説明

Dbaitおよびその単独使用

本発明は、哺乳動物細胞における二本鎖切断(DSB)のDNA修復に干渉する組成物および方法に関する。本発明は、DNA DSB検知、シグナル伝達および/または修復経路、特にDSB修復の非相同末端結合(NHEJ)経路に関与する酵素のホロ複合体(holocomplex)を引き寄せる、または、奪うことにより作用する二本鎖核酸分子を開示する。本発明は、死を誘発するために、有効量で腫瘍細胞の核に導入される単独の抗癌薬物としてのこれらの分子の使用を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物細胞におけるDNA二本鎖切断の修復経路に干渉する組成物および方法に関する。したがって、本発明は、増殖性疾患を処置するための組成物および方法に関する。
【0002】
背景
放射線治療および化学治療は、単独または外科手術との併用で、ヒトの癌に対する必須の治療兵器である。化学治療と放射線治療の間の関連性は癌処置において広く使用された。依然として完全には解明されていないが、細胞毒性作用の生物学的基礎は、細胞周期またはDNA損傷などの細胞機構に依存しており、それは放射線誘発性の細胞死においても重要であり、癌治療において異なる処置を併用することにより、付加的な、またはさらには相乗的な利点をもたらす。
【0003】
生物学的薬物(モノクローナル抗体、サイトカイン/キナーゼ阻害剤、免疫治療/ワクチン)の開発における最近の進歩によって、一部の腫瘍に対するそれらの効率および特異性が証明されている。しかし、それらは化学的細胞毒と併用されることが多い。新しい細胞毒性薬物の開発における多くの進歩にもかかわらず、化学治療に対する薬物耐性は依然として癌の処置における主な臨床上の懸念である。薬物の取り込み/排出、代謝分解、標的の突然変異誘発、修復促進、細胞死のシグナル伝達(アポトーシスおよび壊死)に関連する薬物耐性の機構の理解は、特に一部の処置耐性腫瘍において化学治療の効率を保証し、治療指数を改善するために必須である。
【0004】
この10年間において、多くの研究がこの分野においてなされ、放射線に反応するシグナル伝達の複雑さが描写され始めた。この点において、電離放射線で標的とされる特に対象となる遺伝子は、アポトーシスまたはDNA修復などの放射線誘発性の致死機構の制御に関与するものである。二本鎖切断(DSB)は最も致死的なDNA損傷であるため、DSB修復の有効性が増加するにつれて電離放射線の有効性は減少する。
【0005】
2つの機構がDSBの修復に関与する:非相同末端結合(NHEJ、配列非依存的経路)および相同組み換え(HR、配列依存的経路)(Jackson, 2002により概説)。これらの2つの主なDSB修復経路に関与する遺伝子を標的にすることよって、使用されるアプローチおよび癌細胞株に応じて、これまでにわずかまたは中等度の放射線感受性がもたらされている(Belenkov et al., 2002 ; Marangonl et al., 2000a; Ohnishi et al., 1998)。
【0006】
Ku(例、Ku70およびKu80)およびDNA−PKcsタンパク質は、放射線または化学誘発性のDNA DSBの修復において重要である。損傷が時間どおりに修復できない場合、細胞は死ぬ。したがって、それらは、放射線治療および化学治療に対して標的の細胞および組織を感受性化するための潜在的に興味深い分子標的を表す。哺乳動物細胞において優勢である、NHEJ経路に関与するこれらの重要タンパク質(Ku70/Ku80、DNA−PKcsなど)を阻害することを試みるために、多くのアプローチがこのように想像され、実施されてきた:
1)PI3K(ホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ)の阻害剤(すなわち、DNA−PKcs、ATM、ATR)(Bouton et al., 2000; Durant & Karran, 2003; Willmore et al., 2004; Yauger et al., 2004);
2)ネガティブドミナント&ペプチド(KU80のC末端)(Marangoni et al., 2000b; Kim et al., 2002);
3)一本鎖抗体可変フラグメント(scFv)(DNA−PKcs)(Li et al., 2003a);
4)RNAアプタマー(SELEX:RNA結合Ku)(Yoo & Dynan, 1998);
5)アンチセンス(Ku70、Ku80、DNA−PKcs)(Li et al., 2003b; Marangoni et al., 2000c; Sak et al., 2002);
6)siRNA(DNA−PKcs)(Peng et al., 2000)。
【0007】
これらの多大の努力にもかかわらず、DNA修復経路に関与する遺伝子の標的化および癌治療の併用は依然として初期の実験段階にあり、これまでに臨床試験によってなんら証明済みの利点は示されていない。上記のアプローチが共通の特色を共有することは注目に値する:それらは可能なバイパスまたは補償を伴う複雑なカスケード経路(NHEJなど)に関与する単一のエフェクター(タンパク質)を標的にする。
【0008】
特許出願国際公開第2005/040378号では、哺乳動物細胞におけるDNA二本鎖切断の修復経路に干渉する組成物および方法が開示された。特に、それは、遺伝子非特異的な方法で、DNA損傷検知、シグナル伝達および/または修復経路に干渉する核酸分子、ならびに、抗癌治療を受けた腫瘍の細胞致死を誘発するためのそれらの使用に関する。それは、切断DNAフラグメントの模倣体として作用し、DNA損傷治療により誘導されるDSB部位として認識される(化学修飾されている、または、されていない)短鎖dsDNA(すなわち、DSBの基質模倣体)を使用することにより、直接的または間接的なDNA損傷治療に対する細胞の感受性が増強できることを記載する。これらの分子は、別名が「DSBベイト」分子(Dbait)であり、DNA損傷癌治療・処置、すなわち、化学治療または放射線治療に対する任意の腫瘍細胞の感受性を付与または増加する。Dbait分子は、DNA DSB修復酵素のホロ複合体(holocomplex)を引き寄せる、または、奪うことにより作用し、それによりDNA損傷の検知、シグナル伝達および/または修復の工程に干渉する。したがって、本願は、DNAのDSBを直接的または間接的に起こすことのできる物理的および/または化学剤との併用でのDbait分子に関する。
【0009】
発明の概要
発明者らは、驚くべきことに、任意の直接的または間接的なDNA損傷処置(すなわち、化学治療、放射線治療)の非存在下において、腫瘍細胞がDbait分子単独の存在に対して感受性であることを見出した。実施例において示すとおり、Dbait分子は、単独の癌処置として使用するために、インビトロならびにインビボで効果的である。
【0010】
したがって、本発明は、任意の直接的または間接的なDNA損傷処置の非存在下において増殖性疾患を処置するための薬剤を調製するための核酸分子の使用に関し、ここで該核酸分子が、少なくとも16bp、24bp超、好ましくは32bpの二本鎖部分を含み、少なくとも1つの自由末端を有し、およびここで該分子が少なくともKuタンパク質による結合のための基質であり、DNA−PKcsを活性化できる。
【0011】
本発明は、被験者に対して、少なくとも16bp、好ましくは32bpの二本鎖部分を含み、少なくとも1つの自由末端を有し、少なくともKuタンパク質による結合のための基質であり、DNA−PKcsを活性化できる治療有効量の核酸分子を投与することを含む、該被験者における増殖性疾患の処置のための方法にも関する。
【0012】
本発明は、ヒストンH2AXのリン酸化を測定することを含む、本発明の核酸による処置の効率を評価するための方法にも関する。
【0013】
本発明は、さらに、細胞および/または組織に本発明の核酸を導入することを含む、該細胞および/または組織においてヒストンH2AXのリン酸化を増加するため、または、ヒストンH2AXを活性化するための方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ヒトの腫瘍(Hela、Hep2、およびMO59K)および形質転換した繊維芽細胞(MRC5)に由来する様々な細胞株におけるヒストンH2AXおよびリン酸化ヒストンH2AX(γ−H2AX)のウエスタンブロットMO59JはDNA−PK欠損である(野生型MO59Kに由来する)。AT5BIはATM欠損である(野生型MRC5に由来する)。
【図2】様々なDbait分子によるトランスフェクションから5時間後、または、10Gy照射から1時間後のHep2細胞におけるリン酸化H2AX(γ−H2AX)およびリン酸化したチェックポイントタンパク質Chk2(Chk2−T68p)のレベル
【図3】Hep2腫瘍除去におけるγ−H2AXレベルのウエスタンブロット解析
【図4】Hep2腫瘍除去におけるγ−H2AXレベルのFACS解析
【図5】ヌードマウスでのHep2(HNSCC)異種移植のカプラン・マイヤープロット
【図6】ヌードマウスでのLU1205異種移植のカプラン・マイヤープロット
【図7】ヌードマウスでのSK28異種移植のカプラン・マイヤープロット
【図8】Balb/CマウスにおけるDbait注入の免疫応答
【0015】
本発明の詳細な説明特許出願国際公開第2005/040378号において開示されるとおり、Dbait分子は、遺伝子非特異的な方法で、哺乳動物細胞においてDNA DSB修復系に干渉できる治療用分子の新しいクラスである。これらの新しい分子は、Dbait分子と呼ばれ、NHEJ経路(配列非依存的経路)に関与するタンパク質、特にKuおよび/またはDNA−PKタンパク質のホロ複合体の基質であり、細胞のDNA修復能を中和でき、それによりDNA損傷処置に対するそれらの感受性を増加する。
【0016】
本発明は、Dbait分子が、DNA損傷処置の非存在下において、染色体の完全性の重要ガーディアンであるヒストンH2AXのリン酸化を誘発する能力をさらに開示する。H2AXのこの翻訳後修飾はDNA−PK(DNA依存的キナーゼ)媒介性経路により媒介されるが、しかし、ATM(毛細血管拡張性運動失調症変異)媒介性経路に非依存的である。
【0017】
そのような予想外の/間違ったH2AXの活性化の生物学的結果は、DNA二本鎖切断(DSB)修復系、特に非相同末端結合(NHEJ)経路の混乱であり、これにより正常細胞よりも高レベルの自然発生的(複製エラー)および内因的(酸化ストレス)に生じるDSBを有する腫瘍細胞において細胞致死を誘導する。
【0018】
より具体的には、本発明は、Dbait分子が、任意のDNA損傷処置の非存在下において、ヌードマウスに異種移植したヒト腫瘍の細胞/組織の致死を誘発できる。
【0019】
したがって、本発明は、このように、特に増殖性疾患を処置するための、単独の治療剤としてのそのような分子の使用に関する。
【0020】
本発明のDbait分子は、それらの最小長、少なくとも1つの自由末端の存在、および二本鎖部分の存在などの多くの特徴により定義できる。以下で考察するとおり、Dbait分子の重要な特色は、それらの厳密なヌクレオチド配列が実質的にそれらの活性に影響を及ぼさないことである。さらに、Dbait分子は、修飾した、および/または、非天然の骨格を含みうる。
【0021】
Dbait分子は、好ましくは、非ヒト由来であり(すなわち、そのヌクレオチド配列および/または立体構造(例、ヘアピン)それ自体がヒト細胞において存在しない)、最も好ましくは合成由来である。
【0022】
Dbait分子の作用機構によると、Dbait分子の配列は、あるとしても、ほとんど役割を果たさない。したがって、遺伝子/タンパク質特異的ターゲティング(例、アンチセンス、アンチジーン、siRNA、アプタマー、デコイ、リボザイムなど)のために先行技術において使用する分子とは対照的に、Dbait分子は、公知の遺伝子、プロモーター、エンハンサー、5’または3’上流配列、エクソン、イントロンなどと有意な程度の配列相同性または同一性を有さなくてもよい。換言すると、Dbait分子がNHEJ経路に干渉する作用は配列非依存的であり、Dbait分子はヒトゲノム中の任意の遺伝子に対して80%または70%未満、さらに60%または50%未満の配列同一性を有することができる。
【0023】
この配列非依存的な作用機構は、Dbait分子の特徴であり、それらを他の遺伝子特異的またはタンパク質特異的(配列依存的)な治療剤、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(siRNA、shRNA、およびmiRNA)、および免疫刺激CpGオリゴヌクレオチド、ならびに、特定のタンパク質を捕捉するように設計されたアプタマー/デコイから明確に区別される。
【0024】
好ましい態様において、Dbait分子の配列は、約80%、70%、65%、60%、55%、または50%未満であるヒト核酸配列に対する全体的な程度の同一性を有する。配列同一性を測定する方法は、当技術分野において周知であり、例えばBlastが挙げられる。
【0025】
特定の態様において、Dbait分子は、ストリンジェントな条件下では、ヒトゲノムDNAにハイブリダイズしない。典型的なストリンジェントな条件では、それによって部分的に相補的な核酸から完全に相補的な核酸を識別できる。
【0026】
好ましい態様において、周知のtoll様受容体媒介性の免疫反応を、仮にそのような効果が望ましくない場合には避けるために、Dbait分子の配列はCpGを欠く。
【0027】
特定の態様において、少なくとも32bpまたは32bpの二本鎖部分を有するDbait分子は、Dbait32(配列番号1)、Dbait32Ha(配列番号28)、Dbait32Hb(配列番号29)、Dbait32Hc(配列番号30)、またはDbait32Hd(配列番号31)と同じヌクレオチド配列を含む。場合により、Dbait分子は、Dbait32、Dbait32Ha、Dbait32Hb、Dbait32Hc、またはDbait32Hdと同じヌクレオチド組成を有するが、しかし、それらのヌクレオチド配列は異なる。次に、Dbait分子は、3A、6C、12G、および11Tを伴う二本鎖部分の一本鎖を含む。好ましくは、Dbait分子の配列は任意のCpGジヌクレオチドを含まない。
【0028】
それらの作用機構を考慮すると、Dbait分子の長さは、それがKuおよびDNA−PKcsタンパク質を含むKuタンパク質複合体の適切な結合を可能にするだけ十分な限り、可変でありうる。国際公開第2005/040378号の実験の項では、そのようなKu複合体へ結合すること、および、DNA−PKcs活性化を可能にすることを保証するために、Dbait分子の長さが16bp、好ましくは32bpより長くなければならないことが示された。好ましくは、Dbait分子は、16〜200bp、より好ましくは24〜100bp、さらにより好ましくは26〜100bp、および最も好ましくは32〜100bpを含む。例えば、Dbait分子は24〜160、26〜150、28〜140、30〜120、32〜100bpを含む。「bp」により、分子が、指示した長さの二本鎖部分を含むことを意図する。
【0029】
特定の態様において、二本鎖部分は、Dbait32(配列番号1)、Dbait32Ha(配列番号28)、Dbait32Hb(配列番号29)、Dbait32Hc(配列番号30)、またはDbait32Hd(配列番号31)の少なくとも16、18、20、22、24、26、28、30、または32の連続ヌクレオチドを含む。さらに特定の態様において、二本鎖部分は、Dbait32(配列番号1)、Dbait32Ha(配列番号28)、Dbait32Hb(配列番号29)、Dbait32Hc(配列番号30)、またはDbait32Hd(配列番号31)の16、18、20、22、24、26、28、30、または32の連続ヌクレオチドに存する。
【0030】
本発明のDbait分子は、DSBの模倣体として、少なくとも1つの自由末端を有しなければならない。該自由末端は、自由平滑末端または5’/3’突出末端のいずれかでありうる。特定の態様において、それらは1つの自由末端のみを含む。別の特定の態様において、それらは2つの自由末端を含む。したがって、本発明は、2つの自由末端を伴う二本鎖分子であり、Dbait32(配列番号1)、Dbait32Ha ds(配列番号28)、Dbait32Hb ds(配列番号29)、Dbait32Hc ds(配列番号30)、またはDbait32Hd ds(配列番号31)のヌクレオチド配列を有するDbaitにも関する。
【0031】
Dbait分子は直線状でよく、または、好ましくはヘアピン二本鎖核酸で作ることができる。そのような場合において、ループは核酸、または、当業者に公知の他の化学基、好ましくはヘキサエチレングリコールまたはテトラデオキシチミジル酸(T4)などのリンカーでよい。したがって、特定の態様において、Dbait分子は、Dbait32(配列番号1)、Dbait32Ha(配列番号28)、Dbait32Hb(配列番号29)、Dbait32Hc(配列番号30)、またはDbait32Hd(配列番号31)の少なくとも16、18、20、22、24、26、28、30、または32の連続ヌクレオチドを含む二本鎖部分およびヘキサエチレングリコールリンカーまたはテトラデオキシチミジル酸(T4)リンカーであるループを有するヘアピン分子でよい。さらに特定の態様において、それらのDbait分子は、Dbait32(配列番号1)、Dbait32Ha(配列番号28)、Dbait32Hb(配列番号29)、Dbait32Hc(配列番号30)、またはDbait32Hd(配列番号31)の16、18、20、22、24、26、28、30、または32の連続ヌクレオチドに存する二本鎖部分を有してよい。
【0032】
好ましい態様において、Dbait分子は以下のとおりである:
1)二本鎖Dbait分子は薬学的に許容される担体/賦形剤と使用した場合、細胞/組織体により細胞核に取り込ませることができる;
2)Dbaitの少なくとも1つの自由末端は、DSB損傷検知、シグナル伝達、および/または修復工程に関与する酵素のホロ複合体により認識可能である;および
3)Dbait分子の少なくとも1つの自由末端は、前記の複合体により受け入れられて、腫瘍細胞のゲノムDNA中に取り入れられる。
【0033】
特定の態様において、Dbait分子は、ループおよび/または骨格などのそれらの構造に起因して、非複製構造を有する。
【0034】
この点において、修飾dsDNAがNHEJ経路に関与するホロ複合体、特にKuおよびDNA−PKcsタンパク質、ならびに、DSB損傷検知またはシグナル伝達経路の基質のままであるとの条件で、本発明のDbait分子は、もっぱら、または、主に(50%超)の天然ホスホジエステル骨格もしくは化学修飾したホスホジエステル骨格、または化学基もしくは化学基の混合体を伴う別の骨格を有しうる。有利なことに、化学修飾は、Dbait分子に化学的安定性を付与すること、および/または、生じる場合には、それらのゲノム挿入時のさらなる複製(変異原性効果の潜在的な原因)のためにそれらを保護することを意図する。
【0035】
好ましい態様において、Dbait分子は2’−デオキシヌクレオチド骨格を含み、場合により1または数個(2、3、4、5、または6)の修飾ヌクレオチドおよび/またはアデニン、シトシン、グアニン、およびチミン以外の核酸塩基を含む。したがって、Dbait分子は本質的にDNA構造である。
【0036】
それらは、ペントフラノシル基の代わりに、2’−O−アルキルリボース、2’−O−アルキル−C4’分岐リボース、シクロブチル、もしくは他の炭素環などの糖模倣体またはヘキシトールも有してよい。
【0037】
好ましいDbaitは、1つまたは各鎖の末端に、1または数個の化学修飾したヌクレオチドまたは基を含む。特に好ましい態様において、Dbait分子の自由末端は、1つまたは各鎖の末端で、1、2、または3の修飾ホスホジエステル骨格により保護される。好ましい化学基、特に修飾ホスホジエステル骨格はホスホロチオエートを含む。あるいは、好ましいDbaitは、3’−3’ヌクレオチド結合、またはメチルホスホン酸骨格を伴うヌクレオチドを有する。
【0038】
本発明の他の修飾骨格は、ホスホルアミデート、モルホリノ核酸、2’−0,4’−Cメチレン/エチレン架橋ロックド核酸、ペプチド核酸(PNA)、および短鎖アルキル、またはシクロアルキル糖間結合もしくは可変長の短鎖ヘテロ原子または複素環の糖間結合、または当業者に公知の任意の修飾ヌクレオチドを含む。
【0039】
米国特許第5,677,437号は、複素芳香族オリゴヌクレオチド結合を記載する。窒素リンカーまたは窒素を含む基を使用して、オリゴヌクレオチド模倣体を調製することもできる(米国特許第5,792,844号および第5,783,682号)。米国特許第5,637,684号は、ホスホルアミデートおよびホスホロチオアミデートオリゴマー化合物を記載する。モルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドも想定される(米国特許第5,034,506号)。ペプチド核酸(PNA)骨格などの他の態様において、オリゴヌクレオチドのホスホジエステル骨格はポリアミド骨格により置換でき、塩基はポリアミド骨格のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合される。他の合成オリゴヌクレオチドは、2’位に以下の1つを含む置換糖成分を含みうる:OH、SH、OCH、SCH、F、OCN、OCHCHOCH、O(CHNH、またはO(CHCH、ここでnは1から約10である;C1からC10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリルまたはアラルキル;Cl;Sr;CN;CF;OCF−;O−S−;またはN−アルキル;O−、S−、またはN−アルケニル;SOCH;SOCH;ONO;NO;N
【0040】
Dbait分子は、少なくとも1つの埋め込みエレメントを含むことができ、それによってDNA複製、DNA修復、または損傷シグナル伝達過程が妨げられる。前記の埋め込みエレメントは、内部位置(例、中央に)または二本鎖フラグメントの末端に組み入れることができる。それ(それら)は、a)DNA複製の鋳型として使用できないユニット、例えばポリエチレングリコール鎖、好ましくはヘキサエチレングリコール鎖、または1または複数のヘテロ原子、例えば酸素、硫黄、窒素、または1または複数のヘテロ原子を含むヘテロ原子基もしくは複素環基により最終的に中断および/または置換された任意の炭化水素鎖;b)任意の3’修飾ヌクレオチドなど、DNAポリメラーゼまたはエクソヌクレアーゼにより受け入れられないため遮断エレメントであるユニット、または当業者に公知の他のもの;c)Tnなどの天然オリゴヌクレオチド、ヘアピンフラグメントのループにおいて使用される場合、例えばテトラデオキシチミジル酸(T4)を含みうる。
【0041】
前記の鎖は化学合成、半生合成または生合成、任意の増幅方法、それに続く任意の抽出および調製の方法ならびに任意の化学修飾により作られる。
【0042】
特許出願国際公開第2005/040378号において開示されるとおり、Dbait分子の生物活性は、例えば実施例2および3において記載するインビトロおよび培養細胞を使用したアッセイ、および/または、実施例4および5において記載するインビボアッセイによっても評価できる。最も簡単な関連アッセイは、DNA依存的タンパク質キナーゼ活性アッセイ(実施例2、図1.4を参照)である。この簡単なアッセイは、これまでにDbait分子のインビボ活性を予測してきた。しかし、放射線により増強される非正統的挿入の阻止のアッセイなど、他の培養細胞を使用したアッセイも関連する(実施例3、図2.3及び図2.4を参照)。
【0043】
実際に、本発明のDbait分子はDNA−PKを活性化できなければならない。一態様において、Dbait分子は、放射線により増強される非正統的挿入を阻止することもできる。別の特定の態様において、例えばゲルシフトアッセイにより測定するとおり、Dbait分子はインビトロでKu複合体に結合する。そのようなKu複合体は、1または複数のKuタンパク質および少なくともDNA−PKcタンパク質の組み合わせを含む。さらなる特定の態様において、本発明のDbait分子は、好ましくは薬学的に許容される担体/賦形剤を使用することにより核に侵入する。本発明の最も好ましいDbait分子は、上の特徴のいくつかまたはすべてを組み合わせる。
【0044】
好ましい態様において、Dbait分子は、ヒトの治療における上で定義する他の慣例などの化学修飾したDbait分子である。別の態様において、Dbait分子は化学修飾されておらず、天然核酸フラグメントに対応するが、しかし、化学修飾フラグメントの特徴を呈し、特に該化学修飾Dbait分子に関して定義した塩基対の数および特性を有する。
【0045】
本発明は、本明細書において開示する任意のDbait分子の使用に関する。好ましい態様において、Dbait分子はDbait32(配列番号1)、Dbait32H−po(配列番号3)、Dbait32H(配列番号4)、Dbait32−T4(配列番号2)、Dbait32Hc−5’5’(配列番号14)、Dbait32−NH2(配列番号15)、Dbait32H−FITC(配列番号21)、Dbait32H−Cy3(配列番号22)、Dbait32H−Biot(配列番号23)、Dbait32Ha(配列番号8)、Dbait32Hb(配列番号9)、Dbait32Hc(配列番号10)、Dbait32Hd(配列番号11)、Dbait32Hc−3’mp(配列番号12)、Dbait32Hc−5’3’mp(配列番号13)、Dbait32Hc−Cy3(配列番号25)、Dbait32Hc−Cy5(配列番号26)、Dbait32Hd−FITC(配列番号27)、Dbait32Ha ds(配列番号28)、Dbait32Hb ds(配列番号29)、Dbait32Hc ds(配列番号30)、Dbait32Hd ds(配列番号31)、Dbait64(配列番号19)、およびDbait64L(配列番号20)からなる群より選択される。その組み合わせも使用できる。
【0046】
したがって、本発明は、増殖性疾患を有する細胞および/または組織に上で定義するDbait分子を導入し、それによって該細胞および/または組織の細胞致死を誘導することを含む、任意の直接的または間接的なDNA損傷処置(すなわち、化学および放射線治療)の非存在下において増殖性疾患を処置するための方法に関する。
【0047】
本発明は、細胞および/または組織に上で定義するDbait分子を導入し、それによってヒストンH2AXのリン酸化を増加し、ヒストンH2AXを活性化することを含む、該細胞および/または組織においてヒストンH2AXのリン酸化を増加し、ヒストンH2AXを活性化するための方法にも関する。ヒストンH2AXは当業者に周知のタンパク質である。スイスプロットにおける参照番号はP16104であり、UnigeneはHs477879である。リン酸化はSer−139で実施する(Li et al., 2005の総説)。
【0048】
本発明は、加えて、細胞および/または組織に上で定義するDbait分子を導入し、それによって該細胞および/または組織の細胞致死を誘導することを含む、任意の直接的または間接的なDNA損傷処置の非存在下において増殖性疾患を有する該細胞および/または組織の致死を誘導するための方法に関する。
【0049】
上の方法の特定の態様において、トランスフェクション剤を前記の導入段階において使用する。例えば、トランスフェクション剤は、PEI(米国特許第6,013,240号)、Superfect(Qiagene)、Lipofectin(Invitrogen)などの陽イオン性脂質からなる群より選択できる。
【0050】
本発明の方法および使用において、Dbait分子は有効量で使用される。特に、この量のDbait分子によって、分子が処置される細胞の核酸に到達できる。加えて、この量はDNA−PKを活性化し、ヒストンH2AXのリン酸化を増加して、それを活性化するために十分である。
【0051】
本発明は、任意の直接的または間接的なDNA損傷処置の非存在下において増殖性疾患を処置するための薬剤を調製するためのDbait分子の使用に関する。
【0052】
好ましい態様において、前記のDbait分子が、少なくとも16、18、20、22、24、26、28、または30bp、好ましくは32bpの二本鎖部分を含み、少なくとも1つの自由末端を有し、およびここで該Dbait分子は少なくともKuタンパク質による結合のための基質であり、DNA−PKcsを活性化できる。Dbait分子は本質的にDNAである。
【0053】
本発明は、被験者に治療有効量のDbait分子を投与することを含む、任意の直接的または間接的なDNA損傷処置の非存在下において、該被験者において増殖性疾患を処置するための方法にも関する。
【0054】
特に、本発明は、被験者に治療有効量の上で定義するDbait分子を投与し、それによって前記の被験者の生存時間を増加することを含む、任意の直接的または間接的なDNA損傷処置(すなわち、化学および放射線治療)の非存在下において癌を患う被験者の生存時間を増加するための方法に関する。
【0055】
被験者は哺乳動物またはヒトでよい。好ましくは、被験者はヒトである。一般的に、「哺乳動物」とは、実験室、家庭、農場、および動物園の動物、具体的には、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、および高等動物などの愛玩動物を含む哺乳動物として分類される任意の動物を指す。
【0056】
そのような動物は、無制御な細胞増殖、特に癌に起因する疾患を処置するために使用できる新しい治療剤に関する。Dabait分子は従来のDNA損傷治療の代替物として抗癌治療において使用することが主に意図されるが、高過ぎる細胞分裂速度(増殖)に関連する疾患などの非悪性疾患、例えば乾癬または狭窄/再狭窄のための抗増殖処置においても使用できる。抗増殖活性は、初期段階のゼブラフィッシュ胚細胞においてDbait分子を注入することにより評価されてきた。Dbait分子は急速に分裂する内部細胞を特異的に殺すが、ゆっくりと分裂する末梢細胞にはほとんど効果を有さない。
【0057】
本発明を使用して、哺乳動物の被験体、特にヒトの被験者において、固形癌および白血病、特に放射線または化学耐性の癌などの様々な種類の癌の単独の癌処置として処置できる。関与する器官または部位は、肺および気管支、頭頸部、脳、胃腸管、膵臓、肝臓、大腸癌、泌尿生殖器、婦人科器官、乳房、内分泌、皮膚、網膜、CNS、血液器官、原発部位が既知または未知の転移、および残遺物(例えば胸腺)でありうる。組織学的性質は上皮性、偏平上皮細胞癌、腺癌、移行性癌、繊維芽細胞/血管芽細胞由来の(肉腫)、神経細胞、膠細胞由来、内分泌、癌様体、胃腸間質、内皮、造血および胚性でありうる。好ましくは、癌は膠芽腫、頭頚部癌、大腸癌、肝臓癌、肺癌、皮膚癌、乳癌、および子宮頸癌からなる群より選択される。
【0058】
Dbait分子は、適切な許容される担体/賦形剤と共に任意の適切な経路、例えば経口、または静脈内、または腫瘍内投与、または皮下注入、または局所投与などにより投与できる。本発明の態様によると、トランスフェクション剤はDbait分子と併用される。
【0059】
インビボ試験において使用するプロトコールに基づき、本発明は、Dbait分子の使用の臨床プロトコールを確立するための理論的根拠を提供する。それは、特に患者の体重/体表面に応じて、当業者により容易に適用される。
【0060】
本発明の組成物は、腫瘍細胞の核に導入するための有効量のDbait分子を含む。例えば、腫瘍内投与を使用する場合、前記の有効量は少なくとも0.1mg/cm3腫瘍、好ましくは0.6mg/cm3腫瘍、最も好ましくは1mg/cm3腫瘍である。有効量は、毎日の処置プロトコールにおいて投与できる(例、週5日連続3週間または週3回連続5週間)。あるいは、少なくとも0.3mg/cm3腫瘍、好ましくは1.8mg/cm3腫瘍、最も好ましくは3mg/cm3腫瘍の有効量を、例えば、毎週の処置プロトコールにおいて連続5週間に及び投与できる。他の投与経路を使用する場合、当業者は、特に毎日の処置プロトコールにおいて、少なくとも0.1mg/cm3腫瘍、好ましくは0.6mg/cm3腫瘍、最も好ましくは1mg/cm3腫瘍の腫瘍において有効量のDbait分子を得るために、または、特に毎週の処置プロトコールにおいて、少なくとも0.3mg/cm3腫瘍、好ましくは1.8mg/cm3腫瘍、最も好ましくは3mg/cm3腫瘍の腫瘍において有効量のDbait分子を得るために、この量を適応できる。
【0061】
加えて、本発明は、特に本明細書において記載するDbait分子による、増殖性疾患(例、癌)の処置の効率のマーカーとしてのヒストンH2AXにも関する。次に、本発明は、ヒストンH2AXのリン酸化率を測定することを含む、Dbait分子による処置の効率を評価するための方法に関する。ヒストンH2AXのリン酸は、例えば実施例において記載されるとおりに検出できる。処置なしでのリン酸化レベルと比較して、より高いヒストンH2AXのリン酸化レベルは、処置の効率を示す。特に、Dbait分子の被験者への投与、ヒストンH2AXのリン酸化レベルの測定、およびDbait分子による処置の有無による、測定したヒストンH2AXのリン酸化レベルの比較を含む。
【0062】
特定の腫瘍における任意の処置の前での構成的に高レベルなリン酸化ヒストンH2AXも、この腫瘍でのDbait単独処置の効率の良好なマーカーである。
【0063】
添付の図および表を参照し、以下の実施例において本発明の他の特徴および利点を与える。
【0064】
実施例
Dbait分子は特許出願国際公開第2005/040378号において完全に記載されたが、明確さのために、Dbait分子の設計、合成、および調製を実施例1においてまとめる。
【0065】
H2AXのリン酸化を誘導する能力、ならびに、DNA−PKcsの関与およびATM媒介性経路の非関与の実証に関する分子・細胞試験を実施例2において示す。
【0066】
ヌードマウスでの異種移植したヒト腫瘍における腫瘍退縮および生存延長を示すインビボアッセイを実施例3において記載する。
【0067】
実施例1:Dbait分子の設計、合成、および調製
2種類のDbait分子を設計した:直線状またはヘアピンdsDNAフラグメント。ヘアピンDbait分子のために、ヘキサエチレングリコールリンカーまたはテトラデオキシチミジル酸をループとして使用した。
【0068】
dsDNAステムの末端は、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸、または3’−3’ヌクレオチド結合の組み入れにより3’エクソヌクレアーゼによる化学分解に対して保護できる。原則として、Ku70/Ku80結合およびDNA−PKcs活性化と適合するという条件で、他の化学修飾を使用できる(Martensson & Hammarten, 2002)。様々なステム長、8bp(Dbait8H)、16bp(Dbait16H)、24bp(Dbait24H)、および32bp(Dbait32H)、ならびに、同様のGC/AT含量を伴う異なるステム配列(Dbait32H、Dbait32Ha、Dbait32Hb、Dbait32Hc、およびDbait32Hd)を伴う異なるDbait分子を合成し、アッセイした。Dbait32HcにおけるCpG配列の非存在は注目に値する。両方の末端が2つのヘキサエチレンループにより塞がれたダンベルdsDNAフラグメント(Dbait32C)も対照として設計した。一部のDbait分子を、フルオレセイン(Dbait32H−FITC)、シアニン3(Dbait32H−Cy3)、シアニン5(Dbait32Hc−Cy5)、またはビオチン(Dbait32H−Biot)でタグ付したTを介して標識した。表1、2、および3には、本研究で使用したDbait分子の配列および化学構造をまとめた。
【0069】
Dbait分子は、以下の参照番号下で配列表において開示する:Dbait32(配列番号1)、Dbait32−T4(配列番号2)、Dbait32H−po(配列番号3)、Dbait32H(配列番号4)、Dbait24H(配列番号5)、Dbait16H(配列番号6)、Dbait8H(配列番号7)、Dbait32Ha(配列番号8)、Dbait32Hb(配列番号9)、Dbait32Hc(配列番号10)、Dbait32Hd(配列番号11)、Dbait32Hc−3’mp(配列番号12)、Dbait32Hc−5’3’mp(配列番号13)、Dbait32Hc−5’5’(配列番号14)、Dbait32−NH2(配列番号15)、Dbait32C(配列番号16)、Dbait32ss(配列番号17)、Dbait32Hcsspo(配列番号18)、Dbait32Ha ds(配列番号28)、Dbait32Hb ds(配列番号29)、Dbait32Hc ds(配列番号30)、Dbait32Hd ds(配列番号31)、Dbait32H−FITC(配列番号21)、Dbait32H−Cy3(配列番号22)、Dbait32H−Biot(配列番号23)、Dbait32Hc−Cy3(配列番号25)、Dbait32Hc−Cy5(配列番号26)、Dbait32Hd−FITC(配列番号27)、Dbait64(配列番号19)、およびDbait64L(配列番号20)。
【0070】
【表1】

【0071】
表1.1:Dbait分子の配列および化学構造大文字は、ホスホジエステル骨格を伴うヌクレオチドである。太い大文字は、ホスホロチオエート骨格を伴うヌクレオチドである。半円の実線は、ヘキサエチレングリコールリンカーを表す。Dbait32−T4は、ヘキサエチレングリコールリンカーの代わりに、4つのチミジン(T4)をリンカーとして含む。Dbait32Cはダンベル(閉じた)分子である。Dbait32Hc−5’5’は、3’−3’結合が先に3’末端に導入されたため、2つのみの5’末端を提示するDbait32Hcに由来する。
【0072】
【表2】

【0073】
表1.2:標識した様々な標識Dbait分子の配列および化学構造Dbait分子 配列および化学構造
【0074】
【表3】

【0075】
表1.3:64bpのDbait64およびDbait64L分子の配列および化学構造大文字はホスホジエステル骨格を伴うヌクレオチドである。太い大文字はホスホロチオエート骨格を伴うヌクレオチドである。実線はヘキサエチレングリコールリンカーを表す。
【0076】
すべてのDbait分子は、自動固相オリゴヌクレオチド合成により作られた(Eurogentec, Belgium)。それらを変性逆相HPLCにより精製した。変性キャピラリーゲル電気泳動MALDI−TOF/LC−MSを品質管理のために使用した。オリゴヌクレオチドの85%または90%超が全長である。すべてのサンプルを出荷前に凍結乾燥した。
【0077】
受取時、すべてのサンプルを再蒸留水中に溶解した。Dbait分子の濃度を、変性条件下(Dbait分子の熱安定性に応じて60℃〜90℃)で260nmの吸光度から算出した(Cantor et al., 1970)。蛍光色素タグ付きDbait分子の濃度は、特定の色素の適切な波長での吸光度から算出した(FITC:490nmでε=80000M-1.cm-1;Cy3:550nmでε=150000M-1.cm-1;Cy5:650nmでε=250000M-1.cm-1)。ダンベルdsDNAフラグメント(Dbait32C)は、ヘキサエチレングリコールリンカーを持ち、3’突出および相補末端を伴う2つの半ヘアピンのDNA T4リガーゼ(BioLabs)によるアニーリングおよびライゲーションにより調製した。
【0078】
熱力学的および動態学的な考察に基づき、分子性に従ってDbait分子のサンプルを調製するために以下のプロトコールを使用した:
二分子Dbait分子(Dbait32、Dbait32−NH2、Dbait64、およびDbait64L)について:
再蒸留水中の各鎖の1:1原液(好ましくは高濃度)の混合物を、各鎖の完全な変性のために90℃で5分間加熱する必要がある。アニーリングは室温に円滑に戻すことにより実施し(サンプルは典型的に水浴中に放置する)、結果として得られる二本鎖分子を一定分量で、−20℃で保存した。
【0079】
一分子Dbait分子(ヘアピン)について:
再蒸留水において200μMのヘアピンDbait分子を含む溶液を、完全な変性のために90℃で5分間加熱する必要がある。アニーリングは、サンプルを氷水(0℃)中で冷却することにより実施する必要がある。一定分量の保存は20℃であった。
【0080】
実施例2:Dbait分子自体の分子および細胞生物活性
特許出願国際公開第2005/040378号は、細胞抽出物の存在下において、および、任意のDNA損傷処置の非存在下において以下の証拠を提供する:
1)Dbait分子は、NHEJ経路の第1工程に関与するKuタンパク質のためのベイトである;
2)Dbait分子は、DNA末端結合反応の競合分子であるが、しかし、結合した複合体を置換しない。Kuタンパク質の動員は必要条件である;
3)32bp長のDbait分子はDNA−PKを活性化できる。簡単な無細胞DNA−PK活性アッセイによって、その配列および化学修飾にある程度関係なく、Dbait分子の長さ(約32bp)および自由末端を伴う二本鎖DNAのみがキナーゼ活性化のために必要とされることが指摘される。これは、NHEJ経路におけるDNA−PKcs、配列非依存的なDNA末端結合メカニズムの意味と一致する。
【0081】
任意のDNA損傷処置の非存在下においてDbait分子が生物学的影響を有するか否かを評価するために、発明者らによりさらなる実験が実施されてきた。驚くべきことに、Dbait分子の存在が、リン酸化型のH2AXであるγ−H2AXがDSB部位にフォーカスを形成し、下流のDNA修復を誘発するため、ゲノムの完全性のガーディアンとして公知のヒストンの変異体H2AXのリン酸化を誘導することが見出されている。培養細胞またはDbait32Hcで処置した腫瘍において回収した細胞のいずれかにおけるγ−H2AXの程度をウエスタンブロットおよびFACSにより分析した。インビボでの有意な腫瘍の退縮が、ヌードマウスでの3つの異種移植したヒトの腫瘍において観察される。
【0082】
樹立したヒト細胞株Hep2(頭頸部扁平上皮癌、HNSCC)、LU1205、およびSK28(メラノーマ)を動物試験のために使用した。培養細胞の試験を、Hep2、HeLa S3(上皮性の子宮頸癌)、MO59KおよびMO59J(膠芽細胞腫)、MRC5およびAT5BI(線維芽細胞)を使用して実施した。細胞は、単層培養において、37℃で、10%熱不活化ウシ胎仔血清(FBS;Invitrogen, Cergy Pontoise, France)および抗生物質(100μg/mlストレプトマイシンおよび100μg/mlペニシリン)を含む完全DMEM中で、湿度100%、95%空気および5%COの条件下で増殖した。LU1205は、4%熱不活化FBS、1%グルタミン、および抗生物質(100μg/mlストレプトマイシンおよび100μg/mlペニシリン)を含むMCDB中で増殖した。
【0083】
6ウェルプレート中で対数増殖中の細胞を収集し、10μl Superfect/μg DNAの割合でDbait分子およびSuperfect試薬(Qiagen, Courtaboeuf, France)の混合物を含む700mlの完全DMEMでインキュベートした。標準条件下で37℃5時間後、細胞をPBSで洗浄し、完全DMEMを加えた。
【0084】
ウエスタンブロット解析のために、細胞を直径5cmのペトリ皿中で増殖し、2μgのDbait32Hc分子をSuperfect(Qiagene)と共に製造者の指示に従いトランスフェクトし、次に様々な時間、37℃で培地中に静置する。標準条件下で、37℃で5時間後、細胞をPBSで3回洗浄し、完全DMEMを加えた。細胞を追加で1時間インキュベートし、3回洗浄し、Laemmliバッファー中で溶解した。タンパク質をニトロセルロースメンブレンにトランスファーし、それを、1xPBS、1% BSA中で1/100希釈した抗H2AX(Cell Signaling Technology, Denver, USA)およびマウス抗ホスホ‐ヒストンH2AX(Ser139)(Upstate, Tempcula, CA, USA)、ウサギモノクローナル抗ホスホThr68Chk2(Cell Signaling Technology, Denver, USA)との一晩のインキュベーション前に、5%無脂肪牛乳でブロックした(1時間)。ブロットは、次に、TBST中で1/5000希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ抱合ヤギ抗ウサギIgG(P0448, Dako)とインキュベートした。タンパク質‐抗体複合体をHyperfilm(Amersham)上で感光し、ImageJ(Public domain)を使用して定量した。
【0085】
FACSによるγ−H2AXの免疫蛍光検出のために、細胞を直径5cmのペトリ皿中で増殖し、2μgのDbait32Hc分子をSuperfect(Qiagene)と共に製造者の指示に従いトランスフェクトし、次に様々な時間、37℃で培地中に静置する。3回の洗浄サイクル後、細胞を2% PFAで10分間固定した。追加で1回洗浄後、γ−H2AXの存在を、1xPBS、1% BSA中で1/100希釈したウサギ抗γ−H2AX抗体(4411−PC, Trevigen)で検出した。細胞を1xPBS、0.5% TritonX−100で3回洗浄し、次に、室温で、1xPBS、1% BSAで1/100希釈したローダミン抱合ヤギ抗ウサギ抗体と共にインキュベートした。細胞はFACScanフローサイトメトリー(FACSalibur, Beckton−Dickinson, USA)により分析した。
【0086】
Dbait32H/Dbait32Hcが粗抽出物中でDNA−PKcsのキナーゼ活性を活性化したことから、発明者らは生細胞においてDNA−PKcsの下流標的のリン酸化を誘導しうるか否かについて疑問に持った。発明者らは、したがって、Dbait32Hcトランスフェクト細胞においてH2AXのリン酸化を分析した(Chowdhury et al., 2000; Paull et al., 2000)。
【0087】
図1は、Dbait32Hcによるトランスフェクションによって、すべてのDNA−PKcsコンピテント腫瘍細胞株(Hela、Hep2、MO59K、および形質転換した繊維芽細胞株MRC5)においてH2AXのリン酸化を高度に刺激することを示す。しかし、H2AXのリン酸化は、DNA−PKcs欠損腫瘍細胞株(MO59K由来のMO59J)においては認められず、DNA−PKcsコンピテントであるが、しかし、ATM欠損の形質転換繊維芽細胞株(MRC5由来のAT5BI)においては認められる。これは、インビトロでのDbait依存的なキナーゼ活性化が、細胞株の由来に依存しない一般的な過程であることを指示する。H2AXのリン酸化は、DNA−PKcsの状態に依存するが、ATMのそれには依存しない。高レベルのγ−H2AXは最大24〜48時間続く。
【0088】
図2は、様々なDbait分子のトランスフェクションから5時間後およびDbait32Hcのトランスフェクションなしでの10Gy照射から1時間後のHep2細胞におけるThr68(Chk2−T68p)におけるATMによるリン酸化型のH2AXおよびチェックポイントタンパク質Chk2のレベルを示す。高レベルのγ−H2AXは、Dbait32Hcによりトランスフェクトした細胞においてのみ観察される。このレベルは、照射済み細胞よりもDbait32Hcでトランスフェクトした細胞において高い。対照的に、Chk2−T68pのレベルは、Dbait32Hcでトランスフェクトした細胞においてはあまり増加せず、照射済み細胞においてずっと高い。これらの結果によって、Dbait32HcがキナーゼATMを活性化しないことが確認される。
【0089】
図3は、60μg Dbait32Hc(腫瘍内注入、トランスフェクション剤としてPEI)により処置したHep2腫瘍から回収した細胞におけるγ−H2AXのレベルを染めしており、処置なしのHep2腫瘍におけるバックグラウンドレベルと比較している。腫瘍は処置から24時間後に取り除き、液体窒素中で凍結し、−80℃で保存した。分析する前に、細胞を機械的に解離し、次にウエスタンブロットまたはFACS解析のために免疫標識した。γ−H2AXレベルは未処置腫瘍においてでさえ非常に高いが、一方、Dbait32Hcで処置した腫瘍において観察されるレベルは有意に高いことが注目される。
【0090】
図4は、約10,000個の細胞のFACS解析を示す。トランスフェクション対照として使用した60μgのDbait8Hによる未処置または処置済みと比較し、高レベルのγ−H2AXが60μgのDbait32Hcにより処置した腫瘍のHep2細胞において観察される。
【0091】
実施例3:ヌードマウスでの異種移植したヒト腫瘍の処置
新しい分子治療としてのDbait分子のインビボ活性、すなわち、従来のDNA損傷治療の代替物は、放射線耐性細胞株の皮下注射によりヒト腫瘍で異種移植したヌードマウスを使用して評価した(ヒト頭頸部扁平上皮癌由来のHep2、HNSCC;ならびにヒトメラノーマ由来のLU1205およびSK28)。
【0092】
インビボでの概念の証拠を確立するために、様々なヒト腫瘍で異種移植したマウスで研究を実施した。異種移植は、約100万個のヒト腫瘍細胞の注入により実施した。処置は、腫瘍容積が約200mm3に達した時(腫瘍細胞の接取から約7〜10日後)に開始した。腫瘍の大きさを週2〜3回測定した。腫瘍容積を算出した(V=2xaxb、ここでa=長さ、b=幅)。マウスは少なくとも150日間追跡調査した。腫瘍容積が2cm3を超えた際、動物実験倫理に従って動物を屠殺し、屠殺の時間を死亡時間と見なした(カプラン・マイヤープロットにおいて使用する生存終点)。
【0093】
典型的なアッセイ条件は、トランスフェクション剤ポリエチレンイミン(PEI, Polypius Transfection)と一緒での1〜6nmoleのDbait分子の適切な調製物の腫瘍内注入からなる。HNSCCの異種移植のために、製剤したDbait分子(Dbait32HまたはDbait32Hc)を週に2日ごと、3日ごとに5週間与えた。LU1205およびSK28の異種移植のために、製剤したDbait32Hc分子を3日連続注入し、次週に1回繰り返した。
【0094】
図5は、ヌードマウスでのHNSCC異種移植のカプラン・マイヤープロットを示す。明確な生存期間の延長が60119(3nmole)および120119(6nmole)のDbait32H/Dbait32Hc分子による処置群において観察されるが、60μg(6nmole)の単鎖対照(Dbait32ss)での処置は陰性である。
【0095】
Dbait32Hcの利点は、図6および図7において示されるとおり、ヌードマウスでの2つの他の異種移植したヒト腫瘍(LU1205およびSK28)においても見られる。
【0096】
Dbait32Hcの利点は、所与の総量について投与頻度を問わず観察される。投与は、1週間に3回、2回、または理想的には1回の注射の頻度で分割できる。
【0097】
各々の処置および各々の腫瘍型について腫瘍反応の記述的分析を実施した。1日目は、第1の処置期間の日であった。すべての動物を少なくとも150日間、または、それらの倫理的な屠殺まで追跡した。カプラン・マイヤー法に従い、寿命の中央値を推定した。TGDは、各々の処置群における個々のマウスの腫瘍容積の4倍から対照群の平均腫瘍容積の4倍を引くことにより算出した。個々の測定値を使用して、各々の処置群について平均TGDを算出した。
【0098】
データが正規分布に従わないため、カプラン・マイヤー推定値により全生存曲線を評価し、ノンパラメトリックなログランク検定を使用して比較した。分析にはS−Plus 6.2 version software(MathSoft Inc., Seattle, WA)およびstatEL(ad Science, Paris, France)を使用した。同じ腫瘍型を伴う各々の群について大域的ログランクを最初に実施した。次にDbaitによる処置を未処置対照と比較した。動物の数(n)、相対リスク(RR)、およびP値を表4において報告する。すべての検定は0.05有意水準で有意と見なした。統計的な採点のために対照群として使用する未処置の腫瘍群 材料と方法において記載するTGDの算出および統計解析治癒マウスは、処置の開始後200日以上生存した動物である。
【0099】
【表4】

【0100】
表4:ヌードマウスでの異種移植した腫瘍におけるDbait32H/Hc処置の有効性の統計解析
【0101】
Dbait32H/Dbait32Hcの統計的に有意な有益な結果が、すべての異種移植したヒト腫瘍において観察される。基礎をなすDbait分子の作用機構およびすべての細胞における偏在性のNHEJ経路として、これは異なる組織像を伴う他の腫瘍に当てはまることが予測される。
【0102】
実施例4:Dbait注入に対する免疫応答
注入が静脈内または皮下を問わず、任意のサイトカインの有意な誘導はDbait32Hcで検出されなかった。発明者らは、Balb/CマウスにおけるDbait32Hcの静脈内(IV)または皮下(SC)注入後の免疫応答を評価する。血液サンプルにおいてIL2、IL4、IL5、IL6、IL10、IL12P70、IFNγ、およびTNFαのレベルを、Dbaitの反復注入後の様々な時間に測定した。動物は、毒性徴候または皮膚炎症を発症することなく、24日間以内に120mg(9nmol)のDbaitでの7回の注射を受けた。発明者らは、免疫原性のCpG配列を含まないDbait32Hcと4つのCpGを含むDbait32Hに対する免疫応答を比較した。唯一、Dbait32HがIL6の迅速な応答およびIL12p70のより遅延型の応答を誘導した(図8)。
【表5】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の直接的または間接的なDNA損傷処置の非存在下において増殖性疾患を処置するための薬剤を調製するための核酸分子の使用であって、該核酸分子が、少なくとも16bp、好ましくは26bp超、より好ましくは32bp超の二本鎖部分を含み、少なくとも1つの自由末端を有し、および、該分子が、少なくともKuタンパク質による結合のための基質であり、DNA−PKcsを活性化できる、使用。
【請求項2】
該分子が、16〜200bp、最も好ましくは32〜100bpを含む、請求項1記載の使用。
【請求項3】
該分子が、直線状またはヘアピン核酸分子である、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
該分子が、ヘアピン核酸分子であり、該ループが核酸または化学基を含む、請求項3記載の使用。
【請求項5】
該自由末端が、平滑または5’または3’突出である、請求項1〜4のいずれか一項記載の使用。
【請求項6】
該分子が、ヒストンH2AXのリン酸化を増加する、請求項1〜5のいずれか一項記載の使用。
【請求項7】
該分子が、細胞により細胞核内に取り込まれることができる、請求項1〜6のいずれか一項記載の使用。
【請求項8】
該分子が、ホスホジエステル骨格または化学修飾したホスホジエステル骨格または1もしくは数個の化学基を有する別の骨格を含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の使用。
【請求項9】
該分子が、2’−デオキシヌクレオチド骨格を含み、および場合により1または数個の修飾ヌクレオチドおよび/またはアデニン、シトシン、グアニンおよびチミン以外の核酸塩基を含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の使用。
【請求項10】
該骨格が、メチルホスホネート、ホスホルアミデート、モルホリノ核酸、2’−0,4’−Cメチレン/エチレン架橋ロックド核酸、ペプチド核酸(PNA)、短鎖アルキル、またはシクロアルキル糖間結合または可変長の短鎖ヘテロ原子または複素環の糖間結合を含む、請求項8または9記載の使用。
【請求項11】
ペントフラノシル基の代わりに、2’−O−アルキルリボース、2’−O−アルキル−C4’分岐リボース、シクロブチル、もしくは他の炭素環などの糖模倣体またはヘキシトールをさらに含む、請求項8または9記載の使用。
【請求項12】
各鎖の末端または少なくとも3’末端鎖に1または数個の化学修飾したヌクレオチドを含む、請求項1〜11のいずれか一項記載の使用。
【請求項13】
各鎖の末端または少なくとも3’末端鎖に1または数個のホスホロチオエートを含む、請求項12記載の使用。
【請求項14】
少なくとも1つの埋め込みエレメントをさらに含み、それによってDNA複製、DNA修復、または損傷シグナル伝達過程が妨げられ、該少なくとも1つのエレメントは、二本鎖分子の中央または末端に組み入れられる、請求項1〜13のいずれか一項記載の使用。
【請求項15】
a)ポリエチレングリコール鎖、好ましくはヘキサエチレングリコール鎖、または場合により1または複数のヘテロ原子、例えば酸素、硫黄、窒素、または1または数個のヘテロ原子を含む、ヘテロ原子基または複素環基により中断および/または置換された、任意の炭化水素鎖;および/または
b)任意の3’修飾ヌクレオチドなどの、DNAポリメラーゼまたはエクソヌクレアーゼにより受け入れられないことから遮断エレメントであるユニット;および/または
c)Tnなどの天然オリゴヌクレオチド、ヘアピンフラグメントのループにおいて使用されるとき、好ましくはテトラデオキシチミジレート(T4)
を含む、請求項14記載の使用。
【請求項16】
該分子が、Dbait32(配列番号1)、Dbait32Ha(配列番号28)、Dbait32Hb(配列番号29)、Dbait32Hc(配列番号30)、またはDbait32Hd(配列番号31)と同じヌクレオチド組成を含む少なくとも32bpまたは32bpの二本鎖部分を有する、請求項1〜15のいずれか一項記載の使用。
【請求項17】
該分子が、Dbait32(配列番号1)、Dbait32H−po(配列番号3)、Dbait32H(配列番号4)、Dbait32−T4(配列番号2)、Dbait32Hc−5’5’(配列番号14)、Dbait32−NH2(配列番号15)、Dbait32H−FITC(配列番号21)、Dbait32H−Cy3(配列番号22)、Dbait32H−Biot(配列番号23)、Dbait32Ha(配列番号8)、Dbait32Hb(配列番号9)、Dbait32Hc(配列番号10)、Dbait32Hd(配列番号11)、Dbait32Hc−3’mp(配列番号12)、Dbait32Hc−5’3’mp(配列番号13)、Dbait32Hc−Cy3(配列番号25)、Dbait32Hc−Cy5(配列番号26)、Dbait32Hd−FITC(配列番号27)、Dbait32Ha ds(配列番号28)、Dbait32Hb ds(配列番号29)、Dbait32Hc ds(配列番号30)、Dbait32Hd ds(配列番号31)、Dbait64(配列番号19)、およびDbait64L(配列番号20)からなる群より選択される、請求項16記載の使用。
【請求項18】
該分子の該二本鎖部分が、Dbait32(配列番号1)、Dbait32Ha(配列番号28)、Dbait32Hb(配列番号29)、Dbait32Hc(配列番号30)、またはDbait32Hd(配列番号31)の少なくとも16、18、20、22、24、26、28、30または32の連続ヌクレオチドを含む、請求項1〜15のいずれか一項記載の使用。
【請求項19】
該増殖性疾患が、好ましくは、膠芽腫、頭頚部癌、大腸癌、肝臓癌、肺癌、皮膚癌、乳癌および子宮頸癌から選択される癌である、請求項1〜18のいずれか一項記載の使用。
【請求項20】
該分子が、経口経路により、または静脈内、腫瘍内、もしくは皮下注入、頭蓋内もしくは動脈内注射もしくは注入により、または経口経路により投与される、請求項1〜19のいずれか一項記載の使用。
【請求項21】
該分子が、毎日の処置プロトコールにおいて、少なくとも0.1mg/cm3腫瘍、好ましくは0.6mg/cm3腫瘍、最も好ましくは1mg/cm3腫瘍、または、毎週の処置プロトコールにおいて、少なくとも0.3mg/cm3腫瘍、好ましくは1.8mg/cm3腫瘍、最も好ましくは3mg/cm3腫瘍の有効量での腫瘍内投与により使用される、請求項1〜20のいずれか一項記載の使用。
【請求項22】
ヒストンH2AXのリン酸化を測定することを含む、請求項1〜19のいずれか一項記載の核酸による処置の効率を評価するための方法。
【請求項23】
該細胞および/または組織に請求項1〜19のいずれか一項記載の核酸を導入することを含む、細胞および/または組織においてヒストンH2AXのリン酸化を増加するため、または、ヒストンH2AXを活性化するための方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−515707(P2010−515707A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545182(P2009−545182)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050265
【国際公開番号】WO2008/084087
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(595040744)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (88)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【出願人】(500026533)アンスティテュ・キュリ (20)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT CURIE
【Fターム(参考)】