説明

DNAのポリメラーゼ連鎖反応をモニタする装置

【課題】PCR装置でのDNA複製の定量モニタリング用の新規な光学器械を提供すること、およびダイナミックレンジが改善され、ダイナミックレンジを拡大する露光時間を自動で選択でき、ドリフトが自動で調整され、操作が容易であり、相対的に低価格で、異なる蛍光染料を収納するのに光学系の変更が簡単な上記機器を提供すること。
【解決手段】複数の離間した反応成分容器と、容器へ励起ビームを差し向けるようにした光源11と、光源と複数の容器との間に、励起ビーム光路に沿って配置された視野レンズ3と、視野レンズから発せられた発光ビームを受けるように配置された検出器10と、を備える機器であって、視野レンズも、複数の容器と検出器との間に、発光ビーム光路に沿って配置されていることを特徴とする。また、視野レンズ3がテレセントリック光学系を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学分析、特にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロセスでのDNAの定量モニタリングに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、多量の二本鎖デオキシリボ核酸(DNA)を増幅させたり増加させるプロセスである。PCR装置において、熱サイクルブロックは、DNAの「種」サンプルとともに開始されるより多くのDNAを生産する反応用の成分の懸濁液を含む小びんを保持するための1つ以上の窪みを有する。水性懸濁液の開始成分は、種サンプルに加えて、選択したDNAプライマー鎖、DNA元素、酵素および他の化学薬品を含む。ブロックの温度は、約60℃のPCR反応の低温伸長相と、約95℃の高温変性相との間で繰り返される。
尚、低温伸長相は、全てのDNA鎖がダブルの鎖に再結合される相であり、高温変性相では、DNAは、変性したり、または単一の鎖に分かれる。かかる温度プログラムは、本質的にサイクル毎にDNAを二倍にし、故に、少ない開始量から相当量のDNAを複製する方法を提供する。PCRプロセスは、例えば米国特許第4,683,202号に教示されている。
【0003】
定量測定は、PCRプロセスの間のDNA製造に対して行われ、開始時の量および生成された量を計測する。測定値および計算技術は、ラッセル・ヒグチ(Russel Higuchi)等による論文「運動PCR分析:DNA増幅反応のリアルタイム・モニタリング」(バイオ・テクノロジ第11巻、第1026〜1030頁(1993年9月))、カーク・M・リリエ(KirkM. Ririe)等の論文「ポリメラーゼ連鎖反応の間のDNA溶解曲線の分析による製品差別化」(解析生化学第245巻第154-160頁(1997))と同様に、米国特許第5,766,889号(アトウッド;Atwood)において教示されている。
【0004】
従来の測定技術は、微量(microvolume)蛍光光度計(蛍光分光光度計)と照射ランプ
を有する簡単な構成のビデオカメラとを使用した。かかる装置は、二本鎖DNAが存在する場合に蛍光を発する染料を使用する。これらの技術および機器は、特に、反応を定期的モニタリングするPCR装置には適していない。モニタリングおよび測定の精度をより大きくする需要が存在する。PCRデータのリアル・タイム収集および分析が可能な以前の機器は、必要なダイナミックレンジがない非常に基本的な装置であり、較正手段が組み込まれておらず、サンプルの穴キャップで動作ができず、あまり高価でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、PCR装置でのDNA複製の定量モニタリング用の新規な光学器械を提供することである。他の目的は、ダイナミックレンジが改善され、ダイナミックレンジを拡大する露光時間を自動で選択でき、ドリフトが自動で調整され、操作が容易であり、相対的に低価格で、異なる蛍光染料を収納するのに光学系の変更が簡単な上記機器を提供することである。
【0006】
前述及び他の目的は、少なくとも一部がDNAのポリメラーゼ連鎖反応複製を監視するために本明細書に開示される光学器械によって達成される。複製は、反応用の成分の懸濁液を含む少なくとも一つの小びんを保持する熱サイクルブロッ
クを含む反応装置で行われる。成分は、DNAの存在に比例して蛍光を発する蛍光染料を含む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(項目1) 反応用の成分の懸濁液を含んでいる少なくとも一つの小びんを保持する熱サイクルブロックを含む反応装置のDNAのポリメラーゼ連鎖反応複製をモニタするための光学機器であって、
前記成分はDNAの存在に比例して蛍光を発する蛍光性一次染料を含み、
一次の染料を発光周波数で蛍光発光させる一次の励起周波数を少なくとも有するソースビームを発する光源と、
励起周波数を有する励起ビームに作用するソースビームを受け入れるように配置された第1の手段と、
各懸濁液に励起ビームを焦点に結ばせるように配置されて、一次の染料が発光周波数を有する発光ビームを発する一次のフォーカス手段とを有し、発光ビームは各懸濁液のDNAの濃度を表す強度を有し、フォーカス手段は発光ビームを受け取ると共に通過させ、
発光周波数の発光ビームをより遠くに通過させるようにフォーカス手段からの発光ビームを受け入れるように配置された第2の手段と、
発光ビームを焦点に結ばせるための発光フォーカス手段と、
発光ビームが検出器に焦点に結ぶように、第2の手段および発光フォーカス手段からの発光ビームを受け入れるように配置された検出器を有し、検出器は発光ビームを表す一次のデータ信号を生成し、これによって各小びんのDNAの対応する濃度を生成し、
1次信号データとDNAの対応する濃度とを計算するための一次のデータ信号を受けとる処理手段とを有することを特徴とする光学機器。
(項目2) 第1の手段および第2の手段は、
励起ビーム及び各発光ビームに作用するソースビームを受け入れて、発光周波数の発光ビームを検出器まで通過させるビームスプリッタを有する項目1記載の機器。
(項目3) ビームスプリッタは、励起周波数を有する光を反射し、且つ発光周波数を有する光を通過するように配置される項目2記載の機器。
(項目4) ブロックは、複数の小びんを保持するように構成され、
フォーカス手段は、小びんを覆うように位置するように配置されて、発光ビームは各々が小瓶に対応した個々のビームから成る、対応する複数個の小びんレンズと、個々のビームを受け入れて処理手段が各小びんのDNAの濃度を計算するように対応するデータ信号を生成する光受容体のアレイからなる検出器とを含む項目1記載の機器。
(項目5) 小びんは、透明な小びんキャップを有し、機器は、更に、個々のビーム及び励起ビームの関連部分を通過させるように小びんレンズと一列に並べられる孔を有するプラテンを含み、プラテンは孔に接触しているキャップにはめ込まれる孔に対して配置され、さらに、小びんでのDNA複製を妨げずにキャップの下の凝結を十分に防ぐようにプラテンを加熱する加熱手段を含む項目4記載の機器。
(項目6) フォーカス手段は、小びんレンズと協動するように配置されて各懸濁液に励起ビームの中に焦点を結ばせるように作用するとともに個々のビームを第2の手段に通過させる視野レンズを含む項目4記載の機器。
(項目7) 視野レンズが、補正された非球面フレネルレンズである項目6記載の機器。(項目8) 発光フォーカス手段は、第2の手段および検出器の間に配置された検出レンズを含み、検出レンズは小びんレンズおよび視野レンズと協動して検
出器上に個々のビームの焦点を結ばせる項目6記載の機器。
(項目9) 励起ビームに反応して参照光を発する蛍光性の基準エミッタを更に含み、基準エミッタは検出器に参照ビームとして参照光の少なくとも一部の焦点を結ばせる発光フォーカス手段のために配置され、検出器はさらに参照ビームを受け入れて基準信号を生成し、処理手段は、基準データを計算するために基準信号で受け入れる手段と、DNAの複製反応にて選ばれたポイントに対する基準データで一次のデータを規格化する手段とを含み、故に、モニタリングの間機器ドリフトを補正する項目8記載の機器。
(項目10) 基準部材は、各々が励起ビームに反応して強度が異なる参照ビームを発する複数の基準エミッタと、基準エミッタは検出器に各参照ビームの焦点を結ばせる発光フォーカス手段のために配置され、検出器はさらに各参照ビームを受け入れて基準エミッタ毎に一組の基準信号を生成し、
処理手段は、基準信号を受け入れて相当する基準データの組を計算する手段と、所定の最大値未満の最大の信号データを有する選択された基準データを組から選択する手段とを含み、選択された基準データは一次のデータを規格化するために使用される項目9記載の機器。
(項目11) 第1の手段は更に励起フィルタを含み、第2の手段は更に発光フィルタを含み、第1の手段および第2の手段は、共にビームスプリッタを含み、励起フィルタは光源およびビームスプリッタの間に配置され、発光フィルタはビームスプリッタおよび検出器の間に配置され、励起フィルタは励起周波数を有する光を通過させるとともに発光周波数を有する光を実質的に遮断し、発光フィルタは発光周波数を有する光を通過させるとともに励起周波数を有する光を実質的に遮断し、励起フィルタおよびビームスプリッタは協動してソースビームを受け入れて励起ビームに作用し、発光フィルタおよびビームスプリッタは協動して発光ビームを受け入れて検出器まで発光周波数を有する発光ビームを通過させる項目1記載の機器。
(項目12) 光源、検出器、フォーカス手段、フィルタモジュールを含んでいる筐体を更に含み、ビームスプリッタ、励起フィルタ、発光フィルタはモジュール内に取り付けられて懸濁液に対して選択された一次の染料と関連し、モジュールは、選択された別の一次の染料と関連する別のモジュールと置き換えのために筐体から着脱可能である項目11記載の機器。
(項目13) 光源は、ハロゲンランプと、第1の手段から反対側にランプまでの近傍に配置された楕円反射器とを含み、ランプは楕円反射器から焦点距離に配置されて楕円反射器から反射した光でソースビームに作用し、楕円反射器は実質的に可視光を反射し且つ赤外線光を透過する項目1記載の機器。
(項目14) 励起ビームに応答して参照光を発する蛍光性基準エミッタを更に有し、基準エミッタは検出器への参照ビームとして参照光の少なくとも一部に焦点を結ばせる発光フォーカス手段のために配置され、検出器はさらに参照ビームを受け入れて基準信号を生成し、処理手段は、基準信号を受け入れて基準データを計算する手段と、DNAの反応複製の間に選ばれたポイントに対する基準データで一次のデータを規格化する手段とを有し、故にモニタリングの間機器ドリフトを補正する項目1記載の機器。
(項目15) 基準部材は、各々が励起ビームに応答して強度の異なる参照ビームを発する複数の基準エミッタを含み、基準エミッタは検出器の上へ各参照ビームの焦点を結ばせる発光フォーカス手段のために配置され、検出器はさらに各参照ビームを受け入れて基準エミッタ毎に一組の基準信号を生成し、処理手段は基準信号を受け入れて対応する基準データの組を計算する手段と、所定の最大値未満の最大信号データを有する選択された基準データを組から選択する手段とを有し、選択した基準データは一次のデータを規格化するために使用される項目14記載の機器。
(項目16) 基準部材は、プラスチック蛍光片と、参照ビームと励起ビームの一部とが中性の密度フィルタによって減衰されるように蛍光片に取り付けられた中性の密度フィルタとを含み、中性の密度フィルタは一連の密度を有して各々が参照ビームを発する複数の基準エミッタに作用する項目15記載の機器。
(項目17) 実質的に一定の温度に基準部材を維持する温度手段を更に含む項目16記載の機器。
(項目18) 温度手段は、蛍光片の下に取り付けられる加熱片と、加熱片を制御自在に加熱する手段を含む項目17記載の機器。
(項目19) 各々が励起ビームに応答して強度の異なる参照ビームを発する複数の蛍光性の基準エミッタを更に有し、基準エミッタは検出器の上へ各参照ビームの焦点を結ばせる発光フォーカス手段のために配置され、検出器はさらに各参照ビームを受け入れて基準エミッタ毎の一組の基準信号を生成し、処理手段は、基準信号を受け入れて基準データの対応する組を計算する手段と、所定の最大値未満の最大信号データを有する選択された基準データを組から選択する手段と、DNAの反応複製の間に選ばれたポイントに対して対応する選択基準データで一次のデータを規格化する手段とを有し、故に、モニタリングの間機器ドリフトを補正する項目1記載の機器。
(項目20) データ信号の組は複製シーケンスにて順次生成され、処理手段または検出器、またはその組合せは、各組のデータ信号に対して飽和制限を有し、検出器は、検出器用の処理手段に動作時に接続されて一組の信号の各々を生成するために予め選択された露光時間に亘って入力される発光ビームを積分し、処理手段は、飽和制限未満に対応するデータ信号を維持するために所定の動作範囲内に一次のデータを維持するように露光時間の調整を自動的に行う調節手段と、露光時間の調整に比例して一次のデータを補正する手段とを有する項目1記載の機器。
(項目21) 検出器は、関連する露光時間にて対応するデータ信号を生成するために発光ビームを受け入れる光受容体のアレイを有し、所定の動作範囲が光受容体毎に存在し、処理手段は、更に光受容体毎にデータ信号から光受容体データを計算する手段を有し、調節手段は、最大光受容体データを確認する手段と、最大光受容体データと所定の動作範囲との大小またはその範囲内にあるかどうかを判別する手段と、かかる判別に基づいて所定の動作範囲内に次の光受容体データを維持するために次の露光時間に作用するように露光時間をそれぞれ増減、又は維持する手段と、を有する項目20記載の機器。
(項目22) 各々が励起ビームに応答して強度の異なる参照ビームを発する複数の蛍光性の基準エミッタを更に有し、基準エミッタは検出器の上へ各参照ビームの焦点を結ばせる発光フォーカス手段のために配置され、検出器は各参照ビームを受け入れて基準エミッタ毎に一組の基準信号を生成し、処理手段は、基準信号を受け入れて基準データの対応する組を計算する手段と、所定の最大値未満の最大信号データを有する選択された基準データを組から選択する手段と、DNAの反応複製にて選ばれたポイントに対して対応する選択基準データで一次のデータを規格化する手段と、故にモニタリングの間機器ドリフトを補正する項目1記載の機器。
(項目23) 小びんの成分は、更にDNAからの影響を受けずに実質的に蛍光を発する蛍光性受動染料の標準濃度を含み、ソースビームは、第2の発光周波数で受動染料を蛍光発光させ、このことにより、第2の手段によって通過させて検出器の上へ焦点を結ばせ第2の発光ビームを発光させて対応する第2のデータ信号を生成する第2の励起周波数を含み、処理手段は、更に第2のデータ信号を受け入れて第2のデータを計算する手段と、一次のデータを規格化する染料のための手段とを有し、DNAの計算された濃度は、受動染料の標準濃度に規格化される項目20記載の機器。
(項目24) 第2の励起周波数は、一次の励起周波数と同一であり、受動染料は、第2のビームが発光周波数に実質的にあるように蛍光を発し、DNAが再び結合され且つ対応して一次の染料の発光が最大になるときに熱サイクルブロックのサイクリングの伸長相の間に一次のデータ信号が生成され、DNAが変性され且つ対応して一次の染料の発光が最小になるときに熱サイクルブロックのサイクリングの変性相の間に第2データ信号は生成され、故に、伸長相のためのデータ信号は実質的にDNA濃度を表わし、変性相のデータ信号は実質的に受動染料の標準濃度を表わす項目23記載の機器。
(項目25) 小びんの成分は、更にDNAからの影響を受けずに実質的に蛍光を発する蛍光性受動染料の標準濃度を含み、ソースビームは、第2の発光周波数で受動染料を蛍光発光させ、このことにより、第2の手段によって通過されて検出器の上へ焦点を結ばせた第2の発光ビームを発光させて対応する第2のデータ信号を生成する第2の励起周波数を含み、処理手段は、更に第2のデータ信号を受け入れて第2のデータを計算する手段と、一次のデータを規格化する染料のための手段とを有し、DNAの計算された濃度は、受動染料の標準濃度に規格化される項目1記載の機器。
(項目26) 第2の励起周波数は、一次の励起周波数と同一であり、受動染料は、第2のビームが発光周波数に実質的にあるように蛍光を発し、DNAが再結合され且つ対応して一次の染料の発光が最大になるときに熱サイクルブロックのサイクリングの伸長相の間に一次のデータ信号が生成され、DNAが変性され且つ対応して一次の染料の発光が最小になるときに熱サイクルブロックのサイクリングの変性相の間に第2データ信号は生成され、故に、伸長相のためのデータ信号は実質的にDNA濃度を表わし、変性相のデータ信号は実質的に受動染料の標準濃度を表わす項目25記載の機器。
(項目27) DNAを複製し且つそれをモニタリングするシステムであって、DNAのポリメラーゼ連鎖反応複製用の反応装置と、かかる複製の間のDNAの存在を監視する光学器械とから成り、装置は、反応用の成分の懸濁液を含む少なくとも一つの小びんを保持する熱サイクルブロックを有し、成分はDNAの存在に比例して蛍光を発する蛍光染料を含み、さらにポリメラーゼ連鎖反応を行うための熱サイクリングブロックおよび懸濁液用に手段を有し、機器は、
染料を発光周波数で蛍光発光させる励起周波数を少なくとも有するソースビームを発する光源と、
ソースビームを受け入れて励起周波数を有する励起ビームに作用し且つ励起ビームをフォーカス手段に通過させるように配置された第1の手段とを有し、フォーカス手段は、染料が発光周波数を有する発光ビームを発するように懸濁液毎に励起ビームの焦点を結ばせるとともに、発光ビームを第2の手段に通過させ、第2の手段は発光ビームを検出器に更に通過させるものであり、検出器は、発光ビームを表わすデータ信号さらにはDNAの濃度を生成するために第2の手段からの発光ビームを受け入れるように配置され、
データ信号を受け入れてDNAの濃度を計算し表示する処理手段を有することを特徴とするシステム。
(項目28) 第1の手段および第2の手段は、ともに、ソースビームを受け入れて励起ビームに作用し、且つ発光ビームを受け入れて発光ビームを検出器に通過させるビームスプリッタを有する項目27記載のシステム。
(項目29) 反応用の成分の懸濁液を含んでいる少なくとも一つの小びんを保持する熱サイクルブロックを含む反応装置のDNAのポリメラーゼ連鎖反応複製をモニタするための光学機器用のフィルタモジュールであって、成分はDNAの存在に比例して蛍光を発する蛍光性一次染料を含み、機器は、染料を発光周波数で蛍光発光させる励起周波数を少なくとも有するソースビームを発するように筐体に配置される光源と、染料が発光周波数を有する発光ビームを発するように
各懸濁液に励起周波数を有する励起ビームの焦点を結ばせるように筐体に配置されるフォーカス手段と、発光ビームを受け入れるように筐体に配置されて発光ビームを表すデータ信号とこれに基づきDNAの濃度とを生成する検出器と、データ信号を受け入れてDNAの濃度を計算して表示する処理手段と、を有し、
モジュールは、
サポートフレームを有し、機器は機器へとサポートフレームを受け入れ、
サポートフレームに取り付けられるビームスプリッタフレームを有し、モジュールが差し込まれた状態で、ビームスプリッタはソースビームを受け入れて励起ビームに作用し、発光ビームを受け入れて発光ビームを検出器に通過させ、
光励起周波数を有する光を通過させ且つ実質的に発光周波数を有する光を遮断する励起フィルタを有し、励起フィルタはサポートフレームの内部に取り付けられ、モジュールは挿入された状態で、励起フィルタは、光源およびビームスプリッタの間に配置され、
発光周波数を有する光を通過し且つ実質的に励起周波数を有する光を遮断する発光フィルタを有し、発光フィルタはサポートフレーム内に取り付けられ、モジュールが差し込まれた状態で、発光フィルタは、検出器およびビームスプリッタの間に配置され、
ビームスプリッタ、励起フィルタ、発光フィルタ、従ってモジュールは、懸濁液用に選択された染料と関連し、モジュールは選択された別の染料と関連する別のモジュールに置き換えるために筐体から着脱可能であることを特徴とするフィルタモジュール。
(項目30) ビームスプリッタは、励起周波数を有する光を反射し、発光周波数を有する光を透過させる項目29記載のモジュール。
【0008】
機器は、光源、光ビームを導く手段、光検出器、データ信号を処理する手段を含む。光源は、染料が発光周波数で蛍光を発光せしめられるような一次の励起周波数の少なくとも1つを有するソースビームを発する。第1の手段は、ソースビームを受け入れて励起周波数を有する励起ビームに作用するように配置される。
第1のフォーカス手段は、一次の染料が発光周波数と各懸濁液のDNAの濃度を表す強度とを有する発光ビームを発するように、各懸濁液の中に励起ビームの焦点を結ばせるように配置されている。フォーカス手段は、発光ビームを受け入れて通過させる。第2の手段は、検出器の上へ発光ビームの焦点を結ばせる別のフォーカス手段に対して発光周波数の発光ビームを通過させるために、フォーカス手段から発光ビームを受け入れるように配置される。検出器は、発光ビームを表す一次のデータ信号と、これによる各小びんのDNAの対応する濃度とを生成する。プロセッサは、一次のデータ信号を受け入れてDNAの濃度を計算して表示する。
【0009】
好ましい実施例において、第1の手段および第2の手段は、共に、ソースビームを受け入れて励起ビームに作用するとともに、発光ビームを受け入れて検出器に発光ビームを通過させるビームスプリッタを含む。ブロックは、複数の小びんを保持するように構成され、フォーカス手段は、発光ビームが小びん毎に対応したビームから成るように、各々が小びんの上に配置される対応する複数の小びんレンズを含む。フォーカス手段は、更に、小びんレンズと協動するように配置されて各懸濁液への励起ビームの集束に作用すると共に、個々のビームを第2手段(ビームスプリッタ)に通過させるフレネルレンズ等の視野レンズからなる。検出器は、好ましくは、処理手段が小びん毎のDNAの濃度を計算するように、個々のビームを受け入れて対応するデータ信号を生成する光レセプタのアレイを有する。
【0010】
機器は、また、光源とビームスプリッタと間の励起フィルタと、ビームスプリッタと検出器との間の発光フィルタとを含むべきである。スプリッタおよびフィルタは、懸濁液の選択された一次の染料と関連する。更なる実施例において、フィルタモジュールは、スプリッタ及びフィルタを含む。モジュールは、選択された別の一次の染料と関連する別のモジュールに置き換えるために筐体から着脱可能である。
【0011】
参照用に、蛍光基準部材は、励起ビームに応答して基準光を発する。基準は、第1の手段からの励起ビームの一部を受け入れるように配置される。基準光の一部は、DNAの濃度を計算する際に利用される基準信号を生成するために、検出器に参照ビームとして第2の手段により通過される。好ましくは、基準部材は、複数の基準エミッタを含む。基準エミッタの各々は、各励起ビームに応答して強度の異なる参照ビームを発し、飽和制限未満である所定最大値未満である最大データ信号を有する基準セットのプロセッサによる選択を可能にしている。
検出器は、検出器のために動作時に処理手段に接続され、データ信号の各組を生成するために予め選択された露出時間に亘って入力される発光ビームを積分する。そして、処理手段または検出器、またはそれの組合せは、データ信号に対して飽和制限を有する。本発明の更なる態様において、処理手段は、飽和制限未満に対応するデータ信号を維持するために所定の動作範囲内に一次のデータを維持する露出時間を自動で調整する調節手段と、露出時間の調整に比例して一次のデータを補正する手段とからなる。好ましくは、プロセッサは、光レセプタ毎にデータ信号から光レセプタデータを計算する。そして、調節手段は、最大光レセプタデータを確認し、最大光レセプタデータの所定の動作範囲に対する大小、または動作範囲にあるかどうかを判別し、かかる判別に基づいて、次の光レセプタデータを所定の動作範囲内に維持するために次の露出時間に作用するように、露出時間を増減させたり保持する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)反応装置と関連した光学器械に対する光列の概略図である。
【図2】横のパネルが除去された、図1の機器の斜視図である。
【図3】図2に示すモジュールの分解斜視図である。
【図4】図1の光列の基準部材の斜視図である。
【図5】図1の機器によって得られたデータからDNA濃度を計算するフローチャートである。
【図6】図1の機器の動作でのデータ収集のため、且つ図5のフローチャートでの計算のための露出時間を判別するフローチャートである。
【図7】PCR装置を有する図1の機器の動作からの蛍光−サイクルの伸長相データのグラフである。
【図8】図5のフローチャートでの計算用の第2のデータを計算するフローチャートである。
【図9】図4の基準部材の複数の基準エミッタセグメント間の比を計算するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(詳細な説明) 本発明の光学器械Aは、ポリメラーゼ連鎖反応(以下、PCRと略す)によってDNAの選択された部分を複製する(増幅する)反応装置Bと使用されたり、またはかかる装置に組み込まれる。この反応装置は、従来と同じであり、複製の間、リアル・タイムでDNAの量をモニタする機器からの妨害の無い状態で動作する必要がある。適切な反応装置は、米国特許第5,475,610号、5,656,493号に記載されている。
【0014】
反応装置(図1)は、従来と同じであり、2つの主要部品、すなわち、反応用の成分の懸濁液を含む少なくとも1つの小びん1bを保持する窪み部1aを有する熱サイクルブロック1と、所定温度プログラムによってブロックの温度を繰り返し変更する熱サイクルコントローラ1cとを有する。サンプル材料の水性懸濁液の開始成分は、DNAの「種」サンプルと、選択されたDNAプライマ鎖と、DNA元素と、酵素と、他の化学薬品とを含む。ブロックは、多くはアルミニウムであり、電気手段や液体及び気体冷却剤、またはこれらの組合せ、さらには繰り返しを行う他の手段によって、上記サイクルによって加熱され冷却される。故に、小びんの懸濁液は、ポリメラーゼ連鎖反応を生じさせるために2つの温度相の間を反復する。これらの相は、約60℃でのPCR反応の低温伸長相と、約95℃での高温変性相であり、低温伸長相では、全てのDNA鎖が二重鎖に再結合され、高温変性相では、DNAは変性したり、または単一鎖に分割される。
【0015】
現在の目的のために、サンプルは、二本鎖DNAが存在する場合にこれに比例してより強力に蛍光を発する蛍光染料も含む。この蛍光染料は二本鎖DNAに結合するものであり、一例は、二本鎖DNAが存在する場合に蛍光を発するSYBRグリーン染料であり、モレキュラ・プローブ社(オレゴン州ユージン)から入手可能である。「プローブ」とラベルが貼られた別のタイプの蛍光染料は、選択されたDNA鎖部分に対して適したシーケンスを有するDNA状構造であり、この蛍光染料を使用してもよい。同様の特性を有する他の染料を使用することもできる。本明細書及び請求項において使用されるように、「マーカー染料(markerdye)」は、二本鎖DNAに結合するタイプを指し、またはプローブタイプのものを指し、またはDNAの量に比例して蛍光を発するためにDNAに取り付く任意のタイプの染料を指す。サンプルは、さらに、後述するように基準として機能する受動染料(passivedye:DNAとは無関係)を含むことがある。正確な励起周波数を有する光の入射の下に、通常、染料は、蛍光を発して、励起光の周波数未満の発光周波数で光を発する。
【0016】
小びんは、複数の小びんを含むプラスチック製の単位トレイにおいて円錐形に形成され、例えば8×12のアレイで96個存在する。トレイは、好ましくは、準備のためのブロックから着脱可能である。小びん用のキャップ1dを有するプラスチック製の単位カバーは、汚染や蒸発損失を防ぐために、小びんに載置されたり取り付けられる。サンプル表面上の油等の他の手段が、この機能のために使用することができる。この場合、ケースキャップは不要である。使用する場合、キャップは、機器に対して使用される光を透過し、さらに、上方へ凸状に突出しても良い。
【0017】
監視機器は、小びんを含むブロックを覆うように取り付けられる。機器は、小びんへのアクセスのために着脱自在であったり、または離れるように揺動する。
機器の底部にて、プラテン2が小びんのキャップに対して載置され、または、キャップが無い場合には、直接小びんに対して載置される。プラテンは、アルミニウム製が都合良く、小びんと直線的に配列される孔2aのアレイを有する。尚、各孔は、直径は小びん上部の直径とほぼ同じである。キャップがある場合、プラテンは、小びんでのDNA複製を妨げずにキャップの下での凝結をほぼ完全に防ぐために、フィルムヒータや、プラテンを加熱する他の手段により維持される温度を有すべきである。これによって、例えば、プラテンは、熱サイクルが達するサンプルの最高温度よりも若干高い温度に保持される。
【0018】
各小びんの上方に、レンズ2bが配置されてその焦点は小びんの懸濁液に集束される。これらのレンズより上方に、視野レンズ3が存在し、テレセントリック光学系を形成する。好ましくは、視野レンズは最小歪に対して較正された非球面フレネルレンズである。照射および描画の不均一性を補正する中立の密度パターン(図示せず)を、例えばイメージフィールドの中央での光を減衰させるために、視野レンズに接してまたは近接して装着させても良い。折りたたみ式の光鏡は、必要に応じて包装を容易にするために45゜に取り付けられる。これは、省略することができ、または、折りたたみ式の光学部品を使用しても良い。また、視野レンズおよび/または小びんレンズは、それぞれ、必要な集光を実施する2つ以上レンズで構成しても良い。尚、本発明において「レンズ」はかかる多様性を含むものである。
【0019】
光のソースビーム20用の光源11が設けられ、例えば100ワットのハロゲンランプからなる。好ましくは、これは、所望領域に亘って比較的一様なパターンを生ずる楕円反射器11aの焦点に取り付けられる。また、好ましくは、反射
器は、二色性でなければならず、すなわち、他の光部品から、そして、機器の過熱から赤外線を制限するために、実質的に可視光を反射するとともに赤外線を透過する。これは、光路の熱反射ミラー13によって更に促進される。機械的または電子シャッタ12によって、暗データ(darkdata)を得るために光源を封鎖できる。このタイプの光源は、重要で
なく、投影ランプやレーザなどの他のタイプの光源を適切な光元素とともに使用しても良い。
【0020】
ビームスプリッタ6が、配置されてソースビーム20を受光する。本実施例において、これは、45゜に配置されて、マーカー染料を発光周波数での蛍光を発光せしめ、発光周波数を有する光を通過させる励起周波数を有する光を反射するような二色反射器である。従来のかかる光装置の多くは、光干渉層を使用して特定周波数に応答している。
【0021】
ビームスプリッタが配置されて、折りたたみ式の鏡にソースビームを反射する。ソースビームは、スプリッタから、励起周波数を有する励起ビーム22として実質的に反射される。励起ビームは、視野レンズ3によって集束され、次に分離ビーム24として小びん(窪み)レンズ2bによって小びんの中心に焦点に結ぶ。故に、これによってマーカー染料は発光周波数で光を発する。この光は、独立したビーム26の形を採る発光ビームとして上方へ向けられる。ビームは、折りたたみ式の鏡5から反射されてビームスプリッタ6に入る。ビームスプリッタ6によって、発光ビームは検出器10に到達する。
【0022】
小びんレンズ2bおよび視野レンズ3は、ともに励起ビームおよび発光ビームを集束させる一次フォーカス手段を構成する。他の実施例において、視野レンズを省略しても良く、この場合、フォーカス手段は小びんレンズ2bだけから成る。または、小びんレンズを省略することができる。この場合、フォーカス手段は、検出器上に個々の発光ビームの焦点に結ばせる視野レンズの位置に配置された対物レンズだけから成る。
【0023】
また、代わりに、ビームスプリッタ6は、ランプおよび検出器を適切に配置し直すことによって、励起ビームとしてソースビームを通過させて発光ビームを反射させても良い。さらに、より垂直な反射および透過のために、ビームスプリッタの45゜以外の角度配置が適切な場合は、この配置を使用できる。より広義には、ビームスプリッタは、励起ビームおよび発光ビーム用の光路を分割し、これを成し遂げる他の構成がであってもよい。検出器に達するソース光を最小にすることが望ましい。そして、二色性の装置援助はそれを達成する。非二色性のビームスプリッタは使用できるが、かなりのソース光が検出器に達したり、または、間違った方向に反射や伝送されたり、または喪失されるので効率的でない。
【0024】
更にソース光をフィルタ処理するために、励起フィルタ7が、光源11とビームスプリッタ6との間に配置される。これは、励起周波数を有する光を透過し、発光周波数を有する光をかなり遮断する。同様に、発光フィルタ8が、ビームスプリッタと検出器との間に配置され、本実施例では、検出器の前でスプリッタと検出レンズ9との間に配置される。このフィルタは、発光周波数を有する光を透過し、励起周波数を有する光をかなり遮断する。検出レンズが好ましいが、フォーカシング反射器を、検出レンズに置換しても良い。かかる発光フォーカス手段(検出レンズや反射器)は、ビームスプリッタの前後や発光フィルタのいずれか一方の側部に配置でき(図示の例はビームスプリッタの前方に配置)、または、一次フォーカス手段に組み込むこともできる。例えば、視野レンズは、検出器に発光ビームを集束させる対物レンズでもよい。
【0025】
適切なフィルタは、光干渉フィルムを使用する周知の光帯域フィルタであり、各々が、蛍光染料の励起またはその発光の何れにも最適な周波数の帯域を有する。各フィルタは、反射光や迷光からの「ゴースト」像を妨ぐために、他の周波数(非帯域)に対して非常に高い減衰を有しなければならない。例えばSYBRグリーン染料に対して、励起フィルタ帯域は、波長485nmの周辺を中心とすべきであり、発光フィルタ帯域は、波長555nmの周辺を中心にしなければならない。ビームスプリッタは、これらの二つの間、例えば約510nmで反射から透過へ変化すべきであり、故に、この波長未満の光が反射されて、より高い波長の光が通過される。
【0026】
より広義には、励起フィルタおよびビームスプリッタは、共に、励起周波数を有する励起ビームに作用するソースビームの各々となるように配置される第1の手段を構成し、発光フィルタおよびビームスプリッタは、共に、発光周波数で発光ビームで検出器を通過させるようにフォーカス手段からの発光ビームの各々となるように配置される第2の手段を構成する。また、上記したように、ビームスプリッタは、代わりに励起ビームとしてのソースビームを通過させて、検出器に発光ビームを反射しても良い。別の実施例においては、フィルタを省略しても良い、また、第1の手段は、ソースビームからの励起ビームに作用するビームスプリッタによって実現され、第2の手段は、検出器に発光ビームを通過させるビームスプリッタにより実現される。
【0027】
別の装置において、ビームスプリッタは省略でき、第1の手段は、励起周波数用の励起フィルタを構成し、第2の手段は、発光周波数用の発光フィルタを構成し、光源および検出器は並列に配置され、故に、励起および発光ビームは、角度に関して、僅かに異なった光路上にある。光源および検出器は、実際には1つ以上の折りたたみ式の鏡とともに並列に配置される必要はない。このように、ここに記載されている効果を成し遂げるための任意の構成は均等物とみなすべきである。しかし、ビームスプリッタの使用が好まれるので、視野レンズを通過する励起および発光ビームは、同じ光路を有する。
【0028】
ビームスプリッタ6、励起フィルタ7、発光フィルタ8は、懸濁液用の選択された一次染料と関連するモジュール30(図2)に取り付けられているのが、好ましい。モジュールは、選択された別の一次染料に関連した別のビームスプリッタ及びフィルタを含む別のモジュールに置き換えるために、機器Aの筐体32から着脱可能である。機器は、ランプサブ筐体33とカメラサブ筐体35とを含む。
【0029】
実施例において(図3)、各モジュールは、単一のネジ38で筐体に取り付け可能であるフランジ36を有する装着ブロック34を含む。ビームスプリッタ6は、フレーム40およびネジ42でブロックの内部で45゜に保持される。発光フィルタ8は、ブロックの中に(例えば接着剤で)取り付けられる。励起フィルタ7は、同様に、ネジ46によりブロックに保持される装着部材44へと取り付けられる。モジュールが所定位置に配置されると、機器は、ネジで固定される側板47によって閉じられる。位置決めピン(図示せず)は、再現性のあるアラインメントを保証する。置換モジュールは、同じ装着ブロックおよび関連部品を有し、ビームスプリッタおよびフィルタが置換される。
【0030】
検出レンズ9(図1)は、小びんレンズ2bおよび視野レンズ3と共に、検出器10上に個々のビームを焦点に結ばせる。レンズは、開口が大きく、歪が低く
、口径食が最小でなければならない。
【0031】
検出器は、好ましくはアレイ検出器であり、例えば電荷注入装置(CID)であり、好ましくは電荷結合装置(CCD)である。CCD検出器、検出レンズ、検出器に関連するエレクトロニクスを含む従来のビデオカメラとしては、751の活性水平画素および242の活性鉛直画素(ノンインタレース)を有するエレクトリム(Electrim)モデル1000L等が適切である。このカメラは、コンピュータのISAバスに直接インターフェースする回路基板を含む。フレーム採集(framegrabber)回路は、このカメラで必要でない。本質的に、コンピュータでの後処理用に画像を採ったりフレームを静止させることができる任意のデジタル画像処理装置やサブシステムを使用したり、採用できる。
【0032】
各々を別々にモニタリングすべき複数の小びんが存在する場合は、多数の光レセプタ(ピクセル)を有する検出器78が好ましい。または、スキャン装置が、例えば折りたたみ式の鏡を走査し且つ検出器に小さい開口を使用することによって、単一の光検出器と共に使用される。また、小びんが唯一の場合はフォトマルチプライヤ等の簡単な装置を使用できる。CCDは、選択された積分期間に対して光を受け取り、アナログ/デジタル変換の後、この期間にて蓄積されたレベルのデジタル信号データを読み出す。積分は、電子シャッタによって効果的に制御され、フレーム転送回路が望ましい。信号データは、各ピクセルに対して生成され、小びんから発せられた光の個々のビームを受け取っているそれらを含む。
【0033】
機器は、好ましくは、励起ビームに応答して参照光を発する蛍光基準部材4を含む。基準部材は、複数(例えば6)の基準エミッタで形成され、その各々は、各励起ビームに応答して強度が異なる参照ビームを発する。これらの強度範囲は、小びんのマーカー染料から予想される強度範囲を近似しなければならない。例えば、各セグメントは、輝度において2.5分の1に選別される。基準部材は、ビームスプリッタから励起ビームの一部を受け取るように配置される。良い位置は、視野レンズと隣接し、その結果、部材と関連する光路は、小びんのものを近似する。大部分の参照光は、参照ビームとしてビームスプリッタを通過して検出器に戻る。検出画素は、発光ビームを受け取り、DNAの濃度を計算するときにデータ信号とともに利用される基準信号を生成する。
【0034】
基準部材4(図4)は、プラスチック蛍光片4aと、蛍光片に亘って取り付けられている中性密度フィルタ4bとを含み、場合によっては間に空隙4hを有する。故に、励起ビームおよび参照ビームの一部が中性密度フィルタによって減衰される。中性密度フィルタは、各々が強度の異なる参照ビームを発する複数の基準エミッタ(セグメント)に作用する一連の密度4cを有する。加熱を滑らかにする加熱片4dおよびアルミニウム片4gが、トラフ4eにて底部に取り付けられ、蛍光片は、加熱片に跨ってアルミニウム片に取り付けられている。熱損失を防ぐために、このアセンブリは、好ましくは透明なプレキシガラス(plexiglass)窓(変化する密度フィルタを表示するために図示せず)によってカバーされている。一定の蛍光の維持を支援するために、加熱片は、サイクルブロックの熱サイクルや他の影響から蛍光片を一定の温度に維持するために制御される。これは、大抵の蛍光材料が温度に逆比例して蛍光が変化するので、実施される。
【0035】
コンピュータプロセッサ14(図1)は、従来のPCでよい。コンピュータプログラミングは、例えば「C」のように周知である。本発明に対するプログラミングの適用は、直ちに認識されて当業者により達成される。プロセッサは、周辺の光を無視して、選択的に小びんや基準エミッタからの光を受け取った画素から
の信号を処理する。したがって、プログラミングは、例えば本譲受人の1998年7月14日出願の係属中の仮特許出願第60/092,785号に開示されるように、対象の画素領域(ROI)を定義するマスキングを含むことが望ましい。光学系の機械的アラインメントは、対象のプログラム領域へのビームの集束を支援するのに必要となることがある。アナログデータ信号は、アナログ/デジタル(A/D)装置15を介してプロセッサに供給される。尚、アナログ/デジタル(A/D)装置15は、本発明においては、プロセッサの一部であると考えられる。飽和レベルは、検出器またはA/Dにより差し止められ、または、好ましくは、CCDダイナミックレンジは、A/Dダイナミックレンジに対応している。適切な範囲は、8ビットの精度(256レベル)であり、CCD増幅器のオフセットは、CCDの暗信号出力(シャッタ12は閉鎖)がA/D範囲内にくるように設定される。プロセッサは、露光時間を選択して、出力がダイナミックレンジ内に維持されるように、検出器に指示する。
【0036】
典型的な動作において、大抵は40〜50の熱サイクルのDNA反応複製シーケンスの各サイクルに対して、複数の小びん(例えば96の対象領域)から、さらに、基準エミッタセグメントから、蛍光データが採られる。2つのデータセットが、約60゜でのPCR反応の伸長相の間の各熱サイクルから採られる(図5)。PCR反応の伸長相は、DNA鎖の全てがダブルの鎖に再び結合する相である。一方のセットは、通常の第一データ50(後述する基準データを伴う)であり、他方は、機械シャッタが閉じた状態での暗信号データ51である。両方のデジタルデータセット50、51は、検出器からのそれぞれのアナログデータ信号48、49からA/D15によって変換される。暗信号は、55で正常値から減算され、暗較正データ57を生ずる。簡単なプロシージャにおいて、減算はピクセル毎で行われる。または、対象領域毎の全暗信号は、対応する全蛍光データから減算される。別の実施例において、有効なダイナミックレンジを増やすために、各露光期間の間に複数の露光、例えば4〜8回の露光を集めることは、有効である。これは、複数回の通常の露光と各画素毎の暗データを集め、それぞれの暗画像を通常のデータから減算し、次に、減算したデータを一緒に加算して第一データを生ずることによって行われる。これは、画像データの統計的正当性を改善して、その有効なダイナミックレンジを増やす。
【0037】
同時に、データは、例えば合計102の対象領域に対して96の小びんを備える6つのセグメントを有する基準片から採られる。好ましくは、処理手段は、露光時間の自動調整を行い、DNA複製シーケンスの間に飽和制限未満である所定動作範囲、例えば飽和の35%〜70%の範囲内にデータ信号を維持する。DNA濃度の計算は、露光時間の調整に比例した補正を含む(図6)。各露光52、53からの信号データ50、51は、対象領域(ROI)内の画素数を合計することによって、予め決められた露光時間54の間得られる。
【0038】
時間調整を行うために、3つの最大読取り隣接画素等の1つ以上の最大画素読取りからのデータである最大信号データ56は、58で対応するデータ信号50から捜す。比較62から、最大信号のデータが選択された動作範囲60に対して小さいか、またはその範囲内にあるか、または大きいかが判別される。かかる判別に基づいて、64で露光時間が調整され、すなわち増加されたり、保持されたり、または減少されて、66で次の露光時間を得る。例えば、68で1024ms等の初期時間や一定の標準時間となり得る基準時間(図5)も選択される。暗較正データ57は、69で時間補正されて、基準時間に対する実際の露光時間の比によって割ることによって、71で補正された第一データを生ずる。最初の複数のサイクルが範囲の外にあってもよく、その後、有効な蛍光曲線が得られるはずである(図7)。
【0039】
基準エミッタに対し、基準片4(図1および図4)からの光を受け取る画素から、73で基準データ信号が生成されて、A/D15によって基準データ72に変換される。74で特定の基準セグメント4c(図4)から選択された基準データは、77での所定の最大値未満である最大信号強度を有するデータとして76で選択される。この所定の最大値77は、飽和制限未満、例えば70%である。
75で次の調光(dimmer)セグメントも選択され、選択された基準データ74は、そのセグメントからデータを含む。暗データ51は、78で基準データ74から減算され、暗補正データ80は、84で露光時間54に対して調整されて、調整された基準データを82で生ずる。
【0040】
データ82は、最大セグメントに対して暗補正データ82’と、次の調光セグメントのための暗補正データ82”とを含む(図9)。89で各セグメント間の輝きの比は、計算され、データ収集のコースを通じて集められる。データが集められるたびに、最大セグメントと次の調光セグメント間の比が算出される。異なる最適のセグメントが後続するデータ収集に対して選択されるので、85で比の表が組立てられる。または、これらの比は、前もって収集されて算出しても良い。
【0041】
この調整された基準データ82’(図5のデータ82から)は、85で比によって戻るように作業することによって、DNA複製(PCR)シーケンスの初期または他の選択された以前のサイクルからの基準データ90に対する比として、86でリアルタイムで規格化される規格化基準データを88で計算するために使用される。規格化基準データは、92の規格化計算での補正第1データ71に対して利用されて、第1のデータを規格化基準データによって割ることによって、ドリフト規格化第1データ94を提供する。これは、モニタ中の機器ドリフトを補正する。DNAの濃度96は、記憶された較正因子99から98で計算され、標準の周知のDNA濃度を処理することによって判別されて、成長曲線の開始サイクルの開始濃度に関係する線の傾斜及び交点を判別する(図7)。尚、上記は、前述のヒグチの論文および米国特許第5,766,889号に教示されている(更なる規格化118、120および基線補正122―130は後述する)。
【0042】
典型的なPCRシーケンスのための伸長相データは、各PCRサイクルに対してプロットされて図7のようになる。必要に応じて、データは、同じ染料で且つ化学的に防止されたDNA増幅でサンプルを含むサンプル瓶に対して規格化することによって、染料漂白または他の化学作用に対して較正される。
【0043】
サンプルは、さらに、DNA結合染料と同じ波長帯域の若干の蛍光を有する「受動」基準染料として機能する1つ以上のタイプの染料分子を含むことがある。
この基準染料は、例えば、ローダミンおよびフルオレセイン染料誘導体を含む核酸シーケンスから形成される。適切な基準は、パーキン・エルマ・アプライド・バイオシステムのロックス(Rox)染料である。これらの受動染料分子は、PCR反応に参加しない。故に、その蛍光は実質的にDNAからの影響の無いものであって、反応の間一定に維持される。この蛍光は、好ましくは、少なくとも一つの小びん、好ましくは小びん毎の成分に含まれる受動染料の標準濃度を有するDNA結合染料からの蛍光を規格化するために使用することができる。
【0044】
ソースビームは、受動染料を第2の周波数で蛍光を生ぜしむる第2の励起周波数を含み、これにより、第2のビームを検出器に向かうように発して対応する第
2のデータ信号を生成する。プロセッサは、基準濃度を表す第2のデータを計算するために第2のデータ信号を受け入れる。これらのデータは、第1のデータを規格化するために使用され、故に、DNAの濃度が、ドリフト用の規格化とともに、露光時間の調整に比例してDNAの濃度の計算を補正した後に受動染料の基準濃度に規格化される。本実施例において、第2の励起周波数は、第1の励起周波数と同一であり、受動染料は、発光第2のビームが実質的に発光周波数になるように、蛍光を発する。第1のデータ信号は、DNAが再び結合され、且つ、対応して第1の染料発光が最大になるときに、熱サイクルブロックのサイクリングの各伸長相の間生成される。第2のデータ信号は、DNAが変性し、且つ、対応して第1の染料発光が最小になるときに、熱サイクルブロックのサイクリングの各変性相の間に生成される。このように、第1のデータ信号は、DNAの濃度を実質的に表し、第2の相のデータ信号は、受動染料の基準濃度を実質的に表す。
【0045】
暗データ及び通常データは、小びんサンプルおよび基準片用にとられ、暗データは通常の蛍光データから引かれる。この暗データ及び通常データのセットは、約60℃でPCR反応の伸長相の間採取される。この伸長相は、全てのDNA鎖がダブルの鎖に再び結合する相である。この相の間、DNA結合染料からの蛍光は最大になり、受動基準分子から蛍光が重畳されるがかなり小さい。別の暗データ及び通常データのセットは高温の変性相(約95℃)の間に採集され、この間、DNAは、変性したりまたは単一鎖に分割される。この相の間、DNA結合染料の蛍光は最小になり、ほとんど存在しない。何となれば、DNAは二重鎖ではなく、使用される染料の蛍光は、温度の増加と共に蛍光はかなり減少する。したがって、変性相画像は、受動基準分子からの基準蛍光をかなり含む。補正された暗基準(変性)データセットは、測定された温度に対する依存性を補正した後、補正された暗DNA結合染料データセットから減算されたり、または通常のデータセットに対しては無視しても良い。
【0046】
または、受動基準染料が、PCRサイクル毎に、更なる画像を取り込み、受動基準染料からの波長を受け入れると共にDNA結合染料によって発せられる波長を拒絶する別の光帯域フィルタを使用することによって、受動基準染料とラベルされた分子を描画することが必要になることがある。このデータは、機能的に変性データと等価である。
【0047】
変性相に対する動作を示しながら(図8)、各通常データ信号及び暗データ信号102、104が、通常の露光52’とシャッタ53’が閉じた状態で、一次のデータ用として同様に得られる。露光時間106は、シーケンスの隣接の伸長相に関して同じものであっても良く、または前の相変性動作から判別され(図7参照)、またはシーケンスの全変性相に対して予め決められた適切な時間である。A/D15は、信号を第2のデータ108および暗データ110に変換する。
暗データは、55’にて次のものから減じられて、補正された暗データ112を生ずる。これは、さらに基準時間114および実際の露光時間106で69’にて補正され、補正された第2のデータ116を生ずる。
【0048】
伸長サイクルは、規格化された第1データ94をドリフトし、次に118にて、変性相に対して選択された個数のサイクル(例えば10)の平均値によって、補正第2データ116を割ることで、更なる規格化された蛍光データ、即ちさらなる規格化されたデータ120を生ずる。これによって、サンプル窪みを非一様性作用に移る。サイクル毎の除算は、平均値の代わりに使用することができる。
または、第2のデータは、ドリフト規格化の前後で補正された第1データ71に適用することができる。ベースラインサンプルは、122にて選択でき、124にて平均されて、ベースラインデータ126を生ずる。次に、更なる規格化データ120は、ベースラインデータによって128にて除算され、ベースライン補正データ130を生ずる。これらのベースラインサンプルは、PCRの成長が図7の曲線のうちのほぼ水平なベースライン部分を越える前に選択される。選択されたベースラインサイクルは、例えば、6〜15サイクルである。118での更なる規格化の後、更なる規格化データ118が、98でのDNA濃度96の計算に使用される。
【0049】
これら同一のベースラインサンプルの傾向(例えば最小二乗回帰ライン)は、規格化された伸長サイクルデータから減算され、ゼロで平らなベースラインを有するデータを生ずる。次に、このデータセットは、確立されたまたは他に要求されたPCR法を使用して処理されて、DNAのコピーを開始する量を算出する。
簡単なプロシージャは、平らから立ち上がる遷移部で変曲点に対して推論されることになっている。より精巧なプロシージャは、前述の米国特許第5,766,889号に記載されている。
【0050】
データは、さまざまな目的、例えば反応の定量モニタリング、または複製されたDNA濃度の測定、または開始量の測定のために使用できる。機器も、複製がシーケンスの間起こっているかまたは起こったかどうかを(規格化および他の補正の有無とは無関係に)表示するために使用されることができる。
【0051】
本発明は、特定の実施例に関して詳細に説明したが、本発明の趣旨および添付の請求項の範囲内に入るさまざまな変形例および応用例は、当業者には明らかである。したがって、本発明は、添付の請求項のまたはその均等物により制限されるだけである。
【符号の説明】
【0052】
1b 小びん
2b レンズ
6 ビームスプリッタ
9 検出レンズ
11 光源
14 プロセッサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の離間した反応成分容器と、
前記複数の容器へ励起ビームを差し向けるようにした光源と、
前記光源と前記複数の容器との間に、励起ビーム光路に沿って配置された視野レンズと、
発光ビーム光路に沿って配置され、前記視野レンズから発せられた発光ビームを受けるように配置された検出器と、を備える機器であって、
前記視野レンズも、前記複数の容器と前記検出器との間に、発光ビーム光路に沿って配置されていることを特徴とする機器。
【請求項2】
前記視野レンズがテレセントリック光学系を提供する、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
明細書の記載によりさらに特徴付けられる、請求項1または2に記載の機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−39071(P2011−39071A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214585(P2010−214585)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【分割の表示】特願2008−187698(P2008−187698)の分割
【原出願日】平成11年5月17日(1999.5.17)
【出願人】(509130413)アプライド バイオシステムズ, エルエルシー (48)
【Fターム(参考)】