説明

FCCプロセス用改良重金属捕捉助触媒

FCC分解の間の金属不動態化に使われる金属捕捉粒子は、カオリン、酸化マグネシウムまたはマグネシウム水酸化物およびカルシウム炭酸塩から形成された、か焼スプレー乾燥粒子を含む。金属捕捉粒子は、少なくとも10wt.%の酸化マグネシウムを含み、これがFCC分解の間の金属不動態化機能を改良する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、炭化水素供給原料の接触分解の際の金属の有害作用を軽減する方法を提供する。この目的は、金属を捕捉する作用をする新規混合金属酸化物添加剤の使用により達成される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
接触分解は、商業的に大規模に適用されている石油精製プロセスである。大多数の米国の製油所のガソリン混合プール(refinery gasoline blending pool)は、このプロセスで製造されており、また、ほとんど全てが流動接触分解(FCC)プロセスを使って製造されている。FCCプロセスでは、重質炭化水素留分は、触媒の存在下、高温で起こる反応によって、より軽い生成物に変換されるが、大部分の変換または分解はガス相中で起こる。FCC炭化水素供給原料(供給原料)は、これによりガソリンおよび他の液体分解生成物ならびに1分子当たり4以下の炭素原子のさらに軽いガス状分解生成物に変換される。これらの生成物、液体およびガス、は飽和および不飽和炭化水素から成る。
【0003】
FCCプロセスでは、供給原料は、FCC反応塔のライザー部に注入され、そこで、供給原料は、触媒再生塔からライザーを通って反応塔へと循環するホット触媒に接触して、より軽い、より価値の高い生成物に分解される。吸熱分解反応が起こるため、炭素が触媒上に析出する。コークスとして知られるこの炭素は、触媒の活性を低下させるため、触媒を再生してその活性を復活させなければならない。触媒と炭化水素蒸気はライザー中をFCC反応塔の分離部まで上昇し、ここで分離する。その後、触媒はストリッパー部に流入し、ここで、触媒と一緒に運ばれてきた炭化水素蒸気が水蒸気注入により取り除かれる。スペント分解触媒から吸蔵された炭化水素の除去後、除去された触媒は、スペント触媒スタンドパイプを通って触媒再生塔へ流入する。
【0004】
通常、触媒は、空気を再生塔に導入し、コークスを燃やして触媒活性を回復することにより再生される。これらのコークス燃焼反応は、大きな発熱反応であり、結果的に触媒を加熱する。加熱され、再活性化された触媒は、再生触媒スタンドパイプを通ってライザーに戻り、触媒サイクルが完結する。このコークス燃焼排ガス流は再生塔先端まで上昇し再生塔の炎路を通って再生塔から出て行く。排ガスは、通常、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、一酸化炭素(CO)、酸素(O2)、アンモニア、窒素および二酸化炭素(CO2)を含む。
【0005】
従って、接触分解触媒が受けるFCCプロセスの3つの特徴的なステップを次のように区分けすることができる:1)供給原料が軽質の生成物に変換される接触分解ステップ、2)触媒に吸着した炭化水素を除去するストリッピングステップ、および3)触媒上に出下コークスを燃焼除去する再生ステップ。再生された触媒は、次に、接触分解ステップで再使用される。
【0006】
FCC触媒の大きなブレークスルーは、分子篩い、またはゼオライトの導入と共に、1960年代の始めに訪れた。これらの材料は、当時のFCC触媒を構成する無定形および/または無定形/カオリン材料の担体中に組み込まれた。シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、カオリン、粘土、等の無定形または無定形/カオリン担体に入れた結晶質アルミノシリケートゼオライトを含むこれら新規ゼオライト触媒は、それ以前の無定形、または無定形/カオリン含有シリカ−アルミナ触媒よりも、少なくとも1、000〜10、000倍、炭化水素分解に対し活性が高かった。このゼオライト接触分解触媒の導入は、流動接触分解プロセスに革命をもたらした。ライザー分解、接触時間短縮、新再生プロセス、新改良ゼオライト触媒開発、等の高度な作業を取り扱うために、新規プロセスが開発された。
【0007】
合成X型およびY型および天然のフォージャサイト等の様々なゼオライトの開発;イオン交換技術による希土類イオンまたはアンモニウムイオンの組み入れによるゼオライトの過熱水蒸気(水熱)安定性向上;および摩耗耐性がより優れたゼオライト支持用担体の開発、等を中心として新規触媒開発が展開された。ゼオライト触媒開発は、設備の拡張も、新規建設の必要もなく、同じ設備を使って、供給原料のスループットの大幅な増加能力を石油産業に与えると共に、転換率および選択肢を増やした。
【0008】
触媒含有ゼオライトの導入後、石油産業は、オクタン価の向上に伴うガソリン需要の高まりにより、量と質に関して、原油の入手に悩まされるようになった。1960年代終わりから1970年代の初めに、世界の原油供給状況は劇的に変化した。過剰な軽質スイート原油から、供給状況は、より高い硫黄含有物を有する、より重質の原油の、ますます量が増加するタイトな供給へと変化した。これらのより重質で、高硫黄原油は、アスファルト含有物の大きな増加を伴って、多くの重金属も必ず含むという点で、石油精製者に対し処理上の問題があることを明らかにした。
【0009】
供給原料中に存在する、および/または供給原料の処理中に触媒上に析出したNi−V−Na等の金属の効果は、触媒活性およびガソリン産生に対する選択性の低下という極めて好ましくない効果および触媒寿命に対する同様に有害な効果に関して、文献に記載されている。特に、供給物中で高濃度のバナジウムは、触媒寿命に有害である。従って、供給原料中の金属混入物の存在は、FCCプロセス中に重大な問題があることを提示する。共通金属混入物は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ナトリウム(Na)、およびバナジウム(V)である。これらの金属のいくつかは、分解過程の間に脱水素反応を促進し、ガソリン生産を犠牲にして、コークスと軽質ガス量が増加しうる。また、これらの金属の一部は、分解触媒の安定性および結晶化度に有害な影響を及ぼしうる。分解触媒再生プロセスの間に、触媒それ自体の中に存在する金属は、水熱条件下で蒸発し、触媒上に再析出する可能性がある。シリコン(Si)はこのような金属の一例である。
【0010】
最初から供給原料や分解触媒中に存在するものであっても、またはFCC反応塔中に存在する何か他の化合物中に存在するものであっても、これらの金属は全て、分解触媒の活性成分の活性、選択性、安定性、および結晶化度の喪失につながる可能性がある。
【0011】
前に述べたように、バナジウムは分解触媒を毒し、その活性を低下させる。この分野の文献には、供給原料中に存在するバナジウム化合物は、分解触媒上に析出したコークス中に組み込まれ、次に、再生塔中でコークスが燃やされるにつれ、五酸化バナジウムに酸化されるとの報告がある。バナジウムの触媒活性を低下させる可能性のある経路の1つは、五酸化バナジウムが再生塔中に存在する水蒸気と反応してバナジン酸を形成することである。バナジン酸は、次にゼオライト触媒と反応して、その結晶化度を低下させ、その活性を低下させる。
【0012】
バナジウムおよび他の金属を含有する化合物は、通常、揮発性化合物として分解装置から容易には除去できないので、通常の手法は、分解プロセス中の条件下でこれらの化合物を不動態化することであった。不動態化には、分解触媒中に添加物を組み込むか、または分解触媒と一緒に別の添加剤粒子を添加することが含まれる可能性がある。これらの添加物は、金属と結合し、そのため、「捕捉剤」または「シンク」として作用し、分解触媒の活性成分が保護される。金属混入物は、触媒が正常稼働中に系から取り出されるのと一緒に除去され、新しい金属捕捉剤が補給触媒と共に添加され、有害な金属混入物の稼働中の連続的除去を達成する。所望の金属不動態化の度合いを達成するために、補給触媒に対する添加剤の量は、供給原料中の有害金属の量に応じて変えることができる。
【0013】
バナジウムの影響を減らすための酸化マグネシウムを含むアルカリ土類化合物の使用の開示を含む特許には、米国特許第4、465、779号、4、549、548号;4、944、865号;5、300、469号;7、361、264号;国際特許WO82/00105;英国特許GB218314A;欧州特許EP−A−020151およびEP−A−0189267、が含まれる。これらの内の一部の文献では、酸化マグネシウムがゼオライト分解触媒粒子から分離した離散性の粒子として含まれている。
【0014】
バナジウム不動態を減らすための生成物と処理工程改善を行う努力は、決してアルカリ土類材料の使用に限定されるわけではない。特定のペロブスカイト、例えば、チタン酸バリウムが商業的に採用されている。ペロブスカイトは高価である。ペロブスカイトは、再生塔炎路ガス中でのSOx放出の削減にはそれほど有効ではないと考えられている。アルカリ土類材料、特に、酸化マグネシウム、は分解装置の再生塔炎路ガス中のSOx削減という追加の恩恵がある。例えば、国際特許WO82100105(同上)参照。
【0015】
高含量のバナジウムを含む供給原料を使ったFCC稼働中に、固有のバナジウム結合およびSOx捕捉能力の酸化マグネシウムを利用したいという強い動機付けがある。上記に引用した文献には、ゼオライト分解触媒と一緒に循環するように適応させた酸化マグネシウムベースのバナジウム不動態化粒子を製造する過去の努力のいくつかが見受けられる。商業的成功は、目的をかなえるレベルには達していない。1つの大きな挑戦は、マグネシウムを最も活性のある型(酸化物)に維持しながら、FCC中での使用で充分耐摩耗性のある物理的に粒子の形の金属不動態化剤を提供することであった。分解触媒粒子と一緒にFCC装置の反応塔および再生塔の中を通って循環する必要がある場合は、バインダー/担体のない酸化マグネシウムは、FCC装置中での使用には適さない。これが酸化マグネシウム粒子が摩耗力に曝された場合に容易に破壊し粉末になるからである。FCC装置中でSOxを駆除するためにマグネシアを使用する最初期の提案(米国特許第3、699、037号)の一つでは、材料が再生塔中で循環されSOxと結合するものであることに留意されたい。このマグネシアは、このような使用の間に粉砕され、バナジウム不動態化を達成するためには必要であった分解装置中での巡回を経ることなく最終的に再生塔から炎路ガスと一緒に除去される。酸化マグネシウム粒子の脆弱な性質のために、この材料は、FCCサイクルの間に触媒と一緒に循環しなかった。
【0016】
上記引用のいくつかを含む多くの特許が、マグネシアとカオリン粘土の混合物をベースにした配合を開示している。カオリン粘土は、安価で潜在的結合特性を有するために広く使われている分解触媒用の担体成分である。また、カオリン粘土は、か焼形態で相対的に触媒的に不活性であり、触媒活性が所望されない、マグネシアベースのバナジウム不動態化剤用の担体希釈材として主要な候補材である。担体希釈材としてカオリン粘土を使用することの利点は、これを使って、スプレー乾燥用の分散状の濃縮した液体スラリー原料を調製し、ロータリーアトマイザーまたはノズルスプレードライヤーで微小球を形成することにより、実質的に触媒的不活性の粒子を容易に形成できることにある。乾燥した場合、特に、カオリンの脱水酸基化温度を超える温度でか焼した場合、か焼カオリンは、また、結合する役割としても機能する。
【0017】
上述の文献のいくつかは、スプレー乾燥を含む手段により調整されたMgO/カオリン微小球の例を提供しているが、スプレードライヤーの供給原料スラリーの組成物を開示していない。また、それらは摩耗耐性に関する情報を提供していない。発明者が生成物の摩耗耐性または蒸気安定性に関心があったということを示すものはない。国際特許WO82/00105の場合には、担体は、カオリンとシリカ−アルミナゲルの混合物で、従来の活性分解触媒中のゼオライト結晶用担体である。シリカ−アルミナは、触媒活性を有することが既知の材料である。
【0018】
カオリンを取り扱う当業者なら、マグネシウムイオンのカオリンスラリーへの導入が、スラリーを凝集させ、高粘化させることを知っている。これは、種々の粘土ベースの掘削泥水配合に利用されている。しかし、凝集と高粘化は、特に短時間の場合、かなりの酸化マグネシウム含量の粒子がスプレードライヤーで製造される、FCCに有用なマグネシア/カオリン生成物を製造する際に、厄介な問題をもたらす。スラリーの不安定により、粒子充填が変動し、粒径の分布および粒子空隙容量が生ずる。空隙容量およびパッキング変動性は、摩耗制御問題の主要根本原因である。充分に高濃度(例えば、50%固形分)で十分な流動性がある分散カオリンスラリーを提供し、均一な微小球を製造することは、簡単なことである。しかし、カオリンを低固形分、例えば、10%でスプレー乾燥する場合、微小球は、か焼により堅くされる前に分解するであろう。痕跡量を超えるマグネシウムがこのようなカオリンの高固形分液体分散スラリーに添加されると、凝集を起こし高粘化するであろう。十分なマグネシウムイオンが導入されると、固形ゲルが形成され、スラリーから、既知の技術を使ってスプレー乾燥により微小球を形成することはできない。有効なバナジウム不動態化用に十分なMgO含量を有するスプレー乾燥した粒子を製造するのに十分な量の酸化マグネシウムのカオリンスラリーへの追加により、連続的商業スプレー乾燥設備を使ってスプレー乾燥できないスラリーが生成されるであろう。この問題は、良好なバナジウム捕捉:摩耗耐性;高バナジウム捕捉能力;良好なバナジウム不動態化;および非常に高い捕捉効率(すなわち、速いバナジウム取り込み)の基準を満たすマグネシアと粘土希釈剤を含む摩耗耐性スプレー乾燥微小球開発の探究を悩ませてきた。
【0019】
このような粒子を製造するために、マグネシウムイオンの組み込みにより分散カオリンスラリーが凝集し、スラリーの高粘化またはゲル化さえも生じ、最終的には、十分な高固形分含量のスラリーを処方して摩耗耐性スプレー乾燥微小球を製造できないことにより引き起こされる困難の克服が必要である。凝集と高粘化を制御して堅さを得ることの必要性は、有効なマグネシウム不動態化剤として機能するのに充分な多孔性を有する微小球を製造することの必要性と釣り合いを取ることになる。
【0020】
上記の同一出願人による米国特許第5、300、469号は、スプレー乾燥摩耗耐性微小球の形のバナジウム不動態化粒子を開示している。これは、少量の酸化マグネシウム、これに混合した主要量のか焼カオリン粘土および酸化マグネシウムに比べて少量のインサイツ形成無定形ケイ酸マグネシウムセメントから成る。粒子は、低表面積を有し、最低限の分解活性を持つ。開示発明の生成物は、酸化マグネシウムまたはマグネシウム水酸化物、含水(未か焼)カオリン粘土およびケイ酸ナトリウムと、水とを混合し、熟成した分散液体スラリーの形成を含む処理ステップにより得られる。熟成の間に、塩基性マグネシウム化合物は、ケイ酸ナトリウムと反応し、ケイ酸マグネシウムを生成し、これが最終生成物中でバインダーとして機能する。任意選択で、コロイド状シリカ、追加のカオリン粘土または両方を熟成スラリーに添加してもよい。ケイ酸ナトリウムに対する酸化マグネシウムの比率を制御して、少量のケイ酸マグネシウムのみが形成され、ほとんどの酸化マグネシウムが未反応で残され、生成物中で金属を不動態化するために利用でき、さらに必要に応じSOxに結合するようにする。スラリーは、スプレー乾燥して微小球を形成し、カオリンを脱水し、一方で、結晶質ケイ酸マグネシウムおよび/またはアルミン酸マグネシウムの形成を防ぐか、または最小限にするための充分に軽い条件でか焼する。
【0021】
米国特許第5、300、469号の発明者が重要と考えている1つの主要な製造パラメータは、2つの成分間に重要でない反応しか起こり得ないよう、大量のケイ酸マグネシウムを形成させないようにすることである。別の主要なパラメータは、中等度のか焼温度であり、これにより、大量の結晶質ケイ酸マグネシウムおよびアルミン酸マグネシウムの形成を避け、その結果、プロセス全体を通して、大部分のMgOを保存することである。大量の結晶質ケイ酸マグネシウムまたはアルミン酸マグネシウムとは、約半分を超える酸化マグネシウムがその結晶質材料の形成に消費されるような量であろう。さらに別の主要なパラメータは、他の成分と混合されてスラリーが形成された時間からスプレー乾燥まで酸化マグネシウムがうまく分散されるようにすることであった。従って、FCCでの使用に充分な摩耗耐性のある形の微小球を製造するために、スプレー乾燥に先立ち、出発材料(MgO、粘土およびバインダー)の注意深い選択およびスラリー調製手法の注意深い選択が重要であった。特許権者は、マグネシウムは、マグネシウム水酸化物またはマグネシウム炭酸塩の形で使用すべきではないと述べている。理由は、これらにより、粒子収縮が起こり、最終的に、摩耗耐性の低いバナジウム捕捉剤ができるという問題が生じるからである。
【0022】
摩耗耐性でもあり、容易に処理でき、商業的規模で形成できる、有効な酸化マグネシウム含有金属捕捉粒子を生成するための多くの努力にも拘わらず、いまだ問題が残っている。従って、カオリン由来であれ、添加結合剤由来であれ、ケイ酸塩の存在により、酸化マグネシウムとの反応が起こり、ケイ酸マグネシウムが生成し、これは、製油所での適用に際し、酸化マグネシウムとして有効な金属捕捉剤ではない。さらに、酸化マグネシウムスラリーの低い安定性は、いまだ問題である。熟成すると、このようなスラリーは、24〜48時間で高粘化しゲル化することが多く、製造計画を困難で、定まらないものにする。また、スラリー粘度が変化すると、最終生成物の粒径管理が難しくなり、修正が必要となる結果としてこの費用がプロセスコストに付加される。さらに、酸化マグネシウムスラリーは、相対的に低固形分含量で、約20〜22重量%である。低固形分含量は、スプレードライヤー速度を低下させ、ひいては、プラントの生産性を低下させて、エネルギー消費を多くし、その結果、合計生成物コストを上げる。さらに、低固形分の代償として、最終生成物中の酸化マグネシウムレベルは、有効な金属捕捉剤としては、所望されるほど高くはない可能性がある。
【発明の概要】
【0023】
本発明の要約
本発明の新規バナジウム不動態化粒子は、酸化マグネシウム、含水カオリンおよびカルシウム炭酸塩からなるスプレー乾燥摩耗耐性微小球の形態である。特に、金属捕捉粒子は、酸化マグネシウム、か焼カオリンおよびカルシウム炭酸塩の混合酸化物合金と思われる。カルシウム炭酸塩の添加は、マグネシウムとカオリン由来の粒子の形態に形成されたか、または処理過程の間に生成したいずれかのケイ酸塩との反応を大きく減らすと思われる。未反応酸化マグネシウムまたは酸化物合金は、FCCの間の金属不動態化に非常に効果的である。
【0024】
本発明の生成物は、酸化マグネシウム、カルシウム炭酸塩および含水カオリンの混合を含む処理ステップにより得られる。その3つの成分に対する分散化学をつかって、混合物のpHにより凝集を生じないようにゼータ電位が調整されること、また従って、スラリーが安定で、優れた保存可能期間を有し、微小球気孔容量制御のための高固形分含量を有し、さらに追加の摩耗耐性のための従来のバインダー系の添加の必要がないことが明らかになった。スプレー乾燥スラリーのか焼は、過剰なケイ酸マグネシウムを形成することがなく、混合金属酸化物合金を生成するように注意深く制御される。また、摩耗耐性を管理するためには、温度制御が必要であることも明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明のカルシウム含有混合酸化物合金捕捉剤のXRDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本発明は、改良された金属不動態化組成物、および少なくとも約0.1ppmの量の有意水準の金属(Ni−V−Na)を含む石油原料の触媒変換におけるその使用のためのものである。さらに具体的には、FCC運転で利用される全てのタイプのオイル原料中の金属混入物による、触媒的に活性な結晶質アルミノケイ酸塩ゼオライトの不活化効果を減らすために、バナジアを固定するための混合金属酸化物合金を含む金属捕捉添加剤が提供される。本発明は、特に、最新流動接触分解装置の全原油、残留オイルおよび常圧蒸留残油原料中で見つかる炭素−金属オイル成分の処理に有用である。
【0027】
本発明の新規金属不動態化粒子は、酸化マグネシウム、カオリンおよびカルシウム炭酸塩のか焼により生成される混合金属合金である。カルシウム炭酸塩の添加は、大部分のマグネシウム成分が酸化マグネシウムとして存在するようにカオリン由来のケイ酸塩成分とマグネシウムとの反応を減らすと考えられる。実際、少なくとも約43度および約62度の2θピーク位置の反射を示すX線回折(XRD)パターンは、ペリクレースの結晶型の酸化マグネシウムの存在を示している。明らかになったことは、50wt.%を超えるマグネシウムが、活性不動態化成分の形(ペリクレースMgO)で存在することである。本発明の金属捕集材は、組成を変えることにより、例えば、カオリンの代わりにカルシウム炭酸塩含量を増やすことにより、存在するマグネシウムの60パーセントを超えるペリクレースMgOの量を含むようにさらに最適化することが可能である。また、XRDでは、他のカルシウムケイ酸塩、アルミン酸カルシウムおよび少量のマグネシウムケイ酸塩が認められる。カルシウム炭酸塩を導入することにより、金属捕捉に好ましくないケイ酸マグネシウムの含量が減少すると考えられる。
【0028】
本発明の混合金属酸化物合金の形成のために、混合金属合金金属不動態化剤粒子が、濃縮された(高固形分の)水性分散カオリンスラリー、分散酸化マグネシウムもしくはマグネシウム水酸化物溶液、またはこれらの混合物およびカルシウム炭酸塩をスプレー乾燥することにより得られる。スラリーは、熟成しても、またはすぐにスプレー乾燥してもよい。マグネシウム水酸化物の溶液を使用する場合は、カオリンの水性のスラリー、マグネシウム水酸化物およびカルシウム炭酸塩は、安定で、混合物は組成物の凝集またはゲル化を生じないことが明らかになった。従って、スラリーは、優れた保存可能期間を有し、スプレー乾燥プロセスは、容易に制御することができる。粒子の製造は、酸化マグネシウム含有水性カオリンスラリーの凝集と高粘化の結果であった前述の困難を伴うことなく、容易に達成することができる。スプレー乾燥後、形成されたスプレー乾燥微小球は、次に、カオリンを脱水し、粒子を堅くするのに十分な時間と温度でか焼される。粒子を洗浄し溶解物を除去する必要はない。か焼条件は、結晶質ケイ酸マグネシウムまたは他の結晶質マグネシウム化合物、例えば、アルミン酸マグネシウムの生成を最小限にするよう制御される。従って、本発明のか焼粒子は、XRDで示される多量の酸化マグネシウムを含み、炭化水素供給原料中の金属成分の不動態化が改良される。一般的に、本発明の金属不動態化粒子は、少なくとも約10%MgOを含み、予定通りの金属不動態化が達成できるであろう。最終生成物中の15〜30wt.%のMgOの量が、特に有用である。か焼に際しては、無定形成分、ならびに、結晶質活性酸化マグネシウム不動態化成分用のインサイツバインダーまたは支持を形成する一部の結晶質金属酸化物および金属ケイ酸塩成分が生成される。追加のバインダー成分がカオリン、酸化マグネシウムおよびカルシウム炭酸塩の混合物に添加されうるのは、本発明の一部である。これらの追加のバインダー材料は、当技術分野でよく知られている。例えば、ケイ酸ナトリウムは、乾燥混合物の10wt.%の量まで添加可能で、バインダー成分として作用する。ナトリウム、特に、無定形相は、FCC装置中で非常に可動性であり、触媒の不活化に寄与するので、ナトリウムタイプバインダーを使わないことが好ましい。従って、ケイ酸ナトリウムバインダーが存在しないのが好ましい。
【0029】
スプレー乾燥して本発明の金属不動態化粒子を形成する水性のスラリーの組成は、広く変更可能である。典型的には、スプレー乾燥される水性スラリーは、3つの固体成分をベースにして、20〜90wt.%のカオリン、典型的には、40〜80wt.%カオリン、5〜50wt.%酸化マグネシウムまたはマグネシウム水酸化物、典型的には、10〜40wt.%および5〜50wt.%、典型的には、10〜40wt.%カルシウム炭酸塩を含むことができる。酸化マグネシウムの代わりにマグネシウム水酸化物が使用される場合は、水性のスラリーを形成するために活性成分を添加する順番は、重大ではない。酸化マグネシウムがスラリーに添加される場合は、カオリンおよび/または酸化マグネシウムは、スラリーに少しずつ添加しなければならないであろう。
【0030】
一般的に、使われているカオリン粘土は、水で洗った、高純度ジョージア含水カオリンで、粒子サイズは、2μ未満が60〜90重量%、好ましくは、2μ未満が75〜80重量%である。細かいか焼粘土粒子による摩耗の改善が認められた。
【0031】
本発明のプロセスで使用可能なMgOは、表面積(Bet、窒素):1〜25m2/g、粒径中央値:1〜10μ、を有する。好ましい仕様は、1〜10m2/g表面積および粒径中央値:4〜5μである。Mg(OH)2を使用する場合は、50〜60%の範囲の高固形分スラリーが市販品として入手可能である。
【0032】
カオリン、MgOまたはMg(OH)2およびカルシウム炭酸塩を含む水性スラリーは、従来のスプレードライヤー(回転円盤またはノズル)でスプレー乾燥し、か焼される。通常のスプレードライヤー条件は、入り口温度:800〜1150°Fおよび出口温度:190〜230°Fである。通常のか焼中の層温度は、約1500〜1800°Fである。使用したか焼条件は、カオリンを脱水するには十分であるが、特徴的カオリン発熱を起こさせるには不十分な条件である。重要なのは、1500°F〜1600°Fの低いか焼温度では、より多量の酸化マグネシウムが粒子中に存在するのみならず、スプレー乾燥に続く1650°F〜1800°Fのか焼により生成された粒子に比べ、摩耗耐性も大きく改良されていることが明らかになったことである。
【0033】
酸化マグネシウムを使いスラリーを生成する場合は、カオリン、酸化マグネシウムおよびカルシウム炭酸塩のスラリーの生成は、米国特許第5、384、041号に開示の方法に従って行うことができる。この同一出願人の特許では、カオリンの追加により、プロセス全体にわたり原料の粘度が制御されるように設定される方法が開示されている。マグネシウム水酸化物が酸化マグネシウムの原料として使用される場合は、スラリーの凝集およびゲル化は認められないので、カオリン粘土を段階的に追加する設定は必要ない。一般的に、スプレー乾燥粒子は、平均粒径:50〜150μ、典型的には、55〜90μである。
【0034】
本発明の不動態化剤微小球は、ガス状オイルおよび残留オイルの分解に使われるゼオライト分解触媒に対するバナジウムの毒作用を防ぐために使用される。活性分解触媒粒子は、担体希釈材、典型的には、シリカ−アルミナ中に、1つまたは複数のゼオライト、通常、少なくとも1つのY型を含む。触媒は、インサイツ方式、例えば、米国特許第4、493、902号に記載のプロセスにより、または前もって結晶化したゼオライトを、担体成分、例えば、カオリンおよびシリカ−アルミナゲルと混合する方法により調製可能である。ゼオライト分解触媒および不動態化剤の粒子は、一般的には、サイズは類似であるが、所望なら変えることもできる。
【0035】
本発明の不動態化剤微小球は、触媒をFCC装置に導入する前に、別々のゼオライト触媒粒子と混合することができる。あるいは、不動態化剤粒子を分解装置中の循環触媒残量に充填することができる。典型的には、金属不動態化粒子は、分解触媒および金属捕捉粒子の混合物重量ベースの2〜50重量%、好ましくは、10〜40重量%、最も好ましくは、20〜30重量%の範囲の量で混合される。不十分な量で使用する場合は、バナジウム不動態化の改良が十分でない可能性がある。過剰量を採用する場合は、分解活性および/または選択性が低下する可能性がある。最適な割合は、原料中のバナジウムレベルおよび不動態化剤粒子中のマグネシアの比率と共に変化する。
【0036】
多量混入金属レベルのトップト・クルード、残留オイルおよび常圧蒸留残油は、高再生塔温度と相まって、触媒に対し相対的に高い金属濃度、例えば、5、000〜10、000ppmで触媒不活化に関し重大な問題を呈することは長い間知られてきた。ニッケルおよび特にナトリウムは、活性な酸性の分解部位中和につながる。現在、ニッケルレベルに対し高バナジウムを有する原料含有常圧蒸留残油を、触媒含有結晶質ゼオライトで処理する場合、また、特に、高バナジウムレベル触媒で処理する場合、ゼオライトの急速な不活化が起こることがわかっている。この不活化は、実際の尺度としては、結晶質ゼオライト構造の喪失の形で現れる。この喪失は、1、000ppm以下のバナジウムレベルで観察されている。結晶質ゼオライト構造の喪失は、バナジウムレベルの増加に伴い、より急激で重大になり、約5、000ppmのバナジウムレベル、特に、10、000ppmに近いバナジウムレベルで、完全なゼオライト構造の破壊が起こる可能性がある。10、000ppm未満のバナジウムレベルでのバナジウムによる不活化は、未使用触媒添加割合を増加すること、および再生塔温度を下げることにより、遅らせることができる。再生塔温度の低下は、高オイル対触媒比率が必要となり、これは、生成コークスの量を増やし、所望の生成物収率に悪影響を与えるという欠点を有する。また、触媒添加割合の増加は、出費が増え、不経済な運転になりうる。
【0037】
原油の蒸留から得られた一部の原油と一部のFCC原料油は、かなりの量(0.1ppm超)の重金属、例えば、Ni、V、Fe、Cu、Naを含んでいる。原油蒸留操作により得られた残留オイル留分、および特に、常圧蒸留残油は、さらに多くの量の金属混入物を含む傾向がある。本発明に従って、これらの高沸点残留オイルが、炭化水素変換中に触媒上に析出した金属酸化物を捕捉するのに十分な金属不動態化添加剤と組み合わせて、触媒的に活性な原料の炭素−金属炭化水素成分変換用ゼオライト含有結晶質ゼオライト触媒を含む触媒組成物と接触させることにより、液体輸送用燃料および蒸留物加熱用燃料に変換される。
【0038】
本発明のプロセスは、二元的粒子触媒系を含む触媒組成物を使った炭化水素供給原料の接触分解を含み、二元的粒子触媒系の第1成分は、好ましくは担体材料中に含まれた結晶質アルミノケイ酸塩ゼオライトを含み、第2成分は金属不動態化に有効な上述の混合金属酸化物合金を含む。本発明の改良は、供給原料が高レベルの金属を含む場合であっても、適切に機能する触媒系の能力に関する。
【0039】
本発明のプロセスに用いる新規触媒組成物の分解触媒成分は、高活性を有するいずれの所望の型のどの分解触媒であってもよい。好ましくは、本明細書で使用する触媒は、結晶質アルミノケイ酸塩を含む触媒、好ましくは、「希土類で置換した結晶質アルミニウムケイ酸塩」と呼ばれることもある希土類金属陽イオン、または安定化水素ゼオライトの1つで置換された結晶質アルミノケイ酸塩を含む触媒である。
【0040】
本明細書で接触分解触媒として使用可能な分解活性を有する典型的なゼオライトまたは分子篩いは、当技術分野でよく知られている。合成により調整されるゼオライトは、最初はアルカリ金属アルミノケイ酸塩の形である。アルカリ金属イオンは、通常、希土類金属および/またはアンモニウムイオンに置換され、分解特性をゼオライトに付与する。ゼオライトは、より小さい、比較的均一な孔または通路により連結された多くの均一な開孔または空孔を含む3次元的結晶質で安定な構造である。合成ゼオライトの有効な孔径は、直径6〜15Åが適切である。
【0041】
本明細書で用いることができるゼオライトには、天然および合成ゼオライトの両方が含まれる。これらのゼオライトには、グメリン沸石、斜方沸石、ダチアルダイト、クリノプチロライト、フォージャサイト、輝沸石、方沸石、レビナイト、毛沸石、ソーダライト、カンクリナイト、かすみ石、青金石、灰沸石、ソーダ沸石、オフレタイト、中沸石、モルデナイト、ブリューステライト、フェリエライト、等が挙げられる。フォージャサイトが好ましい。本発明にしたがって処理可能な適切な合成ゼオライトには、化学的にまたは水熱法により脱アルミニウム高シリカ−アルミナYを含むゼオライトX、Y;A、L、ZK−4、ベータ、ZSM型、またはペンタシル、ボラライトおよびオメガが挙げられる。本明細書で使われる用語の「ゼオライト」は、アルミノケイ酸塩のみでなく、アルミニウムがガリウムまたはホウ素で置換された物質、およびシリコンがゲルマニウムで置換された物質も意図している。本発明に好ましいゼオライトは、YおよびX型の合成フォージャサイトまたはその混合物である。
【0042】
良好な分解活性を得るためには、ゼオライトは、適切な形でなければならない。大抵の場合、このことは、ゼオライトのアルカリ金属含量を可能な限り低いレベルに減らすことが含まれる。さらに、高アルカリ金属含量は熱的な構造安定性を低下させ、この結果、有効な触媒の寿命が低下するであろう。アルカリ金属を除去し、ゼオライトを適切な形態にする方法は、当技術分野でよく知られており、例えば、米国特許第3、537、816号に記載されている。
【0043】
ゼオライトは、担体中に組み込むことができる。適切な担体材料には、天然に存在する粘土、例えば、カオリン、ハロイサイトおよびモンモリロナイト、および無定形無機酸化物、例えば、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−ジルコニア、シリカ−マグネシア、アルミナ−ボリア、アルミナ−チタニア、等、およびこれらの混合物を含む無機酸化物ゲルが挙げられる。好ましくは、無機の酸化物ゲルはシリカ含有ゲルであり、さらに好ましい無機酸化物ゲルは、無定形シリカ−アルミナ成分、例えば、従来のシリカ−アルミナ分解触媒で、そのいくつかのタイプおよび組成のものは市販品で入手可能である。これらの材料は、通常、シリカ−アルミナを共沈したシリカとアルミナの共存ゲル、または予め生成し、予め熟成したヒドロゲル上に析出したアルミナとして調整される。一般的には、シリカは、このようなゲル中に存在する触媒性固体中の主要成分として存在し、量は約55〜100重量パーセントの範囲になる。担体成分は、全体触媒ベースで、約40〜約92重量パーセント、好ましくは約60〜約80重量パーセントの範囲の量で本発明の触媒中に存在するのが適切でありうる。
【0044】
米国特許第4、493、902号(本特許の教示は、相互参照により本明細書に組み込まれる)は、耐摩耗性、高ゼオライト含量で、約40%、好ましくは、50〜70重量%のY型フォージャサイトを含む触媒的に活性な微小球を含む新規液体分解触媒、および約40%を超えるナトリウムYゼオライトを多孔性微小球に結晶化することによりこのような触媒を作製する方法を開示している。この多孔性微小球は、2種の異なる形態の化学的反応性の高い、か焼粘土、すなわち、メタカオリン(脱水酸基に関連した強い吸熱反応を行わせるようにか焼したカオリン)および、カオリンをメタカオリンに変換するのに使用する条件より厳密な条件下でか焼したカオリン粘土、すなわち、スピネル型か焼カオリンと呼ばれることもある特徴的カオリンの発熱反応を起こすようにか焼したカオリン粘土からなる。好ましい実施形態では、2種の形態のか焼カオリン粘土を含む微小球は、アルカリケイ酸ナトリウム溶液中に浸漬され、好ましくは、得ることが可能な最大限量のY型フォージャサイトが微小球中で結晶化されるまで加熱される。
【0045】
米国特許第4、493、902号特許の技術の実施に際し、ゼオライトが結晶化している多孔性微小球は、好ましくは、粉末状未処理(水和)カオリン粘土(A123:2SiO2:2H2O)および微小球形成スプレードライヤーに充填されてスラリー流動化剤として作用し、次に、スプレー乾燥微小球用成分を物理的にまとめる機能をする少量のケイ酸ナトリウムと共に発熱を起こさせた粉末状か焼カオリン粘土との水性のスラリーを成形することにより調製される。水和カオリン粘土および発熱させてか焼したカオリンの混合体を含むスプレー乾燥した微小球は次に、微小球の水和カオリン粘土部分を脱水し、メタカオリンへの変換を起こさせるために、カオリンに発熱を起させる場合よりも緩い制御された条件下でか焼され、これにより所望のメタカオリン、発熱を起こさせるようにか焼したカオリンおよびケイ酸ナトリウムバインダーの混合物を含む微小球が得られる。米国特許第4、493、902号特許の説明用の実施例では、ほぼ等しい重量の水和粘土およびスピネルがスプレードライヤー原料中に存在し、得られたか焼微小球は、メタカオリンよりも幾分多い発熱を経た粘土を含む。この特許は、か焼微小球が、約30〜60重量%のメタカオリンおよび約40〜70重量%の特徴的発熱を経たことが特徴のカオリンを含むことを教示している。この特許に記載されているあまり好ましくない方法には、予めメタカオリン状態でか焼したカオリン粘土と、発熱を起こさせてか焼したカオリンとの混合物を含み、どの水和カオリンも含まないスラリーをスプレー乾燥し、従って、水和カオリンをメタカオリンに変換するか焼をすることなく直接に、メタカオリンおよび発熱を起こさせてか焼したカオリンの両方を含む微小球を提供することが含まれる。
【0046】
米国特許第4、493、902号特許に記載の発明を実施する場合は、発熱を起こさせるようにか焼したカオリンおよびメタカオリンで構成される微小球を、結晶化開始剤(種子)の存在下、腐食性ケイ酸ナトリウムを多く含む溶液と反応させて、微小球中のシリカおよびアルミナを合成ナトリウムフォージャサイト(ゼオライトY)に変換する。微小球は、ケイ酸ナトリウム母液から分離され、希土類、アンモニウムイオンまたはその両方とイオン交換して希土類または種々の既知の安定な形の触媒を形成する。この特許の技術により、高活性と良好な選択性および熱安定性、ならびに摩耗耐性を有する、望ましく、かつユニークな組み合わせの高ゼオライト含量を達成する手段が提供される。
【0047】
上述の技術は、広範な商業的成功をかなえた。摩耗耐性も有する高ゼオライト含量微小球の有効性のために、今や、カスタム触媒が、費用のかかる機械的な再設計を行うことなく、改良された活性および/または選択性等の特殊な性能目標を有する石油精製所で利用可能である。国内および海外石油精製業者に現在供給されているFCC触媒のかなりの部分は、この技術に基づいている。FCC装置が最大耐用再生塔温度または空気ブロワー能力により制限を受けている製油所は、選択性の改良を求めており、コークスの生成は減少しているが、一方で、ガスコンプレッサーの制約によりガス製造を低減させる触媒が強く望まれるようになっている。見たところでは、コークスの少しの減少により、空気ブロワーまたは再生塔温度制限を有するFCC装置の運転に大きな利益をもたらしうるように思われる。
【0048】
最終複合触媒の形成方法は本発明の一部を構成せず、当業者によく知られた上述のような方法が受入可能である。
【0049】
本発明に使用する適切な原料油には、原油、大気または真空残留オイル、このような供給原料由来の脱アスファルト油、シェール油、液化石炭、およびタールサンド流出物または金属含量が高いこと以外は適切な接触分解原料油である他の石油留分が含まれる。
【0050】
上述の触媒組成物は、金属を含むいずれの炭化水素原料油の接触分解にも使用可能であるが、特に、高金属含量原料油の処理に対し有用であることは、理解されたい。典型的な供給原料は、金属混入物が濃縮されている重質ガス油または原油の重い方の留分である。本発明の触媒組成物を使う処理用の特に好ましい原料油には、大気圧下、沸点約900°F(482℃)超の脱アスファルト油;大気圧下、沸点約600°F〜約1100°F(343℃〜593℃)の重質ガス油;沸点約650°F超の大気または真空塔ボトム部分が含まれる。
【0051】
系に組成物として導入された触媒的に活性な成分および金属不動態化成分の相対量は、調整して、分解ゾーンの金属混入物の濃度が増えるに伴い、ライザー中、および系中の金属捕捉剤の濃度を増やすことができる。従って、金属捕捉剤が金属混入物用の不純物除去剤として作用して、このような混入物が触媒的活性成分の分解中心に到達するのを防止できるため、触媒中の捕捉剤の濃度を、所望の変換を維持し、好ましくは、少なくとも55パーセントの変換を維持するように調節することができる。分解触媒混合物(分解成分および捕捉剤)が、ニッケル、バナジウムおよび鉄混入物濃度を合わせて、4000〜20、000ppm(触媒混合物の重量をベースに)の合計金属の範囲にある場合、分解ゾーン中の捕捉剤成分の濃度は、少なくとも55パーセントの変換を維持するように調製することが可能である。捕捉剤は、特に、バナジウムの除去に有効である。また、金属混入物の有害作用を減らすために他の既知の金属不動態化剤をさらに含むことは好都合である。例として、マグネシウムおよびカルシウム/マグネシウム化合物のほか、アンチモン酸化物またはビスマス酸化物を挙げることができる。
【0052】
上記のプロセスに対応する反応温度は、少なくとも約900°F(482℃)である。上限は、約1100°F(593.3℃)以上であってもよい。好ましい温度範囲は、約950°F〜約1050°F(510℃〜565.6℃)である。反応の全体圧力は、広く変動可能で、例えば、約5〜約50psig(0.34〜3.4気圧)、または好ましくは、約20〜約30psig(1.36〜2.04気圧)でもよい。最大滞留時間は、約5秒間で、また、大抵の原料油に対して、滞留時間は約1.0〜約2.5秒以下であろう。分解が最も容易な、また、最高のガソリン収率を得られる芳香族化合物であるモノ−およびジ−芳香族化合物およびナフタレンを分解するために、また、これらの物質はコークスおよびC2および軽質ガスを高収率で作り出すので、多環芳香族化合物のかなりの分解が起こる前に運転を終了するために、芳香族化合物が多く含まれる高分子量原料油に対しては、約0.5〜約1.5秒の滞留時間が適切である。反応塔の直径対長さ比率は、広範に変わりうるが、反応塔は、高い線形速度、例えば、約25〜約75フィート/秒を得るために細長くあるべきであり;そのためには、約20〜約25超の直径対長さ比率が適切である。反応塔は、均一の直径にしてもよく、または連続テーパーもしくは反応経路に沿った段階的な直径の増加により、流路に沿ってほぼ一定の速度に維持することも可能である。
【0053】
原料中の炭化水素に対する触媒の荷重比は、反応塔温度の変動に対応するように変化する。さらに、再生された触媒の温度が高くなるほど、所定の反応温度を得るために必要な触媒が少なくなる。従って、高い再生触媒温度により、以下で設定される非常に低い反応塔密度レベルが許容され、その結果、反応塔での逆混合を避けるのに役立つ。通常、触媒再生は、約1250°F(676.6℃)以上の高温度で行うことができる。再生される触媒の触媒上炭素は、約0.6〜約1、5から約0.3重量パーセントのレベルまで減らされる。通常の触媒/オイル比では、触媒の量は、所望の触媒効果を得るのに充分以上であり、従って、触媒の温度が高い場合には、変換を損なうことなく比率を安全に減らすことができる。例えば、ゼオライト触媒は、特に、触媒上の炭素レベルに特に敏感であるため、触媒上の炭素レベルを決められた範囲以下に低下させるために、再生は、好都合にも、高い温度で行われる。さらに、触媒の主要機能は、反応塔に熱を与えることであるから、ある所望の反応塔温度に対して、触媒供給温度が高ければ高いほど、触媒必要量は少なくなる。触媒供給割合が低ければ低いほど、反応塔中の材料密度は低くなる。すでに述べたように、低い反応塔密度は、逆混合を避けるのに役立つ。
【0054】
実施例1
本発明の金属捕捉剤を、酸化マグネシウムスラリーとカルシウム炭酸塩およびカオリンのスラリーを以下のように混合することにより調製した:
酸化マグネシウムスラリーを20〜22%の固形分割合で調製し、リスラリー(reslurry)操作により、所望の分析含量になるように添加した。
市販(OmyaNorthAmerica、Procter、VT)の75%固形分のカルシウム炭酸塩(粉砕カルシウム炭酸塩)スラリー(Hydrocarb60)を使用した。
カオリンスラリーを、55%の固形分比率で調製した。
3つのスラリーを、Cowlesに類似のリスラリーシステムまたは他の適切な高シェアー装置を使って現在の固形分比率で混合した。酸化マグネシウムおよび水を添加して、全体固形分を40%〜50%にした。約15重量%カルシウムおよびマグネシウムおよび70重量%(脱水ベース)カオリンを含む試料を調製した。実験の目的は、か焼条件を変えた場合の、か焼温度、物理的性質、およびゼオライト保持の関係を調べることであった。出発点は、カルシウムおよびマグネシウムの等重量寄与からであった。
下記の配合物(乾燥重量ベース:100乾燥グラムか焼生成物当たり)をスプレー乾燥(Niro atomizer設計ドライヤー)し生成物を得た:
15%カルシウム−カルシウム炭酸塩−33グラム乾燥ベース(モイスチャーバランス試験による固形分測定)
15%マグネシウム−酸化マグネシウム−25グラム受入ベース(LOIで100%)
70%か焼カオリン−含水カオリン−82乾燥グラム(脱水酸化による15%までのロスを許容)
ケイ酸ナトリウムNブランド(3.22弾性率)を、約2%バインダーレベル(シリカベース)で添加した。
か焼生成物の主要成分のXRF(X線蛍光分析)(酸化物ベース%)
鉄−0.69
カルシウム−16.2
シリカ−35.32
アルミナ−17.3
マグネシウム−17.3
ナトリウム−0.7
チタン−1.1
(痕跡量の他の物質は含まず)
生成物を実験マッフル炉を使って1950°Fでか焼し全てのカオリンをスピネルに変換した。ローラー(roller)摩耗耐性=lで、これは非常に低い。
生成物を1800°Fでか焼したが、ローラー摩耗耐性には特徴が示されず、またしても低い2であった。
さらにか焼を行ったが、結果を下記に示す。
摩耗
1800°F ローラー摩耗耐性=2
1650°F ローラー摩耗耐性=4
1550°F ローラー摩耗耐性=6
1500°F ローラー摩耗耐性=20
【0055】
実施例2
試料1〜4を、カルシウム炭酸塩をカオリンまたはカオリン混合物に混合し、次に、マグネシウム水酸化物を添加することにより調製した。スラリーの固形分を、50重量%以上に維持した。
1. 比較試料
a.Mg(OH)2−5.8乾燥ポンド
b.カオリン−18.6乾燥ポンド
c.10.0ポンドのカルシウム炭酸塩。

a.Mg(OH)2−5.8乾燥ポンド
b.カオリン−15.8乾燥ポンド
c.Ansilex93(登録商標)−2.4乾燥ポンド
d.10.0ポンドのカルシウム炭酸塩
1.Ansilexは微細な、完全か焼カオリンである。

a.Mg(OH)2−5.8乾燥ポンド
b.カオリン−13.0乾燥ポンド
c.Ansilex93−4.8乾燥ポンド
d.10.0ポンドのカルシウム炭酸塩。

a.Mg(OH)2−5.8乾燥ポンド
b.カオリン−10.3乾燥ポンド
c.Ansilex93−7.2乾燥ポンド
d.10.0ポンドのカルシウム炭酸塩。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例3
次の材料の安定性調査を行った:全試料はパイロットプラントスケールのCowlesミキサーで混合した。
【0058】
【表2】

【0059】
実施例4
実施例3の生成物を次の方法を使ってXRDで調べた:
装置:
PANalytical MPD X’Pert Pro回折システムを使って、データを集めた。Cu照射を使い45kVおよび40mAのX線発生条件で分析した。光路は、1/4°発散スリット、0.04ラジアンソーラースリット、15mmマスク、1/2°散乱防止スリット、試料側0.04ラジアンソーラースリット、Niフィルター、およびX’Celerator位置感応検出器の構成とした。
【0060】
最初、試料を乳鉢で粉砕し、次に、丸いマウントに試料を詰めて調製した。丸いマウントからのデータ収集は、ステップスキャンを使って、0.016°2θステップで、3°〜80°2θの範囲を、ステップ当たりの計算時間120sの条件で行った。
【0061】
方法と計算:
Jade Plus9分析X線回折ソフトウェアをデータ分析の全ステップで使用した。各試料に存在する相は、PDF−4/ICDD(International Center for Diffraction Data)完全データベースのサーチ/マッチにより特定した。XRD回折パターンを図1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FCC処理の間に金属を不動態化するために使用される金属捕捉粒子であって、カオリン、酸化マグネシウムまたはマグネシウム水酸化物、およびカルシウム炭酸塩の混合物をスプレー乾燥した混合物を含み、前記スプレー乾燥した混合物が1500°Fから1650°F未満の温度でか焼されている金属捕捉粒子。
【請求項2】
前記スプレー乾燥した混合物が1500°Fでか焼される請求項1に記載の金属捕捉粒子。
【請求項3】
前記スプレー乾燥した混合物が、20〜90wt.%のカオリン、5〜50wt.%の酸化マグネシウムまたはマグネシウム水酸化物および5〜50wt.%のカルシウム炭酸塩を含む請求項1に記載の金属捕捉粒子。
【請求項4】
前記スプレー乾燥した混合物が、40〜80wt.%のカオリン、10〜40wt.%の酸化マグネシウムまたはマグネシウム水酸化物および10〜40wt.%のカルシウム炭酸塩を含む請求項3に記載の金属捕捉粒子。
【請求項5】
前記スプレー乾燥した混合物が、マグネシウム水酸化物を含む請求項1に記載の金属捕捉粒子。
【請求項6】
か焼したスプレー乾燥混合物が、少なくとも約10%の酸化マグネシウムを含む請求項1に記載の金属捕捉粒子。
【請求項7】
か焼したスプレー乾燥混合物が、15〜30wt.%の酸化マグネシウムを含む請求項6に記載の金属捕捉粒子。
【請求項8】
か焼したスプレー乾燥混合物が、50%を超える量のペリクレースMgOの形態のマグネシウムを含む請求項1に記載の金属捕捉粒子。
【請求項9】
か焼したスプレー乾燥混合物が、50〜150ミクロンの平均粒径を有する請求項1に記載の金属捕捉粒子。
【請求項10】
カオリンが、含水カオリンおよびか焼カオリンの混合物を含む請求項1に記載の金属捕捉粒子。
【請求項11】
流動接触分解(FCC)の間の金属不動態化方法であって、
(a)流動接触分解触媒および粒子状金属捕捉剤の混合物を含むFCC装置中で、金属含有炭化水素流体流を接触させること;
(b)前記粒子状金属捕捉剤が、カオリン、酸化マグネシウムまたはマグネシウム水酸化物、およびカルシウム炭酸塩のスプレー乾燥混合物を含み、前記スプレー乾燥混合物が、1500°Fから1650°F未満の温度でか焼され、ここで前記金属捕捉剤が、少なくとも10wt.%の酸化マグネシウムを含むこと、
を含む方法。
【請求項12】
前記スプレー乾燥粒子が、1500°Fでか焼されている請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記スプレー乾燥混合物が、30〜90wt.%のカオリン、5〜50wt.%の酸化マグネシウムまたはマグネシウム水酸化物および5〜50wt.%のカルシウム炭酸塩を含む請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記スプレー乾燥混合物が、40〜80wt.%のカオリン、10〜40wt.%の酸化マグネシウムまたはマグネシウム水酸化物および10〜40wt.%のカルシウム炭酸塩を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記スプレー乾燥混合物が、マグネシウム水酸化物を含む請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記か焼スプレー乾燥混合物が、15〜30wt.%の酸化マグネシウムを含む請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記か焼スプレー乾燥混合物が、50〜150ミクロンの平均粒径を有する請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記か焼スプレー乾燥混合物が、50パーセントを超えるペリクレースMgOの形態のマグネシウムを含む請求項11に記載の方法。
【請求項19】
カオリンが、含水カオリンおよびか焼カオリンの混合物を含む請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記金属捕捉剤が、2〜50重量%の前記分解触媒および前記捕捉剤の前記混合物を含む請求項11に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−506548(P2013−506548A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532271(P2012−532271)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/050704
【国際公開番号】WO2011/041401
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】