CD1Dリガンドを使用する免疫化のための組成物および方法
本発明は、追加免疫投与の非存在下および/または複数回のプライミング投与の非存在下で長期免疫記憶を誘発するCD1dリガンドを含む免疫原性組成物に関する。本発明は、さらに、CD1dリガンドならびにインフルエンザウイルス、B群連鎖球菌、および血清型B株髄膜炎菌由来の抗原を含む免疫原性組成物に関する。免疫応答を誘導するために患者に投与されるCD1dリガンドの量は、組成物が投与される患者の年齢および体重によって変化するが、通常は、1〜100μg/kg患者体重で含み、これは、その抗原に対する長期免疫記憶を促進するのに十分である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に引用するすべての文献は、それら全体が参照として援用される。
【0002】
本発明は、ワクチン組成物の分野および、ワクチン組成物を用いる免疫化方法に関する。
【背景技術】
【0003】
病原体に由来する抗原を含むワクチン組成物を最初に投与すると、抗原に対して活性化細胞および記憶細胞の両形態での一次応答を誘導する。それに続くその抗原への曝露(例えばその病原体への曝露)は、免疫記憶細胞の増殖および一次応答よりもより迅速で大きい二次応答を誘導し、それによってその病原体からの保護を与える。
【0004】
免疫記憶細胞は、抗原への一次曝露の後、数カ月間または数年間でも存続するが、通常は、長期免疫記憶の維持を確実にするために抗原の追加免疫用量を与えることが必要である。従ってワクチン接種レジメンは、免疫記憶細胞の最初のバンクを与えるために何回かのプライミング注射、およびその後免疫記憶を維持するために次第に間隔をあけて何回かの追加免疫を含むことが多い。追加免疫注射と共に何回かのプライミング注射および頻度の必要性は、ワクチンおよび受容者の年齢によって変化する。
【0005】
免疫記憶の維持を損なうことなく、プライミング投与の回数および追加免疫投与の頻度と回数を減少させることができることは、有利である。理想的には、追加のプライミング投与および追加免疫投与の必要性を完全に取り除き、単回投与としてワクチンを投与することが好ましい。従って、本発明の目的は、追加免疫投与の非存在下でおよび/または複数のプライミング投与の非存在下で長期免疫記憶を誘導する免疫原性組成物を提供することである。
【0006】
本発明の目的は、さらに、インフルエンザウイルス、B群連鎖球菌、および血清型B株髄膜炎菌に由来する抗原を含む免疫原生組成物を提供することである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ワクチンは、免疫活性を高めるためにアジュバントを含むことが多い。既知のアジュバントの例としては、アルミニウム塩、水中油型乳剤、サポニン、サイトカイン、脂質、およびCpGオリゴヌクレオチドを含む。現在は、アルミニウム塩、3−デ−O−アシル化モノホスホリル脂質A(「3dMPL」)、およびMF59だけがヒト用途として承認されている。
【0008】
アジュバント特性を有することで知られている別の分子は、α−ガラクトシルセラミド(α−GalCerまたはα−GC)(糖脂質、より具体的にはグリコシルセラミド、最初は海綿から単離された)である[1]。α−GalCerは、MHCクラスI様分子のリガンド(CD1d)であり、CD1d分子によってインバリアントナチュラルキラーT(NKT)細胞に提示される。α−GalCerは、最初は、腫瘍細胞に対するNKT細胞応答を誘導するその能力を研究された[2]。インバリアントNKT細胞は、また、B細胞活性化を誘導し、B細胞増殖および抗体産生を増強させることが示されている[3、4]。α−GalCerは、同時投与される種々のタンパク質抗原のためのアジュバントとして作用することが示されている[5]。マラリア抗原を発現する照射されたスポロゾイトまたは組換えウイルスとα−GalCerとの同時投与は、マウスでの抗マラリア防御免疫のレベルを増強させることが示されている[6]。α―GalCerは、また、DNAワクチンをコードするHIV1型gag遺伝子およびenv遺伝子のためのアジュバントとして作用し[7]、鼻腔内に投与されると、インフルエンザウイルHA型に対して液性および細胞性の免疫応答を誘導する[8]ことが示されている。
【0009】
驚くべきことに、ワクチンアジュバントとしてのα−GalCer等のCD1dリガンドの使用は、ワクチンで抗原に対する抗体応答を著しく増強するばかりでなく、それらの抗原に対して特異的なB細胞記憶プールの増大を誘導することが、現在判明している。具体的には、α−GalCerおよび抗原を含む組成物の単回投与からなる投与は、1年後に抗原による攻撃に対する抗体応答を増強する特異的なB細胞記憶プールの増大を促進するのに十分であることが分った。特異的なB細胞記憶プールの増大を促進するこのCD1dリガンドの能力は、ワクチンアジュバントとしてのCD1dリガンドを使用すると、長期免疫記憶を得るために必要なプライミングおよび追加免疫投与回数と頻度を減少させることを示す。
【0010】
また、CD1dリガンドは、B群連鎖球菌、血清型B株髄膜炎菌に由来する抗原および特定のインフルエンザウイルス抗原に驚くほど有効なアジュバントであることが分った。
【0011】
長期免疫記憶を誘導する方法
本発明は、それを必要としている患者においてある抗原に対する長期免疫記憶を誘導する方法を提供し、CD1dリガンドの非存在下で前述の抗原の投与と比較して、前述の患者がその後の前述の抗原への曝露に対する免疫応答を上げることができるように必要な前述の組成物の投与回数および/または頻度を減少するように、以下を含む組成物を前述の患者に投与することを含む:
a)前述の抗原および
b)CD1dリガンド。
【0012】
好ましくは、本発明の方法は、CD1dリガンドの非存在下で前述の抗原の投与と比較して、前述の患者が前述の抗原へのその後の曝露に対する防御免疫応答を上げることができるために必要な前述の組成物の投与回数および/または頻度を減少させる。「防御免疫応答」とは、抗原へのその後の曝露に対して上昇した免疫応答が、患者が抗原と関連する疾患に罹患するのを防ぐのに十分であることを意味する。抗原に対する防御免疫応答を上げるために必要な組成物の投与回数および/または頻度の減少は、当該技術分野で周知の標準方法で測定される。
【0013】
本発明の方法は、その抗原へのその後の曝露に対する防御免疫応答を誘導するのに必要な抗原を含む組成物の投与回数を減少させる。一部の免疫化は、現在、抗原へのその後の曝露に対する防御免疫応答を上げるために3回もしくは4回の抗原のプライミング投与を必要とする。好ましくは、本発明の方法は、抗原に対する防御免疫応答を誘導するのに必要な投与回数を単回プライミング投与まで減少させる。
【0014】
現在の免疫化方法は、また、抗原へのその後の曝露に対する防御免疫応答を維持するために次第に間隔をあける追加免疫免疫化を必要とすることが多い。例えば、幼児期に施される免疫化は、通常は、初回量の投与から数カ月または数年後に施される追加免疫投与を含む。好ましくは、本発明の方法は、抗原へのその後の曝露に対する防御免疫応答を維持するために必要な抗原を含む組成物の追加免疫投与の頻度を減少させる。好ましくは、本発明の方法は、1年を超える、好ましくは2年を超える、好ましくは5年を超える、好ましくは10年を超える間隔で追加免疫投与が投与されることを可能にする。本発明の好ましい実施形態により、追加免疫投与のための必要性は完全に排除され、抗原の単回投与は、抗原へのその後の曝露に対する防御免疫応答を誘導するのに十分である。
【0015】
本発明の一態様によると、患者の抗原に対する免疫応答を誘導する方法は、抗原およびCD1dリガンドが、1年より前にも投与された患者に以下を投与することを含み提供される:
a)前述の抗原および
b)CD1dリガンド。
【0016】
本発明は、また、抗原およびCD1dリガンドが1年より前にも投与された患者において免疫応答を誘導するための薬物の製造で前述の抗原およびCD1dリガンドの使用を提供する。
【0017】
好ましくは、免疫応答は、防御免疫応答である。好ましくは、前述の抗原およびCD1dリガンドは、前述の患者に18カ月以上前に、好ましくは2年以上前に、好ましくは5年以上前に、好ましくは10年以上前に投与された。
【0018】
本発明のこの態様によって患者に投与される抗原およびCD1dリガンドは、混合物として、すなわち、抗原およびCD1dリガンドの両方を含む単一組成物として投与される。あるいは、抗原およびCD1dリガンドは、最初に投与される抗原もしくはCD1dリガンドのいずれかと同じ部位で患者に連続して投与される。抗原およびCD1dリガンドは、また、異なる部位で(例えば異なる四肢に)別々に患者に投与される。1年以上前に患者に投与されたCD1dリガンドおよび抗原の初回投与は、また、CD1dリガンドと抗原との単一組成物として投与されることも可能であり、またはCD1dリガンドと抗原は、連続してもしくは別々に投与される。免疫応答を誘導するために患者に投与されるCD1dリガンドの量は、組成物が投与される患者の年齢および体重によって変化するが、通常は、1〜100μg/kg患者体重で含む。驚くべきことに、低用量のCD1dリガンドは、同時投与された抗原への免疫応答を増強し、その抗原に対する長期免疫記憶を促進するのに十分であることが分った。本発明の組成物に含まれるCD1dリガンドの量は、従って、患者体重あたり50μg/kg未満、20μg/kg未満、10μg/kg未満、5μg/kg未満、4μg/kg未満、または3μg/kg未満であってよい。
【0019】
本発明の別の態様によると、患者の抗原に対する免疫応答を誘導する方法は、前述の患者に以下を投与することを含み提供される:
a)前述の抗原および
b)CD1dリガンド;
ここでは、組成物に含まれるCD1dリガンドの量は、患者体重あたり10μg/kg未満、好ましくは、5μg/kg未満、4μg/kg未満、または3μg/kg未満である。
【0020】
本発明は、また、患者の免疫応答を誘導するための薬物の製造で抗原およびCD1dリガンドの使用を提供する。ここでのCD1dリガンドの量は、患者の体重あたり10μg/kg未満、好ましくは、5μg/kg未満、4μg/kg未満、または3μg/kg未満である。
【0021】
本発明のこの態様により患者に投与される抗原およびCD1dリガンドは、混合物として投与される;同じ部位(最初に投与される抗原またはCD1dリガンドのいずれかと)に患者に連続して投与される;または異なる部位(例えば異なる四肢に)に別々に患者に投与される。
【0022】
CD1dリガンド
本発明の組成物に含まれるCD1dリガンドは、CD1d分子に結合する任意の分子であってよい。CD1d分子は、インバリアントNKT(iNKT)細胞、B細胞、樹状細胞、単核細胞、および従来のT細胞の上に位置し、本発明のCD1dリガンドは、これらの細胞のいずれかに位置するCD1d分子に結合する。本発明のCD1dリガンドのCD1d分子への結合は、iNKT細胞、B細胞、樹状細胞、単核細胞、および/または従来のT細胞を活性化する。好ましくは、CD1dリガンドのCD1d分子への結合は、iNKT細胞を活性化する。CD1d分子に結合する分子の能力は、当該技術分野で周知の標準方法によって決定される。細胞、特にインパリアントNKT細胞を活性化するCD1dリガンドの能力は、CD1dリガンドの非存在下で放出されるサイトカインの濃度と比較して、CD1dリガンドの存在下で細胞から放出されるサイトカインの濃度を測定することで決定される。好ましくは、本発明の組成物に含まれるCD1dリガンドは、CD1dリガンドの非存在下でインバリアントNKT細胞によるサイトカイン分泌の濃度と比較して、インバリアントNKT細胞によるサイトカイン分泌の濃度を上昇させる。本発明のCD1dリガンドは、Th1サイトカインまたはTh2サイトカインの放出を促進する。好ましくは、本発明のCD1dリガンドは、CD1dリガンドの非存在下でインバリアントNKT細胞によって分泌されるIFN−γ、IL−4、およびIL−13のレベルと比較して、インバリアントNKT細胞によって分泌されるIFN−γ、IL−4、およびIL−13のレベルを上昇させる。
【0023】
インバリアントNKT細胞を活性化するCD1dリガンドとして作用する能力を検査される候補分子は、ペプチドおよびサッカライドを含む。好ましくは、本発明のCD1dリガンドは糖脂質である。本発明の組成物に含まれるCD1dリガンドとして作用することが知られている糖脂質抗原の総説は、参照文献9に示される。
【0024】
本発明の組成物での使用に適したCD1dリガンドの例は、α−グリコシルセラミドを含む。本発明の組成物で使用されるα−グリコシルセラミドは、好ましくは、式(I)の化合物である:
【0025】
【化1】
(式中、
Aは、O、CH2、−CH2CH=CH、−CH=CHCH2を表し、
Qは、nが0もしくは1の整数を表す(CH2)nを表し、
R1は、HもしくはOHを表し、
Xは、1から30の整数を表し、
R2は、以下の(a)乃至(e)から成る群から選択される置換基を表す(式中、Yは、5から17の整数を表す)。
(a)−CH2(CH2)YCH3
(b)−CH(OH)(CH2)YCH3
(c)−CH(OH)(CH2)YCH(CH3)2
(d)−CH=CH(CH2)YCH3
(e)−CH(OH)(CH2)YCH(CH3)CH2CH3、
R3は、H、OH、NH2、NHCOCH3、またはモノサッカライドを表し、
R4は、OHまたはモノサッカライドを表し、
R5は、H、OH、またはモノサッカライドを表し、
R6は、H、OH、またはモノサッカライドを表し、および
R7は、H、CH3、CH2OH、または−CH2−モノサッカライドを表す。
【0026】
Xは、好ましくは、7から27の間、より好ましくは、9から24の間、およびより好ましくは13から20の間である。Yは、好ましくは、7から15の間、より好ましくは、9から13の間である。
【0027】
用語「モノサッカライド」は、アルデヒド(アルドース)またはケトン(ケトース)の形で3〜10の炭素原子の鎖を有する糖分子を意味する。本発明での使用に適したモノサッカライドは、自然発生と合成の両モノサッカライドを含む。モノサッカライドの例として、以下が挙げられる:トリオース(グリセロースおよびジヒドロキシアセトン等);テキストロース(エリサノース(erythanose)およびエリトルロース等);ペントース(キシロース、アラビノース、リボース、キシルロース、リブロース等);メチルペントース(6−デオキシヘキソース)(ラムノースおよびフルクトース等);ヘキソース(グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、およびソルボース等);ヘプトース(グルコヘプトース、ガラマンノヘプトーセ(galamannoheptose)、セドヘプツロース、およびマンノヘプツロース等)。好ましいモノサッカライドは、ヘキソースである。
【0028】
モノサッカライド基は、グルコシル結合を形成するために、R3、R4、R5、R6、またはR7の位置で構造に結合してよい。通常は、モノサッカライドは、モノサッカライドのC−1炭素に結合した酸素を介してR3、R4、R5、R6、またはR7の位置に結合し、グリコシド結合を形成する。
【0029】
R3がモノサッカライドの場合、α−D−ガラクトピラノース、β−D−ガラクトピラノース、α−D−グルコピラノース、またはβ−D−グルコピラノースから選択されるのが好ましい。
【0030】
R4がモノサッカライドの場合、β−D−ガラクトフラノースまたはN−アセチル α−D−ガラクトピラノースから選択されるのが好ましい。
【0031】
R5がモノサッカライドの場合、α−D−ガラクトピラノース、β−D−ガラクトピラノース、α−D−グルコピラノース、またはβ−D−グルコピラノースから選択されるのが好ましい。
【0032】
R6がモノサッカライドの場合、α−D−ガラクトピラノース、β−D−ガラクトピラノース、α−D−グルコピラノース、またはβ−D−グルコピラノースから選択されるのが好ましい。
【0033】
R7がモノサッカライドの場合、メチル α−D−ガラクトピラノシド、メチル β−D−ガラクトピラノシド、メチル α−D−グルコピラノシド、またはメチル β−D−グルコピラノシドから選択されるのが好ましい。
【0034】
R5とR6は異なるのが好ましい。R5およびR6の1つはHであるのが好ましい。
【0035】
さらに、本発明の組成物の包含に適したα−グリコシルセラミドの例は、参照文献2に示される。
【0036】
好ましくは、α−グリコシルセラミドは、以下に示す式を有するα−グリコシルセラミド(α−GalCer)、またはその類似体である:
【0037】
【化2】
本発明の組成物に含まれるα−GalCerおよびその類似体は、海綿から直接単離されることが可能であり、または化学的に合成される生成物であってよい。
【0038】
本発明の組成物での使用に適したα−GalCer類似体の例、およびこれらの生成物を合成する方法は、参照文献10および11に示される。好ましいα−GalCer類似体は、式(2S,3S,4R)−1−O−(α−D−ガラクトピラノシル)−2−(N−ヘキサコサノイルアミノ)−l,3,4−オクタデカントリオール)を有するKRN7000である。KRN7000の合成は、参照文献12に記述されている。
【0039】
さらに好ましいα−GalCer類似体は、参照文献13、14、および15に記述されているもの等のα−GalCerのC結合類似体である。好ましいα−GalCerのC結合類似体は、CRONY−101であり、その合成は参照文献13に記述されている。
【0040】
α−GalCerと比較して脂肪酸アシル鎖および/またはスフィンゴシン鎖が切り詰められた切断型α−GalCer類似体も、本発明で使用される。切断型α−GalCer類似体の例は、参照文献16に示されている。好ましいα−GalCerと比較して、好ましいα−GalCerの切断型類似体は、脂肪酸アシル鎖が2つの炭化水素の切断を有し、スフィンゴシン鎖が9つの炭化水素の切断を有する(すなわち、R1=H、X=21、R2=CH(OH)(CH2)4CH3、R3=0H、R4=0H、R5=0H、R6=H、およびR7=CH2OH)「OCH」である。
【0041】
さらに、好ましいα−GalCerと比較して、好ましいα−GalCerの切断型類似体は、脂肪酸アシル鎖が2つの炭化水素の切断を有し、スフィンゴシン鎖が7つもしくは3つの炭化水素の切断を有する(すなわち、R1=H、X=21、R3=OH、R4=OH、R5=OH、R6=H、R7=CH2OH、およびR2がCH(OH)(CH2)6CH3またはCH(OH)(CH2)10CH3のいずれかである)類似体を含む。
【0042】
α−GalCer、KRN7000、およびOCHは、すべてフィトスフィンゴシン含有α−グリコシルセラミドである。しかし、本発明は、また、スフィンゴシン包含KRN7000、OCH、および上述の他のα−グリコシルセラミドの類似体の使用を含む。スフィンゴシン含有KRN7000およびOCHの類似体の合成は、参照文献17に記述されている。
【0043】
本発明の組成物で使用されるCD1dリガンドは、また、参照文献18に記述されるようなスルファチド類似体を含んでよい。α−GalCerの好ましい類似体は、3’−O−スルホ−ガラクトシルセラミドである。
【0044】
α−GalCerは、最初は海綿から単離されたが、α−GalCerの類似の構造からなるCD1dリガンドは、最近、グラム陰性細菌から単離されている。さらに、本発明の組成物に含まれるCD1dリガンドは、従って、細菌に由来する糖脂質であり、特にスフィンゴモナス(Sphingomonas)およびエーリキア(Ehrlichia)の外膜から単離される細菌性グリコシルセラミドである。そのようなグリコシルセラミドの例は、スフィンゴモナスに由来するα−グルクロノシルセラミドおよびα−ガラクツロンシルセラミドを含み、それらの生成は参照文献19に記述されている。さらに、スフィンゴモナスおよびボレリア(Borrelia)に由来するCD1dリガンドの生成は、参照文献18に記述されている。
【0045】
本発明は、また、スフィンゴ糖脂質ファミリーに属さないCD1dリガンドの使用を含む。特に、本発明は、グリセロール糖脂質であるCD1dリガンドの使用を含む。本発明で使用されるグリセロール糖脂質は、ジアシルグリセロール、特にモノガラクトシルジアシルグリセロールを含む。本発明での使用に適したモノガラクトシルジアシルグリセロールは、参照文献20に記述されている。
【0046】
組成物の抗原成分
上述の長期免疫記憶を誘導するための組成物に含まれる抗原は、免疫応答の誘導での用途で周知の任意の抗原であってよい。抗原は、タンパク質抗原またはサッカライド抗原を含んでよい。
【0047】
サッカライド抗原
抗原がサッカライド抗原の場合、抗原は、好ましくは、キャリアタンパク質に抱合される。好ましくは、サッカライド抗原は、細菌サッカライドであり、特に細菌莢膜サッカライドである。
【0048】
本発明の組成物に含まれる細菌莢膜サッカライドの例は、髄膜炎菌(血清群A、B、C、W135、またはY)、肺炎球菌(血清型4、6B、9V,14、18C、19F、または23F型)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Ia、Ib、II、III、IV、V、VI、VII、またはVIII型)、インフルエンザ菌(分類可能株:a、b、c、d、e、またはf型)、緑膿菌、黄色ブドウ球菌等由来の莢膜サッカライドを含む。本発明の組成物に含まれる他のサッカライドは、グルカン(例えば、カンジダ・アルビカンス種もの等の真菌グルカン)、および真菌莢膜サッカライド(例えば、クリプトコッカス・ネオフォルマンスの莢膜由来)を含む。
【0049】
髄膜炎菌血清群A(MenA)莢膜は、(α1→6)結合N−アセチル−D−マンノサミン−1−ホスフェート(C3およびC4の位置に部分的なO−アセチル化を有する)のホモポリマーである。髄膜炎菌血清群B(MenB)莢膜は、(α2→8)結合シアル酸ホモポリマーである。髄膜炎菌(N.meningitidis)血清群C(MenC)莢膜サッカライドは、(α2→9)結合シアル酸(7および/または8の位置に可変のO−アセチル化を有する)のホモポリマーである。髄膜炎菌血清群W135サッカライドは、シアル酸−ガラクトースジサッカライドの単位[→4)−D−Neup5Ac(7/9OAc)−α−(2→6)−D−Gal−α−(1→]から成るポリマーである。血清群W135サッカライドは、シアル酸の7および9の位置に可変のO−アセチル化を有する[21]。髄膜炎菌血清群Yサッカライドは、ジサッカライド繰り返し単位が、ガラクトース[→4)−D−Neup5Ac(7/9OAc)−α−(2→6)−D−Gal−α−(1→]の代わりにグルコースを含むことを除けば、血清群W135サッカライドと類似している。血清群Yサッカライドも、シアル酸の7および9の位置に可変のO−アセチル化を有する。
【0050】
インフルエンザ菌b型(Hib)莢膜サッカライドは、リボース、リビトール、およびホスフェート[‘PRP’,(ポリ−3−β−D−リボース(1,1)−D−リビトール−5−ホスフェート)]のポリマーである。
【0051】
本発明の組成物は、サッカライド抗原コンジュゲートの混合物を含んでよい。好ましくは、本発明の組成物は、髄膜炎菌の複数の血清群からのサッカライド抗原を含む。例えば、組成物は、血清群A+C、A+W135、A+Y、C+W135、C+Y、W135+Y、A+C+W135、A+C+Y、C+W135+Y、A+C+W135+Y等に由来するサッカライドコンジュゲートを含んでよい。好ましい組成物は、血清群CおよびYに由来するサッカライドコンジュゲートを含む。他の好ましい組成物は、血清群C、W135、およびYからのサッカライドコンジュゲートを含む。
【0052】
混合物が、血清群Aおよび少なくとも1つの他の血清群サッカライドに由来する髄膜炎菌(N.meningitidis)性サッカライドを含む場合、MenAサッカライド対任意の他の血清群サッカライドの比(w/w)は、1より大きくてもよい(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、またはそれ以上)。血清群A:C:W135:Y由来のサッカライドの好ましい比(w/w)は以下の通りである:1:1:1:1、1:1:1:2、2:1:1:1、4:2:1:1、8:4:2:1、4:2:1:2、8:4:1:2、4:2:2:1、2:2:1:1、4:4:2:1、2:2:1:2、4:4:1:2、および2:2:2:1。
【0053】
本発明のさらに好ましい組成物は、Hibサッカライドコンジュゲート、および髄膜炎菌の少なくとも1つの血清群に由来する、好ましくは髄膜炎菌の複数の血清群に由来するサッカライドコンジュゲートを含む。例えば、本発明の組成物は、Hibコンジュゲートならびに髄膜炎菌血清群A、C、W135、およびYに由来するコンジュゲートを含んでよい。
【0054】
本発明は、さらに、肺炎球菌サッカライドコンジュゲートから構成される組成物を含む。好ましくは、組成物は、肺炎球菌の複数の血清型に由来するサッカライドコンジュゲートを含む。好ましい組成物は、肺炎球菌血清型4、6B、9V、14、18C、19F、および23F(7価)に由来するサッカライドコンジュゲートを含む。組成物は、さらに、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型4、6B、9V、14、18C、19F、23F、1、および5(9価)に由来するサッカライドコンジュゲートを含むことも可能であり、および肺炎球菌血清型4、6B、9V、14、18C、19F、23F、1、5、3、および7F(11価)に由来するサッカライドコンジュゲートを含んでよい。
【0055】
本発明のさらに好ましい組成物は、肺炎球菌サッカライドコンジュゲートおよびHibおよび/または髄膜炎菌に由来するサッカライドコンジュゲートを含む。好ましくは、本発明の組成物は、肺炎球菌血清型4、6B、9V、14、18C、19F、および23Fに由来するサッカライドコンジュゲート、ならびにHibサッカライドコンジュゲートを含む。好ましくは、本発明の組成物は、肺炎球菌血清型4、6B、9V、14、18C、19F、および23Fに由来するサッカライドコンジュゲート、ならびに髄膜炎菌血清群A、C、W135、およびYに由来するサッカライドコンジュゲートを含んでよい。本発明による組成物は、また、肺炎球菌血清型4、6B、9V、14、18C、19F、および23Fに由来するサッカライドコンジュゲート、Hibサッカライドコンジュゲート、ならびに髄膜炎菌血清群A、C、W135、およびYに由来するサッカライドコンジュゲートを含んでよい。
【0056】
個々のサッカライド抗原コンジュゲートの予防効果は、それらを組み合わせることによって除去されないことが好ましい。しかし実際の免疫原性(例えば、ELISA力価)が減少する可能性はある。
【0057】
莢膜サッカライド抗原の調製
莢膜サッカライド抗原の調製方法は、周知である。例えば、参照文献22は、髄膜炎菌に由来するサッカライド抗原の調製を記述している。インフルエンザ菌に由来するサッカライド抗原の調製は、参照文献86の第14章に記述されている。肺炎球菌に由来するサッカライド抗原およびコンジュゲートの調製は、当該技術分野で記述されている。例えば、Prevenar(プレベナー)(登録商標)は、7価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンである。ストレプトコッカス・アガラクチアに由来するサッカライド抗原の調製のプロセスは、参照文献23および24に詳細に記述されている。
【0058】
サッカライド抗原は、化学的に修飾される。例えば、それらの抗原は、1つまたは複数のヒドロキシル基を封鎖基と置換するように修飾される。これは、加水分解を防ぐためにアセチル基が封鎖基と置換される可能性のある髄膜炎菌性血清群Aにとって特に有用である[25]。そのように修飾されたサッカライドは、依然として、本発明の目的の範囲内の血清群Aサッカライドである。
【0059】
莢膜サッカライドは、オリゴサッカライドの形で使用される。これらは、精製された莢膜ポリサッカライドの断片化によって(例えば加水分解によって)適宜に形成される。これは、通常、所望の大きさの断片に精製することを伴う。
【0060】
ポリサッカライドの断片化は、好ましくは、最終の平均重合度(DP)30未満のオリゴサッカライドをもたらすように実行される。DPは、イオン交換クロマトグラフィーによって、または比色分析によって適宜に測定されることが可能である[26]。
【0061】
加水分解が実行される場合、加水分解物は、通常、短いオリゴサッカライドを取り除くために大きさによって分けられる[27]。これは、限外濾過等(それに続くイオン交換クロマトグラフィー)の種々の方法で達成されることが可能である。約6以下の重合度を有するオリゴサッカライドは、好ましくは、血清群Aのために除去され、約4未満のものは、好ましくは、血清群W135およびYのために除去される。
【0062】
キャリア
好ましくは、キャリアはタンパク質である。本発明の組成物でサッカライド抗原が結合される好ましいキャリアタンパク質は、ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイド等の細菌性毒素である。適切なキャリアタンパク質として、以下が挙げられる:ジフテリア毒素変異体のCRM197[28〜30];ジフテリアトキソイド;髄膜炎菌外膜タンパク質[31];合成ペプチド[32、33];熱ショックタンパク質[34、35];百日咳タンパク質[36、37];サイトカイン[38];リンホカイン[38];ホルモン[38];増殖因子[38];N19タンパク質[40]、インフルエンザ菌(H.influenzae)に由来するタンパク質D[41、42]、肺炎球菌表面タンパク質(PspA)、ニューモリシン[44]、鉄取り込みタンパク質[45]、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)[46]に由来する毒素Aまたは毒素B、ヒト血清アルブミン(好ましくは組換え型)等の種々の病原体に由来する抗原からの複数のヒトCD4+ T細胞エピトープを含む人工タンパク質。
【0063】
キャリアへのサッカライド抗原の結合は、好ましくは、−NH2基(例えば、キャリアタンパク質内のリジン残基の側鎖内、またはアルギニン残基の側鎖内の)を介する。サッカライドが遊離アルデヒド基を有する場合、これは、還元的アミノ化によってコンジュゲートを形成するために、キャリア内のアミンと反応することができる。結合は、また−SH基(例えば、システイン残基の側鎖内の)を介してよい。
【0064】
組成物が複数のサッカライド抗原を含む場合、例えば、キャリア抑制のリスクを減少させるために、複数のキャリアを使用することが可能である。従って、様々なキャリアが様々なサッカライド抗原に対して使用される。例えば、髄膜炎菌血清群Aサッカライドは、CRM197と結合されることもあり、一方血清群Cサッカライドは、破傷風トキソイドと結合されることもある。特定のサッカライド抗原に対して複数のキャリアを使用することも可能である。サッカライドには、2つのグループがある。CRM197と結合されるものもあれば、破傷風トキソイドと結合されるものもある。しかしながら、概してすべてのサッカライドに対して同じキャリアを使用することが好まれる。
【0065】
単一のキャリアタンパク質は、複数のサッカライド抗原を有してよい[47、48]。例えば、単一のキャリアタンパク質は、様々な病原体または同じ病原体の様々な血清群に由来するサッカライドに結合する。この目的を達成するために、様々なサッカライドは結合反応の前に混合される。しかしながら、概して、結合後に混合される様々なサッカライドを有する血清群ごとに別々のコンジュゲートを有することが好まれる。別々のコンジュゲートは、同じキャリアに基づくことが可能である。
【0066】
サッカライド:タンパク質の比率(w/w)を1:5(すなわち過剰タンパク質)から5:1(すなわち過剰サッカライド)の間で有するコンジュゲートが好ましい。1:1.25〜1:2.5の間の比率が好ましいように1:2から5:1の間の比率は、好ましい。
【0067】
コンジュゲートは、遊離キャリアと組み合わせて使用される[49]。所定のキャリアタンパク質が、本発明の組成物に遊離形態および結合形態の両方で存在するとき、非結合形態は、全体として組成物のキャリアタンパク質の全体量の5%を超えないことが好ましく、より好ましくは、2重量%未満で存在する。
【0068】
任意の適切な結合反応は、必要に応じ任意の適切なリンカーとともに使用される。
【0069】
サッカライドは、通常は、結合の前に活性化されるか、または官能化される。活性化は、例えば、CDAP(例えば、1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロホウ酸[50、51等])等のシアノ化試薬を含んでよい。他の適切な手法は、カルボジイミド、ヒドラジド、活性エステル、ノルボラン、p−ニトロ安息香酸、N−ヒドロキシスクシンイミド、S−NHS、EDC、TSTUを使用する(参照文献52の導入部も参照)。
【0070】
リンカー基を介する結合は、任意の既知の方法(例えば参照文献53および54に記述される方法)を用いてなされる。結合の1つの型は、ポリサッカライドの還元的アミノ化を含み、結果として生じるアミノ基をアジピン酸リンカー基の一端と結合させ、次いで、タンパク質をアジピン酸リンカー基の他端と結合させる[55、56]。他のリンカーとして、以下が挙げられる:B−プロピオンアミド[57]、ニトロフェニル−エチルアミン[58]、ハロアシルハライド[59]、グリコシド結合[60]、6−アミノカプロン酸[61]、ADH[62]、C4〜C12部分[63]等。リンカーを用いる代わりに直接結合を用いることも可能である。タンパク質への直接結合は、例えば、参照文献64および65に記述されるように、ポリサッカライドの酸化と、それに続くそのタンパク質による還元的アミノ化を含む。
【0071】
アミノ基のサッカライドへの導入(例えば、末端=0基を−NH2と置換することによる)、それに続くアジピン酸ジエステル(例えば、アジピン酸N−ヒドロキシスクシンイミドジエステル)による誘導体化、およびキャリアタンパク質との反応を含むプロセスが、好ましい。
【0072】
結合の後、遊離サッカライドと結合サッカライドとは分離される。この分離のために多数の適切な方法があり、その方法として疎水性クロマトグラフィー、接線限外濾過法、ダイアフィルトレーション(参照文献66、67等も参照)等が挙げられる。
【0073】
本発明の組成物が脱重合したサッカライドを含む場合、脱重合が結合に先行することが好ましい。
【0074】
本発明の組成物への包含に適した適切なサッカライドコンジュゲート抗原の調製は、参照文献68に記述されている。
【0075】
タンパク質抗原
本発明の組成物に含まれる抗原が、タンパク質抗原である場合、以下から選択される:
−参照文献69〜75に記述されるもののように、髄膜炎菌血清型B株に由来するタンパク質抗原。参照文献73の標準命名法を用いて、NMB2132、NMB1870、およびNMB0992は、適切な抗原の基本として使用される3つの好ましいタンパク質である。
−肺炎球菌に由来するタンパク質抗原(参照文献76に開示されるように、PhtA、PhtD、PhtB、PhtE、SpsA、LytB、LytC、LytA、Sp125、Sp101、Sp128、Sp130、およびSp133に由来する)。
−A型肝炎ウイルス(不活性化ウイル等)に由来する抗原[例えば、参照文献77および78;86の第15章]。
−B型肝炎ウイルスに由来する抗原(例えば、表面抗原および/またはコア抗原)[例えば、参照文献78、79;86の第16章]。
−C型肝炎ウイルスに由来する抗原[例えば80]。使用されるC型肝炎ウイルス抗原は、以下から1つまたは複数を含んでよい:HCV E1および/またはE2タンパク質、E1/E2ヘテロ二量体複合体、コアタンパク質と非構造タンパク質(非構造たんぱく質は、酵素活性を除去するために任意に修飾されるが、免疫原性は保持する)[例えば81、82、および83]、またはこれらの抗原の断片。
−百日咳菌に由来する抗原(百日咳ホロ毒素(PT)および百日咳菌に由来する線維状赤血球凝集素(FHA)、任意にパータクチンおよび/または凝集原2および3の組み合わせ)[例えば参照文献84および85;参照文献86の第21章]。
−ジフテリア抗原(ジフテリアトキソイド等)[例えば参照文献86の第13章]。
−破傷風抗原(破傷風トキソイド等)[例えば参照文献86の第27章]。
−淋病に由来する抗原[例えば69、70、71]。
−肺炎クラミジアに由来する抗原[例えば87、88、89、90、91、92、93]。
−トラコ−マクラミジアに由来する抗原[例えば94]。
−ジンジバリス菌に由来する抗原[例えば95]。
−ポリオ抗原(単数または複数の)[例えば参照文献96、97;86の第24章](IPV等)。
−狂犬病抗原(単数または複数の)[例えば98](凍結乾燥不活性化ウイルス等)[例えば99、RabAvert(登録商標)]。
−麻疹、流行性耳下腺炎、および/または風疹抗原[例えば参照文献86の第19、20、および26章]。
−ピロリ菌に由来する抗原(CagA[100〜103]、VacA[104、105]、NAP[106、107、108]、HopX[例えば109]、HopY[例えば109]、および/またはウレアーゼ等)。
−インフルエンザ抗原(単数または複数の)[例えば参照文献86の第17、18章](赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質)。
−カタル球菌に由来する抗原[例えば110]。
−ストレプトコッカス・アガラクチア(B群連鎖球菌)に由来するタンパク質抗原[例えば111、112]。
−化膿性連鎖球菌(A群連鎖球菌)に由来する抗原[例えば112、113、114]。
−黄色ブドウ球菌に由来する抗原[例えば115]。
−パラミクソウイルスに由来する抗原(単数または複数の)(呼吸器合胞体ウイルス(RSV[116、117])および/またはパラインフルエンザウイルス(PIV3[118]))。
−炭疽菌に由来する抗原[例えば119、120、121]。
−フラビウイルス科(フラビウイルス属)のウイルスに由来する抗原(黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、デングウイルスの4血清型、ダニ媒介性脳炎、ウエストナイルウイルス等に由来)。
−ペスチウイルス抗原(古典的ブタ熱ウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス、および/またはボーダー病ウイルスに由来等)。
−パルボウイルス抗原(パルボウイルスB19由来等)。
−単純ヘルペスウイルス(HSV)抗原。本発明での使用に好ましいHSV抗原は、膜糖タンパク質gDである。HSV2型株に由来するgD(「gD2」抗原)を使用することが好ましい。組成物は、C末端膜アンカー領域が除去された[122]gD(例えば、C末端にアスパラギンおよびグルタミンの付加を有する天然タンパク質のアミノ酸1〜306を含む切断型gD)の形態を使用することが可能である。この形態のタンパク質は、切断されて成熟283アミノ酸タンパク質を産生するシグナルペプチドを含む。アンカーの除去は、タンパク質が可溶型に調製されることを可能にする。
−ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原。本発明での使用に好ましいHPV抗原は、ウイルス様粒子(VLP)として周知の構造を形成するために構築することが可能なL1カプシドタンパク質である。VLPは、酵母細胞(出芽酵母等)で、または昆虫細胞(例えば、ヨトウガ等のスポドプテラ細胞で、またはショウジョウバエ細胞で)でL1の組換え発現によって産生される。酵母細胞のために、プラスミドベクターはL1遺伝子(単数または複数の)を有する。昆虫細胞のために、バキュロウイルスベクターはL1遺伝子(単数または複数の)を有する。より好ましくは、組成物は、HPV−16およびHPV−18の両株に由来するL1 VLPを含む。この二価の組み合わせは、効果が高いことが示されている[123]。HPV−16およびHPV−18の株に加えて、HPV−6およびHPV−11の株に由来するL1 VLPを含むことも可能である。発癌性HPV株の使用も可能である。ワクチンは、HPV株あたり20〜60μg/ml(例えば、約40μg/ml)のL1を含んでよい。
【0076】
組成物は、必要に応じて解毒される(例えば、化学的および/または遺伝学的な方法による百日咳毒素の解毒)これらの抗原から1つまたは複数を含んでよい。
【0077】
混合物にジフテリア抗原が含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原も含むことが好ましい。
【0078】
混合物中の抗原は、通常は、各々少なくとも1μg/mlの濃度で存在する。一般に、任意の所定の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を誘発するのに十分な濃度である。
【0079】
混合物中のタンパク質抗原を使用する代わりに、抗原をコードする核酸が使用される。混合物のタンパク質成分は、従って、タンパク質をコードする核酸(好ましくは、例えばプラスミドの形態のDNA)によって置換される。同様に、本発明の組成物は、抗原を模倣する(例えばミモトープ[124]または抗イディオタイプ抗体)タンパク質を含んでよい。
【0080】
あるいは、または上記の抗原に加えて、組成物は、参照文献125、126、127、128等に開示されるような髄膜炎菌血清型B株に由来する外膜小胞(OMV)調製物を含んでよい。
【0081】
付加的な組成物
さらに本発明の目的は、B群連鎖球菌、髄膜炎菌血清型B株および/またはインフルエンザウイルスからの保護を与えるワクチン組成物を提供することである。CD1dリガンドが、これらの病原体に由来する抗原に対して驚くほど有効なアジュバントであることが判明している。
【0082】
以下に記述する組成物は、B群連鎖球菌、髄膜炎菌血清型B株またはインフルエンザウイルスに由来する抗原を少なくとも1つ含む。これらの組成物は、付加的な抗原を含んでよい。例えば、これらの組成物は、長期免疫記憶の誘導で使用する組成物に包含するために上述のような1つまたは複数のキャリアに結合される1つまたは複数のサッカライド抗原も含んでよい。あるいは、または加えて、これらの組成物は、上述のタンパク質抗原から1つまたは複数のタンパク質抗原を含んでよい。
【0083】
B群連鎖球菌
従って、本発明は以下を含む組成物を提供する:a)CD1dリガンド、およびb)B群連鎖球菌に由来する抗原。.
組成物に包含するB群連鎖球菌に由来する抗原の例は、参照文献111および112に見出せる。このように、組成物は、以下から1つまたは複数を含むタンパク質を含んでよい:(i)参照文献112の連鎖球菌アミノ酸配列(参照文献112の偶数の配列番号2〜10960);(ii)(i)の連鎖球菌アミノ酸配列に少なくと80%の配列同一性を有するアミノ酸配列;(i)の連鎖球菌アミノ酸配列からのエピトープを含むアミノ酸配列。好ましくは、組成物は、参照文献112に記述されるようにGBS1からGBS689のタンパク質から1つまたは複数を含む(参照文献内の表IVを参照)。より好ましくは、組成物はGBS80タンパク質抗原を含む。
【0084】
髄膜炎菌
本発明は、また、以下を含む組成物を提供する:a)CD1dリガント、およびb)髄膜炎菌に由来する抗原。
【0085】
組成物に含まれる髄膜炎菌に由来する抗原は、タンパク質抗原または外膜小胞(OMV)調製物であってよい。組成物に含まれるOMV調製物の例は、髄膜炎菌血清群A、B、C、W135、またはYに由来するOMV調製物を含む。組成物に含まれる髄膜炎菌に由来するタンパク質抗原の例も、上述される。好ましくは、タンパク質抗原は、髄膜炎菌血清型B株に由来し、患者に投与されると、髄膜炎菌血清型B細胞と交差反応する免疫応答を誘発する。髄膜炎菌血清型B細胞と交差反応する免疫応答を誘発する好ましいタンパク質抗原は、「ΔG287nz−953」、「936−741」、および「961c」タンパク質抗原を含む[129]。好ましくは、組成物は、髄膜炎菌に由来する複数の抗原を含む。好ましくは、組成物は、「ΔG287nz−953」、「936−741」、および「961c」の3つのタンパク質抗原のすべてを含む。他の有用なタンパク質抗原は、NMB2132、NMB1870、およびNMB0992に基づく。
【0086】
インフルエンザウイルス
本発明は、また、以下を含む組成物を提供する:a)CD1dリガント、およびb)インフルエンザウイルス抗原。
【0087】
インフルエンザウイルス抗原は、通常は、インフルエンザビリオンから調製されるが、別の方法として、赤血球凝集素等の抗原が組換え宿主細胞で(例えば、バキュロウイルスベクターを用いる昆虫細胞系で)発現され、精製された形で使用される[130、131]。しかしながら、概して、抗原はビリオン由来である。
【0088】
抗原は、生きているウイルスの形態、またはより好ましくは、不活性化ウイルスの形態をとってよい。不活性化ウイルスが使用される場合、ワクチンは、全ビリオン、分割ビリオン、または精製表面抗原(赤血球凝集素を含む、および通常は、ノイラミニダーゼも含む)を含んでよい。インフルエンザ抗原は、また、ビロソームの形態で提示される[132]。
【0089】
インフルエンザウイルスは、減弱されることが可能である。インフルエンザウイルスは、温度感受性にすることが可能である。インフルエンザウイルスは、低温適応にすることが可能である。これらの3つの可能性は、特に生きているウイルスに適用される。
【0090】
ワクチンで使用するためのインフルエンザウイルス株は、季節ごとに変化する。現在の大流行間期では、ワクチンは、概して2つのインフルエンザA型株(H1N1およびH3N2亜型)および1つのインフルエンザB型株を含むワクチン、および三価ワクチンが典型的である。本発明は、また、H2、H5、H7、またはH9型のサブタイプ株(特に、インフルエンザA型ウイルスのサブタイプ株)等のパンデミック株(すなわち、ワクチンの受容者およびヒト母集団が免疫学的にナイーブである株)に由来するウイルスを使用される。パンデミック株に対するインフルエンザワクチンは、一価であってよく、または通常の三価ワクチンを基にしてパンデミック株を追加してもよい。しかしながら、季節およびワクチンに含まれる抗原の性質によって、本発明は、HAサブタイプH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、またはH16型から1つまたは複数に対して保護される。
【0091】
通常、組成物に含まれることが可能な他の株は、抗ウイルス療法に耐性を示す(例えば、オセルタミビル[133]および/またはザナミビルに耐性を示す)株であり、耐性パンデミック株[134]が含まれる。
【0092】
本発明のアジュバントされた組成物は、特に、パンデミック株に対して免疫するのに有用である。パンデミックな発生を引き起こす可能性を与えるインフルエンザ株の特徴は、以下の通りである:(a)現在循環しているヒト株における赤血球凝集素と比較して、それは、新しい赤血球凝集素を含む(すなわち、10年以上の間ヒト集団で明らかでなかったもの(例えばH2型)、または以前にはヒト集団で全く見られなかったもの(一般的に、トリ集団でのみ見つけられていた例えば、H5、H6、またはH9型)、ヒト集団がその株の赤血球凝集素に対して免疫学的にナイーブであるようなもの);(b)それは、ヒト集団で横方向に伝染することができる;(c)それは、ヒトに対して病原体である。H5型赤血球凝集素を有するウイルスは、H5N1亜型株等のパンデミックインフルエンザに対して免疫性を与えるために好まれる。他の可能な株として、H5N3、H9N2、H2N2、H7N1、およびH7N7亜型、ならびにその他可能性のある新たなパンデミック株が挙げられる。
【0093】
本発明の組成物は、インフルエンザA型ウイルスおよび/またはインフルエンザB型ウイルスを含む1つまたは複数(例えば1、2、3、または4以上)のインフルエンザウイルス株に由来する抗原を含んでよい。ワクチンが複数のインフルエンザ株を含む場合、異なる株は、通常、別々に増殖され、ウイルスを収集して、抗原を調製してから、混合される。従って、本発明のプロセスは、複数のインフルエンザ株に由来する抗原を混合するステップを含んでよい。
【0094】
インフルエンザウイルスは、リアソータントな株であり得、かつ逆遺伝学技法によって得られる可能性がある。逆遺伝学技法[例えば135〜139]は、所望のゲノムセグメントを有するインフルエンザウイルスを、プラスミドを使用してin vitroで調製することを可能にする。通常、それは、(a)所望のウイルスRNA分子をコードするDNA分子(例えばpoIIプロモーターから)、および(b)ウイルスタンパク質をコードするDNA分子(例えばpoIIIプロモーターから)を発現させ、細胞での両型のDNAの発現が、完全にインタクトな感染性ビリオンの構築につながるように関与する。好ましくは、DNAは、ウイルスRNAおよびタンパク質のすべてをもたらすが、一部のRNAおよびウイルスタンパク質をもたらすためにヘルパーウイルスを使用することも可能である。各々のウイルスRNAを生成するために別々のプラスミドを使用する、プラスミドに基づく方法が好まれる[140〜142]。これらの方法は、また、ウイルスタンパク質のすべてまたは一部を(例えば、PB1、PB2、PA、およびNPタンパク質だけを)発現させるためにプラスミドの使用(一部の方法では使用される最大12までのプラスミド)を含む。必要とされるプラスミドの数を減少させるために、最近のアプローチ[143]は、同一のプラスミド上で複数のRNAポリメラーゼI転写カセット(ウイルスRNA合成のための)(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのすべてのインフルエンザA型vRNAセグメントをコードする配列)と、別のプラスミドの上でRNAポリメラーセIIプロモーターを有する複数のタンパク質コード領域(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのすべてのインフルエンザA型mRNA転写物をコードする配列)とを組み合わせる。参照文献143の方法の好ましい態様は、以下を含む:(a)単一のプラスミド上で、PB1、PB2、およびPA mRNAをコードする領域;および(b)単一のプラスミド上で、vRNAをコードする8つのすべてのセグメント。単一のテンプレートからウイルスRNAおよび発現可能なmRNAを同時にコードするためにpoIIおよびpoIIIの二重プロモーターを使用することは可能である[144、145]。
【0095】
従って、特にウイルスが卵で増殖されるとき、ウイルスは、A/PR/8/34ウイルスに由来する1つまたは複数のRNAセグメント(通常は、1つのワクチン株からHAおよびNセグメントを有するA/PR/8/34に由来する6セグメント、すなわち6:2のリアソータント)を含んでよい。ウイルスは、また、A/WSN/33ウイルスから、またはワクチン調製のためのリアソータントなウイルスを生成するのに有用である任意の他のウイルス株から1つまたは複数のRNAセグメントを含んでよい。主として、本発明は、ヒト間の伝染が可能である株から保護し、従ってその株のゲノムは、通常、哺乳類(例えばヒト)インフルエンザウイルスに由来した少なくとも1つのRNAセグメントを含む。
【0096】
抗原の源として使用されるウイルスは、卵または細胞培養物のいずれかの上で増殖される。インフルエンザウイルス増殖の現在の標準方法は、卵の内容物(尿膜液)から精製されるウイルスとともに有胚ニワトリ卵を使用する。しかしながら、つい最近では、速さと患者のアレルギーの理由でウイルスは動物細胞培養で増殖されており、この増殖方法が好ましい。
【0097】
細胞基質は、通常、MDCK、CHO、293T、BHK、ベロ、MRC−5、PER.C6、WI−38等の哺乳類細胞系である。インフルエンザウイルスを増殖させるための好ましいノ哺乳類細胞系としては、以下が挙げられる:メイディン・ダービー・イヌ腎臓に由来するMDCK細胞[146〜149];アフリカミドリザル(Cercopithecus aethiops)の腎臓に由来するベロ細胞[150〜152];またはヒト胎児網膜芽細胞に由来するPER.C6細胞[153]。これらの細胞系は、例えば、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)[154]、コーリエル細胞集積[155]、または欧州動物細胞培養収集機関(ECACC)から広く入手可能である。例えば、ATCCは、カタログ番号CCL−81、CCL−81.2、CRL−1586、およびCRL−1587で様々なベロ細胞を供給し、またカタログ番号CCL−34でMDCK細胞を供給している。PER.C6は、ECACCから寄託番号96022940で入手可能である。哺乳類細胞系に代わるあまり好ましくないものとして、ウイルスはトリ細胞系[例えば参照文献156〜158]で増殖されることが可能であり、アヒル(例えばアヒル網膜)またはニワトリ(例えばニワトリ胚線維芽細胞(CEF))等に由来する細胞系が含まれる。
【0098】
ウイルスが哺乳類細胞系で増殖された場合には、組成物は、卵タンパク質(例えば卵白アルブミンおよびオボムコイド)およびニワトリDNAを有利に含まず、それによってアレルゲン性を減少させる。
【0099】
MDCK等の細胞系での増殖に関して、ウイルスは、懸濁液培養[146]または付着培養の細胞上で増殖される。懸濁液培養に適したMDCK細胞系の1つは、MDCK33016(DSM ACC2219として寄託された)である。別の方法として、マイクロキャリア培養が使用される。
【0100】
ウイルスが細胞系で増殖される場合、増殖培養は、好ましくは以下を含まない(すなわち、混入に対する検査を行い、陰性を示すことになる):単純ヘルペスウイスル、呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス3型、SARSコロナウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、レオウイルス、ポリオーマウイルス、ビルナウイルス、サーコウイルス、および/またはパルボウイルス。単純ヘルペスウイルスがないことは、特に好ましい。
【0101】
ウイルスが細胞系で増殖される場合、組成物は、好ましくは、投与量あたり10ng未満(好ましくは1ng未満、より好ましくは100pg未満)の残留宿主細胞DNAを含有する。しかし、微量の宿主細胞DNAは存在する。通常、本発明の組成物から除外することが望ましい宿主細胞DNAは、100塩基対より長いDNAである。
【0102】
残留宿主細胞DNAの測定は、現在、生物製剤にとって所定の規定要件であり、当業者の通常の能力の範囲内である。DNAを測定するために用いられるアッセイ法は、通常は,実証済みアッセイである[159、160]。実証済みアッセイのパフォーマンス特性は、数学的用語および定量化可能な用語で記述されることが可能であり、エラーのその可能性のある源は同定されることになる。アッセイは、通常、正確さ、精度、特異性等の特性に対して検査されることになる。一旦アッセイが校正されて(例えば、周知の宿主細胞DNAの標準量に対して)検査されると、定量的なDNA測定は日常的に実行されることが可能になる。DNA定量化の3つの原則技術は、ササンブロット(またはスロットブロット)[161]等のハイブリダイゼーション法;Threshold(登録商標)システム[162]等のイムノアッセイ法;および定量PCR法[163]が使用されることが可能である。これらの方法は、すべて当業者によく知られているが、各方法の詳細な特性は、問題(例えば、ハイブリダイゼーション用プローブの選択、増幅用プライマーおよび/またはプローブの選択等)の宿主細胞に依存することである。モレキュラーデバイス社(Molecular Devices)製のThreshold(登録商標)システムは、ピコグラムレベルの全DNA用定量アッセイであり、生物医薬品で混入しているDNAのレベルのモニタリングで使用されている[162]。典型的なアッセイは、ビオチン化ssDNA結合タンパク質と、ウレアーゼ結合抗ssDNA抗体と、DNAとの間の反応複合体の非配列特異的形成に関与する。アッセイのすべての成分は、製造業者から入手可能な完全な全DNAアッセイキットに含まれる。様々な商業製造業者は、残留宿主細胞DNAを検出する定量PCRアッセイを提供している(例えば、ラボラトリーサービシス(Laboratory Services)のAppTec(登録商標)、アルセアテクノロジーズ(Althea Technologies)のBioReliance(登録商標)、等)。ヒトウイルス性ワクチンの宿主細胞DNA混入を測定するための化学発光ハイブリダイゼーションアッセイと全DNA Threshold(登録商標)システムとの比較は、参照文献164に見出すことができる。
【0103】
混入しているDNAは、ワクチン調製の間に標準精製方法(例えばクロマトグラフィー等)を用いて除去される。残留宿主細胞DNAの除去は、ヌクレアーゼ処理によって(例えばデオキシリボヌクレアーゼを用いて)増進させることが可能である。宿主細胞DNA混入を減少させる簡便な方法は、参照文献165および166に開示されている。その方法は、まず、デオキシリボヌクレアーゼ(例えばベンゾナーゼ(Benzonase))を用いて、次いでカチオン性界面活性剤(例えばCTAB)を用いる、2段階処理を含む。
【0104】
15μg赤血球凝集素あたり宿主細胞DNAを<10ng(例えば、<1ng、<100pg)含むワクチンは好ましく、同様に0.25ml容量あたり宿主細胞DNAを<10ng(例えば、<1ng、<100pg)含むワクチンが好ましい。50μg赤血球凝集素あたり宿主細胞DNAを<10ng(例えば、<1ng、<100pg)含むワクチンは、より好ましく、同様に0.5ml容量あたり宿主細胞DNAを<10ng(例えば、<1ng、<100pg)含むワクチンが好ましい。
【0105】
インフルエンザウイルス複製を支持する細胞系は、好ましくは、無血清培地および/または無タンパク質培地で増殖される。培地は、本発明と関連して無血清培地(ヒトまたは動物に由来する血清からの添加物が含まれない)と呼ばれる。無タンパク質は、細胞の増殖が生じる培養(タンパク質、増殖因子、他のタンパク質添加物、および非血清タンパク質を除くが、ウイルスの増殖にとって必要であるトリプシンまたは他のタンパク質分解酵素等のタンパク質は任意に含まれる)を意味すると理解される。そのような培養物中で増殖する細胞は、自然にタンパク質をそれ自体に含む。
【0106】
インフルエンザウイルス複製を支持する細胞系は、好ましくは、37℃以下[167](例えば30〜36℃)で増殖される。
【0107】
赤血球凝集素(HA)は、不活性化インフルエンザワクチンの主要な免疫原であり、ワクチンの投与量は、通常は一元放射免疫拡散(SRID)アッセイによって測定されるように、HA濃度を参照して標準化される。ワクチンは、一般的に、株あたり約15μgのHAを含有するが、低用量ワクチンも、例えば小児用として、または大流行の場合に使用される。1/2(例えば株あたり7.5μgのHA)、1/4、および1/6等の分割量は、高用量(例えば3倍または9倍用量[170、171])と同じように、使用されている[168、169]。従って、ワクチンは、インフルエンザ株あたり0.1〜150μgのHA、好ましくは、0.1〜50μg(例えば、0.1〜20μg、0.1〜15μg、0.1〜10μg、0.1〜7.5μg、0.5〜5μg等)のHAを含んでよい。特定用量は、例えば、株あたり約15、約10、約7.5、約5、約3.8、約1.9、約1.5μg等を含む。従って、ワクチンは、インフルエンザ株あたり0.1〜20μgのHA、好ましくは、0.1〜15μg(例えば、0.1〜10μg、0.1〜7.5μg、0.5〜5μg等)のHAを含んでよい。特定用量は、例えば、株あたり約15、約10、約7.5、約5、約3.8、約1.9μg等を含む。これらの低用量は、ワクチンにアジュバントが存在するとき、本発明と同様に最も有用である。
【0108】
本発明で使用されるHAは、ウイルスに見つけられるような自然のHAであり得、または修飾されたものでもよい。例えば、ウイルスを鳥類で発病させることが高い決定因子(例えば超塩基性領域)を除去するためにHAを修飾することが周知であるが、これらの決定因子が、さもなければウイルスが卵内で増殖されるのを阻止することができるからである。
【0109】
不活性化されているが非全細胞のワクチン(例えば、分割ウイルスワクチン、または精製表面抗原ワクチン)は、この抗原内に位置している付加的なT細胞エピトープから利益を得るために、基質タンパク質を含んでよい。従って、赤血球凝集素およびノイラミニダーゼを含む非全細胞ワクチン(特に、分割ワクチン)は、さらに、M1および/またはM2基質タンパク質を含んでよい。基質タンパク質が存在する場合、M2基質タンパク質の検出可能な濃度を含むことは、好ましい。核タンパク質もまた、存在する。
【0110】
医薬組成物の製剤
上述の抗原およびCD1dリガンドは、特に、免疫原性組成物およびワクチンに含まれることに適している。本発明のプロセスは、従って、免疫原性組成物またはワクチンとして抗原およびCD1dリガンドを製剤化するステップを含んでよい。本発明は、このような方法で得られることが可能な組成物またはワクチンを提供する。
【0111】
抗原(単数または複数の)およびCD1dリガンドに加えて、本発明の免疫原性組成物およびワクチンは、通常は、それ自体はその組成物を受ける個体にとって有害な抗体の生成を誘発しない任意のキャリアを含む「薬学的に許容されるキャリア」を含む。適切なキャリアは、通常は、タンパク質、ポリサッカライド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸ポリマー、アミノ酸コポリマー、トレハロース[172]、脂質集合体(油滴またはリポソーム等)、および不活性ウイルス粒子等の大きくて、ゆっくりと代謝される高分子である。そのようなキャリアは、当業者にとって周知である。ワクチンは、また、水、生理食塩水、グリセリン等の希釈液を含有する。さらに、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤等の補助剤が存在する。薬学的に許容される賦形剤についての徹底的な考察は、参照文献173で入手可能である。
【0112】
ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、免疫学的に有効量の抗原ならびに必要に応じて上記任意の他の成分を含む。「免疫学的に有効量」は、単回投与で、または一連の投与の一部としてのいずれかで個体に投与されるその量が治療または予防に有効であることを意味する。この量は、治療される個体の健康および身体状態、年齢、治療される個体の分類群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類等)、抗体を合成する個体の免疫系の能力、所望の保護の程度、ワクチンの製剤、治療医の医学的状況の評価、および他の関連する様々な因子によって変動する。その量は、通例の治験を通して決定され得る比較的広範囲に収まると予想される。
【0113】
ワクチンは、他の免疫調節剤と組み合わせて投与される。CD1dリガンドは、本発明の免疫原性組成物の範囲内のアジュバントとして作用する。ワクチンは、付加的なアジュバントを含んでよい。そのようなアジュバントとして、以下が挙げられるがこれらに限定されない:
本発明で使用されるアジュバントとして、以下が挙げられるがこれらに限定されない:
・カルシウム塩およびアルミニウム塩(またはその混合物)を含むミネラル含有組成物。カルシウム塩は、カルシウムホスフェート(例えば、参照文献174に開示される「CAP」粒子等)を含む。アルミニウム塩は、任意の適切な形態(例えばゲル形態、結晶形態、非晶形等)をとる塩を有する水酸化物、ホフォスフェート、硫酸塩を含む。これら塩への吸着は、好まれる。ミネラルを含む組成物は、また、金属塩[175]の粒子として製剤化される。アルミニウム塩アジュバントは、以下にさらに詳細に記述される。
・以下にさらに詳細に記述されるように水中油型乳剤。
・CpGモチーフ(グアノシンに結合したホスフェートによって結合される非メチル化シトシンを含むジヌクレオチド配列)を含むもの、TpGモチーフ[176]、二本鎖RNA、パリンドローム配列を含むオリゴヌクレオチド、またはポリ(dG)配列を含むオリゴヌクレオチド等の免疫賦活性オリゴヌクレオチド。免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート修飾等のヌクレオチド修飾/類似体を含むことが可能であり、かつ二本鎖または(RNAを除いて)一本鎖であってよい。参照文献177〜179は可能な類似体置換(例えば2’−デオキシ−7−デアザグアノシンの置換)を開示している。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、さらに、参照文献180〜185に述べられている。CpG配列は、TLR9(モチーフGTCGTTまたはTTCGTT[186])に向けられる。CpG配列は、CpG−A ODN(オリゴデオキシヌクレオチド)等のTh1免疫応答の誘発に特異的であってよく、または前述の配列は、CpG−B ODN等のB細胞応答の誘導により特異的であってよい。CpG−A ODNおよびCpG−B ODNは、参照文献187〜189で考察されている。好ましくは、CpGは、CpG−A ODNである。好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端が受容体認識に利用できるように構築される。任意に、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列は、「イムノマー」を形成するためにそれらの3’末端で結合されてよい。例えば、参照文献190〜192を参照。有用なCpGアジュバントは、CpG7909であり、ProMune(登録商標)(コーリー・ファマシューティカル・グループ(Coley Pharmaceutical Goup Inc.))としても周知である。免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、一般的に、少なくとも20のヌクレオチドを含む。免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、100未満のヌクレオチドを含む。
・3−O−デアシル化モノホスホリル脂質A(「3dMPL」、「MPL(登録商標)」としても周知である)[193〜196]。3dMPLは、サルモネラミネソタ(Salmonella minnesota)のヘプトースがない変異体から調製されたもので、化学的に脂質Aに類似しているが、酸に不安定なホスホリル基および塩基に不安定なアシル基を欠く。3dMPLの調製は、最初に参照文献197に記述された。3dMPLは、関連した分子の混合物の形をとることが可能であり、それらのアシル化によって変わる(例えば、異なる長さになるであろう3、4、5、または6つのアシル鎖を有する)。2つのグルコサミン(2−デオキシ−2−アミノ−グルコースとしても周知である)モノサッカライドは、それらの2位置の炭素で(すなわち2と2’の位置で)N−アシル化され、かつ3’の位置にもO−アシル化がある。
・イミキモド(「R−837」)[198、199]等のイミダゾキノリン化合物、レシキモド(「R−848」)[200]、およびそれらの類似体;ならびにそれらの塩(例えば、塩酸塩)。免疫賦活性イミダゾキノリンについてのさらなる詳細は、参照文献201〜205に見出される。
・参照文献206に開示されるようなチオセミカルバゾン化合物。活性化合物の製剤化、製造、およびスクリーニングの方法も、参照文献206に記述されている。チオセミカルバゾンは、TNF−α等のサイトカインの産生のためのヒト末梢血単核球細胞の刺激に特に有効である。
・参照文献207に開示されるもの等のトリプタントリン化合物。活性化合物の製剤化、製造、およびスクリーニングの方法も、参照文献207に記述されている。トリプタントリンは、TNF−α等のサイトカインの産生のためのヒト末梢血単核球細胞の刺激に特に有効である。
・ヌクレオシド類似体、例えば(a)イサトラビン(Isatorabine)(ANA−245;7−チア−8−オキソグアノシン):
【0114】
【化3】
、およびそのプロドラッグ;(b)ANA975;(c)ANA−025−1;(d)ANA380;(e)参照文献208〜210に開示される化合物;(f)以下の式を有する化合物:
【0115】
【化4】
(式中:
R1およびR2は、各々独立して、H、ハロ、−NRaRb、−OH、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、C6−10アリール、置換C6−10アリール、C1−6アルキル、または置換C1−6アルキルである;
R3は、欠けている、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C6−10アリール、置換C6−10アリール、ヘテロシクリル、または置換ヘテロシクリルである;
R4およびR5は、各々独立して、H、ハロ、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、−C(O)Rd、C1−6アルキル、置換C1−6アルキルであるか、またはR4−5にあるように、結合されて5員環を形成する;
【0116】
【化5】
結合で達成される結合は、
【0117】
【化6】
で示される。
X1およびX2は、各々独立してに、N、C、O、またはSである;
R8は、H、ハロ、−OH、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、−OH、−NRaRb、−(CH2)n−O−Rc、−O−(C1−6アルキル)、−S(O)pRe、または−C(O)−Rdである;
R9は、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、またはR9aである;
ここでR9aは、
【化7】
【0118】
結合で達成される結合は、
【化8】
【0119】
で示される。
R10およびR11は、各々独立してに、H、ハロ、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、−NRaRb、または−OHである;
RaおよびRbは、各々独立して、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、−C(O)Rd、C6−10アリールである;
各Rcは、独立して、H、ホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェート、C1−6アルキル、または置換,C1−6アルキルである;
各Rdは、独立して、H、ハロ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、−NH2、−NH(C1−6アルキル)、−NH(置換C1−6アルキル)、−N(C1−6アルキル)2、−N(置換C1−6アルキル)2、C6−10アリール、またはヘテロシクリルである;
各Reは、独立して、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C6−10アリール、置換C6−10アリール、ヘテロシクリル、または置換ヘテロシクリルである;
各Rfは、独立して、H、C1−6アルキル、または置換,C1−6アルキル、−C(O)Rd、ホスフェート、ジホスフェート、またはトリホスフェートである;
各nは、独立して0、1、2、または3である;
各pは、独立して0、1、または2である;
または(g)(a)〜(f)の任意の薬学的に許容される塩、(a)〜(f)の任意の互変異性体、またはその互変異性体の薬学的に許容される塩。
・ロキソリビン(7−アリル−8−オキソグアノシン)[211]。
・参照文献212に開示されている以下を含む化合物:
アシルピペラジン化合物、インドールジオン化合物、テトラヒドロイソキノリン(THIQ)化合物、ベンゾシクロジオン化合物、アミノアザビニル化合物、アミノベンゾイミダゾールキノリノン(ABIQ)化合物[213、214]、ヒドラフタルアミド化合物、ベンゾフェノン化合物、イソキサゾール化合物、ステロール化合物、キナゾリノン化合物、ピロール化合物[215]、アントラキノン化合物、キノサリン化合物、トリアジン化合物、ピラゾロピリミジン化合物、およびベンザゾール化合物[216]。
・参照文献217に開示されている以下を含む化合物:3,4−ジ(1H−インドール−3−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン、スタウロスポリン類似体、誘導体化ピリダジン、クロメン−4−オン、インドリノン、キナゾリン、およびヌクレオシド類似体。
・アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体(例えばRC−529[218、219]。
・例えば、参照文献220および221に記述されるようにホスファゼン(例えば、ポリ[ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン](「PCPP」))。
・以下のような小分子免疫賦活剤(SMIP):
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリンキノリン−2,4−ジアミン
N2,N2−ジメチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−エチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−ブチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−ブチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−フェニル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−2−フェニル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
1−(2−メチルプロピル)−2−[(フェニルメチル)チオ]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
1−(2−メチルプロピル)−2−(プロピルチオ)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
2−{[4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−イル](メチル)アミノ}エタノール
2−{[4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−イル](メチル)アミノ}エチルアセテート
4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オン
N2−ブチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−ブチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2,N2−ジメチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
1−{4−アミノ−2−[メチル(プロピル)アミノ]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル}−2−メチルプロパン−2−オール
1−[4−アミノ−2−(プロピルアミノ)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]−2−メチルプロパン−2−オール
N4,N4−ジベンンジル−1−(2−メトキシ−2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
・サポニン[参照文献249の第22章]。広範囲の植物種の樹皮、葉、茎、根、および花にも見つかるステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種基である。バラ科キラヤ(Quillaia saponaria Molina)の樹皮に由来するサポニンは、アジュバントとして広く研究されてきた。サポニンは、また、スミラックス・オルナタ(Smilax ornata)(サルサパリラ)、シュッコンカスミソウ(Gypsophilla paniculata)(ブライダルベール)、およびサボンソウ(Saponaria officianalis)(ソープルート).に由来し商業的に入手可能である。サポニンアジュバント製剤は、精製製剤(QS21等)ならびに脂質製剤(ISCOM等)を含む。QS21は、Stimulon(登録商標)として市販されている。サポニン組成物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を用いて精製されている。これらの技術を用いる特定の精製画分は同定されており、QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−B、およびQH−Cが挙げられる。好ましくは、サポニンはQS21である。QS21の生成方法は、参照文献222に開示されている。サポニン製剤は、またステロール(例えばコレステロール[223])を含みんでよい。サポニンとコレステロールとの組み合わせは、免疫賦活性複合体(ISCOM)[参照文献249の第23章]と呼ばれる独特の粒子を形成するために使用される。ISCOMは、通常、リン脂質(例えばホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリン)も含む。周知のどんなサポニンでも、ISCOMで使用される。好ましくは、ISCOMは、Qui1A、QHA、およびQHCから1つまたは複数を含む。ISCOMは、さらに、参照文献223〜225に記述されている。任意に、ISCOMは、付加的な界面活性剤[226]がないこともある。サポニンに基づくアジュバントの開発の総説は、参照文献227および228に見出される。
・細菌性ADPリボシル化毒素(例えば、大腸菌(E.coli)熱不安定性エンテロトキシン「LT」、コレラ毒素「CT」、または百日咳毒素「PT」)、およびその解毒化誘導体(例えばLT−K63およびLT−R72[229]として周知の変異毒素)。解毒化ADPリボシル化毒素の粘膜アジュバントとしての使用は、参照文献230に記述されており、非経口アジュバントとしての使用は、参照文献231に記述されている。
・生体接着剤および粘膜付着接着剤(エステル化ヒアルロン酸ミクロスフェア[232]またはキトサンおよびその誘導体[233])。
・微小粒子(すなわち、約100nm〜約150μmの粒径、より好ましくは、約200nm〜約30μmの粒径、または約500nm〜約10μmの粒径)で、生分解性および非毒性の物質から(例えばポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトン等)好ましくはポリ(ラクチド−コグリコリド)によって形成され、任意に、マイナスに帯電した表面を有するように(例えばSDSによって)、またはプラスに帯電した表面を有するように(例えば、CTAB等のカチオン性界面活性剤によって)処理されている。
・リポソーム(参照文献249の第13および14章)。アジュバントとしての使用に適したリポソーム製剤の例は、参照文献234〜236に記述されている。
・ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル[237]。そのような製剤は、さらに、オクトキシノール[238]と組み合わせてポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤、ならびに少なくとも1つの付加的な非イオン界面活性剤(例えばオクトキシノール[239])と組み合わせてポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステル界面活性剤を含む。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群から選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウレス9)、ポリオキシエチレン−9−ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
・ムラミルペプチド(例えば、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(「thr−MDP」)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(ノル−MDP)、N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン−L−アラニル−ジパルミトキシプロピルアミド(「DTP−DPP」、もしくは「Theramide(登録商標)」)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリロキシ)−エチルアミン(「MTP−PE」)。
・第1のグラム陰性菌から調製される外膜タンパク質プロテオソームと、第2のグラム陰性菌に由来するリポサッカライド(LPS)調製との組み合わせで、外膜タンパク質プロテオソームおよびLPS調製が、安定な非共有結合アジュバント複合体を形成する。そのような複合体は、髄膜炎菌(N.meningitidis)外膜およびLPSから構成される複合体、「IVX−908」を含む。
・メチルイノシン5’−モノホスフェート(「MIMP」[240])。
・以下のような式を有するポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物[241]。
【0120】
【化9】
ここでRは、水素基、直線鎖もしく分枝、非置換もしくは置換、飽和もしくは不飽和のアシル基、アルキル(例えばシクロアルキル)基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基、またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体を含む群から選択される。
例として、以下が挙げられるが、これらに限定されない:カスアリン(casuarine)、カスアリン−6−α−D−グルコピラノース、3−エピ−カスアリン、7−エピ−カスアリン、3,7−ジエピ−カスアリン等。
・γイヌリン[242]またはその誘導体(例えばアルガムリン)。
・式I、II、もしくはIII、またはその塩:
【化10】
【0121】
参照文献243に定義されるように、「ER803058」、「ER803732」、「ER804053」、「ER804058」、「ER804059」、「ER804442」、「ER804680」、「ER804764」、「ER803022」、または「ER804057」等:
【化11】
【0122】
・OM−174等の大腸菌(Escherichia coli)に由来する脂質Aの誘導体[参照文献244および245に記述されている]。
・陽イオン性脂質および(通常、中性の)コリピド(アミノプロピル−ジメチル−ミリストレイルオキシ−プロパンアミニウムブロマイド−ジフィタノイルホスファチジル−エタノールアミン(「Vaxfectin(登録商標)」)またはアミノプロピル−ジメチル−ビス−ドデシルオキシ−プロパンアミニウムブロマイド−ジオレオイルホスファチジル−エタノ−ルアミン(「GAP−DLRIE:DOPE」)の製剤。(±)−N−(3−アミノプロピル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(シン−9−テトラデセニルオキシ)−1−プロパンアミニウム塩を含有する製剤が好ましい[246]。
・非環式バックボーンを含むホスフェートに結合した脂質を含む化合物(例えばTLR4アンタゴニストE5564[247、248])::
【0123】
【化12】
これらおよび他のアジュバント活性物質は、参照文献249および250により詳細に考察されている。
【0124】
医療方法および用途
一旦製剤化されると、本発明の組成物は、被験者に直接投与される。治療される被験者は、動物であり得、特にヒト被験者が治療される。ワクチンは、特に、小児およびティーンエイジャーに予防接種をするのに有用である。ワクチンは、MHCII−/−動物モデルにおいて有効であることが示されており、従って、ワクチンは免疫無防備状態の被験者を治療するのに有用であると考えられる。ワクチンは、全身経路および/または粘膜経路で送達される。
【0125】
通常は、免疫原性組成物は、溶液または懸濁液のいずれかで注射液として調製され、注入の前に、溶液にもしくは懸濁液に適した固形、液体媒体も調製される。調製は、また、アジュバントの効果を増強するために乳化される、またはリポソームにカプセル化される。組成物の直接送達は、通常、非経口である(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、または筋肉内のいずれかに注射で、または組織の間質腔に送達される)。組成物は、病巣に投与されることも可能である。他の投与様式は、経口投与と肺内投与、座薬、および経皮投与または経皮的投与[例えば参照文献251を参照]、注射針、および皮下噴射器を含む。投与治療は、単回投与スケジュール、または複数回投与スケジュール(例えば追加免疫投与を含む)であってよい。
【0126】
本発明のワクチンは、好ましくは、無菌である。ワクチンは、好ましくは、発熱物質を含まない。ワクチンは、好ましくは、例えばpH6〜pH8の間で、通常、約pH7で緩衝される。
【0127】
本発明のワクチンは、低濃度(例えば<0.001%)で界面活性剤(例えば、Tween80等のTween)を含んでよい。本発明のワクチンは、特に、凍結乾燥させる場合には、糖アルコール(例えばマンニトール)またはトレハロースを、例えば約15mg/mlで含んでよい。
【0128】
個々の抗体の適量は、経験的に評価されることが可能である。しかしながら、一般に、本発明の抗原は、投与あたり各抗原を0.1〜100μgの用量を0.5mlの典型的な投薬容量で投与される。用量は、通常、投与あたり各抗原5〜20μgである。
【0129】
免疫応答を誘発するために患者に投与されるCD1dリガンドの量は、その組成物が投与される患者の年齢および体重に応じて変化するが、通常は、1〜100μg/kg患者体重で含まれる。意外にも、低用量のCD1dリガンドが、同時投与される抗原に対する免疫応答を増強させ、かつその抗原に対する長期免疫記憶を促進するのに十分であることが判明した。本発明の組成物に含まれるCD1dリガンドの量は、従って、患者体重の50μg/kg未満、20μg/kg未満、10μg/kg未満、5μg/kg未満、4μg/kg未満、または3μg/kg未満であってよい。
【0130】
本発明によるワクチンは、予防用(すなわち感染を阻止するため)または治療用(すなわち感染後、疾患を治療するため)のいずれかであってよいが、通常は、予防用である。
【0131】
本発明は、医学分野で使用するためにCD1dリガンド、およびB群連鎖球菌に由来する抗原を提供する。本発明は、医学分野で使用するためにCD1dリガンド、および髄膜炎菌血清型B株に由来する抗原を提供する。本発明は、医学分野で使用するために、CD1dリガンド、およびパンデミックな発生を引き起こすことができるまたは可能性を有するインフルエンザ株から選択されたインフルエンザウイルスに由来する抗原を提供する。
【0132】
本発明は、また、本発明によるワクチンを患者に投与することを含む、患者に免疫応答を引き起こす方法を提供する。特に、本発明は、CD1dリガンド、およびB群連鎖球菌に由来する抗原を患者に投与することを含む、患者に免疫応答を引き起こす方法を提供する。本発明は、CD1dリガンド、および髄膜炎菌血清型B株に由来する抗原を患者に投与することを含む、患者に免疫応答を引き起こす方法を提供する。本発明は、CD1dリガンド、およびパンデミックな発生を引き起こすことができるまたは可能性を有するインフルエンザ株から選択されたインフルエンザウイルスに由来する抗原を患者に投与することを含む、患者に免疫応答を引き起こす方法を提供する。
【0133】
抗原およびCD1dリガンドは、同時に、連続して、または別々に投与される。例えば、そのコンジュゲートに対する哺乳類の免疫応答を高めるために、抗原投与の前、または抗原投与の後に、CD1dリガンドが哺乳類を予備刺激するために投与されることも可能である。複数の抗原が投与される場合、抗原は、抗原混合物と別々に、同時に、または連続して投与されるCD1dリガンドとともに同時に投与される。免疫応答を引き起こす方法は、抗原およびCD1dリガンドの第1の用量を投与すること、それに続いて、任意に非アジュバント化抗原の第2の用量を投与することを含む。抗原およびCD1dリガンドの第1の用量は、同時に、連続して、または別々に投与される。
【0134】
免疫応答は、好ましくは、防御応答であり、かつ液性免疫応答および/または細胞免疫応答を含んでよい。患者は、成人または小児であってよい。患者は、0〜6カ月、6〜12カ月、1〜5歳、5〜15歳、15〜55歳、または55歳を超える年齢であってよい。好ましくは、患者は小児である。
【0135】
患者は、免疫無防備状態であってよい。患者は、免疫系の機能不全に関連した障害、特に、CD4T細胞応答の機能不全に関連した障害を有することもある。そのような障害の例として以下が挙げられるがそれらに限定されない:AIDS、血管拡張性失調症、ディジョージ症候群、汎低γグロブリン血症、ウィスコットアルドリッヒ症候群、および補体欠損症。
【0136】
本発明は、患者に免疫応答を引き起こすための薬物の製造でB群連鎖球菌に由来する抗原の使用を提供し、この薬物は、CD1dリガンドとともに投与される。本発明は、患者に免疫応答を引き起こすための薬物の製造でCD1dリガンドの使用を提供し、この薬物は、B群連鎖球菌に由来する抗原とともに投与される。本発明は、患者に免疫応答を引き起こすための薬物の製造でB群連鎖球菌に由来する抗原およびCD1dリガントの使用を提供する。本発明は、また、CD1dリガントで事前処置された患者に免疫応答を引き起こすための薬物の製造でB群連鎖球菌に由来する抗原の使用を提供する。本発明は、B群連鎖球菌に由来する抗原で事前処置された患者に免疫応答を引き起こすための薬物の製造でCD1dリガンドの使用を提供する。発明は、B群連鎖球菌に由来する抗原およびCD1dリガンドで事前処置された患者に免疫応答を引き起こすための薬物の製造でB群連鎖球菌に由来する抗原の使用を提供する。
【0137】
本発明は、また、患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造で髄膜炎菌血清型B株に由来する抗原の使用を提供し、この薬物はCD1dリガンドとともに投与される。本発明は、また、患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造でCD1dリガンドの使用を提供し、この薬物は髄膜炎菌血清型B株に由来する抗原とともに投与される。本発明は、また、患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造でB群連鎖球菌に由来する抗原、およびCD1dリガンドの使用を提供する。本発明は、また、CD1dリガンドで事前に処置された患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造で髄膜炎菌血清型B株に由来する抗原の使用を提供する。本発明は、さらに、髄膜炎菌血清型B株に由来する抗原で事前に処置された患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造でCD1dリガンドの使用を提供する。本発明は、また、髄膜炎菌血清型B株に由来する抗原、およびCD1dリガンドで事前に処置された患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造で髄膜炎菌血清型B株に由来する抗原の使用を提供する。
【0138】
本発明は、また、患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造でインフルエンザウイルス(上述のように)に由来する抗原の使用を提供し、この薬物はCD1dリガンドとともに投与される。本発明は、また、患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造でCD1dリガンドの使用を提供し、この薬物は、インフルエンザウイルス(上述のように)に由来する抗原とともに投与される。本発明は、また、患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造でインフルエンザウイルス(上述のように)に由来する抗原、およびCD1dリガンドの使用を提供する。本発明は、また、CD1dリガンドで事前に処置された患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造でインフルエンザウイルス(上述のように)に由来する抗原の使用を提供する。本発明は、さらに、インフルエンザウイルス(上述のように)に由来する抗原で事前に処置された患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造にCD1dリガンドの使用を提供する。本発明は、また、インフルエンザウイルス(上述のように)に由来する抗原、およびCD1dリガンドで事前に処置された患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造にインフルエンザウイルス(上述のように)に由来する抗原の使用を提供する。
【0139】
薬物は、好ましくは、免疫原性組成物(例えばワクチン)である。薬物は、好ましくは、B群連鎖球菌、髄膜炎菌(例えば、髄膜炎、敗血症)に、またはインフルエンザウイルスに起因する疾患の予防用および/または治療用である。
【0140】
ワクチンは、標準動物モデル(例えば、参照文献252を参照)で検査される。
【0141】
本発明は、さらに、B群連鎖球菌抗原およびCD1dリガンドを含むキットを提供する。本発明は、さらに、髄膜炎菌血清型B株およびCD1dリガンドを含むキットを提供する。本発明は、さらに、インフルエンザウイルスに由来する抗原およびCD1dリガンドを含むキットを提供する。抗原およびリガンドは、好ましくは、別々の投与に適するように(例えば、別々の四肢に)、別々の構成成分からなるキットとして供給される。
【0142】
定義
用語「構成される」は、「含む」ならびに「成る」を包含する(例えば、Xで「構成される」組成物は、全くXだけから成る、または例えばXプラスY等の付加的なものを含んでよい)。
【0143】
数値「x」に関して用語「約」は、x±10%を意味する。
【0144】
語「実質的に」は、「完全に」を除外しない(例えば、「実質的に」Yを含まない組成物は、Yを完全に含まないこともある)。必要に応じて、語「実質的に」は、本発明の定義から取り除かれることも可能である。
【0145】
本発明を実施するための様式
本発明を実施するための様式に関する付加的情報は、参照文献253に見出される。
【実施例】
【0146】
(実施例1) インバリアントNKT細胞は、in vivoで防御抗体応答を助け、B細胞記憶の維持に寄与する
概要
CD1d制限インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞は、生得的リンパ球であり、α−ガラクトシルセラミド(α−GC)等の糖脂質抗原を認識する。in vivoで適応免疫応答への自然免疫系の影響を研究するために、本発明者らは、iNKT細胞が抗体応答の重要な特徴(例えば、感染症からの保護およびB細胞記憶)に影響をおよぼすかどうかを評価した。α−GCと組み合わせた細菌タンパク質またはウイルスタンパク質でマウスを免疫し、タンパク質およびα−GCで免疫されたマウスが、タンパク質単独によって誘発される力価よりも1〜2ログ高い抗体価をもたらすことを発見した。最も重要なことは、それらのマウスは、インフルエンザ等の感染症からさらに保護されることである。MHCクラスIIが欠如しているマウスは、タンパク質および従来のアジュバントで免疫されるとき、抗体を産生しない。しかし、タンパク質およびα−GCによるこれらのマウスの免疫化は、そのタンパク質に特異的な検出可能なIgGを誘発し、iNKT細胞がB細胞に対するその助けをクラスII制限CD4+ T細胞に部分的に置き換えることを示した。最終的に、タンパク質およびα−GCで免疫されたマウスは、タンパク質特異的記憶B細胞の頻度(タンパク質単独で免疫されたマウスで観察される頻度よりも高い)を有することが分った。さらに、iNKT細胞が欠如しているマウスは、野性型マウスで観察される減衰よりも急速な循環抗体価の減衰を示し、形質細胞の寿命の対するiNKT細胞の予想外の影響を示唆した。つまるところ、これらの結果は、抗体応答の調節におけるiNKT細胞の重要な役割およびin vivoでB細胞記憶の維持を指し示している。
【0147】
結果
iNKT細胞の活性化は、in vivoでタンパク質抗原に対する抗体応答を増強する
ヒトiNKT細胞が、Bリンパ球の増殖およびin vitroでの免疫グロブリンの生成に役立つことを本発明者らは、最近、実証した。この結果のin vivoでの関連性を決定するために、NKT特異的糖脂質(α−GC)を用いて、または用いずに、細菌タンパク質(TT(破傷風トキソイド)もしくはDT(ジフテリアトキソイド))またはウイルスタンパク質(H3N2(インフルエンザA型株由来の赤血球凝集素−ノイラミニダーゼサブユニット))でC57/BL6マウスを免疫し、種々の時点におけるタンパク質特異的抗体の血清力価を評価した。図1Aは、抗原のすべてで、タンパク質およびα−GCで免疫されたマウス(黒四角)の抗体価が、タンパク質単独で免疫されたマウス(白四角)の抗体価よりも1〜2ログ高かったことを示す。同様の結果がBALB/c、CDl、およびC3H/HeJマウスでも得られた(データ図示せず)。
【0148】
α−GCのアジュバント活性がiNKT細胞の活性化によるものであることを証明するために、(Ja18+/+およびJa18+/−)を有するマウスまたは(Ja18−/−)iNKT細胞が欠如したマウスを、α−GCを用いて、または用いずにインフルエンザタンパク質H3N2で免疫した。図1Bに示すように、H3N2単独で免疫されたすべてのマウス(白四角)は、iNKT細胞の存在にかかわらず、同程度の抗体応答をもたらした。しかしながら、H3N2およびα−GCで(黒四角)免疫化を行うと、iNKT細胞を有するマウスはH3N2特異的抗体の血清力価に有意な増強を示し、一方iNKT細胞が欠如したマウスは、そのように増強できないことを図1Bは示している。これらの結果は、α−GCがCD1d(CD1−/−)が欠如したマウスにおいてアジュバント活性を示さなかった結果(データは図示せず)、α−GCをiNKT細胞のT細胞受容体に提示する制限要素によって強化された。
【0149】
α−GCの活性と、従来のアジュバントの活性とを比較するために、α−GCまたは以下のアジュバントから1つの適量を用いて、TT単独で用量を増加させながら、マウスを免疫した:CFA(マウスで用いられる最も強力なアジュバントの1つ[254])、CpG(現在、ヒトで検査されている強力なTh0/Th1免疫賦活剤[255])、MF59とアルミニウム塩(この2つのアジュバントはヒト用途として承認されていて[256、257]、両方ともTh0/Th2誘導因子と考えられる)。図2Aに示すように、α−GCは、全般的に、IgG1およびIgG2aの両抗体の産生に役立つ上記の基準アジュバントと同様に強力である。
【0150】
最終的に、タンパク質抗原に対する抗体応答が、従来のCD4+ T細胞の助けがなくとも(従来のアジュバントが役立たない状況)iNKTリンパ球の助けで発生するかどうかを評価した。従って、MHCクラスII分子が欠如した(MHC−II−/−)C57BL/6マウスの両群にH3N2単独で、またはα−GCもしくはアルミニウム塩とともにH3N2で2回免疫させた。予想通りに、H3N2単独またはアルミニウム塩中のH3N2で免疫されたMHC−II−/−マウスは、抗原特異的抗体を何ら示さなかった(図2B)。代わりに、H3N2およびα−GCで免疫されたMHC−II−/−マウスは、検出可能な抗体(IgG)価を示した。
【0151】
つまるところ、α−GCによるin vivoでのiNKT細胞活性化は、従来のアジュバントのそれに匹敵する方法でタンパク質抗原に対する抗体応答を増強することをこれらの結果は示している。これらのアジュバントとは違って、α−GCは、抗体応答を生成するために、MHC−クラスII制限CD4Tリンパ球を必要としない。
【0152】
iNKT細胞は、免疫に役立つ
α−GCが病原体タンパク質に対する抗体応答を増強することを実証して、本発明者らは応答の質に取り組み、これらの抗体が感染症から保護することができるかどうかを追究した。この目的を達成するために、α−GCのアジュバント効果とMF59(インフルエンザワクチンによるヒト用途として承認されているアジュバント)のそれとをインフルエンザウイルス感染症のマウスモデルで比較した。0日目と15日目に、α−GCまたはMF59を用いてH1N1タンパク質(ヒトインフルエンザウイルスA型/ニューカレドニア/20/99由来の)単独で、成体C57BL/9マウスを免疫した。最後の免疫化から2週間後、マウス適応型A/WS/33インフルエンザウイルスを90%致死量(LD)でマウスに接種した。マウスの生存を2週間経過観察した。図3Aに示すように、接種の1日前、H1N1およびα−GCで免疫されたマウスが有する抗体価は、H1N1およびMF59で免疫されたマウスの抗体価に匹敵し、かつタンパク質ワクチン単独で免疫されたマウスで見られた力価よりも有意に高いものである。さらに、接種から2週間後、H1N1およびα−GCで免疫されたマウスの80%、およびタンパク質およびMF59で免疫されたマウスの100%が生存し、一方タンパク質単独に基づいたワクチンで免疫されたマウスのわずか10%が経過観察の終了後も生存していたことを図3Bは示している。
【0153】
つまるところ、これらの結果から、本発明者らは、α−GC依存iNKT細胞活性化が感染症疾患に対するワクチンの効果を増強することが可能であると結論づける。
【0154】
B細胞に役立つiNKT細胞の機序
次に、本発明者らは、iNKT細胞をin vivoでB細胞を助けるように向かわせる機序を調べた。
【0155】
まず、サイトカインの役割を調べるために、C57BL/6マウスおよびサイトカインIL−4またはIFN−γ(IFN−γR)の受容体が欠如したコンジェニックマウスの両方でα−GCのアジュバント効果を評価した。図4A(左図)が示すように、野性型マウスにおいてインフルエンザタンパク質H3N2単独(白で示す)による免疫化が、IgG1の存在およびIgG2aの非存在によって示されるようにTh2応答を誘発し、一方タンパク質およびα−GCによる免疫化が、IgG1およびIgG2a(黒で示す)の両方の存在によって示されるようにバランスのとれたTh0応答を誘発した。図4Aの中央の図が示すように、IL−4が欠如したマウスは、タンパク質単独で免疫されたとき、何ら抗体応答がなかったのに対して、タンパク質およびα−GC(黒で示す)で免疫されたとき、それらのマウスはバランスのとれたTh0応答を開始した。最後に、IFN−γ受容体が欠如したマウス(図4Aの右図)は、タンパク質単独(白で示す)で免疫されたとき、Th2応答(IgG1抗体)を示す。IgG1力価は、タンパク質およびα−GC(黒で示す)で免疫されたマウスで有意に増加するが、IgG2抗体はバックグラウンド濃度を上回る増加はない。つまるところ、IL−4はBリンパ球を助けるためにα−GC依存iNKT細胞にとって個々に必要でないが、一方でIFN−γはiNKT細胞のバランスのとれた(Th0)ヘルパー効果にとって絶対必要であることをこれらの結果が示している。
【0156】
次いで、CD40/CD40L相互作用が、α−GC依存iNKT細胞がin vivoで助けるために必要とされるどうかを追究した。従って、本発明者らは、中和抗CD40Lモノクローナル抗体の飽和量で処置したマウスでH3N2に対する抗体応答を評価した。図4Bに示すように、H3N2およびα−GCによる免疫化に続いて、抗CD40Lモノクローナル抗体で処置したマウスは、対照IgGで処置したマウスで観察された抗体価よりも有意に低いH3N2抗体価を示した。
【0157】
α−GCは、想起抗体応答を増強し、B細胞記憶の維持に寄与する
適応免疫系の重要な特徴は、それが以前に遭遇した抗原に対して迅速な「想起」応答を開始する能力である。α−GCのアジュバント効果が想起抗体応答に影響を及ぼしたかどうかを評価するために、マウスを、0週目と2週目にH3N2単独でまたはα−GCで2回免疫した。次いで、H3N2単独での第3の(想起)免疫化を、30週目にすべてのマウスに施した。図1で報告したデータと一致して、最初の2回の投与後、H3N2およびα−GCで免疫されたマウスが、H3N2単独を受けるマウスからの力価よりも有意に高い抗体価を示したことを図5Aは示している。マウスのすべてをH3N2単独による第3の免疫化によって追加免疫したとき、H3N2特異的抗体は、約30週目に両群でバックグラウンド濃度に達し、ゆっくり時間をかけて減衰した。2週間後、抗体応答を評価し、最初の2回の免疫化でタンパク質およびα−GCを施されたマウスは第3の免疫化後に、3回の免疫化のすべてでタンパク質単独で免疫されたマウスの抗体価より有意に高い抗体価を示したことが分った(図5A)。これらの結果と一致して、同時実験で、30週目(第3の免疫化の直前)に、H3N2およびα−GCで2回免疫されたマウスの脾臓で検出されたH3N2抗体分泌細胞(ASC)前駆体の頻度は、H3N2単独で2回免疫されたマウスの脾臓で観察された頻度よりも有意に高いことが分った(図5B)。
【0158】
B細胞記憶の調節におけるiNKT細胞の役割をさらに調べるために、(Ja18+/+およびJa18+/−)を有するまたは(Ja18−/−)iNKT細胞が欠如したマウスの血清でタンパク質(H3N2)単独により誘発された抗原特異的抗体の持続を評価した。マウスのすべての群で、抗原特異的抗体の力価は、第2の免疫化から2週間後、同程度のレベルでピークに達した。しかし、図6が示すように、iNKT細胞抗原特異的抗体を有するマウスは、同様にゆっくりとした速度で減衰したが、iNKT細胞が欠如したマウスでの抗体価減衰は、著しく急速であった。これらのマウスのうちα−GCを受けたものはないので、iNKT「自発」活性のあるレベルは、循環抗体の半減期に影響をおよぼすことが可能であると本発明者らは、結論づける。
【0159】
つまるところ、iNKT細胞活性化は、想起免疫化に対して高い抗体応答を生じ、これは抗原特異的記憶B細胞プールのさらなる拡大に起因することをこれらの結果が示している。さらに、in vivoでのiNKT自発活性は、循環抗体濃度の維持において恒常的に関与するように見える。
【0160】
(実施例2) 追加免疫の非存在下でα−GalCerによるプライミングは、抗体応答を増強させる
上述のように、30週目(第3の免疫化の直前)に、H3N2およびα−GCで2回免疫されたマウスの脾臓で検出したH3N2抗体分泌細胞(ASC)前駆体(すなわち記憶B細胞)の頻度は、H3N2単独で2回免疫されたマウスの脾臓で観察した頻度よりも有意に高かった(図5B)。
【0161】
同様の結果を、破傷風トキソイド(図7および18)で免疫されたマウスで行った実験で得た。図7は、0日目および14日目に、アジュバントなし、α−GCアジュバント、またはアルミニウム塩アジュバントを用いる破傷風トキソイドによる最後の2回の免疫化から6週間後にC57BL/6マウスにおけるASC前駆体の頻度を示す。アジュバントとしてのα−GCの使用は、アルミニウム塩アジュバントの使用と比較して、ASC前駆体の頻度を著しく増強させた。同様に、図18が示すように、GBS80およびα−GCによる最後の2回の免疫化から3カ月後、GBS80およびアルミニウム塩による免疫化と比較して、CD1マウスのASC前駆体の頻度が著しく高かった。
【0162】
一連の2回の免疫化でアジュバントとして投与したとき、アルミニウム塩と比較すると記憶B細胞の頻度を著しく増強させるα−GCの能力は、単回免疫化でアジュバントとして使用されると、α−GCが特定の記憶B細胞の増加を誘発することができることを示唆した。従って、α−GCおよびH3N2抗原の特定のB細胞記憶プールへの単回投与の効果を評価するために実験を行った(図8〜11)。
【0163】
図8は、実験で使用した免疫化スケジュールを示す。C57BL/6メスのマウス(6〜8週齢)20匹を5マウスずつ4群に分けた。群1)を0週目にリン酸緩衝食塩水(PBS)中のH3N2で免疫し、2週間後にH3N2+α−GCで免疫した。群2)を0週目にH3N2+α−GCで免疫し、2週間後にPBS中のH3N2で免疫した。群3)を0週目および2週目にPBS中のH3N2で免疫した。群4)を0週目および2週間後にH3N2およびα−GCで免疫した。初回の免疫化から56週間後、すべての群のマウスにPBS中の3μgのH3N2を接種した。すべての免疫化は筋肉内であった。
【0164】
図9は、群3のマウス(PBS中のH3N2で免疫した)のH3N2抗体応答と、両免疫化でα−GCを用いて(図A)、第1の免疫化だけにα−GCを用いて(図B)、第2の免疫化だけにα−GCを用いて(図C)免疫されたマウスの応答とを比較する。第1のまたは第2の免疫化だけに与えても、α−GCは抗体応答を増強することが分った。4つの群の間には抗体半減期の相違は観察されなかった。
【0165】
図10は、観察した以下の抗体応答の対での比較を示す:A)α−GCによる2回の免疫化されたマウスvs.第2の免疫化だけにおけるα−GCによる免疫化;B)α−GCによる2回の免疫化されたマウスvs.第1の免疫化だけにおけるα−GCによる免疫化;およびC)第1の免疫化だけにおけるα−GCによる免疫化vs.第2の免疫化だけにおけるα−GCによる免疫化。α−GCを第1のワクチン投与に与えたとき、最大効果を観察した。第1のワクチン投与でのα−GCの供給は、第2のワクチン投与でのα−GCの供給に対して高い抗体応答をもたらした(図10C)。α−GCを第1のワクチン投与で供給した場合、抗体応答は、α−GCを両ワクチン投与で供給した場合に得られた応答と類似していた(図10B)。
【0166】
図11は、α−GCを2回のプライミング注射の第1または第2の投与のいずれかだけに入れた場合でも、α−GCで予備刺激したマウスがワクチン接種に対して高い想起応答を示すことを確認する。これらの結果は、α−GCをアジュバントとしてワクチン組成物に入れると、長期免疫記憶を達成するために必要とするプライミング免疫化の回数を減少させることが可能であり、かつ追加免疫免疫化の頻度および回数を減少させることを示唆する。
【0167】
(実施例3) α−GCは、ストレプトコッカス・アガラクチアによって誘発された新生仔敗血症のマウスモデルで防御抗体応答を増強させる。
【0168】
ストレプトコッカス・アガラクチア感染症によって誘発された新生仔敗血症のマウスモデルで防御抗体応答を増強させるその能力に対して、α−GCを検査した。
【0169】
メスのマウスを3つの群に分けた。群1を、0日目にアジュバント非存在下で20μgのGBS80で予備刺激し、21日目に同じ組成物で追加免疫した。23日目にマウスを交配し、50〜53日目に仔を出産する前に、GBS80−IgG力価の評価を行うために43〜36日目に採血した。出生から0〜48時間に仔マウスにストレプトコッカス・アガラクチアの90%致死量を接種した。追加免疫投与から3カ月後、母マウスを犠牲にして、脾臓を摘出し、GBS80−IgG形質細胞前駆体の頻度を評価した。群2のマウスには、GBS80およびミョウバンで予備刺激および追加免疫を行い、群3のマウスには、GBS80および0.1μgのα−GCで予備刺激および追加免疫を行ったことを除いて、同じ免疫化スケジュールを群2および群3で続けた。
結果は、以下のとおりであった。
【0170】
【表1】
このように、アジュバントとしてのα−GCの使用は、母マウスのGBS80−IgG反応を誘発し、ミョウバンによって誘発されたIgG応答よりも8倍高いものであった。母マウスの高い抗体応答は、B群連鎖球菌感染症からそれらの仔マウスの保護を増強させる結果になった。GBS80およびミョウバンで免疫された母マウスの仔のうちわずかに30%と比較すると、GBS80およびα−GCで免疫された母マウスからの仔のうち70%は、ストレプトコッカス・アガラクチアの接種から残存した。
【0171】
20μgまたは1μgのGBS80のいずれかで免疫されるマウスを用いて、実験を繰り返した。0日目にマウスのすべてを予備刺激し、20日目に追加免疫し、34日目に交配し、54〜58日目の仔の出産の前、48日目に採血した。直ちに、仔マウスにストレプトコッカス・アガラクチアの90%致死量を接種し、48時間で生存を評価した。追加免疫から3カ月後、母マウスを犠牲にして、GBS80−IgG形質細胞前駆体の頻度を評価するために脾臓を摘出した。ミョウバン、α−GCとともに、アジュバントは含まずに1μgのGBS80で;ミョウバン、α−GCとともに、アジュバントは含まずに20μgのGBS80で;またはリン酸緩衝食塩水もしくはミョウバンアジュバント単独でマウスを免疫した。
【0172】
図15に示すように、1μgのGBS80およびα−GCで免疫されたマウスは、1μgのGBS80およびミョウバンで免疫されたマウスよりも有意に高いIgG1およびIgG2a力価を示した。20μgのGBS80およびα−GCで免疫されたマウスは、20μgのGBS80およびミョウバンで免疫されたマウスと比べると、同等のIgG1力価を示し、より高いIgG2a力価を示した。結果は以下のとおりである。
【0173】
【表2】
このように、GBS80およびα−GCで免疫されたマウスの%生存率は、GBS80およびミョウバンで免疫されたマウスの生存率と同等であった。
【0174】
GBS80およびα−GCで免疫された母マウスの脾臓は、また、GBS80 IgG形質細胞および記憶B細胞の頻度を有意に高く含有していた(それぞれ図17および18)。参照文献258に記述されるように、GBS80特異的形質細胞および記憶B細胞の頻度を、培地だけで、またはCpGおよびIL−2の存在下の培地でインキュベートした脾細胞の10日の限界希釈培養からの上清でGBS80特異的抗体の存在を評価することで決定した。
【0175】
さらに実験で、妊娠したCD1メスのマウスを、リン酸緩衝食塩水、GBS80、GBS80+ミョウバン、またはGBS80+α−GCで免疫した。免疫されたCD1メスマウスの各群からまたはナイーブなCD1メスマウスから出産1週間前に採取した血清をプールして、ナイーブなCD1母マウスから生まれた24時間齢の新生仔に皮下注射した(最終容量20μl中3μl/投与)。3時間後、新生仔のすべてに生ウイルスのストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalatiae)1×LD90(90%致死量)を腹腔内に接種した。仔マウスの生存を2日間経過観察した。GBS80で免疫された母マウスからの血清で免疫された仔マウスは、すべて死亡し(28仔マウスのうち28匹)、リン酸緩衝食塩水で免疫された母マウスからの血清で免疫された仔マウス27匹のうちわずか1匹が生き残った。アジュバント(ミョウバンまたはα−GC)の存在は、生存の増加においてミョウバンよりもより有効であるα−GCでの免疫化により生存を向上させた。GBS+α−GCで免疫された母マウスからの血清で免疫された仔マウスの生存は、GBS+ミョウバンで免疫された母マウスからの血清で免疫された仔マウスの生存より165%高かった。
【0176】
これらのデータは、α−GCが、ストレプトコッカス・アガラクチア(S.agalatiae)に対する防御免疫応答の誘発においてミョウバンよりも著しく有効であることを示する。
【0177】
(実施例4) α−GCは、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B株由来のいくつかのタンパク質抗原を含有する混合ワクチンに対する抗体応答を増強する
髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B株(MenB)抗原からの複数の抗原を組み合わせるためのアジュバントとして作用するα−GCの能力を評価した。
【0178】
3種類のMenB抗原(ΔG287nz−953、936−741、および961c)(各20μg/用量)に0.1μgのα−GCを混合した、または0.6mgのミョウバンを混合した混合物でマウスを免疫した。一連の3回の免疫化を、0日目、21日目、および35日目に施し、各免疫化後に各抗体に対するIgG力価を評価した。図19に示すように、α−GCは、混合ワクチン中の3種類のMenB抗原のすべてに対する抗体応答を増強することにおいてミョウバンと同様に有効であった。
【0179】
α−GCは、また、これらの抗原に対する殺菌応答を増強させた。図16は、3種類のMenB抗原(ΔG287nz−953、936−741、および961c)の混合物で免疫されたマウス、またはミョウバン、α−GCと共に、またはアジュバントを含まずにこれらの抗原それぞれと別々の組み合わせで免疫されたマウスからの血清試料中のMenB型株MC58、2996、H44/76、およびNZ98/254に対する殺菌抗体応答を比較している。MenB抗原およびα−GCによる免疫化に対する殺菌応答は、MenB抗原およびミョウバンによる免疫化に対する殺菌応答よりも一貫して高かった。
【0180】
MenB抗原に対するex vivoでのCD4T細胞応答を評価するために第2の実験を行った。6匹のCD1メスマウスからなる複数群を、複数のMenB抗原の混合(リン酸緩衝食塩水、ミョウバン、またはα−GCで製剤化した)で2回免疫した。第2の免疫化から10日後、3マウス/群を犠牲にして、それらの脾臓を摘出した。別々のマウス由来の全脾細胞の懸濁液をMenB抗原を用いて16時間培養した。培養の最後の12時間は、ブレフェルジンAの存在下で行い、サイトカインの細胞内蓄積を可能にした。刺激した脾細胞を固定、膜透過処理を行い、抗CD3、抗Cd4,抗CD69,抗IFNg、およびTNFαのモノクローナル抗体を用いて染色した。全CD4+細胞集団中のCD3+CD4+CD69+サイトカイン+細胞のパーセンテージを、FACS解析によって決定した。
【0181】
結果を図14に示す。MenB抗体に応答してTFNαを産生するCD4T細胞を増殖させることにおいてα−GCは、ミョウバンよりもより有効であることが分り、α−GCが、少なくともミョウバンと同程度でMenB抗原に対する細胞媒介性免疫応答を誘発できることを示した。陽性対照として、ポリクローナル刺激に対する応答をマウスの3つ群のすべてで検査した。図14の挿入部に示すように、マウスの3つの群のすべては、抗CD3抗体(IaCD3)によるポリクローナル刺激に対して同じ応答を示した。
【0182】
ミョウバンまたはMF59と比較して同じ3種類のMenB抗原のためのアジュバントとして作用するα−GCの能力を評価するために、追加の実験を行った。3種類のMenB抗原(ΔG287nz−953、936−741、および961c)(各20μg/用量、5μg/用量、または2.5μg/用量)に0.1μgのα−GC、0.6mgのミョウバン、100μgのMF59を混合、またはアジュバントを含まずに混合した混合物でマウスを免疫した。一連の3回の免疫化を、0日目、21日目、および35日目に施し、各免疫化の後、各抗原に対するIgG力価を評価した。図13に示すように、α−GCおよびMF59は両方とも、ミョウバンよりも高い殺菌抗体価を誘発した。免疫されたマウスの脾臓のMenB特異的記憶B細胞の頻度も、決定した。図12に示すように、ミョウバンと比較して、α−GCまたはMF59で免疫されたマウスの脾臓により高い頻度のMenB特異的記憶B細胞が見られた。MenB抗原に対する殺菌免疫応答を誘発する際、および長期免疫記憶に必要とされるMenB特異的記憶B細胞を誘発する際に、α−GCはミョウバンよりもより有効であり、かつMF59と同程度に有効であることをこれらのデータは示す。
【0183】
当然のことながら、本発明は例の目的でのみ記述されており、詳細の変更は本発明の趣旨および適用範囲から逸脱することなくなされる。
【0184】
(参考文献)
【0185】
【化13】
【0186】
【化14】
【0187】
【化15】
【0188】
【化16】
【0189】
【化17】
【0190】
【化18】
【0191】
【化19】
【図面の簡単な説明】
【0192】
【図1】免疫グロブリン(Ig)力価のグラフを示す。A)α−GCおよび細菌タンパク質(破傷風トキソイド(TT)もしくはジフテリアトキソイド(DT))またはウイルスタンパク質(H3N2、インフルエンザA型株からの赤血球凝集素−ノイラミニダーゼのサブユニット)により筋肉内に免疫されたC57/BL6マウスのタンパク質特異的抗体の血清力価。タンパク質およびα−GC(黒四角)で免疫されたマウスは、タンパク質単独(白四角)で免疫されたマウスよりも、より高い抗体価を示した。X軸は、日数を示す。B)H3N2およびα−GC(黒四角)で免疫されたiNKT細胞を有する(Ja18+/+)マウスは、H3N2単独(白四角)で免疫されたiNKT細胞を有するマウスと比較して、H3N2特異的抗体の血清力価の増大を示す。H3N2およびα−GC(黒四角)で免疫されたiNKT細胞が欠如した(Ja18−/−)マウスは、H3N2単独(白四角)で免疫されたiNKT細胞を欠如したマウスと比較して、H3N2特異的抗体の血清力価の増強を示さない。すべての免疫化は、皮下であった。
【図2A】免疫グロブリンG(IgG)力価の平均値のグラフを示す。A)IgG1およびIgG2aの両抗体の生成においてα−GCは、CFA、CpG、MF59、およびアルミウム塩と同様に強力である。抗原は、TTであった。
【図2B】免疫グロブリンG(IgG)力価の平均値のグラフを示す。B)H3N2で皮下に免疫されたMHC−II−/−マウスは、検出可能な抗体(IgG)価を示したのに対して、H3N2単独またはミョウバンで皮下に免疫されたMHC−II−/−マウスは抗体価を示さなかった。
【図3】インフルエンザウイルス感染症のマウスモデルにおけるα−GCとMF59との比較を示す。すべての免疫化は、筋肉内であった。A)H1N1特異的IgG力価(幾何平均)。H1N1およびα−GCで免疫されたマウスの抗体価は、H1N1およびMF59で免疫されたマウスの抗体価に匹敵するものであり、タンパク質単独のワクチンで免疫されたマウスに見られた力価よりも有意に高いものである。B)接種後の生存パーセンテージ対日数。H1N1およびα−GCで免疫されたマウスの80%およびH1N1とMF59とで免疫されたマウスの100%は、インフルエンザウイルス接種後生存している。
【図4】H3N2免疫グロブリン力価(幾何平均)を示す。白四角は、アジュバントなしであり、網掛け四角は、α−GCを有する。A)WT、IL−4−/−、およびIFN−γR−/−マウスのH3N2とα−GCとでの皮下免疫化(存在するところは黒で示す)またはH3N2単独での皮下免疫化(存在するところは白で示す)に対するIgG1およびIgG2a応答。H3N2単独での野性型マウスの免疫化は、IgG1応答(Th2)を誘発し、一方H3N2およびα−GCでの免疫化は、IgG1およびIgG2a応答(Th0)を誘発した。H3N2単独でのIL4−/−マウスの免疫化は、IgG応答を誘発しなかったが、一方H3N2およびα−GCでの免疫化は、IgG1およびIG2a応答(Th0)を誘発した。H3N2単独でのIFN−γR−/−マウスの免疫化は、IgG1応答(Th2)を誘発し、一方H3N2およぼα−GCでの免疫化は、有意に高いIgG1応答(Th2)を誘発した。点線は、検査された血清の最小希釈を示す。B)H3N2およびα−GCでの皮下免疫化の前と免疫化の間に、抗CD40Lモノクローナル抗体で処置されたマウスは、対照IgGで処置されたマウスで観察された抗体価よりも有意に低いH3N2抗体価を示す。
【図5】A)0週目と2週目にH3N2単独またはH3N2とα−GCによってマウスを予備刺激し、第1の免疫化から30週間後に両群のマウスを単独のH3N2タンパク質で追加免疫した。図は、H3N2−Ig力価(幾何平均)対時間(週)を示す。矢印は、免疫化の時期を示す。H3N2およびα−GCの2つの投与によって予備刺激し、その後タンパク質単独で追加免疫されたマウス(黒四角)は、H3N2単独によって予備刺激および追加免疫されたマウス(白四角)よりも有意に高い抗体価を示した。B)図5Aにより予備刺激したマウスにおけるH3N2−抗体分泌細胞前駆体の頻度(100万B細胞あたりのH3N2−IgG ASC前駆体)。30週目でのH3N2−抗体を分泌する細胞前駆体の頻度は、H3N2単独で2回免疫されたマウス(白四角)よりもH3N2とα−GCとで2回免疫されたマウス(網掛け四角)のほうが有意に高かった。
【図6】H3N2−Ig力価(幾何平均)対時間(週)。H3N2単独で皮下に2回免疫されたiNKT細胞が欠損したマウス(Ja18−/−)およびiNKT細胞を有するマウス(Ja18+/+)におけるH3N2特異的抗体の減衰。抗原特異的抗体は、iNKT細胞を有するマウス(楕円)よりもiNKT細胞が欠損したマウス(三角)がより急速に減衰する。
【図7】破傷風トキソイド+/−アジュバントによる最後(2回のうちの)の免疫化から6週間後のC57BL/6マウスにおけるASC前駆体(すなわち記憶B細胞)の頻度を、100万B細胞あたりの数として示す。C57BL/6マウスを、0日目と14日目にアジュバント、α−GC、もしくはミョウバンを含まない破傷風トキソイドによって筋肉内に免疫した。破傷風トキソイドおよびα−GCで免疫されたマウスは、破傷風トキソイド単独で免疫されたマウスよりも有意に高いTT特異的記憶B細胞の頻度を示し、ミョウバン中の破傷風トキソイドで免疫された全マウスは、示さなかった。*は、p<0.005vs無抗原投与を示し、**は、p<0.01を示す。***は、p<0.005vsアジュバントを含まないTTを示す。
【図8】プライミングで使用されるすべてのワクチン投与でα−GCの存在を必要とするかどうかを評価するために使用した免疫化スケジュール。C57BL/6メスのマウス(6〜8週齢)20匹を5匹のマウスの4群に分けた。群1)を0週目にリン酸緩衝食塩水(PBS)中のH3N2で免疫し、2週間後にH3N2+α−GCで免疫した。群2)を0週目にH3N2+α−GCで免疫し、2週間後にPBS中のH3N2で免疫した。群3)を0週目および2週目にPBS中のH3N2で免疫した。群4)を0週目および2週間後にH3N2およびα−GCで免疫した。初回の免疫化から56週間後、すべての群のマウスにPBS中の3μgのH3N2を接種し、58週目に想起応答を評価した。すべての免疫化は筋肉内であった。
【図9】図8の群3のマウス(PBS中のH3N2で2回免疫された)のH3N2抗体応答と以下A〜Cとの比較:A)図8の群4のマウス(α−GC中のH3N2で2回免疫された)の応答;B)図8の群1のマウス(PBS中のH3N2で、次いでα−GC中のH3N2で免疫された)の応答;およびC)図8の群2のマウス(α−GC中のH3N2で、次いでPBS中のH3N2での免疫化)の応答。抗体半減期における相違はなかった。
【図10】以下のように観察されたH3N2−抗体応答の比較:A)α−GCによる2回の免疫化(群4)vs第2の免疫化だけにおけるα−GC(群1);B)α−GCで2回免疫されたマウス(群4)vs第1の免疫化だけにおけるα−GC(群2);およびC)第1の免疫化だけにおけるα−GCによる免疫化(群2)vs第2の免疫化だけにおけるα−GCによる免疫化(群1)。
【図11】図8に記述するように免疫されたマウスの想起応答。H3N2単独による追加免疫(56週目に施した)の免疫化から2週間後、α−GCの1ないし2回投与によって予備刺激されたマウスは、H3N2単独の2回投与で予備刺激されたマウスより高い想起応答を示した。データは、56週目と58週目のH3N2のIg力価(幾何平均)である。
【図12】図13に記述するように免疫されたマウスの脾臓のMenB特異的記憶B細胞の頻度を決定した。MenB特異的記憶B細胞のより高い頻度は、ミョウバンと比較して、α−GCまたはMF59で免疫されたマウスの脾臓で見つかった。グラフは、100万Bリンパ球あたりのMemB特異的IgG記憶B細胞を示す。*および**は、p<0.05およびp<0.01vsアジュバントなしを示す。
【図13】ΔG287nz−953、936−741、および961cの3種類のMenB抗原(各々20μg/用量、5μg/用量、または2.5μg/用量)に0.1μgのα−GC、0.6mgのミョウバン、100μlのMF59、またはアジュバントなしを混合した混合物によってマウスを免疫した。一連の3回の免疫化を0日目、21日目、および35日目に施し、各抗原に対するIgG力価を各免疫化から105日目まで評価した。α−GCとMF59の両方は、ミョウバンよりも高い殺菌抗体価を誘発した。
【図14】0日目および21日目に以下によって筋肉内に免疫されたマウスにおける組換えMenB抗原に対するCD4T細胞応答の比較:a)3種類のMenB抗原およびα−GCを含有する混合ワクチン;b)3種類のMenB抗原およびミョウバンを含有する混合ワクチン;またはc)3種類のMenB抗原だけを含有する混合ワクチン。第2の免疫化から2週間後、表示した量のMenB組換えタンパク質を用いて全脾細胞を16時間(最後の14時間は、ブレフェルジンAの存在下で行った)インキュベートすることによってCD4T細胞応答を評価した。TNFaを産生するCD4T細胞の数を細胞内染色およびFACS解析によって決定した。3種類のMenB抗原およびα−GCの混合で免疫されたマウスは、複数のMenB抗原とミョウバンまたはアジュバントなしの混合によって免疫されたマウスと比較して、一貫してより高いCD4応答を示した。陽性対照として、ポリクローナル刺激に対するマウスの3群すべての応答を検査した。図の挿入部に示すようにマウスの3群すべては、抗CD3抗体(IaCD3)によるポリクローナル刺激に対して同じ応答を示した。すべてのCD4+T細胞のパーセンテージとして、Y軸はTNFαを産生するCD4T細胞を示す。
【図15】力価(幾何平均)。GBS抗原で免疫されたマウスにおけるIgG、IgG1、およびIgG2aの力価の比較。1μgのGBS80およびα−GCで免疫されたマウスは、1μgのGBS80単独で免疫されたマウスよりも有意に高いIgG1およびIgG2aの力価を示したが、ミョウバン中のGBS80で免疫されたマウスは、示さなかった。20μgのGBS80およびα−GCで免疫されたマウスは、20μgのGBS80およびミョウバンで免疫されたマウスに等しいIgG1力価を示し、かつより高いIgG2a力価を示した。*、**p<0.05、p<0.01vsアジュバントなしでのGBS80
【図16】0日目と21日目に、3種類のMenB抗原(DG287nz−953、936−741、または961c)のうちの1つまたは以下と組み合わせた3種類の抗原全ての混合でマウスを免疫した:a)α−GC;b)ミョウバン;またはc)アジュバントなし。MenB型株(MC58、2996、H44/76、およびNZ98/254)に対する殺菌抗体の濃度を、第2の免疫化から2週間後、および第3の免疫化から2週間後に評価した。アジュバントとしてα−GCとともに混合ワクチンを投与したとき、殺菌抗体は、ミョウバンと比較して有意に高かった。免疫化のすべては筋肉内であった。
【図17】GBS80で免疫された母マウスの脾臓の記憶B細胞の頻度。GBS80特異的抗体を産生する形質細胞の頻度は、GBS80単独でまたはミョウバンで免疫された母マウスの脾臓よりも、GBS80およびα−GCで免疫された母マウスからの脾臓において有意に高かった。グラフは、100万Bリンパ球あたりのGBS80IgG形質細胞の数を示す。
【図18】GBS80およびα−GCで免疫された母マウスとGBS80およびミョウバンで免疫された母マウスとの形質細胞頻度の比較。形質細胞頻度は、GBS80およびα−GCで免疫された母マウスにおいて有意に高かった。グラフは、100万Bリンパ球あたりのGBS80IgG形質細胞の数を示す。
【図19】ΔG287nz−953、936−741、および961cの3種類のMenB抗原(各々20μg/用量)単独に0.1μgのα−GCを混合した、または0.6mgのミョウバンを混合した混合物でマウスを免疫した。一連の3回の免疫化を、0日目、21日目、および35日目に施し、各々の免疫化後、各抗原に対するIgG力価を評価した。α−GCは、混合ワクチンの3種類のMenB抗原のすべてに対する抗体応答の増強においてミョウバンと同様に有効であった。免疫化のすべては、筋肉内であった。
【図1A】
【図1B】
【技術分野】
【0001】
本明細書に引用するすべての文献は、それら全体が参照として援用される。
【0002】
本発明は、ワクチン組成物の分野および、ワクチン組成物を用いる免疫化方法に関する。
【背景技術】
【0003】
病原体に由来する抗原を含むワクチン組成物を最初に投与すると、抗原に対して活性化細胞および記憶細胞の両形態での一次応答を誘導する。それに続くその抗原への曝露(例えばその病原体への曝露)は、免疫記憶細胞の増殖および一次応答よりもより迅速で大きい二次応答を誘導し、それによってその病原体からの保護を与える。
【0004】
免疫記憶細胞は、抗原への一次曝露の後、数カ月間または数年間でも存続するが、通常は、長期免疫記憶の維持を確実にするために抗原の追加免疫用量を与えることが必要である。従ってワクチン接種レジメンは、免疫記憶細胞の最初のバンクを与えるために何回かのプライミング注射、およびその後免疫記憶を維持するために次第に間隔をあけて何回かの追加免疫を含むことが多い。追加免疫注射と共に何回かのプライミング注射および頻度の必要性は、ワクチンおよび受容者の年齢によって変化する。
【0005】
免疫記憶の維持を損なうことなく、プライミング投与の回数および追加免疫投与の頻度と回数を減少させることができることは、有利である。理想的には、追加のプライミング投与および追加免疫投与の必要性を完全に取り除き、単回投与としてワクチンを投与することが好ましい。従って、本発明の目的は、追加免疫投与の非存在下でおよび/または複数のプライミング投与の非存在下で長期免疫記憶を誘導する免疫原性組成物を提供することである。
【0006】
本発明の目的は、さらに、インフルエンザウイルス、B群連鎖球菌、および血清型B株髄膜炎菌に由来する抗原を含む免疫原生組成物を提供することである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ワクチンは、免疫活性を高めるためにアジュバントを含むことが多い。既知のアジュバントの例としては、アルミニウム塩、水中油型乳剤、サポニン、サイトカイン、脂質、およびCpGオリゴヌクレオチドを含む。現在は、アルミニウム塩、3−デ−O−アシル化モノホスホリル脂質A(「3dMPL」)、およびMF59だけがヒト用途として承認されている。
【0008】
アジュバント特性を有することで知られている別の分子は、α−ガラクトシルセラミド(α−GalCerまたはα−GC)(糖脂質、より具体的にはグリコシルセラミド、最初は海綿から単離された)である[1]。α−GalCerは、MHCクラスI様分子のリガンド(CD1d)であり、CD1d分子によってインバリアントナチュラルキラーT(NKT)細胞に提示される。α−GalCerは、最初は、腫瘍細胞に対するNKT細胞応答を誘導するその能力を研究された[2]。インバリアントNKT細胞は、また、B細胞活性化を誘導し、B細胞増殖および抗体産生を増強させることが示されている[3、4]。α−GalCerは、同時投与される種々のタンパク質抗原のためのアジュバントとして作用することが示されている[5]。マラリア抗原を発現する照射されたスポロゾイトまたは組換えウイルスとα−GalCerとの同時投与は、マウスでの抗マラリア防御免疫のレベルを増強させることが示されている[6]。α―GalCerは、また、DNAワクチンをコードするHIV1型gag遺伝子およびenv遺伝子のためのアジュバントとして作用し[7]、鼻腔内に投与されると、インフルエンザウイルHA型に対して液性および細胞性の免疫応答を誘導する[8]ことが示されている。
【0009】
驚くべきことに、ワクチンアジュバントとしてのα−GalCer等のCD1dリガンドの使用は、ワクチンで抗原に対する抗体応答を著しく増強するばかりでなく、それらの抗原に対して特異的なB細胞記憶プールの増大を誘導することが、現在判明している。具体的には、α−GalCerおよび抗原を含む組成物の単回投与からなる投与は、1年後に抗原による攻撃に対する抗体応答を増強する特異的なB細胞記憶プールの増大を促進するのに十分であることが分った。特異的なB細胞記憶プールの増大を促進するこのCD1dリガンドの能力は、ワクチンアジュバントとしてのCD1dリガンドを使用すると、長期免疫記憶を得るために必要なプライミングおよび追加免疫投与回数と頻度を減少させることを示す。
【0010】
また、CD1dリガンドは、B群連鎖球菌、血清型B株髄膜炎菌に由来する抗原および特定のインフルエンザウイルス抗原に驚くほど有効なアジュバントであることが分った。
【0011】
長期免疫記憶を誘導する方法
本発明は、それを必要としている患者においてある抗原に対する長期免疫記憶を誘導する方法を提供し、CD1dリガンドの非存在下で前述の抗原の投与と比較して、前述の患者がその後の前述の抗原への曝露に対する免疫応答を上げることができるように必要な前述の組成物の投与回数および/または頻度を減少するように、以下を含む組成物を前述の患者に投与することを含む:
a)前述の抗原および
b)CD1dリガンド。
【0012】
好ましくは、本発明の方法は、CD1dリガンドの非存在下で前述の抗原の投与と比較して、前述の患者が前述の抗原へのその後の曝露に対する防御免疫応答を上げることができるために必要な前述の組成物の投与回数および/または頻度を減少させる。「防御免疫応答」とは、抗原へのその後の曝露に対して上昇した免疫応答が、患者が抗原と関連する疾患に罹患するのを防ぐのに十分であることを意味する。抗原に対する防御免疫応答を上げるために必要な組成物の投与回数および/または頻度の減少は、当該技術分野で周知の標準方法で測定される。
【0013】
本発明の方法は、その抗原へのその後の曝露に対する防御免疫応答を誘導するのに必要な抗原を含む組成物の投与回数を減少させる。一部の免疫化は、現在、抗原へのその後の曝露に対する防御免疫応答を上げるために3回もしくは4回の抗原のプライミング投与を必要とする。好ましくは、本発明の方法は、抗原に対する防御免疫応答を誘導するのに必要な投与回数を単回プライミング投与まで減少させる。
【0014】
現在の免疫化方法は、また、抗原へのその後の曝露に対する防御免疫応答を維持するために次第に間隔をあける追加免疫免疫化を必要とすることが多い。例えば、幼児期に施される免疫化は、通常は、初回量の投与から数カ月または数年後に施される追加免疫投与を含む。好ましくは、本発明の方法は、抗原へのその後の曝露に対する防御免疫応答を維持するために必要な抗原を含む組成物の追加免疫投与の頻度を減少させる。好ましくは、本発明の方法は、1年を超える、好ましくは2年を超える、好ましくは5年を超える、好ましくは10年を超える間隔で追加免疫投与が投与されることを可能にする。本発明の好ましい実施形態により、追加免疫投与のための必要性は完全に排除され、抗原の単回投与は、抗原へのその後の曝露に対する防御免疫応答を誘導するのに十分である。
【0015】
本発明の一態様によると、患者の抗原に対する免疫応答を誘導する方法は、抗原およびCD1dリガンドが、1年より前にも投与された患者に以下を投与することを含み提供される:
a)前述の抗原および
b)CD1dリガンド。
【0016】
本発明は、また、抗原およびCD1dリガンドが1年より前にも投与された患者において免疫応答を誘導するための薬物の製造で前述の抗原およびCD1dリガンドの使用を提供する。
【0017】
好ましくは、免疫応答は、防御免疫応答である。好ましくは、前述の抗原およびCD1dリガンドは、前述の患者に18カ月以上前に、好ましくは2年以上前に、好ましくは5年以上前に、好ましくは10年以上前に投与された。
【0018】
本発明のこの態様によって患者に投与される抗原およびCD1dリガンドは、混合物として、すなわち、抗原およびCD1dリガンドの両方を含む単一組成物として投与される。あるいは、抗原およびCD1dリガンドは、最初に投与される抗原もしくはCD1dリガンドのいずれかと同じ部位で患者に連続して投与される。抗原およびCD1dリガンドは、また、異なる部位で(例えば異なる四肢に)別々に患者に投与される。1年以上前に患者に投与されたCD1dリガンドおよび抗原の初回投与は、また、CD1dリガンドと抗原との単一組成物として投与されることも可能であり、またはCD1dリガンドと抗原は、連続してもしくは別々に投与される。免疫応答を誘導するために患者に投与されるCD1dリガンドの量は、組成物が投与される患者の年齢および体重によって変化するが、通常は、1〜100μg/kg患者体重で含む。驚くべきことに、低用量のCD1dリガンドは、同時投与された抗原への免疫応答を増強し、その抗原に対する長期免疫記憶を促進するのに十分であることが分った。本発明の組成物に含まれるCD1dリガンドの量は、従って、患者体重あたり50μg/kg未満、20μg/kg未満、10μg/kg未満、5μg/kg未満、4μg/kg未満、または3μg/kg未満であってよい。
【0019】
本発明の別の態様によると、患者の抗原に対する免疫応答を誘導する方法は、前述の患者に以下を投与することを含み提供される:
a)前述の抗原および
b)CD1dリガンド;
ここでは、組成物に含まれるCD1dリガンドの量は、患者体重あたり10μg/kg未満、好ましくは、5μg/kg未満、4μg/kg未満、または3μg/kg未満である。
【0020】
本発明は、また、患者の免疫応答を誘導するための薬物の製造で抗原およびCD1dリガンドの使用を提供する。ここでのCD1dリガンドの量は、患者の体重あたり10μg/kg未満、好ましくは、5μg/kg未満、4μg/kg未満、または3μg/kg未満である。
【0021】
本発明のこの態様により患者に投与される抗原およびCD1dリガンドは、混合物として投与される;同じ部位(最初に投与される抗原またはCD1dリガンドのいずれかと)に患者に連続して投与される;または異なる部位(例えば異なる四肢に)に別々に患者に投与される。
【0022】
CD1dリガンド
本発明の組成物に含まれるCD1dリガンドは、CD1d分子に結合する任意の分子であってよい。CD1d分子は、インバリアントNKT(iNKT)細胞、B細胞、樹状細胞、単核細胞、および従来のT細胞の上に位置し、本発明のCD1dリガンドは、これらの細胞のいずれかに位置するCD1d分子に結合する。本発明のCD1dリガンドのCD1d分子への結合は、iNKT細胞、B細胞、樹状細胞、単核細胞、および/または従来のT細胞を活性化する。好ましくは、CD1dリガンドのCD1d分子への結合は、iNKT細胞を活性化する。CD1d分子に結合する分子の能力は、当該技術分野で周知の標準方法によって決定される。細胞、特にインパリアントNKT細胞を活性化するCD1dリガンドの能力は、CD1dリガンドの非存在下で放出されるサイトカインの濃度と比較して、CD1dリガンドの存在下で細胞から放出されるサイトカインの濃度を測定することで決定される。好ましくは、本発明の組成物に含まれるCD1dリガンドは、CD1dリガンドの非存在下でインバリアントNKT細胞によるサイトカイン分泌の濃度と比較して、インバリアントNKT細胞によるサイトカイン分泌の濃度を上昇させる。本発明のCD1dリガンドは、Th1サイトカインまたはTh2サイトカインの放出を促進する。好ましくは、本発明のCD1dリガンドは、CD1dリガンドの非存在下でインバリアントNKT細胞によって分泌されるIFN−γ、IL−4、およびIL−13のレベルと比較して、インバリアントNKT細胞によって分泌されるIFN−γ、IL−4、およびIL−13のレベルを上昇させる。
【0023】
インバリアントNKT細胞を活性化するCD1dリガンドとして作用する能力を検査される候補分子は、ペプチドおよびサッカライドを含む。好ましくは、本発明のCD1dリガンドは糖脂質である。本発明の組成物に含まれるCD1dリガンドとして作用することが知られている糖脂質抗原の総説は、参照文献9に示される。
【0024】
本発明の組成物での使用に適したCD1dリガンドの例は、α−グリコシルセラミドを含む。本発明の組成物で使用されるα−グリコシルセラミドは、好ましくは、式(I)の化合物である:
【0025】
【化1】
(式中、
Aは、O、CH2、−CH2CH=CH、−CH=CHCH2を表し、
Qは、nが0もしくは1の整数を表す(CH2)nを表し、
R1は、HもしくはOHを表し、
Xは、1から30の整数を表し、
R2は、以下の(a)乃至(e)から成る群から選択される置換基を表す(式中、Yは、5から17の整数を表す)。
(a)−CH2(CH2)YCH3
(b)−CH(OH)(CH2)YCH3
(c)−CH(OH)(CH2)YCH(CH3)2
(d)−CH=CH(CH2)YCH3
(e)−CH(OH)(CH2)YCH(CH3)CH2CH3、
R3は、H、OH、NH2、NHCOCH3、またはモノサッカライドを表し、
R4は、OHまたはモノサッカライドを表し、
R5は、H、OH、またはモノサッカライドを表し、
R6は、H、OH、またはモノサッカライドを表し、および
R7は、H、CH3、CH2OH、または−CH2−モノサッカライドを表す。
【0026】
Xは、好ましくは、7から27の間、より好ましくは、9から24の間、およびより好ましくは13から20の間である。Yは、好ましくは、7から15の間、より好ましくは、9から13の間である。
【0027】
用語「モノサッカライド」は、アルデヒド(アルドース)またはケトン(ケトース)の形で3〜10の炭素原子の鎖を有する糖分子を意味する。本発明での使用に適したモノサッカライドは、自然発生と合成の両モノサッカライドを含む。モノサッカライドの例として、以下が挙げられる:トリオース(グリセロースおよびジヒドロキシアセトン等);テキストロース(エリサノース(erythanose)およびエリトルロース等);ペントース(キシロース、アラビノース、リボース、キシルロース、リブロース等);メチルペントース(6−デオキシヘキソース)(ラムノースおよびフルクトース等);ヘキソース(グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、およびソルボース等);ヘプトース(グルコヘプトース、ガラマンノヘプトーセ(galamannoheptose)、セドヘプツロース、およびマンノヘプツロース等)。好ましいモノサッカライドは、ヘキソースである。
【0028】
モノサッカライド基は、グルコシル結合を形成するために、R3、R4、R5、R6、またはR7の位置で構造に結合してよい。通常は、モノサッカライドは、モノサッカライドのC−1炭素に結合した酸素を介してR3、R4、R5、R6、またはR7の位置に結合し、グリコシド結合を形成する。
【0029】
R3がモノサッカライドの場合、α−D−ガラクトピラノース、β−D−ガラクトピラノース、α−D−グルコピラノース、またはβ−D−グルコピラノースから選択されるのが好ましい。
【0030】
R4がモノサッカライドの場合、β−D−ガラクトフラノースまたはN−アセチル α−D−ガラクトピラノースから選択されるのが好ましい。
【0031】
R5がモノサッカライドの場合、α−D−ガラクトピラノース、β−D−ガラクトピラノース、α−D−グルコピラノース、またはβ−D−グルコピラノースから選択されるのが好ましい。
【0032】
R6がモノサッカライドの場合、α−D−ガラクトピラノース、β−D−ガラクトピラノース、α−D−グルコピラノース、またはβ−D−グルコピラノースから選択されるのが好ましい。
【0033】
R7がモノサッカライドの場合、メチル α−D−ガラクトピラノシド、メチル β−D−ガラクトピラノシド、メチル α−D−グルコピラノシド、またはメチル β−D−グルコピラノシドから選択されるのが好ましい。
【0034】
R5とR6は異なるのが好ましい。R5およびR6の1つはHであるのが好ましい。
【0035】
さらに、本発明の組成物の包含に適したα−グリコシルセラミドの例は、参照文献2に示される。
【0036】
好ましくは、α−グリコシルセラミドは、以下に示す式を有するα−グリコシルセラミド(α−GalCer)、またはその類似体である:
【0037】
【化2】
本発明の組成物に含まれるα−GalCerおよびその類似体は、海綿から直接単離されることが可能であり、または化学的に合成される生成物であってよい。
【0038】
本発明の組成物での使用に適したα−GalCer類似体の例、およびこれらの生成物を合成する方法は、参照文献10および11に示される。好ましいα−GalCer類似体は、式(2S,3S,4R)−1−O−(α−D−ガラクトピラノシル)−2−(N−ヘキサコサノイルアミノ)−l,3,4−オクタデカントリオール)を有するKRN7000である。KRN7000の合成は、参照文献12に記述されている。
【0039】
さらに好ましいα−GalCer類似体は、参照文献13、14、および15に記述されているもの等のα−GalCerのC結合類似体である。好ましいα−GalCerのC結合類似体は、CRONY−101であり、その合成は参照文献13に記述されている。
【0040】
α−GalCerと比較して脂肪酸アシル鎖および/またはスフィンゴシン鎖が切り詰められた切断型α−GalCer類似体も、本発明で使用される。切断型α−GalCer類似体の例は、参照文献16に示されている。好ましいα−GalCerと比較して、好ましいα−GalCerの切断型類似体は、脂肪酸アシル鎖が2つの炭化水素の切断を有し、スフィンゴシン鎖が9つの炭化水素の切断を有する(すなわち、R1=H、X=21、R2=CH(OH)(CH2)4CH3、R3=0H、R4=0H、R5=0H、R6=H、およびR7=CH2OH)「OCH」である。
【0041】
さらに、好ましいα−GalCerと比較して、好ましいα−GalCerの切断型類似体は、脂肪酸アシル鎖が2つの炭化水素の切断を有し、スフィンゴシン鎖が7つもしくは3つの炭化水素の切断を有する(すなわち、R1=H、X=21、R3=OH、R4=OH、R5=OH、R6=H、R7=CH2OH、およびR2がCH(OH)(CH2)6CH3またはCH(OH)(CH2)10CH3のいずれかである)類似体を含む。
【0042】
α−GalCer、KRN7000、およびOCHは、すべてフィトスフィンゴシン含有α−グリコシルセラミドである。しかし、本発明は、また、スフィンゴシン包含KRN7000、OCH、および上述の他のα−グリコシルセラミドの類似体の使用を含む。スフィンゴシン含有KRN7000およびOCHの類似体の合成は、参照文献17に記述されている。
【0043】
本発明の組成物で使用されるCD1dリガンドは、また、参照文献18に記述されるようなスルファチド類似体を含んでよい。α−GalCerの好ましい類似体は、3’−O−スルホ−ガラクトシルセラミドである。
【0044】
α−GalCerは、最初は海綿から単離されたが、α−GalCerの類似の構造からなるCD1dリガンドは、最近、グラム陰性細菌から単離されている。さらに、本発明の組成物に含まれるCD1dリガンドは、従って、細菌に由来する糖脂質であり、特にスフィンゴモナス(Sphingomonas)およびエーリキア(Ehrlichia)の外膜から単離される細菌性グリコシルセラミドである。そのようなグリコシルセラミドの例は、スフィンゴモナスに由来するα−グルクロノシルセラミドおよびα−ガラクツロンシルセラミドを含み、それらの生成は参照文献19に記述されている。さらに、スフィンゴモナスおよびボレリア(Borrelia)に由来するCD1dリガンドの生成は、参照文献18に記述されている。
【0045】
本発明は、また、スフィンゴ糖脂質ファミリーに属さないCD1dリガンドの使用を含む。特に、本発明は、グリセロール糖脂質であるCD1dリガンドの使用を含む。本発明で使用されるグリセロール糖脂質は、ジアシルグリセロール、特にモノガラクトシルジアシルグリセロールを含む。本発明での使用に適したモノガラクトシルジアシルグリセロールは、参照文献20に記述されている。
【0046】
組成物の抗原成分
上述の長期免疫記憶を誘導するための組成物に含まれる抗原は、免疫応答の誘導での用途で周知の任意の抗原であってよい。抗原は、タンパク質抗原またはサッカライド抗原を含んでよい。
【0047】
サッカライド抗原
抗原がサッカライド抗原の場合、抗原は、好ましくは、キャリアタンパク質に抱合される。好ましくは、サッカライド抗原は、細菌サッカライドであり、特に細菌莢膜サッカライドである。
【0048】
本発明の組成物に含まれる細菌莢膜サッカライドの例は、髄膜炎菌(血清群A、B、C、W135、またはY)、肺炎球菌(血清型4、6B、9V,14、18C、19F、または23F型)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Ia、Ib、II、III、IV、V、VI、VII、またはVIII型)、インフルエンザ菌(分類可能株:a、b、c、d、e、またはf型)、緑膿菌、黄色ブドウ球菌等由来の莢膜サッカライドを含む。本発明の組成物に含まれる他のサッカライドは、グルカン(例えば、カンジダ・アルビカンス種もの等の真菌グルカン)、および真菌莢膜サッカライド(例えば、クリプトコッカス・ネオフォルマンスの莢膜由来)を含む。
【0049】
髄膜炎菌血清群A(MenA)莢膜は、(α1→6)結合N−アセチル−D−マンノサミン−1−ホスフェート(C3およびC4の位置に部分的なO−アセチル化を有する)のホモポリマーである。髄膜炎菌血清群B(MenB)莢膜は、(α2→8)結合シアル酸ホモポリマーである。髄膜炎菌(N.meningitidis)血清群C(MenC)莢膜サッカライドは、(α2→9)結合シアル酸(7および/または8の位置に可変のO−アセチル化を有する)のホモポリマーである。髄膜炎菌血清群W135サッカライドは、シアル酸−ガラクトースジサッカライドの単位[→4)−D−Neup5Ac(7/9OAc)−α−(2→6)−D−Gal−α−(1→]から成るポリマーである。血清群W135サッカライドは、シアル酸の7および9の位置に可変のO−アセチル化を有する[21]。髄膜炎菌血清群Yサッカライドは、ジサッカライド繰り返し単位が、ガラクトース[→4)−D−Neup5Ac(7/9OAc)−α−(2→6)−D−Gal−α−(1→]の代わりにグルコースを含むことを除けば、血清群W135サッカライドと類似している。血清群Yサッカライドも、シアル酸の7および9の位置に可変のO−アセチル化を有する。
【0050】
インフルエンザ菌b型(Hib)莢膜サッカライドは、リボース、リビトール、およびホスフェート[‘PRP’,(ポリ−3−β−D−リボース(1,1)−D−リビトール−5−ホスフェート)]のポリマーである。
【0051】
本発明の組成物は、サッカライド抗原コンジュゲートの混合物を含んでよい。好ましくは、本発明の組成物は、髄膜炎菌の複数の血清群からのサッカライド抗原を含む。例えば、組成物は、血清群A+C、A+W135、A+Y、C+W135、C+Y、W135+Y、A+C+W135、A+C+Y、C+W135+Y、A+C+W135+Y等に由来するサッカライドコンジュゲートを含んでよい。好ましい組成物は、血清群CおよびYに由来するサッカライドコンジュゲートを含む。他の好ましい組成物は、血清群C、W135、およびYからのサッカライドコンジュゲートを含む。
【0052】
混合物が、血清群Aおよび少なくとも1つの他の血清群サッカライドに由来する髄膜炎菌(N.meningitidis)性サッカライドを含む場合、MenAサッカライド対任意の他の血清群サッカライドの比(w/w)は、1より大きくてもよい(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、またはそれ以上)。血清群A:C:W135:Y由来のサッカライドの好ましい比(w/w)は以下の通りである:1:1:1:1、1:1:1:2、2:1:1:1、4:2:1:1、8:4:2:1、4:2:1:2、8:4:1:2、4:2:2:1、2:2:1:1、4:4:2:1、2:2:1:2、4:4:1:2、および2:2:2:1。
【0053】
本発明のさらに好ましい組成物は、Hibサッカライドコンジュゲート、および髄膜炎菌の少なくとも1つの血清群に由来する、好ましくは髄膜炎菌の複数の血清群に由来するサッカライドコンジュゲートを含む。例えば、本発明の組成物は、Hibコンジュゲートならびに髄膜炎菌血清群A、C、W135、およびYに由来するコンジュゲートを含んでよい。
【0054】
本発明は、さらに、肺炎球菌サッカライドコンジュゲートから構成される組成物を含む。好ましくは、組成物は、肺炎球菌の複数の血清型に由来するサッカライドコンジュゲートを含む。好ましい組成物は、肺炎球菌血清型4、6B、9V、14、18C、19F、および23F(7価)に由来するサッカライドコンジュゲートを含む。組成物は、さらに、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型4、6B、9V、14、18C、19F、23F、1、および5(9価)に由来するサッカライドコンジュゲートを含むことも可能であり、および肺炎球菌血清型4、6B、9V、14、18C、19F、23F、1、5、3、および7F(11価)に由来するサッカライドコンジュゲートを含んでよい。
【0055】
本発明のさらに好ましい組成物は、肺炎球菌サッカライドコンジュゲートおよびHibおよび/または髄膜炎菌に由来するサッカライドコンジュゲートを含む。好ましくは、本発明の組成物は、肺炎球菌血清型4、6B、9V、14、18C、19F、および23Fに由来するサッカライドコンジュゲート、ならびにHibサッカライドコンジュゲートを含む。好ましくは、本発明の組成物は、肺炎球菌血清型4、6B、9V、14、18C、19F、および23Fに由来するサッカライドコンジュゲート、ならびに髄膜炎菌血清群A、C、W135、およびYに由来するサッカライドコンジュゲートを含んでよい。本発明による組成物は、また、肺炎球菌血清型4、6B、9V、14、18C、19F、および23Fに由来するサッカライドコンジュゲート、Hibサッカライドコンジュゲート、ならびに髄膜炎菌血清群A、C、W135、およびYに由来するサッカライドコンジュゲートを含んでよい。
【0056】
個々のサッカライド抗原コンジュゲートの予防効果は、それらを組み合わせることによって除去されないことが好ましい。しかし実際の免疫原性(例えば、ELISA力価)が減少する可能性はある。
【0057】
莢膜サッカライド抗原の調製
莢膜サッカライド抗原の調製方法は、周知である。例えば、参照文献22は、髄膜炎菌に由来するサッカライド抗原の調製を記述している。インフルエンザ菌に由来するサッカライド抗原の調製は、参照文献86の第14章に記述されている。肺炎球菌に由来するサッカライド抗原およびコンジュゲートの調製は、当該技術分野で記述されている。例えば、Prevenar(プレベナー)(登録商標)は、7価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンである。ストレプトコッカス・アガラクチアに由来するサッカライド抗原の調製のプロセスは、参照文献23および24に詳細に記述されている。
【0058】
サッカライド抗原は、化学的に修飾される。例えば、それらの抗原は、1つまたは複数のヒドロキシル基を封鎖基と置換するように修飾される。これは、加水分解を防ぐためにアセチル基が封鎖基と置換される可能性のある髄膜炎菌性血清群Aにとって特に有用である[25]。そのように修飾されたサッカライドは、依然として、本発明の目的の範囲内の血清群Aサッカライドである。
【0059】
莢膜サッカライドは、オリゴサッカライドの形で使用される。これらは、精製された莢膜ポリサッカライドの断片化によって(例えば加水分解によって)適宜に形成される。これは、通常、所望の大きさの断片に精製することを伴う。
【0060】
ポリサッカライドの断片化は、好ましくは、最終の平均重合度(DP)30未満のオリゴサッカライドをもたらすように実行される。DPは、イオン交換クロマトグラフィーによって、または比色分析によって適宜に測定されることが可能である[26]。
【0061】
加水分解が実行される場合、加水分解物は、通常、短いオリゴサッカライドを取り除くために大きさによって分けられる[27]。これは、限外濾過等(それに続くイオン交換クロマトグラフィー)の種々の方法で達成されることが可能である。約6以下の重合度を有するオリゴサッカライドは、好ましくは、血清群Aのために除去され、約4未満のものは、好ましくは、血清群W135およびYのために除去される。
【0062】
キャリア
好ましくは、キャリアはタンパク質である。本発明の組成物でサッカライド抗原が結合される好ましいキャリアタンパク質は、ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイド等の細菌性毒素である。適切なキャリアタンパク質として、以下が挙げられる:ジフテリア毒素変異体のCRM197[28〜30];ジフテリアトキソイド;髄膜炎菌外膜タンパク質[31];合成ペプチド[32、33];熱ショックタンパク質[34、35];百日咳タンパク質[36、37];サイトカイン[38];リンホカイン[38];ホルモン[38];増殖因子[38];N19タンパク質[40]、インフルエンザ菌(H.influenzae)に由来するタンパク質D[41、42]、肺炎球菌表面タンパク質(PspA)、ニューモリシン[44]、鉄取り込みタンパク質[45]、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)[46]に由来する毒素Aまたは毒素B、ヒト血清アルブミン(好ましくは組換え型)等の種々の病原体に由来する抗原からの複数のヒトCD4+ T細胞エピトープを含む人工タンパク質。
【0063】
キャリアへのサッカライド抗原の結合は、好ましくは、−NH2基(例えば、キャリアタンパク質内のリジン残基の側鎖内、またはアルギニン残基の側鎖内の)を介する。サッカライドが遊離アルデヒド基を有する場合、これは、還元的アミノ化によってコンジュゲートを形成するために、キャリア内のアミンと反応することができる。結合は、また−SH基(例えば、システイン残基の側鎖内の)を介してよい。
【0064】
組成物が複数のサッカライド抗原を含む場合、例えば、キャリア抑制のリスクを減少させるために、複数のキャリアを使用することが可能である。従って、様々なキャリアが様々なサッカライド抗原に対して使用される。例えば、髄膜炎菌血清群Aサッカライドは、CRM197と結合されることもあり、一方血清群Cサッカライドは、破傷風トキソイドと結合されることもある。特定のサッカライド抗原に対して複数のキャリアを使用することも可能である。サッカライドには、2つのグループがある。CRM197と結合されるものもあれば、破傷風トキソイドと結合されるものもある。しかしながら、概してすべてのサッカライドに対して同じキャリアを使用することが好まれる。
【0065】
単一のキャリアタンパク質は、複数のサッカライド抗原を有してよい[47、48]。例えば、単一のキャリアタンパク質は、様々な病原体または同じ病原体の様々な血清群に由来するサッカライドに結合する。この目的を達成するために、様々なサッカライドは結合反応の前に混合される。しかしながら、概して、結合後に混合される様々なサッカライドを有する血清群ごとに別々のコンジュゲートを有することが好まれる。別々のコンジュゲートは、同じキャリアに基づくことが可能である。
【0066】
サッカライド:タンパク質の比率(w/w)を1:5(すなわち過剰タンパク質)から5:1(すなわち過剰サッカライド)の間で有するコンジュゲートが好ましい。1:1.25〜1:2.5の間の比率が好ましいように1:2から5:1の間の比率は、好ましい。
【0067】
コンジュゲートは、遊離キャリアと組み合わせて使用される[49]。所定のキャリアタンパク質が、本発明の組成物に遊離形態および結合形態の両方で存在するとき、非結合形態は、全体として組成物のキャリアタンパク質の全体量の5%を超えないことが好ましく、より好ましくは、2重量%未満で存在する。
【0068】
任意の適切な結合反応は、必要に応じ任意の適切なリンカーとともに使用される。
【0069】
サッカライドは、通常は、結合の前に活性化されるか、または官能化される。活性化は、例えば、CDAP(例えば、1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロホウ酸[50、51等])等のシアノ化試薬を含んでよい。他の適切な手法は、カルボジイミド、ヒドラジド、活性エステル、ノルボラン、p−ニトロ安息香酸、N−ヒドロキシスクシンイミド、S−NHS、EDC、TSTUを使用する(参照文献52の導入部も参照)。
【0070】
リンカー基を介する結合は、任意の既知の方法(例えば参照文献53および54に記述される方法)を用いてなされる。結合の1つの型は、ポリサッカライドの還元的アミノ化を含み、結果として生じるアミノ基をアジピン酸リンカー基の一端と結合させ、次いで、タンパク質をアジピン酸リンカー基の他端と結合させる[55、56]。他のリンカーとして、以下が挙げられる:B−プロピオンアミド[57]、ニトロフェニル−エチルアミン[58]、ハロアシルハライド[59]、グリコシド結合[60]、6−アミノカプロン酸[61]、ADH[62]、C4〜C12部分[63]等。リンカーを用いる代わりに直接結合を用いることも可能である。タンパク質への直接結合は、例えば、参照文献64および65に記述されるように、ポリサッカライドの酸化と、それに続くそのタンパク質による還元的アミノ化を含む。
【0071】
アミノ基のサッカライドへの導入(例えば、末端=0基を−NH2と置換することによる)、それに続くアジピン酸ジエステル(例えば、アジピン酸N−ヒドロキシスクシンイミドジエステル)による誘導体化、およびキャリアタンパク質との反応を含むプロセスが、好ましい。
【0072】
結合の後、遊離サッカライドと結合サッカライドとは分離される。この分離のために多数の適切な方法があり、その方法として疎水性クロマトグラフィー、接線限外濾過法、ダイアフィルトレーション(参照文献66、67等も参照)等が挙げられる。
【0073】
本発明の組成物が脱重合したサッカライドを含む場合、脱重合が結合に先行することが好ましい。
【0074】
本発明の組成物への包含に適した適切なサッカライドコンジュゲート抗原の調製は、参照文献68に記述されている。
【0075】
タンパク質抗原
本発明の組成物に含まれる抗原が、タンパク質抗原である場合、以下から選択される:
−参照文献69〜75に記述されるもののように、髄膜炎菌血清型B株に由来するタンパク質抗原。参照文献73の標準命名法を用いて、NMB2132、NMB1870、およびNMB0992は、適切な抗原の基本として使用される3つの好ましいタンパク質である。
−肺炎球菌に由来するタンパク質抗原(参照文献76に開示されるように、PhtA、PhtD、PhtB、PhtE、SpsA、LytB、LytC、LytA、Sp125、Sp101、Sp128、Sp130、およびSp133に由来する)。
−A型肝炎ウイルス(不活性化ウイル等)に由来する抗原[例えば、参照文献77および78;86の第15章]。
−B型肝炎ウイルスに由来する抗原(例えば、表面抗原および/またはコア抗原)[例えば、参照文献78、79;86の第16章]。
−C型肝炎ウイルスに由来する抗原[例えば80]。使用されるC型肝炎ウイルス抗原は、以下から1つまたは複数を含んでよい:HCV E1および/またはE2タンパク質、E1/E2ヘテロ二量体複合体、コアタンパク質と非構造タンパク質(非構造たんぱく質は、酵素活性を除去するために任意に修飾されるが、免疫原性は保持する)[例えば81、82、および83]、またはこれらの抗原の断片。
−百日咳菌に由来する抗原(百日咳ホロ毒素(PT)および百日咳菌に由来する線維状赤血球凝集素(FHA)、任意にパータクチンおよび/または凝集原2および3の組み合わせ)[例えば参照文献84および85;参照文献86の第21章]。
−ジフテリア抗原(ジフテリアトキソイド等)[例えば参照文献86の第13章]。
−破傷風抗原(破傷風トキソイド等)[例えば参照文献86の第27章]。
−淋病に由来する抗原[例えば69、70、71]。
−肺炎クラミジアに由来する抗原[例えば87、88、89、90、91、92、93]。
−トラコ−マクラミジアに由来する抗原[例えば94]。
−ジンジバリス菌に由来する抗原[例えば95]。
−ポリオ抗原(単数または複数の)[例えば参照文献96、97;86の第24章](IPV等)。
−狂犬病抗原(単数または複数の)[例えば98](凍結乾燥不活性化ウイルス等)[例えば99、RabAvert(登録商標)]。
−麻疹、流行性耳下腺炎、および/または風疹抗原[例えば参照文献86の第19、20、および26章]。
−ピロリ菌に由来する抗原(CagA[100〜103]、VacA[104、105]、NAP[106、107、108]、HopX[例えば109]、HopY[例えば109]、および/またはウレアーゼ等)。
−インフルエンザ抗原(単数または複数の)[例えば参照文献86の第17、18章](赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質)。
−カタル球菌に由来する抗原[例えば110]。
−ストレプトコッカス・アガラクチア(B群連鎖球菌)に由来するタンパク質抗原[例えば111、112]。
−化膿性連鎖球菌(A群連鎖球菌)に由来する抗原[例えば112、113、114]。
−黄色ブドウ球菌に由来する抗原[例えば115]。
−パラミクソウイルスに由来する抗原(単数または複数の)(呼吸器合胞体ウイルス(RSV[116、117])および/またはパラインフルエンザウイルス(PIV3[118]))。
−炭疽菌に由来する抗原[例えば119、120、121]。
−フラビウイルス科(フラビウイルス属)のウイルスに由来する抗原(黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、デングウイルスの4血清型、ダニ媒介性脳炎、ウエストナイルウイルス等に由来)。
−ペスチウイルス抗原(古典的ブタ熱ウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス、および/またはボーダー病ウイルスに由来等)。
−パルボウイルス抗原(パルボウイルスB19由来等)。
−単純ヘルペスウイルス(HSV)抗原。本発明での使用に好ましいHSV抗原は、膜糖タンパク質gDである。HSV2型株に由来するgD(「gD2」抗原)を使用することが好ましい。組成物は、C末端膜アンカー領域が除去された[122]gD(例えば、C末端にアスパラギンおよびグルタミンの付加を有する天然タンパク質のアミノ酸1〜306を含む切断型gD)の形態を使用することが可能である。この形態のタンパク質は、切断されて成熟283アミノ酸タンパク質を産生するシグナルペプチドを含む。アンカーの除去は、タンパク質が可溶型に調製されることを可能にする。
−ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原。本発明での使用に好ましいHPV抗原は、ウイルス様粒子(VLP)として周知の構造を形成するために構築することが可能なL1カプシドタンパク質である。VLPは、酵母細胞(出芽酵母等)で、または昆虫細胞(例えば、ヨトウガ等のスポドプテラ細胞で、またはショウジョウバエ細胞で)でL1の組換え発現によって産生される。酵母細胞のために、プラスミドベクターはL1遺伝子(単数または複数の)を有する。昆虫細胞のために、バキュロウイルスベクターはL1遺伝子(単数または複数の)を有する。より好ましくは、組成物は、HPV−16およびHPV−18の両株に由来するL1 VLPを含む。この二価の組み合わせは、効果が高いことが示されている[123]。HPV−16およびHPV−18の株に加えて、HPV−6およびHPV−11の株に由来するL1 VLPを含むことも可能である。発癌性HPV株の使用も可能である。ワクチンは、HPV株あたり20〜60μg/ml(例えば、約40μg/ml)のL1を含んでよい。
【0076】
組成物は、必要に応じて解毒される(例えば、化学的および/または遺伝学的な方法による百日咳毒素の解毒)これらの抗原から1つまたは複数を含んでよい。
【0077】
混合物にジフテリア抗原が含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原も含むことが好ましい。
【0078】
混合物中の抗原は、通常は、各々少なくとも1μg/mlの濃度で存在する。一般に、任意の所定の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を誘発するのに十分な濃度である。
【0079】
混合物中のタンパク質抗原を使用する代わりに、抗原をコードする核酸が使用される。混合物のタンパク質成分は、従って、タンパク質をコードする核酸(好ましくは、例えばプラスミドの形態のDNA)によって置換される。同様に、本発明の組成物は、抗原を模倣する(例えばミモトープ[124]または抗イディオタイプ抗体)タンパク質を含んでよい。
【0080】
あるいは、または上記の抗原に加えて、組成物は、参照文献125、126、127、128等に開示されるような髄膜炎菌血清型B株に由来する外膜小胞(OMV)調製物を含んでよい。
【0081】
付加的な組成物
さらに本発明の目的は、B群連鎖球菌、髄膜炎菌血清型B株および/またはインフルエンザウイルスからの保護を与えるワクチン組成物を提供することである。CD1dリガンドが、これらの病原体に由来する抗原に対して驚くほど有効なアジュバントであることが判明している。
【0082】
以下に記述する組成物は、B群連鎖球菌、髄膜炎菌血清型B株またはインフルエンザウイルスに由来する抗原を少なくとも1つ含む。これらの組成物は、付加的な抗原を含んでよい。例えば、これらの組成物は、長期免疫記憶の誘導で使用する組成物に包含するために上述のような1つまたは複数のキャリアに結合される1つまたは複数のサッカライド抗原も含んでよい。あるいは、または加えて、これらの組成物は、上述のタンパク質抗原から1つまたは複数のタンパク質抗原を含んでよい。
【0083】
B群連鎖球菌
従って、本発明は以下を含む組成物を提供する:a)CD1dリガンド、およびb)B群連鎖球菌に由来する抗原。.
組成物に包含するB群連鎖球菌に由来する抗原の例は、参照文献111および112に見出せる。このように、組成物は、以下から1つまたは複数を含むタンパク質を含んでよい:(i)参照文献112の連鎖球菌アミノ酸配列(参照文献112の偶数の配列番号2〜10960);(ii)(i)の連鎖球菌アミノ酸配列に少なくと80%の配列同一性を有するアミノ酸配列;(i)の連鎖球菌アミノ酸配列からのエピトープを含むアミノ酸配列。好ましくは、組成物は、参照文献112に記述されるようにGBS1からGBS689のタンパク質から1つまたは複数を含む(参照文献内の表IVを参照)。より好ましくは、組成物はGBS80タンパク質抗原を含む。
【0084】
髄膜炎菌
本発明は、また、以下を含む組成物を提供する:a)CD1dリガント、およびb)髄膜炎菌に由来する抗原。
【0085】
組成物に含まれる髄膜炎菌に由来する抗原は、タンパク質抗原または外膜小胞(OMV)調製物であってよい。組成物に含まれるOMV調製物の例は、髄膜炎菌血清群A、B、C、W135、またはYに由来するOMV調製物を含む。組成物に含まれる髄膜炎菌に由来するタンパク質抗原の例も、上述される。好ましくは、タンパク質抗原は、髄膜炎菌血清型B株に由来し、患者に投与されると、髄膜炎菌血清型B細胞と交差反応する免疫応答を誘発する。髄膜炎菌血清型B細胞と交差反応する免疫応答を誘発する好ましいタンパク質抗原は、「ΔG287nz−953」、「936−741」、および「961c」タンパク質抗原を含む[129]。好ましくは、組成物は、髄膜炎菌に由来する複数の抗原を含む。好ましくは、組成物は、「ΔG287nz−953」、「936−741」、および「961c」の3つのタンパク質抗原のすべてを含む。他の有用なタンパク質抗原は、NMB2132、NMB1870、およびNMB0992に基づく。
【0086】
インフルエンザウイルス
本発明は、また、以下を含む組成物を提供する:a)CD1dリガント、およびb)インフルエンザウイルス抗原。
【0087】
インフルエンザウイルス抗原は、通常は、インフルエンザビリオンから調製されるが、別の方法として、赤血球凝集素等の抗原が組換え宿主細胞で(例えば、バキュロウイルスベクターを用いる昆虫細胞系で)発現され、精製された形で使用される[130、131]。しかしながら、概して、抗原はビリオン由来である。
【0088】
抗原は、生きているウイルスの形態、またはより好ましくは、不活性化ウイルスの形態をとってよい。不活性化ウイルスが使用される場合、ワクチンは、全ビリオン、分割ビリオン、または精製表面抗原(赤血球凝集素を含む、および通常は、ノイラミニダーゼも含む)を含んでよい。インフルエンザ抗原は、また、ビロソームの形態で提示される[132]。
【0089】
インフルエンザウイルスは、減弱されることが可能である。インフルエンザウイルスは、温度感受性にすることが可能である。インフルエンザウイルスは、低温適応にすることが可能である。これらの3つの可能性は、特に生きているウイルスに適用される。
【0090】
ワクチンで使用するためのインフルエンザウイルス株は、季節ごとに変化する。現在の大流行間期では、ワクチンは、概して2つのインフルエンザA型株(H1N1およびH3N2亜型)および1つのインフルエンザB型株を含むワクチン、および三価ワクチンが典型的である。本発明は、また、H2、H5、H7、またはH9型のサブタイプ株(特に、インフルエンザA型ウイルスのサブタイプ株)等のパンデミック株(すなわち、ワクチンの受容者およびヒト母集団が免疫学的にナイーブである株)に由来するウイルスを使用される。パンデミック株に対するインフルエンザワクチンは、一価であってよく、または通常の三価ワクチンを基にしてパンデミック株を追加してもよい。しかしながら、季節およびワクチンに含まれる抗原の性質によって、本発明は、HAサブタイプH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、またはH16型から1つまたは複数に対して保護される。
【0091】
通常、組成物に含まれることが可能な他の株は、抗ウイルス療法に耐性を示す(例えば、オセルタミビル[133]および/またはザナミビルに耐性を示す)株であり、耐性パンデミック株[134]が含まれる。
【0092】
本発明のアジュバントされた組成物は、特に、パンデミック株に対して免疫するのに有用である。パンデミックな発生を引き起こす可能性を与えるインフルエンザ株の特徴は、以下の通りである:(a)現在循環しているヒト株における赤血球凝集素と比較して、それは、新しい赤血球凝集素を含む(すなわち、10年以上の間ヒト集団で明らかでなかったもの(例えばH2型)、または以前にはヒト集団で全く見られなかったもの(一般的に、トリ集団でのみ見つけられていた例えば、H5、H6、またはH9型)、ヒト集団がその株の赤血球凝集素に対して免疫学的にナイーブであるようなもの);(b)それは、ヒト集団で横方向に伝染することができる;(c)それは、ヒトに対して病原体である。H5型赤血球凝集素を有するウイルスは、H5N1亜型株等のパンデミックインフルエンザに対して免疫性を与えるために好まれる。他の可能な株として、H5N3、H9N2、H2N2、H7N1、およびH7N7亜型、ならびにその他可能性のある新たなパンデミック株が挙げられる。
【0093】
本発明の組成物は、インフルエンザA型ウイルスおよび/またはインフルエンザB型ウイルスを含む1つまたは複数(例えば1、2、3、または4以上)のインフルエンザウイルス株に由来する抗原を含んでよい。ワクチンが複数のインフルエンザ株を含む場合、異なる株は、通常、別々に増殖され、ウイルスを収集して、抗原を調製してから、混合される。従って、本発明のプロセスは、複数のインフルエンザ株に由来する抗原を混合するステップを含んでよい。
【0094】
インフルエンザウイルスは、リアソータントな株であり得、かつ逆遺伝学技法によって得られる可能性がある。逆遺伝学技法[例えば135〜139]は、所望のゲノムセグメントを有するインフルエンザウイルスを、プラスミドを使用してin vitroで調製することを可能にする。通常、それは、(a)所望のウイルスRNA分子をコードするDNA分子(例えばpoIIプロモーターから)、および(b)ウイルスタンパク質をコードするDNA分子(例えばpoIIIプロモーターから)を発現させ、細胞での両型のDNAの発現が、完全にインタクトな感染性ビリオンの構築につながるように関与する。好ましくは、DNAは、ウイルスRNAおよびタンパク質のすべてをもたらすが、一部のRNAおよびウイルスタンパク質をもたらすためにヘルパーウイルスを使用することも可能である。各々のウイルスRNAを生成するために別々のプラスミドを使用する、プラスミドに基づく方法が好まれる[140〜142]。これらの方法は、また、ウイルスタンパク質のすべてまたは一部を(例えば、PB1、PB2、PA、およびNPタンパク質だけを)発現させるためにプラスミドの使用(一部の方法では使用される最大12までのプラスミド)を含む。必要とされるプラスミドの数を減少させるために、最近のアプローチ[143]は、同一のプラスミド上で複数のRNAポリメラーゼI転写カセット(ウイルスRNA合成のための)(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのすべてのインフルエンザA型vRNAセグメントをコードする配列)と、別のプラスミドの上でRNAポリメラーセIIプロモーターを有する複数のタンパク質コード領域(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのすべてのインフルエンザA型mRNA転写物をコードする配列)とを組み合わせる。参照文献143の方法の好ましい態様は、以下を含む:(a)単一のプラスミド上で、PB1、PB2、およびPA mRNAをコードする領域;および(b)単一のプラスミド上で、vRNAをコードする8つのすべてのセグメント。単一のテンプレートからウイルスRNAおよび発現可能なmRNAを同時にコードするためにpoIIおよびpoIIIの二重プロモーターを使用することは可能である[144、145]。
【0095】
従って、特にウイルスが卵で増殖されるとき、ウイルスは、A/PR/8/34ウイルスに由来する1つまたは複数のRNAセグメント(通常は、1つのワクチン株からHAおよびNセグメントを有するA/PR/8/34に由来する6セグメント、すなわち6:2のリアソータント)を含んでよい。ウイルスは、また、A/WSN/33ウイルスから、またはワクチン調製のためのリアソータントなウイルスを生成するのに有用である任意の他のウイルス株から1つまたは複数のRNAセグメントを含んでよい。主として、本発明は、ヒト間の伝染が可能である株から保護し、従ってその株のゲノムは、通常、哺乳類(例えばヒト)インフルエンザウイルスに由来した少なくとも1つのRNAセグメントを含む。
【0096】
抗原の源として使用されるウイルスは、卵または細胞培養物のいずれかの上で増殖される。インフルエンザウイルス増殖の現在の標準方法は、卵の内容物(尿膜液)から精製されるウイルスとともに有胚ニワトリ卵を使用する。しかしながら、つい最近では、速さと患者のアレルギーの理由でウイルスは動物細胞培養で増殖されており、この増殖方法が好ましい。
【0097】
細胞基質は、通常、MDCK、CHO、293T、BHK、ベロ、MRC−5、PER.C6、WI−38等の哺乳類細胞系である。インフルエンザウイルスを増殖させるための好ましいノ哺乳類細胞系としては、以下が挙げられる:メイディン・ダービー・イヌ腎臓に由来するMDCK細胞[146〜149];アフリカミドリザル(Cercopithecus aethiops)の腎臓に由来するベロ細胞[150〜152];またはヒト胎児網膜芽細胞に由来するPER.C6細胞[153]。これらの細胞系は、例えば、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)[154]、コーリエル細胞集積[155]、または欧州動物細胞培養収集機関(ECACC)から広く入手可能である。例えば、ATCCは、カタログ番号CCL−81、CCL−81.2、CRL−1586、およびCRL−1587で様々なベロ細胞を供給し、またカタログ番号CCL−34でMDCK細胞を供給している。PER.C6は、ECACCから寄託番号96022940で入手可能である。哺乳類細胞系に代わるあまり好ましくないものとして、ウイルスはトリ細胞系[例えば参照文献156〜158]で増殖されることが可能であり、アヒル(例えばアヒル網膜)またはニワトリ(例えばニワトリ胚線維芽細胞(CEF))等に由来する細胞系が含まれる。
【0098】
ウイルスが哺乳類細胞系で増殖された場合には、組成物は、卵タンパク質(例えば卵白アルブミンおよびオボムコイド)およびニワトリDNAを有利に含まず、それによってアレルゲン性を減少させる。
【0099】
MDCK等の細胞系での増殖に関して、ウイルスは、懸濁液培養[146]または付着培養の細胞上で増殖される。懸濁液培養に適したMDCK細胞系の1つは、MDCK33016(DSM ACC2219として寄託された)である。別の方法として、マイクロキャリア培養が使用される。
【0100】
ウイルスが細胞系で増殖される場合、増殖培養は、好ましくは以下を含まない(すなわち、混入に対する検査を行い、陰性を示すことになる):単純ヘルペスウイスル、呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス3型、SARSコロナウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、レオウイルス、ポリオーマウイルス、ビルナウイルス、サーコウイルス、および/またはパルボウイルス。単純ヘルペスウイルスがないことは、特に好ましい。
【0101】
ウイルスが細胞系で増殖される場合、組成物は、好ましくは、投与量あたり10ng未満(好ましくは1ng未満、より好ましくは100pg未満)の残留宿主細胞DNAを含有する。しかし、微量の宿主細胞DNAは存在する。通常、本発明の組成物から除外することが望ましい宿主細胞DNAは、100塩基対より長いDNAである。
【0102】
残留宿主細胞DNAの測定は、現在、生物製剤にとって所定の規定要件であり、当業者の通常の能力の範囲内である。DNAを測定するために用いられるアッセイ法は、通常は,実証済みアッセイである[159、160]。実証済みアッセイのパフォーマンス特性は、数学的用語および定量化可能な用語で記述されることが可能であり、エラーのその可能性のある源は同定されることになる。アッセイは、通常、正確さ、精度、特異性等の特性に対して検査されることになる。一旦アッセイが校正されて(例えば、周知の宿主細胞DNAの標準量に対して)検査されると、定量的なDNA測定は日常的に実行されることが可能になる。DNA定量化の3つの原則技術は、ササンブロット(またはスロットブロット)[161]等のハイブリダイゼーション法;Threshold(登録商標)システム[162]等のイムノアッセイ法;および定量PCR法[163]が使用されることが可能である。これらの方法は、すべて当業者によく知られているが、各方法の詳細な特性は、問題(例えば、ハイブリダイゼーション用プローブの選択、増幅用プライマーおよび/またはプローブの選択等)の宿主細胞に依存することである。モレキュラーデバイス社(Molecular Devices)製のThreshold(登録商標)システムは、ピコグラムレベルの全DNA用定量アッセイであり、生物医薬品で混入しているDNAのレベルのモニタリングで使用されている[162]。典型的なアッセイは、ビオチン化ssDNA結合タンパク質と、ウレアーゼ結合抗ssDNA抗体と、DNAとの間の反応複合体の非配列特異的形成に関与する。アッセイのすべての成分は、製造業者から入手可能な完全な全DNAアッセイキットに含まれる。様々な商業製造業者は、残留宿主細胞DNAを検出する定量PCRアッセイを提供している(例えば、ラボラトリーサービシス(Laboratory Services)のAppTec(登録商標)、アルセアテクノロジーズ(Althea Technologies)のBioReliance(登録商標)、等)。ヒトウイルス性ワクチンの宿主細胞DNA混入を測定するための化学発光ハイブリダイゼーションアッセイと全DNA Threshold(登録商標)システムとの比較は、参照文献164に見出すことができる。
【0103】
混入しているDNAは、ワクチン調製の間に標準精製方法(例えばクロマトグラフィー等)を用いて除去される。残留宿主細胞DNAの除去は、ヌクレアーゼ処理によって(例えばデオキシリボヌクレアーゼを用いて)増進させることが可能である。宿主細胞DNA混入を減少させる簡便な方法は、参照文献165および166に開示されている。その方法は、まず、デオキシリボヌクレアーゼ(例えばベンゾナーゼ(Benzonase))を用いて、次いでカチオン性界面活性剤(例えばCTAB)を用いる、2段階処理を含む。
【0104】
15μg赤血球凝集素あたり宿主細胞DNAを<10ng(例えば、<1ng、<100pg)含むワクチンは好ましく、同様に0.25ml容量あたり宿主細胞DNAを<10ng(例えば、<1ng、<100pg)含むワクチンが好ましい。50μg赤血球凝集素あたり宿主細胞DNAを<10ng(例えば、<1ng、<100pg)含むワクチンは、より好ましく、同様に0.5ml容量あたり宿主細胞DNAを<10ng(例えば、<1ng、<100pg)含むワクチンが好ましい。
【0105】
インフルエンザウイルス複製を支持する細胞系は、好ましくは、無血清培地および/または無タンパク質培地で増殖される。培地は、本発明と関連して無血清培地(ヒトまたは動物に由来する血清からの添加物が含まれない)と呼ばれる。無タンパク質は、細胞の増殖が生じる培養(タンパク質、増殖因子、他のタンパク質添加物、および非血清タンパク質を除くが、ウイルスの増殖にとって必要であるトリプシンまたは他のタンパク質分解酵素等のタンパク質は任意に含まれる)を意味すると理解される。そのような培養物中で増殖する細胞は、自然にタンパク質をそれ自体に含む。
【0106】
インフルエンザウイルス複製を支持する細胞系は、好ましくは、37℃以下[167](例えば30〜36℃)で増殖される。
【0107】
赤血球凝集素(HA)は、不活性化インフルエンザワクチンの主要な免疫原であり、ワクチンの投与量は、通常は一元放射免疫拡散(SRID)アッセイによって測定されるように、HA濃度を参照して標準化される。ワクチンは、一般的に、株あたり約15μgのHAを含有するが、低用量ワクチンも、例えば小児用として、または大流行の場合に使用される。1/2(例えば株あたり7.5μgのHA)、1/4、および1/6等の分割量は、高用量(例えば3倍または9倍用量[170、171])と同じように、使用されている[168、169]。従って、ワクチンは、インフルエンザ株あたり0.1〜150μgのHA、好ましくは、0.1〜50μg(例えば、0.1〜20μg、0.1〜15μg、0.1〜10μg、0.1〜7.5μg、0.5〜5μg等)のHAを含んでよい。特定用量は、例えば、株あたり約15、約10、約7.5、約5、約3.8、約1.9、約1.5μg等を含む。従って、ワクチンは、インフルエンザ株あたり0.1〜20μgのHA、好ましくは、0.1〜15μg(例えば、0.1〜10μg、0.1〜7.5μg、0.5〜5μg等)のHAを含んでよい。特定用量は、例えば、株あたり約15、約10、約7.5、約5、約3.8、約1.9μg等を含む。これらの低用量は、ワクチンにアジュバントが存在するとき、本発明と同様に最も有用である。
【0108】
本発明で使用されるHAは、ウイルスに見つけられるような自然のHAであり得、または修飾されたものでもよい。例えば、ウイルスを鳥類で発病させることが高い決定因子(例えば超塩基性領域)を除去するためにHAを修飾することが周知であるが、これらの決定因子が、さもなければウイルスが卵内で増殖されるのを阻止することができるからである。
【0109】
不活性化されているが非全細胞のワクチン(例えば、分割ウイルスワクチン、または精製表面抗原ワクチン)は、この抗原内に位置している付加的なT細胞エピトープから利益を得るために、基質タンパク質を含んでよい。従って、赤血球凝集素およびノイラミニダーゼを含む非全細胞ワクチン(特に、分割ワクチン)は、さらに、M1および/またはM2基質タンパク質を含んでよい。基質タンパク質が存在する場合、M2基質タンパク質の検出可能な濃度を含むことは、好ましい。核タンパク質もまた、存在する。
【0110】
医薬組成物の製剤
上述の抗原およびCD1dリガンドは、特に、免疫原性組成物およびワクチンに含まれることに適している。本発明のプロセスは、従って、免疫原性組成物またはワクチンとして抗原およびCD1dリガンドを製剤化するステップを含んでよい。本発明は、このような方法で得られることが可能な組成物またはワクチンを提供する。
【0111】
抗原(単数または複数の)およびCD1dリガンドに加えて、本発明の免疫原性組成物およびワクチンは、通常は、それ自体はその組成物を受ける個体にとって有害な抗体の生成を誘発しない任意のキャリアを含む「薬学的に許容されるキャリア」を含む。適切なキャリアは、通常は、タンパク質、ポリサッカライド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸ポリマー、アミノ酸コポリマー、トレハロース[172]、脂質集合体(油滴またはリポソーム等)、および不活性ウイルス粒子等の大きくて、ゆっくりと代謝される高分子である。そのようなキャリアは、当業者にとって周知である。ワクチンは、また、水、生理食塩水、グリセリン等の希釈液を含有する。さらに、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤等の補助剤が存在する。薬学的に許容される賦形剤についての徹底的な考察は、参照文献173で入手可能である。
【0112】
ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、免疫学的に有効量の抗原ならびに必要に応じて上記任意の他の成分を含む。「免疫学的に有効量」は、単回投与で、または一連の投与の一部としてのいずれかで個体に投与されるその量が治療または予防に有効であることを意味する。この量は、治療される個体の健康および身体状態、年齢、治療される個体の分類群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類等)、抗体を合成する個体の免疫系の能力、所望の保護の程度、ワクチンの製剤、治療医の医学的状況の評価、および他の関連する様々な因子によって変動する。その量は、通例の治験を通して決定され得る比較的広範囲に収まると予想される。
【0113】
ワクチンは、他の免疫調節剤と組み合わせて投与される。CD1dリガンドは、本発明の免疫原性組成物の範囲内のアジュバントとして作用する。ワクチンは、付加的なアジュバントを含んでよい。そのようなアジュバントとして、以下が挙げられるがこれらに限定されない:
本発明で使用されるアジュバントとして、以下が挙げられるがこれらに限定されない:
・カルシウム塩およびアルミニウム塩(またはその混合物)を含むミネラル含有組成物。カルシウム塩は、カルシウムホスフェート(例えば、参照文献174に開示される「CAP」粒子等)を含む。アルミニウム塩は、任意の適切な形態(例えばゲル形態、結晶形態、非晶形等)をとる塩を有する水酸化物、ホフォスフェート、硫酸塩を含む。これら塩への吸着は、好まれる。ミネラルを含む組成物は、また、金属塩[175]の粒子として製剤化される。アルミニウム塩アジュバントは、以下にさらに詳細に記述される。
・以下にさらに詳細に記述されるように水中油型乳剤。
・CpGモチーフ(グアノシンに結合したホスフェートによって結合される非メチル化シトシンを含むジヌクレオチド配列)を含むもの、TpGモチーフ[176]、二本鎖RNA、パリンドローム配列を含むオリゴヌクレオチド、またはポリ(dG)配列を含むオリゴヌクレオチド等の免疫賦活性オリゴヌクレオチド。免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート修飾等のヌクレオチド修飾/類似体を含むことが可能であり、かつ二本鎖または(RNAを除いて)一本鎖であってよい。参照文献177〜179は可能な類似体置換(例えば2’−デオキシ−7−デアザグアノシンの置換)を開示している。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、さらに、参照文献180〜185に述べられている。CpG配列は、TLR9(モチーフGTCGTTまたはTTCGTT[186])に向けられる。CpG配列は、CpG−A ODN(オリゴデオキシヌクレオチド)等のTh1免疫応答の誘発に特異的であってよく、または前述の配列は、CpG−B ODN等のB細胞応答の誘導により特異的であってよい。CpG−A ODNおよびCpG−B ODNは、参照文献187〜189で考察されている。好ましくは、CpGは、CpG−A ODNである。好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端が受容体認識に利用できるように構築される。任意に、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列は、「イムノマー」を形成するためにそれらの3’末端で結合されてよい。例えば、参照文献190〜192を参照。有用なCpGアジュバントは、CpG7909であり、ProMune(登録商標)(コーリー・ファマシューティカル・グループ(Coley Pharmaceutical Goup Inc.))としても周知である。免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、一般的に、少なくとも20のヌクレオチドを含む。免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、100未満のヌクレオチドを含む。
・3−O−デアシル化モノホスホリル脂質A(「3dMPL」、「MPL(登録商標)」としても周知である)[193〜196]。3dMPLは、サルモネラミネソタ(Salmonella minnesota)のヘプトースがない変異体から調製されたもので、化学的に脂質Aに類似しているが、酸に不安定なホスホリル基および塩基に不安定なアシル基を欠く。3dMPLの調製は、最初に参照文献197に記述された。3dMPLは、関連した分子の混合物の形をとることが可能であり、それらのアシル化によって変わる(例えば、異なる長さになるであろう3、4、5、または6つのアシル鎖を有する)。2つのグルコサミン(2−デオキシ−2−アミノ−グルコースとしても周知である)モノサッカライドは、それらの2位置の炭素で(すなわち2と2’の位置で)N−アシル化され、かつ3’の位置にもO−アシル化がある。
・イミキモド(「R−837」)[198、199]等のイミダゾキノリン化合物、レシキモド(「R−848」)[200]、およびそれらの類似体;ならびにそれらの塩(例えば、塩酸塩)。免疫賦活性イミダゾキノリンについてのさらなる詳細は、参照文献201〜205に見出される。
・参照文献206に開示されるようなチオセミカルバゾン化合物。活性化合物の製剤化、製造、およびスクリーニングの方法も、参照文献206に記述されている。チオセミカルバゾンは、TNF−α等のサイトカインの産生のためのヒト末梢血単核球細胞の刺激に特に有効である。
・参照文献207に開示されるもの等のトリプタントリン化合物。活性化合物の製剤化、製造、およびスクリーニングの方法も、参照文献207に記述されている。トリプタントリンは、TNF−α等のサイトカインの産生のためのヒト末梢血単核球細胞の刺激に特に有効である。
・ヌクレオシド類似体、例えば(a)イサトラビン(Isatorabine)(ANA−245;7−チア−8−オキソグアノシン):
【0114】
【化3】
、およびそのプロドラッグ;(b)ANA975;(c)ANA−025−1;(d)ANA380;(e)参照文献208〜210に開示される化合物;(f)以下の式を有する化合物:
【0115】
【化4】
(式中:
R1およびR2は、各々独立して、H、ハロ、−NRaRb、−OH、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、C6−10アリール、置換C6−10アリール、C1−6アルキル、または置換C1−6アルキルである;
R3は、欠けている、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C6−10アリール、置換C6−10アリール、ヘテロシクリル、または置換ヘテロシクリルである;
R4およびR5は、各々独立して、H、ハロ、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、−C(O)Rd、C1−6アルキル、置換C1−6アルキルであるか、またはR4−5にあるように、結合されて5員環を形成する;
【0116】
【化5】
結合で達成される結合は、
【0117】
【化6】
で示される。
X1およびX2は、各々独立してに、N、C、O、またはSである;
R8は、H、ハロ、−OH、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、−OH、−NRaRb、−(CH2)n−O−Rc、−O−(C1−6アルキル)、−S(O)pRe、または−C(O)−Rdである;
R9は、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、またはR9aである;
ここでR9aは、
【化7】
【0118】
結合で達成される結合は、
【化8】
【0119】
で示される。
R10およびR11は、各々独立してに、H、ハロ、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、−NRaRb、または−OHである;
RaおよびRbは、各々独立して、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、−C(O)Rd、C6−10アリールである;
各Rcは、独立して、H、ホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェート、C1−6アルキル、または置換,C1−6アルキルである;
各Rdは、独立して、H、ハロ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、−NH2、−NH(C1−6アルキル)、−NH(置換C1−6アルキル)、−N(C1−6アルキル)2、−N(置換C1−6アルキル)2、C6−10アリール、またはヘテロシクリルである;
各Reは、独立して、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C6−10アリール、置換C6−10アリール、ヘテロシクリル、または置換ヘテロシクリルである;
各Rfは、独立して、H、C1−6アルキル、または置換,C1−6アルキル、−C(O)Rd、ホスフェート、ジホスフェート、またはトリホスフェートである;
各nは、独立して0、1、2、または3である;
各pは、独立して0、1、または2である;
または(g)(a)〜(f)の任意の薬学的に許容される塩、(a)〜(f)の任意の互変異性体、またはその互変異性体の薬学的に許容される塩。
・ロキソリビン(7−アリル−8−オキソグアノシン)[211]。
・参照文献212に開示されている以下を含む化合物:
アシルピペラジン化合物、インドールジオン化合物、テトラヒドロイソキノリン(THIQ)化合物、ベンゾシクロジオン化合物、アミノアザビニル化合物、アミノベンゾイミダゾールキノリノン(ABIQ)化合物[213、214]、ヒドラフタルアミド化合物、ベンゾフェノン化合物、イソキサゾール化合物、ステロール化合物、キナゾリノン化合物、ピロール化合物[215]、アントラキノン化合物、キノサリン化合物、トリアジン化合物、ピラゾロピリミジン化合物、およびベンザゾール化合物[216]。
・参照文献217に開示されている以下を含む化合物:3,4−ジ(1H−インドール−3−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン、スタウロスポリン類似体、誘導体化ピリダジン、クロメン−4−オン、インドリノン、キナゾリン、およびヌクレオシド類似体。
・アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体(例えばRC−529[218、219]。
・例えば、参照文献220および221に記述されるようにホスファゼン(例えば、ポリ[ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン](「PCPP」))。
・以下のような小分子免疫賦活剤(SMIP):
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリンキノリン−2,4−ジアミン
N2,N2−ジメチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−エチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−ブチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−ブチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−フェニル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−2−フェニル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
1−(2−メチルプロピル)−2−[(フェニルメチル)チオ]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
1−(2−メチルプロピル)−2−(プロピルチオ)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン
2−{[4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−イル](メチル)アミノ}エタノール
2−{[4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−イル](メチル)アミノ}エチルアセテート
4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オン
N2−ブチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−ブチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
N2,N2−ジメチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
1−{4−アミノ−2−[メチル(プロピル)アミノ]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル}−2−メチルプロパン−2−オール
1−[4−アミノ−2−(プロピルアミノ)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]−2−メチルプロパン−2−オール
N4,N4−ジベンンジル−1−(2−メトキシ−2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン
・サポニン[参照文献249の第22章]。広範囲の植物種の樹皮、葉、茎、根、および花にも見つかるステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種基である。バラ科キラヤ(Quillaia saponaria Molina)の樹皮に由来するサポニンは、アジュバントとして広く研究されてきた。サポニンは、また、スミラックス・オルナタ(Smilax ornata)(サルサパリラ)、シュッコンカスミソウ(Gypsophilla paniculata)(ブライダルベール)、およびサボンソウ(Saponaria officianalis)(ソープルート).に由来し商業的に入手可能である。サポニンアジュバント製剤は、精製製剤(QS21等)ならびに脂質製剤(ISCOM等)を含む。QS21は、Stimulon(登録商標)として市販されている。サポニン組成物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を用いて精製されている。これらの技術を用いる特定の精製画分は同定されており、QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−B、およびQH−Cが挙げられる。好ましくは、サポニンはQS21である。QS21の生成方法は、参照文献222に開示されている。サポニン製剤は、またステロール(例えばコレステロール[223])を含みんでよい。サポニンとコレステロールとの組み合わせは、免疫賦活性複合体(ISCOM)[参照文献249の第23章]と呼ばれる独特の粒子を形成するために使用される。ISCOMは、通常、リン脂質(例えばホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリン)も含む。周知のどんなサポニンでも、ISCOMで使用される。好ましくは、ISCOMは、Qui1A、QHA、およびQHCから1つまたは複数を含む。ISCOMは、さらに、参照文献223〜225に記述されている。任意に、ISCOMは、付加的な界面活性剤[226]がないこともある。サポニンに基づくアジュバントの開発の総説は、参照文献227および228に見出される。
・細菌性ADPリボシル化毒素(例えば、大腸菌(E.coli)熱不安定性エンテロトキシン「LT」、コレラ毒素「CT」、または百日咳毒素「PT」)、およびその解毒化誘導体(例えばLT−K63およびLT−R72[229]として周知の変異毒素)。解毒化ADPリボシル化毒素の粘膜アジュバントとしての使用は、参照文献230に記述されており、非経口アジュバントとしての使用は、参照文献231に記述されている。
・生体接着剤および粘膜付着接着剤(エステル化ヒアルロン酸ミクロスフェア[232]またはキトサンおよびその誘導体[233])。
・微小粒子(すなわち、約100nm〜約150μmの粒径、より好ましくは、約200nm〜約30μmの粒径、または約500nm〜約10μmの粒径)で、生分解性および非毒性の物質から(例えばポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトン等)好ましくはポリ(ラクチド−コグリコリド)によって形成され、任意に、マイナスに帯電した表面を有するように(例えばSDSによって)、またはプラスに帯電した表面を有するように(例えば、CTAB等のカチオン性界面活性剤によって)処理されている。
・リポソーム(参照文献249の第13および14章)。アジュバントとしての使用に適したリポソーム製剤の例は、参照文献234〜236に記述されている。
・ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル[237]。そのような製剤は、さらに、オクトキシノール[238]と組み合わせてポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤、ならびに少なくとも1つの付加的な非イオン界面活性剤(例えばオクトキシノール[239])と組み合わせてポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステル界面活性剤を含む。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群から選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウレス9)、ポリオキシエチレン−9−ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
・ムラミルペプチド(例えば、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(「thr−MDP」)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(ノル−MDP)、N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン−L−アラニル−ジパルミトキシプロピルアミド(「DTP−DPP」、もしくは「Theramide(登録商標)」)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリロキシ)−エチルアミン(「MTP−PE」)。
・第1のグラム陰性菌から調製される外膜タンパク質プロテオソームと、第2のグラム陰性菌に由来するリポサッカライド(LPS)調製との組み合わせで、外膜タンパク質プロテオソームおよびLPS調製が、安定な非共有結合アジュバント複合体を形成する。そのような複合体は、髄膜炎菌(N.meningitidis)外膜およびLPSから構成される複合体、「IVX−908」を含む。
・メチルイノシン5’−モノホスフェート(「MIMP」[240])。
・以下のような式を有するポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物[241]。
【0120】
【化9】
ここでRは、水素基、直線鎖もしく分枝、非置換もしくは置換、飽和もしくは不飽和のアシル基、アルキル(例えばシクロアルキル)基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基、またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体を含む群から選択される。
例として、以下が挙げられるが、これらに限定されない:カスアリン(casuarine)、カスアリン−6−α−D−グルコピラノース、3−エピ−カスアリン、7−エピ−カスアリン、3,7−ジエピ−カスアリン等。
・γイヌリン[242]またはその誘導体(例えばアルガムリン)。
・式I、II、もしくはIII、またはその塩:
【化10】
【0121】
参照文献243に定義されるように、「ER803058」、「ER803732」、「ER804053」、「ER804058」、「ER804059」、「ER804442」、「ER804680」、「ER804764」、「ER803022」、または「ER804057」等:
【化11】
【0122】
・OM−174等の大腸菌(Escherichia coli)に由来する脂質Aの誘導体[参照文献244および245に記述されている]。
・陽イオン性脂質および(通常、中性の)コリピド(アミノプロピル−ジメチル−ミリストレイルオキシ−プロパンアミニウムブロマイド−ジフィタノイルホスファチジル−エタノールアミン(「Vaxfectin(登録商標)」)またはアミノプロピル−ジメチル−ビス−ドデシルオキシ−プロパンアミニウムブロマイド−ジオレオイルホスファチジル−エタノ−ルアミン(「GAP−DLRIE:DOPE」)の製剤。(±)−N−(3−アミノプロピル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(シン−9−テトラデセニルオキシ)−1−プロパンアミニウム塩を含有する製剤が好ましい[246]。
・非環式バックボーンを含むホスフェートに結合した脂質を含む化合物(例えばTLR4アンタゴニストE5564[247、248])::
【0123】
【化12】
これらおよび他のアジュバント活性物質は、参照文献249および250により詳細に考察されている。
【0124】
医療方法および用途
一旦製剤化されると、本発明の組成物は、被験者に直接投与される。治療される被験者は、動物であり得、特にヒト被験者が治療される。ワクチンは、特に、小児およびティーンエイジャーに予防接種をするのに有用である。ワクチンは、MHCII−/−動物モデルにおいて有効であることが示されており、従って、ワクチンは免疫無防備状態の被験者を治療するのに有用であると考えられる。ワクチンは、全身経路および/または粘膜経路で送達される。
【0125】
通常は、免疫原性組成物は、溶液または懸濁液のいずれかで注射液として調製され、注入の前に、溶液にもしくは懸濁液に適した固形、液体媒体も調製される。調製は、また、アジュバントの効果を増強するために乳化される、またはリポソームにカプセル化される。組成物の直接送達は、通常、非経口である(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、または筋肉内のいずれかに注射で、または組織の間質腔に送達される)。組成物は、病巣に投与されることも可能である。他の投与様式は、経口投与と肺内投与、座薬、および経皮投与または経皮的投与[例えば参照文献251を参照]、注射針、および皮下噴射器を含む。投与治療は、単回投与スケジュール、または複数回投与スケジュール(例えば追加免疫投与を含む)であってよい。
【0126】
本発明のワクチンは、好ましくは、無菌である。ワクチンは、好ましくは、発熱物質を含まない。ワクチンは、好ましくは、例えばpH6〜pH8の間で、通常、約pH7で緩衝される。
【0127】
本発明のワクチンは、低濃度(例えば<0.001%)で界面活性剤(例えば、Tween80等のTween)を含んでよい。本発明のワクチンは、特に、凍結乾燥させる場合には、糖アルコール(例えばマンニトール)またはトレハロースを、例えば約15mg/mlで含んでよい。
【0128】
個々の抗体の適量は、経験的に評価されることが可能である。しかしながら、一般に、本発明の抗原は、投与あたり各抗原を0.1〜100μgの用量を0.5mlの典型的な投薬容量で投与される。用量は、通常、投与あたり各抗原5〜20μgである。
【0129】
免疫応答を誘発するために患者に投与されるCD1dリガンドの量は、その組成物が投与される患者の年齢および体重に応じて変化するが、通常は、1〜100μg/kg患者体重で含まれる。意外にも、低用量のCD1dリガンドが、同時投与される抗原に対する免疫応答を増強させ、かつその抗原に対する長期免疫記憶を促進するのに十分であることが判明した。本発明の組成物に含まれるCD1dリガンドの量は、従って、患者体重の50μg/kg未満、20μg/kg未満、10μg/kg未満、5μg/kg未満、4μg/kg未満、または3μg/kg未満であってよい。
【0130】
本発明によるワクチンは、予防用(すなわち感染を阻止するため)または治療用(すなわち感染後、疾患を治療するため)のいずれかであってよいが、通常は、予防用である。
【0131】
本発明は、医学分野で使用するためにCD1dリガンド、およびB群連鎖球菌に由来する抗原を提供する。本発明は、医学分野で使用するためにCD1dリガンド、および髄膜炎菌血清型B株に由来する抗原を提供する。本発明は、医学分野で使用するために、CD1dリガンド、およびパンデミックな発生を引き起こすことができるまたは可能性を有するインフルエンザ株から選択されたインフルエンザウイルスに由来する抗原を提供する。
【0132】
本発明は、また、本発明によるワクチンを患者に投与することを含む、患者に免疫応答を引き起こす方法を提供する。特に、本発明は、CD1dリガンド、およびB群連鎖球菌に由来する抗原を患者に投与することを含む、患者に免疫応答を引き起こす方法を提供する。本発明は、CD1dリガンド、および髄膜炎菌血清型B株に由来する抗原を患者に投与することを含む、患者に免疫応答を引き起こす方法を提供する。本発明は、CD1dリガンド、およびパンデミックな発生を引き起こすことができるまたは可能性を有するインフルエンザ株から選択されたインフルエンザウイルスに由来する抗原を患者に投与することを含む、患者に免疫応答を引き起こす方法を提供する。
【0133】
抗原およびCD1dリガンドは、同時に、連続して、または別々に投与される。例えば、そのコンジュゲートに対する哺乳類の免疫応答を高めるために、抗原投与の前、または抗原投与の後に、CD1dリガンドが哺乳類を予備刺激するために投与されることも可能である。複数の抗原が投与される場合、抗原は、抗原混合物と別々に、同時に、または連続して投与されるCD1dリガンドとともに同時に投与される。免疫応答を引き起こす方法は、抗原およびCD1dリガンドの第1の用量を投与すること、それに続いて、任意に非アジュバント化抗原の第2の用量を投与することを含む。抗原およびCD1dリガンドの第1の用量は、同時に、連続して、または別々に投与される。
【0134】
免疫応答は、好ましくは、防御応答であり、かつ液性免疫応答および/または細胞免疫応答を含んでよい。患者は、成人または小児であってよい。患者は、0〜6カ月、6〜12カ月、1〜5歳、5〜15歳、15〜55歳、または55歳を超える年齢であってよい。好ましくは、患者は小児である。
【0135】
患者は、免疫無防備状態であってよい。患者は、免疫系の機能不全に関連した障害、特に、CD4T細胞応答の機能不全に関連した障害を有することもある。そのような障害の例として以下が挙げられるがそれらに限定されない:AIDS、血管拡張性失調症、ディジョージ症候群、汎低γグロブリン血症、ウィスコットアルドリッヒ症候群、および補体欠損症。
【0136】
本発明は、患者に免疫応答を引き起こすための薬物の製造でB群連鎖球菌に由来する抗原の使用を提供し、この薬物は、CD1dリガンドとともに投与される。本発明は、患者に免疫応答を引き起こすための薬物の製造でCD1dリガンドの使用を提供し、この薬物は、B群連鎖球菌に由来する抗原とともに投与される。本発明は、患者に免疫応答を引き起こすための薬物の製造でB群連鎖球菌に由来する抗原およびCD1dリガントの使用を提供する。本発明は、また、CD1dリガントで事前処置された患者に免疫応答を引き起こすための薬物の製造でB群連鎖球菌に由来する抗原の使用を提供する。本発明は、B群連鎖球菌に由来する抗原で事前処置された患者に免疫応答を引き起こすための薬物の製造でCD1dリガンドの使用を提供する。発明は、B群連鎖球菌に由来する抗原およびCD1dリガンドで事前処置された患者に免疫応答を引き起こすための薬物の製造でB群連鎖球菌に由来する抗原の使用を提供する。
【0137】
本発明は、また、患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造で髄膜炎菌血清型B株に由来する抗原の使用を提供し、この薬物はCD1dリガンドとともに投与される。本発明は、また、患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造でCD1dリガンドの使用を提供し、この薬物は髄膜炎菌血清型B株に由来する抗原とともに投与される。本発明は、また、患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造でB群連鎖球菌に由来する抗原、およびCD1dリガンドの使用を提供する。本発明は、また、CD1dリガンドで事前に処置された患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造で髄膜炎菌血清型B株に由来する抗原の使用を提供する。本発明は、さらに、髄膜炎菌血清型B株に由来する抗原で事前に処置された患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造でCD1dリガンドの使用を提供する。本発明は、また、髄膜炎菌血清型B株に由来する抗原、およびCD1dリガンドで事前に処置された患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造で髄膜炎菌血清型B株に由来する抗原の使用を提供する。
【0138】
本発明は、また、患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造でインフルエンザウイルス(上述のように)に由来する抗原の使用を提供し、この薬物はCD1dリガンドとともに投与される。本発明は、また、患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造でCD1dリガンドの使用を提供し、この薬物は、インフルエンザウイルス(上述のように)に由来する抗原とともに投与される。本発明は、また、患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造でインフルエンザウイルス(上述のように)に由来する抗原、およびCD1dリガンドの使用を提供する。本発明は、また、CD1dリガンドで事前に処置された患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造でインフルエンザウイルス(上述のように)に由来する抗原の使用を提供する。本発明は、さらに、インフルエンザウイルス(上述のように)に由来する抗原で事前に処置された患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造にCD1dリガンドの使用を提供する。本発明は、また、インフルエンザウイルス(上述のように)に由来する抗原、およびCD1dリガンドで事前に処置された患者に免疫応答を引き起こす薬物の製造にインフルエンザウイルス(上述のように)に由来する抗原の使用を提供する。
【0139】
薬物は、好ましくは、免疫原性組成物(例えばワクチン)である。薬物は、好ましくは、B群連鎖球菌、髄膜炎菌(例えば、髄膜炎、敗血症)に、またはインフルエンザウイルスに起因する疾患の予防用および/または治療用である。
【0140】
ワクチンは、標準動物モデル(例えば、参照文献252を参照)で検査される。
【0141】
本発明は、さらに、B群連鎖球菌抗原およびCD1dリガンドを含むキットを提供する。本発明は、さらに、髄膜炎菌血清型B株およびCD1dリガンドを含むキットを提供する。本発明は、さらに、インフルエンザウイルスに由来する抗原およびCD1dリガンドを含むキットを提供する。抗原およびリガンドは、好ましくは、別々の投与に適するように(例えば、別々の四肢に)、別々の構成成分からなるキットとして供給される。
【0142】
定義
用語「構成される」は、「含む」ならびに「成る」を包含する(例えば、Xで「構成される」組成物は、全くXだけから成る、または例えばXプラスY等の付加的なものを含んでよい)。
【0143】
数値「x」に関して用語「約」は、x±10%を意味する。
【0144】
語「実質的に」は、「完全に」を除外しない(例えば、「実質的に」Yを含まない組成物は、Yを完全に含まないこともある)。必要に応じて、語「実質的に」は、本発明の定義から取り除かれることも可能である。
【0145】
本発明を実施するための様式
本発明を実施するための様式に関する付加的情報は、参照文献253に見出される。
【実施例】
【0146】
(実施例1) インバリアントNKT細胞は、in vivoで防御抗体応答を助け、B細胞記憶の維持に寄与する
概要
CD1d制限インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞は、生得的リンパ球であり、α−ガラクトシルセラミド(α−GC)等の糖脂質抗原を認識する。in vivoで適応免疫応答への自然免疫系の影響を研究するために、本発明者らは、iNKT細胞が抗体応答の重要な特徴(例えば、感染症からの保護およびB細胞記憶)に影響をおよぼすかどうかを評価した。α−GCと組み合わせた細菌タンパク質またはウイルスタンパク質でマウスを免疫し、タンパク質およびα−GCで免疫されたマウスが、タンパク質単独によって誘発される力価よりも1〜2ログ高い抗体価をもたらすことを発見した。最も重要なことは、それらのマウスは、インフルエンザ等の感染症からさらに保護されることである。MHCクラスIIが欠如しているマウスは、タンパク質および従来のアジュバントで免疫されるとき、抗体を産生しない。しかし、タンパク質およびα−GCによるこれらのマウスの免疫化は、そのタンパク質に特異的な検出可能なIgGを誘発し、iNKT細胞がB細胞に対するその助けをクラスII制限CD4+ T細胞に部分的に置き換えることを示した。最終的に、タンパク質およびα−GCで免疫されたマウスは、タンパク質特異的記憶B細胞の頻度(タンパク質単独で免疫されたマウスで観察される頻度よりも高い)を有することが分った。さらに、iNKT細胞が欠如しているマウスは、野性型マウスで観察される減衰よりも急速な循環抗体価の減衰を示し、形質細胞の寿命の対するiNKT細胞の予想外の影響を示唆した。つまるところ、これらの結果は、抗体応答の調節におけるiNKT細胞の重要な役割およびin vivoでB細胞記憶の維持を指し示している。
【0147】
結果
iNKT細胞の活性化は、in vivoでタンパク質抗原に対する抗体応答を増強する
ヒトiNKT細胞が、Bリンパ球の増殖およびin vitroでの免疫グロブリンの生成に役立つことを本発明者らは、最近、実証した。この結果のin vivoでの関連性を決定するために、NKT特異的糖脂質(α−GC)を用いて、または用いずに、細菌タンパク質(TT(破傷風トキソイド)もしくはDT(ジフテリアトキソイド))またはウイルスタンパク質(H3N2(インフルエンザA型株由来の赤血球凝集素−ノイラミニダーゼサブユニット))でC57/BL6マウスを免疫し、種々の時点におけるタンパク質特異的抗体の血清力価を評価した。図1Aは、抗原のすべてで、タンパク質およびα−GCで免疫されたマウス(黒四角)の抗体価が、タンパク質単独で免疫されたマウス(白四角)の抗体価よりも1〜2ログ高かったことを示す。同様の結果がBALB/c、CDl、およびC3H/HeJマウスでも得られた(データ図示せず)。
【0148】
α−GCのアジュバント活性がiNKT細胞の活性化によるものであることを証明するために、(Ja18+/+およびJa18+/−)を有するマウスまたは(Ja18−/−)iNKT細胞が欠如したマウスを、α−GCを用いて、または用いずにインフルエンザタンパク質H3N2で免疫した。図1Bに示すように、H3N2単独で免疫されたすべてのマウス(白四角)は、iNKT細胞の存在にかかわらず、同程度の抗体応答をもたらした。しかしながら、H3N2およびα−GCで(黒四角)免疫化を行うと、iNKT細胞を有するマウスはH3N2特異的抗体の血清力価に有意な増強を示し、一方iNKT細胞が欠如したマウスは、そのように増強できないことを図1Bは示している。これらの結果は、α−GCがCD1d(CD1−/−)が欠如したマウスにおいてアジュバント活性を示さなかった結果(データは図示せず)、α−GCをiNKT細胞のT細胞受容体に提示する制限要素によって強化された。
【0149】
α−GCの活性と、従来のアジュバントの活性とを比較するために、α−GCまたは以下のアジュバントから1つの適量を用いて、TT単独で用量を増加させながら、マウスを免疫した:CFA(マウスで用いられる最も強力なアジュバントの1つ[254])、CpG(現在、ヒトで検査されている強力なTh0/Th1免疫賦活剤[255])、MF59とアルミニウム塩(この2つのアジュバントはヒト用途として承認されていて[256、257]、両方ともTh0/Th2誘導因子と考えられる)。図2Aに示すように、α−GCは、全般的に、IgG1およびIgG2aの両抗体の産生に役立つ上記の基準アジュバントと同様に強力である。
【0150】
最終的に、タンパク質抗原に対する抗体応答が、従来のCD4+ T細胞の助けがなくとも(従来のアジュバントが役立たない状況)iNKTリンパ球の助けで発生するかどうかを評価した。従って、MHCクラスII分子が欠如した(MHC−II−/−)C57BL/6マウスの両群にH3N2単独で、またはα−GCもしくはアルミニウム塩とともにH3N2で2回免疫させた。予想通りに、H3N2単独またはアルミニウム塩中のH3N2で免疫されたMHC−II−/−マウスは、抗原特異的抗体を何ら示さなかった(図2B)。代わりに、H3N2およびα−GCで免疫されたMHC−II−/−マウスは、検出可能な抗体(IgG)価を示した。
【0151】
つまるところ、α−GCによるin vivoでのiNKT細胞活性化は、従来のアジュバントのそれに匹敵する方法でタンパク質抗原に対する抗体応答を増強することをこれらの結果は示している。これらのアジュバントとは違って、α−GCは、抗体応答を生成するために、MHC−クラスII制限CD4Tリンパ球を必要としない。
【0152】
iNKT細胞は、免疫に役立つ
α−GCが病原体タンパク質に対する抗体応答を増強することを実証して、本発明者らは応答の質に取り組み、これらの抗体が感染症から保護することができるかどうかを追究した。この目的を達成するために、α−GCのアジュバント効果とMF59(インフルエンザワクチンによるヒト用途として承認されているアジュバント)のそれとをインフルエンザウイルス感染症のマウスモデルで比較した。0日目と15日目に、α−GCまたはMF59を用いてH1N1タンパク質(ヒトインフルエンザウイルスA型/ニューカレドニア/20/99由来の)単独で、成体C57BL/9マウスを免疫した。最後の免疫化から2週間後、マウス適応型A/WS/33インフルエンザウイルスを90%致死量(LD)でマウスに接種した。マウスの生存を2週間経過観察した。図3Aに示すように、接種の1日前、H1N1およびα−GCで免疫されたマウスが有する抗体価は、H1N1およびMF59で免疫されたマウスの抗体価に匹敵し、かつタンパク質ワクチン単独で免疫されたマウスで見られた力価よりも有意に高いものである。さらに、接種から2週間後、H1N1およびα−GCで免疫されたマウスの80%、およびタンパク質およびMF59で免疫されたマウスの100%が生存し、一方タンパク質単独に基づいたワクチンで免疫されたマウスのわずか10%が経過観察の終了後も生存していたことを図3Bは示している。
【0153】
つまるところ、これらの結果から、本発明者らは、α−GC依存iNKT細胞活性化が感染症疾患に対するワクチンの効果を増強することが可能であると結論づける。
【0154】
B細胞に役立つiNKT細胞の機序
次に、本発明者らは、iNKT細胞をin vivoでB細胞を助けるように向かわせる機序を調べた。
【0155】
まず、サイトカインの役割を調べるために、C57BL/6マウスおよびサイトカインIL−4またはIFN−γ(IFN−γR)の受容体が欠如したコンジェニックマウスの両方でα−GCのアジュバント効果を評価した。図4A(左図)が示すように、野性型マウスにおいてインフルエンザタンパク質H3N2単独(白で示す)による免疫化が、IgG1の存在およびIgG2aの非存在によって示されるようにTh2応答を誘発し、一方タンパク質およびα−GCによる免疫化が、IgG1およびIgG2a(黒で示す)の両方の存在によって示されるようにバランスのとれたTh0応答を誘発した。図4Aの中央の図が示すように、IL−4が欠如したマウスは、タンパク質単独で免疫されたとき、何ら抗体応答がなかったのに対して、タンパク質およびα−GC(黒で示す)で免疫されたとき、それらのマウスはバランスのとれたTh0応答を開始した。最後に、IFN−γ受容体が欠如したマウス(図4Aの右図)は、タンパク質単独(白で示す)で免疫されたとき、Th2応答(IgG1抗体)を示す。IgG1力価は、タンパク質およびα−GC(黒で示す)で免疫されたマウスで有意に増加するが、IgG2抗体はバックグラウンド濃度を上回る増加はない。つまるところ、IL−4はBリンパ球を助けるためにα−GC依存iNKT細胞にとって個々に必要でないが、一方でIFN−γはiNKT細胞のバランスのとれた(Th0)ヘルパー効果にとって絶対必要であることをこれらの結果が示している。
【0156】
次いで、CD40/CD40L相互作用が、α−GC依存iNKT細胞がin vivoで助けるために必要とされるどうかを追究した。従って、本発明者らは、中和抗CD40Lモノクローナル抗体の飽和量で処置したマウスでH3N2に対する抗体応答を評価した。図4Bに示すように、H3N2およびα−GCによる免疫化に続いて、抗CD40Lモノクローナル抗体で処置したマウスは、対照IgGで処置したマウスで観察された抗体価よりも有意に低いH3N2抗体価を示した。
【0157】
α−GCは、想起抗体応答を増強し、B細胞記憶の維持に寄与する
適応免疫系の重要な特徴は、それが以前に遭遇した抗原に対して迅速な「想起」応答を開始する能力である。α−GCのアジュバント効果が想起抗体応答に影響を及ぼしたかどうかを評価するために、マウスを、0週目と2週目にH3N2単独でまたはα−GCで2回免疫した。次いで、H3N2単独での第3の(想起)免疫化を、30週目にすべてのマウスに施した。図1で報告したデータと一致して、最初の2回の投与後、H3N2およびα−GCで免疫されたマウスが、H3N2単独を受けるマウスからの力価よりも有意に高い抗体価を示したことを図5Aは示している。マウスのすべてをH3N2単独による第3の免疫化によって追加免疫したとき、H3N2特異的抗体は、約30週目に両群でバックグラウンド濃度に達し、ゆっくり時間をかけて減衰した。2週間後、抗体応答を評価し、最初の2回の免疫化でタンパク質およびα−GCを施されたマウスは第3の免疫化後に、3回の免疫化のすべてでタンパク質単独で免疫されたマウスの抗体価より有意に高い抗体価を示したことが分った(図5A)。これらの結果と一致して、同時実験で、30週目(第3の免疫化の直前)に、H3N2およびα−GCで2回免疫されたマウスの脾臓で検出されたH3N2抗体分泌細胞(ASC)前駆体の頻度は、H3N2単独で2回免疫されたマウスの脾臓で観察された頻度よりも有意に高いことが分った(図5B)。
【0158】
B細胞記憶の調節におけるiNKT細胞の役割をさらに調べるために、(Ja18+/+およびJa18+/−)を有するまたは(Ja18−/−)iNKT細胞が欠如したマウスの血清でタンパク質(H3N2)単独により誘発された抗原特異的抗体の持続を評価した。マウスのすべての群で、抗原特異的抗体の力価は、第2の免疫化から2週間後、同程度のレベルでピークに達した。しかし、図6が示すように、iNKT細胞抗原特異的抗体を有するマウスは、同様にゆっくりとした速度で減衰したが、iNKT細胞が欠如したマウスでの抗体価減衰は、著しく急速であった。これらのマウスのうちα−GCを受けたものはないので、iNKT「自発」活性のあるレベルは、循環抗体の半減期に影響をおよぼすことが可能であると本発明者らは、結論づける。
【0159】
つまるところ、iNKT細胞活性化は、想起免疫化に対して高い抗体応答を生じ、これは抗原特異的記憶B細胞プールのさらなる拡大に起因することをこれらの結果が示している。さらに、in vivoでのiNKT自発活性は、循環抗体濃度の維持において恒常的に関与するように見える。
【0160】
(実施例2) 追加免疫の非存在下でα−GalCerによるプライミングは、抗体応答を増強させる
上述のように、30週目(第3の免疫化の直前)に、H3N2およびα−GCで2回免疫されたマウスの脾臓で検出したH3N2抗体分泌細胞(ASC)前駆体(すなわち記憶B細胞)の頻度は、H3N2単独で2回免疫されたマウスの脾臓で観察した頻度よりも有意に高かった(図5B)。
【0161】
同様の結果を、破傷風トキソイド(図7および18)で免疫されたマウスで行った実験で得た。図7は、0日目および14日目に、アジュバントなし、α−GCアジュバント、またはアルミニウム塩アジュバントを用いる破傷風トキソイドによる最後の2回の免疫化から6週間後にC57BL/6マウスにおけるASC前駆体の頻度を示す。アジュバントとしてのα−GCの使用は、アルミニウム塩アジュバントの使用と比較して、ASC前駆体の頻度を著しく増強させた。同様に、図18が示すように、GBS80およびα−GCによる最後の2回の免疫化から3カ月後、GBS80およびアルミニウム塩による免疫化と比較して、CD1マウスのASC前駆体の頻度が著しく高かった。
【0162】
一連の2回の免疫化でアジュバントとして投与したとき、アルミニウム塩と比較すると記憶B細胞の頻度を著しく増強させるα−GCの能力は、単回免疫化でアジュバントとして使用されると、α−GCが特定の記憶B細胞の増加を誘発することができることを示唆した。従って、α−GCおよびH3N2抗原の特定のB細胞記憶プールへの単回投与の効果を評価するために実験を行った(図8〜11)。
【0163】
図8は、実験で使用した免疫化スケジュールを示す。C57BL/6メスのマウス(6〜8週齢)20匹を5マウスずつ4群に分けた。群1)を0週目にリン酸緩衝食塩水(PBS)中のH3N2で免疫し、2週間後にH3N2+α−GCで免疫した。群2)を0週目にH3N2+α−GCで免疫し、2週間後にPBS中のH3N2で免疫した。群3)を0週目および2週目にPBS中のH3N2で免疫した。群4)を0週目および2週間後にH3N2およびα−GCで免疫した。初回の免疫化から56週間後、すべての群のマウスにPBS中の3μgのH3N2を接種した。すべての免疫化は筋肉内であった。
【0164】
図9は、群3のマウス(PBS中のH3N2で免疫した)のH3N2抗体応答と、両免疫化でα−GCを用いて(図A)、第1の免疫化だけにα−GCを用いて(図B)、第2の免疫化だけにα−GCを用いて(図C)免疫されたマウスの応答とを比較する。第1のまたは第2の免疫化だけに与えても、α−GCは抗体応答を増強することが分った。4つの群の間には抗体半減期の相違は観察されなかった。
【0165】
図10は、観察した以下の抗体応答の対での比較を示す:A)α−GCによる2回の免疫化されたマウスvs.第2の免疫化だけにおけるα−GCによる免疫化;B)α−GCによる2回の免疫化されたマウスvs.第1の免疫化だけにおけるα−GCによる免疫化;およびC)第1の免疫化だけにおけるα−GCによる免疫化vs.第2の免疫化だけにおけるα−GCによる免疫化。α−GCを第1のワクチン投与に与えたとき、最大効果を観察した。第1のワクチン投与でのα−GCの供給は、第2のワクチン投与でのα−GCの供給に対して高い抗体応答をもたらした(図10C)。α−GCを第1のワクチン投与で供給した場合、抗体応答は、α−GCを両ワクチン投与で供給した場合に得られた応答と類似していた(図10B)。
【0166】
図11は、α−GCを2回のプライミング注射の第1または第2の投与のいずれかだけに入れた場合でも、α−GCで予備刺激したマウスがワクチン接種に対して高い想起応答を示すことを確認する。これらの結果は、α−GCをアジュバントとしてワクチン組成物に入れると、長期免疫記憶を達成するために必要とするプライミング免疫化の回数を減少させることが可能であり、かつ追加免疫免疫化の頻度および回数を減少させることを示唆する。
【0167】
(実施例3) α−GCは、ストレプトコッカス・アガラクチアによって誘発された新生仔敗血症のマウスモデルで防御抗体応答を増強させる。
【0168】
ストレプトコッカス・アガラクチア感染症によって誘発された新生仔敗血症のマウスモデルで防御抗体応答を増強させるその能力に対して、α−GCを検査した。
【0169】
メスのマウスを3つの群に分けた。群1を、0日目にアジュバント非存在下で20μgのGBS80で予備刺激し、21日目に同じ組成物で追加免疫した。23日目にマウスを交配し、50〜53日目に仔を出産する前に、GBS80−IgG力価の評価を行うために43〜36日目に採血した。出生から0〜48時間に仔マウスにストレプトコッカス・アガラクチアの90%致死量を接種した。追加免疫投与から3カ月後、母マウスを犠牲にして、脾臓を摘出し、GBS80−IgG形質細胞前駆体の頻度を評価した。群2のマウスには、GBS80およびミョウバンで予備刺激および追加免疫を行い、群3のマウスには、GBS80および0.1μgのα−GCで予備刺激および追加免疫を行ったことを除いて、同じ免疫化スケジュールを群2および群3で続けた。
結果は、以下のとおりであった。
【0170】
【表1】
このように、アジュバントとしてのα−GCの使用は、母マウスのGBS80−IgG反応を誘発し、ミョウバンによって誘発されたIgG応答よりも8倍高いものであった。母マウスの高い抗体応答は、B群連鎖球菌感染症からそれらの仔マウスの保護を増強させる結果になった。GBS80およびミョウバンで免疫された母マウスの仔のうちわずかに30%と比較すると、GBS80およびα−GCで免疫された母マウスからの仔のうち70%は、ストレプトコッカス・アガラクチアの接種から残存した。
【0171】
20μgまたは1μgのGBS80のいずれかで免疫されるマウスを用いて、実験を繰り返した。0日目にマウスのすべてを予備刺激し、20日目に追加免疫し、34日目に交配し、54〜58日目の仔の出産の前、48日目に採血した。直ちに、仔マウスにストレプトコッカス・アガラクチアの90%致死量を接種し、48時間で生存を評価した。追加免疫から3カ月後、母マウスを犠牲にして、GBS80−IgG形質細胞前駆体の頻度を評価するために脾臓を摘出した。ミョウバン、α−GCとともに、アジュバントは含まずに1μgのGBS80で;ミョウバン、α−GCとともに、アジュバントは含まずに20μgのGBS80で;またはリン酸緩衝食塩水もしくはミョウバンアジュバント単独でマウスを免疫した。
【0172】
図15に示すように、1μgのGBS80およびα−GCで免疫されたマウスは、1μgのGBS80およびミョウバンで免疫されたマウスよりも有意に高いIgG1およびIgG2a力価を示した。20μgのGBS80およびα−GCで免疫されたマウスは、20μgのGBS80およびミョウバンで免疫されたマウスと比べると、同等のIgG1力価を示し、より高いIgG2a力価を示した。結果は以下のとおりである。
【0173】
【表2】
このように、GBS80およびα−GCで免疫されたマウスの%生存率は、GBS80およびミョウバンで免疫されたマウスの生存率と同等であった。
【0174】
GBS80およびα−GCで免疫された母マウスの脾臓は、また、GBS80 IgG形質細胞および記憶B細胞の頻度を有意に高く含有していた(それぞれ図17および18)。参照文献258に記述されるように、GBS80特異的形質細胞および記憶B細胞の頻度を、培地だけで、またはCpGおよびIL−2の存在下の培地でインキュベートした脾細胞の10日の限界希釈培養からの上清でGBS80特異的抗体の存在を評価することで決定した。
【0175】
さらに実験で、妊娠したCD1メスのマウスを、リン酸緩衝食塩水、GBS80、GBS80+ミョウバン、またはGBS80+α−GCで免疫した。免疫されたCD1メスマウスの各群からまたはナイーブなCD1メスマウスから出産1週間前に採取した血清をプールして、ナイーブなCD1母マウスから生まれた24時間齢の新生仔に皮下注射した(最終容量20μl中3μl/投与)。3時間後、新生仔のすべてに生ウイルスのストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalatiae)1×LD90(90%致死量)を腹腔内に接種した。仔マウスの生存を2日間経過観察した。GBS80で免疫された母マウスからの血清で免疫された仔マウスは、すべて死亡し(28仔マウスのうち28匹)、リン酸緩衝食塩水で免疫された母マウスからの血清で免疫された仔マウス27匹のうちわずか1匹が生き残った。アジュバント(ミョウバンまたはα−GC)の存在は、生存の増加においてミョウバンよりもより有効であるα−GCでの免疫化により生存を向上させた。GBS+α−GCで免疫された母マウスからの血清で免疫された仔マウスの生存は、GBS+ミョウバンで免疫された母マウスからの血清で免疫された仔マウスの生存より165%高かった。
【0176】
これらのデータは、α−GCが、ストレプトコッカス・アガラクチア(S.agalatiae)に対する防御免疫応答の誘発においてミョウバンよりも著しく有効であることを示する。
【0177】
(実施例4) α−GCは、髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B株由来のいくつかのタンパク質抗原を含有する混合ワクチンに対する抗体応答を増強する
髄膜炎菌(N.meningitidis)血清型B株(MenB)抗原からの複数の抗原を組み合わせるためのアジュバントとして作用するα−GCの能力を評価した。
【0178】
3種類のMenB抗原(ΔG287nz−953、936−741、および961c)(各20μg/用量)に0.1μgのα−GCを混合した、または0.6mgのミョウバンを混合した混合物でマウスを免疫した。一連の3回の免疫化を、0日目、21日目、および35日目に施し、各免疫化後に各抗体に対するIgG力価を評価した。図19に示すように、α−GCは、混合ワクチン中の3種類のMenB抗原のすべてに対する抗体応答を増強することにおいてミョウバンと同様に有効であった。
【0179】
α−GCは、また、これらの抗原に対する殺菌応答を増強させた。図16は、3種類のMenB抗原(ΔG287nz−953、936−741、および961c)の混合物で免疫されたマウス、またはミョウバン、α−GCと共に、またはアジュバントを含まずにこれらの抗原それぞれと別々の組み合わせで免疫されたマウスからの血清試料中のMenB型株MC58、2996、H44/76、およびNZ98/254に対する殺菌抗体応答を比較している。MenB抗原およびα−GCによる免疫化に対する殺菌応答は、MenB抗原およびミョウバンによる免疫化に対する殺菌応答よりも一貫して高かった。
【0180】
MenB抗原に対するex vivoでのCD4T細胞応答を評価するために第2の実験を行った。6匹のCD1メスマウスからなる複数群を、複数のMenB抗原の混合(リン酸緩衝食塩水、ミョウバン、またはα−GCで製剤化した)で2回免疫した。第2の免疫化から10日後、3マウス/群を犠牲にして、それらの脾臓を摘出した。別々のマウス由来の全脾細胞の懸濁液をMenB抗原を用いて16時間培養した。培養の最後の12時間は、ブレフェルジンAの存在下で行い、サイトカインの細胞内蓄積を可能にした。刺激した脾細胞を固定、膜透過処理を行い、抗CD3、抗Cd4,抗CD69,抗IFNg、およびTNFαのモノクローナル抗体を用いて染色した。全CD4+細胞集団中のCD3+CD4+CD69+サイトカイン+細胞のパーセンテージを、FACS解析によって決定した。
【0181】
結果を図14に示す。MenB抗体に応答してTFNαを産生するCD4T細胞を増殖させることにおいてα−GCは、ミョウバンよりもより有効であることが分り、α−GCが、少なくともミョウバンと同程度でMenB抗原に対する細胞媒介性免疫応答を誘発できることを示した。陽性対照として、ポリクローナル刺激に対する応答をマウスの3つ群のすべてで検査した。図14の挿入部に示すように、マウスの3つの群のすべては、抗CD3抗体(IaCD3)によるポリクローナル刺激に対して同じ応答を示した。
【0182】
ミョウバンまたはMF59と比較して同じ3種類のMenB抗原のためのアジュバントとして作用するα−GCの能力を評価するために、追加の実験を行った。3種類のMenB抗原(ΔG287nz−953、936−741、および961c)(各20μg/用量、5μg/用量、または2.5μg/用量)に0.1μgのα−GC、0.6mgのミョウバン、100μgのMF59を混合、またはアジュバントを含まずに混合した混合物でマウスを免疫した。一連の3回の免疫化を、0日目、21日目、および35日目に施し、各免疫化の後、各抗原に対するIgG力価を評価した。図13に示すように、α−GCおよびMF59は両方とも、ミョウバンよりも高い殺菌抗体価を誘発した。免疫されたマウスの脾臓のMenB特異的記憶B細胞の頻度も、決定した。図12に示すように、ミョウバンと比較して、α−GCまたはMF59で免疫されたマウスの脾臓により高い頻度のMenB特異的記憶B細胞が見られた。MenB抗原に対する殺菌免疫応答を誘発する際、および長期免疫記憶に必要とされるMenB特異的記憶B細胞を誘発する際に、α−GCはミョウバンよりもより有効であり、かつMF59と同程度に有効であることをこれらのデータは示す。
【0183】
当然のことながら、本発明は例の目的でのみ記述されており、詳細の変更は本発明の趣旨および適用範囲から逸脱することなくなされる。
【0184】
(参考文献)
【0185】
【化13】
【0186】
【化14】
【0187】
【化15】
【0188】
【化16】
【0189】
【化17】
【0190】
【化18】
【0191】
【化19】
【図面の簡単な説明】
【0192】
【図1】免疫グロブリン(Ig)力価のグラフを示す。A)α−GCおよび細菌タンパク質(破傷風トキソイド(TT)もしくはジフテリアトキソイド(DT))またはウイルスタンパク質(H3N2、インフルエンザA型株からの赤血球凝集素−ノイラミニダーゼのサブユニット)により筋肉内に免疫されたC57/BL6マウスのタンパク質特異的抗体の血清力価。タンパク質およびα−GC(黒四角)で免疫されたマウスは、タンパク質単独(白四角)で免疫されたマウスよりも、より高い抗体価を示した。X軸は、日数を示す。B)H3N2およびα−GC(黒四角)で免疫されたiNKT細胞を有する(Ja18+/+)マウスは、H3N2単独(白四角)で免疫されたiNKT細胞を有するマウスと比較して、H3N2特異的抗体の血清力価の増大を示す。H3N2およびα−GC(黒四角)で免疫されたiNKT細胞が欠如した(Ja18−/−)マウスは、H3N2単独(白四角)で免疫されたiNKT細胞を欠如したマウスと比較して、H3N2特異的抗体の血清力価の増強を示さない。すべての免疫化は、皮下であった。
【図2A】免疫グロブリンG(IgG)力価の平均値のグラフを示す。A)IgG1およびIgG2aの両抗体の生成においてα−GCは、CFA、CpG、MF59、およびアルミウム塩と同様に強力である。抗原は、TTであった。
【図2B】免疫グロブリンG(IgG)力価の平均値のグラフを示す。B)H3N2で皮下に免疫されたMHC−II−/−マウスは、検出可能な抗体(IgG)価を示したのに対して、H3N2単独またはミョウバンで皮下に免疫されたMHC−II−/−マウスは抗体価を示さなかった。
【図3】インフルエンザウイルス感染症のマウスモデルにおけるα−GCとMF59との比較を示す。すべての免疫化は、筋肉内であった。A)H1N1特異的IgG力価(幾何平均)。H1N1およびα−GCで免疫されたマウスの抗体価は、H1N1およびMF59で免疫されたマウスの抗体価に匹敵するものであり、タンパク質単独のワクチンで免疫されたマウスに見られた力価よりも有意に高いものである。B)接種後の生存パーセンテージ対日数。H1N1およびα−GCで免疫されたマウスの80%およびH1N1とMF59とで免疫されたマウスの100%は、インフルエンザウイルス接種後生存している。
【図4】H3N2免疫グロブリン力価(幾何平均)を示す。白四角は、アジュバントなしであり、網掛け四角は、α−GCを有する。A)WT、IL−4−/−、およびIFN−γR−/−マウスのH3N2とα−GCとでの皮下免疫化(存在するところは黒で示す)またはH3N2単独での皮下免疫化(存在するところは白で示す)に対するIgG1およびIgG2a応答。H3N2単独での野性型マウスの免疫化は、IgG1応答(Th2)を誘発し、一方H3N2およびα−GCでの免疫化は、IgG1およびIgG2a応答(Th0)を誘発した。H3N2単独でのIL4−/−マウスの免疫化は、IgG応答を誘発しなかったが、一方H3N2およびα−GCでの免疫化は、IgG1およびIG2a応答(Th0)を誘発した。H3N2単独でのIFN−γR−/−マウスの免疫化は、IgG1応答(Th2)を誘発し、一方H3N2およぼα−GCでの免疫化は、有意に高いIgG1応答(Th2)を誘発した。点線は、検査された血清の最小希釈を示す。B)H3N2およびα−GCでの皮下免疫化の前と免疫化の間に、抗CD40Lモノクローナル抗体で処置されたマウスは、対照IgGで処置されたマウスで観察された抗体価よりも有意に低いH3N2抗体価を示す。
【図5】A)0週目と2週目にH3N2単独またはH3N2とα−GCによってマウスを予備刺激し、第1の免疫化から30週間後に両群のマウスを単独のH3N2タンパク質で追加免疫した。図は、H3N2−Ig力価(幾何平均)対時間(週)を示す。矢印は、免疫化の時期を示す。H3N2およびα−GCの2つの投与によって予備刺激し、その後タンパク質単独で追加免疫されたマウス(黒四角)は、H3N2単独によって予備刺激および追加免疫されたマウス(白四角)よりも有意に高い抗体価を示した。B)図5Aにより予備刺激したマウスにおけるH3N2−抗体分泌細胞前駆体の頻度(100万B細胞あたりのH3N2−IgG ASC前駆体)。30週目でのH3N2−抗体を分泌する細胞前駆体の頻度は、H3N2単独で2回免疫されたマウス(白四角)よりもH3N2とα−GCとで2回免疫されたマウス(網掛け四角)のほうが有意に高かった。
【図6】H3N2−Ig力価(幾何平均)対時間(週)。H3N2単独で皮下に2回免疫されたiNKT細胞が欠損したマウス(Ja18−/−)およびiNKT細胞を有するマウス(Ja18+/+)におけるH3N2特異的抗体の減衰。抗原特異的抗体は、iNKT細胞を有するマウス(楕円)よりもiNKT細胞が欠損したマウス(三角)がより急速に減衰する。
【図7】破傷風トキソイド+/−アジュバントによる最後(2回のうちの)の免疫化から6週間後のC57BL/6マウスにおけるASC前駆体(すなわち記憶B細胞)の頻度を、100万B細胞あたりの数として示す。C57BL/6マウスを、0日目と14日目にアジュバント、α−GC、もしくはミョウバンを含まない破傷風トキソイドによって筋肉内に免疫した。破傷風トキソイドおよびα−GCで免疫されたマウスは、破傷風トキソイド単独で免疫されたマウスよりも有意に高いTT特異的記憶B細胞の頻度を示し、ミョウバン中の破傷風トキソイドで免疫された全マウスは、示さなかった。*は、p<0.005vs無抗原投与を示し、**は、p<0.01を示す。***は、p<0.005vsアジュバントを含まないTTを示す。
【図8】プライミングで使用されるすべてのワクチン投与でα−GCの存在を必要とするかどうかを評価するために使用した免疫化スケジュール。C57BL/6メスのマウス(6〜8週齢)20匹を5匹のマウスの4群に分けた。群1)を0週目にリン酸緩衝食塩水(PBS)中のH3N2で免疫し、2週間後にH3N2+α−GCで免疫した。群2)を0週目にH3N2+α−GCで免疫し、2週間後にPBS中のH3N2で免疫した。群3)を0週目および2週目にPBS中のH3N2で免疫した。群4)を0週目および2週間後にH3N2およびα−GCで免疫した。初回の免疫化から56週間後、すべての群のマウスにPBS中の3μgのH3N2を接種し、58週目に想起応答を評価した。すべての免疫化は筋肉内であった。
【図9】図8の群3のマウス(PBS中のH3N2で2回免疫された)のH3N2抗体応答と以下A〜Cとの比較:A)図8の群4のマウス(α−GC中のH3N2で2回免疫された)の応答;B)図8の群1のマウス(PBS中のH3N2で、次いでα−GC中のH3N2で免疫された)の応答;およびC)図8の群2のマウス(α−GC中のH3N2で、次いでPBS中のH3N2での免疫化)の応答。抗体半減期における相違はなかった。
【図10】以下のように観察されたH3N2−抗体応答の比較:A)α−GCによる2回の免疫化(群4)vs第2の免疫化だけにおけるα−GC(群1);B)α−GCで2回免疫されたマウス(群4)vs第1の免疫化だけにおけるα−GC(群2);およびC)第1の免疫化だけにおけるα−GCによる免疫化(群2)vs第2の免疫化だけにおけるα−GCによる免疫化(群1)。
【図11】図8に記述するように免疫されたマウスの想起応答。H3N2単独による追加免疫(56週目に施した)の免疫化から2週間後、α−GCの1ないし2回投与によって予備刺激されたマウスは、H3N2単独の2回投与で予備刺激されたマウスより高い想起応答を示した。データは、56週目と58週目のH3N2のIg力価(幾何平均)である。
【図12】図13に記述するように免疫されたマウスの脾臓のMenB特異的記憶B細胞の頻度を決定した。MenB特異的記憶B細胞のより高い頻度は、ミョウバンと比較して、α−GCまたはMF59で免疫されたマウスの脾臓で見つかった。グラフは、100万Bリンパ球あたりのMemB特異的IgG記憶B細胞を示す。*および**は、p<0.05およびp<0.01vsアジュバントなしを示す。
【図13】ΔG287nz−953、936−741、および961cの3種類のMenB抗原(各々20μg/用量、5μg/用量、または2.5μg/用量)に0.1μgのα−GC、0.6mgのミョウバン、100μlのMF59、またはアジュバントなしを混合した混合物によってマウスを免疫した。一連の3回の免疫化を0日目、21日目、および35日目に施し、各抗原に対するIgG力価を各免疫化から105日目まで評価した。α−GCとMF59の両方は、ミョウバンよりも高い殺菌抗体価を誘発した。
【図14】0日目および21日目に以下によって筋肉内に免疫されたマウスにおける組換えMenB抗原に対するCD4T細胞応答の比較:a)3種類のMenB抗原およびα−GCを含有する混合ワクチン;b)3種類のMenB抗原およびミョウバンを含有する混合ワクチン;またはc)3種類のMenB抗原だけを含有する混合ワクチン。第2の免疫化から2週間後、表示した量のMenB組換えタンパク質を用いて全脾細胞を16時間(最後の14時間は、ブレフェルジンAの存在下で行った)インキュベートすることによってCD4T細胞応答を評価した。TNFaを産生するCD4T細胞の数を細胞内染色およびFACS解析によって決定した。3種類のMenB抗原およびα−GCの混合で免疫されたマウスは、複数のMenB抗原とミョウバンまたはアジュバントなしの混合によって免疫されたマウスと比較して、一貫してより高いCD4応答を示した。陽性対照として、ポリクローナル刺激に対するマウスの3群すべての応答を検査した。図の挿入部に示すようにマウスの3群すべては、抗CD3抗体(IaCD3)によるポリクローナル刺激に対して同じ応答を示した。すべてのCD4+T細胞のパーセンテージとして、Y軸はTNFαを産生するCD4T細胞を示す。
【図15】力価(幾何平均)。GBS抗原で免疫されたマウスにおけるIgG、IgG1、およびIgG2aの力価の比較。1μgのGBS80およびα−GCで免疫されたマウスは、1μgのGBS80単独で免疫されたマウスよりも有意に高いIgG1およびIgG2aの力価を示したが、ミョウバン中のGBS80で免疫されたマウスは、示さなかった。20μgのGBS80およびα−GCで免疫されたマウスは、20μgのGBS80およびミョウバンで免疫されたマウスに等しいIgG1力価を示し、かつより高いIgG2a力価を示した。*、**p<0.05、p<0.01vsアジュバントなしでのGBS80
【図16】0日目と21日目に、3種類のMenB抗原(DG287nz−953、936−741、または961c)のうちの1つまたは以下と組み合わせた3種類の抗原全ての混合でマウスを免疫した:a)α−GC;b)ミョウバン;またはc)アジュバントなし。MenB型株(MC58、2996、H44/76、およびNZ98/254)に対する殺菌抗体の濃度を、第2の免疫化から2週間後、および第3の免疫化から2週間後に評価した。アジュバントとしてα−GCとともに混合ワクチンを投与したとき、殺菌抗体は、ミョウバンと比較して有意に高かった。免疫化のすべては筋肉内であった。
【図17】GBS80で免疫された母マウスの脾臓の記憶B細胞の頻度。GBS80特異的抗体を産生する形質細胞の頻度は、GBS80単独でまたはミョウバンで免疫された母マウスの脾臓よりも、GBS80およびα−GCで免疫された母マウスからの脾臓において有意に高かった。グラフは、100万Bリンパ球あたりのGBS80IgG形質細胞の数を示す。
【図18】GBS80およびα−GCで免疫された母マウスとGBS80およびミョウバンで免疫された母マウスとの形質細胞頻度の比較。形質細胞頻度は、GBS80およびα−GCで免疫された母マウスにおいて有意に高かった。グラフは、100万Bリンパ球あたりのGBS80IgG形質細胞の数を示す。
【図19】ΔG287nz−953、936−741、および961cの3種類のMenB抗原(各々20μg/用量)単独に0.1μgのα−GCを混合した、または0.6mgのミョウバンを混合した混合物でマウスを免疫した。一連の3回の免疫化を、0日目、21日目、および35日目に施し、各々の免疫化後、各抗原に対するIgG力価を評価した。α−GCは、混合ワクチンの3種類のMenB抗原のすべてに対する抗体応答の増強においてミョウバンと同様に有効であった。免疫化のすべては、筋肉内であった。
【図1A】
【図1B】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)CD1dリガンドと、b)B群連鎖球菌由来の抗原とを含む組成物。
【請求項2】
a)CD1dリガンドと、b)髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の抗原とを含む組成物。
【請求項3】
a)CD1dリガンドと、b)インフルエンザウイルス抗原とを含む組成物。
【請求項4】
医薬に使用するためのCD1dリガンドおよびB群連鎖球菌由来の抗原。
【請求項5】
医薬に使用するためのCD1dリガンドおよび髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の抗原。
【請求項6】
医薬に使用するためのCD1dリガンドおよびインフルエンザウイルス抗原。
【請求項7】
患者に免疫応答を引き起こす方法であって、患者にCD1dリガンドおよびB群連鎖球菌由来の抗原を投与することを含む方法。
【請求項8】
患者に免疫応答を引き起こす方法であって、患者にCD1dリガンドおよび髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の抗原を投与することを含む方法。
【請求項9】
患者に免疫応答を引き起こす方法であって、患者にCD1dリガンドおよびインフルエンザウイルス抗原を投与することを含む方法。
【請求項10】
前記抗原および前記CD1dリガンドが、同時に、連続して、または別々に投与される、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
患者に免疫応答を引き起こすためのB群連鎖球菌由来の抗原、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の抗原、またはインフルエンザウイルス抗原の使用であって、該抗原が、CD1dリガンドとともに投与される、抗原の使用。
【請求項12】
患者に免疫応答を引き起こすためのCD1dリガンドの使用であって、前記CD1dリガンドが、B群連鎖球菌由来の抗原、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の抗原、またはインフルエンザウイルス抗原とともに投与される、CD1dリガンドの使用。
【請求項13】
患者に免疫応答を引き起こすためのa)B群連鎖球菌由来の抗原、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の抗原、またはインフルエンザウイルス抗原、およびb)CD1dリガンドの使用。
【請求項14】
患者に免疫応答を引き起こすためのB群連鎖球菌由来の抗原、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の抗原、またはインフルエンザウイルス抗原の使用であって、該患者が、CD1dリガンドで事前処置されている、抗原の使用。
【請求項15】
患者に免疫応答を引き起こすためのCD1dリガンドの使用であって、該患者が、B群連鎖球菌由来の抗原、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の抗原、またはインフルエンザウイルス抗原で事前処置されている、CD1dリガンドの使用。
【請求項16】
前記患者に投与される前記CD1dリガンドの量が、10μg/kg患者体重未満である、請求項7乃至15のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項17】
キットであって、(a)B群連鎖球菌由来の抗原、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の抗原、またはインフルエンザウイルス抗原と、(b)CD1dリガンドとを含むキット。
【請求項18】
必要とする患者において抗原に対する長期免疫記憶を誘導する方法であって、
a)該抗原と、b)CD1dリガンドと
を含む組成物を、該患者が該抗原へのその後の曝露に対して免疫応答を引き起こすことができるために必要な該組成物の投与回数および/または頻度が、CD1dリガンドの非存在下での該抗原の投与と比較して低減されるように該患者に投与することを含む、方法。
【請求項19】
前記患者が、前記抗原へのその後の曝露に対して防御免疫応答を引き起こすことができるために必要な前記組成物の投与回数および/または頻度が、CD1dリガンドの非存在下での該抗原の投与と比較して低減される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記患者が、前記抗原へのその後の曝露に対して防御免疫応答を引き起こすことができるために必要な前記組成物の投与回数が、CD1dリガンドの非存在下での該抗原の投与と比較して低減される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
防御免疫応答を誘導するために必要とされる投与回数が、単回プライミング投与まで減少する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記患者が、前記抗原へのその後の曝露に対して防御免疫応答を引き起こすことができるために必要な前記組成物の追加免疫投与の頻度が、CD1dリガンドの非存在下での該抗原の投与と比較して低減される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
追加免疫投与が1年を超える間隔で投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
追加免疫投与のための必要性が完全に除去される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
患者に抗原に対する免疫応答を誘導する方法であって、該患者にa)該抗原と、b)CD1dリガンドとを投与することを含み、
該抗原およびCD1dリガンドが1年より前にも該患者に投与されている、方法。
【請求項26】
患者に免疫応答を誘導するための抗原およびCD1dリガンドの使用であって、該抗原およびCD1dリガンドが1年より前にも該患者に投与されている、抗原およびCD1dリガンドの使用。
【請求項27】
前記免疫応答が防御免疫応答である、請求項25に記載の方法または請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記抗原およびCD1dリガンドが、同時に、連続して、または別々に投与される、請求項25乃至27のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項29】
前記患者に投与された前記CD1dリガンドの量が、10μg/kg患者体重未満である、請求項18乃至28のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項30】
患者に抗原に対する免疫応答を誘導する方法であって、該患者に
a)該抗原と、b)CD1dリガンドとを投与することを含み、
該組成物に含まれる該CD1dリガンドの量が10μg/kg患者体重未満である、方法。
【請求項31】
患者に免疫応答を誘導するための抗原およびCD1dリガンドの使用であって、前記CD1dリガンドの量が10μg/kg患者体重未満である使用。
【請求項32】
前記免疫応答が、防御免疫応答である、請求項30または請求項31に記載の方法または使用。
【請求項33】
前記CD1dリガンドおよび抗原が、同時に、連続して、または別々に投与される、請求項30乃至32のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項34】
前記抗原が、キャリアタンパク質に結合されたサッカライド抗原である、請求項1〜33のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項35】
前記抗原が、タンパク質抗原である、請求項1〜34のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項36】
前記CD1dリガンドが、インバリアントNKT細胞を活性化する、請求項1〜35のいずれかに記載の方法、使用、組成物、またはキット。
【請求項37】
前記CD1dリガンドが、該CD1dリガンドの非存在下でインバリアントNKT細胞によって分泌されるIFN−γ、IL−4、およびIL−13のレベルと比較して、インバリアントNKT細胞によって分泌されるIFN−γ、IL−4、およびIL−13のレベルを増加させる、請求項1〜36のいずれかに記載の方法、使用、組成物、またはキット。
【請求項38】
前記CD1dリガンドが、糖脂質である、請求項1〜37のいずれかに記載の方法、使用、組成物、またはキット。
【請求項39】
前記CD1dリガンドが、α−グリコシルセラミドである、請求項1〜38のいずれかに記載の方法、使用、組成物、またはキット。
【請求項40】
前記CD1dリガンドが、α−ガラクトシルセラミドまたはその類似体である、請求項1〜39のいずれかに記載の方法、使用、組成物、またはキット。
【請求項41】
前記CD1dリガンドが、KRN7000、OCH、またはCRONY−101から選択されるα−ガラクトシルセラミド類似体である、請求項1〜40のいずれかに記載の方法、使用、組成物、またはキット。
【請求項1】
a)CD1dリガンドと、b)B群連鎖球菌由来の抗原とを含む組成物。
【請求項2】
a)CD1dリガンドと、b)髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の抗原とを含む組成物。
【請求項3】
a)CD1dリガンドと、b)インフルエンザウイルス抗原とを含む組成物。
【請求項4】
医薬に使用するためのCD1dリガンドおよびB群連鎖球菌由来の抗原。
【請求項5】
医薬に使用するためのCD1dリガンドおよび髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の抗原。
【請求項6】
医薬に使用するためのCD1dリガンドおよびインフルエンザウイルス抗原。
【請求項7】
患者に免疫応答を引き起こす方法であって、患者にCD1dリガンドおよびB群連鎖球菌由来の抗原を投与することを含む方法。
【請求項8】
患者に免疫応答を引き起こす方法であって、患者にCD1dリガンドおよび髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の抗原を投与することを含む方法。
【請求項9】
患者に免疫応答を引き起こす方法であって、患者にCD1dリガンドおよびインフルエンザウイルス抗原を投与することを含む方法。
【請求項10】
前記抗原および前記CD1dリガンドが、同時に、連続して、または別々に投与される、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
患者に免疫応答を引き起こすためのB群連鎖球菌由来の抗原、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の抗原、またはインフルエンザウイルス抗原の使用であって、該抗原が、CD1dリガンドとともに投与される、抗原の使用。
【請求項12】
患者に免疫応答を引き起こすためのCD1dリガンドの使用であって、前記CD1dリガンドが、B群連鎖球菌由来の抗原、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の抗原、またはインフルエンザウイルス抗原とともに投与される、CD1dリガンドの使用。
【請求項13】
患者に免疫応答を引き起こすためのa)B群連鎖球菌由来の抗原、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の抗原、またはインフルエンザウイルス抗原、およびb)CD1dリガンドの使用。
【請求項14】
患者に免疫応答を引き起こすためのB群連鎖球菌由来の抗原、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の抗原、またはインフルエンザウイルス抗原の使用であって、該患者が、CD1dリガンドで事前処置されている、抗原の使用。
【請求項15】
患者に免疫応答を引き起こすためのCD1dリガンドの使用であって、該患者が、B群連鎖球菌由来の抗原、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の抗原、またはインフルエンザウイルス抗原で事前処置されている、CD1dリガンドの使用。
【請求項16】
前記患者に投与される前記CD1dリガンドの量が、10μg/kg患者体重未満である、請求項7乃至15のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項17】
キットであって、(a)B群連鎖球菌由来の抗原、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の抗原、またはインフルエンザウイルス抗原と、(b)CD1dリガンドとを含むキット。
【請求項18】
必要とする患者において抗原に対する長期免疫記憶を誘導する方法であって、
a)該抗原と、b)CD1dリガンドと
を含む組成物を、該患者が該抗原へのその後の曝露に対して免疫応答を引き起こすことができるために必要な該組成物の投与回数および/または頻度が、CD1dリガンドの非存在下での該抗原の投与と比較して低減されるように該患者に投与することを含む、方法。
【請求項19】
前記患者が、前記抗原へのその後の曝露に対して防御免疫応答を引き起こすことができるために必要な前記組成物の投与回数および/または頻度が、CD1dリガンドの非存在下での該抗原の投与と比較して低減される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記患者が、前記抗原へのその後の曝露に対して防御免疫応答を引き起こすことができるために必要な前記組成物の投与回数が、CD1dリガンドの非存在下での該抗原の投与と比較して低減される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
防御免疫応答を誘導するために必要とされる投与回数が、単回プライミング投与まで減少する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記患者が、前記抗原へのその後の曝露に対して防御免疫応答を引き起こすことができるために必要な前記組成物の追加免疫投与の頻度が、CD1dリガンドの非存在下での該抗原の投与と比較して低減される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
追加免疫投与が1年を超える間隔で投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
追加免疫投与のための必要性が完全に除去される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
患者に抗原に対する免疫応答を誘導する方法であって、該患者にa)該抗原と、b)CD1dリガンドとを投与することを含み、
該抗原およびCD1dリガンドが1年より前にも該患者に投与されている、方法。
【請求項26】
患者に免疫応答を誘導するための抗原およびCD1dリガンドの使用であって、該抗原およびCD1dリガンドが1年より前にも該患者に投与されている、抗原およびCD1dリガンドの使用。
【請求項27】
前記免疫応答が防御免疫応答である、請求項25に記載の方法または請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記抗原およびCD1dリガンドが、同時に、連続して、または別々に投与される、請求項25乃至27のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項29】
前記患者に投与された前記CD1dリガンドの量が、10μg/kg患者体重未満である、請求項18乃至28のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項30】
患者に抗原に対する免疫応答を誘導する方法であって、該患者に
a)該抗原と、b)CD1dリガンドとを投与することを含み、
該組成物に含まれる該CD1dリガンドの量が10μg/kg患者体重未満である、方法。
【請求項31】
患者に免疫応答を誘導するための抗原およびCD1dリガンドの使用であって、前記CD1dリガンドの量が10μg/kg患者体重未満である使用。
【請求項32】
前記免疫応答が、防御免疫応答である、請求項30または請求項31に記載の方法または使用。
【請求項33】
前記CD1dリガンドおよび抗原が、同時に、連続して、または別々に投与される、請求項30乃至32のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項34】
前記抗原が、キャリアタンパク質に結合されたサッカライド抗原である、請求項1〜33のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項35】
前記抗原が、タンパク質抗原である、請求項1〜34のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項36】
前記CD1dリガンドが、インバリアントNKT細胞を活性化する、請求項1〜35のいずれかに記載の方法、使用、組成物、またはキット。
【請求項37】
前記CD1dリガンドが、該CD1dリガンドの非存在下でインバリアントNKT細胞によって分泌されるIFN−γ、IL−4、およびIL−13のレベルと比較して、インバリアントNKT細胞によって分泌されるIFN−γ、IL−4、およびIL−13のレベルを増加させる、請求項1〜36のいずれかに記載の方法、使用、組成物、またはキット。
【請求項38】
前記CD1dリガンドが、糖脂質である、請求項1〜37のいずれかに記載の方法、使用、組成物、またはキット。
【請求項39】
前記CD1dリガンドが、α−グリコシルセラミドである、請求項1〜38のいずれかに記載の方法、使用、組成物、またはキット。
【請求項40】
前記CD1dリガンドが、α−ガラクトシルセラミドまたはその類似体である、請求項1〜39のいずれかに記載の方法、使用、組成物、またはキット。
【請求項41】
前記CD1dリガンドが、KRN7000、OCH、またはCRONY−101から選択されるα−ガラクトシルセラミド類似体である、請求項1〜40のいずれかに記載の方法、使用、組成物、またはキット。
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2009−530264(P2009−530264A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558943(P2008−558943)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際出願番号】PCT/IB2007/001744
【国際公開番号】WO2007/105115
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(507238285)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス エスアールエル (35)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際出願番号】PCT/IB2007/001744
【国際公開番号】WO2007/105115
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(507238285)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス エスアールエル (35)
【Fターム(参考)】
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