説明

CO前駆体を含む金属ペースト

本発明は、焼結方法であって、部品を互いに安定的に接合することが可能になり、その際、加工温度が200℃未満であり、かつ低多孔性ならびに高い電気伝導率および熱伝導率を有する安定な接触点が生成される焼結方法を提供する。従って、本発明は、部品を接合するための方法であって、(a)少なくとも(a1)部品1、(a2)部品2、および(a3)部品1と部品2との間に置かれる金属ペーストを有するサンドイッチ構成物を準備する工程と、(b)このサンドイッチ構成物を焼結する工程とを含み、この金属ペーストは、(A)75〜90重量%の、少なくとも1つの有機化合物を含有するコーティングを有する粒子の形態で存在する、少なくとも1つの金属と、(B)0〜12重量%の、少なくとも1つの金属前駆体と、(C)6〜20重量%の、少なくとも1つの溶媒と、(D)0.1〜15重量%の、(i)1〜4個の炭素原子を有する有機酸の塩、(ii)1〜4個の炭素原子を有する有機酸のエステル、および(iii)カルボニル錯体を含む群から選択される少なくとも1つの焼結剤と、を含むことを特徴とする方法、に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ペーストに、およびこの金属ペーストが使用される、部品を接合するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力および温度に対して非常に敏感である、LEDまたは非常に薄いシリコンチップなどの部品を接合することは、パワー・エレクトロニクスの分野の特定の課題を代表する。
【0003】
この理由のため、圧力および温度に敏感なこのような部品は、接着により互いに接合されることが多い。しかしながら、接着技術は、これが、不十分な熱伝導または電気伝導率しか呈しない、部品間の接触点を作り出すという短所を有する。
【0004】
この問題を解決するために、接合するべき部品は、しばしば焼結される。この焼結技術は、部品の安定な接合のための非常に簡便な方法を代表する。
【0005】
しかしながら、従来の焼結方法は高い加工圧力または高い加工温度のいずれかを必要とする。これらの条件は接合するべき部品に対して損傷を生じることが多く、そのため、多くの応用例のためには従来の焼結方法は除外せざるを得ない。
【0006】
特許文献1は、パワー・エレクトロニクス用の非常に良好な電気伝導率および熱伝導特性を有する接合層を作ることを可能にする焼結技術を提案する。この焼結方法では、銀化合物を含有する金属ペーストが使用されるが、この銀化合物は300℃未満で元素状の銀へ分解する。これらの金属ペーストにより、加工圧力を3bar未満へ下げること、および加工温度を250℃未満へ下げることが可能になる。この焼結技術は、圧力および温度に敏感な部品を接合することにおいて、大きい品質の向上をもたらす。
【0007】
しかしながら、この加工温度をなおさらに下げることができれば、多くの応用例にとって望ましいであろう。より低い温度は、パワー・エレクトロニクスの分野において、接合するべき部品への負荷をより少なくし、従って部品のさらなる品質向上をもたらすであろう。加えて、加工温度がなおさらに下がれば、かなりの量のエネルギーコストを節約することも可能になろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2007 046 901(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ、本発明は、部品を互いに安定的に接合することが可能になり、その際、加工温度が200℃未満である焼結方法を提供するという目的に基づく。この方法は、接合するべき部品間に、低い多孔性ならびに高い電気伝導率および熱伝導率を呈する接触点を生成するべきである。
【0010】
本発明の別の目的は、本発明に係る焼結方法で使用することができ、かつ加工温度を200℃未満まで下げること、ならびに接合するべき部品間に、低多孔性ならびに高い電気伝導率および熱伝導率を有する接触点を形成することを可能にする金属ペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの目的は、独立請求項の主題によって成し遂げられる。
【0012】
従って、部品を接合するための方法であって、(a)少なくとも(a1)部品1、(a2)部品2、および(a3)部品1と部品2との間に置かれる金属ペーストを有するサンドイッチ構成物を準備する工程と、(b)このサンドイッチ構成物を焼結する工程とを含み、この金属ペーストは、(A)75〜90重量%の、少なくとも1つの有機化合物を含有するコーティングを有する粒子の形態で存在する、少なくとも1つの金属と、(B)0〜12重量%の、少なくとも1つの金属前駆体と、(C)6〜20重量%の、少なくとも1つの溶媒と、(D)0.1〜15重量%の、(i)1〜4個の炭素原子を有する有機酸の塩、(ii)1〜4個の炭素原子を有する有機酸のエステル、および(iii)カルボニル錯体を含む群から選択される少なくとも1つの焼結剤と、を含むことを特徴とする方法、が提供される。
【0013】
さらには、(A)75〜90重量%の、少なくとも1つの有機化合物を含有するコーティングを有する粒子の形態で存在する、少なくとも1つの金属と、(B)0〜12重量%の、少なくとも1つの金属前駆体と、(C)6〜20重量%の、少なくとも1つの溶媒と、(D)0.1〜15重量%の、(i)1〜4個の炭素原子を有する有機酸の塩、(ii)1〜4個の炭素原子を有する有機酸のエステル、および(iii)カルボニル錯体を含む群から選択される、少なくとも1つの焼結剤と、を含有する金属ペーストが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明は、本発明を限定することは意図されておらず、本発明の実施の態様についての1つの可能性のある説明を提供することだけが意図されている。
【0015】
一方で、本発明は、金属ペーストの中に含有される粒子がコーティングされている場合、好ましくは脂肪酸でコーティングされている場合、金属ペーストの使用による部品の焼結にとって有利であるという知見に基づく。この金属粒子がコーティングされていない場合、金属粒子は、金属ペーストの中で凝集し、焼結プロセスの間に初期段階で塊を形成する。この状況は、接合するべき部品間に不均一な接触点を生じることが多い。
【0016】
しかしながら、驚くべきことに、このようなコーティングされた金属粒子は、焼結温度を200℃未満に下げることができない原因でもあるということが見出された。コーティング化合物がこの金属粒子の表面上にある限りは、一方では、金属粒子の凝集は実際に防止される。しかし他方で、この金属粒子の表面は焼結プロセスのためには利用できず、その結果、この金属粒子を焼結することができない。
【0017】
さらに、同じく驚くべきことに、このコーティング層の下にある金属粒子の表面は少なくとも部分的に酸化されるということも見出された。このような金属酸化物層はこの焼結のために必要とされる拡散プロセスに悪影響を及ぼし、従って拡散速度を落とす。同じくこの理由のために、表面で酸化されたこれらの金属粒子を使用して焼結するときには、200℃のはるか上の高い加工温度を使用することが必要であった。
【0018】
本発明によれば、焼結プロセスの際に一酸化炭素を放出するか、または燃焼したときに一酸化炭素を生成する焼結剤が使用される。焼結の際に放出される一酸化炭素は還元剤であり、従って、金属粒子の表面上の金属酸化物を還元することができる。この金属酸化物を除去することで、障害物のない拡散が確実になり、従って、この状態によって、拡散速度の上昇が確実になる。金属酸化物のこの還元においては、その場で反応性金属も生成され、このことは焼結プロセスをさらに促進する。さらに、この焼結プロセスの間に、この反応性金属は、金属粒子の金属原子間の空隙を塞ぐことができ、従って、接合するべき部品間の接触点の多孔性を低下させることができる。それゆえ、極めて安定な、熱伝導性の、かつ電気伝導性でもある接触点が生成される。
【0019】
未だ知られていない理由で、本発明に従って使用される焼結剤は、銀粒子を含有するコーティング化合物を200℃未満の温度で加熱除去することを促進するようである。従って、200℃未満の温度でさえも、この金属粒子の表面は、焼結プロセスのために利用できる。
【0020】
このように、本発明に係る焼結剤の使用によって、焼結の際の加工温度を著しく低下させることができる。ここで、200℃未満の温度でコーティング化合物を焼き払うにもかかわらず、この金属粒子は凝集せず、その代わりに、接合するべき部品間に均一でかつ安定な接触点を生じるということは驚くべきことである。
【0021】
上記の効果は、当該焼結剤が使用されるとき、焼結温度を200℃未満まで下げることができ、しかも、それにもかかわらず焼結プロセスによって、接合するべき部品間に安定な、熱伝導性でかつ電気伝導性の接触点を生成することができるという結果をもたらすようである。
【0022】
部品を接合するための焼結プロセスにおける金属ペーストの使用は、パワー・エレクトロニクスの分野では公知である。
【0023】
本発明によれば、当該金属ペーストは、少なくとも1つの金属を含有する。
【0024】
本願の場合、用語「金属」は、純粋な金属および金属合金の両方を包含する。
【0025】
本発明の範囲では、用語「金属」は、元素の周期表の中で、ホウ素と同じ周期でホウ素の左に、ケイ素と同じ周期でケイ素の左に、ゲルマニウムと同じ周期でゲルマニウムの左に、およびアンチモンと同じ周期でアンチモンの左に見出すことができる元素、ならびに55よりも大きい原子番号を有するすべての元素を指す。
【0026】
本発明によれば、純粋な金属は、少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、さらにより好ましくは少なくとも99.9重量%の純度を有する金属を含有する金属であると理解される。
【0027】
1つの好ましい実施形態によれば、この金属は、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、またはアルミニウムを含む。
【0028】
本発明によれば、金属合金は、少なくとも1つの成分が金属である少なくとも2つの成分から構成される金属混合物であると理解される。
【0029】
本発明に係る1つの好ましい実施形態によれば、銅、アルミニウム、ニッケル、および/または貴金属を含有する合金が、金属合金として使用される。この金属合金は、好ましくは、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、およびアルミニウムを含む群から選択される少なくとも1つの金属を含む。とりわけ好ましい金属合金は、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、およびアルミニウムを含む群から選択される少なくとも2つの金属を含有する。当該金属合金中の銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、およびアルミニウムを含む群から選択される金属の百分率が少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、さらにより好ましくは100重量%であることが、さらに好ましい可能性がある。この合金は、例えば、銅および銀、銅、銀および金、銅および金、銀および金、銀およびパラジウム、白金およびパラジウム、またはニッケルおよびパラジウムを含有する合金を含むことができる。
【0030】
金属として、本発明に係る金属ペーストは、1つの純粋な金属、いくつかの種類の純粋な金属、1つの種類の金属合金、いくつかの種類の金属合金、またはこれらの混合物を含有することができる。
【0031】
この金属は、粒子の形態で当該金属ペーストの中に存在する。
【0032】
この金属粒子は、異なる形態を有することができる。例えば、この金属粒子は、薄片の形態または球形の(ボールの形状の)形態で存在してもよい。1つのとりわけ好ましい実施形態によれば、当該金属粒子は薄片の形態を有する。しかしながら、これは、使用される金属粒子のうちの微量さえもが異なる形態を有することができるということを排除しない。しかしながら、当該粒子の少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%、または100重量%が薄片の形態で与えられることが好ましい。
【0033】
本発明によれば、当該金属粒子はコーティングされている。
【0034】
本発明によれば、粒子のコーティングは、その粒子の表面上の堅く結合された層であると理解される。
【0035】
本発明によれば、当該金属粒子のコーティングは少なくとも1つのタイプのコーティング化合物を含有する。
【0036】
これらのコーティング化合物は有機化合物を含む。
【0037】
本発明によれば、コーティング化合物として使用される有機化合物は、当該金属粒子の凝集を防止する炭素含有化合物を含む。
【0038】
1つの好ましい実施形態によれば、当該コーティング化合物は、少なくとも1つの官能基を有する。官能基として、以下のものが特に考えられうる:カルボン酸基、カルボキシレート基、エステル基、ケト基、アルデヒド基、アミノ基、アミド基、アゾ基、イミド基、シアノ基、またはニトリル基。好ましい官能基はカルボン酸基およびエステル基である。このカルボン酸基は脱プロトン化されていてもよい。
【0039】
当該少なくとも1つの官能基を有するコーティング化合物は、飽和の、単不飽和の、または多価不飽和の有機化合物を含むことが好ましい。
【0040】
さらに、これらの少なくとも1つの官能基を有するコーティング化合物は、分枝状もしくは非分枝状であってもよい。
【0041】
本発明に係る少なくとも1つの官能基を有するコーティング化合物は、好ましくは1〜50個、より好ましくは2〜24個、さらにより好ましくは6〜24個、さらにより好ましくは8〜20個の炭素原子を有する。
【0042】
このコーティング化合物は、イオン性または非イオン性であることができる。
【0043】
好ましくは、遊離脂肪酸、脂肪酸塩、または脂肪酸エステルが当該コーティング化合物として使用される。
【0044】
この遊離脂肪酸、脂肪酸塩、および脂肪酸エステルは、好ましくは非分枝状である。
【0045】
さらに、この遊離脂肪酸、脂肪酸塩、または脂肪酸エステルは、好ましくは飽和である。
【0046】
好ましい脂肪酸塩は、アンモニウム、モノアルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、銅、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、およびカリウムの塩である。
【0047】
好ましいエステルは、アルキルエステル、特にメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、およびブチルエステルである。
【0048】
1つの好ましい実施形態によれば、この遊離脂肪酸、脂肪酸塩、または脂肪酸エステルは、8〜24個、より好ましくは10〜24個、さらにより好ましくは12〜18個の炭素原子を有する化合物を含む。
【0049】
好ましいコーティング化合物は、カプリル酸(オクタン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、アラキジン酸(エイコサン酸/イコサン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、リグノセリン酸(テトラコサン酸)、ならびに対応するエステルおよび塩である。
【0050】
とりわけ好ましいコーティング化合物は、ドデカン酸、オクタデカン酸、ステアリン酸銅、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、およびパルミチン酸カリウムである。
【0051】
本発明に従って使用されるコーティング化合物は、先行技術から公知の従来の方法によって金属粒子の表面上に堆積される。
【0052】
例えば、コーティング化合物、特にこれまでに記載したステアリン酸の塩もしくはエステルまたはパルミチン酸の塩もしくはエステルを溶媒の中でスラリーにし、このスラリーにしたコーティング化合物をボールミルの中でこの金属粒子とともに粉砕することが可能である。この粉砕後、この時点でコーティング化合物でコーティングされている金属粒子は、乾燥され、次いで除塵される。
【0053】
好ましくは、このコーティング全体の中の有機化合物の割合、とりわけ、好ましくは8〜24個、より好ましくは10〜24個、さらにより好ましくは12〜18個の炭素原子を有する遊離脂肪酸、脂肪酸塩、および脂肪酸エステルを含む群から選択される化合物の割合は、少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%、少なくとも99重量%、または100重量%に等しい。
【0054】
典型的には、コーティング化合物、好ましくは、8〜24個、より好ましくは10〜24個、さらにより好ましくは12〜18個の炭素原子を有する遊離脂肪酸、脂肪酸塩、および脂肪酸エステルを含む群から選択されるコーティング化合物の割合は、コーティングされた金属粒子の重量に基づき、0.01〜2重量%、好ましくは0.3〜1.5重量%、より好ましくは0.4〜1.4重量%、さらにより好ましくは0.5〜1.0重量%に等しい。
【0055】
金属粒子の表面積に対するコーティング化合物の質量の比として定義されるコーティング度は、好ましくは、金属粒子の表面積1平方メートル(m)あたり0.00005〜0.03g、より好ましくは0.0001〜0.02g、さらにより好ましくは0.0005〜0.02gのコーティング化合物に等しい。
【0056】
本発明に係る金属ペーストは、当該コーティングされた金属粒子に加えて、好ましくは少なくとも1つの金属前駆体を含む。
【0057】
本発明の範囲では、金属前駆体は、少なくとも1つの金属を含有する化合物であると理解される。好ましくは、金属前駆体は、200℃未満の温度で金属を放出しつつ分解する化合物を含む。従って、金属前駆体を焼結プロセスで使用することにより、金属がその場で生成する。化合物がこの好ましい実施形態に係る金属前駆体を含むかどうかは、簡便に判定することができる。例えば、試験するべき化合物を含有するペーストは、銀表面を有する基板上に堆積し、200℃に加熱し、この温度で20分間放置することができる。その後、これらの条件下で試験するべき化合物が金属へと分解したかどうかが試験される。この目的のために、例えば試験前に金属含有ペースト成分の含有量を秤量することができ、この含有量から金属の理論質量を算出することができる。試験後、基板上に堆積された物質の質量が、重量測定によって決定される。通常の測定のばらつきは考慮に入れて、基板上に堆積された物質の質量がその金属の理論質量に対応するならば、試験された化合物は、この好ましい実施形態に係る金属前駆体を含む。
【0058】
1つの好ましい実施形態によれば、当該金属前駆体は、吸熱的に分解させることができる金属前駆体を含む。本発明によれば、吸熱的に分解させることができる金属前駆体は、熱分解が好ましくは保護ガス雰囲気下で、吸熱的なプロセスの中で起こる金属前駆体であると理解される。この熱分解において、この金属前駆体から金属が放出されるはずである。
【0059】
別の好ましい実施形態によれば、この金属前駆体は、金属粉末の中にも含有される金属を含む。
【0060】
好ましくは、この金属前駆体は、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、および白金を含む群から選択される少なくとも1つの元素を金属として含む。
【0061】
上記の金属の炭酸塩、乳酸塩、ギ酸塩、クエン酸塩、酸化物、または脂肪酸塩、好ましくは6〜24個の炭素原子を有する脂肪酸塩を金属前駆体として使用することが好ましい場合がある。
【0062】
特別の実施形態では、炭酸銀、乳酸銀、ギ酸銀、クエン酸銀、酸化銀(例えばAgOまたはAgO)、乳酸銅、ステアリン酸銅、酸化銅(例えばCuOまたはCuO)または酸化金(例えばAuOまたはAuO)が金属前駆体として使用される。
【0063】
1つのとりわけ好ましい実施形態によれば、炭酸銀、酸化銀(I)、または酸化銀(II)が、金属前駆体として使用される。
【0064】
存在する場合、当該金属ペーストの中の金属前駆体は、好ましくは、粒子からなる粉末の形態で存在する。
【0065】
この粉末の粒子は、薄片の形態または球形の(ボールの形状の)形態を有することができる。しかしながら、好ましくは、当該金属前駆体の粒子は薄片として与えられる。
【0066】
焼結プロセスの間にその場で金属を放出する金属前駆体の使用は、焼結プロセスの間にその場で形成される金属が、金属ペーストの中に含有される金属粒子の間の隙間を塞ぐという結果をもたらす。このようにして、2つの接合するべき部品間の接触点の多孔性を低下させることができる。
【0067】
本発明に係る金属ペーストは、少なくとも1つの溶媒をさらに含有する。
【0068】
本発明によれば、溶媒は、物理的プロセスによって他の化合物から溶液を生成することができる化合物であると理解される。しかしながら、これらの他の化合物は、好ましくは、金属ペーストの金属を含まない。
【0069】
本発明によれば、金属ペーストのために典型的に使用される溶媒を、溶媒として考慮することができる。
【0070】
さらには、本発明に係る金属ペーストは、少なくとも1つの溶媒を含有する。
【0071】
本発明によれば、溶媒は、物理的プロセスによって他の化合物から溶液を生成することができる化合物であると理解される。しかしながら、これらの他の化合物は、好ましくは、金属ペーストの金属を含まない。
【0072】
本発明によれば、金属ペーストのために典型的に使用される溶媒を、溶媒として考慮することができる。
【0073】
好ましくは、少なくとも1つのヘテロ原子および6〜24個の炭素原子、より好ましくは8〜20個の炭素原子を有する有機化合物が溶媒として使用される。
【0074】
これらの有機化合物は、分枝状もしくは非分枝状であることができる。この有機化合物は環状化合物を含むこともできる。
【0075】
さらには、溶媒として使用される有機化合物は、飽和、単不飽和、または多価不飽和の化合物であることができる。
【0076】
溶媒として使用できる有機化合物の中に含有される少なくとも1つのヘテロ原子は、好ましくは、酸素原子および窒素原子を含む群から選択される。
【0077】
この少なくとも1つのヘテロ原子は、少なくとも1つの官能基の一部分であることができる。官能基として、好ましくはヒドロキシル基、カルボン酸基、エステル基、ケト基、アルデヒド基、アミノ基、アミド基、アゾ基、イミド基、シアノ基、またはニトリル基を考えることができる。
【0078】
1つのとりわけ好ましい実施形態によれば、使用される溶媒はアルコールを含む。
【0079】
1つのとりわけ好ましい実施形態によれば、α−テルピネオール((R)−(+)−α−テルピネオール、(S)−(−)−α−テルピネオールまたはラセミ化合物)、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、δ−テルピネオール、上記のテルピネオールの混合物、N−メチル−2−ピロリドン、エチレングリコール、ジメチルアセトアミド、1−トリデカノール、2−トリデカノール、3−トリデカノール、4−トリデカノール、5−トリデカノール、6−トリデカノール、イソトリデカノール、およびこれらのイソトリデカノールの混合物、二塩基酸エステル(好ましくはグルタル酸、アジピン酸もしくはコハク酸のジメチルエステルまたはこれらの混合物)、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、またはこれらの混合物が溶媒として使用される。
【0080】
使用される溶媒は、当該金属ペーストの中に含有される焼結剤を溶解させることができることが好ましい。
【0081】
焼結温度を200℃未満へ下げることを可能にするために、少なくとも1つの焼結剤が本発明に係る金属ペーストの中に含有される。
【0082】
本発明に係る焼結剤は、当該金属ペーストの中に含有される金属粒子の表面上に存在する金属酸化物が、焼結プロセスの間に還元されるということを確実にする。この理由のため、焼結プロセスの過程で還元剤を放出する化合物を、焼結剤として使用することもできる。この還元剤は、好ましくは一酸化炭素を含む。
【0083】
本発明の範囲において、この少なくとも1つの焼結剤は、(i)1〜4個の炭素原子を有する有機酸の塩、(ii)1〜4個の炭素原子を有する有機酸のエステル、または(iii)カルボニル錯体を含む群から選択することができる。
【0084】
これらの化合物は、これらは焼結プロセスの間に一酸化炭素を放出し、従って当該金属ペーストの中に含有される金属粒子の表面上に含有される金属酸化物を、200℃未満の温度で、対応する金属に還元することを可能にするという点で、焼結剤として使用することができる。
【0085】
本発明によれば、1〜4個の炭素原子を有する有機酸の塩は、焼結剤として使用することができる。
【0086】
本発明の範囲では、有機酸は、少なくとも1つのカルボン酸基を有する有機化合物である。それらは、以下の式によって表すことができる:
R−COOH 式(I)
式中、Rは有機基を表す。
【0087】
これに対応して、本発明によれば有機酸の塩は、構造上1つのプロトンが剥がされて、カチオン性成分として、プロトンとは異なる種類のカチオンを有する、カルボン酸基を有する少なくとも1つの単位を有する少なくとも1つのアニオン性成分を含有する化合物である。従って、有機化合物の塩は、以下の式によって表される:
R−COOX 式(II)
式中、Xは、いずれかのカチオン性成分を表す。
【0088】
本発明によれば、Rは、1〜3個の炭素原子を有する有機基を表す。
【0089】
本発明の範囲では、当該金属ペースト中の塩は解離した形態では存在しないことが好ましい場合がある。これに対応して、1〜4個の炭素原子を有する有機酸の塩が焼結剤として使用される本発明の実施形態では、非プロトン性溶媒が、本発明に係る金属ペーストの中に含有される溶媒として使用されることが好ましい。
【0090】
本発明によれば、1〜4個の炭素原子を有する有機酸の塩が焼結剤として使用される。
【0091】
好ましい実施形態によれば、1〜3個の炭素原子を含有する有機酸の塩が使用される。
【0092】
この1〜4個の炭素原子を有する有機酸は、好ましくは一塩基酸または二塩基酸を含むことができる。この有機酸は、モノプロトン酸またはポリプロトン酸、特にジプロトン酸であることができる。
【0093】
この少なくとも1つのカルボン酸基のほかに、当該有機酸は少なくとも1つのさらなる官能基を有することもできる。この官能基は、例えば、別のカルボン酸基、エステル基、ケト基、アルデヒド基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトリル基、またはハロゲン原子、特にフッ素原子、塩素原子、または臭素原子を含むことができる。
【0094】
この少なくとも1つのカルボン酸単位のC=O基の中に構造上含まれる二重結合のほかに、当該有機酸は、さらなる二重結合を含むことができる。
【0095】
好ましくは、焼結剤として、酢酸、炭酸、ギ酸、乳酸、およびシュウ酸を含む群から選択される酸の塩が使用される。
【0096】
金属カチオンは、好ましくは、本発明に従って使用される塩のカチオン成分として使用することができる。
【0097】
この金属カチオンは、好ましくは、酸素に対して高い親和性を有する金属のカチオンを含む。これらの金属は、焼結プロセスの間に酸素に結合することができ、従って、焼結剤によって放出される一酸化炭素と、金属粒子の表面上に存在する金属酸化物との反応の平衡状態を、生成物側の二酸化炭素および金属へとシフトさせることができると想定される。
【0098】
好ましい金属カチオンは、マグネシウム、アルミニウム、銅(I)、銅(II)、銀(I)、銀(II)、マンガン(III)、鉄(II)、鉄(III)、コバルト(II)、およびスズ(II)である。
【0099】
1つの特に好ましい実施形態によれば、焼結剤として使用される1〜4個の炭素原子を有する有機酸の少なくとも1つの塩は、以下の群から選択される:酢酸銅(II)、酢酸鉄(II)、酢酸スズ(II)、炭酸鉄(II)、炭酸銅(II)、ギ酸マグネシウム、ギ酸アルミニウム、ギ酸鉄(II)、ギ酸スズ(II)、ギ酸銅(II)、ギ酸銀(II)、ギ酸マンガン(III)、乳酸銅(II)、乳酸銀(I)、シュウ酸鉄(II)、シュウ酸鉄(III)、およびシュウ酸コバルト(II)。
【0100】
しかしながら、金属ペーストが、1〜4個の炭素原子を有する有機酸の塩として銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、または白金の炭酸塩、乳酸塩、またはギ酸塩、特に炭酸銀、乳酸銀、ギ酸銀、または乳酸銅を含有するということが排除されてもよいという実施形態も本発明の範囲内にある。
【0101】
本発明によれば、1〜4個の炭素原子を有する有機酸のエステルも、焼結剤として使用される。
【0102】
本発明に従って使用されるエステルのもととなる1〜4個の炭素原子を有する有機酸は、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有する有機酸の塩に関連して上記のとおりの、1〜4個の炭素原子を有する有機酸を含む。
【0103】
結果として、本発明に従って使用されるエステルは、好ましくはモノエステルまたはポリエステル、特にジエステルを含む。
【0104】
本発明の範囲では、エステルは、1〜4個の炭素原子を有する有機酸の少なくとも1つのカルボン酸単位の少なくとも1つの水素が構造上有機基によって置換されている化合物を表す。
【0105】
従って、エステルは、上記の式(II)によって記載することができるがラジカルXは有機基を表す、化合物を表す。
【0106】
ジエステルが1〜4個の炭素原子を有する有機酸のエステルとして使用される場合は、構造上、2つのカルボン酸単位の水素原子またはジプロトン酸のカルボン酸単位の水素原子は、有機基によって置換されている。これらの有機基は同じ種類のものであってもよいし、または異なる種類のものであってもよい。
【0107】
本発明によれば、当該1〜4個の炭素原子を有する有機酸の少なくとも1つのカルボン酸単位の中の少なくとも1つの水素原子を構造上置き換えるこの少なくとも1つの有機基は、好ましくは、1〜10個、より好ましくは1〜7個、さらにより好ましくは1〜4個の炭素原子を有する基を含む。
【0108】
この有機基は非分枝状のであってもよいし、または分枝状であってもよいが、好ましくは非分枝状である。
【0109】
有機基は1以上のヘテロ原子を保有することができる。このヘテロ原子は、特に酸素、窒素、およびハロゲン(フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素など)であることができる。しかしながら、この有機基がヘテロ原子を保有しないことが好ましい場合もある。
【0110】
ヘテロ原子がこの有機基の中に存在する場合、このヘテロ原子は、官能基の一部分であってもよい。このような官能基の例は、カルボン酸基、エステル基、ケト基、アルデヒド基、アミノ基、アミド基、アゾ基、イミド基、シアノ基、およびニトリル基である。
【0111】
この有機基は、脂肪族基または芳香族基であることができる。好ましくは、この有機基は脂肪族基を含む。
【0112】
特に好ましい実施形態によれば、この脂肪族基はアルキル基である。このアルキル基は、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜7個、さらにより好ましくは1〜4個の炭素原子を有する。この実施形態によれば、このアルキル基は非分枝状である。好ましくは、このアルキル基はヘテロ原子を含有しない。特に好ましいアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、およびブチル基である。
【0113】
従って、本発明に従って使用される1〜4個の炭素原子を有する有機酸のエステルは、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、およびブチルエステルを含む群から選択されることが好ましい。
【0114】
この実施形態によれば、本発明に係る1〜4個の炭素原子を有する有機酸のエステルは、式(II)(式中、ラジカルXはアルキル基、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、またはブチル基を表す)によって表すことができる化合物を含む。
【0115】
従って、特に好ましい1〜4個の炭素原子を有する有機酸のエステルは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチル、炭酸メチルエチル、炭酸メチルプロピル、炭酸メチルブチル、炭酸エチルプロピル、炭酸エチルブチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジプロピル、およびシュウ酸ジブチルである。
【0116】
本発明によれば、カルボニル錯体も焼結剤として使用することができる。
【0117】
本発明によれば、用語「カルボニル錯体」は、少なくとも1つのCO分子が少なくとも1つの金属原子に配位結合しているカルボニル基を含有する金属錯体を指す。
【0118】
少なくとも1つのCO分子のほかに、カルボニル錯体は、さらなるリガンドも含有することができる。これらのさらなるリガンドは、元素状リガンドまたは分子リガンドを含むことができる。
【0119】
このリガンドは、単座または多座であることができる。
【0120】
好ましい元素状リガンドは水素およびハロゲンである。好ましいハロゲンはフッ素、塩素、臭素、およびヨウ素である。
【0121】
好ましい分子リガンドは窒素酸化物、シアン化物、および有機リガンドである。
【0122】
この有機リガンドは、イオン性または不飽和リガンドを含むことが好ましい。
【0123】
少なくとも1つの炭素原子を有する有機リガンドを、有機リガンドとして考慮することができる。好ましくは、少なくとも1つの炭素原子を有する有機リガンドは、2〜20個、より好ましくは2〜16個、さらにより好ましくは2〜12個の炭素原子を有する有機リガンドを含む。
【0124】
当該有機リガンドは、分枝状であってもよいし、または非分枝状であってもよい。
【0125】
この有機リガンドは、さらに飽和、または一価不飽和または多価不飽和であってもよい。
【0126】
さらに、この有機リガンドは、環構造を有することができる。この環構造は、少なくとも1つのヘテロ原子を含有することもできる。この少なくとも1つのヘテロ原子は、好ましくは窒素または酸素でありうる。
【0127】
この有機リガンドは芳香族リガンドを含んでもよい。
【0128】
アルキルリガンド、好ましくはメチルリガンドなどの非分枝状のアルキルリガンド、またはシクロペンタジエニルは、イオン性リガンドとして好ましい。
【0129】
不飽和有機リガンドとして、アルケン、共役ジエンまたは非共役ジエン、およびアリルが好ましい場合がある。本発明によれば、π−アリル遷移金属錯体および芳香族遷移金属錯体も、有機基として企図される。
【0130】
本発明に従って使用されるカルボニル錯体は、1以上の金属原子を含有することができる。このカルボニル錯体が複数の金属原子を含有する場合、これらの金属原子は、同じ種類のものであってもよいし、または異なる種類のものであってもよい。
【0131】
酸素に対する高い親和性を有する金属は、好ましくは、カルボニル錯体の金属として使用される。
【0132】
好ましくは、このカルボニル錯体は、遷移金属の元素、つまり元素の周期表の第3〜第11族の元素からの少なくとも1つの元素を有する。
【0133】
本発明によれば、本発明に従って使用される金属カルボニルの少なくとも1つの金属が、バナジウム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、およびニッケルを含む群から選択される金属であることがさらに好ましい可能性がある。
【0134】
1つの特に好ましい実施形態によれば、このカルボニル錯体は金属カルボニルを含む。
【0135】
本発明の範囲において、用語「金属カルボニル」は、一酸化炭素分子がもっぱら金属原子へと配位結合している、単核または多核の配位化合物を表す化合物を記載するものとする。
【0136】
金属カルボニルは、本発明によれば、1つの金属原子または複数の金属原子を含有することができる。
【0137】
この金属カルボニルの中に含有される金属原子は、同じ種類のものであってもよいし、または異なる種類のものであってもよい。
【0138】
好ましくは、この金属カルボニルの金属原子は、遷移金属の元素、つまり元素の周期表の第3〜第11族の元素を含む。
【0139】
好ましい実施形態によれば、本発明に従って使用される金属カルボニルの少なくとも1つの金属は、バナジウム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、およびニッケルを含む群から選択される金属を含む。
【0140】
この金属カルボニルは電荷中性であってもよいし、または塩として存在してもよい。この塩は、一価の塩または多価の塩を含むことができる。
【0141】
1つの特に好ましい実施形態によれば、本発明に係る焼結剤として使用される金属錯体は、以下を含む群から選択される金属錯体である:バナジウムヘキサカルボニル(V(CO))、モリブデンヘキサカルボニル(Mo(CO))、タングステンヘキサカルボニル(W(CO))、ジマンガンデカカルボニル(Mn(CO)10)、メチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニル((CH)Mn(CO))、鉄ペンタカルボニル(Fe(CO))、ノナカルボニル二鉄(Fe(CO))、ドデカルボニル三鉄(Fe(CO)12)、テトラカルボニル鉄(II)酸(H[Fe(CO)])、鉄ジカルボニルジヨージド(Fe(CO))、カルボニルペンタシアノ鉄酸三カリウム(K[Fe(CN)CO]、1,2−ビス−(ヘキサメチルベンゼン)−テトラカルボニル二鉄(0)(C1218Fe(CO)FeC1218)、カルビドペンタデカカルボニル五鉄(FeC(CO)15、ルテニウムペンタカルボニル(Ru(CO)、ジルテニウムノナカルボニル(Ru(CO))、トリルテニウムドデカカルボニル(Ru(CO)12、ヘキサルテニウムヘキサデカカルボニル(Ru(CO)16)、オスミウムペンタカルボニル(Os(CO))、トリオスミウムドデカカルボニル(Os(CO)12)、ペンタオスミウムヘキサデカカルボニル(Os(CO)16)、ヘキサオスミウムオクタデカカルボニル(Os(CO)18)、ジコバルトオクタカルボニル(Os(CO))、テトラコバルトドデカカルボニル(Os(CO)12)、ヘキサコバルトヘキサデカカルボニル(Co(CO)16)、ニッケルテトラカルボニル(Ni(CO))、カルボニル鉄酸二ナトリウム(Na[Fe(CO)])。
【0142】
本発明に係る焼結剤は、好ましくは、焼結プロセスにおいて使用される金属ペーストの一成分として使用される。好ましくは、この焼結プロセスにおいて、サンドイッチ構成物で当該金属ペーストを介して互いに接触している部品が、互いに接合される。
【0143】
本発明に従って使用される金属ペーストは、金属、金属前駆体、溶媒、および焼結剤に加えて他の物質を有することもできる。
【0144】
これらの他の物質は、好ましくは、典型的に金属ペーストの中で使用される物質を含むことができる。
【0145】
例えば、この他の物質として、分散剤、界面活性剤、消泡剤、結合剤、ポリマー、または粘度調整剤が、当該金属ペーストの中に含有されることができる。
【0146】
本発明に係る金属ペーストは、75〜90重量%、好ましくは77〜89重量%、より好ましくは78〜87重量%、さらにより好ましくは78〜86重量%の、本願明細書に記載されかつ金属の粒子の形態で存在する金属のうちの少なくとも1つを含有する。これらの重量仕様は、当該粒子上に含有されるコーティング化合物の重量を含めたものである。
【0147】
本発明に係る金属ペーストは、0〜12重量%、好ましくは0.1〜12重量%、より好ましくは1〜10重量%、さらにより好ましくは2〜8重量%の、少なくとも1つの金属前駆体を含有する。
【0148】
本発明に係る金属ペーストは、6〜20重量%、好ましくは7〜18重量%、より好ましくは8〜17重量%、さらにより好ましくは10〜15重量%の、少なくとも1つの溶媒を含有する。
【0149】
本発明に係る金属ペーストは、0.1〜15重量%、好ましくは0.1〜12重量%、より好ましくは1〜10重量%、さらにより好ましくは1〜8重量%の、本願明細書に記載される焼結剤のうちの少なくとも1つを含有する。
【0150】
本発明に係る金属ペーストは、0〜15重量%、好ましくは0〜12重量%、より好ましくは0.1〜10重量%、さらにより好ましくは1〜10重量%の、他の物質を含有する。
【0151】
この結果、本発明に係る金属ペーストは、75〜90重量%の、本願明細書に記載される金属のうちの少なくとも1つ、0〜12重量%の、少なくとも1つの金属前駆体、6〜20重量%の、少なくとも1つの溶媒、および0.1〜15重量%の、本願明細書に記載される焼結剤のうちの少なくとも1つを含有する。
【0152】
1つの好ましい実施形態によれば、本発明に係る金属ペーストは、77〜89重量%の、本願明細書に記載される金属のうちの少なくとも1つ、0.1〜12重量%の、少なくとも1つの金属前駆体、7〜18重量%の、少なくとも1つの溶媒、および0.1〜12重量%の、本願明細書に記載される焼結剤のうちの少なくとも1つを含有する。
【0153】
より好ましい実施形態によれば、本発明に係る金属ペーストは、78〜87重量%の、本願明細書に記載される金属のうちの少なくとも1つ、0.1〜10重量%の、少なくとも1つの金属前駆体、8〜17重量%の、少なくとも1つの溶媒、および1〜10重量%の、本願明細書に記載される焼結剤のうちの少なくとも1つを含有する。
【0154】
さらにより好ましい実施形態によれば、本発明に係る金属ペーストは、78〜86重量%の、本願明細書に記載される金属のうちの少なくとも1つ、2〜8重量%の、少なくとも1つの金属前駆体、10〜15重量%の、少なくとも1つの溶媒、および1〜8重量%の、本願明細書に記載される焼結剤のうちの少なくとも1つを含有する。
【0155】
とりわけ好ましい実施形態によれば、当該金属粒子のコーティングの中に含有される有機化合物(コーティング化合物)に対する焼結剤のモル比は、1:1〜100:1の範囲、より好ましくは3:1〜80:1の範囲、さらにより好ましくは5:1〜80:1の範囲、とりわけ10:1〜80:1の範囲にある。本発明によれば、「コーティング化合物に対する焼結剤のモル比」という表現は、(i)当該金属ペーストの中に含有される焼結剤の物質の量の合計、および(ii)金属粒子のコーティングの中に含有されるコーティング化合物の物質の量の合計、の割合として表される。金属ペーストが、例えば、焼結剤として0.025molのギ酸アルミニウムおよび0.15molのギ酸銅ならびに唯一のコーティング化合物として0.0008molのステアリン酸カリウムを含有する場合、コーティング化合物に対する焼結剤のモル比は50:1に等しい。
【0156】
本発明によれば好ましい範囲内のコーティング化合物に対する焼結剤の比は、他の有利な効果をもたらす。一方で、焼結プロセスの間に、コーティング化合物の燃焼の結果として、十分な一酸化炭素が金属酸化物の還元に利用できるということが確実になる。他方、その場合でも、焼結剤の量は、まだ、焼結プロセスに悪影響を及ぼすほどには高くはない。上で説明したように、当該金属粒子のコーティングの中に含有される有機化合物が、好ましくは8〜24個、より好ましくは10〜24個、さらにより好ましくは12〜18個の炭素原子を有する遊離脂肪酸、脂肪酸塩、または脂肪酸エステルを含む場合、本発明によれば好ましい可能性がある。
【0157】
好ましくは8〜24個、より好ましくは10〜24個、さらにより好ましくは12〜18個の炭素原子を有する遊離脂肪酸、脂肪酸塩、または脂肪酸エステルが、コーティング化合物としてだけでなく当該金属ペーストの中の他の物質としても当該金属ペーストの中に含有される場合、コーティング化合物に対する焼結剤のモル比の定義のために、用語「コーティング化合物」は、当該金属粒子の表面上に含有される脂肪酸、脂肪酸塩、または脂肪酸エステルに加えて、当該金属ペーストの中にさらなる物質として含有される脂肪酸、脂肪酸塩、または脂肪酸エステルも含むことが好ましい可能性がある。
【0158】
本発明によれば、化合物が焼結剤および金属前駆体の両方を表す限りにおいて、その場合、コーティング化合物に対する焼結剤の重量%およびモル比を決定するために、これらの化合物は、焼結剤と考えられることが好ましい。
【0159】
好ましくは、しかしながら、当該焼結剤および金属前駆体は、互いに異なる化合物を含む。
【0160】
本願明細書に記載される金属ペーストは、焼結プロセスにおいて、本発明に従って使用される。
【0161】
焼結は、好ましくは、液相を通過しない状態での、加熱による2以上の部品の接合であると理解される。
【0162】
本発明によれば、少なくとも2つの部品の接合は、第2の部品の上に第1の部品を固定することであると理解される。これに関して、「〜の上」は、第1の部品の表面が第2の部品の表面に接合されるということを意味するだけであり、この状態は、その2つの部品の相対的位置、またはその少なくとも2つの部品を含有する配置に依存しない。
【0163】
本発明の範囲では、用語「部品」は、好ましくは、個々のパーツを包含するものとする。これらの個々のパーツは、好ましくは、さらに分解することはできない。
【0164】
特別の実施形態によれば、ハイパワー・エレクトロニクスにおいて使用されるパーツは、部品として表される。
【0165】
従って、この部品は、例えば、ダイオード、LED(発光ダイオード)、DCB(ダイレクト・カッパー・ボンディッド(direct copper bonded))基板、リードフレーム、ダイ、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、IC(集積回路)、センサ、ヒートシンク(好ましくはアルミニウムヒートシンクまたは銅ヒートシンク)、または他の受動素子(例えばレジスタ(抵抗)、コンデンサ、または誘導子)を含むことができる。好ましくは、これらの部品は、非金属部品も含むことができる。
【0166】
接合するべき部品は、同じ部品であってもよいし異なる部品であっていてもよい。
【0167】
好ましい実施形態では、本発明は、LEDをリードフレームに、LEDをセラミック基板に、ダイ、ダイオード、IGBT、もしくはICをリードフレーム、セラミック基板もしくはDCB基板に、センサをリードフレームもしくはセラミック基板に、DCBもしくはセラミック基板を銅もしくはアルミニウムのヒートシンクに、リードフレームをヒートシンクに、またはタンタルコンデンサ、好ましくは筐体に入れられていない状態のタンタルコンデンサをリードフレームに接合することに関する。
【0168】
同様に好ましいことに、2つよりも多い部品を互いに接合することができる。例えば、(i)LEDまたはチップを(ii)リードフレームおよび(iii)ヒートシンクに接合することができ、この際、リードフレームは、(i)LEDまたはチップと(iii)ヒートシンクとの間に置かれることが好ましい。同様に、ダイオードを、2つのヒートシンクに接合することができ、この際、ダイオードは2つのヒートシンクの間に置かれることが好ましい。
【0169】
好ましい実施形態によれば、この部品は、少なくとも1つのメタライゼーション層を含むことができる。このメタライゼーション層は、部品の一部であることが好ましい。このメタライゼーション層は、部品の少なくとも1つの表面上に置かれることが好ましい。
【0170】
このメタライゼーション層は、純粋な金属を有することができる。例えば、このメタライゼーション層が少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%、またはさらには100重量%の、純粋な金属を有する場合が、好ましい可能性がある。この純粋な金属は、銅、銀、金、パラジウム、および白金を含む群から選択されることが好ましい。
【0171】
他方で、このメタライゼーション層は、合金を有することもできる。このメタライゼーション層の合金は、銀、金、ニッケル、パラジウム、および白金を含む群から選択される少なくとも1つの金属を含有することが好ましい。銀、金、ニッケル、パラジウム、および白金を含む群から選択される少なくとも2つの金属が、当該メタライゼーション層の合金の中に含有されることも好ましい可能性がある。
【0172】
この合金に対する、銀、金、ニッケル、パラジウム、および白金を含む群から選択される元素の割合は、好ましくは、少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、さらにより好ましくは少なくとも99重量%、従って例えば100重量%に等しい。
【0173】
好ましい実施形態によれば、当該メタライゼーション層は、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、さらにより好ましくは100重量%の、この合金を含有する。
【0174】
このメタライゼーション層は多層構造を有することもできる。例えば、組み立てられるべき部品の少なくとも1つの表面がこれまでに記載した純粋な金属および/または合金を有するいくつかの層から作製されているメタライゼーション層を含む場合が、好ましい可能性がある。
【0175】
好ましい実施形態によれば、部品の、特にDCB基板の少なくとも1つのメタライゼーション層は、銅から作製されている層と、この層の上に堆積されているニッケルから作製されている層とを含む。任意に、金層も、このニッケル層の上に堆積することができる。この場合、このニッケル層の厚さは、好ましくは1〜2μmに等しく、金層の厚さは、好ましくは0.05〜0.3μmに等しい。他方で、部品のメタライゼーション層が銀層または金層およびこの上にパラジウム層または白金層を含む場合が、好ましい可能性がある。
【0176】
別の好ましい実施形態によれば、これら個々の層は、記載した純粋な金属または合金に加えてガラスも含有する。これらの層が、(i)ガラスおよび(ii)純粋な金属または合金から作製されている混合物である場合が、好ましい可能性もある。
【0177】
本発明によれば、少なくとも2つの部品が、焼結を通して、互いに接合される。
【0178】
この目的のために、最初にこれら2以上の部品は互いに接触させられる。この接触は、本発明では、本発明に係る金属ペーストによって実現される。この目的のために、これら少なくとも2つの部品のうちの2つの部品ごとにその間に金属ペーストが置かれる構成物が準備される。
【0179】
それゆえ、2つの部品、部品1および部品2、が互いに接合されるべき場合、本発明に係る金属ペーストは、焼結前に部品1と部品2との間に置かれる。他方で、2つよりも多い部品が互いに接合されることも想定できる。例えば、3つの部品、部品1、部品2、および部品3を、部品2が部品1と部品3との間にあるように、互いに接合することができる。この場合、本発明に係る金属ペーストは、部品1と部品2との間におよび部品2と部品3との間にも置かれる。
【0180】
本発明によれば、これら個々の部品がサンドイッチ構成物で存在して、互いに接合されるということが提供される。
【0181】
本発明によれば、サンドイッチ構成物は、2つの部品が上下に置かれ、これらの部品が実質的に互いに平行である構成物であると理解される。
【0182】
少なくとも2つの部品および金属ペーストから作製されており、かつ金属ペーストがこの構成物の2つの部品の間に置かれているこの構成物は、先行技術から公知の方法に従って製造することができる。
【0183】
好ましくは、部品1の少なくとも1つの表面は、本発明に係る金属ペーストを具える。次いで、別の部品2が、その表面のうちの1つを部品1の表面上にすでに堆積されている金属ペーストの上にして、置かれる。
【0184】
部品の表面上での金属ペーストの堆積は、従来の方法によって実施することができる。好ましくは、この金属ペーストの堆積は、印刷方法によって、例えばスクリーン印刷またはステンシル印刷によって実施される。他方、この金属ペーストの堆積は、分注によって、噴霧技術によって、ピン転写によって、または浸漬によって実施することもできる。
【0185】
当該金属ペーストの堆積の後、その金属ペーストを具えるこの部品の表面は、その金属ペーストを介して接合するべき部品の表面に接触させられることが好ましい。このようにして、金属ペーストの層は、接合するべき部品の間に置かれる。
【0186】
これらの接合するべき部品の間の乾燥前の層の厚さは、好ましくは、20〜200μmの範囲にある。乾燥前の層の厚さは、本発明によれば、焼結プロセスの前の、接合するべき部品の対向する表面の間の距離であると理解される。好ましい乾燥前の層の厚さは、金属ペーストの堆積のために選択される方法に依存する。金属ペーストが、例えば、スクリーン印刷方法によって堆積される場合、20〜50μmの乾燥前の層の厚さが好ましい可能性がある。金属ペーストがステンシル印刷によって堆積される場合、好ましい乾燥前の層の厚さは、50〜200μmの範囲にあることができる。
【0187】
好ましい実施形態によれば、乾燥工程は、焼結プロセスの前に実施される。
【0188】
乾燥は、好ましくは、当該金属ペースト中の溶媒の割合の減少であると理解される。
【0189】
1つの好ましい実施形態によれば、乾燥後の当該金属ペースト中の溶媒の割合は、乾燥された金属ペーストの重量に基づいて1〜5重量%の範囲にある。
【0190】
一方で、乾燥は、構成物の製造後に、つまり接合するべき部品の接触後に実施することができる。他方で、この乾燥は、部品の少なくとも1つの表面上での金属ペーストの堆積直後で、かつ接合するべき部品と接触する前に実施することもできる。
【0191】
乾燥温度は、好ましくは50〜100℃の範囲にある。
【0192】
乾燥時間は、金属ペーストのそれぞれの組成および焼結するべき構成物のサイズに依存するということは理解される。典型的な乾燥時間は5〜45分間の範囲にある。
【0193】
少なくとも2つの部品およびこれらの部品の間に置かれる金属ペーストから構成されている構成物は、最後に、本発明によれば、焼結プロセスにかけられる。
【0194】
この焼結プロセスは、低温焼結プロセスを伴う。
【0195】
本発明によれば、低温焼結プロセスは、好ましくは200℃未満の温度で行われる焼結プロセスであると理解される。
【0196】
本発明での加工圧力は、好ましくは、30MPa未満、より好ましくは5MPa未満、さらにより好ましくは1MPa未満である。本発明に係る金属ペーストの使用によれば、加工圧力をまったく加えることなく、従って0MPaの加工圧力で、焼結することさえ可能である。
【0197】
焼結時間は加工圧力に依存し、好ましくは2〜45分間の範囲にある。
【0198】
本発明によれば、当該焼結プロセスは、さらには限定されない雰囲気の中で行うことができる。しかしながら、この焼結は、酸素を含有する雰囲気の中で実施されることが好ましい。
【0199】
この焼結は、焼結に適しておりかつ好ましくはこれまでに記載された加工パラメータを設定できる従来の装置の中で行われる。
【0200】
本発明は下記に列挙する実施例を参照して以下で説明されるが、それらに限定されると理解されるべきではない。
【実施例】
【0201】
1.金属ペーストの製造:
最初に、個々の成分を混合することにより、本発明に係る金属ペースト1〜7および比較ペースト1および2を製造した。
【0202】
1.1 本発明に係る金属ペースト1:
81.5重量%の、1〜5μmの平均粒径を有するコーティングされた銀粒子(コーティング量:<2重量%の、ステアリン酸ナトリウム)、5重量%の、炭酸銀、6重量%の、テルピネオール、4重量%の、1−ドデカノール、および3.5重量%の、ギ酸アルミニウムを含有する金属ペーストを製造した。
【0203】
1.2 本発明に係る金属ペースト2:
79.5重量%の、0.5〜3μmの平均粒径を有するコーティングされた銀粒子(コーティング量:<2重量%の、ステアリン酸ナトリウム)、3重量%の、酸化銀、10.5重量%の、テルピネオール、および7重量%の、ギ酸アルミニウムを含有する金属ペーストを製造した。
【0204】
1.3 本発明に係る金属ペースト3:
80.5重量%の、2〜15μmの平均粒径を有するコーティングされた銀粒子(コーティング量:<2重量%の、ステアリン酸ナトリウム)、3.5重量%の、炭酸銀、5重量%の、ギ酸銅(II)、6重量%の、テルピネオール、および5重量%の、1−ヘキサノールを含有する金属ペーストを製造した。
【0205】
1.4 本発明に係る金属ペースト4:
81重量%の、0.5〜5μmの平均粒径を有するコーティングされた銀粒子(コーティング量:<2重量%の、ステアリン酸ナトリウム)、4.3重量%の、酸化銀、3.5重量%の、ギ酸マンガン(III)、6重量%の、1−ヘキサノール、および5.2重量%の、1−ドデカノールを含有する金属ペーストを製造した。
【0206】
1.5 本発明に係る金属ペースト5:
76.4重量%の、0.5〜5μmの平均粒径を有するコーティングされた銀粒子(コーティング量:<2重量%の、ステアリン酸ナトリウム)、4.3重量%の、酸化銀、2重量%の、炭酸銀、6重量%の、ギ酸アルミニウム、6.3重量%の、トリデカノール、および5重量%の、1−イソトリデカノールを含有する金属ペーストを製造した。
【0207】
1.6 本発明に係る金属ペースト6:
76.4重量%の、0.5〜5μmの平均粒径を有するコーティングされた銀粒子(コーティング量:<2重量%の、ステアリン酸ナトリウム)、4.3重量%の、酸化銀、2重量%の、炭酸銀、4重量%の、ギ酸アルミニウム、2重量%の、ギ酸銅(II)、6.3重量%の、トリデカノール、および5重量%の、1−イソトリデカノールを含有する金属ペーストを製造した。
【0208】
1.7 本発明に係る金属ペースト7:
79.7重量%の、0.5〜5μmの平均粒径を有するコーティングされた銀粒子(コーティング量:<2重量%の、ステアリン酸ナトリウム)、2重量%の、炭酸銀、4重量%の、ギ酸アルミニウム、2重量%の、ギ酸銅(II)、6.3重量%の、トリデカノール、および6重量%の、テルピネオールを含有する金属ペーストを製造した。
【0209】
1.8 比較ペースト1:
79.5重量%の、0.5〜3μmの平均粒径を有するコーティングされた銀粒子(コーティング量:<2重量%の、ステアリン酸ナトリウム)、3重量%の、酸化銀、10.5重量%の、テルピネオール、および7重量%の、ギ酸を含有する金属ペーストを製造した。従って、比較ペースト1は、ギ酸のアルミニウム塩、つまりギ酸アルミニウムがギ酸によって置き換えられているという相違を有するが、本発明に係る金属ペースト2に対応する。
【0210】
1.9 比較ペースト2:
83重量%の、0.5〜3μmの平均粒径を有するコーティングされた銀粒子(コーティング量:<2重量%の、ステアリン酸ナトリウム)、6.5重量%の、酸化銀、10.5重量%の、テルピネオール、および7重量%の、ギ酸を含有する金属ペーストを製造した。従って、比較ペースト2は、比較ペースト2がギ酸アルミニウムを含有せず、代わりに銀粒子および酸化銀の割合が増加されているという相違を有するが、本発明に係る金属ペースト2に対応する。
【0211】
2.実施形態:
製造した金属ペーストを、互いに接合するべき2つの部品の焼結のために使用した。
【0212】
2.1 実施形態1:
この実施例では、DCB基板(その各々が、銀から作製されているメタライゼーション層を有する)、およびIGBT(その各々が、同様に、銀から作製されているメタライゼーション層を有する)を、焼結によって互いに接合する。
【0213】
この目的のために、本発明に係る金属ペースト1〜7または比較ペースト1および2を、スクリーン印刷方法によって個々のDCB基板のメタライゼーション層の上に堆積した。次いで、個々の、メタライゼーション層を有するIGBTを、このペースト上に置いた。
【0214】
本発明に係る金属ペースト1および4〜6を使用した場合には、DCB基板、金属ペースト、およびIGBTから構成されるこの構造体の乾燥を、80℃で20分間実施した。他の場合では、乾燥は必要ではなかった。いずれの場合も、乾燥前の層の厚さは100μmに等しかった。
【0215】
このようにして製造した構造体を、5MPaの加工圧力および異なる加工温度で、20秒間焼結した。
【0216】
2.2 実施形態2:
この実施形態は、得られた構造体を無圧力環境の中で15分間焼結したという相違を有するが、実施形態1に対応する。
【0217】
2.3 実施形態3:
この実施例では、リードフレーム(その各々が、ニッケル層および金層からなるメタライゼーション層を有し、金層は外側に置かれていた)、およびダイオード(その各々が、銀から作製されているメタライゼーション層を含有していた)を、焼結によって互いに接合した。
【0218】
この目的のために、本発明に係る金属ペースト1〜7または比較ペースト1および2を、ステンシル印刷方法によって個々のリードフレームのメタライゼーション層の上に堆積した。次いで、個々の、メタライゼーション層を有するダイオードを、ペースト上に置いた。
【0219】
本発明に係る金属ペースト1および4〜6を使用した場合には、DCB基板、金属ペースト、およびIGBTから構成される構造体の乾燥を、80℃で20分間実施した。他の場合では、乾燥は必要ではなかった。いずれの場合も、乾燥前の層の厚さは100μmに等しかった。
【0220】
このようにして製造した構造体を、5MPaの加工圧力および異なる加工温度で、20秒間焼結した。
【0221】
2.4 実施形態4:
この実施形態は、得られた構造体を無圧力環境の中で15分間焼結したという相違を有するが、実施形態3に対応する。
【0222】
3 結果:
3.1 実施形態1および3:
本発明に係る金属ペースト1〜7を使用した実施形態では、いずれの場合も焼結温度はおよそ195℃であった。対照的に、比較ペースト1および2を使用した実施形態の焼結温度は、いずれの場合もおよそ230℃であった。
【0223】
3.2 実施形態2および4:
本発明に係る金属ペースト1〜7を使用した実施形態では、いずれの場合も焼結温度はおよそ185℃であった。対照的に、比較ペースト1および2を使用した実施形態の焼結温度は、いずれの場合もおよそ230℃であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)75〜90重量%の、少なくとも1つの有機化合物を含有するコーティングを有する粒子の形態で存在する、少なくとも1つの金属と、
(B)0〜12重量%の、少なくとも1つの金属前駆体と、
(C)6〜20重量%の、少なくとも1つの溶媒と、
(D)0.1〜15重量%の、
(i)1〜4個の炭素原子を有する有機酸の塩、
(ii)1〜4個の炭素原子を有する有機酸のエステル、および
(iii)カルボニル錯体
を含む群から選択される、少なくとも1つの焼結剤と、
を含有する金属ペースト。
【請求項2】
前記塩は、酢酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、乳酸塩、およびシュウ酸塩を含む群から選択される、請求項1に記載の金属ペースト。
【請求項3】
前記塩は、酢酸銅(II)、酢酸鉄(II)、および酢酸スズ(II)を含む群から選択される、請求項2に記載の金属ペースト。
【請求項4】
前記塩は、炭酸鉄(II)および炭酸銅(II)を含む群から選択される、請求項2に記載の金属ペースト。
【請求項5】
前記塩は、ギ酸マグネシウム、ギ酸アルミニウム、ギ酸鉄(II)、ギ酸スズ(II)、ギ酸銅(II)、ギ酸銀(II)、およびギ酸マンガン(III)を含む群から選択される、請求項2に記載の金属ペースト。
【請求項6】
前記塩は、乳酸銅(II)および乳酸銀(I)を含む群から選択される、請求項2に記載の金属ペースト。
【請求項7】
前記塩は、シュウ酸鉄(II)、シュウ酸鉄(III)、およびシュウ酸コバルト(II)を含む群から選択される、請求項2に記載の金属ペースト。
【請求項8】
前記エステルは、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、およびギ酸ブチルを含む群から選択される、請求項1に記載の金属ペースト。
【請求項9】
前記カルボニル錯体は、金属カルボニルを含む群から選択される、請求項1に記載の金属ペースト。
【請求項10】
前記金属カルボニルは鉄カルボニルである、請求項9に記載の金属ペースト。
【請求項11】
前記少なくとも1つの有機化合物は、遊離脂肪酸、脂肪酸塩、および脂肪酸エステルを含む群から選択され、これらの遊離脂肪酸、脂肪酸塩、および脂肪酸エステルの各々は、8〜24個の炭素原子を有する、請求項1に記載の金属ペースト。
【請求項12】
前記コーティングの中に含有される前記有機化合物に対する焼結剤のモル比は、1:1〜150:1の範囲にある、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の金属ペースト。
【請求項13】
少なくとも2つの部品を接合するための方法であって、
(a)少なくとも
(a1)部品1、
(a2)部品2、および
(a3)前記部品1と部品2との間に置かれる金属ペースト
を有するサンドイッチ構成物を準備する工程と、
(b)前記サンドイッチ構成物を焼結する工程と
を含み、前記金属ペーストは、
(A)75〜90重量%の、少なくとも1つの有機化合物を含有するコーティングを有する粒子の形態で存在する、少なくとも1つの金属と、
(B)0〜12重量%の、少なくとも1つの金属前駆体と、
(C)6〜20重量%の、少なくとも1つの溶媒と、
(D)0.1〜15重量%の、
(i)1〜4個の炭素原子を有する有機酸の塩、
(ii)1〜4個の炭素原子を有する有機酸のエステル、および
(iii)カルボニル錯体
を含む群から選択される、少なくとも1つの焼結剤と
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項14】
前記焼結は200℃未満の温度で行われる、請求項13に記載の方法。

【公表番号】特表2013−504149(P2013−504149A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527236(P2012−527236)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005400
【国際公開番号】WO2011/026624
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(511213476)ヘレウス マテリアルズ テクノロジー ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー (7)
【Fターム(参考)】