CO2選択吸収部材を備えた金属−空気電池システム及びその運転方法
【課題】O2は透過してCO2の透過は阻止し、CO2を十分に吸着するCO2選択吸収部材と、その再生機構とを備え、安定的にCO2を除去した空気を金属−空気電池の放電に用いることができる金属−空気電池システム及び運転方法を提供する。
【解決手段】筐体(1)、及び上記筐体内に収容され、空気極(4)と負極と電解質とを有する充放電部を備えた金属−空気電池(2)と、O2に対してCO2を選択的に吸収するCO2選択吸収部材(5)を有するCO2吸収部(6)と、上記CO2吸収部(6)に外気を供給する外気供給部(7)と、上記CO2選択吸収部材(5)によってCO2を吸収除去した精製空気を上記空気極(4)に供給する精製空気供給部(8)と、上記CO2選択吸収部材(5)を再生する再生機構(10)とを有する金属−空気電池システムを提供する。
【解決手段】筐体(1)、及び上記筐体内に収容され、空気極(4)と負極と電解質とを有する充放電部を備えた金属−空気電池(2)と、O2に対してCO2を選択的に吸収するCO2選択吸収部材(5)を有するCO2吸収部(6)と、上記CO2吸収部(6)に外気を供給する外気供給部(7)と、上記CO2選択吸収部材(5)によってCO2を吸収除去した精製空気を上記空気極(4)に供給する精製空気供給部(8)と、上記CO2選択吸収部材(5)を再生する再生機構(10)とを有する金属−空気電池システムを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2選択吸収部材を備えた金属−空気電池システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属−空気電池は、Liイオン電池に変わる次世代の大容量電池として注目されている。しかしながら、放電反応時に、空気中のCO2により難溶性の化合物が生成して空気極が目詰まりするという問題があった。特許文献1〜3には、空気中のCO2を除去するためにフッ素樹脂やポリジメチルシロキサン等の高分子膜を用いた酸素選択透過性の空気極が記載されているが、高分子膜を用いた酸素選択透過性空気極では、CO2濃度を十分に低減することは困難であった。
【0003】
また、酸素濃縮器を有する空気電池が報告されている(特許文献4)。この空気電池では、ゼオライトは酸素濃縮に用いており、CO2吸収には用いていない。さらに、CO2吸収部材についての記載はあるが、再生機構を備えていないため、CO2が飽和して吸着部材が劣化し、一定量しかCO2を吸収できないという問題があった。
【0004】
また、特許文献5には、プロセスガスのCO2吸収部材としてゼオライトが報告されている。しかしながら、ゼオライトのSi/Al比が小さいために親水的であり、空気中で使用した際には優先的に水蒸気を吸着してしまい、CO2の吸着性は不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−062687号公報
【特許文献2】特開平07−105991号公報
【特許文献3】特開平07−014565号公報
【特許文献4】特表2002−516474号公報
【特許文献5】特開平11−253736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、O2は透過してCO2の透過は抑制し、CO2を十分に吸着するCO2選択吸収部材と、その再生機構とを備え、CO2を除去した空気を安定的に金属−空気電池の放電に用いることができる金属−空気電池システム及び運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の金属−空気電池システムは、筐体、及び上記筐体内に収容され、空気極と負極と電解質とを有する充放電部を備えた金属−空気電池と、O2に対してCO2を選択的に吸収するCO2選択吸収部材を有するCO2吸収部と、上記CO2吸収部に外気を供給する外気供給部と、上記CO2選択吸収部材によってCO2を吸収除去した精製空気を上記空気極に供給する精製空気供給部と、上記CO2選択吸収部材を再生する再生機構とを有することを特徴とする。
好ましくは、放電中でなく且つ上記CO2選択吸収部材の再生中でない場合に、上記CO2選択吸収部材と外気との接触を絶つ外気遮断機構を、上記外気供給部に有していてもよい。
また、好ましくは、上記CO2選択吸収部材の再生を行うときに、上記空気極と上記精製空気との接触を絶つ精製空気遮断機構を、上記精製空気供給部に有していてもよい。
上記CO2選択吸収部材はメソポーラス材料または/及びゼオライトを含んでいることが好ましい。
【0008】
また、本発明の金属−空気電池システムの運転方法は、上記金属−空気電池システムの運転方法であって、上記CO2選択吸収部材によってCO2を吸収した空気を上記空気極に供給して放電する放電ステップと、上記CO2選択吸収部材の再生処理を行う再生ステップとを含むことを特徴とする。
好ましくは、本発明の金属−空気電池システムの運転方法では、さらに充電ステップを含み、上記再生ステップを上記充電ステップ時に行ってもよい。
また、好ましくは、放電中でなく、かつ上記CO2選択吸収部材の再生処理中でない場合に、上記CO2選択吸収部材と外気との接触を絶つ休止ステップを含んでいてもよい。
さらに、上記再生ステップにおいて上記CO2選択吸収部材の再生処理を行うときに、上記空気極と上記精製空気との接触を絶つことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、CO2を除去した空気を金属−空気電池の放電に安定的に用いることができる金属−空気電池システム及びその運転方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の金属−空気電池システムの要部構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の金属−空気電池システムの要部構成の他の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の金属−空気電池システムの要部構成の他の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の金属−空気電池システムの要部構成の他の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の金属−空気電池システムの要部構成の他の一例を示す概略図である。
【図6】本発明の金属−空気電池システムの要部構成の他の一例を示す概略図である。
【図7】本発明の金属−空気電池システムの要部構成の他の一例を示す概略図である。
【図8】本発明の金属−空気電池システムの運転方法の一例を示すフローチャートである。
【図9】本発明の金属−空気電池システムの運転方法の他の一例を示すフローチャートである。
【図10】本発明の金属−空気電池システムの運転方法の一例における、外気遮断機構、精製空気遮断機構、及び再生用流体導入機構の開閉のタイミングの例を示す図である。
【図11】本発明の金属−空気電池システムの運転方法の一例における、放電ステップでの外気の流れの例を示す図である。
【図12】本発明の金属−空気電池システムの運転方法の一例における、再生ステップでの再生用流体の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[金属−空気電池システム]
本発明の金属−空気電池システムは、筐体、及び筐体内に収容され、空気極と負極と電解質とを有する充放電部を備えた金属−空気電池と、O2に対してCO2を選択的に吸収するCO2選択吸収部材を有するCO2吸収部と、CO2吸収部に外気を供給する外気供給部と、CO2選択吸収部材によってCO2を吸収除去した精製空気を空気極に供給する精製空気供給部と、CO2選択吸収部材を再生する再生機構とを有している。
【0012】
<金属−空気電池>
本発明の金属−空気電池システムに含まれる金属−空気電池は、筐体、及び筐体内に収容され、空気極と負極と電解質とを有する充放電部を備えている。筐体は空気孔を有しており、この孔を通して金属−空気電池内に空気が導入される。金属−空気電池は、筐体の空気孔を有する部分と空気極との間に、例えば拡散紙、撥水膜等の中間層を有していても良い。空気極としては、導電性、多孔性を有し、電解液の漏洩・揮発を抑制するものであれば特に限定されず、例えば多孔質炭素等が挙げられる。負極材料としては、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、リチウムなどが挙げられる。中でも、リチウムを負極材料として使用したリチウム空気電池では、空気極(正極)との電位差が大きくなり好ましい。電解液としては、負極材料の塩を含む電解液が用いられ、例えばリチウム空気電池では、リチウム塩を支持塩として含有する有機電解液、リチウムイオンを含有する水性電解液等が使用できる。
【0013】
<CO2吸収部>
本発明の金属−空気電池システムに含まれるCO2吸収部は、O2に対してCO2を選択的に吸収するCO2選択吸収部材を有する。なお、本明細書において、「吸収」は吸着も含み、また、「O2に対してCO2を選択的に吸収する」とは、例えば、CO2の吸収量がO2の吸収量に対してモル比で3倍以上、好ましくは5倍以上とすることができる。
【0014】
CO2吸収部は、金属−空気電池の外部に設けてもよく、また、筐体の内部に設けても良い。筐体の内部に設ける場合、空気極の外気供給側の上流側に設けることができる。この場合に、CO2吸収部は、空気極に接するように設けても良く、空気極との間に空間又は中間層を介して設けても良い。さらに、CO2吸収部は、1箇所でもよく、2箇所以上でもよい。CO2吸収部が2箇所以上の場合、各CO2吸収部を切り替えながら使用してもよい。
【0015】
<CO2選択吸収部材>
O2に対してCO2を選択的に吸収するCO2選択吸収部材としては、無機骨格を有する無機材料、イオン液体、アルカリ性液体などを用いることができ、中でも無機材料やイオン液体が好ましく用いられる。
【0016】
無機材料としては、具体的には、メソポーラス材料やゼオライトを含むことが好ましい。また、イオン液体としては、イミダゾリウム塩系イオン液体、ピリジニウム塩類系イオン液体、ホスホニウム系イオン液体などが挙げられる。これらのイオン液体をさらにアミノ基などで修飾したものを用いてもよい。また、アルカリ性液体としては、アミン溶液、アルカリ金属含有溶液、アルカリ土類金属含有溶液などが挙げられる。
【0017】
なお、CO2選択吸収部材として、酸化カルシウムや水酸化リチウム等のCO2と化学反応し炭酸塩を生成する物質を用いた場合には、CO2選択吸収部材を再生するのに比較的高温が必要となる場合がある。
【0018】
メソポーラス材料としては、1nm〜100nmの細孔径を有する材料を用いることができる。メソポーラス材料の種類は特に限定されないが、具体的には、例えば、シリカ、アルミナ、炭素などが挙げられる。メソポーラス材料は、細孔がアミノ基、アルカリ金属、アルカリ土類金属などで修飾されていてもよい。また、ゼオライトとしては、天然品、合成品のいずれでもよく、また種類は特に限定されないが、具体的には、例えば、MFI型ゼオライト、A型ゼオライト、β型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、USY、モルデナイト、DDR型ゼオライトなどが挙げられる。ゼオライト中には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれていてもよく、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の種類としては適宜好適なものを用いることができる。メソポーラス材料やゼオライトは、上記例示の少なくとも一種が吸着材として用いられていることが好ましく、2種以上が混合して用いられても良い。
【0019】
CO2選択吸収部材中の上記メソポーラス材料及びゼオライトの含有量は、例えば50重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上とすることができる。この場合の含有量とは、担体を含まない重量に対する含有量である。
【0020】
CO2選択吸収部材の上記ゼオライトとしては、Si/Al比が10以上のゼオライトが好ましく、特にSi/Al比が100以上(例えば100〜1000)のゼオライトが好ましい。Si/Al比を10以上、より好ましくは100以上とすることにより、ゼオライトの疎水性を高めることができ、空気中で吸着材として使用した場合にゼオライトが優先的に水蒸気を吸着してしまい、CO2の吸着性が低下しやすいという問題が起こりにくくなる。そのため、X型ゼオライト等のSi/Al比が10以下のゼオライトを用いた場合、水蒸気の吸着により、CO2の吸着性が低下しやすいという問題が起こることがある。
【0021】
さらに、ゼオライトは、8員環構造を有していることが好ましい。8員環構造を有することにより、O2選択透過性が高まり、O2に対してCO2をより選択的に吸収することができる。8員環構造を有するゼオライトとしては、具体的には、例えばDDR型ゼオライトなどが特に好ましい。DDR型ゼオライトは、Si/Al比が100以上であり、例えば特開2005−67991号公報などに記載の公知の方法により合成できる。
【0022】
また、ゼオライトとしては、主な構成元素が「Si、Al、O」または「Si、O」からなるもの以外に、主な構成元素が「Al、P、O」または「Al、P、Si、O」からなるものを用いてもよい。これらのゼオライトは、さらに上記以外の遷移金属元素を含有していてもよい。
【0023】
CO2選択吸収部材の形状としては、特に限定されないが、例えば、粉状、粒状、球状、板状、膜状、シート状、フィルム状、棒状、ハニカム状、デシカントロータ形状等とすることができる。また、担体に担持させた形状とすることもできる。これらのCO2選択吸収部材は、公知の方法により製造することができる。
【0024】
担体に担持させた形状の場合、担体の材質としては、セラミック、炭素、及び金属からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。セラミックとしては、シリカ、チタニア、アルミナ、又はジルコニアが好ましい。金属としては、ステンレス又はアルミ合金が好ましい。担体の形状としては、特に限定されないが、例えば、板状、膜状、シート状、フィルム状、棒状、ハニカム状、デシカントロータ形状等が好ましい。
【0025】
CO2選択吸収部材の具体例として、例えば、ゼオライト膜が挙げられる。実用に耐える機械強度を持ちながらゼオライトを薄膜化するためには、支持体上へ成膜することが好ましく、支持体としてはα−アルミナ、γ−アルミナ、ジルコニア、陽極酸化アルミナ、多孔質ガラスなどからなるセラミックス、およびステンレスを主とする焼結金属等が広く用いられる。これらの支持体形状を選択することで、種々の形状のゼオライトを含むCO2選択吸収部材が製造できる。
【0026】
CO2選択吸収部材は、更に撥水性の層(撥水層)を有してもよい。撥水層を有することにより、水分が内部に浸入することを防止することができる。これにより、外気中の水分により影響を受けることを、防止することが可能となる。
【0027】
撥水層の材質は、フッ素樹脂等であることが好ましい。また、撥水層は、CO2選択吸収部材の気体導入面側に配設されてもよいし、CO2選択吸収部材と多孔質基材との間に配設されてもよい。尚、CO2選択吸収部材の気体導入面側に撥水層が配設された場合には、気体導入面は、外部に露出しない状態になるが、気体導入面は外部に露出した状態であってもよいし、外部に露出しない状態であってもよい。撥水層の形状は、板状、膜状、シート状、フィルム状、棒状等が好ましい。撥水層の厚さは、水分が透過しなければ特に限定されない。撥水層は、多孔性撥水層であることが好ましい。
【0028】
CO2選択吸収部材として特にSi/Al比が100以上のゼオライトを使用した場合には、ゼオライトの疎水性が高いため、撥水層が不要となる場合がある。
【0029】
<外気供給部>
外気供給部は、CO2吸収部に外気を供給する。外気供給部は、CO2吸収部に外気を供給できるものであれば特に限定されず、空気孔、流路等が例示できる。流路としては公知のパイプ等が使用できる。なお、本明細書において、「供給」とは、コンプレッサやファン等を使用して供給すること以外に、自然拡散等で導入することも含む。外気は、概室温状態で供給することが好ましいが、必要に応じて適宜加温又は冷却して導入してもよい。また、外気は、概大気圧状態で供給することが好ましいが、必要に応じて適宜加圧して導入してもよい。
【0030】
外気供給部は、放電中でなく且つ上記CO2選択吸収部材の再生中でない場合に、CO2選択吸収部材と外気との接触を絶つ外気遮断機構を有していても良い。外気遮断機構は、必要に応じて、CO2吸収部への外気の供給を遮断できる。外気遮断機構としては、外気供給部における外気の流れを遮断できるものであれば特に限定されず、電磁弁等の公知の流体制御機構が使用できる。ここで、「放電中でなく」かつ「再生中でない」とは、金属−空気電池が使用されず、何もしていない状態をさす。CO2吸収部への外気の供給を遮断することにより、CO2吸収部へのCO2の余分な吸着を防止できる。
【0031】
<精製空気供給部>
本発明の金属−空気電池システムに含まれる精製空気供給部は、上記CO2選択吸収部材によってCO2を吸収除去した精製空気を上記空気極に供給する。ここで「供給」とは上記と同様である。精製空気供給部は、空気極に精製空気を供給できるものであれば特に限定されず、空気孔、流路等が例示できる。流路としては公知のパイプ等が使用できる。また、「CO2を吸収除去した」とは、外気に含まれるCO2の一部が吸収あるいは吸着により除去されていればよく、好ましくは外気に含まれるCO2の50vol%以上、さらに好ましくは70vol%以上、より好ましくは80vol%以上、特に好ましくは90vol%以上が除去されていればよい。上記CO2選択吸収部材によってCO2を吸収除去した精製空気は、精製空気供給部を通って空気極に到達する。
【0032】
精製空気供給部は、上記空気極と上記精製空気との接触を絶つ精製空気遮断機構を有していても良い。精製空気遮断機構としては、精製空気供給部における精製空気の流れを遮断できるものであれば特に限定されず、電磁弁等の公知の流体制御機構が使用できる。精製空気遮断機構は、CO2選択吸収部材の再生を行うときに、上記空気極と上記精製空気との接触を絶つことが好ましい。精製空気遮断機構は、例えば、空気極とCO2選択吸収部材の間の流路を閉じる機構であってもよい。
【0033】
<再生機構>
本発明の金属−空気電池システムは、CO2選択吸収部材を再生する再生機構を有する。ここで、再生するとは、吸収したCO2の例えば70モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上を除去することとすることができる。再生機構は、CO2選択吸収部材を再生できれば特に限定されないが、例えばCO2選択吸収部材を加熱または/及び減圧することにより再生することができる。また、再生用流体をCO2選択吸収部材に導入することにより、除去したCO2を速やかに排出することができるため、再生機構は、例えば、再生用流体供給部を備えていることが好ましい。この場合、再生用流体が再生用流体供給部を通って上記CO2吸収部へ到達できる。再生用流体供給部としてはCO2吸収部に再生用流体を供給できるものであれば特に限定されず、空気孔、流路等が例示できる。流路としては公知のパイプ等が使用できる。
【0034】
再生用流体として、例えば、空気、水蒸気、N2ガス、O2ガス等を例示できる。入手が容易であることから、再生用流体としては空気を用いることが好ましい。
【0035】
再生用流体供給部には、CO2吸収部への再生用流体の供給を制御する再生用流体導入機構が設けられていても良い。再生用流体導入機構としては、再生用流体供給部における流体の流れをオンオフできるものであれば特に限定されず、電磁弁等の公知の流体制御機構が使用できる。再生用流体導入機構を開くことにより、必要に応じてCO2吸収部へ再生用流体を供給できる。CO2吸収部を通過した再生用流体は、外気供給部から排出できる。また、再生用流体は、外気供給部から導入されて、再生用流体供給部から排出されても良い。
【0036】
CO2選択吸収部材を加熱することにより再生する場合、CO2選択吸収部材の温度は、例えば20〜200℃、好ましくは30〜100℃とすることができる。CO2選択吸収部材の加熱は、再生用流体や担体をヒータ等の加熱手段で加熱することによって行ってもよく、マイクロ波などによりCO2選択吸収部材や担体を直接加熱してもよい。また、金属−空気電池システムの放電、充電、及び/又は再生中に発生する熱を利用することもできる。さらに、本発明の金属−空気電池システムを使用する、例えば電気自動車等のシステムから排出される排出ガスの排熱を利用しても良い。
【0037】
図1〜7に、本発明の金属−空気電池システムの実施形態の例を示す。図において、同じ参照符号は同じ部材を表し、説明を省略する場合がある。
【0038】
図1に示す金属−空気電池システム20において、1は筐体であり、2は、筐体1内に収容され、空気極4と負極と電解質(図示は省略)とを有する充放電部(図示は省略)を備えた金属−空気電池である。筐体1は空気孔(図示は省略)を有しており、この孔を通して金属−空気電池2内に空気が導入される。金属−空気電池2において、筐体1の空気孔を有する部分と空気極4との間には、例えば拡散紙、撥水膜等の中間層3が設けられている。なお、中間層3は設けられていなくても良い。5はCO2選択吸収部材であり、CO2吸収部6内に配置されている。7は、CO2吸収部6に外気を供給する外気供給部であり、8は、CO2選択吸収部材5によってCO2を吸収除去した空気を空気極4に供給する精製空気供給部である。さらに、10は、CO2選択吸収部材5を再生する再生機構である。
【0039】
また、図2に示す金属−空気電池システム21において、12は、外気供給部7に配設された外気遮断機構である。外気遮断機構12は、放電中でなく且つCO2選択吸収部材5の再生中でない場合にCO2選択吸収部材5と外気との接触を絶つことができる。
【0040】
また、図3に示す金属−空気電池システム22において、14は、精製空気供給部8に配設された精製空気遮断機構である。精製空気遮断機構14は、CO2選択吸収部材5の再生を行うときに空気極4とCO2選択吸収部材5との間の流路を閉じることができる。
【0041】
また、図4に示す金属−空気電池システム23では、外気供給部7に配設された外気遮断機構12と精製空気供給部8に配設された精製空気遮断機構14とを備えている。このため、放電中でなく且つCO2選択吸収部材5の再生中でない場合には、外気遮断機構12によりCO2選択吸収部材5と外気との接触を絶つことができ、また、CO2選択吸収部材5の再生を行う場合には、精製空気遮断機構14により空気極4とCO2選択吸収部材5との間の流路を閉じることができる。
【0042】
また、図5に示す金属−空気電池システム24において、16、9は、それぞれ、再生機構10を構成する再生用流体導入機構、再生用流体供給部である。金属−空気電池システム24においては、再生用流体導入機構16を開いて再生用流体供給部9を通して、再生用流体をCO2選択吸収部材5に導いて、CO2選択吸収部材5の再生を行うことができる。
【0043】
本発明の金属−空気電池システムの実施形態の例において、オプションとして設けられる外気供給部7の外気遮断機構12と、精製空気供給部8の精製空気遮断機構14は、どちらか片方のみが配設されていてもよく、双方とも配設されていてもよい。
【0044】
図6に示す金属−空気電池システム25では、CO2選択吸収部材5は、筐体1内に空気極4に接して配置されている。さらに図7に示す金属−空気電池システム26のように、CO2選択吸収部材5は、筐体1内に空気極4と中間層3’を介して配置されてもよい。中間層3’は、中間層3と同じでも空間であってもよい。
【0045】
[金属−空気電池システムの運転方法]
本発明の金属−空気電池システムの運転方法は、上記の金属−空気電池システムの運転方法であって、CO2選択吸収部材によってCO2を吸収した空気を空気極に供給して放電する放電ステップと、CO2選択吸収部材の再生処理を行う再生ステップとを含んでいる。
【0046】
<放電ステップ>
本発明の金属−空気電池システムの運転方法に含まれる放電ステップでは、上記CO2選択吸収部材によってCO2を吸収した空気を空気極に供給して放電する。より具体的には、例えば、CO2吸収部に外気供給部から外気を導き、CO2選択吸収部材によってCO2が吸収除去された空気を、精製空気供給部により空気極に導き、放電を行う。空気極には、CO2が吸収除去され、好ましくは外気に含まれるCO2の50vol%以上、さらに好ましくは70vol%以上、より好ましくは80vol%以上、特に好ましくは90vol%以上が除去された精製空気が供給されるため、空気極の目詰まりを少なくすることができる。
【0047】
<再生ステップ>
本発明の金属−空気電池システムの運転方法に含まれる再生ステップでは、上記CO2選択吸収部材の再生処理を行う。再生処理方法は、CO2選択吸収部材に吸収されたCO2の例えば70モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上を除去できれば、特に限定されない。再生ステップとしては、例えば、上記再生用流体を再生用流体供給部を通して上記CO2吸収部へ導き、さらにCO2吸収部を通過させて外気供給部から排出させてもよい。金属−空気電池システムが再生用流体導入機構を有する場合には、必要に応じて再生用流体導入機構を開くことにより、CO2吸収部へ再生用流体を供給できる。CO2吸収部を通過した再生用流体は、外気供給部から排出できる。また、再生用流体は、外気供給部から導入して、再生用流体供給部から排出させても良い。再生ステップにおいてCO2選択吸収部材の再生を行うときに、空気極とCO2選択吸収部材の間の、精製空気供給部の精製空気遮断機構を閉じることが好ましい。
【0048】
<充電ステップ>
本発明の金属−空気電池システムの運転方法は、さらに充電ステップを含んでいても良く、再生ステップを充電ステップ時に行ってもよい。充電ステップでは、金属−空気電池を充電する。充電方法は、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。なお、充電ステップにおいて、上記再生ステップを常に行っても良いし、常には行わず必要に応じて行っても良い。
【0049】
<休止ステップ>
本発明の金属−空気電池システムの運転方法は、さらに、放電中でなく、かつCO2選択吸収部材の再生中でない場合に、CO2選択吸収部材と外気との接触を絶つ休止ステップを含んでいても良い。放電中でなく、かつCO2選択吸収部材の再生中でない場合とは、上記と同様である。休止ステップを含むことにより、CO2選択吸収部材の劣化を防ぐことができる。CO2選択吸収部材と外気との接触は、上記外気遮断機構を閉じることにより絶つことができる。
【0050】
<バッチ式の再生例>
再生ステップを充電ステップ時に行う例を説明する。この場合、放電ステップでCO2を吸着(吸収)したCO2選択吸収部材が、充電ステップ時に再生ステップにおいて再生される。具体的には、例えば、CO2選択吸収部材がハニカム形状の担体にゼオライトが担持されているものである場合には、放電ステップにおいて(1)CO2を含んだ外気がハニカムを通過する際に、(2)ゼオライトがO2に対してCO2を選択的に吸着(吸収)し、(3)CO2を除去した空気が生成される。次に充電ステップにおいて同時に再生ステップを行い、(1)再生用流体をハニカムに通過させ、(2)ゼオライトに吸着(吸収)されたCO2を取り除くため、必要に応じて再生用流体の温度を上げてハニカムに送り、(3)再生用流体がゼオライトからCO2を脱着して排気される。CO2を脱着したゼオライト担持ハニカムは、放電ステップにおいて再び外気を導入され、CO2を吸着(吸収)する。
【0051】
<連続的な再生例>
本発明の金属−空気電池システムの運転方法では、例えば放電ステップ中に再生ステップを行い、連続的にCO2選択吸収部材を再生することもできる。具体的には、例えば、CO2選択吸収部材がデシカントロータ形状の場合には、CO2選択吸収側(CO2吸着側)においては、(1)CO2を含んだ外気をデシカントロータの一部に通過させ、(2)外気中のCO2がデシカントロータに吸着(吸収)し、(3)デシカントロータを通過した外気はCO2が除去された空気(精製空気)となる。そして、CO2選択吸収部材の再生側(CO2脱着側)においては、(1)再生用流体をデシカントロータの一部に通過させ、(2)デシカントロータに吸着(吸収)されたCO2を取り除くために、必要に応じて再生用流体の温度を上げてデシカントロータに送り、(3)再生用流体がデシカントロータからCO2を脱着させて排気される。CO2を脱着されたデシカントロータは回転して再びCO2選択吸収側に戻り、CO2を吸着(吸収)する。このように、CO2選択吸収部材がデシカントロータ形状の場合には、デシカントロータの一部でCO2の吸着(吸収)を行いつつ、デシカントロータの他の部分でCO2の脱着(再生)を行うことができる。
【0052】
図8〜9に、本発明の金属−空気電池システムの運転方法の実施形態の例を示す。
図8に示すように、本発明の金属−空気電池システムの運転方法の一例では、例えば、筐体の空気孔から空気極に、CO2選択吸収部材によりCO2が除去された空気を導くことにより、放電を行う(放電ステップ)。この時、CO2選択吸収部材はCO2を吸着する。
続いて、充電し(充電ステップ)、充電時に再生機構によりCO2選択吸収部材の再生を行う(再生ステップ)。再生ステップにおいて、CO2選択吸収部材はCO2を脱着し、CO2吸着能を回復する。その後、再び、空気極にCO2選択吸収部材によりCO2を除去した空気を導くことにより放電を行うことができる(放電ステップ)。
【0053】
また、他の一例においては、図9に示すように、放電中でなく、かつ上記CO2選択吸収部材の再生中でない場合に、さらに休止ステップを行う。
【0054】
図10に、本発明の金属−空気電池システムの運転方法の一例として、図5に示した金属−空気電池システム24における外気遮断機構12、精製空気遮断機構14、ならびに再生用流体導入機構16の開閉のタイミングを示す。放電開始時には、外気供給部7の外気遮断機構12と、精製空気供給部8の精製空気遮断機構14は開いた状態にあり、再生用流体供給部9の再生用流体導入機構16は閉じている。このため、外気は外気供給部7を通ってCO2吸収部6を通過し、CO2選択吸収部材5によってCO2が吸収除去され、この精製空気が空気極4に到達し、放電が行われる。この場合の外気及び精製空気の流れを図11に示す。外気は、白抜き矢印で示すように、外気供給部7を通ってCO2吸収部6に導入され、CO2を吸収除去された空気となって、精製空気供給部8を通って空気孔(不図示)から筐体1内に入る。筐体1内では、中間層3を通過して空気極4に到達する。
【0055】
次に、図10に示すように、精製空気供給部8の精製空気遮断機構14を閉め、再生用流体供給部9の再生用流体導入機構16を開く。この時、外気供給部7の外気遮断機構12は開いたままである。そして、再生用流体供給部9からCO2吸収部6へ再生用流体を導入する。この場合の再生用流体の流れを図12に示す。再生用流体は、白抜き矢印で示すように、再生用流体供給部9を通ってCO2吸収部6に導入され、CO2選択吸収部材5に吸収されたCO2を脱着させて流体内に含んで、外気供給部7を通って排気される。そして、CO2選択吸収部材5は、CO2を脱着して再生される。この時、金属−空気電池2は、不図示の充電部により充電できる。
【0056】
続いて、例えば、図10に示すように、精製空気遮断機構14を開き、再生用流体導入機構16を閉じて、再び放電ステップを行うことができる。
【0057】
放電後、外気供給部7の外気遮断機構12を閉め、再生用流体供給部9の再生用流体導入機構16を閉めた状態に保つことにより、金属−空気電池システム24を休止させることができる(休止ステップ)。
【0058】
そして、再度、外気遮断機構12を開いて、再び放電ステップを行うことができる。
【0059】
<吸着試験1>
アミン修飾メソポーラスシリカ粉末、DDR型ゼオライト粉末、X型ゼオライト粉末について、CO2とO2について吸着試験を行った。上記粉末を、120℃で8時間の真空脱気を行った後、定容法にて、CO2とO2の吸着量を求めた。
試験条件、結果は以下の通りであった。
試験条件
温度:25℃
圧力:100kPa
吸着試験結果
アミン修飾メソポーラスシリカ
CO2:1.67mmol/g
O2:0.40mmol/g
DDR型ゼオライト
CO2:1.26mmol/g
O2:0.13mmol/g
X型ゼオライト
CO2:1.98mmol/g
O2:0.37mmol/g
【0060】
<吸着試験2>
続いて、湿度10%の空気に24時間暴露したアミン修飾メソポーラスシリカ粉末、DDR型ゼオライト粉末、X型ゼオライト粉末について、吸着量測定前に真空脱気を行わなかった以外は吸着試験1と同様にして、CO2の吸着量を求めた。
試験結果は以下の通りであった。
アミン修飾メソポーラスシリカ
CO2:1.06mmol/g
DDR型ゼオライト
CO2:0.89mmol/g
X型ゼオライト
CO2:0.07mmol/g
【0061】
上記吸着試験1の結果が示すように、O2に対してCO2が選択的に吸着された。従って、メソポーラス材料またはゼオライトを、本発明の金属−空気電池システムに使用した場合には、特に、CO2が除去された空気を空気極に供給することができ、金属−空気電池システムの運転性能が向上する。また、上記吸着試験2の結果より、X型ゼオライトよりもSi/Al比が大きいDDR型ゼオライトの方が、空気中の水蒸気の影響を受けづらいことが分かった。
【符号の説明】
【0062】
1 筐体
2 金属−空気電池
3、3’ 中間層
4 空気極
5 CO2選択吸収部材
6 CO2吸収部
7 外気供給部
8 精製空気供給部
9 再生用流体供給部
10 再生機構
12 外気遮断機構
14 精製空気遮断機構
16 再生用流体導入機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2選択吸収部材を備えた金属−空気電池システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属−空気電池は、Liイオン電池に変わる次世代の大容量電池として注目されている。しかしながら、放電反応時に、空気中のCO2により難溶性の化合物が生成して空気極が目詰まりするという問題があった。特許文献1〜3には、空気中のCO2を除去するためにフッ素樹脂やポリジメチルシロキサン等の高分子膜を用いた酸素選択透過性の空気極が記載されているが、高分子膜を用いた酸素選択透過性空気極では、CO2濃度を十分に低減することは困難であった。
【0003】
また、酸素濃縮器を有する空気電池が報告されている(特許文献4)。この空気電池では、ゼオライトは酸素濃縮に用いており、CO2吸収には用いていない。さらに、CO2吸収部材についての記載はあるが、再生機構を備えていないため、CO2が飽和して吸着部材が劣化し、一定量しかCO2を吸収できないという問題があった。
【0004】
また、特許文献5には、プロセスガスのCO2吸収部材としてゼオライトが報告されている。しかしながら、ゼオライトのSi/Al比が小さいために親水的であり、空気中で使用した際には優先的に水蒸気を吸着してしまい、CO2の吸着性は不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−062687号公報
【特許文献2】特開平07−105991号公報
【特許文献3】特開平07−014565号公報
【特許文献4】特表2002−516474号公報
【特許文献5】特開平11−253736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、O2は透過してCO2の透過は抑制し、CO2を十分に吸着するCO2選択吸収部材と、その再生機構とを備え、CO2を除去した空気を安定的に金属−空気電池の放電に用いることができる金属−空気電池システム及び運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の金属−空気電池システムは、筐体、及び上記筐体内に収容され、空気極と負極と電解質とを有する充放電部を備えた金属−空気電池と、O2に対してCO2を選択的に吸収するCO2選択吸収部材を有するCO2吸収部と、上記CO2吸収部に外気を供給する外気供給部と、上記CO2選択吸収部材によってCO2を吸収除去した精製空気を上記空気極に供給する精製空気供給部と、上記CO2選択吸収部材を再生する再生機構とを有することを特徴とする。
好ましくは、放電中でなく且つ上記CO2選択吸収部材の再生中でない場合に、上記CO2選択吸収部材と外気との接触を絶つ外気遮断機構を、上記外気供給部に有していてもよい。
また、好ましくは、上記CO2選択吸収部材の再生を行うときに、上記空気極と上記精製空気との接触を絶つ精製空気遮断機構を、上記精製空気供給部に有していてもよい。
上記CO2選択吸収部材はメソポーラス材料または/及びゼオライトを含んでいることが好ましい。
【0008】
また、本発明の金属−空気電池システムの運転方法は、上記金属−空気電池システムの運転方法であって、上記CO2選択吸収部材によってCO2を吸収した空気を上記空気極に供給して放電する放電ステップと、上記CO2選択吸収部材の再生処理を行う再生ステップとを含むことを特徴とする。
好ましくは、本発明の金属−空気電池システムの運転方法では、さらに充電ステップを含み、上記再生ステップを上記充電ステップ時に行ってもよい。
また、好ましくは、放電中でなく、かつ上記CO2選択吸収部材の再生処理中でない場合に、上記CO2選択吸収部材と外気との接触を絶つ休止ステップを含んでいてもよい。
さらに、上記再生ステップにおいて上記CO2選択吸収部材の再生処理を行うときに、上記空気極と上記精製空気との接触を絶つことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、CO2を除去した空気を金属−空気電池の放電に安定的に用いることができる金属−空気電池システム及びその運転方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の金属−空気電池システムの要部構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の金属−空気電池システムの要部構成の他の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の金属−空気電池システムの要部構成の他の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の金属−空気電池システムの要部構成の他の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の金属−空気電池システムの要部構成の他の一例を示す概略図である。
【図6】本発明の金属−空気電池システムの要部構成の他の一例を示す概略図である。
【図7】本発明の金属−空気電池システムの要部構成の他の一例を示す概略図である。
【図8】本発明の金属−空気電池システムの運転方法の一例を示すフローチャートである。
【図9】本発明の金属−空気電池システムの運転方法の他の一例を示すフローチャートである。
【図10】本発明の金属−空気電池システムの運転方法の一例における、外気遮断機構、精製空気遮断機構、及び再生用流体導入機構の開閉のタイミングの例を示す図である。
【図11】本発明の金属−空気電池システムの運転方法の一例における、放電ステップでの外気の流れの例を示す図である。
【図12】本発明の金属−空気電池システムの運転方法の一例における、再生ステップでの再生用流体の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[金属−空気電池システム]
本発明の金属−空気電池システムは、筐体、及び筐体内に収容され、空気極と負極と電解質とを有する充放電部を備えた金属−空気電池と、O2に対してCO2を選択的に吸収するCO2選択吸収部材を有するCO2吸収部と、CO2吸収部に外気を供給する外気供給部と、CO2選択吸収部材によってCO2を吸収除去した精製空気を空気極に供給する精製空気供給部と、CO2選択吸収部材を再生する再生機構とを有している。
【0012】
<金属−空気電池>
本発明の金属−空気電池システムに含まれる金属−空気電池は、筐体、及び筐体内に収容され、空気極と負極と電解質とを有する充放電部を備えている。筐体は空気孔を有しており、この孔を通して金属−空気電池内に空気が導入される。金属−空気電池は、筐体の空気孔を有する部分と空気極との間に、例えば拡散紙、撥水膜等の中間層を有していても良い。空気極としては、導電性、多孔性を有し、電解液の漏洩・揮発を抑制するものであれば特に限定されず、例えば多孔質炭素等が挙げられる。負極材料としては、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、リチウムなどが挙げられる。中でも、リチウムを負極材料として使用したリチウム空気電池では、空気極(正極)との電位差が大きくなり好ましい。電解液としては、負極材料の塩を含む電解液が用いられ、例えばリチウム空気電池では、リチウム塩を支持塩として含有する有機電解液、リチウムイオンを含有する水性電解液等が使用できる。
【0013】
<CO2吸収部>
本発明の金属−空気電池システムに含まれるCO2吸収部は、O2に対してCO2を選択的に吸収するCO2選択吸収部材を有する。なお、本明細書において、「吸収」は吸着も含み、また、「O2に対してCO2を選択的に吸収する」とは、例えば、CO2の吸収量がO2の吸収量に対してモル比で3倍以上、好ましくは5倍以上とすることができる。
【0014】
CO2吸収部は、金属−空気電池の外部に設けてもよく、また、筐体の内部に設けても良い。筐体の内部に設ける場合、空気極の外気供給側の上流側に設けることができる。この場合に、CO2吸収部は、空気極に接するように設けても良く、空気極との間に空間又は中間層を介して設けても良い。さらに、CO2吸収部は、1箇所でもよく、2箇所以上でもよい。CO2吸収部が2箇所以上の場合、各CO2吸収部を切り替えながら使用してもよい。
【0015】
<CO2選択吸収部材>
O2に対してCO2を選択的に吸収するCO2選択吸収部材としては、無機骨格を有する無機材料、イオン液体、アルカリ性液体などを用いることができ、中でも無機材料やイオン液体が好ましく用いられる。
【0016】
無機材料としては、具体的には、メソポーラス材料やゼオライトを含むことが好ましい。また、イオン液体としては、イミダゾリウム塩系イオン液体、ピリジニウム塩類系イオン液体、ホスホニウム系イオン液体などが挙げられる。これらのイオン液体をさらにアミノ基などで修飾したものを用いてもよい。また、アルカリ性液体としては、アミン溶液、アルカリ金属含有溶液、アルカリ土類金属含有溶液などが挙げられる。
【0017】
なお、CO2選択吸収部材として、酸化カルシウムや水酸化リチウム等のCO2と化学反応し炭酸塩を生成する物質を用いた場合には、CO2選択吸収部材を再生するのに比較的高温が必要となる場合がある。
【0018】
メソポーラス材料としては、1nm〜100nmの細孔径を有する材料を用いることができる。メソポーラス材料の種類は特に限定されないが、具体的には、例えば、シリカ、アルミナ、炭素などが挙げられる。メソポーラス材料は、細孔がアミノ基、アルカリ金属、アルカリ土類金属などで修飾されていてもよい。また、ゼオライトとしては、天然品、合成品のいずれでもよく、また種類は特に限定されないが、具体的には、例えば、MFI型ゼオライト、A型ゼオライト、β型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、USY、モルデナイト、DDR型ゼオライトなどが挙げられる。ゼオライト中には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれていてもよく、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の種類としては適宜好適なものを用いることができる。メソポーラス材料やゼオライトは、上記例示の少なくとも一種が吸着材として用いられていることが好ましく、2種以上が混合して用いられても良い。
【0019】
CO2選択吸収部材中の上記メソポーラス材料及びゼオライトの含有量は、例えば50重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上とすることができる。この場合の含有量とは、担体を含まない重量に対する含有量である。
【0020】
CO2選択吸収部材の上記ゼオライトとしては、Si/Al比が10以上のゼオライトが好ましく、特にSi/Al比が100以上(例えば100〜1000)のゼオライトが好ましい。Si/Al比を10以上、より好ましくは100以上とすることにより、ゼオライトの疎水性を高めることができ、空気中で吸着材として使用した場合にゼオライトが優先的に水蒸気を吸着してしまい、CO2の吸着性が低下しやすいという問題が起こりにくくなる。そのため、X型ゼオライト等のSi/Al比が10以下のゼオライトを用いた場合、水蒸気の吸着により、CO2の吸着性が低下しやすいという問題が起こることがある。
【0021】
さらに、ゼオライトは、8員環構造を有していることが好ましい。8員環構造を有することにより、O2選択透過性が高まり、O2に対してCO2をより選択的に吸収することができる。8員環構造を有するゼオライトとしては、具体的には、例えばDDR型ゼオライトなどが特に好ましい。DDR型ゼオライトは、Si/Al比が100以上であり、例えば特開2005−67991号公報などに記載の公知の方法により合成できる。
【0022】
また、ゼオライトとしては、主な構成元素が「Si、Al、O」または「Si、O」からなるもの以外に、主な構成元素が「Al、P、O」または「Al、P、Si、O」からなるものを用いてもよい。これらのゼオライトは、さらに上記以外の遷移金属元素を含有していてもよい。
【0023】
CO2選択吸収部材の形状としては、特に限定されないが、例えば、粉状、粒状、球状、板状、膜状、シート状、フィルム状、棒状、ハニカム状、デシカントロータ形状等とすることができる。また、担体に担持させた形状とすることもできる。これらのCO2選択吸収部材は、公知の方法により製造することができる。
【0024】
担体に担持させた形状の場合、担体の材質としては、セラミック、炭素、及び金属からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。セラミックとしては、シリカ、チタニア、アルミナ、又はジルコニアが好ましい。金属としては、ステンレス又はアルミ合金が好ましい。担体の形状としては、特に限定されないが、例えば、板状、膜状、シート状、フィルム状、棒状、ハニカム状、デシカントロータ形状等が好ましい。
【0025】
CO2選択吸収部材の具体例として、例えば、ゼオライト膜が挙げられる。実用に耐える機械強度を持ちながらゼオライトを薄膜化するためには、支持体上へ成膜することが好ましく、支持体としてはα−アルミナ、γ−アルミナ、ジルコニア、陽極酸化アルミナ、多孔質ガラスなどからなるセラミックス、およびステンレスを主とする焼結金属等が広く用いられる。これらの支持体形状を選択することで、種々の形状のゼオライトを含むCO2選択吸収部材が製造できる。
【0026】
CO2選択吸収部材は、更に撥水性の層(撥水層)を有してもよい。撥水層を有することにより、水分が内部に浸入することを防止することができる。これにより、外気中の水分により影響を受けることを、防止することが可能となる。
【0027】
撥水層の材質は、フッ素樹脂等であることが好ましい。また、撥水層は、CO2選択吸収部材の気体導入面側に配設されてもよいし、CO2選択吸収部材と多孔質基材との間に配設されてもよい。尚、CO2選択吸収部材の気体導入面側に撥水層が配設された場合には、気体導入面は、外部に露出しない状態になるが、気体導入面は外部に露出した状態であってもよいし、外部に露出しない状態であってもよい。撥水層の形状は、板状、膜状、シート状、フィルム状、棒状等が好ましい。撥水層の厚さは、水分が透過しなければ特に限定されない。撥水層は、多孔性撥水層であることが好ましい。
【0028】
CO2選択吸収部材として特にSi/Al比が100以上のゼオライトを使用した場合には、ゼオライトの疎水性が高いため、撥水層が不要となる場合がある。
【0029】
<外気供給部>
外気供給部は、CO2吸収部に外気を供給する。外気供給部は、CO2吸収部に外気を供給できるものであれば特に限定されず、空気孔、流路等が例示できる。流路としては公知のパイプ等が使用できる。なお、本明細書において、「供給」とは、コンプレッサやファン等を使用して供給すること以外に、自然拡散等で導入することも含む。外気は、概室温状態で供給することが好ましいが、必要に応じて適宜加温又は冷却して導入してもよい。また、外気は、概大気圧状態で供給することが好ましいが、必要に応じて適宜加圧して導入してもよい。
【0030】
外気供給部は、放電中でなく且つ上記CO2選択吸収部材の再生中でない場合に、CO2選択吸収部材と外気との接触を絶つ外気遮断機構を有していても良い。外気遮断機構は、必要に応じて、CO2吸収部への外気の供給を遮断できる。外気遮断機構としては、外気供給部における外気の流れを遮断できるものであれば特に限定されず、電磁弁等の公知の流体制御機構が使用できる。ここで、「放電中でなく」かつ「再生中でない」とは、金属−空気電池が使用されず、何もしていない状態をさす。CO2吸収部への外気の供給を遮断することにより、CO2吸収部へのCO2の余分な吸着を防止できる。
【0031】
<精製空気供給部>
本発明の金属−空気電池システムに含まれる精製空気供給部は、上記CO2選択吸収部材によってCO2を吸収除去した精製空気を上記空気極に供給する。ここで「供給」とは上記と同様である。精製空気供給部は、空気極に精製空気を供給できるものであれば特に限定されず、空気孔、流路等が例示できる。流路としては公知のパイプ等が使用できる。また、「CO2を吸収除去した」とは、外気に含まれるCO2の一部が吸収あるいは吸着により除去されていればよく、好ましくは外気に含まれるCO2の50vol%以上、さらに好ましくは70vol%以上、より好ましくは80vol%以上、特に好ましくは90vol%以上が除去されていればよい。上記CO2選択吸収部材によってCO2を吸収除去した精製空気は、精製空気供給部を通って空気極に到達する。
【0032】
精製空気供給部は、上記空気極と上記精製空気との接触を絶つ精製空気遮断機構を有していても良い。精製空気遮断機構としては、精製空気供給部における精製空気の流れを遮断できるものであれば特に限定されず、電磁弁等の公知の流体制御機構が使用できる。精製空気遮断機構は、CO2選択吸収部材の再生を行うときに、上記空気極と上記精製空気との接触を絶つことが好ましい。精製空気遮断機構は、例えば、空気極とCO2選択吸収部材の間の流路を閉じる機構であってもよい。
【0033】
<再生機構>
本発明の金属−空気電池システムは、CO2選択吸収部材を再生する再生機構を有する。ここで、再生するとは、吸収したCO2の例えば70モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上を除去することとすることができる。再生機構は、CO2選択吸収部材を再生できれば特に限定されないが、例えばCO2選択吸収部材を加熱または/及び減圧することにより再生することができる。また、再生用流体をCO2選択吸収部材に導入することにより、除去したCO2を速やかに排出することができるため、再生機構は、例えば、再生用流体供給部を備えていることが好ましい。この場合、再生用流体が再生用流体供給部を通って上記CO2吸収部へ到達できる。再生用流体供給部としてはCO2吸収部に再生用流体を供給できるものであれば特に限定されず、空気孔、流路等が例示できる。流路としては公知のパイプ等が使用できる。
【0034】
再生用流体として、例えば、空気、水蒸気、N2ガス、O2ガス等を例示できる。入手が容易であることから、再生用流体としては空気を用いることが好ましい。
【0035】
再生用流体供給部には、CO2吸収部への再生用流体の供給を制御する再生用流体導入機構が設けられていても良い。再生用流体導入機構としては、再生用流体供給部における流体の流れをオンオフできるものであれば特に限定されず、電磁弁等の公知の流体制御機構が使用できる。再生用流体導入機構を開くことにより、必要に応じてCO2吸収部へ再生用流体を供給できる。CO2吸収部を通過した再生用流体は、外気供給部から排出できる。また、再生用流体は、外気供給部から導入されて、再生用流体供給部から排出されても良い。
【0036】
CO2選択吸収部材を加熱することにより再生する場合、CO2選択吸収部材の温度は、例えば20〜200℃、好ましくは30〜100℃とすることができる。CO2選択吸収部材の加熱は、再生用流体や担体をヒータ等の加熱手段で加熱することによって行ってもよく、マイクロ波などによりCO2選択吸収部材や担体を直接加熱してもよい。また、金属−空気電池システムの放電、充電、及び/又は再生中に発生する熱を利用することもできる。さらに、本発明の金属−空気電池システムを使用する、例えば電気自動車等のシステムから排出される排出ガスの排熱を利用しても良い。
【0037】
図1〜7に、本発明の金属−空気電池システムの実施形態の例を示す。図において、同じ参照符号は同じ部材を表し、説明を省略する場合がある。
【0038】
図1に示す金属−空気電池システム20において、1は筐体であり、2は、筐体1内に収容され、空気極4と負極と電解質(図示は省略)とを有する充放電部(図示は省略)を備えた金属−空気電池である。筐体1は空気孔(図示は省略)を有しており、この孔を通して金属−空気電池2内に空気が導入される。金属−空気電池2において、筐体1の空気孔を有する部分と空気極4との間には、例えば拡散紙、撥水膜等の中間層3が設けられている。なお、中間層3は設けられていなくても良い。5はCO2選択吸収部材であり、CO2吸収部6内に配置されている。7は、CO2吸収部6に外気を供給する外気供給部であり、8は、CO2選択吸収部材5によってCO2を吸収除去した空気を空気極4に供給する精製空気供給部である。さらに、10は、CO2選択吸収部材5を再生する再生機構である。
【0039】
また、図2に示す金属−空気電池システム21において、12は、外気供給部7に配設された外気遮断機構である。外気遮断機構12は、放電中でなく且つCO2選択吸収部材5の再生中でない場合にCO2選択吸収部材5と外気との接触を絶つことができる。
【0040】
また、図3に示す金属−空気電池システム22において、14は、精製空気供給部8に配設された精製空気遮断機構である。精製空気遮断機構14は、CO2選択吸収部材5の再生を行うときに空気極4とCO2選択吸収部材5との間の流路を閉じることができる。
【0041】
また、図4に示す金属−空気電池システム23では、外気供給部7に配設された外気遮断機構12と精製空気供給部8に配設された精製空気遮断機構14とを備えている。このため、放電中でなく且つCO2選択吸収部材5の再生中でない場合には、外気遮断機構12によりCO2選択吸収部材5と外気との接触を絶つことができ、また、CO2選択吸収部材5の再生を行う場合には、精製空気遮断機構14により空気極4とCO2選択吸収部材5との間の流路を閉じることができる。
【0042】
また、図5に示す金属−空気電池システム24において、16、9は、それぞれ、再生機構10を構成する再生用流体導入機構、再生用流体供給部である。金属−空気電池システム24においては、再生用流体導入機構16を開いて再生用流体供給部9を通して、再生用流体をCO2選択吸収部材5に導いて、CO2選択吸収部材5の再生を行うことができる。
【0043】
本発明の金属−空気電池システムの実施形態の例において、オプションとして設けられる外気供給部7の外気遮断機構12と、精製空気供給部8の精製空気遮断機構14は、どちらか片方のみが配設されていてもよく、双方とも配設されていてもよい。
【0044】
図6に示す金属−空気電池システム25では、CO2選択吸収部材5は、筐体1内に空気極4に接して配置されている。さらに図7に示す金属−空気電池システム26のように、CO2選択吸収部材5は、筐体1内に空気極4と中間層3’を介して配置されてもよい。中間層3’は、中間層3と同じでも空間であってもよい。
【0045】
[金属−空気電池システムの運転方法]
本発明の金属−空気電池システムの運転方法は、上記の金属−空気電池システムの運転方法であって、CO2選択吸収部材によってCO2を吸収した空気を空気極に供給して放電する放電ステップと、CO2選択吸収部材の再生処理を行う再生ステップとを含んでいる。
【0046】
<放電ステップ>
本発明の金属−空気電池システムの運転方法に含まれる放電ステップでは、上記CO2選択吸収部材によってCO2を吸収した空気を空気極に供給して放電する。より具体的には、例えば、CO2吸収部に外気供給部から外気を導き、CO2選択吸収部材によってCO2が吸収除去された空気を、精製空気供給部により空気極に導き、放電を行う。空気極には、CO2が吸収除去され、好ましくは外気に含まれるCO2の50vol%以上、さらに好ましくは70vol%以上、より好ましくは80vol%以上、特に好ましくは90vol%以上が除去された精製空気が供給されるため、空気極の目詰まりを少なくすることができる。
【0047】
<再生ステップ>
本発明の金属−空気電池システムの運転方法に含まれる再生ステップでは、上記CO2選択吸収部材の再生処理を行う。再生処理方法は、CO2選択吸収部材に吸収されたCO2の例えば70モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上を除去できれば、特に限定されない。再生ステップとしては、例えば、上記再生用流体を再生用流体供給部を通して上記CO2吸収部へ導き、さらにCO2吸収部を通過させて外気供給部から排出させてもよい。金属−空気電池システムが再生用流体導入機構を有する場合には、必要に応じて再生用流体導入機構を開くことにより、CO2吸収部へ再生用流体を供給できる。CO2吸収部を通過した再生用流体は、外気供給部から排出できる。また、再生用流体は、外気供給部から導入して、再生用流体供給部から排出させても良い。再生ステップにおいてCO2選択吸収部材の再生を行うときに、空気極とCO2選択吸収部材の間の、精製空気供給部の精製空気遮断機構を閉じることが好ましい。
【0048】
<充電ステップ>
本発明の金属−空気電池システムの運転方法は、さらに充電ステップを含んでいても良く、再生ステップを充電ステップ時に行ってもよい。充電ステップでは、金属−空気電池を充電する。充電方法は、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。なお、充電ステップにおいて、上記再生ステップを常に行っても良いし、常には行わず必要に応じて行っても良い。
【0049】
<休止ステップ>
本発明の金属−空気電池システムの運転方法は、さらに、放電中でなく、かつCO2選択吸収部材の再生中でない場合に、CO2選択吸収部材と外気との接触を絶つ休止ステップを含んでいても良い。放電中でなく、かつCO2選択吸収部材の再生中でない場合とは、上記と同様である。休止ステップを含むことにより、CO2選択吸収部材の劣化を防ぐことができる。CO2選択吸収部材と外気との接触は、上記外気遮断機構を閉じることにより絶つことができる。
【0050】
<バッチ式の再生例>
再生ステップを充電ステップ時に行う例を説明する。この場合、放電ステップでCO2を吸着(吸収)したCO2選択吸収部材が、充電ステップ時に再生ステップにおいて再生される。具体的には、例えば、CO2選択吸収部材がハニカム形状の担体にゼオライトが担持されているものである場合には、放電ステップにおいて(1)CO2を含んだ外気がハニカムを通過する際に、(2)ゼオライトがO2に対してCO2を選択的に吸着(吸収)し、(3)CO2を除去した空気が生成される。次に充電ステップにおいて同時に再生ステップを行い、(1)再生用流体をハニカムに通過させ、(2)ゼオライトに吸着(吸収)されたCO2を取り除くため、必要に応じて再生用流体の温度を上げてハニカムに送り、(3)再生用流体がゼオライトからCO2を脱着して排気される。CO2を脱着したゼオライト担持ハニカムは、放電ステップにおいて再び外気を導入され、CO2を吸着(吸収)する。
【0051】
<連続的な再生例>
本発明の金属−空気電池システムの運転方法では、例えば放電ステップ中に再生ステップを行い、連続的にCO2選択吸収部材を再生することもできる。具体的には、例えば、CO2選択吸収部材がデシカントロータ形状の場合には、CO2選択吸収側(CO2吸着側)においては、(1)CO2を含んだ外気をデシカントロータの一部に通過させ、(2)外気中のCO2がデシカントロータに吸着(吸収)し、(3)デシカントロータを通過した外気はCO2が除去された空気(精製空気)となる。そして、CO2選択吸収部材の再生側(CO2脱着側)においては、(1)再生用流体をデシカントロータの一部に通過させ、(2)デシカントロータに吸着(吸収)されたCO2を取り除くために、必要に応じて再生用流体の温度を上げてデシカントロータに送り、(3)再生用流体がデシカントロータからCO2を脱着させて排気される。CO2を脱着されたデシカントロータは回転して再びCO2選択吸収側に戻り、CO2を吸着(吸収)する。このように、CO2選択吸収部材がデシカントロータ形状の場合には、デシカントロータの一部でCO2の吸着(吸収)を行いつつ、デシカントロータの他の部分でCO2の脱着(再生)を行うことができる。
【0052】
図8〜9に、本発明の金属−空気電池システムの運転方法の実施形態の例を示す。
図8に示すように、本発明の金属−空気電池システムの運転方法の一例では、例えば、筐体の空気孔から空気極に、CO2選択吸収部材によりCO2が除去された空気を導くことにより、放電を行う(放電ステップ)。この時、CO2選択吸収部材はCO2を吸着する。
続いて、充電し(充電ステップ)、充電時に再生機構によりCO2選択吸収部材の再生を行う(再生ステップ)。再生ステップにおいて、CO2選択吸収部材はCO2を脱着し、CO2吸着能を回復する。その後、再び、空気極にCO2選択吸収部材によりCO2を除去した空気を導くことにより放電を行うことができる(放電ステップ)。
【0053】
また、他の一例においては、図9に示すように、放電中でなく、かつ上記CO2選択吸収部材の再生中でない場合に、さらに休止ステップを行う。
【0054】
図10に、本発明の金属−空気電池システムの運転方法の一例として、図5に示した金属−空気電池システム24における外気遮断機構12、精製空気遮断機構14、ならびに再生用流体導入機構16の開閉のタイミングを示す。放電開始時には、外気供給部7の外気遮断機構12と、精製空気供給部8の精製空気遮断機構14は開いた状態にあり、再生用流体供給部9の再生用流体導入機構16は閉じている。このため、外気は外気供給部7を通ってCO2吸収部6を通過し、CO2選択吸収部材5によってCO2が吸収除去され、この精製空気が空気極4に到達し、放電が行われる。この場合の外気及び精製空気の流れを図11に示す。外気は、白抜き矢印で示すように、外気供給部7を通ってCO2吸収部6に導入され、CO2を吸収除去された空気となって、精製空気供給部8を通って空気孔(不図示)から筐体1内に入る。筐体1内では、中間層3を通過して空気極4に到達する。
【0055】
次に、図10に示すように、精製空気供給部8の精製空気遮断機構14を閉め、再生用流体供給部9の再生用流体導入機構16を開く。この時、外気供給部7の外気遮断機構12は開いたままである。そして、再生用流体供給部9からCO2吸収部6へ再生用流体を導入する。この場合の再生用流体の流れを図12に示す。再生用流体は、白抜き矢印で示すように、再生用流体供給部9を通ってCO2吸収部6に導入され、CO2選択吸収部材5に吸収されたCO2を脱着させて流体内に含んで、外気供給部7を通って排気される。そして、CO2選択吸収部材5は、CO2を脱着して再生される。この時、金属−空気電池2は、不図示の充電部により充電できる。
【0056】
続いて、例えば、図10に示すように、精製空気遮断機構14を開き、再生用流体導入機構16を閉じて、再び放電ステップを行うことができる。
【0057】
放電後、外気供給部7の外気遮断機構12を閉め、再生用流体供給部9の再生用流体導入機構16を閉めた状態に保つことにより、金属−空気電池システム24を休止させることができる(休止ステップ)。
【0058】
そして、再度、外気遮断機構12を開いて、再び放電ステップを行うことができる。
【0059】
<吸着試験1>
アミン修飾メソポーラスシリカ粉末、DDR型ゼオライト粉末、X型ゼオライト粉末について、CO2とO2について吸着試験を行った。上記粉末を、120℃で8時間の真空脱気を行った後、定容法にて、CO2とO2の吸着量を求めた。
試験条件、結果は以下の通りであった。
試験条件
温度:25℃
圧力:100kPa
吸着試験結果
アミン修飾メソポーラスシリカ
CO2:1.67mmol/g
O2:0.40mmol/g
DDR型ゼオライト
CO2:1.26mmol/g
O2:0.13mmol/g
X型ゼオライト
CO2:1.98mmol/g
O2:0.37mmol/g
【0060】
<吸着試験2>
続いて、湿度10%の空気に24時間暴露したアミン修飾メソポーラスシリカ粉末、DDR型ゼオライト粉末、X型ゼオライト粉末について、吸着量測定前に真空脱気を行わなかった以外は吸着試験1と同様にして、CO2の吸着量を求めた。
試験結果は以下の通りであった。
アミン修飾メソポーラスシリカ
CO2:1.06mmol/g
DDR型ゼオライト
CO2:0.89mmol/g
X型ゼオライト
CO2:0.07mmol/g
【0061】
上記吸着試験1の結果が示すように、O2に対してCO2が選択的に吸着された。従って、メソポーラス材料またはゼオライトを、本発明の金属−空気電池システムに使用した場合には、特に、CO2が除去された空気を空気極に供給することができ、金属−空気電池システムの運転性能が向上する。また、上記吸着試験2の結果より、X型ゼオライトよりもSi/Al比が大きいDDR型ゼオライトの方が、空気中の水蒸気の影響を受けづらいことが分かった。
【符号の説明】
【0062】
1 筐体
2 金属−空気電池
3、3’ 中間層
4 空気極
5 CO2選択吸収部材
6 CO2吸収部
7 外気供給部
8 精製空気供給部
9 再生用流体供給部
10 再生機構
12 外気遮断機構
14 精製空気遮断機構
16 再生用流体導入機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体、及び前記筐体内に収容され、空気極と負極と電解質とを有する充放電部を備えた金属−空気電池と、
O2に対してCO2を選択的に吸収するCO2選択吸収部材を有するCO2吸収部と、
前記CO2吸収部に外気を供給する外気供給部と、
前記CO2選択吸収部材によってCO2を吸収除去した精製空気を前記空気極に供給する精製空気供給部と、
前記CO2選択吸収部材を再生する再生機構と
を有する金属−空気電池システム。
【請求項2】
放電中でなく且つ前記CO2選択吸収部材の再生中でない場合に、前記CO2選択吸収部材と外気との接触を絶つ外気遮断機構を、前記外気供給部に有する、請求項1記載の金属−空気電池システム。
【請求項3】
前記CO2選択吸収部材の再生を行うときに、前記空気極と前記精製空気との接触を絶つ精製空気遮断機構を、前記精製空気供給部に有する、請求項1又は2記載の金属−空気電池システム。
【請求項4】
前記CO2選択吸収部材がメソポーラス材料または/及びゼオライトを含む、請求項1〜3の何れか1項に記載の金属−空気電池システム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の金属−空気電池システムの運転方法であって、
前記CO2選択吸収部材によってCO2を吸収した空気を前記空気極に供給して放電する放電ステップと、
前記CO2選択吸収部材の再生処理を行う再生ステップと
を含む金属−空気電池システムの運転方法。
【請求項6】
さらに充電ステップを含み、前記再生ステップを前記充電ステップ時に行う、請求項5記載の金属−空気電池システムの運転方法。
【請求項7】
放電中でなく、かつ前記CO2選択吸収部材の再生処理中でない場合に、前記CO2選択吸収部材と外気との接触を絶つ休止ステップを含む、請求項5又は6記載の金属−空気電池システムの運転方法。
【請求項8】
前記再生ステップにおいて前記CO2選択吸収部材の再生処理を行うときに、前記空気極と前記精製空気との接触を絶つ、請求項5〜7の何れか1項に記載の金属−空気電池システムの運転方法。
【請求項1】
筐体、及び前記筐体内に収容され、空気極と負極と電解質とを有する充放電部を備えた金属−空気電池と、
O2に対してCO2を選択的に吸収するCO2選択吸収部材を有するCO2吸収部と、
前記CO2吸収部に外気を供給する外気供給部と、
前記CO2選択吸収部材によってCO2を吸収除去した精製空気を前記空気極に供給する精製空気供給部と、
前記CO2選択吸収部材を再生する再生機構と
を有する金属−空気電池システム。
【請求項2】
放電中でなく且つ前記CO2選択吸収部材の再生中でない場合に、前記CO2選択吸収部材と外気との接触を絶つ外気遮断機構を、前記外気供給部に有する、請求項1記載の金属−空気電池システム。
【請求項3】
前記CO2選択吸収部材の再生を行うときに、前記空気極と前記精製空気との接触を絶つ精製空気遮断機構を、前記精製空気供給部に有する、請求項1又は2記載の金属−空気電池システム。
【請求項4】
前記CO2選択吸収部材がメソポーラス材料または/及びゼオライトを含む、請求項1〜3の何れか1項に記載の金属−空気電池システム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の金属−空気電池システムの運転方法であって、
前記CO2選択吸収部材によってCO2を吸収した空気を前記空気極に供給して放電する放電ステップと、
前記CO2選択吸収部材の再生処理を行う再生ステップと
を含む金属−空気電池システムの運転方法。
【請求項6】
さらに充電ステップを含み、前記再生ステップを前記充電ステップ時に行う、請求項5記載の金属−空気電池システムの運転方法。
【請求項7】
放電中でなく、かつ前記CO2選択吸収部材の再生処理中でない場合に、前記CO2選択吸収部材と外気との接触を絶つ休止ステップを含む、請求項5又は6記載の金属−空気電池システムの運転方法。
【請求項8】
前記再生ステップにおいて前記CO2選択吸収部材の再生処理を行うときに、前記空気極と前記精製空気との接触を絶つ、請求項5〜7の何れか1項に記載の金属−空気電池システムの運転方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−98174(P2013−98174A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−222772(P2012−222772)
【出願日】平成24年10月5日(2012.10.5)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月5日(2012.10.5)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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