説明

COD・TOC・色素成分含有液の処理装置および処理方法

【課題】COD成分、TOC成分および色素成分の1種以上を含有する液体を効果的に処理して、COD濃度、TOC濃度、色素成分濃度が低い処理水を得ることができるとともに、装置の設置コスト、ランニングコストを低下させることができる処理装置および方法を提供する。
【解決手段】COD・TOC・色素成分含有液12が貯留される取込槽14と、軽石からなる粒状体を生物担体として上記液体の生物処理を行う第1処理槽16と、珪藻土からなる粒状体を生物担体として第1処理槽の処理水の生物処理を行う第2処理槽18と、不織布を濾材として第2処理槽の処理水の濾過処理を行う第3処理槽20と、第3処理槽の処理水を取込槽に返送する循環機構22とを具備する処理装置を用いる。そして、循環機構により第3処理槽の処理水を取込槽に5〜15回返送しつつ、第1〜第3処理槽で上記液体の処理を行った後、第3処理槽の処理水を放流する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、澱粉含有排水、ポリビニルアルコール・色素含有印刷廃液、蛋白質含有洗米排水といったCOD成分、TOC成分および色素成分の1種以上を含有する液体の処理装置および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、麺類の茹で汁や洗浄水の処理技術として、特許文献1の濾過処理方法が提案されている。特許文献1の濾過処理方法は、製麺した麺を茹でる工程と、その後、冷水で洗浄する工程を有する食用麺の製造工程で生じる排水の濾過処理方法であって、麺の茹で工程で生じる茹で汁および/または麺を冷水で洗浄する工程で生じる洗浄排水をダイナミック濾過処理した後、さらに限外濾過処理するものである(請求項1、3)。
【0003】
ところで、現在、香川県では、うどん店の排水が問題となっている。うどん店の排水とは、うどんの茹で汁、洗浄水、温め用水などである。このうどん店の排水は、他の飲食店や食料品製造業の排水よりもCOD(化学的酸素要求量)濃度やTOC(全有機炭素)濃度が高く、家庭からの未処理の排水と比較すると、COD濃度が約10倍に、合併処理浄化槽が設置されている家庭からの排水と比較すると、COD濃度が約30倍になる。具体的には、通常、うどんの茹で汁はCOD濃度が1300〜11000mg/L、洗浄水はCOD濃度が100〜200mg/L、温め用水はCOD濃度が50〜1300mg/Lである。
【0004】
香川県では、下水道の普及率が低いため、多くのうどん店、特に郊外にある多くの小規模うどん店は排水をそのまま河川に流しており、上記排水が河川、池、海などの水質を悪化させる原因となっている。そのため、河川、池、海などの水質保全対策として、うどん店において個別に排水を処理して、排水中のCOD濃度およびTOC濃度を低下させることが要望されている。
【0005】
また、印刷機には、ポリビニルアルコールと色素成分を含む廃液を排出するものがあるが、このようなポリビニルアルコール・色素含有印刷廃液といったCOD成分、TOC成分に加えて色素成分を含有する廃液では、色素成分を分解して無色の処理液を得ることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−126156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の濾過処理方法は、ダイナミック濾過処理と限外濾過処理とを併用するため、装置の設置コスト、ランニングコストが高くなるものであった。また、色素成分を含有する液体を低コストで処理して色素を分解する方法が要望されていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、上述したうどんの茹で汁などの澱粉含有排水、ポリビニルアルコール・色素含有印刷廃液や、蛋白質含有洗米排水のようなCOD成分、TOC成分および色素成分の1種以上を含有する液体を効果的に処理して、COD濃度、TOC濃度および色素成分濃度が低い処理水を得ることができるとともに、装置の設置コスト、ランニングコストを低下させることができる処理装置および処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するため、
COD・TOC・色素成分含有液が貯留される取込槽と、
前記取込槽の液体が導入され、前記液体への曝気を行いつつ、軽石からなる粒状体を生物担体として前記液体の生物処理を行う第1処理槽と、
前記第1処理槽の処理水が導入され、前記第1処理槽の処理水への曝気を行いつつ、珪藻土からなる粒状体を生物担体として前記第1処理槽の処理水の生物処理を行う第2処理槽と、
前記第2処理槽の処理水が導入され、不織布を濾材として前記第2処理槽の処理水の濾過処理を行う第3処理槽と、
前記第3処理槽の処理水を前記取込槽に返送する循環機構と
を具備することを特徴とするCOD・TOC・色素成分含有液処理装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、
COD・TOC・色素成分含有液が貯留される取込槽と、
前記取込槽の液体が導入され、前記液体への曝気を行いつつ、軽石からなる粒状体を生物担体として前記液体の生物処理を行う第1処理槽と、
前記第1処理槽の処理水が導入され、前記第1処理槽の処理水への曝気を行いつつ、珪藻土からなる粒状体を生物担体として前記第1処理槽の処理水の生物処理を行う第2処理槽と、
前記第2処理槽の処理水が導入され、不織布を濾材として前記第2処理槽の処理水の濾過処理を行う第3処理槽と、
前記第3処理槽の処理水を前記取込槽に返送する循環機構と
を具備するCOD・TOC・色素成分含有液処理装置を用い、
前記循環機構により前記第3処理槽の処理水を前記取込槽に1日に5〜15回返送しつつ、前記第1処理槽、第2処理槽および第3処理槽により前記COD・TOC・色素成分含有液の処理を行った後、前記第3処理槽の処理水を放流することを特徴とするCOD・TOC・色素成分含有液処理方法を提供する。
【0011】
本発明において、COD・TOC・色素成分含有液とは、COD成分、TOC成分および色素成分から選ばれる1種または2種以上の成分を含む液体をいう。COD成分とは、COD(化学的酸素要求量)として検出される成分をいい、TOC成分とは、TOC(全有機炭素)として検出される成分をいう。COD成分およびTOC成分としては、例えば、澱粉、ポリビニルアルコール、蛋白質等の種々の有機物を挙げることができる。また、色素成分としては、例えば、カラー印刷機用インキに含まれる種々の色素成分を挙げることができる。
【0012】
本発明では、まず、第1処理槽において、軽石からなる粒状体を生物担体としてCOD・TOC・色素成分含有液(原液)の生物処理を行う。上記軽石からなる粒状体では、粒状体の外側部分で好気的生物処理が行われ、粒状体の内側部分で嫌気的生物処理が行われる。本発明では、次に、第2処理槽において、珪藻土からなる粒状体を生物担体として第1処理槽の処理水の生物処理を行う。この場合、珪藻土からなる粒状体では、粒状体の外側部分および内側部分の両方で好気的生物処理が行われる。また、特に処理開始初期に珪藻土からなる粒状体から珪藻土が流出し、この珪藻土が第3処理槽の濾材の表面に付着する。本発明では、さらに、第3処理槽において、不織布を濾材として第2処理槽の処理水の濾過処理を行う。この場合、上述したように、濾材の表面には珪藻土が付着しているので、この珪藻土の作用により濾材の濾過性能が向上し、濾過処理が効率的に行われる。
【0013】
本発明では、第1の生物処理、第2の生物処理および濾過処理を順次行う上記処理装置を用いるとともに、循環機構により第3処理槽の処理水を取込槽に5〜15回返送しつつ、第1処理槽、第2処理槽および第3処理槽によりCOD・TOC・色素成分含有液の処理を行うことにより、COD成分、TOC成分、を高濃度で含有する液体や、さらに色素成分を含有する液体を効果的に処理して、COD濃度、TOC濃度および色素成分濃度が低い処理水を得ることができる。
【0014】
本発明において、生物処理に用いる微生物の処理装置における添加箇所に限定はなく、第1処理槽の手前において液中に添加してもよく、第1処理槽において液中に添加してもよく、第1処理槽および第2処理槽の両方において液中に添加してもよよい。
【0015】
本発明において、取込槽に貯留されるCOD・TOC・色素成分含有液としては、例えば、うどん店におけるうどんの茹で汁などの澱粉含有排水、ポリビニルアルコール・色素含有印刷廃液、蛋白質含有洗米排水などが挙げられる。ポリビニルアルコール・色素含有印刷廃液とは、現像液を使用する印刷機から排出される現像液廃液である。蛋白質含有洗米排水とは、水洗い式による無洗米の製造時に生じる原料米の洗浄水排水である。
【0016】
本発明において、うどんの茹で汁の生物処理を行う場合、微生物として、うどんの茹で汁から採取して培養した複数種の菌体から選別した、澱粉処理能力に優れた1種または2種以上のものを用いることが好ましく、これにより澱粉を効果的に分解することが可能となる。また、本発明において、ポリビニルアルコール・色素含有印刷廃液の処理を行う場合、生物処理に使用する微生物の一部または全部に納豆菌を用いることが好ましく、これにより色素を効果的に分解することが可能となる。さらに、本発明において、生物処理に使用する微生物の一部に乳酸菌を用いることにより、微生物の活性化・長寿命化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るCOD・TOC・色素成分含有液処理装置および処理方法によれば、COD成分、TOC成分および色素成分の1種以上を含有する液体を効果的に処理して、COD濃度、TOC濃度および色素成分濃度が低い処理水を得ることができるとともに、装置の設置コスト、ランニングコストを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るCOD・TOC・色素成分含有液処理装置の一実施形態を示すフロー図である。
【図2】図1の処理装置の第1処理槽および第2処理槽を示す概略断面図である。
【図3】図1の処理装置の第3処理槽を示す概略断面図である。
【図4】第2処理槽の一例を示す概略断面図である。
【図5】実施例1の結果を示す水質検査成績書の写しである。
【図6】実施例1の結果を示す水質検査成績書の写しである。
【図7】比較例1の結果を示す水質検査成績書の写しである。
【図8】実施例2における試料水のCOD濃度を示す計量証明書の写しである。
【図9】実施例2の結果を示す計量証明書の写しである。
【図10】実施例3における試料水のCOD濃度を示す成分分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明につき図面を参照して詳しく説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1は本発明に係るCOD・TOC・色素成分含有液処理装置の一実施形態を示すフロー図、図2は同装置の第1処理槽および第2処理槽を示す概略断面図、図3は同装置の第3処理槽を示す概略断面図である。本例の処理装置は、主に、うどん店のうどんの茹で汁(澱粉含有排水)の処理装置として使用される。
【0021】
本例の処理装置10は、うどん店の茹で釜からの茹で汁12が貯留される取込槽14と、取込槽14のうどんの茹で汁12が導入される第1処理槽16と、第1処理槽16の処理水が導入される第2処理槽18と、第2処理槽18の処理水が導入される第3処理槽20と、第3処理槽20の処理水を取込槽14に返送する循環機構22と、第1処理槽16、第2処理槽18および第3処理槽20の曝気を行う曝気機構24と、第1処理槽16、第2処理槽18および第3処理槽20の逆洗を行う逆洗機構25とを具備する。
【0022】
また、図1において、26は取込槽14のうどんの茹で汁12を第1処理槽16に導入する第1導入管、28は第1導入管26に介装された第1導入ポンプ、30は第1処理槽16の処理水を第2処理槽18に導入する第2導入管、32は第2導入管30に介装された第2導入ポンプ、34は第2処理槽18の処理水を第3処理槽20に導入する第3導入管、36は第3導入管34に介装された第3導入ポンプ、38は第3処理槽20の処理水を取込槽14に返送する返送管、40は返送管38に介装された返送ポンプを示す。本例では、返送管38と返送ポンプ40によって循環機構22が構成されている。また、第1導入ポンプ28には温水用吐出圧一定のポンプが使用され、第2導入ポンプ32、第3導入ポンプ36および返送ポンプ40には自吸カスケードポンプが使用されている。
【0023】
曝気機構24は、エアポンプ27と、このエアポンプ27に接続された第1〜第3曝気管(後述)とからなる。逆洗機構25は、逆洗水導入管29と、この逆洗水導入管29に接続された第1〜第3逆洗管(後述)とからなる。逆洗水導入管29は、例えば逆洗水タンク、水道蛇口等の逆洗水供給源に接続されている。
【0024】
第1処理槽16は、図2に示すように、ポリ塩化ビニルからなる円筒状の外管42と、外管42内に同心状に配設されたポリ塩化ビニルからなる円筒状の内管44とを具備する。外管42の上部には第1導入管26が接続され、この第1導入管26には、先端にノズル48が取り付けられた散水管46が連結されており、ノズル48は内管44の開口部の上方に位置している。外管42の下部には、第2導入管30が接続されている。なお、外管42の上端開口部および下端開口部は、円形の閉塞板50、52により閉塞されている。
【0025】
外管42の底部には、傾斜したポリ塩化ビニルからなる円板状の底板54が設置され、底板54上に曝気機構24の第1曝気管56が配置されている。内管44の上部および下部には、ポリ塩化ビニルからなる通水孔が形成された円板状の仕切り板58、60が設置され、かつ、内管44の周壁部下部には小径の多数の通水孔62が形成されているとともに、上記仕切り板58、60の間に、軽石からなる球形の粒状体64が充填されている。なお、図2では、一部の通水孔62、一部の粒状体64のみを図示してある。さらに、内管44内には、逆洗機構25の第1逆洗管66が上部から挿入され、第1逆洗管66の先端は内管44の下部まで伸びている。
【0026】
上述した軽石からなる粒状体64としては、例えば、火山岩の1種である日向石を用いることができる。粒状体64の平均粒径は15〜30mm、細孔径は1〜15μmであることが適当である。粒状体64には、微細な孔が無数に形成されており、外側部分には曝気の効果により好気性菌が繁殖し、内側部分には嫌気性菌が繁殖している。そのため、担体中に好気性菌および嫌気性菌の両方が繁殖し、両者の相乗効果が得られ、澱粉の除去、特に茹でた澱粉の除去に卓効を表す。
【0027】
第2処理槽18は、第1処理槽16と同じ装置構成のものである。図2において、第1処理槽16と第2処理槽18とで共通する部分には、同一の参照符号を付してその説明を省略し、第1処理槽16と第2処理槽18とで異なる部分には、2つの参照符号を付す。
【0028】
第2処理槽18は、図2に示すように、第1処理槽16と同じ外管42および内管44を具備する。外管42の上部には第2導入管30が接続され、この第2導入管30には、第1処理槽16と同じ散水管46が連結されている。外管42の下部には、第3導入管34が接続されている。
【0029】
外管42の底部には、第1処理槽16と同じ底板54が設置され、底板54上に曝気機構24の第2曝気管68が配置されている。また、内管44の仕切り板58、60の間には、珪藻土からなる球形の粒状体70が充填されている。なお、図2では、一部の粒状体70のみを図示してある。さらに、内管44内には、逆洗機構25の第2逆洗管72が上部から挿入され、第2逆洗管72の先端は内管44の下部まで伸びている。
【0030】
珪藻土からなる粒状体70としては、例えば、珪藻土をバインダなどによって固めたものを用いることができる。粒状体70の平均粒径は2〜15mm、細孔径は1〜5μmであることが適当である。粒状体70では、曝気の効果により表面および内部全体に好気性菌が繁殖しており、良好な好気性生物処理が行われる。また、珪藻土には濁りを吸着して除去する性質があるので、清澄な処理水を得ることができる。
【0031】
第1処理槽16および第2処理槽18では、被処理水は、ノズル48から内管44内に放出され、内管44内で粒状体64、70を生物担体として生物処理が行われた後、内管44内から外管42内に流出し、第2、3導入管30、34から排出される。
【0032】
第3処理槽20は、図3に示すように、ポリ塩化ビニルまたはステンレス鋼製金網からなる円筒状の外管74と、外管74内に同心状に配設されたポリ塩化ビニルからなる円筒状の内管76とを具備する。外管74の上部には第3導入管34が接続され、第3導入管34の端部は外管74と内管76との間の上下方向中間部近傍に延びている。また、外管74の上部には返送管38が接続され、この返送管38の端部は内管74内の下部に延びている。さらに、外管74の下部には、ドレンの排出管80が接続され、排出管80には開閉弁82が介装されている。なお、外管74の上端開口部および下端開口部は、円形の閉塞板84、86により閉塞されている。
【0033】
外管74の底部には、傾斜したポリ塩化ビニルからなる円板状の底板88が設置され、底板88上に曝気機構24の第3曝気管90が配置されている。また、内管76の周壁部には、多数の通水孔が形成されているとともに、内管76の外周面には、不織布からなる濾材92が巻き付けられている。さらに、内管76の下部には、ポリ塩化ビニルからなる円板状の仕切り板94が設置されている。また、内管76内には、逆洗機構25の第3逆洗管96が上部から挿入され、第3逆洗管96の先端は内管76の下部まで伸びている。
【0034】
不織布からなる濾材92としては、例えば、紙からなり、秤量220〜320g/m、厚さ0.5〜0.6mm、平均穴径値1.2〜2.2μm、透気度140〜220sec、破裂強度360〜460kPa、ポアサイズ8〜13μm、細孔径0.7〜4μmのものを好適に用いることができる。濾材92は、不織布からなるため、水中の濁りを効果的に除去して、清澄な処理水を得ることができる。また、第2処理槽18の粒状体70の使用時、特に使用開始初期に、粒状体70から珪藻土が流出し、珪藻土が濾材92の表面に付着するため、この表面に付着した珪藻土の作用により濾材92の濾過性能が向上し、効率的な濾過処理を行うことができる。
【0035】
第3処理槽20では、被処理水は、第3導入管34から外管74と内管76との間に放出され、濾材92を通過して内管44内に流入した後、返送管38により取込槽14に返送される。また、最終的な第3処理槽20の処理水は、開閉弁82を開いて排出管80から排出される。
【0036】
なお、図示していないが、本例の処理装置10には、運転制御盤および各処理槽の液面検出機構が設置されている。そして、上記液面検出機構で各処理槽の液面を常時検出し、電源を切らない限り、取込槽14から第1処理槽16、第2処理槽18、第3処理槽20へ、また、第3処理槽20から取込槽14へと、被処理水を順次循環して処理するようになっている。
【0037】
本例の処理装置10によってうどん店のうどんの茹で汁を処理する場合、取込槽14でうどんの茹で汁を冷却した後、この茹で汁を第1処理槽、第2処理槽および第3処理槽で順次処理する。そして、循環機構により第3処理槽の処理水を取込槽に5〜15回返送しつつ、第1処理槽、第2処理槽および第3処理槽により排水の処理を繰り返す。これにより、COD濃度やTOC濃度が低い清澄な処理水を得ることができる。この処理水は、問題なく河川などに放流することができる。本例の処理装置10は、小規模のうどん店が経済的に無理なく導入することができるものである。
【0038】
本発明のCOD・TOC・色素成分含有液処理装置は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、下記のような構成とすることができる。
(1)第1処理槽16の内管44を、軽石からなる粒状体64を予め充填したカートリッジ式のものとし、必要に応じ内管44を取り外して交換できるようにする。
(2)第2処理槽18の内管44を、珪藻土からなる粒状体70を予め充填したカートリッジ式のものとし、必要に応じ内管44を取り外して交換できるようにする。
(3)第3処理槽20の内管76を、不織布からなる濾材92を予め巻き付けたカートリッジ式のものとし、必要に応じ内管76を取り外して交換できるようにする。
(4)第2処理槽18の内管44内に、図4に示すように、高さ方向中間部に複数(本例では6枚)の金網100を適宜間隔離間させて設置し、上下の金網100間に珪藻土からなる粒状体70を充填するとともに、粒状体70を充填していな金網100間や仕切り板58、60と金網100との間に網状接触材(流動床担体)102を充填することができ、これにより珪藻土からなる粒状体70の流動性を確保することができる。すなわち、珪藻土からなる粒状体70は、互いにくっついて動かなくなることがあるが、上記構成によればこのような不都合を防止することができる。上記網状接触材としては、例えば、関西化工株式会社製バイオフロンティア(商品名)を用いることができる。
(5)第1処理槽16、第2処理槽18、第3処理槽20内の被処理水は、処理槽内で泡立つことがある。このような場合は、適宜箇所で被処理水に消泡剤を添加することができる。上記消泡剤としては、シリコーン系消泡剤を好適に使用することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
図1に示した処理装置を用い、下記試料水1、2の処理を行った。この場合、第1処理槽の手前において、試料水4に澱粉を分解する能力を有する菌体を添加した。この菌体は、うどんの茹で汁から採取して培養した複数種の菌体から選別したものである。また、循環機構により第3処理槽の処理水を取込槽に10回返送しつつ、処理を行った。その結果、試料水1の第3処理槽の最終処理水のTOC濃度は13mg/L(図5参照)、試料水2の第3処理槽の最終処理水のTOC濃度は39mg/L(図6参照)であった。上記数値は、香川県条例の定める処理排水の基準値であるTOC濃度260mg/Lを大きく下回るものであり、これにより、本発明に係る処理装置の効果が確認された。
・試料水1:上原製麺所(香川県坂出市)のうどんの茹で汁。
・試料水2:試料水1とは別の日に採取した上原製麺所のうどんの茹で汁。
【0041】
(比較例1)
図1に示した処理装置の第3処理槽を用い、不織布からなる濾材のみによって下記試料水3の濾過処理を行った。この場合、第3処理槽の濾材に試料水3を2回通水した。その結果、試料水3の第3処理槽の最終処理水のTOC濃度は2400mg/l(図7参照)であった。
・試料水3:試料水1、2とは別の日に採取した上原製麺所のうどんの茹で汁。
【0042】
(実施例2)
図1に示した処理装置を用い、下記試料水4(COD濃度10400mg/L、図8参照)の処理を行った。この場合、第1処理槽の手前において、試料水4にポリビニルアルコールの分解酵素であるポリビニルアルコールデヒドロゲナーゼを生産する能力を有する菌体を添加した。この菌体は、特許第3489848号の請求項3に開示された下記のものである。また、循環機構により第3処理槽の処理水を取込槽に10回返送しつつ、処理を行った。その結果、試料水4の第3処理槽の最終処理水のCOD濃度は3190mg/L(図9参照)であった。これにより、本発明に係る処理装置の効果が確認された。
・試料水4:ポリビニルアルコール・色素含有印刷廃液。この印刷廃液は、三菱製紙株式会社製印刷機から排出された現像液廃液であり、アクリル化合物、有機ホウ素化合物、感光性樹脂、トリアジン化合物、シランカップリング剤、フタロシアニンブルー、ポリビニルアルコール等を含み、ポリビニルアルコールの濃度は0.9〜2.0%である。
・菌体:次の菌学的性質を有する特定のポリビニルアルコールデヒドロゲナーゼを生産する能力を有するシュードモナス・エスピー(Pseudomonassp.)。
I.形態的所見
(1)細胞の形態:桿菌、(2)鞭毛:有、(3)胞子:無、(4)グラム染色性:陰性II.生育状態
(1)肉汁寒天平板培養
a.形状:正円形、b.隆起:凸円状
(2)肉汁寒天斜面培養a.発育の良否:適度、b.表面:潤滑、c.生育形状:正円、d.色調:クリーム色
(3)肉汁液体培養の濁度:適度
(4)ゼラチンの液化:液化せず
III.生理学的性質[+はその性質またはその生成ありを意味し、−はその性質またはその生成なしを意味する]
(1)カタラーゼ:+、(2)オキシダーゼ:+、(3)O−Fテスト:酸化的、(4)クエン酸塩の利用:−、(5)VP反応:+、(6)MR反応:−、(7)エスクリンの加水分解:+、(8)硝酸塩の還元:+、(9)アルギニンの加水分解:−、(10)ウレアーゼの活性:−、(11)硫化水素の産生:−、(12)でんぷんの加水分解:−IV.糖類からの酸の産生[ヒュー・アンド・ライフソン培地の炭素源をそれぞれ糖類(1)〜(6)と代えた培地での菌による糖類からの酸の生成を観察したものであり、+は酸の生成ありを意味し、−は酸の生成なしを意味する]
(1)D−グルコース:+、(2)ラクトース:−、(3)マルトース:+、(4)D−マンニット:−、(5)サッカロース:−、(6)D−キシロース:−
【0043】
(実施例3)
実施例2において、第1処理槽および第2処理槽に市販の粉末納豆菌をそれぞれ1.5g添加した。その結果、試料水4の第3処理槽の最終処理水のCOD濃度は実施例2と同様に3190mg/L(図9参照)であった。また、この処理水は色素がほぼ完全に分解され、無色透明であった。
【0044】
(実施例4)
図1に示した処理装置を用い、下記試料水5(COD濃度47000mg/L、図10参照)の処理を行った。この場合、第1処理槽の手前において、試料水5に市販の粉末納豆菌を添加した。また、循環機構により第3処理槽の処理水を取込槽に10回返送しつつ、処理を行った。その結果、試料水4の第3処理槽の最終処理水のCOD濃度は3260mg/L(研究途上における自社分析の結果)であった。これにより、本発明に係る処理装置の効果が確認された。
・試料水5:蛋白質含有洗米排水。この洗米排水は、粗蛋白質、粗脂肪、粗繊維、粗灰分、可溶無窒素物等を含み、粗蛋白質の濃度は1.7%である。
【符号の説明】
【0045】
10 COD・TOC・色素成分含有液処理装置
12 COD・TOC・色素成分含有液
14 取込槽
16 第1処理槽
18 第2処理槽
20 第3処理槽3
22 循環機構
24 曝気機構
26 第1導入管
28 第1導入ポンプ
30 第2導入管
32 第2導入ポンプ
34 第3導入管
36 第3導入ポンプ
38 返送管
40 返送ポンプ
27 エアポンプ
56 第1曝気管
64 軽石からなる粒状体
68 第2曝気管
70 珪藻土からなる粒状体
92 不織布からなる濾材
100 金網
102 網状接触材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
COD・TOC・色素成分含有液が貯留される取込槽と、
前記取込槽の液体が導入され、前記液体への曝気を行いつつ、軽石からなる粒状体を生物担体として前記液体の生物処理を行う第1処理槽と、
前記第1処理槽の処理水が導入され、前記第1処理槽の処理水への曝気を行いつつ、珪藻土からなる粒状体を生物担体として前記第1処理槽の処理水の生物処理を行う第2処理槽と、
前記第2処理槽の処理水が導入され、不織布を濾材として前記第2処理槽の処理水の濾過処理を行う第3処理槽と、
前記第3処理槽の処理水を前記取込槽に返送する循環機構と
を具備することを特徴とするCOD・TOC・色素成分含有液処理装置。
【請求項2】
前記軽石からなる粒状体の平均粒径は15〜30mm、細孔径は1〜15μmであり、前記珪藻土からなる粒状体の平均粒径は2〜15mm、細孔径は1〜5μmであり、前記不織布の細孔径は0.7〜4μmであることを特徴とする請求項1に記載のCOD・TOC・色素成分含有液処理装置。
【請求項3】
COD・TOC・色素成分含有液が貯留される取込槽と、
前記取込槽の液体が導入され、前記液体への曝気を行いつつ、軽石からなる粒状体を生物担体として前記液体の生物処理を行う第1処理槽と、
前記第1処理槽の処理水が導入され、前記第1処理槽の処理水への曝気を行いつつ、珪藻土からなる粒状体を生物担体として前記第1処理槽の処理水の生物処理を行う第2処理槽と、
前記第2処理槽の処理水が導入され、不織布を濾材として前記第2処理槽の処理水の濾過処理を行う第3処理槽と、
前記第3処理槽の処理水を前記取込槽に返送する循環機構と
を具備するCOD・TOC・色素成分含有液処理装置を用い、
前記循環機構により前記第3処理槽の処理水を前記取込槽に1日に5〜15回返送しつつ、前記第1処理槽、第2処理槽および第3処理槽により前記COD・TOC・色素成分含有液の処理を行った後、前記第3処理槽の処理水を放流することを特徴とするCOD・TOC・色素成分含有液処理方法。
【請求項4】
前記軽石からなる粒状体の平均粒径は15〜30mm、細孔径は1〜15μmであり、前記珪藻土からなる粒状体の平均粒径は2〜15mm、細孔径は1〜5μmであり、前記不織布の細孔径は0.7〜4μmであることを特徴とする請求項3に記載のCOD・TOC・色素成分含有液処理方法。
【請求項5】
前記取込槽に貯留されるCOD・TOC・色素成分含有液は、澱粉含有排水、ポリビニルアルコール・色素含有印刷廃液または蛋白質含有洗米排水であることを特徴とする請求項3または4に記載のCOD・TOC成分含有液処理方法。
【請求項6】
前記澱粉含有排水は、うどん店におけるうどんの茹で汁であり、生物処理に用いる微生物は、うどんの茹で汁から採取して培養した複数種の菌体から選別した、澱粉処理能力に優れた1種または2種以上のものであることを特徴とする請求項5に記載のCOD・TOC・色素成分含有液処理方法。
【請求項7】
前記取込槽に貯留されるCOD・TOC・色素成分含有液は、ポリビニルアルコール・色素含有印刷廃液であり、生物処理に用いる微生物の一部または全部は、納豆菌であることを特徴とする請求項5に記載のCOD・TOC・色素成分含有液処理方法。
【請求項8】
生物処理に使用する微生物の一部に乳酸菌を用いることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載のCOD・TOC・色素成分含有液処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−143739(P2012−143739A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78105(P2011−78105)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(510110471)南海化工株式会社 (2)
【Fターム(参考)】