説明

EGRバルブ

【課題】 各種エンジンへのEGRバルブの搭載にあたって、共通のハウジングを使用可能として、搭載性を改善する。
【解決手段】 EGRバルブのハウジング1の外面、特にスプリング室の壁部を構成するハウジング1の外面のうち、左右の側面に、大気開放口用のボス部21、22を形成しておく。そして、左右一対のボス部21、22のうち、エンジンへの搭載状態で上向きとならない方のボス部(例えば21)に、スプリング室に連通してこれを大気に開放する大気開放口を開設し、更に、その開口面に対向させてカバープレート24を取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気系から吸気系へ還流するEGRガスの流量を制御するEGRバルブに関し、特に大気開放口の形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジンでは、排気中のNOxの低減のため、エンジンの排気系から排気の一部をEGRガスとして吸気系に還流するようにしており、このEGRガスの流量を制御するためにEGRバルブが用いられる。
【0003】
EGRバルブは、一般に、外面にEGRガスの入口部と出口部とを有し、内部に前記入口部と前記出口部とをつなぐ通路を有するハウジングと、前記ハウジング内に収容されて前記通路を開閉するバルブと、前記ハウジング内に収容されて前記バルブを閉弁方向又は開弁方向のいずれか一方に付勢するスプリングと、前記バルブを前記スプリングの付勢方向と反対方向に駆動するアクチュエータ(電磁アクチュエータ、油圧アクチュエータ、負圧アクチュエータなど)と、を含んで構成される。
【0004】
ここにおいて、前記スプリングは、ハウジング内に形成されたスプリング室に収容されるが、スプリング室には、バルブシャフトの貫通孔の隙間などを通って、極僅かではあるが、EGRガスが漏れ出たり、このガス中の水分が凝縮したりする。このため、漏れ出たガスや凝縮水を逃がす必要があり、スプリング室の壁部を構成するハウジングの外面にボス部を形成し、このボス部にスプリング室を大気に開放する大気開放口を設けている。
【0005】
このような大気開放口を設けたEGRバルブは、特許文献1や特許文献2に開示されている。尚、特許文献1では、外部から水が大気開放口を通じてスプリング室に侵入するのを防止するため、1〜複数の大気開放口をハウジングの取付面側に開口させている。また、特許文献2では、大気開放口(呼吸通路)を通じての水や異物の侵入を防止するため、大気開放口の孔径を小さくし、かつ迷路状に形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−008211号公報
【特許文献2】特開2001−329916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のEGRバルブでは、大気開放口の向きにより、エンジンへの搭載条件が制約されていた。
すなわち、EGRバルブのハウジングの側面に大気開放口を備える場合、EGRバルブをエンジンに取付けた状態で、大気開放口が上向きとならないようにする必要がある。このため、エンジンに対しEGRバルブを傾斜させて取付けざると得ない場合は、大気開放口が下向きとなるように傾斜させて取付ける必要があった。
【0008】
従って、エンジンのレイアウトを検討するにあたっても制限されることが多く、そのまま搭載できず、搭載するエンジンに合わせてEGRバルブのハウジングを設計変更せざるを得なくなることもあった。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑み、搭載条件の異なるエンジンへのEGRバルブの搭載にあたって、共通のハウジングを使用可能で、搭載性を改善することのできるEGRバルブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るEGRバルブは、外面にEGRガスの入口部と出口部とを有し、内部に前記入口部と出口部とをつなぐ通路を有するハウジングと、前記ハウジング内に収容されて前記通路を開閉するバルブと、前記ハウジング内に収容されて前記バルブを閉弁方向又は開弁方向のいずれか一方に付勢するスプリングと、前記バルブを前記スプリングの付勢方向と反対方向に駆動するアクチュエータと、前記ハウジング内に形成されて前記スプリングを収容するスプリング室と、前記スプリング室の壁部を構成する前記ハウジングの外面に形成したボス部と、前記ボス部に設けられて前記スプリング室を大気に開放する大気開放口と、を含んで構成される。
【0011】
ここにおいて、前記ボス部は、前記ハウジングの外面のうち左右の側面に一対形成され、前記大気開放口は、前記一対のボス部のうち、エンジンへの搭載状態で上向きとならない方の側面のボス部にのみ設けられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、EGRバルブの外面のうち左右の側面に、それぞれ、大気開放口用のボス部が形成されているので、エンジンへの搭載状態で上向きとならない方の側面のボス部に大気開放口を機械加工により開設すればよく、ハウジングの共通化と共に、搭載性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示すEGRバルブの正面図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】図1のB矢視図
【図4】図3からカバープレートを取外した状態を示す図
【図5】図1のC矢視図
【図6】図5のD矢視図
【図7】取付角度の説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態を示すEGRバルブの正面図、図2は図1のA−A断面図である。
本実施形態のEGRバルブは、ダブルポペット型のノーマルクローズタイプの電磁式流量制御弁である。
【0015】
ハウジング1は、前面側(図1の裏面側、図2の右側)に1つの入口部2を有し、後面側(図1の正面側、図2の左側)に2つの出口部3A、3Bを有している。そして、内部に入口部2と出口部3A、3Bとをつなぐ通路(4、5A、5B)を有している。
【0016】
詳しくは、ハウジング1内には、入口部2と連通する入口側空間4があり、入口側空間4の上方に出口部3Aと連通する出口側空間5Aがあり、入口側空間4の下方に出口部3Bと連通する出口側空間5Bがある。そして、これら入口側空間4及び出口側空間5A、5BがEGRガスの通路をなしている。
ハウジング1内にはまた、出口側空間5Aの上方に隔壁6を介してスプリング室7が形成されている。
【0017】
従って、ハウジング1には、上から下へ、スプリング室7、隔壁6、出口側空間5A、入口側空間4、出口側空間5Bが形成され、ハウジング1の入口側空間4とその上方の出口側空間5Aとの間には、バルブシート8Aが装着されている。また、ハウジング1の入口側空間4とその下方の出口側空間5Bとの間には、バルブシート8Bが装着されている。また、ハウジング1の底部(出口側空間5Bの下方)は、サポート部材9及びキャップ部材10により閉塞されている。
【0018】
ここにおいて、ハウジング1の中心部を上下に貫通してバルブシャフト11が設けられ、バルブシャフト11は、隔壁6及びサポート部材9に摺動自在に支持されている。そして、バルブシャフト11には、2個の円板状のポペット型のバルブ12A、12Bが取付けられ、上側のバルブ12Aは上側のバルブシート8Aに、下側のバルブ12Bは下側のバルブシート8Bに、それぞれ下方から相対している。
【0019】
スプリング室7内にて、バルブシャフト11の端部には、スプリングリテーナ13が取付けられており、隔壁6の上面とスプリングリテーナ13の下面との間にスプリング(圧縮コイルばね)14を介装してある。このスプリング14は、バルブシャフト11を上方へ付勢することで、バルブ12A、12Bをバルブシート8A、8Bに着座させる方向、すなわち閉弁方向に付勢する。
【0020】
ハウジング1の上方(スプリング室7の上方)には、電磁アクチュエータ15が取付けられる。電磁アクチュエータ15は、例えばリニアソレノイドにより構成され、電磁力により、出力ロッド16を下方へ突出させる。又は、ステッピングモータやDCモータなどのモータにより構成され、そのモータの回転を直線運動に変換することで、出力ロッド16を下方へ突出させる。そして、この出力ロッド16をバルブシャフト11の上端部に当接させてある。
【0021】
従って、電磁アクチュエータ15は、その出力ロッド16によりバルブシャフト11を下方へ駆動することができ、これによりバルブ12A、12Bをスプリング14の付勢方向と反対方向、すなわち開弁方向に駆動することができる。尚、電磁アクチュエータに代えて、油圧アクチュエータ、負圧アクチュエータなどを使用することもできる。
【0022】
次に、図1及び図2に加え、図3〜図6を参照して、スプリング室7を大気に開放する大気開放口等の構造について説明する。図3は図1のB矢視図、図4は図3からカバープレート24を取外した状態を示す図、図5は図1のC矢視図、図6は図5のD矢視図である。
【0023】
ハウジング1の外面のうち、前面には入口部2が形成され、後面には出口部3A、3Bが形成されるが、左右の側面には、大気開放口用のボス部21、22が形成される。
これら一対のボス部21、22は、スプリング室7の壁部を構成するハウジング1の外面に形成されている。
【0024】
そして、これら一対のボス部21、22のうち、いずれか一方のボス部、詳しくはエンジンへの搭載状態で上向きとならない方の側面のボス部、この例では、ボス部21にのみ、鋳造後の機械加工(孔あけ加工)により、スプリング室7と連通してこれを大気に開放する大気開放口23を開設してある。
【0025】
尚、大気開放口23はスプリング室7にたまる凝縮水を排出する必要があるので、高さ方向にはスプリング室7の底部に連通させて設ける。また、この例では、2つの大気開放口23を横方向に並べて開設しているが、個数についてはこれに限るものではない。
また、大気開放口23を開設した方のボス部21には、大気開放口23の開口面に所定の空隙をもって対向するカバープレート24を取付ける。
【0026】
詳しくは、ボス部21は、大気開放口23の開口面に大気開放口23の周囲の一部(この例では側方)を囲む突出壁部21cを有し、カバープレート24は、この突出壁部21cにねじ25によりねじ止めされる。図4中の25cは、ねじ25用のねじ孔で、鋳造後の機械加工により形成される。
従って、大気開放口23は、その開口面とカバープレート24との隙間から突出壁部21c側(前方)を除く、上方、下方、及び、後方へ通じている。
【0027】
尚、ボス部22もボス部21と同様に突出壁部22cを有しているが、ねじ孔は形成していない。ボス部22側に大気開放口を設ける場合に、同時にねじ孔を形成することになる。
【0028】
本実施形態のEGRバルブは、ハウジング1の外面のうち、左右の側面にボス部21、22を形成しておくことで、その一方のボス部21に大気開放口23を開設すると共に、これを覆うカバープレート24を配置することにより、図7(a)のように見ると、大気開放口が上向きとならないように、EGRバルブを図示の「範囲a1」の範囲内で傾斜配置することが可能となり、また図7(b)のように見ると、突出壁部が下側とならないように、EGRバルブを図示の「範囲b1」の範囲内で傾斜配置することができる。
【0029】
その一方、EGRバルブを図7(a)に示す「範囲a2」の範囲内で傾斜配置することが要求される場合は、反対側のボス部22に大気開放口を開設すると共に、これを覆うカバープレートを配置することにより、EGRバルブを図示の「範囲a2」の範囲内で傾斜配置することが可能となり、このとき図7(b)の方向では「範囲b1」の範囲内で傾斜配置することが可能である。
【0030】
また、搭載するエンジンに合わせて選択したボス部21又は22に大気開放口23及びねじ孔25cを形成することになるが、簡単な後加工だけで形成できるので、負担増となることはない。
【0031】
本実施形態によれば、EGRバルブのハウジング1の外面のうち左右の側面に、それぞれ、大気開放口用のボス部21、22が形成されているので、エンジンへの搭載状態で上向きとならない方の側面のボス部に大気開放口23を機械加工により開設すればよく、ハウジング1の共通化と共に、搭載性を向上させることができる。尚、EGRバルブが図示のように傾斜することなく垂直に取付けられる場合は、いずれれのボス部21、22も下向きとならないので、大気開放口をどちらに開設してもよい。
【0032】
また、本実施形態によれば、ボス部21に取付けられて大気開放口23の開口面に対向するカバープレート24を備えることにより、また、このカバープレート24が、一対のボス部21、22のうち、大気開放口23が開設された方のボス部21にのみ取付けられることにより、大気開放口23が直接露出しないようにして、見た目を改善できる一方、大気開放口23の選択に合わせて、カバープレート24を配置できる。
【0033】
また、本実施形態によれば、ボス部21、22は、大気開放口の開口面に大気開放口の周囲の一部を囲む突出壁部21c、22cを有し、カバープレート24は、突出壁部21c(又は22c)にねじ止めされることにより、大気開放口23に合わせてカバープレート24を配置できる。
【0034】
また、本実施形態によれば、ハウジング1の外面のうち、前面及び後面にEGRガスの入口部2及び出口部3A、3Bを有し、左右の側面に大気開放口用のボス部21、22を有することにより、EGRバルブを体裁良くコンパクトにまとめることができる。
【0035】
尚、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
【0036】
例えば、図示の実施形態では、左右のボス部21、22は左右対称に配置(突出壁部21c、22cを両方とも前側に配置)したが、左右のボス部21、22を軸対称に配置(一方の突出壁部21cを前側、他方の突出壁部22cを後側に配置)するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 ハウジング
2 入口部
3A、3B 出口部
4 入口側空間
5A、5B 出口側空間
6 隔壁
7 スプリング室
8A、8B バルブシート
9 サポート部材
10 キャップ部材
11 バルブシャフト
12A、12B バルブ
13 スプリングリテーナ
14 スプリング
15 電磁アクチュエータ
16 出力ロッド
21、22 ボス部
21c、22c 突出壁部
23 大気開放口
24 カバープレート
25 ねじ
25c ねじ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気系から吸気系へ還流するEGRガスの流量を制御するEGRバルブであって、
外面にEGRガスの入口部と出口部とを有し、内部に前記入口部と出口部とをつなぐ通路を有するハウジングと、
前記ハウジング内に収容されて前記通路を開閉するバルブと、
前記ハウジング内に収容されて前記バルブを閉弁方向又は開弁方向のいずれか一方に付勢するスプリングと、
前記バルブを前記スプリングの付勢方向と反対方向に駆動するアクチュエータと、
前記ハウジング内に形成されて前記スプリングを収容するスプリング室と、
前記スプリング室の壁部を構成する前記ハウジングの外面に形成したボス部と、
前記ボス部に設けられて前記スプリング室を大気に開放する大気開放口と、
を含んで構成され、
前記ボス部は、前記ハウジングの外面のうち左右の側面に一対形成され、
前記大気開放口は、前記一対のボス部のうち、エンジンへの搭載状態で上向きとならない方の側面のボス部にのみ設けられることを特徴とする、EGRバルブ。
【請求項2】
前記ボス部に取付けられて前記大気開放口の開口面に対向するカバープレートを更に含んで構成され、
前記カバープレートは、前記一対のボス部のうち、前記大気開放口が開設された方のボス部にのみ取付けられることを特徴とする、請求項1記載のEGRバルブ。
【請求項3】
前記ボス部は、前記大気開放口の開口面に前記大気開放口の周囲の一部を囲む突出壁部を有し、
前記カバープレートは、前記突出壁部にねじ止めされることを特徴とする、請求項2記載のEGRバルブ。
【請求項4】
前記ハウジングの外面のうち、前面及び後面に前記入口部及び出口部を有し、左右の側面に前記ボス部を有することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のEGRバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−127223(P2012−127223A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277826(P2010−277826)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】