであり、前記第2用量は15μg/m/dであり、前記第3用量は60μg/m/dであることが特に好ましい。あるいは、前記第3用量は、90μg/m/dでもよい。
【0142】
本明細書中で使用される場合、「X〜Yの間」として定義される用量間隔は、「X〜Y」として定義される用量間隔と同じである。両用量間隔は、具体的には、上限および下限を含む。このことは、例えば、用量間隔「15〜60の間」または「15〜60」は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59μg/m/d、および/または、60μg/m/dの用量を含むことを意味する。同様に、このことは、例えば、用量間隔「15〜90の間」または「15〜90」は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、86、87、88、89μg/m/dまたは90μg/m/dの用量を含むことを意味する。
【0143】
3段階(ステップ)方法/投与計画は本明細書に記載のような有害反応を回避することを助ける、という本発明者らによってなされた観察に鑑みて、本発明は、ヒト患者における悪性CD19陽性リンパ球を治療する方法であって、(a)第1用量の前記抗体を第1期間に投与する工程と、(b)第2用量の前記抗体を第2期間に投与する工程と、続いて、(c)第3用量の前記抗体を第3期間に投与する工程とを含む方法に関する。
【0144】
また、本発明は、ヒト患者における悪性CD19陽性リンパ球を治療するための方法であって、(a)第1用量の前記抗体を第1期間に投与する工程と、(b)第2用量の前記抗体を第2期間に投与する工程と、続いて、(c)第3用量の前記抗体を第3期間に投与する工程とを含む方法に関する。
【0145】
さらに、本発明は、ヒト患者にCD19xCD3二重特異性抗体を投与することにより仲介される有害反応を改善および/または防止するための方法であって、(a)第1用量の前記抗体を第1期間に投与する工程と、(b)第2用量の前記抗体を第2期間に投与する工程と、続いて、(c)第3用量の前記抗体を第3期間に投与する工程とを含む方法に関する。
【0146】
第1、第2、および、第3期間は、本明細書の他の部分にも記載のようなものであることが好ましい。
【0147】
用量に関しては、本明細書の他の部分にも記載のように、第2用量は第1用量を上回り、第3用量は第2用量を上回ることが好ましい。第1用量は5μg/m/dであり、第2用量は15μg/m/dであり、第3用量は60μg/m/dであることがより好ましい。あるいは、第3用量は、90μg/m/dまたは120μg/m/dでもよい。
【0148】
本明細書の上記に記載のように、本発明は、ヒトCD3イプシロン鎖の抗原決定基に結合可能な第1結合ドメインと、ヒトCD19に結合可能な第2結合ドメインとを含むCD19xCD3二重特異性抗体を採用する治療/投与計画の方法に関する。本発明の方法に係る二重特異性分子の例は、国際公開第99/54440号、国際公開第2004/106381号、および国際公開第2008/119565号に詳しく記載されている。これらに開示された全ての具体的なCD19xCD3二重特異性抗体は、その変種、断片、同等物などを含めて本発明の特に好ましいCD19xCD3二重特異性抗体である。
【0149】
本明細書中で使用される場合、「CD19xCD3二重特異性抗体」(CD19xCD3二重特異性単鎖抗体を含む)は、2つの結合ドメインを有する一本鎖ポリペプチドを指す。このような単鎖抗体は、本発明の方法/投与計画に関して好ましいものである。各結合ドメインは、抗体重鎖からの少なくとも1つの可変領域(「VHまたはH領域」)を備え、第1結合ドメインのVH領域は、CD3イプシロン分子と特異的に結合し、第2結合ドメインのVH領域は、CD19と特異的に結合する。2つの結合ドメインは、短ポリペプチドスペーサーによって任意に互いに連結されている。ポリペプチドスペーサーの限定されていない例は、Gly−Gly−Gly−Gly−Ser(G−G−G−G−S)およびその反復である。各結合ドメインは、抗体軽鎖からの1つの可変領域(「VLまたはL領域」)をさらに含んでいてもよく、第1および第2結合ドメインの各々の範囲内におけるVH領域およびVL領域は、例えば、欧州特許第623679号明細書に開示され権利請求されたような種類のポリペプチドリンカーを介して互いに連結されているが、いずれの場合にも、第1結合ドメインのVH領域およびVL領域と第2結合ドメインのVH領域およびVL領域とが共に各第1および第2結合ドメインに特異性結合できるように互いに対になれるように十分に長い。このようなCD19CD3二重特異性単鎖抗体は、国際公開第99/54440号、および、国際公開第2004/106381号に詳細に説明されている。
【0150】
「結合ドメイン」という用語は、本発明では、任意の標的構造/抗原/抗原決定基と特異的に結合/相互作用するポリペプチドのドメインを特徴付けるものである。したがって、結合ドメインは、「抗原−相互作用部位」である。「抗原−相互作用部位」という用語は、本発明によれば、特定の抗原または抗原の特定のグループ、例えば、異なる種属における同一抗原と特異的に相互作用することのできるポリペプチドのモチーフを定義する。上記結合/相互作用は、「特異的認識」を定義するとも理解される。「特異的に認識する」という用語は、本発明では、抗体分子は抗原、例えば、本明細書において定義されるようなヒトCD3抗原の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、特に好ましくは少なくとも4つのアミノ酸と特異的に相互作用、および/または、結合することができる、ということを意味する。このような結合は、「鍵と鍵穴原理」の特異性によって例証されてもよい。したがって、結合ドメインのアミノ酸配列の特異性モチーフと抗原とは、これらの一次、二次、または三次構造の結果として、且つ、前記構造の二次修飾の結果として、互いに結合する。また、抗原−相互作用部位とその特定の抗原との特異性相互作用は、抗原に対する前記部位の単純な結合となってもよい。あるいは、結合ドメイン/抗原−相互作用部位とその特定の抗原との特異性相互作用は、例えば、抗原の配座の変化、抗原のオリゴマー化などの誘発により、信号発生という結果になってもよい。本発明に一致する結合ドメインの好ましい例は、抗体である。結合ドメインは、モノクローナルまたはポリクローナルの抗体でもよいし、またはモノクローナルまたはポリクローナルの抗体に由来するものでもよい。
【0151】
「抗体」という用語は、誘導体または結合特異性を依然として維持しているその機能的な断片を含む。抗体を産生するための技術は、当技術分野において周知であり、例えば、HarlowおよびLane「Antibodies, A Laboratory Manual」, ColdSpring Harbor Laboratory Press, 1988、ならびに、HarlowおよびLane「Using Antibodies: A Laboratory Manual」 ColdSpring Harbor Laboratory Press, 1999に記載されている。「抗体」という用語は、異なるクラス(すなわち、IgA、IgG、IgM、IgDおよびIgE)およびサブクラス(IgG1、IgG2など)の免疫グロブリン(Ig’s)も含む。
【0152】
「抗体」という用語の定義は、とりわけFab断片のような抗体断片だけではなく、キメラ抗体、単鎖抗体、およびヒト化抗体などの形態も含む。抗体断片または誘導体は、F(ab’)2、Fv、scFv断片、または、単一ドメイン抗体、単一可変ドメイン抗体、もしくは他のV領域またはドメインからは独立して抗原または抗原決定基と特異性結合する、VHまたはVLでもよい、可変ドメインを1つだけ備える免疫グロブリン単一可変ドメインを更に含む。例えば、上記で引用したHarlowおよびLane(1988)および(1999)を参照。このような免疫グロブリン単一可変ドメインは、分離された抗体単一可変ドメインポリペプチドだけではなく、抗体単一可変ドメインポリペプチド配列の1つ以上のモノマーを含むより大きなポリペプチドも含む。
【0153】
本明細書中で使用される場合、CD3イプシロンは、T細胞受容体の一部として表される分子を指し、従来技術においてその典型とされるような意味を有している。ヒトにおいて、それは、個別に、または、独立して組み合わされた形態で、全ての知られているCDサブユニット、例えば、CD3イプシロン、CD3デルタ、CD3ガンマ、CD3ゼータ、CD3アルファ、およびCD3ベータを含む。ヒトCD3イプシロンは、ジェンバンク(GenBank)受入番号NM_000733に記載されている。
【0154】
ヒトCD19タンパク質は、ジェンバンク受入番号AAA69966に記載されている。
【0155】
本発明の方法/投与計画に適用される二重特異性抗体は、ドメイン配置VL(CD19)−VH(CD19)−VH(CD3)−VL(CD3)を有していることが好ましい。
【0156】
しかしながら、本発明の方法は他のドメイン配置、例えば、
VH(CD19)−VL(CD19)−VH(CD3)−VL(CD3)、
VL(CD19)−VH(CD19)−VL(CD3)−VH(CD3)、
VH(CD19)−VL(CD19)−VL(CD3)−VH(CD3)、
VL(CD3)−VH(CD3)−VH(CD19)−VL(CD19)、
VH(CD3)−VL(CD3)−VH(CD19)−VL(CD19)、
VL(CD3)−VH(CD3)−VL(CD19)−VH(CD19)、または
VH(CD3)−VL(CD3)−VL(CD19)−VH(CD19)
のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体によって実施できる、ということも想定される。
【0157】
本発明の方法に適用される好ましいCD19xCD3二重特異性抗体は、
(a)配列番号:11(RYTMH)、より好ましくは配列番号:11(GYTFTRYTMH)にCD3CDR−H1として示され、配列番号:12(YINPSRGYTNYNQKFKD)にCD3CDR−H2として示され、配列番号:13(YYDDHYCLDY)にCD3CDR−H3として示されている重鎖の抗CD3CDR、および/または、
(b)配列番号:14(RASSSVSYMN)にCD3CDR−L1として示され、配列番号:15(DTSKVAS)にCD3CDR−L2として示され、配列番号:16(QQWSSNPLT)にCD3CDR−L3として示されている軽鎖の抗CD3CDR、および/または、
(c)配列番号:17(SYWMN)、より好ましくは配列番号:17(GYAFSSYWMN)にCD19CDR−H1として示され、配列番号:18(QIWPGDGDTNYNGKFKG)にCD19CDR−H2として示され、配列番号:19(RETTTVGRYYYAMDY)にCD19CDR−H3として示されている重鎖の抗CD19CDR、および/または、
(d)配列番号:20(KASQSVDYDGDSYLN)にCD19CDR−L1として示され、配列番号:21(DASNLVS)にCD19CDR−L2として示され、配列番号:22(QQSTEDPWT)にCD19CDR−L3として示されている軽鎖の抗CD19CDR
を含む。
【0158】
本発明の方法に適用されるCD19xCD3二重特異性抗体は、重鎖および軽鎖のCD3CDRを含むことがより好ましい。本発明の方法に適用されるCD19xCD3二重特異性抗体は、重鎖および軽鎖のCD3CDRと重鎖および軽鎖のCD19CDRとを含むことがよりいっそう好ましい。
【0159】
本明細書に示すCDRは、Kabat付番システムに従っている。Kabat付番スキームは、一貫した方法で抗体中の残基に付番するために広く採用されている基準である(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest、 1991)。
【0160】
あるいは、本発明の方法に適用されるCD19xCD3二重特異性抗体は、
(a)配列番号:3に示すCD19可変重鎖(ヌクレオチド配列は配列番号:4に示す)、および/または、
(b)配列番号:5に示すCD19可変軽鎖(ヌクレオチド配列は配列番号:6に示す)、および/または、
(c)配列番号:7に示すCD3可変重鎖(ヌクレオチド配列は配列番号:8に示す)、および/または、
(d)配列番号:9に示すCD3可変軽鎖(ヌクレオチド配列は配列番号:10に示す)
を含むことが好ましい。
【0161】
本発明の方法に適用されるCD19xCD3二重特異性抗体は、CD19可変重鎖および軽鎖、および/または、CD3可変重鎖および軽鎖を含むことがより好ましい。本発明の方法に適用されるCD19xCD3二重特異性抗体は、CD19可変重鎖および軽鎖とCD3可変重鎖および軽鎖とを含むことがよりいっそう好ましい。
【0162】
別な代替形態では、前記二重特異性単鎖抗体が、
(a)配列番号:1に記載のアミノ酸配列;
(b)配列番号:2に記載のような核酸配列によってコードされたアミノ酸配列;
(c)(b)の核酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%または99%の一致性を有する核酸配列によってコードされたアミノ酸配列であって、CD3およびCD19に特異性結合する能力のあるアミノ酸配列;および、
(d)(b)のヌクレオチド配列に対する遺伝コードの結果として生成される核酸配列によってコードされたアミノ酸配列であって、CD3およびCD19に特異性結合する能力のある前記アミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むということも好ましい。
【0163】
配列一致性は、アミノ酸配列全体に亘って決定されるものとする。配列アライメントのために、例えば、GapまたはBestFitというプログラムを使用することができ(NeedlemanおよびWunsch J. Mol. Biol. 48 (1970), 443-453; SmithおよびWaterman,Adv. Appl. Math 2 (1981), 482-489)、このプログラムは、GCGソフトウエアパッケージに含まれている(Genetics Computer Group, 575 ScienceDrive, Madison, Wisconsin, USA 53711 (1991)。本明細書に記載のCD19xCD3二重特異性抗体(好ましくはMT103)のアミノ酸配列に対して例えば、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列一致性を有するアミノ酸配列を決定し特定することは、当業者にとっては慣例の方法である。例えば、Crickのゆらぎ仮説によると、アンチコドンの5’塩基は、他の2つの塩基ほど空間的に制限されておらず、それゆえ、非標準的な塩基対を有することができるであろう。言い換えれば、コドントリプレットにおける第3位置は、該第3位置の異なる2つのトリプレットが同じアミノ酸残基をコードしてもよいように変化するかもしれない。この仮説は、当業者には周知である(例えば、http://en.wikipedia.org/wiki/Wobble_Hypothesis; Crick, J Mol Biol 19 (1966): 548-55参照)。さらに、本明細書に記載のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体のヌクレオチドまたはアミノ酸配列に対して例えば70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列一致性を有するこのようなアミノ酸配列の細胞障害性活性度を決定することは、当業者にとっては慣例の手順である。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体、または、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体のアミノ酸配列に対して例えば70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列一致性を有する抗体作成物の細胞障害性活性度は、例えば国際公開第99/54440号に記載のような方法によって決定することができる。
【0164】
前記CD19xCD3二重特異性単鎖抗体は、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有していることが特に好ましい。
【0165】
国際公開第99/54440号に記載のCD19xCD3二重特異性抗体MT103、ならびに、国際公開第2004/106381号および国際公開第2008/119565号に記載のCD19xCD3二重特異性抗体も特に好ましい。
【0166】
さらに、本発明は、
(i)ヒト患者にCD19xCD3二重特異性抗体を投与するため、または、
(ii)ヒト患者の悪性CD19陽性リンパ球を治療するため、または、
(iii)ヒト患者に対するCD19xCD3二重特異性抗体の投与によって仲介される有害反応を改善または防止するため
のCD19xCD3二重特異性抗体であって、その先行する請求項のいずれか1項に記載の投与計画に従って投与される抗体に関する。
【0167】
また、本発明は、
(i)ヒト患者にCD19xCD3二重特異性抗体を投与する、または、
(ii)ヒト患者の悪性CD19陽性リンパ球を治療する、または、
(iii)ヒト患者に対するCD19xCD3二重特異性抗体の投与によって仲介される有害反応を改善または防止する
CD19xCD3二重特異性抗体であって、その先行する請求項のいずれか1項に記載の方法に従って投与される抗体に関する。
【0168】
更なる観点では、本発明は、その先行する請求項のいずれか1項に記載の方法において使用される医薬組成物の製剤のためのCD19xCD3二重特異性抗体の使用に関する。
【0169】
本発明の医薬組成物は、医薬担体を任意に含んでいてもよい。適切な医薬担体の例は、当分野において周知であり、リン酸緩衝生理食塩水溶液、無菌液などを含む。静脈内ビヒクルは、液体および栄養補液、電解質補液(例えば、ブドウ糖リンゲル液をベースとするもの)などを含む。防腐剤および他の添加物は、例えば、抗菌薬、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどとして存在していてもよい。さらに、本発明の医薬組成物は、本明細書の他の部分でも説明したような化学療法剤などの更なる薬剤を含んでいてもよい。
【0170】
更なる観点では、本発明は、本明細書に定義したような第1用量および第2用量を含む(製薬)キットまたは医薬パッケージに関する。
【0171】
他の実施形態では、本発明は、本明細書において定義したような第1用量および第2用量と、3階投与計画/方法に関して定義されるような第3用量とを含む(製薬)キットまたは医薬パッケージに関する。
【0172】
他の観点では、(製薬)キットまたは医薬パッケージは、3段階投与計画/方法に関して本明細書に定義されるような全ての3つの用量、すなわち、第1、第2、第3用量を含む。
【0173】
したがって、前記第1、第2、および第3用量は、まとめて1つの密閉された医薬パッケージまたはキット中にパッケージ化されている。「第1用量」、「第2用量」および「第3用量」は、本明細書においては、任意の期間(第1または第2期間)に使用される各数の1回量を含む。このことは、例えば、本発明の医薬パッケージまたはキットに含まれる「第1用量」または「第2用量」は例えば、別々の7個の1日量を含む、ということを意味する。したがって、パッケージ化された1日量の数は、目的とされる期間を反映している(例えば、前記期間がX日であれば、X個の1日量、期間がY日であればY個の1日量)。これらの実施形態では、(製薬)キットまたは医薬パッケージは、別々の容器に入った複数の1日量が単一のパッケージに入れられているものである。
【0174】
あるいは、目的とした第1用量、および/または、第2用量、および/または、第3用量は、各数の1日量に分けられていないが、全部または一部が1つの単一容器(例えば、輸液バッグ)に含まれており、この単一容器は、第1、および/または、第2期間のいずれかの必要用量を一部(例えば、1日〜3日)または全部(すなわち、第1または第2期間)含む、ということも考えられる。このことは、1つの単一容器が例えば第1期間に使用される「第1用量」のための7個の1日量を含む、ということを意味する。
【0175】
本発明の(製薬)キットまたは医薬パッケージは、各期間に必要とされるような事実上の1日量を(分けて、または、分けずに)含んでいてもよいものとする。あるいは、(製薬)キットまたは医薬パッケージは、本明細書に定義されたような第1および第2期間に必要な数の1日量を(分けて、または、分けずに)、すなわち、「第1用量」、「第2用量」および「第3用量」を1つの単一パッケージに含むように調製されている。このようなパッケージは、(第1および第2期間を含む)患者の1回の完全な治療のために十分なものであることが理想的である。本発明のキットおよびパッケージの一部は、バイアルもしくはボトルに別々に、または、容器もしくはマルチコンテナユニットに組み合わせてパッケージ化されていてもよい。キットの製造は、当業者の周知の標準手順に従っていることが好ましい。
【0176】
さらに、本発明は、以上に記載のような医薬パッケージまたはキット、および、本発明の方法に係るその逐次使用のための説明書に関する。前記医薬パッケージまたはキットは、ヒト患者におけるリンパ腫または白血病に存在する悪性CD19陽性リンパ球を治療するため、または、患者に対するCD19xCD3二重特異性抗体の投与によって仲介される有害反応を改善または防止するために内容物を使用できる、ということを示すラベルまたは印をさらに含んでいてもよい。
【0177】
本発明の医薬パッケージまたはキットは、第1、および/または、第2用量、および/または、第3用量を患者に投与する手段、および/または、治療薬の輸液のために通常使用される緩衝装置、バイアル、テフロン(登録商標)バッグまたは輸液バッグをさらに含む、ということも想定される。したがって、「手段」は、本発明の各用量および輸液の製剤において当業者を助けるシリンジ、皮下針、カニューレ、カテーテル、経静脈投与のための輸液バッグ、静脈内ビヒクル、バイアル、緩衝装置、安定剤、説明書からなる群より選択される1つ以上の品物を含む。
【0178】
本発明の医薬パッケージまたはキットがさらに化学療法剤を含む、ということも想定される。
【0179】
更なる観点では、本発明は、医薬パッケージまたはキットに関するものであり、前記第1、および/または、前記第2用量は、その先行する請求項のいずれか1項に記載の方法に係る投与計画の実施に適して(用意されて)いるように準備されている。
【発明を実施するための形態】
【0180】
<実施例>
以下の実施例は、本発明を説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。実施例は、説明を目的とするものであり、本発明は、請求項のみによって限定される。
【0181】
(実施例1)
CD19特異性BiTE抗体ブリナツモマブによって治療された非ホジキンリンパ腫患者の部分集団における可逆性神経系有害事象についての予測因子の特定
ブリナツモマブは、再発した非ホジキンリンパ腫(NHL)およびB−前駆体急性リンパ性白血病(ALL)を有する患者における反応の高い速度および持続性を単剤として示す二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))クラスのCD19/CD3−二重特異性抗体作成物である。ブリナツモマブは、錯乱、言語障害または小脳症状などの神経系の有害事象(AE)を治療の最初の数日間に発症する患者の部分集団を除いて好ましい安全性プロフィールを有している。これまでのところ、全ての関連のある神経系のAE(48人の患者中11人)は、一過性のものであり、完全に可逆性があり、輸液の停止後3時間〜27時間のうちに続発症をすることなく解消された。いずれの場合にも、頭部磁気共鳴映像法によって病理所見はみられなかった。治療の中断にもかかわらず、神経系のAEのあった4人の患者は、目的のリンパ腫寛解を達成した。輸液の停止後数時間のうちに採取された脳脊髄液(CSF)の分析は、大部分の罹患患者において検出可能なレベルのブリナツモマブを示したが、その一方で、神経系の症状のない1人の患者においては、輸液の間にCSFにおいてブリナツモマブは検出できなかった。また、CSFにおけるアルブミンおよびTリンパ球の上昇したレベルは、血液脳関門(BBB)の障害が可能性のある潜在事象だということを裏付ける。アンジオポイエチン2およびS100βについての患者血清サンプルの分析は、内皮ストレスおよびBBB完全性マーカーのレベルがそれぞれ神経系のAEに相関しているかどうかを調査するために継続されている。39人のNHL患者の後向き分析において、抹消血中のB細胞とT細胞と(B:T)の比率が1:10以下というベースラインが、結果として生じる神経系のAEの唯一の予測因子として特定された。その後、予測値は、8人の更なる患者において前向きに確かめられた。なお、ALL患者は、非常に低いB:T比率にもかかわらず、神経系のAEをめったに発症しなかった。このことは、脳における標的細胞を除去する事前の髄腔内化学療法に関係しているのかもしれない。抹消B細胞の神経保護的効果についての潜在的なメカニズムは調査中である。結論として、我々は、ブリナツモマブ治療の開始後に神経系のAEを発症するリスクのある患者を前向きに特定するための簡単な措置を見出した。緩和措置は、治療の中断を回避するために、これら高リスク患者において現在テストされている。
【0182】

(実施例2)
CD19xCD3二重特異性抗体によって治療される患者における観察の概要(1)
観察の概要(1)
初期CNS事象の共通の特徴
・MT103輸液の開始から12時間〜48時間後に現れる最初の症状:興奮、言語障害、時には振戦、運動失調
・24時間〜72時間後に現れる輸液の停止につながるより深刻な症状:錯乱、見当識障害、運動失調、失語、痙攣
・MT103輸液の停止後、1日〜3日以内に見られるCNS症状の完全な解消;一般的には続発症は無い
・ほとんどのCNS事象は、ポリクローナルT細胞の早期活性化および再分布現象に属する
遅発性のCNS事象の特徴
・小脳症状に偏っていた
・治療中の様々な時点で起こる、多くの場合は、治療の開始時または段階的増加時
・振戦、軽度言語障害、軽度筆記障害;数日続く可能性がある
その他のCNS事象
・他のCNS事象との証明された関連なしで観察された更なる症状:頭痛、発熱、悪心
CNS事象のMT103用量反応相関性
・CNS事象の用量反応相関性は明らかである;カットオフは、5μg/m/d〜15μg/m/dの間の用量レベルである。
【0183】

(実施例3)
CD19xCD3二重特異性抗体によって治療される患者における観察の概要(2)
観察の概要(2)
予測可能と思われるCNS事象
・低いB:T細胞比率(または低いB細胞総数)とのCNS事象の相関性
・CNS事象の発症についての明らかなカットオフと特定される1:10未満のB:T比率
・CNS事象に相関していると思われる他の生化学的または臨床パラメータはない
CNS事象のあった患者の頭部MRIはほとんど病理所見が無い
CSF分析はBBBの開口および神経炎症事象を示唆する
・罹患患者の大部分において見出された検出可能なレベルのMT103および増加したレベルのタンパク質および血清アルブミンは、血液脳関門(BBB)の一時的な破壊を示唆する
・CNS事象の無い一人の患者のCSFにおいてMT103は見出されなかった
・CSF分析は、数人の罹患患者において単球およびTリンパ球の増加した総数は神経炎症プロセスの指標だということも示す
・CNS事象はBBSの段階的な開口(興奮>錯乱>失語、運動失調>痙攣)を反映しているのか
CNS事象の発生率は疾患および/または腫瘍細胞量に相関しているかもしれない
・15μg/m/dで、3/8人のNHL患者(37%)および1/11人のALL「高リスク」患者のうちたった1人の(9%)がCNS事象を発現した
・髄腔内化学療法(および、静注高用量メトトレキセート)を日常的に受けるB−ALL患者は、CNS中の腫瘍細胞量が低減する傾向がある(「オカルト軟髄膜拡張」)

(実施例4)
CD19xCD3二重特異性抗体によって治療される患者におけるCNS事象のまとめ
NHL患者における臨床的に関連するCNS事象のまとめ


【0184】
(実施例5)
臨床治験においてCD19xCD3二重特異性抗体によって治療される患者のCNS事象の用量依存性
継続中のNHL治験におけるCNS事象の用量依存性
低いB:T細胞比率(<1:10)を有することにより定義される「高リスク」患者
用量群に分類するために考えられた初期量


【0185】
§>48人の患者になったのは、個々の患者の追加治療および再開による(結果として「高リスク」に変化)
1回目の治療サイクルの後に境界B:T比率に達した
+段階的に用量増加した患者を含む

(実施例6)
15μg/m/dを7日間、および、60μg/m/dを21日間受けた、潜在的な有害反応のリスク増加を有する患者は、有害反応(神経性反応)を示さなかった。
【0186】
患者108−003
・女性、66歳
・FLグレード2、IVB(FD:2006年9月)
・関連病歴:貧血、血小板減少症、(前処置 2回ゼバリンおよびFLによる骨髄浸潤)gGTおよびAPの上昇、ベンゾジアゼピンの濫用、脊椎椎間板炎および膿瘍を伴う2回目のアウレウス敗血症後の状態
・事前のリンパ腫治療:
−6回R−CHOP14、8回R 2006年9月〜2007年2月
−Rmono 2007年5月
−1回目ゼバリン 2007年11月
−2回目ゼバリン 2008年1月

患者108−003
・初期B:T細胞比率(1:10,5)によれば高リスク(コホート15/60)
・2009年1月5日治療開始(15μg/m/24h)
・発熱、2日間の頭痛-経口パラセタモールおよびノバルジンにより簡単に対処された
・1月12日用量を60μg/m/24hに増加
・再び発熱、頭痛-経口パラセタモールおよびノバルジンにより簡単に対処された
・神経性の事象は無し
・耐容性良好な用量「ステップ」
・骨髄機能の改善があると思われる

(実施例7)
5μg/m/dを7日間、および、60μg/m/dを21日間受けた、潜在的な有害反応のリスク増加を有する患者は、軽度の有害反応(神経性反応)を示した。
【0187】

・MCL、男性、42歳
・B:T 1:12
・治療開始2009年1月19日 5micg/m/d
・第1日:発熱および悪寒、頭痛、他の問題は無し
・ステップ:1月26日:6時間後発熱、強い頭痛
・2009年1月27日:疲労、悪心、嘔吐、内視鏡検査の結果病理所見無し)、最大で170/分の頻度の絶対性不整脈→カリウムおよびジギトキシンの置換後1日以内に解消
・頭部CTスキャンおよびCSFを行った、CT:病理所見無し
・CSF:わずかに上昇したタンパク質55mg/dL、細胞:23細胞/micL、大部分は単核球性細胞であり、いくつかは活性化リンパ球

・2009年1月27日午後:軽度振戦、行動不能、「精神状態減退」、夕方:軽度言語障害(小脳性の疑い)、続く2日間に亘るゆっくりとした改善 2009年1月29日 継続する軽度症状のためにデキサメタゾン投与を決定
・症状の遅い改善、完全な解消は2009年3月31日
・治療のさらなる経過中:ギターを弾くことの困難が再発
・4週間治療後:−37%
・8週間治療後:PR/CRu

(実施例8)
本発明に係る治療計画を受けた、潜在的な有害反応のリスク増加を有する患者
患者108−005
・男性、71歳、FL IIIB
・B:T細胞比率:57:1363(低い、1:23.9)
・最初の診断:1997
・複数の事前治療:12回リツキシマブ(mono)、6回リツキシマブ−ベンダムスチン、6回R−CHOP、自己由来SCT
・ブリナツモマブ開始日:2009年8月17日
・治療期間:8週間
・耐容性良好(SAE無し)
・神経性有害事象無し
・8週間CTスキャン:−65%=リンパ腫の部分寛解

(実施例9)
本発明に係る治療計画を受けた、潜在的な有害反応のリスク増加を有するさらなる患者
患者109−031
・男性、60歳、濾胞性リンパ腫IVAE
・B:T細胞比率0:429(低)
・初回診断:05/09
・事前治療:前段階ビンクリスチン/デコルチンによる、6回R−CHOP
・ブリナツモマブ治療開始:2009年11月30日
・治療期間:8週間
・耐容性良好(複数の段階におけるフラッシュ症状-ステロイドに対する反応)
・神経性有害事象無し
・8週間後リンパ腫−56%(リンパ腫の部分寛解)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD19xCD3二重特異性抗体をヒト患者に投与することによって仲介される、前記患者についての潜在的な有害反応のリスクを評価(分析)する方法であって、
前記患者からのサンプルにおいて決まるB細胞のT細胞に対する比率を測定する工程を含む方法において、
約1:5以下の比率が、前記患者にとっての潜在的な有害反応のリスクについての指標となっている方法。
【請求項2】
約1:5以下のB:T細胞比率を有するヒト患者における悪性CD19陽性リンパ球の治療方法において使用するためのCD19xCD3二重特異性抗体であって、前記方法は、
(a)第1用量のCD19xCD3二重特異性抗体を第1期間に投与する工程と、続いて、
(b)第2用量の前記抗体を第2期間に投与する工程とを含み、
前記第2用量は、前記第1用量を上回る、CD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項3】
約1:5以下のB:T細胞比率を有するヒト患者にCD19xCD3二重特異性抗体を投与することによって仲介される有害反応を改善および/または防止するための方法において使用するためのCD19xCD3二重特異性抗体であって、前記方法は、
(a)第1用量の前記抗体を第1期間に投与する工程と、続いて、
(b)第2用量の前記抗体を第2期間に投与する工程とを含み、
前記第2用量は、前記第1用量を上回る、CD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項4】
前記ヒト患者は、悪性CD19陽性リンパ腫または白血病細胞を有している、または、有していると推定される、請求項2または3に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項5】
工程(a)における投与の経路および/または工程(b)における投与の経路は、静脈内である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項6】
前記有害反応は、神経性反応を特徴とする、請求項3に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項7】
神経性反応は、錯乱、運動失調、見当識障害、不全失語、失語、言語障害、小脳症状、振戦、失行症、発作、痙攣大発作、麻痺、および平衡障害からなる群より選択される少なくとも1つの反応である、請求項6に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項8】
前記第2期間は、前記第1期間を上回る、請求項1〜7のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項9】
前記第1期間は、3日を上回る、請求項1〜8のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項10】
前記第1期間は、3日〜10日の間であり、好ましくは7日である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項11】
前記第2期間は、18日を上回る、請求項1〜10のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項12】
前記第2期間は、18日〜81日の間であり、好ましくは21日または49日である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項13】
前記第1期間は、3日〜10日の間であり、
前記第2期間は、18日〜81日の間である、請求項1〜12のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項14】
前記第1期間は、7日であり、
前記第2期間は、21日または49日である、請求項13に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項15】
前記第1用量は、1μg/m/d〜15μg/m/dの間であり、好ましくは5μg/m/dまたは15μg/m/dである、請求項1〜14のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項16】
前記第2用量は、15μg/m/d〜60μg/m/dの間であり、好ましくは60μg/m/dである、請求項1〜15のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項17】
前記第2用量は、治療効果のある量である、請求項1〜16のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項18】
第1および第2用量を第1および第2期間に投与した後、第3用量の前記抗体を第3期間に投与する工程をさらに含む、請求項2または3に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項19】
前記第3期間は、前記第1および第2期間を上回り、
前記第2用量は、前記第1用量を上回る、請求項18に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項20】
前記第1期間は、3日を上回る、請求項18または20に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項21】
前記第1期間は、3日〜10日の間であり、好ましくは7日である、請求項18〜20のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項22】
前記第2期間は、3日を上回る、請求項18または19に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項23】
前記第2期間は、3日〜10日の間であり、好ましくは7日である、請求項18〜20のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項24】
前記第3期間は、8日を上回る、請求項18または19に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項25】
前記第3期間は、8日〜78日の間であり、好ましくは14日または42日である、請求項18〜20のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項26】
前記第1期間は、3日〜10日の間であり、
前記第2期間は、3日〜10日の間であり、
前記第3期間は、8日〜78日の間である、請求項18〜25のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項27】
前記第1期間は、7日であり、
前記第2期間は、7日であり、
前記第3期間は、14日または42日である、請求項26に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項28】
前記第3用量は、前記第1および第2用量を上回る、請求項18〜27のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項29】
前記第1用量は、1μg/m/d〜15μg/m/dの間であり、好ましくは5μg/m/dである、請求項18〜28のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項30】
前記第2用量は、1μg/m/d〜15μg/m/dの間であり、好ましくは15μg/m/dである、請求項18〜29のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項31】
前記第3用量は、15μg/m/d〜60μg/m/dの間であり、好ましくは60μg/m/dである、請求項18〜30のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項32】
前記第3用量の投与の経路は、静脈内である、請求項18〜31のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項33】
前記第2用量および第3用量は、治療効果のある量である、請求項18から32のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項34】
前記抗体は、二重特異性単鎖抗体である、請求項1〜33のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項35】
前記抗体は、MT103である、請求項1〜34のいずれか1項に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項36】
前記悪性CD19陽性リンパ球は、リンパ腫または白血病細胞である、請求項2または3に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項37】
前記リンパ腫は、遅発性または侵攻性のB細胞非ホジキンリンパ腫(BNHL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、または慢性リンパ性白血病(CLL)である、請求項36に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項38】
前記白血病は、B系統急性リンパ芽球性白血病(ALL)である、請求項36に記載のCD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項39】
(i)ヒト患者における悪性CD19陽性リンパ球を治療する、または、
(ii)ヒト患者に対するCD19xCD3二重特異性抗体の投与により仲介される有害反応を改善または防止する
方法において使用するためのCD19xCD3二重特異性抗体において、
第1用量として5μg/m/d投与され、その後、第2用量として15μg/m/d、続いて、第3用量として60μg/m/d投与される、CD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項40】
(i)ヒト患者にCD19xCD3二重特異性抗体を投与するため、または、
(ii)ヒト患者における悪性CD19陽性リンパ球を治療するため、または、
(iii)ヒト患者に対するCD19xCD3二重特異性抗体の投与により仲介される有害反応を改善または防止するため
のCD19xCD3二重特異性抗体において、
請求項1〜39のいずれか1項において定義されるような方法に従って投与される、CD19xCD3二重特異性抗体。
【請求項41】
請求項1〜40のいずれか1項において定義されるような方法において使用される医薬組成物の調製のためのCD19xCD3二重特異性抗体の使用。
【請求項42】
請求項1〜41のいずれか1項に定義されるような前記第1用量および前記第2用量を含む医薬パッケージまたはキット。
【請求項43】
請求項42に記載の医薬パッケージまたはキットであって、
請求項1〜42のいずれか1項において定義されるような第3用量をさらに含む、医薬パッケージまたはキット。
【請求項44】
請求項42または43に記載の医薬パッケージまたはキットであって、
前記第1および/または前記第2用量を患者に投与するための手段を更に含む、医薬パッケージまたはキット。

【公表番号】特表2013−508439(P2013−508439A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535798(P2012−535798)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066207
【国際公開番号】WO2011/051307
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512069865)マイクロメット アクチェンゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】MICROMET AG
【Fターム(参考)】