説明

FKBP型PPIase遺伝子及びFKBP型PPIaseの製造方法、単離されたFKBP型PPIase及びその遺伝子、発現ベクター、形質転換体、融合タンパク質及びその製造方法、目的タンパク質の製造方法、目的タンパク質の再生方法、並びに、目的タンパク質の安定化方法

【課題】 タンパク質工学的手法により分子シャペロン活性が増強されたFKBP型PPIaseを提供する。
【解決手段】 特定のアミノ酸配列からなるモチーフを含むFKBP型PPIaseをコードする遺伝子に対して、特定の5箇所のうちの少なくとも1箇所のコドン置換を行い、別のFKBP型PPIaseをコードする遺伝子を作製する。また、特定のアミノ酸配列からなるモチーフを含むFKBP型PPIaseをコードする遺伝子に対して、特定の1箇所のコドン置換を行い、別のFKBP型PPIaseをコードする遺伝子を作製する。当該別のFKBP型PPIaseは、元のFKBP型PPIaseに比べて分子シャペロン活性が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FKBP型PPIase遺伝子及びFKBP型PPIaseの製造方法、単離されたFKBP型PPIase及びその遺伝子、発現ベクター、形質転換体、融合タンパク質及びその製造方法、目的タンパク質の製造方法、目的タンパク質の再生方法、並びに、目的タンパク質の安定化方法に関し、さらに詳細には、タンパク質工学的手法により分子シャペロン活性が増強された変異型FKBP型PPIaseをコードする遺伝子の製造方法、タンパク質工学的手法により分子シャペロン活性が増強された変異型FKBP型PPIaseの製造方法、高い分子シャペロン活性を有する単離されたFKBP型PPIase、該FKBP型PPIaseをコードする遺伝子、該遺伝子を含有する発現ベクター、該発現ベクターを含有する形質転換体、該FKBP型PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質及びその製造方法、該FKBP型PPIaseを利用した目的タンパク質の製造方法、該FKBP型PPIaseを利用した目的タンパク質の再生方法、並びに、該FKBP型PPIaseを利用した目的タンパク質の安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の生物のゲノム解析が終了しつつあり、今後の研究は、遺伝子の発現産物であるタンパク質の網羅的な機能解析へと進むものと考えられている。即ち、個々のタンパク質の性質を明らかにするとともに、タンパク質同士の相互作用を網羅的に解析することで、生命現象解明の一助としようとする研究が急速に増加しつつある。なかでも、各種の生理活性物質と特異的に結合し、その作用を伝達する細胞内受容体タンパク質は、その受容体タンパク質と結合する活性物質が新規医薬品の候補物質となり得ることから、その3次元構造決定に重大な関心が持たれている。
【0003】
タンパク質の性質を決定しようとする場合は、そのタンパク質を組換えDNA技術によって大量に合成し、解析試料とすることが多い。すなわち、目的タンパク質をコードする遺伝子を発現ベクターに組み込み、該発現ベクターをバクテリア、酵母、昆虫細胞等の宿主に導入し、宿主内で目的タンパク質の遺伝子を発現させ、得られた組換えタンパク質の性質を調べる方法が一般的である。
【0004】
しかし、タンパク質の性質を正確に評価するためには、一次構造のみならず三次元的な立体構造が極めて重要であるところ、上記のようにして得られた組換えタンパク質においては、宿主内で折り畳み反応が正しく行われず、正しい立体構造を有しない異常型タンパク質としてしか得られないケースにしばしば遭遇する。さらに、このような異常型タンパク質は可溶性ではなく封入体と呼ばれる不溶性の凝集体として得られることが多い。例えば、目的タンパク質が抗体の場合、大腸菌を宿主とすると、合成された組換えタンパク質のほとんどが不溶性の封入体となることが知られている(非特許文献1)。また、細胞内受容体タンパク質のように、元々は生体膜の表面上または内部に埋もれて存在しているタンパク質が目的タンパク質である場合も、組換えタンパク質として発現させると封入体になりやすい。そして、いったん封入体となった異常型タンパク質を折り畳み直して正しい立体構造に戻すことは予想以上に困難であり、成功しないことが多い。
【0005】
そこで、封入体の形成を回避するために、折り畳み因子と呼ばれるタンパク質を利用する方法が提案されている。折り畳み因子は、非酵素的に働く「分子シャペロン」と酵素的に働く「フォルダーゼ」に分類されている。このうち、フォルダーゼの一種であるペプチ
ジル−プロリル シス−トランス イソメラーゼ(Peptidyl−prolyl cis−trans isomerase。以下、「PPIase」と称する。)は、細胞内で折り畳み途上のタンパク質中のアミノ酸のうち、プロリン残基のN末端側ペプチド結合のシス−トランス異性化反応を触媒する活性(PPIase活性)を有するものである。そして、古細菌に由来するFKBP(FK506 Binding Protein)型PPIaseは、PPIase活性のみならず、分子シャペロン活性をも有することが知られている。ここで、「分子シャペロン活性」とは、タンパク質の不可逆的凝集を抑制すると同時に、変性タンパク質の再折り畳みを促進させる活性と定義される。そして、この分子シャペロン活性を有するFKBP型PPIaseを用いて、正常型のタンパク質を得る方法が提案されている(特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。この古細菌由来FKBP型PPIaseが有する分子シャペロン活性は、分子シャペロンの一種であるシャペロニンが有する分子シャペロン活性と異なり、その活性発現にATP等の高エネルギー物質を必要としない点で優れている。
【0006】
一方、アミノ酸置換等のタンパク質工学的手法によって既知のタンパク質を改変し、新たな活性や性質をもつタンパク質を作製する技術が開発されている。例えば、特許文献2には、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する耐熱性DNAポリメラーゼのEXOI領域のヒスチジンを他のアミノ酸に置換することにより、よりフィデリティの高い新規の耐熱性DNAポリメラーゼを作製した旨が記載されている。
【特許文献1】国際公開2004/001041号パンフレット
【特許文献2】特開2002−253265号公報
【非特許文献1】プルックサン(Pluckthun)、バイオテクノロジー(Biotechnology)、第9巻、第545頁〜、1991年
【非特許文献2】古谷(Furutani)、バイオケミストリー(Biochemistry)、第39巻、第453頁〜、2000年
【非特許文献3】井手野(Ideno)、ユーロピアン・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Eur. J. Biochem.)、第267巻、第3139頁〜、2000年
【非特許文献4】井手野(Ideno)、バイオケミカル・ジャーナル(Biochem. J.)、第357巻、第465頁〜、2001年
【非特許文献5】井手野(Ideno)、アプライド・エンバイロンメンタル・マイクロバイオロジー(Appl. Env. Microbiol.)、第68巻、第464頁−、2002年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
古細菌由来FKBP型PPIaseのように分子シャペロン活性を有するFKBP型PPIaseによって目的タンパク質を折り畳む場合は、当該FKBP型PPIaseの分子シャペロン活性が高いほど、より高効率で折り畳み反応が行なわれる。そのためにも、より高い分子シャペロン活性を有するFKBP型PPIaseが求められている。この際、タンパク質工学的手法を既知のFKBP型PPIaseに施すことによって、より高い分子シャペロン活性を有する新規のFKBP型PPIaseを作製することが考えられる。例えば、アミノ酸置換によって、分子シャペロン活性が増強された新規のFKBP型PPIaseを作製することができれば、タンパク質の折り畳みをより高効率で行なうことができると考えられる。
【0008】
しかし、タンパク質の立体構造予測や立体構造と機能の相関解析が容易でない現在の技術では、所望の性質をもつタンパク質を自在に設計することは不可能である。例えば、アミノ酸置換によってタンパク質を改変する場合、所望の活性や性質をもつものを得るために、どのアミノ酸を何のアミノ酸に置換すればよいかは試行錯誤によるしかない。しかも
、アミノ酸置換によって所望の活性や性質をもつタンパク質が必ず得られるという保証はない。むしろ、不用意にアミノ酸置換を行なうと、本来有していた活性が消失することもある。したがって、アミノ酸置換によってより高い分子シャペロン活性を有する新規のFKBP型PPIaseを作製する場合も、どのアミノ酸を置換すればよいかは全く不明であり、所望のFKBP型PPIaseが作製できる保証もない。
【0009】
本発明の目的は、タンパク質工学的手法により分子シャペロン活性が増強されたFKBP型PPIaseを提供し、より高効率で目的タンパク質を正しく折り畳むことができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特定のモチーフを含むFKBP型PPIaseについてアミノ酸置換による改変を試みた結果、分子シャペロン活性に関連する6箇所のアミノ酸を見出した。そして、当該6箇所の少なくとも1箇所を特定のアミノ酸に置換することにより、FKBP型PPIaseの分子シャペロン活性を高められることを見出し、本発明を完成した。すなわち、上記した課題を解決するための本発明の要旨は以下の通りである。
【0011】
請求項1に記載の発明は、配列番号1乃至3のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるモチーフを含むFKBP型PPIaseをコードする遺伝子に対して、下記工程、
(1)前記モチーフのN末端のアミノ酸がPhe以外である場合に、該アミノ酸に対応するコドンをPheに対応するコドンに置換する工程、
(2)前記モチーフのN末端から9番目のアミノ酸がGlu以外である場合に、該アミノ酸に対応するコドンをGluに対応するコドンに置換する工程、
(3)前記モチーフのN末端から10番目のアミノ酸がVal以外である場合に、該アミノ酸に対応するコドンをValに対応するコドンに置換する工程、
(4)前記モチーフのN末端から14番目のアミノ酸がTrp以外である場合に、該アミノ酸に対応するコドンをTrpに対応するコドンに置換する工程、
(5)前記モチーフのC末端から2番目のアミノ酸がIle以外である場合に、該アミノ酸に対応するコドンをIleに対応するコドンに置換する工程、
の少なくとも1つを行うことにより、前記遺伝子に変異を導入し、別のFKBP型PPIaseをコードする遺伝子を作製することを特徴とするFKBP型PPIase遺伝子の製造方法である。
【0012】
本発明はFKBP型PPIase遺伝子の製造方法に係り、配列番号1乃至3のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるモチーフを含むFKBP型PPIaseをコードする遺伝子の5箇所のコドンのうちの少なくとも1個を、別のアミノ酸に対応するコドンに置換し、別のFKBP型PPIase遺伝子を製造する。本発明のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法によれば、当該モチーフを含むFKBP型PPIaseにアミノ酸置換を施すことにより、分子シャペロン活性が高められた変異型FKBP型PPIaseを作製する際に有用な、当該変異型FKBP型PPIaseをコードする遺伝子を製造することができる。そして、製造された当該遺伝子を発現させることにより、元のFKBP型PPIaseよりも分子シャペロン活性が高い変異型FKBP型PPIaseを製造することができる。
【0013】
また請求項2に記載の発明は、前記モチーフは、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項1に記載のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法である。
【0014】
本発明のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法においては、前記モチーフが配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるFKBP型PPIaseをコードする遺伝子の、5
箇所のコドンのうちの少なくとも1個を、別のアミノ酸に対応するコドンに置換し、別のFKBP型PPIase遺伝子を製造する。配列番号4で表される当該モチーフは、古細菌由来のFKBP型PPIaseによくみられるものである。かかる構成により、古細菌由来のFKBP型PPIaseをコードする遺伝子から、元のFKBP型PPIaseよりも分子シャペロン活性が高い変異型FKBP型PPIaseをコードする遺伝子を得ることができる。
【0015】
また請求項3に記載の発明は、前記モチーフを含むFKBP型PPIaseは、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項2に記載のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法である。
【0016】
本発明のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法においては、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるFKBP型PPIaseをコードする遺伝子の5箇所のコドンのうちの少なくとも1個を、別のアミノ酸に対応するコドンに置換し、別のFKBP型PPIase遺伝子を製造する。配列番号5で表されるアミノ酸配列は、例えば、ある種の常温性古細菌が有している。かかる構成により、常温性古細菌等由来のFKBP型PPIaseをコードする遺伝子から、元のFKBP型PPIaseよりも分子シャペロン活性が高い変異型FKBP型PPIaseをコードする遺伝子を得ることができる。
【0017】
また請求項4に記載の発明は、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるモチーフを含むFKBP型PPIaseをコードする遺伝子に対して、前記モチーフのC末端のアミノ酸がPhe以外である場合に、該アミノ酸に対応するコドンをPheに対応するコドンに置換することにより、前記遺伝子に変異を導入し、別のFKBP型PPIaseをコードする遺伝子を作製することを特徴とするFKBP型PPIase遺伝子の製造方法である。
【0018】
本発明はFKBP型PPIase遺伝子の製造方法に係り、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるモチーフを含むFKBP型PPIaseをコードする遺伝子の1個のコドンを、別のアミノ酸に対応するコドンに置換し、別のFKBP型PPIase遺伝子を製造する。本発明のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法によれば、当該モチーフを含むFKBP型PPIaseにアミノ酸置換を施すことにより、分子シャペロン活性が高められた変異型FKBP型PPIaseを作製する際に有用な、当該変異型FKBP型PPIaseをコードする遺伝子を製造することができる。そして、製造された当該遺伝子を発現させることにより、元のFKBP型PPIaseよりも分子シャペロン活性が高い変異型FKBP型PPIaseを製造することができる。
【0019】
また請求項5に記載の発明は、前記モチーフは、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項4に記載のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法である。
【0020】
本発明のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法においては、前記モチーフが配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるFKBP型PPIaseをコードする遺伝子の1個のコドンを、別のアミノ酸に対応するコドンに置換し、別のFKBP型PPIase遺伝子を製造する。配列番号7で表される当該モチーフは、古細菌由来のFKBP型PPIaseによくみられるものである。かかる構成により、古細菌由来のFKBP型PPIaseをコードする遺伝子から、元のFKBP型PPIaseよりも分子シャペロン活性が高い変異型FKBP型PPIaseをコードする遺伝子を得ることができる。
【0021】
また請求項6に記載の発明は、前記モチーフを含むFKBP型PPIaseは、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項5に記載のFKBP型PP
Iase遺伝子の製造方法である。
【0022】
本発明のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法においては、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるFKBP型PPIaseをコードする遺伝子の1個コドンを、別のアミノ酸に対応するコドンに置換し、別のFKBP型PPIase遺伝子を製造する。配列番号8で表されるアミノ酸配列は、例えば、ある種の超好熱性古細菌が有している。かかる構成により、超好熱性古細菌等由来のFKBP型PPIaseをコードする遺伝子から、元のFKBP型PPIaseよりも分子シャペロン活性が高い変異型FKBP型PPIaseをコードする遺伝子を得ることができる。
【0023】
また請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法によって製造されたFKBP型PPIase遺伝子を転写及び翻訳させることにより、FKBP型PPIaseを合成することを特徴とするFKBP型PPIaseの製造方法である。
【0024】
本発明はFKBP型PPIaseの製造方法に係り、コドンが置換された変異型FKBP型PPIase遺伝子を転写及び翻訳させ、アミノ酸置換された変異型FKBP型PPIaseを合成する。かかる構成により、元のFKBP型PPIaseよりも分子シャペロン活性が高い変異型FKBP型PPIaseを製造することができる。
【0025】
また請求項8に記載の発明は、配列番号9で表されるアミノ酸配列(56番目のアミノ酸がLeu、64番目のアミノ酸がGln、65番目のアミノ酸がMet、69番目のアミノ酸がPhe、かつ103番目のアミノ酸がLeuである場合を除く)からなる単離されたFKBP型PPIaseである。
【0026】
本発明の単離されたFKBP型PPIaseは、特定のアミノ酸配列からなるものであり、31種のアミノ酸配列のいずれかを有する。本発明の単離されたFKBP型PPIaseは高い分子シャペロン活性を有するので、目的タンパク質をより高効率で折り畳むことができる。
【0027】
また請求項9に記載の発明は、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25又は27で表されるアミノ酸配列からなる単離されたFKBP型PPIaseである。
【0028】
本発明の単離されたFKBP型PPIaseは、特定のアミノ酸配列からなるものであり、9種のアミノ酸配列のいずれかを有する。本発明の単離されたFKBP型PPIaseは高い分子シャペロン活性を有するので、目的タンパク質をより高効率で折り畳むことができる
【0029】
さらに請求項10に記載の発明は、配列番号29で表されるアミノ酸配列からなる単離されたFKBP型PPIaseである。
【0030】
本発明の単離されたFKBP型PPIaseは、特定のアミノ酸配列からなるものである。本発明の単離されたFKBP型PPIaseは高い分子シャペロン活性を有するので、目的タンパク質をより高効率で折り畳むことができる
【0031】
また請求項11に記載の発明は、請求項8乃至10のいずれかに記載のFKBP型PPIaseをコードする単離されたFKBP型PPIase遺伝子である。
【0032】
本発明の単離されたFKBP型PPIase遺伝子は、高い分子シャペロン活性を有す
るFKBP型PPIaseをコードする。本発明の単離されたFKBP型PPIase遺伝子を転写及び翻訳させることにより、高い分子シャペロン活性を有するFKBP型PPIaseを製造することができる。
【0033】
また請求項12に記載の発明は、請求項11に記載のFKBP型PPIase遺伝子を含有する発現ベクターである。
【0034】
本発明の発現ベクターは、高い分子シャペロン活性を有するFKBP型PPIaseをコードする遺伝子を含有する。本発明の発現ベクターによれば、発現ベクター上のFKBP型PPIase遺伝子を転写及び翻訳させることにより、高い分子シャペロン活性を有するFKBP型PPIaseを製造することができる。
【0035】
また請求項13に記載の発明は、請求項11に記載のFKBP型PPIase遺伝子からなる第1コード領域と、少なくとも1つの制限酵素サイトを有し、前記制限酵素サイトに目的タンパク質をコードする第2コード領域を挿入することによりFKBP型PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を発現することができることを特徴とする発現ベクターである。
【0036】
さらに請求項14に記載の発明は、前記制限酵素サイトは、前記第1コード領域の下流に位置することを特徴とする請求項13に記載の発現ベクターである。
【0037】
本発明の発現ベクターは、FKBP型PPIase遺伝子からなる第1コード領域と少なくとも1つの制限酵素サイトを有する。そして、制限酵素サイトに目的タンパク質をコードする第2コード領域を挿入することにより、FKBP型PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を発現することができる。本発明の発現ベクターにおいては、第1コード領域がコードするFKBP型PPIaseが高い分子シャペロン活性を有するので、発現された融合タンパク質に含まれる目的タンパク質はより高効率で正しく折り畳まれる。
【0038】
また請求項15に記載の発明は、前記第1コード領域と前記制限酵素サイトの間に、ペプチドリンカーをコードする塩基配列を有することを特徴とする請求項13又は14に記載の発現ベクターである。
【0039】
本発明の発現ベクターにおいては、前記第1コード領域と前記制限酵素サイトの間に、ペプチドリンカーをコードする塩基配列を有する。そして、当該リンカーペプチドに所望の機能を有するものを選択することにより、発現される融合タンパク質に新しい機能を付加することができる。
【0040】
また請求項16に記載の発明は、前記ペプチドリンカーは、プロテアーゼ消化アミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項15に記載の発現ベクターである。
【0041】
本発明の発現ベクターにおいては、前記第1コード領域と前記制限酵素サイトの間にプロテアーゼ消化アミノ酸配列が含まれている。かかる構成により、発現される融合タンパク質にプロテアーゼを作用させることにより、正しく折り畳まれた目的タンパク質を切り出すことができる。
【0042】
また請求項17に記載の発明は、請求項13乃至16のいずれかに記載の発現ベクターの制限酵素サイトに、目的タンパク質をコードする第2コード領域が組み込まれていることを特徴とする発現ベクターである。
【0043】
かかる構成により、高い分子シャペロン活性を有するFKBP型PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を製造することができる。
【0044】
また請求項18に記載の発明は、前記第2コード領域は、抗体又は抗体の部分断片をコードする遺伝子であることを特徴とする請求項17に記載の発現ベクターである。
【0045】
かかる構成により、高い分子シャペロン活性を有するFKBP型PPIaseと抗体又は抗体の部分断片との融合タンパク質を製造することができる。その結果、該融合タンパク質から正常に折り畳まれた抗体又は抗体の部分断片を切り出すことができる。
【0046】
また請求項19に記載の発明は、前記第2コード領域は、膜タンパク質をコードする遺伝子であることを特徴とする請求項17に記載の発現ベクターである。
【0047】
かかる構成により、高い分子シャペロン活性を有するFKBP型PPIaseと抗体又は抗体の部分断片との融合タンパク質を製造することができる。その結果、該融合タンパク質から正常に折り畳まれた膜タンパク質を切り出すことができる。
【0048】
また請求項20に記載の発明は、請求項12乃至19のいずれかに記載の発現ベクターを含有する形質転換体である。
【0049】
本発明の形質転換体を培養することにより、該培養物からより高い分子シャペロン活性を有するFKBP型PPIase、又は該FKBP型PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を採取することができる。
【0050】
また請求項21に記載の発明は、宿主が大腸菌であることを特徴とする請求項20に記載の形質転換体である。
【0051】
本発明の形質転換体においては宿主が大腸菌であるので、培養が容易である。その結果、高い分子シャペロン活性を有するFKBP型PPIase、又は該FKBP型PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を大量に生産することができる。
【0052】
また請求項22に記載の発明は、請求項8乃至10のいずれかに記載のFKBP型PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質である。
【0053】
本発明の融合タンパク質は、高い分子シャペロン活性を有するFKBP型PPIaseと目的タンパク質とからなる。かかる構成により、高効率で目的タンパク質は正しく折り畳まれる。
【0054】
また請求項23に記載の発明は、前記FKBP型PPIaseと前記目的タンパク質との間にプロテアーゼ消化アミノ酸配列を有することを特徴とする請求項22に記載の融合タンパク質である。
【0055】
かかる構成により、融合タンパク質にプロテアーゼを作用させることにより、正しく折り畳まれた目的タンパク質を切り出すことができる。
【0056】
また請求項24に記載の発明は、請求項17に記載の発現ベクターに組み込まれた第1コード領域及び第2コード領域を転写及び翻訳させ、FKBP型PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を合成することを特徴とする融合タンパク質の製造方法である。
【0057】
本発明の融合タンパク質の製造方法によれば、高い分子シャペロン活性を有するFKBP型PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を製造することができる。
【0058】
また請求項25に記載の発明は、請求項17に記載の発現ベクターに組み込まれた第1コード領域及び第2コード領域を転写及び翻訳させ、FKBP型PPIaseと目的タンパク質の融合タンパク質を合成し、次いで、該融合タンパク質から目的タンパク質を切り出すことを特徴とする目的タンパク質の製造方法である。
【0059】
本発明の目的タンパク質の製造方法においては、FKBP型PPIaseと目的タンパク質の融合タンパク質から目的タンパク質を切り出す。本発明の目的タンパク質の製造方法においては、FKBP型PPIaseが高い分子シャペロン活性を有するものであるので、より確実に正常に折り畳まれた目的タンパク質を製造することができる。
【0060】
また請求項26に記載の発明は、前記発現ベクターは第1コード領域と第2コード領域の間にプロテアーゼ消化アミノ酸配列をコードする塩基配列を有し、第1コード領域と、プロテアーゼ消化アミノ酸配列をコードする塩基配列と、第2コード領域とを転写及び翻訳させ、FKBP型PPIaseと目的タンパク質との間にプロテアーゼ消化アミノ酸配列を有する融合タンパク質を合成し、該融合タンパク質に該プロテアーゼを作用させることにより目的タンパク質を切り出すことを特徴とする請求項25に記載の目的タンパク質の製造方法である。
【0061】
本発明の目的タンパク質の製造方法においては、FKBP型PPIaseと目的タンパク質との間にプロテアーゼ消化アミノ酸配列を有する融合タンパク質を用いる。かかる構成により、正しく折り畳まれた目的タンパク質を容易に切り出すことができる。
【0062】
また請求項27に記載の発明は、請求項8乃至10のいずれかに記載のFKBP型PPIaseをコードする遺伝子と目的タンパク質をコードする遺伝子を同一宿主内で共発現させることにより、宿主内で目的タンパク質にFKBP型PPIaseを作用させ、目的タンパク質を可溶化し、宿主の可溶画分から目的タンパク質を採取することを特徴とする目的タンパク質の製造方法である。
【0063】
本発明の目的タンパク質の製造方法は、FKBP型PPIase遺伝子と目的タンパク質をコードする遺伝子を同一宿主内で共発現させるものである。本発明の目的タンパク質の製造方法によれば、目的タンパク質を切り出す必要がなく、目的タンパク質の製造が容易である。
【0064】
また請求項28に記載の発明は、請求項8乃至10のいずれかに記載のFKBP型PPIaseを変性した目的タンパク質に作用させることにより、変性した目的タンパク質を正しく折り畳み、変性した目的タンパク質を再生することを特徴とする目的タンパク質の再生方法である。
【0065】
本発明は目的タンパク質の再生方法に係り、変性した目的タンパク質に高い分子シャペロン活性のFKBP型PPIaseを作用させ、目的タンパク質を正しく折り畳み直すことにより再生する。本発明の目的タンパク質の再生方法では、高い分子シャペロン活性のFKBP型PPIaseを用いるので、再生効率が高い。
【0066】
また請求項29に記載の発明は、請求項8乃至10のいずれかに記載のFKBP型PPIaseを目的タンパク質に作用させることにより、目的タンパク質が変性することを抑制し、目的タンパク質を安定化させることを特徴とする目的タンパク質の安定化方法である。
【0067】
本発明は目的タンパク質の安定化方法に係り、目的タンパク質に高い分子シャペロン活性を有するFKBP型PPIaseを作用させ、目的タンパク質が変性することを抑制し、目的タンパク質を安定化する。本発明の目的タンパク質の安定化方法では、高い分子シャペロン活性を有するFKBP型PPIaseを用いるので、安定化の効率が高い。
【発明の効果】
【0068】
本発明のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法によれば、上記したモチーフを含むFKBP型PPIaseにアミノ酸置換を施すことにより、分子シャペロン活性が高められた変異型FKBP型PPIaseを作製する際に有用な、当該変異型FKBP型PPIaseをコードする遺伝子を製造することができる。
【0069】
本発明のFKBP型PPIaseの製造方法によれば、アミノ酸置換により分子シャペロン活性が高められた変異型FKBP型PPIaseを製造することができる。
【0070】
本発明の単離されたFKBP型PPIaseによれば、より高効率で目的タンパク質を正しく折り畳むことができる。
【0071】
本発明の単離されたFKBP型PPIase遺伝子によれば、高い分子シャペロン活性を有するFKBP型PPIaseを製造することができる。
【0072】
本発明の発現ベクターによれば、発現ベクター上の遺伝子を発現させることにより、高い分子シャペロン活性を有するFKBP型PPIase、又は該FKBP型PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を製造することができる。
【0073】
本発明の形質転換体によれば、その培養物から高い分子シャペロン活性を有するFKBP型PPIase又は該FKBP型PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を採取することができる。
【0074】
本発明の融合タンパク質によれば、目的タンパク質を高効率で正しく折り畳むことができる。
【0075】
本発明の融合タンパク質の製造方法によれば、目的タンパク質を高効率で正しく折り畳むことができる融合タンパク質を容易に製造することができる。
【0076】
本発明の目的タンパク質の製造方法によれば、正しく折り畳まれた目的タンパク質を高効率で製造することができる。
【0077】
本発明の目的タンパク質の再生方法によれば、変性した目的タンパク質を高効率で正しく折り畳み直すことができる。
【0078】
本発明の目的タンパク質の安定化方法によれば、目的タンパク質が変性することを高効率で抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、詳しく説明する。
【0080】
本発明のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法は、アミノ酸置換によりFKBP型PPIaseを改変する際に必要な、改変されたFKBP型PPIase遺伝子を製造するものである。本発明のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法の一つの様相は、配列
番号1乃至3のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるモチーフ(以下、「モチーフA」と称する。)を含むFKBP型PPIase遺伝子の5箇所のコドンのうちの少なくとも1個を、別のアミノ酸に対応するコドンに置換し、別のFKBP型PPIase遺伝子を製造するものである。配列番号1、2、3で表されるアミノ酸番号、置換前のコドンに対応するアミノ酸、後述の一般式(I)における記号、及び置換後のコドンに対応するアミノ酸をまとめた表を表1に示す。
【表1】

【0081】
表1に示すように、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるモチーフA(モチーフA−1)、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるモチーフA(モチーフA−2)、
配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるモチーフA(モチーフA−3)はそのアミノ酸配列の大部分が共通している。すなわち、これら3種のモチーフAは、N末端から33番目までのアミノ酸配列が同じである。さらに、C末端から14番目までのアミノ酸配列(モチーフA−1の場合はN末端から34〜47番目、モチーフA−2の場合はN末端から35〜48番目、モチーフA−3の場合はN末端から36〜49番目)が同じである。そして、N末端から34番目以降の2〜4個のアミノ酸の数が異なり、モチーフA−1はアミノ酸の数が2個、モチーフA−2はアミノ酸の数が3個、モチーフA−3はアミノ酸の数が4個、である。
【0082】
本発明のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法では、モチーフAの中の5箇所のアミノ酸に対応するコドンのうちの少なくとも1箇所を、別のアミノ酸に対応するコドンに置換する。その5箇所を表1の「一般式(I)」の欄のX1〜X5に示す。まず、第1の箇所は、モチーフAのN末端のアミノ酸であり、表1のX1である。そして、X1のアミノ酸がPhe以外である場合に、X1に対応するコドンをPheに対応するコドンに置換する。また、第2の箇所は、モチーフAのN末端から9番目のアミノ酸であり、表1のX2である。そして、X2のアミノ酸がGlu以外である場合に、X2に対応するコドンをGluに対応するコドンに置換する。また、第3の箇所は、モチーフAのN末端から10番目のアミノ酸であり、表1のX3である。そして、X3のアミノ酸がVal以外である場合に、X3に対応するコドンをValに対応するコドンに置換する。また、第4の箇所は、モチーフAのN末端から14番目のアミノ酸であり、表1のX4である。そして、X4のアミノ酸がTrp以外である場合に、X4に対応するコドンをTrpに対応するコドンに置換する。また、第5の箇所は、モチーフAのC末端から2番目のアミノ酸であり、表1のX5である。そして、X5のアミノ酸がIle以外である場合に、X5に対応するコドンをIleに対応するコドンに置換する。このようにコドンを置換することにより、置換後の遺伝子がコードするFKBP型PPIaseのアミノ酸が置換される。そして、アミノ酸置換された変異型FKBP型PPIaseは、元のFKBP型PPIaseよりも高い分子シャペロン活性を有する。なお、コドンを置換する箇所は1以上であれば特に制限はなく、1箇所でもよいし複数箇所でもよい。
【0083】
また、モチーフAは下記の一般式(I)で表すこともできる。
【化1】

【0084】
本発明のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法の好ましい実施形態の1つは、モチーフAのアミノ酸配列が配列番号4で表されるアミノ酸配列からなる実施形態である。配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるモチーフAは、例えば、Methanosarcina acetivorans由来のFKBP型PPIase(MaFKBP17.8、配列番号5)が有している。すなわち、配列番号5で表されるアミノ酸配列の56番目(Leu)〜104番目(Pro)の部分がモチーフAに相当する。したがって、本実施形態においては、M. acetivorans由来のFKBP型PPIase遺伝子そのものの他、M. acetivorans由来のFKBP型PPIaseのモチーフA以外の部分にアミノ酸の置換、欠失、挿入等がされているFKBP型PPIaseをコードする遺伝子が使用可能である。なお、配列番号5で表されるアミノ酸配列は、138番目(Val)〜152番目(Lys)の部分に後述のモチーフBも含む。
【0085】
本発明のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法の他の様相は、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるモチーフ(以下、「モチーフB」と称する。)を含むFKBP型PPIase遺伝子の1箇所のコドンを、別のアミノ酸に対応するコドンに置換し、別のFKBP型PPIase遺伝子を製造する方法も含む。配列番号6で表されるアミノ酸番号、置換前のコドンに対応するアミノ酸、後述の一般式(II)における記号、及び置換後のコドンに対応するアミノ酸をまとめた表を表2に示す。
【表2】

【0086】
本発明のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法では、モチーフBの中の1箇所のアミノ酸に対応するコドンを、別のアミノ酸に対応するコドンに置換する。そのコドンの箇所を表2の「一般式(II)」の欄のY1で示した。すなわち、本発明におけるコドン置換箇所はモチーフBのC末端のアミノ酸である。そして、Y1のアミノ酸がPhe以外である場合に、Y1に対応するコドンをPheに対応するコドンに置換する。このようにコドンを置換することにより、置換後の遺伝子がコードするFKBP型PPIaseのアミノ酸が置換される。そして、アミノ酸置換された変異型FKBP型PPIaseは、元のFKBP型PPIaseよりも高い分子シャペロン活性を有する。
【0087】
また、モチーフBは下記の一般式(II)で表すこともできる。
【化2】

【0088】
本発明のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法の好ましい実施形態の1つは、モチーフBのアミノ酸配列が配列番号7で表されるアミノ酸配列からなる実施形態である。配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるモチーフBは、例えば、Pyrococcus
horikoshii由来のFKBP型PPIase(PhFKBP29、配列番号8)が有している。すなわち、配列番号8で表されるアミノ酸配列の136番目(Val)〜149番目(Tyr)の部分がモチーフBに相当する。したがって、本実施形態においては、P. horikoshii由来のFKBP型PPIase遺伝子そのものの他、P. horikoshii由来のFKBP型PPIaseのモチーフB以外の部分にアミノ酸の置換、欠失、挿入等がされているFKBP型PPIaseをコードする遺伝子が使用可能である。なお、配列番号8で表されるアミノ酸配列は、47番目(Val)〜95番目(Thr)の部分に前述のモチーフAも含む。
【0089】
モチーフA及び/又はモチーフBを含むFKBP型PPIaseの他の例を以下に挙げる。まず、配列番号30はHalobacterium salinarum由来のFKBP型PPIase(HbsFKBP33)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の64番(Arg)〜110番(Ser)の部分がモチーフAに、144番(Val)〜159番(Tyr)の部分がモチーフBに相当する。配列番号31はArchaeoglobus fulgidus由来のFKBP型PPIase(AfFKBP29)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の45番(Ile)〜93番(Ser)の部分がモチーフAに、126番(Val)〜139番(Phe)の部分がモチーフBに相当する。配列番号32はMethanosarcina barkeri由来のFKBP型PPIase(MsbFKBP28.1)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の46番(Asp)〜94番(Ser)の部分がモチーフAに、128番(Val)〜141番(Tyr)の部分がモチーフBに相当する。配列番号33はMethanosarcina acetivorans str. C2A由来のFKBP型PPIase(MaFKBP28)の
アミノ酸配列である。該アミノ酸配列の46番(Asp)〜94番(Ser)の部分がモチーフAに、128番(Val)〜141番(Tyr)の部分がモチーフBに相当する。配列番号34はMethanosarcina mazei Goe1由来のFKBP型PPIase(MmFKBP28)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の49番(Asp)〜97番(Ser)の部分がモチーフAに、131番(Ile)〜144番(Tyr)の部分がモチーフBに相当する。配列番号35はAeropyrum pernix由来のFKBP型PPIase(ApFKBP30)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の50番(Phe)〜98番(Pro)の部分がモチーフAに、134番(Ile)〜147番(Ile)の部分がモチーフBに相当する。
【0090】
また、配列番号36はPyrobaculum aerophilum由来のFKBP型PPIase(PbaFKBP26)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の47番
(Arg)〜95番(Ser)の部分がモチーフAに、131番(Leu)〜144番(Val)の部分がモチーフBに相当する。配列番号37はSulfolobus solfataricus由来のFKBP型PPIase(SsFKBP27)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の46番(Arg)〜94番(Pro)の部分がモチーフAに、131番(Leu)〜144番(Tyr)の部分がモチーフBに相当する。配列番号38はSulfolobus tokodaii由来のFKBP型PPIase(StFKBP27)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の46番(Lys)〜94番(Ser)の部分がモチーフAに、131番(Leu)〜144番(Tyr)の部分がモチーフBに相当する。配列番号39はFerroplasma acidarmanus由来のFKBP型PPIase(FaFKBP)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の45番(Ara)〜93番(Pro)の部分がモチーフAに、129番(Ile)〜142番(Tyr)の部分がモチーフBに相当する。配列番号40はThermoplasma acidophilum由来のFKBP型PPIase(TaFKBP30)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の48番(Ile)〜96番(Thr)の部分がモチーフAに、132番(Val)〜145番(Tyr)の部分がモチーフBに相当する。配列番号41はMethanococcus jannaschii由来のFKBP型PPIase(MjFKBP26)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の44番(Val)〜92番(Pro)の部分がモチーフAに、128番(Val)〜141番(Tyr)の部分がモチーフBに相当する。配列番号42はMethanopyrus kandleri AV19由来のFKBP型PPIase(MkFKBP24)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の44番(Val)〜92番(Arg)の部分がモチーフAに、126番(Val)〜139番(Tyr)の部分がモチーフBに相当する。配列番号43はMethanothermobacter thermautotrophicus str. D
elta由来のFKBP型PPIase(MbtFKBP28)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の46番(Ile)〜94番(Pro)の部分がモチーフAに、130番(Val)〜144番(Tyr)の部分がモチーフBに相当する。
【0091】
配列番号44はPyrococcus abyssi由来のFKBP型PPIase(PaFKBP30)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の47番(Val)〜95番(Thr)の部分がモチーフAに、136番(Val)〜149番(Tyr)の部分がモチーフBに相当する。配列番号45はThermococcus sp. KS1由来の
FKBP型PPIase(TcFKBP18)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の46番(Met)〜94番(Pro)の部分がモチーフAに、130番(Leu)〜144番(Phe)の部分がモチーフBに相当する。配列番号46はMethanococcus thermolithotrophicus由来のFKBP型PPIase(MtFKBP17)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の48番(Leu)〜96番(Pro)の部分がモチーフAに、132番(Leu)〜145番(Phe)の部分がモチーフBに相当する。配列番号47はMethanococcus jannaschii由来のFKBP型PPIase(MjFKBP18)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の47番(Ile)〜95番(Pro)の部分がモチーフAに、131番(Leu)〜144番(Phe)の部分がモチーフBに相当する。配列番号48はMethanosarcina acetivorans str. C2A由来のFKBP型PPIase
(MaFKBP19)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の77番(Leu)〜125番(Pro)の部分がモチーフAに、160番(Leu)〜173番(Phe)の部分がモチーフBに相当する。配列番号49はMethanosarcina barkeri由来のFKBP型PPIase(MsbFKBP21)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の84番(Leu)〜132番(Pro)の部分がモチーフAに、171番(Leu)〜184番(Phe)の部分がモチーフBに相当する。配列番号50はMethanosarcina mazei Goe1由来のFKBP型PPIase(MmFKBP17.96)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の61番(Leu)〜109番(
Pro)の部分がモチーフAに、145番(Phe)〜158番(Phe)の部分がモチーフBに相当する。配列番号51はMethanosarcina barkeri由来のFKBP型PPIase(MsbFKBP18)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の50番(Phe)〜98番(Pro)の部分がモチーフAに、134番(Leu)〜147番(Leu)の部分がモチーフBに相当する。
【0092】
また、配列番号52はMethanosarcina acetivorans str. C2A由来のFKBP型PPIase(MaFKBP18.2)のアミノ酸配列で
ある。該アミノ酸配列の50番(Phe)〜98番(Pro)の部分がモチーフAに、134番(Leu)〜147番(Leu)の部分がモチーフBに相当する。配列番号53はMethanosarcina mazei Goe1由来のFKBP型PPIase(MmFKBP18.2)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の50番(Phe)〜98番(Pro)の部分がモチーフAに、134番(Leu)〜147番(Leu)の部分がモチーフBに相当する。配列番号54はMethanosarcina barkeri由来のFKBP型PPIase(MsbFKBP19)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の65番(Leu)〜113番(Pro)の部分がモチーフAに、147番(Val)〜160番(Phe)の部分がモチーフBに相当する。配列番号55はMethanosarcina mazei Goe1由来のFKBP型PPIase(MmFKBP18.03)のアミノ酸配列である。該アミノ酸配列の59番(Leu)〜107番(Pro)の部分がモチーフAに、141番(Ile)〜154番(Phe)の部分がモチーフBに相当する。
【0093】
例えば、これらのFKBP型PPIaseをコードする遺伝子に対して、モチーフAの上記5箇所のうちの少なくとも1箇所のコドンを置換することにより、別のFKBP型PPIase遺伝子を製造することができる。また、これらのFKBP型PPIaseをコードする遺伝子に対して、モチーフBのC末端のアミノ酸に対応するコドンを置換することにより、別のFKBP型PPIase遺伝子を製造することができる。このようにして得られたFKBP型PPIase遺伝子がコードするFKBP型PPIaseは、元のFKBP型PPIaseに比べて分子シャペロン活性が高く、目的タンパク質をより高効率に正しく折り畳むことができる。なお、コドンの置換は、モチーフAとモチーフBのどちらか一方に対して行ってもよく、両方に対して行ってもよい。また、モチーフAにおけるコドンの置換は、1箇所でもよいし複数箇所でもよい。
【0094】
上記のFKBP型PPIaseを含めて、本発明のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法に用いることができる分子シャペロン活性を有するFKBP型PPIaseをコードする遺伝子は、例えば、以下の分類、すなわち、Acidianus属、Metallosphaera属、Stygiolobus属、Sulfolobus属、Sulfurococcus属、Sulfurisphaera属、Aeropyrum属、Desulfurococcus属、Stetteria属、Staphylothermus属、Thermodiscus属、Igneococcus属、Thermosphaera属、Sulfophobococcus属、Hyperthermus属、Pyrodictium属、Pyrolobus属、Pyrobaculum属、Thermoproteus属、Thermofilum属、Caldococcus属、Archaeoglobus属、Ferroglobus属、Methanothermus属、Methanobacterium属、Methanothermobacter属、Methanosphaera属、Methanococcus属、Methanothermococcus属、Methanocaldococcus属、Methanoignis属、Methanosarcina属、Pyrococcus属、Thermococcus属、Thermoplasma属、Picrophilus属などに属する古細菌から得ることができる。さらに、本発明のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法に用
いることができる分子シャペロン活性を有するFKBP型PPIaseをコードする遺伝子は、例えば、Haloarcula属、Halobacterium属、Halobaculum属、Halococcus属、Haloferax属、Halogeometricum属、Halomicrobium属、Halorhabdus属、Halorubrobacterium属、Halorubrum属、Haloterrigena属などに属する好塩性古細菌からも得ることができる。
【0095】
本発明のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法において、遺伝子のコドンを置換する方法としては、例えば、各種の部位特異的変異導入法を用いることができる。例えば、目的の変異を導入できるようにオリゴヌクレオチドを設計・合成し、1本鎖にした標的のDNAにアニーリングさせる。その後、DNAポリメラーゼによって2本鎖DNAを合成し、変異が導入された鎖のみを選抜すればよい。標的のDNAは、例えば、M13やMu等のファージを用いることで1本鎖とすることができる。
【0096】
本発明のFKBP型PPIaseの製造方法は、上記したFKBP型PPIase遺伝子の製造方法で製造された遺伝子を用い、該遺伝子を転写及び翻訳させてFKBP型PPIaseを合成するものである。遺伝子の転写及び翻訳は、インビボ、インビトロのいずれの系によって行ってもよい。すなわち、インビボの系であれば、該遺伝子を含有する形質転換体を作製して培養し、該培養物からFKBP型PPIaseを採取することができる。また、インビトロの系であれば、無細胞翻訳系(Spirin, A. S., 1991, Science, 11, 2656−2664:Falcone, D. et al., 1991, Mol. Cell. Biol., 11, 2656−2664)によってFKBP型PPIaseを製造することができる。
【0097】
本発明の単離されたFKBP型PPIaseの1つの様相は、基本的に、配列番号9で
表されるアミノ酸配列からなる。配列番号9のアミノ酸配列においては、56番目のアミノ酸はLeu又はPheであり、64番目のアミノ酸がGln又はGluであり、65番目のアミノ酸がMet又はValであり、69番目のアミノ酸がPhe又はTrpであり、かつ103番目のアミノ酸がLeu又はIleである。ただし、56番目のアミノ酸がLeu、64番目のアミノ酸がGln、65番目のアミノ酸がMet、69番目のアミノ酸がPhe、かつ103番目のアミノ酸がLeuである場合は、配列番号5で表されるアミノ酸配列と同一であり、これは公知であるので除外される。すなわち、本発明の単離されたFKBP型PPIaseは、配列番号5で表されるFKBP型PPIaseの上記5箇所のアミノ酸のうちの少なくとも1つが別のアミノ酸に置換されたものである。本発明の単離されたFKBP型PPIaseは、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなる公知のFKBP型PPIaseに比べて分子シャペロン活性が高く、目的タンパク質をより高効率で正しく折り畳むことができる。
【0098】
また、本発明の単離されたFKBP型PPIaseの好ましい実施形態は、配列番号11、13、15、17、19、21、23、25又は27で表されるアミノ酸配列からなるFKBP型PPIaseである。すなわち、配列番号11で表されるアミノ酸配列は、配列番号5で表されるアミノ酸配列の56番目のアミノ酸をPheに置換したものである。また、配列番号13で表されるアミノ酸配列は、配列番号5で表されるアミノ酸配列の64番目のアミノ酸をGluに置換したものである。また、配列番号15で表されるアミノ酸配列は、配列番号5で表されるアミノ酸配列の65番目のアミノ酸をValに置換したものである。また、配列番号17で表されるアミノ酸配列は、配列番号5で表されるアミノ酸配列の69番目のアミノ酸をTrpに置換したものである。また、配列番号19で表されるアミノ酸配列は、配列番号5で表されるアミノ酸配列の103番目のアミノ酸をIleに置換したものである。また、配列番号21で表されるアミノ酸配列は、配列番号5で表されるアミノ酸配列の64番目のアミノ酸をGluに、103番目のアミノ酸をI
leに置換したものである。また、配列番号23で表されるアミノ酸配列は、配列番号5で表されるアミノ酸配列の64番目のアミノ酸をGluに、及び65番目のアミノ酸をValに、及び103番目のアミノ酸をIleに置換したものである。また、配列番号25で表されるアミノ酸配列は、配列番号5で表されるアミノ酸配列の56番目のアミノ酸をPheに、64番目のアミノ酸をGluに、65番目のアミノ酸をValに、及び103番目のアミノ酸をIleに置換したものである。また、配列番号27で表されるアミノ酸配列は、56番目のアミノ酸をPheに、64番目のアミノ酸をGluに、65番目のアミノ酸をValに、69番目のアミノ酸をTrpに、及び103番目のアミノ酸をIleに置換したものである。
【0099】
また、本発明の単離したFKBP型PPIaseの他の様相は、配列番号29で表されるアミノ酸配列からなるものである。配列番号29のアミノ酸配列は、配列番号8で表されるアミノ酸配列の144番目のアミノ酸をPheに置換したものである。本発明の単離されたFKBP型PPIaseは、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるFKBP型PPIaseに比べて分子シャペロン活性が高く、目的タンパク質をより高効率で正しく折り畳むことができる。
【0100】
本発明の単離されたFKBP型PPIase遺伝子は、請求項8乃至10のいずれかに記載のFKBP型PPIaseをコードするものである。換言すれば、配列番号9(ただし、56番目のアミノ酸がLeu、64番目のアミノ酸がGln、65番目のアミノ酸がMet、69番目のアミノ酸がPhe、かつ103番目のアミノ酸がLeuである場合を除く)、11、13、15、17、19、21、23、25又は27で表されるアミノ酸配列をコードするFKBP型PPIase遺伝子である。本発明の単離されたFKBP型PPIase遺伝子の塩基配列は、これらのアミノ酸配列をコードする物であれば何でもよい。配列番号11、13、15、17、19、21、23、25又は27で表されるアミノ酸配列をコードするFKBP型PPIase遺伝子の塩基配列の一例を、それぞれ、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24又は26に示す。
【0101】
本発明の単離されたFKBP型PPIase遺伝子を含有する発現ベクターを構築し、該FKBP型PPIase遺伝子を発現させることにより、活性が高いFKBP型PPIaseを製造することができる。遺伝子の発現は、該発現ベクターを含有する形質転換体を作製し、該形質転換体を培養することにより行なうことができる。
【0102】
本発明の発現ベクターは3つの様相からなる。1つは、上記した本発明の単離されたFKBP型PPIase遺伝子を含む発現ベクターである。もう1つは、本発明の単離されたFKBP型PPIase遺伝子と制限酵素サイトを含む発現ベクターであり、該制限酵素サイトに目的タンパク質の遺伝子を挿入することにより、FKBP型PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を発現できるようになる。さらに1つは、すでに前記制限酵素サイトに目的タンパク質の遺伝子が組み込まれている、前記融合タンパク質を発現することができる発現ベクターである。
【0103】
本発明の発現ベクターのうち、FKBP型PPIase遺伝子と制限酵素サイトを含む発現ベクターは、上記した本発明のFKBP型PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を発現できるものである。すなわち、本発明の発現ベクターは、本発明のFKBP型PPIaseをコードする第1コード領域と、少なくとも1つの制限酵素サイトを有するものであり、この制限酵素サイトに目的タンパク質をコードする第2コード領域を挿入することによりFKBP型PPIaseと目的タンパク質の融合タンパク質を発現することができる。ここで、融合タンパク質が発現できるということは、換言すれば、制限酵素サイトは、第1コード領域と同じ解読枠内に位置しているということである。さらに換言すれば、該制限酵素サイトに第2コード領域を挿入したときに、第1コード領域と第2
コード領域の解読枠が一致しており、かつ第1コード領域と第2コード領域の間に終止コドンが存在しないということである。なお、制限酵素サイトの位置は第1コード領域の上流でもよいし下流でもよい。制限酵素サイトが第1コード領域の下流にあるときは、第1コード領域はプロモーターに有効に連結していることが必要である。そのような発現ベクターによれば、該プロモーターによって第1コード領域から転写が開始され、N末端側がFKBP型PPIaseでC末端側が目的タンパク質である融合タンパク質を発現することができる。
【0104】
上記プロモーターとしては、用いる発現系に応じて適宜選択すればよく、宿主内で発現させる場合は、その宿主に適合したものを用いればよい。宿主が大腸菌であれば、例えば、Placプロモーター、Ptacプロモーター、xylAプロモーター、AraBプロモーター、lambdaプロモーター、T7プロモーター等を用いることができる。ほ乳細胞系によって発現させる場合は、ほ乳類細胞のゲノムから単離された、例えばマウスメタロチオネインプロモーター等のプロモーターや、これらの細胞で成長するウイルスから単離された、例えばバキュロウイルスプロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター等のプロモーターを用いることができる。
【0105】
本発明の発現ベクターにおいては、さらに、第1コード領域と前記制限酵素サイトの間にペプチドリンカーとなる塩基配列を有してもよい。そのようなペプチドリンカーの代表例はプロテアーゼ消化アミノ酸配列である。すなわち、本発明の発現ベクターにおいては、第1コード領域と前記制限酵素サイトとの間にプロテアーゼ消化アミノ酸配列をコードする塩基配列を有することが好ましい。該プロテアーゼ消化アミノ酸配列をコードする塩基配列は、第1コード領域及び第2コード領域と同じ解読枠内で転写・翻訳され、プロテアーゼ消化アミノ酸配列となる。すなわち、本実施形態の発現ベクターによれば、FKBP型PPIaseと目的タンパク質とがプロテアーゼ消化アミノ酸配列を介して連結された融合タンパク質を発現することができる。そして、該融合タンパク質に対応のプロテアーゼを作用させることにより、目的タンパク質を切り出すことができる。
【0106】
上記プロテアーゼとしては特に限定されず、例えば、トロンビン、ファクターXa、プレシジョンプロテアーゼ、エンテロキナーゼ等が挙げられる。これらのプロテアーゼとしては、例えば、市販されているものを用いることができる。また、プロテアーゼ認識アミノ酸配列以外のペプチドリンカーとしては、例えば、インテインの自己切断アミノ酸配列が挙げられる。すなわち、インテインの自己タンパク質スプライシング機能を利用して融合タンパク質から目的タンパク質を切り出すことができる。なお、ペプチドリンカーをコードする塩基配列の長さは特に限定されないが、15〜90塩基程度であることが好ましく、翻訳されてグリシンやセリン等の中性アミノ酸となる塩基配列を多く含むことが好ましい。
【0107】
本発明の発現ベクターは、さらに、他の従来公知の塩基配列を含んでいてもよい。上記他の従来公知の塩基配列としては特に限定されず、例えば、発現産物の安定性を付与する安定性リーダー配列、発現産物の分泌を付与するシグナル配列、ネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子等の形質転換された宿主において表現型選択を付与することが可能なマーキング配列等が挙げられる。
【0108】
上記した発現ベクターの制限酵素サイトに、目的タンパク質をコードする第2コード領域がすでに組み込まれている発現ベクターも、本発明の1つである。このような発現ベクターによれば、第2コード領域を組み込む操作が不要であり、そのまま転写・翻訳させることによりFKBP型PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を製造することができる。第2コード領域にコードされる目的タンパク質としては、例えば、抗体又は抗
体の部分断片が挙げられる。抗体の部分断片としては、Fab、Single chain Fv(scFv)、Fc、抗体の各ドメインの2個以上の断片がペプチド結合で連結したポリペプチド等が挙げられる。また、上記抗体の由来動物やサブクラスは何でもよい。このように、抗体又は抗体の部分断片をコードする第2コード領域を含むベクターを使用すると、大腸菌等の宿主内で発現させても封入体とならず、正しく折り畳まれた抗体を得ることができる。その結果、従来のように動物を用いて抗体を作らせる必要がなく、より簡便かつ大量に抗体を得ることができる。なお、抗体をコードする遺伝子は、例えば、ハイブリドーマから調製することができる。そして、単一のハイブリドーマから得られる抗体をコードする遺伝子は単一であるので、得られる抗体はモノクローナルな抗体である。一方、ポリクローナルな抗体を取得する場合は、例えば、複数種のハイブリドーマからそれぞれ抗体をコードする遺伝子を取得し、それらの遺伝子を別々のベクターに組み込み、別々の形質転換体を作製し、それらの形質転換体を混合培養すればよい。
【0109】
第2コード領域にコードされる目的タンパク質の他の例としては、膜貫通型タンパク質、膜結合型タンパク質等が挙げられる。より具体的には、ヒトエンドセリンA受容体等のGタンパク質共役型受容体(7回膜貫通型受容体)の他、イオンチャンネル型受容体、チロシンカイネース型受容体等が挙げられる。
【0110】
本発明の形質転換体は、上記した本発明の発現ベクターを含有するものである。すなわち、目的タンパク質の遺伝子が組み込まれていない発現ベクターを含有する形質転換体であれば、FKBP型PPIaseを単独で生産することができ、目的タンパク質の遺伝子が組み込まれている発現ベクターであれば、FKBP型PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を生産することができる。本発明の形質転換体の元となる宿主は、本発明の発現ベクターの特性と適合するものであれば特に制限はなく、例えば、細菌等の原核生物、酵母、真菌、植物、昆虫細胞、ほ乳類細胞等が挙げられる。ここで、宿主が発現ベクターの特性と適合するとは、宿主内においてその発現ベクターが複製可能であり、かつ第1コード領域と第2コード領域を転写・翻訳できるということである。特に、転写が正常に行われるためには、発現ベクター上のプロモーターが正常に働く宿主を選択することが必要である。
【0111】
上記宿主のうち、大腸菌はその取り扱いが容易であり、かつ宿主ベクター系も充実しているので特に好適である。大腸菌を宿主として用いる場合、発現ベクターから転写・翻訳されるFKBP型PPIase又は融合タンパク質は、細胞質に発現させてもよいし、ペリプラズム領域に発現させてもよい。ペリプラズム領域に融合タンパク質を発現させる場合は、FKBP型PPIase又は融合タンパク質の5’末端にシグナル配列が付加されるように発現ベクターを構築し、大腸菌に導入すればよい。
【0112】
本発明の形質転換体を作成する際の、発現ベクターを宿主に導入する方法は、公知の種々の方法を用いることができ、例えば、リン酸カルシウム沈殿法、電気穿孔、リポソーム融合、核注入、ウイルス又はファージ感染等が挙げられる。
【0113】
なお、本発明の発現ベクターは、宿主に導入する以外に、バクテリア又は真核生物抽出液等を用いた無細胞翻訳系にて発現させることも可能である。無細胞翻訳系は、目的タンパク質が宿主に毒性を示すものである場合等に有効である。
【0114】
本発明の融合タンパク質の主な実施形態は、活性が高いFKBP型PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質である。本発明の融合タンパク質によれば、目的タンパク質が単独で発現すると正しく折り畳まれずに異常型タンパク質となってしまう場合でも、FKBP型PPIaseとの融合タンパク質として発現させることで、目的タンパク質を正しく折り畳まれた正常型タンパク質として発現することができる。その結果、正常型の
目的タンパク質の生産性を飛躍的に向上させることができる。なお、目的タンパク質は適宜の方法で融合タンパク質から切り出すことができる。例えば、FKBP型PPIaseと目的タンパク質の間にプロテアーゼ認識アミノ酸配列を挿入しておけば、融合タンパク質に該プロテアーゼを作用させることにより、目的タンパク質を切り出し、単離することができる。なお、本発明の融合タンパク質は、例えば、上記した発現ベクター上の第1コード領域と第2コード領域を転写・翻訳することにより製造することができる。さらに、第1コード領域と第2コード領域の間にプロテアーゼ認識アミノ酸配列をコードする塩基配列を挿入しておけば、FKBP型PPIaseと目的タンパク質の間にプロテアーゼ認識アミノ酸配列を有する融合タンパク質を製造することができる。
【0115】
本発明の目的タンパク質の製造方法は、活性が高いFKBP型PPIaseの作用を利用して、正しく折り畳まれた正常型の目的タンパク質を製造するものである。この際、該FKBP型PPIaseを目的タンパク質に作用させる態様は主に2つある。1つの態様は、上記したように、目的タンパク質をFKBP型PPIaseとの融合タンパク質として発現させる、融合発現法である。融合発現法の場合は、目的タンパク質を切り出す工程が必要である。もう1つの態様は、FKBP型PPIaseと目的タンパク質をそれぞれ単独に同時に発現させる、共発現法である。共発現法によれば、目的タンパク質を切り出す必要がなく、製造工程を減らすことができる。なお、宿主を用いた共発現法の場合は、FKBP型PPIaseの遺伝子と目的タンパク質の遺伝子は、同じ発現ベクター上に存在してもよく、別々の発現ベクターに組み込まれていてもよい。同じ発現ベクター上に存在する場合は、例えば、それぞれの遺伝子が別々のプロモーター下流に組み込めばよい。さらに、FKBP型PPIaseの遺伝子を宿主のゲノム上に、目的タンパク質の遺伝子を発現ベクター上に組み込む構成も可能である。
【0116】
本発明のFKBP型PPIase及び融合タンパク質は、タンパク質の精製に一般的に用いられている手法、すなわち、塩析、膜分離、各種クロマトグラフィー等を組み合わせることにより精製することができる。精製に供するためのFKBP型PPIase及び融合タンパク質を含む試料は、例えば、それらの遺伝子を含有する形質転換体の培養物から調製することができる。
【0117】
また、本発明のFKBP型PPIase及び融合タンパク質は、FKBP型PPIaseとFK506との親和性を利用して精製することもできる。すなわち、FK506やラパマイシン、その類縁化合物を担持させた担体を調製して、該担体にFKBP型PPIase又は融合タンパク質を含む試料を接触させ、担体上にFKBP型PPIase又は融合タンパク質を捕捉することができる。その後、適宜の方法で担体からFKBP型PPIase又は融合タンパク質を回収すればよい。
【0118】
また、ヒスチジン6残基程度からなるヒスチジンタグをあらかじめ、本発明のFKBP型PPIase又は融合タンパク質の末端に導入しておくことにより、それらの精製を容易にすることができる。すなわち、ヒスチジンタグを末端に有するFKBP型PPIase又は融合タンパク質は、ニッケル等の金属をキレートした担体上に、ヒスチジンタグを介して結合する。具体的には、ニッケル等の金属をキレートした担体にFKBP型PPIase又は融合タンパク質を含む試料を接触させ、該担体上にヒスチジンタグを介してFKBP型PPIase又は融合タンパク質を捕捉することができる。その後、イミダゾール等で溶出して担体からFKBP型PPIase又は融合タンパク質を回収すればよい。このようなタグを用いる方法としては、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ又はその一部分をタグとし、グルタチオン樹脂によるアフィニティークロマトグラフィーにより精製する方法や、マルトース結合タンパク質又はその一部をタグとし、アミロース樹脂により精製する方法等がある。なお、これらのタグは、PPIase又は融合タンパク質のN末端側及びC末端側のいずれに導入してもよく、双方に導入してもよい。
【0119】
本発明の目的タンパク質の再生方法は、本発明の単離したFKBP型PPIaseの高い分子シャペロン活性を利用して、変性した目的タンパク質を正しく折り畳みなおし、再生するものである。FKBP型PPIaseを目的タンパク質に作用させる方法としては、例えば、緩衝液中でFKBP型PPIaseと目的タンパク質を共存させればよい。目的タンパク質が不溶化している場合は、尿素や塩酸グアニジンで可溶化した後にFKBP型PPIaseを作用させることができる。具体的には、不溶化した目的タンパク質を8M尿素や6M塩酸グアニジンで可溶化し、本発明のFKBP型PPIaseを含む緩衝液で30〜200倍に希釈すればよい。FKBP型PPIaseを目的タンパク質に作用させる際のFKBP型PPIaseと目的タンパク質とのモル比は、目的タンパク質1に対してFKBP型PPIaseが0.01〜50が好適で、0.1〜15が特に好ましい。
【0120】
本発明の目的タンパク質の安定化方法は、本発明の単離したFKBP型PPIaseの高い分子シャペロン活性を利用して、目的タンパク質を変性することを抑制し、目的タンパク質を安定化するものである。FKBP型PPIaseを目的タンパク質に作用させる方法としては、例えば、緩衝液中でFKBP型PPIaseと目的タンパク質を共存させればよい。共存させる系はインビボ、インビトロの両方の系が可能である。すなわち、インビボの系であれば、例えば、FKBP型PPIaseと目的タンパク質を共発現させることにより目的タンパク質を安定化させることができる。インビトロの系であれば、適宜の緩衝液中にFKBP型PPIaseと目的タンパク質を溶解させればよい。FKBP型PPIaseを目的タンパク質に作用させる際のFKBP型PPIaseと目的タンパク質とのモル比は、目的タンパク質1に対してFKBP型PPIaseが0.1〜500が好適である。
【0121】
なお、FKBP型PPIaseの分子シャペロン活性の評価方法としては、例えば、ロダネーゼ、クエン酸合成酵素、リンゴ酸脱水素酵素、グルコース−6−リン酸脱水素酵素等をモデル酵素とし(河田、バイオサイエンスとインダストリー 56, 593−、1998年)、これらを6M塩酸グアニジン等のタンパク質変性剤で変性処理後、検定対象物質を含む緩衝液で変性剤を希釈した際に開始する変性タンパク質の再生率や、変性タンパク質の凝集の抑制率でその検定対象物の分子シャペロン活性を評価することができる。なお、変性タンパク質の再生率を評価する方法としては、例えばロダネーゼの場合、ホロビッチらの方法(Horowitz、Methods Mol.Biol. 40、361−、1995年)が挙げられ、変性タンパク質の凝集抑制を評価する方法としては田口らの方法(Taguchi、J.Biol.Chem. 269、8529−、1994年)等が挙げられる。
【0122】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【実施例1】
【0123】
本実施例では、常温性古細菌Methanosarcina acetivorans由来ショートタイプFKBP型PPIase(MaFKBP17.8)の1アミノ酸置換体(MaFKBP17.8L103I)をコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を含有する発現ベクターを構築した。
【0124】
Methanosarcina acetivorans C2A (DSM2834)の菌懸濁液から菌ペレットを回収し、フェノール/クロロホルム処理、及びエタノール沈殿法により、ゲノムDNAを回収した。配列番号56に示される公知のMaFKBP17.8遺伝子の塩基配列を参考にして、PCR用のプライマーとして配列番号59に示されるMa17−FWプライマー及び配列番号60に示されるMa17−RWプライマーを
合成した。次に、得られたゲノムDNAを鋳型とし、Ma17−FWプライマー及びMa17−RWプライマーをプライマー対としてPCRを行い、MaFKBP17.8遺伝子を増幅した。増幅されたDNA断片の塩基配列を確認したところ、公知のMaFKBP17.8遺伝子の塩基配列と一致した。なお、増幅されたDNA断片の両端には、Ma17−FWの5’末端に由来するNcoIサイト及びMa17−RWの3’末端に由来するSpeIサイトが導入された。
【0125】
一方、配列番号58に示されるリンカーThrom−F2及びその相補鎖であるリンカーThrom−R2を合成した。なお、リンカーThrom−F2は、5’側にSpeIサイトを、3’側にEcoRIサイトを有し、内部には目的タンパク質の遺伝子を導入するためのBamHIサイト及びNdeIサイトを有している。さらに、融合タンパク質から目的タンパク質をトロンビンにより切り出せるように、BamHIサイトの上流に、翻訳されてトロンビン認識アミノ酸配列となる塩基配列を有している(図1)。次に、リンカーThrom−F2とリンカーThrom−R2をアニーリングさせ、2本鎖リンカーThromを調製した。
【0126】
MaFKBP17.8遺伝子を含む増幅DNA断片をNcoI/SpeIで、2本鎖リンカーThromをSpeI/EcoRIでそれぞれ処理し、あらかじめNcoI/EcoRIにて処理したpET21dプラスミドDNA(ノバジェン社製)に、MaFKBP17.8遺伝子−2本鎖リンカーの順になるよう挿入して、発現ベクターpMa17F2を構築した。
【0127】
天然型MaFKBP17.8遺伝子に部位特異的変異を導入するためのプライマーとして、配列番号61に示されるMa17−F1プライマーと配列番号62に示されるMa17−R1プライマーを合成した。これらのプライマーは、天然型MaFKBP17.8遺伝子にハイブリダイズするものであり、当該遺伝子を鋳型としてPCRを行うことにより、103番目のアミノ酸に対応するコドンをCTC(Leuに対応)からATC(Ileに対応)に置換することができる。上記で構築した発現ベクターpMal17F2を鋳型とし、Ma17−F1プライマーとMa17−R1プライマーをプライマー対としてPCRを行い、天然型MaFKBP17.8の103番目のLeuがIleに置換された変異型MaFKBP17.8(MaFKBP17.8L103I)を発現する発現ベクターpMa17L103Iを構築した。なお、上記PCRはQuikChange XL S
ite−Directed Mutagenesis kit(Straragene社)を用いて、添付のプロトコールにしたがって行なった。発現ベクターpMa17L103Iの構成を図1に示す。すなわち、発現ベクターpMa17L103Iは、T7プロモーターの下流に、順に、第1コード領域となるMaFKBP17.8L103I遺伝子、トロンビン認識アミノ酸配列をコードする塩基配列、BamHIサイト、及びNdeIサイトを有する。そして、BamHIサイト又はNdeIサイトに第2コード領域となる目的タンパク質をコードする遺伝子を挿入することにより、MaFKBP17.8L103Iと目的タンパク質との融合タンパク質を発現することができる。また、発現される該融合タンパク質は、MaFKBP17.8L103Iと目的タンパク質の間にトロンビン消化アミノ酸配列を有する。また、発現ベクターpMa17L103Iは、第2コード領域を挿入しない状態では、MaFKBP17.8L103Iを単独で発現することができる。
【実施例2】
【0128】
本実施例では、MaFKBP17.8の1アミノ酸置換体(MaFKBP17.8L56F)をコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を含有する発現ベクターを構築した。
【0129】
天然型MaFKBP17.8遺伝子に部位特異的変異を導入するためのプライマーとし
て、配列番号63に示されるMa17−F2プライマーと配列番号64に示されるMa17−R2プライマーを合成した。これらのプライマーは、天然型MaFKBP17.8遺伝子にハイブリダイズするものであり、当該遺伝子を鋳型としてPCRを行うことにより、56番目のアミノ酸に対応するコドンをCTG(Leuに対応)からTTC(Pheに対応)に置換することができる。実施例1と同様にして、発現ベクターpMal17F2を鋳型とし、Ma17−F2プライマーとMa17−R2プライマーをプライマー対としてPCRを行い、天然型MaFKBP17.8の56番目のLeuがPheに置換された変異型MaFKBP17.8(MaFKBP17.8L56F)を発現する発現ベクターpMa17L56Fを構築した。すなわち、発現ベクターpMa17L56Fは、実施例1で構築した発現ベクターpMa17L103IのMaFKBP17.8L103I遺伝子の代わりにMaFKBP17.8L56F遺伝子が導入された構成を有する。したがって、発現ベクターpMa17L56Fは、目的タンパク質をコードする第2コード領域を挿入することによりMaFKBP17.8L56Fと目的タンパク質との融合タンパク質を発現でき、第2コード領域を挿入しない状態では、MaFKBP17.8L56Fを単独で発現することができる。
【実施例3】
【0130】
本実施例では、MaFKBP17.8の1アミノ酸置換体(MaFKBP17.8Q64E)をコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を含有する発現ベクターを構築した。
【0131】
天然型MaFKBP17.8遺伝子に部位特異的変異を導入するためのプライマーとして、配列番号65に示されるMa17−F3プライマーと配列番号66に示されるMa17−R3プライマーを合成した。これらのプライマーは、天然型MaFKBP17.8遺伝子にハイブリダイズするものであり、当該遺伝子を鋳型としてPCRを行うことにより、64番目のアミノ酸に対応するコドンをCAG(Glnに対応)からGAA(Gluに対応)に置換することができる。実施例1と同様にして、発現ベクターpMal17F2を鋳型とし、Ma17−F3プライマーとMa17−R3プライマーをプライマー対としてPCRを行い、天然型MaFKBP17.8の64番目のGlnがGluに置換された変異型MaFKBP17.8(MaFKBP17.8Q64E)を発現する発現ベクターpMa17Q64Eを構築した。すなわち、発現ベクターpMa17Q64Eは、実施例1で構築した発現ベクターpMa17L103IのMaFKBP17.8L103I遺伝子の代わりにMaFKBP17.8Q64E遺伝子が導入された構成を有する。したがって、発現ベクターpMa17Q64Eは、目的タンパク質をコードする第2コード領域を挿入することによりMaFKBP17.8Q64Eと目的タンパク質との融合タンパク質を発現でき、第2コード領域を挿入しない状態では、MaFKBP17.8Q64Eを単独で発現することができる。
【実施例4】
【0132】
本実施例では、MaFKBP17.8の1アミノ酸置換体(MaFKBP17.8M65V)をコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を含有する発現ベクターを構築した。
【0133】
天然型MaFKBP17.8遺伝子に部位特異的変異を導入するためのプライマーとして、配列番号67に示されるMa17−F4プライマーと配列番号68に示されるMa17−R4プライマーを合成した。これらのプライマーは、天然型MaFKBP17.8遺伝子にハイブリダイズするものであり、当該遺伝子を鋳型としてPCRを行うことにより、65番目のアミノ酸に対応するコドンをATG(Metに対応)からGTT(Valに対応)に置換することができる。実施例1と同様にして、発現ベクターpMal17F2を鋳型とし、Ma17−F4プライマーとMa17−R4プライマーをプライマー対としてPCRを行い、天然型MaFKBP17.8の65番目のMetがValに置換された変異型MaFKBP17.8(MaFKBP17.8M65V)を発現する発現ベクター
pMa17M65Vを構築した。すなわち、発現ベクターpMa17M65Vは、実施例1で構築した発現ベクターpMa17L103IのMaFKBP17.8L103I遺伝子の代わりにMaFKBP17.8M65V遺伝子が導入された構成を有する。したがって、発現ベクターpMa17M65Vは、目的タンパク質をコードする第2コード領域を挿入することによりMaFKBP17.8M65Vと目的タンパク質との融合タンパク質を発現でき、第2コード領域を挿入しない状態では、MaFKBP17.8M65Vを単独で発現することができる。
【実施例5】
【0134】
本実施例では、MaFKBP17.8の1アミノ酸置換体(MaFKBP17.8F69W)をコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を含有する発現ベクターを構築した。
【0135】
天然型MaFKBP17.8遺伝子に部位特異的変異を導入するためのプライマーとして、配列番号69に示されるMa17−F5プライマーと配列番号70に示されるMa17−R5プライマーを合成した。これらのプライマーは、天然型MaFKBP17.8遺伝子にハイブリダイズするものであり、当該遺伝子を鋳型としてPCRを行うことにより、69番目のアミノ酸に対応するコドンをTTT(Pheに対応)からTGG(Trpに対応)に置換することができる。実施例1と同様にして、発現ベクターpMal17F2を鋳型とし、Ma17−F5プライマーとMa17−R5プライマーをプライマー対としてPCRを行い、天然型MaFKBP17.8の69番目のPheがTrpに置換された変異型MaFKBP17.8(MaFKBP17.8F69W)を発現する発現ベクターpMa17F69Wを構築した。すなわち、発現ベクターpMa17F69Wは、実施例1で構築した発現ベクターpMa17L103IのMaFKBP17.8L103I遺伝子の代わりにMaFKBP17.8F69W遺伝子が導入された構成を有する。したがって、発現ベクターpMa17F69Wは、目的タンパク質をコードする第2コード領域を挿入することによりMaFKBP17.8F69Wと目的タンパク質との融合タンパク質を発現でき、第2コード領域を挿入しない状態では、MaFKBP17.8F69Wを単独で発現することができる。
【実施例6】
【0136】
本実施例では、MaFKBP17.8の2アミノ酸置換体(MaFKBP17.8L103I/Q64E)をコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を含有する発現ベクターを構築した。
【0137】
実施例1で構築した発現ベクターpMa17L103Iを鋳型とし、実施例3で合成したMa17−F3プライマーとMa17−R3プライマーをプライマー対としてPCRを行い、天然型MaFKBP17.8の103番目のLeuがIleに、64番目のGlnがGluに置換された変異型MaFKBP17.8(MaFKBP17.8L103I/Q64E)を発現する発現ベクターpMa17/L103I/Q64Eを構築した。すなわち、発現ベクターpMa17/L103I/Q64Eは、実施例1で構築した発現ベクターpMa17L103IのMaFKBP17.8L103I遺伝子の代わりにMaFKBP17.8L103I/Q64E遺伝子が導入された構成を有する。したがって、発現ベクターpMa17/L103I/Q64Eは、目的タンパク質をコードする第2コード領域を挿入することによりMaFKBP17.8L103I/Q64Eと目的タンパク質との融合タンパク質を発現でき、第2コード領域を挿入しない状態では、MaFKBP17.8L103I/Q64Eを単独で発現することができる。
【実施例7】
【0138】
本実施例では、MaFKBP17.8の3アミノ酸置換体(MaFKBP17.8L103I/Q64E/M65V)をコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を含有する発現ベ
クターを構築した。
【0139】
実施例6で構築した発現ベクターpMa17/L103I/Q64Eを鋳型とし、実施例4で合成したMa17−F4プライマーとMa17−R4プライマーをプライマー対としてPCRを行い、天然型MaFKBP17.8の103番目のLeuがIleに、64番目のGlnがGluに、65番目のMetがValに置換された変異型MaFKBP17.8(MaFKBP17.8L103I/Q64E/M65V)を発現する発現ベクターpMa17/L103I/Q64E/M65Vを構築した。すなわち、発現ベクターpMa17/L103I/Q64E/M65Vは、実施例1で構築した発現ベクターpMa17L103IのMaFKBP17.8L103I遺伝子の代わりにMaFKBP17.8L103I/Q64E/M65V遺伝子が導入された構成を有する。したがって、発現ベクターpMa17/L103I/Q64E/M65Vは、目的タンパク質をコードする第2コード領域を挿入することによりMaFKBP17.8L103I/Q64E/M65Vと目的タンパク質との融合タンパク質を発現でき、第2コード領域を挿入しない状態では、MaFKBP17.8L103I/Q64E/M65Vを単独で発現することができる。
【実施例8】
【0140】
本実施例では、MaFKBP17.8の4アミノ酸置換体(MaFKBP17.8L103I/Q64E/M65V/L56F)をコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を含有する発現ベクターを構築した。
【0141】
実施例7で構築した発現ベクターpMa17/L103I/Q64E/M65Vを鋳型とし、実施例2で合成したMa17−F2プライマーとMa17−R2プライマーをプライマー対としてPCRを行い、天然型MaFKBP17.8の103番目のLeuがIleに、64番目のGlnがGluに、65番目のMetがValに、56番目のLeuがPheに置換された変異型MaFKBP17.8(MaFKBP17.8L103I/Q64E/M65V/L56F)を発現する発現ベクターpMa17/L103I/Q64E/M65V/L56Fを構築した。すなわち、発現ベクターpMa17/L103I/Q64E/M65V/L56Fは、実施例1で構築した発現ベクターpMa17L103IのMaFKBP17.8L103I遺伝子の代わりにMaFKBP17.8L103I/Q64E/M65V/L56F遺伝子が導入された構成を有する。したがって、発現ベクターpMa17/L103I/Q64E/M65V/L56Fは、目的タンパク質をコードする第2コード領域を挿入することによりMaFKBP17.8L103I/Q64E/M65V/L56Fと目的タンパク質との融合タンパク質を発現でき、第2コード領域を挿入しない状態では、MaFKBP17.8L103I/Q64E/M65V/L56Fを単独で発現することができる。
【実施例9】
【0142】
本実施例では、MaFKBP17.8の5アミノ酸置換体(MaFKBP17.8L103I/Q64E/M65V/L56F/F69W)をコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を含有する発現ベクターを構築した。
【0143】
実施例8で構築した発現ベクターpMa17/L103I/Q64E/M65V/L56Fを鋳型とし、実施例5で合成したMa17−F5プライマーとMa17−R5プライマーをプライマー対としてPCRを行い、天然型MaFKBP17.8の103番目のLeuがIleに、64番目のGlnがGluに、65番目のMetがValに、56番目のLeuがPheに、69番目のPheがTrpに置換された変異型MaFKBP17.8(MaFKBP17.8L103I/Q64E/M65V/L56F/F69W)を発現する発現ベクターpMa17/L103I/Q64E/M65V/L56F/F69W
を構築した。すなわち、発現ベクターpMa17/L103I/Q64E/M65V/L56F/F69Wは、実施例1で構築した発現ベクターpMa17L103IのMaFKBP17.8L103I遺伝子の代わりにMaFKBP17.8L103I/Q64E/M65V/L56F/F69W遺伝子が導入された構成を有する。したがって、発現ベクターpMa17/L103I/Q64E/M65V/L56F/F69Wは、目的タンパク質をコードする第2コード領域を挿入することによりMaFKBP17.8L103I/Q64E/M65V/L56F/F69Wと目的タンパク質との融合タンパク質を発現でき、第2コード領域を挿入しない状態では、MaFKBP17.8L103I/Q64E/M65V/L56F/F69Wを単独で発現することができる。
【実施例10】
【0144】
本実施例では、超好熱性古細菌Pyrococcus horikoshii由来ショートタイプFKBP型PPIase(PhFKBP29)の1アミノ酸置換体(PhFKBP29Y149F)をコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を含有する発現ベクターを構築した。
【0145】
Pyrococcus horikoshii(DSM12428)の菌懸濁液から菌ペレットを回収し、フェノール/クロロホルム処理、及びエタノール沈殿法により、ゲノムDNAを回収した。配列番号57に示される公知のPhFKBP29遺伝子の塩基配列を参考にして、PCR用のプライマーとして配列番号71に示されるPhFK−FWプライマー及び配列番号72に示されるPhFK−RVプライマーを合成した。次に、得られたゲノムDNAを鋳型とし、PhFK−FWプライマー及びPhFK−RVプライマーをプライマー対としてPCRを行い、PhFKBP29遺伝子を増幅した。増幅されたDNA断片の塩基配列を確認したところ、公知のPhFKBP29遺伝子の塩基配列と一致した。なお、増幅されたDNA断片の両端には、PhFK−FWの5’末端に由来するNcoIサイト及びPhFK−RVの3’末端に由来するSpeIサイトが導入された。次に、実施例1と同様の方法で、pET21dプラスミドDNAに、PhFKBP29遺伝子−2本鎖リンカーの順になるよう挿入して、発現ベクターpPh29F2を構築した。
【0146】
天然型PhFKBP29遺伝子に部位特異的変異を導入するためのプライマーとして、配列番号73に示されるPhFK−F1プライマーと配列番号74に示されるPhFK−R1プライマーを合成した。これらのプライマーは、天然型PhFKBP29遺伝子にハイブリダイズするものであり、当該遺伝子を鋳型としてPCRを行うことにより、149番目のアミノ酸に対応するコドンをTAT(Tyrに対応)からTTT(Pheに対応)に置換することができる。実施例1と同様にして、上記で構築した発現ベクターpPh29F2を鋳型とし、PhFK−F1プライマーとPhFK−R1プライマーをプライマー対としてPCRを行い、天然型PhFKBP29の149番目のTyrがPheに置換された変異型PhFKBP29(PhFKBP29Y149F)を発現する発現ベクターpPh29F2Y149Fを構築した。すなわち、発現ベクターpPh29F2Y149Fは、実施例1で構築した発現ベクターpMa17L103IのMaFKBP17.8L103I遺伝子の代わりにPhFKBP29Y149F遺伝子が導入された構成を有する。したがって、発現ベクターpPh29F2Y149Fは、目的タンパク質をコードする第2コード領域を挿入することによりPhFKBP29Y149Fと目的タンパク質との融合タンパク質を発現でき、第2コード領域を挿入しない状態では、PhFKBP29Y149Fを単独で発現することができる。
【実施例11】
【0147】
本実施例では、実施例1〜10で作製した各発現ベクターを含有する形質転換体を作製した。また、該形質転換体を培養することにより、各種の変異型FKBP型PPIaseを製造した。
【0148】
実施例1〜10で作製した各発現ベクター、pMa17L103I、pMa17L56F、pMa17Q64E、pMa17LM65V、pMa17F69W、pMa17/L103I/Q64E、pMa17/L103I/Q64E/M65V、pMa17/L103I/Q64E/M65V/L56F、pMa17/L103I/Q64E/M65V/L56F/F69W、及びpPh29F2Y149Fを、それぞれ大腸菌BL21(DE3)株(Novagen社)に導入し、各形質転換体を得た。2L容の三角フラスコに、100μg/mL アンピシリンを含む2×YT培地(16g/L 酵母エキス、20g/L バクトトリプトン、5g/L NaCl、pH7.5)700mLを仕込み、得られた各形質転換体を白金耳で2〜3回接種し、35℃で24時間回転培養(110rpm)した。培養終了後、培養液を遠心分離(10000rpm×10分)し、菌体を回収した。得られた菌体を1mM EDTAを含む25mM HEPES緩衝液(pH6.8)20mLに懸濁し、−20℃にて凍結保存した。
【0149】
凍結保存した各菌体懸濁液を融解し、超音波処理をして菌体を破砕した。各菌体破砕液を遠心分離し、その上清(可溶性画分)と沈殿部(沈殿画分)に分離した。得られた各可溶性画分を下記条件の陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、及びゲル濾過の順でカラム精製を繰り返すことにより、各変異型MaFKBP17.8、すなわちMaFKBP17.8L103I、MaFKBP17.8L56F、MaFKBP17.8Q64E、MaFKBP17.8M65V、MaFKBP17.8F69W、MaFKBP17.8L103I/Q64E、MaFKBP17.8L103I/Q64E/M65V、MaFKBP17.8L103I/Q64E/M65V/L56F、MaFKBP17.8L103I/Q64E/M65V/L56F/F69W、及びPhFKBP29Y149Fをほぼ単一にまで精製した。なお、対照として、実施例1で構築した発現ベクターpMa17F2、及び実施例10で構築した発現ベクターpPh29F2についても同様の操作を行い、天然型MaFKBP17.8及び天然型PhFKBP29を製造した。
【0150】
(a)陰イオン交換クロマトグラフィーの条件
使用カラム:DEAE Toyopearl column
(16mm×60cm;東ソー社)
溶離液
A液:25mM HEPES−KOH衝液(pH6.8)
B液:0.5M NaClを含む25mM HEPES−KOH緩衝液(pH6.8)溶出条件:0−300分:B液0−100%の直線グラジエント溶出
300−420分:B液100%のイソクラティック溶出
流速:1mL/分
カラム温度:室温
(b)疎水性相互作用クロマトグラフィーの条件
使用カラム:HighTrap Phenyl FF
(容量5mL、アマシャムバイオサイエンス社製)
溶離液
A液:10mMリン酸緩衝液(pH6.8)/1.5M硫酸アンモニウム含有
B液:10mMリン酸緩衝液(pH6.8)
溶出条件:0−50分:B液0−100%の直線グラジェント溶出
50−70分:B液100%のイソクラティック溶出
流速:3mL/分
カラム温度:室温
(c)ゲル濾過条件
使用カラム:HiLoad 26/60 Superdex 200pg column
(26 mm×60cm、アマシャムバイオサイエンス社製)
溶離液:100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0、0.15M NaCl含有)溶出条件:イソクラティック溶出
流速:3mL/分
カラム温度:室温
【実施例12】
【0151】
本実施例では、実施例11で製造した各変異型FKBP型PPIaseを用いて、変性したタンパク質を再生した。
【0152】
16.9mg/mL(393μM)のThermoplasma由来のクエン酸合成酵
素(シグマ社。以下、「CS」と称する。)に、20倍量の6Mグアニジン塩酸(5mM
DTTを含有する25mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)に溶解)を加えてC
Sを変性させ、変性したCSを含む試料を調製した。一方、実施例11で製造した5種の1変異型MaFKBP17.8、すなわち、MaFKBP17.8L103I、MaFKBP17.8L56F、MaFKBP17.8Q64E、MaFKBP17.8M65V、又はMaFKBP17.8F69Wを、10μMの濃度になるようにそれぞれ5mM DTT含有/25mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)に溶解した。変性したCS
を含む試料に各1変異型MaFKBP17.8溶液を加えて60倍希釈し、30℃で30分間インキュベートした。その後、50℃における各反応液中のCS活性をSrereらの方法(Acta Chem. Scand. 17,S129−S134,1963)に従って測定した。天然型CSの活性の値に対する得られたCS活性の値の割合(再生率)を算出し、各1変異型MaFKBP17.8の分子シャペロン活性を評価した。結果を図2に示す。すなわち、天然型MaFKBP17.8と各1変異型MaFKBP17.8のいずれにおいても、FKBP型PPIaseを添加しなかった試料(自発的反応)に比べて分子シャペロン活性が高かったが、各1変異型MaFKBP17.8の方が天然型MaFKBP17.8に比べて再生率が高く、より分子シャペロン活性が高かった。以上より、変異型MaFKBP17.8によってより高効率で変性タンパク質を再生できることが分かった。
【実施例13】
【0153】
本実施例では、実施例11で製造したPhFKBP29Y149Fを用いて、タンパク質を安定化させた。
【0154】
1μMのPhFKBP29Y149F又はPhFKBP29(対照)を含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.8)2.5mL中に、牛肝臓由来のロダネーゼ(シグマ社)を0.8μMとなるように加え、45℃で10分間インキュベートした。その後、反液の320nmにおける光散乱強度を測定し、FKBP型PPIaseを含まない反応液における光散乱強度を100としたときの相対値を算出し、ロダネーゼの熱変性による凝集強度を評価した。結果を図3に示す。すなわち、反応液中にPhFKBP29が存在するときは凝集強度が約50%であったのに対し、PhFKBP29Y149Fが存在するときは凝集強度が約30%であった。これにより、PhFKBP29Y149FはPhFKBP29に比べてロダネーゼの熱変性を抑制する効果が高いことがわかった。
【実施例14】
【0155】
本実施例では、MaFKBP17.8M65VとscFv抗体断片を宿主細胞内で共発現させて、scFv抗体断片を製造した。
【0156】
PCR用のプライマーとして配列番号75に示されるSCF−F3プライマー及び配列番号76に示されるSCF−R3プライマーを合成した。次に、プラスミドpAALSC
(伊庭ら 1997、Gene 194、35−)を鋳型とし、SCF−F3プライマー及びSCF−R3プライマーをプライマー対としてPCRを行い、マウス由来anti−ニワトリリゾチーム(HEL) scFv抗体断片(D1.3)遺伝子を増幅した。増幅された遺伝子をTAクローニングにより、pT7ブルーベクター(Novagen社)に挿入し、NdeI/NotI処理後、あらかじめNdeI/NotIにより処理しておいたpET21aプラスミドDNAに挿入し、上記scFvの発現ベクターpETscFvを構築した。次に、pETscFvを鋳型とし、配列番号77に示されるT7−F1プライマーと配列番号78に示されるT7−R1プライマーをプライマー対としてPCRを行い、上記scFv遺伝子及びT7プロモーター部を含むscFvの発現ユニットDNA断片を増幅した。なお、増幅されたDNA断片の両端には、T7−F1プライマーの5’末端に由来するSphIサイト及びT7−R1プライマーの3’末端に由来するBamHIサイトが導入された。この増幅DNA断片をTAクローニングによりpT7 ブルーTベ
クターに挿入した後、制限酵素SphI/BamHIで処理後、pACYC184プラスミド(和光純薬社)のSphI/BamHIサイトに挿入し、共発現用ベクターpACscFvを構築した。
【0157】
2種類のベクター、すなわち、共発現用ベクターpACscFvと実施例4で調製した発現ベクターpMa17M65Vを、コンピテントセル大腸菌JM109(DE3)株に導入し、100μg/mLアンピシリン及び100μg/mLクロラムフェニコールを含むLB寒天培地にて培養した。得られたコロニーを、100μg/mLアンピシリン及び100μg/mLクロラムフェニコールを含む2×YT培地700 mLに接種した。3
5℃で回転培養(110 rpm)した後、OD600が0.7となった時点で100m
M IPTGを7mL添加し、培養温度を20℃に下げてさらに約16時間培養し、MaFKBP17.8M65及びマウス由来anti−HEL scFv抗体断片の発現を誘導した。培養終了後、遠心分離(10000 rpm×10 分)にて菌体を回収した。回収した菌体を1 mM EDTAを含む25 mM HEPES緩衝液(pH6.8)2
0 mLに懸濁し、−20℃にて一晩凍結保存した。菌体を融解し、超音波破砕を行って
上清(可溶画分)及び沈澱画分に分離し、それぞれをSDS−PAGEに供し、CBBにて染色した。一方、比較例として、pACscFvのみを導入した組換え大腸菌についても同様の操作を行った。その結果、pACscFvのみを導入した組換え大腸菌ではscFv抗体断片は全て沈殿画分に検出されたが、pACscFvとpMa17M65Vの両方を導入した組換え大腸菌では、scFv抗体断片は上清画分に検出された。以上より、MaFKBP17.8M65Vと共発現させることにより、scFvは可溶性画分に発現させることが可能となった。
【実施例15】
【0158】
本実施例では、MaFKBP17.8M65VとscFv抗体断片からなる融合タンパク質を発現することができる発現ベクターを構築した。さらに、該発現ベクター含有する形質転換体を作製した。さらに、該形質転換体を培養することにより、該融合タンパク質を製造した。さらに、該培養物より該融合タンパク質を精製した。さらに、精製された該融合タンパク質からscFvを切り出し、scFvを正常型タンパク質として取得した。
【0159】
1.発現ベクターの構築
実施例14で調製したscFv抗体断片遺伝子を含む増幅DNA断片をNdeI/NotIにて処理し、実施例4で構築した発現ベクターpMa17M65VのNdeI/NotIサイトに挿入し、MaFKBP17.8M65VとscFv抗体断片との融合タンパク質を発現することができる発現ベクターpMa17M65V−scFvを構築した。すなわち、発現ベクターpMa17M65V−scFvは、T7プロモーターの下流に、順に、第1コード領域となるMaFKBP17.8M65V遺伝子、トロンビン認識アミノ酸配列をコードするアミノ酸配列、及び第2コード領域となるscFv抗体断片をコード
する遺伝子を有する。よって、該発現ベクターによれば、MaFKBP17.8M65VとscFv抗体断片との融合タンパク質を発現することができる。また、発現される該融合タンパク質は、MaFKBP17.8M65VとscFv抗体断片の間にトロンビン消化アミノ酸配列を有する。次に、構築した発現ベクターpMa17M65V−scFvを大腸菌BL21(DE3)株に導入し、形質転換体を作製した。
【0160】
2.融合タンパク質の製造
作製した形質転換体を、実施例14と同様の方法により培養、回収した後、菌体破砕液の可溶性画分及び封入体画分を得た。実施例14と同様にして可溶性画分と封入体画分をSDS−PAGEに供し、CBBにてゲルを染色した。その結果、MaFKBP17.8M65VとscFv抗体断片からなる融合タンパク質に相当するバンドが、可溶性画分に認められた。CBB染色した可溶性画分の電気泳動像から、該融合タンパク質のバンド密度をデンシトメーターで測定した結果、大腸菌由来全可溶性タンパク質の約20%が該融合タンパク質であり、大量に発現していた。可溶性画分に発現した該融合蛋白質の可溶化率は全発現産物の約80%であった。以上より、scFv抗体断片はMaFKBP17.8M65Vとの融合タンパク質とすることにより、封入体とはならず、可溶状態で合成された。実施例11と同様の3種のクロマトグラフィーにより、可溶性画分から融合タンパク質をほぼ単一にまで精製した。
【0161】
3.scFv抗体断片の製造
精製した融合タンパク質1mg当たりに10Uのトロンビンを加え、22℃にて16時間処理した。反応液をSDS−PAGEに供し、CBBにてゲルを染色した。その結果、トロンビン添加前の試料ではMaFKBP17.8M65VとscFv抗体断片との融合タンパク質のみが検出されたが、トロンビン添加・処理後の試料では当該融合タンパク質以外に、scFv抗体断片に相当するバンドとMaFKBP17.8M65Vに相当するバンドが検出された。以上より、MaFKBP17.8M65VとscFv抗体断片との融合タンパク質のトロンビン認識サイトが切断され、scFv抗体断片が切り出されていることが確認された。以上より、scFv抗体断片は大腸菌内で単独で発現させると沈殿画分に発現される(実施例14)が、MaFKBP17.8M65Vとの融合タンパク質にすると、可溶性画分に合成されることが分かった。
【実施例16】
【0162】
本実施例では、MaFKBP17.8L103I/Q64EとscFv抗体断片からなる融合タンパク質を発現することができる発現ベクターを構築した。さらに、該発現ベクター含有する形質転換体を作製した。さらに、該形質転換体を培養することにより、該融合タンパク質を製造した。
【0163】
実施例14で調製したscFv抗体断片遺伝子を含む増幅DNA断片をNdeI/NotIにて処理し、実施例6で構築した発現ベクターpMa17/L103I/Q64EのNdeI/NotIサイトに挿入し、MaFKBP17.8L103I/Q64EとscFv抗体断片との融合タンパク質を発現することができる発現ベクターpMa17/L103I/Q64E−scFvを構築した。すなわち、発現ベクターpMa17/L103I/Q64E−scFvは、実施例6で構築したpMa17M65V−scFvで、MaFKBP17.8M65V遺伝子の代わりにMaFKBP17.8L103I/Q64E遺伝子とした構成を有する。次に、構築した発現ベクターpMa17/L103I/Q64E−scFvを大腸菌BL21(DE3)株に導入し、形質転換体を作製した。対照として、実施例1で構築した発現ベクターpMa17F2に上記したscFv抗体断片遺伝子を含む増幅DNA断片を導入し、MaFKBP17.8とscFv抗体断片との融合タンパク質を発現することができる発現ベクターpMa17W−scFvを構築した。さらに、発現ベクターpMa17W−scFvを含有する形質転換体を作製した。
【0164】
2.融合タンパク質の製造
作製した形質転換体を、実施例15と同様にして培養し、菌体破砕液の可溶性画分及び封入体画分を得た。実施例15と同様にして可溶性画分と封入体画分をSDS−PAGEに供し、CBBにてゲルを染色した。その結果、MaFKBP17.8L103I/Q64EとscFv抗体断片からなる融合タンパク質に相当するバンドが、可溶性画分に認められた。CBB染色した可溶性画分の電気泳動像から、該融合タンパク質のバンド密度をデンシトメーターで測定した結果、大腸菌由来全可溶性タンパク質の約24%が該融合タンパク質であり、大量に発現していた。可溶性画分に発現した該融合蛋白質の可溶化率は全発現産物の約80%であった。以上より、scFv抗体断片はMaFKBP17.8L103I/Q64Eとの融合タンパク質とすることにより、封入体とはならず、可溶状態で合成された。
【0165】
3.融合タンパク質の精製
実施例15と同様にして形質転換体を培養し、菌体破砕液を調製し、上清を得た。あらかじめ上清に1Mとなるように硫酸アンモニウムを加え、溶離液Aに「10mMリン酸緩衝液(pH6.8)/1M 硫酸アンモニウム含有」を用いる以外は実施例11と同じ条件の疎水性相互作用クロマトグラフィーを行なった。SDS−PAGE/CBBによる分析結果を図4に示す。すなわち、天然型MaFKBP17.8とscFvとの融合タンパク質は、その70%程度がカラム素通り画分に検出された(図4(a))。それに対し、2アミノ酸置換体であるMaFKBP17.8/L103I/Q64EとscFvとの融合タンパク質は、その30%程度がカラム素通り画分に検出された(図4(b))。以上より、本条件の疎水性相互作用クロマトグラフィーにおいてはMaFKBP17.8/L103I/Q64EとscFvとの融合タンパク質はカラムに対する吸着性が高く、高純度の融合タンパク質が高収率で得られた。
【実施例17】
【0166】
本実施例では、MaFKBP17.8M65Vとヒト由来セロトニン(HT1a)レセプターからなる融合タンパク質を発現することができる発現ベクターを構築した。さらに、該発現ベクター含有する形質転換体を作製した。さらに、該形質転換体を培養することにより、該融合タンパク質を製造した。さらに、該培養物より該融合タンパク質を精製した。
【0167】
1.発現ベクターの構築
公知のHT1aレセプター遺伝子の塩基配列情報(NCBIコード:HSSERR51)をもとに、PCR用のプライマーとして配列番号79に示されるHT1a−F1プライマー及び配列番号80に示されるHT1a−R1プライマーを合成した。次に、ヒト胎盤cDNAライブラリー(タカラバイオ社)を鋳型とし、HT1a−F1プライマー及びHT1a−R1プライマーをプライマー対としてPCRを行い、HT1aレセプター遺伝子を増幅した。増幅されたDNA断片をpT7ブルーTベクターに挿入後、その塩基配列を確認したところ、データベースの登録情報と一致した。なお、増幅されたDNA断片の両端には、HT1a−F1の5’末端に由来するNdeIサイト及びHT1a−R1の3’末端に由来するNotIサイトが導入された。次に、HT1aレセプター遺伝子を含む増幅DNA断片をNdeI/NotIにて処理し、実施例4で構築した発現ベクターpMa17M65VのNdeI/NotIサイトに挿入し、MaFKBP17.8M65VとHT1aレセプターとの融合タンパク質を発現することができる発現ベクターを構築した。すなわち、該発現ベクターは、T7プロモーターの下流に、順に、第1コード領域となるMaFKBP17.8M65V遺伝子、トロンビン認識アミノ酸配列をコードするアミノ酸配列、及び第2コード領域となるHT1aレセプターをコードする遺伝子を有する。よって、該発現ベクターによれば、MaFKBP17.8M65VとHT1aレセプターと
の融合タンパク質を発現することができる。また、発現される該融合タンパク質はMaFKBP17.8M65VとHT1aレセプターの間にトロンビン消化アミノ酸配列を有する。次に、構築した発現ベクターを大腸菌BL21(DE3)株に導入し、形質転換体を作製した。
【0168】
2.融合タンパク質の製造
作製した形質転換体を、実施例14と同様の方法により培養、回収した後、菌体破砕液の可溶性画分及び封入体画分を得た。実施例14と同様にして可溶性画分と封入体画分をSDS−PAGEに供し、CBBにてゲルを染色した。その結果、MaFKBP17.8M65VとHT1aレセプターからなる融合タンパク質に相当するバンドが、可溶性画分に認められた。CBB染色した可溶性画分の電気泳動像から、該融合タンパク質のバンド密度をデンシトメーターで測定した結果、大腸菌由来全可溶性タンパク質の約8%が該融合タンパク質であり、大量に発現していた。以上より、HT1aレセプターはMaFKBP17.8M65Vとの融合タンパク質とすることにより、封入体とはならず、可溶状態で合成された。
【0169】
以下の表3に、上記した実施例で用いたPCR用のプライマーの塩基配列、制限酵素サイト又は変異導入部位、及び配列番号をまとめて記載した。塩基配列中の下線は制限酵素サイト又は変異導入部位を表す。
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】実施例1で構築した発現ベクターpMa17L103Iの構成を表す模式図である。
【図2】実施例12において、各1変異型MaFKBP17.8の作用によって変性したクエン酸合成酵素を再生した結果を表すグラフである。
【図3】実施例13において、PhFKBP29Y149Fの作用によってロダネーゼを安定化した結果を表すグラフである。
【図4】実施例16において、融合タンパク質を疎水性相互作用クロマトグラフィーで精製したときの各画分のSDS−PAGE/CBBの結果を表し、図4(a)は対照の天然型MaFKBP17.8とscFvとの融合タンパク質の例を表し、図4(b)はMaFKBP17.8/L103I/Q64EとscFvとの融合タンパク質の例を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1乃至3のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるモチーフを含むFKBP型PPIaseをコードする遺伝子に対して、下記工程、
(1)前記モチーフのN末端のアミノ酸がPhe以外である場合に、該アミノ酸に対応するコドンをPheに対応するコドンに置換する工程、
(2)前記モチーフのN末端から9番目のアミノ酸がGlu以外である場合に、該アミノ酸に対応するコドンをGluに対応するコドンに置換する工程、
(3)前記モチーフのN末端から10番目のアミノ酸がVal以外である場合に、該アミノ酸に対応するコドンをValに対応するコドンに置換する工程、
(4)前記モチーフのN末端から14番目のアミノ酸がTrp以外である場合に、該アミノ酸に対応するコドンをTrpに対応するコドンに置換する工程、
(5)前記モチーフのC末端から2番目のアミノ酸がIle以外である場合に、該アミノ酸に対応するコドンをIleに対応するコドンに置換する工程、
の少なくとも1つを行うことにより、前記遺伝子に変異を導入し、別のFKBP型PPIaseをコードする遺伝子を作製することを特徴とするFKBP型PPIase遺伝子の製造方法。
【請求項2】
前記モチーフは、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項1に記載のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法。
【請求項3】
前記モチーフを含むFKBP型PPIaseは、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項2に記載のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法。
【請求項4】
配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるモチーフを含むFKBP型PPIaseをコードする遺伝子に対して、前記モチーフのC末端のアミノ酸がPhe以外である場合に、該アミノ酸に対応するコドンをPheに対応するコドンに置換することにより、前記遺伝子に変異を導入し、別のFKBP型PPIaseをコードする遺伝子を作製することを特徴とするFKBP型PPIase遺伝子の製造方法。
【請求項5】
前記モチーフは、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項4に記載のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法。
【請求項6】
前記モチーフを含むFKBP型PPIaseは、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項5に記載のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のFKBP型PPIase遺伝子の製造方法によって製造されたFKBP型PPIase遺伝子を転写及び翻訳させることにより、FKBP型PPIaseを合成することを特徴とするFKBP型PPIaseの製造方法。
【請求項8】
配列番号9で表されるアミノ酸配列(56番目のアミノ酸がLeu、64番目のアミノ酸がGln、65番目のアミノ酸がMet、69番目のアミノ酸がPhe、かつ103番目のアミノ酸がLeuである場合を除く)からなる単離されたFKBP型PPIase。
【請求項9】
配列番号11、13、15、17、19、21、23、25又は27で表されるアミノ酸配列からなる単離されたFKBP型PPIase。
【請求項10】
配列番号29で表されるアミノ酸配列からなる単離されたFKBP型PPIase。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれかに記載のFKBP型PPIaseをコードする単離された
FKBP型PPIase遺伝子。
【請求項12】
請求項11に記載のFKBP型PPIase遺伝子を含有する発現ベクター。
【請求項13】
請求項11に記載のFKBP型PPIase遺伝子からなる第1コード領域と、少なくとも1つの制限酵素サイトを有し、前記制限酵素サイトに目的タンパク質をコードする第2コード領域を挿入することによりFKBP型PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を発現することができることを特徴とする発現ベクター。
【請求項14】
前記制限酵素サイトは、前記第1コード領域の下流に位置することを特徴とする請求項13に記載の発現ベクター。
【請求項15】
前記第1コード領域と前記制限酵素サイトの間に、ペプチドリンカーをコードする塩基配列を有することを特徴とする請求項13又は14に記載の発現ベクター。
【請求項16】
前記ペプチドリンカーは、プロテアーゼ消化アミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項15に記載の発現ベクター。
【請求項17】
請求項13乃至16のいずれかに記載の発現ベクターの制限酵素サイトに、目的タンパク質をコードする第2コード領域が組み込まれていることを特徴とする発現ベクター。
【請求項18】
前記第2コード領域は、抗体又は抗体の部分断片をコードする遺伝子であることを特徴とする請求項17に記載の発現ベクター。
【請求項19】
前記第2コード領域は、膜タンパク質をコードする遺伝子であることを特徴とする請求項17に記載の発現ベクター。
【請求項20】
請求項12乃至19のいずれかに記載の発現ベクターを含有する形質転換体。
【請求項21】
宿主が大腸菌であることを特徴とする請求項20に記載の形質転換体。
【請求項22】
請求項8乃至10のいずれかに記載のFKBP型PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質。
【請求項23】
前記FKBP型PPIaseと前記目的タンパク質との間にプロテアーゼ消化アミノ酸配列を有することを特徴とする請求項22に記載の融合タンパク質。
【請求項24】
請求項17に記載の発現ベクターに組み込まれた第1コード領域及び第2コード領域を転写及び翻訳させ、FKBP型PPIaseと目的タンパク質との融合タンパク質を合成することを特徴とする融合タンパク質の製造方法。
【請求項25】
請求項17に記載の発現ベクターに組み込まれた第1コード領域及び第2コード領域を転写及び翻訳させ、FKBP型PPIaseと目的タンパク質の融合タンパク質を合成し、次いで、該融合タンパク質から目的タンパク質を切り出すことを特徴とする目的タンパク質の製造方法。
【請求項26】
前記発現ベクターは第1コード領域と第2コード領域の間にプロテアーゼ消化アミノ酸配列をコードする塩基配列を有し、第1コード領域と、プロテアーゼ消化アミノ酸配列をコードする塩基配列と、第2コード領域とを転写及び翻訳させ、FKBP型PPIaseと目的タンパク質との間にプロテアーゼ消化アミノ酸配列を有する融合タンパク質を合成
し、該融合タンパク質に該プロテアーゼを作用させることにより目的タンパク質を切り出すことを特徴とする請求項25に記載の目的タンパク質の製造方法。
【請求項27】
請求項8乃至10のいずれかに記載のFKBP型PPIaseをコードする遺伝子と目的タンパク質をコードする遺伝子を同一宿主内で共発現させることにより、宿主内で目的タンパク質にFKBP型PPIaseを作用させ、目的タンパク質を可溶化し、宿主の可溶画分から目的タンパク質を採取することを特徴とする目的タンパク質の製造方法。
【請求項28】
請求項8乃至10のいずれかに記載のFKBP型PPIaseを変性した目的タンパク質に作用させることにより、変性した目的タンパク質を正しく折り畳み、変性した目的タンパク質を再生することを特徴とする目的タンパク質の再生方法。
【請求項29】
請求項8乃至10のいずれかに記載のFKBP型PPIaseを目的タンパク質に作用させることにより、目的タンパク質が変性することを抑制し、目的タンパク質を安定化させることを特徴とする目的タンパク質の安定化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−166845(P2006−166845A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366611(P2004−366611)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】