説明

DFAと砂糖を含有するヨーグルト食品

【課題】
DFAをヨーグルトに添加しても、その特有の風味を損なうことなく、さらにヨーグルトの本来の酸味やコク味を改善したヨーグルト食品の提供。
【解決手段】
DFA(ダイフルクトースアンハイドライド)及び砂糖を含有するヨーグルト食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨーグルト食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイフルクト−スアンハイドライド(以下DFAという)は、フルクトース2分子が環状で結合した構造を有する。1930年代より天然成分として見出されており、カラメルやローストチコリなどの食品中にも微量に存在することが確認されている希少性の高い難消化性糖類である。工業的にも生産できるようになってきた。
【0003】
難消化の性質を示すDFAは、現在までに血糖値に影響を与えないことが確認されており、また、虫歯を誘発しないことが推察される。さらに、ヒト、実験動物においてカルシウムをはじめとするミネラルの吸収を促進することも確認されている。
DFAは、結晶性や溶解性に優れ、高純度の製品の製造が可能となり、近年工業的に生産されるようになって食品への応用研究が進められている。
DFAの甘味度はショ糖の約半分で、酸性条件下における熱安定性が高く、メイラード反応が起こりにくい。このため、着色を嫌う食品への利用に適している。その他、吸湿性、保存安定性など優れた加工特性をもち、今後、新しい糖質としての利用が期待されている。本発明者等は、DFAの応用展開を各種鋭意検討し、研究を続けている。
本発明は、このような背景の下、DFAを甘味料として、ヨーグルト等に添加して利用することを検討したが、DFAを単独でヨーグルトに添加すると、砂糖を添加した場合よりも味を損なうということが判明した。
【0004】
一方、DFAを低カロリーの甘味料として着目し利用する試みがなされている。この場合は、DFAの持つ特有の味質、――苦みが強い、後味に刺激味が残存、キシリトールやマンニトールよりも苦味、後味が強いなど――を改善する必要があるとされ、味質改良のためにDFAに対しメントールを加えたものや(例えば特許文献1)、ガラクトマンナン分解物との組み合わせによる方法(例えば特許文献2)が記載されている。これらは、いずれもDFAそのものに対しての味質改善に関する発明であり、ヨーグルトに添加した場合の味の改善に関する課題を解決するものではない。
【0005】
【特許文献1】特開平03−67560号公報
【特許文献2】特開2001−292722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、DFAをヨーグルトに添加しても、その特有の風味を損なうことなく、さらにヨーグルトの本来の酸味やコク味を改善したヨーグルト食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上述した問題点を解決するために鋭意研究を行った結果、ヨーグルトに対しDFAと砂糖を併用することで、ヨーグルト特有の風味を損なうことなくさらにヨーグルト本来の酸味やコク味が改善することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明の主な構成は次のとおりである。
(1)DFA(ダイフルクトースアンハイドライド)及び砂糖を含有することを特徴とするヨーグルト食品。
(2)DFA(ダイフルクトースアンハイドライド)がDFAIIIであることを特徴とする(1)記載のヨーグルト食品。
(3)砂糖1重量部に対しDFA(ダイフルクトースアンハイドライド)0.1〜5.0重量部であることを特徴とする(1)又は(2)のいずれかに記載のヨーグルト食品。
【発明の効果】
【0009】
DFAと砂糖を併用してヨーグルトに添加することによりヨーグルト本来の風味を損なうことなく、食べやすいヨーグルトを提供できる。特に特定の配合比によって、ヨーグルトの味を引き出すことができた。ヨーグルトにDFAを添加することによりカルシウムなどのミネラルの摂取増進が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で使用するヨーグルトは、牛などの乳に乳酸菌を加えて発酵させたものである。ハード、ソフト、ドリンクなどの形態と、香料や果汁を添加したものなどがある。DFAとグラニュー糖をヨーグルトに添加する時期は特に限定されるものではない。プレーンタイプのヨーグルトに添付して飲食者が好みに応じて添加することも可能である。
【0011】
本発明で使用する砂糖成分は、主に「上白糖」と「グラニュー糖」と「三温糖」の3つを指す。さらに、これらをカラメル化(着色)したものも含まれる。いずれも、ショ糖純度が97%以上であり、官能的な差異は少ない。
【0012】
DFA( ダイフルクトースアンハイドライド)は、フルクトース2分子が環状で結合した構造を有する。1930年代より天然成分として見出されており、カラメルやローストチコリなどの食品中にも微量に存在することが確認されている希少性の高い難消化性糖類である。工業的にも生産が可能となっている。二分子のフルクトースの結合様式の差異により、誘導体が5種類存在し、それぞれ、DFAI、DFAII、DFAIII、DFAIV、DFAV と称される。本発明では、主に、工業的生産の効率、精製してからの安定性などが優れているDFAIII(di−D−fructofuranose−1,2’:2,3’ dianhydride)を使用する。
【0013】
DFAを砂糖と併用することによって、ヨーグルトの旨味を引き出すことが実験の結果確認できた。その配合比は、砂糖1に対して0.1〜5.0が好ましい。より好ましくは0.17〜2.0である。
【0014】
ヨーグルトはゲル状、液状など通常の実施の形態をとることができる。また、好みに応じて量を調整できるようにDFAと砂糖を配合した粉末あるいは液体を小容器に充填して添付することもできる。
【実施例1】
【0015】
以下に実施例を挙げて、具体的に説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。
表に示す処方で、ヨーグルトを作製し酸味、こく味及び総合評価を行った。
グラニュー糖及びDFAとしてDFAIII(商品名「ツイントース(登録商標)」株式会社ファンケル販売)を用いた。
添加指標として、重量を一定にする配合(試験方法1)と、甘みを一定にする配合(試験方法2)を用いた。
【0016】
評価点数については、−2、−1、0、1、2の5段階評価で、各評価基準は以下のとおりである。
2:評価項目について非常に良い点がある
1:評価項目についてやや良い点がある
0:評価項目について特に良い点も悪い点も認められない
-1:評価項目についてやや悪い点がある
-2:評価項目について非常に悪い点がある
【0017】
試験方法1:添加量7%試験、評価員8名
無糖ヨーグルトに対して7%の添加量になるように配合比を調整した例を表1、表2、表3に示す。表1は酸味試験である。表2はこく味試験である。表3は、総合評価である。なお、「砂糖」はグラニュー糖を用いた。「ツイン」は、ツイントースの略称として表示(以下同様)した。なお、添加量7%は、ヨーグルトに添加する砂糖の量として一般的な数値である。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
【表3】

【0021】
本試験方法1では、次のことがいえる。
表1からは、酸味に着目すると、砂糖単独よりもツイントースと砂糖を併用した場合に良い評価が得られた。ツイントースのみでは改良されないことが判明した。
表2からは、こく味に着目すると、砂糖単独よりもツイントースと砂糖を併用した場合に良い評価が得られた。ツイントースのみでは改良されないことが判明した。
総合評価の表3からは、砂糖単独と同等以上の評価が得られたツイントースの添加量は、1%、2%、3.5%、5%であった。これは、砂糖1に対して、それぞれ、0.17、0.4,1.0、2.5に相当する。
特に、酸味、こく味、総合の各評価に共通してツイントースの添加量が、1%、2%、3.5%の場合に砂糖よりも非常に高い評価を得ていることが解る。
ツイントースのみでは、酸味、こく味、総合の各評価のいずれでも最低の評価であった。
【0022】
試験方法2:甘味度を砂糖の5%相当に揃える配合
DFAIIIの甘味度は砂糖の半分であるので、砂糖換算で7%の分量を添加するように量を調整した。表4乃至表6に示す。表4は酸味評価試験、表5はこく味評価試験、表6は総合評価である。
【0023】
【表4】

【0024】
【表5】

【0025】
【表6】

【0026】
本試験方法2から次のことがいえる。
酸味に着目した表4から、ツイントースを併用しても砂糖単独よりも上回る評価は得られず、ツイントースの比率が高くなると評価が下がっている。
こく味に着目した表5から、ツイントースを4%、7%添加した例が砂糖単独よりも評価が高く、ツイントースのみでは評価が一番低い結果となっている。
総合評価の表6から、砂糖単独よりもツイントースと砂糖を併用した場合にツイントースが4%あるいは7%において高い評価を得ている。ツイントース単独では一番低い評価である。
【0027】
試験方法1と試験方法2から次のことがいえる。
砂糖とツイントースを併用した場合に良好な結果が得られた。
特に、添加重量を一定にした場合に表3からは、ツイントースが1%、2%、3.5%、5%である場合において良好で、特に、1%、2%、3.5%において顕著な効果が認められる。
また、添加甘味度を一定にした場合に表6からは、ツイントースの添加量が4%、7%において優れた評価が得られている。
そして、ツイントース単独では良好な評価は得られていない。
これらは、砂糖単独に対して同等以上の良好な評価は、砂糖1に対して、0.17、0.4,1.0、2.5、0.8、2.0の比率になっている。また、総合評価の点で砂糖単独よりも劣る配合例は、表3からは砂糖1に対してツイントース6、表6からは砂糖1に対してツイントース5である。これらの結果を勘案すると、砂糖1に対してツイントースの配合比は0.1〜5.0が好ましく、より好ましくは0.17〜2.0であることが解る。
【実施例2】
【0028】
ツイントース2.0g、グラニュー糖5.0g、無糖ヨーグルト93.0gのヨーグルトを作成した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
DFA(ダイフルクトースアンハイドライド)及び砂糖を含有することを特徴とするヨーグルト食品。
【請求項2】
DFA(ダイフルクトースアンハイドライド)がDFAIIIであることを特徴とする請求項1記載のヨーグルト食品。
【請求項3】
砂糖1重量部に対しDFA(ダイフルクトースアンハイドライド)0.1〜5.0重量部であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のヨーグルト食品。

【公開番号】特開2006−6174(P2006−6174A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187001(P2004−187001)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】