説明

ERB抗原のターゲッティング

下記a)〜d)を含んでなる、コンジュゲートであって、a)三官能性架橋部分が、b)リンカー1を介して親和性リガンドと、c)必要に応じてリンカー2を介して、細胞傷害性薬剤と、d)哺乳類の腫瘍表面で発現されるErb抗原と少なくとも5×10−1の親和性結合定数で結合する能力を有する抗Erb抗体またはその変異体と結合されており、前記親和性リガンドがビオチン、またはアビジンもしくはストレプトアビジンに対してビオチンと実質的に同等の結合機能を有するビオチン誘導体であり、ビオチンアミド結合の酵素的切断に対する安定性がリンカー1に導入されている、コンジュゲート。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、哺乳類Erb遺伝子産物に結合するコンジュゲート(conjugate)および該コンジュゲートを含んでなる新規な医薬組成物、該医薬組成物を含んでなるキットおよび体外装置、ならびにErb遺伝子産物を発現する癌の処置および/または診断のための方法に関する。
【0002】
背景技術
増殖因子およびそれらの受容体をコードする前癌遺伝子は乳癌および他のヒト悪性腫瘍の発症に寄与している(Aronson, SA, Science, 254: 1146-1153 (1991)ことから、新規な治療戦略のための可能性ある標的である。特に、この遺伝子の発現の増強は乳房、膀胱、肺および胃のより攻撃的な癌腫に見られている。
【0003】
ヒト上皮細胞増殖因子受容体−2(HER2)は細胞表面受容体をコードし、正常な細胞増殖と分化を担うシグナル変換経路に関与している(DiAgustine R & Richards RG, J. Mammary Biol Neoplasia 2:109-118 (1997))。しかしながら、このHER2受容体はヒト乳癌の15〜25%で過剰発現し(Hynes NE & Stern DF, 1198:165-184 (1994)、Revillion F et. al., Eur. J. Cancer 34:791-808 (1998))、このような過剰発現は、低い無病率および全生存率を含め、リンパ節転移陽性およびリンパ節転移陰性の女性における臨床結果の悪さと相関がある(Hynes NE & Stern DF, Biochim. Biophys. Acta, 1198:165-184 (1994); Slamon DJ et. al. Science, 244:707-712; Ravdin PM & Chamness GC, Gene, 159:19-27 (1995); Bell R. Oncology, 63 (suppl.1) :39-46 (2002))。さらに、最近では、HER2が標準的な抗癌療法に対する応答するのではないかということを示唆する証拠がある。PCT/US00/18283;PCT/US97/18385;PCT/US98/26266;EP1106183;PCT/US00/12552およびPCT/US00/17366も参照。
【0004】
HER−2はerbB上皮細胞増殖因子受容体チロシンキナーゼファミリーのメンバーである。1980年代の初頭、erbB受容体チロシンキナーゼは、鳥類赤芽球症腫瘍ウイルスが、ヒト上皮細胞増殖因子受容体(HER−1、ErbB1およびEGFRとしても知られている)と相同性の高い癌遺伝子をコードしていたことが発見された際に癌に関連づけられるようになった。その後、neuと呼ばれる遺伝子が化学的に誘導されたラット神経芽腫から同定され、この遺伝子は繊維芽細胞培養系統を形質転換することができ、HER−1遺伝子とは異なるが関連があることが示された(Shih, C et al., Nature, 290:261-264 (1981)、Schechter et al., Narure, 312:513-516 (1984))。それと同時に、他の2つに群、すなわち、ヒトerbB関連前癌遺伝子(HER−2と呼称)(Coussens et al., Science, 230:1132-1139 (1985)とc−erbB2(Semba et al., PNAS, 82:6497-6501 (1985))が独立に単離された。その後、これらの遺伝子はneuと同じであることが示された。Kingおよび共同研究者らもまた、ヒト乳癌細胞系統で過剰増幅されたEGFR関連遺伝子を同定したが、この遺伝子もまた、HER−2/neu/erbB2遺伝子と同一であることが判明した(King, CR. Et al., Science 229:974-976 (1985))。
【0005】
HER−1とHER−2は次のようないくつかの点で異なっている:HER−2遺伝子は第17染色体に存在するが、HER−1遺伝子は第7染色体にマッピングされている、また、HER−2mRNAおよびタンパク質は、HER−1遺伝子産物とはサイズが異なっている。erbB受容体チロシンキナーゼファミリーは他の2つのメンバー、HER−3およびHER−4(erbB4)を含んでおり、この4つ受容体は、チロシン自己リン酸化部位がフランキングしたキナーゼドメインを含む細胞内領域とともに、細胞外成分とトランスメンブラン成分からなる全体として膜貫通構造を共有している。
【0006】
異なるファミリーメンバーのドメイン間ではいくつかの機能の違いがある。例えば、HER−2は直接のリガンドを持たず、HER−3は内因性のキナーゼ活性を持たないと思われ、従って、シグナル伝達のためには、二量体形成を含む、異なるファミリーメンバー間でいくつかの複合体相互作用が必要となる。HER−2受容体は、リガンドと結合するHERファミリーの他のメンバーとヘテロ二量体を形成することによりシグナル伝達することができるか、または、2つのHER−2分子が合わさって内因性のキナーゼ活性を有するホモ二量体を形成することができる。HER−2の過剰発現はホモ二量体とヘテロ二量体双方の活発な動員の形成に有利である。ErbB受容体キナーゼの活性化により、いくつかのアダプタータンパク質が細胞質ドメインに動員され、次に、これがいくつかの下流シグナル伝達カスケードを誘導する。HER−2の活性化の最終的な結果は細胞増殖、分裂、分化、移動および接着に対する作用である/Yarden, Y & Sliwkowski, MX, Nature Reviews in Molecular and Cellular Biology, 2:127-137 (2001)に総説されている。
【0007】
Slamonおよび共同研究者らは、20〜30%のヒト乳癌でHER−2受容体が過剰発現していることを最初に報告した(Slamon, DJ et al., Science 235:177-182 (1987))。大多数の症例において、過剰発現はHER−2遺伝子の増幅により引き起こされる(Pauletti, G et al., Oncogene, 13:63-72 (1996))。ヒトHER2遺伝子の増幅および/または過剰発現は乳癌および卵巣癌の予後の悪さと相関している(Slamon, DJ et al., Science, 235:177-182 (1987);およびSlamon, DJ et al., Science, 244:707-712 (1989))。HER2の過剰発現はまた、胃、子宮内膜、唾液腺、肺、腎臓、結腸および膀胱の癌腫を含む他の癌腫とも関連づけられている。HER−2遺伝子の増幅の結果、ノーザンブロットによって検出されるようにmRNAのレベルの上昇、および免疫組織化学(IHC)またはウエスタンブロット解析により検出されるようにHER−2受容体のレベルの上昇がもたらされる。この遺伝子の過剰増幅は、罹患細胞の核に複数コピーのHER−2遺伝子が見られる場合、最も顕著には、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を用いて見られる。この技術は、臨床サンプルにおいてHER−2遺伝子の増幅を検出する有用な方法となっている。
【0008】
erbB3またはHER3と呼ばれる関連遺伝子も記載されている。米国特許第5,183,884号および同第5,480,968号;Plowman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:4905-4909 (1990); Kraus et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:9193-9197 (1989); 欧州特許出願第444,961a1号;およびKraus et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2900-2904 (1993)参照。Krausら(1989)は、ある種のヒト乳癌細胞系統には著しく高レベルのerbB3mRNAが存在していたことを発見し、erbB1およびerbB2同様、erbB3もいくつかのヒト悪性腫瘍で役割を果たしている可能性があることを示唆した。これらの研究では、いくつかのヒト乳癌細胞系統が定常ErbB3チロシンリン酸化の有意な上昇を示すことを実証し、さらに、この受容体はヒト悪性腫瘍において役割を果たしている可能性があることを示唆した。よって、ErbB3に結合する抗体を利用した診断バイオアッセイが、Krausらにより、米国特許第5,183,884号および同第5,480,968号に記載されている。
【0009】
また、癌におけるerbB3の役割は、他者によっても探求されている。それは乳房(Lemoine et al., Br. J. Cancer, 66:1116-1121 (1992))、胃腸管(Poller et al., J. Pathol., 168:275-280 (1992)、Rajkumer et al., J. Pathol., 170:271-278 (1993)およびSanidas et al., Int. J. Cancer. 54:935-940 (1993))、および膵臓癌(Lemoine et al., J. Pathol., 168:269-273 (1992)およびFriess et al. Clinical Cancer Research, 1:1413-1420 (1995))で過剰発現することが見出されている。
【0010】
ErbB3は、ErbB受容体ファミリーの中でも、内因性のチロシンキナーゼ活性がほとんどないか、または全くないという点で独特である(Guy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:8132-8136 (1994)およびKim et al. J. Biol. Chem. 269:24747-55 (1994))。Erb3はErbB2と同時発現する場合、活性なシグナル伝達複合体が形成され、ErbB2に対する抗体がこの複合体を崩壊させ得る(Sliwkowski et al., J. Biol. Chem., 269 (20):14661-14665 (1994))。加えて、ErbB2と同時発現した場合、ヘレグリン(HRG)に対するErbB3の親和性もより高い親和状態まで高められる。ErbB2−ErbB3タンパク質複合体に関しては、Levi et al., Journal of Neuroscience 15:1329-1340 (1995): Morrissey et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:1431-1435 (1995);およびLewis et al., Cancer Res., 56:1457-1465 (1996)も参照。
【0011】
Rajkumar et al., British Journal Cancer. 70(3):459-465 (1994)。この受容体を発現する細胞系統の固定に依存しない増殖に対して拮抗作用を有する、ErbB3に対するモノクローナル抗体が開発された。
【0012】
増殖因子受容体タンパク質チロシンキナーゼのクラス1サブファミリーはさらに拡大され、HER4/p180erbB4受容体を含むものとなっている(欧州特許出願第599,274号;Plowman, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:1746-1750 (1993);およびPlowman et al., Nature, 366:473-475 (1993)参照)。Plowmanらは、HER4発現の上昇が、乳腺癌を含む上皮起源のある種の癌腫と密接な関係があることを見出した。よって、欧州特許出願第599,274号には、HER4の発現を評価する、ヒト新生物性症状(特に、乳癌)の検出のための診断法が記載されている。
【0013】
HER2癌遺伝子のアクチベーターの探索により、ヘレグリンポリペプチドの一ファミリーの発見に至った。Lee et al., Genomics, 16:790-791 (1993);およびOrr-Urtreger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 90 pp. 1867-1871 (1993); PCT/US79/03546およびPCT/US97/11825によれば、これらのタンパク質は、ヒト第8染色体の短腕にマッピングされている単一の遺伝子の選択的スプライシングから生じたものであるようである。
【0014】
ヒト乳癌の無視できない少数派においてHER−2の過剰発現が見出されたこと、およびその予後の悪さの重要性が、研究者らに、治療標的としてHER−2を用いた薬剤を開発させるに至った。Genentech Inc.の研究者らをはじめいくつかのグループが、HER−2の細胞外ドメインに対してネズミモノクローナル抗体を作製し、これらの抗体のうちいくつかのものが、受容体を過剰発現させる細胞系統の増殖を阻害することができたことを示した(Hudziak, RM, et al Molecular Cell Biology, 9:1165-1172 (1989); Fendly, BM., et al. Cancer Research 50:1550-1558 (1990))。また、この作用は、HER−2を過剰発現するヒト乳癌異種移植片でも見られ、そこでは、この抗体の作用は、シスプラチンなどの抗新生物薬と相乗することが見出された(Pietras, RJ et al., Cancer Research, 9:1829-1838 1994); Harris, M & Smith, I, Endocrine-Related Cancer, 9:75-85 (2002))。
【0015】
Genentechの研究者らは、HER−2+細胞系統を阻害し得るネズミモノクローナル抗体のパネルを開発し;これらのうち最も強力なものはmuMAb 4D5であった。この抗体は、HER−2を過剰発現する細胞系統の増殖を著しく阻害するが、HER−2のレベルが上昇していない細胞には作用はほとんど、または全くなかったことが分かった(Sarup, JC. Et al., Growth Regulation, 1:72-82 (1991))。4D5はヒト乳癌異種移植片の増殖の強力な阻害剤であることが分かった(Beselga & Mendelsohn, Pharmacology Therapy, 64:127-154 (1994))ことから、さらなる臨床開発のために選択された。
【0016】
ヒト抗マウス免疫応答を惹起する可能性を軽減するために、次に、4D5ネズミモノクローナル抗体をヒト化した。Carterおよび共同研究者らは、ヒトκ軽鎖とIgG1定常領域をコードするプラスミドに抗体の超可変領域をサブクローニングして、キメラ抗体をコードするベクターを作製し、その後、これを部位特異的突然変異誘発によりさらにヒト化した(Carter, P., et al., PNAS: 89, 4285-4289 (1992))。このベクターをチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に形質導入し、次に、この細胞は培地に抗体を分泌し、抗体は培地から精製される。トラスツズマブと呼ばれるこのキメラ抗体は95%がヒトであり、5%がネズミであり、親抗体のHER−2エピトープに対して高い親和性を保持している。
【0017】
トラスツズマブ(trastumab)は、その親ネズミ抗体4D5の3倍のHER−2結合親和性を有する。4D5と同様に、HER−2過剰発現細胞系統に対して著しい抗増殖作用を有するが、HER−2を発現しない細胞に対してはほとんど作用がないことが示されている(Carter, P. et al., PNAS: 89, 4285-4289 (1992))。この抗増殖作用はまた、Baselgaおよび共同研究者らによりin vivo乳癌異種移植実験でも実証されており、そこでは、BT−474腫瘍異種移植片の増殖がトラスツズマブにより阻害されたことが確認された。1mg/kg未満の用量では、増殖は用量依存的に阻害されたが、より高い用量では増殖は全く見られなかった(Baselga, J. et al., Cancer Research, 58:2825-2831 (1998))。同じ研究で、研究者らは、パクリタキセルまたはドキソルビシンのいずれかに対するトラスツズマブの添加を調べた。化学療法単独では弱い抗腫瘍活性しか示さなかったが、トラスツズマブの併用処置では、化学療法の効果が著しく促進され、パクリタキセルとトラスツズマブで最大の増殖阻害が見られた。
【0018】
Pegramおよび共同研究者らは、HER−2トランスフェクトMCF7異種移植片モデルにおいて、他のいくつかの化学療法薬に対するトラスツズマブの作用を検討した。相乗的相互作用がシスプラチン、ドセタキセル、チオプテパ、シクロホスファミド、ビノレルビンおよびエトポシドで見られた。相加作用がドキソルビシン、パクリタキセル、ビンブラスチンおよびメトトレキサートで見られ、トラスツズマブと5−フルオロウラシル(5−FU)との組合せに拮抗作用があることが分かり(Pegram, M. et al., Oncogene, 18:2241-2251 (1999); Konecny, G, et al., Breast Cancer Research and Treatment, 69:53-63 (2001))、Pegram, MD. Et al., Seminars in Oncology, 27:21-25 (2000)に総説されている。これらのin vivoモデルで見られた相乗作用は、化学療法との併用におけるトラスツズマブの臨床試験における探求に至らせた。
【0019】
トラスツズマブ(ヘルセプチン(Herceptin)(商標))は、HER2陽性転移性乳房疾患患者において単剤療法として投与した場合(Cobleigh MA et al. J. Clin. Oncol. 17:2639-2648 (1999); Vogel CL. et. al. J. Clin. Oncol. 20:719-726 (2002))、または化学療法との併用の場合に(Slamon DJ. et. al. N. Engl. J. Med. 344:783-792 (2001)でも有意な臨床利益を与えることが示されている。トラスツズマブ療法には著しい生存利益が伴い(Vogel CL. et. al. J. Clin. Oncol. 20:719-726 (2002); Slamon DJ. et. al. N. Engl. J. Med. 344:783-792 (2001))、免疫組織化学(IHC)により腫瘍がIHC3+タンパク質の過剰発現が証明されている患者において、化学療法に付加した場合に、化学療法単独の場合に比べて(それぞれ29ヶ月と20ヶ月)、生存期間中央値に45%の上昇する場合を含む(Smith IE, Anticancer Drugs 12 (suppl. 4):S3-S10 (2001))。この増補の他所で示されているように、交差試験比較から得られた証拠は、転移状態において、トラスツズマブで達成される臨床利益は早期に処置するほど大きいことを示唆している(Bell R. Oncology, 63 (suppl.1) :39-46 (2002))。
【0020】
WO03/03511(The AB Research Foundation)では、標的化薬物送達のための多剤多リガンドコンジュゲートが開示されており、ここでは、上皮細胞増殖因子受容体認識ペプチド、モノクローナル抗体またはその一部がターゲッティング分子として使用可能である。
【0021】
WO01/00244(Genentech, Inc.)では、抗ErbB抗体−メイタンシノイドコンジュゲートを用いた処置方法が開示されており、ここでは、メイタンシノイドが抗ErbB抗体に直接結合されている。
【0022】
WO00/02050(Mitra Medical Technology AB and Department of Radiation Oncology, University of Washington)では、生体分子とのコンジュゲーションのための三官能性試薬が開示されている。
【0023】
米国では2003年の間に女性に新たに推計211,300症例の浸潤性乳癌が発生すると見込まれている。乳癌は女性において最も多く診断される非皮膚癌である。乳癌の罹患率は1980年以来増え続けているが、1980年代に比べ、1990年代ではその増加率が緩やかになっている。さらに、もっと最近では、乳癌の罹患率は50歳以上でのみ増加している。2003年には、男性において新たに約1,300症例の乳癌が見込まれている。
【0024】
2003年中に女性において、浸潤性乳癌の他、新たに55,700症例のin situ乳癌が見込まれている。これらのうち、およそ85%はin situ腺管癌腫(DCIS)である。DCIS症例の検出の増加は、触知可能となる前に、すなわち、自覚できる前に浸潤性乳癌を検知するマンモグラフィーによるスクリーニングの使用増加の直接的結果である。
【0025】
乳癌から見込まれる推計40,200人の死亡(女性39,800人、男性400人)は、女性における癌死亡の第二位にランクされる。最新のデータによれば、死亡率は、1989〜1995年では1年に1.4%、その後は3.2%低下し、白人およびアフリカ・アメリカン双方の若年層の女性で最も低下が大きい。これらの低下はおそらく早期発見と処置の向上の結果である。
【0026】
腫瘍は手術で摘出されるといえども、体内の離れた部位に拡散している顕微鏡的癌細胞が存在し得るので、常に再発のリスクがある。患者の再発リスクを軽減するために、多くの乳癌患者が化学療法を受けている。化学療法とは、全身に行き渡る抗癌薬の使用である。
【0027】
多くの異なる化学療法薬が存在し、通常、患者が手術を受けてから3〜6ヶ月間併用して与える。受ける化学療法計画のタイプによって、3または4週間置きに投薬すればよく、薬物の多くは全身投与しなければならない。最も一般的な投与計画の2つが、AC(ドキソルビシンとシクロホスファミド)3ヶ月、またはCMF(シクロホスファミド、メトトレキサートおよびフルオロウラシル)6ヶ月である。
【0028】
患者は癌を再発したり、乳房外の疾病を伴う第IV期へと進行したりすることもある。これらの患者には総て化学療法が必要であり、応答が見られるまで異なる多様な薬剤が試される。手術前に化学療法、すなわち、術前化学療法が施されることもある。これは通常、手術可能なまでに萎縮させる必要がある極めて進行した癌に対して施される。
【0029】
乳癌には高エネルギー放射線療法を施すことが多く、これには放射線療法治療所に1週間に5日、最大6週間通う必要がある。放射線は局部再発のリスクの軽減に重要であり、より進行した症例において、リンパ節に存在する可能性のある腫瘍細胞を死滅させるために施される場合が多い。
【0030】
トラスツズマブ(ヘルセプチン)は、Her−2を過剰発現する患者の乳癌に対して「平均生存期間」を引き延ばすことが示されているが、化学療法との併用の場合に最も重要な作用を表す。しかしながら、これらの併用療法は重篤な副作用、特に、心室機能不全およびうっ血性心不全を受け、場合によっては死に至る。心機能不全の罹病率および重篤度は、ヘルセプチンとアントラサイクリンおよびシクロホスファミドを併用した患者で特に高い。
【0031】
放射免疫ターゲッティング法は、いくつかの癌の適応症に対して裸の抗体よりも有効であることが分かっている(Goldenberg D. M. & Nabi, H. A., Cancer 89:104-113, 2000)。
【0032】
「裸の抗体」(naked antibodies)の有効性が、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)と補体の活性化を介して宿主の腫瘍応答を誘導する能力に頼るものであるが、あるいは、トラスツズマブ(ヘルセプチン)の場合と同様に、増殖シグナルを妨げることによりさらなる増殖を阻害、おそらくは回避する。他方、放射性標識抗体は、放射性粒子の放出により腫瘍細胞を死滅させることから、宿主免疫エフェクター機能が損なわれた場合でも有効であり得る。さらに、放射性核種の特徴によって、放射免疫療法は免疫標的化細胞から離れた細胞を破壊することができる(交差発火(cross firing))。結果として、総ての細胞が標的化される必要はないので、ヘテロな腫瘍(種々の程度の抗原を発現する腫瘍)であっても処置することができる。従って、放射性核種を有する抗体は、それらの細胞死滅作用を発揮するために腫瘍特異的結合部位だけを必要とする。しかしながら、放射免疫ターゲッティング法はまた、裸の抗体と組み合わせて、かつ/または化学療法もしくは体外照射と一緒に使用可能である。
【0033】
いくつかの研究で、乳癌における放射免疫ターゲッティング法の使用が探求された。抗原標的としては、主としてCEA、MUC1およびL6が含められている。乳癌に用いられるこれら、またはその他の抗体が最近総説されている(Goldenberg D. M. & Nabi, H. A., Cancer 89:104-113, 2000)。
【0034】
しかしながら、正常器官への毒性は、患者へ安全に投与できる放射線量を制限し、その結果、腫瘍へ吸収される量を制限する。最初の用量制限器官は骨髄である。局在したB細胞リンパ腫同様、血液性の癌は、30〜44Gyの線量での放射線外部照射治療によって治癒される可能性がある。幹細胞支持療法を用いない従来型の放射免疫療法で達成され得る用量は実質的に低下する。Wisemanらは、第3相試験でB細胞リンパ腫における用量の中央値は15Gyであると報告している(Wiseman G et al., Critical reviews in Oncology/Hematology 39 (2001) 181-194)。奏功率は他覚的奏功率80%および完全奏功34%であった。幹細胞支持療法を用いるシアトルのグループは、最高の寛解率である完全寛解率80%を報告している(Liu Steven Y. et al., J. Clin. Oncol. 16(10):3270-3278, 1998)。彼らは腫瘍部位を推定して27〜92Gyを達成した。
【0035】
非血液学的な線量制限毒性は、27Gy以上の線量で肺に起こる、可逆性肺機能不全であった。この研究は完全に比較できるものではないが、RITにおける線量効果関係を示すものである。線量との関係が存在する場合、高線量を腫瘍へ送達できるのであれば効力を増加させることは可能であると思われる。RITの後の完全寛解はより長い寛解の持続時間に関連するので、これは臨床上最も関連性がある(Wahl et al., J. Nucl. Med. 39:21S-26S, 1998)。
【0036】
これに対する障害が骨髄の放射線感受性である。骨髄へ吸収される線量が多いほど、骨髄破壊を生じる可能性がある。従って、より有効な治療に到達するために必要な線量には、骨髄などの正常器官の毒性につながる血液循環中の放射能の蓄積が障害となる。静脈内投与後の細胞傷害性ターゲッティング生体分子(例えば、治療用または診断用モノクローナル抗体)から血液を浄化するための種々の手段が報告されている(Schriber G.J.およびKerr D. E.による総説Current Medical Chemistry 2:616-629, (1995); Goldenberg D. M., J. Nucl. Med 43:693-713 (2002)およびCarlsson et. al. Radiotherapy and Oncology 66:107-117 (2003)参照)。
【0037】
腫瘍に診断および治療を得るのに十分な量の免疫複合体を蓄積した後に、血液循環から放射性標識抗体を迅速に浄化するための種々の方法が提案されている。採用されている方法のうちいくつかでは、免疫複合体の形成を通じて身体固有の浄化機構を高めることを含む。放射性標識抗体の血液クリアランスの増強は、治療用抗体に対する他のモノクローナル抗体(Klibanov et al, J. Nucl. Med 29:1951-1956 (1988); Marshall et al, Br. J. Cancer 69:502-507 (1994); Sharkey et al, Bioconjugate Chem. 8:595-604, (1997) などの、治療用抗体と結合する分子、アビジン/ストレプトアビジン(Sinitsyn et al J. Nucl. Med. 30:66-69 (1989)、Marshall et al Br. J. Cancer 71:18-24 (1995))、または肝細胞上の受容体によって除去されるグリコシル含有化合物(Ashwell and Morell Adv. Enzymol. 41:99-128 (1974)を用いることで得ることができる。
【0038】
いわゆるアビジン追跡様式(avidin chase modality)では、ビオチンがそれに付着されている治療用または診断用抗体の投与後、十分な量の抗体が腫瘍内に蓄積した時点で、アビジンまたはストレプトアビジンを全身投与する。アビジンまたはストレプトアビジンは抗体と会合し、そのようにして生じた免疫複合体は細網内皮系(RES)を介して血液循環から浄化され、肝臓を介して患者から排出される。このような方法はビオチニル化した細胞傷害性抗体のクリアランスを改善する。同じ目的に対する別のアプローチとして、抗イディオタイプ抗体の使用がある。しかし、これらの方法は総て血液クリアランスを肝臓または腎臓に頼るものであり、その結果、生命維持に重要なこれらの器官のいずれかまたは双方、ならびに膀胱が高用量の細胞傷害性に曝される。
【0039】
この方法のもう1つの主な欠点は、このような薬剤、特にストレプトアビジンの免疫原性であり、これは、ひとたび免疫応答が起こると反復処置の妨げとなる。
【0040】
血液クリアランスのための体外技術は、腎機能の不足によって有毒物質が血中に蓄積している場合の腎臓透析に広く用いられている。体外装置が使用できるその他の医療適用としては、放射性物質の除去、有毒レベルの金属の除去、細菌またはウイルスから産生される毒素の除去、有毒レベルの薬物の除去、および細胞全体の除去(例えば、癌細胞、特定の造血細胞、例えば、B細胞、T細胞またはNK細胞)、あるいは細菌およびウイルスの除去が挙げられる。
【0041】
血液循環から薬剤を浄化するために用いられる体外技術は、有毒物質が体内から迅速に除去されるので、特に魅力的である。
【0042】
このような方法の適用は免疫ターゲッティングに関してすでに記載されている(Henry Chemical Abstract 18:565 (1991); Hofheinze D. et al Proc. Am. Assoc. Cancer Res. 28:391 (1987); Lear J. K. et al Antibody Immunoconj. Radiopharm. 4:509 (1991); Dienhart D. G. et al Antibody Immunoconj. Radiopharm. 7:225 (1991); DeNardo S.J. et al J. Nucl. Med 33:862-863 (1992); DeNardo G.L. et al J. Nucl. Med 34:1020-1027 (1993); DeNardo G. L. J. Nucl. Med 33:863-864 (1992);および米国特許第5,474,772号(Method of treatment with medical agents)。
【0043】
血液クリアランスをより効果的にし、かつ、全血の処理を可能にするためには、上記の方法に言及される血漿よりも、薬剤(例えば、腫瘍局在のための、殺細胞薬または放射性核種を有する腫瘍特異的モノローナル抗体)をビオチニル化し、カラムマトリックス上のアビジン系吸着剤によって排出する。多数の刊行物が、ビオチニル化し放射性核種で標識した腫瘍特異的抗体のクリアランスにこの技術が効果的かつ実用的であることを示すデータを提供している(Norrgren K. et al, Antibody Immunoconj. Radiopharm. 4:54 (1991), Norrgren K. et al J. Nucl. Med 34:448-454 (1993); Garkavij M. et al Acta Oncologica 53:309-312 (1996); Garkavij M. et al, J. Nucl. Med. 38:895-901 (1997))。
【0044】
このような技術は、EP0567514および米国特許第6,251,394号にも記載されている。Mitra Medical Technology AB, Lund, Swedenが開発および製造したMitraDep(商標)装置はこの技術に基づいたものである。ビオチン標識した治療用抗体とのコンジュゲートの際にアビジンコートフィルターを用いることによって、この血液クリアランス技術をキメラまたは完全ヒト化抗体にも同様にうまく適用することができる。実験データから、3時間の吸着手順の間に、90%を越える循環ビオチニル化抗体がMitraDep(商標)システム(Clinical Investigator’s Brochure-MitraDep(商標)によって除去され得ることが明らかとなっている。このことは最近の臨床試験で確認されている。
【0045】
体外フィルターへ吸着させるため、細胞傷害性薬剤(例えば、放射性核種)を有するモノクローナル抗体は、患者へ投与する前にビオチニル化する(ビオチンがフィルター中のアビジンと不可逆的に結合する)必要がある。ビオチニル部分の数は、IgG分子につき3〜6の範囲、一般的には4である。
【0046】
しかしながら、ほとんどの場合、キレート化基およびビオチニル基との結合のために、抗体上の同じ種類の官能基(ε−アミノ基)が利用され、最も利用しやすい部位の競合につながる。
【0047】
抗体のキレート化および/またはビオチニル化の結果、不均一な製剤が生じ、例えば、もしキレート抗体が1抗体につき平均3つのキレートを有するならば、その製剤は実際に1キレート/抗体〜7キレート/抗体の範囲の抗体混合物を含む。キレートとビオチンは抗体上の同じ部分と結びつくので、キレート数の多い抗体はビオチン分子の数が少なくなることもあり、キレート数の多い抗体はビオチンを全く含まないこともある。
【0048】
このことは、統計上は、放射性核種を有するがビオチンを含まない抗体の集団が血液中に循環し、それらの抗体はMitraDep(商標)フィルターによっては除去されないことを意味する。
【0049】
裸の治療用または診断用抗体の標識化を促進するため、また、必ずビオチンと放射性標識の割合を1対1にするため、Mitra Medical Technology AB, Lund, Swedenは、2種類の官能基を含み、それによってキレート化基(放射性標識用)およびビオチン基の同時かつ部位特異的コンジュゲートを可能にする、一連の新規な水溶性構造(タグ試薬;MitraTag(商標))を開発した。
【0050】
この後者の方法は一連の放射性核種の標識とビオチニル化に優るいくつかの利点を持ち、裸の(非キレート)抗体が病院へ供給され、そして、放射性標識工程に加えて、キレート基とビオチン基の双方を抗体にコンジュゲートしなければならない場合に特に魅力的である。
【0051】
これらの薬剤のさらなる開発および適用については、米国特許第6,251,394号;PCT/SE98/01345;PCT/SE99/01241;PCT/SE99/01241;米国09/519998;米国09/750,280;PCT/SE02/01191およびWilbur, S. D, et. al. Bioconjugate Chemistry, 13:1079-1092 (2002)に記載されている。
【0052】
キレート化基DOTAで標識されたタグ試薬はMitraTag(商標)−1033と呼ばれ、下記の定義の部分でも説明される。
【発明の概要】
【0053】
本発明の目的は、前癌遺伝子Erbを発現する特定の癌疾患の処置に関する上述の問題を解決することである。この目的は、特許請求の範囲および下記の説明で定義されるような本発明により達成される。
【0054】
本発明は、抗Erb抗体を含むコンジュゲート、抗Erb抗体を含むコンジュゲートを含んでなる医薬組成物、該医薬組成物を含んでなるキット、および癌遺伝子タンパク質HERを発現する癌、すなわち、特に乳癌および卵巣癌の処置および/または診断のための種々の方法を包含する。
【0055】
より詳しくは、本発明は、一つの態様において、
下記a)〜d)を含んでなる、コンジュゲートであって、
a)三官能性架橋部分が、
b)リンカー1を介して親和性リガンドと、
c)必要に応じてリンカー2を介して、細胞傷害性薬剤と、
d)哺乳類の腫瘍表面で発現されるErb抗原と、少なくとも5×10−1の親和性結合定数で結合する能力を有する、抗Erb抗体またはその変異体と
結合されており、
前記親和性リガンドがビオチン、またはアビジンもしくはストレプトアビジンに対してビオチンと実質的に同等の結合機能を有するビオチン誘導体であり、
ビオチンアミド結合の酵素的切断に対する安定性がリンカー1に導入されている、コンジュゲートに関する。
【0056】
もう1つの態様では、本発明は、前記コンジュゲートと医薬上許容される賦形剤を含んでなる医薬組成物に関する。
【0057】
さらなる態様において、本発明は、哺乳類宿主の血漿または全血において、該コンジュゲートを含んでなる非組織結合医薬組成物を体外排除する、または少なくともその濃度を低下させるためのキットであって、前記医薬組成物がその哺乳類宿主の体内に事前に導入され、特定の組織または細胞に付着させることによってその特定の組織または細胞に集中するように一定の時間そこに維持され、
a)前記医薬組成物、および
b)そのコンジュゲートの親和性リガンドが接着する固定化受容体を含んでなる体外装置
を含んでなるキットに関する。
【0058】
さらなる態様において、本発明は、哺乳類宿主において、その腫瘍細胞表面でErb遺伝子産物を発現する癌を処置および/または診断ための方法であって、該医薬組成物がそれを必要とする哺乳類に投与される、請求項33〜35に記載の方法に関する。
【0059】
本発明のさらなる利点および目的を、特に添付の図面を参照して下記に詳しく説明する。
【発明の具体的説明】
【0060】
定義:
本明細書で用いる場合、「裸の抗体」とは、抗体の作用を増強するために免疫グロブリン構造にいずれの薬剤または構造も結合されていない、抗体、抗体フラグメント、「単鎖Fv」抗体フラグメントまたは「ダイアボディー」(diabodies)を意味し、従って、この裸の抗体の腫瘍細胞に対する作用はその抗体自体の固有の作用に頼らなければならない。
【0061】
本明細書において「モノクローナル抗体」とは、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体をさし、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、自然に起こり得る突然変異が少量存在するかもしれないこと以外は同一である。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原部位に対するものである。さらに、一般に種々の抗原決定基(エピトープ)に対する種々の抗体を含む通常の(ポリクローナル)抗体製剤とは対照的に、各モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンの混入がない、ハイブリドーマ培養によって合成されるという点で有利である。修飾語の「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体集団から得られたという抗体の特徴を示すものであって、何らかの特定の方法によってその抗体が生産される必要があるというようなものではない。例えば、本発明に従って用いられるモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256:495 (1975)が最初に記載したハイブリドーマ法によって作製してもよいし、あるいは、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号)によって作製してもよい。モノクローナル抗体はまた、例えば、Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載の技術を用い、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0062】
本明細書においてモノクローナル抗体は具体的には、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における相同または相当配列と同一であるが、それらの鎖の残りの部分が別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における相同または相当配列と同一である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびにそれらが所望の生物活性を示す限り、そのような抗体のフラグメントを含む(米国特許第4,816,567号;Morrison et l., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984))。
【0063】
非ヒト(例えば、ネズミ)抗体の「ヒト化された」(humanized)形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含む、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2または抗体の他の抗原結合部分配列など)である。ほとんどの部分については、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基で置換されている。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が相当する非ヒト残基で置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、導入CDRまたはフレームワーク配列にもない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに精密化する、または至適化することを目的になし得る。
【0064】
一般に、ヒト化抗体は実質的に総ての、または少なくとも1つの、一般には2つの可変ドメインを含み、CDR領域の総てまたは実質的に総てが非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、FR領域の総てまたは実質的に総てがヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、一般にはヒト免疫グロブリンのものも含む。さらに詳しくは、Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986): Reichmann et al., Nature. 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992)参照。ヒト化抗体はマカクザルを対象とする抗原で免疫することで作製されている。
【0065】
「抗体フラグメント」は、完全抗体の一部、一般には、完全抗体の抗原結合領域または可変領域を含んでなる。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvフラグメント;ダイアボディー;単鎖抗体分子;ならびに抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0066】
「単鎖Fv」抗体フラグメントは抗体のVHドメインとVLドメインを含んでなり、これらのドメインは1つのポリペプチド鎖に存在する。一般に、FvポリペプチドはVHドメインとVLドメインの間にさらにポリペプチドリンカーを含み、これにより、このsFvに抗原結合に望ましい構造を形成させることができる。sFvの総説としては、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenbourg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)参照。
【0067】
「ダイアボディー」とは、2つの抗原結合部位を有する抗体の小フラグメントをさし、このフラグメントは、同じポリペプチド鎖において軽鎖可変ドメイン(VL)に連結した重鎖可変ドメイン(VH)を含んでなる(VH−VL)。同じ鎖上の2つのドメイン間で対合するには短いリンカーを用いることで、これらのドメインは強制的に別の鎖の相補的ドメインと対合して、2つの抗原結合部位を作り出す。ダイアボディーはについては、例えば、EP404,097;WO93/11161;およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により詳しく記載されている。
【0068】
本明細書で用いる「抗Erb抗体」とは、腫瘍細胞上で発現される様々な種類の哺乳類erb遺伝子産物と、少なくとも5×10−6−1の親和性結合定数で特異的に結合する能力を有する抗体を意味するものとする。この用語には、限定されるものではないが、erb1、erb2、erb3およびerb4に対する抗体が含まれる。
【0069】
本願においてerbまたはerb抗原とは、様々な種類の哺乳類erb遺伝子産物をさし、特に、抗腫瘍抗体の標的としてのこれらの遺伝子産物の使用をさす。
【0070】
本明細書において、抗Erb抗体の「変異体」とは、Erb抗原分子と結合する際に同等、または実質的に類似の親和性結合定数、すなわち、少なくとも5×10−1の親和性結合定数を有するそのいずれかの修飾物、フラグメントまたは誘導体を意味する。
【0071】
これらの変異体はいずれも、腫瘍組織において、抗体または抗体フラグメントまたは誘導体の体液中での半減期および保持を至適化するために、種々の数のポリエチレングリコール鎖を結合させることで改変することができた。最も好ましい適用では、これらの抗体または抗体誘導体は、ターゲッティング剤の結合特性を有意に損なわずに、固定化アビジンとの相互作用による体外排除に用いるに十分な数のビオチン残基の付着を見込めなければならない。
【0072】
「処置」(treatment)とは、治療的処置と予防的または回避的手段の双方をさす。処置を必要とするものには、すでに疾患を有するもの、ならびに疾患を回避しようとするものが含まれる。
【0073】
処置の目的に関して「哺乳類」とは、ヒト、家庭動物および農場動物、ならびに動物園の動物、競技動物またはペット動物、例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ウシなどをはじめ、哺乳類に分類されるいずれの動物もさす。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0074】
「疾患」は、抗Erb抗体による処置から利益を受ける状態である。これには、哺乳類を対象とする疾患に罹りやすくする病的状態を含む慢性および急性の疾患または疾病が含まれる。本明細書で処置される疾患の非限定的な例としては、良性および悪性腫瘍;白血病およびリンパ系悪性腫瘍;神経細胞性疾患、神経膠性疾患、星状細胞性膝下、視床下部疾患および他の腺性疾患、マクロファージ性疾患、上皮疾患、間質性疾患および胚胞性疾患;ならびに炎症性疾患、脈管形成性疾患および免疫疾患が挙げられる。
【0075】
「癌」および「癌性」とは、一般に制御を欠いた細胞増殖を特徴とする哺乳類における生理状態をさす、または表す。癌の例としては、限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞種、肉腫および白血病が挙げられる。このような癌のより詳しい例としては、扁平細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃腸管癌、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney cancer)、腎臓癌(renal cancer)、前立腺癌、陰門癌、甲状腺癌、肝癌腫および様々な種類の頭頸部癌が挙げられる。
【0076】
本明細書において「細胞傷害性薬剤」(cytotoxic agent)とは、細胞の機能を阻害する、または妨げ、かつ/または細胞の破壊を引き起こす物質をさす。この用語には放射性同元素(例えば、I、Y、Lu)、化学療法薬、および限定されるものではないが、細菌、真菌、植物または動物起源の活性毒素またはその断片を含むものとする。インジウム−111のようないくつかの放射性核種は診断薬として用いられ、低活性のものはそれ自体で投与されるが、高用量で与える場合には、治療目的でも使用でき、従って、それらは本明細書では細胞傷害性薬剤とも呼ばれる。
【0077】
「化学療法薬」は、癌の処置に有用な化学化合物である。化学療法薬の例としては、アドリアマイシン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara−C」)、シクロホスファミド、チオプテパ、ブスルファン、サイトキシン、タキソール、メトトレキサート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、エトポシド、イフォスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、カルボプラチン、テニスポシド、ダウノマイシン(Duanomysin)、カルミノマイシン、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、エスペラマシン(米国特許第4,675,187号参照)、メイタンシノイド、メルファランおよび関連の他のナイトロジェンマスタードが挙げられる。
【0078】
本明細書において「MitraTag(商標)−1033」は略して「1033」とも呼ばれ、化合物3−(13’−チオ尿素ベンジル−DOTA)トリオキサジアミン−1−(13”−ビオチン−Asp−OH)−トリオキサジアミン−5−イソチオシアナト−アミノイソフタレートをさす。
【0079】
以下、また、本発明の実施形態も用いて本発明を詳細に説明する。
【0080】
腫瘍細胞表面でErb遺伝子産物を発現するあらゆる種類の癌が本発明の医薬組成物、キットまたは方法での処置に適用できる。好ましい態様では、本医薬組成物、キットまたは方法は乳癌または卵巣癌に適用される。最も好ましい適用は、いわゆるHER−2型の乳癌であり、これはHER−2を過剰発現する乳癌である。この種類のものはErb−B2またはc−erb−2としても知られる。
【0081】
本発明は特にある種の乳癌および卵巣癌の処置において新しい医薬組成物を提供する。
さらに、本発明によれば、細胞傷害性薬剤の投与後に血液循環中の細胞傷害性薬剤の濃度を引き下げ、それにより生命維持に重要な器官が高い毒性に曝されることなく、より高い用量、ゆえにより有効な治療計画を助長することにより、特に乳癌および卵巣癌において、前癌遺伝子Erbを発現する散在性の癌の処置において細胞傷害性ターゲッティング剤の腫瘍/非腫瘍比率を向上させることができる。
【0082】
一つの態様では、放射性標識抗Erb抗体を、骨髄移植または当技術分野で公知の他のいくつかの手段によって、造血機能の再構成なく患者に許容できるとみなされるものに限られる単一用量で与える。用量範囲は、90Y−抗Erb抗体では10〜20MBq/kg体重(「低用量」)、好ましくは、11〜15MBq/kgであり、ターゲッティング局在のための111In−抗Erb抗体の範囲は、50〜200MBq/m体表面積、好ましくは、100〜150MBq/m体表面積である。この態様では、非結合放射性標識治療用または診断用抗体の体外クリアランスは任意である。
【0083】
もう1つの態様では、放射性標識抗Erb抗体を、患者に高用量の放射能を送達するよう、示された単一用量で与える。この「高用量法」(high dose method)は、骨髄を再構成するための手段、または骨髄に対する放射線作用を軽減することによる手段、好ましくは、MitraDep(商標)システムの使用による手段と組み合わせなければならない。90Y−抗Erb抗体に関して、「高用量」とは、20MBq/kg体重を超える単一用量を意味する。
【0084】
好ましい態様では、100〜150MBq/m体表面積の用量の111In−抗Erb抗体を「高用量」(>20MBq/kg体重)の90Y−抗Erb抗体と組み合わせ、6〜8日の間隔で逐次与えるか、同時に与える。
【0085】
一つの態様では、放射性標識抗Erb抗体を、骨髄移植または他のいくつかの手段によって、造血機能の再構成なく患者に許容できるとみなされるものに限られる単一用量で与える。この用量範囲は、177Lu−抗Erb抗体では555〜2220MBq/m体表面積(「低用量」)、好ましくは、1000〜2000MBq/mである。この態様では、非結合放射性標識治療用または診断用抗体の体外クリアランスは任意である。
【0086】
もう1つの態様では、放射性標識抗Erb抗体を、患者に高用量の放射能を送達するよう、示された単一用量で与える。この「高用量法」は、骨髄を再構成するために当技術分野で公知の手段、または骨髄に対する放射線作用を軽減することによる手段、好ましくは、MitraDep(商標)システムの使用による手段と組み合わせなければならない。177Lu−抗Erb抗体に関して、「高用量」とは、2220MBq/m体表面積を超える単一用量を意味する。
【0087】
90Yに比べた場合の177Luの利点は次の通りである。
【0088】
90Yは純粋なβ放射体であり、外部γカメラ(イムノシンチグラフィー)によって画像化することができないので、画像化については111Inの使用が必要となる。これに対し、177Luはβ粒子の放出に加えてγ線を放出する。結果として、177Luは直接画像化でき、111Inの併用の必要はない。従って、177Luを用いる場合には局在化および治療に必要とされるのは一種類の放射性薬剤だけなので、処置計画が簡単になり、コストが安くなるとともに、患者の照射負担が減る。
【0089】
90Yは177Luよりも物理的半減期が短く(2.67日)、範囲が広い(12.0mm)。177Luは半減期が長く(6.7日)、範囲が狭い(2.2mm)ので、抗体−放射性核種が腫瘍に局在する時間が長くなることで有利となり、この長い半減期は長い細胞内半減期ともうまく組み合わさる。加えて、177Luの範囲が狭いことは、腫瘍組織に隣接する組織に対するバイスタンダー照射(交差発火)が起こりにくくなるが、大きな病巣においてはコスト効率が悪い可能性がある。90Yの範囲の広さは大きな病巣をよりよく照射できるという点で有利である。
【0090】
乳癌は予後に基づいて5つの異なる病期に分類される。乳癌は乳房の細胞が制御から外れて増殖を始めた際に発症し、その後、近傍の組織へ浸潤したり、体中へ拡散したりする。体中へ拡散したり、近傍組織へ浸潤したりすることができる腫瘍は癌とみなされ、悪性腫瘍と呼ばれる。理論的には、乳房のどの種類の組織でも癌を形成し得るが、通常は乳管または乳腺のいずれかに起源する。
【0091】
処置の指標とし、予後の洞察を得るために、乳癌は5つの異なる病期に分類される。
【0092】
病期0(いわゆる非浸潤性癌)
非浸潤性小葉癌)(Lobular carcunoma in situ, LCIS)は、乳腺内面の異常な細胞をさす。これは将来の癌発症のリスク因子であるが、それ自体は癌を表すとは思われない。
非浸潤性乳管癌(Ductal carcinoma in situ, DCIS)は、乳管内面の異常な細胞をさす。DCISを有する女性は、乳房において浸潤性乳癌を発症するリスクが高い。処置の選択肢は病期Iの乳癌を有する患者と同様である。
【0093】
病期I − 腫瘍が2cm未満であり、乳房を超えて拡散していない初期乳癌。
病期II − 腫瘍が2cmであって腋下リンパ節に拡散しているか;または腫瘍が2〜5cmの間である(腋下リンパ節への拡散を伴う場合または伴わない場合)か;または腫瘍が5cmを超え、乳房外へ拡散してない初期乳癌。
病期III − 腫瘍が5cmを超え、腋下リンパ節に拡散しているか;または癌が腋下リンパ節へと拡大しているか;または癌が胸骨近傍リンパ節もしくは他の乳房近傍組織に拡散しているか局部的に進行した乳癌。
病期IV − 癌が乳房外の他の身体器官に拡散している転移性乳癌。
【0094】
5群総てを示す患者は本発明の処置に適格であり得るが、最も好ましい態様では、悪性腫瘍は病期IIIおよびIVを表す。
【0095】
本発明では、免疫ターゲッティング剤(免疫複合体(immunoconjugate))は、一般的な細胞傷害性薬剤とは対照的に、前癌遺伝子Erbを発現する腫瘍細胞高い親和性で特異的に結合する細胞傷害性部分を有し、かつ、ヒトに投与可能な薬剤である。好ましい適用では、免疫ターゲッティング剤は抗体であり、この抗体は種々のイソ型であり得、かつ、いずれの種に起源してもよい。好ましい抗体はヒト化モノクローナル抗体である。さらに、特に注目されるのは、上記の特性に加えて、erb受容体に少なくとも約50nM、より好ましくは、少なくとも約10nMの親和性で結合するものである。
【0096】
特に注目されるのは、モノクローナル抗体の誘導体である。これにはFab、Fab’、F(ab’)2、F(ab”)およびFvフラグメントなどのようなフラグメントが含まれる。それらはまた、1つまたはいくつかの標的特異性モノクローナル抗体の抗原結合領域の特異性に基づいて遺伝子操作されたハイブリッドまたはキメラ合成されたペプチド、例えば、キメラまたはヒト化抗体、単鎖抗体なども含む。IgG反応性部分である生体分子結合部分を抗Erb抗体と、少なくとも5×10−1の親和性結合定数で共有結合的に、または非共有結合的に結合またはコンジュゲートさせる。
【0097】
効果を高めるため、または診断特性を導入するためには、腫瘍特異的モノクローナル抗体を、限定されるものではないが、放射性核種、化学療法薬、合成もしくは天然毒素、免疫抑制薬もしくは免疫刺激薬、放射線増感剤、X線もしくはMRIもしくは超音波用の増強剤、その元素を含む抗Erb抗体が特定の細胞または組織に蓄積された後に体外照射の手段によって放射性元素へと変換できる非放射性元素、または光活性化合物または光画像法もしくは光線力学療法に用いられる化合物、または癌細胞もしくは癌組織に直接的もしくは間接的な同等または類似の作用を有する他のいずれかの分子、およびプロドラッグプロトコールに用いられる酵素といった種々の細胞傷害性薬剤の担体として用いる。細胞傷害性薬剤は好ましくは、γ放射体、例えばヨウ素−131、または金属イオンコンジュゲート(なお、この金属はイットリウム、ルテチウムもしくはレニウムなどのβ粒子放射体から選択される)といった放射性核種である。米国特許第4,472,509号、Gansowらは、放射性金属とモノクローナル抗体との結合のための、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)キレート剤の使用を開示している。この特許は特に、放射性医薬から非結合金属および有利には結合(非キレート)金属を除去するための精製技術を対象としているが、放射性核種標識抗体の作製に関して当技術分野で認識されているプロトコールを例示するものである。
【0098】
このような一般法によれば、標的組織会合抗原と特異的に反応性のある抗体を、タンパク質結合官能基と金属結合官能基を有する選択される二官能性キレート剤の一定量と反応させてキレーター/抗体コンジュゲートを生産する。抗体とキレーターとをコンジュゲートさせる際は、過剰量のキレート剤を抗体と反応させるが、この特定の比率は試薬の性質および抗体当たりに望まれるキレート剤の数によって異なる。放射性核種は、その生体分子コンジュゲートが用いられる条件下で(例えば、患者において)ビオチニル化/放射性標識化合物から分離しないようにキレート化(金属の場合)または共有結合によって結合されるというのが必要条件である。
【0099】
細胞傷害性薬剤が放射性核種、特に金属系の放射性核種であるとき、これは細胞傷害性薬剤結合部分を介して三官能性架橋部分と結合させる。
【0100】
よって、最も安定なキレートまたは共有結合配置が好ましい。このような結合/結合部分、すなわち、細胞傷害性薬剤結合部分の例は、ハロゲンの放射性各種に関してはハロゲン化アリールおよびハロゲン化ビニルを形成し;TcおよびRe放射性核種に関してはNおよびNSキレート;In、Y、Pb、Bi、Cu、SmおよびLu放射性核種に関しては、EDTA、トリエチレンテトラアミン六酢酸およびDTPAまたはその誘導体(該DTPA誘導体はMe−DTPA、ITC−DTPAおよびシクロヘキシル−DTPAである)などのアミノ−カルボキシ誘導体、ならびにNOTA、DOTA、TETAおよび誘導体(Yuangfang and Chuanchu, Pure & Appl. Chem. 63, 427-463, 1991)などの環状アミンを含んでなる。
【0101】
細胞傷害性薬剤として有用なβ線放射体としては、スカンジウム−46、スカンジウム−47、スカンジウム−48、銅−67、ガリウム−72、ガリウム−73、イットリウム−90、ルテニウム−97、パラジウム−100、ロジウム−101、パラジウム−109、サマリウム−153、ルテチウム−177、レニウム−186、レニウム−188、レニウム−189、金−198、およびラジウム−212などの放射性核種が挙げられる。最も有用なγ放射体はヨウ素−131およびインジウム−m114である。本発明で有用な他の金属イオンとしては、ビスマス−212、ビスマス−213およびアステート−211などのα線放射体、ならびにガリウム−68およびジルコニウム−89などの陽電子放射体が挙げられる。
【0102】
本発明のもう1つの態様では、放射性各種で標識したターゲッティング剤が、erb抗原を発現する癌の処置のみならず、このような癌の画像化にも有用である。画像化は、制動放射を利用したβ線放射性核種の使用により、または画像化用のγ線放射性核種によって行うことができる。もう1つの好ましい態様では、βおよびγ線放射体である77Luが、癌の処置および診断双方のために細胞傷害性薬剤として用いられる。
【0103】
好ましい態様では、抗Erb抗体の各分子に、コンジュゲートの部分a)〜c)、好ましくはMitraTag(商標)平均2〜4分子を結合させるが、最も好ましい態様では、抗Erb抗体当たりのこのような分子の平均数は2.5〜3.5である。
【0104】
投与後の適切な時点で、「細胞傷害性ターゲッティング剤」(cytotoxic targeting agent)は体外手段によって血流から浄化する。体外枯渇を助けるため、全血または血漿の体外循環のための装置を配管系とブラッドアクセス装置で患者に接続する。このような装置には、血液を吸着装置に輸送するための導管、と、処理済みの血液または血漿を患者に戻すための導管を設けなければならない。この場合、血漿は吸着装置によって処理され、血漿分離装置ならびに濃縮血液と処理済みの血漿を混合する手段を必要とする。後者は通常、二成分をエアートラップに導入し、そこで混合を行うことにより達成される。
【0105】
全血を処理する場合には、通常の透析機がこのような装置の基本となる。透析機は通常、患者の安全要件を満たす総ての安全装置および監視装置を備えており、このシステムの容易な取り扱いが可能である。従って好ましい態様では、全血を処理し、ハードウエアに軽微な改良を施すだけで、標準的な透析機を用いる。しかしながら、このような機械には、新しく意図する目的に適合する新しいプログラムが必要である。
【0106】
このような装置の他、患者および機械からの意図する流れおよび距離に適した特殊な血管系配管が必要である。これらの配管系は血液または血漿と適合したいずれの材料からなってもよく、透析において用いられる通常の配管に使用されている材料が含まれる。
【0107】
血液アクセス(blood access)は、末梢静脈カテーテルによって、またはより高い血流が必要な場合には、限定されるものではないが、鎖骨下静脈または大腿静脈などの中枢静脈カテーテルによって達成できる。
【0108】
親和性吸着剤に関しては、マトリックスは種々の形状および化学組成のものであってよい。例えばそれは粒状ポリマーを充填したカラムハウスを構成していてもよく、粒状ポリマーは天然源であっても、人工的に製造されたものであってもよい。これらの粒子は、マクロ孔質であってもよいし、あるいは、表面積を大きくするために、それらの表面がグラフトされていてもよい。粒子は粒状または顆粒状であってよく、多糖類、セラミック材料、ガラス、シリカ、プラスチック、またはこれらもしくは類似の材料の組合せに基づくものである。これらの組合せとしては、例えば、天然起源または合成品の好適なポリマーをコーティングした固体粒子がある。また、人工膜を用いてもよい。これらはセルロース、ポリアミド、ポリスルホン、ポリプロピレンまたは十分、不活性で、生体適合性があり、無毒で、かつ、受容体が直接的に、または膜表面の化学修飾後に固定化可能な他種の材料からなる平板膜であってよい。セルロース、ポリプロピレンまたはこの種の膜に適した他の材料からなる中空繊維様の毛細管膜も使用可能である。好ましい態様は、アガロースに基づき、体外適用に好適な粒状材料である。
【0109】
一つの態様では、分子インプリントポリマー(Molecularly Imprinted Polymers, MIP)を用いる。このような場合、コンジュゲートは親和性リガンドを含まない。これらは通常、鋳型分子の存在下で製造された架橋ポリマーである。この鋳型はターゲッティング分子(DOTAまたはDTPA誘導体などのキレート剤)にコンジュゲートされた分子構造であるか、またはターゲッティング分子に多少とも特異的な特定構造(例えば、抗体構造)であるかのいずれかである。
【0110】
もう1つの態様では、このマトリックスは、血液循環から除去される薬剤(例えば、放射性抗Erb抗体)に対して特異的相互作用を示すリガンドでコーティングされる。このようなリガンドは、モノクローナル抗体(そのフラグメントまたは操作された対応物を含む)、アプタマー、ペプチド、オリゴデオキシヌクレオシド(そのフラグメントを含む)、インターカレーション試薬(色素(dyestof)を含む)、オリゴ糖、および除去される薬剤と結合した金属と相互作用するキレート剤からなる群から選択することができる。
【0111】
もう1つの態様では、親和性リガンドが抗Erb抗体と接着され、吸着装置が親和性リガンドと特異的に結合している固定化受容体を含む。「抗体と抗原/ハプテン」および「タンパク質と補因子」などのいずれの種類の親和性リガンド/固定化受容体の組合せも、それらが十分に高い結合親和性と腫瘍マーカーに対する選択性を示し、かつ、親和性リガンド−受容体相互作用が、血液もしくはその他の体液または免疫ターゲッティング剤および/もしくは装置と接触している組織に干渉しない限り、本出願において使用できる。
【0112】
最も好ましい一適用では、親和性リガンド/固定化受容体の組合せは、ビオチンもしくはビオチン誘導体とビオチン結合分子、特に親和性リガンドがビオチンもしくはその誘導体で、固定化受容体がアビジンもしくはストレプトアビジンまたはその他のビオチン結合分子である。このビオチン/アビジンおよびビオチン/ストレプトアビジンの親和性リガンド対は、生体分子とともに用いられることが多い。ビオチンとタンパク質アビジンおよびストレプトアビジンとの極めて強い相互作用(すなわち、K=1013〜1015−1)(Green, Methods Enzymol. 184, 51-67, 1990; Green, Adv. Prot. Chem. 29, 85-133, 1975)が、in vitroおよびin vivo双方での使用のための多数の適用において、これらの使用の基盤となっている。本発明のさらなる適用は、同じ体外手順を通じていくつかの異なるビオチニル化「抗癌薬」を同時に除去することである。
【0113】
本発明のコンジュゲートの一つの態様を以下の部分概略図に示す。ここで、抗Erb反応性部分はトラスツズマブである。
【0114】
この1033−コンジュゲートの構造的必要条件としては、ビオチン含有部分(親和性リガンド)、ビオチンと分子の残りの部分との間のリンカー1、三官能性架橋部分、細胞傷害性薬剤結合部分、および細胞傷害性薬剤結合部分と分子の残りの部分との間のリンカー2が含まれる。1033−コンジュゲートの構造的必要条件は、機能的必要条件に基づいて3つの部分に分けることができる。これらの部分は、ビオチン含有部分、細胞傷害性薬剤結合部分、および三官能性架橋部分である。式1は発明コンジュゲートの一般構造を示す(細胞傷害性薬剤は結合されていない)。
【0115】
式I:金属系放射性核種との結合、および抗Erb抗体としてトラスツズマブの含有を意図した発明コンジュゲートの一般構造
【化1】

【0116】
ビオチン含有部分の構造的必要条件:本明細書において重要なビオチン含有部分、すなわち、親和性リガンドには3つの側面がある。それは、(1)ビオチニダーゼ切断の阻害、(2)高いビオチン結合親和性の保持、および(3)妥当な水溶性の達成である。これらの特性を与えるために、ビオチンコンジュゲートは、架橋部分に連結されたビオチン分子と適当なリンカーかならなければならない。
【0117】
ビオチンコンジュゲートは、ペンタン酸側鎖(n=3)上のカルボン酸基とコンジュゲートすることによって作出しなければならない。ビオチン分子の他の位置でコンジュゲートすると、アビジンおよびストレプトアビジンとの結合が完全に失われる。これではビオチン分子は本適用の用をなさなくなる。コンジュゲーションの好ましい形態は、カルボン酸基とのアミド結合の形成である(一般式に示されている通り)。ビオチンとアビジンおよびストレプトアビジンとの結合は深いポケット(例えば、9オングストローム)で起こるので、ペンタン酸側鎖の短縮(n<3)または延長(n>3)の結果、結合親和性が低くなり、これは本適用に関して望ましくない。
【0118】
ビオチニダーゼ活性の阻害は、適切な置換基をビオチンアミドアミン(すなわち、R)またはそのアミンに隣接する、すなわち、3個未満の炭素原子しか離れていない原子(すなわち、R)と接着させることによって達成される。ビオチニダーゼは、ビオチンカルボン酸コンジュゲートのアミド結合を切断(加水分解)する酵素である。この酵素は、動物およびヒトにおいてビオチンを再循環させる上で極めて重要である。ビオチン代謝は(いくつかの異なる)タンパク質カルボキシラーゼにおいて、ビオチン−ε−N−リジン(ビオシチン)を放出し、ビオチニダーゼがそのアミド結合を特異的に切断して遊離ビオチンを放出する。ビオチニダーゼはまた、他のビオチンアミド結合を(非特異的に)切断することもできる。本適用において、ビオチニダーゼがコンジュゲートからビオチンを切断しないことが重要であり、そうでなければ所望の結果は達成されない。従って、有用なビオチンコンジュゲート構造は、ビオチニダーゼの酵素活性を阻害する官能基(RまたはR)を組み込んでいる。Rのどのような構造でもビオチニダーゼを阻害する可能性があるが、その構造は概ねメチル(CH)基に限定されるが、これはこの基は完全にビオチニダーゼ活性を阻害するためである。N−メチル基はビオチンのアビジンおよびストレプトアビジンとの結合親和性を有意に低下させるが、それでもやはり本適用では有用である。Rの大きな基(例えば、エチル、アリールなど)は、結合親和性がないために有用ではない。置換基Rを保有させる別法としては、ビオチンアミドアミンに隣接する原子(例えば、メチレン)上に置換基Rを保有させるというものがある。この位置ならビオチンの結合親和性に有意な影響なく、より大きく、より多様な置換基が使用できる。ビオチニダーゼは、RがCHまたはCHCHである場合、切断速度は相当遅くなるが(すなわち、それぞれ25%および10%まで)完全には阻害されない。ビオチニダーゼ活性の完全な阻害は、Rが−CHOHおよび−COH官能基の場合に達成される。−CHOH(ヒドロキシメチル)官能基の場合、このような阻害はセレニル基の導入によって達成され得る。COH(カルボキシ)官能基の場合は、このような阻害はαまたはβスパルチル基の導入によって達成され得る。重要な観点は、これらの基がRとして組み込まれる際に結合親和性が低下しないということである。より大きな官能基をRとして用いてビオチニダーゼ活性を阻害することもできるが、結合親和性が低下する結果となる。より大きな官能基は、それらが、RがCHである場合に得られるものよりも大きな結合親和性の低下をもたらさないならば、Rとして本適用に有用である。
【0119】
式Iの構造におけるビオチン部分のビオチン親和性および水溶性は、用いるリンカー部分の影響を受ける。リンカー部分(リンカー1)の長さおよび性質は、それがコンジュゲートされる分子の性質にある程度依存する。リンカー部分は、ビオチン結合がタンパク質(または他のコンジュゲート分子)からの立体障害の影響を受けないように、ビオチン部分とコンジュゲートの残りの部分との間にスペーサーを設ける役割を果たす。リンカー1の長さ(直鎖の原子数)は、小さな分子(例えば、ステロイド)とのコンジュゲートにはo=4〜20から、大きなコンジュゲート分子(例えば、IgG分子)にはo>20まで変動する。リンカー1中の原子(直鎖またはそれからの分岐鎖)の性質も変化させれば水溶性が向上する。例えば、5以上のメチレンユニットを含むリンカーは、酸素もしくは硫黄原子(エーテルもしくはチオエーテルを形成)の組み込みによって、またはイオン化可能な官能基(例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、アミン基もしくはアンモニウム基)を付加することによって改良される。
【0120】
細胞傷害性薬剤結合部分構造的必要条件: 種々の放射性核種キレートおよび結合剤を式Iの構造に使用できる。式Iにおいて、「ベンジル−DOTA」部分は一例として用いられている。細胞傷害性薬剤結合部分の性質によっては、リンカー部分(リンカー2)が必要となる。放射性核種キレーションおよび/または結合部分には水溶性が低いものがあり、従って、水溶性を向上させる官能基を含むリンカー分子の付加が重要である。DOTAキレートでは、リンカー部分の主要な機能はコンジュゲート分子の水溶性を向上させることである。リンカー2の原子(直鎖またはそれからの分岐鎖)の性質を変化させれば水溶性が高まる。例えば、5以上のメチレンユニットを含むリンカーは、酸素もしくは硫黄原子(エーテルもしくはチオエーテルを形成)の組み込みによって、またはイオン化可能な官能基(例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、アミン基もしくはアンモニウム基)を付加することによって改良される。リンカー2の長さ(直鎖の原子数)もまた、組み込まれる原子または直鎖に付加される官能基の性質によって可変である(例えば、p=1〜20)。三官能性架橋部分の構造的必要条件:種々の三官能性分子が架橋部分として使用できる。リンカー(リンカー1および2)上およびタンパク質上の官能基と反応し得る3つの官能基を有する分子はいずれも三官能性架橋部分の候補となる。三官能性架橋部分は、例えば水溶液中での式Iの構造の不溶性を付与しないという必要条件の他、三官能性架橋分子の他の唯一の構造的制限は、ビオチン含有部分、および細胞傷害性薬剤結合部分の連続的付加、ならびに抗Erb抗体とのコンジュゲーションが可能な様式で改変できるような構造であることである。一例として、1033構造には三官能化ベンゼン環(アミノイソフタル酸)が用いられる。
【0121】
好ましい構造である1033−トラスツズマブを下記式II(式中、n=3、o=3、p=3、R=HおよびR=COOHである)(細胞傷害性薬剤は結合されていない)に示す。
【0122】
式II:1033−トラスツズマブ特異的構造
【化2】

【0123】
本発明のコンジュゲートの特定の例としては、177Lu−1003−トラスツズマブ、すなわち、177Lu−3−(13’−チオ尿素ベンジル−DOTA)トリオキサジアミン−1−(13”−ビオチン−Asp−OH)トリオキサジアミン−5−イソチオシアナト−アミノイソフタレート−トラスツズマブ;90Y−1033−トラスツズマブ;111In−1033−トラスツズマブ;チオ尿素ベンジル−DOTAがメイタンシノイドで置換されている1033−トラスツズマブ;およびチオ尿素ベンジル−DOTAがドキソルビシンで置換されている1033−トラスツズマブがある。
【0124】
本発明のもう1つの態様では、1を超える、好ましくは2つの親和性リガンド、および/または1を超える、好ましくは2つの細胞傷害性薬剤がコンジュゲートに含まれる。このような場合、架橋部分は三官能性を超える。
【実施例】
【0125】
以下の実施例は本発明を限定するものではなく、本発明の適用可能性の証拠と考えるべきである。
【0126】
実施例1: トラスツズマブのコンジュゲーションおよび放射性標識化
これ以降の実施例では、インジウム−111は場合によってイットリウム−90の代用として用いられているが、これは前者がγ線放射体で、イットリウム−90よりも放射線障害が少ないためである。モノクローナル抗体トラスツズマブを、Wilbur D. S et al in Bioconjugate Chem. 13:1079-1092, 2002に記載の方法を用いて、3−(13’−チオ尿素ベンジル−DOTA)トリオキサジアミン−1−(13”−ビオチン−Asp−OH)トリオキサジアミン−5−イソチオシアネート−アミノイソフタレート(MitraTag(商標)−1033)(以下略して「1033」とも呼ぶ)とコンジュゲートした。10mg量のモノクローナル抗体を、金属を含まない1L HEPESに対し、4℃にて3日間、3回バッファー交換をして透析した。MitraTag(商標)−1033(800μg)の水溶液を作製し、抗体溶液に加えた。室温で一晩インキュベートした後、抗体コンジュゲートを、金属を含まない250mM酢酸アンモニウムバッファーpH5.3に対し、4℃にて4日間、最低4回バッファー交換をして透析した。モノクローナル抗体当たりのMitraTag(商標)−1033の平均数はHABA法によれば2.2であると判定された。金属を除去したコンジュゲート抗体を、放射線標識実験に用いるまで4〜8℃で保存した。
【0127】
250mM酢酸アンモニウム(pH5.3)中、2mg(400μl)の1033−抗体を、40mM HCl中、30μlの供試放射性核種(111InCl90YCl177LuCl)と混合した。45℃にて15分間標識化を行った。43μlのDTPAを反応が停止するまで加えた。放射性コンジュゲートの品質はTLCおよびHPLCによって判定した。
【0128】
実施例2: 1033とコンジュゲートしたトラスツズマブとアビジン吸着剤の結合
MitraDep(商標)装置で利用されるアビジン吸着剤と結合している111In標識1033−トラスツズマブ放射性コンジュゲートの画分を、微小カラムを利用して分析した。放射性標識1033−コンジュゲートサンプル中の約97%の放射能が、アビジン吸着剤を含む微小カラムと結合した。
【0129】
実施例3: 標的抗原との結合の親和性分析
トラスツズマブの標的抗原との結合親和性(力)に対するコンジュゲーションプロセスの影響を、競合阻害アッセイを用いて調査した。要するに、増加量のトラスツズマブを一定量の111In標識1033−トラスツズマブと混合した。この混合物を、96プレートウェル中に固定したSK−BR3細胞に加えた。室温で2時間のインキュベーション後、ウェルを洗浄し、細胞と結合した放射能を自動NaI(Tl)シンチレーションウェルカウンターで測定した。
結合している放射能の量をトラスツズマブ濃度に対してプロットし(図1)、50%阻害(IC50)に必要とされる濃度を算出した。IC50とは供試抗体の相対親和性(アビディティ)の尺度であり、親和性の低下はIC50濃度の増加として見て取れる。親和性の有意な変化であるとするには、IC50の差が少なくとも10倍であるべきとされることが多い。
【0130】
1μg/ml(6.7nM)の111In−1033−トラスツズマブは、0.03〜500μg/mlのコールド非コンジュゲートトラスツズマブにより阻害される。このIC50は0.4μg/ml(2.5nM)であると判定された。IC50から解離定数を算出すると0.3nMであった。トラスツズマブの製造業者が公表している情報によれば、解離定数は0.1nMである。
【0131】
1033−トラスツズマブコンジュゲートに関しては、親和性に若干の低下が見られた。臨床研究で、親和性における10倍の差は腫瘍への取り込みに有意な差を生じないことが示されている。従って、1抗体につき最大2.2個のコンジュゲートとのトラスツズマブのコンジュゲーションは、in vivoで抗体の結合特性を低下させないものと結論付けられた。
【0132】
実施例4: トラスツズマブの MitraTag(商標)−1033コンジュゲートの薬物動態
111In−1033−トラスツズマブの薬物動態および生体分布のデータを111In−1033−リツキシマブで得られたデータと比較する(この放射性コンジュゲートに関して臨床データが利用可能なため)。両抗体とも、ヒト化ヒトモノクローナルIgG1抗体である。
【0133】
15匹のSpraque Dawley系ラットに、3〜4MBq111Inで標識した1033−抗体コンジュゲートおよそ100μg/ラットを静注した。
【0134】
中エネルギー用コリメーター(medium-energy collimator)を装備したシンチレーションカメラ(General Electric 400T, GE, Milwaukee, WI, USA)を用いて全身(WB)画像化を行った。画像を保存し、Nuclear MAC2.7ソフトウェアで解析した。これらの画像から、全身のカウント総数が得られた。放射能の減衰補正およびバックグラウンド除去の後、このカウントを、体内の放射線量保持率(%)の算出に用いた。図2参照。
【0135】
111In−1033−トラスツズマブの全身保持率を111In−1033−リツキシマブの場合と比較したところ、有意な差は見られなかった。
111In−1033−トラスツズマブの薬物動態を定義し、111In−1033−リツキシマブと比較するため、約0.2mlの血液を眼窩周囲の静脈叢から次の時間:注射後10分、2.5、8、24、48および96時間に得た。放射能を自動NaI(Tl)シンチレーションウェルカウンターで測定し、111In減衰を補正した血液グラム当たりの注射放射線量パーセント(%/g)で表した(図3)。111In−1033−トラスツズマブの血液クリアリンスを111In−1033−リツキシマブの場合と比較したところ、有意な差は見られなかった。
【0136】
実施例5: 器官および組織へのコンジュゲートの生体分布
注射後2.5、8、24、48および96時間に行った解剖で、対象となる器官および組織を取り出し、秤量し、放射能含量を測定した。放射能は自動NaI(Tl)シンチレーションウェルカウンターで測定し、カウント数を減衰に関して補正した。種々の器官への分布を111In−1033−リツキシマブの場合と比較した。注射した放射線量の分布を図4(111In−1033−トラスツズマブ)および図5(111In−1033−リツキシマブ)に示す。
【0137】
111In−1033−リツキシマブに比べて111In−1033−トラスツズマブでは、腎臓および肺における高い取り込み、肺における低い取り込みが見られた。111In−1033−トラスツズマブに関する肺における高い取り込みは主として注射後すぐに見られ、48時間後にはほぼ同レベルとなった。
【0138】
実施例6: 本発明の好ましい態様に従う、HER−2を発現する乳癌における90Y/111Inによる処置法
・0日に総ての患者に1〜4mg/体重のトラスツズマブを投与し、その後直ちに治療用の用量の90Y−1033−トラスツズマブ(>10MBq/体重kg)を投与する。必要に応じて、患者に用量100〜150MBq/m体表面積(1.1〜3.9mCi/m体表面積)の111In−1033−トラスツズマブを投与してもよく、これは画像化のため、また、線量測定のために用いられる。
・1〜3日目の間で1回、患者をMitraDep(商標)で処置し、少なくとも3血液量をMitraDep(商標)に通す。
・必要に応じて、安全策として、90Y−1033−リツキシマブの投与前に、必要があれば骨髄救済を考慮して骨髄を採取してもよい。
【0139】
・必要に応じて、用量制限毒性が見られず、患者が前回の処置から放射線毒性に関して回復している限り、90Y−1033−トラスツズマブによる処置を1年に2〜6回、最も好ましい態様では、1年に2〜4回繰り返すことができる。
・必要に応じて、患者に、90Y−1033−トラスツズマブを投与する前または投与した後に治療用量または治療用量より少ないトラスツズマブ(ヘルセプチン)を投与し、かつ/またはトラスツズマブ(ヘルセプチン)を90Y−1033−トラスツズマブの投与と組み合わせて投与する。
【0140】
実施例7: 本発明の別の好ましい態様に従う、HER−2を発現する乳癌における177Lu−トラスツズマブによる処置法
・−7日〜−1日に、総ての患者に6〜8mg/体重kgのトラスツズマブを一度投与する。
・0日に患者に治療用量の177Lu−1033−トラスツズマブ(>555MBq/m体表面積)を投与する。必要に応じて、画像化のため、また、線量測定のための免疫シンチグラフィーにより患者を検査してもよい。
・1〜4日目の間で1回、患者をMitraDep(商標)で処置し、少なくとも3血液量をMitraDep(商標)に通す。
・必要に応じて、安全策として、177Lu−1033−トラスツズマブの投与前に、必要があれば骨髄救済を考慮して骨髄を採取してもよい。
【0141】
・必要に応じて、用量制限毒性が見られず、患者が前回の処置から放射線毒性に関して回復している限り、177Lu−1033−トラスツズマブによる処置を1年に2〜6回、最も好ましい態様では、1年に2〜4回繰り返すことができる。
・必要に応じて、患者に、177Lu−1033−トラスツズマブを投与する前または投与した後に治療用量または治療用量より少ないトラスツズマブ(ヘルセプチン)を投与し、かつ/またはトラスツズマブ(ヘルセプチン)を177Lu−1033−トラスツズマブの投与と直接組み合わせて投与する。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】コールド(非標識、1033−コンジュゲートを含まない)トラスツズマブによる、SKBR−3細胞に対する111In標識1033−トラスツズマブの結合の競合阻害を示す。
【図2】111In−1033−トラスツズマブ抗体コンジュゲート(黒三角)または111In−1033−リツキシマブ(黒四角)抗体コンジュゲートを注射したラットにおける全身放射能クリアランス(パーセンテージ±標準偏差で示す)の比較を示す。このデータは放射能減衰とバックグラウンドに関して補正されている。
【図3】111In−1033−トラスツズマブ抗体コンジュゲート(黒三角)または111In−1033−リツキシマブ(黒四角)抗体コンジュゲートを注射したラットにおける全血放射能クリアランス(開始時の放射能%±標準偏差で示す)の比較を示す。データは放射能減衰に関して補正されている。
【図4】ラットにおける111In−1033−トラスツズマブの生体分布(組織1グラム当たりの注射用量%±標準偏差で示す)を示す。結果は放射化学減衰に関して補正されている。
【図5】ラットにおける111In−1033−リツキシマブの生体分布(組織1グラム当たりの注射用量%±標準偏差で示す)を示す。結果は放射化学減衰に関して補正されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記a)〜d)を含んでなる、コンジュゲートであって、
a)三官能性架橋部分が、
b)リンカー1を介して親和性リガンドと、
c)必要に応じてリンカー2を介して、細胞傷害性薬剤と、
d)哺乳類の腫瘍表面で発現されるErb抗原と、少なくとも5×10−1の親和性結合定数で結合する能力を有する、抗Erb抗体またはその変異体と
結合されており、
前記親和性リガンドが、ビオチン、またはアビジンもしくはストレプトアビジンに対してビオチンと実質的に同等の結合機能を有するビオチン誘導体であり、
ビオチンアミド結合の酵素的切断に対する安定性がリンカー1に導入されている、コンジュゲート。
【請求項2】
抗Erb抗体またはその変異体が、哺乳類の腫瘍表面で発現されるErb1、Erb2、Erb3および/またはErb4抗原に対するものである、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
抗Erb抗体変異体が、Erb抗原と結合する際に同等または実質的に同等の、少なくとも5×10−1の親和性結合定数を有する、抗Erb抗体のいずれかの修飾物、フラグメントまたは誘導体(前記フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)2、F(ab”)およびFvフラグメントを含んでなる);ダイアボディー;単鎖抗体分子;および、抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体である、請求項1または2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
抗Erb抗体がリンカー3を介して三官能性架橋部分と結合され、かつ、リンカー3と抗Erb抗体との間で形成された結合が、少なくとも5×10−1の結合親和性定数を有する共有結合または非共有結合のいずれかである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
細胞傷害性薬剤が、放射性各種、化学療法薬、合成もしくは天然毒素、免疫抑制薬もしくは免疫刺激薬、放射線増感剤、X線もしくはMRIもしくは超音波用の増強剤、その元素を含む抗Erb抗体が特定の細胞または組織に蓄積された後体外照射の手段によって放射性元素に変換可能な非放射性元素、または光画像法もしくは光線力学療法に使用される光活性化合物もしくは化合物、または癌細胞もしくは癌組織に対して直接的または間接的に同じもしくは類似の効果を有する他のいずれかの分子である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
細胞傷害性薬剤が、放射性各種、化学療法薬、または毒素である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
細胞傷害性薬剤が、放射性核種であって、細胞傷害性薬剤結合部分を介して三官能性架橋部分に結合されている、請求項6に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
細胞傷害性薬剤結合部分が、ハロゲンの放射性核種に対するハロゲン化アリールおよびハロゲン化ビニル、TcおよびRe放射性核種に対するNおよびNSキレート、アミノ−カルボキシ誘導体、好ましくはEDTA、トリエチレン−テトラアミン六酢酸、およびDTPAまたはその誘導体(なお、このDTPA誘導体はMe−DTPA、CITC−DTPAおよびシクロヘキシル−DTPAである)、ならびにIn、Y、Pb、Bi、Cu、SmおよびLu放射性核種または前記キレートと錯体を形成することのできる他のいずれかの放射性核種に対する環状アミン、好ましくはNOTA、DOTAおよびTETA、ならびにその誘導体を含む、請求項7に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
細胞傷害性薬剤結合部分がDOTAを含み、細胞傷害性薬剤が治療適用のための90Yまたは診断適用のための111Inである、請求項7および8に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
細胞傷害性薬剤結合部分がDOTAを含み、細胞傷害性薬剤が診断適用および治療適用の双方のための177Luである、請求項6および7に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
放射性核種が、β線放射体、好ましくは、スカンジウム−46、スカンジウム−47、スカンジウム−48、銅−67、ガリウム−72、ガリウム−73、イットリウム−90、ルテニウム−97、パラジウム−100、ロジウム−101、パラジウム−109、サマリウム−153、ルテチウム−177、レニウム−186、レニウム−188、レニウム−189、金−198、およびラジウム−212;γ線放射体、好ましくは、−131、ルテチウム−177およびインジウム−m114;またはα線放射体、好ましくは、ビスマス−212、ビスマス−213およびアスタチン−211;ならびに陽電子放射体、好ましくは、ガリウム−68およびジルコニウム−89であり、化学療法薬がアドリアマイシン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara−C」)、シクロホスファミド、チオプテパ、ブスルファン、サイトキシン、タキソール、メトトレキサート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、エトポシド、イフォスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、カルボプラチン、テニスポシド、ダウノマイシン(Duanomysin)、カルミノマイシン、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、エスペラマシン、メイタンシノイド、メルファランおよび関連の他のナイトロジェンマスタードであり;ここで、毒素は細菌、真菌、植物もしくは動物起源の活性毒素またはその断片である、請求項10に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
親和性リガンドが、アビジン、ストレプトアビジン、またはこの親和性リガンドに対して実質的に同等の結合機能を有するアビジンまたはストレプトアビジンの他のいずれかの誘導体、変異体もしくは断片と特異的に結合する部分である、請求項1〜11のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
ビオチン誘導体が、ノルビオチン、ホモビオチン、オキシビオチン、イミノビオチン、デスチビオチン、ジアミノビオチン、ビオチンスルホキシド、およびビオチンスルホン、または好ましくは少なくとも10−1の親和性結合定数で実質的に同等の結合機能を有するその誘導体からなる群から選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項14】
三官能性架橋部分が、トリアミノベンゼン、トリカルボキシベンゼン、ジカルボキシアニリンおよびジアミノ安息香酸からなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項15】
アビジンもしくはストレプトアビジン、または他のいずれかのビオチン結合種との結合が立体障害によって弱まらないように、リンカー1が付着部分および三官能性架橋部分と親和性リガンド、好ましくは、ビオチン部分との間のスペーサーとして働く、請求項1〜14のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項16】
リンカー1が、水素結合原子、好ましくはエーテルもしくはチオエーテル、またはビオチン部分の水溶性化に役立つイオン化可能な基、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基、もしくはアンモニウム基を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項17】
ビオチンを放出するためのビオチンアミド結合の酵素的切断に対する安定性、好ましくはビオチニダーゼによる切断に対する安定性が、ビオチンアミドアミンにメチル基を導入するか、またはビオチンアミドアミンに隣接する原子にαカルボン酸基、ヒドロキシメチル基もしくはメチル基を導入することにより提供されている、請求項1〜16のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項18】
リンカー2が1〜25原子の長さ、好ましくは6〜18原子の長さのスペーサーを提供する、請求項1〜17のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項19】
リンカー2が水素結合原子、好ましくはエーテルもしくはチオエーテル、または水溶性化に役立つイオン化可能な基を含む、請求項18に記載のコンジュゲート。
【請求項20】
リンカー2を除いた、請求項1〜17のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項21】
リンカー3が1〜25原子の長さ、好ましくは6〜18原子の長さのスペーサーを提供する、請求項1〜20のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項22】
リンカー3がエーテルもしくはチオエーテルなどの水素結合原子、または水溶性化に役立つイオン化可能な基、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基もしくはアンモニウム基を含む、請求項21に記載のコンジュゲート。
【請求項23】
リンカー3を除いた、請求項1〜3および5〜20のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項24】
1以上の親和性リガンド、好ましくは2、および/または1を超える細胞傷害性薬剤、好ましくは2つもまた結合されている、請求項1〜23のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項25】
コンジュゲートの部分a)〜c)の分子平均2〜4個、好ましくは2.5〜3.5個が各抗Erb抗体に連結されている、請求項1〜24のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項26】
細胞傷害性薬剤結合部分を介して細胞傷害性薬剤と結合されている
【化1】

[式中、nは2〜4であり、oは1〜6であり、pは1〜6であり、RはHであり、かつ、Rは−COOHであり、ここで、nは好ましくは3であり、oは好ましくは3であり、かつ、pは好ましくは3である]
である、請求項1〜25のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項27】
177Lu−1033−トラスツズマブ、すなわち、177Lu−3−(13’−チオ尿素ベンジル−DOTA)トリオキサジアミン−1−(13”−ビオチン−Asp−OH)トリオキサジアミン−5−イソチオシアナト−アミノイソフタレート−トラスツズマブ;90Y−1033−トラスツズマブ;111In−1033−トラスツズマブ;チオ尿素ベンジル−DOTAがメイタンシノイドで置換されている1033−トラスツズマブ;およびチオ尿素ベンジル−DOTAがドキソルビシンで置換されている1033−トラスツズマブである、請求項1〜25のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれか一項に記載のコンジュゲートを医薬上許容される賦形剤とともに含んでなる、医薬組成物。
【請求項29】
賦形剤が非経口投与、好ましくは静脈内投与を意図した溶液である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
哺乳類宿主の血漿または全血において、請求項28および29のいずれか一項で定義されたような、請求項1〜26のいずれか一項に記載のコンジュゲートを含んでなる非組織結合医薬組成物を体外排除する、または少なくともその濃度を低下させるためのキットであって、前記医薬組成物がその哺乳類宿主の体内に事前に導入され、特定の組織または細胞に付着させることによってその特定の組織または細胞に集中するように一定の時間そこに維持され、
a)前記医薬組成物、および
b)そのコンジュゲートの親和性リガンドが接着する固定化受容体を含んでなる体外装置
を含んでなる、キット。
【請求項31】
親和性リガンド/固定化受容体の組合せとしての抗体と抗原/ハプテンまたはタンパク質と補因子、好ましくは、親和性リガンドとしてのビオチンまたはビオチン誘導体と、固定化受容体としてのアビジンまたはストレプトアビジンとを含んでなる、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
親和性リガンドが医薬組成物のコンジュゲートに存在せず、固定化受容体がそのコンジュゲートと相互作用する分子インプリントポリマー(molecularily imprinted polymer)である、請求項30に記載のキット。
【請求項33】
哺乳類宿主において、その腫瘍細胞表面でErb遺伝子産物を発現する癌を処置するための方法であって、請求項28および29のいずれか一項に記載の医薬組成物が、それを必要とする哺乳類に投与される、方法。
【請求項34】
前記癌が乳癌または卵巣癌である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記癌が乳癌、好ましくはErb2型の乳癌である、請求項33および34に記載の方法。
【請求項36】
細胞傷害性薬剤として90Yを含む請求項28および29に記載の医薬組成物が、10〜20MBq/kg体重、好ましくは11〜15MBq/kg体重の用量で哺乳類宿主に投与される、請求項33〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
細胞傷害性薬剤として90Yを含む請求項28および29に記載の医薬剤が、20MBq/kg体重を超える用量で、骨髄再構成のための手段、または骨髄に対する放射線作用の軽減による手段とともに哺乳類宿主に投与される、請求項33〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
哺乳類宿主において、その腫瘍細胞の表面でErb遺伝子産物を発現する癌を診断するための方法であって、請求項28および29のいずれか一項に記載の医薬組成物が哺乳類に投与される、方法。
【請求項39】
前記癌が乳癌または卵巣癌である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記癌が乳癌、好ましくはErb2型の乳癌である、請求項38および39に記載の方法。
【請求項41】
111Inが50〜200MBq/m体表面積、好ましくは100〜150MBq/m体表面積の用量で哺乳類宿主に投与される、請求項38〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
哺乳類宿主において、その腫瘍細胞の表面でErb遺伝子産物を発現する癌を処置および診断するための方法であって、
111Inを50〜200MBq/m体表面積、好ましくは100〜150MBq/m体表面積の用量で含む請求項28および29に記載の医薬組成物、および細胞傷害性薬剤として90Yを10〜20MBq/kg体重、好ましくは11〜15MBq/kg体重の用量で含む請求項28および29に記載の医薬組成物が哺乳類宿主に投与される、方法。
【請求項43】
哺乳類宿主において、その腫瘍細胞の表面でErb遺伝子産物を発現する癌を処置および診断するための方法であって、111Inを100〜150MBq/m体表面積の用量で含む請求項28および29に記載の医薬組成物、および細胞傷害性薬剤として90Yを20MBq/kg体重を超える用量で含む請求項28および29に記載の医薬組成物が哺乳類宿主に、6〜8日の間隔で前記の順で逐次にまたは同時に投与される、方法。
【請求項44】
哺乳類宿主において、その腫瘍細胞の表面でErb遺伝子産物を発現する癌を処置および診断するための方法であって、細胞傷害性薬剤として177Luを555〜2220MBq/m体表面積、好ましくは1000〜2000MBq/m体表面積の単一用量で含む請求項28および29に記載の医薬組成物が哺乳類宿主に投与される、方法。
【請求項45】
哺乳類宿主において、その腫瘍細胞の表面でErb遺伝子産物を発現する癌を処置および診断するための方法であって、細胞傷害性薬剤として177Luを2220MBq/m体表面積を超える単一用量で含む請求項28および29に記載の医薬組成物が、骨髄再構成のための手段、または骨髄に対する放射線作用の軽減による手段とともに哺乳類宿主に投与される、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−512324(P2007−512324A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541102(P2006−541102)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001753
【国際公開番号】WO2005/051424
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(501011222)ミトラ、メディカル、アクチボラグ (2)
【氏名又は名称原語表記】MITRA MEDICAL AB
【Fターム(参考)】