説明

DNA中におけるアルキル化シトシンの検出方法

本発明は、アルキル化シトシン及びシトシンを異なって改変する1種以上の酵素を用いて二本鎖DNA中のアルキル化シトシンを検出する方法に関する。このDNAの少なくとも1つの領域を一本鎖DNAに変換し、酵素を一本鎖DNAの標的領域と反応させる。この酵素による標的領域の酵素的改変のレベルを測定して、標的領域中のアルキル化シトシンの存在又はレベルを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はDNA中におけるアルキル化シトシンの検出方法に関する。本発明の方法は、アルキル化シトシン及びシトシンを異なって改変する酵素を用いる。DNAと上記酵素の少なくとも1つとを一緒にインキュベートし、その後DNAの酵素的改変のレベルを評価してDNA中におけるアルキル化シトシンの存在を測定する。DNA中のアルキル化シトシンの検出は、診断及びその他の目的に有用である。
【背景技術】
【0002】
原核生物、真核生物、バクテリオファージ及び/又はウィルスゲノムにおいて、少なくとも7つの異なった共有結合的塩基修飾が同定されている(1)。高等真核生物においては、共有結合的に修飾された塩基で最も豊富なものは、CpGジヌクレオチド中のグアノシンの5’側に位置する5-メチルシトシンである。メチル化パターンは、遺伝子の転写、X染色体の不活性化、ゲノムインプリンティング、細胞分化及び腫瘍発生にある役割を果たしているという仮説が立てられている(2)。
【0003】
質的及び/又は量的変化に起因して、癌細胞の異常な表現型が生じる。配列を基にした質的変化(遺伝的変異)はゲノムDNAに保存されており、これによって遺伝的変異の検出及び特徴付けが容易となった。遺伝子発現に基づく情報の遺伝はエピジェネティクス(epigenetics:後成学)として知られている。核酸中のシトシン塩基のメチル化は、遺伝子の発現を変化させ、かつDNAのメチル化パターンを細胞分裂を通して伝達することにより、後成的遺伝に影響を与え得る。癌細胞は、遺伝的変異と後成的変異の双方を伴うことがしばしば明らかにされている。
【0004】
腫瘍性細胞は、メチル化パターンに関して同時に複数の異常を伴っている。腫瘍性細胞は、広範囲にわたるゲノムの低メチル化と、より局所的な高メチル化の双方を保有することが多い(1)。遺伝子のプロモーター領域内に位置する、通常はメチル化されていないCpGアイランドの局所的なメチル化は、対応する遺伝子のダウンレギュレーションと関係していることが分かっている。この高メチル化は、腫瘍抑制遺伝子を不活性化するための、コード領域の変異に替わる機構として働くことができる。ヒトの腫瘍に関連してCpGアイランドの高メチル化を有する遺伝子の例としては次のものが挙げられる:p16(肺癌、乳癌、大腸癌、前立腺癌、腎臓癌、肝癌、膀胱癌、頭頸部癌)、E-カドヘリン(乳癌、前立腺癌、大腸癌、膀胱癌、肝癌)、フォン・ヒッペル・リンドウ病(VHL)遺伝子(腎細胞癌)、BRCA1(乳癌)、p15(白血病、バーキットリンパ腫)、hMLH1(大腸癌)、ER(乳癌、大腸癌、肺癌;白血病)、HIC1(脳腫瘍、乳癌、大腸癌、腎臓癌)、MDG1(乳癌)、GST-π(前立腺癌)、O6-MGMT(脳腫瘍)、カルシトニン(上皮性悪性腫瘍、白血病)及びmyo-D(膀胱癌)(1,3)。
【0005】
上記とは逆の事態についての報告もなされており、CpGの低メチル化は腫瘍の進行に関与すると考えられている。例えば、ウロキナーゼCpGアイランドは、初期段階の非転移性の乳癌細胞では高メチル化されていることが見出されたが、高転移性の乳癌細胞では低メチル化されていた(4)。同様に、転移に関連するS100A4遺伝子内の一領域の低メチル化は、大腸腺癌細胞系における遺伝子活性化機構であると考えられている(5)。
【0006】
少なくとも8つの異なる方法が、幾つかの変法と共に、DNAゲノム中の5-メチルシトシン又は関連する修飾塩基の特徴づけを可能にしている(2)。いずれの方法にも、特異性、分解能、感度、起こりうるアーチファクトに関して、長所と短所がある。
【0007】
ゲノムの全体の核酸塩基組成は、DNAを化学的又は酵素的にその構成ヌクレオチドへと加水分解し、その後標準的な方法(クロマトグラフィー、電気泳動法及び高圧液体クロマトグラフィー)で分画して、その組成を解析することによって測定し得る。この方法によってゲノム中に存在する修飾塩基の量が定量されるが、ゲノムのどの部分が元々修飾されていたのかに関する情報は何も得られない。ジヌクレオチドの組成及び頻度は最近隣解析法で測定し得るが、この方法でも限られた配列情報しか得られない。これらの方法のどちらも、ゲノム特異的ではなく、ウイルスや他の内部寄生生物由来のDNAによるサンプルの汚染によって、判断を誤らせる結果をもたらしかねない。
【0008】
ゲノムの配列中の正確にどの位置に修飾塩基が存在するかに関するデータを提供し得る、さらに特異的な方法がある。ゲノムDNAはメチル化に対して感受性の制限酵素で解析される。しかしこの方法では、試験できる部位の数が、メチル化感受性制限酵素によって認識される配列の数によって限定される。シークエンシングでは配列特異的な情報が得られるが、メチル化パターンは、PCR中又は真核生物DNAが分子クローニングによってバクテリア中で増幅された場合には、保存されない。
【0009】
メチル化特異的変化が配列決定プロトコルの間保持されるような修飾配列を得るためには、メチル化特異的な方法で塩基を異なって修飾することが必要である。現在、異なった塩基修飾の解析を利用した3つのプロトコルがある。これらのプロトコルは全て、DNAの化学的処理によって誘導されるDNAの修飾と、それに続くDNA配列の解析を含んでいる。ヒドラジン(NH)、過マンガン酸塩(MnO-)、及び亜硫酸水素塩(HSO3-)は全て、シトシン塩基のメチル化状態に応じて、ゲノムDNA中のシトシン塩基を異なって修飾する。
【0010】
ヒドラジンは、シトシン又はチミンに対する反応性と比較すると、5-メチルシトシンへの反応性が低い。DNAとヒドラジンとを共にインキュベートした後、DNAを配列決定ゲルにかける。ヒドラジンで処理したDNAと、他の塩基特異的な化学切断化合物で処理したDNAとを比較すると、そのDNAの配列を決定することができる。ヒドラジン処理したDNAサンプルでは、5-メチルシトシン含有配列の位置が、ゲノムDNAからの配列決定反応のシトシン及びシトシン+チミジン特異的ラダーと比較して、バンドの消失またはバンド強度の低下をもたらす。このためヒドラジン法では5-メチルシトシンの存在と相関する負の結果が得られる。5-メチルシトシンを明確に同定するには、正のシグナルを生じさせる必要がある。5-メチルシトシン同定のためのヒドラジン修飾法のさらなる欠点は、μg量の鋳型DNAが必要となることである。
【0011】
弱酸pH及び室温の条件下で、過マンガン酸カリウムは選択的にチミン及び5-メチルシトシンと反応し、シトシン及びグアニンとは弱く反応するにすぎない。DNAを過マンガン酸塩と共にインキュベートした後、DNAを配列決定ゲルにかける。過マンガン酸塩で処理したDNAと他の塩基特異的な化学的切断化合物で処理したDNAとを比較すると、そのDNAの配列を決定することができる。したがって、DNAの過マンガン酸塩酸化はシトシンと5-メチルシトシンとの区別に使用できる(6)。過マンガン酸法は正の結果を生じ、このためヒドラジン法よりも利点があるが、過マンガン酸塩はシトシンとも弱く反応し、このためシトシンと5-メチルシトシンとの区別は、配列決定ゲル上のこれらのバンド強度の差に依存する。過マンガン酸塩による修飾のさらなる欠点は、やはりμg量の鋳型DNAが必要となることである。
【0012】
ゲノムDNAの亜硫酸水素塩処理は、鋳型核酸の非メチル化シトシン塩基をウラシルへと脱アミノ化するが、5-メチルシトシンは脱アミノ化に抵抗する。亜硫酸水素塩は二本鎖DNA中のシトシン塩基に対してほとんど活性を示さないため、ゲノムの二本鎖DNAを一本鎖DNAへと変性させるのが好ましい。標準的な亜硫酸水素塩による修飾法では、二本鎖DNAを一本鎖DNAへと変性させるためアルカリ(NaOH)中でのインキュベーションを用いる(7)。亜硫酸水素塩はシトシンを徐々に脱アミノ化し、インキュベーション時間は、全てのシトシンの完全な脱アミノ化と、長時間インキュベーション後のDNAの断片化との間で妥協しなければならない。亜硫酸水素塩による修飾法では、亜硫酸水素塩中での、ある範囲のインキュベーション時間、通常は4時間から20時間のインキュベーションを用いる。
【0013】
Grunauら(8)は、シトシンの亜硫酸水素塩媒介脱アミノ化の最適な条件について研究を行い、55℃で4時間のインキュベーションがシトシンの99%脱アミノ化をもたらすが、この条件下では84〜96%のDNAが分解されて、後続のステップの収率を低下させることを見出した。さらに、5-メチルシトシンはシトシンより速い速度で熱により脱アミノ化される。例えば、60℃における5-メチルシトシンの脱アミノ化速度はシトシンの脱アミノ化速度より1.5倍速い(9)。亜硫酸水素塩中でより低温でインキュベートすると、DNAの断片化は減少するが、シトシンの完全な脱アミノ化を達成するためにインキュベーション時間を14〜20時間へと延長しなければならない。亜硫酸水素塩による修飾では、PCRに基づく方法を利用した後続の解析のため、およそ10 ngのDNAが必要である。
【0014】
亜硫酸水素塩修飾によって生成した修飾DNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖はもはや相補的ではなく、このため次に続くPCRによる増幅は、鎖特異的である(すなわちプライマーは修飾センス鎖又は修飾アンチセンス鎖のいずれかに相補的である)ように設計されたプライマーを用いて行う必要がある。目的の領域がPCRによって増幅された場合、ウラシル(元はシトシン)はチミンに変換され、5-メチルシトシンはシトシンに変換される(7)。続いてPCR産物(アンプリコン)は以下の技法により解析することができる:標準DNAシークエンシング(7)又は配列情報を提供する他のPCRに基づいた技法、例えばメチル化特異的PCR(10)もしくはREMS-PCR (36)、及び制限酵素(3)もしくはメチル化特異的プローブ(11)による解析。
【0015】
亜硫酸水素塩法は、使い勝手が良い点及び検出感度がよいという点で他の従来の方法と比べて有利だが、この実験法からはアーチファクトが生じることがある(2)。すなわち、全てのシトシンがウラシルに変換されるとは限らず、小割合の5-メチルシトシンがチミジンに変換され(12)(DNAポリメラーゼはウラシルとチミンとを区別しない)、長時間のインキュベーション及び必要とされる非生理的バッファーに起因する断片化からのDNAの損失が生じ得る(8)。この方法は全体的に長たらしく、手間がかかり、結果を得るまでに2日〜3日実験操作を行い、少なくとも4〜20時間にわたり亜硫酸水素塩中でインキュベーションを行う必要がある。全てのエピジェネティク研究における律速段階は、亜硫酸水素塩修飾法を用いたサンプル調製にある。
【0016】
多種の標本(正常及び腫瘍組織、パラフィン包埋組織、ならびに血漿及び血清を含む)から抽出されたDNAは、亜硫酸水素塩処理とPCRに基づいた方法による解析とを併用して、異常にメチル化された配列を含むことが示されている(4,13,14)。
【0017】
シトシン塩基を脱アミノ化する能力を有する様々な酵素が示されてきた。シチジンデアミナーゼ(EC 3.5.4.5.)はシチジンをウリジンに変換する酵素で、原核生物及び真核生物に広く分布している。シトシンデアミナーゼ(EC 3.5.4.1.)はシトシンをウラシルに変換する。デオキシシチジンデアミナーゼ(EC 3.5.4.14.)はデオキシシチジンをデオキシウリジンに変換し、デオキシシチジル酸デアミナーゼはデオキシシチジン5-リン酸をデオキシウリジン5-リン酸に変換する。これらの酵素は、その酵素の出所源によって異なる程度の基質特異性を示す。シチジンデアミナーゼとシトシンデアミナーゼが、5-メチルシチジンと5-メチルシトシン及びこれらの非メチル化アナログを基質としてそれぞれ区別する能力は種特異的である。ヒト由来のシチジンデアミナーゼは、シトシン、デオキシシチジン及び5-メチルシチジンを含む多数のシチジン誘導体を、様々な効率で脱アミノ化することができる(15,16)。緑膿菌由来のシトシンデアミナーゼは5-メチルシトシンを利用することができ(17)、一方腸内細菌によって産生される該酵素が基質として利用し得るのはシトシンのみである。アスペルギルス・フミガーツス菌由来のシトシンデアミナーゼ及び酵母由来の該酵素は基質として5-メチルシトシンを利用することができる(18,19)。
【0018】
アポリポタンパク質BのmRNA編集酵素(ApoBRe)はRNAエディトソームの中心の構成成分である。RNAエディトソームの生理的役割は、特に胃腸組織内でapoB mRNAの6666番目の位置のシトシン塩基をウラシルへと脱アミノ化して、早期終止コドンを創出することである(20, 21)。シチジンデアミナーゼ活性を有する触媒成分はアポリポタンパク質B mRNA編集酵素触媒ポリペプチド1(Apolipoprotein B mRNA Editing Enzyme Catalytic Polypeptide 1: APOBEC1)と呼ばれる。mRNAはこの酵素の生理的基質であるが、in vivoでこの酵素がDNAに対する活性を有するという証拠がいくつか存在する。トランスジェニックマウス中でのアポリポタンパク質B mRNA編集酵素の誤った発現は癌を発症しやすくし(22)、大腸菌中でのヒト・アポリポタンパク質B mRNA編集酵素の発現は突然変異誘発遺伝子の表現型をもたらし、ここではUNG欠損株中の様々な遺伝子座において突然変異頻度が数千倍に高められている。
【0019】
UNGは、自然発生のシトシン脱アミノ化に起因するU:Gミスマッチの修復に関わる酵素であり、この酵素が不足すると細胞がゲノム中の脱アミノ化シトシンを修復することができなくなる(23)。DNAの配列決定により、突然変異は、DNA中でシトシン塩基がウラシル塩基に変換されることがきっかけで起こることが示された。5’隣接ピリミジンの要件を伴うこのモデル(23)で研究されたDNAの小さいストレッチには、若干のコンテキスト(context)特異性があるようである。その事実にも関わらず、生理的RNA基質中で、専らこの酵素による脱アミノ化の標的となるシトシン塩基(6666番目)は5’隣接プリン(アデノシン)を有するということである。5’隣接ピリミジンを有するシトシンをアポリポタンパク質B mRNA編集酵素で脱アミノ化するには、大腸菌モデルでは供給されない因子が必要となるのかもしれない。
【0020】
Petersen-Mahrt & Neuberger(24)による最近の研究では、in vitroにおいてDNA基質に対するアポリポタンパク質B mRNA編集酵素の脱アミノ化活性が検討された。二本鎖DNAに対しては活性が見出されなかったが、化学的に合成された一本鎖DNA基質中のシトシン塩基は容易に脱アミノ化され、酵素の粗抽出物と共に120分インキュベーションすると、3つのシトシン塩基の57%が脱アミノ化された。この酵素の活性は、RNaseで処理したとき、やや高くなるようであった。著者らは、粗抽出物中のアポリポタンパク質B mRNA編集酵素は1分子で、化学的に合成された一本鎖DNA基質中の1つのシトシン塩基を10分で脱アミノ化することができると算出した。著者らは、この遅い脱アミノ化速度は、彼らのアッセイがおそらく最適ではなかったためであると考えた。それは、活性に必要であるが大腸菌宿主中では発現されない他の因子が欠如していたり、ヒト酵素が大腸菌宿主中では適切に折り畳まれなかったり、活性に必要な翻訳後修飾が大腸菌宿主中では供給されなかったりするためであるとされた。
【0021】
活性化誘導シチジンデアミナーゼ(Activation-Induced Cytidine Deaminase: AID又はAICDAとして知られる)はB細胞特異的タンパク質である。活性化誘導シチジンデアミナーゼの発現は、免疫グロブリンのアイソタイプスイッチングを仲介する過程であるクラススイッチ組換え、及び免疫グロブリン可変領域遺伝子への多くの点突然変異の導入を伴う体細胞超突然変異の前条件である。活性化誘導シチジンデアミナーゼの作用様式は知られていない。現在の説、活性化誘導シチジンデアミナーゼがアポリポタンパク質B mRNA編集酵素及びシチジンデアミナーゼとの配列モチーフ相同性を有するという事実を重視している。
【0022】
活性化誘導シチジンデアミナーゼの作用様式に関する初期の説では、仮定される上記酵素のRNA編集機能が、クラススイッチ組換え及び体細胞超突然変異に不可欠なタンパク質をコードするmRNAの編集に関与している可能性があると提唱された。最も実験的な裏付けのある説は、活性化誘導シチジンデアミナーゼがDNA特異的シチジンデアミナーゼとして機能することを提案している。このモデルでは、活性化誘導シチジンデアミナーゼが体細胞超突然変異ホットスポット配列中のシトシン塩基を脱アミノ化してG:Uミスマッチを創出し、これらが異なって分割されて、体細胞超突然変異又はクラススイッチ組換えを起こすと提起されている(25)。後の説の証拠には、体細胞超突然変異が普通に見られるタイプのDNA損傷によって開始され、またdC/dG対を特異的に標的とする超突然変異の第一相が存在するという提案が含まれる。それには、活性化誘導シチジンデアミナーゼがDNAに対してシチジンデアミナーゼ活性を有する必要がある。活性化誘導シチジンデアミナーゼに関して発表された研究はすべて、体細胞超突然変異又は免疫グロブリンのアイソタイプスイッチングにおける上記酵素の役割を解明するためにin vivo基質を決定することに集中してきた。
【0023】
様々な研究所での研究から、ヒトの活性化誘導シチジンデアミナーゼは一本鎖DNA上のシトシンをin vitroで脱アミノ化しうる(26-29)が、一本鎖RNA上のシトシンは脱アミノ化し得ない(26,27)ことが示されている。in vitroでの二本鎖DNAに対する活性化誘導シチジンデアミナーゼの活性は、転写因子と結合したDNA上に限定される。転写は、安定したRループやステムループといった一本鎖DNA基質をもたらす二次構造を生成することによって二本鎖DNAの脱アミノ化を可能にする、という仮説が立てられてきた(28)。これらの二次構造は、二本鎖DNAの相補領域間で中心に位置する非相補領域(一本鎖になる)のバブルつまりループを作ることによってin vitroで模倣することができる。活性化誘導シチジンデアミナーゼはこのようなバブル中のシトシンを脱アミノ化する。脱アミノ化効率は一本鎖バブルの長さに依存する。Bransteitterら(27)は、化学的に合成された二本鎖DNA基質が5分間のインキュベーション中に脱アミノ化される割合を測定した。その結果、1ヌクレオチドのバブルを含む基質は脱アミノ化されず、3ヌクレオチドのバブルを含む基質は5%脱アミノ化され、4ヌクレオチドのバブルを含む基質は8%脱アミノ化され、5ヌクレオチドのバブルを含む基質は35%脱アミノ化され、9ヌクレオチドのバブルを含む基質は56%脱アミノ化されることがわかった。
【0024】
活性化誘導シチジンデアミナーゼの活性は生理学的標的(免疫グロブリン遺伝子座)に制限されるだろうという仮説が立てられてきた。なぜなら、激烈なDNAデアミナーゼ活性は細胞にとって有害であると考えられるからである。活性化誘導シチジンデアミナーゼのデアミナーゼ活性は配列特異的であるという示唆があり(30)、活性化誘導シチジンデアミナーゼは体細胞超突然変異のホットスポット配列であるRGYW(免疫グロブリン遺伝子の可変領域中で一般に変異する配列)に対して最大の活性を示すと仮定されている。Bransteitterら(27)は、in vitroでは、活性化誘導シチジンデアミナーゼが2つのホットスポット配列に対して、非ホットスポット配列に対する活性のおよそ3倍高い活性を有することを示した。反対に、Dickersonら(26)は、活性化誘導シチジンデアミナーゼのデアミナーゼ活性は配列特異的であるが、コールドスポット配列(免疫グロブリン遺伝子の可変領域の配列であって、in vivoでは変異を起こすことが見出されていない配列)もホットスポット配列と同様に脱アミノ化され、いくつかのホットスポット配列はバックグラウンドレベルでのみ脱アミノ化されることを見出した。
【0025】
Phamら(31)の研究では、大きな一本鎖DNA鋳型を用いて、活性化誘導シチジンデアミナーゼがin vitroでシトシン塩基を脱アミノ化する能力について試験した。これらの実験において、一本鎖DNA鋳型は、365ヌクレオチドの一本鎖ギャップ含有領域の一部としてlacZaレポーター配列の230ヌクレオチド標的を含むファージ環状DNA基質であった。インキュベーションは、1mMのEDTAと1mMのジチオスレイトールを加えた10mMのTRISバッファー(pH8.0)中で、500ngの二本鎖ファージDNA基質と40倍過剰の酵素とを用いて37℃で20分間行った。変異型ファージ(白色又は明るい青色のプラークを生じる)をUNG欠損型大腸菌にトランスフェクトし、その後クローンの配列決定を行うことにより突然変異のスペクトルを評価した。採用した試験条件下では、活性化誘導シチジンデアミナーゼの脱アミノ化活性は、配列コンテキストに応じてさまざまに変化することが見出された。著者らは、彼らの実験の結果は、この酵素が一本鎖DNA中のシトシン分子を順次脱アミノ化していく可動性の分子であることを示唆している、と考えた。
【0026】
Phamら(31)はまた、転写活性型のファージ基質における活性化誘導シチジンデアミナーゼの脱アミノ化活性を測定するプロトコルについて記述した。インキュベーションは、1mMのEDTAと10mMのMgCl2を加えた50mMのHEPESバッファー(pH7.5)中で、30nMの二本鎖ファージDNA基質を用いて37℃で30分間行った。このインキュベーションには、活性化誘導シチジンデアミナーゼにとってより接近可能な基質である転写活性型のDNAを生成するために、T7 RNAポリメラーゼとrNTPが含まれていた(27)。これらのインキュベーションは、非転写鎖上での活性化誘導シチジンデアミナーゼ介在脱アミノ化にはRNAポリメラーゼ(活発な転写)が必要であり、またRNA−DNAハイブリッドとして「保護された」転写鎖上での脱アミノ化は、およそ15倍低い速度で起こる、ことを示した。これらのインキュベーションはまた、良好な脱アミノ化がホットスポットモチーフで起こることも実証した。
【0027】
活性化誘導シチジンデアミナーゼのin vivoでの異所性発現を伴うモデルから、標的化されないシトシン脱アミノ化、すなわち免疫グロブリン遺伝子の可変領域以外の遺伝子の脱アミノ化が示される。例えば、ヒト免疫グロブリン標的遺伝子を欠くことが明らかな大腸菌中で発現したヒト活性化誘導シチジンデアミナーゼは、突然変異についてスクリーニングした遺伝子中でコンテキスト特異的な脱アミノ化を生じる(30)。このコンテキスト特異的な脱アミノ化の理由については検証されなかった。
【0028】
Bransteitterら(27)は最近、ヒト活性化誘導シチジンデアミナーゼを化学的に合成された様々な核酸基質と共にin vitroでインキュベートした。この研究は、非常に単純なモデルで、活性化誘導シチジンデアミナーゼが5-メチルシトシン塩基よりも10倍高い特異的活性でもってシトシン塩基を脱アミノ化することができることを示した。このモデルは、活性化誘導シチジンデアミナーゼを、1個又は2個のシトシン塩基を含む27又は33ヌクレオチドの化学合成した一本鎖DNA分子(相補DNA鎖は存在しない)と共にインキュベートすることを含んでいた。これらの人工基質は100 nMの高濃度で存在し、これは活性化誘導シチジンデアミナーゼの2倍過剰であった。個体から抽出されたゲノムDNAの複雑な混合物(そこには多数の異なる配列コンテキストのシトシン塩基を含む多数のメガ塩基のフラグメントが含まれており、しかもセンス鎖と相補的なアンチセンス鎖の両方が存在する)において、活性化誘導シチジンデアミナーゼがシトシン塩基をウラシルへと異なって変換する能力(5-メチルシトシンに対する活性はまったくないか、ほとんどない)に関しては、試験も検討もされなかった。
【0029】
活性化誘導シチジンデアミナーゼのデアミナーゼ活性は、強力なキレート剤である1,10-フェナントロリンで阻害されるが、弱いキレート剤であるEDTAでは阻害されない。このことは、活性化誘導シチジンデアミナーゼのデアミナーゼ活性には、強く結合した金属イオン、おそらくは亜鉛が必要であることを示唆する(27,29)。活性化誘導シチジンデアミナーゼは、50mM〜150mMの塩濃度においてデアミナーゼ活性を保持し、適度のEDTA(5〜10mM)に耐えることができ、広範囲のpH(7.6〜9.0のpHが検証済み)で作用し、室温〜37℃にて様々な効率で機能することができる(26)。これらの条件を用いると、ゲノムDNAは断片化することなく完全性を保持するようになる。活性化誘導シチジンデアミナーゼは、65℃で30分加熱した後でもまだ活性を有する(26)。
【0030】
酵素の突然変異型は天然に存在し得る(例えば、対立遺伝子変異体や、in vivo突然変異から生じた変異体)し、人工的に作製することもできる。突然変異タンパク質の作製方法は当技術分野で知られている(39)。特定のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を生じさせるといった合理的な方法に従って、又は無作為に、突然変異を人工的に作製することが可能であり、そのように作製された突然変異型のタンパク質は所望の活性について試験される。
【0031】
DNAを改変する酵素は、ほんの数時間のインキュベーションを必要とするにすぎない。例えば精製した制限酵素では、二本鎖DNAを完全に開裂するために、最適条件においてたった1時間のインキュベーションが必要である。Bransteitterら(27)は、化学的に合成された一本鎖DNA基質において16分での活性化誘導シチジンデアミナーゼによるシトシンのウラシルへの95%変換を測定し、また9ヌクレオチドの一本鎖バブルを有する合成基質では5分後にシトシンのウラシルへの56%変換を測定した。このように、この反応は迅速である。しかし、異なる反応条件を用いた他のグループの研究では、1個のシトシンを含む化学的に合成された一本鎖DNA基質は、活性化誘導シチジンデアミナーゼと共に30分インキュベーションした後に、たった10%がウラシルに変換されただけであることが示された(26)。
【発明の開示】
【0032】
発明の概要
本発明の1つの態様においては、個体から取得した、ゲノム又はミトコンドリア二本鎖DNAのサンプル中におけるアルキル化シトシンの存在又はレベルを検出する方法であって、
(a) 個体由来の二本鎖DNAのサンプルを取得すること、
(b) 該二本鎖DNAの少なくとも1つの領域を一本鎖DNAに変換すること、
(c) ステップ(b)で得られた該一本鎖DNAの標的領域を少なくとも1つの酵素と反応させること、ただし、該酵素はアルキル化シトシンとシトシンを異なって改変するものであること、及び
(d) 該酵素による標的領域の酵素的改変のレベルを決定すること、
を含む、上記方法を提供する。
【0033】
通常、前記酵素が用いられる反応条件は、該酵素が実質的にアルキル化シトシン又はシトシンのいずれか一方のみと反応し、両方とは反応しないという条件である。好ましくは、該酵素は実質的にアルキル化シトシン又はシトシンの一方のみと反応する能力があるものとする。
【0034】
好ましくは、二本鎖DNA領域の一本鎖DNAへの変換は、2本の鎖を少なくとも部分的に分離することを含む。鎖の分離は、例えば、DNAの熱変性又は鎖置換プローブの使用によって行うことができる。他に採り得る技法には、二本鎖DNAの化学的又は酵素的変性が含まれる。また、前記方法は、ひとたび二本鎖DNAの2本の鎖が分離されたら、一本鎖DNAの標的領域への酵素による接近を容易にするために、該二本鎖DNAの2本の鎖が一緒にアニーリングするのを抑制することを含んでいてもよい。
【0035】
分離した鎖がアニーリングするのを抑制するために、上記二本鎖DNAの各鎖にハイブリダイズすることができる1つ以上のプローブを使用し得る。複数のプローブを用いる場合には、それらのプローブは一方の鎖にのみハイブリダイズするか、又は1つ以上のプローブが一方の鎖にハイブリダイズし、残りのプローブが他方の鎖にハイブリダイズするようにする。
【0036】
したがって、本発明の方法は、前記2本の鎖の分離に続いて、少なくとも1つのプローブを前記二本鎖DNAの1本の鎖にハイブリダイズさせ、それによって2本の鎖が一緒にアニーリングするのを抑制し、その結果一本鎖DNAの標的領域への該酵素による接近を容易にすること、をさらに含む。
【0037】
プローブは、通常はオリゴヌクレオチドであり、センスプローブ、酵素が標的領域に接近できるように一本鎖DNA中にループを形成させるためのルーピングプローブ、アンチセンスプローブ、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。さらに一般的には、プローブは二本鎖DNAの1つの鎖の単一の連続した領域にハイブリダイズしてもよいし、あるいはアルキル化シトシンの存在又はレベルについて評価される上記鎖の標的領域に隣接する個別の上流領域と下流領域とを隔てるものであってもよい。
【0038】
前者の事例においては、少なくとも2つの上記プローブを使用することができ、これらのプローブのうち1つは標的領域の下流にある上記鎖の領域にハイブリダイズし、別のプローブは標的領域の上流にある上記鎖にハイブリダイズする。こうすることによって二本鎖DNAの他方の鎖が標的領域にハイブリダイズすることが抑制される。
【0039】
後者の事例において、上記プローブは、上記鎖にハイブリダイズしたとき、鎖の相隔たった上流領域と下流領域とが互いに近づいて標的領域を組み込んだループ又はバブルを形成するような配列を有してもよい。上記プローブは、例えば、上記鎖にハイブリダイズする向かい合った末端領域と、上記鎖の標的領域にハイブリダイズしない非相補配列を有する中間領域を有する。このようにして標的領域を組み込んだループ又はバブルが形成され、二本鎖DNAの他方の鎖が標的領域にハイブリダイズするのを抑制することができる。ループ又はバブルの形成を容易にするために、プローブの中間領域には、プローブと上記鎖とのハイブリダイゼーション後に一緒にハイブリダイズする逆方向反復配列を組み込んでもよい。
【0040】
酵素と反応する一本鎖DNAの標的領域中のアルキル化シトシンの存在又はレベルを検出するために、通常は標的領域を増幅し、その結果生じるアンプリコンを、上記酵素による標的領域の酵素的改変から生じた配列改変について解析する。したがって、本発明の方法は、
上記酵素と反応した一本鎖DNAの標的領域を、サーモサイクリング及びプライマーを含む方法により増幅して増幅産物を取得すること、及び
一本鎖DNAの標的領域中のアルキル化シトシンの存在と一致する配列の変異について増幅産物を解析すること、
をさらに含む。
【0041】
アルキル化シトシンのレベルの決定は、点突然変異のような配列改変を検出することが可能ないずれの技法を用いて行ってもよい。これらの技法は核酸シークエンシング、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、制限酵素による消化、及び特定の核酸配列に結合するプローブの使用を含む技法を包含するが、これらに限定されるものではない。この決定は、一本鎖DNAの標的領域に含有されるアルキル化シトシンの定量的及び/又は定性的解析を含む。特に、DNA中の高メチル化又は低メチル化、さらに特定すると、シトシンのアルキル化パターンを本発明の方法によって検出することができる。
【0042】
評価される上記のDNAには、遺伝子又はその領域、好ましくは、5’非コード領域といった遺伝子の非コード調節領域が含まれる。5’非コード領域は遺伝子のプロモーター又はプロモーター領域を含む。一般的には、二本鎖DNAはゲノムDNAとする。
【0043】
したがって、本発明の他の態様においては、個体から取得した、ゲノムDNAのサンプル中におけるアルキル化シトシンの存在又はレベルを検出する方法であって、
(a) 個体由来のゲノムDNAのサンプルを取得すること、
(b) 該ゲノムDNAの少なくとも1つの領域を一本鎖DNAに変換すること、
(c) ステップ(b)で得られた該一本鎖DNAの標的領域を少なくとも1つの酵素と反応させること、ただし、該酵素はアルキル化シトシン及びシトシンを異なって改変するものであること、及び
(d) 該酵素による標的領域の酵素的改変のレベルを決定すること、
を含む、上記方法を提供する。
【0044】
本発明のさらに別の態様においては、個体から取得したゲノムDNAのサンプル中におけるアルキル化シトシンの存在又はレベルを検出することを含む、個体の疾患又は症状を診断する方法であって、
(a) 個体由来のゲノムDNAのサンプルを取得すること、
(b) 該ゲノムDNAの少なくとも1つの領域を一本鎖DNAに変換すること、
(c) ステップ(b)で得られた該一本鎖DNAの標的領域を少なくとも1つの酵素と反応させること、ただし、該酵素はアルキル化シトシン及びシトシンを異なって改変するものであること、及び
(d) 該酵素による標的領域の酵素的改変のレベルを決定すること、
を含む、上記方法を提供する。
【0045】
通常、本発明の方法において使用される酵素はデアミナーゼ酵素である。検出されるアルキル化シトシンは、一般的には5-アルキルシトシンであり、通常5-メチルシトシンである。5-メチルシトシンの存在は、多くの症状及び疾患状態における有用なマーカーであり、またアップレギュレーション又はダウンレギュレーションされた遺伝子発現のための有用なマーカーでもある。突然変異及びエピジェネティック多型解析においても5-メチルシトシンの存在の検出は有用である。
【0046】
したがって、DNA中の5-メチルシトシンの検出には、重要な診断上の用途及び他の用途がある。
【0047】
さらに別の態様においては、本発明の方法を実施するための1種以上の試薬及び使用説明書を含む、本発明の方法で使用するためのキットを提供する。1又は複数の試薬は、例えば上記酵素、バッファー、PCR用のプライマー及び使用する二本鎖DNAの鎖を分離するためのプローブから選択される。
【0048】
本明細書において「個体」という用語は、最も広い意味に解釈され、その範囲内にヒトならびに非ヒト動物、細菌、酵母、真菌及びウイルスを含むものとする。
【0049】
本明細書において言及する全ての刊行物は、参照により本明細書にそのまま全て組み入れられる。本明細書で述べられてきた文書、実施行為、材料、装置、論文等に関するいずれの考察も、もっぱら本発明の背景を説明するという目的のために用いられる。これらの事項のいずれか又は全てが先行技術の基礎の一部を形成することを容認するものとして、または本出願の各請求項の優先日前にどこにでも存在していたので、本発明に関連する技術分野における技術常識であることを容認するものとして解釈されるべきでない。
【0050】
本明細書を通じて、「含む」又は「含んでなる」という用語は、記載された要素、整数もしくはステップ、又は要素、整数もしくはステップの群の包含を意味すると解されるが、他のいずれの要素、整数もしくはステップ、又は要素、整数もしくはステップの群も排除するものではない。
【0051】
本発明の範囲に含まれる方法の特徴及び利点は、下記の本発明の好適な実施態様の説明によってさらに明らかとなる。
【0052】
発明の詳細な説明
通常、本発明の方法において用いられる酵素は、シチジン又はシトシンのデアミナーゼ活性を有し、ゲノムDNA中のシトシン塩基を、実質的にDNA中の5-メチルシトシン塩基を1つも脱アミノ化することなく、ウラシルへと脱アミノ化することができる。上記酵素は好熱菌由来の熱安定性のシチジン又はシトシンデアミナーゼでありうる。
【0053】
上記酵素は、例えば、活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)(GenBankヒトmRNA 参照配列番号NM_020661; GenBankヒトタンパク質配列番号NP_065712.1)、シチジンデアミナーゼ(シチジンアミノヒドロラーゼEC3.5.4.5としても知られる)、シトシンデアミナーゼ(シトシンアミノヒドロラーゼEC3.5.4.1としても知られる)、デオキシシチジンデアミナーゼ(デオキシシチジンアミノヒドロラーゼEC3.5.4.14としても知られる)、デオキシシチジレートデアミナーゼ(デオキシシチジレートアミノヒドロラーゼとしても知られる)、アポリポタンパク質B mRNA編集酵素(ApoBRe)及びこれらの触媒断片、相同体及び変異体から選択することができる。触媒断片とは、完全な酵素の触媒活性のうち、幾つかのあるいは全ての触媒活性を保持している酵素断片を意味する。通常、本発明で利用される触媒断片は完全な酵素と実質的に同等の触媒活性を有するものである。ApoBReの触媒断片には以下のものが含まれる:APOBEC1(触媒ポリペプチド1、転写物変異体1:GenBankヒトmRNA参照配列番号NM_001644、GenBankヒトタンパク質配列番号NP_001635.1; 触媒ポリペプチド1、転写物変異体2:GenBankヒトmRNA参照配列番号NM_005889、GenBankヒトタンパク質配列番号NP_005880.1)。APOBEC1の相同体はAPOBEC2及びAPOBEC3A〜APOBEC3Gを含み、そのような相同体の1種以上を本明細書で記載する方法において使用してもよい。これらの相同体の配列データは、GenBankのデータベース(National Center for Biotechnology Information, Rockville Pike, Bethesda, MD, USA)から公に利用可能である(APOBEC2: GenBankヒトmRNA参照配列番号NM_006789、GenBankヒトタンパク質配列番号NP_006780.1; APOBEC3A: GenBankヒトmRNA参照配列番号NM_145699、GenBankヒトタンパク質配列番号NP_663745.1; APOBEC3B: GenBankヒトmRNA参照配列番号NM_004900、GenBankヒトタンパク質配列番号NP_004891.3; APOBEC3C: GenBankヒトmRNA参照配列番号NM_014508、GenBankヒトタンパク質配列番号NP_055323.2; APOBEC3D: GenBankヒトmRNA参照配列番号NM_152426、GenBankヒトタンパク質配列番号NP_689639.1; APOBEC3E: GenBankヒトmRNA参照配列番号NM_002331;APOBEC3F: GenBankヒトmRNA参照配列番号NM_145298、GenBankヒトタンパク質配列番号NP_660341.2; APOBEC3G: GenBankヒトmRNA参照配列番号NM_21822、GenBankヒトタンパク質配列番号NP_068594.1)。
【0054】
使用する酵素は、野生型酵素の変異型又は触媒断片もしくは相同体でもよいが、これらはシチジンもしくはシトシンデアミナーゼ活性を有するものである。これらの変異型酵素は自然界から単離したものでも、当技術分野において公知の合理的突然変異もしくはランダム突然変異のプロトコルによって作出されたものでもよい(例えば、Twyman R.M.,”RecomBinant DNA and molecular cloning”, Chapter 24, Advanced Molecular Biology, A Concise Reference. BIOS Scientific Publishers Limited (39)を参照されたい)。本発明の方法においては、所望の活性を有するこれらの変異体酵素は全て使用し得る。さらに、本明細書に記載の方法においては単一の酵素を利用してもよいし、又は、例えば野生型酵素、及びその変異体、相同体、改変型及び突然変異型、ならびにそれらの触媒断片から独立に選択される、所望の活性を有する異なる酵素の組み合わせを利用してもよい。
【0055】
シトシンデアミナーゼ活性を有する酵素は、B細胞リンパ球及び、大腸菌や昆虫細胞といった形質導入発現系を含む多くの供給源から精製することができる。例えばAIDは、昆虫細胞中のバキュロウイルス系でGST融合タンパク質として発現させて、アフィニティーカラムで精製する(Bransteitter 2003. PNAS 100:4102)。
【0056】
本発明の方法においては通常、ゲノムDNAを使用するが、このゲノムDNAは適当と考えられるどのような細胞又は生物サンプルから抽出してもよい。標準的プロトコルによって抽出したゲノムDNAは様々な程度に断片化され、大部分は二本鎖である。活性化誘導シチジンデアミナーゼ及びシチジンデアミナーゼ活性を有する他の酵素は、一般的に一本鎖DNA、又は二本鎖DNA中の一本鎖ループ領域に対して最も高い活性を有する(27)。熱変性、化学的変性、タンパク質結合及びエキソヌクレアーゼ活性を含む様々な方法によって二本鎖DNAを一本鎖DNAとすることが可能であり、これらの技法のいずれを利用してもよい。
【0057】
熱変性は、一本鎖DNAを生成するために一般に利用され、PCRのような方法で使用されている。化学変性は、アルカリ(7,32)又はホルムアミド(32)といった化学物質中でのインキュベーションを必要とする。バクテリオファージT4遺伝子32タンパク質(及びこのタンパク質のトランケート型)のような一本鎖DNAに結合するタンパク質とのインキュベーションは、ゲノムDNAの二重らせんを不安定にし、二次構造を抑制する(33,34)。また、酵素的変性も使用することができ、大腸菌由来のエキソヌクレアーゼIII(この酵素は二本鎖DNAの3’ヒドロキシ末端からのモノヌクレオチドの3’から5’の方向への除去を触媒する)などのエキソヌクレアーゼとのインキュベーションにより二本鎖DNAの1本の鎖の選択的な酵素的分解が生じる。エキソヌクレアーゼIIIは、ジデオキシ・シークエンシング(35)、MALDI-TOF質量分析を用いた直接シークエンシング(36)、及び一本鎖DNA高次構造多型解析(32)に用いる一本鎖DNA基質の調製(図3Aから3Cを参照)に利用されてきた。
【0058】
ペプチド核酸(PNA)及びロックド核酸(Locked Nucleic Acid: LNA)といったヌクレオチドアナログは、高い配列特異性及び親和性でもってRNA及びDNAの両方に結合する。これらのアナログDNA二本鎖はDNA:DNA結合よりも安定であり、ヌクレオチドアナログを含有するオリゴヌクレオチドプローブは鎖侵入(strand invasion)特性を示しうる。例えば、PNAプローブは安定なPNA:DNA三重らせん(フーグスティーン型及びワトソン/クリック型塩基対合を含む)の生成及び鎖置換を介して二本鎖DNAに侵入する能力を有する。PNAプローブはin vitro(一塩基多型の検出(40))及びin vivo(T7 RNAポリメラーゼ、転写活性化因子、ヌクレアーゼ、制限酵素及びメチラーゼといった酵素への接近の阻止(41))の両方において有用性が示されている。したがって、対象のアンチセンス鎖に相補的な鎖置換プローブ(すなわち、標的センス鎖と同じ配列)は、標的センス鎖を一本鎖にして、シトシンデアミナーゼ活性の標的として利用可能にすることができる。
【0059】
鎖置換プローブは、二重らせん、三重らせん侵入又は非侵入性三重らせん形成を経て結合するように設計することが可能であり(42,43)、鎖置換プローブを用いることによって事前のDNA変性ステップが不要となる。鎖置換プローブの結合速度及び特異性は反応条件及びその設計変更によって改善/改変し得る。鎖置換プローブの設計には、モノ-PNA、ビス-PNA(二本鎖DNAに結合するとPループを形成する)、ビス-PNAオープナー(44)、リシンのような陽イオン残基の付加及びプソイドイソシトシン(J-塩基)の組込み(45)が含まれ得る。従って、本発明は明示的に、二本鎖DNAを少なくとも部分的に分離するためのPNAやLNAといったヌクレオチドアナログを含むか又は上記ヌクレオチドアナログからなる核酸アナログプローブの使用にまで及ぶ。
【0060】
ゲノムDNAの鎖の分離によって生成された一本鎖DNAとハイブリダイズして、分離した鎖同士のアニーリングを抑制し、それによって酵素が目的とする標的領域に接近できるようにするために使用されるプローブは、一般的には、合成のオリゴヌクレオチドプローブ又は核酸アナログプローブとする。特に、プローブは独立に、DNAプローブもしくはその類似体(例えば、RNA、PNAもしくはLNAプローブ)、又は1個以上のヌクレオチドアナログ(ヌクレオチドアナログを含む又はヌクレオチドアナログからなる)を含む他の核酸アナログプローブであってもよい。さらに、プローブはセンスプローブ、アンチセンスプローブ、ルーピングプローブ及びこれらの組合せから選択してもよい。一般的に、上記プローブはプライマーとして作用することはできず、PCRの間に伸長することはない。プローブの長さは通常10塩基程度で、普通は約10〜50塩基長であり、好ましくは約17〜約30塩基長である。しかし、より長いプローブを除外するわけではなく、上記酵素とDNA鎖上の複数部位との反応を起こり易くするため、分析対象のDNA鎖の長さに沿って複数のループ又はバブルを形成させることに用いてもよい(図3Aから3Cを参照)。
【0061】
プローブ中で用いるヌクレオチドアナログは、下記のリスト中のアナログを含むが、これらに限定されるものではない。
【0062】

【0063】
一本鎖ゲノムDNAと、シトシンを脱アミノ化するが5-メチルシトシンは脱アミノ化しない選択的能力を有する酵素とのインキュベーションは、ウラシルがシトシン残基に取って代わるが、5-メチルシトシン残基は実質的に変化しない配列をもたらす。上記DNAと選択されたデアミナーゼ酵素との反応のための最適な反応条件は、1つ以上の使用する反応条件を変更することによって決定し得る。
【0064】
大腸癌細胞株SW480由来のゲノムDNAは、p16遺伝子のプロモーター領域にあるCpGアイランドのCpG部位に存在するシトシンが完全に5-メチル化されていることを示す。この遺伝子のこの領域のDNAは、非メチル化シトシンをも含む。したがって、この細胞株由来のゲノムDNAは、シチジンデアミナーゼ活性を有する酵素による脱アミノ化の基質としてDNA中に組み込まれたシトシンと5-メチルシトシンを最大限に区別する最適条件を決定するために、反応の可変要因を検証するためのモデル基質を提供する。
【0065】
最適な反応条件を決定するため、標準的な方法を用いてSW480細胞からゲノムDNAを抽出する。次に細胞から抽出したDNAを、好ましくは熱変性によって、一本鎖DNAへと変換する。分離した鎖同士の再アニーリングは、上記のプローブを用いて抑制することができる。また、反応条件を最適化するために、又は本発明の方法において用いるAIDや他のデアミナーゼ酵素のような酵素を評価するために、複数のCpG部位を有する3つのCpGアイランドを含むE-カドヘリン遺伝子のプロモーター領域を用いることもできる。
【0066】
アルキル化シトシン及びシトシンを異なって改変する酵素の能力は、該酵素を一本鎖DNAに添加し、ある範囲の可変要因の下でインキュベートすることによって評価することができる。かかる可変要因は例えば以下から選択される:DNAの濃度、酵素の濃度、インキュベーションの時間、インキュベーションの温度、バッファーイオンの組成及び濃度(一般に用いられるバッファーとしては、TRIS、HEPES、MOPS及びイミダゾールが含まれる)、バッファーのpH(pH4.0〜10.0)、塩の濃度及び種類(一般に用いられる塩としては、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カリウム、酢酸カリウム、硫酸塩、アンモニウム塩が含まれる)、様々な金属陽イオンの濃度(例えばマグネシウム、マンガン、鉛及びカルシウム)、もし存在するならば、様々なタンパク質安定剤(例えばジチオスレイトール(DTT)のような還元剤)、他のタンパク質(例えばウシ血清アルブミン(BSA))、糖類(スクロース、マルトース、グルコース、トレハロース、グリセロール及びフルクトース)、界面活性剤(Triton(登録商標)X-100及びTween-20)、及び共溶媒(例えばプロリン、ベタイン、ホルムアミド、DMSO、アルコール類及びポリオール類)の濃度。その後、これらの可変要因の異なった組合せを用いて達成されたシトシンと5-メチルシトシンとの区別の程度は、下記にさらに記載するプロトコルによって評価することができる。当業者は、上記の反応条件の可変要因のリストが排他的でなく、酵素の基質特異性及び反応速度を変更又は増強する条件及び試薬のさらなる例が公に入手可能な文献に記載されていることを理解するだろう。
【0067】
PCR産物及びゲノムDNAのほかに、化学的に合成したオリゴヌクレオチドを所定の酵素の最適な反応条件を決定するために利用することができる。上記オリゴヌクレオチドは5-メチルシトシン塩基を含む形で又はこれを除いた形で作製することができる。このような化学合成オリゴヌクレオチドは、酵素の基質を一本鎖DNA又は二本鎖DNA(化学合成したアンチセンス鎖にアニーリングされる)として提供しうる。二本鎖DNAは、最大の活性のためには一本鎖基質を必要とするAIDのようなデアミナーゼ酵素への接近可能性を最大とするため、二本鎖基質を一本鎖にする方法及び反応条件を最適化するのに有用である。さらに、PCR産物中のシトシンヌクレオチドは、5’..CG..3’配列中のシトシンを認識してメチル化するMsssI及び5’..CCGG..3’配列中に内在するシトシンをメチル化するHpaIIのようなメチルトランスフェラーゼと共にインキュベーションすることによってメチル化され得る。また、細胞株又は正常なヒトドナー由来のゲノムDNAは酵素媒介シトシン脱アミノ化を最適化するための基質としても役に立ちうる。上記基質(化学的に合成されたオリゴヌクレオチド、PCR産物又はゲノムDNA)のいずれかに含まれるシトシンヌクレオチドのメチル化状態は、標準的な慣用の亜硫酸水素塩修飾法及び配列決定法で評価することができる。
【0068】
試験用DNAと上記酵素とのインキュベーションに続き、一般的には該DNA中の対象の標的領域をPCRで増幅する。通常、PCRの開始の前に上記酵素を熱変性させる。改変型DNAをPCRの鋳型として用いると、もとの配列中のシトシンに代わってチミジン残基を有し、5-メチルシトシンに代わってシトシンを有する増幅配列(アンプリコン)が得られる。従って、上記酵素によるシトシン塩基のウラシルへの変換と、これに続くPCRによるチミンへの変換は、もとのDNA鋳型中のシトシンのメチル化状態と関連して配列が相違する改変DNAをもたらす。
【0069】
これらの配列変化は、チミジン塩基とシトシン塩基とを区別することが可能な、どのようなプロトコルを用いても検出することができる。そのような技法としては次のものが挙げられる:標的領域の直接シークエンシング(例えば、Hermanら(10)参照)、制限酵素を用いたPCRアンプリコンの消化、メチル化特異的PCR(10)、制限エンドヌクレアーゼ媒介選択的PCR(REMS-PCR)(例えば、(37);国際特許出願番号PCT/AU96/00213)及びメチル化特異的プローブとのハイブリダイゼーション(11)。メチル化特異的PCRは、上記酵素による変換後のメチル化領域と非メチル化領域との配列の相違を利用したプライマーに依存する。これらの全ての方法から、評価対象である試験DNAの標的領域におけるシトシンのメチル化状態に関する情報が得られる。
【0070】
REMS-PCRによる増幅の選択性は、この方法が正常配列のバックグラウンドにおける腫瘍配列のような希少な遺伝的変異の分析、又は母体配列のバックグラウンドにおける胎児配列の分析によく適合するということを意味する。従って本発明の方法は、変化した又は異常なシトシンメチル化パターンによって特徴付けられる変異配列の存在について体液を分析する、最小限に侵襲的なアッセイの基礎を構成しうる。
【0071】
本発明の方法は、例えばp16遺伝子プロモーター内のCpGアイランドの高メチル化といった、ヒト腫瘍と関連している遺伝子のプロモーター領域内の高メチル化配列を検出するために用いられる。この領域の高メチル化は上記のとおり膀胱癌、乳癌、胃癌、頭頸部癌、食道癌、大腸癌、肺癌及び肝癌において検出されている。ヒト腫瘍に関連したCpGアイランドの高メチル化を有する遺伝子の他の例として、以下を挙げることができる:E-カドヘリン(乳癌、前立腺癌、大腸癌、膀胱癌、肝癌)、フォン・ヒッペル・リンドウ病(VHL)遺伝子(腎細胞癌)、BRCA1(乳癌)、p15(白血病、バーキットリンパ腫)、hMLH1(大腸癌)、ER(乳癌、大腸癌、肺癌及び白血病)、HIC1(脳腫瘍、乳癌、大腸癌、腎臓癌)、MDG1(乳癌)、GST-π(前立腺癌)、O6-MGMT(脳腫瘍)、カルシトニン(上皮性悪性腫瘍及び白血病)及びmyo-D(膀胱癌)(1,3)。
【0072】
本明細書に記載される方法は、低メチル化の領域、例えば癌におけるウロキナーゼ又はS100A4のような遺伝子の転写活性化に関連した低メチル化の領域を同定する際にも用いられる。
【0073】
従って、変化したメチル化パターンは腫瘍細胞のマーカーとして使用することができる。このようなマーカーを利用した特定の用途には、例えば腫瘍もしくは癌の早期診断又は最小限に侵襲的なスクリーニング、リンパ節中の微小転移性もしくは転移性疾患の検出、腫瘍の縁にある非切除腫瘍細胞もしくは他の残留疾病の検出、又は再発を予測するためのツールが含まれる。さらに、個別の遺伝子座における5-メチルシトシン塩基のパターンの差異を、脆弱X症候群や変化した遺伝子インプリンティング状態といった病状又は胎児DNAのマーカーとして用いてもよい。また、5-メチルシトシンの存在はウイルス、細菌又は他の微生物もしくは病原体に関連した内因性又は外因性DNAのマーカーともなり、こうして病原体もしくは微生物による感染を示すための、又は病原体もしくは微生物を同定するための手段を提供する。
【0074】
DNAを一本鎖にするためのバッファー、イオン強度、pH及び他の反応条件を最適化し、かつ異なる酵素を組み合わせると、DNA中の標的塩基を実質的に完全に脱アミノ化することができる。しかし、完全な脱アミノ化は、メチル化分析の絶対条件ではない。例えば、メチル化シトシンの存在は、内部対照に対して標的部位での脱アミノ化の割合(程度)を比較することによって検出し得る。内部対照は、メチル化されないことが知られているゲノムDNA内の部位であってよいし、上記反応に投入される合成の非メチル化DNAであってもよい。2つの標的部位(標的及び内部対照)における脱アミノ化率の測定は、例えばリアルタイム定量的メチル化特異性PCR(MSP)(11,46)プロトコル、COBRAアッセイにおける開裂パーセントの比較(4)、又は配列決定ゲル上のバンド強度の比較(8)を用いて行うことができる。
【0075】
合成の内部対照を作製するために使用し得る1つの方法を図1に示す。詳細には、内部対照を作製するために、ゲノムDNA鋳型の内部フラグメントを、ゲノムDNAに相補的な3’末端と非相補的な5’タグを有するプライマーで増幅する(A)。その後ゲノムDNAに特異的であるが内部対照フラグメントは増幅しない外側プライマーを用いてゲノムDNAを増幅する(B)。同様に、内部対照フラグメントに特異的であるがゲノムDNAは増幅しないプライマーを用いて内部対照フラグメントを増幅する(C)。
【0076】
あるいはまた、対照を別の反応で行ってもよい。例えば、ゲノムDNAを上記で説明した定量的リアルタイムMSPで分析し、亜硫酸水素塩処理したメチル化ゲノムDNA(M標準)、亜硫酸水素塩処理した非メチル化ゲノムDNA(U標準)及び未処理の非メチル化ゲノムDNA(W標準)を用いて3つの標準曲線を作成する。メチル化指数(MI%)は、MI%=M÷(M+U)×100として算出できる。算出されたMI%においては、W%=W÷(W+M+U)×100として算出された、亜硫酸水素塩処理によりCからUへと変換されないDNAのパーセント(W%)(バックグラウンド)が考慮されていない。上記M、U及びWの各値を、各標準曲線を参照して試験DNAサンプルについて概算する(46)。MI%からバックグラウンドを除去するために、下記の計算を用いることができる: MI%(マイナスバックグラウンド)= MI%×(1−(W%÷100))。従ってこの式から、分析対象となるゲノムDNAの試験配列中のメチル化シトシンの真の量を推定することが可能となる。前記ゲノムDNA中のシトシンのウラシルへの変換は100%未満である。
【0077】
反応条件の最適化、又は酵素的改変の効率の評価に用いるための、シトシンのメチル化状態が知られている対照DNA配列としては、以下の対照が含まれる:プラスミド、dCTPを5-メチル-dCTPで置換することによって生成されたPCR断片(38)、および全ての遺伝子について普遍的にメチル化されたDNAである商業的に入手可能なヒトゲノム(CpGenomeTM Universally Methylated DNA、Intergen Company、カタログ番号S7821)が挙げられる。さらに、メチル化状態が既知の細胞株から抽出された細胞株DNAを陽性対照および陰性対照に用いてもよい。例えば、p16遺伝子のプロモーター領域中におけるCpGアイランドのCpGジヌクレオチドは、肺癌細胞株H157及びU1752では完全にメチル化されており、肺癌細胞株H249及びH209ではメチル化されていない(10)。ゲノムDNAは当技術分野で周知の標準プロトコルを用いて細胞株から抽出することができる。
【0078】
評価対象の試験DNA中のシトシン塩基の酵素的改変は、通常、上記酵素によるDNA中のシトシン塩基の改変を達成するのに必要と考えられる最小限のインキュベーション時間を用いて、かつ上記DNAの過剰な断片化を招かない条件下で実施する。有利なことに、このプロトコルは一般的に、当技術分野で知られている慣用のDNA改変プロトコルよりも迅速である。
【0079】
本発明の本質をさらに明確に理解できるように、下記の非限定的な実施例を参考にして本発明の好適な形態を説明することにする。
【実施例1】
【0080】
p16(INK4a)遺伝子のプロモーターに存在するCpGアイランドのメチル化状態を検出するための、活性化誘導シチジンデアミナーゼを用いたゲノムDNAの酵素的変換
最初に、当技術分野で周知の標準的な抽出プロトコルを用いて、ゲノムDNAを個体由来の血液又は組織サンプルから抽出する。p16遺伝子のプロモーターに存在するCpGアイランド中の5-メチルシトシンを検出するための陽性対照として、全ての遺伝子について普遍的にメチル化されたヒトゲノムDNA(CpGenomeTM Universally Methylated DNA)を用いる。
【0081】
熱変性を用いて二本鎖ゲノムDNAから一本鎖DNAを生成する。続いて、熱変性の結果として生じた一本鎖DNAを、DNA中のシトシン塩基の脱アミノ化は促進するが5-メチルシトシン塩基の脱アミノ化は促進しない条件下で、活性化誘導シチジンデアミナーゼと共にインキュベートする。活性化誘導シチジンデアミナーゼはいくつかの方法で調製することができ、例えば活性型B細胞からの粗抽出物として(28)、また精製を容易にする融合タンパク質の発現(26,27)により調製し得る。
【0082】
次に、p16プロモーターのCpGアイランドの前後の対象領域(GenBank登録番号X94154)をPCRで増幅する。増幅効率がメチル化状態に依存するという可能性を減じるため、メチル化ホットスポットではない領域でプライマーを選択する。適切なプライマー配列はHermanら(10)に記載されている。PCR産物は、鋳型ゲノムDNA中に非メチル化シトシンが存在する場合にはチミジン塩基を含有し、鋳型ゲノムDNA中に5-メチルシトシン塩基が存在する場合にはシトシン塩基を含有する。その後、p16遺伝子のプロモーター領域に存在するCpGアイランドのメチル化状態を、既知の参照配列と比較することにより上記に記載した適切なプロトコルを用いて評価する。p16遺伝子のプロモーター領域に存在するCpGアイランド内部のメチル化CpG配列の検出は、膀胱、乳房、胃、頭頸部、食道、大腸、肺又は肝臓を含む幾つかの器官における腫瘍マーカーとして使用し得る。
【実施例2】
【0083】
p16(INK4a)遺伝子のプロモーターに存在するCpGアイランド中の個々のCpGジヌクレオチドのメチル化状態の検出を容易にするための、活性化誘導シチジンデアミナーゼを用いたゲノムDNAの酵素的変換
実施例1と同様に、最初に当技術分野で周知の標準的な抽出プロトコルを用いてゲノムDNAを個体由来の血液又は組織サンプルから抽出する。全ての遺伝子について普遍的にメチル化されたヒトゲノムDNA(CpGenomeTM Universally Methylated DNA)を、p16遺伝子(CDKN2遺伝子とも呼ばれる、GenBank登録番号X94154)のプロモーターに存在するCpGアイランド内部の5-メチルシトシンを検出するための陽性対照として用いる。
【0084】
p16遺伝子のプロモーター領域に存在するCpGアイランドの特定領域が、活性化誘導シチジンデアミナーゼによる酵素的変換の標的とされる。そのために、分析対象のCpG配列の前後に相補的な領域を有する合成DNAプローブを用いて、DNAプローブのハイブリダイゼーションが分析対象のCpG配列(1つ又は複数)を含む一本鎖DNAの中心ループを生じるようにする。このDNAプローブは、プローブとゲノムDNAを一緒に混合し、その後ゲノムDNAを熱変性し、溶液をプローブの融解温度より低い温度に冷却することによって、ゲノムDNAにハイブリダイズされる。この技法の変法として、ゲノムDNA中の幾つかの対象領域を標的とするために、複数の上記DNAプローブをゲノムDNAにハイブリダイズさせてもよい。この技法のさらなる変法においては、上記プローブは、PNA又はLNAといった修飾DNA塩基を含有してもよい。
【0085】
その後、DNAプローブがハイブリダイズしたゲノムDNAを、活性化誘導シチジンデアミナーゼと共に、該酵素によるゲノムDNA中のシトシン塩基の脱アミノ化を促進するが5-メチルシトシン塩基の脱アミノ化は促進しない条件下でインキュベートする。
【0086】
次にp16プロモーターのCpGアイランドの前後の対象領域をPCRで増幅する。PCR産物は、鋳型ゲノムDNAのループ中に非メチル化シトシンが存在する場合にはチミジン塩基を含み、鋳型ゲノムDNA中に5-メチルシトシン塩基が存在する場合にはシトシン塩基を含む。その後、p16のプロモーター領域におけるCpGアイランドのメチル化状態を、実施例1のとおりに評価する。
【0087】
メチル化特異的PCRは、亜硫酸水素塩のような薬剤による変換後の、メチル化領域と非メチル化領域との配列の相違を利用したプライマーに依存する。活性化誘導シチジンデアミナーゼによる酵素的変換の標的となるCpGジヌクレオチドを、メチル化特異的PCRを用いて検出するために、メチル化特異的プライマーはこの領域に対して設計される。
【実施例3】
【0088】
一本鎖DNAのAID媒介シトシン脱アミノ化
A. 基質の調製
E-カドヘリンプロモーター領域(GenBank登録番号L34545)のヌクレオチド塩基920番〜999番と同じヌクレオチド配列を有する非メチル化80bpオリゴヌクレオチド(Ecad80)を50mM NaClで希釈して4μMとした。Ecad80の配列は以下の通りである:5’cgc tgc tga ttg gct gtg gcc ggc agg tga acc ctc agc caa tca gcg gta Cgg ggg gcg gtg ctc cgg ggc tca cct gg 3’。この配列中の52番目のヌクレオチド塩基(大文字Cで表す)を、下記のDで説明するサイクルシークエンシングプライマー伸長アッセイにおいてプライマー3ECAD11bによりスクリーニングする。52番目の上記ヌクレオチド塩基は、E-カドヘリンプロモーター領域(GenBank登録番号L34545)の972番目の塩基に対応する。
【0089】
B. トラップDNAのアニーリング
相補オリゴヌクレオチドAA1(tgt ttt ggg tgt gta tgg ttt ggg tgt)及びAA2(aca ccc aaa cca tac aca ccc aaa aca)を20mM NaClで希釈してそれぞれ30μMとした。この混合物を95℃に5分間加熱し、室温まで徐々に冷却して相補鎖をアニーリングさせた。結果として生じる二本鎖「トラップDNA」鋳型を、下記の20μLのAID反応混合物中でエキソヌクレアーゼ活性のおとり(decoy)として使用した。
【0090】
C. AID媒介シチジン脱アミノ化反応
20μLのAID反応混合物は、50mM Hepes pH7.5、1mM DTT、10mM MgCl2、24pmole トラップDNA(AA1/AA2)、4pmole Ecad80基質、200ng RNaseA、及び100nM野生型AIDを含んでいた。この酵素混合物を37℃でインキュベートし、15分後にフェノール:イソアミルアルコール:クロロホルム(25:24:1、Amresco番号0883-100ml)を加えて反応を停止させた。上記基質を含有する水相は、Eppendorf Phase Lock GelTMチューブ(Light、0.5mlカタログ番号0032 005.004)を用いてフェノール:クロロホルム相から分離した。水相は、サンプルをBioRad Micro Bio-spin6クロマトグラフィーカラム(カタログ番号732-6200)を通して溶出することにより、さらに精製した。
【0091】
D. プライマー伸長によるサイクルシークエンシングを用いたAID媒介シトシン脱アミノ化のスクリーニング
32P標識プライマーを用いたサイクルシークエンシングプライマー伸長は、シトシン脱アミノ化の尺度を提供する。DNA基質中のCを含む部位にddAが取り込まれることは、Cが脱アミノ化してUになることと一致する。これについては、図2を参照して以下でさらに詳細に説明する。
【0092】
これらの反応においては、4μLのAID改変基質を、サイクルシークエンシングプロトコルを用いて増幅する。特に、サイクルシークエンシング反応は、1×サーモシークエナーゼバッファー(USB)、3ユニットのサーモシークエナーゼ(USB)、67nMの32P末端標識プライマー3ECAD11b(5’agc ccc gga gca ccg ccc 3’)、各80μMのddATP、dGTP、dCTP、dTTP、及び20μLの鉱油を含んでいた。プライマー3ECAD11bは、ゲノムDNAのE-カドヘリンプロモーター領域(GenBank登録番号L34545)中の972番目の塩基又はEcad80中の52番目の塩基をスクリーニングする。反応は熱サイクル反応であり、(95℃を30秒、55℃を45秒、72℃を5分)を7サイクル行った。反応は、95%のホルムアミド、10mMのEDTA、0.1%のキシレンシアノール及び0.1%のブロモフェノールブルーを含む10μLの停止溶液により停止させ、95℃で少なくとも2分間熱変性させ、速やかに氷上に置いた。反応産物は、乾燥に先立って20%ポリアクリルアミドゲル上において60Wで3時間分離させた。バンド強度の定量により、972位で脱アミノ化された標的鋳型の割合の推定値が得られる。
【0093】
E. ポリアクリルアミドの結果の解釈
ポリアクリルアミドゲル上に結果として生じるバンドパターンは、サイクルシークエンシングアッセイの鋳型の配列を表す。972位のシトシンのAID誘発脱アミノ化は、プライマー伸長アッセイにおけるddAの取込みの程度を変えることとなり、結果として生じるバンドパターンは以下のように説明される。反応がAIDをまったく含まない場合は、鋳型配列は未変化のままである(図2A)。これは、結果的に、最初のT(GenBank登録番号L34545のE-カドヘリンプロモーター配列中の970位又はEcad80の50位)までddAレーン中で伸長する32P標識プライマーをもたらす。AIDが媒介して、E-カドヘリンプロモーター配列中の972位又はEcad80中の52位のシトシンをウラシルへと脱アミノ化すると、この位置にddAが取り込まれることとなり、これを「陽性」バンドと言う(図2B及び図2C)。この「陽性」バンドはより小さい断片(鋳型中の最初のTまで読み通しは、プライマー伸長反応産物に2つの余分な塩基を付加する)に対応し、ポリアクリルアミドゲル上でより速く移動する。「陽性」バンドの強度は、ImageQuant Softoware (Molecular Dynamics, USA)で測定することが可能であり、このバンドを含む上記の全てのバンド(この停止位置を越えたPCR伸長を表し、それゆえ972位で変換されていない鋳型を示す)の強度と比較される。この割合は、AIDによってウラシルへと脱アミノ化された基質の、この位置におけるシトシンの割合を表す。
【0094】
F. 考察
サイクルシークエンシング反応から、AIDが、(上記段落Eで説明したように測定して)Ecad80基質の52位のシトシンの約37%の脱アミノ化を媒介したことが示される。AIDを用いない対照反応は、「陽性」バンドのバックグラウンドレベルが4%であることを示す。これは、バックグラウンド脱アミノ化又はポリメラーゼによるddAの誤った取込みのいずれかの結果であると考えられる。バックグラウンドレベルは、試験反応から対照反応を差し引くことで上記アッセイ結果において考慮され得る。
【表1】

【実施例4】
【0095】
AIDによる非メチル化シトシンとメチル化シトシンの区別
A. 基質の調製
次の配列: cgc tgc tga ttg gct gtg gcX1 ggc agg tga acc ctc agc caa tca gX2g gta X3gg ggg gcg gtg ctc cgg ggc tca cct ggを有するDNAオリゴヌクレオチドを化学的に合成した。ただし上記配列において、Xは非修飾(Ecad80−全てがシトシン)又は修飾された5’-メチルシトシン(5’-MeC)(Ecad80M3−X1、X2、X3の位置に3つの5-MeC塩基を含む)のいずれかである。Ecad80又はEcad80M3を(50mM NaClの存在下で)4μMへと希釈した。
【0096】
B: トラップDNAのアニーリング
相補オリゴヌクレオチドT1(att ata ttt aaa tat ata aaa tat ata tta ata aat)及びT2(att tat taa tat ata ttt tat ata ttt aaa tat aat)を20mM NaClの存在下で各々30μMへと希釈した。実施例3に記載したように、これらのオリゴヌクレオチドをアニーリングさせてトラップDNAとして機能させた。
【0097】
C: AID媒介シチジン脱アミノ化反応
20μLのAID反応混合物を、50mM Hepes pH7.5、1mM DTT、10mM MgCl2、24pmoleのトラップDNA(T1/T2)、4pmoleの基質、200ng RNase A及び100nM AIDを含有するように調製した。反応物を37℃で15分インキュベートした。
【0098】
D: サイクルシークエンシングプライマー伸長
実施例3のとおりに伸長反応を実施したが、下記の熱サイクル条件を用いた: (95℃を2分、55℃を30秒、72℃を2分)を15サイクル。ポリアクリルアミドゲルで60Wにて3時間分離させ、1時間乾燥させてから解析を行った。
【0099】
E: 結果
上記の結果は、メチル化シトシンのAID媒介シトシン脱アミノ化の減少を示す(表2を参照)。15分の反応時間後、AIDは、Ecad80M3の52番塩基のわずか5%しか脱アミノ化しなかったが、Ecad80の52番塩基は35%を脱アミノ化した。
【表2】

【実施例5】
【0100】
ゲノムDNAのAID媒介シトシン脱アミノ化
A: 基質としてのゲノムDNAの調製
American Type Tissue Collection(Rockville, Md, USA)より取得したヒト細胞株SW480(番号CCL-228)から、QIAamp DNA Blood Mini Kit(50)(Qiagen)を製造業者の使用説明書のとおりに用いて、ゲノムDNAを抽出した。標準的な亜硫酸水素塩及び配列決定方法を用いて実施した実験は、SW480から取得したゲノムDNAが、E-カドヘリンプロモーター領域(GenBank登録番号L34545)の972位でメチル化されていないことを明らかにした。ゲノムDNAを滅菌水中で10ng/μLに希釈した。
【0101】
B: ゲノムDNAのためのAID媒介シトシン脱アミノ化反応
全ての反応は、50mM Hepes pH7.5、1mM DTT、10mM MgCl2、24pmoleのトラップDNA(実施例3のとおりに調製したAA1/AA2)、5ngのゲノムDNA、200ngのRNase A及び200nMのAIDを含んでいた。反応物を37℃で15分インキュベートした。実施例3に記載したように、サイクルシークエンシングプライマー伸長及びポリアクリルアミドゲル解析を実施した。
【0102】
C: 結果
サイクルシークエンシングの結果は、ゲノムDNAの16%がAID媒介脱アミノ化によってウラシルに変換されるのに対して、AIDを含まない対照反応では5%にすぎないことを示す。
【表3】

【0103】
ここで示されたゲノムDNAに対するAID媒介シトシン脱アミノ化の低レベルは、このゲノムDNA調製物中に一本鎖DNAが少ない量で存在することに起因するのかもしれないし、あるいは、これは二本鎖ゲノムDNA中のシトシンのAIDによる脱アミノ化の最初の実証であるかもしれない。以前には、AIDは一本鎖に対して作用し、二本鎖基質に対しては作用しないことが示されており(27)、これによって二本鎖ゲノムDNAの脱アミノ化が低いことを説明できる。
【実施例6】
【0104】
基質を一本鎖にするためにルーピングプローブ及びアンチセンスプローブを用いることによるAID媒介シトシン脱アミノ化の促進
A: 基質の調製
Ecad80を50mM NaClで4μMとなるまで希釈し、Ecad80のアンチセンス配列であるASEcad80を3倍過剰に加えた(ASEcad80配列:5’cc agg tga gcc ccg gag cac cgc ccc ccg tac cgc tga ttg gct gag ggt tca cct gcc ggc cac agc caa tca gca gcg 3’)。混合物を95℃に5分間加熱し、室温まで徐々に冷却して、相補鎖同士をアニーリングさせた。
【0105】
B: オリゴヌクレオチドルーピングプローブ及びアンチセンスプローブのアニーリング
標的鎖にアニーリングして標的部位で一本鎖ループを形成するように設計した、過剰のオリゴヌクレオチドプローブを、本実施例のステップAで調製した二本鎖鋳型に添加した。下記のルーピングプローブDNA配列を化学的に合成した:
LP10 - 5’CGA CCG CCC CGA TTG GCT GAG G 3’(3’リン酸を有する);
LP26 - 5’GCC CCG GAG CGA GGG TTC ACC TG 3’(3’リン酸を有する);及び
LP26+1 - 5’GCC CCG GAG CGG AGG GTT CAC CTG 3’(3’リン酸を有する)。
【0106】
これらのルーピングプローブは各々10、26及び26+1塩基の一本鎖ループを形成する。LP26+1は、ループの開口部のルーピングプローブ上に不対ヌクレオチド(下線を引いたヌクレオチド)を残すことで、増大した柔軟性を与える。アンチセンスオリゴヌクレオチドAS26 5’AGC CAA TCA GCG GTA CGG GGG GCG GT 3’(3’リン酸を有する)を化学的に合成した。AS26は非標的鎖に完全な相補性でもってアニーリングし、鋳型鎖上に26塩基のループを形成する。プローブと基質の混合物を95℃に5分間加熱し、室温まで徐々に冷却した。
【0107】
C: AIDによる基質の改変
20μlのAID反応混合物を、50mM Hepes pH7.5、1mM DTT、10mM MgCl2、24pmoleのトラップDNA(AA1/AA2)、4pmoleの基質、200ng RNase A及び100nM AIDを含むように調製した。37℃で15分間反応物をインキュベートした。
【0108】
D: サイクルシークエンシングプライマー伸長
実施例4のとおりに実施した。60Wで3時間ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、1時間15分乾燥させてから解析を行った。
【0109】
E: 結果
二本鎖DNA基質を、異なるサイズの一本鎖ループを形成するように設計したオリゴヌクレオチドプローブ(10、26又は26+1bp+/-26bpアンチセンスプローブ)と共にインキュベートすると、表4に示すようにAID媒介シトシン脱アミノ化を増大させることができる。
【表4】

【実施例7】
【0110】
バッファーイオン及び濃度の変更によるAID媒介シトシン脱アミノ化の改善
選択した酵素のためにはどのように反応条件を最適化すればよいかを示し、またバッファーイオン及び濃度の様々な条件がAID媒介シトシン脱アミノ化に与える影響を示すために、下記の実施例を行った。
【0111】
A: 基質の調製
Ecad80(5’cgc tgc tga ttg gct gtg gcc ggc agg tga acc ctc agc caa tca gcg gta Cgg ggg gcg gtg ctc cgg ggc tca cct gg 3’)を50mM NaClで4μMへと希釈した。
【0112】
B: 基質のAID媒介シトシン脱アミノ化
反応は下記のような範囲のバッファーの種類及び濃度を含んでいた:10、50又は100mMのTris-HCl、Hepes、Pipes又はイミダゾールバッファーイオン。全ての反応はpH7.5で実施し、1mM DTT、10mM MgCl2、24pmoleのトラップDNA(実施例4で調製したT1/T2)、4pmoleのEcad80、200ngのRNase A及び100nMのAIDを含んでいた。反応を37℃で15分間インキュベートした。実施例3に記載するとおりに、サイクルシークエンシングプライマー伸長及びポリアクリルアミドゲル解析を実施した。
【0113】
C: サイクルシークエンシングプライマー伸長
プライマー3ECAD11bは本実施例のステップAにおいて示したようにEcad80中のCをスクリーニングする。上記塩基はゲノムDNAのE-カドヘリンプロモーター領域の972番目のヌクレオチド塩基に相当する。ポリアクリルアミドゲル電気泳動を9Wで9時間実施し、1時間乾燥させてから解析した。
【0114】
D: 結果
バッファーイオンの種は、AID媒介シトシン脱アミノ化の割合を変更することが見出された。下記の表5に示すとおり、イオン強度を減少させるとAID媒介シトシン脱アミノ化が増加する。50mMの濃度では、同じpHでのイミダゾール、Pipes又はHepesと比較して、Tris-HClがより高いAID媒介シトシン脱アミノ化を促進した(表5)。従って、AIDのシトシンデアミナーゼ活性を高める条件を見つけるために、バッファーイオンの種類及びバッファーのイオン強度を試験することができる。
【表5】

【実施例8】
【0115】
反応時間の増加によるAID媒介シトシン脱アミノ化の促進
A: 基質の調製
この研究のための基質は実施例7のとおりに調製した。
【0116】
B: 基質のAID改変
AID反応混合物は、10mM Tris-HCl pH7.5、1mM DTT、10mM MgCl2、24pmoleのトラップDNA(実施例4で調製したT1/T2配列)、4pmoleのEcad80、200ngのRNase A及び100nMの野生型AIDを含んでいた。酵素の混合物を、37℃で5分間又は30分間インキュベートした。実施例3のとおりにサイクルシークエンシングプライマー伸長及びポリアクリルアミドゲル解析を実施した。ただしポリアクリルアミドゲル電気泳動を9Wで9時間実施し、1時間乾燥させてから解析した。
【0117】
C: 結果
表6に示すように、AID反応のインキュベーション時間を長くすることによって、AID媒介シトシン脱アミノ化の量が増加することがわかった。例えば、Ecad80のAID媒介シトシン脱アミノ化は、インキュベーション時間を5分から30分へと延長することによって24%から44%へとほぼ倍増した。
【表6】

【実施例9】
【0118】
反応中のAID量の増加によるAID媒介シトシン脱アミノ化の促進
A: 基質の調製
この研究のための基質は実施例7のとおりに調製した。
【0119】
B: 基質のAID改変
AID反応混合物は、10mM Tris-HCl pH7.5、1mM DTT、10mM MgCl2、24pmoleのトラップDNA(実施例4で調製したT1/T2配列)、4pmoleのEcad80、200ngのRNase A及び100nM又は200nMのAIDを含んでいた。酵素の混合物を37℃で20分間または30分間インキュベートした。実施例3のとおりにサイクルシークエンシングプライマー伸長及びポリアクリルアミドゲル解析を実施した。ただしポリアクリルアミドゲル電気泳動を9Wで9時間実施し、1時間乾燥させてから解析した。
【0120】
C: 結果
表7に示すように、AIDの濃度を高めることによって、AID媒介シトシン脱アミノ化の量が増大することがわかった。
【表7】

【実施例10】
【0121】
APOBEC3G野生型及びAID変異体R35E/R36Dを用いた酵素媒介シトシン脱アミノ化
シトシンデアミナーゼ活性は、AID及びAPOBEC相同体を含む天然の酵素によって生じさせることができる。さらに、これらのタンパク質の変異型を、ランダム突然変異又は合理的突然変異のいずれかによって作出することができ、これらの変異体をスクリーニングして、より高い比率で脱アミノ化を行い、シトシンと5-メチルシトシンとを区別するタンパク質を見つけることができる。
【0122】
A: 基質の調製
この研究のための基質は実施例7のとおりに調製した。
【0123】
B: 基質のAID改変
AID反応混合物は、10mM Tris-HCl pH7.5、1mM DTT、10mM MgCl2、24pmoleのトラップDNA(実施例2で調製したT1/T2配列)、4pmoleの基質、500ngのRNase A及び100nMの野生型AID、100nMのAPOBEC3G又は100nMのAID変異体R35E/R36D(米国南カリフォルニア大学、分子生物化学部のMyron Goodman教授より提供された)のいずれかを含んでいた。反応物を37℃で15分間インキュベートした。
【0124】
C: サイクルシークエンシングプライマー伸長及びポリアクリルアミドゲル解析
下記の熱サイクルプロトコルに従って、実施例4のとおりにサイクルシークエンシングプライマー伸長を行った: (95℃を2分、55℃を30秒、72℃を2分)を20サイクル。ポリアクリルアミドゲル電気泳動を9Wで9時間実施し、1時間乾燥させてから解析した。
【0125】
D: 結果
表8に示した結果は、Ecad80の52番目のヌクレオチド塩基の脱アミノ化に関してAID変異体R35E/R36Dは野生型AIDよりも高い活性を有することを実証する。AID変異体R35E/R36Dは、野生型タンパク質と比べてほぼ2倍も多く基質を脱アミノ化した。APOBEC3Gが示したシトシン脱アミノ化活性の量は低めだが、反応条件(例えばバッファーの種類、バッファーの濃度、pH及び酵素濃度)のさらなる最適化によって、APOBEC3Gが媒介するシトシン脱アミノ化の比率は高まるかもしれない。この実施例は、シトシン脱アミノ化活性を有する酵素の変異体及び天然の変異体を評価することの有用性をさらに示す。
【表8】

【0126】
本発明については、いくつかの好適な実施形態に関して説明してきたが、当業者は本発明の精神又は範囲から逸脱することなく非常に多くの変更及び修飾が可能であることを認識するだろう。従って、上記の実施形態は、全ての点で例示的と見なされるべきであり、限定的であると見なされるべきでない。
【0127】
参考文献





【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の方法の一実施形態において使用する、合成の内部対照DNAを作成するための手法を示す。
【図2A】E−カドヘリンDNAにおける酵素媒介脱アミノ化のためのプライマー伸長アッセイを示す。
【図2B】E−カドヘリンDNAにおける酵素媒介脱アミノ化のためのプライマー伸長アッセイを示す。
【図2C】E−カドヘリンDNAにおける酵素媒介脱アミノ化のためのプライマー伸長アッセイを示す。
【図3】A:遺伝子の標的領域を「ルーピングアウト」するための標的配列に相補的なDNAオリゴヌクレオチド(ルーピングプローブ)を用いるスキームを示す。B:DNAの相補鎖に結合することによって標的遺伝子の領域をルーピングアウトするための非標的配列に相補的なDNAオリゴヌクレオチド(アンチセンスプローブ)を用いるスキームを示す。C:972位を囲むE-カドヘリンプロモーター配列(GenBank登録番号L34545)の非標的鎖のエキソヌクレアーゼIIIによる選択的消化を提供するための制限酵素の選択肢を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体から取得した、ゲノムまたはミトコンドリア二本鎖DNAのサンプル中におけるアルキル化シトシンの存在またはレベルを検出する方法であって、
(a) 個体由来の二本鎖DNAのサンプルを取得すること、
(b) 該二本鎖DNAの少なくとも1つの領域を一本鎖DNAに変換すること、
(c) ステップ(b)で得られた該一本鎖DNAの標的領域を少なくとも1つの酵素と反応させること、ただし、該酵素はアルキル化シトシンおよびシトシンを異なって改変するものであること、および
(d) 該酵素による標的領域の酵素的改変のレベルを決定すること、
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記酵素が、実質的に前記一本鎖DNAのアルキル化シトシンまたはシトシンのいずれかと反応するが、双方とは反応しない条件下で、該一本鎖DNAを酵素と反応させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酵素が実質的に前記一本鎖DNAのアルキル化シトシンまたはシトシンの一方のみと反応することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
二本鎖DNAの前記領域を一本鎖DNAに変換することが、該二本鎖DNAの2本の鎖を少なくとも部分的に分離することを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
1または複数の鎖置換プローブを利用して前記二本鎖DNAの2本の鎖を少なくとも部分的に分離する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記のそれぞれの鎖置換プローブが、核酸アナログプローブ、PNA含有プローブ、LNA含有プローブ、PNAプローブおよびLNAプローブからなる群より独立に選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記二本鎖DNAの2本の鎖が分離して、酵素による標的領域への接近が容易になった場合には、該二本鎖DNAの2本の鎖が一緒にアニーリングするのを抑制することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記2本の鎖の分離に続いて、少なくとも1つのプローブを前記二本鎖DNAの1本の鎖にハイブリダイズさせ、それによって2本の鎖が一緒にアニーリングするのを抑制することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの前記プローブが、センスプローブ、ルーピングプローブ、アンチセンスプローブおよびこれらの混合物からなる群より独立に選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2つの前記プローブが、二本鎖DNAの1本の鎖とハイブリダイズし、該プローブのうち1つは標的領域の下流にある該鎖の領域にハイブリダイズし、別のプローブは標的領域の上流にある該鎖の領域にハイブリダイズする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記標的領域を組み込んだループまたはバブルが鎖中で形成されるように、前記プローブが、標的領域に隣接する鎖の上流領域および下流領域にハイブリダイズする、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記プローブが、前記二本鎖DNAの鎖に標的領域の両側でハイブリダイズし、かつ標的領域を組み込んだループまたはバブルが鎖中で形成されるように、該プローブが、標的領域とハイブリダイズしない非相補配列の中間領域を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記プローブと前記二本鎖DNAの鎖とのハイブリダイゼーションに続いて、該プローブの中間領域が、一緒にハイブリダイズする逆方向反復配列を組み込んでいる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記一本鎖DNAの酵素的改変のレベルを決定することが、酵素による該一本鎖DNAの標的領域の酵素的改変により生じた配列の変異を解析することを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記酵素的改変のレベルを決定することが、前記一本鎖DNAの標的領域をサーモサイクリングとプライマーを含む増幅法に供して、増幅産物を取得し、増幅産物を配列の変異について解析することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記増幅産物の解析が、核酸シークエンシング、ポリメラーゼ連鎖反応法、制限酵素による消化、および特定の核酸配列に結合するプローブの使用を含む技法からなる群から選択された技法に、増幅産物を供することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記増幅産物の解析が、増幅産物をポリメラーゼ連鎖反応法に供することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの前記酵素が、前記一本鎖DNAの標的領域中のアルキル化シトシンまたはシトシンを脱アミノ化する、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
異なる前記酵素の組み合わせを用いて、前記標的領域のアルキル化シトシンおよびシトシンを異なって改変する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記のそれぞれの酵素が独立に、デアミナーゼ酵素またはその触媒断片、変異体、相同体、または該酵素のデアミナーゼ活性を有する改変型もしくは変異型である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記酵素が、ApoBRe、AIDおよびAID変異体R35E/R36Dからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
遺伝子もしくは遺伝子の非コード領域、またはそれらの断片中のアルキル化シトシンの存在またはレベルを検出することを含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
遺伝子の5’非コード領域中のアルキル化シトシンの存在またはレベルを検出することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記レベルのアルキル化シトシンが高メチル化を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記レベルのアルキル化シトシンが低メチル化を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記遺伝子がp16、E-カドヘリン、VHL遺伝子、BRCA1、p15、hMLH1、ER、HIC1、MDG1、GST-π、O6-MGMT、カルシトニン、myo-D、ウロキナーゼおよびS100A4からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記一本鎖DNAの標的領域中におけるアルキル化シトシンの改変レベルを検出することが疾患または症状のマーカーとなる、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
疾患または症状が癌である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記癌が、肺癌、乳癌、大腸癌、膀胱癌、肝癌、頭頸部癌、前立腺癌、腎細胞癌、白血病、バーキットリンパ腫、脳腫瘍および癌腫からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記一本鎖DNAの標的領域中のアルキル化シトシンの存在またはレベルを基準にして個体の疾患あるいは症状を診断することをさらに含む、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記疾患または症状が、肺癌、乳癌、大腸癌、膀胱癌、肝癌、頭頸部癌、前立腺癌、腎細胞癌、白血病、バーキットリンパ腫、脳腫瘍および癌腫から選択される癌を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
胎児DNAの存在または不在を示すためにアルキル化シトシンの存在またはレベルを検出する、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
変異遺伝子のインプリンティング状態の存在または不在を示すためにアルキル化シトシンの存在またはレベルを検出する、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
病原体または微生物の存在もしくは不在を示すためにアルキル化シトシンの存在もしくはレベルを検出する、請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
アルキル化シトシンがメチル化シトシンである、請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
メチル化シトシンが5-メチルシトシンである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
二本鎖DNAがゲノムDNAである、請求項1〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
請求項1〜37のいずれか1項に記載されるように、個体から採取されたゲノムまたはミトコンドリア二本鎖DNAのサンプル中のアルキル化シトシンの存在またはレベルを検出する方法に使用するためのキットであって、該方法を実施するための1種以上の試薬および使用説明書を含んでなる、上記キット。

【図1】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−507203(P2007−507203A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515563(P2006−515563)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000900
【国際公開番号】WO2005/003381
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(501059604)ジョンソン・アンド・ジョンソン・リサーチ・ピー・ティー・ワイ・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON & JOHNSON, RESEARCH, PTY. LIMITED.
【住所又は居所原語表記】1 Central Avenue, Eveleigh 1430, NSW, Australia.
【Fターム(参考)】