説明

COF2の製造方法及び装置

【課題】安全且つ低コスト、そして簡便な装置又は設備で、高純度のCOFを製造する。
【解決手段】COと炭素とを高温接触させて得られた生成ガスと、Fを含むガスとを接触させ、COFを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COF(フッ化カルボニル)の製造方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
COFの合成法としては、下記のように幾つかの方法が提案されている。
【0003】
例えば、ホスゲンをフッ化水素、三フッ化アンチモン等のフッ素化剤と反応させ、塩素原子をフッ素原子にハロゲン置換する方法があるが(特許文献1)、毒性の強いホスゲンを原料として使用するため危険性が高く、また生成するCOFと共に多量のHClをはじめとした多種類の副生成物も生成する。よって、高純度のCOFを得るためには精製を繰り返し行う必要がある。
【0004】
また、CO(一酸化炭素)とF(フッ素)ガスとを直接反応させて高純度のCOFを製造する方法も知られている(特許文献2)。しかし、原料となるCOが高価であり、また大量のCOFを製造する場合には、毒性が強く、可燃性を有するCOを大量に保管及び取り扱いをする必要があり、やはり危険性が高いという問題点がある。
【0005】
また一方、原料に安全性の高いCO(二酸化炭素)を用いFガスと反応させる方法も報告されているが(特許文献3)、収率が50%以下と低いため、工業生産の面で効率が悪く、また未反応のCOを除去する必要がある。
【特許文献1】特開昭54−158396号公報
【特許文献2】特開2004−277215号公報
【特許文献3】特開平11−116216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来の方法による問題点を解決し、安全且つ低コスト、そして簡便な装置又は設備で、高純度のCOFを製造する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を解決すべく鋭意検討を進めた結果、COと炭素とを高温接触させて得られた生成ガスと、Fを含むガスとを接触させることにより、安全且つ低コストで高純度のCOFを製造できることを見出した。
【0008】
即ち本発明は、COと炭素とを高温接触させて得られた生成ガスと、Fを含むガスとを接触させることを特徴とするCOFの製造方法である。ここで、COと炭素とを高温接触させて生成ガスを得る具体的手段としては、COと高温加熱した炭素とを接触させる方法が特に好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、取り扱いが容易で安価なCOと炭素とを高温接触させることでCOを生成させ、更にその生成ガスとFを含むガスとを直接反応させることによって連続的にCOFを製造する方法である。本発明によればCOと炭素とを適宜供給することにより、必要な時に必要な量のCOを高純度で得ることができるので、毒性の強いCOを予め大量に準備・保管する必要がない。また、その高純度のCOにFガスを連続的に反応させることにより、高純度のCOFを連続的に且つ容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、COと炭素とを高温接触させて得られた生成ガスと、Fを含むガスとを接触させることによりCOFを製造する方法であり、より具体的には、第1の反応ゾーンで、COと高温加熱した炭素とを接触させることによってCOを発生させ、その生成ガスを第2の反応ゾーンへ導き、そこにFを含むガスを流通させて、COとFとを接触させ、直接フッ素化反応を行うことにより、高純度のCOFを製造するというものである。
【0011】
本発明において、COと反応させる炭素としては特に制限はないが、活性炭、コークス、炭、木炭及びカーボンブラックから選択される少なくとも1種の材料を使用することが好ましい。例えば、活性炭を単独で使用することもでき、また、活性炭とカーボンブラックとを組み合わせて使用してもよい。また、使用する炭素材料の形状や大きさには特に制限はないが、COが気体であり、炭素が固体であるので、これらが効率良く接触できるようなものであればよい。特には、粒状、顆粒状、粉末状のものが好ましい。また、炭素の比表面積としては500〜2500m/gの範囲、平均粒子径としては0.1〜10mm(球状の場合は、その直径に相当)の範囲のものが好ましい。
【0012】
本発明において、COと炭素とを高温接触させる際の環境温度は800〜1100℃、好ましくは900〜1000℃である。この温度が低すぎると収率が低下し、高すぎると容器の耐熱性に問題を生じたりするので好ましくない。高温接触させる際は、炭素を800〜1100℃、好ましくは900〜1000℃に高温加熱し、これにCOを接触させる手法が望ましい。
【0013】
本発明において、COと炭素とを接触させる際の反応系内の圧力に特に指定はないが、加圧であると生成したCOが漏洩する危険があり、逆に減圧であると空気を吸い込む可能性があるから、常圧下(大気圧下)で行うのが好ましい。
【0014】
本発明において、COと炭素とを接触させる反応時間は0.5〜30分間、特に0.5〜10分間が好ましい。この時間が短すぎると転化率が悪くなり、また長すぎると反応効率が悪くなるので好ましくない。
【0015】
本発明では、このようにしてCOと炭素とを高温接触させて得られた生成ガス(CO)と、Fを含むガスとを接触させ、COFを生成させる。
【0016】
生成ガス(CO)とFを含むガスを接触させるときの温度は0〜250℃であることが好ましい。
【0017】
また、この接触させる際の系内の圧力は50〜150kPaとすることが好ましい。このときの圧力が低すぎると反応が進行し難くなり、高すぎるとガス漏洩の危険性が生じる。特に好ましくは101〜140kPaである。
【0018】
また、この接触させる際の時間については特に制限はなく、それぞれを十分に接触、混合させることができる時間であればよい。
【0019】
を含むガスは100%のFであっても良いが、ネオン、アルゴン、キセノン等の希ガスや窒素等の不活性ガスを含むものであっても良く、また一方でCOFを含むものであっても良い。Fを含むガスが、不活性ガス、及び/又はCOFとの混合ガスである場合、Fの濃度としては5〜95%、特に30〜60%であることが好ましい。また、Fを含むガス中にはCOガスが含まれないように操作することが重要であり、第1の反応ゾーンからのCOガスが第2の反応ゾーン中に混入すると副生物の量が多くなる。
【0020】
本発明において、具体的な製造装置としては、図1に示すような2つの反応ゾーンからなるものが挙げられる。
【0021】
装置の材質としては、Fガスを使用すること、並びに高温で反応させることに対応できるものであれば適宜使用できる。COと炭素とを接触させる第1の反応ゾーンに設置する反応器の長さや大きさについては特に制限はないが、実験室よりやや大きめなところで安全に行いたい場合には、長さ0.2〜0.5m、容量0.005〜0.02m程度のものが好ましい。また一方で、Fガスと接触させる第2の反応ゾーンに設置する反応器の大きさとしては、同様な場合では、長さ0.3〜1m、容量0.003〜0.03m程度のものが好ましい。
【0022】
具体的な反応手順としては、まず第1の反応ゾーンの反応器に炭素材料を入れ、900〜1000℃に加熱する。その第1の反応器に、常圧下、原料のCOを0.5〜10分間の滞留時間で通過させ、接触させてCOを発生させる。その後、この生成したCOは貯蔵や精製といった操作を経ることなく、直ちに第2の反応ゾーンの反応器に導入する。また同時に、その第2の反応器中へ、不活性ガスを混合したFガスを流通させ、50〜150kPaの圧力下、0〜250℃で前記生成したCOと混合・反応させる。その後、第2の反応器から流出されるガスを分析し、捕集容器で捕集する。以上の方法によって、COFを製造することができる。また、この方法によれば、95%以上の高純度COFを得ることができる。
【0023】
更にまた、図2に示す装置を用い、上記第2の反応ゾーンで生成したCOFの一部又は全部を、再度第2の反応器に循環させ、導入されるFガスと共に第2の反応ゾーン内を流通・反応させることにより、高純度のCOFを連続して製造することができる。また、連続製造が可能となるだけでなく、COFを循環させることで、COFの捕集効率も向上させることができ、更には、第三種成分(例えば、N等の希ガス)を希釈ガスとして使用しなくても済むので、後工程となるCOFの分離精製も簡便に行うことができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。尚、分析には島津製作所製ガスクロマトグラフ(GC−2014)、及びMIDAC製FT−IR(IGA−2000)を使用し測定した。
【0025】
実施例1
図1に示す装置によりCOFを製造した。即ち、長さ0.5m、容量0.02mの第1の反応器に、平均粒径5mmの活性炭50gを入れ、1000℃に加熱したCO:0.5slmを大気圧下、3.7分間の滞留時間で、加熱した活性炭と接触させてCOを発生させた。この時、0.98slmのCOが生成された(COの転化率:97.8%)。
【0026】
その後、この生成COを第2の反応器へ直接導入するとともに、2.38slmのNで30%の濃度に希釈したFを3.3slmの流量で導入した。大気圧下、50℃で反応させ、そのまま反応器の外へ流出させて捕集した。その結果、純度95.6%のCOFが得られた。また、この時の不純物は、CO:3.8%、CF:1.1%であった。
【0027】
実施例2
反応条件を変えた以外は実施例1と同様にして反応を行った。即ち、第1の反応器で、CO:1.5slmを大気圧下、1.3分間の滞留時間で、1000℃に加熱した活性炭と接触させてCOを発生させた。この時、2.95slmのCOが生成された(COの転化率:98.2%)。
【0028】
その後、この生成COを第2の反応器へ直接導入するとともに、7.0slmのNで30%の濃度に希釈したFを10.0slmの流量で導入した。大気圧下、125℃で反応させ、そのまま反応器の外へ流出させて捕集した。その結果、純度95.6%のCOFが得られた。また、この時の不純物は、CO:3.1%、CF:1.3%であった。
【0029】
実施例3
図2に示す装置を用い、実施例2と同様にして反応を行った。即ち、第1の反応器で、CO:1.5slmを大気圧下、1.3分間の滞留時間で、1000℃に加熱した活性炭と接触させてCOを発生させた。この時、2.95slmのCOが生成された(COの転化率:98.2%)。
【0030】
その後、この生成COを第2の反応器へ直接導入するとともに、7.0slmのNで30%の濃度に希釈したFを10.0slmの流量で導入した。大気圧下、125℃で反応させた。その後、合成されたCOFのうち7.0slmを循環させると共に、30%の濃度に希釈したF:10.0slmを反応器に導入し、大気圧下、100℃で反応させた。以上の操作の後、得られたガスの組成は、COF:94.1%、CO:3.8%、CF:2.13%であった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の方法に用いられる反応装置の態様を示す図である。
【図2】本発明の方法に用いられる反応装置の別の態様を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
COと炭素とを高温接触させて得られた生成ガスと、Fを含むガスとを接触させることを特徴とするCOFの製造方法。
【請求項2】
COと高温加熱した炭素とを接触させて得られた生成ガスと、Fを含むガスとを接触させることを特徴とするCOFの製造方法。
【請求項3】
COと炭素とを900〜1000℃の温度で接触させることを特徴とする請求項1又は2に記載のCOFの製造方法。
【請求項4】
を含むガスを接触させるときの温度を0〜250℃とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のCOFの製造方法。
【請求項5】
を含むガスを接触させるときの圧力を50〜150kPaとすることを特徴とする請求項1又は2に記載のCOFの製造方法。
【請求項6】
COと900〜1000℃に加熱した炭素とを0.5〜30分間接触させることを特徴とする請求項2に記載のCOFの製造方法。
【請求項7】
を含むガスが、COFとFガスとを含む混合ガスであることを特徴とする請求項1又は2に記載のCOFの製造方法。
【請求項8】
を含むガスが、COF、不活性ガス及びFガスとを含む混合ガスであることを特徴とする請求項1又は2に記載のCOFの製造方法。
【請求項9】
生成したCOFを、Fを含むガスを流通させる工程の前段、若しくは該流通させる反応系内に、循環させることを特徴とする請求項1又は2に記載のCOFの製造方法。
【請求項10】
炭素が、活性炭、コークス、炭、木炭及びカーボンブラックから選択される少なくとも1種の材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のCOFの製造方法。
【請求項11】
COと高温加熱した炭素とを接触させるための第1の反応ゾーンと、該第1の反応ゾーンで発生したガスとFを含むガスとを接触させるための第2の反応ゾーン、とを備えることを特徴とするCOFの製造装置。
【請求項12】
第2の反応ゾーンから流出されるガスの一部又は全部を、第2の反応ゾーンの前段に循環させるための経路又は第2の反応ゾーンの途中に循環させるための経路を設置したことを特徴とする請求項11に記載のCOFの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−56519(P2008−56519A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233371(P2006−233371)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000157119)関東電化工業株式会社 (68)
【Fターム(参考)】