説明

CRT表示装置及びX線保護回路の制御方法

【課題】
X線保護回路を備えたCRT表示装置であって、外部電源からの給電が停止した際に、X線保護回路の誤動作によって装置の電源が強制的にオフ状態とされることによるオートパワーオン機能の動作への弊害の発生を防止したCRT表示装置の提供。
【解決手段】
停電検出回路20からのパワーフェイル信号がローレベルである場合(外部電源から給電がない場合)には、X線保護回路によるX線端子31の電圧値の監視(CRT70の監視)を停止することにより、外部電源からの給電が停止した際に、X線保護回路が、「CRT70からのX線放射量が規定値以上である」と誤認することを防止し、X線保護回路により装置の電源が強制的にオフ状態とされることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCRT表示装置に関し、特に、X線保護回路の動作制御について考慮されたCRT表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CRT表示装置には、ブラウン管(CRT)に備えられている電子銃から放射される電子の量が一定量を越えると、CRTの表面から放射される電子(以下、X線放射とする)の量が人体に有害なレベルとなるため、これを防止するために、CRTの動作状況(例えば、CRTのカソードに備えられるヒータの電源電圧)を監視し、当該動作状況が所定の条件に該当する場合(例えば、ヒータの電源電圧が所定のレベルを超えた場合)には、装置の電源をオフ状態(いわゆるスタンバイ状態や、主電源のオフ状態)にするX線保護回路が備えられている。
【0003】
X線保護回路は、コスト上の要請などから、「実際にCRTの表面から放射されているX線の量を測定して、これが一定値を超えた場合には装置の電源をオフ状態にする」というものではなく、上記したごとく、例えば、CRTのカソードに備えられるヒータの電源電圧を監視するなど(その他CRTに印加される高電圧を監視する場合等もある)して、X線放射量の測定を擬似的に行っている。従って、実際にはX線放射の量が規定値以下であるにもかかわらず、「X線放射の量が規定値以上である」と判断(誤認)してしまう場合が生じ得る。このような、X線保護回路のように安全のために設けられている保護回路の“誤動作”を防止するための従来技術が、特許文献1などによって開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−70477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CRT表示装置には、装置の電源コードが抜かれた等の場合(外部電源からの給電が停止した場合)に、電源コードが抜かれた際の装置の状態(装置の電源がオンであったのかオフであったのか、受信(視聴)していたチャンネルは何チャンネルであったのかなど)を記憶しておき、再度電源コードが入れられた(外部電源からの給電が開始された)場合に、自動的に“電源コードが抜かれた際の装置の状態”で装置を稼働させるオートパワーオンと呼ばれる機能を備えたものがある。(近年では電子装置の“待機電力”を節約するために、電源供給のオン/オフをすることが可能なスイッチのついた「電源タップ」の普及も進んでおり、当該電源タップのスイッチをオフとされた場合には、電子装置側から見ると、装置の電源コードを抜かれたのと同様の状況となるため、このような場合(外部電源からの給電が停止する場合)が発生する蓋然性は高くなりつつあるといえ、オートパワーオン機能が利用される状況が増加する傾向にあるといえる。)
【0006】
一方で、前述したごとくX線保護回路では、ヒータの電源電圧を監視し、これと所定の電圧とを比較すること等によって、“X線放射の量”が規定値以上となっているか否かを判断しているが、装置の電源コードが抜かれた場合(外部電源からの給電が停止した場合)には、前記比較対象である“所定の電圧”を供給する電源の電位が低下してしまうことで、“ヒータの電源電圧”を下回り、これによりX線保護回路が「“X線放射の量”が規定値以上である」と誤認してしまい、装置の電源をオフ状態にしてしまう場合がある。このような場合、前記したオートパワーオン機能が正常に動作しない(外部電源からの給電が停止した際に装置の電源がオン状態であっても、マイコンが処理(給電停止を受けて行う装置内の各部の電源オフ処理や各部の設定・状態等を記憶する処理など)を行っている間に、X線保護回路によって電源オフ状態とされ、マイコンが、「電源オフ処理や各部の設定・状態等を記憶する処理を完全に完了していない状態で装置の電源はオフ状態である」と認識してしまうため、再度外部電源からの給電が開始された際に、装置を電源オフ状態で稼働させてしまう。)などの問題が発生していた。
【0007】
本発明は、上述した点に鑑み、X線保護回路を備えたCRT表示装置であって、外部電源からの給電が停止した際に、X線保護回路の誤動作により、装置の電源がオフ状態とされることを防止したCRT表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のCRT表示装置は、外部電源からの電力供給を受けて装置全体への電源供給を行う電源部と、前記外部電源から前記電源部への電力の供給の有無を検出し当該検出結果をパワーフェイル信号として出力する停電検出回路と、映像を表示するブラウン管と、当該ブラウン管の動作状況を監視し、当該動作状況が所定の条件に該当する場合には前記電源部からの電力供給を停止させるX線保護回路と、を備えるCRT表示装置であって、前記パワーフェイル信号が、前記外部電源から前記電源部への電力の供給がない状態であることを示している場合には、前記X線保護回路による前記電源部からの電力供給の停止処理を行わせないようにしたことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、パワーフェイル信号が、外部電源から電源部への電力の供給がない状態であることを示している場合には、X線保護回路による電源部からの電力供給の停止処理が行われない。「電源部からの電力供給の停止」とは、装置の電源をオフ状態にするということであり、「電源オフ状態」とは、いわゆるスタンバイ状態(装置内の不要な部分への電源供給を停止し、マイコン等の一部の部分のみ通電状態である状態)や、装置の主電源がオフとされた状態(この場合であってもマイコンは通電状態である場合もある)などを示す。
【0010】
請求項2のCRT表示装置は、請求項1記載のCRT表示装置であって、前記パワーフェイル信号が、前記外部電源から前記電源部への電力の供給がない状態であることを示している場合には、前記ブラウン管の動作状況の監視を停止することによって、前記X線保護回路による前記電源部からの電力供給の停止処理を行わせないようにしたことを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、パワーフェイル信号が、外部電源から電源部への電力の供給がない状態であることを示している場合には、X線保護回路によるブラウン管の動作状況の監視を停止するため、外部電源からの給電が停止したことに起因して、X線保護回路が「“X線放射の量”が規定値以上である」と誤認してしまうことが防止される。
【0012】
請求項3のX線保護回路の制御方法は、外部電源からの電力供給を受けて装置全体への電源供給を行う電源部と、前記外部電源から前記電源部への電力の供給の有無を検出し当該検出結果をパワーフェイル信号として出力する停電検出回路と、映像を表示するブラウン管と、当該ブラウン管の動作状況を監視し、当該動作状況が所定の条件に該当する場合には前記電源部からの電力供給を停止させるX線保護回路と、を備えるCRT表示装置における前記X線保護回路の制御方法であって、前記パワーフェイル信号が、前記外部電源から前記電源部への電力の供給がない状態であることを示している場合には、前記X線保護回路による前記電源部からの電力供給の停止処理を行わせないようにしたことを特徴とする。
【0013】
請求項4のX線保護回路の制御方法は、請求項3記載のX線保護回路の制御方法であって、前記パワーフェイル信号が、前記外部電源から前記電源部への電力の供給がない状態であることを示している場合には、前記ブラウン管の動作状況の監視を停止することによって、前記X線保護回路による前記電源部からの電力供給の停止処理を行わせないようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項5のCRT表示装置は、請求項1記載のCRT表示装置であって、前記停電検出回路から出力されるパワーフェイル信号によってスイッチ動作を行うスイッチ回路であって、前記パワーフェイル信号が、前記外部電源から前記電源部への電力の供給がない状態であることを示している場合には、前記ブラウン管の動作状況を示す信号を前記X線保護回路へと入力する信号線を、基準電位となるグランド線と接続するX線保護回路制御回路を備えたことを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、パワーフェイル信号が、外部電源から電源部への電力の供給がない状態であることを示している場合には、X線保護回路制御回路によって、ブラウン管の動作状況を示す信号をX線保護回路へと入力する信号線がグランドレベルとされる。
【0016】
請求項6のCRT表示装置は、請求項5記載のCRT表示装置であって、前記停電検出回路に備えられる前記パワーフェイル信号を出力するパワーフェイル出力端子を、第1のトランジスタのベースに接続し、第1のトランジスタのコレクタに定電圧源を接続し、第1のトランジスタのエミッタをグランドと接続し、前記ブラウン管の動作状況を示す信号を前記X線保護回路へと入力する信号線とコレクタを接続される第2のトランジスタのベースと、第1のトランジスタのコレクタとを接続し、第2のトランジスタのエミッタをグランドと接続することによって、前記X線保護回路制御回路を構成したことを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、2つのトランジスタによって、「X線保護回路制御回路」を構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1の、外部電源からの電力供給を受けて装置全体への電源供給を行う電源部と、前記外部電源から前記電源部への電力の供給の有無を検出し当該検出結果をパワーフェイル信号として出力する停電検出回路と、映像を表示するブラウン管と、当該ブラウン管の動作状況を監視し、当該動作状況が所定の条件に該当する場合には前記電源部からの電力供給を停止させるX線保護回路と、を備えるCRT表示装置であって、前記パワーフェイル信号が、前記外部電源から前記電源部への電力の供給がない状態であることを示している場合には、前記X線保護回路による前記電源部からの電力供給の停止処理を行わせないようにしたことを特徴とするCRT表示装置によれば、パワーフェイル信号が、外部電源から電源部への電力の供給がない状態であることを示している場合には、X線保護回路による電源部からの電力供給の停止処理が行われないため、外部電源からの給電が停止したことに起因して、X線保護回路が「“X線放射の量”が規定値以上である」と誤認してしまったような場合であっても、X線保護回路による装置の電源オフ処理が行われることが防止される。従って、オートパワーオン機能を備えたCRT表示装置においても、「外部電源からの給電が停止した際に、装置の電源がオン状態であるにもかかわらず、マイコンが処理(給電停止を受けて行う装置内の各部の電源オフ処理や各部の設定・状態等を記憶する処理など)を行っている間に、X線保護回路によって電源オフ状態とされ、マイコンが、「装置の電源はオフ状態である」と認識してしまうため、再度外部電源からの給電が開始された際に、装置を電源オフ状態で稼働させてしまう。」という問題が発生することを防止することができる。
【0019】
本発明の請求項2の、前記パワーフェイル信号が、前記外部電源から前記電源部への電力の供給がない状態であることを示している場合には、前記ブラウン管の動作状況の監視を停止することによって、前記X線保護回路による前記電源部からの電力供給の停止処理を行わせないようにしたことを特徴とする請求項1記載のCRT表示装置によれば、パワーフェイル信号が、外部電源から電源部への電力の供給がない状態であることを示している場合には、X線保護回路によるブラウン管の動作状況の監視を停止するため、外部電源からの給電が停止したことに起因して、X線保護回路が「“X線放射の量”が規定値以上である」と誤認してしまうことが防止される。従って、オートパワーオン機能を備えたCRT表示装置においても、オートパワーオン機能が正常に動作しないという問題が発生することを防止することができる。
【0020】
本発明の請求項5の、前記停電検出回路から出力されるパワーフェイル信号によってスイッチ動作を行うスイッチ回路であって、前記パワーフェイル信号が、前記外部電源から前記電源部への電力の供給がない状態であることを示している場合には、前記ブラウン管の動作状況を示す信号を前記X線保護回路へと入力する信号線を、基準電位となるグランド線と接続するX線保護回路制御回路を備えたことを特徴とする請求項1記載のCRT表示装置によれば、パワーフェイル信号が、外部電源から電源部への電力の供給がない状態であることを示している場合には、X線保護回路制御回路によって、ブラウン管の動作状況を示す信号をX線保護回路へと入力する信号線がグランドレベルとされるため、外部電源からの給電が停止したことに起因して、X線保護回路が「“X線放射の量”が規定値以上である」と誤認してしまうことが防止される(信号線がグランドレベルとされることにより、X線保護回路によるブラウン管の動作状況の監視が停止状態となるため)。従って、オートパワーオン機能を備えたCRT表示装置においても、オートパワーオン機能が正常に動作しないという問題が発生することを防止することができる。
【0021】
本発明の請求項6の、前記停電検出回路に備えられる前記パワーフェイル信号を出力するパワーフェイル出力端子を、第1のトランジスタのベースに接続し、第1のトランジスタのコレクタに定電圧源を接続し、第1のトランジスタのエミッタをグランドと接続し、前記ブラウン管の動作状況を示す信号を前記X線保護回路へと入力する信号線とコレクタを接続される第2のトランジスタのベースと、第1のトランジスタのコレクタとを接続し、第2のトランジスタのエミッタをグランドと接続することによって、前記X線保護回路制御回路を構成したことを特徴とする請求項5記載のCRT表示装置によれば、2つのトランジスタによって、「X線保護回路制御回路」を構成することができるため、省スペース及び低コストにて「X線保護回路制御回路」を備えたCRT表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の具体的実施例について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施態様は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するためのものではない。
【実施例1】
【0023】
図1は、本実施例のCRT表示装置の本発明に関する部分のみの概略を示したブロック図であり、図2は同CRT表示装置の斜視図である。図3は同CRT表示装置の本発明に関する動作の概略を示したフローチャートである。
【0024】
図1に示されるように、本実施例のCRT表示装置1は、商用電源(外部電源)から電源コード10aを介して電力供給を受けて、装置全体への電源供給を行う電源部10と、商用電源から電源部10への電力の供給の有無を検出し当該検出結果をパワーフェイル信号として出力する停電検出回路20と、装置全体の制御等を行うマイコン30と、映像の表示を行うCRT70と、CRT70へ供給する高電圧を発生させるフライバックトランス50などを備える。CRT70には、カソードにヒータ71が備えられ、当該ヒータ71によって加熱されることにより発生した電子をビーム状に収束する電子銃(図示せず)などが備えられる。
【0025】
電源部10は、装置内に備えられる各部への、各部に応じた各電圧を供給するものであり(図では簡単化のため、電源供給ライン11によって各部に給電されているような記載となっているが、実際には各電圧ごとに電源ラインが設けられる)、当該供給のオン/オフを、信号線13を介してマイコン30によって制御される(例えば、装置がスタンバイ状態である場合には、不要な部分への電力供給をカットするなど)。停電検出回路20は、商用電源から電源部10への電力の供給の有無を検出するものであり、本実施例では、商用電源からの電力供給がある場合はハイレベル信号(DC電圧)を、商用電源からの電力供給が停止した場合(例えば、停電時や、電源コード10aが抜かれた場合や、電源コード10aが接続された電源タップ3(図2)のスイッチ3aがオフにされた場合など)にはローレベル信号を、パワーフェイル信号として出力する。
【0026】
本実施例のCRT表示装置1は、CRT70から放射されるX線の量が人体に有害なレベルとなることを防止するために、CRT70の動作状況(本実施例では、CRT70のカソードに備えられるヒータ71の電源電圧であって、フライバックトランス50への電源ライン11bの電圧)を監視し、当該動作状況が所定の条件に該当する場合には、装置の電源を強制的にオフ状態(いわゆるスタンバイ状態や、主電源のオフ状態)とするX線保護機能を有している。X線保護機能の動作の概略は、フライバックトランス50への電源ライン11bの電圧(本実施例では、通常時に18V程度)を、分圧部40によって分圧した(本実施例では1/9に分圧するものとする:すなわち通常時に2V程度がX線端子31へと入力される)上で、マイコン30のX線端子31へと入力し、当該X線端子31から得られる電圧値と、マイコン30の電源電圧値(電源ライン12の電圧値であり、本実施例では5V)に初期設定で定められた係数(装置の仕様・安全マージン等を考慮して細かく定められるものであるが、本実施例では1/2とする)を乗じた値(以下単にB)と、をマイコン30によって比較し、X線端子31の電圧値がBを上回った(ヒータ電圧が異常値となっていることを示し、X線放射量が危険なレベルであると判断される)場合には、強制的に電源オフ処理(マイコン30からの命令により電源部10からの各部への電源供給を停止させる)を行うものである。従って、本実施例においては、電源ライン11b、分圧部40、マイコン30、信号線13及び電源部10に備えられるマイコン30からの命令によって各部への電源供給をオン/オフするスイッチ回路が、“X線保護回路”を構成しているといえる。なお、電源ライン12は、電源供給ライン11のように、電源供給のオン/オフをマイコン30によって制御されるラインではなく、外部電源からの電力供給があると、自動的に出力される電源である(外部電源からの給電の有無に応じて出力が上下する)。一方、電源供給ライン11にはコンデンサ等が設けられ、給電が停止した後もある程度ラインの電位を保つことができる(なお、マイコン30は電源ライン11(11a)からも電源供給を受ける)。
【0027】
また、本実施例のCRT表示装置1は、外部電源からの給電が停止した場合(装置の電源コード10aが抜かれた等の場合)に、給電が停止した際の装置の状態(例えば、視聴していたチャンネルや音量レベルなど)を記憶しておき、再度外部電源からの給電が開始された場合に、自動的に“給電が停止した際の装置の状態”で装置を稼働させるオートパワーオン機能を備えている。オートパワーオン機能の動作の概略は、停電検出回路20により、外部電源からの給電停止が検出された(マイコン30のパワーフェイル端子32にローレベル信号が入力された)際に、装置の状態(電源のオン/オフ若しくはスタンバイ等の状態の別や、選択されているチャンネル・音量レベルの状態など)を検出し、これをマイコン内部メモリ又は不揮発性メモリ(図示せず)などに記憶させておき、外部電源からの給電が再開された場合には、当該マイコン内部メモリ又は不揮発性メモリに記憶させていた装置の状態で、自動的に装置を稼働させるものである。
【0028】
次に、本実施例のCRT表示装置1の、X線保護機能の動作の本発明に関する部分の概略を、図3を参照しつつ説明する。ステップ301では、停電検出回路20からパワーフェイル端子32に入力されるパワーフェイル信号がローレベルであるか否かの判断を行う。パワーフェイル信号がハイレベルである場合(外部電源から給電されている場合)には、ステップ302へと移行し、電源ライン12が接続される電源端子33の電圧値(本実施例では通常時5V)に初期設定で定められた係数a(本実施例では1/2)を乗じた値(すなわち本実施例では通常時に2.5Vとなる)をBへと代入する。続くステップ303では、X線端子31の電圧値(前述したごとく本実施例では通常時2V程度)がBより小さいか否かを判別し、これが肯定である場合(CRT70の動作が平常状態であることを示す)にはステップ301の処理へと戻る。これに対し、X線端子31の電圧値がBより大きい場合には、強制的に装置の電源をオフ状態(スタンバイ状態若しくは主電源オフ状態)とする処理を行う(ステップ304)。ステップ301における判断が肯定である場合(外部電源からの給電がない場合)には、ステップ302〜304の処理を行わずに、処理を終了する(CRT70の動作状況の監視を停止する)。
【0029】
図4には、外部電源からの給電が停止した際の、マイコン30に備えられる各端子の電圧値の推移の概略を示した。同図に示されるように、t0において外部電源からの給電が停止すると、マイコン30は電源オフ処理(給電停止を受けて行う装置内の各部の電源オフ処理や各部の設定・状態等を記憶する処理など)を行う。当該電源オフ処理(t0〜t3の期間)中のt2において、オートパワーオン機能のための、装置の状態(電源のオン/オフ若しくはスタンバイの状態や、選択されているチャンネル・音量レベルの状態など)の検出が行われる。一方で、外部電源からの給電が停止するとこれに伴いマイコン30の電源端子33の電位も低下を始め、電源端子33の電位の低下に従いBの値(電源端子33の電圧値×係数a)も低下することとなるが、X線端子31の電位は、電源ライン11に設けられるコンデンサ(図示せず)の放電により、給電停止後もしばらくは電位の低下が生じない(低下が緩やか)。従って、Bの値がX線端子31の電圧値を下回ってしまい(図中t1時)、X線保護回路が誤作動をしてしまう(X線放射が危険レベルと判断し、強制電源オフ処理を行ってしまう)場合があった。これにより、図中に示されるようにt2よりt1の方が早期である場合には、t0時の装置の状態に拘らずt2時には電源オフ状態となっているため、オートパワーオン機能がうまく機能しない(t0時の装置の状態に拘らず、“電源オフ状態”であるとマイコンが判断してしまう)状況が生じ得るものであった。
【0030】
これに対し本実施例のCRT表示装置1によれば、前述のごとく、外部電源からの給電が停止した場合(図4中のt0時)には、CRT70の動作状況(X線端子31)の監視を停止(ステップ301によりステップ302以降をスキップ)するため、図4中に示されるような状況となっても、t1時にX線保護機能によって装置を強制的に電源オフ状態とされることがなく、t0時からt2時の間にX線保護機能によって装置の状態が変化することが無い。従って、外部電源からの給電が停止した際に、X線保護機能によってオートパワーオン機能の動作が阻害されるということを防止することができる。
【0031】
なお、本発明における“CRTの動作状況の監視の停止”は、監視の“完全な”停止に限定するというものではなく、例えば、「Bの値≦X線端子31の電圧」とならないように各値を変更する(Bを大きな値に変更する若しくはX線端子31を強制的にローレベルとする等)処理を行う、又は、ステップ303の処理がt0からt3(厳密にはt2)の間に行われないように処理を遅延させる等により、“実質的に監視の停止を行っているもの”を含むものである。また、“CRTの動作状況の監視”を停止しなくとも、「X線保護機能による装置の強制的電源オフ」が行われなければ、上述と同様の効果が得られるため、図5に示したように、ステップ301の処理をステップ303の後(ステップ301がステップ304の前にあればよく、ステップ302の後にステップ301が行われても構わない)に行うようにしても良い。
【実施例2】
【0032】
図6は本実施例のCRT表示装置の本発明に関する部分のみの概略を示したブロック図であり、図7は、X線保護回路制御回路の構成を示す回路ブロック図である。なお、実施例1と同様の構成要素については実施例1と同一の符号を使用し、ここでの説明を省略する。
【0033】
X線保護回路制御回路60は、図7に示されるように、停電検出回路20に備えられるパワーフェイル信号を出力するパワーフェイル出力端子21を、トランジスタ61(第1のトランジスタ)のベースに接続し、トランジスタ61のコレクタに定電圧源63(整流・平滑回路63a介して5Vの電源ラインに接続されるものである。なお、名称を「定電圧源」としているが、本発明中の動作においては、主に外部電源からの給電が無くなった際のバックアップ用電源として動作するものであり、整流・平滑回路63aに備えられるコンデンサに蓄えられた電荷の放電によって給電停止後もトランジスタ62をオンにするためのものである。)を接続し、トランジスタ61のエミッタをグランドと接続し、X線端子31とコレクタを接続されるトランジスタ62(第2のトランジスタ)のベースと、トランジスタ61のコレクタとを接続し、トランジスタ62のエミッタをグランドと接続することによって、構成される。
【0034】
次に、上記構成のX線保護回路制御回路60の動作の概略を説明する。パワーフェイル出力端子21からのパワーフェイル信号がハイレベルである(外部電源からの給電が行われている)場合には、トランジスタ61がオンとなり、これによりトランジスタ62のベースがグランドに接続される(正確にはトランジスタ61による電圧降下分だけグランド電位より高い)ため、トランジスタ62はオフとなる。従って、外部電源からの給電がある場合には、分圧部40からの出力がX線端子31に入力されることとなる。これに対し、パワーフェイル信号がローレベル(給電停止)である場合には、トランジスタ61がオフとなり、これによりトランジスタ62がオンとなるため、X線端子31がグランドに接続されることとなる。
【0035】
従って、本実施例のCRT表示装置によれば、図8に示されるように、外部電源からの給電が停止した際(t0)に、X線端子31がグランドレベルとされるため、t0とt2の間において、「Bの値がX線端子31の電圧値を下回る」ということがなく、X線保護機能によってオートパワーオン機能の動作が阻害されるということを防止することができる。また、X線保護回路制御回路60の動作において、マイコンの処理若しくはマイコンの制御を受ける素子が介在しないため、迅速且つ確実に、X線保護機能によるオートパワーオン機能の動作の阻害を防止することができると共に、マイコン30の処理の変更をする必要が無い(X線保護回路は従来通りの構成でよい)。
【0036】
なお、図9には、別のX線保護回路制御回路の一例を示した。当該X線保護回路制御回路90の動作の概略は、マイコン30が、停電検出回路20からのパワーフェイル信号がローレベルであることを検知した際に、トランジスタ91のベースをハイレベルとすることでトランジスタ91をオンとし、X線端子31をグランドレベルとするものである。これにより、図8に示されるのと同様の遷移となる。
【0037】
本実施例では、トランジスタ62(若しくはトランジスタ91)のコレクタを接続する箇所を、X線端子31としているが、X線端子31に入力される信号がローレベルとされればよいものであるので、分圧部40とFBT50の間のライン(電源ライン11b)に接続されるものであってもよい。
【0038】
実施例中では、CRTの動作状況の監視として、「CRT70のカソードに備えられるヒータ71の電源電圧であって、フライバックトランス50への電源ライン11bの電圧」を監視するものとしているが、その他のCRT部分の動作電圧を監視するもの(例えば、CRTに印加される高電圧を監視する場合等)においても同様の処理概念で本発明を適用することができる。また、実施例中では電源ライン11bの電圧を分圧部40で分圧して(電圧を調整して)マイコンに入力するものとしているが、各回路の設計(例えば、電源ライン11b若しくは電源ライン12から得られる電圧値や、マイコンの仕様の違い等)によっては、分圧・調整の必要が無い場合もあり、分圧部40は必ずしも必要なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例1のCRT表示装置の本発明に関する部分のみの概略を示したブロック図
【図2】CRT表示装置の斜視図
【図3】CRT表示装置の本発明に関する動作の概略を示したフローチャート
【図4】外部電源からの給電が停止した際の、マイコン30に備えられる各端子の電圧値の推移の概略を示す図
【図5】CRT表示装置の本発明に関する別の動作の概略を示したフローチャート
【図6】実施例2のCRT表示装置の本発明に関する部分のみの概略を示したブロック図
【図7】X線保護回路制御回路の構成を示す回路ブロック図
【図8】外部電源からの給電が停止した際の、マイコン30に備えられる各端子の電圧値の推移の概略を示す図
【図9】別のX線保護回路制御回路の構成を示す回路ブロック図
【符号の説明】
【0040】
1 CRT表示装置
10 電源部
10a 電源コード
20 停電検出回路
21 パワーフェイル出力端子
30 マイコン
31 X線端子
32 パワーフェイル端子
33 電源端子
50 フライバックトランス
60 X線保護回路制御回路
61 トランジスタ(第1のトランジスタ)
62 トランジスタ(第2のトランジスタ)
63 定電圧源
70 CRT(ブラウン管)
71 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源からの電力供給を受けて装置全体への電源供給を行う電源部と、前記外部電源から前記電源部への電力の供給の有無を検出し当該検出結果をパワーフェイル信号として出力する停電検出回路と、映像を表示するブラウン管と、当該ブラウン管の動作状況を監視し、当該動作状況が所定の条件に該当する場合には前記電源部からの電力供給を停止させるX線保護回路と、を備えるCRT表示装置であって、前記パワーフェイル信号が、前記外部電源から前記電源部への電力の供給がない状態であることを示している場合には、前記X線保護回路による前記電源部からの電力供給の停止処理を行わせないようにしたことを特徴とするCRT表示装置。
【請求項2】
前記パワーフェイル信号が、前記外部電源から前記電源部への電力の供給がない状態であることを示している場合には、前記ブラウン管の動作状況の監視を停止することによって、前記X線保護回路による前記電源部からの電力供給の停止処理を行わせないようにしたことを特徴とする請求項1記載のCRT表示装置。
【請求項3】
外部電源からの電力供給を受けて装置全体への電源供給を行う電源部と、前記外部電源から前記電源部への電力の供給の有無を検出し当該検出結果をパワーフェイル信号として出力する停電検出回路と、映像を表示するブラウン管と、当該ブラウン管の動作状況を監視し、当該動作状況が所定の条件に該当する場合には前記電源部からの電力供給を停止させるX線保護回路と、を備えるCRT表示装置における前記X線保護回路の制御方法であって、前記パワーフェイル信号が、前記外部電源から前記電源部への電力の供給がない状態であることを示している場合には、前記X線保護回路による前記電源部からの電力供給の停止処理を行わせないようにしたことを特徴とするX線保護回路の制御方法。
【請求項4】
前記パワーフェイル信号が、前記外部電源から前記電源部への電力の供給がない状態であることを示している場合には、前記ブラウン管の動作状況の監視を停止することによって、前記X線保護回路による前記電源部からの電力供給の停止処理を行わせないようにしたことを特徴とする請求項3記載のX線保護回路の制御方法。
【請求項5】
前記停電検出回路から出力されるパワーフェイル信号によってスイッチ動作を行うスイッチ回路であって、前記パワーフェイル信号が、前記外部電源から前記電源部への電力の供給がない状態であることを示している場合には、前記ブラウン管の動作状況を示す信号を前記X線保護回路へと入力する信号線を、基準電位となるグランド線と接続するX線保護回路制御回路を備えたことを特徴とする請求項1記載のCRT表示装置。
【請求項6】
前記停電検出回路に備えられる前記パワーフェイル信号を出力するパワーフェイル出力端子を、第1のトランジスタのベースに接続し、第1のトランジスタのコレクタに定電圧源を接続し、第1のトランジスタのエミッタをグランドと接続し、前記ブラウン管の動作状況を示す信号を前記X線保護回路へと入力する信号線とコレクタを接続される第2のトランジスタのベースと、第1のトランジスタのコレクタとを接続し、第2のトランジスタのエミッタをグランドと接続することによって、前記X線保護回路制御回路を構成したことを特徴とする請求項5記載のCRT表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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