説明

FM信号に関する自己相関ベースのスペクトル検知

免許を受けた送信機のエリア内の利用可能なホワイトスペースチャネルの検出のための方法及びシステムは、周波数変調(FM)帯域内のチャネルの自己相関解析を利用する検出器を含む。自己相関の計算は、自己相関の大きな値を除去するように相関遅延値の初期セットを除外する。より高い相関遅延値に基づく残りの自己相関は、選択したチャネル内で運用中のFM送信機のシヌソイドの性質を明らかにする。自己相関検出方法を使用して送信機が検出されない場合、ホワイトスペースがユーザにとって利用可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信に関し、詳細には、免許を受けたホワイトスペース周波数帯内の利用可能なチャネルの検出に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、連邦通信委員会(FCC)は、一定の制限下で、放送テレビジョンスペクトル内の、免許を受けたサービスによってそのスペクトルが使用されていない場所での無免許の無線送信機の運用を承認した。FCCによる出版物で、いくつかの制限が指定されている(例えば、非特許文献1参照)。テレビジョンスペクトルおよび他の事前割振りされたスペクトルを含むことのある、無免許の使用のために利用可能な未使用スペクトルは、しばしば「ホワイトスペース」と呼ばれる。スペクトル使用に関する1つの主な制限は、ホワイトスペースで動作することのできる無免許のデバイスが、−114dBmという低いレベルで、免許を受けたデジタルおよびアナログテレビジョン送信機信号、免許を受けたワイヤレスマイクロフォン信号、多目的帯域で断続的に運用される他のサービスの信号などの、免許を受けた送信機信号を検知する必要があることである。一例として、免許を受けたスポーツテレビジョンネットワークは、フットボールスタジアムなどのスポーツアリーナのエリア内で運用する権限を有することがある。そのような免許を受けた使用は、スポーツイベントのカバレッジに対処するためのワイヤレスマイクロフォン送信機の使用を含むことができる。しかし、フットボールイベントが行われるのはイベント日の限られた時間だけであることがあるので、そのような使用は断続的である。したがって、通常は免許を受けたワイヤレス送信機のみが利用可能なスペクトルを、新しいFCCガイドラインの下で無免許の使用のためにも利用可能にすることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】"Second Report and Order and Memorandum Opinion and Order," ET Docket No. 08-260, November 2008
【非特許文献2】C. Clanton, M. Kenkel and Y. Tang, "Wireless Microphone Signal Simulation Method," IEEE 802.22-07/0124r0, March 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホワイトスペース周波数帯可用性を検出するある従来技術デバイスは、免許を受けた伝送のスペクトルピーク検出の原理に対して作用する。しかし、そのようなスペクトルピーク検出器は、強い隣接するチャネル干渉が存在するとき、利用可能なチャネルを適切に特定することができない。デジタルテレビジョン(DTV)信号などの免許を受けた強い信号は、隣接するスペクトルへの漏曳のために隣接するチャネル干渉を導入する可能性があり、それにより、スペクトルピークベースの検出を使用して動作するホワイトスペース検出器で偽陽性結果が引き起こされる可能性がある。この偽検出は、普通なら利用可能なチャネルを、ホワイトスペース検出器によって利用されることから排除する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、自己相関ベースのスペクトル検知アルゴリズムを使用して、周波数変調(FM)を使用するデバイスの信号伝送を検出する方法および装置を対象とする。FM伝送の例は、テレビジョン(TV)帯域を使用することを許可された実体からの信号伝送を含む。FM伝送を使用するデバイスの例は、FM信号を生成するワイヤレスマイクロフォンまたは他のデバイスである。一実施形態では、本発明の方法は、FM信号の自己相関関数がほぼ正弦波関数であるという特性に基づく送信機の検出を含む。自己相関の計算は、自己相関の大きな値を除去するように相関遅延値の初期セットを除外する。より高い相関遅延値に基づく残りの自己相関は、考慮中の選択したチャネル内で送信中のFM信号の正弦波の性質を明らかにする。FM送信機を表す正弦波特性を有する信号が注目のTV帯域で検出されない場合、ホワイトスペースがユーザにとって利用可能となり得る。
【0006】
本発明の一態様では、方法がデバイスによって実施され、免許を受けたオペレータによって使用されていない、免許を受けた帯域で運用することを望む無免許デバイスによって使用される、利用可能なホワイトスペース帯域が検出される。検出方法は、まず、選択した周波数帯のデジタルサンプルセットを得ることを含む。次いで、デジタルサンプルセットを使用して自己相関を計算する。初期相関遅延値のセットを除外することによって自己相関関数を計算する。これにより、注目の帯域内の隣接するチャネル干渉の結果である、大きな値の自己相関要素が事実上除外される。次いで、検出方法は決定統計量を計算し、決定統計量を使用して、選択した周波数帯でFM信号が運用中であるかどうかを判定する。帯域幅が利用可能である場合、ユーザは選択した帯域で送信することができる。
【0007】
本発明の別の態様では、選択した周波数帯での周波数変調伝送を検出するデバイスが、選択した帯域のデジタルサンプルを生成するアナログ−デジタルコンバータを含む。検出デバイスのプロセッサは、初期相関遅延値のセットを除外することによって自己相関関数を計算するように、デジタルサンプルを使用して自己相関関数を計算する。次いで、プロセッサは、自己相関関数を使用して決定統計量を計算し、決定統計量に基づいて、選択した周波数帯内にFM信号が存在するどうかを判定する。
【0008】
したがって、記載の方法およびデバイスを、手動選択によって、または自動化プロセスによって複数のチャネル内のFM伝送を検出し、ユーザ伝送のために利用可能なホワイトスペース帯域の可用性を判定することのできる単一のハンドヘルドデバイスに統合することができる。
【0009】
添付の図を参照しながら行われる以下の例示的実施形態の詳細な説明から、本発明の追加の特徴および利点が明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】FM信号の第1の自己相関関数を示す図である。
【図2】FM信号の第2の自己相関関数を示す図である。
【図3】干渉および加法的白色ガウス雑音を含む受信信号の自己相関関数を示す図である。
【図4A】本発明の態様による自己相関検出方法の一実施形態を示す図である。
【図4B】本発明の態様による決定統計量を計算する方法の一実施形態を示す図である。
【図5】本発明の態様によるホワイトスペース検出器のブロック図の一実施形態を示す図である。
【図6】本発明の態様によるホワイトスペース検出器の一実施形態を示す図である。
【図7】本発明の態様によるホワイトスペース検出器によって実施される方法の流れ図の一実施形態を示す図である。
【図8】本発明の態様によるホワイトスペース検出器によって実施される方法の流れ図の別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明では、FM送信機デバイスの一例として、FMタイプ変調を使用するワイヤレスマイクロフォンを用いる。送信機として任意のタイプのFM送信器を使用できることを当業者は理解されよう。ワイヤレスマイクロフォンは、本発明の原理を示すための好都合な例に過ぎない。送信機の例には、ワイヤレスマイクロフォン、レピータ、二方向ラジオ、リモートコントロール、および他の可能な周波数変調ベースの送信機器が含まれる。
【0012】
周波数変調(FM)はアナログ変調方法である。正弦波搬送波の周波数は、ベースバンド信号に従って変化する。FM信号は、
【0013】
【数1】

【0014】
上式でm(t)は送信される信号であり、|m(t)|≦1である。FM技法の多くの実際的な応用例は音声信号を搬送することであることに留意されたい。したがって、送信される信号m(t)は、20kHz未満の帯域幅を有する音声信号でよい。パラメータAcおよびfcは、それぞれ搬送波振幅および搬送周波数である。定数ΔfはFM変調器の周波数偏移であり、FM信号の瞬間周波数の搬送周波数fcからの最大の逸脱を表す。
【0015】
さらに、FM信号の自己相関関数s(t)が、以下の式(2)によって与えられる。
【0016】
【数2】

【0017】
余弦関数内部の積分項は、最大値2πΔfτを有する。示唆される最大周波数偏移は32.6kHzに等しい(例えば、非特許文献2参照)。搬送周波数fcはMHz程度である。したがって、相関遅延が小さいとき、余弦関数内部の積分項の寄与を無視することができ、自己相関を以下の式(3)として表すことができる。
【0018】
【数3】

【0019】
FM信号の自己相関は正弦波特性を示す。
【0020】
免許を受けたワイヤレスマイクロフォン伝送信号などのFM信号が受信機によって取り込まれ、中間周波数(IF)にダウンコンバートされ、次いで受信アナログ信号y(t)がアナログ−デジタルコンバータ(ADC)によってサンプリング周波数fsでサンプリングされる、すなわちy[n]=y(n/fs)と仮定する。自己相関関数は、以下の等式(4)によって計算される。
【0021】
【数4】

【0022】
上式で、mは自己相関遅延であり、単に相関遅延とも呼ばれる。
【0023】
図1に、純粋なFM信号の自己相関関数のプロットを示す。自己相関のほぼ一定のピーク振幅が多くの相関遅延値にわたってプロットされることに留意されたい。図1は、特定の周波数帯で運用中のFM信号の自己相関関数が広い範囲の相関遅延値にわたって大きいピーク値を示すことを示す。図1および図2では、10ミリ秒の信号を使用して自己相関関数が計算される。搬送周波数およびサンプリング周波数は、それぞれ2.48MHzおよび21.52MHzである。したがって、図1の最大の相関遅延は700/21520000=32.5マイクロ秒である。図2は、図1の一部の拡大図であり、FM信号の自己相関関数が正弦波関数であることを明白に示す。
【0024】
図3に、FM信号、隣接する帯域に漏曳するアクティブなTVチャネル伝送からなど、より低い隣接するチャネルからのチャネル干渉、および加法的白色ガウス雑音(AWGN)を含む信号の自己相関関数の一例を示す。図3では、自己相関関数は、ほぼ最初の300相関遅延について大きく、隣接するチャネル干渉信号によって引き起こされる干渉のために、自己相関関数の値の大きいピークの大きさによってFM信号の正弦波特性をマスクすることができる。受信信号がFM信号、隣接するチャネル干渉、および加法的白色ガウス雑音からなると仮定する。受信信号は、以下の式(5)として表すことができる。
y[n]=s[n]+i[n]+w[n] (5)
上式でi[n]およびw[n]は、それぞれ隣接するチャネル干渉および雑音である。これらの3つの信号は互いに独立であるので、受信信号の自己相関関数y[n]は、以下の式(6)によって表される。
y[m]=Rs[m]+Ri[m]+Rw[m] (6)
【0025】
本発明の一態様では、Ri[m]+Rw[m]は最初は大きく、相関遅延mが増加するときに小さくなるので、干渉および雑音による大きな値を有するそうしたRy[m]を破棄し、FM信号の正弦波特性を表すRy[m]のみを計算することにより、検出方法を実現することができる。Ry[m]がm≧LについてFM信号の正弦波特性を表し始めると仮定する。Lは隣接するチャネル干渉に依存し、発見的方法によって求められることに留意されたい。Lを求める一方法は、帯域についてワーストケース干渉を仮定し、それに応じてLを求めることである。本発明の一態様では、式(6)の自己相関関数が、初期相関遅延値のセットを除外して計算される。この相関遅延値の初期セットは一般に、FM信号の正弦波の性質をマスクする可能性のある、自己相関の大きな値となる。
【0026】
例えば、図3から、L=300を選択することができる。次いで、L≦m≦L+M−1に関するRy[m]のみを計算する。したがって、m=0からm=300までの相関遅延の初期値のセットを式(6)の自己相関計算から除外する。パラメータMは、(3)の正弦波特性を維持するように相関遅延をどれだけの期間適用することができるかに依存する。本発明を使用して、Mは1千もの大きさでよいことがわかった。しかし、Mが大きいと、複雑さが増大する。したがって、最適には、Mの選択は、必要な感度を達成することを保証するように可能な限り小さくすることができる。
【0027】
FM信号の自己相関関数は、以下の式(7)で与えられる。
【0028】
【数5】

【0029】
FM信号の搬送周波数が既知である場合、最適な検出器は整合フィルタである。すなわち、最適な検出器の決定統計量は、以下の式(8)によって与えられる。
【0030】
【数6】

【0031】
この決定統計量は、本質的には整合フィルタのように振る舞い、式(8)を使用して既知のFM信号を検出することができる。
【0032】
既知の搬送周波数を有するFM信号に関する決定統計量は、式(8)で与えられる。しかし、免許を受けたワイヤレスマイクロフォンデバイスは、チャネルエッジからの周波数オフセットが25kHzの倍数である限り、TVチャネルなどの利用可能なチャネル内の任意の周波数を選択することができる。受信信号がPMHzから(P+B)MHzまでの帯域を占有すると仮定する。ただし米国ではB=6、または欧州ではB=8である。ワイヤレスマイクロフォンデバイスは、f0=PMHz+50kHz、f1=PMHz+75kHz、...、fN-1=(P+B)MHz−50kHzをその搬送周波数として選択することができる。合計でN=1+(BMHz−100kHz)/(25kHz)個の可能な搬送周波数がある。その結果、最適な検出器の決定統計量は、以下の式(9)によって与えられる。
【0033】
【数7】

【0034】
未知の搬送周波数を有する、ワイヤレスマイクロフォン送信機などのFM信号に関する決定統計量アルゴリズムは、式(9)で与えられる。例示的ワイヤレスマイクロフォン信号の帯域幅は200kHz未満であることに留意されたい。本発明の別の実施形態では、200kHz狭帯域フィルタを使用して、すべての可能な搬送周波数の中心に置かれた200kHzの信号を取り込み、次いで自己相関関数を計算し、式(9)で与えられる決定統計量を求めることによってスペクトル検知性能を改善することができる。この狭帯域フィルタリング操作により、干渉電力および雑音電力が著しく低減される。しかし、狭帯域フィルタリング操作の複雑さは大きい。さらに、可同調狭帯域フィルタが必要となることがあり、フィルタリング操作をN回実施する必要がある。したがって、狭帯域フィルタリング手法はある程度の性能利得をもたらすが、ある応用例にとっては追加の複雑さが大き過ぎることがある。この手法は、搬送周波数が既知であるときは扱いやすい。
【0035】
本発明の一態様では、潜在的なホワイトスペースチャネル内のFM伝送の確実な検出を可能にする装置によって実施される方法を実現することができる。免許を受けたFM伝送の偽陽性検出を引き起こす可能性のある雑音およびチャネル間干渉の存在下で、本明細書で説明する自己相関アルゴリズムを適用することにより、本発明の検出は従来技術の方法よりも改善される。
【0036】
図4Aに、本発明による、自己相関を使用するホワイトスペース検出可用性の方法400を示す。最初にステップ410でチャネルを選択する。チャネルを自動的に選択することができ、またはグラフィカルユーザインターフェースを介してなど、ユーザ入力を介してチャネルを選択することができる。ステップ420で、選択したチャネル帯域上でアナログ−デジタル(A/D)変換を実施し、帯域内信号をサンプリングし、デジタル処理のためにサンプルをデジタルフォーマットに変換する。ステップ430で、サンプリングしたデータを使用して自己相関を実施する。そのような自己相関は上記の式(4)および(6)を使用して計算される。本発明の一態様によれば、注目の帯域内で生じる、隣接するチャネル干渉の効果をなくすように、小さい値の相関遅延を伴う自己相関が、式(6)の自己相関計算から除外される。したがって、省略した相関値の範囲を使用して自己相関を計算する。例えば、ステップ430で図3に示す0から300までの相関値の範囲を自己相関の計算から除外し、相関値0から300で示される、隣接するチャネル干渉の効果をなくすことができる。したがって、この例では、計算する必要があるのは、値301から700までだけである。これらの計算の結果を、後の使用のために格納することができる。次いで、ステップ440で、FM信号の搬送周波数が既知である場合は式(8)に従って、またはFM信号の周波数が未知である場合は式(9)に従って、決定統計量を計算する。次いで、ステップ450で決定統計量をしきい値と比較し、本発明による自己相関を作成した、選択したチャネル内でFM送信機が動作しているかどうかを判定する。しきい値は、偽アラーム率と検出確率との間の折り合いをつけるように選択することができる。次いでステップ460で、決定統計量に適用したしきい値の結果を提供する。そのような結果は、後続の操作で使用することができ、またはユーザに表示することができる。
【0037】
注目の帯域内で検出すべきFM信号の搬送周波数が未知である場合、帯域内の可能性の高い搬送周波数を決定統計量によってテストすべきである。図4Bに、ステップ430で計算した自己相関を使用して式(9)の決定統計量を求めるためのステップ440の例示的流れ図を示す。式(9)は、FM信号の搬送周波数が未知である場合に使用される。注目の周波数帯は、多数の可能なFMチャネルを有することがある。ステップ450でしきい値と比較する前に、帯域内の可能性の高い各搬送周波数を式(9)の決定統計量でテストする。
【0038】
図4Bでは、ステップ441で、注目の帯域内のFM信号に関する初期搬送周波数を表す、f0などのfnの最初の値を選択する。ステップ442で、相関遅延のすべての選択した値にわたって選択したfnの特定の値について、Ry[m]・cos(2πfnm/fs)の項を計算する。ステップ443で、相関遅延の範囲に関する特定のfnを使用して計算した値を合計する。したがって、相関遅延のセットにわたって選択したfnの値について決定統計量Tnを形成する。例えば、n=0、初期搬送周波数f0では、相関遅延のすべての選択した値にわたって、合計がT0によって表される。特定の搬送周波数についての統計量T0のこの計算値を保存する。ステップ444で、fnの値が注目の帯域内の搬送周波数の最後の値であるかどうかを判定する。fnが最後の値ではない場合、ステップ446で、搬送周波数の次の値(fn+1)を選択し、ステップ443で、次のTn+1に関する次の値を計算する。搬送周波数のすべての可能性の高い値の別々に計算した統計量Tnのそれぞれを計算するまで、ループは続行する。最後に、搬送周波数(fn)の現在値が注目の帯域内の最後の可能性の高い搬送周波数である場合、ステップ445で、個々の決定統計量(Tn)の複数の値の最大値Tを求める。この最大値Tが、注目の帯域内のFM搬送周波数のいずれかについての最大の自己相関値を表す。したがって、式(9)の最終的な決定統計量は、選択した周波数帯内の複数の搬送周波数値を使用して計算した統計量の最大値(T)を表す。すなわち、T={T0,T1,T2,...TN-1}の最大、である。式(9)によるTのこの最終的な値を、図4Aのステップ450に送る。上記のように、この値をしきい値と比較して、FM信号が注目の帯域内に存在するかどうかを判定する。
【0039】
図5に、本発明の態様によるホワイトスペース検出器のブロック図500を示す。アンテナ510は、受信したFM信号を受信機フィルタ520に供給し、受信したスペクトルの帯域幅を限定する。一実施形態では、受信した帯域幅は、FMデバイスからの送信のために使用するチャネルに対応する。例えば、受信信号は、FM変調を使用して動作するワイヤレスマイクロフォン送信機から発信することができる。例示的一実施形態では、TVチャネル(例えば、北アメリカでは6MHz、欧州では8MHz)がRFアンテナ510、受信機フィルタ520、およびダウンコンバータ530の連鎖によって取り込まれる。ダウンコンバータ530は、適切な中間周波数(IF)を使用して、受信し、濾波したTVチャネル信号をベースバンド信号にダウンコンバートする。アナログ−デジタルコンバータ(ADC)540を使用して、ダウンコンバートしたTVチャネル信号をサンプリングする。代替的実施形態では、当業者には周知のように、デジタルダウンコンバージョンプロセスでADCを使用することができ、別々のダウンコンバータ530は不要であることがある。
【0040】
プロセッサ550は、ADC540、メモリ560、および入出力(I/O)ブロック570と通信するために必要なインターフェースを含む。プロセッサ550は、ADCのデジタルサンプルを入力し、本発明の態様に従って自己相関を計算する。プロセッサ550は、メモリ560aおよび560bを使用して、プログラムとデータのどちらも格納および想起する。メモリ560aおよび560bは、同一のまたは異なる編成のメモリでよい。一実施形態では、ADC540からのサンプルを、プロセッサ550によるアクセスのためにメモリ560aに直接配置することができる。上述の技法およびアルゴリズムを使用して、プロセッサ550によってサンプルを処理することができ、ディスプレイおよびキーパッドを含むことのできるユーザインターフェース580、またはI/Oインターフェースブロック570による使用のために、メモリ560bに結果を格納することができる。
【0041】
図5の実施形態の一態様では、ユーザインターフェースを使用して、ユーザが周波数帯を選択し、伝送のために解析することを可能にすることができる。ユーザインターフェース580を使用して、検出器デバイス500による処理の結果を表示することもできる。一実施形態では、I/Oインターフェースブロック570は、USBや他のシリアルまたはパラレル接続などの外部インターフェース572を動作可能にし、デバイス500の解析の結果を外部デバイスに送ることを可能にすることができる。一実施形態では、インターフェース572は、RF、赤外線、Bluetooth(登録商標)、他のワイヤレス規格などの様々なワイヤレスインターフェースのいずれでもよい。あるいは、I/Oブロック570は、デバイス500処理の結果のさらなる処理または使用を可能にするように内部バス接続インターフェース572を実装することもできる。例えば、利用可能なホワイトスペースがデバイス500によって検出された場合、I/Oブロック570からのインターフェースは、デバイスがユーザにとって利用可能な周波数帯上で送信することを可能にすることができる。
【0042】
図6は、利用可能な帯域の検出後にホワイトスペース送信機または組み合わせた送信機および受信機(トランシーバ)620がアンテナ610上で送信または受信することを可能にする、インターフェース572を有する検出器500の例示的システム600である。一実施形態では、システム600は、外部ホワイトスペーストランシーバ620に接続するハンドヘルドデバイス500でよい。代替的実施形態では、システム600は、利用可能なホワイトスペース帯域を自動的に、または手動で探索し、次いでその可用性に応じて帯域を利用するデバイスに本発明を統合する、ハンドヘルドワイヤレスデバイスなどの一体型ホワイトスペース検出器でよい。この実施形態によれば、アンテナ510および610は同一のまたは異なるデバイスでよい。
【0043】
例えば、本発明の自己相関検出技法に応じたホワイトスペースの可用性の結果として非セルラモードが利用可能にされる場合、システム600をデュアルモードセルフォンとして実装することができる。これとは別に、図6のシステム600は、利用可能なワイヤレスホワイトスペース周波数帯を利用することのできる任意のタイプの携帯情報端末(PDA)、スケジューラ、Eメールデバイス、またはアドホック音声もしくはデータリンクデバイスを示すことができる。
【0044】
図7に、本発明の態様による方法700の例示的流れ図を示す。方法700は、図4に関して上記で提示した自己相関検知方法およびアルゴリズムを使用してFM伝送を検出するのに使用することのできる例示的方法である。例示的方法はステップ710で始まり、ステップ720で、テレビジョンや他の免許を受けたスペクトルチャネルなどのチャネルと関連付けることのできる周波数帯を選択する。方法700は、上述したように、例えば図4のステップ420から450で説明したように、ステップ730で検知または検出アルゴリズムまたは方法を適用する。検知または検出の結果として、ステップ740で、ホワイトスペースチャネル内のFM信号が存在するかどうかを問い合わせる。ワイヤレスマイクロフォンなどの免許を受けた送信機によってFM信号を生成することができる。解析した、選択したホワイトスペースチャネル内にFM信号が存在する場合、ステップ750で、ユーザ伝送のためにチャネルが利用不可であることを示す。この表示は、フラグをセットすることなどの内部表示でよく、またはこの表示は、ユーザに対する表示でよい。選択したチャネルが利用不可である場合、方法700は終了し、またはステップ720に戻ることができ、ステップ720で、可能なチャネルの走査と同様に自動的に、またはユーザ入力またはユーザ選択の結果として、周波数帯内の次のチャネルを選択する。次いで、次のチャネルについてステップ730から740を再び実行する。
【0045】
ステップ740で、ホワイトスペースチャネルが利用可能であると判定した場合、ステップ760で、ユーザ伝送のためにチャネルが利用可能であることを示すことができる。次いでステップ770で、ユーザは、伝送のために利用可能なホワイトスペースチャネルを利用することができる。
【0046】
PDAなどの無許可デバイスによって恐らくは使用することのできるスペクトルの区間内の利用可能なチャネルのすべてを走査するように反復的に使用するように、図7の流れ図を修正することができる。例えば、図5に関して上記で説明したようなPDA検出器は、図7と同様の方法を反復的に適用してサンプリングし、免許を受けたFM信号が注目のスペクトル内のチャネルのいずれかまたはすべての中に存在するかどうかを判定する。そのような走査の結果をユーザに提供または表示することができる。ここで、利用可能なチャネルのすべてが、免許を受けた信号によって占有される、またはユーザ伝送のために利用可能であるとして列挙されるとすれば、ユーザは、利用可能なチャネルのうちのいずれかを自動的に、または手動で選択し、PDAを使用する音声またはデータ伝送のために利用することができる。したがって、本発明の一態様では、ユーザが伝送のために利用可能なホワイトスペースチャネルを選択する前に、利用可能なスペクトルのすべてまたは一部を解析することができる。
【0047】
図8は、本発明による、より包括的な検出方法800の例示的流れ図である。方法800はステップ810で始まり、ステップ820で、テレビジョンや他の免許を受けたスペクトルチャネルなどのチャネルと関連付けることのできる周波数帯を選択する。方法800は、上述したように、例えば図4のステップ420から450で説明したように、ステップ830で検知または検出アルゴリズムまたは方法を適用する。検知または検出の結果として、ステップ840で、ホワイトスペースチャネル内のFM信号が存在するかどうかを問い合わせる。ワイヤレスマイクロフォンなどの免許を受けた送信機によってFM信号を生成することができる。解析した、選択したホワイトスペースチャネル内にFM信号が存在する場合、ステップ845で、ユーザ伝送のためにチャネルが利用不可であることを示す。この表示は、フラグをセットすることなどの内部表示でよく、またはこの表示は、ユーザに対する表示でよい。選択したチャネルが利用不可である場合、方法800は終了し、またはステップ820に戻ることができ、ステップ820で、可能なチャネルの走査と同様に自動的に、またはユーザ入力またはユーザ選択の結果として、周波数帯内の次のチャネルを選択する。次いで、次のチャネルについてステップ830から840を再び実行する。
【0048】
ステップ840で、選択したチャネル内にFM信号が存在しないのでホワイトスペースチャネルが利用可能であると判定した場合、方法800はステップ850で、選択したチャネル内で運用中の他の免許を受けた信号についてチェックする。例えば、DTV ATSC(Advanced Television Systems Committee)信号やアナログテレビジョンNTSC(National Television System Committee)信号などの非FM信号が、上記で解析した、選択した帯域内に存在することがある。ステップ850で、注目の周波数帯またはチャネル内に存在する免許を受けた非FM信号の検出のための方法を実施する。ステップ860で、非FM信号が注目の帯域またはチャネル内に存在するかどうかの問合せを行う。
【0049】
非FM信号が検査した帯域またはチャネル内に存在する場合、ステップ865で、帯域またはチャネルがユーザ伝送のために利用不可であることを示す。上記のように、この表示は、フラグをセットすることなどの内部表示でよく、またはこの表示は、ユーザに対する表示でよい。ステップ850および860の結果として、選択した注目の帯域またはチャネル内に他の免許を受けた信号がない場合、ステップ870で、チャネルまたは帯域が利用可能であることを示す。この表示は、フラグをセットすることなどの内部表示でよく、またはこの表示は、ユーザに対する表示でよい。チャネルが免許を受けたユーザから解放されていると判定すると、ステップ880で、ユーザデバイスによってチャネルを利用することができる。
【0050】
本明細書に記載の実装は、例えば、方法またはプロセス、装置、あるいはハードウェアとソフトウェアの組合せで実装することができる。単一の形態の実装の文脈で論じただけ(例えば、方法として論じただけ)であっても、論じた特徴の実装は、他の形態(例えば、ハードウェア装置、ハードウェアおよびソフトウェア装置、またはコンピュータ可読媒体)でも実装することができる。装置は、例えば、適切なハードウェア、ソフトウェア、およびファームウェアで実装することができる。方法は例えば、例えばコンピュータ、マイクロプロセッサ、集積回路、またはプログラマブル論理デバイスを含む任意の処理デバイスを指す、例えばプロセッサなどの装置で実装することができる。処理デバイスはまた、例えばコンピュータ、セルフォン、ポータブル/携帯情報端末(「PDA」)、エンドユーザ間の情報の通信を容易にする他のデバイスなどの通信デバイスをも含む。
【0051】
さらに、方法は、プロセッサによって実行中の命令によって実装することができ、そのような命令は、例えば、集積回路、ソフトウェアキャリア、または、例えばハードディスク、コンパクトディスケット、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、読取り専用メモリ(「ROM」)、もしくは任意の他の磁気媒体、光学媒体、もしくは固体媒体などの他の記憶デバイスなどの、プロセッサまたはコンピュータ可読媒体上に格納することができる。命令は、上記で列挙した媒体のいずれかなどのコンピュータ可読媒体上に有形に実施されたアプリケーションプログラムを形成することができる。明らかであるはずであるが、プロセッサは、プロセッサユニットの一部として、例えばプロセスを実施する命令を有する、コンピュータ可読媒体を含むことができる。本発明の方法に対応する命令は、実行されたとき、汎用コンピュータを、本発明の方法を実施する特定のマシンに変換することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスによって帯域可用性を検出するために実施される方法であって、
選択した周波数帯のデジタルサンプルセットを得るステップと、
前記デジタルサンプルセットを使用して自己相関関数を計算するステップであって、前記自己相関関数が、初期相関遅延値のセットを除外して計算されるステップと、
決定統計量を計算するステップと、
周波数変調(FM)信号が前記選択した周波数帯内で運用中であるどうかを前記決定統計量に基づいて判定するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
さらに、前記選択した周波数帯内のFM信号の存在または不在の表示を提供するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、FM信号が前記選択した帯域内に存在しない場合、前記選択した周波数帯を利用するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
さらに、次の周波数帯を選択し及び請求項1のステップを実施するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
さらに、ユーザ選択または自動的に生成した周波数帯から選択した周波数帯内の信号を最初に受信するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記選択した周波数帯域幅のデジタルサンプルを得る前記ステップは、前記選択した周波数帯のアナログ−デジタル変換を実施することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記デジタルサンプルを使用して自己相関関数を計算する前記ステップは、自己相関関数を計算すること、及び、隣接するチャネル干渉を示す相関遅延値を除外することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記決定統計量を計算する前記ステップは、前記選択した周波数帯内の複数の搬送周波数値を使用して計算した統計量の最大値を表す決定統計量を計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記決定統計量を計算する前記ステップは、前記選択した帯域内の単一の搬送周波数に基づいて決定統計量を計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記周波数変調(FM)信号が前記選択した周波数帯内で運用中であるどうかを前記決定統計量に基づいて判定する前記ステップは、前記決定統計量の前記値がしきい値を超えるかどうかを判定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
周波数帯内の周波数変調信号を検出するデバイスであって、
選択した周波数帯域のデジタルサンプルを生成するアナログ−デジタルコンバータと、
メモリにアクセスできるプロセッサであって、初期相関遅延値のセットを除外して自己相関関数を計算するように、前記デジタルサンプルを使用して前記自己相関関数を計算し、前記自己相関関数を使用して決定統計量を計算し、前記選択した周波数帯域内に周波数変調(FM)信号が存在するどうかを前記決定統計量に基づいて判定するプロセッサと、
を備える、前記デバイス。
【請求項12】
さらに、入出力機能を収容するディスプレイおよびユーザインターフェースを備える、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
さらに、前記選択した周波数帯内でFM信号が検出されない場合に使用する、トランシーバに対するインターフェースを備える、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記デバイスはモバイルデバイスである、請求項11に記載のデバイス。
【請求項15】
前記プロセッサは、隣接するチャネル干渉を示す相関遅延値を除外して前記自己相関関数を計算する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項16】
前記プロセッサは、前記選択した周波数帯内の複数の搬送周波数値を使用して計算した統計量の最大値を表す前記決定統計量を計算する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項17】
前記プロセッサは、前記選択した帯域内の単一の搬送周波数に基づいて前記決定統計量を計算する、請求項11に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−515391(P2013−515391A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544455(P2012−544455)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/006684
【国際公開番号】WO2011/078836
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】1−5, rue Jeanne d’Arc, 92130 ISSY LES MOULINEAUX, France
【Fターム(参考)】