説明

Disheveled(Dvl)PDZ修飾因子

本発明は、Dvl PDZ−リガンド相互作用の修飾因子、および、それら修飾因子を特定し、使用する方法を提供する。C−末端ペプチドおよびN−末端ペプチドによるファージディスプレイライブラリーを用い、Dvl PDZドメインに対して緊密に結合する、一群のペプチドリガンドが特定された。本明細書に記載される結果は、その結合モチーフが必要な遊離カルボキシル基を持つリガンドの外に、遊離カルボキシル基を欠く、一つのDvl PDZサブセットが、驚くべきことにDvl PDZに結合する能力を有することを示した。遊離カルボキシル基を欠くリガンドは、ポリペプチドのN−末端または内部配列を構成する、N−末端および/または内部Dvl PDZリガンド配列を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2006年4月10日に出願された米国仮特許出願第60/790,673号に対する優先権および利益を主張する。米国仮特許出願第60/790,673号の明細書は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、一般に、分子生物学および細胞増殖調節の分野に関する。より詳細には、本発明は、wntシグナル伝達経路の修飾因子、および前記修飾因子の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
Wntシグナル伝達経路は、増殖にとって必須であり、従来から腫瘍発生への関与が示されている[1]。さらに、Reya & Clevers,Nature(2005),434:843−850;Logan & Nusse,Annu.Rev.Cell Dev.Biol.(2004),20:781−810;および米国特許出願公開第2004/0247593号を参照されたい。Disheveled(Dvl)タンパクは、標準的および非標準的Wntシグナル伝達経路の両方において中心的役割を果たす骨格タンパクである[2]。さらに、Wallingford & Habas,Development(2005),132:4421−4436を参照されたい。Dvlタンパクは、N−末端のDIXドメイン、中央のPDZドメイン、およびC−末端のDEPドメインから構成される。これら三つの内、PDZドメインが、Wntシグナル伝達においてもっとも重要な役割を果たす。これまで20を超える天然のリガンドが、Dvl PDZドメインに結合することが報告されている(以後、“DvlPDZ”または“Dvl PDZ”とする)[2−6]。それらの多くは、標準的または非標準的Wntシグナル伝達経路において生物学的に重要であることが示されている。例えば、FrizzledのC−末端領域の内部配列に対するDvlPDZの直接結合は、Wntシグナル伝達経路において重要な役割を果たすことが報告されている(非特許文献1)[3]。いくつかのタイプの癌細胞、例えば、非小細胞型肺癌および中皮腫においてDvlタンパクの過剰発現が観察されており、このため、Dvlは、癌治療のための薬剤標的とされている。これまで、DapperおよびFrizzledから導かれたペプチドリガンドに基づいてDvlPDZに対して特異的な拮抗剤を開発する試みが為されている。しかしながら、報告ではDvlPDZに結合することが特定された低分子は、親和性が極めて低く(K=237μM)、インビボにおける効力は十分には明らかにされていない。
【0004】
Dvlによるとされる重要な細胞機能、特に、DvlPDZと、そのリガンドとの間の相互作用を介して実現される機能から、DvlPDZは重要な薬剤標的を代表することが示唆される。したがって、DvlPDZ−リガンド相互作用の機構的側面を明らかにし、その関連機能活性の修飾を指向する組成物および方法を実現することができたならば、それは有益と考えられる。本発明は、この利点、およびその他の利点を提供する。
【非特許文献1】Wong,H.C.ら、Direct binding of the PDZ domain of Dishevelled to a conserved internal sequence in the C−terminal region of Frizzled.Mol Cell,2003.12(5):p.1251−60.
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
Wntシグナル伝達経路は、重要な生物学的役割を有し、種々の癌においてその撹乱が関与するとされている。本発明は、DvlタンパクのPDZドメインの活性を修飾するための組成物、およびそれら組成物の使用方法を提供する。Dvlに関連する機能が重要であるために、本発明の組成物および方法は、重要な臨床的有用性を有する。本発明は、一部は、Dvl PDZの結合パートナー(リガンド)に関する徹底的分析および特徴解明に基づく。この分析によって、本明細書で述べるように、新規の、思いがけない所見が得られた。
【0006】
本明細書で述べるように、C−末端ペプチドおよびN−末端ペプチドによるファージディスプレイライブラリーを用い、Dvl PDZドメインに対して緊密に結合する、一群のペプチドリガンドが特定された。本明細書に記載される結果は、その結合モチーフが必要な遊離カルボキシル基を持つリガンドの外に、遊離カルボキシル基を欠く、一つのDvl PDZサブセットが、驚くべきことにDvl PDZに結合する能力を有することを示した。遊離カルボキシル基を欠くリガンドは、ポリペプチドのN−末端または内部配列を構成する、N−末端および/または内部Dvl PDZリガンド配列を表す。これらのリガンドの特徴を解明したところ、分子の、Dvl PDZに対する結合親和性を強化すると考えられる、独特の結合モチーフが特定された。本明細書に記載される例示のリガンドは、Dvl PDZ活性の修飾を通じてwnt経路を修飾する因子を選別するスクリーニングに有用である。さらに、このようなリガンド、およびその誘導体自体が、Wntシグナル伝達経路の制御不良と関連する病理的状態を治療するための、低分子薬剤候補である。
【0007】
一局面では、本発明は、Dvl PDZに特異的に結合することが可能な分子を提供する。これらの分子は、様々な背景において、例えば、Dvl PDZ−リガンド相互作用の修飾因子として有用である。例えば、本発明は、Dvl PDZに対し、高度、中等度、または低度の親和性を有する結合因子の特徴を模倣する、修飾性分子を提供する。一実施態様では、本発明は、Dvl PDZに特異的に結合する単離ポリペプチド(例えば、Dvl PDZに特異的に結合するペプチド分子を特異的に含む、下記に定義するポリペプチド)を提供する。すなわち、前記ポリペプチドは、C−末端残基を位置0としてアミノ酸を番号付けした場合、位置−2にGly、位置−1にTrpまたはTyr、位置0にPheまたはLeu、位置−3に疎水性または芳香族残基を有する配列、を含むか、から成るか、または、から事実上成るC−末端領域を含む。一実施態様では、前記C−末端領域の位置−6はTrpである。一実施態様では、前記C−末端の位置−1は、Trpである。
【0008】
一実施態様では、本発明は、Dvl PDZに特異的に結合する単離ポリペプチド(例えば、Dvl PDZに特異的に結合するペプチド分子を特異的に含む、下記に定義するポリペプチド)を提供する。すなわち、前記ポリペプチドは、Gly−Trp−[IleまたはVal]−X1−X2−X3−X4、またはTyr−Gly−Trp−[IleまたはVal]−X1−X2−X3−X4を含む結合モチーフ、を含むか、から成るか、または、から事実上成るN−末端または内部領域を含む。上記配列において、Glyは、それぞれ、N−末端または内部残基であり、X1、X2、X3、および/またはX4は、内部残基である。一実施態様では、X1−X2−X3は、G−G−Gである。一実施態様では、X1−X2−X3−X4は、D−G−G−Gである。一実施態様では、Tyrは、N−末端側においてAspに先行される。
【0009】
一実施態様では、本発明は、Dvl PDZに特異的に結合する単離ポリペプチド(例えば、Dvl PDZに特異的に結合するペプチド分子を特異的に含む、下記に定義するポリペプチド)を提供する。すなわち、前記ポリペプチドは、Trp−[SerまたはThr]−Asp−[IleまたはPheまたはLeu]−Proを含む結合モチーフ、を含むか、から成るか、または、から事実上成るN−末端または内部領域を含む。上記配列において、Trpは、N−末端または内部残基であり、Proは内部残基である。一実施態様では、Trpは、N−末端側においてX1および/またはX2に先行され(すなわち、X1−X2−Trp)、該配列において、X1はLeuまたはValであり、X2はLeuである。一実施態様では、本発明は、Dvl PDZに特異的に結合する単離ポリペプチド(例えば、Dvl PDZに特異的に結合するペプチド分子を特異的に含む、下記に定義するポリペプチド)を提供する。すなわち、前記ポリペプチドは、Trp−[IleまたはVal]−Asp−Gly−Proを含む結合モチーフ、を含むか、から成るか、または、から事実上成るN−末端または内部領域を含む。上記配列において、Trpは、N−末端または内部残基であり、Proは内部残基である。一実施態様では、Trpは、N−末端側においてX1および/またはX2に先行され(すなわち、X1−X2−Trp)、該配列において、X1はGluであり、X2はThr、Val、Met、Arg、Ile、またはGlnである。
【0010】
一局面では、本発明は、IC50=1.5uM以上の結合親和度においてDvl PDZに特異的に結合する単離ポリペプチドを提供する。一実施態様では、結合親和度は、IC50=1.2uM以上である。一実施態様では、結合親和度は、IC50=1.0uM以上である。一実施態様では、結合親和度は、IC50=0.8uM以上である。一実施態様では、結合親和度は、IC50=0.6uM以上である。一実施態様では、結合親和度は、IC50=0.4uM以上である。一実施態様では、結合親和度は、IC50=0.2uM以上である。結合親和度は、従来技術で既知の、各種方法のいずれによっても測定することが可能である。一実施態様では、本発明のポリペプチドのIC50結合親和度は、競合ELISAにおいて、固定された、高親和度ペプチドリガンドに対し、約50%のDvl PDZ結合を阻止する、ポリペプチドの平均濃度として求められる(例えば、Sidhu et al.,Methods Enzymol.(2000),328:333−363、および、KWYGWL−COOHが、高親和性ペプチドリガンドとして利用される、後述の実施例に記載されるやり方で)。一実施態様では、本発明のポリペプチドは、Dvl PDZと、その結合パートナーとの相互作用、例えば、細胞における、Dvl PDZと、その結合パートナーとの相互作用を抑制する。
【0011】
一局面では、本発明は、Dvl PDZに特異的に結合するポリペプチドを提供する。前記ポリペプチドは、下式:
X1−G−X3−X4−COOH
を有する配列、を含むか、から成るか、または、から事実上成るC−末端領域を含み、上式において、X1は、Y、L、F、またはIであり;X3は、W、M、F、またはYであり;、X4は、FまたはLであり、該配列は、ヒトタンパクの天然のC−末端配列ではない。一実施態様では、配列は、X1がY、X3がW、X4がLである、KWYGWLを含む。一実施態様では、前記配列は、ヒトのユビキチンタンパクリガーゼE3A(UBE3A)のような、Dvlに対する天然のリガンドではない。一実施態様では、X3はTrpである。
【0012】
一実施態様では、本発明のポリペプチドは、配列X1−G−X3−X4−COOH、を含まず、から成ならず、または、から事実上成らない。
【0013】
一実施態様では、本発明は、Dvl PDZに特異的に結合し、C−末端残基を位置0としてアミノ酸を番号付けした場合、位置−5から0、または位置−6から0に関して表1および図1Aに掲げられる配列から成る群から選ばれるアミノ酸配列、を含むか、から成るか、または、から事実上成るカルボキシル末端領域を含む、単離ポリペプチドを提供する。
【0014】
一局面では、本発明は、Dvl PDZに特異的に結合するポリペプチドを提供する。前記ポリペプチドは、下式:
X1−G−X3−X4
を有する配列、を含むか、から成るか、または、から事実上成るN−末端領域を含み、上式において、X1は、Y、C、L、F、またはSであり;X3は、W、M、F、I、V、またはYであり;、X4は、I、V、M、またはLであり、該配列は、ヒトタンパクの天然のN−末端または内部配列ではない。一実施態様では、X1はY、X3はW、および/または、X4はIまたはVである。一実施態様では、X3はTrpである。一実施態様では、X1はDによって先行される。一実施態様では、前記配列は、ヒトのユビキチンタンパクリガーゼE3A(UBE3A)のような、Dvlに対する天然のリガンドではない。
【0015】
一実施態様では、本発明は、Dvl PDZに特異的に結合し、数字が、図1Bに示す残基順序を指すとした場合、位置−9から0、−8から0、−7から0、−6から0、−5から0に関して図1Bに記載されるI型およびII型配列から成る群から選ばれるアミノ酸配列、を含むか、から成るか、または、から事実上成るN−末端または内部領域を含む、単離ポリペプチドを提供する。一実施態様では、前記アミノ酸配列はさらに、図1Bにおいて位置0に示す残基に対し、3ペプチドGGGのC−末端を含む。一実施態様では、前記アミノ酸配列はさらに、図1Bにおいて位置0に示す残基に対し、DGGG C−末端を含む。
【0016】
一局面では、本発明は、Dvl PDZに特異的に結合するポリペプチドを提供する。前記ポリペプチドは、下式:
X1−X2−W−X3−D−X4−P
を有する配列、を含むか、から成るか、または、から事実上成るN−末端または内部領域を含み、上式において、X1および/またはX2は、任意の天然アミノ酸であり;X3は、S、T、A、W、D、またはIであり;X4は、F、I、V、L、またはGであり、該配列は、ヒトタンパクの天然のN−末端または内部配列ではない。一実施態様では、X3は、SまたはTであり;X4は、I、F、またはLである。一実施態様では、X1は、LまたはVである。一実施態様では、X2はLである。一実施態様では、配列は、X1がV、X2がL、X3がS、およびX4がIである、GEIVLWSDIPGを含む。一実施態様では、前記配列は、ヒトのユビキチンタンパクリガーゼE3A(UBE3A)のような、Dvlに対する天然のリガンドではない。
【0017】
一局面では、本発明は、Dvl PDZに特異的に結合するポリペプチドを提供する。前記ポリペプチドは、下式:
X1−X2−W−X3−D−X4−P
を有する配列、を含むか、から成るか、または、から事実上成るN−末端または内部領域を含み、上式において、X1および/またはX2は、任意の天然アミノ酸であり;X3は、I、G、V、K、またはWであり;X4は、G、S、Y、またはWであり、該配列は、ヒトタンパクの天然のN−末端または内部配列ではない。一実施態様では、X1はEである。一実施態様では、X2は、T、V、M、R、I、またはQである。一実施態様では、前記配列は、ヒトのユビキチンタンパクリガーゼE3A(UBE3A)のような、Dvlに対する天然のリガンドではない。
【0018】
一実施態様では、本発明は、Dvl PDZに特異的に結合し、数字が、図1Bに示す残基順序を指すとした場合、位置−6から0、−5から0に関して図1Bに記載されるIII型およびIV型配列から成る群から選ばれるアミノ酸配列、を含むか、から成るか、または、から事実上成るN−末端または内部領域を含む、単離ポリペプチドを提供する。一実施態様では、前記アミノ酸配列はさらに、図1Bにおいて位置1、2、3、4、5、6、および/または7に示す残基の内の一つ以上を含む(III型およびIV型)。
【0019】
一実施態様では、本発明のポリペプチドは、本明細書に開示される結合ペプチド(例えば、実施例を参照)の所望の特徴(例えば、所望の特徴を持つ実施例が中等から高度の結合性を有する場合の結合度)を示さない、Dvl PDZ結合性ペプチドを特異的に排除する。例えば、一実施態様では、本発明のポリペプチドは、C−末端残基がカルボキシル化される配列YAKGFGMLを含まない(すなわち、配列が本発明のポリペプチドにある場合には、C−末端残基Lは、カルボキシル化されないか、そうでなければ遊離のカルボキシル基を有する)。
【0020】
一局面では、本発明は、前述のポリペプチドの一つ以上と、Dvl PDZに対する結合について競合するアミノ酸配列、を含むか、から成るか、または、から事実上成る、単離ポリペプチドを提供する。
【0021】
一局面では、本発明は、Dvl PDZにおいて、前述のポリペプチドの一つ以上が結合するものと同じエピトープに結合する単離ポリペプチドを提供する。
【0022】
本明細書に示されるように、Dvl1、Dvl2、およびDvl3のPDZドメインは、広範な配列相同性を共有し、本明細書に記載される結合ペプチドは、三つのDvl(1、2、3)タンパクの内の、少なくとも一つ、少なくとも二つ、または三つ全てに結合することが可能である。一実施態様では、本発明のポリペプチドは、ヒトのDvl1、2、および/または3、と相互作用を有する/に結合する。
【0023】
ある背景では、結合ポリペプチドの末端残基の性質が、ポリペプチドの結合能に影響を及ぼす可能性がある。したがって、一実施態様では、本発明のDvl PDZ結合単離ポリペプチドは、カルボキシル化される、カルボキシル末端アミノ酸残基を含む。一実施態様では、本発明のDvl PDZ結合単離ポリペプチドは、遊離カルボキシル基を欠如する、カルボキシル末端アミノ酸残基を含む。一実施態様では、Dvl PDZ結合単離ポリペプチドは、遊離カルボキシル基を含まないか、および/または、遊離カルボキシル基または残基を必要としないPDZ結合モチーフを含む。
【0024】
一局面では、本発明のポリペプチドは、ポリペプチドの細胞進入を強化する、分子実体に連結するDvl PDZ結合ポリペプチドを含む。一実施態様では、この分子実体は、アミノ酸配列タグ、例えば、RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号:__)を含む。前記配列は、一実施態様では、N−末端残基においてアセチル化される。例えば、一実施態様では、本発明のポリペプチドは、下記の配列:
(i)RQIKIWFQNRRMKWKKKWYGWL(配列番号__)、または
(ii)RQIKIWFQNRRMKWKKGWKDYGWIDG(配列番号__)、または
(iii)RQIKIWFQNRRMKKGEIVLWSDIPG(配列番号__)、または
(iv)RQIKIWFQNRRMKWKKGSGNEVWIDGPG(配列番号__)
の内の一つを含む。
【0025】
別の局面では、本発明は、(本明細書に記載する)本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0026】
別の局面では、本発明は、(本明細書に記載する)本発明のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドを含む宿主細胞を提供する。
【0027】
別の局面では、本発明は、(本明細書に記載する)本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの一つ以上を含む組成物を提供する。一実施態様では、組成物は、担体を含み、該担体は、ある実施態様では、製薬学的に受容可能である。
【0028】
別の局面では、本発明は、(本明細書に記載する)本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの一つ以上を含むキットを提供する。一つ以上の修飾分子が提供される場合、それらは、意図される用途にとって好適な処方として存在する限り、別々に、または一緒に提供することが可能である。一実施態様では、キットは、組成物を使用するための指示を含む。
【0029】
ある局面では、本発明は、本発明のポリペプチドの一つ以上を含むDvl修飾分子を提供する。これらの修飾分子(本明細書に含まれる本発明のポリペプチドを含む)は、様々の背景において、例えば、ただしこれらに限定されないが、Dvl PDZ修飾因子を求めるスクリーニングにおいて参照分子として、診断的分子として、または治療剤として使用することが可能である。
【0030】
本発明の修飾分子は、診断目的のために使用することが可能である。したがって、一局面では、本発明は、サンプルにおけるDvl PDZ−リガンド相互作用の制御不良を特定する方法であって、該サンプルを本発明のポリペプチドに接触させること、本発明のポリペプチドの存在下、および不在下におけるDvl PDZ−リガンド相互作用を比較することを含み、検出可能な差によって、サンプルにおけるDvl PDZ−リガンド相互作用の出現および/または量が示される方法を提供する。Dvl PDZ−リガンド相互作用は、様々な方法で、例えば、wntシグナル伝達の量/程度を定量することによって(例えば、wnt経路において、Dvl機能よりも下流の、一つ以上の事象を測定することによって)測定することが可能である。
【0031】
一局面では、本発明は、Dvl PDZ−リガンド相互作用を修飾することが可能な化合物を特定する方法であって、下記:
(i)Dvl PDZ、その機能的断片および/または等価物;
(ii)参照として本発明のポリペプチドの一つ以上;および、
(iii)候補化合物、
を含むサンプルを接触させること、および、候補化合物の存在下におけるDvl PDZ−参照物相互作用の量を定量することを含み、
候補化合物不在下における量と比べた場合の、候補化合物存在下におけるDvl PDZ−参照物相互作用の量の変化によって、候補化合物が、Dvl PDZ−リガンド相互作用を修飾することが可能な化合物であることが示される方法を提供する。一実施態様では、化合物は、低分子(例えば、有機分子、ペプチドなど)、または抗体(その断片を含む)である。
【0032】
一局面では、本発明は、Dvl PDZ−リガンド相互作用の修飾因子を合理的に設計する方法であって、C−末端残基を位置0としてアミノ酸を番号付けした場合、位置−2にGly、位置−1にTrpまたはTyr、位置0にPheまたはLeu、および位置−3に疎水性または芳香族残基を有する配列を含む、C−末端ペプチドを含む、または、その機能を模倣する修飾因子であって、Dvl PDZに特異的に結合することが可能な因子を設計することを含む方法を提供する。
【0033】
一局面では、本発明は、Dvl PDZ−リガンド相互作用の修飾因子を合理的に設計する方法であって、配列Gly−Trp−[IleまたはVal]−X1−X2−X3−X4、またはTyr−Gly−Trp−[IleまたはVal]−X1−X2−X3−X4であって、Glyが、それぞれ、N−末端または内部残基であり、X1、X2、X3、および/またはX4が、内部残基である配列を含む、N−末端または内部ペプチドを含むか、または、その機能を模倣する修飾因子を設計することを含む方法を提供する。一実施態様では、X1−X2−X3は、G−G−Gである。一実施態様では、X1−X2−X3−X4は、D−G−G−Gである。一実施態様では、Tyrは、N−末端側においてAspに先行される。これらの実施態様のいずれにおいても、修飾因子は、Dvl PDZに特異的に結合することが可能となるように設計される。
【0034】
一局面では、本発明は、Dvl PDZ−リガンド相互作用の修飾因子を合理的に設計する方法であって、配列Trp−[SerまたはThr]−Asp−[IleまたはPheまたはLeu]−Proであって、Trpが、N−末端または内部残基であり、Proが内部残基である配列を含む、N−末端または内部ペプチドを含むか、または、その機能を模倣する修飾因子を設計することを含む方法を提供する。一実施態様では、Trpは、N−末端側においてX1および/またはX2に先行され(すなわち、X1−X2−Trp)、該配列において、X1はLeuまたはValであり、X2はLeuである。これらの実施態様のいずれにおいても、修飾因子は、Dvl PDZに特異的に結合することが可能となるように設計される。
【0035】
一局面では、本発明は、Dvl PDZ−リガンド相互作用の修飾因子を合理的に設計する方法であって、配列Trp−[IleまたはVal]−Asp−Gly−Proであって、Trpが、N−末端または内部残基であり、Proが内部残基である配列を含む、N−末端または内部ペプチドを含むか、または、その機能を模倣する修飾因子を設計することを含む方法を提供する。一実施態様では、Trpは、N−末端側においてX1および/またはX2に先行され(すなわち、X1−X2−Trp)、該配列において、X1はGluであり、X2はThr、Val、Met、Arg、Ile、またはGlnである。これらの実施態様のいずれにおいても、修飾因子は、Dvl PDZに特異的に結合することが可能となるように設計される。
【0036】
一局面では、本発明は、Dvl PDZ−リガンド相互作用を修飾する薬剤のためのスクリーニング法であって:
(a)候補薬剤を準備し、Dvl PDZ、および、前記Dvl PDZの既知の結合パートナー(例えば、本発明のポリペプチド)を含む、反応混合物に、Dvl PDZ−結合パートナー相互作用に好適な条件下で、前記薬剤を接触させる工程、その際、前記反応混合物は、細胞混合物か、または無細胞混合物であり;
(b)該薬剤の存在下および不在下におけるDvl PDZ−結合パートナー相互作用の量を定量する工程を含み、
該薬剤の存在下および不在下において(b)で定量された相互作用量の差によって、該薬剤が、Dvl PDZ−リガンド相互作用の修飾因子であることが示される方法を提供する。一実施態様では、候補薬剤は、低分子(例えば、有機分子、ペプチド)、または抗体(その断片を含む)である。
【0037】
前記方法の内の一実施態様において、要すれば、サンプルまたは反応混合物におけるPDZリガンドは天然リガンドである(たとえば、Dvl PDZの内因性リガンド)。
【0038】
本発明のポリペプチドは、様々な目的のため、および、Dvlタンパクを介するwntシグナル伝達の修飾が望ましい、様々な背景において有用である。例えば、本発明のポリペプチドは、Wntシグナル伝達の制御不良に関連する障害の進行を変えるために、例えば、細胞において、Dvl−介在性Wntシグナル伝達を抑制するために使用することが可能である。
【0039】
一局面では、Dvl、またはwntタンパクの活性の制御不良に関連する病理的状態を治療する方法であって、Dvl PDZと、本発明のポリペプチドとの間の相互作用を修飾することが可能な、Dvl PDZ−リガンド修飾因子の有効量を対象に投与することを含む方法を提供する。本発明の方法の一実施態様では、修飾因子は、Dvl PDZと、その結合パートナー(例えば、内因性結合パートナー)との間の相互作用を抑制する。一実施態様では、前記Dvl−PDZリガンドは、本明細書に記載される、本発明のポリペプチドの一つ以上を含む。一実施態様では、病理的状態は癌である。一実施態様では、病理的状態は、過剰増殖性障害である。一実施態様では、病理的状態は、標準wntシグナル伝達経路の制御不良に関連する。一実施態様では、Dvlは、ヒトのDvl 1、2、および/または3である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明は、DvlタンパクのPDZドメインと、その細胞内結合パートナー(単数または複数)との間の結合相互作用を修飾することが可能な分子、および、そのような分子を特定するための方法、および使用するための方法を提供する。一局面では、これらの分子は、種々の結合度でDvl PDZに結合することが可能なペプチド結合体の特定を実現する組み合わせ法によって生産される。本明細書において詳細に記載される、これら結合分子の特定、および結合相互作用の構造力学から、Dvl PDZと相互作用を持つことが可能な、他の修飾因子を特定するための手段が得られる。各種細胞および生理過程におけるDvlの重要性に徴するならば、これらの修飾因子が得られた場合、それらは、例えば、予防、治療、および/または診断医学分野において目覚しい有用性を発揮すると考えられる。
【0041】
一般的技術
本発明の実施は、別様に指示しない限り、分子生物学(組み換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の、当業者の能力の範囲内にある、通例技術を採用する。このような技術は、文献、例えば、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,second edition(Sambrook et al.,1989);“Oligonucleotide Synthesis”(M.J.Gait,ed.,1984);“Animal Cell Culture”(R.I.Freshney,ed.,1987);“Methods in Enzymology”(Academic Press,Inc.);“Current Protocols in Molecular Biology”(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987、および、定期的最新版);“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullis et al.,ed.,1994);“A Practical Guide to Molecular Cloning”(Perbal Bernard V.,1988)において十分に説明される。
【0042】
本発明において用いられるか、または記載されるオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、および低分子は、従来技術で既知の標準技術を用いて生成される。
【0043】
(定義)
本明細書で使用される「調節配列」とは、ある特定の宿主生物において動作可能的に連結されるコード配列の発現を可能とするDNA配列である。前核細胞性調節配列としては、プロモーター、オペレーター配列、およびリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞調節配列としては、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーが挙げられる。
【0044】
核酸は、別の核酸配列に対し機能的関係に配置される場合、「動作可能的に連結される」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列の転写に影響を及ぼす場合、該コード配列に対し動作可能的に連結され、あるいは、リボソーム結合部位は、コード配列が翻訳を促進するように配置される場合、該コード配列に対し動作可能的に連結される。一般に、「動作可能的に連結される」とは、連結されるDNA配列同士が近接し、分泌リーダーの場合は、近接し、かつ、読み位相が一致することを意味する。しかしながら、エンハンサーは、近接する必要はない。
【0045】
「活性」ポリペプチド、またはその断片は、活性ポリペプチドの、生得または天然型の生物活性を保持する。生物活性は、活性ポリペプチドの、生得または天然型によって仲介される機能を指す。例えば、結合性またはタンパク−タンパク相互作用は、生物活性を構成する。
【0046】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、もっとも広い意味において相互交換的に使用され、モノクロナール抗体(例えば、完全長、または生のモノクロナール抗体)、ポリクロナール抗体、多価抗体、多重特異性抗体(例えば、それらが所望の生物活性を有する限り、二重特異性抗体)を含み、さらに、(本明細書にさらに詳細に記載される)ある種の抗体断片を含んでもよい。
【0047】
いずれの脊椎動物種から得られたものでも、抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる、二つのはっきりと異なるタイプの内の一方に割り当てることが可能である。
【0048】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、種々の異なるクラスに割り当てることが可能である。大きく、5クラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、この内のいくつかは、さらにサブクラス(異性形)、例えば、IgG−1、IgG−2、IgA−1、IgA−2などに分けられる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および3次元形態は、周知であり、例えば、Abbas et al.Cellular and Mol.Immunology,4th ed.(2000)に概説される。抗体は、該抗体と、一つ以上の他のタンパクまたはペプチドとの、共有または非共有的連結によって形成される、より大きい融合分子の一部であってもよい。
【0049】
抗体は、キメラ、ヒト的、ヒト化、および/または親和性熟成させることが可能である。
【0050】
「抗体断片」は、生の抗体の一部しか含まないが、該一部は、生の抗体に存在する時、その部分と通常関連する機能の少なくとも一部、好ましくは、その大部分または全てを保持する。
【0051】
本明細書で用いる「モノクロナール抗体」という用語は、事実上均一な抗体集団から得られる抗体、すなわち、少数存在する可能性のある天然の突然変異を除いて同一である、集団を構成する個々の抗体を指す。モノクロナール抗体は、単一の抗原を指向する、高度の特異性を有する。さらに、通常、異なる決定基(エピトープ)を指向する種々の抗体を含む、ポリクロナール抗体調製物と違って、各モノクロナール抗体は、抗原上の単一決定基を指向する。
【0052】
本明細書のモノクロナール抗体は、特に、その重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の動物種から得られるか、または、特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する、抗体の対応配列と同一であるか、または相同であるが、該鎖の残余部分は、別動物種から得られるか、または、別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一であるか、または相同である「キメラ」抗体、および、所望の生物活性を示す限りにおいて、そのような抗体の断片を含む(米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1984))。
【0053】
非ヒト(例えば、げっ歯類)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含むキメラ抗体である。多くの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変域の残基が、所望の特異性、親和度、および能力を有する、非ヒト動物種、例えば、マウス、ラット、ウサギ、または、非ヒト霊長類の、超可変域(ドナー抗体)由来の残基によって置換される、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合、ヒト免疫グロブリンの枠組み構造領域(FR)の残基は、対応する、非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体、またはドナー抗体にも無い残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体性能をさらに向上させるために実行される。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも一つの、通常は二つの可変域であって、超可変ループの全て、または事実上全てが、非ヒト免疫グロブリンのものと対応するが、FRの全て、または事実上全てが、ヒト免疫グロブリンのものと対応する可変域を含む。ヒト化抗体はさらに、免疫グロブリン定常域(Fc)、通常は、ヒト免疫グロブリンの定常域を任意に含む。さらに詳細については、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい。さらに、ここに引用する下記の総覧および参考文献:Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma & Immunol.1:105−115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035−1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428−433(1994)を参照されたい。
【0054】
「ヒト抗体」とは、ヒトによって分泌される抗体、および/または、ヒト抗体を生産するための、本明細書に開示される技術のいずれかを用いて作製される抗体のものに対応するアミノ酸配列を持つ抗体である。この、ヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合残基を含む、ヒト化抗体を特異的に排除する。
【0055】
「親和性熟成」抗体とは、その、一つ以上のCDRにおいて、一つ以上の改変が施され、そのために、そのような改変(単数または複数)を持たない親抗体に比べ、抗原にたいする、該抗体の親和度に改善がもたらされた抗体である。好ましい親和性熟成抗体は、標的抗原に対し、ナノモル、または、場合によってはピコモルの親和度を有する。親和性熟成抗体は、従来技術で既知の手順によって生産される。Marks et al.Bio/Technology 10:779−783(1992)は、VHおよびVLドメインシャッフリングによる親和性熟成を記載する。CDRおよび/または枠組み構造残基のランダムな突然変異発生は:Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci,USA 91:3809−3813(1994);Schier et al.Gene 169:147−155(1995);Yelton et al.J.Immunol.155:1994−2004(1995);Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310−9(1995);およびHawkins et al,J.Mol.Biol.226:889−896(1992)によって記載される。
【0056】
「エピトープタグされた」ポリペプチドとは、「タグポリペプチド」に融合したキメラポリペプチドを指す。このようなタグは、Abがそれに向けて作製されるか、または、利用可能となるが、ポリペプチド活性には事実上干渉しないエピトープを提供する。抗タグ抗体の、内因性エピトープとの反応性を抑えるために、タグポリペプチドは、通常、独特である。好適なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6個のアミノ酸残基、通常、約8から約50個のアミノ酸残基、好ましくは約8から約20個のアミノ酸残基を有する。エピトープタグ配列の例としては、インフルエンザAウィルスのHA、GD、およびc−myc、ポリ−HisおよびFLAGが挙げられる。
【0057】
本明細書では相互交換的に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドポリマーを指し、例えば、ただしこれらに限定されないが、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ヌクレオチド修飾体または塩基、および/または、その類縁体、あるいは、DNAまたはRNAポリメラーゼ、または、合成反応によってポリマーの中に組み込むことが可能な、任意の基質であることが可能である。ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド修飾体、例えば、メチル化ヌクレオチドおよびその類縁体を含んでもよい。施す場合は、このヌクレオチド構造に対する修飾は、該ポリマーの重合前または後に付与してよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、合成後、例えば、ラベルとの接合によってさらに修飾されてもよい。他の種類の修飾としては、例えば、「キャップ」、一つ以上の天然ヌクレオチドの、類縁体による置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、無荷電連結(例えば、メチルフォスフォネート、フォスフォトリエステル、フォスフォアミデート、カバメートなど)によるもの、荷電連結(例えば、フォスフォロチオエート、フォスフォロジチオエートなど)によるもの、側基、例えば、タンパク(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリLリシンなど)を含む修飾、介在因子(例えば、アクリジン、プソラレンなど)を含む修飾、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化性金属など)を含む修飾、アルキル化剤を含む修飾、修飾された連結(例えば、アルファアノマー核酸など)による修飾の外、非修飾形ポリヌクレオチドも挙げられる。さらに、糖の中に通例として存在するヒドロキシル基の内のいずれも、例えば、フォスフォネート基、フォスフェート基によって置換されてもよく、標準的保護基によって保護されてもよく、または、別のヌクレオチドに対する新たな連結を作製するために活性化されてもよく、または、固体または半固体支持体に対して接合されてもよい。5′および3′末端のOHは、リン酸化することも可能であるし、あるいは、アミン、または、1から20個の炭素原子から成る有機キャップ基成分によって置換することも可能である。他のヒドロキシル基も、標準的保護基となるように誘導体形成されてもよい。ポリヌクレオチドはさらに、従来技術で一般的に知られる、リボースまたはデオキシリボースの類縁体、例えば、2′−O−メチル、2′−O−アリル、2′−フルオロ、または2′−アジド−リボース、カルボキシル糖類縁体、アルファ−アノマー糖、エピマー糖、例えば、アラビノース、キシロース、またはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプチュロース、アクリル酸類縁体、および非塩基性ヌクレオチド類縁体、例えば、メチルリボシド含むことが可能である。一つ以上のフォスフォジエステル結合は、それに代わる連結基によって置換されてよい。そのような代替連結基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、リン酸塩が、P(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR′、CO、またはCH(「フォルムアセタル」)によって置換される実施態様が挙げられる。なお、前式において、各RまたはR′は、独立に、H、または、置換または未置換の、任意にエーテル(−O−)結合を含むアルキル(1−20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、またはアラルジルである。ポリヌクレオチドにおける結合は必ずしも全てが同じである必要はない。前述の記載は、RNAおよびDNAを含む、本明細書に言及される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0058】
本明細書で用いる「オリゴヌクレオチド」は、一般に短い、一般に一本鎖の、一般に、しかし必ずしもそうでなくともよいが、約200ヌクレオチド長未満の、一般に合成ポリヌクレオチドを指す。「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語は、必ずしも相互に排除的ではない。ポリヌクレオチドに関する上の記述は、等しく、完全に、オリゴヌクレオチドにも適用が可能である。
【0059】
「ペプチド」という用語は、一般に、ペプチジル結合によって連結されるアミノ酸から成る、連接する、比較的短い配列を指す。通常、しかし必ずしもそうとは限らないが、ペプチドは、約2から50アミノ酸、4−40アミノ酸、または10−30アミノ酸長を有する。「ポリペプチド」という用語は、一般に、比較的長いペプチド形状を指すが、この二つの用語は、本明細書におけるいくつかの背景では相互交換的に使用することが可能であるし、そのように使用される。
【0060】
ポリペプチドの「領域」は、2個以上のアミノ酸から成る連接配列である。別の実施態様では、領域は、3、5、10、15個の連接アミノ酸の内の、少なくともいずれかに相当する。
【0061】
本明細書で用いる、「C−末端領域」、「C−末端配列」、およびその変異形は、ポリペプチドのC−終末(一般に3′)端、またはそのごく近傍に位置するアミノ酸配列を指す。一般に、この配列は、遊離カルボキシル基を有するアミノ酸を含む。一実施態様では、C−末端領域または配列は、ポリペプチドのC終末端に直近の約1−15残基を含む、ポリペプチド領域を指す。
【0062】
本明細書で用いる、「N−末端領域」、「N−末端配列」、およびその変異形は、ポリペプチドのN−終末(一般に5′)端、またはそのごく近傍に位置するアミノ酸配列を指す。一般に、この配列は、遊離アミノ基を有するアミノ酸を含む。一実施態様では、N−末端領域または配列は、ポリペプチドのN終末端に直近の約1−15残基を含む、ポリペプチド領域を指す。
【0063】
本明細書で用いる、「内部領域」、「内部配列」、およびその変異形は、ポリペプチドの内部に位置し、そのN−およびC−終末端において、その配列の一部ではない、一つ以上のアミノ酸によって側接されるアミノ酸配列を指す。一般に、この配列は、遊離カルボキシル基またはアミノ基を持つアミノ酸を含まない。一実施態様では、内部領域または配列は、ポリペプチド内に位置し、C−末端またはN−末端アミノ酸のいずれも含まない、約1−15残基を含む、ポリペプチド領域を指す。
【0064】
DHR(DLG相同性領域)またはGLGF反復列とも呼ばれる「PDZドメイン」は、Dvlタンパクを含む、大きく、多様な一組のタンパクの中に認められる、95kDa後シナプス高密度タンパク(PSD−95)、ショウジョウバエ腫瘍抑制因子discs−large、および密着結合タンパクzonula−occludens−1(ZO−1)における保存的構造要素として元々記載されたタンパクドメインである。PDZドメインは、一般に、相互作用を持つタンパクのカルボキシル終末端に位置する、短いカルボキシル末端ペプチド配列に結合する。PDZドメインは、二つのαヘリックスおよび6枚のβシートを含む。
【0065】
「Dvl PDZドメイン」、“Dvl PDZ”、およびその変異体は、細胞内Dvl PDZ−リガンド相互作用に直接または間接に関与する、配列番号1、2、および3(図2)の配列の一部または全てを指す。“Dvl1 PDZ”は、Dvl1のPDZドメインを指し;“Dvl2 PDZ”は、Dvl2のPDZドメインを指し;“Dvl3 PDZ”は、Dvl3のPDZドメインを指す。
【0066】
“Dishevelled”または“Dvl”という用語は、Dishevelledタンパクファミリーのメンバーを指し、その完全長配列は、通常、三つの保存ドメイン:Wnt拮抗タンパクAxin中に存在するDIXドメイン;タンパク−タンパク相互作用に関与するPDCドメイン;およびRho GTPアーゼを調節するrタンパクに見られるDEPタンパクを持つ。Dvlタンパクは、例えば、Dvl−1、Dvl−2、およびDvl−3を含む。Dvlの核酸およびタンパク配列は、マウスおよびヒトを含む種々の動物種のものが知られる。例示の、ヒトの、Dvl−1、Dvl−2、およびDvl−3タンパク配列が、それぞれ、参照配列NP_004412、NP_004413、およびNP_004414において参照することが可能である。さらに、国際公開第2006/007542号を参照されたい。
【0067】
「リガンド」とは、タンパクまたはその他の分子の特異的部位と結合相互作用を持つことのできる、天然または合成の分子または成分を指す。Dvl PDZドメインのリガンドは、Dvl PDZドメインと特異的に相互作用を持つ分子、または成分である。リガンドの例として、タンパク、ペプチド、および小型の有機および無機分子が挙げられる。
【0068】
「融合タンパク」とは、それぞれが異なるタンパクに由来し、共有的に連結される二つの部分を有するポリペプチドを指す。この二つの部分は、単一のペプチド結合によって直接連結されてもよいし、あるいは、一つ以上のアミノ酸残基を含むペプチドリンカーを介して連結されてもよい。一般に、二つの部分とリンカーとは、互いに読み枠が一致し、組み換え技術を用いて生産される。
【0069】
「障害」または「病理的状態」とは、本発明の物質/分子または方法による治療によって利益を受ける状態があれば、それがどのようなものであれ、それら全てである。これは、哺乳動物を問題の障害に罹り易くする病理的状態を含む、慢性および急性障害または疾患を含む。本発明で治療される障害の非限定的例としては、悪性および良性の腫瘍または癌;非白血病、リンパ性悪性腫瘍;神経、グリア、星状細胞、視床下部および他の腺、マクロファージ、上皮、支質および胞胚腔障害;および炎症、免疫原性、神経変性障害、血管形成関連障害、および、ミトコンドリアおよび代謝欠陥に関連する障害が挙げられる。
【0070】
「癌」および「癌様」という用語は、通常、制御不良細胞成長/増殖によって特徴づけられる、哺乳動物における生理的状態を指すか、または記述する。癌の例としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、上皮癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられる。このような癌のより具体的な例としては、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、消化器癌、すい臓癌、グリア芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝臓癌、および各種頭部および頸部癌が挙げられる。
【0071】
本明細書で用いる「治療」とは、治療される個人または細胞の天然の進行を変える試みとして行われる臨床的介入を指し、予防のために、または、臨床的病理状態の進行時に実行することが可能である。治療の望ましい作用としては、病気の発生または再発の阻止、症状の緩和、病気の直接的または間接的病理的結果の低減、転移の阻止、病気の進行速度の低下、病状の緩和または寛解、および軽快または予後の改善が挙げられる。ある実施態様では、本発明の修飾性化合物は、病気または障害の発達を遅らせるために使用される。
【0072】
「有効量」とは、所望の治療または予防結果を実現するのに必要な用量および期間において有効な量を指す。本発明の物質/分子、作用剤、または拮抗剤の「治療的有効量」は、個体の病状、年齢、性別、および体重、および、該個体において、該物質/分子、作用剤、または拮抗剤が所望の反応を誘発する能力などの要因に応じて変動してよい。治療的有効量とはまた、該物質/分子、作用剤または拮抗剤の毒性または有害作用が、治療的有益作用によって凌駕される量でもある。「予防的有効量」とは、所望の予防結果を実現するのに必要な用量および期間において有効な量を指す。通常、しかし必ずしもそうとは限らないが、予防的用量は、病気の前、または初期段階において対象に使用されるので、予防的有効量は、治療的有効量よりも低い。
【0073】
(Dvl PDZ−リガンド相互作用の修飾因子)
本発明は、インビボにおけるDvl PDZ−リガンド相互作用に対する修飾因子、および修飾因子を特定する方法を提供する。Dvl PDZドメインと、そのリガンドとの間の相互作用を修飾する一つのやり方は、その相互作用を抑制することである。Dvl PDZ−リガンド相互作用を損なう分子は、それがいずれのものであれ、全て阻害剤候補となり得る。当業者に周知のスクリーニング技術を用いることによって、これらの分子を特定することが可能である。阻害剤の例としては:(1)小型の、有機および無機化合物、(2)小型ペプチド、(3)抗体と誘導体、(4)PDZ−ドメインリガンドと緊密に関連するペプチド、(5)核酸アプタマーが挙げられる。「Dvl PDZ−ドメイン−リガンド相互作用阻害剤」は、Dvl PDZドメインと、そのリガンドとの間の相互作用を、部分的にまたは完全に、遮断、抑制、または中和する分子は、それがいずれのものであれ、全て含む。そのような阻害剤として活動することが考えられる分子としては、Dvl PDZドメインに結合するペプチド、例えば、表I(例えば、特に、ペプチドKWYGWL(配列番号__);KWYGWF(配列番号__);WKWYGWL(配列番号__);WKWYGWF(配列番号__))、表II(例えば、特に、ペプチドGWKDYGWIDG(配列番号__);GEIVLWSDIPG(配列番号__))に列挙されるペプチド結合分子;図1(配列番号__)に列挙されるペプチド結合分子;抗体(Ab)または抗体断片、および、その他の、小型の、有機または無機分子が挙げられる。
【0074】
(低分子Dvl PDZ修飾因子)
低分子は、Dvl PDZ−リガンド相互作用の有用な修飾因子となることが可能である。この相互作用を抑制する低分子は、有用な阻害剤となる可能性を持つ。低分子修飾因子の例としては、小型ペプチド、ペプチド様分子、可溶で、合成の、非ペプチジル、有機または無機化合物が挙げられる。低分子とは、例えば、約5kD未満、約4kD未満、および0.6kD未満の分子量を有する組成物を指す。低分子は、核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド様分子、炭水化物、脂質、またはその他の有機または無機分子であることが可能である。化学的および/または生物学的混合物、例えば、真菌、細菌、または藻類抽出物のライブラリーは、従来技術で既知であるが、いずれのアッセイによるスクリーニングにも使用が可能である。分子ライブラリーの合成法の例が記載されている(Carell et al.,Angewandte Chemie International Edition.33:2059−2061(1994);Carell et al.,Angewandte Chemie International Edition.33:2061−2064(1994);Cho et al.,Science.261:1303−5(1993);DeWitt et al.,Proc Natl Acad Sci USA.90:6909−13(1993);Gallop et al.,J Med Chem.37:1233−51(1994);Zuckerman et al.,J Med Chem.37:2678−85(1994)。
【0075】
化合物のライブラリーは、溶液中(Houghten et al.,Biotechniques.13:412−21(1992))、またはビーズ上(Lam et al.,Nature.354:82−84(1991))、チップ上(Fodor et al.,Nature.364:555−6(1993))、細菌、細菌胞子(Ladner et al.,米国特許第5,223,409号、1993)、プラスミド(Cull et al.,Proc Natl Acad Sci USA.89:1865−9(1992))、またはファージ上(Cwirla et al.,Proc Natl Acad Sci USA.87:6378−82(1990);Devlin et al.,Science.249:404−6(1990);Felici et al.,J Mol Biol.222:301−10(1991);Ladner et al.,米国特許第5,223,409号、1993;Scott and Smith,Science.249:386−90(1990))に存在してもよい。無細胞アッセイは、Dvl PDZを、既知の結合分子(例えば、本明細書に記載される本発明の、一つ以上の結合ポリペプチド)と接触させ、アッセイ混合物を形成すること、このアッセイ混合物を試験化合物と接触させること、および、Dvl PDZまたは結合分子と相互作用を持つ、試験化合物の能力を定量すること、を含み、Dvl PDZまたは結合分子と相互作用を持つ、試験化合物の能力を定量することは、Dvl PDZ/結合分子複合体の検出可能な特性が修飾されたかどうかを判定することを含む。例えば、形成される複合体の量で定量した、Dvl PDZと結合分子の結合相互作用は、試験化合物が、Dvl PDZと、結合分子との間の相互作用を修飾することが可能かどうかを示すことが可能である。複合体の量は、従来技術で既知の方法によって、その内のいくつかは本明細書にも記述されるが、例えば、ELISA(競合的結合ELISAを含む)、yeast two−hybrid proximity(例えば、蛍光共鳴エネルギー転移、酵素−基質)アッセイによって定量することが可能である。
【0076】
(ポリペプチド/ペプチドおよび抗体の、Dvl PDZ修飾因子)
本発明の一局面は、Dvl PDZと、その細胞内および/または生理的結合パートナーとの間の相互作用の、単離ペプチド/ポリペプチド修飾因子に関する。ここに記載される本発明の結合ポリペプチド、および、ここに記載される方法によって得られるポリペプチド修飾因子はまた、この相互作用の抗体修飾因子を惹起する免疫原として使用するのに好適である。一実施態様では、修飾因子(例えば、ペプチドおよび抗体)は、標準的タンパク精製技術による適切な精製スキームによって、細胞または組織供給源から単離することが可能である。別の実施態様では、修飾因子は、組み換えDNA技術によって生産される。組み換え発現に対する別法として、修飾因子は、標準的ペプチド合成技術を用いて化学的に合成することも可能である。
【0077】
本発明のDvl PDZ結合分子は、表I、II、および図1に載せるものを含む。本発明はさらに、突然変異、または変異タンパクであって、その残基のいずれかが、これらのペプチドの対応残基から変化はしているが、修飾活性を依然として維持するペプチドをコードしている突然変異、または変異タンパクを提供する。一実施態様では、結合ペプチド/ポリペプチド/リガンドの変異体は、参照結合ペプチド/ポリペプチド/リガンドの配列に対し、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%のアミノ酸配列同一性を有する。一般に、変異体は、参照結合ペプチド/ポリペプチド/リガンドよりも、事実上同じか、またはより高い結合親和性を、例えば、従来技術で公認の結合アッセイ定量単位/尺度に基づいて、参照結合ペプチド/ポリペプチド/リガンドの結合親和性の、例えば、少なくとも0.75X、0.8X、0.9X、1.0X、1.25X、または1.5Xの結合親和性を示す。
【0078】
一般に、本発明の変異体は、配列の特定位置における残基が、他のアミノ酸によって置換される変異体を含み、さらに、親タンパク/ペプチドの二つの残基の間に、新たに別の一残基または複数残基を挿入する可能性、および、親配列から一つ以上の残基を欠失するか、または、親配列に対し一つ以上の残基を付加する可能性を含む。アミノ酸置換、挿入、または欠失は、それがどのようなものであれ、本発明によって包含される。好適な状況では、置換は、本明細書に記載されるもののような、保存的置換である。
【0079】
「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」とは、二つの配列を整列させた場合、参照(親)ポリペプチド配列のアミノ酸残基と同じ、アミノ酸配列残基のパーセントと定義される。%アミノ酸同一性を求めるには、配列同士を整列させ、要すれば、最大%配列同一性を実現するためにギャップを導入する;保存的置換は、配列同一性の一部とは見なされない。パーセント同一性を求めるための、アミノ酸配列整列手順は、従来技術において周知である。ペプチド配列同士を整列させるためには、多くの場合、広く市販されるソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST2、ALIGN2、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアが使用される。当業者であれば、比較される配列の全長に亘って最大の整列を実現するために必要なアルゴリスムを含む、整列度を測定するための適切なパラメータを決定することが可能である。
【0080】
アミノ酸配列が整列されると、ある任意のアミノ酸配列Aの、ある任意のアミノ酸配列Bとの、または、Bに対する%アミノ酸配列同一性(これは、別に、ある任意のアミノ酸配列Bに、Bと、またはBに対し、%アミノ酸配列同一性を有する、または含むある任意のアミノ酸配列Aと言い換えることもできる)は、下式:
%アミノ酸配列同一性=X/Y・100
として計算することが可能である。上式において:
Xは、AおよびBの配列整列プログラムまたはアルゴリスムによって、一致と評価されたアミノ酸残基数、
および、
Yは、Bのアミノ酸の全数である。
【0081】
アミノ酸配列Aの長さが、アミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAの%アミノ酸配列同一性は、Aに対するBの%アミノ酸配列同一性とは等しくない。
【0082】
ペプチド、ポリペプチド、タンパク、または生物学的活性断片の「単離体」または「精製体」は、その天然環境の成分から分離、および/または回収される。汚染成分は、通常、あると、ポリペプチドの診断または治療的使用を妨げると考えられる物質を含み、酵素、ホルモン、およびその他の、タンパク様、または非タンパク様物質が挙げられてもよい。好ましくは、乾燥重量に基づいて30%未満の不要な汚染性物質(汚染物質)、好ましくは20%、10%、好ましくは5%未満の汚染物質を有する標本は、事実上単離体と見なされる。組み換え的に生産される、ペプチド/ポリペプチド、またはその生物学的活性部分は、好ましくは、培養媒体を事実上含まない、すなわち、培養媒体は、ペプチド/ポリペプチド標本の容量の、好ましくは約20%未満、好ましくは約10%未満、および好ましくは約5%未満を表す。汚染物質の例としては、細胞破片、培養媒体、および、ペプチド/ポリペプチドのインビトロ合成の際に使用、生産される物質が挙げられる。
【0083】
ペプチド/ポリペプチドの保存的置換が、表Aにおいて、「好ましい置換体」という題名の下に示される。このような置換が生物活性に変化をもたらす場合、表Aに「例示の置換」と表示され、アミノ酸クラスを参照しながら下記に説明される、比較的実質的な変化を導入し、産物をスクリーニングしてもよい。
【0084】
【化1−1】

【0085】
【化1−2】

ペプチド/ポリペプチドの生物学的性質における実質的な修飾は、(a)置換領域における、例えば、シートまたはヘリックス立体配座などのポリペプチドバックボーン構造の維持、(b)標的部位における分子の電荷または疎水性、または(c)側鎖の大きさに及ぼすその作用において著明に異なる置換を選択することによって実現される。天然の残基は、共通の側鎖の性質に基づいていくつかの群に分けられる。
【0086】
(1)疎水性群:norleucine,met,ala,val,leu,ile;
(2)中性親水性群:cys,ser,thr;
(3)酸性群:asp,glu;
(4)塩基性群:asn,gln,his,lys,arg;
(5)鎖の方向性に影響を及ぼす残基:gly,pro;および、
(6)芳香族:trp,tyr,phe。
【0087】
非保存的置換では、これらのクラスの一クラスのメンバーは、他クラスのものと交換することを必要とする。
【0088】
さらに、Dvl PDZ−リガンド相互作用の抗体修飾因子の変異体を、抗体の活性にほとんど影響を及ぼさずに、従来技術で既知の情報に基づいて作製することが可能である。例えば、抗体変異体は、抗体分子の少なくとも一つのアミノ酸残基を、別の残基によって置換させることが可能である。抗体では、置換的突然変異発生においてもっとも興味深い部位は、一般に、超可変域を含むが、枠組み構造領域(FR)の改変も考慮の対象とされる。
【0089】
抗体では、一型の置換変異体は、親抗体(例えば、ヒト化、またはヒト抗体)の、一つ以上の超可変域残基の置換を含む。一般に、その後の発達のために選ばれる変異体は、それから得られた親抗体と比べて、生物学的特性が改善される。このような置換変異体を生成する好適な方法は、ファージディスプレイを用いる親和性熟成を含む。簡単に言うと、いくつかの超可変域部位(例えば、6−7部位)を突然変異させて、各部位において全ての可能なアミノ酸置換を生成する。このようにして生成される抗体は、繊維状ファージ粒子によって、各粒子内にパックされるM13の遺伝子III産物に対する融合体として表示される。次に、このファージディスプレイ変異体を、本明細書に開示するやり方で、その生物活性(例えば、結合親和性)に関してスクリーニングする。修飾に関して候補となる超可変域を特定するため、抗原結合に大きく貢献する超可変域残基を特定する目的でアラニンスキャニング突然変異発生を実行することが可能である。それとは別に、またはそれに加えてさらに、抗体および抗原間の接触点を特定するために、抗原抗体複合体の結晶構造を分析することは有益であると考えられる。このような接触残基および隣接残基は、本発明において改善された技術による置換の候補となる。一旦このような変異体が生成されたならば、その一連の変異体に、本明細書に記載するやり方でスクリーニングを実施し、一つ以上の関連アッセイにおいて優れた特性を示す抗体を、その後の発展のために選別してよい。
【0090】
抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、従来技術で既知の種々の方法によって調製される。その方法としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、天然供給源からの単離(天然アミノ酸配列変異体の場合)、オリゴヌクレオチド介在性(または、部位指向性)突然変異発生、PCR突然変異発生、および、抗体の、あらかじめ調製した変異体または非変異体のカセット突然変異発生が挙げられる。
【0091】
本発明の免疫グロブリンポリペプチドのFc領域に、一つ以上のアミノ酸修飾を導入し、Fc領域変異体を生成することが望ましい場合がある。Fc領域は、ヒンジ・システイン位置を含む、一つ以上のアミノ酸位置においてアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトのFc領域配列(例えば、ヒトの、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含んでもよい。
【0092】
一実施態様では、Fc領域変異体は、改変された、新生児Fc受容体(FcRn)結合活性を示してもよい。このような、Fc領域変異体は、Fc領域の番号付けをKabatにおけるEUインデックスのものと同じとすると、Fc領域のアミノ酸位置238、252、253、254、255、256、265、272、286、288、303、305、307、309、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、386、388、400、413、415、424、433、434、435、436、439、または447の内の、任意の一つ以上においてアミノ酸修飾を含んでもよい。FcRnに対する結合性を低下させたFc領域変異体は、Fc領域の番号付けをKabatにおけるEUインデックスのものと同じとすると、Fc領域のアミノ酸位置252、253、254、255、288、309、386、388、400、415、433、435、436、439、または447の内の、任意の一つ以上においてアミノ酸修飾を含むと考えられる。それとは別に、上記Fc領域変異体は、FcRnに対する結合を上昇させる場合もあり、Fc領域の番号付けをKabatにおけるEUインデックスのものと同じとすると、Fc領域のアミノ酸位置238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434の内の、任意の一つ以上においてアミノ酸修飾を含むと考えられる。
【0093】
Fc(Rに対する結合を低下させたFc領域変異体は、Fc領域の番号付けをKabatにおけるEUインデックスのものと同じとすると、Fc領域のアミノ酸位置238、239、248、249、252、254、265、268、269、270、272、278、289、292、293、294、295、296、298、301、303、322、324、327、329、333、335、338、340、373、376、382、388、389、414、416、419、434、435、437、438、または439の内の、任意の一つ以上においてアミノ酸修飾を含むと考えられる。
【0094】
例えば、Fc領域変異体は、Fc(RIに対する結合低下を示し、かつ、Fc領域の番号付けをKabatにおけるEUインデックスのものと同じとすると、Fc領域のアミノ酸位置238、265、269、270、または329の内の、任意の一つ以上においてアミノ酸修飾を含む場合がある。
【0095】
Fc領域変異体は、Fc(RIIに対する結合低下を示し、かつ、Fc領域の番号付けをKabatにおけるEUインデックスのものと同じとすると、Fc領域のアミノ酸位置238、265、269、270、292、294、295、298、303、324、327、329、333、335、338、373、376、414、416、419、435、438、または439の内の、任意の一つ以上においてアミノ酸修飾を含む場合がある。
【0096】
対象のFc領域変異体は、Fc(RIIIに対する結合低下を示し、かつ、Fc領域の番号付けをKabatにおけるEUインデックスのものと同じとすると、Fc領域のアミノ酸位置238、239、248、249、252、254、265、268、269、270、272、278、289、293、294、295、296、301、303、322、327、329、338、340、373、376、382、388、389、416、434、435、または437の内の、任意の一つ以上においてアミノ酸修飾を含む場合がある。
【0097】
Clq結合および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)が改変された(すなわち、向上または衰退した)Fc領域変異体が、国際公開第99/51642号に記載される。このような変異体は、Fc領域のアミノ酸位置270、322、326、327、329、331、333、または334の内の一つ以上においてアミノ酸置換を含む。さらに、Fc領域変異体に関する、Duncan & Winter Nature 322:738−40(1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;および国際公開第94/29351号を参照されたい。
【0098】
(ベクター構築)
本明細書に記載されるペプチドおよびポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、標準的合成および/または組み換え技術を用いて入手することが可能である。所望のポリヌクレオチド配列は、適切な起源細胞から単離し、配列決定してもよい。抗体のための起源細胞は、もしあるとするならば、ハイブリドーマ細胞などの抗体生産細胞を含むと考えられる。それとは別に、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド合成機またはPCR技術を用いて合成することも可能である。一旦得られたならば、該ペプチドまたはポリペプチドをコードする配列は、宿主細胞において異種ポリヌクレオチドを複製し、発現することが可能な組み換えベクターに挿入される。従来技術で利用可能で、既知の、多くのベクターが、本発明の目的のために使用が可能である。適切なベクターの選択は、主に、ベクターに挿入される核酸のサイズ、および、ベクターによって形質転換される特定の宿主細胞に依存する。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅または発現、またはその両方)、および、それが滞在する特定の宿主細胞との適合性に応じて種々の成分を含む。ベクター成分としては、一般に、例えば、ただしこれらに限定されないが:複製起点(特に、ベクターが、前核細胞に挿入される場合)、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸挿入体、および転写終結配列が挙げられる。
【0099】
一般に、宿主細胞と適合性を持つ生物種から得られたレプリコンおよび調節配列を含むプラスミドベクターが、これらの宿主と結びつけて使用される。ベクターは、通例として、複製部位の外、形質転換細胞において表現型選択を可能とする、標識配列を担う。例えば、大腸菌(E.coli)は、通常、大腸菌種由来のプラスミドpBR322によって形質転換される。pBR322は、アンピシリン耐性をコードする遺伝子(Amp)、およびテトラサイクリン耐性をコードする遺伝子(Tet)を含み、このようにして形質転換細胞を特定するための簡便な手段を提供する。さらに、pBR322、その誘導体、または、他の細菌プラスミドまたはバクテリオファージは、内因性タンパクの発現のために細菌生物によって使用されるプロモーターを含むか、または、含むように修飾されてもよい。
【0100】
さらに、これらの宿主と結びつけた形質転換ベクターとして、宿主微生物と適合性を持つレプリコンおよび調節配列を含むファージベクターを使用することも可能である。例えば、λGEM.TM.−11などのバクテリオファージを、E.coli LE392などの、感受性を有する宿主細胞を形質転換するために使用が可能な組み換えベクターの作製に利用してもよい。
【0101】
当業者ならば確かめることが可能な、特定の状況の要求にしたがって、本発明では、構成的または誘発性のいずれかのプロモーターを使用することが可能である。種々の可能な宿主細胞によって認識される、多数のプロモーターが広く知られる。制限酵素消化によって起源DNAのプロモーターを除去し、単離プロモーター配列を、選ばれたベクターの中に挿入することによって、該選択プロモーターを、本明細書に記載されるポリペプチドをコードするシストロンDNAに動作可能的に連結することが可能である。標的遺伝子の増幅および/または発現を指令するためには、元々のプロモーター配列、および多くの異種プロモーターのどちらでも使用してよい。しかしながら、異種プロモーターの方が、一般に、元々の標的ポリペプチドプロモーターと比べて、より大きな転写率、および標的遺伝子発現の、より高い収率を可能にするという点で、好ましい。
【0102】
前核細胞宿主において使用するのに好適なプロモーターとしては、PhoAプロモーター、βガラクタマーゼおよびラクトースプロモーターシステム、トリプトファン(trp)プロモーターシステム、および、tacまたはtrcプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが挙げられる。しかしながら、細菌において機能する他のプロモーター(例えば、他の、既知の細菌またはファージプロモーター)も同じく好適である。それらのヌクレオチド配列は公表されているので、熟練した当業者ならば、必要な制限部位を供給するリンカーまたはアダプターを用いて、それらを、標的軽鎖および重鎖をコードするシストロンに動作可能的に連結させることは可能である(Siebenlist et al.(1980)Cell 20:269)。
【0103】
ある実施態様では、組み換えベクター内の各シストロンは、発現ポリペプチドの、膜を横断する転位を指令する、分泌シグナル配列成分を含む。一般に、シグナル配列は、ベクターの一成分であってもよいし、あるいは、ベクターに挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であってもよい。本発明の目的のために選ばれるシグナル配列は、宿主細胞によって認識、処理(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断)されるものでなければならない。異種ポリペプチドに元々付属するシグナル配列を認識・処理しない前核細胞宿主では、該シグナル配列は、例えば、アルカリフォスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、または熱安定エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA、およびMBPから成る群から選ばれる、前核細胞性シグナル配列によって置換される。
【0104】
ポリペプチドを発現するのに好適な前核細胞宿主としては、グラム陰性またはグラム陽性微生物などの、古細菌およびユーバクテリアが挙げられる。有用な細菌の例としては、エシェリキア属(例えば、E.coli)、バチルス属(例えば、B.subtilis)、腸内細菌、シュードモナス種(例えば、P.aeruginosa)、Salmonella typhimurium、Serratia marcescans、Klebsiella、Proteus、Shigella、Rhizobia、Vitreoscilla、またはParacoccusが挙げられる。グラム陰性細胞を使用することが好ましい。宿主細胞は、最少量のタンパク分解酵素を分泌することが好ましく、別に、プロテアーゼ阻害剤が、細胞培養体中に組み込まれることが望ましい。
【0105】
(ペプチドまたはポリペプチド生産)
宿主細胞は、前述の発現ベクターによってトランスフェクトされるか、または形質転換され、プロモーターの誘発、形質転換体の選択、または、所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適宜修飾される、好適な栄養培地において培養される。
【0106】
トランスフェクションとは、実際にどのようなコード配列が発現されるかとは無関係に、宿主細胞による、発現ベクターの取り込みを指す。数多くのトランスフェクション法が、例えば、CaPO4沈殿および電気穿孔などの方法が、当業者には周知される。トランスフェクションの成功は、一般に、このベクターの動作を示す何らかの表徴が宿主細胞の内部に生じた場合に認められる。
【0107】
形質転換とは、前核細胞宿主の中にDNAを、該DNAが、染色体外要素として、または染色体内組み込み体として複製可能となるように導入することを意味する。使用される宿主細胞に応じて、形質転換は、その細胞にとって適切な標準技術を用いて実行される。しっかりした細胞壁障碍を含む細菌細胞のためには、塩化カルシウムを用いるカルシウム処理が一般に使用される。形質転換のための、もう一つの方法は、ポリエチレングリコール/DMSOを用いる。使用される、さらにもう一つの技術は電気穿孔である。
【0108】
本発明のポリペプチドを生産するために使用される前核細胞は、従来技術で既知で、選ばれた宿主細胞の培養に好適な培地において育成される。好適な培地の例としては、ルリアブロス(LB)、プラス、必要な栄養添加物が挙げられる。好ましい実施態様では、培地は、さらに、発現ベクターを含む前核細胞の選択的増殖を可能とするために、発現ベクターの構築に基づいて選択された選択性介在因子を含む。例えば、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の増殖のために、培地に対しアンピシリンが加えられる。
【0109】
炭素、窒素、および無機のリン酸塩供給源の外に、任意の必要添加物が、単独で、または、複雑な窒素供給源などの、他の添加物または媒体との混合物として、適切な濃度において含まれてもよい。培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリトリトール、およびジチオスレイトールから成る群から選ばれる、一つ以上の還元剤を任意に含んでもよい。
【0110】
前核細胞宿主は、適切な温度において培養される。大腸菌の育成には、適切な温度は、例えば、約20℃から約39℃、より好ましくは約25℃から約37℃の範囲、さらに好ましくは約30℃である。培地のpHは、主に宿主の微生物に依存して、約5から約9の範囲の任意のpHであってよい。大腸菌の場合、pHは、好ましくは約6.8から約7.4であり、より好ましくは約7.0である。
【0111】
発現ベクターにおいて誘発性プロモーターが使用される場合、タンパク発現は、プロモーターの活性化に好適な条件下で誘発される。例えば、転写調節のためにPhoAが使用される場合、形質転換細胞は、誘発のために、リン酸塩制限培地の中で培養されてもよい。従来技術で知られるように、外にも、様々な誘発因子を、用いるベクター構築体に応じて使用してよい。
【0112】
微生物において発現される、本明細書に記載されるポリペプチドは、宿主細胞のペリプラズムに分泌させ、該腔から回収するようにしてもよい。通常、タンパクの回収は、一般に、浸透圧ショック、超音波処理、または細胞溶解などの手段によって微生物を破壊することを含む。一旦細胞が破壊されたならば、細胞破片または全体細胞は、遠心またはろ過によって除去してもよい。タンパクは、例えば、アフィニティ樹脂クロマトグラフィーによってさらに精製されてもよい。それとは別に、タンパクは、培地に輸送し、それから単離することも可能である。細胞を、培養体から取り出し、培養上清を、生産されたタンパクをさらに精製するために、ろ過し、濃縮してもよい。この発現されたポリペプチドは、さらに単離し、周知の方法、例えば、免疫アフィニティーまたはイオン交換カラムにおける分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ、または、DEAEなどの陽イオン交換樹脂によるクロマトグラフィー;クロマトフォーカッシング;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えば、Sephadex G−75使用のゲルろ過;基質に固定した適切な抗原による、疎水性アフィニティー樹脂、リガンドアフィニティーおよびウェスタンブロットアッセイなどの方法を用いて特定することが可能である。
【0113】
前核宿主細胞の外に、真核宿主細胞も、従来技術において十分に確立されている。適切な宿主としては、CHOなどの哺乳類細胞系統、および、後述のような昆虫細胞が挙げられる。
【0114】
(ポリペプチド/ペプチド精製)
生産されるポリペプチド/ペプチドは、その後のアッセイおよび使用のために、事実上均一な標本を得るために精製されてもよい。従来技術で既知の、標準的タンパク精製法を使用することが可能である。下記の手順は、適切な精製手順の例示となるものである、すなわち、免疫アフィニティーまたはイオン交換カラムにおける分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ、または、DEAEなどの陽イオン交換樹脂によるクロマトグラフィー、クロマトフォーカッシング、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、および、例えば、Sephadex G−75使用のゲルろ過などである。
【0115】
(Dvl PDZ修飾因子の特定および特徴解明−一般的方法)
Dvl PDZ修飾因子候補、例えば、結合ペプチドは、任意の数の、従来法によって特定することが可能である。修飾因子の修飾特性は、Dvl PDZと、その結合パートナー(例えば、本発明の結合ポリペプチド)との間の相互作用を修飾する、該修飾因子の能力を定量することによって評価することが可能である。重要な特性の一つは、結合親和度である。対象とする、修飾因子候補(例えば、ペプチド)の結合特性は、いくつかの既知の方法のいずれかによって評価することが可能である。
【0116】
このプロセスにおける第1工程は、対象配列を含む一つ以上の候補ペプチドを生成することを含むことが可能であり、この候補ペプチドは、次に、その、Dvl PDZドメイン結合特性を定量するのに好適な条件下で表示される。例えば、候補ペプチドは、p3またはp8などのコートタンパクとのタンパク融合を用いて、ファージまたはファージミド、例えば、繊維状ファージ(ミド)の表面において、ペプチドの、カルボキシル末端(C−末端)ディスプレイライブラリーとして表示することが可能である。C−末端ライブラリーは従来技術で既知である。例えば、Jespers et al.,Biotechnology(NY)13:378−82および国際公開第00/06717号を参照されたい。これらの方法は、融合遺伝子、融合タンパク、ベクター、組み換えファージ粒子、宿主細胞、および本発明の、そのライブラリーの調製のために使用してよい。本明細書に記載するように、ある実施態様では、候補ペプチドを、ファージまたはファージミドの表面においてペプチドのアミノ末端(N−末端)ディスプレイライブラリーとして表示することが有用な場合がある。N−末端ファージ(ミド)ディスプレイ法としては、本明細書に記載されるもの、および、従来技術でよく知られるもの、例えば、米国特許第5,750,373号(および、その中に引用される参考文献)に記載されるものが挙げられる。これらの方法によって得られた結合分子の特性を解明する方法も、例えば、前述の参考文献(Jaspers et al.,国際公開第00/06717号、および米国特許第5,750,373号)、および本明細書に記載されるものを含め、従来技術において既知である。
【0117】
(i)Dvl PDZに対する結合ファージの単離
候補のDvl PDZ結合ペプチドが表示されるファージディスプレイライブラリーを、Dvl PDZドメインタンパクまたは融合タンパクに接触させ、該ライブラリーにおいてDvl PDZドメイン標的に結合するメンバーを決める。インビトロタンパクの結合を定量するために、当業者に既知のいずれの方法を使用してもよい。例えば、1、2、3、または4ラウンド、またはそれ以上の結合選択を行い、その後、個々のファージを単離し、任意にファージELISAで分析してもよい。固定されたPDZ標的タンパクに対する、ペプチド表示ファージ粒子の結合親和度は、ファージELISA(Barrett et al.,Anal Biochem.204:357−64(1992))を用いて定量してもよい。
【0118】
候補が、Dvl PDZに対する結合に関して、既知のDvl PDZ結合因子と競合する能力を評価される状況では、適切な結合競合条件が準備される。例えば、一実施態様では、一種以上の濃度の、既知のDvl PDZ結合因子の存在下に、スクリーニング/選別/バイオパニングを実行することが可能である。別の実施態様では、ライブラリーから単離された候補結合因子は、次いで、既知のDvl PDZ結合因子の存在下に、競合的ELISAアッセイにおいて評価することが可能である。
【0119】
(ii)Dvl PDZドメインの調製
Dvl PDZドメインは、従来の合成または組み換え技術を用いて、該ドメインを含むタンパク断片として、または融合ポリペプチドとして好適に生産されてもよい。融合ポリペプチドは、Dvl PDZが、発現実験、細胞局在、バイオアッセイ、ELISA(結合競合アッセイを含む)などにおいて標的抗原となる、ファージ(ミド)ディスプレイにおいて有用である。Dvl PDZドメインの「キメラタンパク」または「融合タンパク」は、非PDZドメインポリペプチドに融合されたDvl PDZを含む。非PDZドメインポリペプチドは、PDZドメインとは事実上相同ではない。Dvl PDZドメイン融合タンパクは、任意の数の生物学的活性部分を含め、全体PDZドメインのどの部分を含んでもよい。次に、この融合タンパクは、アフィニティークロマトグラフィー使用の既知の方法、および、非PDZドメインポリペプチドに結合する捕捉試薬に基づいて精製することが可能である。Dvl PDZドメインは、アフィニティー配列、例えば、GST(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)配列に融合されてもよい。このような融合タンパクによって、固相支持体に結合した、および/または、固相支持体(例えば、ペプチドスクリーニング/選別/バイオパニング用基質)に付着したグルタチオンによる、組み換えDvl PDZドメインの精製がやり易くなる。他の、例示の融合が、このような融合体のいくつかの一般的使用を含め、表Bに掲載される。
【0120】
融合タンパクは、組み換え法を用いて簡単に創製することが可能である。Dvl PDZドメイン(または、その部分)をコードする核酸は、PDZドメインのN−末端、C−末端、または内部的に、非PDZドメインコード核酸と、読み枠を一致させて融合させることが可能である。融合遺伝子はさらに、従来技術、例えば、自動化DNA合成機を含む技術によって合成してもよい。二つの連続遺伝子断片の間に相補的オーバーハングを発生させ、その後、アニールし、再増幅してキメラ遺伝子配列(Ausubel et al.,Current Protocols in molecular biology.John Wiley & Sons,New York 1987)を生成する、アンカープライマー使用のPCR増幅も有用である。融合タンパクに対し読み枠を一致させたDvl PDZドメインのサブクローニングをやり易くする、ベクターがたくさん市販されている。
【0121】
【化2】

Dvl PDZドメイン融合体の一例として、GST−Dvl PDZ融合体が、下記のようにして対象遺伝子から調製される。完全長の対象遺伝子を鋳型として、サブクローニングをやり易くするのに好適な制限エンドヌクレアーゼ部位を導入するプライマーを用い、PCRによってPDZドメインをコードするDNA断片を増幅する。各増幅断片を、適切な制限酵素によって消化し、同様に消化されたプラスミドで、GSTを含み、サブクローンされる断片が、GSTと読み枠が一致し、かつ、プロモーターに動作可能的に連結するように設計されたプラスミド、例えば、pGEX6P−3、またはpGEX−4T−3に該増幅断片をクローンし、GST−Dvl PDZ融合タンパクをコードするプラスミドを得る。
【0122】
融合タンパクを生産するために、適切なプラスミドを抱懐する大腸菌培養体を、LBブロスにおいて、例えば、約37℃で、全体として、中央対数相(A600=1.0)まで育成するが、IPTGによって誘発してもよい。この細菌を、遠心によってペレット状とし、PBSに再縣濁し、超音波処理によって分解する。この縣濁液を遠心し、上清から、GST−Dvl PDZ融合タンパクを、0.5mlのグルタチオンセファローズ使用のアフィニティクロマトグラフィーによって精製する。
【0123】
多くの変法が、Dvl PDZドメインタンパク単離体という目標を実現すること、かつ、それらを本発明において使用してもよいことは、当業者には明白であろう。例えば、Dvl PDZドメインと、エピトープタグとの融合は、前述のように構築してもよいし、このタグは、Dvl PDZドメインをアフィニティ精製するのに用いてもよい。さらに、Dvl PDZドメインタンパク/ペプチドは、全く融合を用いることなく調製してもよい。さらに、該タンパクを生産するために細菌ベクターを用いる代わりに、インビトロ化学合成を使用してもよい。Dvl PDZドメインタンパク/ペプチドを生産するためには、他の細胞、例えば、他の細菌、哺乳類細胞(例えば、COS)、またはバキュロウィルスシステムを使用してもよい。さらに、種々の融合体を生産するために、多様なポリヌクレオチドベクターが市販されている。Dvl PDZドメイン融合タンパクの最終的精製は、一般に、融合パートナーに依存する;例えば、ポリ−ヒスチジンタグ融合体は、ニッケルカラム上で精製することが可能である。
【0124】
(iii)表示ペプチドの配列決定
所望の特性を有するDvl PDZに結合する(かつ、任意に、無関係の配列には結合しない)ファージ(ミド)に対し、配列分析を実施することが可能である。候補の結合ペプチドを表示するファージ(ミド)粒子を宿主細胞において増幅し、DNAを単離し、ゲノムの適切な(候補ペプチドをコードする)部位について、任意の、適切な既知の配列技術を用いて配列決定する。
【0125】
(Dvl PDZ−リガンド相互作用の修飾因子を特定するための、他の方法)
Dvl PDZ−リガンド結合の修飾因子を特定するための、もう一つの方法は、合理的薬剤設計を取り込むことである、すなわち、PDZ相互作用の生物学を理解し、利用することである。この方法では、PDZリガンドの決定的残基が、任意に決定される最適ペプチド長と同様に、決定される。次に、この情報を手に低分子が設計される。例えば、PDZドメインに対する結合においてチロシンが決定的残基であることが見出されたならば、チロシンを含む低分子が調製され、抑制因子として試験される。一般に、結合には、2、3、4、または5個のアミノ酸残基が決定的と判定されるので、これらの残基、または残基側鎖を含む、候補の、低分子抑制因子が調製される。次に、従来技術で既知のプロトコール、例えば、競合的抑制アッセイを用いて、Dvl PDZドメイン−リガンド相互作用に対する、その抑制能力に関して、試験化合物をスクリーニングする。
【0126】
Dvl PDZドメイン−リガンド結合相互作用を修飾する化合物は、Dvl PDZの結合相互作用の制御不良と関連する疾患および病態を治療するのに有用である。Dvl PDZドメイン相互作用の調節と関連する疾患および病態としては、カスパーゼ依存性、および非依存性アポトーシス、およびミトコンドリアタンパク品質管理が挙げられる。
【0127】
1.Dvl PDZ結合ポリペプチドの決定的残基の決定
(a)アラニンスキャニング
リガンドのPDZ結合における各残基の相対的寄与を定量するには、Dvl PDZドメイン結合ペプチド配列に対するアラニンスキャニングを使用することが可能である。PDZリガンドにおける決定的残基を判断するために、残基を、単一アミノ酸によって、通常はアラニン残基によって置換し、PDZドメイン結合に対する作用を評価する。米国特許第5,580,723;5,834,250号、およびその実施例を参照されたい。
【0128】
(b)短縮(欠失シリーズ)
Dvl PDZドメイン結合ペプチドの短縮によって、結合における決定的残基を明らかにすることができるばかりでなく、結合を実現するのに必要な、ペプチドの最短長を求めることが可能である。ある場合では、短縮によって、天然リガンドよりも緊密に結合するリガンドが明らかにされるが、このようなペプチドは、Dvl PDZドメイン:PDZリガンド相互作用を修飾するのに有用である。
【0129】
一連のDvl PDZ−ドメイン結合ペプチド短縮形が調製されることが好ましい。一シリーズは、アミノ末端アミノ酸を順次短縮させ、別のシリーズでは、短縮は、カルボキシ末端から始まる。アラニンスキャニングの場合と同様、ペプチドは、インビトロで合成してもよいし、または組み換え法によって調製してもよい。
【0130】
(c)合理的修飾因子設計
アラニンスキャニングおよび短縮分析から得られる情報に基づいて、当業者ならば、結合を修飾する可能性の高い低分子を設計、合成すること、または、結合を修飾する可能性の高い化合物が濃縮された低分子ライブラリーを選択することが可能である。例えば、本実施例に記載される情報に基づいて、適切に隔てられた二つの疎水性成分を含むように、修飾性ペプチドを設計することが可能である。
【0131】
(d)結合アッセイ
Dvl PDZ結合ペプチドとDvl PDZとの複合体を形成することによって、該複合体の、その未複合形態および不純物からの分離がやり易くなる。Dvl PDZドメイン:結合リガンド複合体は、溶液において形成すること、あるいは、結合パートナーの一方が、不溶の支持体に結合される場合に形成することが可能である。複合体は、例えば、カラムクロマトグラフィーを用いて、溶液から分離することが可能であり、固相支持体に結合時に、ろ過、遠心など、周知の技術を用いて分離することが可能である。ポリペプチドを含むPDZドメイン、またはそのリガンドを固相支持体に結合することによって、高処理能力アッセイの実行が促進される。
【0132】
試験化合物を、候補結合化合物の存在下、および不在下に、結合ポリペプチドとDvl PDZドメインとの相互作用を修飾する(例えば、抑制する)能力についてスクリーニングすることが可能であり、かつ、スクリーニングは、適切なものであれば任意の容器で、例えば、マイクロタイタープレート、試験管、およびミクロ遠心管において実行することが可能である。さらに、試験または分離をやり易くするために、融合タンパクを調製することが可能である。その場合、融合タンパクは、タンパクの内の一方または両方が基質に結合するのを可能とする、さらに別のドメインを含む。例えば、GST−PDZ−結合ペプチド融合タンパク、またはGST−PDZドメイン融合タンパクを、グルタチオンセファローズビーズ(SIGMA Chemical,St.Louis,MO)、または、グルタチオン誘導体形成させたマイクロタイタープレートに吸着させ、該マイクロタイタープレートを、試験化合物、および、非吸着Dvl PDZドメインタンパク、またはPDZ−結合ペプチドのいずれかと混ぜ合わせ、この混合物を、複合体形成を可能とする条件下(例えば、生理的条件の塩およびpHにおいて)にインキュベートする。インキュベーション後、ビーズ、またはマイクロタイタープレートのウェルを洗浄し、ビーズの場合であれば固定された基質から未結合の成分があればそれらを全て除去し、複合体を、直接または間接に定量する。それとは別に、複合体を、基質から解離し、結合または活性レベルを標準技術を用いて定量することも可能である。
【0133】
スクリーニングアッセイでは、基質の上にタンパクを固定するための、他の融合タンパク技術も使用が可能である。ビオチン−アビジンまたはビオチン−ストレプトアビジンシステムを用いて、Dvl PDZ結合ペプチドまたはDvl PDZのいずれかを固定することが可能である。ビオチニル化は、ビオチン−N−ヒドロキシ−スクシニミド(NHS;PIERCE Chemicals,Rockford,IL)など多数の試薬を用いて実現することが可能であり、ストレプトアビジン塗布96ウェルプレート(PIERCE Chemical)のウェルの中に固定される。それとは別に、Dvl PDZ結合ペプチド、またはDvl PDZドメインと反応するが、結合ペプチドの、その標的分子に対する結合は妨げない抗体を、プレートのウェルにおいて誘導体形成させ、未結合Dvl PDZまたは結合ペプチドを、抗体接合体によってウェルにおいて捕捉することが可能である。GST−不動化複合体に関して記載されたものに加えて、このような複合体を検出するための方法として、結合ペプチドまたはDvl PDZドメインと反応する抗体による、複合体の免疫検出が挙げられる。
【0134】
(e)結合アッセイ:競合ELISA
ペプチド、タンパク、または、その他のDvl PDZリガンドの結合親和度を評価するために、競合結合アッセイを用いてもよい。このアッセイでは、リガンドの、Dvl PDZドメインに対する結合能力(および、要すれば、結合親和度)が評価され、PDZドメインに結合することが知られる化合物、例えば、本明細書に記載されるファージディスプレイによって判定された高親和性結合ペプチドの結合能力と比較される。
【0135】
結合分子(例えば、ペプチド、タンパク、低分子など)の結合親和度を特定するためには、多くの方法が知られており、使用することが可能である;例えば、結合親和度は、競合ELISAを用いてIC50として定量することが可能である。このIC50値は、Dvl PDZドメインの50%が、リガンドへの結合を阻止される、結合因子の濃度として定義される。例えば、固相アッセイでは、アッセイプレートは、マイクロウェルプレート(タンパクを効率的に吸着するように処理されるのが好ましい)にニュートラアビジン、アビジン、またはストレプトアビジンを塗布することによって調製される。次に、非特異的結合部位を、ウシ血清アルブミン(BSA)またはその他のタンパク(例えば、脱脂ミルク)の溶液を添加することによってブロックし、次に、好ましくは、Tween−20などの洗剤を含むバッファーによって洗浄する。既知の、ビオチニル化Dvl PDZ結合因子(例えば、精製および検出を容易にするために、GSTまたは他の同様の分子と接合されるファージペプチド)を調製し、プレートに結合させる。Dvl PDZを含む、試験分子の連続希釈液を調製し、結合した結合因子に接触させる。固定結合因子を塗布したプレートを、ウェルに各結合反応液を加える前に洗浄し、短時間インキュベートする。さらに追加の洗浄後、結合反応を、多くの場合、非PDZ融合パートナーを認識する抗体、および、該一次抗体を認識する、標識された(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ(AP)、または、フルオレセインなどの蛍光タグ)二次抗体によって検出する。次に、このプレートを、適切な基質(標識に応じて)で現像し、信号を、例えば、分光光度プレートリーダーを用いて定量する。この吸収信号は、最小二乗適合によって結合曲線に適合させてもよい。このようにして、PDZドメインが、既知のPDZドメイン結合因子と結ぶ結合に対する、各種分子の抑制能力を測定することが可能である。
【0136】
当業者には明白であるが、上記アッセイには数多くの変法がある。例えば、アビジン−ビオチンシステムの代わりに、PDZドメイン結合因子は、基質に化学的に連結されてもよいし、単純に吸着されてもよい。
【0137】
(2.ファージディスプレイの際に認められるPDZドメインペプチドリガンド)
本実施例(および表I、II、および図1)に記載されるものを含めた、PDZドメインペプチドリガンドは、Dvl PDZ−リガンド相互作用の有用な抑制因子の可能性を有する。
【0138】
競合的結合ELISAは、各ファージ表示されるPDZ−ドメイン結合ペプチドの効力を定量するための有力な手段である。
【0139】
(3.アプタマー)
アプタマーとは、ほとんど全ての分子を特異的に認識し、結合するように用いることが可能な、短いオリゴヌクレオチド配列である。そのようなアプタマーを見出すには、指数関数濃縮プロセスによるリガンド系統進化(SELEX)(Ausubel et al.,Current protocols in molecular biology.John Wiley & Sons,New York(1987);Ellington and Szostak,Nature.346:818−22(1990);Tuerk and Gold,Science.249:505−10(1990)を用いることが可能である。アプタマーには、たくさんの診断的、臨床的用途があり、臨床的、または診断的に抗体が使用される用途では、そのほとんど全てにおいて、アプタマーも使用が可能である。さらに、アプタマーは、一旦特定されると製造は比較的安価であり、かつ、製薬組成物における投与、バイオアッセイ、および診断試験を含む、種々の方式に簡単に適応させることが可能である(Jayasena,Clin Chem.45:1628−50(1999))。
【0140】
前述の競合的ELISA結合アッセイでは、候補アプタマーを選別するためのスクリーンは、アプタマーをアッセイに組み込むこと、および、それらの、Dvl PDZドメイン:リガンド結合に対する修飾能力を定量することを含む。
【0141】
(4.抗体(Ab))
リガンド:Dvl PDZドメイン結合を修飾する(例えば、抑制する)抗体は、いずれのものでも、Dvl PDZドメイン−リガンド相互作用の修飾因子(例えば、抑制因子)となることが可能である。適切な抗体の例としては、ポリクロナール、モノクロナール、単一鎖、抗イディオタイプ、キメラ抗体、または、それら抗体またはその断片の、ヒト化変異体が挙げられる。抗体は、適切であれば、どのような供給源、例えば、合成起源、および、免疫反応の誘発可能な任意の動物種を含む供給源から得られたものであってもよい。
【0142】
(スクリーニング法)
本発明は、Dvl PDZ−リガンド相互作用を修飾する化合物を特定するための、化合物スクリーニング法を包含する。スクリーニングアッセイは、Dvl PDZおよび/またはリガンドと結合するか、または複合体形成するか、あるいは、他のやり方で、Dvl PDZと細胞内因子との相互作用に干渉する化合物を特定するように設計される。候補化合物の、修飾因子となるべき能力を定量するための一つの方法は、既知のDvl PDZ結合因子、例えば、本明細書で開示される結合ペプチド(例えば、本実施例に記載される高親和性結合因子)の内のいずれかの存在下における競合的抑制アッセイにおいて、該候補化合物の活性を評価することである。このようなスクリーニングアッセイは、化学ライブラリーの高効率スクリーニングに容易に適応するアッセイを含むので、低分子薬剤候補を特定するためには特に好適である。
【0143】
このアッセイは、各種の方式、例えば、いずれも従来技術で精しく解明されている、タンパク−タンパク結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、イムノアッセイ、および細胞アッセイを含む方式において実行することが可能である。
【0144】
修飾因子のアッセイは全て、Dvl PDZ(または、その等価物)および/または、Dvl PDZとの結合相互作用に関与する結合リガンドに対し、これらの二つの成分が相互作用を持つのに十分な条件と時間において、薬剤候補を接触させることを要求する点で共通する。
【0145】
結合アッセイでは、相互作用は結合であり、形成された複合体は、単離するか、または、反応混合液において検出することが可能である。ある特定の実施態様では、候補物質または分子は、固相、例えば、マイクロタイタープレート上に、共有的または非共有的付着によって固定される。非共有的付着は、一般に、該基質/分子の溶液を固相に塗布し、乾燥することによって実現される。それとは別に、不動化アフィニティー分子、例えば、固定される物質/分子に対して特異的な抗体、例えば、モノクロナール抗体を用いて、該物質/分子を固相表面に固着することも可能である。本アッセイは、検出可能な標識によって標識されてもよい非固定成分を、固定成分、例えば、固着成分を含む塗布表面に加えることによって実行される。反応が完了した時点で、未反応成分は、例えば、洗浄によって除去され、固相表面に固着する複合体が検出される。最初の非固定成分が、検出可能な標識を担っている場合、表面に固定される標識の検出は、複合体形成が起こったことを示す。最初の非固定成分が標識を担っていない場合は、複合体形成は、例えば、固定複合体に特異的に結合する、標識抗体を用いることによって検出することが可能である。
【0146】
もしも候補化合物が、Dvl PDZ、またはその結合パートナーと相互作用は持つが、結合しない場合、それと、ポリペプチドとの相互作用は、タンパク−タンパク相互作用検出のための、周知の方法によって定量することが可能である。そのようなアッセイとしては、従来法、例えば、架橋結合、共時免疫沈降、および、勾配またはクロマトグラフィーカラムによる共時精製が挙げられる。さらに、タンパク−タンパク相互作用は、Chevray and Nathans,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:5789−5793(1991)による開示にしたがって、Fieldsとその共同研究者たち(Fields and Song,Nature(London),340:245−246(1989);Chien et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:9578−9582(1991))によって記載される酵母遺伝システムによって監視することが可能である。酵母GAL4など、多くの転写アクチベーターは、二つの、物理的に別々のモジュラードメイン、一方は、DNA結合ドメインとして作動し、他方は、転写活性化ドメインとして機能する二つのドメインから成る。前述の公刊物に記載される酵母発現システム(一般に、「2ハイブリッドシステム」と呼ばれる)は、この特性を利用し、二つのハイブリッドタンパクを用いる。すなわち、一方では、標的タンパクが、GAL4のDNA結合ドメインに融合され、他方では、候補の活性化タンパクが、活性化ドメインに融合される。GAL4−活性化プロモーター調節下における、GAL1−lacZリポーター遺伝子の発現は、タンパク−タンパク相互作用によるGAL4活性の再構成に依存する。相互作用を持つポリペプチドを含むコロニーは、β−ガラクトシダーゼに対する発色基質によって検出される。この2ハイブリッドシステムを用いて、二つの特異的タンパク間のタンパク−タンパク相互作用を特定するための完全キット(MATCHMAKER(商標))が、Clontechから市販されている。このシステムはさらに拡張させて、特異的タンパク相互作用に関与するタンパクドメインをマッピングするだけでなく、これらの相互作用において必須のアミノ酸残基をそれと名指しすることを可能とする。
【0147】
前述のスクリーニング過程のいずれにおいても、候補化合物について、Dvl PDZ、および既知の高親和性結合因子(例えば、本明細書に記載されるものの内の一つ)に対する、その結合能力を定量することによって、その修飾能力を評価することは多くの場合望ましい。
【0148】
候補化合物は、本明細書に記載される情報、特に、リガンドまたはDvl PDZ配列そのものにおける個々の残基および成分の、Dvl PDZ−リガンド結合相互作用に対する寄与、および該作用における重要性に関する情報に基づいて、既知の結合因子同士の、組み合わせライブラリーおよび/または突然変異から生成することが可能である。
【0149】
Dvl PDZと結合リガンドとの相互作用に干渉する化合物は、下記のようにして調べることが可能である。通常、Dvl PDZおよびリガンドを含む反応混合物が、この二つの分子が相互作用を持ち、結合するのに十分な条件および時間において調製される。この結合相互作用に対する、候補化合物の抑制能力を調べるには、反応を、該試験化合物の不在下、および存在下に進行させる。さらに、陽性コントロールとして使用するために、第3の反応混合物にプラシーボを加えてもよい。試験化合物と、混合物の中に存在するDvl PDZおよび/または結合リガンドとの間の結合(複合体形成)は、前述のようにして監視される。コントロール反応には複合体が形成されるが、試験化合物を含む反応混合物に複合体が形成されないことは、該試験化合物が、Dvl PDZと結合リガンドとの相互作用に干渉することを示す。
【0150】
本明細書に記載されるように、本発明の物質/分子は、ペプチドであることが可能である。そのようなペプチドを獲得する方法は、従来技術で周知であるが、例えば、標的抗原に対する結合因子を選別するためのペプチドライブラリーのスクリーニングが挙げられる。一実施態様では、好適な標的抗原は、もし得られたならば、本明細書に詳述されるDvl PDZ(または、Dvl PDZリガンドに対する結合部位を含む、その部分)を含むと考えられる。ペプチドのライブラリーは、従来技術で周知であり、さらに、従来法にしたがって調製することが可能である。例えば、Clark et al.,米国特許第6,121,416号を参照されたい。ファージコートタンパクなどの異種タンパク成分に融合されたペプチドのライブラリーは、例えば、Clark et al.,上記に記載されるように、従来技術で周知である。一実施態様では、Dvl PDZタンパク−タンパク相互作用を阻止する能力を持つペプチドは、本明細書に開示される結合ペプチドの内のどれかのアミノ酸配列を含む。別の実施態様では、Dvl PDZタンパク−タンパク相互作用を阻止する能力を持つペプチドは、前述の、修飾因子スクリーニングアッセイから得られる結合ペプチドのアミノ酸配列を含む。一実施態様では、ペプチドは、Dvl PDZに対する結合に関して、本明細書に開示される結合ペプチド(実施例参照)の内の一つ以上と競合する能力を持つ。一実施態様では、ペプチドは、本明細書に開示される結合ペプチド(実施例参照)の内の一つ以上が結合する、Dvl PDZ上の同じエピトープに結合する。第1ペプチド結合因子の変異体は、対象特性(例えば、標的結合親和度の向上、薬物動態の向上、毒性の緩和、治療指数の改善など)を獲得するように、ペプチドの突然変異体をスクリーニングすることによって生成することが可能である。突然変異発生技術は、従来技術で周知である。さらに、走査型突然変異発生技術(アラニンスキャニングに基づくものなど)は、ペプチド中の個々のアミノ酸残基の構造的および/または機能的重要性を評価するに際し特に役立つ可能性がある。
【0151】
本発明の候補物質/分子、例えば、本明細書に開示される結合ペプチドのアミノ酸配列を含むペプチドの、Dvl PDZ活性に対する修飾能力の定量は、該物質/分子の修飾能力を、例えば、Martins et al.(J.Biol.Chem.278(49):49417−49427(2003))およびFaccio et al.(J.Biol.Chem.275(4):2581−2588(2000))によって記載される、従来技術で十分に確立されたインビトロまたはインビボアッセイにおいて調べることによって実行することが可能である。
Dvl PDZ結合因子、およびDvl PDZ−リガンド相互作用の修飾因子の使用例
本明細書に記載されるDvl PDZペプチド結合因子の特定および特徴解明は、Dvlタンパクの細胞内機能に関する貴重な洞察をもたらし、かつ、この重要な細胞内タンパクおよびその結合パートナーの間の、インビボ相互作用を修飾するための組成物および方法を提供する。例えば、これらのペプチドおよびその相同体は、Dvl PDZを含む、インビボ結合相互作用の干渉に利用することが可能である。相同体は、本明細書に提供される、十分に特徴解明されたペプチドに関する、その結合および/または機能的特徴に基づいて好適に生成することが可能である。これらのペプチドはさらに、インビボにおけるDvl PDZ複合体を構成する、細胞内および生理的ポリペプチドの解明のために利用することが可能である。
【0152】
本明細書に開示される、十分に特徴が解明された、中等から高度の親和性を持つ、Dvl PDZのペプチド結合因子はさらに、Dvl PDZそのものの、重要な、構造特性の解明のために利用することが可能である。このような知識は、Dvl PDZ配列そのものの修飾に基づく修飾因子の開発を可能にする。本発明は、本明細書に開示される通り、Dvl PDZ結合パートナーに対する結合能力が増強、または低減されたDvl PDZ変異体を提供する。他の変異体も同様に特定することが可能である。
【0153】
本明細書に記載されるリガンドペプチドに基づいて開発された、Dvl PDZ−結合パートナー修飾因子は、対象修飾作用を実現するのに使用することが可能である。例えば、そのような操作として、Dvl PDZドメインと、その認識結合タンパクとの間の会合の抑制が挙げられる。別の例では、そのような操作として、修飾因子のDvl PDZに対する結合の結果として、または、修飾因子による、Dvl PDZドメインとその認識結合タンパク間の会合の強化を通じて、細胞内機能の誘発による協働作用が挙げられてもよい。
【0154】
Dvl PDZの修飾因子のその他の用途としては、Dvlとその会合パートナーに関連する疾患のための診断アッセイ、基質に対する精製用取っ手および錘として作用する、融合タンパクにおけるDvl PDZドメインおよびリガンドの使用が挙げられる。
【0155】
本明細書に記載される、種々の親和度においてDvl PDZドメインに結合することが可能な結合因子の特定は、生物学的に重要なタンパク−タンパク相互作用をインビボにおいて修飾するための、有用な道筋を提供する。従来技術において十分確立されるように、Dvlタンパクは、アポトーシスの調節、および、ミトコンドリアにおけるタンパク品質の調節を含む、重要な生物プロセスに関与する。Dvlタンパクは、タンパク−タンパク結合相互作用に必須と報告されているドメインである、PDZドメインを含む。したがって、この相互作用を修飾することが可能な分子を特定することは、そのような分子および相互作用に関する知識無しには不可能と考えられる、治療的および/または診断的応用および戦略への道を指し示すものである。特定の組織、細胞、器官、または生理的状態におけるDvl PDZ−リガンド相互作用を修飾するために、かつ、ある場合には、該作用の生理的重要性を確かめるため、修飾性化合物(例えば、抑制性、または協働性)を、Dvl PDZドメイン−特異的競合的修飾因子として用いるため、従来技術で既知の適切な投与ルート、例えば、マイクロインジェクション、アンテナペディアペプチドまたは脂質トランスフェクション試薬を介して、生細胞内部に輸送することが可能である。PDZリガンド相互作用、および、該相互作用の修飾の生理的作用を監視するために、適切なアッセイが存在する。これは、修飾因子が、PDZドメインに対して特異的であり、かつ、前記リガンドと、PDZドメインとの相互作用を破るのに十分な親和度を持つことが得られる限り、Dvl PDZドメインに対する生理的リガンドが、ファージディスプレイによって発見されることを要求しない。最後に、病気の進行過程と連結する全てのタンパクの場合と同様、治療利益を実現するためには、薬剤が、そのタンパクにどのように作用するかを確実に明らかにしなければならない。対象修飾性化合物による、Dvl PDZ−リガンド相互作用の破損が、治療利益において予想と一致する結果を生じるかどうかを判定するには、ペプチド/リガンドなどの修飾性化合物を、病気のモデルとなる生細胞または動物モデル(すなわち、病気のある特性を模倣する)の中に輸送してもよい。
【0156】
インビボにおいてタンパク−タンパク(またはペプチド)相互作用を検出する方法は、従来技術において既知である。例えば、Dvl PDZドメイン−含有タンパク(本明細書に記載される任意のものを含む)と、認識リガンドまたは合成ペプチド(本明細書に記載される任意のものを含む)との相互作用を分析するためには、米国特許第6,270,964B1、および6,294,330B1号においてMichnick et al.によって記載される方法を使用することが可能である。さらに、合成ペプチドなどの分子の、Dvl PDZ−ドメインタンパクとその認識リガンドとの、インビボにおける結合相互作用に対する修飾能力を評価するのに、これらの方法を使用することが可能である。
治療/予防応用
Dvl PDZタンパクの活性を上げるか、または下げる特性を持つ化合物は有用である。この活性の上昇は、種々のやり方で生じさせてよく、例えば、それを必要とする対象に、本明細書に記載される修飾因子の一つ以上の有効量を投与することによって生じさせてもよい。
【0157】
「拮抗剤」または「陰性修飾因子」は、Dvl PDZおよび/またはその内因性リガンドの生物活性を、部分的にまたは完全に、遮断、抑制、または中和する任意の分子を含む。同様に、「作用剤」または「陽性修飾因子」は、Dvl PDZおよび/またはその内因性リガンドの生物活性を模倣するか、または強化する任意の分子を含む。作用剤または拮抗剤として活動することが可能な分子としては、本明細書に記載される、Dvl PDZ−結合剤/リガンド相互作用の修飾因子、例えば、ただしこれらに限定されないが、Abまたは抗体断片、Dvl PDZ/リガンド/結合剤、ペプチド、小型有機分子などの修飾因子が挙げられる。
【0158】
本発明は、Dvl PDZと特異的に相互作用を持つことが可能な種々の結合分子の発見、および、Dvl PDZと、リガンド結合ペプチドとの間の結合相互作用の独特の特徴に基づく各種方法を提供する。
【0159】
治療剤として、種々の物質または分子(ペプチドなどを含む)を採用してよい。これらの物質または分子は、製薬学的に有用な組成物を調製し、その産物を、製薬学的に受容可能な担体ベヒクルとの混合を可能とするように既知の方法にしたがって処方することが可能である。治療処方は、所望のレベルの純度を持つ活性成分を、凍結乾燥処方または水溶液形状の、任意に生理的に受容可能な担体、賦形剤、または安定剤(Remington‘s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合することによって調製され、保存される。受容可能な担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる用量および濃度においてレシピエントに対して無毒であり、バッファー、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、およびその他の有機酸;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニールピロリドン、アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリシン;単糖類、二糖類、およびその他の炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、またはデキストリンなど;EDTAなどのキレート剤;糖アルコール、例えば、マンニトール、またはソルビトール;ナトリウムなどの、塩形成対イオン;および/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、またはPEGを含む。
【0160】
インビボ投与に使用される処方は滅菌性でなければならない。これは、凍結乾燥および再構成前または後に、滅菌性ろ過膜でろ過することによって簡単に実現される。
【0161】
本発明の治療組成物は、一般に、滅菌性進入ポートを有する容器、例えば、静注液バッグ、または、皮下針によって貫通することが可能なストッパー付きバイアルの中に納められる。
【0162】
投与ルートは、既知の方法、例えば、静脈内、腹腔内、脳内、筋肉内、眼球内、動脈内、または病巣内ルートによる注入または輸液、局所投与、または、持続放出システムによる投与などの方法に一致する。
【0163】
本発明の製薬組成物の用量および所望の薬剤濃度は、意図する特定の用途に応じて変動してよい。適切な用量または投与ルートの決定は、十分通常の医師の技量の範囲内にある。動物実験は、ヒト治療用有効量決定のための信頼性の高いガイダンスとなる。有効用量の種間補正は、Mordenti,J.and Chappell,W.“The use of interspecies scaling in toxicokinetics”In Toxicokinetics and New Drug Development,Yacobi et al.,Eds.,Pergamon Press,New York 1989,pp.42−96によって敷かれた原理にしたがって実行することが可能である。
【0164】
本発明の物質または分子のインビボ投与を行う場合、正常投与量は、投与ルートに応じて、哺乳動物の体重kg当たり1日約10ngから約100mgまで、好ましくは約1μg/kg/日から10mg/kg/日まで変動してよい。特定の用量および送達法に関するガイダンスは、文献の中に示される;例えば、米国特許第4,657,760;5,206,344;または5,225,212号を参照されたい。異なる治療化合物および異なる障害に対しては、異なる処方が効果的であること、および、例えば、ある器官または組織を標的とする投与は、別の器官または組織を標的とするものとは異なるやり方の送達を必要とする場合のあることが予想される。
【0165】
物質または分子の投与を要求する疾患または障害の治療に好適な放出特性を持つ処方において、該物質または分子の持続放出が望まれる場合、該物質または分子のマイクロカプセル封入が考慮される。持続放出のための、組み換えタンパクのマイクロカプセル封入はヒト成長ホルモン(rhGH)、インターフェロン(rhIFN−)、インターロイキン−2、およびMN rgp120で実行され成功を収めている。Johnson et al.,Nat.Med.,2:795−799(1996);Yasuda,Biomed.Ther.,27:1221−1223(1993);Hora et al.,Bio/Technology,8:755−758(1990);Celand,“Design and Production of Single Immunization Vaccines Using Polyactide Polyglycolide Microsphere Systems,”in Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach,Powell and Newman,eds,(Plenum Press:New York,1995),pp.439−462;国際公開第97/03692、96/40072、96/07399、および米国特許第5,654,010号。
【0166】
これらのタンパクの持続放出処方は、その、生物適合性および広範な生物分解性のためにポリ乳酸−コグルコール酸(PLGA)ポリマーを用いて開発された。PLGAの分解産物、乳酸およびグルコール酸は、人体から速やかに排除することが可能である。さらに、このポリマーの分解性は、その分子量および組成に応じて、数ヶ月から数年に亘って調整することが可能である。Lewis,“Controlled release of bioactive agents from lactide/glycolide polymer,”in:M.Chasin and R.Langer(Eds.),Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems(Marcel Dekker:New York,1990),pp.1−41.
(製薬組成物)
本発明の修飾性分子/物質は、ある実施態様では、製薬使用に好適な組成物の中に組み込むことが可能である。このような組成物は、典型的には、核酸分子、ペプチド/タンパク、低分子および/または抗体、および、受容可能な担体、例えば、製薬学的に受容可能なものを含む。「製薬学的に受容可能な担体」は、製薬学的投与と適合する限り、任意の、全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む(Gennaro,Remington:The science and practice of pharmacy.Lippincott,Williams & Wilkins,Philadelphia,PA(2000))。このような担体または希釈剤の例として、ただしこれらに限定されないが、水、生理的食塩水、リンゲル液、デキストロース液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。リポソーム、および、固定油などの非水性ベヒクルも使用してよい。通例の媒体または薬剤は、活性化合物と不適合である場合を除いて、これら組成物の使用も考慮の対象とされる。この組成物の中に、補助的活性化合物を組み込むことも可能である。
【0167】
(1.一般的配慮)
製薬組成物は、その意図される投与ルート、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸引)、経皮(すなわち、局所)、経粘膜、および直腸投与などのルートと適合するように処方される。非経口、皮内、または皮下投与用に使用される溶液または縣濁液は:滅菌希釈液、例えば、注射用水、生理的食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなど;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなど;キレート剤、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)など;バッファー、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩など、および、浸透圧調整剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースなどを含むことが可能である。pHは、酸または塩基、例えば、塩酸、水酸化ナトリウムなどによって調整することが可能である。非経口調剤は、アンプル、ディスポーザブルシリンジ、または、ガラスまたはプラスチック製の多用量バイアルの中に封入することが可能である。
【0168】
(2.注入処方)
注入に好適な製薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性である場合)または水性分散液、および、滅菌注入用溶液または分散液の、体外調製用滅菌散剤を含む。静脈内投与の場合、好適な担体としては、生理的食塩水、静菌水、CREMOPHOR EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)、またはリン酸バッファー生理的食塩水(PBS)が挙げられる。いずれの場合でも、組成物は、滅菌性であり、シリンジによって投与されるように液体でなければならない。このような組成物は、製造および保存時安定であり、細菌および真菌などの微生物による汚染に対して保護されていなければならない。担体は、溶媒または分散媒体、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール、および液状ポリエチレングリコール)、および、適切な混合物などであることが可能である。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合は必要粒径の維持、および界面活性剤の使用によって維持することが可能である。種々の抗菌剤および抗真菌剤:例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、およびチメロサールを、組成物の中に含めることが可能である。等張剤、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール類、および塩化ナトリウムを組成物の中に含めることが可能である。吸収を遅らせることが可能な組成物は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの薬剤を含む。
【0169】
滅菌注入液は、必要量の活性化合物(例えば、本発明の、いずれかの修飾性物質/分子)を、必要に応じて一成分または複数成分の組み合わせと共に適切な溶媒に組み込み、次いで滅菌処理することによって調製することが可能である。一般に、分散液は、基礎的分散媒体、および他の必要成分を含む滅菌ベヒクル中に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注入液調製のための滅菌散剤、調製法は、滅菌液から、活性成分、および任意の所望成分を含む散剤を生成する、真空乾燥および凍結乾燥を含む。
【0170】
(3.経口組成物)
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤、または食用可能な担体を含む。組成物は、ゼラチンカプセル内に封入すること、または、錠剤に圧縮することが可能である。経口性の治療投与のためには、活性剤は、賦形剤とともに組み込み、錠剤、トローチ、またはカプセルの形で使用することが可能である。経口組成物はさらに、含漱剤として使用される液状担体を用いて調製することも可能である。この場合、液状担体中の化合物は、経口的に投与される。製薬学的に適合する結合剤、および/または補強物質を含めることも可能である。錠剤、丸剤、カプセル、トローチなどは、下記の成分、または類似の性質を持つ化合物:結合剤、例えば、ミクロ結晶セルロース、トラガカントゴム、またはゼラチンなど;賦形剤、例えば、でん粉またはラクトース、崩壊剤、例えば、アルギン酸、PRIMOGEL、またはコーンスターチなど;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、またはSTEROTESなど;滑沢剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素など;甘味剤、例えば、スクロース、またはサッカリンなど;または芳香剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料などを含むことが可能である。
【0171】
(4.吸引用組成物)
吸引による投与では、化合物は、適切な推進剤、例えば、二酸化炭素などのガスを含む、ネビュライザーまたは加圧容器からエロゾル小滴として送達される。
【0172】
(5.全身投与)
全身投与は、経粘膜的、または経皮的であってもよい。経粘膜または経皮投与の場合、標的障壁を浸透することが可能な浸透物質が選ばれる。経粘膜浸透物質としては、界面活性剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与用として、鼻腔スプレイ、または座剤を使用することが可能である。経皮投与の場合、活性化合物は、軟膏、塗布剤、ゲル、またはクリームとして処方される。
【0173】
化合物はさらに、直腸送達のために、座剤(例えば、ココアバターおよび他のグリセリドなどを基材として)、または注腸剤として調製することも可能である。
【0174】
(6.担体)
一実施態様では、活性化合物は、該活性化合物が急速に生体から排除されないように保護する担体と共に、例えば、インプラント、およびマイクロカプセル封入送達システムなどの調節放出処方として調製される。生物分解性または生物適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニール、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエーテル、およびポリ乳酸などのポリマーを使用することが可能である。このような材料は、ALZA Corporation (Mountain View,CA)、およびNOVA Pharmaceuticals,Inc.(Lake Elsinore,CA)から購入することも可能であるし、あるいは、当業者であれば調製することが可能である。さらに、製薬学的に受容可能な担体として、リポソーム縣濁液を使用することが可能である。これらは、(Eppstein et al.,米国特許第4,522,811号、1985)に見られるように、当業者に既知の方法にしたがって調製することが可能である。
【0175】
(7.単位剤形)
投与および用量の均一性をより簡便に確保するために、単位剤形としての経口処方または非経口組成物を創製することが可能である。単位剤形とは、必要な製薬担体と関連させて、治療的有効量の活性化合物を含む、治療される対象に対する単位用量として適切な、物理的に独立した単位を指す。単位剤形の仕様は、活性化合物独自の特性、所望の特定の治療作用、および、活性化合物の調合における内在的限界によって指定され、かつ直接に依存する。
【0176】
(8.遺伝子療法組成物)
核酸分子は、ベクターに挿入し、遺伝子治療ベクターとして使用することが可能である。遺伝子治療ベクターは、対象に対し、例えば、静注、局所投与(Nabel and Nabel,米国特許第5,328,470号、1994)、または、定位注入(Chen et al.,Proc Natl Acad Sci USA.91:3054−7(1994))によって送達させることが可能である。遺伝子治療ベクターの製剤は、受容可能な希釈剤を含むことが可能であり、または、遺伝子送達ベヒクルが埋め込まれる、徐放性基質を含むことが可能である。それとは別に、組み換え細胞から、完全遺伝子送達ベクターが、例えば、レトロウィルスベクターが生産可能である場合には、製剤は、該遺伝子送達システムを生産する一つ以上の細胞を含むことが可能である。
【0177】
(9.用量)
製薬組成物および方法はさらに、Dvlタンパク関連(具体的には、Dvl PDZ−関連)病態の治療に通常投与される、他の、治療活性化合物を含んでもよい。
【0178】
Dvl PDZ−リガンド修飾を要する、病態の治療または予防では、適切な用量レベルは、一般に、患者の体重kg当たり、1日、約0.01から500mgであり、これを、単回、または複数回用量として投与することが可能である。用量レベルは、1日当たり約0.1から約250mg/kgであることが好ましく;より好ましくは、1日当たり約0.5から約100mg/kgである。適切な用量レベルは、1日当たり約0.01から250mg/kg、1日当たり約0.05から100mg/kg、または1日当たり約0.1から50mg/kgであってもよい。この範囲内で、用量は、1日当たり、0.05から0.5、0.5から5、または5から50mg/kgであってもよい。経口投与では、組成物は、治療される患者に対し、用量の症状に応じた調節を可能とするために、1.0から1000ミリグラムの活性成分、特に、1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0、および、1000.0ミリグラムの活性成分を含む錠剤として提供されることが好ましい。化合物は、1日当たり1から4回、好ましくは1日当たり1回から2回の投与スケジュールに基づいて投与されてもよい。
【0179】
ある任意の、特定の患者に対する、特定の用量レベルおよび投与頻度は、変動してもよいが、該レベルおよび頻度は、種々の要因、例えば、用いられる特定の化合物の活性、その化合物の代謝的安定性および活性の長さ、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食餌、投与方式および時間、排泄速度、薬剤併用、特定の病態の重度、および治療を受ける宿主などの要因に依存する。
【0180】
(10.組成物のキット)
組成物(例えば、製薬組成物)は、投与案内と一緒に、キット、容器、パック、または投薬器に含めることが可能である。キットとして販売される場合は、組成物の異なる成分は、別々の容器にパックされ、使用直前に混ぜ合わされてもよい。種々の成分をこのように分けて包装することは、活性成分の機能を欠損することのない、長期の保存を可能とすると考えられる。
【0181】
キットはさらに、特定の試験、例えば、診断試験、または組織タイピングなどの実施をやり易くするように、別々の容器に試薬を含んでもよい。
【0182】
(a)容器または貯蔵槽
キットに含まれる試薬は、種々の成分の寿命が保存され、容器の材料によって吸着されたり、改変されたりすることのないように、任意の種類の容器に入れられて支給される。例えば、密封ガラスアンプルは、窒素などの、中性の、非活性ガスの下で包装された、凍結乾燥修飾性物質/分子、および/またはバッファーを含んでもよい。アンプルは、適切なものであれば、いずれの材料から、例えば、ガラス、有機ポリマー、例えば、ポリカーボネート、ポリスチレンなど、セラミック、金属、または、その他の、試薬を保持するために通常用いられる任意の材料から作製されてもよい。適切な容器の、その他の例としては、アンプルと同様の物質から製造される単純な瓶、および、例えば、アルミニウムまたは合金などのフォイルで裏打ちした内面から成る包袋が挙げられる。他の容器としては、試験管、バイアル、フラスコ、瓶、シリンジなどが挙げられる。容器は、皮下針によって貫通することが可能なストッパー付き瓶のように、滅菌性進入ポートを有する。他の容器は、簡単に排除することが可能な膜で、排除されると、成分同士の混合を可能とする膜によって隔てられる二つの区画を有していてもよい。排除可能な膜は、ガラス、プラスチック、ゴムなどであってもよい。
【0183】
(b)案内資料
キットはさらに、案内資料と一緒に支給されてもよい。案内は、紙または他の基質の上に印刷されてもよく、および/または、電子読み取り媒体、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、ジップディスク、ビデオテープ、レーザーディスク、オーディオテープなどとして支給されてもよい。詳細な案内は、キットと物理的に連結される必要はなく、代わりに、メーカーまたはキットの販売業者の指定する、インターネットのウェブサイトを、ユーザーに教示してもよいし、あるいは、電子メールとして供給してもよい。
【0184】
下記の実施例は、本発明の好ましい実施態様を実際に示すために含まれるものである。下記の実施例に開示される技術は、本発明の実施において十分に機能することが本発明人らによって見出された技術を代表するもので、その実施のための好ましい方式を構成すると見なすことができるものであることを、当業者は理解しなければならない。しかしながら、本明細書の開示に照らして、開示される特定の実施態様において、多くの改変を実行することが可能であり、かつ、類似の、または同様の結果を実現することが可能であるが、それらは依然として本発明の精神および範囲から逸脱していないことを、当業者は理解すべきである。
【実施例】
【0185】
(材料および方法)
材料−酵素およびM13−KO7ヘルパーファージは、New England Biolabs(Ipswich,MA)から購入した。Maxisorp免疫プレートは、Nalgen NUNC International(Naperville,IL)から購入した。大腸菌(E.coli)XL1−Blue、およびE.coli BL21(DE3)は、Stratagene(La Jolla,CA)から購入した。プラスミドpGEX、西洋ワサビペルオキシダーゼ/抗−GST抗体接合体、グルタチオンセファロース−4B、およびSuperdex−75は、Amersham Pharmacia Biotech(Piscataway,NJ)、3,3′,5,5′−テトラメチル−ベンジジン/H(TMB)ペルオキシダーゼ基質は、Kirkegaard and Perry Laboratories,Inc.(Gaitherburg,MD)から購入した。NeutrAvidinは、Pierce Biotechnology,Inc.(Rockford,IL)から購入した。抗−Dvl1,2,3は、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA)から購入した。ポリクロナール抗β−カテニンは、Genetech,Inc.(South San Francisco,CA)から、ヒトの非小細胞肺癌細胞系統H1703は、米国基準株保存機関(Manassas,VA)から入手した。FuGene6は、Roche Molecular Biochemicals(Mannheim,Germany)から購入した。リポフェクタミンは、Invitrogen(Carlsbad,CA)から購入した。Alamar Blue(商標)は、Pierce Biotechnology,Inc.(Rockford,IL)から購入した。
【0186】
オリゴヌクレオチド−等モルのDNA縮重は、IUBコードで表した(K=G/T、N=A/C/G/T、V=A/C/G、W=A/T)。縮重コドンはボールド体で示す。ファージ表示ペプチドライブラリーの構築には、下記のオリゴヌクレオチド:
X10a:ACATCGACAGCGCCCCCGGTGGCGGA(NNK)10TGATAAACCGATACA(配列番号__)
を用いた。
【0187】
合成ペプチド−ペプチドは、標準的9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)プロトコールを用いて合成し、トリフルオロ酢酸に溶解した、2.5%トリイソプロピルシランおよび2.5%HOによって樹脂から切断分離し、逆相高速液体クロマトグラフィーによって精製した。各ペプチドの純度および質量は、液体クロマトグラフィー/質量分析によって確認した。
【0188】
ライブラリー構築およびソーティング−ペプチドライブラリーは、記載される多価ディスプレイ[10]用に設計された、変異M13大型コートタンパクのC末端に対する融合体として表示させた。N−末端ライブラリーは、前述の通りに構築した[11]。各ライブラリーは、2×1010種の一意のメンバーを含んでいた。
【0189】
ライブラリーは、捕捉標的として96ウェルのMaxisorp免疫プレートに塗布されたGST−Dvl2PDZ融合タンパクによる、数ラウンドの結合選択をサイクル経過させた。ファージは、M13−KO7ヘルパーファージおよび10μM IPTGと共に、E.coliXL1−blueにおいて継代させた。4ラウンドの結合選択後、個々のファージクローンを、高処理ファージELISAで分析し、陽性クローンに対しDNA配列分析を行った。
【0190】
タンパク精製−メーカーの推薦にしたがって、GST−Dvl2PDZ融合タンパクを生産し、pGEX E.coli発現システムを用いて精製した。Dvl2PDZドメインについては、完全長Dvl2のアミノ酸248−364に亘るタンパク断片が生産された。
【0191】
アフィニティーアッセイ−Dvl2PDZに対するペプチドの結合親和度を、前述[12]のように、競合ELISAを用いIC50値として定量した。IC50値は、固定ペプチドに対する、PDZドメインの結合の50%を阻止する、ペプチドの濃度と定義された。アッセイプレートは、ニュートロアビジンを塗布し、BSAでブロックしたMaxisorp免疫プレートの上に、アミノ末端ビオチニル化ペプチド(KWYGWL−COOH)を固定することによって調製した。一定濃度のGST−PDZ融合タンパク(600nM PBS液、0.5%BSA、0.1%Tween20(PBTバッファー)を、あらかじめ1時間ペプチドの連続希釈液とインキュベートし、次いで、アッセイプレートに移した。15分のインキュベーション後、プレートを、PBS、0.05%Tween20で洗浄し、PBTバッファーに溶解した、抗GST抗体(0.5μg/ml)および西洋ワサビペルオキシダーゼ/ウサギ抗マウスIgG抗体接合体(1:2000希釈)とインキュベートし、再び洗浄し、TMBペルオキシダーゼ基質によって検出した。
【0192】
合成ペプチドの結合親和度はさらに、蛍光偏光アッセイによっても測定した。精製Dvl2PDZドメインポリペプチド(1−10μM)の連続希釈を、96ウェル暗黒HE96プレート(LJL Biosystems,Inc.CA)において30μl容量としたPBS、0.1%TritonX100において、10nMプローブペプチド(FAM−KWYGWL−COOH)と、室温で15分インキュベートした。偏光度計測は、Analystプレートリーダー(LJL Biosystem,Inc.,Sunnyvale,CA)において実行した。このアッセイから、KaleidaGraph(商標)との非直線性回帰適合によってKs=536nMが得られた。10nMプローブおよび1μM Dvl2PDZを含む溶液に、遊離ペプチドの連続希釈(0−500μM)を加えて競合実験を行った。偏光度を測定し、IC50を前述のようにして得た。Ki値は、前述[15]のようにして計算した。
【0193】
プルダウンアッセイ−GSTまたはGST−DVLpep融合タンパク(ペプチドGGGKWYGWLに対し、そのC末端で融合させたGST)を、標準プロトコールにしたがってグルタチオンセファロース−4Bに結合させ、結合タンパクを、標準として既知量のBSAを用いてSDS−PAGEによって定量した。タンパク(2−10μg)を担持するビーズを、HEK293S細胞抽出物と4℃で一晩インキュベートした。この細胞抽出物は、細胞をSJC分解バッファー中で分解することによって調製したものである。全体タンパク濃度を、BCAタンパクキット(Promega;Madison,WI)によって定量し、1mg/mlに正規化した。このビーズを、洗浄バッファー(PBS、0.5%BSA、0.1%Tween20)で10回洗浄し、SDSサンプルバッファー中に再縣濁し、90℃で10分インキュベートし、上清に、SDS−PAGEを行った。結合タンパクを、抗Dvl1および抗Dvl3によってブロットし、Li−core(商標)によって分析した。
【0194】
細胞培養、トランスフェクション、およびペプチド処理:HEK293およびH1703を、米国基準株保存機関の案内にしたがって継代した。HEK293細胞に、メーカー(Roche Molecular Boichemicals)の指示にしたがって、50%の細胞集密度においてFuGene6をトランスフェクトした。H1703細胞に、メーカーの指示にしたがって、50%の細胞集密度においてLipofectamineをトランスフェクトした。トランスフェクション後、細胞を、ペプチドを含む媒体(5μM−40μM)で24時間処理し、通例にならって、ペプチド処理の24時間後に収集し、その後のアッセイに備えた。
【0195】
TOPGLOWアッセイ:細胞を、12ウェルプレートにプレートした。TOPGLOWリポータープラスミドを、前述のように、細胞に一過性にトランスフェクトさせた。pRLリポーター(共トランスフェクトさせた内部コントロール)の、ルシフェラーゼ比活性に対して正規化された、pTOPGLOWルシフェラーゼ活性によってTCF介在遺伝子転写を定量した。実験は全て二重に行った。
【0196】
ウェスタンブロット:収集した細胞は、SJC分解バッファーにて分解し、上清にSDS−PAGEを行ない、展開し、停止し、標準的ウェスタンブロットプロトコールにしたがって、適切な一次抗体によってブロットした。蛍光標識された二次抗体(Alexaヤギ抗マウスまたは抗ウサギ)を加え、結果を、Li−core(商標)によって分析した。
【0197】
細胞生存率アッセイ:細胞を、遮光96ウェルプレートに三重に撒き、0日目、種々の用量のペプチドで処理し、5%COを含む高湿インキュベーターにて37℃でインキュベートした。72時間後、メーカーの指示にしたがってAlamar Blueアッセイを行った。細胞増殖プロフィールのために、細胞を、遮光96ウェルプレートに三重に撒き、0日目、10μMペプチドまたはDMSOで処理し、24、48、および72時間後に、細胞生存率をAlamar Blueアッセイによって測定した。
【0198】
(結果)
Dvl2PDZ−に対する結合について選択されたペプチド 前述[12]のようにして、ファージディスプレイ・ペプチドライブラリーを用いてDvl2PDZに結合するリガンドを選別した。我々は、ファージコートタンパクのC−末端またはN−末端に融合させたデカペプチドライブラリーを用いた。ライブラリーは、20種全てのアミノ酸をコードするNNK縮重コドンを含んでいた。さらに、縮重コドンにおいてアンバー終結コドンが出現する可能があるが、その出現が、C末端ライブラリーにおいて比較的短いペプチドのディスプレイをもたらす。各ライブラリーは、捕捉標的として固定したGST−Dvl2PDZ融合タンパクを用い4ラウンドの結合選別をサイクル経過させた。
【0199】
C−末端ライブラリーから得られた90クローンの配列を決定したところ、独特の結合モチーフが明らかにされた(図1A)。この結合モチーフは、高度に保存された、−2位置にGly、−1位置にTrp/Tyr、0位置にPhe/Leu、および−3位置に疎水性または芳香族残基を含む。興味深いことに、この結合モチーフは、C.elegansのオーソロガスdisheveledタンパクの中に保存されている(データ示さず)。
【0200】
N−末端ライブラリーから得られた127クローンの配列を決定したところ、4種類の内部結合モチーフが明らかにされた(図1B)。IおよびII型モチーフは、C−末端ライブラリーから得られたものと同様である。本明細書における参照の都合のために、我々は、この共通配列に対し、同じ、番号位置決めシステムを表示した。すなわち、I型およびII型のコア配列は、Tyr−3Gly−2Trp−1[Ile/Val]である(図1B)。この二つのモチーフは、位置0に続く残基において異なる。I型では、トリ−グリシンリンカーが、必ず、Ile/Val0に続くが、一方、II型は、位置1には高度に保存されるAspを有し、それに続いてトリ−グリシンリンカーが来る。さらに、I型は、−4位置では、Aspに対しII型よりもやや大きな嗜好性を有する。
【0201】
III型およびIV型モチーフは、全く異なる結合パターンを示す。これら二つのタイプは、コアのWXDXPモチーフを共有するが、大きな違いは、X、および側接位置に見られる。前述と同じ番号位置決めシステムを用い、我々は、コア位置をTrp−1Aspと表示する。III型モチーフは、位置0ではSer/Thrを、位置2ではIle/Phe/Leuを、位置―2ではLeuを、位置−3では多くの場合Leu/Valを好むが、一方、IV型モチーフは、位置0ではIle/Valを、位置2ではGlyを、位置―2ではプロミスカス(アミノ酸の変異体)、位置−3では多くの場合Gluを好む。両タイプにおいて位置3でもっとも保存されるProは、リガンドおよびDvl PDZドメイン間の、このような相互作用のためには、構造的ペプチドが必要とされることを示す。Trpは、全てのタイプのDvl PDZリガンドにおいて保存される。これは、Trpが、リガンド結合のための固着点の役割を担うことを示唆する。高度に保存されるAspは、PDZドメインと、遊離カルボキシル基との間の標準的相互作用を模倣するものと考えられる。III型モチーフとIV型モチーフの間に見られる、位置−3、−2、0、および/または2における差は、これらの位置の結合配位が、これらのリガンドの異なる特異性と関連することを示唆する。
【0202】
合成ペプチドによるアフィニティーアッセイ 優性選択配列(KWYGWLCOOH(D1))に一致するペプチド、および単一突然変異を持つその誘導体、および、N−末端伸長体(D2−4)を合成し、Dvl2PDZに対する結合に関して定量した(表I)。ペプチドD1は、高い親和度(IC50=1.3μM)の下に結合したが、一方、0位置においてLeuをPheで置換させたペプチド(D2)は、ほぼ同様の親和度(IC50=0.93μM)において結合した。さらに、リガンドの上流位置における、疎水性または芳香族残基、特に、Trpは、−6位置においてTrp伸長を持つペプチド(D3およびD4)に見られるように、結合親和度を顕著に増すことが可能であった。これらのペプチドの結合親和度は、最大10倍まで強化された。Wongらは、Frizzled内部ペプチドリガンドと、DvlPDZとの間の結合親和度は9.5μMであること、および、この相互作用は、Wntシグナル伝達において重要な役割を果たすことを報告している[3]。我々のファージ由来DvlPDZペプチドリガンドは、DvlPDZに対し、生得の相互作用に比べ、最大100倍高い親和度の下に結合する、したがって、Wntシグナル伝達経路に対する拮抗剤の可能性を有する。
【0203】
表I.Dvl2PDZに対する合成ペプチド結合のIC50
IC50値は、競合ELISAにおいて、固定される高親和性ペプチドリガンドに対するDvlPDZ結合の50%を阻止する、ペプチドの平均濃度と定義される。ペプチドシリーズのN−末端はアセチル化された。
【0204】
【表1】

[YLFI]G[WMFY][FL]COOHの共通モチーフによるデータベース探索から、我々は、Dvlに対する、可能な天然リガンドを特定した。すなわち、YAKGFGMLCOOHのC−末端配列を含む、ヒトのユビキチンタンパクリガーゼE3A(UBE3A)である。この配列に一致する6ペプチド(KGFGMLCOOH)を合成し(D5)、親和度を定量した。このペプチドのDvl2PDZに対する結合親和度は、D1またはD2に比べてはるかに弱く(IC50=242μM)、これは、−1位置におけるTrpが、緊密な結合においてエネルギー的に重要であることを示す。とはいうものの、MagiPDZ2−PTPN相互作用に関する以前の研究に基づくと、200μMにおけるタンパク−リガンド相互作用でも生物学的に関係性があると考えられるので、UBE3AとDvlとの間にも弱い相互作用のあることが可能である。
【0205】
蛍光偏光アッセイを用いて、DvlPDZに対する、二つの内部ペプチドリガンドN2およびN3の親和度を測定した。表II参照。この方法によって測定されたD1のKi値は725nMであるが、これは、競合ELISAによって測定したIC50値と一致する(表I)。N2とD1のモチーフは極めて近似するので、DvlPDZに対するN2の親和度もD1と近似するが(Ki=1.2μM)、一方、N3は、D1およびN2とははっきりと異なる結合モチーフを持ち、かつ、N3の親和度(Ki=4.6μM)は、D1のものよりも6倍低い。これは、DvlPDZドメインとN3リガンドの間の結合パターンが、D1またはN2のものとは異なることを示す。
【0206】
表II.合成ペプチドのDvl2PDZに対する結合に関して蛍光偏光アッセイによって測定したKi値。Ki値は、「材料および方法」において記載したように測定し、計算した。ペプチドシリーズのN−末端はアセチル化された。N2およびN3のC−末端はアミド化された。
【0207】
【表2】

DvlPDZペプチドリガンドは、3種全ての内因性Dvlと相互作用を持つ 3種のDisheveledタンパク(Dvl1、Dvl2、およびDvl3)をコードする、3種のヒト遺伝子がある。これらのタンパク間に見られる全体相同性は約60%である。特に、三つのDvlタンパクのPDZドメインは、互いに極めて相同である(>85%)(図2A)。したがって、ペプチドD1は、Dvl2PDZに対する、ファージ由来のリガンドではあるが、我々は、これは、他の二つのDvl PDZドメインにも結合する可能性が高いと考えた。D1が、インビボで、三つ全ての内因性Dvlタンパクに結合することが可能であることを確かめるために、GSTのC−末端を、3Gly連結によってD1配列に融合させたGST融合構築体(GST−Dvlpep)を構築し、グルタチオンセファロース4Bに接合させた。HEK293の細胞分解物は、GST単独、または、GST−Dvlpep接合ビーズのいずれかによってプルダウンされた。予想通り、三つ全ての内因性Dvlが、HEK293の未精製細胞分解物の中に検出され、GST−Dvlpepによってプルダウンされた(図2B)。
【0208】
DvlPDZペプチドリガンドによる、標準Wnt経路の抑制 Wntシグナル伝達に反応する細胞に対する、DvlPDZペプチドリガンドの作用を調べるために、我々は、DvlPDZに対する細胞進入性ペプチドリガンドを合成した。リガンドは、下記:
(i)Ac−RQIKIWFQNRRMKWKKKWYGWL(DVLp_C),
(ii)Ac−RQIKIWFQNRRMKWKKGWKDYGWIDG(DVLp_N2),
(iii)Ac−RQIKIWFQNRRMKKGEIVLWSDIPG(DVLp_N3),
(iv)Ac−RQIKIWFQNRRMKWKKGSGNEVWIDGPG(DVLp_N4);および、
(v)Ac−RQIKIWFQNRRMKWKK(PEN)――細胞進入性配列のみの陰性コントロールペプチド
の配列を有する。
【0209】
我々は、標準的TopGlowアッセイを用いてこの作用を調べた。HEK293細胞に、TopGlow遺伝子をトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後、種々の用量のペプチドDVLp_C、DVLp_N2、DVLp_N3、DVLp_N4、またはPEN(媒体において5−20μM)で処理した。最大20μMまでの濃度において、4種のDvlPDZペプチドリガンドの内2種、DVLp_CおよびDVLp_N3が、Wnt3a−刺激転写活性を有意に抑制し(図3A)、その抑制作用は、用量依存性であった(図3Bおよび3C)。特に、DVLp_N3は、Wnt3a刺激転写活性を最大80%まで抑制することができたが、一方、DVLp_Cは、約50%の抑制を実現した。PEN処理細胞は、抑制作用を示さなかった。図3を参照されたい。我々はさらに、DMSO、DVLp_C、DVLp_N3、またはPENによる処理について、全体細胞分解物におけるβカテニンレベルを比較し、DVLp_CおよびDVLp_N3処理細胞は、DMSOおよびPEN処理細胞に比べ、Wnt3a刺激に対するβカテニンレベルが有意に低いことを見出した。図3Dおよび3Eを参照されたい。DvlPDZリガンドペプチド処理による、Wnt刺激性βカテニンシグナル伝達の抑制、および、βカテニンタンパクレベルのWnt刺激性増加の低下は、DvlPDZドメインが、標準的Wnt/βカテニンシグナル伝達経路に関与する相互作用に深く関わることを示唆する。なぜなら、該シグナル伝達経路に対し、例えば、DvlPDZペプチドリガンド、DVLp_CおよびDVLp_N3は、拮抗作用を及ぼすことが可能だからである。
【0210】
DvlPDZのペプチドリガンドは、癌細胞の増殖を抑える。非小細胞肺癌(NSCLC)の腫瘍サンプルにおける(8個の内6個)Dvl3の過剰発現が報告されている[7]。siRNAによるDvl3の抑制は、Wnt刺激によるβカテニンシグナル伝達を阻止し、NSCLC細胞系統NCI−H1703の増殖を抑えることが示された[7]。NSCLC細胞系統に対するDvlPDZペプチドリガンドの作用を評価するために、NCI−H1703をDVLp_Cで処理し、Wnt−刺激性βカテニンシグナル伝達をTopGlowアッセイで測定した。HEK293S細胞同様、NCI−H1703のTcf刺激性転写活性も、DVLp_C処理によって著明に抑制された(図4)。NSCLC細胞の増殖に対する、DvlPDZペプチドリガンドの作用を調べるために、我々は、NCI−H1703細胞を、DVLp_CまたはPENによって、0日目、0、2.5μM、5μM、10μM、および20μMの用量で72時間インキュベートし、細胞の生存率を、前述のようにAlamarブルーによって評価した。Wnt3a刺激の無い場合、DVLp_C処理細胞は、10μMを超えるペプチド用量で、PEN−処理細胞よりもはるかに低い生存率を示したが、Wnt3a刺激下では、DVLp_C処理細胞の、PEN処理細胞よりも低い生存率は、5μMのペプチド用量で観察することができた(図5A)。さらに、図5Bに示すように、DVLp_C処理NCI−H1703細胞の細胞増殖は、DMSOまたはPEN処理細胞のものよりもはるかに低かった。これらの結果は、本明細書に記載される、高親和性DvlPDZペプチドリガンドは、NSCLC細胞などの腫瘍細胞の増殖を効果的に抑制することを示した。
【0211】
(結論)
ファージから得られたDvlPDZペプチドリガンドは、インビトロにおいてDvl2PDZに対し高い親和度を示し、その親和度は、Dvl PDZドメインと、その天然リガンド、FrizzledのC−末端領域の内部配列との間の、報告される結合親和度[3]よりも約100倍も高かった。本明細書に報告されるデータは、二つの細胞浸透性DVlPDZペプチドリガンド(DVLp_CおよびDVLp_N3)が、HEK293Sにおいて、かつ、一つ(DVLp_C)は、NCI−H1703においても、Wnt−刺激β−カテニンシグナル伝達を阻止することを示す。特に、DvlPDZペプチドリガンドDVLp_Cによる、非小細胞肺癌細胞系統NCI−H1703の、Wnt−刺激β−カテニンシグナル伝達の阻止は、細胞増殖を効果的に抑制した。本明細書に記載される、ファージ誘導DvlPDZペプチドリガンドは、癌治療のための、低分子リードとなり得、さらに、診断および治療に用いられる、さらに新たなDvl PDZ修飾因子の特定に使用することが可能である。
【0212】
(引用文献一覧)
【0213】
【数1】

【0214】
【数2】

【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】ファージディスプレイライブラリーから選別されたDvl PDZ結合ペプチド。これらの配列は、p8ファージコートタンパクのC−末端(A)または(B)N−末端に対して融合させたライブラリーから選別された。ペプチドリガンドにおける位置は、C−末端側からN−末端側へ、0、−1などと表示される。
【図2】図2A。ヒトのDvl−1、−2、および−3のPDZドメインの配列整列。同一塩基は暗黒陰影で強調し、類似塩基は灰色陰影で強調した。 図2B。Dvl PDZペプチドリガンドは、三つ全ての内因性Dvl(すなわち、1、2、3)をプルダウンすることが可能である。 HEK293S細胞の細胞分解物を調製し、全体タンパク濃度を、1mg/mlに正規化した。GSTまたはGST−DVLpep融合タンパクをグルタチオンセファローズ4Bに結合させた。タンパクを担持する(2−10μg)ビーズを、HEK293S細胞の細胞抽出物と4℃で一晩インキュベートした。このビーズを、洗浄バッファー(PBS、0.5%BSA、0.1%Tween20)で10回洗浄し、SDSサンプルバッファーに再縣濁し、90℃で10分インキュベートし、上清にSDS−PAGEを行った。さらに、未精製細胞抽出物にも、同じSDS−PAGEを行った。Dvlタンパクを、抗Dvl1、抗Dvl2、および抗Dvl3でブロットした。
【図3A】DvlPDZペプチドリガンド、DVLp_CおよびDvlp_N3は、HEK293S細胞のβカテニンシグナル伝達におけるWnt刺激による上昇を有意に阻止した。 HEK293S細胞に、pRLリポーターと結合させたリポータープラスミドpTOPGLOWをトランスフェクトした。細胞抽出物を調製し、ルシフェラーゼ活性を測定した。ルシフェラーゼの相対単位(RLU)は、TopGlowルシフェラーゼ活性を、Renilaルシフェラーゼ活性で割った商である。活性倍数は、Wnt3a刺激細胞と、非刺激細胞との間のRLU比である。細胞は、10μM(明色バー)、または20μM(暗色バー)のペプチドリガンドによって処理した。
【図3B】HEK293S細胞におけるβカテニンシグナル伝達のWnt刺激上昇の、Dvlp_Cによる抑制は、用量依存性であった。
【図3C】HEK293S細胞におけるβカテニンシグナル伝達のWnt刺激上昇の、Dvlp_N3による抑制は、用量依存性であった。 図3Bおよび3Cのデータは、二つの独立実験の測定によって得られた。
【図3D】DvlPDZペプチドリガンド、DVLp_Cは、Wnt刺激によるβカテニンタンパンクレベルの増加を抑えた。
【図3E】DvlPDZペプチドリガンド、Dvlp_N3は、Wnt刺激によるβカテニンタンパンクレベルの増加を抑えた。 図3Dおよび3Eのデータのために、HEK293S細胞を、20μMのDVLpおよびPENによって24時間処理した。細胞分解物を調製し、これにSDS−PAGEを行った。βカテニンを、ポリクロナール抗βカテニン(Genentech,Inc.,South San Franscisco)によってブロットした。
【図4】DvlPDZペプチドリガンド、DVLp_Cは、NCI−H1703細胞において、Wnt刺激によるβカテニンシグナル伝達の増加を阻止した。 NCI−H1703細胞に、pRLリポーターと結合させたリポータープラスミドpTOPGLOWをトランスフェクトした。細胞抽出物を調製し、ルシフェラーゼ活性を測定した。ルシフェラーゼ相対単位は、TopGlowルシフェラーゼ活性を、Renilaルシフェラーゼ活性で割った商である。活性倍数は、Wnt3a刺激細胞と、非刺激細胞との間のRLU比である。
【図5A】Dvl PDZリガンド処理は、NCI−H1703細胞の生存率を下げた。細胞を、三重標本として、遮光96ウェルプレートに撒き、0日目に、種々の用量のペプチドで処理し、5%CO含有高湿インキュベーターにて37℃でインキュベートした。72時間後、Alamarブルーアッセイを実行した。
【図5B】Dvl PDZリガンド処理は、NCI−H1703細胞の細胞増殖を抑制する。細胞を、三重標本として、遮光96ウェルプレートに撒き、0日目に、10μMのペプチドまたはDMSOで処理し、24、48、および72時間後、細胞生存率を、Alamarブルーアッセイによって測定した。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Dvl PDZに特異的に結合する単離ポリペプチドであって、C−末端残基を位置0としてアミノ酸を番号付けした場合、位置−2にGly、位置−1にTrpまたはTyr、位置0にPheまたはLeu、位置−3に疎水性または芳香族残基を有する配列を含むC−末端領域を含む、単離ポリペプチド。
【請求項2】
位置−6がTrpである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
位置−1がTrpである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
IC50=1.5μM(1.2、1、0.8、0.6、0.4、0.2μM)またはそれ以上の結合親和度においてDvl PDZに特異的に結合する単離ポリペプチド。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、Dvl PDZと、その内因性結合パートナーとの相互作用を抑制する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、Dvl−介在内因性Wntシグナル伝達を抑制する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、下式:
X1−G−X3−X4−COOH
の配列を含むC−末端領域を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項8】
X1が、Y、L、F、またはIであり;X3が、W、M、F、またはYであり;X4が、FまたはLであり、
前記配列が、ヒトタンパクの天然のC−末端配列ではない、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項9】
X3がTrpである、請求項7または8に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記カルボキシル末端アミノ酸残基がカルボキシル化される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の単離ポリペプチド。
【請求項11】
前記ポリペプチドが、配列YAKGFGMLCOOHを含まない、請求項1〜10のいずれか1項に記載の単離ポリペプチド。
【請求項12】
Dvl PDZに特異的に結合し、C−末端残基を位置0としてアミノ酸を番号付けした場合、位置−5から0、または位置−6から0に関して表1および図1Aの配列から成る群から選ばれるアミノ酸配列を含むカルボキシル末端領域を含む、単離ポリペプチド。
【請求項13】
Dvl PDZ配列に対する結合について、請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリペプチドと競合するアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
【請求項14】
Dvl PDZにおいて、請求項1〜13のいずれか1項に記載のポリペプチドが結合するエピトープと同じエピトープに結合する単離ポリペプチド。
【請求項15】
前記ポリペプチドが、配列YAKGFGMLCOOHを含まない、請求項1〜14のいずれか1項に記載の単離ポリペプチド。
【請求項16】
Dvlが、ヒトのDvl1、Dvl2、および/またはDvl3である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の単離ポリペプチド。
【請求項17】
Dvl PDZ−リガンド相互作用を修飾することが可能な化合物を特定する方法であって、前記方法は、下記:
(i)Dvl PDZ、その断片、および/またはその機能的等価物;
(ii)請求項1〜16のいずれか1項に記載のポリペプチドの一つ以上;および、
(iii)候補化合物、
を含むサンプルを接触させること、および、
前記候補化合物の存在下におけるDvl PDZ−リガンド相互作用の量を定量すること
を含み、これによって、前記候補化合物の不在下における量と比べた場合の、前記候補化合物存在下におけるDvl PDZ−リガンド相互作用の量の変化が、前記候補化合物がDvl PDZ−リガンド相互作用を修飾することが可能な化合物であることを示す、方法。
【請求項18】
Dvl PDZ−リガンド相互作用の修飾因子を合理的に設計する方法であって、C−末端残基を位置0としてアミノ酸を番号付けした場合、位置−2にGly、位置−1にTrpまたはTyr、位置0にPheまたはLeu、および位置−3に疎水性または芳香族残基を有する配列を含む、C−末端ペプチドを含むか、または、その機能を模倣する修飾因子であって、Dvl PDZに特異的に結合することが可能な因子を設計することを含む、方法。
【請求項19】
Dvl PDZ−リガンド相互作用を修飾する薬剤のスクリーニング法であって、前記方法は、
(a)候補薬剤を準備し、Dvl PDZと、前記Dvl PDZの既知の結合パートナーとを含む反応混合物に前記薬剤を接触させる工程であって、前記混合物は、細胞混合物か、または無細胞混合物であり、前記接触は、Dvl PDZ−結合パートナー相互作用に好適な条件下で生じる、工程;
(b)前記薬剤の存在下および不在下におけるDvl PDZ−結合パートナー相互作用の量を定量する工程
を含み、これによって、前記薬剤の存在下および不在下において(b)で定量された相互作用量の差が、前記薬剤がDvl PDZ−リガンド相互作用の修飾因子であることを示す、方法。
【請求項20】
Dvlまたはwntタンパク活性の制御不良に関連する病理的状態を治療する方法であって、Dvl PDZと請求項1〜16のいずれか1項に記載のポリペプチドとの間の相互作用を修飾することが可能なDvl PDZ−リガンド修飾因子の有効量を対象に投与することを含む方法。
【請求項21】
前記修飾因子が、Dvl PDZと、前記ポリペプチドとの間の相互作用を抑制する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記病理的状態が癌である、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記病理的状態が過剰増殖性障害である、請求項20または21に記載の方法。
【請求項24】
前記病理的状態が、標準wntシグナル伝達経路の制御不良に関連する、請求項20または21に記載の方法。
【請求項25】
Dvlが、ヒトのDvl1、Dvl2、および/またはDvl3である、請求項20または21に記載の方法。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2009−533465(P2009−533465A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505564(P2009−505564)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/066267
【国際公開番号】WO2007/121147
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レーザーディスク
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】