説明

ELデバイスおよびELデバイスを用いた照明装置

【課題】 信頼性を向上させた可撓性を有するELデバイスを提供する。
【解決手段】 可塑性を有する基板11の上に接触配置された第1電極12a、第1電極12aの上に接触配置された発光層12bならびに発光層12bの上に接触配置された第2電極12cを有するEL層12を有し、EL層12から放射された光線を透過する発光部LPと、EL層12から放射された光線を透過しない非発光部NLPからなるEL素子1と、EL素子1の非発光部NLPを保持する保持体(挟持体)2、保持体(支持体)3とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ELデバイスおよびELデバイスを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、可撓性を有する有機EL素子を用いた照明パネルが知られている。特開2007−294519公報(以下、特許文献1)では、可塑性を有する基板上に有機EL素子を形成したEL照明パネルが提示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−294519公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、可撓性を有するEL素子を用いた照明を実現しようとすると、上記構成のみではEL素子の信頼性が乏しいことが判明した。これは、可塑性を有する基板で構成されたEL素子は、基板自身の重みやEL層の重みなどでたわみを生じやすく、たわみによって配光特性や放熱特性が悪化する。配光特性が悪化することで被発光面に対する照度分布が一様でなくなるため、照明としての信頼性を損なう。また、放熱特性が悪化することで、EL素子がショートしやすくなる。ショートした場合は局所的に電流が流れるため、EL素子が破壊される。よって、可撓性を有するEL素子のみでは信頼性が乏しい。
【0005】
本発明の目的は、信頼性を向上させた可撓性を有するEL素子で構成されたELデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るELデバイスは、可塑性を有する基板の上に接触配置された第1電極、前記第1電極の上に接触配置された発光層ならびに前記発光層の上に接触配置された第2電極を有するEL層を有し、前記EL層から放射された光線を透過する発光部と、前記EL層から放射された光線を透過しない非発光部からなるEL素子と、前記EL素子の非発光部を保持する保持体とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記構成によれば、信頼性を向上させた可撓性を有するEL素子で構成されたELデバイスを提供することができる。また、挟持体を用いることでたわみを軽減したELデバイスを提供することができる。また、支持体を用いることで、EL素子にたわみが発生してもたわみ量が一定以下となるELデバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態を示すELデバイスにおいて、可動部32側から見たELデバイスの斜視図、図1(b)は、固定部31側から見たELデバイスの斜視図である。また、図2は、図1のポイントAとA’の断面を矢印方向から見た図、図3は、図1のポイントBとB’の断面を矢印方向から見た図である。
【0009】
本発明に係るELデバイスは主要部として、EL素子1と、保持体である挟持体2と、支持体3からなる。なお、本発明に係るELデバイスの”EL”とは、電界をかけて発光する電界発光のことであり、電界をかけていない状態では後述する発光層12bに正孔や電子が存在しないもののことを指す。
【0010】
EL素子1は、基板11と、EL層12からなる。
【0011】
基板11は、透光性で可撓性を有し、防湿性を有するものであれば材質は限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレートからなり、その寸法は幅200mm、長さ200mm、厚さ200umである。
【0012】
EL層12は、第1電極12a、発光層12b、第2電極12c、封止層12dからなり、それぞれ基板11の上に逐次形成される。なおここでいう「上」とは、基板11の平面からより遠方の面を指す。
【0013】
第1電極12aは、後述する発光層12bに正孔を提供する。第1電極12aは、透明電極で構成されており、例えばITOである。第1電極12aはスパッタリング法により、基板11の上に形成される。
【0014】
発光層12bは、第1電極12a、後述する第2電極12cとに電界を生じることによって発光する。発光層12bはαNPDやAlq3などにより構成される。発光層12bは真空蒸着法により、第1電極12aの上に形成される。
【0015】
第2電極12cは、発光層12bに電子を提供する。第2電極12cは導電性であり、また発光層112bから放出される光線を効率よく利用するために光線を反射する材料がよく、例えばアルミニウムなどが用いられる。第2電極12cは真空蒸着法により、発光層12bの上に形成される。
【0016】
封止膜12dは、第1電極12a、発光層12b、第2電極12cが大気中の水蒸気や酸素にさらされることを防止する。封止膜12dは、SiN/SiON膜と、樹脂膜とが交互に積層されて構成される。封止膜12dは真空蒸着法により、第1電極12a、第2電極cが外部と導通できるように、第1電極12a、発光層12b、第2電極12cを覆うように形成される。
【0017】
こうして形成されたEL素子1は、発光部LPと、非発光部NLPとで構成される。
【0018】
発光部LPは、EL層12から放射された光が透過する部分のことである。具体的には、EL層12の第1電極12aの裏面の範囲のことを指す。
【0019】
非発光部12は、発光部LP以外の部分のことであり、EL層12が形成されている部分と、EL層12の第1電極12aの裏面以外の範囲のことを指す。封止部12d側の面全体が非発光部であるのは、発光層12bから放出された光線は第2電極12cで反射されて基板11側に透過するためである。
【0020】
保持体(挟持体)2(以下、挟持体2と表記する)は、EL素子1を保持する保持体の一形態である。挟持体2はEL素子1を挟持し、EL素子1を緊張させる。挟持体2は、固定部2a、可動部2b、シャフト2c、弾性体2dで構成される。
【0021】
固定部2aには、EL素子1が載置される。固定部2aは、EL素子1が発光しても形状が変形しない材質であればよく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの樹脂材料や、アルミニウムなどの金属で構成される。
【0022】
可動部2bは、固定部2aと協調して、EL素子1を挟持する。可動部2bは、EL素子1が発光しても形状が変形しない材質であればよく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの樹脂材料や、アルミニウムなどの金属で構成される。
【0023】
シャフト2cは、可動部2bを貫通し、固定部2aに固定され、可動部2bの動作を回動に限定する。シャフト2cは、長期間使用しても変形しない材質であればよく、例えば、ニッケルクロム合金などで構成される。
【0024】
弾性体2dは、可動部2bの回動を規制し、固定部2aに可動部2bを接触させることにより、EL素子1を挟持する。弾性体2dは例えばバネのことであり、コイルバネや板バネなどが用いられる。
【0025】
保持体(支持体)3(以下、支持体3と表記する)は、EL素子1を保持する保持体の一形態である。支持体3はEL素子1が撓まないようにEL素子1を支持する。支持体3は、固定部31、可動部32で構成される。
【0026】
固定部31には、EL素子1が載置される。固定部31は、EL素子1が発光しても形状が変形しない材質であればよく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの樹脂材料や、アルミニウムなどの金属で構成される。
【0027】
可動部32は、固定部32と協調して、EL素子1を支持する。可動部32は、EL素子1が発光しても形状が変形しない材質であればよく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの樹脂材料で構成される。また、EL素子1の放熱性を高めるため、アルミニウムなどの金属で構成されてもよい。
【0028】
ここで、挟持体2、支持体3がEL素子1を保持する様子について、更に詳しく説明する。
【0029】
挟持体2、支持体3は非発光部NLPを保持する。これは、発光部LPを保持すると、EL素子1から放射される光線が保持体である挟持体2、支持体3により遮られるためである。保持体である挟持体2や支持体3が光線を遮断すると、EL素子1全体から取り出すことができる光線量が減少するため、結果EL素子1の発光特性が悪化するためである。よって、保持体である挟持体2、支持体3は非発光部NLPを保持するのが望ましい。
【0030】
また、本実施の形態では、重力方向に対して平行にEL素子1を配置しても、たわみが発生することを抑制でき、結果ELデバイスの信頼性を向上することが可能である。これは、挟持体2がEL素子1を挟持しているためにEL素子1の自重で滑落することが防止でき、さらに支持体3によりEL素子1の面方向からの応力に対してもたわみを防止することができるからである。
【0031】
したがって、本実施の形態では、可撓性を有するEL素子のたわみを抑制することが可能である。
【0032】
なお、本実施の形態では挟持体2と支持体3の両方を用いたが、図4(a)に示すように挟持体2のみでEL素子1を保持してもよいし、図4(b)に示すように支持体3のみでEL素子1を保持してもよい。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態を図5に示す。図5(a)は本発明の第1の実施の形態で用いたELデバイスELDを用いた照明装置を、図5(b)は回路ブロック図を示す。
【0033】
本発明の照明装置は、電源Sと接続された点灯回路PSと、点灯回路PSの出力側に接続されたリード線LW、リード線LWを介して点灯回路PSと接続されたELデバイスELDを有する。
【0034】
電源Sは例えば商用電源であり、電圧100Vが供給される。
【0035】
点灯回路PSは例えば、交流直流変換回路、定電流回路からなり、点灯回路の出力側は陽極出力端、陰極出力端に分かれている。交流直流変換回路は、電源Sから供給された交流を直流に変換し、必要に応じて変圧する。電源Sから供給された交流100Vは、例えば直流3〜10Vに変圧される。定電流回路は、交流直流変換回路で得られた直流3〜10Vの電力を定電流に変換し、例えば200mAの電流を出力する。
【0036】
EL素子1は、EL層12の第1電極12aを点灯回路PSの陽極出力端、第2電極12bを点灯回路PSの陰極出力端に接続される。そして200mAの電流を印加され、EL素子1が点灯する。
【0037】
したがって、本実施の形態では、信頼性を向上させた可撓性を有するELデバイスを用いた照明装置を得ることができる。
【0038】
なお、本発明の実施の形態は上記に限られるものではなく、例えば次のように変更してもよい。
【0039】
基板11上に形成されるEL層12の個数は限定されない。例えば、基板11上にEL層12が一つだけ形成されてもよく、また複数形成されてもよい。
【0040】
EL層12の発光効率を高めるため、正孔注入層や正孔移動層、電子移動層などが形成されてもよい。
【0041】
EL層12の成膜条件は上記に限定されない。例えば、第2電極12cが基板11と接触するように成膜されてもよいし、第1電極12aが封止膜12d側に成膜されてもよい。
【0042】
また、図6(a)に示されるように、支持体3内部に嵌合部を設けることにより、EL素子1を支持してもよい。
【0043】
また、図6(b)に示されるように、支持体3内部に緊張具4を用いることにより、EL素子1を支持してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す斜視図。
【図2】図1のポイントAとA’の断面を矢印方向から見た図。
【図3】図1のポイントBとB’の断面を矢印方向から見た図。
【図4】他の変形例1を示す断面図。
【図5】本発明の第2の実施の形態を示す図。
【図6】他の変形例2を示す断面図。
【符号の説明】
【0045】
1 EL素子
11 基板
12 EL層
12a 第1電極
12b 発光層
12c 第2電極
12d 封止層
LP 発光部
NLP 非発光部
2 保持体(挟持体)
2a 固定部
2b 可動部
2c シャフト
2d 弾性体
3 保持体(支持体)
31 固定部
32 可動部
4 緊張具
ELD ELデバイス
S 電源
PS 点灯回路
LW リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑性を有する基板の上に接触配置された第1電極、前記第1電極の上に接触配置された発光層ならびに前記発光層の上に接触配置された第2電極を有するEL層を有し、前記EL層から放射された光線を透過する発光部と、前記EL層から放射された光線を透過しない非発光部からなるEL素子と、
前記EL素子の非発光部を保持する保持体とを具備することを特徴とするELデバイス。
【請求項2】
可塑性を有する基板の上に接触配置された第1電極、前記第1電極の上に接触配置された発光層ならびに前記発光層の上に接触配置された第2電極を有するEL層を有し、前記EL層から放射された光線を透過する発光部と、前記EL層から放射された光線を透過しない非発光部からなるEL素子と、
前記EL素子の前記非発光部を挟持する挟持体とを具備することを特徴とするELデバイス。
【請求項3】
可塑性を有する基板の上に接触配置された第1電極、前記第1電極の上に接触配置された発光層ならびに前記発光層の上に接触配置された第2電極を有するEL層を有し、前記EL層から放射された光線を透過する発光部と、前記EL層から放射された光線を透過しない非発光部からなるEL素子と、
前記EL素子の前記非発光部を支持する支持体とを具備することを特徴とするELデバイス。
【請求項4】
電源に接続された点灯回路と、前記点灯回路の出力側に接続された請求項1ないし3のいずれか記載のELデバイスとを具備することを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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