説明

DC/DCコンバータ及びDC/DCコンバータの制御方法

【課題】定常出力電圧の精度を向上させながら、出力電圧の変動に対する応答速度を向上させて定常出力電圧を安定化させ得るDC/DCコンバータを提供する。
【解決手段】出力電圧Voutと基準電圧Vrefとを比較する第一の比較器5と、第一の比較器の出力信号をトリガとして一定の時間幅のパルス信号を生成するパルス発生回路6と、パルス信号に基づいて開閉される第一のスイッチ回路1と、第一のスイッチ回路を介して供給される入力電圧Vinに基づいて出力電圧Voutを生成する出力電圧生成部2,3,4と、第一の比較器5の出力信号を遅延させて出力する遅延生成回路11と、出力電圧Voutと基準電圧Vrefとの電位差に基づいて遅延生成回路11の遅延時間を制御する誤差増幅器7とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、出力電圧と基準電圧とを比較する比較器の出力信号で出力回路のスイッチング動作を制御するDC/DCコンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9は、Constant ON Time方式のDC/DCコンバータの従来例を示す。バッテリー等から供給される直流の入力電圧Vinはスイッチ回路1を介してコイル2の一端に供給される。コイル2の一端はダイオード3のカソードに接続され、ダイオード3のアノードがグランドGNDに接続される。
【0003】
コイル2の他端は容量4を介してグランドGNDに接続されている。そして、スイッチ回路1の開閉制御に基づいて図10に示す出力電圧Voutが出力される。
前記出力電圧Voutは、比較器5のマイナス側入力端子に入力され、比較器5のプラス側入力端子には基準電圧Vrefが入力される。比較器5の出力信号はモノマルチ回路(MM)6に出力され、モノマルチ回路6の出力信号Vmmで前記スイッチ回路1が開閉制御される。
【0004】
比較器5は出力電圧Voutが基準電圧Vrefより低くなるとHレベルの信号を出力し、出力電圧Voutが基準電圧Vrefより高くなるとLレベルの信号を出力する。モノマルチ回路6は、比較器5の出力信号の立ち上がりをトリガとして一定時間Hレベルとなる出力信号を出力する。
【0005】
このようなDC/DCコンバータでは、図10に示すように、出力電圧Voutが基準電圧Vref以下まで低下しようとするとモノマルチ回路6の出力信号VmmがHレベルに立ち上がり、スイッチ回路1が導通状態となって、出力電圧Voutが上昇する。
【0006】
モノマルチ回路6の出力信号Vmmの立ち上がりから一定時間後に同VmmがLレベルとなると、スイッチ回路1が不導通となって入力電圧Vinの供給が遮断されるため、出力電圧Voutが低下する。そして、出力電圧Voutが基準電圧Vrefまで低下すると、上記動作が繰り返される。このようにして生成された出力電圧Voutは、出力平滑容量で平滑され、その平均値Vaveが外部機器に電源として供給される。
【0007】
しかし、上記のようなDC/DCコンバータでは、入力電圧Vinが変動すると出力電圧Voutのリップル(立ち上がりの傾き及び波高値)が変化するため、外部機器に供給する平均値Vaveが変動する。
【0008】
図11は、Constant ON Time方式のDC/DCコンバータの別の従来例(特許文献1)を示す。この従来例では、比較器5のプラス側入力端子に誤差増幅器7の出力電圧Veが入力されている。誤差増幅器7のマイナス側入力端子には出力電圧Voutが抵抗を介して入力され、プラス側入力端子には基準電圧Vrefが入力される。
【0009】
誤差増幅器7は、出力電圧Voutが基準電圧Vrefより高くなると、出力電圧Veを低下させるように動作し、出力電圧Voutが基準電圧Vrefより低くなると、出力電圧Veを上昇させるように動作する。すると、出力電圧Voutが高くなると、比較器5の出力信号が立ち上がるタイミングが遅くなり、出力電圧Voutが低くなると、比較器5の出力信号が立ち上がるタイミングが早くなる。
【0010】
この結果、出力電圧Voutの平均値Vaveが基準電圧Vrefに収束するように動作し、入力電圧Vinの変動による平均値Vaveの変動が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5770940号
【特許文献2】特開2008−29159号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図11に示すDC/DCコンバータでは、出力電圧Voutが大きく上昇(オーバーシュート)して誤差増幅器7の出力電圧Veが低下した後に定常レベルに復帰したとき、誤差増幅器7の動作の遅れにより出力電圧Veが低下したままとなる。この結果、出力電圧Voutには定常レベルからさらに下降するアンダーシュートが発生する。
【0013】
特許文献2に記載されたDC/DCコンバータでは、誤差増幅器の出力信号に基づいて電圧制御発振器の出力周波数を調整している。しかし、誤差増幅器を含む帰還ループの帯域により応答速度が制限されるため、十分な応答速度を確保することはできない。
【0014】
この発明の目的は、定常出力電圧の精度を向上させながら、出力電圧の変動に対する応答速度を向上させて定常出力電圧を安定化させ得るDC/DCコンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的は、出力電圧と基準電圧とを比較する第一の比較器と、前記第一の比較器の出力信号をトリガとして一定の時間幅のパルス信号を生成するパルス発生回路と、前記パルス信号に基づいて開閉される第一のスイッチ回路と、前記第一のスイッチ回路を介して供給される入力電圧に基づいて前記出力電圧を生成する出力電圧生成部とを備えたDC/DCコンバータにおいて、前記第一の比較器の出力信号を遅延させて出力する遅延生成回路と、前記出力電圧と基準電圧との電位差に基づいて前記遅延生成回路の遅延時間を制御する誤差増幅器とを備えたDC/DCコンバータにより達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、定常出力電圧の精度を向上させながら、出力電圧の変動に対する応答速度を向上させて定常出力電圧を安定化させ得るDC/DCコンバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一の実施形態のDC/DCコンバータを示す回路図である。
【図2】第一の実施形態の遅延生成回路を示す回路図である。
【図3】第一の実施形態のモノマルチ回路を示す回路図である。
【図4】遅延生成回路の動作を示すタイミング波形図である。
【図5】第一の実施形態のDC/DCコンバータの動作を示すタイミング波形図である。
【図6】第二の実施形態の遅延生成回路を示す回路図である。
【図7】第三の実施形態のDC/DCコンバータを示す回路図である。
【図8】第三の実施形態の遅延生成回路を示す回路図である。
【図9】従来のDC/DCコンバータを示す回路図である。
【図10】従来のDC/DCコンバータの動作を示すタイミング波形図である。
【図11】従来のDC/DCコンバータを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一の実施形態)
以下、この発明を具体化した第一の実施形態を図面に従って説明する。図1はConstant ON Time方式のDC/DCコンバータを示す。前記従来例と同一構成部分は、同一符号を付して説明する。
【0019】
バッテリー等から供給される直流の入力電圧Vinはスイッチ回路(第一のスイッチ回路)1を介してコイル2の一端に供給される。コイル2の一端はダイオード3のカソードに接続され、ダイオード3のアノードがグランドGNDに接続される(出力電圧生成部)。
【0020】
コイル2の他端は容量4を介してグランドGNDに接続されている。そして、スイッチ回路1の開閉制御に基づいて図5に示す出力電圧Voutが出力される。
前記出力電圧Voutは、比較器(第一の比較器)5のマイナス側入力端子に入力され、比較器5のプラス側入力端子には基準電圧Vrefが入力される。比較器5の出力信号cmは遅延生成回路11で遅延させてモノマルチ回路(パルス発生回路)6に出力され、モノマルチ回路6の出力信号(パルス信号)Vmmで前記スイッチ回路1が開閉制御される。
【0021】
比較器5は出力電圧Voutが基準電圧Vrefより低くなるとHレベルの出力信号cmを出力し、出力電圧Voutが基準電圧Vrefより高くなるとLレベルの出力信号cmを出力する。モノマルチ回路6は、遅延生成回路11の出力信号cmdの立ち上がりをトリガとして一定時間Hレベルとなる出力信号Vmmを出力する。
【0022】
前記遅延生成回路11には誤差増幅器7の出力電圧Veが入力され、その出力電圧Veに基づいて遅延時間が制御される。前記誤差増幅器7のマイナス側入力端子には出力電圧Voutが抵抗を介して入力され、プラス側入力端子には基準電圧Vrefが入力される。この基準電圧Vrefは、比較器5に入力される基準電圧Vrefと同一電圧でもよいが、必ずしも同一電圧とする必要はない。
【0023】
前記誤差増幅器7は、出力電圧Voutが基準電圧Vrefより高くなると、出力電圧Veを低下させるように動作し、出力電圧Voutが基準電圧Vrefより低くなると、出力電圧Veの電圧レベルを上昇させるように動作する。
【0024】
前記遅延生成回路11の具体的構成を図2に従って説明する。前記誤差増幅器7の出力電圧VeはNチャネルMOSトランジスタT1のゲートに入力され、同トランジスタT1のドレインはPチャネルMOSトランジスタT2のドレイン及びゲートに接続され、同トランジスタT1のソースは抵抗を介してグランドGNDに接続されている。
【0025】
前記トランジスタT2のソースには前記入力電圧Vinが電源として供給され、ゲートはPチャネルMOSトランジスタT3のゲートに接続されている。前記トランジスタT3のソースには入力電圧Vinが供給されている。従って、トランジスタT2,T3はカレントミラー動作を行う。
【0026】
前記トランジスタT3のドレインは、容量(遅延設定部)C1の一端であるノードN1に接続され、その容量C1の他端はグランドGNDに接続されている。
前記ノードN1にはNチャネルMOSトランジスタ(第二のスイッチ回路)T4のドレインが接続され、同トランジスタT4のソースはグランドGNDに接続されている。トランジスタT4のサイズは、トランジスタT3のサイズより十分大きいサイズで形成されている。
【0027】
また、前記トランジスタT4のゲートにはフリップフロップ回路12の出力信号XQが入力される。前記フリップフロップ回路12には前記比較器5の出力信号cmがセット端子Sに入力され、図4に示すように、出力信号cmがHレベルに立ち上がると、出力信号XQがLレベルとなる。
【0028】
前記ノードN1は比較器(第二の比較器)13のプラス側入力端子に接続され、その比較器13のマイナス側入力端子には基準電圧Vrが入力されている。この比較器13は、ノードN1の電位すなわち容量C1の充電電圧が基準電圧Vrを超えるとHレベルの出力信号cmdを出力する。
【0029】
前記比較器13の出力信号cmdは前記フリップフロップ回路12のリセット端子Rに入力される。そして、フリップフロップ回路12は、図4に示すように、セット端子SがHレベルとなると出力信号XQがLレベルとなり、リセット端子RがHレベルとなると出力信号XQがHレベルとなる。
【0030】
このように構成された遅延生成回路11では、誤差増幅器7の出力電圧VeがトランジスタT1のしきい値以上となるとトランジスタT1がオンされ、トランジスタT2,T3にドレイン電流が流れる。そして、誤差増幅器7の出力電圧Veの電圧が上昇するにつれてトランジスタT2,T3のドレイン電流が増大し、トランジスタT3のドレイン電流により容量C1が充電され、ノードN1の電位が上昇する。
【0031】
遅延生成回路11の比較器13の出力信号cmdがHレベルとなると、フリップフロップ回路12の出力信号XQはHレベルにリセットされ、トランジスタT4がオンされる。すると、容量C1の充電電荷が吸収されてノードN1の電位がほぼグランドGNDレベルとなる。すると、比較器13の出力信号cmdはLレベルとなる。
【0032】
この状態で、前記比較器5の出力信号cmがHレベルとなると、フリップフロップ回路12の出力信号XQがLレベルとなり、トランジスタT4がオフされる。
すると、トランジスタT3のドレイン電流により容量C1が充電され、ノードN1の電位が上昇する。そして、ノードN1の電位が基準電圧Vrより高くなると、比較器13の出力信号cmdがHレベルとなり、フリップフロップ回路12の出力信号XQがHレベルとなって上記動作が繰り返される。
【0033】
従って、この遅延生成回路11では、比較器5の出力信号cmの立ち上がりから遅延時間t1後に立ち上がる出力信号cmdを生成して出力し、その遅延時間t1は誤差増幅器7の出力電圧Veで制御される。
【0034】
前記モノマルチ回路6の具体的構成を図3に従って説明する。入力電圧Vinは抵抗R1,R2で分圧されて、増幅器14のプラス側入力端子に入力される。増幅器14の出力信号はNチャネルMOSトランジスタT5のゲートに入力され、同トランジスタT5のソースは増幅器14のマイナス側入力端子に接続されるとともに、抵抗R3を介してグランドGNDに接続されている。
【0035】
前記トランジスタT5のドレインは、PチャネルMOSトランジスタT6のドレイン及びゲートに接続され、同トランジスタT6のソースには入力電圧Vinが供給される。そして、入力電圧Vinが低下すると、増幅器14の出力電圧が低下してトランジスタT5のドレイン電流が減少し、同トランジスタT5のソース電位が低下する。従って、増幅器14は入力電圧Vinの変動に追随して両入力端子電圧が等しくなるようにトランジスタT5のドレイン電流を調整する。
【0036】
前記トランジスタT6のゲートはPチャネルMOSトランジスタT7のゲートに接続され、同トランジスタT7のソースには入力電圧Vinが入力されている。トランジスタT6,T7はカレントミラー動作を行う。
【0037】
前記トランジスタT7のドレインは、容量C2の一端であるノードN2に接続され、容量C2の他端はグランドGNDに接続されている。前記ノードN2は比較器15のプラス側入力端子に入力され、NチャネルMOSトランジスタT8を介してグランドGNDに接続されている。トランジスタT8のサイズは、前記トランジスタT7のサイズより十分大きく形成されている。
【0038】
前記比較器15のマイナス側入力端子には、出力電圧Voutを抵抗R4,R5で分圧したノードN3の電位が入力され、比較器15の出力信号がフリップフロップ回路16のリセット端子Rに入力される。
【0039】
フリップフロップ回路16のセット端子Sには前記遅延生成回路11の出力信号cmdが入力され、同フリップフロップ回路16の出力端子Qから出力信号Vmmが出力される。また、フリップフロップ回路16から出力信号Vmmの反転信号が前記トランジスタT8のゲートに出力される。
【0040】
このように構成されたモノマルチ回路6では、遅延生成回路11の出力信号cmがHレベルとなると、出力信号VmmがHレベルに立ち上がる。このとき、フリップフロップ回路16の出力信号XQはLレベルとなり、トランジスタT8がオフされる。
【0041】
すると、トランジスタT7のドレイン電流により容量C2が充電され、ノードN2の電位が上昇する。そして、ノードN2の電位がノードN3の電位より高くなると比較器15の出力信号がHレベルとなり、その比較器15のHレベルの出力信号に基づいてフリップフロップ回路16の出力信号VmmがLレベルとなる。また、フリップフロップ回路16からHレベルの出力信号XQが出力されてトランジスタT8がオンされ、ノードN2の電位がグランドGNDレベルとなる。
【0042】
従って、上記のような動作により、遅延生成回路11の出力信号cmdの立ち上がりから、容量C2の充電動作によりノードN2の電位がノードN3の電位を超えるまでの所定時間でHレベルとなる出力信号Vmmが出力される。
【0043】
なお、入力電圧Vinが高くなるとトランジスタT5〜T7のドレイン電流が増大してノードN2の電位上昇が速くなるため、比較器15の出力信号がHレベルとなるタイミングが速くなる。また、出力電圧Voutが上昇すると、ノードN3の電位が上昇するため、比較器15の出力信号がHレベルとなるタイミングが遅くなる。
【0044】
従って、入力電圧Vinと出力電圧Voutがともに上昇する場合、あるいは入力電圧Vinと出力電圧Voutがともに低下する場合には、入力電圧Vinと出力電圧Voutの変動を相殺して出力信号VmmがHレベルとなるパルス幅を一定とすることが可能となる。
【0045】
次に、上記のように構成されたDC/DCコンバータの動作を図5に従って説明する。モノマルチ回路6の出力信号VmmがHレベルとなるとスイッチ回路1が導通状態となり、出力電圧Voutの電位が上昇する。一方、モノマルチ回路6の出力信号VmmがLレベルとなるとスイッチ回路1が不導通状態となり、出力電圧Voutの電位が低下する。
【0046】
モノマルチ回路6の出力信号Vmmの立ち上がりは、比較器5の出力信号cmがHレベルとなってから遅延生成回路11で設定された遅延時間t1後にHレベルとなる。この結果、出力電圧Voutが基準電圧Vrefよりさらに低下した後にスイッチ回路1が導通状態に転ずる。そして、定常状態では遅延時間t1はスイッチ回路1が不導通となる時間Toffの1/2となり、基準電圧Vrefと出力電圧Voutの平均値Vaveが一致する。
【0047】
スイッチ回路1のスイッチング周期の狙い値をTsとすると、モノマルチ回路6の出力信号Vmmの出力信号がHレベルとなる時間Tonは、図3に示すモノマルチ回路6により、Ton=Vout/Vin×Tsで設定され、入出力電圧依存がほぼ解消されている。
【0048】
このとき、モノマルチ回路6の出力信号Vmmの出力信号がLレベルとなる時間Toffは、Toff=(Vin−Vout)/Vin×Tsであり、この時間Toffを遅延時間t1の最大値に設定する。
【0049】
上記のように構成されたDC/DCコンバータでは、次に示す作用効果を得ることができる。
(1)出力電圧Voutと基準電圧Vrefとを比較器5で比較し、その比較器5の出力信号に基づいてスイッチ回路1を開閉制御するので、負荷応答速度を向上させることができる。
(2)誤差増幅器7の出力電圧Veに基づいて、出力電圧Voutを高精度に制御することができる。
(3)比較器5の出力信号cmを遅延生成回路11で遅延させてモノマルチ回路6に供給して、スイッチ回路1の導通するタイミングを遅延させることができる。従って、出力電圧Voutの平均値Vaveを基準電圧Vrefに一致するように制御することができる。
(4)遅延生成回路11で遅延させる遅延時間t1を、誤差増幅器7の出力電圧Veで制御するので、出力電圧Voutを高精度に制御することができる。
(第二の実施形態)
図6は、遅延生成回路の別の実施形態を示す。この実施形態は、生成する遅延時間の最大値を制限する機能を備えた遅延生成回路17を示し、ノードN1に供給する充電電流を制御する充電電流制御部18と、比較器13のマイナス側入力端子に供給する基準電圧Vrを生成するための基準電圧生成部19とを備えたものであり、その他の構成は第一の実施形態の遅延生成回路11と同様である。第一の実施形態の遅延生成回路11と同一構成部分は、同一符号を付して説明する。
【0050】
前記充電電流制御部18は、前記モノマルチ回路6のノードN2に充電電流を供給する回路と同一構成であり、入力電圧Vinが上昇すると容量C1に供給する充電電流を増大させ、入力電圧Vinが低下すると容量C1に供給する充電電流を減少させるように動作する。
【0051】
前記基準電圧生成部19では、前記入力電圧Vinと出力電圧Voutの電位差が抵抗R6,R7で分圧され、その分圧電圧が増幅器20のマイナス側入力端子に入力される。入力電圧Vinは、抵抗R8を介して前記増幅器20のプラス側入力端子に入力されるとともに、NチャネルMOSトランジスタT9のドレインに供給される。
【0052】
前記増幅器20の出力信号は前記トランジスタT9のゲートに入力され、同トランジスタT9のソースであるノードN4には、抵抗R9を介して出力電圧Voutが供給されるとともに、前記比較器13のマイナス側入力端子に接続される。
【0053】
このような基準電圧生成部19では、入力電圧Vinと出力電圧Voutとの電位差が大きくなると、トランジスタT9のドレイン電流が増大してノードN4の電位が上昇し、入力電圧Vinと出力電圧Voutとの電位差が小さくなると、トランジスタT9のドレイン電流が減少してノードN4の電位が低下する。そして、ノードN4の電位は、R6/(R6+R7)×(Vin−Vout)で表される電位となる。
【0054】
このように構成された遅延生成回路17では、遅延時間t1の最大値が(Vin−Vout)/Vin×Tsに制限される。
(第三の実施形態)
図7及び図8は、第三の実施形態を示す。この実施形態は、スイッチ回路1が不導通となる時間をモノマルチ回路6で制御するConstant OFF Time方式のDC/DCコンバータを示すものである。
【0055】
そして、比較器5とモノマルチ回路6との間に介在される遅延生成回路21と、モノマルチ回路6の出力信号Vmmをインバータ回路22で反転させてスイッチ回路1に入力する。また、出力電圧Voutが比較器5のプラス側入力端子に入力され、基準電圧Vrefが比較器5のマイナス側入力端子に入力される。そして、出力電圧Voutが基準電圧Vrefより高くなると、比較器5の出力信号がHレベルとなる。その他の構成は、前記第一の実施形態と同様である。
【0056】
図8に前記遅延生成回路21の具体的構成を示す。この遅延生成回路21は、容量C1に電流源23から定電流を供給し、比較器13のマイナス側入力端子に誤差増幅器7の出力電圧Veを入力したものである。その他の構成は、第一の実施形態の遅延生成回路21と同様である。
【0057】
このような遅延生成回路21では、前記比較器5の出力信号cmがHレベルとなると、トランジスタT4がオフされ、電流源23から供給される定電流で容量C1が充電される。そして、ノードN1の電位が誤差増幅器7の出力電圧Veより高くなると比較器13の出力信号cmdがHレベルとなる。
【0058】
すると、フリップフロップ回路12の出力信号XQがHレベルとなってトランジスタT4がオンされて容量C1の充電電荷が吸収され、ノードN1はほぼグランドGNDレベルとなる。次いで、比較器5の出力信号cmがHレベルとなると、上記のような動作が繰り返される。
【0059】
このような動作により、誤差増幅器7の出力電圧Veが上昇すると、比較器5の出力信号cmに対する比較器13の出力信号cmdの遅延時間が増大し、誤差増幅器7の出力電圧Veが低下すると、比較器5の出力信号cmに対する比較器13の出力信号cmdの遅延時間が減少する。
【0060】
そして、遅延生成回路21の出力信号cmdに基づいてモノマルチ回路6でパルス信号を生成し、その出力信号Vmmをインバータ回路22で反転してスイッチ回路1に供給することにより、モノマルチ回路6の出力信号Vmmでスイッチ回路1がオフされるタイミングを制御可能となる。
【0061】
このような構成により、スイッチ回路1がオフされるタイミングを制御して、第一の実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
上記実施形態は、以下に示す態様で実施してもよい。
・各実施形態の遅延生成回路は、容量の充電動作により遅延時間を生成する構成としたが、比較器の出力信号に基づいてカウンタ回路でクロック信号をカウントする等の手段で遅延時間をデジタル的に生成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…第一のスイッチ回路、2…出力電圧生成部(コイル)、3…出力電圧生成部(ダイオード)、4…出力電圧生成部(容量)、5…第一の比較器、6…パルス発生回路(モノマルチ回路)、7…誤差増幅器、11,17,21…遅延生成回路、13…第二の比較器、18…充電電流制御部、19…基準電圧生成部、Vout…出力電圧、Vin…入力電圧、Vref…基準電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力電圧と基準電圧とを比較する第一の比較器と、
前記第一の比較器の出力信号をトリガとして一定の時間幅のパルス信号を生成するパルス発生回路と、
前記パルス信号に基づいて開閉される第一のスイッチ回路と、
前記第一のスイッチ回路を介して供給される入力電圧に基づいて前記出力電圧を生成する出力電圧生成部と、
前記第一の比較器の出力信号を遅延させて出力する遅延生成回路と、
前記出力電圧と基準電圧との電位差に基づいて前記遅延生成回路の遅延時間を制御する誤差増幅器と
を備えたことを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記遅延生成回路は、
前記誤差増幅器の出力信号に基づいて充電電流を制御する充電電流制御部と、
前記第一の比較器の出力信号に基づいて、前記充電電流制御部の充電電流による容量の充電動作と、前記容量の放電動作を繰り返す遅延設定部と、
前記容量の充電電圧と基準電圧とを比較する第二の比較器と
を備えたことを特徴とする請求項1記載のDC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記遅延生成回路は、
前記充電電流に前記入力電圧に応じた電流を付加する充電電流制御部と、
前記入力電圧と出力電圧の電位差に基づいて、前記遅延設定部で設定される最大遅延時間を制限する基準電圧を生成して前記第二の比較器に出力する基準電圧生成部と
を備えたことを特徴とする請求項2記載のDC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記遅延設定部は、前記第一の比較器の出力信号がセット端子に入力され、前記第二の比較器の出力信号がリセット端子に入力されるフリップフロップ回路と、
前記フリップフロップ回路の出力信号で開閉され、導通時に前記容量の充電電荷を放電させる第二のスイッチ回路と
を備えたことを特徴とする請求項2又は3記載のDC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記パルス発生回路は、前記第一の比較器の出力信号の立ち下がりをトリガとして、前記第一のスイッチ回路を導通させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項6】
前記パルス発生回路は、前記第一の比較器の出力信号の立ち上がりをトリガとして、前記第一のスイッチ回路を不導通とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項7】
出力電圧と基準電圧とを比較し、その比較結果をトリガとして一定の時間幅のパルス信号を生成し、前記パルス信号に基づいてスイッチ回路を開閉し、前記スイッチ回路を介して供給される入力電圧に基づいて前記出力電圧を生成するDC/DCコンバータの制御方法において、
前記出力電圧と基準電圧との電位差に基づいて前記比較結果を遅延させた遅延信号で前記パルス信号を生成することを特徴とするDC/DCコンバータの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−4517(P2011−4517A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145541(P2009−145541)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】