説明

CXCR4拮抗薬およびその用途

【課題】新規抗癌および抗慢性関節リューマチ剤の提供。
【解決手段】CXCR4拮抗作用を有するペプチドまたはそのアミド、そのエステルもしくはその塩を含有する、癌ならびに慢性関節リューマチの予防及び/又は治療剤。CXCR4拮抗作用を有する新規ペプチドまたはそのアミド、そのエステルもしくはその塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CXCR4拮抗作用を有する化合物、並びにそれを含有する癌および慢性関節リューマチの予防及び/又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのホルモンや神経伝達物質は細胞膜に存在する特異的なレセプターを通じて生体の機能を調節している。これらのレセプターの多くは共役しているグアニンヌクレオチド結合性蛋白質(guanine nucleotide-binding protein、以下、G蛋白質と略称する場合がある)の活性化を通じて細胞内のシグナル伝達を行う。また、これらのレセプターは、7個の細胞膜貫通領域を有する共通した構造をもっていることから、G蛋白質共役型レセプターあるいは7回膜貫通型レセプター(7TMR)と総称される。
このようなG蛋白質共役型レセプター蛋白質の一つとして、CXCR4遺伝子によってコードされるヒト型レセプター蛋白質[非特許文献1]が知られている。
また、上記のCXCR4に対するリガンドとして機能する生理活性ペプチドとして、CXCL12/SDF−1[非特許文献2]が知られている。
藤井[特許文献1]には、CXCR4に対して拮抗作用を有するペプチド性化合物が開示されており、それらの化合物が抗HIV活性を有することが記載されている。
【0003】
癌の転移は患者の余命を左右する重要な要素である。CXCR4は乳癌などにおいてその発現が亢進し、さらに転移先の臓器(リンパ節、肺、肝臓および骨)においてそのリガンドであるCXCL12/SDF−1αの発現が亢進していることが報告されている[非特許文献3]。また、慢性関節リューマチは、CD4陽性T細胞の関節腔液への浸潤がその病状の進展に影響を与える。慢性関節リューマチ患者の関節腔液内のCD4陽性記憶T細胞においてCXCR4遺伝子発現が亢進し、関節滑膜組織においてCXCL12/SDF−1α遺伝子発現が亢進していることが報告されている[非特許文献4]。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第02/20561号パンフレット(2003年3月14日)
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of biological chemistry),第273巻,第4754頁(1998年)
【非特許文献2】サイエンス(Science)、第261巻、600-603頁(1993年)
【非特許文献3】ネイチャー(Nature)、第410巻、50-56頁(2001年)
【非特許文献4】ジャーナル・オブ・イミュノロジー(Journal of Immunology)、第165巻、6590-98頁(2000年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、CXCR4拮抗作用を有する化合物を用いた新規な癌ならびに慢性関節リューマチの予防及び/又は治療手段の提供を目的とする。また、本発明は、癌ならびに慢性関節リューマチの予防及び/又は治療活性を有する新規化合物、特に共通の構造を有する種々のオリゴペプチドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、これまでエイズの化学療法剤として有効であると考えられてきたCXCR4拮抗作用を有する化合物が、転移を含む癌ならびに慢性関節リューマチの予防及び/又は治療に有効であることを見出し、さらに研究を行った結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)下記式(Ia)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
A1-A2-A3-Cys-Tyr-A4-A5-A6-A7-A8-A9-A10-Cys-A11 (Ia)
(式中、
A1は、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基であるか、又は欠失しており;
A2は、A1がN末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基である場合には、アルギニンまたはグルタミン酸残基を表し、A1が欠失している場合には、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
A3は、芳香族アミノ酸残基を表し;
A4、A5及びA9は、独立して、アルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン又はグルタミン酸残基を表し;
A6は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン、アルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
A7は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン又はアルギニン残基を表し;
A8は、チロシン、フェニルアラニン、アラニン、ナフチルアラニン、シトルリン又はグルタミン酸残基を表し;
A10は、シトルリン、グルタミン酸、アルギニン又はリジン残基を表し;
A11は、C末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、グルタミン酸、リジン又はシトルリン残基を表し;
上記式中、Cysはシステイン残基を表し、Tyrはチロシン残基を表し、4位と13位のシステイン残基はジスルフィド結合により連結していてもよく、アミノ酸はL体であってもD体であってもよい)で示されるペプチド又はその塩を含有してなる、癌または慢性関節リューマチの予防及び/又は治療剤、
(2)上記式(Ia)において、
A1は、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基であるか、又は欠失しており;
A2は、A1がN末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基である場合には、アルギニンまたはグルタミン酸残基を表し、A1が欠失している場合には、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
A4は、アルギニン、シトルリン、アラニン又はグルタミン酸残基を表し;
A5は、アルギニン、シトルリン、アラニン、リジン又はグルタミン酸残基を表し;
A6は、リジン、アラニン、シトルリン又はグルタミン酸残基を表し;
A7は、プロリン又はアラニン残基を表し;
A8は、チロシン、アラニン又はグルタミン酸残基を表し;
A9は、アルギニン、シトルリン又はグルタミン酸残基を表し;
A10は、シトルリン又はグルタミン酸残基を表し;
A11は、C末端で誘導体化されていてもよいアルギニン又はグルタミン酸残基を表すものである、(1)記載の予防及び/又は治療剤、
(3)下記式(Ib)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
B1-B2-B3-Cys-Tyr-B4-B5-B6-B7-B8-B9-B10-Cys-B11 (Ib)
(式中、
B1は、N末端で誘導体化されていてもよいグルタミン酸残基であるか、又は欠失しており;
B2は、B1がN末端で誘導体化されていてもよいグルタミン酸残基である場合には、アルギニンまたはグルタミン酸残基を表し、B1が欠失している場合には、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
B3は、芳香族アミノ酸残基を表し;
B4、B5及びB9は、独立して、アルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン又はグルタミン酸残基を表し;
B6は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン、アルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
B7は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン又はアルギニン残基を表し;
B8は、チロシン、フェニルアラニン、アラニン、ナフチルアラニン、シトルリン又はグルタミン酸残基を表し;
B10は、シトルリン、グルタミン酸、アルギニン又はリジン残基を表し;
B11は、C末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、グルタミン酸、リジン又はシトルリン残基を表し;
上記式中、Cysはシステイン残基を表し、Tyrはチロシン残基を表し、4位と13位のシステイン残基はジスルフィド結合により連結していてもよく、アミノ酸はL体であってもD体であってもよい)で示されるペプチド又はその塩、
(4)B1は、N末端で誘導体化されていてもよいグルタミン酸残基である、(3)記載のペプチド又はその塩、
(5)下記式(Ic)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
C1-C2-C3-Cys-Tyr-C4-C5-C6-C7-C8-C9-C10-Cys-C11 (Ic)
(式中、
C1は、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基であるか、又は欠失しており;
C2は、C1がN末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基である場合には、グルタミン酸残基を表し、C1が欠失している場合には、N末端で誘導体化されていてもよいグルタミン酸残基を表し;
C3は、芳香族アミノ酸残基を表し;
C4、C5及びC9は、独立して、アルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン又はグルタミン酸残基を表し;
C6は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン、アルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
C7は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン又はアルギニン残基を表し;
C8は、チロシン、フェニルアラニン、アラニン、ナフチルアラニン、シトルリン又はグルタミン酸残基を表し;
C10は、シトルリン、グルタミン酸、アルギニン又はリジン残基を表し;
C11は、C末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、グルタミン酸、リジン又はシトルリン残基を表し;
上記式中、Cysはシステイン残基を表し、Tyrはチロシン残基を表し、4位と13位のシステイン残基はジスルフィド結合により連結していてもよく、アミノ酸はL体であってもD体であってもよい)で示されるペプチド又はその塩、
(6)下記式(Id)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
D1-D2-D3-Cys-Tyr-D4-D5-D6-D7-D8-D9-D10-Cys-D11 (Id)
(式中、
D1は、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基であるか、又は欠失しており;
D2は、D1がN末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基である場合には、アルギニンまたはグルタミン酸残基を表し、D1が欠失している場合には、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
D3は、芳香族アミノ酸残基を表し;
D4は、グルタミン酸残基を表し;
D5及びD9は、独立して、アルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン又はグルタミン酸残基を表し;
D6は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン、アルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
D7は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン又はアルギニン残基を表し;
D8は、チロシン、フェニルアラニン、アラニン、ナフチルアラニン、シトルリン又はグルタミン酸残基を表し;
D10は、シトルリン、グルタミン酸、アルギニン又はリジン残基を表し;
D11は、C末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、グルタミン酸、リジン又はシトルリン残基を表し;
上記式中、Cysはシステイン残基を表し、Tyrはチロシン残基を表し、4位と13位のシステイン残基はジスルフィド結合により連結していてもよく、アミノ酸はL体であってもD体であってもよい)で示されるペプチド又はその塩、
(7)下記式(Ie)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
E1-E2-E3-Cys-Tyr-E4-E5-E6-E7-E8-E9-E10-Cys-E11 (Ie)
(式中、
E1は、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基であるか、又は欠失しており;
E2は、E1がN末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基である場合には、アルギニンまたはグルタミン酸残基を表し、E1が欠失している場合には、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
E3は、芳香族アミノ酸残基を表し;
E4及びE9は、独立して、アルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン又はグルタミン酸残基を表し;
E5は、アルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
E6は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン、アルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
E7は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン又はアルギニン残基を表し;
E8は、チロシン、フェニルアラニン、アラニン、ナフチルアラニン、シトルリン又はグルタミン酸残基を表し;
E10は、シトルリン、グルタミン酸、アルギニン又はリジン残基を表し;
E11は、C末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、グルタミン酸、リジン又はシトルリン残基を表し;
上記式中、Cysはシステイン残基を表し、Tyrはチロシン残基を表し、4位と13位のシステイン残基はジスルフィド結合により連結していてもよく、アミノ酸はL体であってもD体であってもよい)で示されるペプチド又はその塩、
(8)E5は、グルタミン酸残基を表す、(7)記載のペプチド又はその塩、
(9)下記式(If)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
F1-F2-F3-Cys-Tyr-F4-F5-F6-F7-F8-F9-F10-Cys-F11 (If)
(式中、
F1は、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基であるか、又は欠失しており;
F2は、F1がN末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基である場合には、アルギニンまたはグルタミン酸残基を表し、F1が欠失している場合には、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
F3は、芳香族アミノ酸残基を表し;
F4、F5及びF9は、独立して、アルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン又はグルタミン酸残基を表し;
F6は、グルタミン酸残基を表し;
F7は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン又はアルギニン残基を表し;
F8は、チロシン、フェニルアラニン、アラニン、ナフチルアラニン、シトルリン又はグルタミン酸残基を表し;
F10は、シトルリン、グルタミン酸、アルギニン又はリジン残基を表し;
F11は、C末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、グルタミン酸、リジン又はシトルリン残基を表し;
上記式中、Cysはシステイン残基を表し、Tyrはチロシン残基を表し、4位と13位のシステイン残基はジスルフィド結合により連結していてもよく、アミノ酸はL体であってもD体であってもよい)で示されるペプチド又はその塩、
(10)下記式(Ig)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
G1-G2-G3-Cys-Tyr-G4-G5-G6-G7-G8-G9-G10-Cys-G11 (Ig)
(式中、
G1は、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基であるか、又は欠失しており;
G2は、G1がN末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基である場合には、アルギニンまたはグルタミン酸残基を表し、G1が欠失している場合には、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
G3は、芳香族アミノ酸残基を表し;
G4、G5及びG9は、独立して、アルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン又はグルタミン酸残基を表し;
G6は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン、アルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
G7は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン又はアルギニン残基を表し;
G8は、グルタミン酸残基を表し;
G10は、シトルリン、グルタミン酸、アルギニン又はリジン残基を表し;
G11は、C末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、グルタミン酸、リジン又はシトルリン残基を表し;
上記式中、Cysはシステイン残基を表し、Tyrはチロシン残基を表し、4位と13位のシステイン残基はジスルフィド結合により連結していてもよく、アミノ酸はL体であってもD体であってもよい)で示されるペプチド又はその塩、
(11)下記式(Ih)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
H1-H2-H3-Cys-Tyr-H4-H5-H6-H7-H8-H9-H10-Cys-H11 (Ih)
(式中、
H1は、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基であるか、又は欠失しており;
H2は、H1がN末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基である場合には、アルギニンまたはグルタミン酸残基を表し、H1が欠失している場合には、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
H3は、芳香族アミノ酸残基を表し;
H4及びH5は、独立して、アルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン又はグルタミン酸残基を表し;
H6は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン、アルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
H7は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン又はアルギニン残基を表し;
H8は、チロシン、フェニルアラニン、アラニン、ナフチルアラニン、シトルリン又はグルタミン酸残基を表し;
H9は、グルタミン酸残基を表し;
H10は、シトルリン、グルタミン酸、アルギニン又はリジン残基を表し;
H11は、C末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、グルタミン酸、リジン又はシトルリン残基を表し;
上記式中、Cysはシステイン残基を表し、Tyrはチロシン残基を表し、4位と13位のシステイン残基はジスルフィド結合により連結していてもよく、アミノ酸はL体であってもD体であってもよい)で示されるペプチド又はその塩、
(12)下記式(Ii)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
I1-I2-I3-Cys-Tyr-I4-I5-I6-I7-I8-I9-I10-Cys-I11 (Ii)
(式中、
I1は、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基であるか、又は欠失しており;
I2は、I1がN末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基である場合には、アルギニンまたはグルタミン酸残基を表し、I1が欠失している場合には、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
I3は、芳香族アミノ酸残基を表し;
I4、I5及びI9は、独立して、アルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン又はグルタミン酸残基を表し;
I6は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン、アルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
I7は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン又はアルギニン残基を表し;
I8は、チロシン、フェニルアラニン、アラニン、ナフチルアラニン、シトルリン又はグルタミン酸残基を表し;
I10は、グルタミン酸、アルギニン又はリジン残基を表し;
I11は、C末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、グルタミン酸、リジン又はシトルリン残基を表し;
上記式中、Cysはシステイン残基を表し、Tyrはチロシン残基を表し、4位と13位のシステイン残基はジスルフィド結合により連結していてもよく、アミノ酸はL体であってもD体であってもよい)で示されるペプチド又はその塩、
(13)下記式(Ij)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
J1-J2-J3-Cys-Tyr-J4-J5-J6-J7-J8-J9-J10-Cys-J11 (Ij)
(式中、
J1は、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基であるか、又は欠失しており;
J2は、J1がN末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基である場合には、アルギニンまたはグルタミン酸残基を表し、J1が欠失している場合には、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
J3は、芳香族アミノ酸残基を表し;
J4、J5及びJ9は、独立して、アルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン又はグルタミン酸残基を表し;
J6は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン、アルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
J7は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン又はアルギニン残基を表し;
J8は、チロシン、フェニルアラニン、アラニン、ナフチルアラニン、シトルリン又はグルタミン酸残基を表し;
J10は、シトルリン、グルタミン酸、アルギニン又はリジン残基を表し;
J11は、C末端で誘導体化されていてもよいグルタミン酸、リジン又はシトルリン残基を表し;
上記式中、Cysはシステイン残基を表し、Tyrはチロシン残基を表し、4位と13位のシステイン残基はジスルフィド結合により連結していてもよく、アミノ酸はL体であってもD体であってもよい)で示されるペプチド又はその塩、
(14)以下の(1)〜(58)のいずれかのペプチドまたはその塩:
(1) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH;
(2) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH;
(3) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH;
(4) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-OH;
(5) Ac-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH;
(6) Ac-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH;
(7) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-OH;
(8) Ac-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-OH;
(9) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(10) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-NH2
(11) Ac-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(12) Ac-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(13) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-NH2
(14) Ac-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-NH2
(15) H-DGlu-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH;
(16) H-Arg-Glu-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH;
(17) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Glu-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH;
(18) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Glu-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH;
(19) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH;
(20) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Glu-Cit-Cys-Arg-OH;
(21) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Glu-OH;
(22) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(23) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-DGlu-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(24) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-DGlu-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(25) H-DGlu-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(26) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-DGlu-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(27) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-DGlu-Cys-Arg-NH2
(28) Ac-DGlu-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(29) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-DGlu-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(30) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-DGlu-Cys-Arg-NH2
(31) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(32) guanyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(33) TMguanyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(34) TMguanyl-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(35) 4F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(36) 2F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(37) APA-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(38) desamino-R-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(39) guanyl-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(40) succinyl-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(41) glutaryl-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(42) deaminoTMG-APA-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(43) nelfinabiryl-succinyl-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(44) AZT-glutaryl-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(45) R-CH2-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(46) H-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(47) TMguanyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(48) ACA-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(49) ACA-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH;
(50) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Arg-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(51) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Arg-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(52) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(53) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(54) 4F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(55) 4F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NHMe
(56) 4F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NHEt
(57) 4F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NHiPr
(58) 4F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-tyramine
(各配列中、N末端アミノ酸の左の記号はアミノ基が誘導体化されているか、またはされていないことを示し、Hは誘導体化されていないことを、Acはアセチル基を、guanylはグアニル基を、succinylはスクシニル基を、glutarylはグルタリル基を、TMguanylはテトラメチルグアニル基を、2F-beozoylは2−フルオロベンゾイル基を、4F-benzoylは4−フルオロベンゾイル基を、APAは5−アミノペンタノイル基を、ACAは6−アミノヘキサノイル基を、desamino-Rは2−デスアミノ−アルギニル基を、deaminoTMG-APAは下記式(II)を、
【0009】
【化1】

【0010】
nelfinabiryl-succinylは下記式(III)を、
【0011】
【化2】

【0012】
AZT-glutarylは下記式(IV)を、
【0013】
【化3】

【0014】
R-CH2は下記式(V)
【0015】
【化4】

【0016】
をそれぞれ示し、ArgはL−アルギニン残基を、NalはL−3−(2−ナフチル)アラニン残基を、CysはL−システイン残基を、TyrはL−チロシン残基を、CitはL−シトルリン残基を、LysはL−リジン残基を、DLysはD−リジン残基を、ProはL−プロリン残基を、DCitはD−シトルリン残基を、DGluはD−グルタミン酸残基を、GluはL−グルタミン酸残基をそれぞれ示し、2つのシステイン残基は分子内ジスルフィド結合により連結しており、C末端アミノ酸の右の記号はカルボキシル基が誘導体化されているか、またはされていないことを示し、OHは誘導体化されていないことを、NH2はアミノ基で、NMeはメチルアミノ基で、NEtはエチルアミノ基で、NiPrはイソプロピルアミノ基で、tyramineはp-ヒドロキシフェニルエチルアミノ基でアミド化されていることをそれぞれ示す)、
(15)(3)〜(14)のいずれかに記載のペプチド又はその塩を含有してなる医薬、
(16)CXCR4拮抗剤である(15)記載の医薬、
(17)癌または慢性関節リューマチの予防及び/又は治療剤である(15)記載の医薬、
(18)癌種が乳癌または膵臓癌である(17)記載の医薬、
(19)哺乳動物に対して(3)〜(14)のいずれかに記載のペプチド又はその塩の有効量を投与することを特徴とする、癌または慢性関節リューマチの予防・治療方法、
(20)癌または慢性関節リューマチの予防及び/又は治療剤を製造するための(3)〜(14)のいずれかに記載のペプチド又はその塩の使用、
(21)哺乳動物に対して下記式(Ia)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
A1-A2-A3-Cys-Tyr-A4-A5-A6-A7-A8-A9-A10-Cys-A11 (Ia)
(式中、
A1は、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基であるか、又は欠失しており;
A2は、A1がN末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基である場合には、アルギニンまたはグルタミン酸残基を表し、A1が欠失している場合には、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
A3は、芳香族アミノ酸残基を表し;
A4、A5及びA9は、独立して、アルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン又はグルタミン酸残基を表し;
A6は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン、アルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
A7は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン又はアルギニン残基を表し;
A8は、チロシン、フェニルアラニン、アラニン、ナフチルアラニン、シトルリン又はグルタミン酸残基を表し;
A10は、シトルリン、グルタミン酸、アルギニン又はリジン残基を表し;
A11は、C末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、グルタミン酸、リジン又はシトルリン残基を表し;
上記式中、Cysはシステイン残基を表し、Tyrはチロシン残基を表し、4位と13位のシステイン残基はジスルフィド結合により連結していてもよく、アミノ酸はL体であってもD体であってもよい)で示されるペプチド又はその塩の有効量を投与することを特徴とする、癌または慢性関節リューマチの予防・治療方法、および
(22)癌または慢性関節リューマチの予防及び/又は治療剤を製造するための下記式(Ia)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
A1-A2-A3-Cys-Tyr-A4-A5-A6-A7-A8-A9-A10-Cys-A11 (Ia)
(式中、
A1は、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基であるか、又は欠失しており;
A2は、A1がN末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基である場合には、アルギニンまたはグルタミン酸残基を表し、A1が欠失している場合には、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
A3は、芳香族アミノ酸残基を表し;
A4、A5及びA9は、独立して、アルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン又はグルタミン酸残基を表し;
A6は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン、アルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
A7は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン又はアルギニン残基を表し;
A8は、チロシン、フェニルアラニン、アラニン、ナフチルアラニン、シトルリン又はグルタミン酸残基を表し;
A10は、シトルリン、グルタミン酸、アルギニン又はリジン残基を表し;
A11は、C末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、グルタミン酸、リジン又はシトルリン残基を表し;
上記式中、Cysはシステイン残基を表し、Tyrはチロシン残基を表し、4位と13位のシステイン残基はジスルフィド結合により連結していてもよく、アミノ酸はL体であってもD体であってもよい)で示されるペプチド又はその塩の使用、
等を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のペプチド性化合物は強力なCXCR4拮抗作用を有し、CXCR4とCXCL12/SDF−1との結合を阻害することにより、癌および慢性関節リューマチに対して治療効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】CXCL12によって誘導される乳癌細胞遊走性に対するTE−14005の阻害活性を示す図である。縦軸は細胞遊走性(OD550nmの吸光度)を示す。左よりCXCL12無添加時(陰性対照)、CXCL12添加時(陽性対照)、CXCL12およびTE−14005 10nM添加時、CXCL12およびTE−14005 100nM添加時、CXCL12およびTE−14005 1μM添加時、CXCL12およびTE−14005 10μM添加時の結果を示す(平均値+標準偏差、n=2)。*は各TE−14005添加群の、陽性対照群との有意性を示す(Williams検定、p≦0.025)。
【図2】CXCL12によって誘導される乳癌細胞遊走性に対するTC−14012の阻害活性を示す図である。縦軸は細胞遊走性(OD550nmの吸光度)を示す。左よりCXCL12無添加時(陰性対照)、CXCL12添加時(陽性対照)、CXCL12およびTC−14012 1nM添加時、CXCL12およびTC−14012 10nM添加時、CXCL12およびTC−14012 100nM添加時、CXCL12およびTC−14012 1μM添加時の結果を示す(平均値+標準偏差、n=2)。*は各TC−14012添加群の、陽性対照群との有意性を示す(Williams検定、p≦0.025)。
【図3】CXCL12によって誘導されるT細胞由来白血病細胞の遊走性に対する4Fbenzoyl−TN−14003の阻害活性を示す図である。縦軸は細胞遊走性(細胞数)を示す。左よりCXCL12無添加時(陰性対照)、CXCL12添加時(陽性対照)、CXCL12および4Fbenzoyl−TN−14003 1nM添加時、CXCL12および4Fbenzoyl−TN−14003 10nM添加時、CXCL12および4Fbenzoyl−TN−14003 100nM添加時、CXCL12および4Fbenzoyl−TN−14003 1μM添加時の結果を示す(平均値+標準偏差、n=2)。*は各4Fbenzoyl−TN−14003添加群の、陽性対照群との有意性を示す(Williams検定、p≦0.025)。
【図4】CXCL12によって誘導される乳癌細胞遊走性に対する4Fbenzoyl−TN−14003の阻害活性を示す図である。縦軸は細胞遊走性(OD550nmの吸光度)を示す。左よりCXCL12無添加時(陰性対照)、CXCL12添加時(陽性対照)、CXCL12および4Fbenzoyl−TN−14003 10nM添加時、CXCL12および4Fbenzoyl−TN−14003 100nM添加時、CXCL12および4Fbenzoyl−TN−14003 1μM添加時、CXCL12および4Fbenzoyl−TN−14003 10μM添加時の結果を示す(平均値+標準偏差、n=2)。*は各4Fbenzoyl−TN−14003添加群の、陽性対照群との有意性を示す(Williams検定、p≦0.025)。
【図5】ヒト乳癌細胞を移植されたマウスにおける4Fbenzoyl−TN−14003の肺転移抑制活性を示す肺組織染色像である。Aが対照群(生食投与群)の肺、Bが4Fbenzoyl−TN−14003投与群の肺の像である。
【図6】SDF−1α(CXCL12)によって誘導されるJurkat細胞の遊走性に対する4Fbenzoyl−TN−14003の阻害活性を示す図である。縦軸は細胞遊走性(inputに対する移動細胞の割合)を示す。左よりSDF−1α無添加時、SDF−1α添加時、SDF−1αおよび4Fbenzoyl−TN−14003 10pM添加時、SDF−1αおよび4Fbenzoyl−TN−14003 100pM添加時、SDF−1αおよび4Fbenzoyl−TN−14003 1nM添加時、SDF−1αおよび4Fbenzoyl−TN−14003 10nM添加時、SDF−1αおよび4Fbenzoyl−TN−14003 100nM添加時の結果を示す。
【図7】SDF−1α(CXCL12)によって誘導されるマウス脾細胞の遊走性に対する4Fbenzoyl−TN−14003の阻害活性を示す図である。縦軸は細胞遊走性(inputに対する移動細胞の割合)を示す。左よりSDF−1α無添加時、SDF−1α添加時、SDF−1αおよび4Fbenzoyl−TN−14003 10pM添加時、SDF−1αおよび4Fbenzoyl−TN−14003 100pM添加時、SDF−1αおよび4Fbenzoyl−TN−14003 1nM添加時、SDF−1αおよび4Fbenzoyl−TN−14003 10nM添加時、SDF−1αおよび4Fbenzoyl−TN−14003 100nM添加時の結果を示す。
【図8】SRBC誘発によるマウスDTH反応に対する4Fbenzoyl−TN−14003の抑制効果を示す図である。縦軸は腫脹による足蹠の厚みの増加(平均値±標準誤差、n=7)を示す。左よりPBS投与(対照)群、4Fbenzoyl−TN−14003 4.8μg/日投与群、4Fbenzoyl−TN−14003 24μg/日投与群、4Fbenzoyl−TN−14003 120μg/日投与群の結果を示す。*はP≦0.025(PBS投与群との比較;Williams検定)を示す。
【図9】マウスコラーゲン関節炎に対する既存薬の作用を示す図である。Aは体重の変動[縦軸:体重の変動(g)(平均値±標準誤差、n=8)、横軸:追加免疫後の日数]、Bは発病率の変動[縦軸:発病率(%)(n=8)、横軸:追加免疫後の日数]、Cは関節炎スコアの変動[縦軸:関節炎スコア(平均値±標準誤差、n=8)、横軸:追加免疫後の日数]、Dは踵厚の変動[縦軸:踵厚(mm)(平均値±標準誤差、n=8)、横軸:追加免疫後の日数]をそれぞれ示す(□:正常マウス群、■:薬物非投与(対照)群、△:インドメタシン投与群、▲:メトトレキサート投与群、●:FK506投与群)。また、Eは追加免疫2週後の後肢腫脹に及ぼす各薬物の効果[縦軸:後肢重量(mg)(平均値±標準誤差、n=8)]、Fは追加免疫2週後の抗ウシII型コラーゲンIgG2a抗体価に及ぼす各薬物の効果[縦軸:抗体価(A450)(平均値±標準誤差、n=8)]をそれぞれ示す[左より正常マウス群、薬物非投与(対照)群、インドメタシン(IND)投与群、メトトレキサート(MTX)投与群、FK506投与群を示す]。##はP≦0.01(正常マウス群との比較;t検定)、*および**はそれぞれP≦0.05およびP≦0.01(薬物非投与群との比較;Dunnett検定)を示す。
【図10】マウスコラーゲン関節炎に対する4Fbenzoyl−TN−14003の作用を示す図である。Aは体重の変動[縦軸:体重の変動(g)(平均値±標準誤差)、横軸:追加免疫後の日数]、Bは発病率の変動[縦軸:発病率(%)、横軸:追加免疫後の日数]、Cは関節炎スコアの変動[縦軸:関節炎スコア(平均値±標準誤差)、横軸:追加免疫後の日数]、Dは踵厚の変動[縦軸:踵厚(mm)(平均値±標準誤差)、横軸:追加免疫後の日数]をそれぞれ示す[□:正常マウス群(n=8)、■:薬物非投与(対照)群(n=12)、△:4Fbenzoyl−TN−14003投与群(n=11)]。また、Eは追加免疫2週後の後肢腫脹に及ぼす4Fbenzoyl−TN−14003の効果[縦軸:後肢重量(mg)(平均値±標準誤差)]、Fは追加免疫2週後の抗ウシII型コラーゲンIgG2a抗体価に及ぼす4Fbenzoyl−TN−14003の効果[縦軸:抗体価(A450)(平均値±標準誤差)]をそれぞれ示す[左より正常マウス群(n=8)、薬物非投与(対照)群(n=12)、4Fbenzoyl−TN−14003投与群(n=11)を示す]。##はP≦0.01(正常マウス群との比較;t検定)、**はP≦0.01(薬物非投与群との比較;t検定)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書に記載されるペプチドは、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。
本明細書および図面において、アミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commision on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体が存在する場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
GlyまたはG :グリシン
AlaまたはA :アラニン
ValまたはV :バリン
LeuまたはL :ロイシン
IleまたはI :イソロイシン
SerまたはS :セリン
ThrまたはT :スレオニン
CysまたはC :システイン
MetまたはM :メチオニン
GluまたはE :グルタミン酸
AspまたはD :アスパラギン酸
LysまたはK :リジン
ArgまたはR :アルギニン
HisまたはH :ヒスチジン
PheまたはF :フェニルアラニン
TyrまたはY :チロシン
TrpまたはW :トリプトファン
ProまたはP :プロリン
AsnまたはN :アスパラギン
GlnまたはQ :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
Nal :3−(2−ナフチル)アラニン
Cit :シトルリン
DLys :D−リジン
DCit :D−シトルリン
DGlu :D−グルタミン酸
Me :メチル基
Et :エチル基
Bu :ブチル基
Ph :フェニル基
【0020】
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
BHA:ベンズヒドリルアミン
pMBHA:p−メチルベンズヒドリルアミン
Tos:p−トルエンスルフォニル
CHO:ホルミル
HONB:N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド
OcHex:シクロヘキシルエステル
Bzl:ベンジル
Cl2−Bzl:ジクロロベンジル
Bom:ベンジルオキシメチル
Z:ベンジルオキシカルボニル
Br−Z:2−ブロモベンジルオキシカルボニル
Boc:t−ブチルオキシカルボニル
DCM:ジクロロメタン
HOBt:1−ヒドロキシベンズトリアゾール
DCC:N、N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
TFA:トリフルオロ酢酸
DIEA:ジイソプロピルエチルアミン
Fmoc:N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
DNP:ジニトロフェニル
Bum:ターシャリーブトキシメチル
Trt:トリチル
Ac:アセチル
guanyl:グアニル
succinyl:スクシニル
glutaryl:グルタリル
TMguanyl:テトラメチルグアニル
2F−beozoyl:2−フルオロベンソイル
4F−benzoyl:4−フルオロベンゾイル
APA:5−アミノペンタノイル
ACA:6−アミノヘキサノイル
desamino−R:2−デスアミノ−アルギニル
deaminoTMG−APA:下記式(II)
【0021】
【化5】

【0022】
nelfinabiryl−succinyl:下記式(III)
【0023】
【化6】

【0024】
AZT−glutaryl:下記式(IV)
【0025】
【化7】

【0026】
R−CH2:下記式(V)
【0027】
【化8】

【0028】
尚、ペプチドのN末端アミノ酸において「H−」とは末端アミノ基が誘導体化されていないことを示し、C末端アミノ酸において「−OH」とは末端カルボキシル基が誘導体化されていないことを示す。
【0029】
本発明は、CXCR4拮抗作用を有する化合物を含有する癌ならびに慢性関節リューマチの予防及び/又は治療剤を提供する。「CXCR4拮抗作用を有する化合物」は、CXCR4とその生理的リガンドであるCXCL12/SDF−1αとの結合を拮抗的に阻害して抗癌作用(例えば、遊走阻害作用、浸潤阻害作用および抗転移作用など)または抗慢性関節リューマチ作用(例えば、遊走阻害作用)を発揮するものであり、より具体的には、下記式(Ia)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
A1-A2-A3-Cys-Tyr-A4-A5-A6-A7-A8-A9-A10-Cys-A11 (Ia)
(式中、
A1は、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基であるか、又は欠失しており;
A2は、A1がN末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基である場合には、アルギニンまたはグルタミン酸残基を表し、A1が欠失している場合には、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
A3は、芳香族アミノ酸残基を表し;
A4、A5及びA9は、独立して、アルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン又はグルタミン酸残基を表し;
A6は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン、アルギニン又はグルタミン酸残基を表し;
A7は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン又はアルギニン残基を表し;
A8は、チロシン、フェニルアラニン、アラニン、ナフチルアラニン、シトルリン又はグルタミン酸残基を表し;
A10は、シトルリン、グルタミン酸、アルギニン又はリジン残基を表し;
A11は、C末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、グルタミン酸、リジン又はシトルリン残基を表し;
上記式中、Cysはシステイン残基を表し、Tyrはチロシン残基を表し、4位と13位のシステイン残基はジスルフィド結合により連結していてもよく、アミノ酸はL体であってもD体であってもよい)
で示されるペプチド、そのアミド、そのエステルまたはその塩(以下、「本発明のペプチド」と総称する場合もある)が挙げられる。
【0030】
上記式(Ia)で示されるA1は、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基(L体であってもD体であってもよい)を表すか、又は欠失しており、好ましくは、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、シトルリン、アラニン若しくはD−グルタミン酸残基を表すか、又は欠失している。「N末端で誘導体化され」たものとしては、例えば、ホルミル基;アシル基、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基等のC2-6アルカノイル基、ベンゾイル基、置換ベンゾイル基(例:2-フルオロベンゾイル、3-フルオロベンゾイル基、4-フルオロベンゾイル基、2-ブロモベンゾイル基、3-ブロモベンゾイル基、4-ブロモベンゾイル基、2-ニトロベンゾイル基、3-ニトロベンゾイル基、4-ニトロベンゾイル基)等のアリールカルボニル基、サクシニル基、グルタリル基;ニコチニル基;イソニコチニル基;アルキルスルフォニル基(例:メタンスルフォニル基、エタンスルフォニル基、プロパンスルフォニル基、カンファースルフォニル基);アリールスルホニル基(例:p-トルエンスルフォニル基、4-フルオロベンゼンスルフォニル基、メシチレンスルフォニル基、4-アミノベンゼンスルフォニル基、ダンシル基、4-ブロモベンゼンスルフォニル基)などで保護されているもの等が挙げられるが、これらに限定されない。あるいはN末端のアミノ基を欠失していてもよい。
【0031】
上記式(Ia)で示されるA2は、A1がN末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基(L体であってもD体であってもよい)である場合には、アルギニンまたはグルタミン酸残基(L体であってもD体であってもよい)を表し、A1が欠失している場合には、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン又はグルタミン酸残基(L体であってもD体であってもよい)を表し、好ましくは、A1がN末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、シトルリン、アラニン若しくはグルタミン酸残基である場合には、アルギニンまたはグルタミン酸残基を表し、A1が欠失している場合には、N末端で誘導体化されていてもよいアルギニン又はグルタミン酸残基を表す。「N末端で誘導体化され」たものとしては、上記A1と同様のものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0032】
上記式(Ia)で示されるA3は、芳香族アミノ酸残基(例えば、フェニルアラニン、トリプトファン、3−(2−ナフチル)アラニン、チロシン、4−フルオロフェニルアラニン、3−(1−ナフチル)アラニン)(L体であってもD体であってもよい)を表し、好ましくは、フェニルアラニン、トリプトファン、3−(2−ナフチル)アラニンを表す。
【0033】
上記式(Ia)で示されるA4は、アルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン又はグルタミン酸残基(L体であってもD体であってもよい)を表し、好ましくは、アルギニン、シトルリン、アラニン又はL−もしくはD−グルタミン酸残基を表す。
【0034】
上記式(Ia)で示されるA5は、アルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン又はグルタミン酸残基を表し、好ましくは、アルギニン、シトルリン、アラニン、リジン又はグルタミン酸残基を表す。
【0035】
上記式(Ia)で示されるA6は、プロリン、グリシン、オルニチン、リジン、アラニン、シトルリン、アルギニン又はグルタミン酸残基(L体であってもD体であってもよい)を表し、好ましくは、D−リジン、D−アラニン、D−シトルリン又はD−グルタミン酸残基を表す。
【0036】
上記式(Ia)で示されるA7は、プロリン又はアラニン残基(L体であってもD体であってもよい)を表し、好ましくは、プロリン又はアラニン残基を表す。
【0037】
上記式(Ia)で示されるA8は、チロシン、フェニルアラニン、アラニン、ナフチルアラニン、シトルリン又はグルタミン酸残基(L体であってもD体であってもよい)を表し、好ましくは、チロシン、アラニン又はD−グルタミン酸残基を表す。
【0038】
上記式(Ia)で示されるA9は、アルギニン、リジン、オルニチン、シトルリン、アラニン又はグルタミン酸残基(L体であってもD体であってもよい)を表し、好ましくは、アルギニン、シトルリン又はグルタミン酸残基を表す。
【0039】
上記式(Ia)で示されるA10は、シトルリン、グルタミン酸、アルギニン又はリジン残基(L体であってもD体であってもよい)を表し、好ましくは、シトルリン又はD−グルタミン酸残基を表す。
【0040】
上記式(Ia)で示されるA11は、C末端で誘導体化されていてもよいアルギニン、グルタミン酸、リジン又はシトルリン残基(L体であってもD体であってもよい)を表し、好ましくは、C末端で誘導体化されていてもよいアルギニン又はグルタミン酸残基を表す。「C末端の誘導体化」としては、例えば、アミド化(-NH2、-NHR、-NRR’)、エステル化(-COOR)等が挙げられる。ここでアミド、エステルにおけるR及びR’としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1-6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6-12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1-2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1-2アルキル基などのC7-14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
【0041】
本発明のペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のペプチドに含まれる。この場合のアミドおよびエステルとしては、例えば上記A11について例示されたC末端のアミドおよびエステルなどが同様に用いられる。さらに、本発明のペプチドには、上記したペプチドにおいて、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC2-6アルカノイル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
【0042】
本発明のペプチドの塩としては、酸または塩基との生理学的に許容される塩が挙げられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが挙げられる。
【0043】
また、本発明のペプチドは、上記式(Ia)で示されるA1〜A11のいずれか1つが以下の場合には、新規ペプチドである:
(i)A1がグルタミン酸残基又は欠失している場合(即ち、上記式(Ib)の場合);
(ii)A2、A4、A6、A8及びA9のいずれか1つがグルタミン酸残基の場合(即ち、上記式(Ic)〜(Ig)のいずれかの場合);
(iii)A5がアルギニン又はグルタミン酸残基の場合(即ち、上記式(Ih)の場合);
(iv)A10がグルタミン酸、アルギニン又はリジン残基の場合(即ち、上記式(Ii)の場合);
(v)A11がグルタミン酸、リジン又はシトルリン残基の場合(即ち、上記式(Ij)の場合)。
尚、上記アミノ酸残基は、L体でもD体でもよい。
【0044】
本発明の新規ペプチドとして、好ましくは以下の(1)〜(58)のアミノ酸配列(各配列中、2つのシステイン残基はジスルフィド結合により連結している)を有するペプチドが例示される。
(1) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(AcTC14003)
(2) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(AcTC14005)
(3) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(AcTC14011)
(4) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-OH
(AcTC14013)
(5) Ac-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(AcTC14015)
(6) Ac-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(AcTC14017)
(7) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-OH
(AcTC14019)
(8) Ac-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-OH
(AcTC14021)
(9) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTC14012)
(10) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTC14014)
(11) Ac-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTC14016)
(12) Ac-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTC14018)
(13) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTC14020)
(14) Ac-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTC14022)
(15) H-DGlu-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TE14001)
(16) H-Arg-Glu-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TE14002)
(17) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Glu-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TE14003)
(18) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Glu-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TE14004)
(19) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TE14005)
(20) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Glu-Cit-Cys-Arg-OH
(TE14006)
(21) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Glu-OH
(TE14007)
(22) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TE14011)
(23) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-DGlu-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TE14012)
(24) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-DGlu-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TE14013)
(25) H-DGlu-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TE14014)
(26) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-DGlu-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TE14015)
(27) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-DGlu-Cys-Arg-NH2
(TE14016)
(28) Ac-DGlu-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTE14014)
(29) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-DGlu-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTE14015)
(30) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-DGlu-Cys-Arg-NH2
(AcTE14016)
(31) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF1: AcTE14011)
(32) guanyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF2: guanyl-TE14011)
(33) TMguanyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF3: TMguanyl-TE14011)
(34) TMguanyl-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF4: TMguanyl-TE14011 (2-14))
(35) 4F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF5: 4F-benzoyl-TE14011)
(36) 2F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF6: 2F-benzoyl-TE14011)
(37) APA-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF7: APA-TE14011 (2-14))
(38) desamino-R-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF8: desamino-R-TE14011 (2-14))
(39) guanyl-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF9: guanyl-TE14011 (2-14))
(40) succinyl-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF10: succinyl-TE14011 (2-14))
(41) glutaryl-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF11: glutaryl-TE14011 (2-14))
(42) deaminoTMG-APA-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF12: deaminoTMG-APA-TE14011 (2-14))
(43) nelfinabiryl-succinyl-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF13: nelfinabiryl-succinyl-TE14011 (2-14))
(44) AZT-glutaryl-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF14: AZT-glutaryl-TE14011 (2-14))
(45) R-CH2-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF15: R-CH2NH-RTE14011 (2-14))
(46) H-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF17: TE14011 (2-14))
(47) TMguanyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF18: TMguanyl-TC14012)
(48) ACA-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF19: ACA-TC14012)
(49) ACA-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TF20: ACA-T140)
(50) H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Arg-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TZ14011)
(51) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Arg-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTZ14011)
(52) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTN14003)
(53) Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTN14005)
(54) 4F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(4F-benzoyl-TN14003)
(55) 4F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NHMe
(4F-benzoyl-TN14011-Me)
(56) 4F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NHEt
(4F-benzoyl-TN14011-Et)
(57) 4F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NHiPr
(4F-benzoyl-TN14011-iPr)
(58) 4F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-tyramine
(4F-benzoyl-TN14011-tyramine)
【0045】
本発明のペプチドは、上記したいずれかのペプチドのアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドまたはそのアミド、そのエステルもしくはその塩をも包含する。ここで「実質的に同一のアミノ酸配列」とは、ペプチドの活性(例えば、リガンドと受容体の結合阻害活性など)またはペプチドの抗癌作用(例えば、遊走阻害作用、浸潤阻害作用および抗転移作用など)または抗リューマチ作用(例えば、遊走阻害作用)などが、性質的に同質である[従って、量的にある程度(例えば、約0.01〜100倍、好ましくは約0.5〜20倍、より好ましくは約0.5〜2倍)の差異があってもよい]ようなアミノ酸配列を意味する。したがって、上記特性を保持する限り、上記式(Ia)〜(Ij)および(1)〜(58)のいずれかに示されるアミノ酸配列において1または2以上のアミノ酸に変異を有していてもよい。
即ち、本発明においては、元の(無変異の)ペプチドの生理的な特性や化学的な特性に重大な(著しい)変化(=性質的に異質、もしくは同質であっても量的に著しく異なるような変化)をもたらさないような置換、欠失あるいは挿入(付加)等のアミノ酸配列における変異の結果得られるペプチド(変異型ペプチド)は、そのような変異を有していない元の(無変異の)ペプチドと実質的に同一であると見なされ、またその変異型ペプチドのアミノ酸配列は、元の(無変異の)ペプチドのアミノ酸配列と実質的に同一であると見なされる。
一般に、ペプチド配列中におけるアミノ酸の置換、欠失あるいは挿入(付加)などの変異は、そのペプチドの生理的な特性や化学的な特性に大きな(著しい)変化をもたらさないことがしばしばあることは、よく知られた事実である。該置換の例としては、あるアミノ酸が性質(特性)の似ている他のアミノ酸で置換されたものが挙げられ、一般的には、特性の類似性が強いアミノ酸相互間で置換が行われる場合ほど、その置換が置換前の元のペプチドにおよぼす特性の変化は小さいと考えられている。アミノ酸は、その特性の類似性を一つの基準にして例えば次のようなクラス:(i)非極性(疎水性)アミノ酸(例:アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニンなど);(ii)極性(中性)アミノ酸(例:グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミンなど);(iii)陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸(例:アルギニン、リジン、ヒスチジンなど);(iv)負電荷をもつ(酸性)アミノ酸(例:アスパラギン酸、グルタミン酸など)に分類されるので、各クラス内でのアミノ酸置換は、ペプチドの特性に対して保存的(即ち、「実質的に同一な」アミノ酸配列を生ずる置換)であり得る。
【0046】
言い換えれば、「実質的に同一のアミノ酸配列」には、
(i)上記式(Ia)〜(Ij)および(1)〜(58)のいずれかに示されるアミノ酸配列中の1個以上、好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、
(ii)上記式(Ia)〜(Ij)および(1)〜(58)のいずれかに示されるアミノ酸配列中の1個以上7個以下、好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
(iii)上記式(Ia)〜(Ij)および(1)〜(58)のいずれかに示されるアミノ酸配列に1個以上15個以下、好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下のアミノ酸が付加した(挿入された)アミノ酸配列、あるいは
(iv)上記(i),(ii)または(iii)のアミノ酸配列を有するペプチド中の構成アミノ酸(特にその側鎖)に修飾を含むペプチド、またはそのアミド、そのエステルもしくはその塩が包含され得る。
本発明のペプチドは、そのアミノ酸配列中に上記(i)ないし(iv)の置換、欠失、挿入(付加)、修飾などを意図的または偶発的に施すことにより、熱やプロテアーゼに対する安定型ペプチドや、該ペプチドの有する阻害活性が高まった高活性型ペプチドに変換させることが可能である。本発明のペプチドは、これら変異型ペプチドまたはそのアミド、そのエステルもしくはその塩をも包含する。
【0047】
さらに、本発明のペプチドとしては、上記式(Ia)〜(Ij)および(1)〜(58)のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドの他に、該アミノ酸配列と約50〜99.9%(好ましくは70〜99.9%、より好ましくは80〜99.9%、さらに好ましくは90〜99.9%)の相同性を有するアミノ酸配列を含有し、上記式(Ia)〜(Ij)および(1)〜(58)のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドと実質的に同質の活性を有するペプチドまたはそのアミド、そのエステルもしくはその塩などが挙げられる。該活性としては、例えばリガンドとレセプターとの結合阻害活性、シグナル伝達阻害活性など、該ペプチドが有する阻害活性が挙げられる。阻害活性が「実質的に同質」とは、該レセプターに対する該リガンド結合阻害活性などの特性が同質であることを示す。従って、該レセプターに対する該リガンド結合阻害活性には著しくない程度の強弱が認められてもよく、また、分子量における相違は問題ではない。
【0048】
上記式(1)〜(58)のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するペプチドのアミド、エステルもしくは塩としては、上記一般式(Ia)で示されるペプチドについて例示した通りのものが同様に挙げられる。好ましくは、上記式(1)〜(58)のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するペプチドは、C末端アミノ酸残基のカルボキシル基がアミド化されていることが望ましい。
【0049】
上記式(1)〜(58)に示されるアミノ酸配列を含有するペプチドをはじめとする本発明のペプチドは、自体公知のペプチドの合成法に従って製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、ペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の1)〜5)に記載された方法が挙げられる。
1) M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York(1966年)
2) SchroederおよびLuebke、ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
3) 泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株) (1975年)
4) 矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座1、蛋白質の化学IV、205、(1977年)
5) 矢島治明監修、続医薬品の開発 第14巻 ペプチド合成 広川書店
【0050】
具体的なペプチド合成法として、例えば、以下の方法が挙げられる。
通常市販のポリペプチド合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするポリペプチドの配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からポリペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のポリペプチドまたはそれらのアミド体を取得する。上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、ポリペプチド合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド、N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt, HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
【0051】
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、ポリペプチド縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はポリペプチド結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することができる。
【0052】
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl-Z、Br-Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ターシャリーブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t-ブチル基などである。チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2-Bzl、2−ニトロベンジル、Br-Z、ターシャリーブチルなどが用いられる。ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
【0053】
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5-トリクロロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N-ヒドロキシスクシミド、N-ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd-炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4-ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2-エタンジチオール、1,4-ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
【0054】
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。ポリペプチドのアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたポリペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したポリペプチドとを製造し、この両ポリペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護ポリペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗ポリペプチドを得ることができる。この粗ポリペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のポリペプチドのアミド体を得ることができる。ポリペプチドのエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、ポリペプチドのアミド体と同様にして、所望のポリペプチドのエステル体を得ることができる。
【0055】
反応後は通常の精製法、たとえば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明のペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られるペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
【0056】
好ましくは、上記式(1)〜(58)に示されるアミノ酸配列を有する本発明の新規ペプチドは、後記実施例に記載される方法、あるいはそれらに準じた方法により製造することができる。また、本発明のペプチドは、国際公開第02/20561号パンフレットに記載の方法、あるいはこれらに準じた方法によって製造することができる。
【0057】
本発明のペプチドを医薬または動物薬として使用する場合は、常套手段に従って実施すればよい。例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、本発明のペプチドを生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0058】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施にしたがって処方することができる。
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例えばポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としてはゴマ油、大豆油などがあげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調整された注射液は通常、適当なアンプルに無菌的に充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えばヒトや哺乳動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、マントヒヒ、チンパンジーなど)に対して投与することができる。
本発明のペプチドの投与量は、症状などにより差異はあるが、経口投与する場合、体重60kgに対して一回につき通常約0.1から1000mg、好ましくは約1.0から500mg、より好ましくは約1.0から200mgである。非経口的に投与する場合は、体重60kgに対してその一回の投与量は投与対象、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば注射剤の形では一回につき通常約0.01から300mg程度、好ましくは約0.1から200mg程度、より好ましくは約0.1から100mg程度を静脈注射により投与すればよい。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0059】
本発明のペプチドは、抗癌作用、つまり、癌細胞の運動抑制作用および癌転移阻害作用を有する。即ち、本発明のペプチドは、後述の実施例から明らかなように、癌転移阻害作用を有するため、癌、特に癌転移に関係する予防および治療薬に用いることができる。従って、本発明におけるペプチドは、抗癌薬として、口腔癌、咽頭癌、口唇癌、舌癌、歯肉癌、鼻咽頭癌、食道癌、胃癌、小腸癌、結腸癌を含む大腸癌、肝臓癌、胆のう癌、膵臓癌、鼻腔癌、肺癌、骨肉腫、軟部組織癌、皮膚癌、黒色腫、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、陰茎癌、膀胱癌、腎臓癌、脳腫瘍、甲状腺癌、リンパ腫、白血病などの改善、予防および治療薬として有用である。また、本発明のペプチドは、抗慢性関節リューマチ作用、つまり、T細胞の運動抑制作用を有する。即ち、本発明のペプチドは、後述の実施例から明らかなように、T細胞の運動抑制作用を有するため、慢性関節リューマチに対する予防および治療薬に用いることができる。従って、本発明におけるペプチドは、慢性関節リューマチの改善、予防および治療薬として有用である。
CXCR4拮抗作用を有する化合物が抗ウイルス活性を有することは公知である。従って、本発明のペプチドがウイルス感染症(例、エイズ、SARSなど)の予防および治療薬としても用い得ることは当業者に自明であろう。
【0060】
例えば、本発明のペプチドを抗癌薬として用いる場合には、他の抗癌剤(例えば、化学療法剤、免疫療法剤、または細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤)など(以下、併用薬物と略記する)と併用して使用することができる。
本発明のペプチドは、単剤として使用しても優れた抗癌作用を示すが、さらに上記併用薬物の一つまたは幾つかと併用(多剤併用)することによって、その効果をより一層増強させることができる。
【0061】
該「化学療法剤」としては、例えばアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗癌性抗生物質、植物由来抗癌剤などが挙げられる。
「アルキル化剤」としては、例えば、ナイトロジェンマスタード、塩酸ナイトロジェンマスタード−N−オキシド、クロラムブチル、シクロフォスファミド、イホスファミド、チオテパ、カルボコン、トシル酸インプロスルファン、ブスルファン、塩酸ニムスチン、ミトブロニトール、メルファラン、ダカルバジン、ラニムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、トリエチレンメラミン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ピポブロマン、エトグルシド、アルトレタミン、アンバムスチン、塩酸ジブロスピジウム、フォテムスチン、プレドニムスチン、プミテパ、リボムスチン、テモゾロミド、トレオスルファン、トロフォスファミド、ジノスタチンスチマラマー、カルボコン、アドゼレシン、システムスチン、ビゼレシン、白金錯体(カルボプラチン、シスプラチン、ミボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチンなど)などが挙げられる。
【0062】
「代謝拮抗剤」としては、例えば、メルカプトプリン、6−メルカプトプリンリボシド、チオイノシン、メトトレキサート、エノシタビン、シタラビン、シタラビンオクフォスファート、塩酸アンシタビン、5−FU系薬剤(例、フルオロウラシル、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、ガロシタビン、エミテフールなど)、アミノプテリン、ロイコボリンカルシウム、タブロイド、ブトシン、フォリネイトカルシウム、レボフォリネイトカルシウム、クラドリビン、エミテフール、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、ピリトレキシム、イドキシウリジン、ミトグアゾン、チアゾフリン、アンバムスチン、ジェミシタビンなどが挙げられる。
【0063】
「抗癌性抗生物質」としては、例えば、アントラサイクリン系抗癌薬(塩酸ドキソルビシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸アクラルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸エピルビシンなど)、アクチノマイシンD、アクチノマイシンC、マイトマイシンC、クロモマイシンA3、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、ネオカルチノスタチン、ミスラマイシン、ザルコマイシン、カルチノフィリン、ミトタン、塩酸ゾルビシン、塩酸ミトキサントロン、塩酸イダルビシンなどが挙げられる。
【0064】
「植物由来抗癌剤」としては、例えば、ビンカアルカロイド系抗癌薬(硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、ビノレルビンなど)、タクサン系抗癌薬(パクリタクセル、ドセタクセルなど)、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、ビノレルビンなどが挙げられる。
該「細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤」における、「細胞増殖因子」としては、細胞の増殖を促進する物質であればどのようなものでもよく、通常、分子量が20,000以下のペプチドで、受容体との結合により低濃度で作用が発揮される因子が挙げられ、具体的には、(1)EGF(epidermal growth factor)またはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、EGF、ハレグリン(HER2リガンド)など〕、(2)インシュリンまたはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、インシュリン、IGF(insulin-like growth factor)−1、IGF−2など〕、(3)FGF(fibroblast growth factor)またはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、酸性FGF、塩基性FGF、KGF(keratinocyte growth factor)、FGF-10など〕、(4)その他の細胞増殖因子〔例、CSF(colony stimulating factor)、EPO(erythropoietin)、IL−2(interleukin-2)、NGF(nerve growth factor)、PDGF(platelet-derived growth factor)、TGFβ(transforming growth factorβ)、HGF(hepatocyte growth factor)、VEGF(vascular endothelial growth factor)など〕などが挙げられる。
【0065】
該「細胞増殖因子の受容体」としては、上記の細胞増殖因子と結合能を有する受容体であればいかなるものであってもよく、具体的には、EGF受容体、ハレグリン受容体(HER2)、インシュリン受容体、IGF受容体、FGF受容体−1またはFGF受容体−2、HGF受容体(c−met)、VEGF受容体、SCF受容体(c−kit)などがあげられる。
該「細胞増殖因子の作用を阻害する薬剤」としては、ハーセプチン(HER2抗体)、GLEEVEC(c−met、c−kit、abl阻害薬)、Iressa(EGF受容体阻害薬)などがあげられる。
【0066】
上記の薬剤の他に、トポイソメラーゼI阻害薬(例、イリノテカン、トポテカンなど)、トポイソメラーゼII阻害薬(例えば、ソブゾキサンなど)、血管新生阻害薬なども用いることができる。
【0067】
また、本発明のペプチドを慢性関節リューマチの予防及び/又は治療剤として用いる場合には、他の関節疾患の予防及び/又は治療剤と併用して使用することができる。該併用される薬剤としては、例えば、抗炎症ステロイド剤(例、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン等)、非ステロイド性消炎鎮痛剤(例、インドメタシン、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、イブプロフェン、アスピリン、ピロキシカム、スリンダク等)あるいはヒアルロン酸製剤(例、ヒアルロン酸ナトリウム等)、COX−II阻害剤などが挙げられる。
本発明のペプチドは、単剤として使用しても優れた抗慢性関節リューマチ作用を示すが、さらに上記併用薬物の一つまたは幾つかと併用(多剤併用)することによって、その効果をより一層増強させることができる。
【0068】
本発明のペプチドと併用薬物との併用に際しては、本発明のペプチドと併用薬物の投与時期は限定されず、本発明のペプチドと併用薬物とを、投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。併用薬物の投与量は、臨床上用いられている投与量に準ずればよく、投与対象、投与ルート、疾患、組み合わせ等により適宜選択することができる。
【0069】
本発明のペプチドと併用薬物との投与形態は、特に限定されず、投与時に、本発明のポリペプチド又はその塩と併用薬物とが組み合わされていればよい。このような投与形態としては、例えば、(1)本発明のペプチドと併用薬物とを同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与、(2)本発明のペプチドと併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与、(3)本発明のペプチドと併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与、(4)本発明のペプチドと併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、(5)本発明のペプチドと併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与(例えば、本発明のペプチド→併用薬物の順序での投与、あるいは逆の順序での投与)などが挙げられる。以下、これらの投与形態をまとめて、本発明の併用剤と略記する。
【0070】
本発明の併用剤は、毒性が低く、例えば、本発明のペプチド及び/又は上記併用薬物を自体公知の方法に従って、薬理学的に許容される担体と混合して医薬組成物、例えば錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤、(ソフトカプセルを含む)、液剤、注射剤、坐剤、徐放剤等として、経口的又は非経口的(例、局所、直腸、静脈投与等)に安全に投与することができる。注射剤は、静脈内、筋肉内、皮下、臓器内、鼻腔内、皮内、点眼、脳内、直腸内、膣内および腹腔内、腫瘍内部、腫瘍の近位などへの投与あるいは直接病巣に投与することができる。
【0071】
本発明の併用剤の製造に用いられてもよい薬理学的に許容される担体としては、前記した本発明の医薬組成物に使用されるものと同様のものを使用することができる。
本発明の併用剤における本発明のペプチドと併用薬物との配合比は、投与対象、投与ルート、疾患等により適宜選択することができる。
本発明の併用剤における併用薬物の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約0.01ないし100重量%、好ましくは約0.1ないし50重量%、さらに好ましくは約0.5ないし20重量%程度である。
本発明の併用剤における担体等の添加剤の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約1ないし99.99重量%、好ましくは約10ないし90重量%程度である。
【0072】
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0073】
<製造例1:ポリペプチドTC14003の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TC14003)
1.TC14003保護ポリペプチド樹脂の合成
最初の14位アルギニンを導入したアルコ樹脂 Fmoc-Arg(Pbf)-Alko resinからFmoc基を20%ピペリジン/DMFで除去後、13位に相当するFmoc-Cys(Trt)-OH (2.5 eq)を加えDMF中、DIPCDI -HOBt法により縮合反応を行った。縮合反応の進行の程度は、Kaiser, E.ら(Anal. Biochem., 34: 595 (1970))のニンヒドリン試験により調べた。
【0074】
2.12位〜1位アミノ酸の導入
以下同様にして、順次、Cit、Arg(Pbf)、Tyr(t-Bu)、Pro、DLys(Boc)、Lys(Boc)、Cit、Tyr(t-Bu)、Cys(Trt)、Nal、Arg(Pbf)、Arg(Pbf)残基を樹脂に導入し保護基保護化ポリペプチド樹脂を得た。
【0075】
3.脱保護基、樹脂からのポリペプチドの分離及び精製
保護基保護化ポリペプチド樹脂は、20%ピペリジン/DMF処理によりFmoc基を除去し、次いで樹脂に対して1M TMSBr-チオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下)で25 ℃、2時間反応させた。反応混合物から樹脂を濾別し、TFAで2回洗浄し、瀘液、洗液を合わせたものを減圧濃縮し、残さに水冷乾燥エーテルを加え、生じた沈殿物を遠心沈降とデカンテーションにより上澄みから分離した。得られた残さを冷エーテルで洗浄し、1N酢酸に溶解し、蒸留水で希釈した。
【0076】
4.空気酸化による環化
上述のポリペプチドの希釈水溶液を濃アンモニア水でpH7.5に調整し、通気による空気酸化を行い環化させた。本水溶液を大量分取型HPLC (コスモジール5C18 AR-IIカラム:アセトニトリルー水)およびゲルクロマトグラフィー(Sephadex G-15、溶出液: 0.1N AcOH)により精製し、単一ピークのポリペプチドを得、凍結乾燥した。純度は、HPLCにより確認した。
【実施例2】
【0077】
<製造例2:TC14005の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TC14005)
製造例1と同様の方法によりTC14005を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、8位のDLys(Boc)の代わりにDCit、6位のCitの代わりにArg(Pbf)を用いた。
【実施例3】
【0078】
<製造例3:TC14011の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TC14011)
製造例1と同様の方法によりTC14011を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、8位のDLys(Boc)の代わりにDCitを用いた。
【実施例4】
【0079】
<製造例4:TC14013の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-OH
(TC14013)
製造例1と同様の方法によりTC14013を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、11位のArg(Pbf)の代わりにCitを用いた。
【実施例5】
【0080】
<製造例5:TC14015の製造>
H-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TC14015)
製造例1と同様の方法によりTC14015を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、1位のArg(Pbf)の代わりにCitを用いた。
【実施例6】
【0081】
<製造例6:TC14017の製造>
H-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TC14017)
製造例1と同様の方法によりTC14017を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、8位のDLys(Boc)の代わりにDCit、6位のCitの代わりにArg(Pbf)、1位のArg(Pbf)の代わりにCitを用いた。
【実施例7】
【0082】
<製造例7:TC14019の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-OH
(TC14019)
製造例1と同様の方法によりTC14019を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、11位のArg(Pbf)の代わりにCit、8位のDLys(Boc)の代わりにDCit、6位のCitの代わりにArg(Pbf)を用いた。
【実施例8】
【0083】
<製造例8:TC14021の製造>
H-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-OH
(TC14021)
製造例1と同様の方法によりTC14021を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、11位のArg(Pbf)の代わりにCit、6位のCitの代わりにArg(Pbf)、1位のArg(Pbf)の代わりにCitを用いた。
【実施例9】
【0084】
<製造例9:TC14012の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TC14012)
1.TC14012保護ポリペプチド樹脂の合成
Fmoc-Rinkアミド樹脂からFmoc基を20%ピペリジン/DMFで除去後、14位に相当するFmoc-Arg(Pbf)-OH (2.5 eq)を加えDMF中、DIPCDI -HOBt法により縮合反応を行った。縮合反応の進行の程度は、Kaiser, E.ら(Anal. Biochem., 34: 595 (1970))のニンヒドリン試験により調べた。
【0085】
2.12位〜1位アミノ酸の導入
以下同様にして、順次、Cys(Trt)、Cit、Arg(Pbf)、Tyr(t-Bu)、Pro、DCit、Lys(Boc)、Cit、Tyr(t-Bu)、Cys(Trt)、Nal、Arg(Pbf)、Arg(Pbf)残基をRinkアミド樹脂に導入し、保護基保護化ポリペプチド樹脂を得た。
【0086】
3.脱保護基、樹脂からのポリペプチドの分離及び精製
保護基保護化ポリペプチド樹脂は、20%ピペリジン/DMF処理によりFmoc基を除去し、次いで樹脂に対して1M TMSBr-チオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下)で25 ℃、3時間反応させた。反応混合物から樹脂を濾別し、TFAで2回洗浄し、瀘液、洗液を合わせたものを減圧濃縮し、残さに水冷乾燥エーテルを加え、生じた沈殿物を遠心沈降とデカンテーションにより上澄みから分離した。得られた残さを冷エーテルで洗浄し、1N酢酸に溶解し、蒸留水で希釈した。
【0087】
4.空気酸化による環化
上述のポリペプチドの希釈水溶液を濃アンモニア水でpH7.5に調整し、通気による空気酸化を行い環化させた。本水溶液を大量分取型HPLC (コスモジール5C18 AR-IIカラム:アセトニトリルー水)およびゲルクロマトグラフィー(Sephadex G-15、溶出液: 0.1N AcOH)により精製し、単一ピークのポリペプチドを得、凍結乾燥した。純度は、HPLCにより確認した。
【実施例10】
【0088】
<製造例10:TC14014の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-NH2
(TC14014)
製造例9と同様の方法によりTC14014を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、11位のArg(Pbf)の代わりにCit、8位のDCitの代わりにDLys(Boc)を用いた。
【実施例11】
【0089】
<製造例11:TC14016の製造>
H-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TC14016)
製造例9と同様の方法によりTC14016を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、8位のDCitの代わりにDLys(Boc)、1位のArg(Pbf)の代わりにCitを用いた。
【実施例12】
【0090】
<製造例12:TC14018の製造>
H-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TC14018)
製造例9と同様の方法によりTC14018を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、6位のCitの代わりにArg(Pbf)、1位のArg(Pbf)の代わりにCitを用いた。
【実施例13】
【0091】
<製造例13:TC14020の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-NH2
(TC14020)
製造例9と同様の方法によりAcTC14020を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、11位のArg(Pbf)の代わりにCit、6位のCitの代わりにArg(Pbf)を用いた。
【実施例14】
【0092】
<製造例14:TC14022の製造>
H-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-NH2
(TC14022)
製造例9と同様の方法によりTC14022を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、11位のArg(Pbf)の代わりにCit、8位のDCitの代わりにDLys(Boc)、6位のCitの代わりにArg(Pbf)、1位のArg(Pbf)の代わりにCitを用いた。
【実施例15】
【0093】
<製造例15:TA14001、TA14005〜TA14009、TC14001およびTC14004の製造>
H-Ala-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TA14001)
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Ala-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TA14005)
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Ala-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TA14006)
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DAla-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TA14007)
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Ala-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TA14008)
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Ala-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TA14009)
H-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TC14001)
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Cit-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TC14004)
製造例1または9と同様の方法により導入するアミノ酸を変更することで、以上に示したTA14001、TA14005〜TA14009、TC14001およびTC14004を製造することができる。
【実施例16】
【0094】
<製造例16:AcTC14003、AcTC14005、AcTC14011〜AcTC14022の製造>
Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(AcTC14003)
Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(AcTC14005)
Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(AcTC14011)
Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-OH
(AcTC14013)
Ac-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(AcTC14015)
Ac-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(AcTC14017)
Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-OH
(AcTC14019)
Ac-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-OH
(AcTC14021)
Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTC14012)
Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTC14014)
Ac-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTC14016)
Ac-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTC14018)
Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTC14020)
Ac-Cit-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Cit-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTC14022)
製造例1〜14と同様の方法により、TC14003、TC14005、TC14011〜TC14022のアセチル化体を製造した。但し、保護基保護化ポリペプチド樹脂は、20%ピペリジン/DMF処理によりFmoc基を除去し、無水酢酸(100 eq)-sリジン(100 eq) /DMF処理によりアセチル化し、次いで樹脂に対して1M TMSBr-チオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下)で25 ℃、2時間(C末端がカルボン酸体の場合)または3時間(C末端がアミド体の場合)反応させた。
【実施例17】
【0095】
<製造例17:ポリペプチドTE14005の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TE14005)
1.TE14005保護ポリペプチド樹脂の合成
最初の14位アルギニンを導入したアルコ樹脂 Fmoc-Arg(Pbf)-Alko resin (0.74 mmol/g) 270 mg (0.2 mmol)からFmoc基を20%ピペリジン/DMFで除去後、12位に相当するFmoc-Cys(Trt)-OH (2.5 eq)を加えDMF中、DIPCDI -HOBt法により縮合反応を行った。縮合反応の進行の程度は、Kaiser, E.ら(Anal. Biochem., 34: 595 (1970))のニンヒドリン試験により調べた。
【0096】
2.12位〜1位アミノ酸の導入
以下同様にして、順次、Cit、Arg(Pbf)、Tyr(t-Bu)、Pro、DGlu(0-t-Bu)、Lys(Boc)、Arg(Pbf)、Tyr(t-Bu)、Cys(Trt)、Nal、Arg(Pbf)、Arg(Pbf)残基を樹脂に導入し保護基保護化ポリペプチド樹脂を得た。
【0097】
3.脱保護基、樹脂からのポリペプチドの分離及び精製
保護基保護化ポリペプチド樹脂は、20%ピペリジン/DMF処理によりFmoc基を除去し、次いで樹脂 200 mgに対して1M TMSBr-チオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下) 10 mLで25 ℃、2時間反応させた。反応混合物から樹脂を濾別し、TFA 1 mLで2回洗浄し、瀘液、洗液を合わせたものを減圧濃縮し、残さに水冷乾燥エーテル30 mLを加え、生じた沈殿物を遠心沈降とデカンテーションにより上澄みから分離した。得られた残さを冷エーテルで洗浄し、1N酢酸50 mLに溶解し、蒸留水で250 mLに希釈した。
【0098】
4.空気酸化による環化
上述のポリペプチドの希釈水溶液を濃アンモニア水でpH7.5に調整し、通気による空気酸化を行い環化させた。本水溶液を大量分取型HPLC (コスモジール5C18 AR-IIカラム:アセトニトリル−水)およびゲルクロマトグラフィー(Sephadex G-15、溶出液: 0.1N AcOH) により精製し、単一ピークのポリペプチドを得、凍結乾燥した。純度は、HPLCにより確認した。
収量 24.1 mg (7 AcOH塩) (21.3%)
[α]D23.6= - 5.36 (c 1.12, H2O)
イオンスプレーマススペクトル (IS-MS): C89H136N32020S2
計算値: 2038.38 実測値: 2038
(トリプルステージ四重極型質量分析装置API-IIIE (Sciex))
【実施例18】
【0099】
<製造例18:ポリペプチドTE14001の製造>
H-DGlu-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TE14001)
製造例17と同様の方法によりTE14001を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、8位のDGlu(O-t-Bu)の代わりにDLys(Boc)、1位のArg(Pbf)の代わりにDGlu(O-t-Bu)を用いた。
【実施例19】
【0100】
<製造例19:ポリペプチドTE14002の製造>
H-Arg-Glu-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TE14002)
製造例17と同様の方法によりTE14002を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、8位のDGlu(O-t-Bu)の代わりにDLys(Boc)、2位のArg(Pbf)の代わりにGlu(O-t-Bu)を用いた。
【実施例20】
【0101】
<製造例20:ポリペプチドTE14003の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Glu-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TE14003)
製造例17と同様の方法によりTE14003を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、8位のDGlu(O-t-Bu)の代わりにDLys(Boc)、6位のArg(Pbf)の代わりにGlu(O-t-Bu)を用いた。
【実施例21】
【0102】
<製造例21:ポリペプチドTE14004の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Glu-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TE14004)
製造例17と同様の方法によりTE14004を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、8位のDGlu(O-t-Bu)の代わりにDLys(Boc)、7位のLys(Boc)の代わりにGlu(O-t-Bu)を用いた。
【実施例22】
【0103】
<製造例22:ポリペプチドTE14006の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Glu-Cit-Cys-Arg-OH
(TE14006)
製造例17と同様の方法によりTE14006を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、8位のDGlu(O-t-Bu)の代わりにDLys(Boc)、11位のArg(Pbf)の代わりにGlu(O-t-Bu)を用いた。
【実施例23】
【0104】
<製造例23:ポリペプチドTE14007の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Glu-OH
(TE14007)
製造例17と同様の方法によりTE14007を製造した。但し、最初の14位アルギニンを導入したアルコ樹脂 Fmoc-Arg(Pbf)-Alko resinの代わりに最初の14位グルタミン酸を導入したアルコ樹脂 Fmoc-Glu(O-t-Bu)-Alko resinを用い、さらに12位〜1位アミノ酸の導入のところで、8位のDGlu(O-t-Bu)の代わりにDLys(Boc)を用いた。
【実施例24】
【0105】
<製造例24:ポリペプチドTE14011の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TE14011)
1.TE14011保護ポリペプチド樹脂の合成
Fmoc-Rinkアミド樹脂からFmoc基を20%ピペリジン/DMFで除去後、14位に相当するFmoc-Arg(Pbf)-OH (2.5 eq)を加えDMF中、DIPCDI -HOBt法により縮合反応を行った。縮合反応の進行の程度は、Kaiser, E.ら(Anal. Biochem., 34: 595 (1970))のニンヒドリン試験により調べた。
【0106】
2.12位〜1位アミノ酸の導入
以下同様にして、順次、Cys(Trt)、Cit、Arg(Pbf)、Tyr(t-Bu)、Pro、DGlu(O-t-Bu)、Lys(Boc)、Cit、Tyr(t-Bu)、Cys(Trt)、Nal、Arg(Pbf)、Arg(Pbf)残基をRinkアミド樹脂に導入し、保護基保護化ポリペプチド樹脂を得た。
【0107】
3.脱保護基、樹脂からのポリペプチドの分離及び精製
保護基保護化ポリペプチド樹脂は、20%ピペリジン/DMF処理によりFmoc基を除去し、次いで樹脂に対して1M TMSBr-チオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下)で25 ℃、3時間反応させた。反応混合物から樹脂を濾別し、TFAで2回洗浄し、瀘液、洗液を合わせたものを減圧濃縮し、残さに水冷乾燥エーテルを加え、生じた沈殿物を遠心沈降とデカンテーションにより上澄みから分離した。得られた残さを冷エーテルで洗浄し、1N酢酸に溶解し、蒸留水で希釈した。
【0108】
4.空気酸化による環化
上述のポリペプチドの希釈水溶液を濃アンモニア水でpH7.5に調整し、通気による空気酸化を行い環化させた。本水溶液を大量分取型HPLC (コスモジール5C18 AR-IIカラム:アセトニトリル−水)およびゲルクロマトグラフィー(Sephadex G-15、溶出液: 0.1N AcOH)により精製し、単一ピークのポリペプチドを得、凍結乾燥した。純度は、HPLCにより確認した。
【実施例25】
【0109】
<製造例25:ポリペプチドTE14012の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-DGlu-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TE14012)
製造例24と同様の方法によりTE14012を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、8位のDGlu(O-t-Bu)の代わりにDCit、6位のCitの代わりにDGlu(O-t-Bu)を用いた。
【実施例26】
【0110】
<製造例26:ポリペプチドTE14013の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-DGlu-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TE14013)
製造例24と同様の方法によりTE14013を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、6位のCitの代わりにDGlu(O-t-Bu)を用いた。
【実施例27】
【0111】
<製造例27:ポリペプチドTE14014の製造>
H-DGlu-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TE14014)
製造例24と同様の方法によりTE14014を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、1位のArg(Pbf)の代わりにDGlu(O-t-Bu)を用いた。
【実施例28】
【0112】
<製造例28:ポリペプチドTE14015の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-DGlu-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TE14015)
製造例24と同様の方法によりTE14015を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、10位のTyr(t-Bu)の代わりにDGlu(O-t-Bu)を用いた。
【実施例29】
【0113】
<製造例29:ポリペプチドTE14016の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-DGlu-Cys-Arg-NH2
(TE14016)
製造例24と同様の方法によりTE14016を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、12位のCitの代わりにDGlu(O-t-Bu)を用いた。
【実施例30】
【0114】
<製造例30:ポリペプチドAcTE14014〜AcTE14016の製造>
Ac-DGlu-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTE14014)
Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-DGlu-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTE14015)
Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-DGlu-Cys-Arg-NH2
(AcTE14016)
製造例27〜29と同様の方法によりTE14014〜TE14016のアセチル化体を製造した。但し、保護基保護化ポリペプチド樹脂は、20%ピペリジン/DMF処理によりFmoc基を除去し、無水酢酸(100 eq)-sリジン(100 eq) /DMF処理によりアセチル化し、次いで樹脂に対して1M TMSBr-チオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下)で25 ℃、3時間反応させた。
【実施例31】
【0115】
<製造例31:ポリペプチドTF1の製造>
Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF1: AcTE14011)
製造例24と同様の方法によりTF1を製造した。但し、保護基保護化ポリペプチド樹脂は、20%ピペリジン/DMF処理によりFmoc基を除去し、無水酢酸(100 eq)-sリジン(100 eq) /DMF処理によりアセチル化し、次いで樹脂に対して1M TMSBr-チオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下)で25 ℃、3時間反応させた。
【実施例32】
【0116】
<製造例32:ポリペプチドTF2の製造>
guanyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF2: guanyl-TE14011)
製造例24と同様の方法によりTF2を製造した。但し、保護基保護化ポリペプチド樹脂は、20%ピペリジン/DMF処理によりFmoc基を除去し、1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン(5 eq)-,N-ジイソプロピルエチルアミン (10 eq) /DMF処理によりグアニル化し、次いで樹脂に対して1M TMSBr-チオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下)で25 ℃、3時間反応させた。
【実施例33】
【0117】
<製造例33:ポリペプチドTF3の製造>
TMguanyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF3: TMguanyl-TE14011)
製造例24と同様の方法によりTF3を製造した。但し、保護基保護化ポリペプチド樹脂は、20%ピペリジン/DMF処理によりFmoc基を除去し、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート (5 eq)/DMF処理によりテトラメチルグアニル化し、次いで樹脂に対して1M TMSBr-チオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下)で25 ℃、3時間反応させた。
【実施例34】
【0118】
<製造例34:ポリペプチドTF4の製造>
TMguanyl-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF4: TMguanyl-TE14011 (2-14))
製造例24と同様の方法によりTF4を製造した。但し、1位のアルギニンを縮合しなかった。
【実施例35】
【0119】
<製造例35:ポリペプチドTF5の製造>
4F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF5: 4F-benzoyl-TE14011)
製造例24と同様の方法によりTF5を製造した。但し、保護基保護化ポリペプチド樹脂は、20%ピペリジン/DMF処理によりFmoc基を除去し、4-フルオロ安息香酸 (2.5 eq)をDIPCDI -HOBt法により縮合し、次いで樹脂に対して1M TMSBr-チオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下)で25 ℃、3時間反応させた。
【実施例36】
【0120】
<製造例36:ポリペプチドTF6の製造>
2F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF6: 2F-benzoyl-TE14011)
製造例24と同様の方法によりTF6を製造した。但し、保護基保護化ポリペプチド樹脂は、20%ピペリジン/DMF処理によりFmoc基を除去し、2-フルオロ安息香酸 (2.5 eq)をDIPCDI -HOBt法により縮合し、次いで樹脂に対して1M TMSBr-チオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下)で25 ℃、3時間反応させた。
【実施例37】
【0121】
<製造例37:ポリペプチドTF7の製造>
APA-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF7: APA-TE14011 (2-14))
製造例24と同様の方法によりTF7を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、1位のArg(Pbf)の代わりに、5-アミノペンタン酸 (Fmoc保護体)を導入した。
【実施例38】
【0122】
<製造例38:ポリペプチドTF8の製造>
desamino-R-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF8: desamino-R-TE14011 (2-14))
製造例24と同様の方法によりTF8を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、1位のArg(Pbf)の代わりに、5-アミノペンタン酸 (Fmoc保護体)を導入し、さらに、保護基保護化ポリペプチド樹脂は、20%ピペリジン/DMF処理によりFmoc基を除去し、1H-ピラゾール-1-カルボキサミジン(5 eq)-,N-ジイソプロピルエチルアミン (10 eq) /DMF処理によりグアニル化し、次いで樹脂に対して1M TMSBr-チオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下)で25 ℃、3時間反応させた。
【実施例39】
【0123】
<製造例39:ポリペプチドTF9の製造>
guanyl-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF9: guanyl-TE14011 (2-14))
製造例32と同様の方法を用いてTF9を製造した。但し、1位のアルギニンを縮合しなかった。
【実施例40】
【0124】
<製造例40:ポリペプチドTF10の製造>
succinyl-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF10: succinyl-TE14011 (2-14))
製造例24と同様の方法によりTF10を製造した。但し、1位のアルギニンを縮合しなかった。また、保護基保護化ポリペプチド樹脂は、20%ピペリジン/DMF処理によりFmoc基を除去し、無水コハク酸(5 eq)/ピリジン処理によりヘミスクシニル化し、次いで樹脂に対して1M TMSBr-チオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下)で25 ℃、3時間反応させた。
【実施例41】
【0125】
<製造例41:ポリペプチドTF11の製造>
glutaryl-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF11: glutaryl-TE14011 (2-14))
製造例40と同様の方法によりTF11を製造した。但し、保護基保護化ポリペプチド樹脂は、20%ピペリジン/DMF処理によりFmoc基を除去し、無水グルタル酸(5 eq)/ピリジン処理によりヘミスクシニル化し、次いで樹脂に対して1M TMSBr-チオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下)で25 ℃、3時間反応させた。
【実施例42】
【0126】
<製造例42:ポリペプチドTF12の製造>
deaminoTMG-APA-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF12: deaminoTMG-APA-TE14011 (2-14))
製造例24と同様の方法によりTF12を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、1位のArg(Pbf)の代わりに、5-アミノペンタン酸 (Fmoc保護体)を導入し、さらに、保護基保護化ポリペプチド樹脂は、20%ピペリジン/DMF処理によりFmoc基を除去し、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート (5 eq)/DMF処理によりテトラメチルグアニル化し、次いで樹脂に対して1M TMSBr-チオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下)で25 ℃、3時間反応させた。
【実施例43】
【0127】
<製造例43:ポリペプチドTF15の製造>
R-CH2-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF15: R-CH2NH-RTE14011)
製造例24と同様の方法によりTF15を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、1位にFmoc-Arg(Pbf)-OHを縮合する代わりに、Fmoc-Arg(Pbf)-H (アルデヒド)を還元的アミノ化により縮合した(NaB(CN)H3(3 eq), AcOH(1 eq)/DMF)。
【実施例44】
【0128】
<製造例44:ポリペプチドTF17の製造>
H-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF17)
(TF17: TE14011 (2-14))
製造例24と同様の方法によりTF17を製造した。但し、1位のアルギニンを縮合しなかった。
【実施例45】
【0129】
<製造例45:ポリペプチドTF18の製造>
TMguanyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF18: TMguanyl-TC14012)
製造例9と同様の方法によりTF18を製造した。但し、保護基保護化ポリペプチド樹脂は、20%ピペリジン/DMF処理によりFmoc基を除去し、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート (5 eq)/DMF処理によりテトラメチルグアニル化し、次いで樹脂に対して1M TMSBr-チオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下)で25 ℃、3時間反応させた。
【実施例46】
【0130】
<製造例46:ポリペプチドTF19の製造>
ACA-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TF19: ACA-TC14012)
製造例9と同様の方法によりTF19を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、1位のArg(Pbf)の次に、6-アミノヘキサン酸 (Fmoc保護体)を導入した。
【実施例47】
【0131】
<製造例47:ポリペプチドTF20の製造>
ACA-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH
(TF20: ACA-T140)
製造例17と同様の方法によりTF20を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、8位のDGlu(O-t-Bu)の代わりにDLys(Boc)、1位のArg(Pbf)の代わりに6-アミノヘキサン酸 (Fmoc保護体)を用いた。
【実施例48】
【0132】
<製造例48:ポリペプチドTZ14011の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Arg-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TZ14011)
製造例24と同様の方法によりTZ14011を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、8位のDGlu(O-t-Bu)の代わりにDLys(Boc)、7位のLys(Boc)の代わりにArg(Pbf)を用いた。
【実施例49】
【0133】
<製造例49:ポリペプチドAcTZ14011の製造>
Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Arg-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTZ14011)
製造例48と同様の方法によりAcTZ14011を製造した。但し、保護基保護化ポリペプチド樹脂は、20%ピペリジン/DMF処理によりFmoc基を除去し、無水酢酸(100 eq)-sリジン(100 eq) /DMF処理によりアセチル化し、次いで樹脂に対して1M TMSBr-チオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下)で25 ℃、3時間反応させた。
【実施例50】
【0134】
<製造例50:ポリペプチドTN14003の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TN14003)
製造例9と同様の方法によりTN14003を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、8位のDCitの代わりにDLys(Boc)を用いた。
【実施例51】
【0135】
<製造例51:ポリペプチドTN14005の製造>
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(TN14005)
製造例9と同様の方法によりTN14005を製造した。但し、12位〜1位アミノ酸の導入のところで、6位のCitの代わりにArg(Pbf)を用いた。
【実施例52】
【0136】
<製造例52:ポリペプチドAcTN14003の製造>
Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTN14003)
製造例50と同様の方法によりAcTN14003を製造した。但し、保護基保護化ポリペプチド樹脂は、20%ピペリジン/DMF処理によりFmoc基を除去し、無水酢酸(100 eq)-sリジン(100 eq) /DMF処理によりアセチル化し、次いで樹脂に対して1M TMSBr-チオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下)で25 ℃、3時間反応させた。
【実施例53】
【0137】
<製造例53:ポリペプチドAcTN14005の製造>
Ac-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(AcTN14005)
製造例51と同様の方法によりAcTN14005を製造した。但し、保護基保護化ポリペプチド樹脂は、20%ピペリジン/DMF処理によりFmoc基を除去し、無水酢酸(100 eq)-sリジン(100 eq) /DMF処理によりアセチル化し、次いで樹脂に対して1M TMSBr-チオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下)で25 ℃、3時間反応させた。
【実施例54】
【0138】
<製造例54:ポリペプチド4F-benzoyl-TN14003の製造>
4F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2
(4F-benzoyl-TN14003)
1.4F-benzoyl-TN14003保護ポリペプチド樹脂の合成
Fmoc-Rinkアミド樹脂 (0.34 mmol/g) 2.94 g (1 mmol)からFmoc基を20%ピペリジン/DMFで除去後、14位に相当するFmoc-Arg(Pbf)-OH (2.5 eq)を加えDMF中、DIPCDI -HOBt法により縮合反応を行った。縮合反応の進行の程度は、Kaiser, E.ら(Anal. Biochem., 34: 595 (1970))のニンヒドリン試験により調べた。
【0139】
2.13位〜1位アミノ酸の導入
以下同様にして、順次、Cys(Trt)、Cit、Arg(Pbf)、Tyr(t-Bu)、Pro、DLys(Boc)、Lys(Boc)、Cit、Tyr(t-Bu)、Cys(Trt)、Nal、Arg(Pbf)、Arg(Pbf)残基をRinkアミド樹脂に導入し、最後N端に4-フルオロ安息香酸 (2.5 eq)をDIPCDI -HOBt法により縮合し、保護基保護化ポリペプチド樹脂を得た。
【0140】
3.脱保護基、樹脂からのポリペプチドの分離及び精製
ポリペプチド樹脂(1 mmol)に対して1M TMSBr-チオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下) 270 mLで25 ℃、3時間反応させた。反応混合物から樹脂を濾別し、TFA 5 mLで2回洗浄し、瀘液、洗液を合わせたものを減圧濃縮し、残さに水冷乾燥エーテル300 mLを加え、生じた沈殿物をデカンテーションにより上澄みから分離した。得られた残さを冷エーテルで洗浄し、1N酢酸500 mLに溶解し、蒸留水で2.5 Lに希釈した。
【0141】
4.空気酸化による環化
上述のポリペプチドの希釈水溶液を濃アンモニア水でpH7.5に調整し、通気による空気酸化を行い環化させた。本水溶液を大量分取型HPLC (コスモジール5C18 AR-IIカラム:アセトニトリル−水) により精製し、単一ピークのポリペプチドを得、凍結乾燥した。純度は、HPLCにより確認した。
収量 551.5 mg (6 TFA塩) (19.4%)
[α]D28.6= - 10.25 (c 0.39, H2O)
イオンスプレーマススペクトル (IS-MS): C97H144FN33019S2
計算値: 2159.52 実測値: 2161
(トリプルステージ四重極型質量分析装置API-IIIE (Sciex))
【実施例55】
【0142】
<製造例55:ポリペプチド4F-benzoyl-TE14011-Meの製造>
4-fluorobenzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NHMe
(4F-benzoyl-TE14011-Me)
1.4F-benzoyl-TE14011-Me保護ポリペプチド樹脂の合成
4-sulfamylbutyryl AM NovaGel樹脂に、14位に相当するFmoc-Arg(Pbf)-OH (4 eq)を加えCHCl3中、PyBOP (3 eq) -DIPEA (6 eq)法により-0℃にて縮合反応を行った (本縮合反応を2回行った)。この樹脂からFmoc基を20%ピペリジン/DMFで除去後、13位に相当するFmoc-Cys(Trt)-OH (2.5 eq)を加えDMF中、DIPCDI -HOBt法により縮合反応を行った。縮合反応の進行の程度は、Kaiser, E.ら(Anal. Biochem., 34: 595 (1970))のニンヒドリン試験により調べた。以下、12位〜1位アミノ酸の導入に関して同様に、順次、Cit、Arg(Pbf)、Tyr(t-Bu)、Pro、DGlu(O-t-Bu)、Lys(Boc)、Cit、Tyr(t-Bu)、Cys(Trt)、Nal、Arg(Pbf)、Arg(Pbf)残基をsulfamylbutyryl樹脂に導入し、最後N端に4-fluorobenzoic acid (2.5 eq)をDIPCDI -HOBt法により縮合し、保護基保護化ポリペプチド樹脂を得た。
【0143】
2.C端アルキルアミド化、脱保護基、樹脂からのポリペプチドの分離及び精製
保護基保護化ポリペプチド樹脂を、ICH2CN (40 eq), DIPEA (10 eq)/NMP処理 (48時間) によりシアノメチル化し、次いで樹脂に対してTHF/DMF中メチルアミン (excess) を作用させ、C端がメチルアミド化された保護基保護化ポリペプチドを樹脂から分離した。次に、保護基保護化ポリペプチドを1 Mチオアニソール/TFA (トリフルオロ酢酸)系(m-クレゾール(100 eq)、エタンジチオール(300 eq)存在下)で25 ℃、3時間反応させた。反応液を減圧濃縮し、残さに水冷乾燥エーテルを加え、生じた沈殿物を遠心沈降とデカンテーションにより上澄みから分離した。得られた残さを冷エーテルで洗浄し、1N酢酸に溶解し、蒸留水で希釈した。
【0144】
3.空気酸化による環化
上述のポリペプチドの希釈水溶液を濃アンモニア水でpH7.5に調整し、通気による空気酸化を行い環化させた。本水溶液を大量分取型HPLC (コスモジール5C18 AR-IIカラム:アセトニトリル−水)およびゲルクロマトグラフィー(Sephadex G-15、溶出液: 0.1N AcOH)により精製し、単一ピークのポリペプチドを得、凍結乾燥した。純度は、HPLCにより確認した。
【実施例56】
【0145】
<製造例56:ポリペプチド4F-benzoyl-TE14011-Etの製造>
4-fluorobenzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NHEt
(4F-benzoyl-TE14011-Et)
製造例55と同様の方法により4F-benzoyl-TE14011-Etを製造した。但し、メチルアミンの代わりにエチルアミンを用いた。
【実施例57】
【0146】
<製造例57:ポリペプチド:4F-benzoyl-TE14011-iPrの製造>
4-fluorobenzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NHiPr
(4F-benzoyl-TE14011-iPr)
製造例55と同様の方法により4F-benzoyl-TE14011-iPrを製造した。但し、メチルアミンの代わりにイソプロピルアミンを用いた。
【実施例58】
【0147】
<製造例58:ポリペプチド4F-benzoyl-TE14011-tyramineの製造>
4-fluorobenzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-tyramine
(4F-benzoyl-TE14011-tyramine)
製造例55と同様の方法により4F-benzoyl-TE14011-tyramineを製造した。但し、メチルアミンの代わりにチラミン(p-ヒドロキシフェニルエチルアミン)を用いた。
【実施例59】
【0148】
<試験例1:CXCL12のCXCR4受容体への結合に対する、本発明のポリペプチドの阻害活性>
アッセイプレートにバッファー(0.5% BSA, 20mM HEPESを含むDulbecco’s PBS 溶液 (pH 7.0))にて6x106cells/mL に調製したJurkat ヒトT細胞白血病細胞 を50μL、バッファーにて希釈した被検化合物(表1;各化合物は酢酸塩の形で合成したものを用いた)と200 pM 125I-CXCL12溶液 をそれぞれ25μL分注し、室温で1時間反応させ結合反応を行った。反応後、反応溶液を96ウェルGF/Cフィルタープレートにて吸引濾過し、各wellの放射活性をトップカウントで測定した。被検化合物を添加しない場合の放射活性を100%、放射標識していないCXCL12を100nM添加した場合の放射活性を0%として各被検化合物の阻害活性を求めた。結果を以下の表1に示す。
【0149】
【表1】

【0150】
表1の結果から、本化合物は強い結合阻害活性を有することが示された。
【実施例60】
【0151】
<試験例2:CXCL12によって誘導される乳癌細胞遊走性に対するTE−14005の阻害活性>
トランスウエルフィルター (ポリカーボネートフィルター、8μm径、Costar社)を10μg/mL フィブロネクチン溶液中に37℃で6時間処理した後、風乾した。トランスウエルの下室にCXCL12(R&Dシステムズ社)100nM および被検物質を含むバッファーA(0.1%ウシ血清アルブミン、12mM HEPESを含むDMEM(GibcoBRL)を600μL/穴加えた。上室に被検物質およびヒト乳癌MDA−MB−231細胞(アメリカンティッシュ−カルチャーコレクションより購入)、2x106cells/mLを含むバッファーAを100μL/穴加えた。37℃、5%CO2インキュベーター内で15時間培養後、フィルターの上面をふき取り細胞を除去し、0.5%クリスタルバイオレット(和光純薬)を含む25%メタノール溶液によりフィルター下面の細胞を固定および染色し、蒸留水で洗った後風乾した。フィルター部分を切り離し、0.1Mクエン酸ナトリウム/50%エタノール溶液を加え、クリスタルバイオレットを溶かし出し、550nmの吸光度を測定した。結果を図1に示す。陰性対照はCXCL12を添加しない場合の遊走性を示す。CXCL12を添加することによりMDA−MB−231細胞の遊走性は亢進した(陽性対照)。このCXCL12で誘導されるMDA−MB−231細胞の遊走性をアンタゴニスト、TE14005は10nMまで阻害した。
【実施例61】
【0152】
<試験例3:CXCL12のCXCR4受容体への結合に対する、TC14012及びTN14003の阻害活性>
アッセイプレートにバッファー(0.5% BSA, 20mM HEPESを含むDulbecco's PBS 溶液 (pH 7.0))にて6x106cells/mL に調製したJurkat ヒトT細胞白血病細胞を50μL、バッファーにて希釈した被検化合物(表2;各化合物は酢酸塩の形で合成したものを用いた)と200 pM 125I-CXCL12溶液をそれぞれ25μL分注し、室温で1時間反応させ結合反応を行った。反応後、反応溶液を96ウェルGF/Cフィルタープレートにて吸引濾過し、各wellの放射活性をトップカウントで測定した。被検化合物を添加しない場合の放射活性を100%、放射標識していないCXCL12を100nM添加した場合の放射活性を0%として各被検化合物の阻害活性を求めた。結果を以下の表2に示す。
【0153】
【表2】

【0154】
表2の結果から、本化合物は強い結合阻害活性を有することが示された。
【実施例62】
【0155】
<試験例4:CXCL12によって誘導される乳癌細胞遊走性に対するTC−14012の阻害活性>
トランスウエルフィルター(ポリカーボネートフィルター、8μm径、Costar社)を10μg/mL フィブロネクチン溶液中に37℃で6時間処理した後、風乾した。トランスウエルの下室にCXCL12(R&Dシステムズ社)100nMおよび被検物質を含むバッファーA(0.1%ウシ血清アルブミン、12mM HEPESを含むDMEM(GibcoBRL)を600μL/穴加えた。上室に被検物質およびヒト乳癌MDA−MB−231細胞(アメリカンティッシュ−カルチャーコレクションより購入)、2x106cells/mLを含むバッファーAを100μL/穴加えた。37℃、5%CO2インキュベーター内で15時間培養後、フィルターの上面をふき取り細胞を除去し、0.5%クリスタルバイオレット(和光純薬)を含む25%メタノール溶液によりフィルター下面の細胞を固定および染色し、蒸留水で洗った後風乾した。フィルター部分を切り離し、0.1Mクエン酸ナトリウム/50%エタノール溶液を加え、クリスタルバイオレットを溶かし出し、550nmの吸光度を測定した。結果を図2に示す。陰性対照はCXCL12を添加しない場合の遊走性を示す。陽性対照はCXCL12を添加した場合の遊走性を示す。CXCL12を添加することによりMDA−MB−231細胞の遊走性は亢進した。このCXCL12で誘導されるMDA−MB−231細胞の遊走性をアンタゴニスト、TC−14012は10nMまで阻害した。
【実施例63】
【0156】
<試験例5:CXCL12によって誘導されるT細胞由来白血病細胞遊走性に対する4Fbenzoyl−TN−14003の阻害活性>
トランスウエル(ポリカーボネートフィルター、8μm径、Costar社)の下室にCXCL12(R&Dシステムズ社)30nMおよび被検物質を含むバッファーA(0.1%ウシ血清アルブミン、12mM HEPESを含むDMEM(GibcoBRL)を600μL/穴加えた。上室に被検物質およびヒトT細胞由来白血病細胞SUP−T1細胞(アメリカンティッシュ−カルチャーコレクションより購入)、2x106cells/mLを含むバッファーAを100μL/穴加えた。37℃、5%CO2インキュベーター内で4時間培養後、下室に移動した細胞数をコールターカウンターを用いて測定した。結果を図3に示す。陰性対照はCXCL12を添加しない場合の遊走性を示す。陽性対照はCXCL12を添加した場合の遊走性を示す。CXCL12を添加することによりSUP−T1細胞の遊走性は亢進した。このCXCL12で誘導されるSUP−T1細胞の遊走性をアンタゴニスト、4Fbenzoyl−TN−14003は10nMまで阻害した。以上より、4Fbenzoyl−TN−14003はT細胞の運動性を低濃度で阻害することより、慢性関節リューマチの阻害薬として有用であると考えられる。
【実施例64】
【0157】
<試験例6:CXCL12によって誘導される乳癌細胞遊走性に対する4F−benzoyl−TN−14003の阻害活性>
トランスウエルフィルター(ポリカーボネートフィルター、8μm径、Costar社)を10μg/mL フィブロネクチン溶液中に37℃で一晩処理した後、風乾した。トランスウエルの下室にCXCL12(R&Dシステムズ社)100nM および4F−benzoyl−TN−14003を含むバッファーA(0.1%ウシ血清アルブミン、12mM HEPESを含むDMEM(GibcoBRL)を600μL/穴加えた。上室に4Fbenzoyl−TN−14003およびヒト乳癌MDA−MB−231細胞(アメリカンティッシュ−カルチャーコレクションより購入)、2x106cells/mLを含むバッファーAを100μL/穴加えた。37℃、5%CO2インキュベーター内で15時間培養後、フィルターの上面をふき取り細胞を除去し、0.5%クリスタルバイオレット(和光純薬)を含む25%メタノール溶液によりフィルター下面の細胞を固定および染色し、蒸留水で洗った後風乾した。フィルター部分を切り離し、0.1Mクエン酸ナトリウム/50%エタノール溶液を加え、クリスタルバイオレットを溶かし出し、550nmの吸光度を測定した。結果を図4に示す。陰性対照はCXCL12を添加しない場合の遊走性を示す。陽性対照はCXCL12を添加した場合の遊走性を示す。CXCL12を添加することによりMDA−MB−231細胞の遊走性は亢進した。このCXCL12で誘導されるMDA−MB−231細胞の遊走性をアンタゴニスト、4Fbenzoyl−TN−14003は100nMまで阻害した。
【実施例65】
【0158】
<試験例7:4Fbenzoyl−TN−14003の抗転移活性>
5週齢雌のCB−17 SCIDマウス(日本クレア)に106 個のMDA−MB−231ヒト乳癌細胞を尾静脈より移植した。4Fbenzoyl−TN−14003を生理的食塩水で80mg/mLに調製し、徐放的浸透圧ポンプ(アルゼットポンプ、アルザ社、2週間徐放用)に封入し(投与量としてはそれぞれ、18.2 mg/kg/day相当)、移植前日にマウス背部皮下に装着した。さらに、移植14日後に同用量薬物を含むアルゼットポンプを追加装着した。対照群には生理的食塩水を注入したアルゼットポンプを追加装着した。移植28日後、マウスを解剖し、気管より0.2%エバンスブルー溶液約2mLを注入し、肺を染色した。肺を取り出し、Bouin's液中に浸し、染色、固定した。転移巣(黄色に染色される部分)を目視で観察することにより明確な抗転移活性があるか否かを判断した。結果を図5に示す。対照群の肺(A)においては黄色に染色される部分が一様に認められ肺への転移が観察された。一方、4Fbenzoyl−TN−14003投与群(B)においては黄色に染色される割合が少ない症例が観察された。相対的に、4Fbenzoyl−TN−14003投与群においては転移が抑制されていることが観察された。
【実施例66】
【0159】
<試験例8:CXCL12によって誘導されるヒトT細胞株(Jurkat)およびマウス脾細胞の遊走性に対する4Fbenzoyl−TN14003の阻害活性>
1.ヒトT細胞株の遊走反応に及ぼす影響
RPMI-1640およびウシ胎児血清(FCS)はBioWhittakerより、penicillin-streptomycin溶液、RPMI-1640(フェノールレッド不含)およびHEPESはInvitrogenより、BSAはSigmaより、ヒトSDF-1α(CXCL12)はGenzymeより購入した。ヒトTリンパ球細胞株JurkatはATCCより購入し、RPMI-1640 10% FCS中で培養した。4F-benzoyl-TN14003はPBSに溶解して実験に供した。
24穴Transwell(Costar, polycarbonate膜、ポアサイズ5 μm)を用いて遊走反応を行った。Transwell下層にSDF-1α(最終濃度 1 ng/mL)600 μLを添加し、5x105 個の細胞(200 μL)をinsertに加え、37℃で4時間反応させた。細胞は薬物と37℃で30分プレインキュベートした。遊走反応は20 mmol/L HEPES、0.5% BSA 含有のRPMI-1640培地中で行った。下層に遊走した細胞を回収し、細胞数をCoulter Counterを用いて計測した。各濃度の薬物による遊走反応に対する抑制率(%)は次式から求め、その抑制率からIC50値を算出した。
【0160】
【数1】

【0161】
その結果、図6に示される通り、Jurkat細胞はSDF-1αに対して強い細胞遊走反応性を示した。4F-benzoyl-TN14003は本反応を濃度依存的に抑制し、そのIC50値は0.65 nmol/Lであった。
【0162】
2.マウス脾細胞の遊走反応に及ぼす影響
BALB/cマウス(雄、日本チャールスリバー)より脾臓を採取し、単細胞浮遊液とし、赤血球を破砕して脾細胞を調製した。
Transwell(ポアサイズ5 μm)下層にSDF-1α(Peprotech、最終濃度100 ng/mL)を添加し、1x106 /wellの細胞(100 μL)をinsertに加え、37℃で2.5時間反応させた。細胞は薬物と37℃で30分プレインキュベートした。遊走反応は20 mmol/L HEPES、0.5% BSA 含有のRPMI-1640培地中で行った。下層に遊走した細胞数はCoulter Counterを用いて計測した。前項と同様に、各濃度の薬物による遊走反応の抑制率および阻害作用のIC50値を算出した。
その結果、図7に示される通り、4F-benzoyl-TN14003はSDF-1αに対するマウス脾細胞の遊走反応に対して濃度依存的な抑制作用を示した。そのIC50値は0.54 nmol/Lであり、ヒト細胞の場合と同程度の阻害作用を示した。このことより、本ペプチドに関してはヒトとマウス間で種差がほとんどないことが確認された。
【実施例67】
【0163】
<試験例9:マウス遅延型過敏反応(DTH)に及ぼす4Fbenzoyl−TN14003の影響>
緬羊保存血は日本生物材料センターより購入した。緬羊保存血は生理食塩液で2回洗浄し、生理食塩液に懸濁してヒツジ赤血球(SRBC)として用いた。SRBC懸濁液1.0x109 cells/mLを14倍量の蒸留水で溶血した時のオキシヘモグロビンのOD541 nm値がほぼ0.700に相当するとされているので、SRBC密度はそれに応じて調製した。
BALB/cマウス(雄、6週齢、日本チャールスリバー)の左後肢足蹠に2x107 cells/50 μlのSRBCを皮下投与して感作した。5日後右後肢足蹠に108 cells/50 μlのSRBCを皮下投与しDTH反応を誘発した。抗原誘発の直前および24時間後に右後肢足蹠の厚さをデジタルマイクロメーター(ミツトヨ CD-15B)を用いて測定し、腫脹による足蹠の厚みの増加(mm)をDTH反応の指標とした。
4F-benzoyl-TN14003はPBSに溶解し、Alzet 浸透圧ポンプ(Alza、0.5 μL/hr 7日間持続型)を用いて持続的に投与した。浸透圧ポンプは感作前日にエーテル麻酔下で背部皮下に埋め込んだ。対照としてPBSを注入したポンプを同様に埋め込んだ。4F-benzoyl-TN14003は4.8、24および120 μg/dayの用量を投与した。
データは平均値±標準誤差(n=7)として表した。Williams検定で行い、p≦0.025を有意とした。
その結果、図8に示される通り、4F-benzoyl-TN14003(4.8、24および120 μg/day)は用量依存的かつ有意に足蹠浮腫を抑制し、その抑制率は各々9、31および51%であった。このことより、CXCR4がDTH反応等の細胞性免疫において重要な役割を果たしていることが示唆された。
【実施例68】
【0164】
<試験例10:マウスコラーゲン関節炎に対する4Fbenzoyl−TN14003の治療効果>
FK-506は自体公知の方法(Kino T. et al., J. Antibiot., 1987 40(9): 1249-55)により精製した。Methotrexateは和光純薬より、indomethacinはSigmaより、ウシII型コラーゲンはコラーゲン技術研修会より、Freund's complete adjuvant(FCA)はDifcoより、抗マウスIgG2a抗体はZymedよりそれぞれ購入した。
ウシII型コラーゲンを0.05 mol/Lの酢酸溶液で2 mg/mLの濃度に溶解し、等量のFCAでエマルジョンを調製した。DBA/1JNマウス(雄、6週齢、日本チャールスリバー)の尾根部皮内に50 μLのエマルジョンを接種して感作した。21日後に同様に追加免疫を行った。追加免疫から2週にわたり体重および後肢踵厚みの測定ならびに関節炎スコアリングを行った。関節炎スコアは各肢0-3点でスコア化し、その合計(12点満点)で評価した(0, 正常; 1, 軽度な腫脹または単指の腫脹; 2, 中程度の腫脹または複数指の腫脹; 3, 重度の腫脹)。追加免疫の2週後に四肢および血清を採取した。
ウシII型コラーゲン(10 μg/mL PBS溶液)をイムノプレートにコート、ブロッキングした後、1000倍希釈したマウス血清を100 μL添加し、室温で2時間放置した。洗浄後抗マウスIgG2a抗体(1000倍希釈)を添加した。洗浄後TMBを添加し、室温で30分放置後H2SO4を等量添加し、A450nmを測定した。
Indomethacin(1 mg/kg)、methotrexate(3 mg/kg)およびFK-506(10 mg/kg)は0.5%メチルセルロースに懸濁し、0.1 mL/10g体重の容量で追加免疫当日から2週間毎日経口投与した。対照群には同容量の0.5%メチルセルロース液を経口投与した。4F-benzoyl-TN14003はPBSに溶解し、Alzet 浸透圧ポンプ(Alza、0.5 μL/hr 2週間)を用いて持続的に投与した。浸透圧ポンプは追加免疫前日にエーテル麻酔下にマウス背部皮下に埋め込んだ。対照としてPBSを注入したポンプを同様に埋め込んだ。各薬物の評価は追加免疫2週後の値をもって行った。
データは平均値±標準誤差(n=8-12)として表した。2群間の比較はStudent's t検定にて行い、p≦0.05を有意とした。多重比較はDunnett検定にて行い、p≦0.05を有意とした。
その結果、Indomethacin (1mg/kg, p.o.)、methotrexate (3 mg/kg, p.o.)およびFK-506 (10mg/kg, p.o.)はいずれも後肢踵腫脹を有意に抑制し、関節炎スコアに対しては有意または明らかな抑制作用を示した(図9)。
4F-benzoyl-TN14003(120 μg /day)は、後肢踵腫脹、関節炎スコアおよび体重減少に対して有意な抑制作用を示した。また、抗II型コラーゲンIgG2a抗体価の増加に対して抑制傾向を示した(図10)。これらの抑制効果は上記既存薬と同等もしくはそれ以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0165】
CXCR4拮抗作用を有する本発明のペプチド性化合物は、CXCR4とCXCL12/SDF−1αとの結合を阻害することから、CXCR4を発現している癌種、例えば、口腔癌、咽頭癌、口唇癌、舌癌、歯肉癌、鼻咽頭癌、食道癌、胃癌、小腸癌、結腸癌を含む大腸癌、肝臓癌、胆のう癌、膵臓癌、鼻腔癌、肺癌、骨肉腫、軟部組織癌、皮膚癌、黒色腫、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、陰茎癌、膀胱癌、腎臓癌、脳腫瘍、甲状腺癌、リンパ腫、白血病などの癌細胞の遊走反応を抑制することができ、これらの癌に対しての予防及び/又は治療薬として有用である。また、本発明のペプチド性化合物は、CXCL12/SDF−1αによって誘導される免疫細胞の遊走反応を抑制することができ、慢性関節リューマチの予防及び/又は治療薬として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の配列TE14005,4F-benzoyl-TN14003, TE14003, TE14004, TE14006, TE14011, TE14012, TE14013, TF2, TF3, TF4, TF5, TF6, TF7, TF8, TF12, TF18, TF19又はTF20で示されるペプチド、もしくはその塩の1つを含有してなる、癌または慢性関節リューマチの予防及び/又は治療剤:
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH (TE14005)、
4F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2 (4F-benzoyl-TN14003)、
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Glu-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH (TE14003)、
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Glu-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH (TE14004)、
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Glu-Cit-Cys-Arg-OH (TE14006)、
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TE14011)、
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-DGlu-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TE14012)、
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-DGlu-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TE14013)、
guanyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF2)、
TMguanyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF3)、
TMguanyl-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF4)、
4F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF5)、
2F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF6)、
APA-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF7)、
desamino-R-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF8)、
deaminoTMG-APA-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF12)、
TMguanyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF18)、 ACA-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2 (TF19) 又は
ACA-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH (TF20)
(各配列中、N末端アミノ酸の左の記号はアミノ基が誘導体化されているか、またはされていないことを示し、Hは誘導体化されていないことを、guanylはグアニル基を、TMguanylはテトラメチルグアニル基を、2F-beozoylは2−フルオロベンソイル基を、4F-benzoylは4−フルオロベンゾイル基を、APAは5−アミノペンタノイル基を、ACAは6−アミノヘキサノイル基を、desamino-Rは2−デスアミノ−アルギニル基を、deaminoTMG-APAは下記式(II)を、
【化1】


をそれぞれ示し、ArgはL−アルギニン残基を、NalはL−3−(2−ナフチル)アラニン残基を、CysはL−システイン残基を、TyrはL−チロシン残基を、CitはL−シトルリン残基を、LysはL−リジン残基を、DLysはD−リジン残基を、ProはL−プロリン残基を、DCitはD−シトルリン残基を、DGluはD−グルタミン酸残基を、GluはL−グルタミン酸残基をそれぞれ示し、2つのシステイン残基は分子内ジスルフィド結合により連結しており、C末端アミノ酸の右の記号はカルボキシル基が誘導体化されているか、またはされていないことを示し、OHは誘導体化されていないことを、そしてNH2はアミノ基でアミド化されていることをそれぞれ示す)。
【請求項2】
前記ペプチドもしくはその塩がTE14005又は4F-benzoyl-TN14003のいずれかで表されるペプチドもしくはその塩である請求項1記載の予防及び/又は治療剤。
【請求項3】
以下の配列TE14005,4F-benzoyl-TN14003, TE14003, TE14004, TE14006, TE14011, TE14012, TE14013, TF2, TF3, TF4, TF5, TF6, TF7, TF8, TF12, TF18, TF19又はTF20で示されるいずれか1つのペプチド、もしくはその塩:
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH (TE14005)、
4F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2 (4F-benzoyl-TN14003)、
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Glu-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH (TE14003)、
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Glu-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH (TE14004)、
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Glu-Cit-Cys-Arg-OH (TE14006)、
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TE14011)、
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-DGlu-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TE14012)、
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-DGlu-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TE14013)、
guanyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF2)、
TMguanyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF3)、
TMguanyl-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF4)、
4F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF5)、
2F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF6)、
APA-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF7)、
desamino-R-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF8)、
deaminoTMG-APA-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF12)、
TMguanyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF18)、 ACA-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2 (TF19) 又は
ACA-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH (TF20)
(各配列中、N末端アミノ酸の左の記号はアミノ基が誘導体化されているか、またはされていないことを示し、Hは誘導体化されていないことを、guanylはグアニル基を、TMguanylはテトラメチルグアニル基を、2F-beozoylは2−フルオロベンソイル基を、4F-benzoylは4−フルオロベンゾイル基を、APAは5−アミノペンタノイル基を、ACAは6−アミノヘキサノイル基を、desamino-Rは2−デスアミノ−アルギニル基を、deaminoTMG-APAは下記式(II)を、
【化2】


をそれぞれ示し、ArgはL−アルギニン残基を、NalはL−3−(2−ナフチル)アラニン残基を、CysはL−システイン残基を、TyrはL−チロシン残基を、CitはL−シトルリン残基を、LysはL−リジン残基を、DLysはD−リジン残基を、ProはL−プロリン残基を、DCitはD−シトルリン残基を、DGluはD−グルタミン酸残基を、GluはL−グルタミン酸残基をそれぞれ示し、2つのシステイン残基は分子内ジスルフィド結合により連結しており、C末端アミノ酸の右の記号はカルボキシル基が誘導体化されているか、またはされていないことを示し、OHは誘導体化されていないことを、そしてNH2はアミノ基でアミド化されていることをそれぞれ示す)。
【請求項4】
ペプチドがTE14005、4F-benzoyl-TN14003、TE14003、TE14011、TE14013、TF2、TF5、TF6、TF19及びTF20から選択される、請求項3記載のペプチドもしくはその塩。
【請求項5】
ペプチドがTE14005及び4F-benzoyl-TN14003から選択される、請求項3記載のペプチドもしくはその塩。
【請求項6】
ペプチドが4F-benzoyl-TN14003である、請求項3記載のペプチドもしくはその塩。
【請求項7】
請求項3−6のいずれかに記載のペプチドもしくはその塩のいずれかを含む医薬品。
【請求項8】
請求項3−6のいずれかに記載のペプチドもしくはその塩のいずれかを含むCXCR4のアンタゴニスト。
【請求項9】
請求項3−6に記載のペプチドもしくはその塩のいずれかを含む癌または慢性関節リューマチの予防及び/又は治療剤。
【請求項10】
乳がんもしくはすい臓がんのために使用する請求項9記載の予防及び/又は治療剤。
【請求項11】
CXCR4受容体を発現している乳がん、脾臓がん及び白血病のために使用する請求項9記載の予防及び/又は治療剤。
【請求項12】
慢性関節リューマチに使用する請求項9記載の予防及び/又は治療剤。
【請求項13】
ガン転移を阻害するために使用する請求項9記載の予防及び/又は治療剤。
【請求項14】
ペプチドが4F-benzoyl-TN14003である、請求項9記載の予防及び/又は治療剤。
【請求項15】
癌または慢性関節リューマチの予防及び/又は治療剤を製造するための請求項3−6のいずれかに記載のペプチド又はその塩の使用。
【請求項16】
予防及び/又は治療剤が、すい臓がんを除く癌の治療のために使用される請求項15記載の使用。
【請求項17】
予防及び/又は治療剤が、CXCR4受容体を発現している乳がん、脾臓がん、すい臓がん及び白血病のために使用される請求項15記載の使用。
【請求項18】
予防及び/又は治療剤が、CXCR4受容体を発現している乳がん、脾臓がん及び白血病のために使用される請求項15記載の使用。
【請求項19】
予防及び/又は治療剤が、慢性関節リューマチのために使用される請求項15記載の使用。
【請求項20】
予防及び/又は治療剤が、がん転移の阻害のために使用される請求項15記載の使用。
【請求項21】
ペプチドが4F-benzoyl-TN14003である、請求項15記載の使用。
【請求項22】
遅延型過敏反応(DTH)を阻害するための予防及び/又は治療剤を製造するための以下の配列TE14005, 4F-benzoyl-TN14003, TC14012, TN14003, TE14003, TE14004, TE14006, TE14011, TE14012, TE14013, TF2, TF3, TF4, TF5, TF6, TF7, TF8, TF12, TF18, TF19 又はTF20で示されるいずれか1つのペプチド、もしくはその塩の使用:
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH (TE14005)、
4F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2 (4F-benzoyl-TN14003)、
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TC14012)、
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TN14003)、
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Glu-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH (TE14003)、
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Glu-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH (TE14004)、
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Glu-Cit-Cys-Arg-OH (TE14006)、
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TE14011)、
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-DGlu-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TE14012)、
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-DGlu-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TE14013)、
guanyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF2)、
TMguanyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF3)、
TMguanyl-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF4)、
4F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF5)、
2F-benzoyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF6)、
APA-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF7)、
desamino-R-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF8)、
deaminoTMG-APA-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DGlu-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF12)、
TMguanyl-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF18)、
ACA-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2(TF19)又はACA-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-OH (TF20)
(各配列中、N末端アミノ酸の左の記号はアミノ基が誘導体化されているか、またはされていないことを示し、Hは誘導体化されていないことを、guanylはグアニル基を、TMguanylはテトラメチルグアニル基を、2F-beozoylは2−フルオロベンソイル基を、4F-benzoylは4−フルオロベンゾイル基を、APAは5−アミノペンタノイル基を、ACAは6−アミノヘキサノイル基を、desamino-Rは2−デスアミノ−アルギニル基を、deaminoTMG-APAは下記式(II)を、
【化3】


をそれぞれ示し、ArgはL−アルギニン残基を、NalはL−3−(2−ナフチル)アラニン残基を、CysはL−システイン残基を、TyrはL−チロシン残基を、CitはL−シトルリン残基を、LysはL−リジン残基を、DLysはD−リジン残基を、ProはL−プロリン残基を、DCitはD−シトルリン残基を、DGluはD−グルタミン酸残基を、GluはL−グルタミン酸残基をそれぞれ示し、2つのシステイン残基は分子内ジスルフィド結合により連結しており、C末端アミノ酸の右の記号はカルボキシル基が誘導体化されているか、またはされていないことを示し、OHは誘導体化されていないことを、そしてNH2はアミノ基でアミド化されていることをそれぞれ示す)。
【請求項23】
ペプチドが4F-benzoyl-TN14003である請求項22記載の使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−168594(P2011−168594A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60367(P2011−60367)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【分割の表示】特願2003−301176(P2003−301176)の分割
【原出願日】平成15年8月26日(2003.8.26)
【出願人】(505303901)バイオカイン セラピューティックス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】