説明

ELパネル及びELパネルの製造方法

【課題】有機発光層の膜厚むらを低減する。
【解決手段】ELパネル1における有機EL素子8の正孔注入層8bは、バンク13が形成される前に、PEDOT/PSSなどの有機材料が含有される液状体を、基板10の上面側のほぼ全域に塗布しコートすることで形成することができるので、バンク13の開口部13aに液状体を塗布し正孔注入層を形成する手法に比べて這い上がりの影響を低減することができ、その正孔注入層8bに機能層8iと発光層8cを積層してなる有機発光層の膜厚むらを低減することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ELパネル及びELパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、EL(Electro Luminescence)ディスプレイに用いられる有機EL素子の製造プロセスにおいて、有機発光層を成膜する工程として、ガラス基板上に設けられた透明電極を囲むように形成された隔壁間の凹部に、ノズルを通じて液体状の有機材料を流し込んで塗布するノズルプリント方式の技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−75640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、隔壁間に塗布された有機材料を乾燥させて、正孔注入層や発光層などの有機発光層を成膜する過程において、液体状の有機材料が隔壁面に付着して成膜された「這い上がり」といわれる隆起したような成膜層が生じて、有機発光層の膜厚の均一性が損なわれてしまうことがあり、その膜厚むらに起因する発光むらが生じてしまうことがある。
【0004】
そこで、本発明の課題は、有機発光層の膜厚むらを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、ELパネルであって、
所定の基板の上面側に設けられた第一電極と、
前記第一電極、及び前記第一電極を除く前記基板の上面側を覆うキャリア注入層と、
前記キャリア注入層上であって、前記第一電極間に相当する位置に配設される隔壁と、
前記キャリア注入層の上面側であって、前記隔壁間に有機発光材料が溶媒に溶解または分散された液状体が塗布されて乾燥されてなる発光層と、
前記発光層を覆う第二電極と、
を備えることを特徴としている。
【0006】
請求項2に記載の発明は、ELパネルであって、
所定の基板の上面側に設けられた第一電極と、
前記第一電極、及び前記第一電極を除く前記基板の上面側を覆うキャリア注入層と、
前記キャリア注入層の上面側を覆う発光層と、
前記発光層上であって、前記第一電極間に相当する位置に配設される隔壁と、
前記発光層を覆う第二電極と、
を備えることを特徴としている。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のELパネルにおいて、
前記キャリア注入層と前記発光層との間に、前記発光層の発光に寄与する機能層が備えられ、
前記機能層は、前記キャリア注入層上の全面または前記キャリア注入層上の前記隔壁間の範囲に設けられていることを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載の発明は、ELパネルの製造方法であって、
所定の基板の上面側に第一電極を形成する工程と、
前記第一電極を含む前記基板の上面側を覆うキャリア注入層を形成する工程と、
前記キャリア注入層上であって、前記第一電極間に相当する位置に隔壁を形成する工程と、
前記キャリア注入層の上面側であって、前記第一電極上に相当する前記隔壁間に、有機発光材料が溶媒に溶解または分散された液状体を塗布し発光層を形成する工程と、
前記発光層を覆う第二電極を形成する工程と、
を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項5に記載の発明は、ELパネルの製造方法であって、
所定の基板の上面側に第一電極を形成する工程と、
前記第一電極を含む前記基板の上面側を覆うキャリア注入層を形成する工程と、
前記キャリア注入層の上面を覆う発光層を形成する工程と、
前記発光層上であって、前記第一電極間に相当する位置に隔壁を形成する工程と、
前記発光層を覆う第二電極を形成する工程と、
を備えることを特徴としている。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載のELパネルの製造方法において、
前記キャリア注入層は、キャリア注入層を構成する材料が溶媒に溶解または分散された液状体が前記基板の上面側に塗布されて形成されることを特徴としている。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項4又は5に記載のELパネルの製造方法において、
前記キャリア注入層は、キャリア注入層を構成する材料が前記基板の上面側に真空成膜されて形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ELパネルにおいて、膜厚むらを低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0014】
(実施形態1)
図1は、ELパネル1における複数の画素Pの配置構成を示す平面図であり、図2は、ELパネル1の概略構成を示す平面図である。
【0015】
図1、図2に示すように、ELパネル1には、R(赤),G(緑),B(青)をそれぞれ発光する複数の画素Pが所定のパターンでマトリクス状に配置されている。
このELパネル1には、複数の走査線2が行方向に沿って互いに略平行となるよう配列され、複数の信号線3が平面視して走査線2と略直交する列方向に沿って互いに略平行となるよう配列されている。また、隣り合う走査線2の間において電圧供給線4が走査線2に沿って設けられている。そして、これら各走査線2と隣接する二本の信号線3と各電圧供給線4とによって囲われる範囲が、画素Pに相当する。
また、ELパネル1には、走査線2、信号線3、電圧供給線4の上方に覆うように、格子状の隔壁であるバンク13が設けられている。このバンク13によって囲われてなる略長方形状の複数の開口部13aが画素Pごとに形成されており、この開口部13a内に所定の発光層(後述する発光層8c)が設けられて、画素Pの発光領域となる。
【0016】
図3は、アクティブマトリクス駆動方式で動作するELパネル1の1画素に相当する回路を示した回路図である。
【0017】
図3に示すように、ELパネル1には、走査線2と、走査線2と交差する信号線3と、走査線2に沿う電圧供給線4とが設けられており、このELパネル1の1画素Pにつき、薄膜トランジスタであるスイッチトランジスタ5と、薄膜トランジスタである駆動トランジスタ6と、キャパシタ7と、有機EL素子8とが設けられている。
【0018】
各画素Pにおいては、スイッチトランジスタ5のゲートが走査線2に接続され、スイッチトランジスタ5のドレインとソースのうちの一方が信号線3に接続され、スイッチトランジスタ5のドレインとソースのうちの他方がキャパシタ7の一方の電極及び駆動トランジスタ6のゲートに接続されている。駆動トランジスタ6のソースとドレインのうちの一方が電圧供給線4に接続され、駆動トランジスタ6のソースとドレインのうち他方がキャパシタ7の他方の電極及び有機EL素子8のアノードに接続されている。なお、全ての画素Pの有機EL素子8のカソードは、一定電圧Vcomに保たれている(例えば、接地されている)。
【0019】
また、このELパネル1の周囲において各走査線2が走査ドライバに接続され、各電圧供給線4が一定電圧源又は適宜電圧信号を出力するドライバに接続され、各信号線3がデータドライバに接続され、これらドライバによってELパネル1がアクティブマトリクス駆動方式で駆動される。電圧供給線4には、一定電圧源又はドライバによって所定の電力が供給される。
【0020】
次に、ELパネル1と、その画素Pの回路構造について、図4〜図6を用いて説明する。ここで、図4は、ELパネル1の1画素Pに相当する平面図であり、図5は、図4のV−V線に沿った面の矢視断面図、図6は、図4のVI−VI線に沿った面の矢視断面図である。なお、図4においては、電極及び配線を主に示す。
【0021】
図4に示すように、スイッチトランジスタ5及び駆動トランジスタ6は、信号線3に沿うように配列され、スイッチトランジスタ5の近傍にキャパシタ7が配置され、駆動トランジスタ6の近傍に有機EL素子8が配置されている。また、走査線2と電圧供給線4の間に、スイッチトランジスタ5、駆動トランジスタ6、キャパシタ7及び有機EL素子8が配置されている。
【0022】
図4〜図6に示すように、基板10上の一面にゲート絶縁膜となる層間絶縁膜11が成膜されており、その層間絶縁膜11の上に層間絶縁膜12が成膜されている。信号線3は層間絶縁膜11と基板10との間に形成され、走査線2及び電圧供給線4は層間絶縁膜11と層間絶縁膜12との間に形成されている。
【0023】
また、図4、図6に示すように、スイッチトランジスタ5は、逆スタガ構造の薄膜トランジスタである。このスイッチトランジスタ5は、ゲート5a、半導体膜5b、チャネル保護膜5d、不純物半導体膜5f,5g、ドレイン電極5h、ソース電極5i等を有するものである。
【0024】
ゲート5aは、基板10と層間絶縁膜11の間に形成されている。このゲート5aは、例えば、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlTiNd合金膜からなる。また、ゲート5aの上に絶縁性の層間絶縁膜11が成膜されており、その層間絶縁膜11によってゲート5aが被覆されている。
層間絶縁膜11は、例えば、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる。この層間絶縁膜11上であってゲート5aに対応する位置に真性な半導体膜5bが形成されており、半導体膜5bが層間絶縁膜11を挟んでゲート5aと相対している。
半導体膜5bは、例えば、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンからなり、この半導体膜5bにチャネルが形成される。また、半導体膜5bの中央部上には、絶縁性のチャネル保護膜5dが形成されている。このチャネル保護膜5dは、例えば、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる。
また、半導体膜5bの一端部の上には、不純物半導体膜5fが一部チャネル保護膜5dに重なるようにして形成されており、半導体膜5bの他端部の上には、不純物半導体膜5gが一部チャネル保護膜5dに重なるようにして形成されている。そして、不純物半導体膜5f,5gはそれぞれ半導体膜5bの両端側に互いに離間して形成されている。なお、不純物半導体膜5f,5gはn型半導体であるが、これに限らず、p型半導体であってもよい。
不純物半導体膜5fの上には、ドレイン電極5hが形成されている。不純物半導体膜5gの上には、ソース電極5iが形成されている。ドレイン電極5h,ソース電極5iは、例えば、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlTiNd合金膜からなる。
チャネル保護膜5d、ドレイン電極5h及びソース電極5iの上には、保護膜となる絶縁性の層間絶縁膜12が成膜され、チャネル保護膜5d、ドレイン電極5h及びソース電極5iが層間絶縁膜12によって被覆されている。そして、スイッチトランジスタ5は、層間絶縁膜12によって覆われるようになっている。層間絶縁膜12は、例えば、厚さが100nm〜200nm窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0025】
また、図4、図5に示すように、駆動トランジスタ6は、逆スタガ構造の薄膜トランジスタである。この駆動トランジスタ6は、ゲート6a、半導体膜6b、チャネル保護膜6d、不純物半導体膜6f,6g、ドレイン電極6h、ソース電極6i等を有するものである。
【0026】
ゲート6aは、例えば、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlTiNd合金膜からなり、ゲート5aと同様に基板10と層間絶縁膜11の間に形成されている。そして、ゲート6aは、例えば、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる層間絶縁膜11によって被覆されている。
この層間絶縁膜11の上であって、ゲート6aに対応する位置に、チャネルが形成される半導体膜6bが、例えば、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンにより形成されている。この半導体膜6bは層間絶縁膜11を挟んでゲート6aと相対している。
半導体膜6bの中央部上には、絶縁性のチャネル保護膜6dが形成されている。このチャネル保護膜6dは、例えば、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる。
また、半導体膜6bの一端部の上には、不純物半導体膜6fが一部チャネル保護膜6dに重なるようにして形成されており、半導体膜6bの他端部の上には、不純物半導体膜6gが一部チャネル保護膜6dに重なるようにして形成されている。そして、不純物半導体膜6f,6gはそれぞれ半導体膜6bの両端側に互いに離間して形成されている。なお、不純物半導体膜6f,6gはn型半導体であるが、これに限らず、p型半導体であってもよい。
不純物半導体膜6fの上には、ドレイン電極6hが形成されている。不純物半導体膜6gの上には、ソース電極6iが形成されている。ドレイン電極6h,ソース電極6iは、例えば、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlTiNd合金膜からなる。
チャネル保護膜6d、ドレイン電極6h及びソース電極6iの上には、絶縁性の層間絶縁膜12が成膜され、チャネル保護膜6d、ドレイン電極6h及びソース電極6iが層間絶縁膜12によって被覆されている。そして、駆動トランジスタ6は、層間絶縁膜12によって覆われるようになっている。
【0027】
キャパシタ7は、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6iとの間に接続されており、図4、図6に示すように、基板10と層間絶縁膜11との間に一方の電極7aが形成され、層間絶縁膜11と層間絶縁膜12との間に他方の電極7bが形成され、電極7aと電極7bが誘電体である層間絶縁膜11を挟んで相対している。
【0028】
なお、信号線3、キャパシタ7の電極7a、スイッチトランジスタ5のゲート5a及び駆動トランジスタ6のゲート6aは、基板10に一面に成膜された導電膜をフォトリソグラフィー法及びエッチング法等によって形状加工することで一括して形成されたものである。
また、走査線2、電圧供給線4、キャパシタ7の電極7b、スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iは、層間絶縁膜11に一面に成膜された導電膜をフォトリソグラフィー法及びエッチング法等によって形状加工することで形成されたものである。
【0029】
また、層間絶縁膜11には、ゲート電極5aと走査線2とが重なる領域にコンタクトホール11aが形成され、ドレイン電極5hと信号線3とが重なる領域にコンタクトホール11bが形成され、ゲート電極6aとソース電極5iとが重なる領域にコンタクトホール11cが形成されており、コンタクトホール11a〜11c内にコンタクトプラグ20a〜20cがそれぞれ埋め込まれている。コンタクトプラグ20aによってスイッチトランジスタ5のゲート5aと走査線2が電気的に導通し、コンタクトプラグ20bによってスイッチトランジスタ5のドレイン電極5hと信号線3が電気的に導通し、コンタクトプラグ20cによってスイッチトランジスタ5のソース電極5iとキャパシタ7の電極7aが電気的に導通するとともにスイッチトランジスタ5のソース電極5iと駆動トランジスタ6のゲート6aが電気的に導通する。
コンタクトプラグ20a〜20cを介することなく、走査線2が直接ゲート電極5aと接触し、ドレイン電極5hが信号線3と接触し、ソース電極5iがゲート電極6aと接触してもよい。
なお、駆動トランジスタ6のゲート6aがキャパシタ7の電極7aに一体に連なっており、駆動トランジスタ6のドレイン電極6hが電圧供給線4に一体に連なっており、駆動トランジスタ6のソース電極6iがキャパシタ7の電極7bに一体に連なっている。
【0030】
画素電極8aは、層間絶縁膜11を介して基板10上に設けられており、画素Pごとに独立して形成されている。この画素電極8aは透明電極であって、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO)からなる。なお、画素電極8aは一部、駆動トランジスタ6のソース電極6iに重なり、画素電極8aとソース電極6iが接続している。
そして、図4、図5に示すように、層間絶縁膜12が、走査線2、信号線3、電圧供給線4、スイッチトランジスタ5、駆動トランジスタ6、画素電極8aの周縁部、キャパシタ7の電極7b及び層間絶縁膜11を覆うように形成されている。層間絶縁膜12には、各画素電極8aの中央部が露出するように開口部12aが形成されている。そのため、層間絶縁膜12は平面視して格子状に形成されている。
【0031】
そして、基板10の表面に走査線2、信号線3、電圧供給線4、スイッチトランジスタ5、駆動トランジスタ6、キャパシタ7、画素電極8a及び層間絶縁膜12が形成されてなるパネルがトランジスタアレイパネルとなっている。
【0032】
有機EL素子8は、図4、図5に示すように、アノードとなる第一電極としての画素電極8aと、画素電極8aの上に形成された有機化合物膜である正孔注入層8bと、正孔注入層8bの上に形成された有機化合物膜である機能層8iと、機能層8iの上に形成された有機化合物膜である発光層8cと、発光層8cの上に形成された第二電極としての対向電極8dとを備えている。対向電極8dは全画素Pに共通の単一電極であって、全画素Pに連続して形成されている。
【0033】
正孔注入層8bは、例えば、導電性高分子であるPEDOT(poly(ethylenedioxy)thiophene;ポリエチレンジオキシチオフェン)及びドーパントであるPSS(polystyrene sulfonate;ポリスチレンスルホン酸)からなる層であって、画素電極8aから発光層8cに向けて正孔を注入するキャリア注入層である。
なお、正孔注入層8bは、画素電極8aの上面から、スイッチトランジスタ5及び駆動トランジスタ6を覆う層間絶縁膜12の上面に亘って設けられている。
【0034】
機能層8iは、例えば、ポリフルオレン系材料からなるインターレイヤー層(電子ブロック層)であって、電子が発光層8cから正孔注入層8b側へ移動することを抑制する機能を有する。
発光層8cは、画素P毎にR(赤),G(緑),B(青)のいずれかを発光する有機材料を含み、例えば、ポリフルオレン系発光材料やポリフェニレンビニレン系発光材料からなり、対向電極8dから供給される電子と、正孔注入層8bから注入される正孔との再結合に伴い発光する層である。このため、R(赤)を発光する画素P、G(緑)を発光する画素P、B(青)を発光する画素Pは互いに発光層8cの発光材料が異なる。画素PのR(赤),G(緑),B(青)のパターンは、デルタ配列であってもよく、また縦方向に同色画素が配列されるストライプパターンであってもよい。
【0035】
対向電極8dは、画素電極8aよりも仕事関数の低い材料で形成されており、例えば、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、希土類金属の少なくとも一種を含む単体又は合金で形成されている。
この対向電極8dは全ての画素Pに共通した電極であり、発光層8cなどの有機化合物膜とともに後述するバンク13を被覆している。
【0036】
正孔注入層8bは、開口部12aによって露出された画素電極8a上、層間絶縁膜12の開口部12aでの側壁、層間絶縁膜12上を連続して被覆するように、正孔注入層8bが基板10の上面側のほぼ全域に亘って形成されている(図7参照)。このため複数の画素Pが同じ正孔注入層8bとなる。
更に、正孔注入層8b上であって、画素電極8a間に相当する位置にバンク13が形成されている。このバンク13は、正孔注入層8bを介して層間絶縁膜12のほぼ上側に配設されており、層間絶縁膜12と同様に平面視して格子状に形成され、各画素電極8aに対応する位置において開口部13aが形成されている(図8参照)。なお、バンク13は一部、画素電極8a上に相当する部分に重なるように配設されている。
バンク13は層間絶縁膜12上の正孔注入層8bばかりでなく、開口部12aにおける層間絶縁膜12の側壁に堆積された正孔注入層8bをも覆っている。このため、正孔注入層8bが後述する湿式法によって成膜され、層間絶縁膜12の側壁に這い上がりが生じ開口部12a近傍が厚く堆積されたとしても、この厚く堆積された正孔注入層8bをバンク13が覆っているので開口部13aから露出している正孔注入層8bは表面が平滑な状態とすることができる。
そして、開口部13a内における正孔注入層8b上であって、画素電極8a上に相当するバンク13間に、機能層8iと発光層8cが積層されている(図5、図7〜図11参照)。
【0037】
具体的には、バンク13は、機能層8iや発光層8cを湿式法によって形成するに際して、機能層8iや発光層8cを構成する有機材料が溶媒に溶解または分散された液状体が隣接する画素Pに滲み出ないように仕切る隔壁として機能する。
例えば、図9に示すように、正孔注入層8bの上に設けられたバンク13には、層間絶縁膜12の開口部12aより内側に開口部13aが形成されている。
そして、図10に示すように、各開口部13a内に囲まれた正孔注入層8b上に、機能層8iを構成する有機材料が含有される液状体を塗布し、その液状体を乾燥させ成膜させた有機化合物膜が機能層8iとなる。
さらに、図11に示すように、開口部13a内の機能層8i上に、発光層8cを構成する有機材料が含有される液状体を塗布し、その液状体を乾燥させ成膜させた有機化合物膜が発光層8cとなる。
なお、この発光層8cとバンク13を被覆するように対向電極8dが設けられている(図5参照)。
【0038】
そして、このELパネル1においては、画素電極8a、基板10及び層間絶縁膜11が透明であり、発光層8cから発した光が画素電極8a、層間絶縁膜11及び基板10を透過して出射する。そのため、基板10の裏面(下面)が表示面となる。
なお、基板10側ではなく、反対側が表示面となってもよい。この場合、対向電極8dを透明電極とし、画素電極8aを反射電極として、発光層8cから発した光が対向電極8dを透過して出射する。
【0039】
このELパネル1は、次のように駆動されて発光する。
全ての電圧供給線4に所定レベルの電圧が印加された状態で、走査ドライバによって走査線2に順次電圧が印加されることで、これら走査線2が順次選択される。
各走査線2が選択されている時に、データドライバによって階調に応じたレベルの電圧が全ての信号線3に印加されると、その選択されている走査線2に対応するスイッチトランジスタ5がオンになっていることから、その階調に応じたレベルの電圧が駆動トランジスタ6のゲート6aに印加される。
この駆動トランジスタ6のゲート6aに印加された電圧に応じて、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6iとの間の電位差が定まって、駆動トランジスタ6におけるドレイン−ソース電流の大きさが定まり、有機EL素子8がそのドレイン−ソース電流に応じた明るさで発光する。
その後、その走査線2の選択が解除されると、スイッチトランジスタ5がオフとなるので、駆動トランジスタ6のゲート6aに印加された電圧にしたがった電荷がキャパシタ7に蓄えられ、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6i間の電位差は保持される。
このため、駆動トランジスタ6は選択時と同じ電流値のドレイン−ソース電流を流し続け、有機EL素子8の輝度を維持するようになっている。
【0040】
次に、ELパネル1の製造方法について説明する。
【0041】
基板10上にゲートメタル層をスパッタリングで堆積させ、フォトリソグラフィーによりパターニングして信号線3、キャパシタ7の電極7a、スイッチトランジスタ5のゲート5a及び駆動トランジスタ6のゲート6aを形成する。次いで、プラズマCVDによって窒化シリコン等のゲート絶縁膜となる層間絶縁膜11を堆積する。層間絶縁膜11には、ELパネル1の一辺に位置する走査ドライバに接続するための各走査線2の外部接続端子を開口するコンタクトホール(図示せず)を形成する。
次いで半導体膜5b、6bとなるアモルファスシリコン等の半導体層、チャネル保護膜5d、6dとなる窒化シリコン等の絶縁層を連続して堆積後、フォトリソグラフィーによってチャネル保護膜5d、6dをパターン形成し、不純物半導体膜5f,5g、6f,6gとなる不純物層を堆積後、フォトリソグラフィーによって不純物層及び半導体層を連続してパターニングして不純物半導体膜5f,5g、6f,6g、半導体膜5b、6bを形成する。
そして、フォトリソグラフィーによってコンタクトホール11a〜11cを形成する。ついで、コンタクトホール11a〜11c内にコンタクトプラグ20a〜20cを形成する。この工程は省略されても良い。
スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iとなるソース、ドレインメタル層を堆積して適宜パターニングして、走査線2、電圧供給線4、キャパシタ7の電極7b、スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iを形成する。その後、ITO膜を堆積してからパターニングして画素電極8aを形成する。
【0042】
図7に示すように、スイッチトランジスタ5や駆動トランジスタ6等を覆うように、気相成長法により絶縁膜を成膜し、その絶縁膜をフォトリソグラフィーでパターニングすることで画素電極8aの中央部が露出する開口部12aを有する層間絶縁膜12を形成する。開口部12aとともに、図示しない走査線2の外部接続端子、ELパネル1の一辺に位置するデータドライバに接続するための各信号線3の外部接続端子及び電圧供給線4の外部接続端子をそれぞれ開口する複数のコンタクトホールを形成する。
なお、この画素基板の上面における画素電極8aと層間絶縁膜12の表面を純水超音波洗浄し、その後、Oプラズマ処理またはUVオゾン処理を施すことで、その表面を親水化することが好ましい。
【0043】
次いで、図8に示すように、画素電極8aとともに、基板10の上面側となる層間絶縁膜12上に、PEDOT/PSSが水などの溶媒に溶解または分散された液状体を、その表面全体をコーティングするように塗布し乾燥させ、その有機材料(PEDOT/PSS)を成膜させて複数の画素電極8aを跨るように正孔注入層8bを形成する。
【0044】
そして、図9に示すように、正孔注入層8b上にポリイミド等の感光性樹脂を堆積後、露光して画素電極8a上の正孔注入層8bが露出する開口部13aを有する格子状のバンク13を形成する。このとき、バンク13は、上記外部接続端子を開口するコンタクトホールを露出している。図4に示すように、バンク13の開口部13aは、層間絶縁膜12の開口部12aより一回り小さく、開口部12aより内側に設けられている。このため、バンク13は層間絶縁膜12上の正孔注入層8bばかりでなく、開口部12aにおける層間絶縁膜12の側壁に堆積された正孔注入層8bをも覆っており、正孔注入層8bが後述する湿式法によって成膜され、層間絶縁膜12の側壁に這い上がりが生じ開口部12a近傍が厚く堆積されたとしても、この厚く堆積された正孔注入層8bをバンク13が覆っているので開口部13aから露出している正孔注入層8bは表面が平滑な状態とすることができる。
【0045】
次いで、図10に示すように、正孔注入層8b上であって、画素電極8a上に相当するバンク13間となる開口部13a内に、機能層8iを構成する有機材料が溶媒に溶解または分散された液状体を、分離した複数の液滴として吐出するインクジェット方式又は連続した液流を流すノズルプリント方式により塗布し乾燥させることで、平滑な正孔注入層8b上に機能層8iを形成する。機能層8iは、開口部13aにおいて成膜される際にはい上がりを生じても、正孔注入層8bが平滑なため全体として開口部13a内側周縁の隆起が緩和されている。
さらに、図11に示すように、正孔注入層8b上であって、画素電極8a上に相当する開口部13a内における機能層8i上に、発光層8cを構成する有機発光材料が溶媒に溶解または分散された液状体をインクジェット方式又はノズルプリント方式により塗布し乾燥させることで、正孔注入層8b上の機能層8iに発光層8cを積層して形成する。発光層8cは、開口部13aにおいて成膜される際にはい上がりを生じても、正孔注入層8bが平滑なため全体として開口部13a内側周縁の隆起が緩和されている。
【0046】
そして、図5に示すように、バンク13の上及び発光層8cの上に、発光層8cを覆う対向電極8dを一面に成膜することで、有機EL素子8が構成されて、ELパネル1が製造される。
【0047】
このように、ELパネル1における正孔注入層8bは、発光せずつまり画素Pの発光色に直接寄与しないため、R(赤),G(緑),B(青)パターンの色に応じて各画素ごとに分離する必要がないため、バンク13が形成される前に、PEDOT/PSSなどの有機材料が含有される液状体を、基板10の上面側のほぼ全域に塗布しコートすることで形成することができるので、従来技術のインクジェット方式のように、バンク内の凹部に液状体を塗布するために、インクジェットノズルと凹部の位置合わせを行い、個々の画素ごとに液状体を塗布するというような煩雑な塗布工程を行うことに比べて、容易に正孔注入層8bを形成することができる。
特に、バンク13が形成される前に湿式成膜した正孔注入層8bであれば「這い上がり」がないので膜厚むらを低減することができ、より均一な膜厚を有する正孔注入層8bを形成することができる。具体的には、従来技術のように、バンク13における開口部13a内に、有機材料(PEDOT/PSS)が含有される液状体を塗布して正孔注入層を形成する場合には、その開口部13a内の壁面にも僅かながら有機化合物膜が成膜されるため、その液状体が開口部13aの壁面を上に這い上がるようにして成膜されたように見える現象(這い上がり現象)が起こり、凹部の中央側に比べてその壁面寄りの膜厚が厚くなってしまいがちになる。そのため、その正孔注入層に膜厚むらが生じてしまうこととなるが、バンク13が形成される前に成膜した正孔注入層8bであれば「這い上がり」のない、より均一な膜厚を有する正孔注入層8bとすることが可能になるのである。
そして、正孔注入層8bの膜厚が均一である程、その正孔注入層8b上に積層される機能層8iや発光層8cの膜厚を安定させやすくなるので、正孔注入層8b、機能層8i、発光層8cからなる有機発光層の膜厚むらを低減することができる。
【0048】
また、這い上がりをなくすことで、塗布した液状体の大部分を効率的に正孔注入層8bの平坦な膜部分とすることができるので、形成する正孔注入層8bの膜厚の管理や調整を行いやすくなる。
そして、正孔注入層8bや、正孔注入層8bを含む有機発光層の膜厚が均一である程、その発光効率が向上し、良好な発光が行われるようになるので、好適な膜厚を有する正孔注入層8bを形成することで、良好な発光が可能な有機EL素子8及びELパネル1を製造することができる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
前述した正孔注入層8bは、正孔注入層8bを構成する材料(PEDOT/PSS)が溶媒に溶解または分散された液状体を、基板10の上面側に塗布することによって形成する有機化合物膜であるとしたが、例えば、正孔注入層8bを構成する材料を、基板10の上面側に真空成膜することによって、正孔注入層8bを形成するようにしてもよい。真空成膜法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法等が挙げられる。
具体的には、正孔注入層8bを、例えば、有機金属錯体である銅フタロシアニンや、遷移金属酸化物である酸化モリブデン、酸化バナジウムなどの材料からなる層とする。
そして、図7に示す画素基板における画素電極8aと層間絶縁膜12の上に、画素Pに対応する部位が開口したメタルマスクを用いることなく正孔注入層材料を真空蒸着して形成して、図8に示すように、正孔注入層8bを形成してもよい。
また、上記実施形態では、走査線2の外部接続端子、信号線3の外部接続端子及び電圧供給線4の外部接続端子をそれぞれ開口するコンタクトホールに正孔注入層8bが入らないように、これらコンタクトホールの或る部位をマスキングしてもよいし、正孔注入層8bを形成してから正孔注入層8b及び層間絶縁膜12をエッチングしてコンタクトホールを形成してもよい。
また上記実施形態では、機能層8iを設けたが必要がなければ設けなくてもよい。
また上記実施形態では、正孔注入層8bを単層としたが、第一正孔注入層及び第一正孔注入層と異なる第二正孔注入層を連続して積層して正孔注入層8bとしてもよい。
また整合性があれば、上述した複数の構成を任意に組合せてもよい。
【0050】
(実施形態2)
次に、本発明に係るELパネルの実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同一部分には同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0051】
図12に示すように、ELパネルの有機EL素子81は、画素基板における画素電極8aと層間絶縁膜12の上面のほぼ全域に設けられた正孔注入層8bと、正孔注入層8b上の全面に設けられた機能層81iと、機能層81iの上に積層された発光層8cと、発光層8cの上に形成された対向電極8dとを備えている。
なお、バンク13は、機能層81iの上面における、層間絶縁膜12の上方に相当する位置であって画素電極8a間に相当する位置に形成されている。
【0052】
次に、この有機EL素子81を備えるELパネルの製造方法について説明する。
まず、図7に示すように、基板10の上面側である層間絶縁膜11上に画素電極8aを形成し、さらに、スイッチトランジスタ5や駆動トランジスタ6等を覆うとともに画素電極8aが露出する開口部12aを有する層間絶縁膜12を形成する。
そして、図8に示すように、画素電極8aと層間絶縁膜12の上面を覆うように、塗布あるいは蒸着などの手法によって正孔注入層8bを形成する。
【0053】
次いで、正孔注入層8b上の全面に、機能層81iを構成する有機材料が溶媒に溶解または分散された液状体をコーティングするように塗布し乾燥させ、その有機材料を成膜させて機能層81iを形成する。
また、機能層81i上であって、層間絶縁膜12の上方に相当し画素電極8a間に相当する位置に、各画素電極8aを画素Pごとに隔離する格子状のバンク13を形成する。
次いで、機能層81i上であって、画素電極8a上に相当するバンク13間となる開口部13a内に、発光層8cを構成する有機発光材料が溶媒に溶解または分散された液状体をノズルプリント方式により塗布し乾燥させることで、正孔注入層8b上の機能層81iに発光層8cを積層して形成する。(図12参照)。
【0054】
そして、図12に示すように、バンク13の上及び発光層8cの上に、発光層8cを覆う対向電極8dを一面に成膜することで有機EL素子81が構成されて、その有機EL素子81を備えるELパネルが製造される。
【0055】
このような有機EL素子81であれば、バンク13が形成される前に、正孔注入層8bと機能層81iを、基板10の上面側のほぼ全域にコートし形成することができるので、従来技術のように、ノズルによって液状体をバンク内の凹部に塗布する手法に比べて、容易に正孔注入層8bや機能層81iを形成することができる。
特に、バンク13が形成される前に成膜した正孔注入層8bや機能層81iであれば「這い上がり」がないので膜厚むらを低減することができ、より均一な膜厚を有する正孔注入層8bや機能層81iを形成することができる。
そして、正孔注入層8bや機能層81iの膜厚が均一である程、その正孔注入層8bや機能層81iの上に積層される発光層8cの膜厚を安定させやすくなるので、正孔注入層8b、機能層81i、発光層8cからなる有機発光層の膜厚むらを低減することができる。
そして、正孔注入層8bや機能層81iを含む有機発光層の膜厚が均一である程、その発光効率が向上し、良好な発光が行われるようになるので、好適な膜厚を有する正孔注入層8bや機能層81iを形成することで、良好な発光が可能な有機EL素子81及びELパネルを製造することができる。
このように、ELパネル1における正孔注入層8b及び機能層81iはキャリアの注入移動を制御するものであって画素Pの発光色に直接寄与しないため、R(赤),G(緑),B(青)パターンの色に応じて各画素ごとに分離する必要がないため、バンク13が形成される前に、PEDOT/PSSなどの有機材料が含有される液状体を、基板10の上面側のほぼ全域に塗布しコートすることで形成することができるので、従来技術のインクジェット方式のように、バンク内の凹部に液状体を塗布するために、インクジェットノズルと凹部の位置合わせを行い、個々の画素ごとに液状体を塗布するというような煩雑な塗布工程を行うことに比べて、容易に正孔注入層8bを形成することができる。
上記実施形態では、正孔注入層8bを単層としたが、第一正孔注入層及び第一正孔注入層と異なる第二正孔注入層を連続して積層して正孔注入層8bとしてもよい。
また上記実施形態では、機能層81iを単層としたが、第一機能層及び第一機能層と異なる第二機能層を連続して積層して機能層81iとしてもよい。
また整合性があれば、上述した複数の構成を任意に組合せてもよい。
【0056】
(実施形態3)
次に、本発明に係る単色発光ELパネルの実施形態3について説明する。なお、実施形態1、2と同一部分には同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0057】
図13に示すように、ELパネルの有機EL素子82は、画素基板における画素電極8aと層間絶縁膜12の上面のほぼ全域に設けられた正孔注入層8bと、正孔注入層8b上の全面に設けられた機能層81iと、機能層81i上の全面に設けられた発光層82cと、発光層82cの上に形成された対向電極8dとを備えている。
なお、バンク13は、発光層82cの上面における、層間絶縁膜12の上方に相当する位置であって画素電極8a間に相当する位置に形成されている。
【0058】
次に、この有機EL素子82を備えるELパネルの製造方法について説明する。
まず、図7に示すように、基板10の上面側である層間絶縁膜11上に画素電極8aを形成し、さらに、スイッチトランジスタ5や駆動トランジスタ6等を覆うとともに画素電極8aが露出する開口部12aを有する層間絶縁膜12を形成する。
そして、図8に示すように、画素電極8aと層間絶縁膜12の上面を覆うように、塗布あるいは蒸着などの手法によって正孔注入層8bを形成する。
【0059】
次いで、正孔注入層8b上の全面に、機能層81iを構成する有機材料が溶媒に溶解または分散された液状体をコーティングするように塗布し乾燥させ、その有機材料を成膜させて機能層81iを形成する。
さらに、機能層81i上の全面に、発光層82cを構成する有機発光材料が溶媒に溶解または分散された液状体をコーティングするように塗布し乾燥させ、その有機発光材料を成膜させて発光層82cを形成する。
また、発光層82c上であって、層間絶縁膜12の上方に相当し画素電極8a間に相当する位置に、各画素電極8aを画素Pごとに隔離する格子状のバンク13を形成する。(図13参照)この場合、バンク13は、対向電極8dの電界が、走査線2、信号線3、電圧供給線4、スイッチトランジスタ5、駆動トランジスタ6、又はキャパシタ7に干渉しないように保護する絶縁膜として機能している。
【0060】
そして、図13に示すように、バンク13の上及び発光層82cの上に、発光層82cを覆う対向電極8dを一面に成膜することで有機EL素子82が構成されて、その有機EL素子82を備えるELパネルが製造される。
なお、バンク13が形成される前に、基板10の上面側のほぼ全域にコートして形成される発光層82cを有する有機EL素子82を備えるELパネルは、モノカラーパネルとなる。
【0061】
このような有機EL素子82であれば、バンク13が形成される前に、正孔注入層8bと機能層81iと発光層82cを、基板10の上面側のほぼ全域にコートして形成することができるので、従来技術のように、ノズルによって液状体をバンク内の凹部に塗布する手法に比べて、容易に正孔注入層8bや機能層81iや発光層82cを形成することができる。
特に、バンク13が形成される前に成膜した正孔注入層8bや機能層81iや発光層82cであれば「這い上がり」がないので膜厚むらを低減することができ、より均一な膜厚を有する正孔注入層8bや機能層81iや発光層82cを形成することができる。
そして、正孔注入層8bや機能層81iや発光層82cの膜厚が均一である程、その発光効率が向上し、良好な発光が行われるようになるので、好適な膜厚を有する正孔注入層8bや機能層81iや発光層82cを形成することで、良好な発光が可能な有機EL素子82及びELパネルを製造することができる。
【0062】
上記実施形態では、正孔注入層8bを単層としたが、第一正孔注入層及び第一正孔注入層と異なる第二正孔注入層を連続して積層して正孔注入層8bとしてもよい。
また上記実施形態では、機能層81iを単層としたが、第一機能層及び第一機能層と異なる第二機能層を連続して積層して機能層81iとしてもよい。
また上記実施形態では、発光層82cを単層としたが、第一発光層及び第一発光層と異なる第二発光層を連続して積層して発光層82cとしてもよい。
また整合性があれば、上述した複数の構成を任意に組合せてもよい。
このように、各実施の形態においては、正孔注入層、機能層、発光層の3層よりなる有機発光層を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、電子注入層など備える3層以上の有機発光層を有する有機EL素子やELパネルであってもよい。
【0063】
また、実施形態3における有機EL素子のように、各画素Pに共通する発光層82cを有する有機EL素子82を備えるELパネルは、モノカラーパネルとなる。
一方、実施形態1、2における有機EL素子のように、隣接する画素Pごとに異なる有機材料が含有される液状体を塗布して成膜した発光層8cを有する有機EL素子8、81であれば、赤色の発光層、緑色の発光層、青色の発光層が順に繰り返すように設けられてなる、赤色の画素(R)、緑色の画素(G)、青色の画素(B)を有するフルカラーのELパネルとすることができる。
【0064】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
上記各実施形態では、バンク13の開口部13aが、画素P毎に設けられているが、隣接する画素が同色に発光するものであれば、同色の複数の画素群を1つの単位として開口部13aを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】ELパネルの画素の配置構成を示す平面図である。
【図2】ELパネルの概略構成を示す平面図である。
【図3】ELパネルの1画素に相当する回路を示した回路図である。
【図4】ELパネルの1画素を示した平面図である。
【図5】図4のV−V線に沿った面の矢視断面図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿った面の矢視断面図である。
【図7】ELパネルにおける画素電極と層間絶縁膜が形成された状態を示す断面図である。
【図8】ELパネルにおける正孔注入層が形成された状態を示す断面図である。
【図9】ELパネルにおけるバンクが形成された状態を示す断面図である。
【図10】ELパネルにおける機能層が形成された状態を示す断面図である。
【図11】ELパネルにおける発光層が形成された状態を示す断面図である。
【図12】実施形態2における有機EL素子及びELパネルを示す断面図である。
【図13】実施形態3における有機EL素子及びELパネルを示す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 ELパネル
8 有機EL素子
8a 画素電極(第一電極)
8b 正孔注入層
8i 機能層
8c 発光層
8d 対向電極(第二電極)
10 基板
11 層間絶縁膜
12 層間絶縁膜
13 バンク(隔壁)
13a 開口部
81 有機EL素子
81i 機能層
82 有機EL素子
82c 発光層
P 画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の基板の上面側に設けられた第一電極と、
前記第一電極、及び前記第一電極を除く前記基板の上面側を覆うキャリア注入層と、
前記キャリア注入層上であって、前記第一電極間に相当する位置に配設される隔壁と、
前記キャリア注入層の上面側であって、前記隔壁間に有機発光材料が溶媒に溶解または分散された液状体が塗布されて乾燥されてなる発光層と、
前記発光層を覆う第二電極と、
を備えることを特徴とするELパネル。
【請求項2】
所定の基板の上面側に設けられた第一電極と、
前記第一電極、及び前記第一電極を除く前記基板の上面側を覆うキャリア注入層と、
前記キャリア注入層の上面側を覆う発光層と、
前記発光層上であって、前記第一電極間に相当する位置に配設される隔壁と、
前記発光層を覆う第二電極と、
を備えることを特徴とするELパネル。
【請求項3】
前記キャリア注入層と前記発光層との間に、前記発光層の発光に寄与する機能層が備えられ、
前記機能層は、前記キャリア注入層上の全面または前記キャリア注入層上の前記隔壁間の範囲に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のELパネル。
【請求項4】
所定の基板の上面側に第一電極を形成する工程と、
前記第一電極を含む前記基板の上面側を覆うキャリア注入層を形成する工程と、
前記キャリア注入層上であって、前記第一電極間に相当する位置に隔壁を形成する工程と、
前記キャリア注入層の上面側であって、前記第一電極上に相当する前記隔壁間に、有機発光材料が溶媒に溶解または分散された液状体を塗布し発光層を形成する工程と、
前記発光層を覆う第二電極を形成する工程と、
を備えることを特徴とするELパネルの製造方法。
【請求項5】
所定の基板の上面側に第一電極を形成する工程と、
前記第一電極を含む前記基板の上面側を覆うキャリア注入層を形成する工程と、
前記キャリア注入層の上面を覆う発光層を形成する工程と、
前記発光層上であって、前記第一電極間に相当する位置に隔壁を形成する工程と、
前記発光層を覆う第二電極を形成する工程と、
を備えることを特徴とするELパネルの製造方法。
【請求項6】
前記キャリア注入層は、キャリア注入層を構成する材料が溶媒に溶解または分散された液状体が前記基板の上面側に塗布されて形成されることを特徴とする請求項4又は5に記載のELパネルの製造方法。
【請求項7】
前記キャリア注入層は、キャリア注入層を構成する材料が前記基板の上面側に真空成膜されて形成されることを特徴とする請求項4又は5に記載のELパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−218156(P2009−218156A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62687(P2008−62687)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】