説明

DNA増幅方法

本発明は、一般に、目的とする核酸領域を増幅する方法に関し、より詳細には、目的とする特定の領域以外の核酸領域に結合したプライマーからのアンプリコンの生成を最小限にするように設計されたPCR法を用いて、目的とする核酸領域を増幅する方法に関する。本発明の方法は、フォワードプライマーまたはリバースプライマーのいずれか一方の機能性を非効率にすることで、目的とする領域の増幅と比べて無関係な核酸領域の増幅率を低下させることができるという判定に基づく。目的とする核酸領域を増幅する選択手段の提供は、特定の遺伝子配列を特徴とする疾患状態の診断および/またはモニタリング、目的とする遺伝子領域の特性評価または分析、DNA切断点領域の同定または特性評価、ならびに目的とする遺伝子配列の一方の末端のヌクレオチド配列のみがわかっている目的とする遺伝子配列の単離を含むが、これらに限定されない様々な適用に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、目的とする核酸領域を増幅する方法に関し、より詳細には、目的とする特定の領域以外の核酸領域に結合したプライマーからのアンプリコンの生成を最小限にするように設計されたPCR法を用いて、目的とする核酸領域を増幅する方法に関する。本発明の方法は、フォワードプライマーまたはリバースプライマーのいずれか一方の機能性を非効率にすることで、目的とする領域の増幅と比べて無関係な核酸領域の増幅率を低下させることができるという判定に基づく。目的とする核酸領域を増幅する選択手段の提供は、特定の遺伝子配列を特徴とする疾患状態の診断および/またはモニタリング、目的とする遺伝子領域の特性評価または分析、DNA切断点領域の同定または特性評価、ならびに目的とする遺伝子配列の一方の末端のヌクレオチド配列のみがわかっている目的とする遺伝子配列の単離を含むが、これらに限定されない様々な適用に有用である。
【背景技術】
【0002】
本明細書におけるいずれかの先行出版物(またはこれから得られた情報)、または既知のいずれかの事柄への言及は、この先行出版物(またはこれから得られた情報)または既知の事柄が、本明細書が関する試みの分野に共通の一般知識の一部を形成する、という承認または了解またはいずれかの形態の示唆としてとらえられるものではなく、およびとらえられるべきではない。
【0003】
本明細書で本発明者により言及された出版物の文献詳細は、本記載の最後にアルファベット順にまとめられている。
【0004】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、DNA鎖の特定領域を増幅するのに利用される手法である。これは、単一の遺伝子、遺伝子のほんの一部または非コード配列であってよい。ほとんどのPCR法は、典型的には、最大10キロ塩基対(kb)のDNAフラグメントを増幅するが、幾つかの手法は、最大40kbのサイズのフラグメントの増幅を可能にする(Chengら、1994年、Proc Natl Acad Sci. 91:5695〜5699)。
【0005】
現在行われているPCRは、幾つかの基本要素を必要とする(SambrookおよびRussel、2001年、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版)。これらの要素は、
・増幅されるDNAフラグメント領域を含有するDNA鋳型、
・増幅されるDNA領域の5'および3'末端のDNA領域に相補的なプライマー、
・増幅される領域のDNAコピーを合成するのに使用される、DNAポリメラーゼ(例えばTaqポリメラーゼ、または70℃前後で最適温度となる別の熱安定性DNAポリメラーゼ)、
・DNAポリメラーゼが新規のDNAを構築する基となるデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)
である。
【0006】
PCRは、典型的には15〜100μlの反応容積を含有する、小さな反応管(0.2〜0.5ml容積)の中で行われる。反応管はサーマルサイクラーに入れられる。この機械は、この中で、反応の各ステップに必要なぴったりの温度まで反応管を加熱および冷却する。ほとんどのサーマルサイクラーは、反応管キャップの内側での凝縮を避けるための加熱蓋を含む。あるいは、蒸発を避けるため反応混合物上に油層が置かれる場合もある。
【0007】
したがって、PCRは、より長いDNA分子内のDNA配列の指数関数的増幅を可能にする方法である。反応は幾つかの増幅サイクルを含み、各サイクルでは各分子反応の鋳型はゲノムDNA鎖または前サイクルで合成されたDNA鎖のいずれかである。各PCRサイクルは、以下のステップを含む。
-二本鎖DNA分子の二本の鎖を分離するための熱変性
-上流および下流プライマーのこれらの相補配列へのハイブリダイゼーション
-鋳型配列の相補的コピーを生成するためのDNAポリメラーゼによるプライマー伸長
【0008】
典型的にはPCR試薬および条件は、変性、ハイブリダイゼーションおよび伸長が最大に近い効率で生じ、およびこの結果、所望の配列の量がサイクルごとに2倍近く増加するように選択される。相当な増幅がPCRの終わりまでに生じ、例えば30サイクルのPCRは、元の鋳型のほぼ230(1,000,000,000)倍の増幅をもたらすであろう。この増幅度は、増幅産物の検出および分析を容易にする。
【0009】
リガーゼ連鎖反応(LCR)または核酸配列ベース増幅(NASBA)などの他の核酸増幅法も、DNA中の所望の配列を増幅するのに使用される。反応戦略はPCRの戦略とは異なるが、これらも標的配列の2つの末端にハイブリダイズするプライマーを使用し、やはり、反応は典型的には、ハイブリダイゼーションを含む各ステップが最大効率または最大に近い効率で生じるのを確保するように行われる。次の考察は、大半がPCRに対するものであるが、概念は他の増幅法に等しく当てはまる。
【0010】
幾つかの増幅サイクル後、PCR産物は様々な方法で、最も一般的にはゲル電気泳動により分析することができる。この分析方法は、最も単純な形態では半定量的である。産物量はインプットDNAの量に密接には関係しないため、このタイプのPCRは特定のDNAの有無を検出する定性的ツールになる。
【0011】
メッセンジャーRNA(mRNA)を測定するには、上記方法は、逆転写酵素を用いて最初にmRNAを相補的DNA(cDNA)に変換し、次いでcDNAはPCRにより増幅され、およびアガロースゲル電気泳動により分析される。多くの場合、この方法は、異なる条件下で特定のmRNAのレベルを測定するのに使用されている。しかし、この方法は、実際には、余分な逆転写酵素ステップのためDNAのPCRよりも定量性がさらに低い。
【0012】
定量性能を提供するため、リアルタイムPCRが開発された。この手順はPCRの一般的なパターンを踏襲するが、増幅DNAは各サイクルの間に定量化される。2つの一般的な定量化方法は、二本鎖DNAにインターカレートする蛍光色素を使用するもの、およびPCRの1つのステップ中にその蛍光が変化する修飾DNAオリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブを使用するものである。しばしば、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応は、少量のメッセンジャーRNA(mRNA)を定量化するのに逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応と組み合わされ、特定の時間または特定の細胞もしくは組織タイプでの相対的遺伝子発現を研究者が定量化するのを可能にする。
【0013】
(i)二本鎖DNA結合色素を用いたリアルタイムPCR
DNA結合色素は、PCR反応において全ての二本鎖(ds)DNAに結合し、色素の蛍光増加をもたらす。したがって、PCR中のDNA産物の増加は、各サイクルで測定される蛍光強度の増大をもたらすため、DNA濃度の定量化を可能にする。他のリアルタイムPCR法と同様に、得られた値は、これに関連する絶対単位(すなわちmRNAコピー/細胞)を持たない。したがって、測定されたDNA/RNA試料と標準希釈物との比較は、標準に対する試料の画分または比を提供するのみとなり、異なる組織または実験条件どうしの相対比較のみを可能にする。定量化の精度を確保するには、通常、安定に発現した遺伝子に対し標的遺伝子の発現を正規化することが必要である。これは、実験試料全体にわたって、RNAの量または質の差について補正することができる。
【0014】
(ii)蛍光レポーター配列法
蛍光レポータープライマーまたはプローブを用いる幾つかの異なる方法が開発されており、これらはDNA結合色素の使用よりも正確および信頼できる傾向にある。これらは、1つまたは複数のDNAプライマーまたはプローブを用いて、プライマーまたはプローブがハイブリダイズするDNAのみを定量化する。レポータープローブの使用は、特異性を著しく高め、幾つかの非特異的DNA増幅の存在下でも定量化を可能にすることができる。配列特異的プライマーまたはプローブの使用は、全ての標的が同様の効率で増幅されることを条件として、多重化、すなわち、色の異なる複数の標識を有する複数の特定の配列またはプローブを用いることによって、同じ反応における幾つかの異なる増幅産物の分析を可能にする。
【0015】
定量に関して、反応の指数期中に存在するDNAの相対濃度は、サイクル数に対する蛍光を対数尺度でプロットして決定される。バックグラウンドを上回る蛍光の増加またはバックグラウンドを下回る減少についての閾値(正確な方法に応じて)が決定される。試料からの蛍光が閾値を越えるサイクルは、サイクル閾値、Ctと呼ばれる。DNA量は指数期中、サイクルごとに倍加するため、DNAの相対量を計算することができる。例えば、Ctが別のサイクルより3サイクル早い試料は、23=8倍多い鋳型を有する(増幅DNA量がサイクルごとに倍加すると仮定して)。
【0016】
DNA量は、次いで、既知のDNA量の連続希釈(例えば未希釈、1:4、1:16、1:64)により生じる標準曲線と結果を比較して決定される。
【0017】
しかし、PCRの限界の1つは、プライマーが場合によってはDNA試料の複数の領域に結合し得るため、目的とするDNA配列とは無関係な増幅配列の発生をもたらす可能性があるという事実に関する。複数領域への結合は、以下を含むがこれらに限定されない幾つかの状況で生じ得る。
1.例えば、きわめて短い、または変性した、または非特異的結合に有利に働く設計の、または非特異的結合に有利に働くPCR条件に供されるプライマーによるプライマーの非特異的結合。
2.プライマーが結合する配列がゲノムの多くの領域で自然発生する。aluまたはlineなどのファミリーに属する配列は、広範に分散しており、個々の配列はわずかに異なり得るが、これらの相同性は、ファミリーの1つのメンバーに結合するプライマーが多数の他のメンバーに結合する可能性があるほどである。
3.プライマーが結合する配列がゲノムの多くの領域に導入されている。これは、例えば、DNAが制限酵素により消化され、共通配列が消化部位でライゲートされた場合に起こり得る。
4.反応における複数のプライマーの存在。偶然により、一方のプライマーがフォワードプライマーとして働くように結合でき、およびもう一方がリバースプライマーとして働くように結合できる場合がある。この現象の発生可能性は、プライマー数が増えるにつれて増すであろう。
【0018】
これらの状況のうちの1つの結果として、一方のプライマーがフォワードプライマーとして働くように結合し、同じまたはもう一方のプライマーがリバースプライマーとして働くように結合するケースとなり得る。結合部位が十分に近い場合は、非特異的増幅が生じ得る。10億倍を超えて増幅するPCRの能力が、間違ったDNA配列を10億倍を超えて増幅する可能性も増大させることを考えれば、この可能性を最小限にする重要性が明らかになる。
【0019】
したがって、関心が継続しており、この問題の克服手段を開発する必要がある。通常のアプローチはネステッドPCRである。この方法では、単一遺伝子座に対し二組のPCRプライマー対が使用される。第1の対は、どのPCR実験でも見られるように遺伝子座を増幅する。第2のプライマー対(ネステッドプライマー)は最初のPCR産物内に結合し、最初のものより短い第2のPCR産物を生成する。この戦略の背後にあるロジックは、不要な遺伝子座も増幅された場合、これが第2のプライマー対により2回目も増幅されるであろう可能性はきわめて低いというものである。しかし、ネステッドPCRは、第1のプライマー対内部のDNA配列の一部または全部が既知であり、そのため、さらなる特異性を提供する1つまたは複数の内部プライマーを合成できる場合に、価値があるに過ぎない。
【0020】
本発明に至る研究では、不要な増幅イベントを最小限にする別の方法が開発された。具体的には、2つのPCRプライマーの1つ(例えばプライマー2)が非効率にハイブリダイズし、核酸タグを含むように設計または使用され、このタグがそれ自体第3の(タグ)プライマーに対する結合部位になり得る場合、増幅の「ボトルネック」が生じるであろうことが突き止められた。このボトルネックは、プライマー2がハイブリダイズおよび伸長して初めて所望の産物の効率的な増幅が開始されることになること、およびこの過程が非効率的であることから生じる。後続のサイクルでは、こうして生成された鋳型から開始される指数関数的増幅は、一方向におけるプライマー1の効率的なハイブリダイゼーションおよび伸長、ならびに他方向におけるタグプライマーの効率的なハイブリダイゼーションおよび伸長により媒介され、効率的である。しかし、プライマー2がフォワードおよびリバースプライマーの両方として働くことができる配列から生成された、望まれないアンプリコンに対しては、PCR中のボトルネックはよりさらに重度になるであろう。このような配列では、タグプライマーによる効率的な増幅は、1回は順方向、1回は逆方向の2回連続する、プライマー2の非効率的なハイブリダイゼーションが起きて初めて生じるであろう。故に、PCRにおいて一方のプライマーのハイブリダイゼーションが非効率にされることを意図的に確保することで、このプライマーがフォワードおよびリバースプライマーの両方として働く配列の増幅が選ばないように選択することができ、このプライマーにより一方の末端から、および効率的にハイブリダイズするプライマーにより他方の末端から増幅される配列の増幅に有利に働くことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Chengら、1994年、Proc Natl Acad Sci. 91:5695〜5699
【非特許文献2】Sambrook J.およびRussell D.、「Molecular cloning; a laboratory manual」第3版、Cold Spring Harbor刊行、2001年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本明細書およびこれに続く特許請求の範囲を通じて、文脈が特に求めない限り、用語「含む(comprise)」ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」などの変形形態は、記載された実体もしくはステップ、または実体もしくはステップの群の包含を意味するが、いずれか他の実体もしくはステップ、または実体もしくはステップの群の除外を意味するものではないことを理解されたい。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本明細書では、用語「から得られる」は、特定の実体または実体の群が特定の種に由来しているものの、必ずしも特定のソースから直接得られたわけではないことを示すととらえられるものとする。さらに、本明細書では単数形「1つの(a)」、「および(and)」および「この(the)」は、文脈が特に明白に指示しない限り複数の参照対象を含む。
【0024】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての専門用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者に通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0025】
本発明の1つの態様は、目的とする核酸領域を増幅する方法であって、
(i)核酸試料を、
(a)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のフォワードプライマー、および
(b)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のリバースプライマー
と接触させるステップであり、群(a)または群(b)のいずれか一方のプライマーが機能的に非効率であり、およびこれらの5'末端でオリゴヌクレオチドタグに操作可能に結合されるステップと、
(ii)少なくとも2回の増幅サイクルによりステップ(i)の核酸試料を増幅するステップと、
(iii)ステップ(ii)の増幅核酸を、ステップ(i)のオリゴヌクレオチドタグ配列に相補的な配列の部分または全部に対するプライマーと接触させるステップと、
(iv)ステップ(iii)の核酸試料を増幅するステップと
を含む方法を提供する。
【0026】
本発明の別の態様は、目的とするDNA領域を増幅する方法であって、
(i)DNA試料を、
(a)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のフォワードプライマー、および
(b)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のリバースプライマー
と接触させるステップであり、群(a)または群(b)のいずれか一方のプライマーが機能的に非効率であり、およびこれらの5'末端でオリゴヌクレオチドタグに操作可能に結合されるステップと、
(ii)少なくとも2回の増幅サイクルによりステップ(i)のDNA試料を増幅するステップと、
(iii)ステップ(ii)の増幅DNAを、ステップ(i)のオリゴヌクレオチドタグ配列に相補的な配列の部分または全部に対するプライマーと接触させるステップと、
(iv)ステップ(iii)のDNA試料を増幅するステップと
を含む方法を提供する。
【0027】
さらに別の態様では本発明は、目的とする遺伝子または遺伝子フラグメントを増幅する方法であって、
(i)DNA試料を、
(a)前記目的とする遺伝子または遺伝子フラグメントに対する1つまたは複数のフォワードプライマー、および
(b)前記目的とする遺伝子または遺伝子フラグメントに対する1つまたは複数のリバースプライマー
と接触させるステップであり、群(a)または群(b)のいずれか一方のプライマーが機能的に非効率であり、およびこれらの5'末端でオリゴヌクレオチドタグに操作可能に結合されるステップと、
(ii)少なくとも2回の増幅サイクルによりステップ(i)のDNA試料を増幅するステップと、
(iii)ステップ(ii)の増幅DNAを、ステップ(i)のオリゴヌクレオチドタグ配列に相補的な配列の部分または全部に対するプライマーと接触させるステップと、
(iv)ステップ(iii)のDNA試料を増幅するステップと
を含む方法を提供する。
【0028】
さらに別の態様では、目的とする染色体遺伝子転座切断点領域を増幅する方法であって、
(i)DNA試料を、
(a)前記目的とする染色体遺伝子転座切断点領域に対する1つまたは複数のフォワードプライマー、および
(b)前記目的とする染色体遺伝子転座切断点領域に対する1つまたは複数のリバースプライマー
と接触させるステップであり、群(a)または群(b)のいずれか一方のプライマーが機能的に非効率であり、およびこれらの5'末端でオリゴヌクレオチドタグに操作可能に結合されるステップと、
(ii)少なくとも2回の増幅サイクルによりステップ(i)のDNA試料を増幅するステップと、
(iii)ステップ(ii)の増幅DNAを、ステップ(i)のオリゴヌクレオチドタグ配列に相補的な配列の部分または全部に対するプライマーと接触させるステップと、
(iv)ステップ(iii)のDNA試料を増幅するステップと
を含む方法が提供される。
【0029】
さらに別の態様では、目的とするDNA領域を増幅する方法であって、
(i)DNA試料を、
(a)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のフォワードプライマー、および
(b)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のリバースプライマー
と接触させるステップであり、群(a)または群(b)のいずれか一方のプライマーが機能的に非効率であり、およびこれらの5'末端でオリゴヌクレオチドタグに操作可能に結合され、ならびに前記機能的に非効率なプライマー群が、非標的DNA領域に乱交雑にハイブリダイズする可能性を有するプライマー群であるステップと、
(ii)少なくとも2回の増幅サイクルによりステップ(i)のDNA試料を増幅するステップと、
(iii)ステップ(ii)の増幅DNAを、ステップ(i)のオリゴヌクレオチドタグ配列に相補的な配列の部分または全部に対するプライマーと接触させるステップと、
(iv)ステップ(iii)のDNA試料を増幅するステップと
を含む方法が提供される。
【0030】
さらに別の態様では、目的とするDNA領域を増幅する方法であって、
(i)DNA試料を、
(a)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のフォワードプライマー、および
(b)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のリバースプライマー
と接触させるステップであり、群(a)または群(b)のいずれか一方のプライマーが非効率にハイブリダイズし、およびこれらの5'末端でオリゴヌクレオチドタグに操作可能に結合されるステップと、
(ii)少なくとも2回の増幅サイクルによりステップ(i)のDNA試料を増幅するステップと、
(iii)ステップ(ii)の増幅DNAを、ステップ(i)のオリゴヌクレオチドタグ配列に相補的な配列の部分または全部に対するプライマーと接触させるステップと、
(iv)ステップ(iii)のDNA試料を増幅するステップと
を含む方法が提供される。
【0031】
本発明のさらなる態様は、目的とするDNA領域を増幅する方法であって、
(i)DNA試料を、
(a)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のフォワードプライマー、および
(b)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のリバースプライマー
と接触させるステップであり、群(a)または群(b)のいずれか一方のプライマーが非効率にハイブリダイズし、およびこれらの5'末端でオリゴヌクレオチドタグに操作可能に結合されるステップと、
(ii)少なくとも2回のPCRサイクルによりステップ(i)のDNA試料を増幅するステップと、
(iii)ステップ(ii)の増幅DNAを、ステップ(i)のオリゴヌクレオチドタグ配列に相補的な配列の部分または全部に対するプライマーと接触させるステップと、
(iv) PCRによりステップ(iii)のDNA試料を増幅するステップと
を含む方法を提供する。
【0032】
本発明のさらに別の態様は、目的とするDNA領域を増幅する方法であって、
(i)DNA試料を、
(a)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のフォワードプライマー、および
(b)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のリバースプライマー
と接触させるステップであり、群(a)または群(b)のいずれか一方のプライマーが非効率にハイブリダイズし、および両方とも機能的に非効率であり、およびこれらの5'末端でオリゴヌクレオチドタグに操作可能に結合されるステップと、
(ii)少なくとも2回の増幅サイクルによりステップ(i)のDNA試料を増幅するステップと、
(iii)ステップ(ii)の増幅DNAを、ステップ(i)のオリゴヌクレオチドタグ配列に相補的な配列の部分または全部に対するプライマーと接触させるステップと、
(iv)ステップ(iii)のDNA試料を増幅するステップと、
(v)前記増幅DNAを単離および/または分析するステップと
を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】目的とする配列の増幅に関する、効率的な増幅が生じる前に生じなければならない2回の(必ずしも連続的ではない)PCRサイクルにおける2イベントを示す略図である。第1は、非効率的なプライマー2がハイブリダイズおよび伸長してアンチセンス鎖を形成する場合、第2は、効率的なプライマー1が得られたアンチセンス鎖にハイブリダイズおよび伸長してタグプライマーの結合配列を含有するセンス鎖を形成する場合である。後続のサイクルでの効率的な増幅は、次いでプライマー1およびタグプライマーによりプライムされて生じる。
【図2】ボトルネックPCR中の負の選択を示す略図である。古典的なPCRでは、上流および下流プライマー部位の両方で効率的なハイブリダイゼーションおよび伸長がある。ボトルネックPCRでは、いずれか一方のまたは両方のプライマー結合部位での非効率的なハイブリダイゼーションによるボトルネックがある。これは、一方の末端のみにボトルネックがある標的と比べて各末端にボトルネックがある標的に対する負の選択をもたらす。
【図3】ボトルネックPCRを用いてBCR-ABL切断点配列を濃縮するための実験デザインを示す略図である。ハイブリッド-タグ下流プライマーは低濃度で存在し、非効率的なハイブリダイゼーションおよび伸長をもたらすため、第2、第3および第4のPCRラウンドはボトルネックPCRであった。低濃度の各下流ABLプライマーのため、最初のラウンドではある程度の副次的なボトルネック効果もあった。典型的な実験では、最初の3ラウンドは、各々20 PCRサイクルを含み、第4の最終ラウンドは20〜35サイクルを含んでいた。
【図4】ボトルネックPCRを用いて所望の産物を濃縮するための実験デザインを示す略図である。最初のPCRは、フォワード遺伝子特異的プライマー(F1)および、遺伝子歩行が行われている場合は縮重(ユニバーサル)リバースプライマー、または転座切断点を越える増幅が行われている場合はリバースプライマープールのいずれか一方を含む。最初のPCRは、リバースプライマー(複数可)を非効率にすることでボトルネックPCRとして設計することができ、リバースプライマープールが使用される場合、低濃度の各リバースプライマーのため実際にはボトルネックPCRとして行う。第2、および第3のPCRラウンドは、決定的なボトルネックPCRである。これらは、同じものまたはネステッドフォワードプライマー、および低濃度のハイブリッド-タグリバースプライマー(このプライマーの非効率的なハイブリダイゼーションおよび伸長をもたらす)を含む。典型的な実験では、最初の第2または第3ラウンドは、各々20 PCRサイクルを含み、最後のラウンドは20〜35サイクルを含んでいた。
【図5】非特異的産物と比較した、選択による特異的産物の濃縮を示すグラフである。特異的産物はBCR-ABL転座配列であり、非特異的産物は1つまたは複数のABLプライマーが各末端でハイブリダイズし増幅をもたらす、無名のゲノム配列であった。BCR-ABL転座を有する患者由来のDNAは、上流のBCRプライマーおよび282個の下流のタグABLプライマーによりラウンド1で増幅された。次いで、ボトルネックPCRの3連続ラウンドが、各々、上流のBCRプライマーならびに下流のハイブリッドタグi-タグi+1連結プライマーおよびタグi+1プライマーを用いて行われた。各ラウンド中の増幅は、BCR-ABL転座については配列特異的プライマーを、非特異的産物についてはタグプライマーを用いて定量化した。2つの産物に対するCt値により示された通り、非特異的産物は最初のラウンドではきわめて優勢であるが、その相対量は、ラウンドごとに減少し、そのため、ラウンド3および4では特異的産物が優勢になる。ラウンド2と1の間、ならびにラウンド3と2の間で観察された濃縮度は、タグ-タグプライマーが約1%の最大効率で働いていたことを示唆する。
【図6】転座切断点領域の単離を容易にするうえでのボトルネックPCRの選択的効果の画像を示す図である。レーン2、5および17は、3名の慢性骨髄性白血病患者由来のDNAによる増幅結果を示し、レーンNは正常対照由来のDNAによる結果を示し、レーンMQは水対照からの結果を示す。最初のPCR増幅サイクルでは、全ての試料は、BCRに対する1個の上流プライマーおよびABL遺伝子に対する282個のプライマーにより増幅された。増幅の1つのセットでは、最初のラウンドは45サイクル連続されたのに対し(第1ラウンド)、増幅の他のセットでは、PCRは20サイクル後に停止され、1/100アリコートを用いてさらに3ラウンドのボトルネックPCRが行われた(第4サイクル)。第1ラウンドの結果は、ABLプライマーによる両末端でのプライミングにより増幅された不均質な産物の幅広いスメアを示す。第4ラウンドの産物はさらにより単純であり、均質なバンドを見ることができる。全ての試料に見られる1つの非特異的バンドがあり、患者2および5では、BCR-ABL転座の増幅によるバンドを見ることができる(矢印)。
【図7】ボトルネックPCRの選択的効果のもう1つの画像を示す図である。レーン6、16および23は、3名の慢性骨髄性白血病患者由来のDNAによる増幅結果を示し、レーンNは正常対照由来のDNAによる結果を示し、レーンMQは水対照からの結果を示す。PCR増幅の第1ラウンドでは、全ての試料は、BCRに対する1個の上流プライマーおよびABL遺伝子に対する282個のプライマーにより増幅された。第2ラウンドでは、全ての試料は、BCRに対する1個のネステッド上流プライマーおよびABL遺伝子に対する282個のネステッドプライマーにより増幅された。ボトルネックPCRが行われなかった場合、第2ラウンドは45サイクル連続されたのに対し、ボトルネックPCRが行われた場合、第2ラウンドのPCRは20サイクル後に停止され、1/100アリコートを用いてさらに2ラウンドのボトルネックPCRが行われた。これは、3名の患者におけるBCR-ABL配列の選択的増幅をもたらした(矢印で表示)。
【図8】古典的PCR、またはいずれか一方のプライマーもしくは両方のプライマーが非効率的な単一ラウンドのボトルネックPCRで生成された増幅モデルを示すグラフである。モデルはエクセル表計算を用いて作成された。示された例では、各PCRの開始標的はセンスおよびアンチセンス鎖を含む1つのDNA二本鎖であり、各サイクル中にハイブリダイズおよび伸長する確率は、効率的なプライマー(複数可)では1、非効率的なプライマー(複数可)では0.001である。指数関数的増幅が優勢になる前のボトルネックは明らかである。任意の所与回数のPCRサイクル後、1個の効率的なプライマーおよび1個の非効率的なプライマーにより増幅された標的は、2個の非効率的なプライマーにより増幅された標的に比べて約1000倍増加していた。
【図9】ボトルネックPCRを用いて1名の急性前骨髄球性白血病患者由来のPML-RARα転座切断点を単離する実験からの画像を示す図である。a)患者のDNAは、複数のRARαプライマーおよび単一のPMLプライマーを用いて増幅され、次いで2ラウンドのボトルネックPCRが行われた。図は、2%アガロースゲル上で電気泳動された増幅DNAを示す。Pは患者のDNAであり、Nは正常なDNAおよびWは水対照である。DNAラダーは上から下へ下降するバンド700bp〜100bpを示す。患者のバンドは約500bpで見ることができる。b)切断点が単離されていることを確認するため、切断点配列を用いて切断点にまたがるRARαおよびPMLプライマーを設計し、患者のDNAをこれらのプライマーを用いて1ラウンド増幅した。図は、2%アガロースゲル上で電気泳動された増幅DNAを示す。Pは患者のDNAであり、Nは正常なDNAおよびWは水対照である。DNAラダーは、700bp〜100bpの、上から下へと低減するバンドを示す。確証的な患者のバンドは約150bpで見ることができる。c)この図のセクションaでゲル上に示された増幅バンドから得られた配列クロマトグラムを示す図である。PMLとRARαの間の切断点が示されている。
【図10】遺伝子歩行用に、1個の「ユニバーサルな」縮重プライマーを用いたボトルネックPCRの使用を、ミオシリン遺伝子に沿って、4個の異なる縮重プライマー(レーン1〜4)を用いて例示する画像を示す図である。4個の異なる縮重プライマーは、それらの最も3'側5番目の塩基がA、G、CまたはTのどちらかであることを除いて同一であった。第1ラウンドは最初のPCRであり、第2および第3ラウンドはボトルネックPCRである。連続ボトルネックPCRによる複雑度の減少は明らかである。4つの増幅の各々における顕著なバンドの配列決定は、予想されたミオシリン遺伝子配列を示した。レーンMは100bp間隔で700〜100bpからの産物を有するDNAラダーであり、WはDNAが無い水対照である。
【図11】ボトルネックPCRによる、非特異的増幅産物に対する進行中の負の選択を示すグラフである。実験はAPC遺伝子に沿った歩行を試験した。最初のPCRは、1個の遺伝子特異的プライマーおよび1個の縮重プライマーによる20サイクルを使用し、続いて3ラウンドのボトルネックPCR、各20サイクルを行った。増幅産物は5サイクルごとに試料採取され、特異的および非特異的産物が「読み出し(read-out)」PCRにおいて分析された。減少するCtは、増加する産物を示している。特異的産物は、1ボトルネックPCR後に優勢になり始める。
【図12】3ラウンドの遺伝子歩行実験からのAPC遺伝子配列の画像を示す図である。APC遺伝子特異的プライマーおよび縮重リバースプライマーを用いた最初のPCRに続いて、2ラウンドのボトルネックPCRを行い、電気泳動を行わずに増幅産物を直接配列決定した。異なる配列決定プライマーを用いた、順方向での3つのAPC配列が示されている。Aを得るために使用された配列決定プライマーは、第3PCRラウンドで使用されたものと同じであった。BおよびCを得るために使用された配列決定プライマーは、最も5'プライム側のプライマー(the most 5' prime primer)からのそれぞれ732bpおよび1302bpであった。読み取り可能な配列の全長は約1.5 kbであった。
【図13−A】本発明の方法での使用に適切なプライマーおよびタグ配列の例を提供する。
【図13−B】本発明の方法での使用に適切なプライマーおよびタグ配列の例を提供する。
【図13−C】本発明の方法での使用に適切なプライマーおよびタグ配列の例を提供する。
【図13−D】本発明の方法での使用に適切なプライマーおよびタグ配列の例を提供する。
【図13−E】本発明の方法での使用に適切なプライマーおよびタグ配列の例を提供する。
【図13−F】本発明の方法での使用に適切なプライマーおよびタグ配列の例を提供する。
【図13−G】本発明の方法での使用に適切なプライマーおよびタグ配列の例を提供する。
【図13−H】本発明の方法での使用に適切なプライマーおよびタグ配列の例を提供する。
【図13−I】本発明の方法での使用に適切なプライマーおよびタグ配列の例を提供する。
【図13−J】本発明の方法での使用に適切なプライマーおよびタグ配列の例を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、目的とする領域以外のDNA領域へのプライマーの結合から得られた不要なアンプリコン生成の発生は、目的とする部位ではない部位でのプライマーのハイブリダイゼーションおよび伸長をもたらす可能性があるプライマーを、タグ付けおよび機能的に非効率にすることで最小限にすることができるという判定に一部基づいている。したがって、本発明の方法は、目的とする核酸領域を増幅する単純および効率的な手段を提供する。
【0035】
したがって、本発明の1つの態様は、目的とする核酸領域を増幅する方法であって、
(i)核酸試料を、
(a)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のフォワードプライマー、および
(b)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のリバースプライマー
と接触させるステップであり、群(a)または群(b)のいずれか一方のプライマーが機能的に非効率であり、およびこれらの5'末端でオリゴヌクレオチドタグに操作可能に結合されるステップと、
(ii)少なくとも2回の増幅サイクルによりステップ(i)の核酸試料を増幅するステップと、
(iii)ステップ(ii)の増幅核酸を、ステップ(i)のオリゴヌクレオチドタグ配列に相補的な配列の部分または全部に対するプライマーと接触させるステップと、
(iv)ステップ(iii)の核酸試料を増幅するステップと
を含む方法を提供する。
【0036】
核酸の「目的とする領域」とは、増幅しようとするDNAまたはRNAの任意の領域を指すと理解されるべきである。これは、遺伝子または遺伝子の部分であってよい。この目的のため、「遺伝子」とは、タンパク質産物(これが完全長タンパク質であろうとタンパク質フラグメントであろうと)をコードするDNA分子を指すと理解されるべきである。染色体DNAに関して、遺伝子はイントロンおよびエクソン領域の両方を含むであろう。しかし、目的とするDNAがcDNAである限り、目的とするDNAがベクターDNAまたはリバース転写mRNAである場合に起こり得るように、イントロン領域は存在しない可能性がある。それでもなお、このようなDNAは5'または3'未翻訳領域を含む可能性がある。したがって、本明細書では「遺伝子」とは、例えば、ゲノムDNAおよびcDNAを含む、タンパク質またはタンパク質フラグメントをコードするDNAの任意の形態を包含すると理解されるべきである。対象となる目的とする核酸領域は、任意の特異的遺伝子と関連があることがわかっていない(一般に「ジャンク」DNA領域と呼ばれるような)ゲノムDNAの非コード部分でもあり得る。これは、ゲノムDNAの2領域間またはゲノムDNAの1領域および(ウイルス配列もしくは導入配列などの)外来DNAの1領域のいずれか、組換えにより生成されたゲノムDNAの任意の領域であってよい。これは、一部または全体が合成的または組換え的に生成された核酸分子領域であってよい。対象となる目的とする核酸配列はまた、PCRを含む任意の核酸増幅方法により前もって増幅された(すなわち該核酸配列が増幅方法により生成された)DNA領域であってもよい。
【0037】
対象となる「核酸」領域は、DNAもしくはRNAまたはこれらの誘導体もしくは類似体であってよい。目的とする領域がタンパク質性分子をコードするDNA配列である場合、これはゲノムDNA、mRNA転写から生成されたcDNA、または核酸増幅により生成されたDNAの形態をとり得る。しかし、対象となるDNAがタンパク質をコードしない場合、ゲノムDNAまたは合成的または組換え的に生成されたDNAのいずれかが分析対象となり得る。当業者により理解されるように、合成的および組換え的に生成されたDNAのどちらもまた、タンパク質の全部または一部をコードすることができる。しかし、対象となる方法がRNA領域の検出に関する場合、RT-PCRを用いるなど先ずRNAをDNAに逆転写することが必要になることが理解されよう。対象となるRNAは、mRNA、一次RNA転写物、リボソームRNA、トランスファーRNA、マイクロRNAなど、RNAの任意の形態であってよい。好ましくは、前記目的とする核酸領域は目的とするDNA領域である。この目的のため、前記DNAは、最終的に分析対象となるRNAからの逆転写により生成されたDNA、およびPCRなどの核酸増幅方法により生成されたDNAを含む。
【0038】
したがって、本発明は、より好ましくは、目的とするDNA領域を増幅する方法であって、
(i)DNA試料を、
(a)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のフォワードプライマー、および
(b)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のリバースプライマー
と接触させるステップであり、群(a)または群(b)のいずれか一方のプライマーが機能的に非効率であり、およびこれらの5'末端でオリゴヌクレオチドタグに操作可能に結合されるステップと、
(ii)少なくとも2回の増幅サイクルによりステップ(i)のDNA試料を増幅するステップと、
(iii)ステップ(ii)の増幅DNAを、ステップ(i)のオリゴヌクレオチドタグ配列に相補的な配列の部分または全部に対するプライマーと接触させるステップと、
(iv)ステップ(iii)のDNA試料を増幅するステップと
を含む方法を提供する。
【0039】
「DNA」とは、デオキシリボ核酸またはこの誘導体もしくは類似体を指すと理解されるべきである。これに関し、cDNAおよびゲノムDNAを含むDNAのあらゆる形態を包含すると理解されるべきである。本発明の核酸分子は、自然発生の(生体試料から得られるであろうものなど)、組換え的に生成または合成的に生成された起源を含む任意の起源であってよい。
【0040】
「誘導体」とは、天然、合成または組換えソース由来の前記DNAのフラグメント、ホモログまたはオルソログを指すことを含むと理解されるべきである。「機能的誘導体」は、任意の1つまたは複数のDNA機能活性を示す誘導体として理解されるべきである。前記DNA配列の誘導体には、他のタンパク質性または非タンパク質性分子に融合されるDNA分子の特定領域を有するフラグメントが含まれる。本明細書で意図される「類似体」には、化学組成または全体的なコンフォメーションへの修飾などヌクレオチドまたは核酸分子への修飾が含まれるが、これらに限定されない。これには、例えば、新規もしくは修飾されたプリンもしくはピリミジン塩基の組み込み、または主鎖形成または相補的塩基対ハイブリダイゼーションのレベルなど、ヌクレオチドもしくは核酸分子が他のヌクレオチドもしくは核酸分子と相互作用する方法に対する修飾が含まれる。ヌクレオチドまたは核酸分子のビオチン化または他の形態の標識は、本明細書で定義されたような「機能的誘導体」の一例である。
【0041】
好ましくは、前記DNAは、遺伝子または遺伝子フラグメント、染色体遺伝子転座切断点または前回の核酸増幅により生成されたDNAである。
【0042】
この態様により、本発明は、目的とする遺伝子または遺伝子フラグメントを増幅する方法であって、
(i)DNA試料を、
(a)前記目的とする遺伝子または遺伝子フラグメントに対する1つまたは複数のフォワードプライマー、および
(b)前記目的とする遺伝子または遺伝子フラグメントに対する1つまたは複数のリバースプライマー
と接触させるステップであり、群(a)または群(b)のいずれか一方のプライマーが機能的に非効率であり、およびこれらの5'末端でオリゴヌクレオチドタグに操作可能に結合されるステップと、
(ii)少なくとも2回の増幅サイクルによりステップ(i)のDNA試料を増幅するステップと、
(iii)ステップ(ii)の増幅DNAを、ステップ(i)のオリゴヌクレオチドタグ配列に相補的な配列の部分または全部に対するプライマーと接触させるステップと、
(iv)ステップ(iii)のDNA試料を増幅するステップと
を含む方法を提供する。
【0043】
別の態様では、目的とする染色体遺伝子転座切断点領域を増幅する方法であって、
(i)DNA試料を、
(a)前記目的とする染色体遺伝子転座切断点領域に対する1つまたは複数のフォワードプライマー、および
(b)前記目的とする染色体遺伝子転座切断点領域に対する1つまたは複数のリバースプライマー
と接触させるステップであり、群(a)または群(b)のいずれか一方のプライマーが機能的に非効率であり、およびこれらの5'末端でオリゴヌクレオチドタグに操作可能に結合されるステップと、
(ii)少なくとも2回の増幅サイクルによりステップ(i)のDNA試料を増幅するステップと、
(iii)ステップ(ii)の増幅DNAを、ステップ(i)のオリゴヌクレオチドタグ配列に相補的な配列の部分または全部に対するプライマーと接触させるステップと、
(iv)ステップ(iii)のDNA試料を増幅するステップと

を含む方法が提供される。
【0044】
さらに別の態様では、前回の核酸増幅により生成されたDNAを増幅する方法であって、
(i)DNA試料を、
(a)前記目的とする染色体遺伝子転座切断点領域に対する1つまたは複数のフォワードプライマー、および
(b)前記目的とする染色体遺伝子転座切断点領域に対する1つまたは複数のリバースプライマー
と接触させるステップであり、群(a)または群(b)のいずれか一方のプライマーが機能的に非効率であり、およびこれらの5'末端でオリゴヌクレオチドタグに操作可能に結合されるステップと、
(ii)少なくとも2回の増幅サイクルによりステップ(i)のDNA試料を増幅するステップと、
(iii)ステップ(ii)の増幅DNAを、ステップ(i)のオリゴヌクレオチドタグ配列に相補的な配列の部分または全部に対するプライマーと接触させるステップと、
(iv)ステップ(iii)のDNA試料を増幅するステップと
を含む方法が提供される。
【0045】
好ましくは、前記前回の核酸増幅はPCRである。
【0046】
古典的PCRでは、プライマーおよび反応条件は、サイクルごとにアンプリコン数が約2倍になり効率的な指数関数的増幅をもたらすように、プライマーハイブリダイゼーションならびにフォワードおよびリバースプライマーの伸長が最大効率または最大に近い効率で生じるように設計される。しかし、本発明の方法は、1セットのプライマーが効率的にハイブリダイズおよび伸長しない条件下で設計またはさもなければ使用される、フォワードおよびリバースプライマーセットの使用に基づく。したがって、効率的なプライマーセットは正常に増幅するであろうが、非効率的なセットは正常に増幅しないであろう。この結果、目的とする配列が増幅される場合、アンプリコン鎖数は古典的PCRで生じるであろう数より著しく少ない。一方の末端に非効率的なプライマーのタグ領域を組み込むアンプリコンがひとたび生成されれば、効率的な増幅のみが開始する(これらのアンプリコンの生成は図1に図示され、タグ機能は以下により詳細に考察される)。この時点で、該タグ領域に対するプライマーは正常な増幅率をもたらす。したがって、非効率的なプライマーセットからの転写物の生成に関して、「ボトルネック」が効果的に作製される。
【0047】
非効率にされるプライマーが、縮重しているおよび幅広くハイブリダイズする、またはalu配列など反復されることが多い配列に対する場合、より重度のボトルネックが有用には作製される。プライマー結合部位が近接して置かれる場合、および非効率的なプライマーがフォワードプライマーおよびリバースプライマーとして働くことができる場合、不要な産物の増幅が生じる可能性がある。しかし、両方のプライマーが非効率的であるため、増幅は最初はきわめて非効率的であり、および重度のボトルネックがある。この状況は図2に図示される。一方の末端に非効率的なプライマーのタグ領域を、他方にこの相補体を含むアンプリコン鎖がひとたび生成されれば、効率的な増幅のみが開始する。しかし、上述の通り、任意の所定のサイクル数後、このようなアンプリコン数は、目的とする配列の増幅中に生じるものより大幅に少ない。増幅反応の終了時の不要な産物量もこれに応じて減少する。
【0048】
目的とする配列に正しくハイブリダイズした非効率的なプライマーのハイブリダイゼーションおよび伸長は(この後のサイクルで、前もって合成されたアンプリコンに対する効率的なプライマーのハイブリダイゼーションおよび伸長が起こる)、タグプライマーが効率的にハイブリダイズおよび伸長することができる鋳型を生成する。このような分子はこの相補体と共に、効率的なプライマー(タグプライマーおよび効率的なセットの1メンバー)ごとに上流および下流の結合部位を提供することから、このような鋳型から続いて起こる増幅サイクルは、効率的および指数関数的の両方になる。この結果、最初のラグまたは「ボトルネック」後の全体の増幅率は、サイクルごとに2倍近いアンプリコン数が生じるほど後のサイクルで加速する。しかし、最終結果は、目的とする配列のアンプリコンと比べて、望まれないアンプリコンの増幅に対する負の選択があるということになる。これは、後者については各末端で、前者については一方の末端でのみ生じるボトルネックのためである。
【0049】
したがって、同じ数の開始標的配列が検討され、および古典的PCRにより生成された増幅との比較が行われる場合、本発明の方法の適用は、図8に図示された通り、目的とする配列のアンプリコン数の増加を少なくし、不要な配列のアンプリコン数の増加をさらに少なくするであろう。入要な産物および不要な産物の両方の増幅が生じるが、不要な配列と比べて目的とする配列の相対的濃縮がある。非効率的なプライマーセットの効率の低下は、より少ない増幅を代償として濃縮の増加をもたらすことから、絶対増幅と濃縮との逆相関がある。
【0050】
当業者は、該方法の第1および第2段階の増幅が、物理的に別々の反応として行われる必要はなく、同じ反応容器で単純におよび便利に行うことができることを理解するであろう。第1段階はサイクル1により開始し、以後進行するのに対し、第2段階はサイクル3で開始し、以後進行する。
【0051】
非効率にされるのはフォワードプライマーセットであるべきかリバースプライマーセットであるべきかの決定に関して、これは様々な状況により異なる可能性がある。しかし、一般には、目的とする標的以外の配列に結合する最大確率を示すプライマーセットのハイブリダイゼーションおよび伸長を非効率にしようとすると考えられる。本明細書で提供された例示に関して、BCR-ABL切断点の濃縮に関する実験デザインは、BCRプライマーセットよりむしろABLプライマーセットを非効率にすることに基づく。さらに別の例では、目的とするDNA領域のプライマー標的配列がDNA領域の片側のみでわかっている場合、ユニバーサルまたは縮重プライマーは、他方の側からのプライマー伸長および増幅を開始するのに使用することができた。しかし、このようなプライマーは、定義により、試料DNA全体にわたって乱交雑に結合するであろうことから、このプライマーセットを非効率にすることで、無関係な配列の増幅強化と比べて目的とするDNA領域の増幅強化を達成することができる。さらに別の例では、増幅されているDNA試料が前回の核酸増幅により生成された場合、非効率にされるのはフォワードプライマーセットであるべきかリバースプライマーセットであるべきかの決定に関して、最初の開始増幅におけるフォワードプライマー(複数可)が乱交雑であったならば、フォワードプライマー(複数可)のハイブリダイゼーションおよび伸長を、または逆に、最初の開始増幅におけるリバースプライマー(複数可)が乱交雑であったならば、リバースプライマー(複数可)のハイブリダイゼーションおよび伸長を非効率にしようとすると考えられる。
【0052】
好ましくは、非効率にされるプライマー群は、非標的DNA領域に乱交雑にハイブリダイズする可能性を有する群である。
【0053】
この態様により、目的とするDNA領域を増幅する方法であって、
(i)DNA試料を、
(a)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のフォワードプライマー、および
(b)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のリバースプライマー
と接触させるステップであり、群(a)または群(b)のいずれか一方のプライマーが機能的に非効率であり、およびこれらの5'末端でオリゴヌクレオチドタグに操作可能に結合され、ならびに前記機能的に非効率なプライマー群が、非標的DNA領域に乱交雑にハイブリダイズする可能性を有するプライマー群であるステップと、
(ii)少なくとも2回の増幅サイクルによりステップ(i)のDNA試料を増幅するステップと、
(iii)ステップ(ii)の増幅DNAを、ステップ(i)のオリゴヌクレオチドタグ配列に相補的な配列の部分または全部に対するプライマーと接触させるステップと、
(iv)ステップ(iii)のDNA試料を増幅するステップと
を含む方法が提供される。
【0054】
「プライマー」または「オリゴヌクレオチドプライマー」とは、ヌクレオチド、またはこの機能的誘導体もしくは類似体の配列を含む任意の分子を指すと理解されるべきである。「プライマー」または「オリゴヌクレオチドプライマー」の機能には、目的とする核酸分子(目的とするDNAは同じ意味で「標的DNA」とも呼ばれる)領域へのハイブリダイゼーションが含まれる。プライマーは非核酸成分を含み得ることが理解されるべきである。例えば、プライマーは、蛍光または酵素タグ、またはプローブとしての分子の使用を促進する、もしくはさもなければ分子の検出または固定化を促進する幾つかの他の非核酸成分などの非核酸タグを含むこともできる。プライマーは、以下により詳細に考察されるオリゴヌクレオチドタグなど、追加の核酸成分を含むこともできる。別の例では、プライマーは、核酸側鎖を有するペプチド主鎖を含むプロテイン核酸であってよい。好ましくは、前記オリゴヌクレオチドプライマーはDNAプライマーである。
【0055】
「フォワードプライマー」とは、標的DNAのアンチセンス鎖にハイブリダイズすることで、目的とするDNA試料中の標的DNAを増幅するプライマーを指すと理解されるべきである。
【0056】
「リバースプライマー」とは、目的とするDNA試料中において、およびPCRにおいて、標的DNAのセンス鎖にハイブリダイズすることで、標的DNAを増幅するプライマーを指すと理解されるべきである。
【0057】
本発明での使用に適切なプライマーの設計および合成は、当業者にはよくわかるであろう。1つの実施形態では、対象となるプライマーは4〜60ヌクレオチド長、別の実施形態では10〜50ヌクレオチド長、さらに別の実施形態では15〜45ヌクレオチド長、さらに別の実施形態では20〜40ヌクレオチド長、さらに別の実施形態では25〜35ヌクレオチド長である。さらに別の実施形態では、プライマーは約26、27、28、29、30、31、32、33または34ヌクレオチド長である。
【0058】
本発明の方法に使用されるプライマー数に関して、これは当業者により決定されてよい。目的とする配列の2つの末端の配列がわかっている場合、1個のフォワードおよび1個のリバースプライマーのみが必要とされ得るが、この情報が得られない場合、複数のフォワードおよび/またはリバースプライマーまたは1つもしくは複数の縮重プライマーが使用され得る。相互作用遺伝子の大きな領域内の未知のポイントに生じる得る転座切断点の単離では、効率的なPCR増幅が生じるように、少なくとも1個のフォワードおよび1個のリバースプライマーが接近して切断点にかかることを確保しようとして、複数のプライマーが使用され得る。慢性骨髄性白血病(CML)に関して、例えば、ほぼ全てのBCR転座は、各々が約3kb長の2つの領域の1つを含む。この場合、12個の外側のフォワードプライマーが使用され得る。しかし、ABL遺伝子はより大きく、転座に通常含まれる領域は約140 kb長であり、および最大282個以上の外側のリバースプライマーが使用され得る。1つの特定の実施形態では、6個のフォワードプライマーおよび24個のリバースプライマーの組合せが、および別の実施形態では1個のフォワードプライマーおよび282個のリバースプライマーの組合せが使用される。さらに別の組合せでは6個のフォワードプライマーおよび270〜310個のリバースプライマーがある。さらに別の組合せでは1〜20個フォワードプライマーおよび250〜350個のリバースプライマーがある。使用に選択されるプライマー数は、目的とする標的領域により決まるであろう。故に様々な標的により異なる可能性がある。当業者に理解されるように、古典的PCRに関して、個々のPCR反応における多数のプライマーは非特異的増幅反応の確率を増加させる。しかし、本発明の方法は、1つのプライマーセットを機能的に非効率にすることによる非特異的増幅反応の最小限化により、多数のプライマーの使用を可能にする。
【0059】
単一のフォワードプライマープール内またはリバースプライマープール内に2個以上の異なるプライマーがある限りは、このプール内の全てのプライマーを非効率にすることができ、または無関係なアンプリコンを生成する点で最も問題であると考えられるこれらのプライマーの選択された亜群のみを非効率にできることも理解されるべきである。
【0060】
「機能的に非効率な」により、対象となるプライマーが修飾されていること、および/またはプライマーの設計が修飾されなかった、もしくはプライマーが対象となる環境条件下で使用されなかった場合よりも、このプライマーからのアンプリコン生成数および/または生成率の点で、ハイブリダイゼーションおよび伸長の効率を低下させる環境条件下で該プライマーが利用されることを意味する。プライマーを機能的に非効率にする方法は、当業者にはよくわかるであろう。該方法は、
(i)使用されるプライマーの濃度を下げること、
(ii)プライマーのハイブリダイゼーション時間を短縮すること、
(iii)ハイブリダイゼーション反応が生じるのに必要な温度を上げること、
(iv)プライマーの長さを修飾すること、
(v)プライマー溶解温度を変更すること、
(vi)ハイブリダイゼーション/プライマー伸長段階中にカオトロピック剤を導入すること、
(vii)相補配列など、プライマーに対する競合的阻害剤を反応に導入すること、
(viii)プライマー配列にヌクレオチドミスマッチを導入すること、
(ix)ハイブリダイゼーションの状況において、より低い効率で水素結合するプライマー類似体を使用すること
を含むがこれらに限定されない。
【0061】
プライマー自体を修飾する可能性に加えて、同じ成果を達成するため、代わりに(または追加として)反応条件を修正することを選択できることが理解されよう。この目的のため、2つ以上の上記に挙げられた方法を用いて、一方のプライマーの機能的非効率を、他のプライマーを同様に非効率にすることなく達成するシステムを設計することもできることが理解されるべきである。これは、プライマー自体よりむしろ反応条件を修正することを選択する場合に問題になる可能性がある。例えば、効率を低下させるため反応温度を上げることを選択する場合、これは両方のプライマー群(すなわちフォワードプライマーおよびリバースプライマー)の機能性に影響するであろう。したがって、上げる必要のある温度の程度を最小限にするため、長さを増大されたプライマーの使用とこれを組み合わせて、他方ではなく一方のプライマーの非効率性を最大限にすることができる。さらに別の例では、反応条件を変更するのではなく、代わりに、利用されるプライマーの濃度を下げることを選択することができる。別の例では、プライマーの長さを減少させる、またはハイブリダイゼーション時間の短縮と組み合わせて濃度を下げることができる。機能的非効率を達成するためのこれらの要因の設計および変更は、これらが日常的に検討される、およびPCR反応の設計の文脈で当技術分野において十分に記載されている(Sambrook J.およびRussell D.、「Molecular cloning; a laboratory manual」第3版、Cold Spring Harbor刊行、2001年)(ただし、この状態を故意に導入するのとは対照的に、通常はフォワードおよびリバースプライマーの機能的非効率の可能性を減少させる文脈ではあるが)問題であることから、当業者にはよくわかるであろう。とはいえ、効率的なPCR反応を設計するために行う必要のある検討は、非効率に機能する反応の部分を設計するために行われるものと同じである。したがって、問題は、これらの検討がどのように適用されるかという点のみである。この目的のため、プライマーを機能的に非効率にするという概念はまた、プライマー自体の設計の修正だけでなく、あるいはプライマーが機能するのに必要な反応条件の修正も包含することが理解されるべきである。
【0062】
好ましくは、機能的非効率は、プライマーの長さ、配列、アニール温度、開始濃度またはハイブリダイゼーション時間の修正の1つまたは複数により達成されるハイブリダイゼーション非効率である。
【0063】
この態様により、目的とするDNA領域を増幅する方法であって、
(i)DNA試料を、
(a)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のフォワードプライマー、および
(b)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のリバースプライマー
と接触させるステップであり、群(a)または群(b)のいずれか一方のプライマーが非効率にハイブリダイズし、およびこれらの5'末端でオリゴヌクレオチドタグに操作可能に結合されるステップと、
(ii)少なくとも2回の増幅サイクルによりステップ(i)のDNA試料を増幅するステップと、
(iii)ステップ(ii)の増幅DNAを、ステップ(i)のオリゴヌクレオチドタグ配列に相補的な配列の部分または全部に対するプライマーと接触させるステップと、
(iv)ステップ(iii)のDNA試料を増幅するステップと
を含む方法が提供される。
【0064】
好ましくは、前記機能的に非効率なプライマー群は、機能的に非効率にされていない場合、非標的DNA領域に乱交雑にハイブリダイズする可能性を有するプライマー群である。
【0065】
別の好ましい実施形態では、前記目的とするDNA領域は、遺伝子もしくは遺伝子フラグメントまたは染色体遺伝子転座切断点である。
【0066】
上記に詳述された通り、本発明の方法は、目的とする配列の濃縮を目的とし、およびフォワードまたはリバースプライマー群のいずれか一方を非効率にすることに基づく。この結果、目的とする配列の増幅は非効率となるが、フォワードおよびリバースプライマーの両方として働く非効率的なプライマー群の1つまたは複数のメンバーにより増幅された、他の不要な配列に対してはさらに非効率となる。この状況は(図2に例示されている)、このような不要な配列に対する負の選択および目的とする配列の濃縮をもたらす。しかし、目的とするアンプリコンのコピー数の増加を促進させるために、効率的なレベルの増幅に戻すこともまた望ましい。これは、便利には、プライマーハイブリダイゼーション標的部位を生成するためにそれ自体が機能できるタグを、機能的に非効率なプライマーに組み込むことで達成される。この手段により、機能的に非効率なプライマーと同じ方向から効率的な増幅をもたらす能力が効果的に可能になる。
【0067】
後のサイクルでのタグプライマーによる効率的なプライミングを可能にするこのような鋳型の生成は、さらなる濃縮をもたらす。このイベントシーケンスは図1に示される。
【0068】
オリゴヌクレオチドタグを含むプライマー2は、最初のゲノム鎖または前回のPCRサイクルで生成されたアンプリコン鎖のいずれか一方の鋳型鎖にハイブリダイズする。このプライマーは、非効率にハイブリダイズするが、それでもなおこの最初のサイクル中に幾つかの相補鎖を生成する。第2増幅サイクルでは、プライマー1は、プライマー2によって生成されたアンプリコン鎖にハイブリダイズおよび伸長し、タグプライマーに対する結合部位を含む鎖を生成する。該鎖は、後のサイクルでタグプライマーにより効率的に増幅することができる。図は、プライマー1が、目的とするDNA領域に対応するようなアンプリコンを選択し、タグプライマーに対する結合部位を含有するアンプリコン鎖を効率的に生成する効率的なプライマーである状況を図示する。Aluなどの共通配列、または縮重もしくはユニバーサルプライマーにより増幅することができる配列の増幅など、非効率的なプライマー群の1つまたは複数のメンバーによるフォワードおよびリバースプライミングを特徴とする状況、ならびに増幅が望まれない状況では、図1のプライマー1に対応するプライマーは非効率的であり、第2サイクルにおけるその伸長が、タグプライマーに対する結合部位を含有する鎖の生成を少なくする。したがって、このような望まれない鋳型の生成に対するさらなる負の選択、および目的とする配列の鋳型鎖(プライマー1を一方の末端に、およびタグに対する結合部位を他方の末端に含む)を支持する正の選択が効果的に生じる。
【0069】
これらのオリゴヌクレオチドタグがプライマーの伸長を妨げないことを確保するために、プライマーはこの5'末端でオリゴヌクレオチドタグに結合される。したがって、「オリゴヌクレオチドタグ」とは、本発明の機能的に非効率なプライマーの5'末端に結合される、通常50ヌクレオチド未満のヌクレオチド配列を指すと理解されるべきである。1つの実施形態では、タグは25〜30塩基長である。また、フォワードおよびリバースプライマーに関連して提供された定義と一致して、本明細書に記載されたオリゴヌクレオチドタグは、例えば、ビオチン、酵素標識、蛍光標識等の単離または視覚化タグなどの非核酸成分を含むこともできることが理解されるべきである。これは、非分子法によりタグ付けされたプライマーもしくはアンプリコンの迅速および単純な単離または視覚化を可能にする。
【0070】
オリゴヌクレオチドタグがプライマーに「操作可能に結合」されることは、上記に詳述された通り、タグ付けされたプライマーの機能的目的を達成することができるように領域が結合されていることを指すと理解されるべきである。これらの領域が結合される手段、およびさらに、対象となるオリゴヌクレオチドプライマーが標的DNA領域に結合する手段に関して、これらは様々なタイプの相互作用に対応する。これに関して、「相互作用」とは、相補的なヌクレオチド塩基対間のハイブリダイゼーション、または幾つかの他の形態の相互作用(任意の他の核酸または非核酸分子を有するプライマー分子もしくはタグ分子(標的分子など)の任意の核酸もしくは非核酸部分間の結合形成、視覚化手段、単離手段等)など、相互作用の任意の形態を指すと理解されるべきである。このタイプの相互作用は、共有結合、水素結合、ファンデルワールス力または任意の他の相互作用機構などの結合形成を介して生じる得るが、これらに限定されない。好ましくは、相互作用がプライマーと標的DNA領域との間で生じる限りでは、前記相互作用は相補的ヌクレオチド塩基対間のハイブリダイゼーションである。この相互作用を促進するには、プライマーによるハイブリダイゼーションが生じるのに十分な時間および条件下で、標的DNAが部分的または完全に一本鎖にされることが好ましい。
【0071】
本発明のオリゴヌクレオチドプライマーおよびタグは、本明細書に例示された特異的構造(直鎖、一本鎖分子であること)に限定されるべきではなく、本明細書に詳述された機能的目的を達成する任意の適切な構造配置まで拡大し得ることが理解されるべきである。例えば、オリゴヌクレオチドの全部または一部が二本鎖であること、ループ領域(ヘアピンカーブなど)を含むこと、または開いた環状コンフォメーション、すなわち、ヌクレオチドプライマーの形状は実質的に環状であるものの末端領域がつながっていない形態をとることが望ましい場合がある。
【0072】
標的DNAとの核酸プライマーの相互作用の促進は、任意の適切な方法により行うことができる。これらの方法は当業者にはわかるであろう。この目的のため、タグに対するプライマーは任意の適切な時点で反応管に組み込まれ得ることが理解されるべきである。例えば、該タグは、最初の増幅サイクルの開始前に、すなわちフォワードおよびリバースプライマーセットと共に組み込むことができ、または該タグは、この後、最初の2回の増幅サイクルに組み込むことができる。どちらの場合にも、タグ領域に対するプライマーは、上述の通り、タグ領域を組み込むアンプリコンが生成されて初めて機能的になるであろう。
【0073】
プライマーに導かれた増幅を達成する方法も、当業者にきわめてよく知られている。好ましい方法では、前記増幅はポリメラーゼ連鎖反応、NASBAまたは鎖置換増幅である。最も好ましくは、前記増幅はポリメラーゼ連鎖反応である。
【0074】
後続の反応に対し前回の増幅からの産物を鋳型として利用し、連続核酸増幅を行う方法も、当業者にきわめてよく知られている。例えば図3〜12に示された結果をもたらすのに行われるような、別の好ましい方法では、前回のボトルネックPCRまたは前回の非選択的PCRのいずれかにより生成された目的とするDNA配列の選択的増幅をもたらすのに、ボトルネック増幅が行われてよい。当業者は、連続ボトルネックPCRが行われ得ることを理解するであろう。
【0075】
したがって、目的とするDNA領域を増幅する方法であって、
(i)DNA試料を、
(a)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のフォワードプライマー、および
(b)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のリバースプライマー
と接触させるステップであり、群(a)または群(b)のいずれか一方のプライマーが非効率にハイブリダイズし、およびこれらの5'末端でオリゴヌクレオチドタグに操作可能に結合されるステップと、
(ii)少なくとも2回のPCRサイクルによりステップ(i)のDNA試料を増幅するステップと、
(iii)ステップ(ii)の増幅DNAを、ステップ(i)のオリゴヌクレオチドタグ配列に相補的な配列の部分または全部に対するプライマーと接触させるステップと、
(iv) PCRによりステップ(iii)のDNA試料を増幅するステップと
を含む方法が提供される。
【0076】
好ましくは、前記目的とするDNA領域は前回の核酸増幅により生成されている。
【0077】
別の好ましい実施形態では、前記目的とするDNA領域は、遺伝子もしくは遺伝子フラグメントまたはBCR-ABL切断点などの染色体遺伝子転座切断点である。
【0078】
本発明の方法の達成に関して、ステップ(i)および(iii)のプライマーは最初の2回の増幅サイクルの前に反応溶液に同時に添加されてよいこと、またはステップ(iii)のプライマーは第1もしくは第2の増幅サイクルの後に導入されてよいことが理解されるべきである。これは、当業者がどのようにPCR反応を行おうとしているかにより決まるであろう。例えば、使用を簡単にするためには、単一の管で全反応を行えることが望ましい場合が多い。とはいえ、本発明のステップを達成する任意の他の方法が使用されてよい。
【0079】
「試料」とは、生体または非生体試料のいずれかを指すと理解されるべきである。非生体試料の例には、例えば、合成的に生成された核酸集団の核酸産物が含まれる。「生体試料」とは、限定されるものではないが、細胞物質、血液、粘膜、糞便、尿、組織生検標本、動物の身体に導入され、後に除去された液体(例えば、肺洗浄後の肺から抽出された食塩水または腸洗浄から回収された溶液など)、植物物質もしくは植物繁殖物質(種子または花など)または微生物コロニーなど、動物、植物または微生物(微生物培養物を含む)から得られる生体物質の任意の試料を指すと理解されるべきである。本発明の方法によりテストされる生体試料は直接テストされてよく、またはテスト前に何らか形態の処理を必要としてよい。例えば、生検試料は、テスト前に均質化を必要とする場合があり、またはインサイチュでテストするための切片作成を必要とする場合がある。さらに、生体試料が液体形態中にない限りでは(このような形態がテストに必要とされる場合)、試料を動員するのに緩衝剤などの試薬の添加を必要とする場合がある。
【0080】
標的DNAが生体試料中に存在する限りでは、生体試料は直接テストされてよく、あるいは生体試料中に存在する核酸物質の全部もしくは一部がテスト前に単離されてよい。標的核酸分子がテスト前に前処理される(例えば生ウイルスの不活化またはゲル上に流される)ことは、本発明の範囲内である。生体試料は、回収されたばかりであってよく、またはテスト前に貯蔵されていてよく(例えば凍結により)、またはさもなければテスト前に処理されていてよい(培養によるなど)ことも理解されるべきである。
【0081】
プライマーに試料を「接触させる」とは、相互作用(例えば、ハイブリダイゼーション)が生じ得るように試料とのプライマーの混合を促進することを指すと理解されるべきである。この目的の達成手段は当業者にはよくわかるであろう。
【0082】
どのタイプの試料が本明細書に開示された方法によるテストに最も適切かという選択は、モニターされる状況の性質など、状態の性質により決まるであろう。例えば、好ましい実施形態では腫瘍の状態が分析対象となる。腫瘍の状態が白血病であれば、血液試料、リンパ液試料または骨髄穿刺液が適切なテスト試料を提供するであろう。腫瘍の状態がリンパ腫の場合、リンパ節生検または血液もしくは骨髄試料がテスト用組織の適切なソースを提供する可能性が高いであろう。腫瘍細胞の起源をモニターしているのか、または転移もしくは元の位置からの腫瘍拡散の他の形態の存在がモニターされるのかについての検討も必要になるであろう。これに関して、任意の1頭の哺乳動物由来の幾つかの異なる試料を回収およびテストすることが望ましい場合がある。
【0083】
任意の所与の検出シナリオに適切な試料の選択は、当業者の技能の内であろう。
【0084】
本明細書で使用される限りでは用語「哺乳動物」には、ヒト、サル、家畜動物(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ロバ)、実験室テスト動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット)、コンパニオン動物(例えばイヌ、ネコ)および捕獲野生動物(例えばカンガルー、シカ、キツネ)が含まれる。好ましくは、哺乳動物はヒトまたは実験室テスト動物である。さらにより好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0085】
上記に詳述された通り、本発明の方法は、好ましくは増幅サイクルの連続シリーズとして行われる。この目的のため、非効率的なプライマーのオリゴヌクレオチドタグに対するプライマー、および効率を保持された最初のプライマーによる増幅を受けるのに適切なアンプリコンの生成を達成するには、最低2回の増幅サイクルがステップ(ii)で必要とされる。しかし、本発明の方法は、オリゴヌクレオチドタグとのプライマーの接触が生じる前に、3回以上の増幅サイクルを行うように設計され得ることが理解されるべきである。あるいは、本方法の全ての試薬が開始前に反応管に導入される場合、ステップ(iv)のタグベースの増幅が効率的になる前に2回を超える増幅サイクルは起こらない可能性がある。同じPCR内であっても、各増幅サイクルが、次いで後続のタグベースの増幅を受けることができる新規のアンプリコンを生成する可能性があることも理解されるべきである。
【0086】
本発明の方法は、増幅ラウンドが前回の増幅ラウンドの増幅産物に直接連続的に行われ得るように設計されたが、これは、濃縮/選択ステップなど、当業者により任意の追加のステップの組み込みが試みられるかどうかの観点において制限と理解されるべきではない。例えば、最初の増幅ラウンド後に所望のアンプリコンを選択または濃縮すること、およびこの後この物質だけに第2増幅ラウンドを行うことを試みることができる。選択または濃縮に利用できるであろう方法には、以下が含まれる。
(i)プライマーに結合される固有のマーカーに基づく選択ステップ。例えば、プライマーの1つのビオチン化は、フォワードまたはリバースプライマーのいずれかによる伸長の結果得られたアンプリコンを同定および単離する手段を提供する。ビオチン化プライマーで増幅産物を満たすことで、プライマーは目的とするアンプリコンを同定するプローブとして働くことができ、およびビオチン化はこれらのアンプリコンを単離する土台を提供することができる。本発明の各プライマー群が固有のタグを含むことを確保することで、著しい特殊性により、目的とする特異的アンプリコンのみを選択することができる。特に、当業者は、フォワードプライマーにより増幅されたが、次いでリバースプライマーにより増幅されなかったアンプリコンを除外しようとするであろう。
(ii)産物をゲル上に流すこと、および関係がありそうな特定のバンドまたは領域のみを切除すること、およびこの後これらをさらなる増幅ステップに供すること。第2増幅サイクル後にバンドがゲル上に存在する場合、配列決定に何か問題があれば、ゲルから産物を切り取り、ならびに個々のプライマーおよび/またはより小さなプライマープールを用いて一連のPCR反応を実施して、問題を解決しようとすることができる。
【0087】
本発明の方法は、このような追加のステップを含むように適応することができるが、本方法の固有の利点の1つは、本方法が、無関係なアンプリコンの生成を最小限にすることで、濃縮または選択ステップを実施する必要を最小限にするように設計された点である。とはいえ、特定の状況に応じて、このようなステップの組み込みが有用になる場合がある。
【0088】
別の例では、特異性を高めるおよび所望の産物の単離を促進するために、本方法を用いた1つまたは複数の増幅を1つまたは複数の他の増幅ステップと組み合わせるために、本方法を適合させたいと考える場合がある。図6および11は、1回の標準的PCRの後に3ラウンドのボトルネックPCRが続く実験の結果を図示する。図7は、2ラウンドの標準的PCRの後に2サイクルのボトルネックPCRが続く実験の結果を図示する。図9、10および12は、1回の標準的PCRの後に2ラウンドのボトルネックPCRが続く実験の結果を図示する。標準的PCRおよびボトルネックPCRのサイクルを変更することも可能である。したがって、本方法の第2段階でのPCRサイクル数を増やす、または後続のPCRもしくは他の増幅形態の実施によるなどの任意の適切な手段により目的とする配列の増幅を最適化することができる。本方法はまた、目的とする配列のさらなる濃縮および増幅を提供するために所望の程度まで繰り返し適用することができる。本方法の反復適用による目的とする配列の進行中の濃縮を示す例が図5および11に示される。これらのデータを用いた計算は、これらの実験のラウンド2および3で使用された非効率的なプライマーの効率が、最大約1%であったことを示唆する。これらの様々な実験デザインは当業者に理解されるであろう。
【0089】
目的とする核酸領域を増幅する効率的な手段の提供は、特定の遺伝子配列を特徴とする疾患状態の診断および/またはモニタリング、目的とする遺伝子領域の特性評価または分析、DNA切断点領域の同定または特性評価、ならびに目的とする遺伝子配列の一方の末端のヌクレオチド配列のみがわかっている、または推測することができる目的とする遺伝子配列の同定を含むが、これらに限定されない様々な適用に有用である。
【0090】
本発明のさらに別の態様は、目的とするDNA領域を増幅する方法であって、
(i)DNA試料を、
(a)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のフォワードプライマー、および
(b)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のリバースプライマー
と接触させるステップであり、群(a)または群(b)のいずれか一方のプライマーが非効率にハイブリダイズし、および両方とも機能的に非効率であり、およびこれらの5'末端でオリゴヌクレオチドタグに操作可能に結合されるステップと、
(ii)少なくとも2回の増幅サイクルによりステップ(i)のDNA試料を増幅するステップと、
(iii)ステップ(ii)の増幅DNAを、ステップ(i)のオリゴヌクレオチドタグ配列に相補的な配列の部分または全部に対するプライマーと接触させるステップと、
(iv)ステップ(iii)のDNA試料を増幅するステップと、
(v)前記増幅DNAを単離および/または分析するステップと
を含む方法に関する。
【0091】
本発明は、以下の非限定例への参照によりさらに記載される。
【実施例1】
【0092】
ボトルネックPCRを用いたBCR-ABL DNA切断点増幅
BCR-ABL DNA切断点は、4ラウンドPCRスクリーンにおいてBCRおよびABL特異的プライマーを用いて増幅した。6個のBCR特異的プライマーおよび282個のABL特異的プライマーは、それぞれBCR(3.2kb)およびABL(140kb)DNAの主な切断点領域にまたがるように設計した。
【0093】
最初のラウンドのPCR増幅は、単一のBCR特異的プライマー50ng、282個全てのABL特異的プライマー100ng(各プライマー350pg)、タグA 50ng、ゲノムDNA 50ng、50mM KCl、2mM Tris HCl(pH 8.4)、1UプラチナTaq DNAポリメラーゼ(Invitrogen社)、5mM MgCl2、ならびにdUTP、dATP、dGTPおよびdTTP各300μmを含有する25μlで実施した。増幅条件は、95℃ 4分間;次いで97℃ 1分間、65℃ 1分間(2サイクルごとに温度を1℃低下)、72℃ 1分間を6サイクル;次いで96℃ 30秒間、62℃ 1分間(最初の2サイクル後に温度を1℃低下)、72℃ 1分間を4サイクル;次いで94℃ 30秒間、61℃ 1分間、72℃ 1分間を10サイクルであった。
【0094】
ABL特異的プライマーは、ABL DNAに相補的でないプライマーの5'末端にタグ領域(Tag A)を有する。最初のラウンドのPCRでは、ABL特異的プライマーに付加したタグ配列をアンプリコンに組み込み、ABL特異的リバースプライマーではなくBCRプライマーをタグAプライマーと共に用いて、後続ラウンドのPCRでDNAがさらに増幅できるようにした。PCRのラウンドごとに異なるタグ配列を使用する。
【0095】
第2、第3および第4ラウンドのPCR増幅は、前回のPCRラウンドの反応混合物の希釈物(希釈係数100)、単一のBCR特異的ネステッドプライマー50ng、キメラタグプライマー500pg(第2、第3および第4ラウンドでそれぞれタグA/I、I/l、1/2)、単一のタグプライマー50ng(第2、第3および第4ラウンドでそれぞれタグI、1、2)、50mM KCl、2mM Tris HCl(pH 8.4)、1UプラチナTaq DNAポリメラーゼ(Invitrogen社)、5mM MgCl2、ならびにdUTP、dATP、dGTPおよびdTTP各300μmを含有する25μlで実施した。増幅条件は、95℃ 4分間;次いで94℃ 30秒間、65℃ 1分間、72℃ 1分間を20サイクルであった。
【実施例2】
【0096】
ボトルネックPCRを用いたPML-RARα DNA切断点増幅
ボトルネックPCRを用いて急性前骨髄球性白血病患者からPML-RARα転座切断点を単離した。患者DNAを複数のRARαプライマーおよび単一のPMLプライマーを用いて増幅し、次いで2ラウンドのボトルネックPCRを実施した。増幅DNAを2%アガロースゲル上で電気泳動した(図9a)。切断点が単離されたことを確認するため、切断点配列を用いて切断点にまたがるRARαおよびPMLプライマーを設計し、患者DNAをこれらのプライマーを用いて1ラウンド増幅した(図9b)。図9aでゲル上に示された増幅バンドの配列も決定した(図9c)。
【実施例3】
【0097】
縮重プライマーおよびボトルネックPCRを用いた遺伝子歩行
3つの遺伝子、APC、BRCA1およびミオシリンに沿った遺伝子歩行は、遺伝子特異的フォワードプライマー50ng、様々な縮重リバースプライマーの1つ50ng、およびリバースタグプライマー50ngを用いて実施した。縮重リバースプライマーは、3'末端に4〜6個のランダム正常残基、続いて3〜6個の縮重残基、続いて12〜18個(通常は18個)の正常残基のランダムタグ配列を有した。最も多く使用された縮重プライマーは、3'末端に5個の固定塩基、続いて5個の縮重塩基、続いて18塩基(5'TGCTAGGATCCAAGGNNNNNATTCG3'(配列番号1))のタグ配列を有した。リバースタグプライマーは、縮重リバースプライマー上のタグと同じ配列を有した。35℃、5分間でアニールする5回のPCRサイクルに続いて、55℃、3分間でアニールする15サイクルを実施した。
【0098】
PCRは、全DNA 50ng、5mM MgCl2、0.1mM dUTP、0.2mM dTTP、dUTP、ならびにdCTP、dATPおよびdGTP各0.3mM、ならびに1単位のプラチナTaq DNAポリメラーゼ(Invitrogen社)を有する25μl容積で実施した。プライマーはSigma-Aldrich社(セントルイス、MO、USA)またはInvitrogen社(カールスバッド、CA、USA)製であった。PCRサイクリング条件は、典型的には94℃、30秒間の変性、上述のようなアニーリング、および72℃、90秒間の伸長を含んだ。
【0099】
1〜3ラウンドのボトルネックPCRを実施した(通常は2ラウンド)。上記最初のラウンドからの増幅物質の1/100希釈物を最初のボトルネックPCRで増幅し、前回のラウンドからの増幅物質の1/1000希釈物は各後続ラウンドで使用した。各PCRラウンドは電気泳動を実施する場合(この場合は最後まで、30〜40サイクル行った)を除いて20サイクル行った。各PCRは、ネステッドフォワードプライマー50ng、ハイブリッドリバースプライマー0.5ngおよびタグリバースプライマー50ngを含有した。ハイブリッドリバースプライマーは、前回のPCRラウンドのタグプライマーと同じ配列を有する3'末端、および新規のタグ配列を有する5'末端から成った。タグリバースプライマーは新規のタグ配列と同じ配列を有した。
【0100】
PCR産物をゲル電気泳動により調べ、別個のバンドを単離し、通常は最後の増幅に使用されるフォワードプライマーおよびタグプライマーで配列決定した。遺伝子歩行を含む幾つかの実験では、1つまたは複数の別個のバンドが可視化されたかどうかに関係なく増幅産物全体を配列決定した。遺伝子歩行を含む1つの実験では、最初の配列決定プライマーから732bpおよび1302bp下流のプライマーを用いて配列決定反応を実施した。
【実施例4】
【0101】
図13は、本発明の方法での使用に適切なプライマーおよびタグ配列の例を提供する。
【0102】
当業者は、本明細書に記載された本発明は、具体的に記載されたもの以外の変形および修正を許容することを理解するであろう。本発明はこのような変形および修正を全て含むことが理解されるべきである。本発明はまた、本明細書で個々にまたはまとめて言及または示されたステップ、特徴、組成物および化合物の全てを含み、およびいずれの2つ以上の前記ステップまたは特徴の全ての組合せも含む。
【0103】
[参考文献]

【0104】
[配列表]

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的とする核酸領域を増幅する方法であって、
(i)核酸試料を、
(a)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のフォワードプライマー、および
(b)前記目的とする領域に対する1つまたは複数のリバースプライマー
と接触させるステップであり、群(a)または群(b)のいずれか一方のプライマーが機能的に非効率であり、およびこれらの5'末端でオリゴヌクレオチドタグに操作可能に結合されるステップと、
(ii)少なくとも2回の増幅サイクルによりステップ(i)の核酸試料を増幅するステップと、
(iii)ステップ(ii)の増幅核酸を、ステップ(i)のオリゴヌクレオチドタグ配列に相補的な配列の部分または全部に対するプライマーと接触させるステップと、
(iv)ステップ(iii)の核酸試料を増幅するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記核酸がDNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(iv)の前記増幅核酸が単離および/または分析される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記目的とする核酸領域が、増幅方法により生成されたDNA分子領域である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記増幅方法がPCRである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(ii)および(iv)の増幅方法が、PCR、NASBAまたは鎖置換増幅である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記プライマーが、4から60ヌクレオチド長、10から50ヌクレオチド長、15から45ヌクレオチド長、20から40ヌクレオチド長または25から35ヌクレオチド長である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記プライマーが、26、27、28、29、30、31、32、33または34ヌクレオチド長である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記プライマーが、
(i)使用されるプライマーの濃度を下げること、
(ii)プライマーのハイブリダイゼーション時間を短縮すること、
(iii)ハイブリダイゼーション反応が生じるのに必要な温度を上げること、
(iv)プライマーの長さを修飾すること、
(v)プライマー溶解温度を変更すること、
(vi)ハイブリダイゼーション/プライマー伸長段階中にカオトロピック剤を導入すること、
(vii)相補配列など、プライマーに対する競合的阻害剤を反応に導入すること、
(viii)プライマー配列にヌクレオチドミスマッチを導入すること、
(ix)ハイブリダイゼーションの状況において、より低い効率で水素結合するプライマー類似体を使用すること
により機能的に非効率にされる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
非効率にされるプライマー群が、非標的DNA領域に乱交雑にハイブリダイズする可能性を有するプライマー群である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記プライマーが縮重プライマーである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記目的とする領域が、ゲノムDNA領域、遺伝子、遺伝子の部分、DNA組換え産物または染色体遺伝子転座切断点である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記染色体遺伝子転座切断点がBCR-ABLである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記染色体遺伝子転座切断点がPML-RARαである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
BCRに対する1個から20個のフォワードプライマーおよびABLに対する250個から350個のリバースプライマーが使用される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
BCRに対する12個のフォワードプライマーおよびABLに対する282個のリバースプライマーが使用される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
BCRに対する6個のフォワードプライマーおよびABLに対する24個のリバースプライマーが使用される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
BCRに対する1個のフォワードプライマーおよびABLに対する282個のリバースプライマーが使用される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
BCRに対する6個のフォワードプライマーおよびABLに対する270個から310個のリバースプライマーが使用される、請求項15に記載の方法。

【図4】
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【図5】
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【図9a)】
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【図9b)】
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【図9c)】
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【図11】
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【図12A)】
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【図12B)】
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【図12C)】
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【図13−A】
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【図13−B】
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【図13−C】
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【図13−D】
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【図13−E】
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【図13−F】
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【図13−G】
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【図13−H】
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【図13−I】
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【図13−J】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−500063(P2011−500063A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530221(P2010−530221)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001453
【国際公開番号】WO2009/052547
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(509330264)モノクアント・ピーティーワイ・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】