説明

DC/DCコンバータ、および、スイッチング電源用の半導体集積回路

【課題】 高い入力電圧が印加されるDC/DCコンバータであっても、パワートランジスタの駆動時のスイッチング損失を少なくして高効率化を図れるDC/DCコンバータ並びにスイッチング電源用ICを提供する。
【解決手段】 DC/DCコンバータ(10)のパワートランジスタ(Q1,Q2)をオン・オフ駆動するドライブ回路(21,22)に、シリーズレギュレータなどのレギュレータ回路(23,24)により入力電圧(Vin)より小さな動作電圧を生成させて供給する構成とした。また、レギュレータ回路(23,24)によりパワートランジスタ(Q1,Q2)の特性に応じた動作電圧(Vd1,Vd2)を生成させて、パワートランジスタの安定した駆動とスイッチング損失の低減との両方を満たすようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、MOSFETなどのスイッチング素子をオン・オフさせて電圧出力を行うDC/DCコンバータに関し、該DC/DCコンバータを構成するスイッチング電源用の半導体集積回路に利用して有用な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、MOSFETなどのスイッチング素子をオン・オフさせて電圧出力を行うDC/DCコンバータが一般に知られている。このようなDC/DCコンバータとしては、例えば、図6に示すように、ハイサイド側のパワートランジスタQ1とローサイド側のパワートランジスタQ2とを互い違いにスイッチング動作させ、それによりリアクトルL12に電流を流して一定の電圧Voutを負荷30に出力するようにされた構成がある。
【0003】
このようなDC/DCコンバータ50においては、リアクトルL12や平滑コンデンサC13は外付け素子とされる一方、パワートランジスタQ1,Q2、そのドライブ回路51,52、ならびに、パワートランジスタQ1,Q2のスイッチング制御を行う制御回路などは、スイッチング電源用IC(集積回路)として1個の半導体チップに集積される構成が一般的である。或いは、発熱の大きなパワートランジスタQ1,Q2は外付け素子として設けられ、スイッチング電源用ICにはドライブ回路51,52までが搭載される構成も一般的である。
【0004】
従来、上記のようなDC/DCコンバータ50において、パワートランジスタQ1,Q2を駆動するドライブ回路51,52には、パワートランジスタQ1,Q2に供給されている入力電圧Vinと同じ電圧が動作電圧として供給されるのが一般的であった。そして、ドライブ回路51,52から入力電圧Vin或いはグランド電位(0V)がパワートランジスタQ1,Q2のゲート端子に出力されて、パワートランジスタQ1,Q2が駆動される。
【0005】
特許文献1には、昇圧型のDC/DCコンバータにおいて、パワートランジスタを駆動するドライブ回路の動作電圧をDC/DCコンバータの様々な電位点から取り出すようにした技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−160198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非常に高い入力電圧(例えば30V)に対応したDC/DCコンバータにおいては、パワートランジスタの素子サイズが大きくなってそのゲート容量も大きくなるため、ゲート充放電の電流によりパワートランジスタを駆動する際にドライブ回路から出力される電流量が大きくなってスイッチング損失が比較的大きくなる。
【0007】
また、入力電圧が高くなると、入力電圧を動作電圧としているドライブ回路の構成素子を中耐圧化あるいは高耐圧化する必要があり、それによりドライブ回路の各素子サイズが大きくなってICのチップ面積が増大するという問題が生じる。
【0008】
また、ドライブ回路の出力はパワートランジスタを十分にオン・オフさせる電圧でなければならないが、特許文献1に開示されるように、DC/DCコンバータの種々の電位点からドライブ回路の動作電圧を供給したのでは、出力電圧や入力電圧がごく限られた値にある場合しか適切な動作電圧を得ることは出来ない。
【0009】
この発明の目的は、高い入力電圧が印加されるDC/DCコンバータであっても、パワートランジスタの駆動時のスイッチング損失を少なくして高効率化を図れるDC/DCコンバータ並びにスイッチング電源用ICを提供することにある。
【0010】
この発明の他の目的は、高い入力電圧に対応したDC/DCコンバータであっても、パワートランジスタを駆動するドライブ回路の構成素子を小さなサイズにでき、IC全体のチップ面積をさほど増大させることのないスイッチング電源用ICを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するため、DC/DCコンバータのパワートランジスタを駆動するドライブ回路の動作電圧を、例えばシリーズレギュレータなどのレギュレータ回路により入力電圧より小さな電圧にして供給するようにしたものである。また、上記のレギュレータ回路によりパワートランジスタの特性に対応した動作電圧を生成させて、パワートランジスタの安定した駆動とスイッチング損失の低減との両方を満たせるようにしたものである。
【0012】
すなわち、本発明は、第1スイッチング素子(Q1)をオン・オフさせて入力電圧(Vin)を間歇的にリアクトル(L12)に供給することで入力電圧を変換した電圧(Vout)を出力するDC/DCコンバータ(10)において、前記入力電圧が印加される第1電位点(T1)と、この第1電位点の電位を基準電位として前記入力電圧より電位差の小さい第1電圧(Vd1)を生成する第1レギュレータ回路(23)と、前記第1スイッチング素子をオン・オフさせる駆動電圧を出力する第1ドライブ回路(21)とを備え、前記第1電圧が動作電圧として前記第1ドライブ回路に供給され、当該第1ドライブ回路の出力がこの動作電圧の範囲で変動する構成とした。
【0013】
このような構成によれば、入力電圧を直に第1ドライブ回路の動作電圧とした場合に比べて、第1ドライブ回路から出力される駆動電圧の振幅が小さくなり、第1ドライブ回路から第1スイッチング素子の寄生ゲート容量に流れ込む電流量を少なくすることが出来る。それにより、電力損失が低減され高効率のDC/DCコンバータを実現できる。また、高い入力電圧が印加される場合でも、第1ドライブ回路を構成する素子を中耐圧や高耐圧にしなくて済み、それゆえ、ドライブ回路の各素子サイズを小さくすることが出来る。第1レギュレータ回路を追加する分を考慮しても、回路全体の面積を小さくすることが出来る。
【0014】
さらに、本発明は、前記第1スイッチング素子(Q1)がオフの期間にオンされて前記リアクトル(L12)に電流を供給する第2スイッチング素子(Q2)と、該第2スイッチング素子をオン・オフさせる駆動電圧を出力する第2ドライブ回路(22)と、前記入力電圧の基準電位が印加される第2電位点(T2)と、この第2電位点の電位を基準電位として前記入力電圧より電位差の小さい第2電圧(Vd2)を生成する第2レギュレータ回路(24)とを備え、前記第2電圧が動作電圧として前記第2ドライブ回路に供給され、当該第2ドライブ回路の出力がこの動作電圧の範囲で変動する構成にすると良い。
【0015】
このような構成により、第2スイッチング素子の駆動部分についても上記同様に電力損失を低減し、DC/DCコンバータの効率の向上に寄与することが出来る。また、第2ドライブ回路についても素子サイズを小さくして回路面積の低減を図ることが出来る。
【0016】
また望ましくは、前記第1電圧(Vd1)は、前記第1スイッチング素子(Q1)の特性に対応させて当該第1スイッチング素子を飽和領域で動作させる電圧に設定され、前記第2電圧(Vd2)は、前記第2スイッチング素子(Q2)の特性に対応させて当該第2スイッチング素子を飽和領域で動作させる電圧に設定されていると良い。
【0017】
ここで、上記の第1電圧や第2電圧の値(各基準電位からの電位差の絶対値)は、あまり大きな値となると、スイッチング素子を駆動する際の電力損失を小さくできるという効果が低減される一方、逆にあまり小さな値となるとスイッチング素子のオン抵抗の僅かな上昇によりスイッチング素子での電力損失が上昇してしまうという関係にある。従って、上記第1電圧および第2電圧は、スイッチング素子の抵抗値が完全なオン抵抗とほぼ変りない値となる範囲内で小さな値に設定すると良い。
【0018】
完全なオン抵抗とほぼ変りない値となる範囲とは、具体的には、完全なオン抵抗値を100%とした場合に101%から300%の範囲、より好ましくは101%から200%の範囲、さらに好ましくは101%から150%の範囲である。
【0019】
さらに、本発明のスイッチング電源用の半導体集積回路(20)は、上述の第1スイッチング素子である第1電界効果トランジスタと、上述の第2スイッチング素子である第2電界効果トランジスタと、第1ドライブ回路と、第2ドライブ回路と、第1レギュレータ回路と、第2レギュレータ回路とを、例えば1個の半導体チップに集積したものである。
【0020】
また、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子を外付けとする代わりに、第1レギュレータ回路と第2レギュレータ回路の生成する電圧を設定する外付け素子(17,18)を接続する電圧設定用端子(T8,T9)を設けたものである。
【0021】
このようなスイッチング電源用の半導体集積回路によれば、例えば、非常に高い入力電圧に対応させた場合でも、スイッチング損失を低減し高効率のDC/DCコンバータを実現することが出来る。さらに、第1および第2ドライブ回路を高耐圧化する必要がなく、第1および第2レギュレータ回路を追加する分を考慮しても、チップ全体の面積を小さくすることが出来る。
【0022】
また、上記の電圧設定用端子により、外付けの第1電界効果トランジスタと第2電界効果トランジスタに合わせて第1および第2ドライブ回路の出力振幅を最適なものに調整することが出来る。
【0023】
なお、この項目において、実施の形態との対応関係を表わす符号を括弧書きで記したが、本発明はこれに制限されるものではない。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明に従うと、高い入力電圧に対応させた場合でも、スイッチング素子を駆動するドライブ回路の出力振幅を適切なものにすることができ、それによりスイッチング損失を低減し高効率のDC/DCコンバータを実現することが出来るという効果がある。
【0025】
また、非常に高い入力電圧に対応させた場合でも、ドライブ回路を高耐圧化する必要がなくなり、レギュレータ回路の追加分を考慮しても回路全体の面積を低減することができ、それにより製造コストを低減することが出来るという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態のDC/DCコンバータの主要部の構成を示す回路図である。
この実施の形態のDC/DCコンバータ10は、例えば30Vなどの高い入力電圧Vinを受けてそれを所定電圧Voutに降下させて負荷30に出力する降圧型のDC/DCコンバータである。このDC/DCコンバータ10は、電気エネルギーを蓄積するリアクトルL12と、出力電圧を平滑する平滑コンデンサC13と、スイッチング動作により入力電圧Vinを間歇的にリアクトルL12に供給する第1パワートランジスタQ1と、第1パワートランジスタQ1がオフのときにリアクトルL12にグランドから電流を供給する同期整流用の第2パワートランジスタQ2と、第1パワートランジスタQ1のゲート端子に駆動電圧を出力して第1パワートランジスタQ1を駆動する第1ドライブ回路21と、同様に第2パワートランジスタQ2のゲート端子に駆動電圧を出力して第2パワートランジスタQ2を駆動する第2ドライブ回路22と、第1ドライブ回路21の動作電圧を生成する第1レギュレータ回路23と、第2ドライブ回路22の動作電圧を生成する第2レギュレータ回路24と、第1および第2レギュレータ回路23,24の発振防止およびリップル除去を行うためのコンデンサC15,C16等を備えている。
【0027】
また、図示は省略するが、このDC/DCコンバータ10には、出力電圧Voutを検出して例えばパルス幅変調方式により第1パワートランジスタQ1と第2パワートランジスタQ2のスイッチング制御を行う制御回路が、第1および第2ドライブ回路21,22の前段に設けられ、これら制御回路から第1および第2ドライブ回路21,22にパワートランジスタQ1,Q2の動作タイミングを示すパルス信号が出力されるようになっている。
【0028】
上記の構成において、リアクトルL12、平滑コンデンサC13、およびコンデンサC15,C16は外付けの素子である。また、第1と第2パワートランジスタQ1,Q2、第1と第2ドライブ回路21,22、第1と第2レギュレータ回路23,24、および図示略の制御回路は、スイッチング電源用IC20として1個の半導体チップに集積されている。
【0029】
スイッチング電源用IC20には、外部接続端子として、入力電圧Vinが入力される入力端子T1と、グランド電位が印加されるグランド端子T2と、第1と第2パワートランジスタQ1,Q2の結合点が接続される出力端子T3と、コンデンサC15、C16を接続するための接続端子T4,T5等が設けられている。グランド電位は入力電圧Vinの基準電位である。
【0030】
この実施の形態において、第1パワートランジスタQ1はPチャネル形のMOSFETにより構成され、第2パワートランジスタQ2はNチャネル形のMOSFETにより構成されている。そして、第1パワートランジスタQ1のソース端子が入力端子T1に接続され、第2パワートランジスタQ2のソース端子がグランド端子T2に接続され、これらのドレイン端子の結合点が出力端子T3に接続されている。
【0031】
第1ドライブ回路21は、例えばインバータ回路を多段に設けてなるもので、入力端子T1の電位(Vin)を基準電位として第1レギュレータ23により生成された動作電圧Vd1を電源として動作する。そして、制御回路からのパルス信号を入力して、このパルス信号に応じて、動作電圧Vd1またはその基準電位(Vin)を駆動電圧として第1パワートランジスタQ1のゲート端子に出力する。
【0032】
第2ドライブ回路22は、例えばインバータ回路を多段に設けてなるもので、グランド電位を基準電位として第2レギュレータ24により生成された動作電圧Vd2を電源として動作する。そして、制御回路からのパルス信号を入力して、このパルス信号に応じて、動作電圧Vd2またはグランド電位を駆動電圧として第2パワートランジスタQ2のゲート端子に出力する。
【0033】
第1レギュレータ回路23は、例えばMOSFETのソース・ドレイン間抵抗、或いはバイポーラトランジスタのエミッタ・コレクタ間抵抗により入力電圧を基準電位側に降下させて出力するシリーズレギュレータなどから構成され、入力端子T1の電位(Vin)を基準電位として、グランド端子T2の電圧を基準電位側に電圧降下させてほぼ一定の動作電圧Vd1を生成する。この動作電圧Vd1は、第1パワートランジスタQ1の特性に合わせて例えば入力電圧Vinより5V低い電位に設定されている。
【0034】
第2レギュレータ回路24も同様に、例えばMOSFETのソース・ドレイン間抵抗、或いはバイポーラトランジスタのエミッタ・コレクタ間抵抗により入力電圧を基準電位側に降下させて出力するシリーズレギュレータなどから構成され、グランド端子T2の電位を基準電位として、入力端子T1の電圧(Vin)を基準電位側に降下させてほぼ一定の動作電圧Vd2を生成する。この動作電圧Vd2は、第2パワートランジスタQ2の特性に合わせて例えば5Vに設定されている。
【0035】
なお、この実施の形態では、入力電圧Vinが低くなった場合でも、第1と第2のレギュレータ回路23,24から規定の電圧出力がなされるように、低ドロップアウト(LDO)型のシリーズレギュレータが採用されている。
【0036】
次に、上記構成のDC/DCコンバータ10の動作について説明する。
図示しない制御回路は負荷の変動に応じてパルス幅を変更させながら第1ドライブ回路21と第2ドライブ回路22とにパルス信号を出力する。これらのパルス信号は互いに同期され、これらのパルス信号により第1パワートランジスタQ1と第2パワートランジスタQ2とが互い違いにオン・オフされる。
【0037】
第1ドライブ回路21は、制御回路からハイレベルの信号が入力された場合には該ドライブ回路21の基準電位である入力電圧Vinを、制御回路からローレベルの信号が入力された場合には第1レギュレータ回路23から供給される動作電圧Vd1を、それぞれ第1パワートランジスタQ1のゲート端子に出力する。
【0038】
また、第2ドライブ回路22は、制御回路からハイレベルの信号が入力された場合には第2レギュレータ回路24から供給される動作電圧Vd2を、制御回路からローレベルの信号が入力された場合には基準電位であるグランド電位を、それぞれ第1パワートランジスタQ1のゲート端子に出力する。
【0039】
図2には、第1と第2のパワートランジスタQ1,Q2のソース・ドレイン間抵抗の特性グラフを示す。
第1パワートランジスタQ1のソース・ドレイン間抵抗は、図2(a)に示すように、ゲート・ソース間電圧の絶対値が小さいときには非常に大きな抵抗となって電流を流さないが、ゲート電位が低くなってゲート・ソース間電圧の絶対値が大きくなっていくと、所定のしきい値電圧で抵抗値が急激に小さくなり、さらにゲート・ソース間電圧を大きくしていくと小さな抵抗(ON抵抗)で飽和する。
【0040】
それゆえ、第1パワートランジスタQ1をオンさせるには、図9の従来例に示したようにゲート電圧をグランド電位まで下げなくても、抵抗値が完全なON抵抗とほぼ変らない範囲でゲート・ソース間電圧の絶対値を小さくする電位とすれば良いことが分かる。第1レギュレータ回路23から出力される動作電圧Vd1は、このような第1パワートランジスタQ1の特性に対応させて、図2(a)に示すように抵抗値が完全なON抵抗とほぼ変らない範囲で且つ基準電位側の電位(例えばVd1=Vin−5V)に設定されている。そして、このような動作電圧Vd1を受けて第1ドライブ回路21から駆動電圧が出力されることで、第1パワートランジスタQ1がオン又はオフの状態に駆動される。
【0041】
第2パワートランジスタQ2のソース・ドレイン間抵抗についても、図2(b)に示すように、ゲート・ソース間電圧が小さいときには非常に大きな抵抗となって電流を流さないが、ゲート電位が高くなってゲート・ソース間電圧が大きくなっていくと、所定のしきい値電圧で抵抗値が急激に小さくなり、さらにゲート・ソース間電圧を大きくしていくと小さな抵抗(オン抵抗)で飽和する。
【0042】
従って、第2パワートランジスタQ2をオンさせるには、図9の従来例に示したようにゲート電圧を入力電圧Vinまで上げなくても、抵抗値が完全なON抵抗とほぼ変らない範囲でゲート・ソース間電圧が小さくなる電位とすれば良いことが分かる。第2レギュレータ回路24から出力される動作電圧Vd2は、このような第2パワートランジスタQ2の特性に対応させて、図2(b)に示すように抵抗値が完全なON抵抗とほぼ変らない範囲で且つ基準電位側の電位(例えばVd2=5V)に設定されている。そして、このような動作電圧Vd2を受けて第2ドライブ回路22から駆動電圧が出力されることで、第2パワートランジスタQ2がオン又はオフの状態に駆動される。
【0043】
上記のような動作により第1パワートランジスタQ1がオンされると、入力電圧VinがリアクトルL12に印加されてリアクトルL12に電気エネルギーが蓄積され、続いて第1パワートランジスタQ1がオフされて第2パワートランジスタQ2がオンされるとグランドからリアクトルL12に電流が供給される。そして、このリアクトルL12の出力端の電圧が平滑コンデンサC13により平滑されて負荷30に出力される。
【0044】
以上のように、この実施の形態のDC/DCコンバータ10によれば、入力電圧Vinとグランド電位をドライブ回路21,22の動作電圧とした場合に比べて、ドライブ回路21,22の出力振幅が小さくなる。また、ドライブ回路21,22の動作電圧はレギュレータ回路23,24が生成するので、ドライブ回路21,22の出力電圧をパワートランジスタQ1,Q2の特性に対応させて適切な駆動電圧にすることが出来る。
【0045】
従って、入力電圧Vinとグランド電位とをドライブ回路21,22の動作電圧とした場合に比べて、スイッチング駆動時にパワートランジスタQ1,Q2のゲート容量に流れ込む電流量が小さくなり、それによりスイッチング損失を低減することが出来る。
【0046】
また、非常に高い入力電圧Vinに対応させた場合でも、第1および第2ドライブ回路21,22の構成素子を通常耐圧の素子で形成することができ、スイッチング電源用IC20のチップ面積を小さくすることが出来る。
【0047】
なお、ドライブ回路21,22の素子を通常耐圧にする代わりに、レギュレータ回路23,24を構成するシリーズトランジスタを高耐圧にする必要が生じるが、ドライブ回路21,22は制御回路のパルス信号を動作電圧で変動する信号に成形するためインバータ回路を多段に構成するなど構成素子数が多い。そのため、ドライブ回路21,22の構成素子を高耐圧化するよりもレギュレータ回路23,24を設けてレギュレータ回路23,24を高耐圧化したほうが、回路全体の面積を小さくすることが出来る。
【0048】
図3には、第2の実施の形態のDC/DCコンバータ10Aの主要構成を示す。
この第2の実施の形態のDC/DCコンバータ10Aは、図1のDC/DCコンバータ10の構成を少し変更して、第1パワートランジスタQ1と第2パワートランジスタQ2を外付け素子とし、さらに、第1および第2レギュレータ回路23,24で生成される動作電圧Vd1,Vd2の値を外部素子17,18によりそれぞれ調整可能としたものである。
【0049】
この実施の形態のスイッチング電源用IC20Aには、外部接続端子として、入力端子T1,グランド端子T2、コンデンサC15、C16を接続するための接続端子T4,T5に加えて、第1および第2ドライブ回路21,22から駆動電圧がそれぞれ出力される第1および第2出力端子T6,T7と、電圧設定用の外部素子17,18を接続する電圧設定用端子T8,T9とが設けられている。
【0050】
外部素子17,18により出力電圧Vd1,Vd2が変更される第1および第2レギュレータ回路23,24の構成は、例えば、レギュレータ回路23,24の内部で出力電圧Vd1,Vd2と比較されるリファレンス電圧を、外部素子17,18の電圧降下により変更する構成としたり、或いは、レギュレータ回路23,24の内部で外部素子17,18にそれぞれ流れる電流を検出し、その検出値に応じて上記のリファレンス電圧を変化させる構成とするなど、種々の構成が適用可能である。
【0051】
なお、図3では第1レギュレータ回路23と第2レギュレータ回路24との出力電圧Vd1,Vd2をそれぞれ独立的に調整できるようにしているが、1つの外付け素子で第1および第2レギュレータ回路23,24の両方の出力電圧Vd1,Vd2を同時に調整可能なように構成しても良い。
【0052】
この第2の実施の形態のDC/DCコンバータ10Aによれば、外付け素子である第1および第2パワートランジスタQ1,Q2の特性に合わせて第1および第2レギュレータ回路23,24の出力電圧Vd1,Vd2を調整することが出来るので、特性の異なる複数種類のパワートランジスタを用いた場合でも、それぞれに適切な駆動電圧を出力させることができ、第1の実施の形態と同様に、スイッチング損失の低減やチップ面積の低減等を図ることが出来る。
【0053】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、図4のDC/DCコンバータの第1変形例に示すように、パワートランジスタQ1,Q2、ドライブ回路21,22、リアクトルL12および平滑コンデンサC13を複数組設けてなる複数出力のDC/DCコンバータ10Bにおいて、これら複数組の各ドライブ回路21,22に対して、1組のレギュレータ回路23,24から動作電圧Vd1,Vd2がそれぞれ供給されるように構成しても良い。
【0054】
また、上記実施の形態では同期整流方式のDC/DCコンバータを例示したが、本発明は、図5のDC/DCコンバータの第2変形例に示されるように、例えばショットキーバリアダイオードD1等を用いたダイオード整流方式のDC/DCコンバータ10Cに適用することも出来る。
【0055】
その他、パワートランジスタQ1,Q2より後段の構成は公知である種々のコンバータ方式に対応させて種々の構成に変更可能であるし、入力電圧Vinの値やパワートランジスタQ1,Q2の特性に合わせたレギュレータ回路23,24の動作電圧Vd1,Vd2の各値など、実施の形態で具体的に示した細部等は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施の形態のDC/DCコンバータの主要部の構成を示す回路図である。
【図2】図1のパワートランジスタのソース・ドレイン間抵抗の特性を示すもので、(a)は第1パワートランジスタの特性グラフ、(b)は第2パワートランジスタの特性グラフである。
【図3】本発明の第2の実施の形態のDC/DCコンバータの主要部の構成を示す回路図である。
【図4】本発明に係るDC/DCコンバータの第1変形例を示す回路図である。
【図5】本発明に係るDC/DCコンバータの第2変形例を示す回路図である。
【図6】従来の一般的なDC/DCコンバータの主要部構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0057】
10,10A DC/DCコンバータ
L12 リアクトル
C13 平滑コンデンサ
20,20A スイッチング電源用IC
Q1 第1パワートランジスタ
Q2 第2パワートランジスタ
21 第1ドライブ回路
22 第2ドライブ回路
23 第1レギュレータ回路
24 第2レギュレータ回路
Vin 入力電圧
Vd1,Vd2 動作電圧
T8,T9 電圧設定用端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スイッチング素子のオン・オフによりリアクトルに電流を流して入力電圧を変換した電圧を出力するDC/DCコンバータにおいて、
前記入力電圧よりも小さな電圧により前記第1スイッチング素子のオン・オフを制御することを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項2】
第1スイッチング素子のオン・オフによりリアクトルに電流を流して入力電圧を変換した電圧を出力するDC/DCコンバータにおいて、
前記入力電圧が印加される第1電位点と、
この第1電位点の電位を基準電位として前記入力電圧より電位差の小さい第1電圧を生成する第1レギュレータ回路と、
前記第1スイッチング素子をオン・オフさせる駆動電圧を出力する第1ドライブ回路と、
を備え、
前記第1電圧が動作電圧として前記第1ドライブ回路に供給され、当該第1ドライブ回路の出力がこの動作電圧の範囲で変動することを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記第1スイッチング素子がオフの期間にオンされて前記リアクトルに電流を供給する第2スイッチング素子と、
該第2スイッチング素子をオン・オフさせる駆動電圧を出力する第2ドライブ回路と、
前記入力電圧の基準電位が印加される第2電位点と、
この第2電位点の電位を基準電位として前記入力電圧より電位差の小さい第2電圧を生成する第2レギュレータ回路と、
を備え、
前記第2電圧が動作電圧として前記第2ドライブ回路に供給され、当該第2ドライブ回路の出力がこの動作電圧の範囲で変動することを特徴とする請求項2記載のDC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子はそれぞれ前記第1ドライブ回路又は前記第2ドライブ回路の出力をゲート端子に受けてオン・オフする電界効果トランジスタであり、
前記第1電圧は、前記第1スイッチング素子の特性に対応させて当該第1スイッチング素子を飽和領域で動作させる電圧に設定され、
前記第2電圧は、前記第2スイッチング素子の特性に対応させて当該第2スイッチング素子を飽和領域で動作させる電圧に設定されていることを特徴とする請求項3記載のDC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記第1スイッチング素子または前記第2スイッチング素子を制御する電圧は、スイッチング素子のオン抵抗を十分に小さくする電圧であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のDC/DCコンバータ。
【請求項6】
入力電圧とその基準電位との間に第1電界効果トランジスタと第2電界効果トランジスタとが直列に接続され、これら第1電界効果トランジスタと第2電界効果トランジスタとが互い違いにオン・オフされることで外部素子であるリアクトルに電流が流れて電圧出力が行われるDC/DCコンバータに用いられるスイッチング電源用半導体集積回路であって、
前記入力電圧が入力される第1入力端子と、
前記入力電圧の基準電位が入力される第2入力端子と、
前記第1電界効果トランジスタおよび第2電界効果トランジスタと、
前記第1電界効果トランジスタと前記第2電界効果トランジスタとの結合点に接続された出力端子と、
前記第1入力端子の電位を基準電位として前記入力電圧より電位差の小さな第1電圧を生成する第1レギュレータ回路と、
前記第2入力端子の電位を基準電位として前記入力電圧より電位差の小さな第2電圧を生成する第2レギュレータ回路と、
前記第1電圧が動作電圧として供給され前記第1電界効果トランジスタのゲート端子に駆動電圧を出力する第1ドライブ回路と、
前記第2電圧が動作電圧として供給され前記第2電界効果トランジスタのゲート端子に駆動電圧を出力する第2ドライブ回路と、
を備え、
前記第1電圧は前記第1電界効果トランジスタを飽和領域で動作させる電圧に設定され、
前記第2電圧は前記第2電界効果トランジスタを飽和領域で動作させる電圧に設定されていることを特徴とするスイッチング電源用の半導体集積回路。
【請求項7】
入力電圧とその基準電位との間に外部素子である第1電界効果トランジスタと第2電界効果トランジスタとが直列に接続され、これら第1電界効果トランジスタと第2電界効果トランジスタとが互い違いにオン・オフされることでリアクトルに電流が流れて電圧出力が行われるDC/DCコンバータに用いられるスイッチング電源用半導体集積回路であって、
前記入力電圧を入力する第1入力端子と、
前記入力電圧の基準電位を入力する第2入力端子と、
外部素子である前記第1電界効果トランジスタのゲート端子に駆動電圧を出力する第1出力端子と、
外部素子である前記第2電界効果トランジスタのゲート端子に駆動電圧を出力する第2出力端子と、
前記第1入力端子の電位を基準電位として前記入力電圧より電位差の小さな第1電圧を生成する第1レギュレータ回路と、
前記第2入力端子の電位を基準電位として前記入力電圧より電位差の小さな第2電圧を生成する第2レギュレータ回路と、
前記第1電圧が動作電圧として供給されて前記第1出力端子に出力される駆動電圧を生成する第1ドライブ回路と、
前記第2電圧が動作電圧として供給されて前記第2出力端子に出力される駆動電圧を生成する第2ドライブ回路と、
前記第1および第2レギュレータ回路により生成される前記第1電圧および前記第2電圧の大きさを変更させる外付け素子を接続する電圧設定用端子と、
を備えていることを特徴とするスイッチング電源用の半導体集積回路。
【請求項8】
前記第1および第2レギュレータ回路は、それぞれトランジスタのオン抵抗制御により入力電圧を降下させた電圧を出力するシリーズレギュレータであることを特徴とする請求項6又は7に記載のスイッチング電源用の半導体集積回路。
【請求項9】
前記第1電界効果トランジスタおよび前記第2電界効果トランジスタを駆動する電圧は、各電界効果トランジスタのオン抵抗を十分に小さくする電圧であることを特徴とする請求項6〜8の何れかに記載のスイッチング電源用の半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−151323(P2007−151323A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343565(P2005−343565)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】