CXCL8媒介肺炎症の治療のための組成物
本発明は、好中球浸潤を有する肺炎症を予防又は治療することにおける使用のための、例えば、慢性閉塞性肺疾患、膵嚢胞性繊維症、重症喘息、気管支炎、細気管支炎、急性肺損傷及び急性呼吸困難症候群の予防又は治療のための、それぞれ野生型IL−8と比較して増加したGAG結合アフィニティー及びさらに阻害又は下方制御されたGPCR活性を有する改質されたインターロイキン8(IL−8)を含む組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好中球浸潤での肺炎症を予防する又は治療するための、特にCXCL8媒介肺炎症の予防又は治療のための、それぞれ野生型IL−8と比較して増加させたGAG結合アフィニティー及び阻害させた又は下方制御させた受容体結合アフィニティーを有する媒介させたインターロイキン(IL−8、CXCL8)の新たな使用に関する。特に、吸入剤として媒介させたIL−8の使用を提供する。
【0002】
発明の背景:
肺炎症疾患は、ヒト集団及び効果的な治療の欠如におけるそれらの優位さを考慮して特に関連がある。特に、好中球の炎症を増加させることを示した肺炎症は、慢性閉塞性肺疾患、膵嚢胞性繊維症、慢性重症喘息及びよりその重症型と共に急性肺損傷、急性呼吸困難症候群である。
【0003】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、2020(Lopez et al. 1998)によって世界的に三番目の死因になると予測されている進行性の衰弱性疾患である。タバコの煙は、その発達のための最も重要な病因として確立されているが、しかしながら、15〜20%のみの煙でCOPDは発達し、遺伝的構成及び他の環境因子が疾患の病原論における役割を果たすことが示唆されている。
【0004】
患者の肺において観察されるCOPDでの炎症反応は、複雑であり、かつ先天性の及び後天性の免疫反応の活性を含む。しかしながら、疾患の進行は、白血球遊走、炎症誘発性サイトカイン及びケモカインの製造、並びに潜在的な破壊性プロテアーゼによって左右される(Kim et al. 2008)。
【0005】
特に、好中球は、痰及び気管支肺胞洗浄(BAL)試料において、COPD患者の肺中で最も豊富な炎症細胞であることが知られている(Nocker et al. 1996; Peleman et al. 1999)。CXCL8レベルは、疾患の進行の異なるステージ(健康な状態に対して10〜15倍増加)でCOPD患者の痰及びBALにおいて著しく上昇し、かつ疾患の重さ及び好中球の存在に関連し(Yamamoto et al. 1997; Tanino et al. 2002)、その際好中球移動中に含まれるキーケモカイン(key chemokine)としてCXCL8を同定する(Woolhouse et al. 2002)。さらに、CXCL8の上昇レベルは、増悪中にCOPD患者の痰中にも存在する(Aaron et al. 2001;Spruit et al. 2003)。
【0006】
しかしながら、現在の治療は、支持療法及び対症療法としてより作用し、抗炎症活性を有する。世界保健機関及びGOLDの推奨に基づいてCOPDの管理のために使用される薬剤は、短時間及び長時間作用性のβ2アゴニスト、短時間及び長時間作用性の抗コリン作用薬、メチルキサンチン、吸入型又は全身性グルココステロイド(glucocosteroid)を含む(Pauwels et al., 2005; Lenfant and Khaltaev 2005)。それらの治療は、急性増悪を調整することに対するいくつかの効果を有するが、しかし従来のグルココルチコステロイドでの治療は、主に効果をもたらさず、かつCOPDを有する患者における弱毒化炎症を欠き(Culpitt et al. 1999; Fitzgerald et al. 2007)、新たな抗炎症戦略の開発の必要を強調している(Fabbri et al 2004)。
【0007】
他の好中球の炎症によって特徴付けられる肺疾患は、膵嚢胞性繊維症(CF)である。いくつかの研究は、BAL及び痰におけるCXCL−8の増加レベル、並びにCFを有する患者の気管支腺におけるCXCL8の増加した発現を記録している(Nakamura et al. 1992; Tabary et al. 1998)。その効力のある好中球化学誘因物質の特性は、気道における大量の好中球の流入を刺激する(Chmiel et al. 2002)。細菌性感染は、さらに、CXCL8レベルを増加し、いっそう肺へ好中球を浸潤させ、そして中断することが難しい悪循環を生じ、そして慢性肺炎症をもたらす。CXCL8誘発性炎症に対して作用する治療、例えばPA401でのこの悪循環に対する作用は、現在、気管支拡張及び粘液溶解薬又は抗生物質での支持療法のみに依存する、CF患者のための最も効果的な治療をもたらす。
【0008】
10人の喘息患者のうち1人は、しばしば、症状を調整するための試みにおいて徐々に高いステロイドの投与量を要求する、重症な前記疾患を示す。重症喘息は、より軽少であるよりも、疾病及び死の非常に高い危険性とも関連する。
【0009】
強い関連は、現在、好中球炎症と、慢性重症喘息(Little et al. 2002; Wenzel et al. 1997, Jatakanon et al 1999, Ordonez at al. 2000, Kamath et al. 2005; Fahy 2009)、小児喘息(McDougall et al. 2006)、喘息増悪(Fahy et al. 1995)、耐コルチコステロイド喘息(Green et al 2002)、夜間喘息(Martin et al 1991)、喫煙者における喘息(Chalmers et al. 2001)及び職業性喘息(Anees et al.2002)とを確立している。慢性好中球重症喘息が、その増加が喘息症状において示し、かつCOPDを有する特徴を共有するよりむしろ、明らかに異なる臨床表現型を示すことが、現在ますます認識されている(ENFUMOSA研究グループ)。慢性重症喘息の場合においても、上皮細胞誘発CXCL8は、主な好中球化学誘因物質として最も有望な候補であり(Lamblin et al. 1998; Ordonez et al. 2000)、新たな抗炎症治療の開発のための潜在的な候補である。
【0010】
本発明の目的は、従って、好中球で浸潤される肺炎症病理の予防又は治療のための方法を提供することである。
【0011】
発明の要約
本発明は、それぞれ野生型のIL−8と比較した、増加させたGAG結合アフィニティー及び阻害又は下方制御させたGPCR(Gタンパク質結合受容体、すなわちCXCR1及びCXCR2)活性を有する改質したインターロイキン8(IL−8)を、好中球浸潤での肺炎症の予防及び治療のために使用することの発見に基づく。特に、IL−8の増加レベルが、疾患の進行及び重症さを有し、それらと関連するCOPDにおいて及びCOPD増悪において(Yamamoto et al. 1997; Tanino et al. 2002)、好中球移動において含まれるキーケモカインを標的とした治療発明(Woolhouse et al. 2002)は、有益な抗炎症活性を提供する。さらに、それらの患者のための最新の治療は、支持療法及び症状療法に依存する一方で、従来のグリココルチコステロイドの適用が、主に効果がないことを証明し(Culpitt et al. 1999; Fitzgerald et al. 2007)、新たな抗炎症戦略の開発の要求を強調している(Fabbri et al. 2004, de Boer et al. 2007)。
【0012】
改質したIL−8の使用が、既に、肺における高レベルの好中球炎症を欠いた"通常の"喘息の治療のために簡単に記載されているが、好中球浸潤を有する肺炎症の治療及び予防のための前記の改質IL−8分子の成功した使用は、以前鋳示されておらず、又は示されていない。前記改質IL−8分子の抗喘息活性は、他の、喘息に関連したケモカイン、例えばエオタキシンの非特異的又は続発性の置換から生じる。
【0013】
阻害又は下方制御された活性は、少なくとも、GPCRの活性化による好中球の活性化の減少又は完全な欠失である。CXCL−8媒介肺炎症又はIL−8誘発好中球浸潤が特定の肺疾患において有意であることが長く確立されてきたが、前記改質IL−8、"タンパク質を基礎としたGAGアンタゴニスト"は、好中球浸潤での肺炎症疾患の予防又は治療におけるかかる効力を有することは、報告又は示唆されていない。
【0014】
従って、本発明の主題は、それぞれ野生型IL−8と比較して、増加させたGAG結合アフィニティー及び阻害又は下方制御させたGPCR活性を、個々の好中球浸潤での肺炎症疾患の予防又は治療のための使用のために提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】LPSを点滴注入したマウスの気管支肺胞洗浄における合計細胞浸潤に対するPA401の用量応答効果を示す図。
【図2】LPSを点滴注入したマウスの気管支肺胞洗浄のサイトスピンにおける好中球の数に対するPA401の用量応答効果を示す図。
【図3】LPSを点滴注入したマウスの気管支肺胞洗浄のサイトスピンにおけるリンパ球の数に対するPA401の用量応答効果を示す図。
【図4】LPSをエアロゾル化にして散布したマウスの気管支肺胞洗浄における合計細胞浸潤に対するPA401の用量応答効果を示す図。
【図5】LPSをエアロゾル化にして散布したマウスの気管支肺胞洗浄のサイトスピンにおける好中球の数に対するPA401の用量応答効果を示す図。
【図6】4日間タバコの煙にさらしたマウスの気管支肺胞洗浄における合計細胞浸潤に対するPA401(図6a)及びロフルミラスト(図6b)の用量応答効果を示す図。
【図7】4日間タバコの煙にさらしたマウスの気管支肺胞洗浄における好中球浸潤に対するPA401(図7a)及びロフルミラスト(図7b)の用量応答効果を示す図。
【図8】4日間タバコの煙にさらしたマウスの気管支肺胞洗浄におけるマクロファージ浸潤に対するPA401(図8a)及びロフルミラスト(図8b)の用量応答効果を示す図。
【図9】4日間タバコの煙にさらしたマウスの気管支肺胞洗浄における上皮細胞浸潤に対するPA401(図9a)及びロフルミラスト(図9b)の用量応答効果を示す図。
【図10】4日間タバコの煙にさらしたマウスの気管支肺胞洗浄におけるリンパ球浸潤に対するPA401(図10a)及びロフルミラスト(図10b)の用量応答効果を示す図。
【図11】PA401(図11a)の1日2回、毎日及び隔日の投与後の合計細胞浸潤に対する効果、及びロフルミラストとの比較(図11b)を示す図。
【図12】PA401(図12a)による全ての治療頻度での好中球の減少、及びロフルミラストとの比較(図12b)を示す図。
【図13】PA401(図13a)による全ての治療頻度での上皮細胞の減少、及びロフルミラストとの比較(図13b)を示す図。
【図14】PA401が隔日投与された場合(図14a)に、b.i.d.及びq.d.投与で得られたリンパ球における著しい減少の損失、及びロフルミラストとの比較(図14b)を示す図。
【図15】PA401が隔日投与された場合(図15a)に、b.i.d.及びq.d.投与で得られたマクロファージにおける著しい減少の損失、及びロフルミラストとの比較(図15b)を示す図。
【図16】400〜40g/kg投与後に観察された合計細胞浸潤に対するPA401の効果(図16a)、ロフルミラストとの比較(図16b)を示す図。
【図17】BALにおける好中球の数の減少(PA401、図17a及びロフルミラスト、図17b)を示す図。
【図18】BALにおける上皮細胞の数の減少(PA401、図18a及びロフルミラスト、図18b)を示す図。
【図19】BALにおけるリンパ球の数の減少(PA401、図19a及びロフルミラスト、図19b)を示す図。
【図20】BALにおけるマクロファージの数の減少(PA401、図20a及びロフルミラスト、図20b)を示す図。
【図21】LPSの8時間後に採取した気管支肺胞洗浄における合計の細胞数に対するLPSエアロゾル露出の1時間前(−1時間)及び1時間後(+1時間)の、PA401の気管支内投与に対する用量応答活性を示す図。ANOVAに続いてDunnettの試験:ビヒクル試験した動物に対して*p<0.05、**p<0.01。
【図22】LPSの8時間後に採取した気管支肺胞洗浄における好中球の数に対するLPSエアロゾル露出の1時間前(−1時間)及び1時間後(+1時間)の、PA401の気管支内投与に対する用量応答活性を示す図。ANOVAに続いてDunnettの試験:ビヒクル試験した動物に対して*p<0.05、**p<0.01。
【0016】
発明の詳細な説明
CXCL−8媒介肺炎症は、患者の肺における好中球浸潤を導くことができる。
【0017】
本発明は、好中球浸潤を有する肺炎症の予防又は治療のための使用のための、それぞれ野生型IL−8と比較して、増加されたGAG結合アフィニティー、及びさらに阻害又は下方制御されたGPCR活性を有する改質インターロイキン8(IL−8)を含む。好中球浸潤を有する肺炎症の治療のための本発明において使用されるような改質されたIL−8分子は、GAG、IL−8特異的GAGリガンドに対して増加したアフィニティーを導くGAG(グリコサミノグリカン)結合領域において改質される。改質は、自然に生じるGAG結合領域であってよく、又は代わりに、新たなGAG結合領域が、GAGに対する増加したアフィニティーをもたらす前記分子中で導入されうる。少なくとも1つの自然に生じるアミノ酸をアミノ酸、有利には塩基性又は電子供与性アミノ酸に置換すること、並びに/又は少なくとも1つの嵩高な及び/又は酸性アミノ酸をGAG結合領域中で置換することによって、人工の及び/又は改良したGAG結合部位が、前記タンパク質に導入される。この方法によって、全体のより電気陰性の分子の特徴が、ケモカイン中に導入されうる。
【0018】
主な目的は、塩基性又は電子供与性アミノ酸、有利にはArg、Lys、His、Asn及び/又はGlnの相対量を、前記部位におけるアミノ酸の合計量と比較して、増加することであり、それによって、得られたGAG結合部位が、有利には少なくとも3つの塩基性アミノ酸、さらに有利には少なくとも4つの、最も有利には少なくとも5つのアミノ酸を含有する。これは、そのHSPG共受容体からケモカインを基礎としたGAGアンタゴニストに競合しているwtIL−8を導く。
【0019】
特定の一実施態様において、GAG結合部位は、GAG結合アフィニティーを増加するために改質されたC末端のアルファヘリックスである。
【0020】
"嵩高なアミノ酸"の用語は、長い又は立体的に妨害側鎖を有するアミノ酸を意味し、特にTrp、Ile、Leu、Phe、Tyrである。有利には、ケモカイン上のGAG結合部位は、嵩高なアミノ酸を有さず、GAGリガンドによる最適な誘導適合を可能にする。有利には、IL−8における17位、21位、70位及び/又は71位は、Arg、Lys、His、Asn及び/又はGlnによって置換される。最も有利には、IL−8の全ての4つの17位、21位、70位及び71位は、Arg、Lys、His、Asn及び/又はGln、有利にはLysによって置換される。
【0021】
本発明において使用される改質されたIL−8は、阻害又は下方制御された受容体結合領域、特にGPCR(Gタンパク質結合受容体)結合も含む。従って、本発明によるタンパク工学による不活性化は、好中球活性の促進において低減された又は好中球活性を促進することができないIL−8分子を導く。
【0022】
これは、一方でGAG結合アフィニティーが、野生型GAG結合タンパク質よりも高い全体的なアプローチのために意味し、その結果、改質タンパク質は、野生型タンパク質の代わりに、大部分は結合する。他方で、タンパク質がGAGに結合される場合に主に生じる野生型タンパク質のGPCR活性は、阻害又は下方制御される。それというのも、改質されたタンパク質が、この特定の活性で実施されず、又はより小さい範囲までこの活性が実施される。
【0023】
受容体結合領域は、欠失、挿入、並びに/又は、例えばアラニン、立体及び/又は静電的に同様の残基での置換によって改質されうる。受容体結合領域において、少なくとも1つのアミノ酸を欠失又は挿入又は置換することが可能である。
【0024】
使用される改質IL−8において、GPCR結合領域は、最初の10個のN末端アミノ酸内に位置する。最初のN末端アミノ酸は、白血球活性中に含まれ、それによって特にGlu−4、Leu−5及びArg−6は、受容体結合及び活性化のために必須であるべきと認識される。従って、それらの3つ又は最初の10個までのN末端のアミノ酸は、受容体結合及び活性を阻害又は下方制御するために置換又は欠失されうる。
【0025】
例えば、改質されたIL−8は、欠失された最初の6個のN末端アミノ酸を有してよい。前記のように、この突然変異体は全くないか、白血球をより少ない程度で結合し、かつ活性化し、及び/又は好中球の活性を促進し、結果として特に臓器移植拒絶の治療に適している。
【0026】
有利には、改質されたIL−8は、del6F17RE70KN71R、del6F17RE70RN71K、del6E70KN71K、del6F17RE70RN71K、及びdel6F17KF21KE70KN71Kからなる群から選択される。
【0027】
改質されたIL8分子のアミノ酸配列は、有利には、一般式
[X1はアミノ酸配列SAKELRであり、
X2は、アミノ酸配列CQCIであり、
X3は、R、K、H、N及び/又はQからなる群から選択され、有利にはRであり、
X4は、R、K、H、N及び/又はQからなる群から選択され、
X5は、R、K、H、N及び/又はQからなる群から選択され、有利にはKであり、
X6は、R、K、H、N及び/又はQからなる群から選択され、有利にはKであり、
かつn及び/又はmは、0又は1である]によって記載される。
【0028】
好ましい一実施態様において、改質されたIL−8分子の配列は
であり、その際最初の6つのアミノ酸(SAKELR)は、消失される。
【0029】
有利には、改質されたIL−8は、WO 05/054285において開示されているような改質されたIL−8と類似又は同一である。
【0030】
組成物の投与は、静脈内経路、筋肉内経路又は皮下経路によってよい。それぞれの成分の所望の血中レベルを確立してよい他の投与経路、例えば全身投与又は吸入も含まれる。
【0031】
特に、肺、有利には吸入又は気管内投与に対する局所デリバリーは、有利な投与形式であることが示されている。従って、改質されたIL−8を、吸入剤として調合することができ、かつ当業者に公知の吸入システムによって投与することができる。改質されたIL−8は、液体、エアロゾル又は粉末として調合されうる。
【0032】
本発明による組成物を含有する医薬品は、製剤学的に認容性のキャリヤーと共に調合されうる。
【0033】
"製剤学的に認容性の"とは、活性成分の生物学的活性の有効性と干渉せず、かつ投与される宿主に対して毒性のない、あらゆるキャリヤーを包含することを意味する。例えば、非経口投与のために、改質されたIL−8は、ビヒクルにおける注入のための単一投与型、例えば食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン及びリンガー溶液中で調合されてよい。さらに、製剤学的に認容性のキャリヤーは、少量の添加剤、例えば安定剤、付形剤、緩衝液及び保存薬も含まれうる。
【0034】
組成物を含有する改質されたIL−8は、好中球浸潤によって特徴付けられるあらゆる肺炎症疾患を予防又は治療するための医薬品を製造するために使用される。より詳述すれば、これらの疾患は、例えば慢性閉塞性肺疾患、膵膿疱性繊維症、重症喘息、気管支炎、急性肺損傷及び急性呼吸困難症であってよい。
【0035】
特に、改質されたIL−8は、COPDの治療のために使用される。
【0036】
代わりの一実施態様として、好中球性喘息又は増悪の予防又は治療は、特に本明細書に従って改質されたIL−8を使用して含まれる。
【0037】
本発明によって、LPS吸入によって誘発されるあらゆる肺炎症も、治療又は予防されうる。それというのも、LPSが、IL−8発現を誘発する主な因子(感染症におけるケモカイン及びケモカイン受容体)の1つであるからである。(Mahalingam S, Karupiah G., Immunol Cell Biol. 1999 Dec;77(6):469−75)。LPSは、グラム陰性菌における壁の構成成分であり、かつ従ってグラム陰性菌の感染が生じる場合に存在し、又は汚染物質において及びタバコの葉において存在する。
【0038】
代わりに、改質されたIL−8の治療的有効量を被験者に投与することを含むことを必要とする被験者における好中球浸潤を有する肺炎症の治療方法は、本発明によって覆われる。特に、前記投与は、吸入によって又は気管内投与による。
【0039】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
特に、好中球は、痰及び気管支肺胞洗浄(BAL)試料において、COPD患者の肺中で最も豊富な炎症細胞であることが知られている(Nocker et al. 1996; Peleman et al. 1999)。タバコの煙は、おそらく骨髄からの移動を増加させることによって(Cowburn et al. 2008)、好中球の循環の上昇の原因であり、かつ肺毛細血管へのそれらの滞留は、肺循環を出る。この特徴は、肺循環に関して特有である。それというのも、全身的な循環において、好中球が、後毛細管小静脈のレベルで出るからである。
【0040】
好中球は、そして、気管支の壁に及び肺柔組織まで移動する(Peleman at al. 1999; Kim et al. 2008)。続く、酸素種とエラスターゼとの反応の放出での好中球の活性は、肺損傷及び慢性機能不全の主な原因と考えられる。実際に、血中好中球は、以前から、最大努力呼気肺活量に関して測定された肺機能における低下率に関連がある(FEV; Sparrow et al. 1984)。
【0041】
CXCL8レベルは、病気の進行の種々のステージ(健康な状態に対して10〜15倍増加)でのCOPD患者の痰及びBALにおいて著しく上昇し、かつ疾患の選択性及び好中球の存在に関係し(Yamamoto et al. 1997; Tanino et al. 2002)、好中球移動に含まれるキーケモカインとしてCXCL8が同定される(Woolhouse et al. 2002)。さらに、CXCL8の上昇レベルは、憎悪中にCOPD患者の痰中にも存在する(Aaron et al. 2001;Spruit et al. 2003)。
【0042】
膵膿疱性繊維症
膵膿疱性繊維症(CF)は、欠陥的上皮塩素分泌を導くCF膜コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子における種々の突然変異を有する、外分泌腺中のイオン輸送の重症な単一遺伝子疾患である(Riordan 1989; Ratjen 2009)。外分泌腺の管における脱水及び粘膜分泌の填塞は、特に胃腸、肝胆道、生殖管及び気道における多臓器臨床兆候に罹患しやすくする。
【0043】
慢性細菌感染及び肺の炎症は、CF患者にける罹患率及び死亡率の主な原因である(Ratjen 2006)。年齢の増加と共に、CF患者は、気道閉塞が生じ、かつそれらの患者の多くは、気道過敏症及び喘息様症状にも苦しむ。
【0044】
多くの炎症性サイトカインは、CF患者における気道において製造される(Sagel et al. 2002)。いくつかの研究は、BAL及び痰におけるCXCL−8の増加レベル、並びにCFを有する患者の気管支腺におけるCXCL8の増加した発現を記録している(Nakamura et al. 1992; Tabary et al. 1998)。その効力のある好中球化学誘因物質の特性は、気道における大量の好中球の流入を刺激する(Chmiel et al. 2002)。さらに、CFの子供からの好中球は、CFを有さないものと比較して、in vitroでCXCL8に高い遊走応答性を示し、その際持続的に上昇させたCXCL8レベルが、"第一の"CF好中球であってよいことを示唆している(Brennan et al. 2001)。
【0045】
CF好中球及びCFTR突然変異体を有する気管支上皮細胞のin vitroでの共培養に対する最近の研究において、CF患者において、多くの数の気道上皮上への、及び上昇したCXCL8レベルと関連のある非アポトーシス性好中球付着は、持続性の及び過度の気道における炎症反応に寄与することが示唆されている(Tabary et al. 2006)。
【0046】
実際に、Na−Clの平衡異常は、最初にCXCL8の増加した製造及び続く好中球浸潤の原因であると思われる。細菌性感染は、さらに、CXCL8レベルを増加し、いっそう肺へ好中球を浸潤させ、そして中断することが難しい悪循環を生じ、そして慢性肺炎症をもたらす。この悪循環に対する作用は、現在、支持療法又は抗生物質のみに依存する、CF患者のための最も効果的な治療をもたらしうる。
【0047】
重症喘息
好酸球炎症は、長い間、喘息の特有の病理学的に顕著な特徴と見なされていた。しかしながら、好酸球炎症は、喘息患者の50%のみの気道において存在し(Douwes et al. 2002)、かつしばしば喘息増悪において観察されない。
【0048】
強い関連は、現在、好中球炎症と、慢性重症喘息(Little et al. 2002; Wenzel et al. 1997, Jatakanon et al 1999, Ordonez at al. 2000, Kamath et al. 2005; Fahy 2009)、小児喘息(McDougall et al. 2006)、喘息増悪(Fahy et al. 1995)、耐コルチコステロイド喘息(Green et al 2002)、夜間喘息(Martin et al 1991)、喫煙者における喘息(Chalmers et al. 2001)及び職業性喘息(Anees et al.2002)とを確立している。
【0049】
急性喘息発作中に、好酸球及び好中球が共存する(Wenzel et al 1999)が、しかし、好中球が、経時的に最も多い細胞集団になることが示唆されている。それらの起動中での存在は、疾患の重症度及び進行に比例し(Wenzel et al 1997)、かつ空気流閉塞及び減少した肺機能に関連する(Shaw et al. 2007)。好中球は、非常に重症な状態において観察される白血球数でもあり、かつしばしば突然発症によって特徴付けられる喘息の致命的な形である(突然発症喘息;Sur et al. 1993)。
【0050】
急性肺損傷(ALI)及び急性呼吸不全症候群(ARSD)
急性肺損傷(ALI)及びそのより重症な形、急性呼吸不全症候群(ARDS)は、高められた血管透過性及び増加した重症度の肺水腫形成を有する急性肺炎症によって特徴付けられる、同様の疾患の2つの異なるステージを示す(Bernard et al. 1994)。病理学は、改良された集中治療介入にもかかわらず、過去10年において増加の傾向がない非常に高い死亡率(約40%)をもたらす(Puha et al. 2009)。
ALI及びARDSにおける好中球の関与は、いくつかのグループ(Ware et al 2000; Abraham 2003)によって証明されており、かつBALにおける好中球の増加されたレベル及び増加したCXCL8レベルとその関係が報告されている(Aggarwal et al. 2000)。さらに、BALにおけるレベルの上昇したCXCL8は、リスクの高い患者に対するARDSの発達と関連がある(Donnelly et al. 1993; Reid et al. 1995)。
【0051】
肺において、グリコサミノグリカン(GAG)は、間質の非線維性区画の主な成分であり、かつ上皮下組織中に及び気管支壁中に、並びに気道分泌物中にある。それらの存在は、水分補給及びホメオスタシスを調整すること、組織構造を維持すること、及び炎症反応を調整することを必須とする(例えばSouza−Fernandes et al. 2006)。
【0052】
他の人間の病理学と比較して、肺の疾患において系もカイン作用を媒介するGAGの介入を支持する多くの文献は存在しない。
【0053】
ヘパリン/ヘパラン硫酸、コンドロイチン/デルマタン硫酸、ケラチン硫酸及びヒアルロナンを含むグリコサミノグリカンの全ての4つの種類が、通常の肺において存在する。ヘパラン硫酸は、主な形(〜40%)と報告されており、続いてコンドロイチン/デルマタン硫酸(〜31%)であり、より少ない範囲としてヒアルロナン(〜14%)、及びケラチン硫酸である(Frevert et al. 2003)。
【0054】
前記は、次の実施例に関してより完全に理解されうる。かかる実施例は、しかしながら、単に本発明の1つ以上の実施態様を実施する方法の代表に過ぎず、かつ本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0055】
実施例
ほとんど、全ての肺の病理学、肺血管透過率及びマトリックスが観察されない場合を考慮すると、PA401(del6F17KF21KE70KN71K IL−8突然変異体)の全身投与が、適正な双方の肺血管でのPA401のレベル及び上皮レベルに達することに適当であるべきである。
【0056】
実施例1:
PA401は、マウスにおけるLPS誘発性急性肺炎症モデルに対して効果がある。
【0057】
種々の刺激は、肺中への好中球遊走を誘発する。最も頻繁に使用され、かつ良好に特徴付けられた炎症誘発因子の中には、グラム陰性菌(リポ多糖:LPS)の菌体内毒素がある。
【0058】
鼻腔内に滴下された、又はエアロゾル化して散布したLPSは、攻撃後4〜8時間に達せられるピークレベルで、及びマウスにおいて24時間までの間の基準線を著しく越えたままである、肺血管、間質及びBAL(Reutershan et al. 2005)における好中球浸潤に依存する投与量及び時間を生じる。
【0059】
投与されるLPS投与量は、LPS血清型、適用方法、及び使用したマウスの染色に依存して、0.1μg/マウスまで低く、800μg/マウスまでのLPSの投与量に関して報告されている著しいBAL好中球で変化する。
【0060】
LPS吸入は、種を超えて肺好中球浸潤を誘発することができる(例えばマウス及びラット、Chapman et al.2007;モルモット、Wu et al. 2002;ウサギ、Smith et al. 2008;ヒツジ、Waerhaug et al. 2009;ウマ、van den Hoven et al. 2006;イヌ、Koshika et al. 2001)。健康な被験者における1〜100gのLPSの吸入は、急性肺炎症(Maris et al. 2005, Kitz et al. 2008)及び慢性閉塞性肺疾患増悪(Kharitonov et al, 2007)のための、確固とした及び信頼できるモデルと見なされている。
【0061】
急性肺好中球のモデルにおける抗炎症薬としてのPA401の潜在性を評価するために、LPS(0.3μg/マウス、血清型緑膿菌)を鼻腔内滴下したC57BL/6Jのメスのマウスにおける4、40、200及び400μg/Kgの投与量でのPA401の皮下投与での投与応答の研究を実施した。擬似滴下(食塩水)した動物、及びデキサメタゾン3mg/kg(皮下)(LPS滴下前のt=−1時間で投与した)処理した動物を、対照として使用した。気管支肺胞洗浄(BAL)を、LPS滴下の4時間後に実施し、そしてBAL試料に対する合計細胞計数及びBALサイトスピンでの種々の細胞計数を測定した。
【0062】
PA401は、BAL液体において評価された肺において滴下された細胞の合計数における投与量依存の減少を誘発した(図1)。その作用は、4g/kgと低いPA401の投与に関する著しい作用での好中球(図2)及びリンパ球(図3)の数における著しい減少によった。驚くべきことに、200〜400g/kgの投与量でのPA401で得られたBALにおける細胞浸潤の阻害は、デキサメタゾンの高い投与量(3mg/kg)での治療で得られたものと比較できた。この研究は、英国のArgenta Discovery Ltdで行われた。
【0063】
実施例2
第二の研究は、異なるマウスの系統及び性別(C57BL/6Jの代わりにオスのBalb/c)、異なるLPS系統及び血清型(E. Coliの代わりにサルモネラ菌)、及び異なるLPS投与(鼻腔内の代わりに、エアロゾルで、30分にわたって3.5mg/1mL)を含む、わずかに異なるモデルを使用して実施した。4、40及び400g/kgのPA401投与量を、LPS露出からt=−5及びt=+3時間で皮下経路又は静脈内経路によって投与した。BAL合計及び種々の細胞計数を、t=8時間で測定し、最も遅い時点を、以前の研究と比較した。
【0064】
食塩水をエアロゾル化して散布したマウス及びデキサメタソンの気管内投与(t=−1時間で20μg/20μlマウス)を受けたマウスを、対照として使用した。
【0065】
この場合において、PA401は、BALにおける合計細胞の数におけるかなり著しい減少(図4)を、好中球計数における減少(図5)によって、誘導した。PA401の活性は、さらに明らかに、皮下経路によるよりも静脈内によって投与された場合に、デキサメタゾンの気管内投与の同様の阻害効果に達した。この研究は、英国のPneumolabs Ltdで行われた。
【0066】
これらの研究は、ヒトALI/ARDS及びCOPD増悪に類似している2つの急性肺好中球炎症の動物モデルにおける皮下経路又は静脈内経路によって投与されたPA401の強い活性を証明した。この効果は、動物の性別又は遺伝的背景、LPS血清型、及び鼻腔内滴下及びエアロゾル化曝露後とは無関係に得られた。
【0067】
実施例3
PA401は、タバコの煙が誘発する肺炎症の急性モデルで作用する。マウスのタバコの煙への急な曝露は、少なくとも1部分で、COPD患者において観察される肺炎症に似ている肺反応を導く。種々のマウスの系統は、急なタバコの煙の曝露に従って、肺炎症の変動する程度を示す(Guerrassimov et al. 2004, Vlahos et al. 2006)。マウスにおける反応におけるこの遺伝的変動性は、ヒトの喫煙者の中でCOPDを発達する変動する罹患率を表し、従って、このモデルは、ヒトの病理学をモデルとするために、最も関連性があると考えられる。
【0068】
肺炎症は、C57BL/6Jメスのマウス(影響されやすい系統)において、4日間にわたって4〜6本のタバコの煙にさらすことによって、誘発された。気管支肺胞洗浄での細胞浸潤に対する、煙曝露からの、t=+30分及びt=+6時間で投与された4、40及び400g/kgの投与量での皮下PA401治療の投与応答活性は、最後のタバコの煙にさらした24時間後に上昇した。空気曝露、及びロフルミラスト(5mg/kg(経口))で処理した動物を対照として与えた。
【0069】
COPDのこの動物モデルにおいても、PA401投与は、依存して、BALにおいて回復した合計細胞数における増加を誘発したタバコの煙を阻害した。
【0070】
合計細胞浸潤に対する非常に著しい効果を、40及び400h/kgで観察した(図6)。使用した最も高い投与量で、PA401は、好中球(図7)、マクロファージ(図8)、上皮細胞(図9)及びリンパ球(図10)のBALにおける数を著しく減少した。これらの細胞亜型に対する著しい効果を、研究において使用した他の2つの投与量に関しても観察した。400g/kgのPA401の阻害効果を、ロフルミラスト5mg/kgで得られたものと比較した。この研究は、英国のArgenta Discovery Ltdで行われた。
【0071】
PA401
この研究は、タバコの煙への曝露を示した4日によって誘発された、混合した細胞浸潤に対するPA401の活性、及びCOPD患者における抗炎症活性の前兆となる動物モデルを証明する。
【0072】
実施例4
PA401は、タバコの煙が誘発する肺炎症の亜慢性モデルで作用する。
【0073】
この研究において、肺炎症を、11日間にわたって、4〜6本のタバコの煙にさらすことによって、C57BL/6Jのメスのマウスにおいて誘発した。実施例3における研究に基づいて、気管支肺胞洗浄に対する細胞浸潤に対する、1回は1日3時間(1日4回)及び隔日(q.o.d)は+3時間での煙の曝露(1日2回)からt=−30分及びt=+6時間で投与した400g/kgの最適投与量での皮下PA401治療の投与頻度活性を、最後のタバコの煙にさらした24時間後に測定した。空気曝露、及びロフルミラスト(5mg/kg(経口))で処理した動物を対照として与えた。
【0074】
合計細胞浸潤に対する著しい効果を、1日2回、毎日及び隔日投与後に観察した(図11)。使用したすべての処理頻度で、PA401は、BALにおける好中球(図12)及び上皮細胞(図13)の数が著しく減少した一方で、b.i.d.及びq.d.投与で得られたリンパ球(図14)及びマクロファージ(図15)における著しい減少は、PA401が隔日で投与された場合にはみられなかった。2回1日1回投与したPA401の阻害効果を、ロフルミラスト5mg/kgで得られたものと比較した。この研究は、英国のArgenta Discovery Ltdで行われた。
【0075】
PA401
この研究は、1日2回及び1日1回の控えの400μg/kgの投与量でのPA401投与が、タバコの煙への11日間繰り返した曝露によって誘発された混合した細胞浸潤に対して同等の活性を有することを証明する。
【0076】
実施例5
PA401は、タバコの煙が誘発する肺炎症の亜慢性モデルで作用する。
【0077】
この研究において、肺炎症を、11日間にわたって、4〜6本のタバコの煙にさらすことによって、C57BL/6Jのメスのマウスにおいて誘発した。 毎日の皮下への400μg/kgの投与量でのPA401を、毎日の皮下への40μg/kgの投与量と比較した。処理をt+3時間で実施し、そして気管支肺胞洗浄に対する細胞浸潤に対する作用を、最期のタバコの煙にさらした24時間後に評価した。空気曝露、ロフルミラスト(5mg/kg(経口))処理した動物、及びCXCR2アンタゴニストSCH527123で処理した動物(1日2回10mg/kg(経口)−合計日投与量20mg/kg)を、対照として扱った。
【0078】
合計細胞浸潤に対する著しい効果を、400及び40μg/kgの投与後に観察した(図16)。これは、BALにおける好中球(図17)、上皮細胞(図18)、リンパ球(図19)及びマクロファージ(図20)の数における著しい減少によった。400μg/kgの投与量で投与されたPA401の阻害効果を、5mg/kgのロフルミラスト及び20mg(10mg/kgを1日2回)のCXCR2アンタゴニストSCH527123で得られたものと比較した。この研究は、英国のArgenta Discovery Ltdで行われた。
【0079】
PA401
この研究は、タバコの煙への11日間繰り返した曝露によって誘発された混合した細胞浸潤に対して、皮下に400μg/kg及び40μg/kgの投与量で1日1回投与したPA401の活性を証明する。
【0080】
実施例6
肺への局所デリバリー後の肺炎症におけるPA401効果
実験を、LPSで誘発される肺炎症の動物モデルにおける肺への局所デリバリー後に、PA401の活性を検証するために実施した。
【0081】
この実験において、肺炎症を、オスのBalb/cマウスにおけるエアロゾル(サルモネラ菌、30分にわたって3.5mg/7mL)によるLPSのデリバリーよって誘発した。PA401を、MicroSprayer(FJM−250 syringe; PennCentury)、直接肺にエアロゾル(質量中央径16〜22μm)の煙流のデリバリーを可能にする装置を使用して気管内(i.t.)に投与した。PA401のi.t.投与を、LPS曝露の1時間前、又はLPS曝露の修了1時間後に、100、40、10及び4g/kgの投与量で実施した。気管支肺胞洗浄(BAL)をLPS曝露の8時間後に実施し、そして合計細胞及び好中球の数を測定した。デキサメタゾン20g/20l(マウス、i.t.)を参照化合物として使用した。
【0082】
PA401は、主に好中球数の減少(図22)によって、BALにおける合計細胞の著しい投与量依存減少(図21)を誘発した。治療処置(t=+1時間)は、著しい活性である100、40及び10g/kgの投与量での予防処置(−1時間)と比較して、約10%改良した活性をもたらした。
【0083】
図21は、LPSの8時間後に採取した気管支肺胞洗浄における合計の細胞数に対するLPSエアロゾル露出の1時間前(−1時間)及び1時間後(+1時間)の、PA401の気管支内投与に対する用量応答活性を示す。ANOVAに続いてDunnettの試験:ビヒクル試験した動物に対して*p<0.05、**p<0.01。
【0084】
図22は、LPSの8時間後に採取した気管支肺胞洗浄における好中球計数に対するLPSエアロゾル露出の1時間前(−1時間)及び1時間後(+1時間)の、PA401の気管支内投与に対する用量応答活性を示す。ANOVAに続いてDunnettの試験:ビヒクル試験した動物に対して*p<0.05、**p<0.01。
【0085】
これらのデータは、肺への局所デリバリーに続くPA401の活性を証明し、慢性的な肺への適用のための静脈内又は皮下投与の代替品として、通常の良好な患者のコンプライアンスを有する、この投与形路の使用に対する可能性を開く。
【0086】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好中球浸潤での肺炎症を予防する又は治療するための、特にCXCL8媒介肺炎症の予防又は治療のための、それぞれ野生型IL−8と比較して増加させたGAG結合アフィニティー及び阻害させた又は下方制御させた受容体結合アフィニティーを有する媒介させたインターロイキン(IL−8、CXCL8)の新たな使用に関する。特に、吸入剤として媒介させたIL−8の使用を提供する。
【0002】
発明の背景:
肺炎症疾患は、ヒト集団及び効果的な治療の欠如におけるそれらの優位さを考慮して特に関連がある。特に、好中球の炎症を増加させることを示した肺炎症は、慢性閉塞性肺疾患、膵嚢胞性繊維症、慢性重症喘息及びよりその重症型と共に急性肺損傷、急性呼吸困難症候群である。
【0003】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、2020(Lopez et al. 1998)によって世界的に三番目の死因になると予測されている進行性の衰弱性疾患である。タバコの煙は、その発達のための最も重要な病因として確立されているが、しかしながら、15〜20%のみの煙でCOPDは発達し、遺伝的構成及び他の環境因子が疾患の病原論における役割を果たすことが示唆されている。
【0004】
患者の肺において観察されるCOPDでの炎症反応は、複雑であり、かつ先天性の及び後天性の免疫反応の活性を含む。しかしながら、疾患の進行は、白血球遊走、炎症誘発性サイトカイン及びケモカインの製造、並びに潜在的な破壊性プロテアーゼによって左右される(Kim et al. 2008)。
【0005】
特に、好中球は、痰及び気管支肺胞洗浄(BAL)試料において、COPD患者の肺中で最も豊富な炎症細胞であることが知られている(Nocker et al. 1996; Peleman et al. 1999)。CXCL8レベルは、疾患の進行の異なるステージ(健康な状態に対して10〜15倍増加)でCOPD患者の痰及びBALにおいて著しく上昇し、かつ疾患の重さ及び好中球の存在に関連し(Yamamoto et al. 1997; Tanino et al. 2002)、その際好中球移動中に含まれるキーケモカイン(key chemokine)としてCXCL8を同定する(Woolhouse et al. 2002)。さらに、CXCL8の上昇レベルは、増悪中にCOPD患者の痰中にも存在する(Aaron et al. 2001;Spruit et al. 2003)。
【0006】
しかしながら、現在の治療は、支持療法及び対症療法としてより作用し、抗炎症活性を有する。世界保健機関及びGOLDの推奨に基づいてCOPDの管理のために使用される薬剤は、短時間及び長時間作用性のβ2アゴニスト、短時間及び長時間作用性の抗コリン作用薬、メチルキサンチン、吸入型又は全身性グルココステロイド(glucocosteroid)を含む(Pauwels et al., 2005; Lenfant and Khaltaev 2005)。それらの治療は、急性増悪を調整することに対するいくつかの効果を有するが、しかし従来のグルココルチコステロイドでの治療は、主に効果をもたらさず、かつCOPDを有する患者における弱毒化炎症を欠き(Culpitt et al. 1999; Fitzgerald et al. 2007)、新たな抗炎症戦略の開発の必要を強調している(Fabbri et al 2004)。
【0007】
他の好中球の炎症によって特徴付けられる肺疾患は、膵嚢胞性繊維症(CF)である。いくつかの研究は、BAL及び痰におけるCXCL−8の増加レベル、並びにCFを有する患者の気管支腺におけるCXCL8の増加した発現を記録している(Nakamura et al. 1992; Tabary et al. 1998)。その効力のある好中球化学誘因物質の特性は、気道における大量の好中球の流入を刺激する(Chmiel et al. 2002)。細菌性感染は、さらに、CXCL8レベルを増加し、いっそう肺へ好中球を浸潤させ、そして中断することが難しい悪循環を生じ、そして慢性肺炎症をもたらす。CXCL8誘発性炎症に対して作用する治療、例えばPA401でのこの悪循環に対する作用は、現在、気管支拡張及び粘液溶解薬又は抗生物質での支持療法のみに依存する、CF患者のための最も効果的な治療をもたらす。
【0008】
10人の喘息患者のうち1人は、しばしば、症状を調整するための試みにおいて徐々に高いステロイドの投与量を要求する、重症な前記疾患を示す。重症喘息は、より軽少であるよりも、疾病及び死の非常に高い危険性とも関連する。
【0009】
強い関連は、現在、好中球炎症と、慢性重症喘息(Little et al. 2002; Wenzel et al. 1997, Jatakanon et al 1999, Ordonez at al. 2000, Kamath et al. 2005; Fahy 2009)、小児喘息(McDougall et al. 2006)、喘息増悪(Fahy et al. 1995)、耐コルチコステロイド喘息(Green et al 2002)、夜間喘息(Martin et al 1991)、喫煙者における喘息(Chalmers et al. 2001)及び職業性喘息(Anees et al.2002)とを確立している。慢性好中球重症喘息が、その増加が喘息症状において示し、かつCOPDを有する特徴を共有するよりむしろ、明らかに異なる臨床表現型を示すことが、現在ますます認識されている(ENFUMOSA研究グループ)。慢性重症喘息の場合においても、上皮細胞誘発CXCL8は、主な好中球化学誘因物質として最も有望な候補であり(Lamblin et al. 1998; Ordonez et al. 2000)、新たな抗炎症治療の開発のための潜在的な候補である。
【0010】
本発明の目的は、従って、好中球で浸潤される肺炎症病理の予防又は治療のための方法を提供することである。
【0011】
発明の要約
本発明は、それぞれ野生型のIL−8と比較した、増加させたGAG結合アフィニティー及び阻害又は下方制御させたGPCR(Gタンパク質結合受容体、すなわちCXCR1及びCXCR2)活性を有する改質したインターロイキン8(IL−8)を、好中球浸潤での肺炎症の予防及び治療のために使用することの発見に基づく。特に、IL−8の増加レベルが、疾患の進行及び重症さを有し、それらと関連するCOPDにおいて及びCOPD増悪において(Yamamoto et al. 1997; Tanino et al. 2002)、好中球移動において含まれるキーケモカインを標的とした治療発明(Woolhouse et al. 2002)は、有益な抗炎症活性を提供する。さらに、それらの患者のための最新の治療は、支持療法及び症状療法に依存する一方で、従来のグリココルチコステロイドの適用が、主に効果がないことを証明し(Culpitt et al. 1999; Fitzgerald et al. 2007)、新たな抗炎症戦略の開発の要求を強調している(Fabbri et al. 2004, de Boer et al. 2007)。
【0012】
改質したIL−8の使用が、既に、肺における高レベルの好中球炎症を欠いた"通常の"喘息の治療のために簡単に記載されているが、好中球浸潤を有する肺炎症の治療及び予防のための前記の改質IL−8分子の成功した使用は、以前鋳示されておらず、又は示されていない。前記改質IL−8分子の抗喘息活性は、他の、喘息に関連したケモカイン、例えばエオタキシンの非特異的又は続発性の置換から生じる。
【0013】
阻害又は下方制御された活性は、少なくとも、GPCRの活性化による好中球の活性化の減少又は完全な欠失である。CXCL−8媒介肺炎症又はIL−8誘発好中球浸潤が特定の肺疾患において有意であることが長く確立されてきたが、前記改質IL−8、"タンパク質を基礎としたGAGアンタゴニスト"は、好中球浸潤での肺炎症疾患の予防又は治療におけるかかる効力を有することは、報告又は示唆されていない。
【0014】
従って、本発明の主題は、それぞれ野生型IL−8と比較して、増加させたGAG結合アフィニティー及び阻害又は下方制御させたGPCR活性を、個々の好中球浸潤での肺炎症疾患の予防又は治療のための使用のために提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】LPSを点滴注入したマウスの気管支肺胞洗浄における合計細胞浸潤に対するPA401の用量応答効果を示す図。
【図2】LPSを点滴注入したマウスの気管支肺胞洗浄のサイトスピンにおける好中球の数に対するPA401の用量応答効果を示す図。
【図3】LPSを点滴注入したマウスの気管支肺胞洗浄のサイトスピンにおけるリンパ球の数に対するPA401の用量応答効果を示す図。
【図4】LPSをエアロゾル化にして散布したマウスの気管支肺胞洗浄における合計細胞浸潤に対するPA401の用量応答効果を示す図。
【図5】LPSをエアロゾル化にして散布したマウスの気管支肺胞洗浄のサイトスピンにおける好中球の数に対するPA401の用量応答効果を示す図。
【図6】4日間タバコの煙にさらしたマウスの気管支肺胞洗浄における合計細胞浸潤に対するPA401(図6a)及びロフルミラスト(図6b)の用量応答効果を示す図。
【図7】4日間タバコの煙にさらしたマウスの気管支肺胞洗浄における好中球浸潤に対するPA401(図7a)及びロフルミラスト(図7b)の用量応答効果を示す図。
【図8】4日間タバコの煙にさらしたマウスの気管支肺胞洗浄におけるマクロファージ浸潤に対するPA401(図8a)及びロフルミラスト(図8b)の用量応答効果を示す図。
【図9】4日間タバコの煙にさらしたマウスの気管支肺胞洗浄における上皮細胞浸潤に対するPA401(図9a)及びロフルミラスト(図9b)の用量応答効果を示す図。
【図10】4日間タバコの煙にさらしたマウスの気管支肺胞洗浄におけるリンパ球浸潤に対するPA401(図10a)及びロフルミラスト(図10b)の用量応答効果を示す図。
【図11】PA401(図11a)の1日2回、毎日及び隔日の投与後の合計細胞浸潤に対する効果、及びロフルミラストとの比較(図11b)を示す図。
【図12】PA401(図12a)による全ての治療頻度での好中球の減少、及びロフルミラストとの比較(図12b)を示す図。
【図13】PA401(図13a)による全ての治療頻度での上皮細胞の減少、及びロフルミラストとの比較(図13b)を示す図。
【図14】PA401が隔日投与された場合(図14a)に、b.i.d.及びq.d.投与で得られたリンパ球における著しい減少の損失、及びロフルミラストとの比較(図14b)を示す図。
【図15】PA401が隔日投与された場合(図15a)に、b.i.d.及びq.d.投与で得られたマクロファージにおける著しい減少の損失、及びロフルミラストとの比較(図15b)を示す図。
【図16】400〜40g/kg投与後に観察された合計細胞浸潤に対するPA401の効果(図16a)、ロフルミラストとの比較(図16b)を示す図。
【図17】BALにおける好中球の数の減少(PA401、図17a及びロフルミラスト、図17b)を示す図。
【図18】BALにおける上皮細胞の数の減少(PA401、図18a及びロフルミラスト、図18b)を示す図。
【図19】BALにおけるリンパ球の数の減少(PA401、図19a及びロフルミラスト、図19b)を示す図。
【図20】BALにおけるマクロファージの数の減少(PA401、図20a及びロフルミラスト、図20b)を示す図。
【図21】LPSの8時間後に採取した気管支肺胞洗浄における合計の細胞数に対するLPSエアロゾル露出の1時間前(−1時間)及び1時間後(+1時間)の、PA401の気管支内投与に対する用量応答活性を示す図。ANOVAに続いてDunnettの試験:ビヒクル試験した動物に対して*p<0.05、**p<0.01。
【図22】LPSの8時間後に採取した気管支肺胞洗浄における好中球の数に対するLPSエアロゾル露出の1時間前(−1時間)及び1時間後(+1時間)の、PA401の気管支内投与に対する用量応答活性を示す図。ANOVAに続いてDunnettの試験:ビヒクル試験した動物に対して*p<0.05、**p<0.01。
【0016】
発明の詳細な説明
CXCL−8媒介肺炎症は、患者の肺における好中球浸潤を導くことができる。
【0017】
本発明は、好中球浸潤を有する肺炎症の予防又は治療のための使用のための、それぞれ野生型IL−8と比較して、増加されたGAG結合アフィニティー、及びさらに阻害又は下方制御されたGPCR活性を有する改質インターロイキン8(IL−8)を含む。好中球浸潤を有する肺炎症の治療のための本発明において使用されるような改質されたIL−8分子は、GAG、IL−8特異的GAGリガンドに対して増加したアフィニティーを導くGAG(グリコサミノグリカン)結合領域において改質される。改質は、自然に生じるGAG結合領域であってよく、又は代わりに、新たなGAG結合領域が、GAGに対する増加したアフィニティーをもたらす前記分子中で導入されうる。少なくとも1つの自然に生じるアミノ酸をアミノ酸、有利には塩基性又は電子供与性アミノ酸に置換すること、並びに/又は少なくとも1つの嵩高な及び/又は酸性アミノ酸をGAG結合領域中で置換することによって、人工の及び/又は改良したGAG結合部位が、前記タンパク質に導入される。この方法によって、全体のより電気陰性の分子の特徴が、ケモカイン中に導入されうる。
【0018】
主な目的は、塩基性又は電子供与性アミノ酸、有利にはArg、Lys、His、Asn及び/又はGlnの相対量を、前記部位におけるアミノ酸の合計量と比較して、増加することであり、それによって、得られたGAG結合部位が、有利には少なくとも3つの塩基性アミノ酸、さらに有利には少なくとも4つの、最も有利には少なくとも5つのアミノ酸を含有する。これは、そのHSPG共受容体からケモカインを基礎としたGAGアンタゴニストに競合しているwtIL−8を導く。
【0019】
特定の一実施態様において、GAG結合部位は、GAG結合アフィニティーを増加するために改質されたC末端のアルファヘリックスである。
【0020】
"嵩高なアミノ酸"の用語は、長い又は立体的に妨害側鎖を有するアミノ酸を意味し、特にTrp、Ile、Leu、Phe、Tyrである。有利には、ケモカイン上のGAG結合部位は、嵩高なアミノ酸を有さず、GAGリガンドによる最適な誘導適合を可能にする。有利には、IL−8における17位、21位、70位及び/又は71位は、Arg、Lys、His、Asn及び/又はGlnによって置換される。最も有利には、IL−8の全ての4つの17位、21位、70位及び71位は、Arg、Lys、His、Asn及び/又はGln、有利にはLysによって置換される。
【0021】
本発明において使用される改質されたIL−8は、阻害又は下方制御された受容体結合領域、特にGPCR(Gタンパク質結合受容体)結合も含む。従って、本発明によるタンパク工学による不活性化は、好中球活性の促進において低減された又は好中球活性を促進することができないIL−8分子を導く。
【0022】
これは、一方でGAG結合アフィニティーが、野生型GAG結合タンパク質よりも高い全体的なアプローチのために意味し、その結果、改質タンパク質は、野生型タンパク質の代わりに、大部分は結合する。他方で、タンパク質がGAGに結合される場合に主に生じる野生型タンパク質のGPCR活性は、阻害又は下方制御される。それというのも、改質されたタンパク質が、この特定の活性で実施されず、又はより小さい範囲までこの活性が実施される。
【0023】
受容体結合領域は、欠失、挿入、並びに/又は、例えばアラニン、立体及び/又は静電的に同様の残基での置換によって改質されうる。受容体結合領域において、少なくとも1つのアミノ酸を欠失又は挿入又は置換することが可能である。
【0024】
使用される改質IL−8において、GPCR結合領域は、最初の10個のN末端アミノ酸内に位置する。最初のN末端アミノ酸は、白血球活性中に含まれ、それによって特にGlu−4、Leu−5及びArg−6は、受容体結合及び活性化のために必須であるべきと認識される。従って、それらの3つ又は最初の10個までのN末端のアミノ酸は、受容体結合及び活性を阻害又は下方制御するために置換又は欠失されうる。
【0025】
例えば、改質されたIL−8は、欠失された最初の6個のN末端アミノ酸を有してよい。前記のように、この突然変異体は全くないか、白血球をより少ない程度で結合し、かつ活性化し、及び/又は好中球の活性を促進し、結果として特に臓器移植拒絶の治療に適している。
【0026】
有利には、改質されたIL−8は、del6F17RE70KN71R、del6F17RE70RN71K、del6E70KN71K、del6F17RE70RN71K、及びdel6F17KF21KE70KN71Kからなる群から選択される。
【0027】
改質されたIL8分子のアミノ酸配列は、有利には、一般式
[X1はアミノ酸配列SAKELRであり、
X2は、アミノ酸配列CQCIであり、
X3は、R、K、H、N及び/又はQからなる群から選択され、有利にはRであり、
X4は、R、K、H、N及び/又はQからなる群から選択され、
X5は、R、K、H、N及び/又はQからなる群から選択され、有利にはKであり、
X6は、R、K、H、N及び/又はQからなる群から選択され、有利にはKであり、
かつn及び/又はmは、0又は1である]によって記載される。
【0028】
好ましい一実施態様において、改質されたIL−8分子の配列は
であり、その際最初の6つのアミノ酸(SAKELR)は、消失される。
【0029】
有利には、改質されたIL−8は、WO 05/054285において開示されているような改質されたIL−8と類似又は同一である。
【0030】
組成物の投与は、静脈内経路、筋肉内経路又は皮下経路によってよい。それぞれの成分の所望の血中レベルを確立してよい他の投与経路、例えば全身投与又は吸入も含まれる。
【0031】
特に、肺、有利には吸入又は気管内投与に対する局所デリバリーは、有利な投与形式であることが示されている。従って、改質されたIL−8を、吸入剤として調合することができ、かつ当業者に公知の吸入システムによって投与することができる。改質されたIL−8は、液体、エアロゾル又は粉末として調合されうる。
【0032】
本発明による組成物を含有する医薬品は、製剤学的に認容性のキャリヤーと共に調合されうる。
【0033】
"製剤学的に認容性の"とは、活性成分の生物学的活性の有効性と干渉せず、かつ投与される宿主に対して毒性のない、あらゆるキャリヤーを包含することを意味する。例えば、非経口投与のために、改質されたIL−8は、ビヒクルにおける注入のための単一投与型、例えば食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン及びリンガー溶液中で調合されてよい。さらに、製剤学的に認容性のキャリヤーは、少量の添加剤、例えば安定剤、付形剤、緩衝液及び保存薬も含まれうる。
【0034】
組成物を含有する改質されたIL−8は、好中球浸潤によって特徴付けられるあらゆる肺炎症疾患を予防又は治療するための医薬品を製造するために使用される。より詳述すれば、これらの疾患は、例えば慢性閉塞性肺疾患、膵膿疱性繊維症、重症喘息、気管支炎、急性肺損傷及び急性呼吸困難症であってよい。
【0035】
特に、改質されたIL−8は、COPDの治療のために使用される。
【0036】
代わりの一実施態様として、好中球性喘息又は増悪の予防又は治療は、特に本明細書に従って改質されたIL−8を使用して含まれる。
【0037】
本発明によって、LPS吸入によって誘発されるあらゆる肺炎症も、治療又は予防されうる。それというのも、LPSが、IL−8発現を誘発する主な因子(感染症におけるケモカイン及びケモカイン受容体)の1つであるからである。(Mahalingam S, Karupiah G., Immunol Cell Biol. 1999 Dec;77(6):469−75)。LPSは、グラム陰性菌における壁の構成成分であり、かつ従ってグラム陰性菌の感染が生じる場合に存在し、又は汚染物質において及びタバコの葉において存在する。
【0038】
代わりに、改質されたIL−8の治療的有効量を被験者に投与することを含むことを必要とする被験者における好中球浸潤を有する肺炎症の治療方法は、本発明によって覆われる。特に、前記投与は、吸入によって又は気管内投与による。
【0039】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
特に、好中球は、痰及び気管支肺胞洗浄(BAL)試料において、COPD患者の肺中で最も豊富な炎症細胞であることが知られている(Nocker et al. 1996; Peleman et al. 1999)。タバコの煙は、おそらく骨髄からの移動を増加させることによって(Cowburn et al. 2008)、好中球の循環の上昇の原因であり、かつ肺毛細血管へのそれらの滞留は、肺循環を出る。この特徴は、肺循環に関して特有である。それというのも、全身的な循環において、好中球が、後毛細管小静脈のレベルで出るからである。
【0040】
好中球は、そして、気管支の壁に及び肺柔組織まで移動する(Peleman at al. 1999; Kim et al. 2008)。続く、酸素種とエラスターゼとの反応の放出での好中球の活性は、肺損傷及び慢性機能不全の主な原因と考えられる。実際に、血中好中球は、以前から、最大努力呼気肺活量に関して測定された肺機能における低下率に関連がある(FEV; Sparrow et al. 1984)。
【0041】
CXCL8レベルは、病気の進行の種々のステージ(健康な状態に対して10〜15倍増加)でのCOPD患者の痰及びBALにおいて著しく上昇し、かつ疾患の選択性及び好中球の存在に関係し(Yamamoto et al. 1997; Tanino et al. 2002)、好中球移動に含まれるキーケモカインとしてCXCL8が同定される(Woolhouse et al. 2002)。さらに、CXCL8の上昇レベルは、憎悪中にCOPD患者の痰中にも存在する(Aaron et al. 2001;Spruit et al. 2003)。
【0042】
膵膿疱性繊維症
膵膿疱性繊維症(CF)は、欠陥的上皮塩素分泌を導くCF膜コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子における種々の突然変異を有する、外分泌腺中のイオン輸送の重症な単一遺伝子疾患である(Riordan 1989; Ratjen 2009)。外分泌腺の管における脱水及び粘膜分泌の填塞は、特に胃腸、肝胆道、生殖管及び気道における多臓器臨床兆候に罹患しやすくする。
【0043】
慢性細菌感染及び肺の炎症は、CF患者にける罹患率及び死亡率の主な原因である(Ratjen 2006)。年齢の増加と共に、CF患者は、気道閉塞が生じ、かつそれらの患者の多くは、気道過敏症及び喘息様症状にも苦しむ。
【0044】
多くの炎症性サイトカインは、CF患者における気道において製造される(Sagel et al. 2002)。いくつかの研究は、BAL及び痰におけるCXCL−8の増加レベル、並びにCFを有する患者の気管支腺におけるCXCL8の増加した発現を記録している(Nakamura et al. 1992; Tabary et al. 1998)。その効力のある好中球化学誘因物質の特性は、気道における大量の好中球の流入を刺激する(Chmiel et al. 2002)。さらに、CFの子供からの好中球は、CFを有さないものと比較して、in vitroでCXCL8に高い遊走応答性を示し、その際持続的に上昇させたCXCL8レベルが、"第一の"CF好中球であってよいことを示唆している(Brennan et al. 2001)。
【0045】
CF好中球及びCFTR突然変異体を有する気管支上皮細胞のin vitroでの共培養に対する最近の研究において、CF患者において、多くの数の気道上皮上への、及び上昇したCXCL8レベルと関連のある非アポトーシス性好中球付着は、持続性の及び過度の気道における炎症反応に寄与することが示唆されている(Tabary et al. 2006)。
【0046】
実際に、Na−Clの平衡異常は、最初にCXCL8の増加した製造及び続く好中球浸潤の原因であると思われる。細菌性感染は、さらに、CXCL8レベルを増加し、いっそう肺へ好中球を浸潤させ、そして中断することが難しい悪循環を生じ、そして慢性肺炎症をもたらす。この悪循環に対する作用は、現在、支持療法又は抗生物質のみに依存する、CF患者のための最も効果的な治療をもたらしうる。
【0047】
重症喘息
好酸球炎症は、長い間、喘息の特有の病理学的に顕著な特徴と見なされていた。しかしながら、好酸球炎症は、喘息患者の50%のみの気道において存在し(Douwes et al. 2002)、かつしばしば喘息増悪において観察されない。
【0048】
強い関連は、現在、好中球炎症と、慢性重症喘息(Little et al. 2002; Wenzel et al. 1997, Jatakanon et al 1999, Ordonez at al. 2000, Kamath et al. 2005; Fahy 2009)、小児喘息(McDougall et al. 2006)、喘息増悪(Fahy et al. 1995)、耐コルチコステロイド喘息(Green et al 2002)、夜間喘息(Martin et al 1991)、喫煙者における喘息(Chalmers et al. 2001)及び職業性喘息(Anees et al.2002)とを確立している。
【0049】
急性喘息発作中に、好酸球及び好中球が共存する(Wenzel et al 1999)が、しかし、好中球が、経時的に最も多い細胞集団になることが示唆されている。それらの起動中での存在は、疾患の重症度及び進行に比例し(Wenzel et al 1997)、かつ空気流閉塞及び減少した肺機能に関連する(Shaw et al. 2007)。好中球は、非常に重症な状態において観察される白血球数でもあり、かつしばしば突然発症によって特徴付けられる喘息の致命的な形である(突然発症喘息;Sur et al. 1993)。
【0050】
急性肺損傷(ALI)及び急性呼吸不全症候群(ARSD)
急性肺損傷(ALI)及びそのより重症な形、急性呼吸不全症候群(ARDS)は、高められた血管透過性及び増加した重症度の肺水腫形成を有する急性肺炎症によって特徴付けられる、同様の疾患の2つの異なるステージを示す(Bernard et al. 1994)。病理学は、改良された集中治療介入にもかかわらず、過去10年において増加の傾向がない非常に高い死亡率(約40%)をもたらす(Puha et al. 2009)。
ALI及びARDSにおける好中球の関与は、いくつかのグループ(Ware et al 2000; Abraham 2003)によって証明されており、かつBALにおける好中球の増加されたレベル及び増加したCXCL8レベルとその関係が報告されている(Aggarwal et al. 2000)。さらに、BALにおけるレベルの上昇したCXCL8は、リスクの高い患者に対するARDSの発達と関連がある(Donnelly et al. 1993; Reid et al. 1995)。
【0051】
肺において、グリコサミノグリカン(GAG)は、間質の非線維性区画の主な成分であり、かつ上皮下組織中に及び気管支壁中に、並びに気道分泌物中にある。それらの存在は、水分補給及びホメオスタシスを調整すること、組織構造を維持すること、及び炎症反応を調整することを必須とする(例えばSouza−Fernandes et al. 2006)。
【0052】
他の人間の病理学と比較して、肺の疾患において系もカイン作用を媒介するGAGの介入を支持する多くの文献は存在しない。
【0053】
ヘパリン/ヘパラン硫酸、コンドロイチン/デルマタン硫酸、ケラチン硫酸及びヒアルロナンを含むグリコサミノグリカンの全ての4つの種類が、通常の肺において存在する。ヘパラン硫酸は、主な形(〜40%)と報告されており、続いてコンドロイチン/デルマタン硫酸(〜31%)であり、より少ない範囲としてヒアルロナン(〜14%)、及びケラチン硫酸である(Frevert et al. 2003)。
【0054】
前記は、次の実施例に関してより完全に理解されうる。かかる実施例は、しかしながら、単に本発明の1つ以上の実施態様を実施する方法の代表に過ぎず、かつ本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0055】
実施例
ほとんど、全ての肺の病理学、肺血管透過率及びマトリックスが観察されない場合を考慮すると、PA401(del6F17KF21KE70KN71K IL−8突然変異体)の全身投与が、適正な双方の肺血管でのPA401のレベル及び上皮レベルに達することに適当であるべきである。
【0056】
実施例1:
PA401は、マウスにおけるLPS誘発性急性肺炎症モデルに対して効果がある。
【0057】
種々の刺激は、肺中への好中球遊走を誘発する。最も頻繁に使用され、かつ良好に特徴付けられた炎症誘発因子の中には、グラム陰性菌(リポ多糖:LPS)の菌体内毒素がある。
【0058】
鼻腔内に滴下された、又はエアロゾル化して散布したLPSは、攻撃後4〜8時間に達せられるピークレベルで、及びマウスにおいて24時間までの間の基準線を著しく越えたままである、肺血管、間質及びBAL(Reutershan et al. 2005)における好中球浸潤に依存する投与量及び時間を生じる。
【0059】
投与されるLPS投与量は、LPS血清型、適用方法、及び使用したマウスの染色に依存して、0.1μg/マウスまで低く、800μg/マウスまでのLPSの投与量に関して報告されている著しいBAL好中球で変化する。
【0060】
LPS吸入は、種を超えて肺好中球浸潤を誘発することができる(例えばマウス及びラット、Chapman et al.2007;モルモット、Wu et al. 2002;ウサギ、Smith et al. 2008;ヒツジ、Waerhaug et al. 2009;ウマ、van den Hoven et al. 2006;イヌ、Koshika et al. 2001)。健康な被験者における1〜100gのLPSの吸入は、急性肺炎症(Maris et al. 2005, Kitz et al. 2008)及び慢性閉塞性肺疾患増悪(Kharitonov et al, 2007)のための、確固とした及び信頼できるモデルと見なされている。
【0061】
急性肺好中球のモデルにおける抗炎症薬としてのPA401の潜在性を評価するために、LPS(0.3μg/マウス、血清型緑膿菌)を鼻腔内滴下したC57BL/6Jのメスのマウスにおける4、40、200及び400μg/Kgの投与量でのPA401の皮下投与での投与応答の研究を実施した。擬似滴下(食塩水)した動物、及びデキサメタゾン3mg/kg(皮下)(LPS滴下前のt=−1時間で投与した)処理した動物を、対照として使用した。気管支肺胞洗浄(BAL)を、LPS滴下の4時間後に実施し、そしてBAL試料に対する合計細胞計数及びBALサイトスピンでの種々の細胞計数を測定した。
【0062】
PA401は、BAL液体において評価された肺において滴下された細胞の合計数における投与量依存の減少を誘発した(図1)。その作用は、4g/kgと低いPA401の投与に関する著しい作用での好中球(図2)及びリンパ球(図3)の数における著しい減少によった。驚くべきことに、200〜400g/kgの投与量でのPA401で得られたBALにおける細胞浸潤の阻害は、デキサメタゾンの高い投与量(3mg/kg)での治療で得られたものと比較できた。この研究は、英国のArgenta Discovery Ltdで行われた。
【0063】
実施例2
第二の研究は、異なるマウスの系統及び性別(C57BL/6Jの代わりにオスのBalb/c)、異なるLPS系統及び血清型(E. Coliの代わりにサルモネラ菌)、及び異なるLPS投与(鼻腔内の代わりに、エアロゾルで、30分にわたって3.5mg/1mL)を含む、わずかに異なるモデルを使用して実施した。4、40及び400g/kgのPA401投与量を、LPS露出からt=−5及びt=+3時間で皮下経路又は静脈内経路によって投与した。BAL合計及び種々の細胞計数を、t=8時間で測定し、最も遅い時点を、以前の研究と比較した。
【0064】
食塩水をエアロゾル化して散布したマウス及びデキサメタソンの気管内投与(t=−1時間で20μg/20μlマウス)を受けたマウスを、対照として使用した。
【0065】
この場合において、PA401は、BALにおける合計細胞の数におけるかなり著しい減少(図4)を、好中球計数における減少(図5)によって、誘導した。PA401の活性は、さらに明らかに、皮下経路によるよりも静脈内によって投与された場合に、デキサメタゾンの気管内投与の同様の阻害効果に達した。この研究は、英国のPneumolabs Ltdで行われた。
【0066】
これらの研究は、ヒトALI/ARDS及びCOPD増悪に類似している2つの急性肺好中球炎症の動物モデルにおける皮下経路又は静脈内経路によって投与されたPA401の強い活性を証明した。この効果は、動物の性別又は遺伝的背景、LPS血清型、及び鼻腔内滴下及びエアロゾル化曝露後とは無関係に得られた。
【0067】
実施例3
PA401は、タバコの煙が誘発する肺炎症の急性モデルで作用する。マウスのタバコの煙への急な曝露は、少なくとも1部分で、COPD患者において観察される肺炎症に似ている肺反応を導く。種々のマウスの系統は、急なタバコの煙の曝露に従って、肺炎症の変動する程度を示す(Guerrassimov et al. 2004, Vlahos et al. 2006)。マウスにおける反応におけるこの遺伝的変動性は、ヒトの喫煙者の中でCOPDを発達する変動する罹患率を表し、従って、このモデルは、ヒトの病理学をモデルとするために、最も関連性があると考えられる。
【0068】
肺炎症は、C57BL/6Jメスのマウス(影響されやすい系統)において、4日間にわたって4〜6本のタバコの煙にさらすことによって、誘発された。気管支肺胞洗浄での細胞浸潤に対する、煙曝露からの、t=+30分及びt=+6時間で投与された4、40及び400g/kgの投与量での皮下PA401治療の投与応答活性は、最後のタバコの煙にさらした24時間後に上昇した。空気曝露、及びロフルミラスト(5mg/kg(経口))で処理した動物を対照として与えた。
【0069】
COPDのこの動物モデルにおいても、PA401投与は、依存して、BALにおいて回復した合計細胞数における増加を誘発したタバコの煙を阻害した。
【0070】
合計細胞浸潤に対する非常に著しい効果を、40及び400h/kgで観察した(図6)。使用した最も高い投与量で、PA401は、好中球(図7)、マクロファージ(図8)、上皮細胞(図9)及びリンパ球(図10)のBALにおける数を著しく減少した。これらの細胞亜型に対する著しい効果を、研究において使用した他の2つの投与量に関しても観察した。400g/kgのPA401の阻害効果を、ロフルミラスト5mg/kgで得られたものと比較した。この研究は、英国のArgenta Discovery Ltdで行われた。
【0071】
PA401
この研究は、タバコの煙への曝露を示した4日によって誘発された、混合した細胞浸潤に対するPA401の活性、及びCOPD患者における抗炎症活性の前兆となる動物モデルを証明する。
【0072】
実施例4
PA401は、タバコの煙が誘発する肺炎症の亜慢性モデルで作用する。
【0073】
この研究において、肺炎症を、11日間にわたって、4〜6本のタバコの煙にさらすことによって、C57BL/6Jのメスのマウスにおいて誘発した。実施例3における研究に基づいて、気管支肺胞洗浄に対する細胞浸潤に対する、1回は1日3時間(1日4回)及び隔日(q.o.d)は+3時間での煙の曝露(1日2回)からt=−30分及びt=+6時間で投与した400g/kgの最適投与量での皮下PA401治療の投与頻度活性を、最後のタバコの煙にさらした24時間後に測定した。空気曝露、及びロフルミラスト(5mg/kg(経口))で処理した動物を対照として与えた。
【0074】
合計細胞浸潤に対する著しい効果を、1日2回、毎日及び隔日投与後に観察した(図11)。使用したすべての処理頻度で、PA401は、BALにおける好中球(図12)及び上皮細胞(図13)の数が著しく減少した一方で、b.i.d.及びq.d.投与で得られたリンパ球(図14)及びマクロファージ(図15)における著しい減少は、PA401が隔日で投与された場合にはみられなかった。2回1日1回投与したPA401の阻害効果を、ロフルミラスト5mg/kgで得られたものと比較した。この研究は、英国のArgenta Discovery Ltdで行われた。
【0075】
PA401
この研究は、1日2回及び1日1回の控えの400μg/kgの投与量でのPA401投与が、タバコの煙への11日間繰り返した曝露によって誘発された混合した細胞浸潤に対して同等の活性を有することを証明する。
【0076】
実施例5
PA401は、タバコの煙が誘発する肺炎症の亜慢性モデルで作用する。
【0077】
この研究において、肺炎症を、11日間にわたって、4〜6本のタバコの煙にさらすことによって、C57BL/6Jのメスのマウスにおいて誘発した。 毎日の皮下への400μg/kgの投与量でのPA401を、毎日の皮下への40μg/kgの投与量と比較した。処理をt+3時間で実施し、そして気管支肺胞洗浄に対する細胞浸潤に対する作用を、最期のタバコの煙にさらした24時間後に評価した。空気曝露、ロフルミラスト(5mg/kg(経口))処理した動物、及びCXCR2アンタゴニストSCH527123で処理した動物(1日2回10mg/kg(経口)−合計日投与量20mg/kg)を、対照として扱った。
【0078】
合計細胞浸潤に対する著しい効果を、400及び40μg/kgの投与後に観察した(図16)。これは、BALにおける好中球(図17)、上皮細胞(図18)、リンパ球(図19)及びマクロファージ(図20)の数における著しい減少によった。400μg/kgの投与量で投与されたPA401の阻害効果を、5mg/kgのロフルミラスト及び20mg(10mg/kgを1日2回)のCXCR2アンタゴニストSCH527123で得られたものと比較した。この研究は、英国のArgenta Discovery Ltdで行われた。
【0079】
PA401
この研究は、タバコの煙への11日間繰り返した曝露によって誘発された混合した細胞浸潤に対して、皮下に400μg/kg及び40μg/kgの投与量で1日1回投与したPA401の活性を証明する。
【0080】
実施例6
肺への局所デリバリー後の肺炎症におけるPA401効果
実験を、LPSで誘発される肺炎症の動物モデルにおける肺への局所デリバリー後に、PA401の活性を検証するために実施した。
【0081】
この実験において、肺炎症を、オスのBalb/cマウスにおけるエアロゾル(サルモネラ菌、30分にわたって3.5mg/7mL)によるLPSのデリバリーよって誘発した。PA401を、MicroSprayer(FJM−250 syringe; PennCentury)、直接肺にエアロゾル(質量中央径16〜22μm)の煙流のデリバリーを可能にする装置を使用して気管内(i.t.)に投与した。PA401のi.t.投与を、LPS曝露の1時間前、又はLPS曝露の修了1時間後に、100、40、10及び4g/kgの投与量で実施した。気管支肺胞洗浄(BAL)をLPS曝露の8時間後に実施し、そして合計細胞及び好中球の数を測定した。デキサメタゾン20g/20l(マウス、i.t.)を参照化合物として使用した。
【0082】
PA401は、主に好中球数の減少(図22)によって、BALにおける合計細胞の著しい投与量依存減少(図21)を誘発した。治療処置(t=+1時間)は、著しい活性である100、40及び10g/kgの投与量での予防処置(−1時間)と比較して、約10%改良した活性をもたらした。
【0083】
図21は、LPSの8時間後に採取した気管支肺胞洗浄における合計の細胞数に対するLPSエアロゾル露出の1時間前(−1時間)及び1時間後(+1時間)の、PA401の気管支内投与に対する用量応答活性を示す。ANOVAに続いてDunnettの試験:ビヒクル試験した動物に対して*p<0.05、**p<0.01。
【0084】
図22は、LPSの8時間後に採取した気管支肺胞洗浄における好中球計数に対するLPSエアロゾル露出の1時間前(−1時間)及び1時間後(+1時間)の、PA401の気管支内投与に対する用量応答活性を示す。ANOVAに続いてDunnettの試験:ビヒクル試験した動物に対して*p<0.05、**p<0.01。
【0085】
これらのデータは、肺への局所デリバリーに続くPA401の活性を証明し、慢性的な肺への適用のための静脈内又は皮下投与の代替品として、通常の良好な患者のコンプライアンスを有する、この投与形路の使用に対する可能性を開く。
【0086】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好中球浸潤を有する肺炎症の予防又は治療における使用のための、それぞれ野生型IL−8と比較して、増加されたグリオサミノグリカン(GAG)結合アフィニティー、及びさらに阻害又は下方制御されたGタンパク質結合受容体(GPCR)活性を有する改質されたインターロイキン8(IL−8)。
【請求項2】
前記改質されたIL−8が、GAG結合領域中で塩基性アミノ酸の相対量を増加し、かつ/又は有利には溶剤露出位置でのGAG結合領域中で嵩高い及び/又は酸性アミノ酸の量を減少するために、少なくとも1つのアミノ酸での置換、挿入、及び/又は欠失によって改質されたGAG結合領域を含む、請求項1に記載の改質されたIL−8。
【請求項3】
Arg、Lys、及びHisからなる群から選択された少なくとも1つのアミノ酸が、前記GAG結合領域中に挿入される、請求項2に記載の改質されたIL−8。
【請求項4】
IL−8の17位、21位、70位及び/又は71位が、Arg、Lys、His、Asn及び/又はGlnによって置換される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の改質されたIL−8。
【請求項5】
IL−8のGPCR結合領域が、有利には、アラニン、立体的に及び/又は静電的に類似の残基での、欠失、挿入、及び/又は置換によって改質される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の改質されたIL−8。
【請求項6】
前記改質されたIL−8分子のアミノ酸配列が、
[X1は、アミノ酸配列SAKELRであり、
X2は、アミノ酸配列CQCIであり、
X3は、F、R、K、H、N及び/又はQからなる群から選択され、有利にはX3はKであり、
X4は、F、R、K、H、N及び/又はQからなる群から選択され、有利にはX4はKであり、
X5は、E、R、K、H、N及び/又はQからなる群から選択され、有利にはX5はKであり、
X6は、R、K、H、N及び/又はQからなる群から選択され、有利にはX6はKであり、
かつn及び/又はmは、0又は1である]である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の改質されたIL−8。
【請求項7】
前記改質されたIL−8分子が、del6F17RE70KN71R、del6F17RE70RN71K、del6E70KN71K、及びdel6F17KF21KE70KN71Kからなる群から選択される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の改質されたIL−8。
【請求項8】
前記改質されたIL−8分子のアミノ酸配列が、
である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の改質されたIL−8。
【請求項9】
好中球浸潤を有する肺炎症が、慢性閉塞性肺疾患、膵嚢胞性繊維症、重症喘息、気管支炎、細気管支炎、急性肺損傷及び急性呼吸困難症候群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の改質されたIL−8。
【請求項10】
吸入薬として調合された、請求項1から9までのいずれか1項に記載の改質されたIL−8。
【請求項11】
改質されたIL−8の治療的有効量を被験者に投与することを含むことを必要とする被験者における、好中球浸潤を有する肺炎症の治療のための方法。
【請求項12】
前記投与が、吸入による、又は気管内投与による、請求項11に記載の方法。
【請求項1】
好中球浸潤を有する肺炎症の予防又は治療における使用のための、それぞれ野生型IL−8と比較して、増加されたグリオサミノグリカン(GAG)結合アフィニティー、及びさらに阻害又は下方制御されたGタンパク質結合受容体(GPCR)活性を有する改質されたインターロイキン8(IL−8)。
【請求項2】
前記改質されたIL−8が、GAG結合領域中で塩基性アミノ酸の相対量を増加し、かつ/又は有利には溶剤露出位置でのGAG結合領域中で嵩高い及び/又は酸性アミノ酸の量を減少するために、少なくとも1つのアミノ酸での置換、挿入、及び/又は欠失によって改質されたGAG結合領域を含む、請求項1に記載の改質されたIL−8。
【請求項3】
Arg、Lys、及びHisからなる群から選択された少なくとも1つのアミノ酸が、前記GAG結合領域中に挿入される、請求項2に記載の改質されたIL−8。
【請求項4】
IL−8の17位、21位、70位及び/又は71位が、Arg、Lys、His、Asn及び/又はGlnによって置換される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の改質されたIL−8。
【請求項5】
IL−8のGPCR結合領域が、有利には、アラニン、立体的に及び/又は静電的に類似の残基での、欠失、挿入、及び/又は置換によって改質される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の改質されたIL−8。
【請求項6】
前記改質されたIL−8分子のアミノ酸配列が、
[X1は、アミノ酸配列SAKELRであり、
X2は、アミノ酸配列CQCIであり、
X3は、F、R、K、H、N及び/又はQからなる群から選択され、有利にはX3はKであり、
X4は、F、R、K、H、N及び/又はQからなる群から選択され、有利にはX4はKであり、
X5は、E、R、K、H、N及び/又はQからなる群から選択され、有利にはX5はKであり、
X6は、R、K、H、N及び/又はQからなる群から選択され、有利にはX6はKであり、
かつn及び/又はmは、0又は1である]である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の改質されたIL−8。
【請求項7】
前記改質されたIL−8分子が、del6F17RE70KN71R、del6F17RE70RN71K、del6E70KN71K、及びdel6F17KF21KE70KN71Kからなる群から選択される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の改質されたIL−8。
【請求項8】
前記改質されたIL−8分子のアミノ酸配列が、
である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の改質されたIL−8。
【請求項9】
好中球浸潤を有する肺炎症が、慢性閉塞性肺疾患、膵嚢胞性繊維症、重症喘息、気管支炎、細気管支炎、急性肺損傷及び急性呼吸困難症候群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の改質されたIL−8。
【請求項10】
吸入薬として調合された、請求項1から9までのいずれか1項に記載の改質されたIL−8。
【請求項11】
改質されたIL−8の治療的有効量を被験者に投与することを含むことを必要とする被験者における、好中球浸潤を有する肺炎症の治療のための方法。
【請求項12】
前記投与が、吸入による、又は気管内投与による、請求項11に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2013−504545(P2013−504545A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528380(P2012−528380)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063389
【国際公開番号】WO2011/029931
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(505471923)プロットアフィン ビオテヒノロギー アクチエンゲゼルシャフト (4)
【住所又は居所原語表記】Impulszentrum Graz−West,Reininghausstrasse 13a,8020 Graz,Austria
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063389
【国際公開番号】WO2011/029931
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(505471923)プロットアフィン ビオテヒノロギー アクチエンゲゼルシャフト (4)
【住所又は居所原語表記】Impulszentrum Graz−West,Reininghausstrasse 13a,8020 Graz,Austria
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]