説明

CNTのレーザー光による直接加工と周辺技術

【課題】
CNTを1m以上の長さにする技術。カーボンナノチューブ(以下CNTとする。)の用途を拡大するためには、その長さが短すぎるし、化学的製造は難解(現在時点の最長:20mm程度)である。この時、化学的に製造されたCNTには不純物(異形)が混在しているので目的形状のCNTとそれ以外を分別する技術が必要となる。
【解決手段】
外科手術的な手法(化学的でない)により、すなわちフェムト秒レーザー光により直接接続することによりCNTを1m以上の長さにする。このときウォーターコンベアー図3を使って、微小材料の位置あわせを可能として且つ連続的に溶接する。またこの周辺技術として化学的に合成するときできる欠陥形状のCNTと正規の形状を分別する発明として2種図4,5と自動濃縮技術図6を説明している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ(以下CNTとする。)の直接加工技術と周辺技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CNTの応用製品は多数生産されて著しい効果を発揮しているがCNTそのものの製造技術は研究開発途上である。特に数十センチメーター単位以上のCNTの製造法の研究は試みられているが化学的手法では難解で未だに確立できていない、それゆえ用途を狭めている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
CNTは、化学的手法で製造される。本発明は、化学的手法によって作成されたCNTをいわば外科手術的手法によってより長いCNTを作成しようとするものである。この時、治具としてウォーターベルトコンベアーを発明し用いる。また製造のプロセスの簡略化や歩留まりの向上のためのCNT形状分別技術が必要である。CNT形状別分別技術3種を発明した。極小の材料(ナノメーター)である2つのCNTの位置あわせを効率よくする手段が必要である。位置合わせした2つのCNTを効率よく接合する手段が必要である。
【0004】
形状別に分別する必要がある。極小の材料のためセンサーやカメラからの信号の処理で形状の識別ができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
純水(再結合用に触媒を混合する手段も用意する。以下“純水”)を使用し、その水平性と表面張力の2つの特性を応用する。まず、ナノテクノロジーで加工された治具(図1、2)の溝に2つのCNTが落とされる。以下、μコンピューターは、治具の給排水孔を使って純水をコントロールする。コントロールされた純水により2つのCNTは制御される。その水平性は、2つのCNTの高さを揃える担保となる。この時、CNTは、混ざりにくい性質のため純水に浮かんでいる。中央の穴から純水を吸水すると2つのCNTは、中央に引き寄せられる。2つの向かい合った先端は分子間に働く力によって引き合いつながる。またCNTは、表面張力に比較して、極めて軽量のためその表面がレーザー加工台となりこれで加工の準備ができたフェムト秒レーザーが隣り合った2つのCNTの中央を照射する。2つのCNTの先端部分の原子間接続が一時的切断され不安定な状態になる。レーザーのエネルギーを調節して再結合を促す。(この時、触媒を純水に適宜配合して反応を促進させる。)2つのCNTが接続される。
【0006】
諸条件をまとめると
被加工材料としてCNTの寸法(ナノメートル:10(-9))}は、
{(直径:100nmφ以上程度 × (長さ:10μm程度)。
フェムト秒(フェムト:10(-15))レーザー加工寸法{1μmφ以下}
表面張力は、約73(dyn)程度。
CNTの比重は、約 1.4。
【0007】
CNT形状別分別処理は、次の様にして解決する。CNTは極小のため画像がとれない。それゆえ予測制御を行う。所定の時間内に落下する予測の下に所定の形状のCNTを拾い取る。方式は2つである。
【0008】
1つは、形状により慣性モーメントが異なることによる。落下するCNTに外部から光子を衝突する。極軽量(フェムト グラム単位)のCNTは光子からまたは光子が落下層内部の分子(窒素等)に衝突し玉突き的に運動量を受け取り回転する。形状により慣性モーメントが異なるので落下速度の差異が拡大する。落下時間を予測して目的物を回収する。(図4)。前記において、光子量を調整することでもCNTをホバリング(hovering)させて抜き取る図6に模式図を示す。
【0009】
いま1つは、DNAパターン分析に用いられる初期の電気泳動の原理を応用する。すなわちCNTは切断したDNAである。引き付ける電気力は重力に置き換える。寒天成分は変わりうる適当な材料(チッソ等のガス、極微小粒子)とする。これで電気泳動を立てかけた形になる。CNTの長さによる分別ができる(図5)。
【発明の効果】
【0010】
従来、CNTはその長さゆえ(短すぎる)に炭素繊維のような繊維状にした応用ができなかった。長さを担保する工業生産技術が確立されれば炭素繊維よりはるかに強い、軽量な素材として置き換え、用途を飛躍的に拡大できる。またこのことがエネルギー消費の大幅な低下をもたらすだけでなく地球温暖化の防止に大きく貢献する。
【0011】
CNTが分別できれば、量産において歩留まりが向上して製造プロセスを簡略化できる。複合材料の品質向上にも寄与する。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
図1、図2、図3は、レーザー溶接について説明している。
図1は、基本的な溶接手順を説明している。
図2は、側面図を付けて溶接の実行状態を説明している。
図3は、基本手順を発展させて連続して接続する技術を説明している。
図1は、CNT−A、CNT−Bを水の水準性を使って位置合わせする。9は、初期位置である。6から純水を供給してCNTを10の位置まで持ち上げる。この時2は水準である。6から純水を排水するとCNTは、11,12、7と降りてくる。この過程で2つのCNTは、排水の流れに乗って中央によってくる。2つは、互いに引き合い接する。左右の自由度は、図2で規定される。これでレーザー装置は、その位置を固定または微調整で済ませることができる。フェムト秒レーザー14が2つの接した点をレーザー照射幅の中央に含む左右の原子間の接続を断つ。不安定になった原子はレーザーの消失で直近の不安定な原子と接続する。
【0013】
連続して接続手段を図3で説明している。図3において、25はフェムト秒レーザー発生装置である。26は、ウォーターコンベアー30の水準を一定に保つためのμコンピューター装置である。27はCNTでレーザー処理した軌跡である。1列に並んだCNTはお互いに接している必要がある。29で排水することによってお互いに接するように誘導する。この時28の排水を合わせて制御する。31はレーザーの軌跡である。
【実施例2】
【0014】
CNTレーザー接続処理に於いてCNT形状分別は有用である。図4、5、6は、CNTの形状別分別装置である。CNTは、製造時に不純物が混在してしまう。極小の材料のため分別することが難解のため、また特段にそれを必要としなかった為、今日まで分別装置が無かったが本発明を実現する為には必要不可欠である。図4、図5は、分別の方式が異なる。図4は、篩い41にかけてCNTの塊(凝集物)を除去したのち、自由落下させてその途中に外部より光子36を衝突させCNTにその運動量を与える。または、間接的に光子は分子(チッソ等)に衝突後分子(チッソ等)がCNTに衝突し運動量の受け渡しを行う。CNTは、極軽量のため回転する。形状によりその慣性モーメントが異なるため、落下速度が異なる。目的の形状の落下速度を予め測定してシャッター34と連動してμコンピューター制御で受け取る43。これを繰り返して目的形状の濃度を高める。図5は、篩い47にかけてCNTの塊を除去したのち、自由落下させる。この時、落下層の中に微小物質46を充満させておく。この物質が落下の抵抗となり形状による落下速度を差別する。目的の形状の落下速度を予め測定してシャッター49と連動してμコンピューター制御で受け取る48。これを繰り返して目的形状の濃度を高める。微小物質46を除去して目的の形状のCNTを得る。
図6は、図4、図5の方式に適用して自動濃縮を実現するものである。
【産業上の利用可能性】
【0015】
強度と軽量を必要とする部品材料に加工して利用される。動力機関であれば燃費を改善する。
航空機、自動車(特に電気自動車の軽量化に適す。)、建造物 等々 の機構材料として利用される。製造の歩留まりを向上する技術によって現在の炭素繊維の用途に置き換われることが期待できる。
CNT複合材料の品質向上にも寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】CNT溶接手順図。水の持つ特性を利用して本発明の基本手順を説明している。
【図2】CNT溶接加工の実行図。溶接の瞬間を詳細に説明している。
【図3】ウォーターコンベアー模式図。CNTの連続溶接を可能とする。
【図4】CNT形状別分別装置1。慣性モーメントの違いにより形状を分別する。光子を衝突させて落下中の物体を回転させて落下速度の差異を拡大する。
【図5】CNT形状別分別装置2。DNAの電気泳動の原理を立てかけて(垂直にして)応用する。
【図6】CNT形状別分別装置3。分別処理を自動的に繰り返し濃縮する。
【符号の説明】
【0017】
図1
1 フェムト秒レーザー光
2 水面2
3 水面3
4 水面4
5 純水(触媒材料を添加)
6 給水,吸水穴
7 溶接されるべき一方のCNT
8 溶接されるべき一方のCNT
9 CNTの初期のポジション
10 CNTの第二ポジション
11 CNTの第三ポジション
12 CNTの第四ポジション
図2
13 溶接される一方のCNT
14 フェムト秒レーザー光
15 押さえ油膜(オプション)
16 溶接される一方のCNT
17 水面(水準)
18 レーザー光の軌跡
19 純水(触媒材料を添加)
図3
20 電磁バルブのコントロール線
21 電磁バルブのコントロール線
22 レーザー光
25 フェムト秒レーザー装置
26 水位レギュレーター
27 レーザー加工の軌跡
28 流速調整穴
29 流速調整穴
30 純水(触媒添加)
31 連続でレーザー加工した軌跡
図4
32 層内のCNTを攪拌して均一化する
33 CNTの投入層
34 ダマを除去したCNTの落下をコントロールするシャッター
35 光源
36 光源から飛び出した光子
37 光子の影響で回転、落下するCNT
38 十分長いCNT落下層(低気圧・真空等)
39 除外されたCNTの回収層
40 CNTの落下をコントロールする装置
41 ダマ取りフィルター
42 光源は4方から均等に照射される。
43 CNT受け回転台(受け取りシャーレー、スルー穴)
44 受け取りシャーレー
45 ダマ取りフィルター
46 電気泳動に於ける寒天成分に変わる物質(高濃度チッソ等)
図5
47 ダマ取りフィルター
48 受け取りシャーレー(受け取りシャーレー、スルー穴)
49 ダマを除去したCNTの落下をコントロールするシャッター
図6
50 選択的にCNT落下物を受け止める。
51 選択外のCNT落下物をカットする。
52 選択された層内のCNTをポンプで投入層に持ち上げる。
53 50,51,52を繰り返し目的のCNTを得る。
54 目的外のCNTは、この穴を落下して回収され再度濃縮される。
55 54でスルーして目的の層の到着時間に合わせて受け皿を回転させて回収シャーレーを差し出して目的物を得る。53との選択肢である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのカーボンナノチューブ(以下CNTとする。)をフェムト秒レーザー光により直接接続することにより10μm程度の長さのCNTを1m以上の長さにする技術。あわせて本発明以外にも一般的に微小材料の加工の為の治具としてのウォーターベルトコンベアー技術。
【請求項2】
化学的に合成するときできる欠陥形状(目的外)のCNTと正規(目的とする)の形状のCNTを分別する2種の技術と自動濃縮技術。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−73895(P2011−73895A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224343(P2009−224343)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(306034273)
【Fターム(参考)】