説明

DNAメチル化阻害作用の判定方法

【課題】 DNAメチル化阻害剤のスクリーニングに有利に用いられる、多量の試料を要せず、簡便に且迅速に、任意の物質のDNAのメチル化を阻害する阻害物質を検出する方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の方法は、メチル化部位を含む蛍光標識が付加された試験DNAと、被検物質と、DNAメチル化酵素とを混合する過程と、非メチル化状態のメチル化部位を選択的に切断するメチル化感受性作用物質を試験DNAに作用させる過程と、メチル化感受性制限酵素を作用させた試験DNAの蛍光強度を測定する過程と、蛍光強度に基づいて前記試験DNAがメチル化感受性作用物質により切断された否かを判定する過程とを含み、試験DNAが切断されたか否かにより被検物質がDNAのメチル化を阻害する阻害物質であるか否かを判定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA(デオキシリボ核酸)のメチル化を検出する方法に係り、より詳細には、種々の生体関連物質及びその他の物質がDNAのメチル化を阻害する作用(DNAメチル化阻害作用)を有するか否か判定する方法に係る。
【背景技術】
【0002】
DNAの塩基配列により決定される遺伝子の発現の制御機構をクロマチンの動的変動から解明しようとする研究分野(エピジェネティクス)に於いて、DNAのメチル化の有無が遺伝子発現のスイッチの一つになっているであろう、ということが明らかになってきた。現在までの研究によれば、(哺乳類の)DNAのプロモーター領域の塩基配列に於いて、シトシン(C)−グアニン(G)の配列のうちのCがメチル化されると、クロマチンが凝縮し、これにより、その近傍の遺伝子の発現スイッチがオフ(発現が停止される)となり、逆に、メチル化されたDNAが脱メチル化されると、遺伝子の発現スイッチがオンとなり、遺伝子の発現が開始されるという機構が考えられている。かかるDNAのメチル化による遺伝子発現の制御機構は、例えば、p16などのがん抑制遺伝子に於いても観察されており、p16の例では、p16遺伝子の上流の配列が正常細胞では非メチル化されているので、p16遺伝子が発現され、細胞のがん化が抑制されるが、がん細胞では、p16遺伝子の上流の配列がメチル化され、p16遺伝子の発現のスイッチがオフになっていることが報告されている。そこで、がん治療などの医療分野では、細胞のがん化に係る遺伝子のDNAのメチル化又は脱メチル化を人為的に操作又は制御することによってがんを予防又は治療する新薬の開発が試みられており、例えば、メチル化されたp16などのがん抑制遺伝子を脱メチル化することによって正常に発現させ、これにより、細胞を正常な状態へ戻すがん治療薬などが期待されている。
【0003】
上記の如き遺伝子発現機構やDNAのメチル化に関する研究に於いて、DNAのメチル化の検出は、一般的には、DNAのPCRによる増幅、DNAの適当な化学処理、電気泳動法などを用いて行われている。例えば、特許文献1は、DNAを亜硫酸水素ナトリウムで化学処理してメチル化されていないシトシンをウラシルに変換した後、そのDNAを、シトシンを含む領域を認識する制限酵素で処理し、しかる後、電気泳動により、DNAの長さで分離するという方法を開示している。この場合、メチル化されたシトシンは、亜硫酸水素ナトリウム処理でウラシルに変換されないので、メチル化されたシトシンを含むDNAは、制限酵素により切断され、長さが短くなるので、電気泳動法により、検出されることになる。また、特許文献2では、亜硫酸水素ナトリウム処理されメチル化されていないシトシンがウラシルに置換されたDNAに、シトシンを含む領域を認識するプライマーを添加してPCRを行うことにより、メチル化されたシトシンを含むDNAのみを増幅して、DNAのメチル化を検出するという方法が開示されている。
【特許文献1】特表2006−500901公報
【特許文献2】特表2005−508885公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のDNAのメチル化の制御による新薬の開発の過程やDNAのメチル化が係る遺伝子発現機構の探求の過程に於いては、DNAのメチル化を阻害する作用を有する物質(DNAメチル化阻害剤)を用いることが考えられる。新薬の開発に於いては、DNAメチル化阻害剤そのものが、正常な細胞に於いて発現されるべき遺伝子の塩基のメチル化を阻止する薬剤の主成分として利用され得る。また、遺伝子発現機構に於けるDNAメチル化の役割を探求する場合には、DNAメチル化阻害剤は、実験に於いてDNAのメチル化を人為的に操作するための試薬として用いることができる。従って、新規なDNAメチル化阻害剤がより多く見出されれば、それだけ、新薬の開発や遺伝子発現機構の解明の可能性が大きくなることが期待される。
【0005】
新規なDNAメチル化阻害剤を見出すためには、或る物質がDNAメチル化阻害作用を有しているか否かを判別し又は確認する必要がある。しかしながら、従来の技術に於いて、或る物質のDNAメチル化阻害作用の有無を比較的簡便に判定する方法、或いは、DNAメチル化阻害剤のスクリーニングするための方法は確立されていない。或る物質のDNAメチル化阻害作用の有無の判定は、その物質の存在下でメチル化酵素処理されたDNA中に於いてメチル化された部位を検出することにより為されるが、上記に例示した従前のDNAのメチル化部位の検出方法は、そもそも、DNAのメチル化のパターンの判別、即ち、DNA中のどの塩基がメチル化されているかを詳細に検出するための方法であり、処理過程に時間と労力を要するともに、多量の試料を要するので、或る物質のDNAメチル化阻害作用の有無の判定や種々の被検物質に於けるDNAメチル化阻害剤のスクリーニングの方法には適していない。もし比較的簡便に且迅速に、任意の物質のDNAメチル化阻害作用の有無の判定を行えることができるようになれば、新規なDNAメチル化阻害剤を見出すことが、従前に比してより容易になるであろう。また、かかる新規な方法に於いては、多量の試料を要しないことが好ましい。
【0006】
かくして、本発明の一つの目的は、多量の試料を要せず、比較的簡便に且迅速に、任意の物質のDNAメチル化阻害作用の有無の判定する方法を提供することである。
【0007】
また、本発明のもう一つの目的は、DNAメチル化阻害作用の有無の判定する方法に於いて有利に用いられるDNAのメチル化を検出する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記の課題を解決する新規なDNAのメチル化を阻害する阻害物質を検出する方法が提供される。本発明の方法は、メチル化部位を含む制限酵素認識部位を有し、蛍光標識が付加された二本鎖DNAである試験DNAと、DNAのメチル化を阻害する阻害物質であるか否かが判定されるべき被検物質と、DNAメチル化酵素とを混合する過程と、その後、試験DNAに非メチル化状態のメチル化部位を含む制限酵素認識部位又はメチル化状態のメチル化部位を含む制限酵素認識部位のいずれかを選択的に切断するメチル化感受性作用物質を作用させる過程と、メチル化感受性制限酵素を作用させた試験DNAの蛍光強度を測定する過程と、測定された蛍光強度に基づいて試験DNAがメチル化感受性作用物質により切断された否かを判定する過程とを含み、試験DNAが切断されたか否かにより被検物質がDNAのメチル化を阻害する阻害物質であるか否かを判定することを特徴する。なお、かかる構成に於いて、一つの態様として、典型的には、メチル化感受性作用物質は、非メチル化状態のメチル化部位を含む制限酵素認識部位を切断するメチル化感受性作用物質であり、蛍光強度に基づいて試験DNAがメチル化感受性作用物質により切断された否かを判定する過程に於いて、試験DNAが切断されたと判定された場合に、被検物質がDNAのメチル化を阻害する阻害物質であると判定するようになっていてよい。また、メチル化感受性作用物質は、後に例示される如き、公知のメチル化感受性制限酵素(非メチル化状態のメチル化部位を含む制限酵素認識部位を切断する制限酵素)であってよく、二種類以上のメチル化感受性作用物質又は制限酵素が同時に用いられてもよい。
【0009】
上記の本発明の構成によれば、まず、メチル化部位を含む制限酵素認識部位を有する試験DNAが予め準備される。本発明の場合、検査されるべき対象は、DNAメチル化阻害作用を有しているかもしれない被検物質であるから、使用されるDNAは、メチル化部位を含む制限酵素認識部位を有していれば、任意のものでよいことは理解されるべきである。そして、かかる試験DNAと、被検物質と、DNAメチル化酵素とを混合すると、もし被検物質がDNAメチル化阻害作用を有していなければ、DNAメチル化酵素により試験DNAのメチル化されることとなるが、被検物質がDNAメチル化阻害作用を有していれば、メチル化部位がメチル化されていない状態(非メチル化状態)で保存されることとなる。従って、その後、試験DNAに非メチル化状態のメチル化部位を含む制限酵素認識部位を選択的に切断するメチル化感受性作用物質を作用させると、被検物質がDNAメチル化阻害物質であれば、試験DNAがメチル化部位を含む制限酵素認識部位で切断され、被検物質がDNAメチル化阻害物質でなければ、メチル化部位がメチル化されているので、試験DNAが切断されないこととなる。(或いは、試験DNAにメチル化状態のメチル化部位を含む制限酵素認識部位を選択的に切断するメチル化感受性作用物質を作用させれば、被検物質がDNAメチル化阻害物質であるとき、試験DNAがメチル化部位を含む制限酵素認識部位で切断されず、被検物質がDNAメチル化阻害物質でないときには、メチル化部位がメチル化されているので、試験DNAが切断される。)かくして、被検物質がDNAメチル化阻害物質であるか否かは、本発明に於いては、試験DNAがメチル化感受性作用物質により切断されたか否かを検出するだけで決定できることとなる。
【0010】
メチル化感受性作用物質により試験DNAが切断されたか否かは、本発明では、上記の構成から理解される如く、試験DNAに蛍光標識を予め付加しておき、メチル化感受性作用物質による処理後に測定された試験DNAの(蛍光標識の)蛍光強度に基づいて決定される。当業者にとって理解される如く、或るタンパク質やDNAなどの分子に蛍光標識を付加しておけば、その分子の構造、大きさ、運動の変化が蛍光標識の蛍光強度に基づいて検出できる。本発明の場合、メチル化感受性作用物質による処理により、試験DNAが切断されると、即ち、試験DNAの構造が変化すると、蛍光標識が付加されたDNA分子の大きさが変化し、或いは、分子の運動状態が変化するので、かかる試験DNAの構造の変化がDNAに付加された蛍光標識の蛍光強度の種々の挙動の変化に反映される。従って、メチル化感受性作用物質による処理後の試験DNAの蛍光強度の測定から、試験DNAが切断されたか否かが比較的容易に特定でき、これにより、被検物質がDNAメチル化阻害物質であったか否かが判定できることとなる。
【0011】
より具体的には、上記の本発明のいくつかの態様に於いては、蛍光強度の測定に基づいて、メチル化感受性作用物質を作用させる過程の前後の蛍光標識が付加された部位を有するDNAの大きさの変化を検出することにより、メチル化感受性作用物質処理後の試験DNAの切断の有無が判定されるようになっていてよい。また、試験DNAは、メチル化部位と蛍光標識の付加された部位との距離がその試験DNAの長さの半分以下となるよう調製され、メチル化感受性作用物質処理後に試験DNAが切断された場合に、蛍光標識の付加されたDNAの長さの変化又はそれによるDNA分子の運動の変化が大きく捉えられるようになっていてもよい。更にまた、試験DNAに二つ以上の蛍光標識を付加することにより、それら二つの蛍光強度の測定に基づいて、試験DNAの切断に伴って試験DNA上の蛍光標識が別々のDNAの断片に分かれることを検出するなどして、試験DNAの切断の有無を捉えるようになっていてもよい。
【0012】
メチル化感受性作用物質による蛍光標識された試験DNAの切断の有無を検出する蛍光強度の測定方法は、具体的には、蛍光相関分光法、蛍光偏光解消法など、蛍光標識された分子の大きさの変化に伴う分子運動の変化を検出できる任意の蛍光測定方法であってよい。また、試験DNAに二種類以上の蛍光標識を付加させた場合には、後で詳細に説明される如く、蛍光相互相関分光法を用いて試験DNAの切断の有無を測定するようになっていてもよい。なお、上記以外の試験DNAの構造の変化又は大きさの変化を検出できる任意の蛍光測定分析技術が、本発明に於いて採用されてよいことは理解されるべきであり、そのような場合も本発明の範囲に属する。
【0013】
ところで、上記の本発明のDNAのメチル化を阻害する阻害物質を検出する方法に於ける、メチル化部位を含む制限酵素認識部位を有し、蛍光標識が付加された二本鎖DNAである試験DNAを用いて、一連の反応を施した後、メチル化感受性作用物質による試験DNAの切断の有無を試験DNAの蛍光測定に基づいて決定するという特徴は、或る酵素がDNAメチル化活性を有しているか否かを検出することにも適用できる。従って、本発明の別の態様によれば、酵素のDNAメチル化活性を検出する方法であって、メチル化部位を含む制限酵素認識部位を有し、蛍光標識が付加された二本鎖DNAである試験DNAと、DNAメチル化活性を有するか否かが判定されるべき被検酵素とを混合する過程と、その後、試験DNAに非メチル化状態のメチル化部位を含む制限酵素認識部位又はメチル化状態のメチル化部位を含む制限酵素認識部位のいずれかを選択的に切断するメチル化感受性作用物質を作用させる過程と、メチル化感受性制限酵素を作用させた試験DNAの蛍光強度を測定する過程と、蛍光強度に基づいて試験DNAがメチル化感受性作用物質により切断された否かを判定する過程とを含み、試験DNAが切断された否かによって被検酵素がDNAをメチル化する活性と有しているか否かを判定することを特徴とする方法が提供される。この方法は、DNAメチル化酵素を被検酵素に置き換え、DNAメチル化阻害作用を有するか否かが判定される被検物質を混合しない点に於いて、前記のDNAのメチル化を阻害する阻害物質を検出する方法と異なるだけであることは理解されるべきである。
【0014】
また、上記の本発明のDNAのメチル化を阻害する阻害物質を検出する方法に於ける特徴は、或るタンパク質等の物質がDNAを脱メチル化する酵素活性を有しているか否かを検出することにも適用できる。従って、本発明の別の態様によれば、酵素の脱DNAメチル化活性を検出する方法であって、メチル化されたメチル化部位を含む制限酵素認識部位を有し、蛍光標識が付加された二本鎖DNAである試験DNAと、DNA脱メチル化活性を有するか否かが判定されるべき被検酵素とを混合する過程と、その後、試験DNAに非メチル化状態のメチル化部位を含む制限酵素認識部位又はメチル化状態のメチル化部位を含む制限酵素認識部位のいずれかを選択的に切断するメチル化感受性作用物質を作用させる過程と、メチル化感受性制限酵素を作用させた試験DNAの蛍光強度を測定する過程と、蛍光強度に基づいて試験DNAがメチル化感受性作用物質により切断された否かを判定する過程とを含み、試験DNAが切断された否かによって被検酵素がDNAを脱メチル化する活性と有しているか否かを判定することを特徴とする方法が提供される。この方法は、試験DNAが予めメチル化され、DNAメチル化酵素を被検酵素に置き換え、DNAメチル化阻害作用を有するか否かが判定される被検物質を混合しない点に於いて、前記のDNAのメチル化を阻害する阻害物質を検出する方法と異なるだけであることは理解されるべきである。
【0015】
更に、上記の本発明のDNAのメチル化を阻害する阻害物質を検出する方法に於ける特徴は、DNAの脱メチル化を阻害する阻害物質を検出する方法にも適用できる。従って、本発明の更に別の態様によれば、DNAの脱メチル化を阻害する阻害物質を検出する方法であって、メチル化されたメチル化部位を含む制限酵素認識部位を有し、蛍光標識が付加された二本鎖DNAである試験DNAと、DNAの脱メチル化を阻害する阻害物質であるか否かが判定されるべき被検物質と、DNA脱メチル化酵素とを混合する過程と、その後、試験DNAに非メチル化状態の前記メチル化部位を含む制限酵素認識部位又はメチル化状態のメチル化部位を含む制限酵素認識部位のいずれかを選択的に切断するメチル化感受性作用物質を作用させる過程と、メチル化感受性制限酵素を作用させた試験DNAの蛍光強度を測定する過程と、蛍光強度に基づいて試験DNAが前記メチル化感受性作用物質により切断された否かを判定する過程とを含み、試験DNAが切断されたか否かによって被検物質がDNAの脱メチル化を阻害する阻害物質であるか否かを判定することを特徴とする方法が提供される。この方法は、前記のDNAのメチル化を阻害する阻害物質を検出する方法とは、試験DNAが予めメチル化され、DNAメチル化酵素をDNA脱メチル化酵素に置き換えた点が異なる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法は、上記の説明から理解されるように、従前のDNAのメチル化パターンを詳細に特定するためDNAのメチル化の検出方法とは異なり、被検物質に対するDNAメチル化阻害作用(又は、酵素のDNAメチル化活性、酵素のDNA脱メチル化活性若しくはDNA脱メチル化阻害作用)を有するか否かを判定することを目的とした方法なので、試験DNAのメチル化の有無の検出に当たり、従前のDNAのメチル化検出方法で行われる如き、シトシンをウラシルに置換する亜硫酸水素ナトリウム処理、PCRによるDNAの増幅、DNAをその長さによって電気泳動法などを用いていない。従って、本発明の方法によれば、従前のDNAのメチル化検出方法に比して、高濃度若しくは多量の試料を必要とせず、簡便に且迅速に、DNAのメチル化の有無の検出が行われる。また、特に、本発明の一連の過程に於いて、メチル化状態のDNAと非メチル化状態のDNAとの見分けるための測定が蛍光測定であるので、試料量を従前の方法に比して大幅に低減することができる点で非常に有利である。更に、蛍光測定の際、前記の如き蛍光相関分光分析等に用いられる共焦点光学顕微鏡の光学系を備えた装置を用いれば、試料量は、より一層低減することが可能となる。
【0017】
試料量を従前に比して低減できるということは、新薬の開発や遺伝子発現機構の研究の分野に於いて、非常に有利であることは理解されるべきである。新薬の開発や遺伝子発現機構の研究の現場に於いて使用される試薬又は物質は、しばしば、高価であったり、或いは稀少であるために、大量に入手することが困難である場合がある。また、或る被検物質がDNAメチル化阻害作用を有しているか否かを判定する前に、即ち、その物質がDNAメチル化阻害剤として利用可能であるか否かを決定する前に大量に入手又は調製することは、経済的でない。そのような少量しか手に入らない物質又は有用であるか不明な物質について、DNAメチル化阻害作用の有無を判定しようとする場合に、本発明の方法は、少量の試料でも検査ができるので、極めて有効である(もし大量の試料が必要だとすれば、試料が足りないことで、検査自体が実施不可能となる場合もある。)。また、本発明は、試料が少量でよく、試験DNAを準備しておけば、その後の一連の過程が比較的迅速に且簡便であることから、多種の被検物質について、DNAメチル化阻害作用のスクリーニングをする場合にも適用できる。
【0018】
更に、特記すべきことは、本発明のDNAのメチル化を阻害する阻害物質を検出する方法は、上記に述べた如く、若干の修正をするだけで、酵素のDNAメチル化活性を検出する方法、酵素のDNA脱メチル化活性を検出する方法及びDNAの脱メチル化を阻害する阻害物質を検出する方法に応用することができ、DNAメチル化阻害剤の場合と同様、多種の被検物質について、DNAメチル化活性の有無、DNA脱メチル化活性の有無、DNA脱メチル化阻害作用の有無のスクリーニングも簡便に且迅速に、又、多量の試料を要せずに、任意の酵素のDNAメチル化活性や物質の脱メチル化阻害作用を検出することができる点である。これらの活性や阻害作用を検出することも、上記のDNAのメチル化の制御による新薬の開発の過程やDNAのメチル化又は脱メチル化が係る遺伝子発現機構の探求の過程に於いて非常に有用である。この点に関し、現在のところ、実際の細胞内で、メチル化されたDNAの脱メチル化をするDNA脱メチル化酵素が存在は確認されていない(従って、脱メチル化阻害剤も確認されていない。)。本発明によれば、脱メチル化活性のスクリーニングは、簡便に且迅速に実施できるので、もしDNA脱メチル化酵素が存在するのであれば、本発明の方法により、容易に発見できるかもしれない。そして、もしDNA脱メチル化酵素が発見されれば、メチル化されたDNAを脱メチル化する新規な薬剤として利用できるかもしれない。
【0019】
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明のDNAのメチル化を阻害する阻害物質を検出する方法の好ましい実施形態に於ける処理過程をフローチャートの形式で表したものであり、図2は、図1の処理に於いて想定される分子の状態の変化を模式的に示したものである。
【0022】
図1及び図2を参照して、本発明の方法の実施を開始する当たり、予め、メチル化部位を含む制限酵素認識部位を有する二本鎖DNAである試験DNAが準備される。試験DNAの長さは、合成のコスト及び検出の容易さから10〜100merが好ましく、20から40merが更に好ましい。メチル化部位は、5’−シトシン(C)−グアニン(G)−3’の塩基配列のうちのCであり、図2(A)に例示されている如く、二本鎖DNAに於いて、Cは、Gに結合しているので、5’−C−G−3’の塩基配列に対向する塩基配列は、3’−G−C−5’である。メチル化酵素の存在下(阻害作用がなければ)では、双方のDNA鎖の5’−C−G−3’のC塩基がメチル化されることが知られている。
【0023】
また、試験DNAには、少なくとも一つの蛍光標識として蛍光色素が付加されている。蛍光色素としては、この分野で通常使われる任意の蛍光色素、例えば、TAMRA(carboxymethylrhodamine)、TMR(tetramethylrhodamine)、Alexa647、Rhodamine Green、Alexa488などであってよいが、これらに限定されない。なお、試験DNAに一つの蛍光色素を付加する場合には、試験DNAは、蛍光標識部位とメチル化部位との距離がDNA全長の半分よりも短くなるよう調製されていることが好ましい。後でより詳細に説明される如く、試験DNAが被検物質(メチル化阻害作用の有無が検査される物質)の存在下でメチル化酵素により処理され、更に、メチル化感受性作用物質により処理された後、試験DNAがメチル化部位で切断されているか否かを判断する際、試験DNAに一つの蛍光色素を付加する場合には、蛍光色素が付加しているDNA分子の運動状態の変化が(蛍光測定に基づいて)観察される。試験DNAが切断されると、一方のDNA断片にのみ蛍光色素が付加された状態となるところ、蛍光標識部位とメチル化部位との距離がDNA全長の半分よりも短ければ、試験DNAが切断された場合とそうでない場合との蛍光色素が付加しているDNA分子の長さの差が大きくなり、従って、蛍光強度測定により検出されるDNA分子の運動状態の変化が大きくなるので、DNAの切断の有無がより感度良く検出可能となる。また、試験DNAは、複数種類の蛍光色素により蛍光標識されていてもよい。メチル化切断部位を挟んで異なる種類の標識でDNA鎖を修飾すると、後述の如く、蛍光相互相関分光法での計測が可能となり、1種類の蛍光標識の場合よりも、試験DNAの切断の有無が感度良く検出することが出来る。
【0024】
試験DNAは、上記条件を満たす生物由来のDNAでもよいが、人工的に合成したDNAは、生物由来のものより安定性が高く、安価で大量生産ができるので、継続的に、多種類の被検物質のスクリーニングに適している。試験DNAは、本実施形態の方法を実施する度に調製するのではなく、一度に量産した後、変性しない態様にて保存し、本実施形態の方法を実施する際に必要量ずつ使用するようにされてよい。
【0025】
かくして、本実施形態の方法の初めの過程に於いて、試験DNAと被検物質とがまず混合され(ステップ1)、しかる後にDNAメチル化酵素(及び酵素反応のための基質)が添加される(ステップ2)。DNAメチル化酵素は、CpGメチラーゼ、Dnmt1, Dnmt3a, Dnmt3b, Damメチラーゼ、Dcmメチラーゼなどが用いられてよい。なお、当業者にとって理解される如く、以降の物質の混合操作は、特に断らない限り、水溶液中に物質を溶解した状態で行う。その後、DNAのメチル化反応が進行するよう混合液は、例えば、37℃、1時間程度、インキュベーションされる。また、ステップ2のDNAメチル化酵素の添加に先立って、37℃、30分程度、水溶液をインキュベーションして、溶液の温度を酵素反応をさせるべき温度に合わせておくことが好ましい。水溶液の組成、反応過程の温度、反応時間等の条件は、目的の酵素反応等が適当に進行するよう通常使用される条件が選択されてよい。
【0026】
ステップ3の反応過程に於いては、図2(B)に示されている如く、被検物質がメチル化阻害作用を有していなければ、塩基配列C−GのCがメチル化され(同図右)、被検物質がメチル化阻害作用を有していれば、塩基配列C−GのCがメチル化されないまま(非メチル化状態:同図左)となる。
【0027】
メチル化酵素処理の後、次いで、水溶液にメチル化感受性作用物質が添加され(ステップ4)、試験DNAのメチル化部位、塩基配列C−G、を含む制限酵素認識部位に於ける切断が進行するよう水溶液が、例えば、37℃、1時間にてインキュベーションされる(ステップ5)。ここで、メチル化感受性作用物質が、メチル化されていないメチル化部位を切断するものであれば、被検物質がメチル化阻害作用を有する場合、メチル化されていない試験DNAを切断し、DNAを断片化するが(図2(C)左)、被検物質がメチル化阻害作用を有していない場合、試験DNAを切断しないので、従って、試験DNAの長さは保存されることとなる。(同図右)。
【0028】
そのようなメチル化感受性作用物質は、典型的には、メチル化感受性制限酵素であり、例としては、Aat II、Acc I、Acc II、Aci I、Afa I、Afl II、Alu I、Aor13H I、Aor51H I、Apa I、ApaL I、Ava I、Ava II、Bal I、BamH I、Ban II、Bbe I、Bcn I、Bgl I、Bgl II、Bln I、BmeT110 I、BmgT120 I、Bpu1102 I、BspT104 I、BspT107 I、Bsp1286 I、Bsp1407 I、BssH II、BspD I、BstP I、BstU I、BstX I、Bst1107 I、Cfr10 I、Cfr13 I、Cla I、Cpo I、Dra I、Eae I、Eag I、Eam1105 I、EcoO65 I、EcoO109 I、EcoR I、EcoR V、EcoT14 I、EcoT22 I、Eco52 I、Eco81 I、Fba I、Fok I、Fse I、Hae II、Hae III、Hap II、Hha I、Hinc II、Hind III、Hinf I、Hin1 I、Hpa II、HpyCH4 IV、Kas I、Kpn I、Mbo I、Mbo II、Mfl I、Mlu I、Msp I、Mun I、Mva I、Nae I、NegM IV、Nco I、Nde I、Nhe I、Not I、Nru I、Nsb I、PmaC I、PshA I、PshB I、Psp1406 I、Pst I、Pvu I、Pvu II、Sac I、Sac II、Sal I、Sca I、Sfi I、Sma I、Smi I、SnaB I、Spe I、Sph I、 Sse8387 I、Ssp I、Stu I、Taq I、Tth111 I、Van91 I、VpaK11B I、Xba I、Xho I、Xsp Iなどが挙げられる。また、メチル化感受性制限酵素としては、上記のうち、好ましくは、塩基配列CCGG、CCGC、GCGC、ACGT、CGGCCG、GCCGGC、GGCGCC、CCCGGG、CGCG、ATCGTA、TTCGAA、GTCGAG又はCTCGAGを選択的に切断するメチル化感受性制限酵素が用いられ、更に好ましくは、HpaII(C‘CGG)、AciI(C‘CGC)、HinPII(G‘CGC)、HpyCH4IV(A‘CGT)、EagI(C‘GGCCG)、NegMIV(G‘CCGGC)、KasI(G‘GCGCC)、SmaI(CCC‘GGG)、BstUI(CG‘CG)、BspDI(AT‘CGTA)、BstBI(TT‘CGAA)、SalI(G‘TCGAG)及びXhoI(C‘TCGAG)等のメチル化感受性制限酵素が用いられてよい。なお、括弧内の「‘」は、酵素の切断部位を示している。
【0029】
なお、ステップ4−5のメチル化感受性作用物質又は制限酵素による処理は、酵素反応ではなく、化学的にメチル化された状態のメチル化部位を切断し、非メチル化状態のメチル化部位を切断しないメチル化感受性作用物質によって行ってもよい。この場合は、メチル化された試験DNAは切断され、断片化されるが、メチル化されていない試験DNAは切断されず、従って、試験DNAの長さは保存されることとなる。(図2(C)の場合の逆)
【0030】
かくして、メチル化感受性作用物質又は制限酵素による処理が終了すると、次いで、水溶液の蛍光強度測定が行われる(ステップ6)。蛍光強度測定としては、上記の説明から理解される如く、蛍光標識された試験DNA又はその断片の分子の構造の変化又は運動状態の変化を検出できる任意の測定・分光分析方法が選択されてよい。
【0031】
試験DNAに一つの蛍光標識が付加されている場合、試験DNAが切断されると、蛍光標識の付加されているDNA分子の長さが短くなる。短くなった蛍光標識の付加されているDNA分子は、短くなる前のDNA分子よりも早いブラウン運動をする。そこで、この場合には、蛍光標識の付加されているDNA分子のブラウン運動の早さの変化を検出することのできる蛍光相関分光法、蛍光偏光解消法などを有利に用いることができる。
【0032】
蛍光相関分光法では、微小の蛍光観察領域をブラウン運動により通過する分子の移動(並進運動)の速さが観測される。分子の並進運動の速さは、測定された蛍光強度の時間を変数とした自己相関関数の形状に反映される(以下の実施例に於ける測定結果を参照)。分子の並進運動の速さの指標としては、測定開始時から自己相関関数の値が半分になるまでの時間の長さ(並進拡散時間)が用いられる。分子の移動は、分子の大きさが小さいほど、速くなるので、並進拡散時間が短くなる。本発明の場合、試験DNAが切断されると、蛍光標識の付加されているDNA分子の長さが短くなり、従って、並進拡散時間が短くなるので、このことから、試験DNAの切断の有無が判定される。なお、試験DNAが切断されていない状態の並進拡散時間は、予め、DNAが切断されていないことが分かっている対照試料、或いは、メチル化感受性作用物質を添加する前の試験DNAにより測定されていてよい。
【0033】
蛍光偏光解消法では、この分野に於いて知られている如く、分子の回転ブラウン運動(自転)の速さが観測される。分子の回転運動の速さは、測定された蛍光の縦偏光と横偏光の強度の割合又は偏光度に反映される。分子の回転は、分子の大きさが小さいほど、速くなるので、偏光度が小さくなる。本発明の場合、試験DNAが切断されると、蛍光標識の付加されているDNA分子の長さが短くなり、従って、回転運動が速くなり、偏光度が下がるので、このことから、試験DNAの切断の有無が判定される。なお、試験DNAが切断されていない状態の偏光度は、予め、DNAが切断されていないことが分かっている対照試料、或いは、メチル化感受性作用物質を添加する前の試験DNAにより測定されていてよい。
【0034】
なお、既に述べた如く、試験DNAは、好ましくは、蛍光標識部位とメチル化部位との距離がDNA全長の半分よりも短くなるよう構成されているので、試験DNAが切断されている場合とそうでない場合の蛍光標識されたDNA分子の長さの差が大きくなっている。かかる長さの差により、上記の蛍光強度測定に於いて、分子の運動状態の差が感度よく検出できるようになることは理解されるべきである。
【0035】
試験DNAに二種類の蛍光標識がメチル化部位を挟んで付加されている場合、試験DNAが切断されると、二つの蛍光標識の付加されているDNA分子が分離することとなる。従って、試験DNAの切断の有無は、二つの蛍光標識の挙動が独立であるか相関があるかを検出することにより判定することができる。そこで、この場合には、蛍光相互相関分光法を有利に用いることができる。
【0036】
蛍光相互相関分光法では、この分野に於いて知られている如く、二つの発光波長の異なる蛍光標識が微小の蛍光観察領域をブラウン運動により通過する際に、各々の標識の蛍光強度の変化から二つの蛍光標識の運動に相関があるか否かを判定することができる。もし蛍光標識が一つの担体(分子)に存在する場合には、二つの蛍光強度の変化が一体的に変化するが、蛍光標識が別々の担体に存在する場合には、二つの蛍光強度の変化は、独立に変化することとなる。蛍光標識が一つの担体に乗っているか否かは、二つの蛍光強度の相互相関関数から判定することができる。本発明の場合、試験DNAが切断されれば、二つの標識は別々に運動することとなり、試験DNAが切断されずに二つの標識が一体的に運動する場合に比して相互相関関数の値が顕著な低くなるので、かかる相互相関関数の顕著な差により、試験DNAの切断の有無が判定される
【0037】
かくして、上記の如き、蛍光測定に基づいて試験DNAの切断の有無が判定されると、被検物質のメチル化阻害作用の有無が判定される(ステップ7−9)。メチル化感受性作用物質が非メチル化状態のメチル化部位を切断するものであれば、試験DNAの切断が検出された場合、被検物質のメチル化阻害作用が有りと判定され、試験DNAの切断が検出されない場合、被検物質のメチル化阻害作用が無しと判定される。また、メチル化感受性作用物質がメチル化状態のメチル化部位を切断するものであれば、試験DNAの切断が検出された場合、被検物質のメチル化阻害作用が無しと判定され、試験DNAの切断が検出されない場合、被検物質のメチル化阻害作用が有りと判定される。
【0038】
ところで、上記の実施形態の一連の過程は、或る酵素について、DNAのメチル化活性があるか否かを判定するためにも用いることができる。その場合、ステップ1のメチル化阻害作用の有無が判定される被検物質と試験DNAの混合は行われず、ステップ2のメチル化酵素を添加する際、DNAのメチル化活性があるか否かを判定されるべき被検酵素が添加される。一連の処理の後、試験DNAの切断の有無が判定されると、DNAのメチル化活性の有無が判定される。メチル化感受性作用物質が非メチル化状態のメチル化部位を切断するものであれば、試験DNAの切断が検出された場合、被検酵素のメチル化活性が無しと判定され、試験DNAの切断が検出されない場合、被検酵素のメチル化活性が有りと判定される(メチル化感受性作用物質がメチル化状態のメチル化部位を切断するものであれば、上記の逆の判定が為される。)。
【0039】
また、予めメチル化された試験DNAを用いれば、上記の実施形態の一連の過程は、任意のタンパク質等の物質の脱メチル化酵素活性の検査にも用いることができる。その場合、まず、試験DNAとしては、メチル化部位がメチル化されているDNAが使用される。そして、ステップ1のメチル化阻害作用の有無が判定される被検物質と試験DNAの混合は行われず、ステップ2のメチル化酵素を添加するのに代えて、DNAの脱メチル化活性があるか否かを判定されるべき被検酵素が添加される。一連の処理の後、試験DNAの切断の有無が判定されると、DNAの脱メチル化活性の有無が判定される。メチル化感受性作用物質が非メチル化状態のメチル化部位を切断するものであれば、試験DNAの切断が検出された場合、被検酵素の脱メチル化活性が有りと判定され、試験DNAの切断が検出されない場合、被検酵素の脱メチル化活性が無しと判定される(メチル化感受性作用物質がメチル化状態のメチル化部位を切断するものであれば、上記の逆の判定が為される。)。
【0040】
更に、上記の実施形態の図1の一連の過程は、或る物質について、DNAの脱メチル化酵素の脱メチル化作用を阻害する作用があるか否かを判定するためにも用いることができる。その場合、試験DNAとしては、メチル化部位がメチル化されているDNAが使用される。そして、脱メチル化阻害作用の有無が判定される被検物質と試験DNAの混合の後、ステップ2に於いて、脱メチル化酵素が添加される。一連の処理の後、試験DNAの切断の有無が判定されると、被検物質の脱メチル化阻害作用の有無が判定される。メチル化感受性作用物質が非メチル化状態のメチル化部位を切断するものであれば、試験DNAの切断が検出された場合、被検物質の脱メチル化阻害作用が無しと判定され、試験DNAの切断が検出されない場合、被検物質の脱メチル化阻害作用が有りと判定される(メチル化感受性作用物質がメチル化状態のメチル化部位を切断するものであれば、上記の逆の判定が為される。)。
【0041】
上記に説明した本発明の有効性を検証するために、以下の如き実験を行った。なお、以下の実施例は、本発明の有効性を例示するものであって、本発明の範囲を限定するものではないことは理解されるべきである。
【実施例1】
【0042】
1つの蛍光標識が付加された試験DNAを用いたDNAメチル化阻害物質のメチル化阻害作用の判定
1つの蛍光標識が付加された試験DNAを用いて、上記の処理過程に従って、被検物質のDNAメチル化阻害作用の有無の判定を行った。
【0043】
試験DNAの調製
以下の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとTAMRA(カルボキシテトラメチルローダミン)にて一端が蛍光標識されたオリゴヌクレオチド(いずれもシグマジェノシスより入手)を会合させ二本鎖DNAである試験DNAを調製した。
オリゴヌクレオチド 5’GCCATGTACCCTCGACACAA3’
蛍光標識オリゴヌクレオチド 5’(TAMRA)TTGTGTCGAGGGTACATGGC3’
なお、下線を付したCGがメチル化部位である。
会合の手順は、以下の通りである。オリゴヌクレオチド、蛍光標識オリゴヌクレオチドをそれぞれTEバッファ(1 mM EDTA, 10 mM Tris-HCl)で希釈し50 mMとした。次いで、オリゴヌクレオチド10μl、蛍光標識オリゴヌクレオチド10μl、TEバッファ80μlを混ぜ、95℃で10分間反応させた後、ゆっくり冷却してオリゴヌクレオチドを会合させ二本鎖DNAを生成した。この反応液にエキソヌクレアーゼ(タカラバイオより入手)を添加して、37℃で反応させることにより未反応のオリゴヌクレオチドを分解した後、MERmaid SPIN kit (QBioGene, USAより入手)で精製することにより試験DNAの純度を高め、高感度の解析が出来るようにした。会合させた状態の試験DNAの塩基配列は、以下の通りである。
(TAMRA)TTGTGTCGAGGGTACATGGC
AACACAGCTCCCATGTACCG
(下線部がメチル化部位)
【0044】
試験DNAのメチル化(ステップ1−3)
試験DNAに、被検物質として(DNAメチル化阻害作用があることが知られている)5-アザデオキシシチジン(Sigma Aldrich)を混合した。また対照試料として、DNAメチル化阻害作用のないMicrocin SF608を試験DNAに混合したものを調製した。手順は、以下の通りである。試験DNAを反応バッファ(50mM NaCl,10mMTris-HCl,10mM MgCl2,1mM dithiothreitol)に溶解し、DNA濃度が5nMとなるようにした。被検試料には、5-アザデオキシシを、対照試料には、Microcin SF608を、それぞれ1μMとなるよう加えて、それぞれ37℃にて30分、インキュベーションを行った。
【0045】
しかる後に、これらの試料にDNAメチル化酵素であるCpGメチラーゼ(New England Biolabsより入手)を20U加え、その基質となるS-アデノシルメチオニン(Sigma Aldrichより入手)を濃度が160μMとなるよう加えた。かかる試料は、次いで、37℃で1時間インキュベーションを行い、酵素のDNAのメチル化反応を促進させた。
【0046】
メチル化感受性制限酵素による非メチル化部位の切断(ステップ4−5)
かくして、DNAメチル化酵素処理を施した被検試料と対照試料を、メチル化されていないDNAを切断し、メチル化されたDNAを切断しないメチル化感受性制限酵素にて処理した。手順は、以下の通りである。被検試料と対照試料を、10nMとなるように、反応バッファ(50mM NaCl,10mM Tris-HCl,10mM MgCl2,1mM dithiothreitol)に溶解し、これに、メチル化感受性制限酵素AccI(タカラバイオ) 5Uを加え、37℃にて1時間、インキュベーションした。
【0047】
上記のメチル化感受性制限酵素処理により、被検試料(メチル化阻害作用有り)に於いては、試験DNAは、非メチル化状態にあると考えられるので、メチル化部位で切断されることとなる。
【0048】
蛍光相関分光法による計測(ステップ6)
メチル化感受性制限酵素処理された被検試料と対照試料及びメチル化感受性制限酵素処理していない被検試料について、共焦点顕微鏡の光学系を備えた1分子蛍光分析システム MF20(オリンパス)を用いて、蛍光相関分光法により、蛍光強度測定を行った。測定に於いては、被検試料と対照試料は、それぞれ、試験DNA濃度が1nMになるよう希釈し、計測時間を1試料につき、15秒(5秒×3回)とした。
【0049】
図3は、蛍光相関分光法により、制限酵素処理していない被検試料(曲線A)と、Microcin SF608を添加した対照試料(曲線B)と、5-アザデオキシシチジン添加の被検試料(曲線C)から得られた自己相関曲線をそれぞれ示している。同図を参照して、理解される如く、制限酵素処理していない被検試料とMicrocin SF608を添加した対照試料の自己相関曲線の形状は、概ね一致するが、5-アザデオキシシチジン添加の被検試料の自己相関曲線の形状は、他の試料の自己相関曲線に比べ左にシフトしていることがわかる。各試料の並進拡散時間は、以下の通りであった。
制限酵素処理していない被検試料 853μ秒
Microcin SF608を添加した対照試料 840μ秒
5-アザデオキシシチジン添加の被検試料 476μ秒
既に述べた如く、蛍光標識の付加されたDNA分子が小さくなると、分子の移動速度が速くなることから、自己相関曲線は速く低減し、並進拡散時間は短くなる。従って、上記の結果は、5-アザデオキシシチジン添加の被検試料に於いて、DNAが切断されていることを示している。即ち、5-アザデオキシシチジンの存在下では、メチル化酵素のDNAのメチル化が阻害されたことを示す。かくして、本発明の蛍光相関分光法を採用した方法により、被検物質がDNAのメチル化を阻害する阻害物質であることが示された。
【0050】
蛍光偏光解消法による計測(ステップ6)
メチル化感受性制限酵素処理された被検試料と対照試料及びメチル化感受性制限酵素処理していない被検試料について、1分子蛍光分析システム MF20(オリンパス)を用いて、蛍光偏光解消法により、蛍光強度測定を行った。測定に於いては、被検試料と対照試料は、それぞれ、試験DNA濃度が1nMになるよう希釈し、計測時間を1試料につき、3秒(1秒×3回)とした。測定値は、mP値(縦偏光と横偏光の強度の差分を縦偏光と横偏光の和で割った値の1000倍に相当する)である。
【0051】
各試料のmP値は、以下の通りであった。
制限酵素処理していない被検試料 283
Microcin SF608を添加した対照試料 279
5-アザデオキシシチジン添加の被検試料 124
既に述べた如く、蛍光標識の付加されたDNA分子が小さくなると、分子の回転ブラウン運動が速くなることから、mP値は低減する。従って、上記の結果は、5-アザデオキシシチジン添加の被検試料に於いて、DNAが切断されていることを示している。即ち、5-アザデオキシシチジンの存在下では、DNAが非メチル化状態にあり、メチル化酵素のDNAのメチル化が阻害されたことを示す。かくして、本発明の蛍光偏光解消法を採用した方法によっても、被検物質がDNAのメチル化を阻害する阻害物質であることが示された。
【実施例2】
【0052】
2つの発光波長の異なる蛍光標識が付加された試験DNAを用いたDNAメチル化阻害物質のメチル化阻害作用の判定
2つの発光波長の異なる蛍光標識が付加された試験DNAを用いて、上記の処理過程に従って、被検物質のDNAメチル化阻害作用の有無の判定を行った。
【0053】
試験DNAの調製
以下の塩基配列を有するTAMRA(カルボキシテトラメチルローダミン)にて一端が蛍光標識されたオリゴヌクレオチド(シグマジェノシスより入手)とAlexa647にて一端が蛍光標識されたオリゴヌクレオチド(日本バイオサービスより入手)を会合させ二本鎖DNAである試験DNAを調製した。
蛍光標識オリゴヌクレオチド 5’(alexa647)GCCATGTACCCTCGACACAA3’
蛍光標識オリゴヌクレオチド 5’(TAMRA)TTGTGTCGAGGGTACATGGC3’
なお、下線を付したCGがメチル化部位である。
会合の手順は、実施例1と同様である。会合させた状態の試験DNAの塩基配列は、以下の通りである。
(TAMRA)TTGTGTCGAGGGTACATGGC
AACACAGCTCCCATGTACCG(alexa647)
(下線部がメチル化部位)
【0054】
以後の試験DNAのメチル化(ステップ1−3)とメチル化感受性制限酵素による非メチル化部位の切断(ステップ4−5)は、実施例1と同様とした。
【0055】
蛍光相互相関分光法による計測(ステップ6)
メチル化感受性制限酵素処理された被検試料と対照試料について、1分子蛍光分析システム MF20(オリンパス)を用いて、蛍光相互相関分光法により、蛍光強度測定を行った。測定に於いては、被検試料と対照試料は、それぞれ、試験DNA濃度が0.1nMになるよう希釈し、計測時間を1試料につき、15秒(5秒×3回)とした。
【0056】
図4(A)、(B)は、それぞれ、5-アザデオキシシチジン添加の被検試料、Microcin SF608を添加した対照試料から得られた蛍光相互相関分光法によるalexa647とTAMRAの蛍光強度の相互相関関数を示している。相互相関関数は、二つの蛍光強度の時間変化に相関がない場合には1となる。被検試料と対照試料との相互相関曲線の形状を比較して、対照試料は、相関値が1より大きいのに対し、被検試料は、相関値が略1に推移した。従って、被検試料では、alexa647とTAMRAの運動には相関が独立したものであり、対照試料では、alexa647とTAMRAの運動に或る程度の相関が在り、alexa647とTAMRAが同一の担体に乗っていることが示唆される。即ち、前者では、試験DNAが切断され、alexa647とTAMRAとが互いに独立に運動し、後者では、試験DNAが切断されずに保存されていることとなる。今回の実験系ではメチル化されていないDNAが切断されるので、被検試料では、5-アザデオキシシチジンにより、メチル化酵素のDNAのメチル化が阻害されたことを示す。かくして、本発明の蛍光相互相関分光法を採用した方法により、被検物質がDNAのメチル化を阻害する阻害物質であることが示された。
【0057】
上記の実施例の結果は、メチル化部位を含む制限酵素認識部位を有し、蛍光標識が付加された二本鎖DNAである試験DNAを用いて、一連の反応を施した後、メチル化感受性作用物質による試験DNAの切断の有無を試験DNAの蛍光測定に基づいて決定することができ、これにより、或る酵素がメチル化活性若しくは脱メチル化活性を有しているか否か、又は或る物質が酵素のメチル化若しくは脱メチル化の阻害作用を有しているか否かを判定することができることを示している。また、上記実施例に於いて特記されるべきことは、被検試料のDNA濃度が0.1乃至1nMというごく微量でよく、検出に要する時間も3−15秒と非常に短時間で計測が可能である点である。上記の方法によれば、多数の被検物質について、各被検物質がDNAメチル化阻害剤であるか否かのスクリーニングを容易に行うことができる。同様に、DNAメチル化酵素若しくはDNA脱メチル化酵素のスクリーニング又はDNA脱メチル化阻害剤のスクリーニングも容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、本発明の方法の好ましい実施形態に於ける処理過程をフローチャートの形式にて示したものである。
【図2】図2は、図1の実施形態の処理過程中に於けるDNA分子の構造の変化を模式的に表したものである。
【図3】図3は、実施例1に於ける試料の蛍光相関分光法により得られた蛍光強度の自己相関関数値を表すグラフ図である。
【図4】図4は、実施例2に於ける試料の蛍光相互相関分光法により得られた蛍光標識alexa647とTAMRAの蛍光強度の相互相関関数値を表すグラフ図である。(A)は、被検試料についての結果であり、(B)は、対照試料についての結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNAのメチル化を阻害する阻害物質を検出する方法であって、
メチル化部位を含む制限酵素認識部位を有し、蛍光標識が付加された二本鎖DNAである試験DNAと、DNAのメチル化を阻害する阻害物質であるか否かが判定されるべき被検物質と、DNAメチル化酵素とを混合する過程と、
その後、非メチル化状態の前記メチル化部位を含む制限酵素認識部位又はメチル化状態の前記メチル化部位を含む制限酵素認識部位のいずれかを選択的に切断するメチル化感受性作用物質を前記試験DNAに作用させる過程と、
前記メチル化感受性制限酵素を作用させた試験DNAの蛍光強度を測定する過程と、
前記蛍光強度に基づいて前記試験DNAが前記メチル化感受性作用物質により切断された否かを判定する過程とを含み、
前記試験DNAが切断されたか否かにより前記被検物質がDNAのメチル化を阻害する阻害物質であるか否かを判定することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、前記メチル化感受性作用物質が、非メチル化状態の前記メチル化部位を含む制限酵素認識部位を切断するメチル化感受性作用物質であり、前記蛍光強度に基づいて前記試験DNAが前記メチル化感受性作用物質により切断された否かを判定する過程に於いて、前記試験DNAが切断されたと判定された場合に、前記被検物質がDNAのメチル化を阻害する阻害物質であると判定することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1の方法であって、前記試験DNAに、少なくとも二種類の蛍光標識が付加されていることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1の方法であって、前記試験DNAに於いて前記メチル化部位と前記蛍光標識の付加された部位との距離が前記試験DNAの長さの半分以下であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1の方法であって、前記メチル化感受性作用物質が、Aat II、Acc I、Acc II、Aci I、Afa I、Afl II、Alu I、Aor13H I、Aor51H I、Apa I、ApaL I、Ava I、Ava II、Bal I、BamH I、Ban II、Bbe I、Bcn I、Bgl I、Bgl II、Bln I、BmeT110 I、BmgT120 I、Bpu1102 I、BspT104 I、BspT107 I、Bsp1286 I、Bsp1407 I、BssH II、BspD I、BstP I、BstU I、BstX I、Bst1107 I、Cfr10 I、Cfr13 I、Cla I、Cpo I、Dra I、Eae I、Eag I、Eam1105 I、EcoO65 I、EcoO109 I、EcoR I、EcoR V、EcoT14 I、EcoT22 I、Eco52 I、Eco81 I、Fba I、Fok I、Fse I、Hae II、Hae III、Hap II、Hha I、Hinc II、Hind III、Hinf I、Hin1 I、Hpa II、HpyCH4 IV、Kas I、Kpn I、Mbo I、Mbo II、Mfl I、Mlu I、Msp I、Mun I、Mva I、Nae I、NegM IV、Nco I、Nde I、Nhe I、Not I、Nru I、Nsb I、PmaC I、PshA I、PshB I、Psp1406 I、Pst I、Pvu I、Pvu II、Sac I、Sac II、Sal I、Sca I、Sfi I、Sma I、Smi I、SnaB I、Spe I、Sph I、Sse8387 I、Ssp I、Stu I、Taq I、Tth111 I、Van91 I、VpaK11B I、Xba I、Xho I、Xsp Iから成る群から選択されたメチル化感受性作用物質であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1の方法であって、メチル化感受性作用物質がメチル化感受性制限酵素であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1の方法であって、前記メチル化感受性作用物質が、CCGG、CCGC、GCGC、ACGT、CGGCCG、GCCGGC、GGCGCC、CCCGGG、CGCG、ATCGTA、TTCGAA、GTCGAG、及びCTCGAGからなる群から選択された認識配列を切断する制限酵素であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1の方法であって、前記蛍光強度に基づいて前記試験DNAが前記メチル化感受性作用物質により切断された否かを判定する過程に於いて、前記メチル化感受性作用物質を作用させる過程の前後の蛍光標識が付加された部位を有するDNAの大きさの変化が決定されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1の方法であって、前記メチル化感受性作用物質を作用させた試験DNAの蛍光強度を測定する過程に於いて、前記蛍光強度の測定が蛍光相関分光法により行われることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1の方法であって、前記メチル化感受性作用物質を作用させた試験DNAの蛍光強度を測定する過程に於いて、前記蛍光強度の測定が蛍光相互相関分光法により行われることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1の方法であって、前記メチル化感受性作用物質を作用させた試験DNAの蛍光強度を測定する過程に於いて、前記蛍光強度の測定が蛍光偏光解消法により行われることを特徴とする方法。
【請求項12】
酵素のDNAメチル化活性を検出する方法であって、
メチル化部位を含む制限酵素認識部位を有し、蛍光標識が付加された二本鎖DNAである試験DNAと、DNAメチル化活性を有するか否かが判定されるべき被検酵素とを混合する過程と、
その後、非メチル化状態の前記メチル化部位を含む制限酵素認識部位又はメチル化状態の前記メチル化部位を含む制限酵素認識部位のいずれかを選択的に切断するメチル化感受性作用物質を前記試験DNAに作用させる過程と、
前記メチル化感受性制限酵素を作用させた試験DNAの蛍光強度を測定する過程と、
前記蛍光強度に基づいて前記試験DNAが前記メチル化感受性作用物質により切断された否かを判定する過程とを含み、
前記試験DNAが切断された否かによって前記被検酵素がDNAをメチル化する活性と有しているか否かを判定することを特徴とする方法。
【請求項13】
酵素のDNA脱メチル化活性を検出する方法であって、
メチル化されたメチル化部位を含む制限酵素認識部位を有し、蛍光標識が付加された二本鎖DNAである試験DNAと、DNA脱メチル化活性を有するか否かが判定されるべき被検酵素とを混合する過程と、
その後、非メチル化状態の前記メチル化部位を含む制限酵素認識部位又はメチル化状態の前記メチル化部位を含む制限酵素認識部位のいずれかを選択的に切断するメチル化感受性作用物質を前記試験DNAに作用させる過程と、
前記メチル化感受性制限酵素を作用させた試験DNAの蛍光強度を測定する過程と、
前記蛍光強度に基づいて前記試験DNAが前記メチル化感受性作用物質により切断された否かを判定する過程とを含み、
前記試験DNAが切断された否かによって前記被検酵素がDNAを脱メチル化する活性と有しているか否かを判定することを特徴とする方法。
【請求項14】
DNAの脱メチル化を阻害する阻害物質を検出する方法であって、
メチル化されたメチル化部位を含む制限酵素認識部位を有し、蛍光標識が付加された二本鎖DNAである試験DNAと、DNAの脱メチル化を阻害する阻害物質であるか否かが判定されるべき被検物質と、DNA脱メチル化酵素とを混合する過程と、
その後、非メチル化状態の前記メチル化部位を含む制限酵素認識部位又はメチル化状態の前記メチル化部位を含む制限酵素認識部位のいずれかを選択的に切断するメチル化感受性作用物質を前記試験DNAに作用させる過程と、
前記メチル化感受性制限酵素を作用させた試験DNAの蛍光強度を測定する過程と、
前記蛍光強度に基づいて前記試験DNAが前記メチル化感受性作用物質により切断された否かを判定する過程とを含み、
前記試験DNAが切断されたか否かによって前記被検物質がDNAの脱メチル化を阻害する阻害物質であるか否かを判定することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−278867(P2009−278867A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240246(P2006−240246)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】