説明

D−タガトースを用いて製造される低カロリーのコーヒーミックス組成物

本発明は、ダイエット用または低カロリーのコーヒーミックスにおいて、砂糖の代わりにD−タガトースを用いて天然的に甘味を付けた低カロリーのコーヒーミックス組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイエット用または低カロリーのコーヒーミックスにおいて、砂糖の代わりにD−タガトースを用いて天然的に甘味を付けた低カロリーのコーヒーミックス組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
砂糖は、甘味の質が良好であるため、大勢の人々に好まれている甘味料である。しかし、最近には、清涼飲料、コーヒーなどの嗜好食品の消費の増加が高糖質食品の消費につながる傾向にあり、この高糖質食品の消費の傾向と現代人の運動不足とが相まって、肥満人口が増えつつある。既に、アメリカをはじめとする西欧地域では、このような肥満人口の増加が成人病の増加につながるということを自覚し、肥満は国民の健康を脅かす大きな社会問題として取り上げられている。この理由から、消費者は、人体にあまり吸収されない砂糖代用の甘味料を求めており、このニーズに応えるために、砂糖代用の低カロリー甘味料の開発が進んでいる。
【0003】
砂糖代用の甘味料として最も汎用されている糖アルコール類は、カロリーが低いというメリットを有するとはいえ、摂取に際して、砂糖に比較して、全般的に味が劣り、しかも、後味がよくないという欠点がある。この理由から、砂糖やブドウ糖果糖液糖の味に馴染んでいる消費者の嗜好を満たしていないのが現状である。
【0004】
D−タガトースは、砂糖の代用品として期待を集めている別の甘味料であって、低カロリー天然糖であり、2001年に米国FDAの食品添加物安全表示(GRAS;Generally Recognized As Safe)の認証を取得し、食品、飲料、健康食品、ダイエット添加物などに甘味料として使用することが認められている。
【0005】
かようなD−タガトースは、甘味料の基準となる砂糖とほとんど同じ0.92倍の相対甘味度を有しており、砂糖と最も類似した甘味の質を有していることが知られている。また、D−タガトースは、砂糖や他の種々の甘味料とは異なり、カロリーが低く、整腸効果(prebiotic)があり、しかも、糖指数(glycemic index)が低い。なお、D−タガトースは、歯牙を腐食させないことから、糖尿病患者も安心して摂取し得る健康甘味料であって、あらゆる食品および飲料に広く用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、コーヒーミックスの砂糖全量をD−タガトースに代替するために、D−タガトース素材が有する甘味度および甘味質を分析した。この分析試料に基づいて、嗜好度の面で既存のコーヒーミックス製品に極めて類似し、またはそれよりも優れたコーヒーミックス組成物を製造することができた。また、D−タガトースとステビオール配糖体由来の高甘度甘味料とを混合してコーヒーミックスを製作した場合、味だけではなく、健康機能性も一層向上した組成物を製造することができた。
したがって、本発明の目的は、コーヒーミックスの製作に際して、砂糖の代わりにD−タガトースを用いて、既存の製品に類似した味の質を有する低カロリーのコーヒーミックス製品を提供することである。
また、本発明の他の目的は、コーヒーミックスの製作に際して、砂糖の代わりに、D−タガトースとステビオール配糖体由来の高甘度甘味料と(酵素処理ステビア、レバウジオシドA)を混合して、カロリーを低め、しかも、健康機能性を高めた製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、砂糖の代わりに、D−タガトースを用いて製造したコーヒーミックス組成物を提供する。
また、本発明は、砂糖の代わりに、D−タガトースにステビオール配糖体由来の高甘度甘味料をさらに含めて製造したコーヒーミックス組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、砂糖の代わりに、100%D−タガトースのみを用いるか、あるいは、D−タガトースとステビオール配糖体由来の高甘度甘味料とを混合して用いることにより、カロリーを格段に低めつつも、従来のコーヒーミックス製品の味・品質を維持し、甘味、後味などの嗜好度が高い低カロリーのコーヒーミックス製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、10%の砂糖水溶液と、11.5%のD−タガトース水溶液に対して記述的分析(discriptive analysis)を行い、その比較結果を示す図である。
【図2】図2は、5%の砂糖水溶液と、0.031%のステビオール配糖体水溶液に対して 記述的分析を行い、その比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、砂糖の代わりに、D−タガトース100%を用いて製造したコーヒーミックスを提供することを特徴とする。
コーヒーミックス組成物の総重量に対して、前記D−タガトースの添加量は45〜65重量%であることが好ましく、さらに好ましくは、50〜61重量%である。
また、本発明は、砂糖の代わりに、D−タガトースにステビオール配糖体由来の高甘度甘味料をさらに含めて製造したコーヒーミックスを提供することを特徴とする。
本発明において、前記ステビオール配糖体由来の高甘度甘味料としては、市販品であればいずれも使用可能であり、好ましくは、前記ステビオール配糖体由来の高甘度甘味料は、ステビアから抽出されたレバウジオシドAである。
コーヒーミックス組成物の総重量に対して、前記レバウジオシドAの添加量は0.01〜0.15重量%であり、D−タガトースの添加量は35〜55重量%であることが好ましい。
【実施例】
【0011】
以下、本発明を下記の実施例を挙げて一層詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0012】
実施例1:D−タガトースおよびレバウジオシドAの相対甘味度の測定
第1段階実験として、D−タガトースおよびレバウジオシドAの官能的な特徴を把握するために、甘味の標準尺度を用いて、砂糖水溶液に対するD−タガトースおよびレバウジオシドAの相対糖度を測定した。
D−タガトースおよびレバウジオシドAの理論的な甘味度を考慮して種々の濃度の試料を提示して、各濃度に応じて感じられる甘味の強さを点数化して回帰式で導き出した。評価は、甘味認知能力を集中的に訓練させたパネラー30名を活用して、記述的分析法によって行った。対照群として用いられた甘味の標準尺度とそれぞれのD−タガトースおよびレバウジオシドAに関する調査結果は、下記表1〜3に示す通りである。
【表1】

【表2】

【表3】

【0013】
前記それぞれの回帰式により、水溶液の状態で所望の砂糖の濃度を代入すれば、砂糖の甘味の強さが求められる。このようにして求められた砂糖の甘味の強さをそれぞれの回帰式に代入すれば、対応するD−タガトースとレバウジオシドAの濃度がそれぞれ求められ、既存の単に理論値の甘味度を計算する方法よりは、濃度別に相対甘味度を計算することができて、一層正確に且つ便利に適用することができる。
D−タガトースの場合、前記回帰式より、10%砂糖に等しい甘味を出すD−タガトースの濃度は11.6%であり、砂糖10%の場合、D−タガトースの相対甘味度は0.87であることが分かる。
レバウジオシドAの場合、濃度が高くなるにつれて、甘味だけではなく、苦味も増大して0.2%以上の濃度では甘味認知の強さがそれ以上増加しなかった。このため、回帰モデルは0.2%以下の濃度において有意であり、5%の砂糖に等しい甘味を出すレバウジオシドAの濃度は0.031%であって、相対甘味度は161であることが分かる。
【0014】
実施例2:D−タガトースの官能的なプロフィル(profile)の分析
第2段階実験として、砂糖に比べて、D−タガトースの甘味の質が良好であるか否かを分析するために、官能検査技法である記述的分析を通じて砂糖についてのD−タガトースの官能プロフィル(sensory profile)を測定した。
前記実施例1の回帰式によって、対照群である10%の砂糖水溶液に等しい甘味認知の強さを有するD−タガトースの水溶液の濃度を決定した。このために、専門パネラーは、10%の砂糖水溶液と11.6%のタガトース溶液から感じられる官能的な 記述的分析用語を並べ、共通して認知される特性を明確な用語として定義した。定義された用語につき、製品別に15点項目尺度を用いて強さ点数を与えて、両甘味料のプロフィルを比較した。
その結果を図1に示す。図1に示すように、砂糖水溶液は、甘味の持続性が強く、加熱された糖類から感じられるカラメルの香味が強く、さっぱりとした清涼感を有するものと分析された。これに対し、D−タガトース水溶液は、薄荷のように「スーッとする感じ」を有し、砂糖ならではの香味に加えて、他の香味属性が弱く、甘味持続性と苦味が弱くてスッキリとした甘味を示すことが特徴であった。
【0015】
実施例3:ステビオール配糖体の官能プロフィル(profile)の分析
実施例2と同様に記述的分析法を用いて、砂糖に比べて、ステビオール配糖体がどれくらいの官能プロフィル(sensory profile)を示すかを測定した。
その結果を図2に示す。図2に示すように、ステビオール配糖体は、甘味の持続性が極めて強く、苦味が強くて既存の砂糖の甘味とは相違点がある。口触りの場合、砂糖に比較して、渋味が強いものの、ボディ感が強くて、全体的な口触りは砂糖に類似した感じを有することが認められる。このようなステビオール配糖体の官能プロフィルを考慮したとき、甘味の持続力が低く、弱い渋味および苦味を有する甘味料に少量混合して用いる場合、高甘度甘味料のメリットを強化させることができる。
【0016】
実施例4:D−タガトース用いて製造したコーヒーミックスの消費者嗜好度の調査
タガトースをコーヒーミックスに適用したときの消費者の嗜好品質を確認し、砂糖の代わりに入れるタガトースの量を設定するために、消費者調査を行った。
消費者調査は、一般主婦30〜40名を対象とし、 嗜好テスト(Preference Test)によって行われた。すなわち、砂糖入りの対照群のコーヒーと、砂糖の代わりにタガトースを用いた実験群のコーヒーとの対を提示し、この順に味わわせた後、好みの製品を選ばせた。
対照群としては、砂糖4g入り、砂糖5g入り、砂糖6g入り、砂糖7g入り、砂糖8g入りの5種類のコーヒー飲料(それぞれS1、S2、S3、S4およびS5)が用いられ、実験群としては、砂糖の各濃度別に同じ甘味を出し得るタガトースの量となるタガトース4.8g入り、タガトース6.0g入り、タガトース7.3g入り、タガトース8.5g入り、タガトース9.7g入りのコーヒー飲料(それぞれT1、T2、T3、T4およびT5)が用いられた。タガトースの量は、前記表2の回帰式によって計算された値に設定した。合計で5対に対して調査が行われ、各対は別々に評価された。コーヒー飲料の配合比を下記表4に示す。
【0017】
【表4】

【表5】

テスト1の場合、S1への嗜好率が57%であるのに対し、T1への嗜好率は43%であり、砂糖入りコーヒーの嗜好度の方がやや高かった。これに対し、テスト2〜5の場合、タガトース入りコーヒーの嗜好率がそれぞれ51%、54%、56%、55%であり、砂糖と同等以上の嗜好度を示すことから、他の代替甘味料に比べて味・品質に優れていることが認められた。
【0018】
実施例5:D−タガトースおよびステビオール配糖体混合甘味料を用いて製造したコーヒーミックスの消費者嗜好度の調査
既存の砂糖を用いたコーヒーミックスの砂糖の甘味の強さに見合うD−タガトース、レバウジオシドAの量は、前記実施例1の回帰式によって算出した後、予備実験を行うことによって決定された。その配合比は、下記表6の通りである。
【表6】

上記の配合に従い製造したコーヒー飲料につき、消費者嗜好度の調査を行った。前記消費者嗜好度の調査は、一般主婦54名を対象として行い、製品同士の間の相違点を明らかに区別して表記するために、9点嗜好度尺度を用いて評価した後に5点に換算して表示した。評価項目は、全般的な嗜好度をはじめとして、主たる4種類の細部属性への嗜好度によって構成されている。その結果を表7に示す。
【0019】
【表7】

砂糖入りコーヒーの全般嗜好度は3.30点であり、D−タガトースとレバウジオシドAとの混合コーヒーの全般嗜好度は、M1が3.31点、M2が3.35点、M3が3.41点であった。弱い甘味持続性および苦味を有するD−タガトースと、強い甘味持続性および苦味を有するレバウジオシドAは、これらを混合して使用するときに官能的に相互補完の効果が得られることから、砂糖に同等以上の味・品質を有するものであることが認められた。
【0020】
比較例1:エリスリトールとスクラロースとの混合コーヒーミックスに対する消費者嗜好度の調査
本発明者らは、砂糖代用の甘味料として最も多用されている糖アルコール類であるエリスリトールとスクラロースを混合して製造されたコーヒーミックスと、既存のコーヒーミックス製品について味・品質の検証を行うために、実施例3に示す方法と同様にして消費者調査を行った。
エリスリトールとスクラロースを混合して製造したコーヒーミックスの配合比は、表8に示す通りであり、調査の結果は表9に示す。
【0021】
【表8】

【表9】

上記の表から明らかなように、エリスリトールとスクラロースとの混合コーヒーの全般嗜好度は3.28点であり、既存の砂糖入りコーヒーの全般嗜好度は3.45であって、両製品間の全般的な嗜好度の統計的な有意差はないものの、既存の砂糖入りコーヒーミックスに比べて、甘味と後味の嗜好度の低下が認められた。これより、本発明者らは、D−タガトース入りコーヒーの卓越した味・品質を改めて確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低カロリーのコーヒーミックスの製造に際して、
砂糖の代わりに、D−タガトースを用いて製造されることを特徴とする低カロリーのコーヒーミックス組成物。
【請求項2】
前記D−タガトースは、コーヒーミックス組成物の総重量を基準として、40〜65重量%にて含有されることを特徴とする請求項1に記載の低カロリーのコーヒーミックス組成物。
【請求項3】
低カロリーのコーヒーミックスの製造に際して、
砂糖の代わりに、D−タガトースとステビオール配糖体由来の高甘度甘味料とを混合して製造することを特徴とする低カロリーのコーヒーミックス組成物。
【請求項4】
前記D−タガトースは、コーヒーミックス組成物の総重量を基準として、35〜55重量%にて含有されることを特徴とする請求項3に記載の低カロリーのコーヒーミックス組成物。
【請求項5】
前記ステビオール配糖体由来の高甘度甘味料は、コーヒーミックス組成物の総重量を基準として、0.01〜0.15重量%にて含有されることを特徴とする請求項3に記載の低カロリーのコーヒーミックス組成物。
【請求項6】
前記ステビオール配糖体由来の高甘度甘味料は、ステビア由来のレバウジオシドAであることを特徴とする請求項3に記載の低カロリーのコーヒーミックス組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2013−507957(P2013−507957A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535146(P2012−535146)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007376
【国際公開番号】WO2011/052967
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(508064724)シージェイ チェイルジェダン コーポレイション (32)
【Fターム(参考)】