説明

EL発光表示制御回路および制御方法

【課題】EL表示エレメントを短時間で確実に消灯させることにより、EL発光表示パネルの視覚的な演出効果を高めることが可能なEL発光表示制御回路および制御方法を提供すること。
【解決手段】EL表示エレメント106の点灯および消灯を制御する回路において、第1のフォトアイソレータ102の被制御端子をEL表示エレメントの制御端子107と高周波インバータ103との間に接続するとともに、第2のフォトアイソレータ104の被制御端子をEL表示エレメントの制御端子107とコモン端子108との間に接続する。またEL表示エレメントの点灯および消灯を行う制御方法において、EL表示エレメントの制御端子107と高周波インバータ103との間に接続された点滅用スイッチ102に点灯制御パルス信号110を供給するとともにと、EL表示エレメントの制御端子107とコモン端子108との間に接続された短絡用スイッチ104に前記点滅用スイッチと逆極性の信号を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
EL(エレクトロ・ルミネッセンス)発光表示装置は室内または夜間のような当該表示パネルが設置される周囲の明度がELの輝度に比較して暗い場所で使用される。本発明はこのEL発光表示装置の各表示エレメントの点灯と消灯を制御し、ネオンサインのように視覚的な動的表示効果を演出するためのEL発光表示制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平6−222162号公報
【0003】
EL発光体からなる発光シートや発光チューブは切り抜きや湾曲により任意の形状に加工することが容易である。このため、発光しようとする形状に加工した後、図4に示すように、交流電流を印加することにより点灯させ所望の発光表示効果が得られる。
【0004】
発光表示効果を演出する例として、特許文献1に、カラクリ時計において人形の動きと同期して複数のEL素子を選択的に発光させる技術があり、回転体の回転を利用してEL発光部の発光タイミングを規定するための電極あるいは電極に弾接可能な接片のいずれか一方を回転させ、この電極と接片の接離に応じてEL発光部を点滅発行させる装置が記載されている。この装置では、安価な機構でかつ正確なタイミングでEL発光部を点灯可能としており、また円弧上の電極の接片との接触部分の配置を変化させることにより多様な発光パターンを発生させることが可能である。
【0005】
また図4において点灯と消灯とを繰り返すことにより表示効果を演出するためには、低周波発信器404によって極めて低い周波数で起動停止信号を作成し、交流電流を発生するインバータ401の運転と停止を行うことにより実現できる。点灯すべきEL表示エレメント408が複数存在する場合には、リレーやロータリースイッチ406を用いて、各表示エレメントに個別に交流電流を通電し、この通電または否通電の時間的関係を制御して表示効果を演出することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらインバータの運転と停止による点滅を行う場合では、表示パネル全体を同時に点滅することになるため、演出効果としては極めて単調である。さらにインバータの運転と停止により、インバータに大きな電気的ストレスが恒常的に加わる結果、インバータの寿命が短くなるという問題点があった。
【0007】
またリレーやロータリースイッチを用いた接点開閉による点灯と消灯の制御では、接点の機械的時間応答速度の制限があり、点滅の時間的制約によって十分な演出効果が期待できないことが多く、またEL表示エレメントの発光に必要な電圧が100V前後と高電圧であるため、電気スパークによる接点の消耗により寿命が短くなるという問題点があった。
【0008】
高速かつ長寿命な発光制御素子として―般に「フォトリレー」または「半導体リレー」と呼ばれる、導通すると双方向に通電する特性を有するフォトアイソレータを用いることにより前記の問題点を回避できるが、この種のフォトアイソレータはそれが非導通である状態でもある程度の電流が漏れるため、EL発光体を完全に消灯させることができないという問題点があった。
【0009】
本発明はEL表示エレメントをフォトアイソレータ(Photoisolator)などの半導体を用いて点滅させる場合に、EL表示エレメントを短時間で確実に消灯させることにより、EL発光表示パネルの視覚的な演出効果を高めることが可能なEL発光表示制御回路および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のEL発光表示制御回路は、EL表示エレメントの点灯および消灯を制御する回路において、第1のフォトアイソレータの被制御端子をEL表示エレメントの制御端子と高周波インバータとの間に接続するとともに、第2のフォトアイソレータの被制御端子をEL表示エレメントの制御端子とコモン端子との間に接続することを特徴とする。ここでフォトアイソレータとして例えばフォトMOSFETやフォトトライアックなどがある。
【0011】
請求項2に記載のEL発光表示制御方法は、EL表示エレメントの点灯および消灯を行う制御方法において、EL表示エレメントの制御端子と高周波インバータとの間に接続された点滅用スイッチに点灯制御パルス信号を供給するステップと、EL表示エレメントの制御端子とコモン端子との間に接続された短絡用スイッチに前記点滅用スイッチと逆極性の信号を供給するステップを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載のEL発光表示制御回路は、第1のフォトアイソレータおよび第2のフォトアイソレータの制御端子に遅延回路を挿入することを特徴とする。ここで遅延回路の例として、ANDゲートおよびCR積分回路により構成される遅延回路などがある。
【0013】
請求項4に記載のEL発光表示制御方法は、EL表示エレメントの点灯から消灯または消灯から点灯に状態が反転する過程において反転時間を遅延させるステップを備えたことを特徴とする。ここで反転時間を遅延させる方法として、遅延回路を用いる方法やマイクロコンピュータのプログラムで遅延信号を発生させる方法などがある。
【発明の効果】
【0014】
請求項1または請求項2による発明によれば、EL表示エレメントを消灯する時に電気的短絡を発生させてEL表示エレメントを短時間で確実に消灯させることを可能としている。これによりEL発光表示パネルの視覚的な演出効果を高めることが可能となり、ネオンサインのように視覚的な動的表示効果を演出することができる。
【0015】
請求項3または請求項4による発明によれば、EL表示エレメントの点灯から消灯または消灯から点灯に状態が反転する過程において反転時間を遅延させることができるため、2つのフォトアイソレータの被制御端子間が同時に導通することがなくなり、回路の短絡により高周波インバータが破損することを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明を実施するための最良の形態(以下、単に「実施形態」と称する)について説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0017】
以下、図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明のEL発光表示制御回路の実施形態を表した回路図である。EL発光表示パネル105の各EL表示エレメント106の制御端子107の1,2,3,4をそれぞれ対応した第1のフォトアイソレータ102の被制御端子PS1、PS2、PS3,PS4を介して高周波インバータ103の出力の―端に接続し、高周波インバータ出力の他端にEL発光表示パネル105のコモン端子108を接続している。同時に、各EL表示エレメント106の制御端子107の1,2,3,4とコモン端子108との間にはそれぞれ第2のフォトアイソレータ104であるPS5、PS6、PS7,PS8の被制御端子を接続し、PS1〜PS4の制御端子とそれぞれ対応したPS5〜PS8の制御端子との間にはパルス信号を逆極性にするためのNOT回路109を挿入している。また、PS1〜PS4の制御端子には例えばマイクロコンピュータ101の出力ポートからの点灯制御パルス信号110により、あらかじめプログラムされた順序でPS1〜PS4の被制御端子を導通させるように構成している。
【0018】
図2は図1における1個のEL表示エレメントについての回路を抜き出して表したものである。高周波インバータ201の出力端子のひとつは第1のフォトアイソレータ204(PS1)の被制御端子3,4を介してEL表示エレメント207の制御端子208に接続され、高周波インバータ201のもう一つの出力端子はEL表示エレメント207のコモン端子209に接続されている。同時に第2のフォトアイソレータ205(PS5)の被制御端子はEL表示エレメント207の制御端子208とコモン端子209との間に接続されている。
【0019】
図2で点灯制御パルス信号202がハイレベルになると第1のフォトアイソレータPS1の制御端子(1-2)に接続されている内部発光ダイオードが点灯し、被制御端子(3-4)間が導通する。このとき、第2のフォトアイソレータPS5の制御端子には、NOT回路203により、点灯制御パルス信号202と逆極性のパルス信号が印加されているので、その被制御端子間は非導通状態になっている。この結果、EL表示エレメント207の制御端子208とコモン端子209間には高周波インバータ201の出力電圧である交流電圧が印加され、EL表示エレメント207が点灯する。
【0020】
次に点灯制御パルス信号202がローレベルに反転すると第1のフォトアイソレータPS1の制御端子(1-2)間電圧はローレベルとなり、被制御端子(3-4)間が非導通となる。このとき第2のフォトアイソレータPS5の制御端子間電圧がNOT回路203によってハイレベルになるので、その被制御端子間が導通状態となる。この結果、高周波インバータ201の出力は第1のフォトアイソレータPS1の寄生出力容量(Co)を介して漏れ電流程度の交流電流を流すが、第2のフォトアイソレータPS5の被制御端子間が導通状態であることによって、その電流がEL表示エレメント207に流れ込む量を極めて小さくすることができる。この結果EL表示エレメント207を短時間で確実に消灯させることができる。
【0021】
ここでEL表示エレメント207は電気的にはコンデンサに似た性質を有しており、その静電容量は発光面積に比例する。この結果、発光面積が小さいEL表示エレメント程静電容量が小さいため、第1のフォトアイソレータPS1の寄生出力容量(Co)とEL表示エレメント自体の静電容量との分圧比率によってEL発光エレメントに印加される電圧が増加することになる。このため、仮に第2のフォトアイソレータPS5が無い場合は、消灯のためにPS1を否導通となるように制御しても消灯することができない場合がある。
【0022】
そこで第2のフォトアイソレータであるPS5をEL表示エレメント207の制御端子208とコモン端子209との間に設け、PS1の制御信号パルスと逆極性で動作させると、PS1が非導通の場合はPS5が導通となり、EL表示エレメント207の制御端子208とコモン端子209間を短絡するので、高周披インバータ201の出力電圧がEL表示エレメント207に印加されなくなり、確実に消灯することが可能となる。
【0023】
またEL表示エレメント207を点灯または消灯するために、単純に点灯制御パルス信号202を第1のフォトアイソレータ204に導き、その反転信号を第2のフォトアイソレータ205に導くと、点灯から消灯または消灯から点灯に状態が反転する時点で第1のフォトアイソレータ204と第2のフォトアイソレータ205の両方の被制御端子間が同時に導通する瞬間が発生する。その結果、高周波インバータ201の出力が2つのフォトアイソレータによって短絡され、最悪の場合この短絡ルートに位置するフォトアイソレータまたは高周波インバータが破壊する。
【0024】
そこで2つのフォトアイソレータの制御端子に印加されるパルス電圧がローレベルからハイレベルに変化する時間的タイミングに反転遅延時間を設けることにより、前記EL表示エレメントを消灯するタイミングでは、第1のフォトアイソレータ204の被制御端子が非導通状態となってから第2のフォトアイソレータ205の被制御端子が導通となるようにする。また前記EL表示エレメントを点灯するタイミングでは、第2のフォトアイソレータ205の被制御端子が非導通状態となってから第1のフォトアイソレータ204の被制御端子が導通となるようにする。
【0025】
図3は反転遅延時間のタイミングチャートおよび反転遅延時間を実現する遅延回路を表した回路図である。反転遅延時間を設けるために第1のフォトアイソレータと第2のフォトアイソレータの両方の制御端子303にANDゲートおよびCR積分回路により構成される遅延回路を挿入する。これにより、前記表示エレメントを消灯するタイミングでは、第1のフォトアイソレータの制御端子303に印加するパルス電圧がローレベルに変化したときに、その非制御端子304が非導通となる時間遅れ以上の遅延時間を設けて第2のフォトアイソレータの制御端子303に印加するパルス電圧をハイレベルに変化させることができる。また前記表示エレメントを点灯するタイミングでは、第2のフォトアイソレータの制御端子303に印加するパルス電圧がローレベルに変化したときに、その非制御端子304が非導通となる時間遅れ以上の遅延時間を設けて第1のフォトアイソレータの制御端子303に印加するパルス電圧をハイレベルに変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のEL発光表示制御回路および制御方法を説明する図
【図2】第1図において1個のEL表示エレメントの回路を抜き出して表した図
【図3】本発明の遅延回路、および点灯と消灯のタイミングチャートを説明する図
【図4】従来のEL発光表示制御を説明する図
【符号の説明】
【0027】
101 マイクロコンピュータ
102 第1のフォトアイソレータ(点滅用スイッチ)
103 高周波インバータ
104 第2のフォトアイソレータ(短絡用スイッチ)
105 EL発光表示パネル
106 EL表示エレメント
107 制御端子
108 コモン端子
109 NOT回路
110 点灯制御パルス信号
201 高周波インバータ
202 点灯制御パルス信号
203 NOT回路
204 第1のフォトアイソレータ
205 第2のフォトアイソレータ
206 EL発光表示パネル
207 EL表示エレメント
208 制御端子
209 コモン端子
210 一例:フォトMOSFET
301 点灯制御パルス信号
302 フォトアイソレータ
303 制御端子
304 非制御端子
401 高周波インバータ
402 直流電源
403 高周波交流電源
404 低周波発信器
405 起動停止信号
406 リレーまたはロータリースイッチ
407 EL発光表示パネル
408 EL表示エレメント
409 制御端子
410 コモン端子



【特許請求の範囲】
【請求項1】
EL表示エレメントの点灯および消灯を制御する回路において、第1のフォトアイソレータの被制御端子をEL表示エレメントの制御端子と高周波インバータとの間に接続するとともに、第2のフォトアイソレータの被制御端子をEL表示エレメントの制御端子とコモン端子との間に接続することを特徴とするEL発光表示制御回路。
【請求項2】
EL表示エレメントの点灯および消灯を行う制御方法において、EL表示エレメントの制御端子と高周波インバータとの間に接続された点滅用スイッチに点灯制御パルス信号を供給するステップと、EL表示エレメントの制御端子とコモン端子との間に接続された短絡用スイッチに前記点滅用スイッチと逆極性の信号を供給するステップを備えたことを特徴とするEL発光表示制御方法。
【請求項3】
第1のフォトアイソレータおよび第2のフォトアイソレータの制御端子に遅延回路を挿入することを特徴とする請求項1に記載のEL発光表示制御回路。
【請求項4】
EL表示エレメントの点灯から消灯または消灯から点灯に状態が反転する過程において反転時間を遅延させるステップを備えたことを特徴とする請求項2に記載のEL発光表示制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−302680(P2006−302680A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123202(P2005−123202)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】