説明

CIPigmentYellow74ベースの混晶を含む顔料組成物の使用

本発明は、合計86.0から99.9モル%のC.I.Pigment Yellow74分子と、合計14.0から0.1モル%の式(1)


(式中、Rは、Cl、OCH、CHまたはNOを表す)の少なくとも1種のモノアゾ顔料とを含む顔料組成物の、顔料インクジェットインキおよび色フィルタ用着色剤としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C.I.Pigment Yellow74をベースとする特定のモノアゾ顔料成分の、特にインクジェット印刷および色フィルタ向けの新しい使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット法は、1つまたは複数のノズルから、記録用液体の液滴が印刷すべき基材上に噴射される非衝撃式印刷法である。優れた品質の印刷物を得るためには、記録用液体とそれに含まれる着色剤が、特に所望の色相および印刷動作中の信頼性に関する厳しい要件を満足しなければならない。
染料ベースのインキに加えて、最近顔料インキをインクジェット印刷に使用することも増えてきた。顔料をインクジェット印刷に使用する際、一方でノズルの目詰まりを防ぎ、他方で高い透明性と所望の色相を実現するためには、顔料がインキ中に細かく分散されていることが基本的な前提条件である。
C.I.Pigment Yellow74を、インクジェットインキ中で使用することは周知である。とはいえ、これらインキに使用される顔料は、所望の緑がかった黄色の色相に関して課される要件を満たしながら、同時にノズルの目詰まりを起こさずに欠陥のない印刷動作を保証できないことがしばしばある。
【0003】
さまざまな応用分野で改良品を生成することを目的とする、C.I.Pigment Yellow74と種々のモノアゾイエロー顔料の混合物が知られている。
欧州特許出願公開0079303号明細書は、99.0〜80.0重量%のC.I.Pigment Yellow74と、1.0〜20.0重量%のアセトアセト−o−アニシジドベースの種々のモノアゾイエローとの混合物を含む、C.I.Pigment Yellow74の隠蔽形について記述している。
独国特許出願公開2727531号(米国特許第4,251,441号および仏国特許出願公開2394584号に対応する)明細書は、75〜85重量%のC.I.Pigment Yellow74と、25〜15重量%のC.I.Pigment Yellow65との混合物を開示している。これら混合物は、分散性能を改善するために、例えば、ロジンまたはその誘導体など、アルカリに可溶な樹脂型生成物と混合される。
米国特許第6,261,354号明細書は、従来型印刷インキの着色剤として、透明で、樹脂を含有する顔料組成物を開示している。前記組成物は、98〜85モル%の2−メトキシ−4−ニトロアニリンおよび2〜15モル%の4−クロロ−2−ニトロアニリンから得られるジアゾニウム塩の混合物を、アセトアセト−o−アニシジドとカップリングさせることによって調製される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上に述べた特許で、顔料混合物をインクジェット印刷法で使用することについて記述しているものはない。さらに、それら調製方法において時として記述されている、例えば、ロジンまたはそれらの誘導体などの補助剤は、ノズルを詰まらせるので、顔料をインクジェット印刷で処理する際の適合性に悪影響をおよぼす。多くの場合、赤みがかった黄色が得られる。
【0005】
したがって、本発明の目的は、上述の欠点を有しておらず、特にインクジェット印刷法および色フィルタ用の着色剤として適している、C.I.Pigment Yellow74をベースとする透明で緑がかった黄色顔料組成物を調製することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、以下に明らかにする特定の顔料組成物を使用することによって、この目的が達成されることが発見された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、合計86.0〜99.9モル%、好ましくは合計86.5〜99.5モル%、特に好ましくは合計87.0〜94.0モル%のC.I.Pigment Yellow74分子と、合計14.1〜0.1モル%、好ましくは合計13.5〜0.5モル%、特に好ましくは合計13.0〜6.0モル%の式(1)の少なくとも1種のモノアゾ顔料とを含む顔料組成物の、顔料インクジェットインクおよび色フィルタ用着色剤としての使用を提供する。
【0008】
【化2】

式中、Rは、Cl、OCH、CHまたはNOである。
【0009】
がクロロ基である式(1)の化合物は、C.I.Pigment Yellow73として知られている。
がメトキシ基である式(1)の化合物は、C.I.Pigment Yellow65として知られている。
がメチル基である式(1)の化合物は、C.I.Pigment Yellow203として知られている。
【0010】
式(1)は、理想的な表現であることを理解すべきであり、対応する互変異性型も、また各互変異性型の可能なシス/トランス異性体も包含する。
【0011】
特に重要なのは、合計88〜92モル%のC.I.Pigment Yellow74分子と、合計12〜8モル%のC.I.Pigment Yellow65分子とを含む顔料組成物である。
【0012】
本発明に従って使用される顔料組成物は、C.I.Pigment Yellow74を、上記のモル比率で、式(1)の化合物との共合成(cosynthesis)、共再結晶(joint recrystallization)または共仕上げ(joint finishing)によって調製することができる。共合成の場合、5−ニトロ−2−アミノアニソールと、式(2)の少なくとも1種のアミンとの混合物をジアゾ化し、
【0013】
【化3】

生成物をアセトアセト−o−アニシジドと、−5℃〜80℃、好ましくは5℃〜35℃の温度範囲で、pH3〜pH14、好ましくは3〜11、特にpH3.5〜pH10のpHにおいてカップリングさせる。前記アミンのモル混合比率は上記の通りである。
【0014】
上記共合成は、式(1)の化合物中のC.I.Pigment Yellow74の混晶をかなりの割合で生成する。この「かなりの割合」とは、顔料組成物の全重量に対して、通常15重量%を超え、好ましくは30%を超え、例えば50%を超え、しばしば75%を超える。混晶で構成されていない残りの部分は、純粋なC.I.Pigment Yellow74または式(1)の化合物の物理的な混合物からなる。
【0015】
用語「顔料組成物」には、以下において、顔料組成物が、本発明の1種類の混晶だけからなる場合も含まれる。
【0016】
本発明において、混晶は固溶体をも指す。混晶の性質は、個々の構成成分の性質および個々の構成成分の物理的混合物の性質のいずれとも異なる。特に、混晶のX線粉末図は、対応する物理的混合物の図と異なり、個々の化合物の粉末図を重ね合わせた図とも異なる。
【0017】
この混晶自体は、0.1〜99.9モル%、好ましくは70.0〜99.9モル%、特に85.0〜99.9モル%のC.I.Pigment Yellow74と、99.9〜0.1モル%、好ましくは30.0〜0.1モル%、特に15.0〜0.1モル%の式(1)の1種の化合物、または、式(1)の任意の2種以上の、例えば2種または3種の化合物とを含むことができる。
【0018】
好ましい二元混晶は、C.I.Pigment Yellow74と、特にRがOCHまたはClである式(1)の化合物1種とから構成され、好ましくは、モル比が99.9:0.1〜86.5:13.5、特に99:1〜87:13の二元混晶である。
【0019】
これらの混晶は、様々な結晶多形体で発生し得る。一例として、混晶は、C.I.Pigment Yellow74と、または式(1)の1種の化合物の結晶多形体の1つと同形となることがある。
【0020】
反応物の純度、濃度、適用される温度および温度プロファイル、合成および何らかの後処理の時間プロファイル、圧力、不純物または添加剤の存在、および種結晶の存在に応じて、単一相の混晶だけを生成することもできるし、種々の相の混晶を生成することもできるし、あるいは混晶と1種または複数の純粋な化合物の混合物を生成することもできる。
【0021】
驚くべきことに、これら混晶は際立った緑がかった黄色の色相を示す。
【0022】
本発明の顔料組成物は、例えば、5−ニトロ−2−アミノアニソールおよび1種または複数種の式(2)のアミンを別々にジアゾ化し、続いてジアゾニウム塩を混合し、続いて混合物をアセトアセト−o−アニシジドとカップリングすることによって調製することもできる。
【0023】
本発明の顔料組成物は、例えば、ジアゾ化5−ニトロ−2−アミノアニソールの存在下で、式(2)のアミンを段階的にジアゾ化するか、または式(2)のアミンのジアゾ化によって調製された1種または複数のジアゾニウム塩の存在下で、5−ニトロ−2−アミノアニソールをジアゾ化し、続いて混合物とアセトアセト−o−アニシジドとをカップリングさせることによっても調製することができる。
【0024】
本発明の顔料組成物は、既製品のC.I.Pigment Yellow74存在下、少なくとも1種の式(2)のジアゾ化アミンを、アセトアセト−o−アニシジドとカップリングさせることによっても調製することができる。
【0025】
本発明の顔料組成物は、少なくとも1種の式(1)の化合物の存在下、ジアゾ化5−ニトロ−2−アミノアニソールをアセトアセト−o−アニシジドとカップリングさせることによっても調製することができる。
【0026】
ジアゾ化反応に適した化合物は、アルカリ金属亜硝酸塩または短鎖アルカンの亜硝酸アルキルと、強鉱酸の組合せである。亜硝酸ナトリウムと塩酸が特に適している。この反応は、−5℃〜+35℃、好ましくは0℃〜10℃の温度範囲で実施することができる。必須ではないが、ジアゾ化中に非イオン型、陽イオン型または陰イオン型表面活性物質が存在してもよい。所望ならば、本発明に伴う利点、特に印刷関連の性質を損なわないことを条件として、さらなる助剤を使用することも可能である。
カップリングは、直接法または間接法のいずれによっても可能であるが、直接法、すなわちジアゾニウム塩をカップリング成分の初期装入分に加えることで行うことが好ましい。カップリング反応は、−5℃〜80℃、好ましくは5℃〜25℃の温度範囲で、pH3〜pH14、好ましくは3〜11、特にpH3.5〜pH10のpHにおいて実施することができる。アゾカップリング反応は、水溶液中あるいは懸濁液中で行うことが好ましいが、有機溶媒を、所望ならば水との混合物として使用することもできる。
一般的に、カップリング成分はジアゾニウム化合物よりも若干過剰に使用され、ジアゾ成分1当量を、カップリング成分1.001〜1.10当量と反応させることが好ましい。
カップリングの後、本発明の顔料組成物は、水性媒体、水性−有機媒体または有機媒体中、60℃〜90℃、好ましくは60℃〜85℃の温度で、所望ならば加圧下で、1〜6時間熱処理することが好ましい。上で述べたように、この場合明確な結晶相を生成することまたは転相を起こすことが可能である。
得られた顔料懸濁液は、続いて従来式のろ過、水を用いたプレスケーキの無塩洗浄、乾燥および粉砕を行うことができる。
合成によって得られた顔料に、例えば粉砕など、従来式の機械的微細化を施すことができる。
【0027】
混晶の生成を促進し、混晶を安定化させ、色の性質を向上させ、および/または明確な着色効果を実現するために、本発明に伴う利点、特に印刷関連の性質を損なわないことを条件として、工程の所望するどの時点においてでも、顔料分散材、表面活性剤、消泡剤、増量剤または他の補助剤を加えることができる。また、これら添加剤の混合物を使用することもできる。添加剤は一度に加えることもできるし、2回以上に分割して加えてもよい。添加剤は、合成のどの時点においてもまたは様々な後処理のどの時点においても、あるいは後処理の後ででも加えることができる。最も適切な時点は、範囲決定試験(range finding test)を用いて予め決定しなければならない。
【0028】
本発明の顔料組成物の調製のために、前述の工程段階の1つまたは複数を、例えば欧州特許出願公開第1257602号明細書に記述されている小型反応器中で実施することもできる。この場合には、熱処理を、例えば0.01〜600秒と、1時間よりも大幅に短縮することもできる。
【0029】
本発明の顔料組成物は、C.I.Pigment Yellow74を、式(1)の化合物の1つまたは複数と混合し、水中および/または溶媒中で再結晶化および/または加熱し、例えば、大気圧または加圧のいずれかにおいて後処理することで得ることもできる。
【0030】
従来技術において、オフセット印刷で、オフセット印刷インク中の顔料および顔料組成物の分散性を向上させるために、これらをロジンで被覆することが知られている。ロジン被覆の顔料および顔料組成物は、ノズルの破損をもたらす可能性があるので、インクジェット印刷に悪影響を有することが判明している。驚くべきことに、本発明による顔料組成物は、ロジンをほとんど(せいぜい5重量%、好ましくはせいぜい1重量%)、または全く使用しないにもかかわらず、インクジェットインキの基剤中に適切に分散し、顕著な印刷結果をもたらすことが判明した。
【0031】
インクジェットインキは、マイクロエマルジョン媒体中、非水媒体またはUV硬化インキを調製するための媒体中、あるいはホットメルトインクジェットインキを調製するためのワックス中に顔料組成物を分散することで調製することができる。有利には、これらの手順で得られたインキは、その後インクジェット用途のために(例えば、1ミクロンフィルタを通して)ろ過される。
【0032】
溶媒ベースのインクジェットインキは、実質上0.5〜30重量%、好ましくは1〜15重量%の本発明の顔料組成物、70〜95重量%の有機溶媒もしくは溶媒混合物、および/またはハイドロトロープ化合物を含有している。所望ならば、溶媒ベースのインクジェットインキは、キャリア材、および、例えば、ポリウレタン樹脂、天然および合成ゴム、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、ワックス/ラテックスシステムまたはこれら化合物の組合せなど、「溶媒」に可溶な結合剤を含むことができる。
【0033】
所望ならば、溶媒ベースのインクジェットインキは、例えば、湿潤剤、揮発分除去剤/脱泡剤、保存剤、酸化防止剤など、追加の添加剤をさらに含むことができる。
マイクロエマルジョンインキは、有機溶剤、水、および所望ならば界面媒介物(界面活性剤)として働く追加の物質をベースとしている。マイクロエマルジョンインキは、0.5〜30重量%、好ましくは1〜15重量%の本発明の顔料組成物、0.5〜95重量%の水、0.5〜95重量%の有機溶媒および/または界面媒介物を含む。UV硬化インキは、実質上0.5〜30重量%の本発明の顔料組成物、0.5〜95重量%の水、0.5〜95重量%の有機溶媒または溶媒混合物、0.5〜50重量%の放射線硬化性結合剤、および所望ならば0〜10重量%の光重合開始剤を含む。
ホットメルトインキは、一般的に、室温では固体で熱すると液体になり、適切な好ましい融解範囲が約60℃〜約140℃である、ワックス、脂肪酸、脂肪アルコールまたはスルホンアミド類をベースとする。ホットメルトインクジェットインキは、実質的に20〜90重量%のワックスと、1〜10重量%の本発明の顔料組成物からなる。さらに、0〜20重量%の(「染料溶解剤」としての)追加のポリマー、0〜5重量%の分散剤、0〜20重量%の粘度改良剤、0〜20重量%の可塑剤、0〜10重量%の粘着性添加剤、0〜10重量%の(例えば、ワックスの結晶化を防止する)透明性安定剤、および0〜2重量%の酸化防止剤が存在できる。
【0034】
さらに、本発明の顔料組成物は、加法発色および減法発色の両方のための色フィルタ用着色剤として、また電子インキ(「e−インキ」)または電子ペーパー(「e−ペーパー」)用の着色剤として使用するのに適している。
【0035】
反射型色フィルタであれ透明型色フィルタであれ、色フィルタと呼ばれるものの生産において、顔料は、ペーストの形で、または適切な結合剤(アクリル酸樹脂、アクリル酸エステル、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ゼラチン、カゼイン)中の着色フォトレジストとして、それぞれのLCD構成部品(例えば、TFT−LCD(薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ)、または例えば(S)TN−LCD((超)ねじれネマティック液晶ディスプレイ))に適用される。安定なペーストまたは着色フォトレジストに関して、高い熱安定性に加えて、高い顔料純度がもう1つの前提条件である。さらに、顔料色フィルタは、インクジェットまたは他の適当な印刷方法に適用することもできる。
【0036】
本発明の顔料組成物は、例えば、プラスチック、樹脂、ワニス、塗料、電子写真用トナーおよび現像剤、エレクトレット材料、印刷インキを含めたインキ、シードなど、天然産または合成による高分子質量有機材料の着色に、一般的に使用できることが理解されよう。
【0037】
以下の実施例において、「部」はいずれの場合も重量基準であり、「%」はいずれの場合も重量基準である。「合計モル%(overall mol%)」は、全顔料組成物中の特定の化合物のモル百分率を意味する。
【0038】
I.顔料組成物の調製
【実施例1】
【0039】
合計90モル%のC.I.Pigment Yellow74および合計10モル%のC.I.Pigment Yellow65。
【0040】
a)ジアゾ化合物
5−ニトロ−2−アミノアニソール121.1部および 3−ニトロ−4−アミノアニソール13.5部を、水336部および濃度31%の塩酸188部中でスラリー化する。懸濁液を、氷と水の混合物672部を使用して0℃に冷却し、濃度40%の亜硝酸ナトリウム溶液107.8部を加えることによってジアゾ化する。このジアゾ溶液を、Decalite(登録商標)1.92部を加えることで透明にし、続いてろ過する。
【0041】
b)カップリング剤
アセトアセト−o−アニシド165.8部を、水2152部および濃度33%の水酸化ナトリウム溶液94.1部中に溶解する。氷を加えて10℃に冷却し、濃度80%の酢酸80部でカップリング剤を沈殿させ、生成物を濃度33%の水酸化ナトリウム溶液を使用してpH9.8に調整する。
【0042】
c)カップリング
前記ジアゾ化溶液を、1時間かけてカップリング剤に添加する。この添加中、濃度6%の水酸化ナトリウム溶液を用いて、pHを3.8〜4.2に維持する。次いで、この懸濁液を80℃で1時間攪拌する。次いでこれをろ過し、プレスケーキを60℃で乾燥させる。
【0043】
2種類の混晶が生成される。生成された一方の混晶(C.I.Pigment Yellow74の量が多く、式(1)(R=OCH)の顔料の量が少ない)は、C.I.Pigment Yellow74と同形であり、生成された他方の混晶(C.I.Pigment Yellow74の量が少なく、式(1)(R=OCH)の顔料の量が多い)は、式(1)(R=OCH)の純粋な顔料の結晶構造と同形である。
本発明のこの顔料組成物は、以下の特性線に関するX線粉末図(Cu−Kα放射、2θは度数、測定精度は±0.2°、強度はvs=非常に強い、s=強い、m=中位、w=弱い、他の全てのラインは「非常に弱い」を表す)において注目に値する。
【0044】
【表1】


【0045】
得られた本発明のこの2種類の異なる混晶の混合物は、C.I.Pigment Yellow74に比べて緑がかった黄色の色相が注目に値する。式(1)(R=OCH)の純粋な顔料は、C.I.Pigment Yellow74より著しく赤い色相を有しているので、これは驚くべきことである。本発明の顔料組成物のX線粉末図は、別個に調製したC.I.Pigment Yellow74と、式(1)(R=OCH)のモノアゾ顔料とを、モル比9:1で物理的に混合したX線粉末図とは著しく異なる。
【実施例2】
【0046】
合計93モル%のC.I.Pigment Yellow74および合計7モル%のC.I.Pigment Yellow65
合成は、5−ニトロ−2−アミノアニソール125.1部と、3−ニトロ−4−アミノアニソール9.4部とを使用する以外は、実施例1と同じである。これによって混晶の混合物が得られる。
【実施例3】
【0047】
合計95モル%のC.I.Pigment Yellow74および合計5モル%のC.I.Pigment Yellow65
合成は、5−ニトロ−2−アミノアニソール127.8部と、3−ニトロ−4−アミノアニソール6.7部とを使用する以外は、実施例1と同じである。これによって混晶の混合物が得られる。
【実施例4】
【0048】
合計97モル%のC.I.Pigment Yellow74および合計3モル%のC.I.Pigment Yellow65
合成は、5−ニトロ−2−アミノアニソール130.5部と、3−ニトロ−4−アミノアニソール4.0部とを使用した以外は、実施例1と同じである。
【実施例5】
【0049】
合計98モル%のC.I.Pigment Yellow74および合計2モル%のC.I.Pigment Yellow65
合成は、5−ニトロ−2−アミノアニソール131.8部と、3−ニトロ−4−アミノアニソール2.7部とを使用するた以外は、実施例1と同じである。これによって混晶が得られる。
【実施例6】
【0050】
合計90モル%のC.I.Pigment Yellow74および合計10モル%のC.I.Pigment Yellow73
【0051】
a)ジアゾ化合物
5−ニトロ−2−アミノアニソール121.1部および2−ニトロ−4−クロロアニリン13.8部を、水336部および濃度31%の塩酸188部中でスラリー化する。この懸濁液を、氷と水の混合物672部を使用して0℃に冷却し、濃度40%の亜硝酸ナトリウム溶液107.8部を加えることによってジアゾ化する。このジアゾ溶液を、Decalite1.92部を加えることで透明にし、続いてろ過する。
【0052】
b)カップリング剤
アセトアセト−o−アニシド165.8部を、水2152部および濃度33%の水酸化ナトリウム溶液94.1部中に溶解する。氷を加えて10℃に冷却し、濃度80%の酢酸80部で、カップリング剤を沈殿させ、生成物を濃度33%の水酸化ナトリウム溶液を用いて、pH9.8に調整する。
【0053】
c)カップリング
このジアゾ化合物溶液を、1時間かけてカップリング剤に添加する。この添加中、濃度6%の水酸化ナトリウム溶液を用いて、pHを3.8〜4.2に維持する。次いで、懸濁液を80℃で1時間攪拌する。次いでこれをろ過し、プレスケーキを60℃で乾燥させる。
【0054】
この得られた混晶は、C.I.Pigment Yellow74に比べて緑がかった黄色の色相が注目に値する。C.I.Pigment Yellow73の純粋な顔料は、C.I.Pigment Yellow74に比べてより赤い色相を有しているので、これは驚くべきことである。生成された混晶はC.I.Pigment Yellow74と同形であり、以下の特性線によるX線粉末図(Cu−Kα放射、2θは度数、測定精度は±0.2°、強度はvs=非常に強い、s=強い、m=中位、w=弱い、他の全てのラインは「非常に弱い」を表す)において識別される。
【0055】
【表2】


【0056】
対照的に、C.I.Pigment Yellow74と、C.I.Pigment Yellow73とを同じ方法で個別に合成し、続いて両顔料を、9:1のモル比で物理的に混合した場合、以下の通りはっきりと異なるX線粉末図が得られる。
【0057】
【表3】


【0058】
このC.I.Pigment Yellow74と、C.I.Pigment Yellow73のモル比9:1の物理的混合物は、モル比9:1のC.I.Pigment Yellow74とC.I.Pigment Yellow73から構成される本発明の上記顔料組成物よりも、かなり赤味がかった色相を有している。
【実施例7】
【0059】
合計95モル%のC.I.Pigment Yellow74および合計5モル%のC.I.Pigment Yellow73
合成は、5−ニトロ−2−アミノアニソール127.8部と、2−ニトロ−4−アミノアニソール6.9部とを使用した以外は、実施例6と同じである。これによって混晶が得られる。
【実施例8】
【0060】
合計95モル%のC.I.Pigment Yellow74および合計5モル%のC.I.Pigment Yellow203
【0061】
a)ジアゾ化合物
5−ニトロ−2−アミノアニソール127.8部および2−ニトロ−4−メチルアニリン6.1部を、水336部および濃度31%の塩酸188部中でスラリー化する。この懸濁液を、氷と水の混合物672部を使用して0℃に冷却し、濃度40%の亜硝酸ナトリウム溶液107.8部を加えることによってジアゾ化する。ジアゾ溶液を、Decalite1.92部を加えることで透明にし、続いてろ過する。
【0062】
b)カップリング剤
アセトアセト−o−アニシド165.8部を、水2152部および濃度33%の水酸化ナトリウム溶液94.1部中に溶解する。氷を加えて10℃に冷却し、濃度80%の酢酸80部でカップリング剤を沈殿させ、生成物を濃度33%の水酸化ナトリウム溶液を用いて、pH9.8に調整する。
【0063】
c)カップリング
ジアゾ溶液を、1時間かけてカップリング剤に添加する。この添加中、濃度6%の水酸化ナトリウム溶液を用いて、pHを3.8〜4.2に維持する。次いで、懸濁液を80℃で1時間攪拌する。次いでこれをろ過し、プレスケーキを60℃で乾燥させる。
(比較例9(独国特許出願公開2727531号明細書によるが、樹脂を含まず))
合計85モル%のC.I.Pigment Yellow74および合計15モル%のC.I.Pigment Yellow65
【0064】
a)ジアゾ化合物
5−ニトロ−2−アミノアニソール114.2部および3−ニトロ−4−アミノアニソール20.2部を、濃度31%の塩酸246部および水84部の混合物中で塩酸塩に転換し、濃度40%の亜硝酸ナトリウム138部を使用して、0〜10℃でジアゾ化する。
【0065】
b)カップリング剤
アセトアセト−o−アニシド172.4部を、水2400部および濃度33%の水酸化ナトリウム溶液162.8部中に室温において溶解し、この溶液を、スルホコハク酸のジイソデシルエステルのナトリウム塩3部を含んでいる陰イオン型分散剤の溶液と混合する。その後、15℃において氷酢酸92.4部を加えることによって、この溶液からアセトアセト−o−アニシジドを沈殿させて、微細懸濁液を得る。pHを6.5に上げる。
【0066】
c)カップリング
カップリングは、透明化したジアゾニウム塩溶液を1時間かけて連続的に加えることで実施する。カップリング生成物の懸濁液を、90℃で1時間加熱する。次いで懸濁液を、冷水で希釈することによって70℃に冷却し、既製の顔料を吸引ろ過によって分離し、洗浄し、乾燥させ、粉砕する。
【0067】
II.着色剤配合物の生成
粉末またはプレスケーキの顔料組成物を、以下に述べる分散剤、有機溶媒、および他の補助剤と共に脱イオン水中でペースト化し、次いで溶解槽を用いてホモジナイズして予備分散した。その後、ビーズミルを用いて冷却しながら顔料粒子が所望の粒度分布に達するまで粉砕して微細分散を実施した。その後分散液を、所望の最終顔料濃度になるように脱イオン水で調整した。
【0068】
以下の発明実施例および比較例に記載される着色剤配合物は、上記の方法によって生成され、以下の成分が、それぞれの着色剤配合物が100部となるように指示の量で使用される。なお、部は重量部を表す。
【0069】
(発明実施例A)
20部 実施例1の顔料組成物
2.5部 アクリル樹脂、Na塩(分散剤)
1.2部 ポリエチレングリコールアルキルエーテル、Na塩(分散剤)
7.5部 プロピレングリコール
0.2部 保存剤
残り 水
【0070】
(発明実施例B)
20部 実施例3の顔料組成物
2.5部 アクリル樹脂、Na塩(分散剤)
1.2部 ポリエチレングリコールアルキルエーテル、Na塩(分散剤)
7.5部 プロピレングリコール
0.2部 保存剤
残り 水
【0071】
(発明実施例C)
20部 実施例6の顔料組成物
2.5部 アクリル樹脂、Na塩(分散剤)
1.2部 ポリエチレングリコールアルキルエーテル、Na塩(分散剤)
7.5部 プロピレングリコール
0.2部 保存剤
残り 水
【0072】
(発明実施例D)
20部 実施例7の顔料組成物
2.5部 アクリル樹脂、Na塩(分散剤)
1.2部 ポリエチレングリコールアルキルエーテル、Na塩(分散剤)
7.5部 プロピレングリコール
0.2部 保存剤
残り 水
【0073】
(比較例E)
20部 ロジンを含む市販のC.I.Pigment Yellow74
2.5部 アクリル樹脂、Na塩(分散剤)
1.2部 ポリエチレングリコールアルキルエーテル、Na塩(分散剤)
7.5部 プロピレングリコール
0.2部 保存剤
残り 水
【0074】
(比較例F)
20部 ロジンを含まないC.I.Pigment Yellow74
2.5部 アクリル樹脂、Na塩(分散剤)
1.2部 ポリエチレングリコールアルキルエーテル、Na塩(分散剤)
7.5部 プロピレングリコール
0.2部 保存剤
残り 水
【0075】
(比較例G)
20部 比較例9の顔料組成物
2.5部 アクリル樹脂、Na塩(分散剤)
1.2部 ポリエチレングリコールアルキルエーテル、Na塩(分散剤)
7.5部 プロピレングリコール
0.2部 保存剤
残り 水
【0076】
(比較例H)
18部 ロジンを含む市販のC.I.Pigment Yellow74
2部 C.I.Pigment Yellow65
2.5部 アクリル樹脂、Na塩(分散剤)
1.2部 ポリエチレングリコールアルキルエーテル、Na塩(分散剤)
7.5部 プロピレングリコール
0.2部 保存剤
残り 水
【0077】
III.着色剤配合物の着色特性の試験
UV−可視光線:
UV−可視光線スペクトルを記録するために、着色剤配合物を蒸留水で希釈し、Perkin Elmer ラムダ20を用いて300〜700nmの範囲で測定した。表1に報告されている値は、それぞれの吸収極大を表す。
【0078】
色の濃さ、色相の違い、および透明度:
白色減退(white reduction)における、色の濃さの違いおよび色相の違いdHを決定するために、それぞれの着色配合物0.5gを、標準白色分散剤50gと共にホモジナイズし、テストチャート上に塗布した。その後、着色特性(色の濃さおよび色相のdH)を、Minolta CM−3700d分光光度計を用いて測定した。
透明度は、それぞれの着色剤配合物2.5gを、蒸留水12.5gおよびアクリル酸ワニス10.0gでホモジナイズし、得られた組成物を試験チャート上に塗布して求めた。続いて透明度を目視で評価した。
色の濃さ(100%)、色相の違いdH、および透明度に関して使用した標準は、比較例Fの着色剤配合物であった。
色相の違いdHは、以下の通り評価した。
−VI dH>−2.01(著しく赤色)
−V dH=−1.41〜−2.00(十分に赤色)
−IV dH=−0.81〜−1.40(明らかに赤色)
−III dH=−0.51〜−0.80(かなり赤色)
−II dH=−0.21〜−0.50(幾分赤色)
−I dH=−0.11〜−0.20(わずかに赤色)
/=/ dH=0.10〜−0.10(両色がほぼ同じ)
+I dH=0.11〜0.20(わずかに緑色)
+II dH=0.21〜0.50(幾分緑色)
+III dH=0.51〜0.80(かなり緑色)
+IV dH=0.81〜1.40(明らかに緑色)
+V dH=1.41〜2.00(十分に緑色)
+VI dH>2.01(著しく緑色)
透明度は以下のように評価した。
−VI 著しく隠蔽性
−V 十分に隠蔽性
−IV 明らかに隠蔽性
−III かなり隠蔽性
−II 幾分隠蔽性
−I わずかに隠蔽性
/=/ 両方がほぼ同じ
+I 僅かに透明性
+II 幾分透明性
+III かなり透明性
+IV 明らかに透明性
+V 十分に透明性
+VI 著しく透明性
UV−可視光極大、色の濃さ、色相の移動のdH、および透明度に関して得られた結果を表1に再掲する。
【0079】
【表4】

【0080】
本発明の着色剤配合物(実施例A〜D)は、純粋なC.I.Pigment Yellow 74ベースの着色剤配合物に比べて、UV−可視光線スペクトルのより短い波長に吸収極大を有しており、したがって後者より緑色がかった黄色を示すことは明らかである。その上、白色減退における本発明の着色剤配合物の色の濃さは、純粋なC.I.Pigment Yellow 74ベースの着色剤配合物に比べて著しく高い。さらに、本発明の着色剤配合物は、純粋なC.I.Pigment Yellow 74ベースの着色剤配合物に比べて、白色減退における色相においてより透明でありより緑色がかっている。
C.I.Pigment Yellow 74と、C.I.Pigment Yellow 65とを、モル比9:1で同時粉砕して得られた着色剤配合物(比較例H)は、同じ割合の2つの顔料(実施例A)の同時カップリングによる着色剤配合物に比べて、大幅に赤い色相を有している。さらに、比較例Hの着色剤配合物は、より隠蔽性で、色がより薄い。
【0081】
IV.着色剤配合物の印刷関連性質の試験
印刷関連性質を評価するために、発明実施例A〜D、および比較例Eの着色剤配合物からテストインキを作製し、それらの印刷特性をサーマルインクジェットプリンタを使用して調査した。
【0082】
試験インキの作製は、研磨剤の屑および粗大破片があればそれも取り除くために、着色剤配合物を先ず1ミクロンのフィルタを通して精密ろ過した。その後で、ろ過した着色剤配合物を水で希釈し、さらに低分子量のアルコールおよびポリオールと混合した。その場合、テストインキは以下の組成を有していた。
25部 着色剤配合物
10部 エチレングリコール
10部 ジエチレングリコール
50部 脱塩水
HP960Cプリンタ(Hewlett Packard)を使用し、市販の標準紙(コピー用紙)およびHewlett Packard製の特殊紙(プレミアム品質)上にテストイメージを印刷した。印刷したイメージの品質および精度の評価は目視検査で行った。
結果を表2に再掲する。
【0083】
【表5】

【0084】
発明実施例A〜Dの着色剤配合物から作製されたテストインキは、テストにおいて、極めて良好な印刷挙動を示した。しかしながら、ロジンを含む着色剤配合物ベースのテストインキ(比較例E)では、印刷ノズルがすぐに故障した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合計86.0から99.9モル%のC.I.Pigment Yellow74分子と、合計14.0から0.1モル%の式(1)の少なくとも1種のモノアゾ顔料とを含む顔料組成物の、顔料インクジェットインキおよび色フィルタ用着色剤としての使用。
【化1】

(式中、Rは、Cl、OCH、CHまたはNOを表す)
【請求項2】
前記顔料組成物が、合計86.5から99.5モル%のC.I.Pigment Yellow74分子と、合計13.5から0.5モル%の式(1)の少なくとも1種のモノアゾ顔料とを含む請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記顔料組成物が、合計87.0から94.0モル%のC.I.Pigment Yellow74分子と、合計13.0から6.0モル%の式(1)の少なくとも1種のモノアゾ顔料とを含む請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記顔料組成物が、合計88から92モル%のC.I.Pigment Yellow74分子と、合計12から8モル%のC.I.Pigment Yellow65分子とを含む請求項1から3の少なくとも一項に記載の使用。
【請求項5】
前記顔料組成物が、C.I.Pigment Yellow74と、式(1)の化合物との混晶であって、前記顔料組成物の全重量に対して15重量%超の混晶から構成される、請求項1から4の少なくとも一項に記載の使用。
【請求項6】
前記顔料組成物が、C.I.Pigment Yellow74と、式(1)の化合物との混晶であって、前記顔料組成物の全重量に対して30重量%超の混晶から構成される、請求項1から5の少なくとも一項に記載の使用。
【請求項7】
前記顔料組成物が、C.I.Pigment Yellow74と、式(1)の化合物との混晶であって、顔料組成物の全重量に対して50重量%超の混晶から構成される、請求項1から6の少なくとも一項に記載の使用。
【請求項8】
前記顔料組成物が、C.I.Pigment Yellow74と、式(1)の化合物との混晶であって、顔料組成物の全重量に対して75重量%超の混晶から構成される、請求項1から7の少なくとも一項に記載の使用。
【請求項9】
前記混晶が、70から99.9モル%のC.I.Pigment Yellow74と、30から0.1モル%の式(1)の化合物とを含む、請求項5から8の少なくとも一項に記載の使用。
【請求項10】
前記顔料組成物が、アルカリ可溶樹脂を実質上含まない、請求項1から9の少なくとも一項に記載の使用。

【公表番号】特表2007−527458(P2007−527458A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501144(P2007−501144)
【出願日】平成17年2月11日(2005.2.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001375
【国際公開番号】WO2005/083010
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(598109501)クラリアント・プロドゥクテ(ドイチュラント)ゲーエムベーハー (45)
【氏名又は名称原語表記】Clariant Produkte (Deutschland)GmbH
【Fターム(参考)】