説明

FZD10に対する腫瘍標的化モノクローナル抗体とその使用

本発明は、Frizzledホモログ10(FZD10)タンパク質に結合することができる抗体(マウスモノクローナル抗体、キメラ抗体及びヒト化抗体など)又はそのフラグメントに関する。本発明はまた、FZD10関連疾患を治療及び/又は予防する方法、FZD10関連疾患を診断又は予測する方法;及び被験体におけるFZD10のin vivoイメージング方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第60/815,257号(出願日2006年6月21日)に基づく優先権を主張する。前記出願の全内容は、その全体を参照により本明細書に組み入れる。
【0002】
発明の分野
本発明は、Frizzledホモログ10(FZD10)タンパク質に結合することができる抗体(マウスモノクローナル抗体、キメラ抗体及びヒト化抗体など)又はそのフラグメントに関する。本発明はまた、FZD10に関連する疾患を治療及び/又は予防する方法;FZD10に関連する疾患を診断又は予後予測する方法、並びに被験体におけるFZD10のin vivoイメージング方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
癌特異的分子に対するモノクローナル抗体は、癌治療に有用であることが証明されている(非特許文献1)。乳癌、悪性リンパ腫及び大腸癌に対するトラスツズマブ(非特許文献2)、リツキシマブ(非特許文献3)及びベバシズマブ(非特許文献4)などの、ヒト化又はキメラ抗体の臨床応用の成功例の他、他の分子標的に対する多くのモノクローナル抗体が開発中であり、その抗腫瘍活性について評価されている。これらのモノクローナル抗体は、効果的な治療がない腫瘍に罹患した患者に希望を与えることが期待されている。これらのモノクローナル抗体に関する他の重要な問題の一つは、標的分子を発現する細胞へのその特異的な反応により、重篤な毒性なく癌細胞に対する選択的な治療効果を達成することである(非特許文献5〜7)。
【0004】
軟部組織肉種の中でも、骨肉種、ユーイング肉腫及び横紋筋肉種は化学療法に対して感受性であり、これらの疾患は化学療法により十分に管理することができる。他方、紡錘細胞肉腫は化学療法及び放射線療法に耐性であり、これらに罹患した患者は一般的に予後不良を示す。滑膜肉腫(SS)については、外科治療は初期ステージでは患者にとって有効であるが、進行ステージでこれらの患者に利用可能な効果的な治療剤はない。したがって、新規治療法の開発は患者の予後をより良く改善することが期待される。
【0005】
腫瘍におけるゲノムワイドな遺伝子発現分析は、新規抗癌剤及び腫瘍マーカーの開発のための新規な分子標的を同定するための有用な情報を与える。先の研究では、本発明者らは23,040種の遺伝子からなるゲノムワイドなcDNAマイクロアレイを用いて数種の軟部組織肉種の遺伝子発現プロフィールを分析し、Frizzledホモログ10(FZD10)(GenBank登録番号AB027464(配列番号1)及びBAA84093(配列番号2))がSSにおいて特異的かつ頻繁にアップレギュレートされていることを立証した(非特許文献8及び特許文献1)。FZD10遺伝子産物はFrizzledファミリー及び推定WNTシグナルレセプターのメンバーである(非特許文献9)。更なる分析は、FZD10がSS中で特異的に発現され、胎盤を除く他の正常な器官においては全く又はほとんど検出可能なレベルではないことを示し、これはこの分子を標的とする治療剤は全く又はほとんど副作用を生じないであろうということを示唆している(非特許文献8)。RNAi実験は、FZD10がSSの腫瘍増殖に有意に関与していることを示した(特許文献2)。さらに、本発明者らは、FZD10の細胞外ドメイン(FZD10-ECD)に対するウサギポリクローナル抗体を作製し、この抗体がSSのマウス移植片モデルにおいて抗腫瘍活性を有することを見出した(非特許文献10及び特許文献3)。総合すると、FZD10に対する抗体療法によりSSの臨床結果を改善することが期待できる。
【0006】
【特許文献1】WO2004/020668
【特許文献2】WO2006/013733
【特許文献3】WO2005/004912
【非特許文献1】Harris, M. (2004). Lancet Oncol, 5, 292-302.
【非特許文献2】Baselga, J. (2004). Oncology, 61, Suupl 2 14-21.
【非特許文献3】Maloney, D.G., et al. (1997). Blood, 90, 2188-95.
【非特許文献4】Ferrara, N., et al. (2004). Nat Rev Drug Discov, 3, 391-400.
【非特許文献5】Crist, W.M., et al. (2001). J Clin Oncol, 19, 3091-102.
【非特許文献6】Wunder, J.S., et al. (1998) J Bone Joint Surg Am, 80, 1020-33.
【非特許文献7】Ferguson, W.S. and Goorin, A.M. (2001). Cancer Invest, 19, 292-315.
【非特許文献8】Nagayama, S., et al. (2002) Cancer Res, 62, 5859-66.
【非特許文献9】Koike, J., et al. (1999). Biochem Biophys Res Commun, 262, 39-43.
【非特許文献10】Nagayama, S., et al. (2005). Oncogene, 24, 6201-12.
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
以下、可能な臨床応用のための、細胞免疫方法によるFZD10に対するマウスモノクローナル抗体の作製を報告する。これらの抗体のin vivo腫瘍結合活性を、放射性核種を用いた従来の手法の他、近赤外線蛍光による蛍光in vivoイメージングシステムを用いて評価した。ここで本発明者らは、抗FZD10モノクローナル抗体のin vitro及びin vivoでの結合特異性、並びにFZD10を発現する細胞内へのこれらの抗体のインターナリゼーションを明らかにし、さらに100μCiの線量で90Y-標識化抗FZD10 Mabを尾静脈に1回処置したSYO-1を保持する異種移植片マウスにおいて有意な抗腫瘍効果が観察されることを見出した。
【0008】
上記知見に基づき、本発明者らは、FZD10に対するマウスモノクローナル抗体がSS及び他のFZD10過剰発現性腫瘍の治療及び診断における治療可能性を有すると結論付けた。
【0009】
したがって、第1の態様では、本発明は、配列番号15、17及び19に示すアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)又はその機能的に同等なCDRを含むH(重)鎖V(可変)領域と、配列番号23、25及び27に示すアミノ酸配列を有するCDR又はその機能的に同等なCDRを含むL(軽)鎖V領域とを含み、Frizzledホモログ10(FZD10)タンパク質又はその部分ペプチドと結合することができる、抗体又はそのフラグメントを提供する。
【0010】
一実施形態では、抗体又はそのフラグメントは、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体フラグメント及び一本鎖抗体よりなる群から選択される。
【0011】
好ましい実施形態では、抗体はマウス抗体である。好ましくはマウス抗体は、配列番号57に示すアミノ酸配列を有するH鎖及び/又は配列番号59に示すアミノ酸配列を有するL鎖を含む。例えば、前記マウス抗体はハイブリドーマクローン92-13(FERM BP-10628)によって産生され得る。
【0012】
代替的な好ましい実施形態では、抗体はキメラ抗体である。好ましくはキメラ抗体は、配列番号13に示すアミノ酸配列を有するH鎖V領域を含み、例えば、キメラ抗体は配列番号46に示すアミノ酸配列を有するH鎖を含んでもよい。好ましくはキメラ抗体は、配列番号21に示すアミノ酸配列を有するL鎖V領域を含み、例えばキメラ抗体は、配列番号48に示すアミノ酸配列を有するL鎖を含んでもよい。
【0013】
より好ましくはキメラ抗体は、配列番号13に示すアミノ酸配列を有するH鎖V領域と、配列番号21に示すアミノ酸配列を有するL鎖V領域とを含む。例えば、キメラ抗体は配列番号46に示すアミノ酸配列を有するH鎖と、配列番号48に示すアミノ酸配列を有するL鎖とを含む。
【0014】
一実施形態では、キメラ抗体はヒト抗体C(定常)領域をさらに含む。
代替的な好ましい実施形態では、抗体はヒト化抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体はヒト抗体FR(フレームワーク)領域及び/又はヒト抗体C領域をさらに含む。
【0015】
第2の態様では、本発明は、配列番号31、33及び35に示すアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)又はその機能的に同等なCDRを含むH(重)鎖V(可変)領域と、配列番号39、41及び43に示すアミノ酸配列を有するCDR又はその機能的に同等なCDRを含むL(軽)鎖V領域とを含み、Frizzledホモログ10(FZD10)タンパク質又はその部分ペプチドに結合することができる、抗体又はそのフラグメントを提供する。
【0016】
一実施形態では、抗体又はそのフラグメントは、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体フラグメント及び一本鎖抗体からなる群より選択される。
【0017】
好ましい実施形態では、抗体はマウス抗体である。好ましくはマウス抗体は、配列番号61に示すアミノ酸配列を有するH鎖及び/又は配列番号63に示すアミノ酸配列を有するL鎖を含む。例えば、マウス抗体はハイブリドーマクローン93-22(FERM BP-10620)によって産生され得る。
【0018】
代替的な好ましい実施形態では、抗体はキメラ抗体である。好ましくはキメラ抗体は、配列番号29に示すアミノ酸配列を有するH鎖V領域を含み、例えば、キメラ抗体は配列番号50に示すアミノ酸配列を有するH鎖を含む。好ましくは、キメラ抗体は、配列番号37に示すアミノ酸配列を有するL鎖V領域を含み、例えば、キメラ抗体は配列番号52に示すアミノ酸配列を有するL鎖を含む。
【0019】
より好ましくは、キメラ抗体は、配列番号29に示すアミノ酸配列を有するH鎖V領域と配列番号37に示すアミノ酸配列を有するL鎖V領域とを含む。例えば、キメラ抗体は配列番号50に示すアミノ酸配列を有するH鎖と、配列番号52に示すアミノ酸配列を有するL鎖とを含む。
【0020】
一実施形態では、キメラ抗体はヒト抗体C(定常)領域をさらに含む。
代替的な好ましい実施形態では、抗体はヒト化抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体はヒト抗体FR(フレームワーク)領域及び/又はヒト抗体C領域をさらに含む。
【0021】
さらなる代替的な実施形態では、抗体又はそのフラグメントは放射性同位体標識又は蛍光標識で標識化することができる。そのような放射性同位体標識として、イットリウム90(90Y)、ヨウ素125(125I)及びインジウム111(111In)などが挙げられる。
【0022】
第3の態様では、本発明は、マウスモノクローナル抗体92-13を産生するハイブリドーマクローン92-13(FERM BP-10628)を提供する。
【0023】
第4の態様では、本発明はマウスモノクローナル抗体93-22を産生するハイブリドーマクローン93-22(FERM BP-10620)を提供する。
【0024】
第5の態様では、本発明は、被験体においてFrizzledホモログ10(FZD10)に関連する疾患を治療又は予防する方法であって、上記抗体又はフラグメントの有効量を被験体に投与することを含む、前記方法を提供する。一実施形態では、FZD10に関連する疾患は、滑膜肉腫(SS)、直腸結腸癌、胃癌、慢性骨髄性白血病(CML)及び急性骨髄性白血病(AML)から選択される。
【0025】
第6の態様では、本発明は、被験体におけるFrizzledホモログ10(FZD10)に関連する疾患又は該疾患を発症する素因を診断又は予後予測する方法であって、
(a) 被験体由来のサンプル又は検体と、上記抗体又はフラグメントとを接触させるステップ;
(b) 前記サンプル又は検体中のFZD10タンパク質を検出するステップ;及び
(c) 対照と比較したFZD10タンパク質の相対存在量に基づいて、被験体が該疾患に罹患しているか又は該疾患を発症するリスクを有するか否かを判定するステップ
を含む、前記方法を提供する。
【0026】
一実施形態では、FZD10に関連する疾患は、滑膜肉腫(SS)、直腸結腸癌、胃癌、慢性骨髄性白血病(CML)及び急性骨髄性白血病(AML)から選択される。
【0027】
第7の態様では、本発明は、被験体におけるFrizzledホモログ10(FZD10)タンパク質のin vivoイメージング方法であって、上記抗体又はフラグメントの有効量を被験体に投与することを含む、前記方法を提供する。
【0028】
第8の態様では、本発明は、Frizzledホモログ10(FZD10)に関連する疾患を治療又は予防するための医薬組成物であって、上記抗体又はフラグメント及び薬学的に許容し得る担体又は賦形剤を含む、前記医薬組成物を提供する。
【0029】
第9の態様では、本発明は、Frizzledホモログ10(FZD10)に関連する疾患を診断又は予後予測するためのキットであって、上記抗体又はフラグメントを含む、前記キットを提供する。
【0030】
第10の態様では、本発明は、Frizzledホモログ10(FZD10)タンパク質のin vivoイメージング用医薬組成物であって、上記抗体又はフラグメントを含む、前記医薬組成物を提供する。
【0031】
第11の態様では、本発明は、Frizzledホモログ10(FZD10)に関連する疾患を診断又は予後予測するためのキットの製造における上記抗体又はフラグメントの使用を提供する。
【0032】
第12の態様では、本発明は、Frizzledホモログ10(FZD10)に関連する疾患を予防又は治療するための組成物の製造における上記抗体又はフラグメントの使用を提供する。
【0033】
用語「FZD10に関連する疾患」(FZD関連疾患)とは、FZD10タンパク質の過剰発現に関連する疾患をいう。そのような疾患として、これに限定されるものではないが、滑膜肉腫(SS)、直腸結腸癌、胃癌、慢性骨髄性白血病(CML)、及び急性骨髄性白血病(AML)などが挙げられる。
【0034】
用語「フラグメント」は、FZD10タンパク質に対する抗体から調製することができ、かつ規定のCDRを含む任意の抗体フラグメントをいう。そのようなフラグメントとして、これに限定されるものではないが、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント及びFvフラグメントなどが挙げられる。
【0035】
用語「改変型抗体」は、FZD10に対する抗体から誘導することができ、かつ規定のCDRを含む任意の抗体をいう。そのような改変型抗体として、これに限定されるものではないが、PEG化抗体などが挙げられる。抗体フラグメント又は改変型フラグメントは、当業者が容易に理解することができ、当該技術分野で公知の方法のいずれかを用いて製造することができる。
【0036】
本明細書中の用語「被験体」は、FZD10関連疾患に罹患している被験体、及びFZD10関連疾患に罹患している疑いがある被験体をいう。本発明における被験体は、哺乳動物及び鳥類動物を含む動物であり得る。例えば、哺乳動物は、ヒト、マウス、ラット、サル、ウサギ及びイヌなどであってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の詳細な説明及び好ましい実施形態
Frizzledホモログ10(FZD10)はWntシグナル伝達の受容体であるFrizzledファミリーのメンバーである。下記に記載されるように、本発明者らは医療用途に有用であり得るFZD10タンパク質に対するマウスモノクローナル抗体及びキメラ抗体の樹立に成功した。
【0038】
FZD10特異的マウスモノクローナル抗体(92-13及び93-22Mab)は、FZD10をトランスフェクトした細胞でマウスを免疫することによって樹立される。92-13及び93-22Mabは共に、フローサイトメトリー(FACS)分析を用いることによって、SS細胞株、SYO-1細胞、及びFZD10でトランスフェクトしたCOS7細胞においてFZD10に対する特異的結合活性を有することが示された。これらの抗体の特異的結合活性をin vivoで確認するために、本発明者らは、SS異種移植片を担持するマウスに蛍光標識化Mabを腹腔内又は静脈内注射し、これらのMabがFZD10発現性腫瘍には結合するが、他の正常なマウス組織には結合しないことを、in vivo蛍光イメージングシステム及び放射能の使用により見出した。その後のMabを用いた免疫組織化学分析は、胎盤を除く正常なヒト器官では全く又はほとんどFZD10タンパク質が検出可能なレベルでないことを確認した。さらに、興味深いことに本発明者らは、MabはSS細胞株、SYO-1にはインターナライズするが、FZD10陰性細胞株であるLoVoにはインターナライズしないことを、共焦点レーザ走査顕微鏡を用いて見出した。驚くべきことに、100μCi線量で90Y標識化抗FZD10(92-10)Mabを尾静脈に1回処置したSYO-1を保持する異種移植片マウスで、顕著な抗腫瘍効果が観察された。総合して、本発明者らは、FZD10に対するこれらの特異的Mabは、副作用が最小であるか又はそのリスクのないSSの新規診断マーカー又は治療として有用であり得ると結論付ける。
【0039】
その複雑なタンパク質構造に起因して、7回膜貫通タンパク質に対する抗体を作製することは非常に困難であることが多い。先の研究において、本発明者らはFZD10がホモオリゴマーを形成することを立証した(Nagayama, S., et al. (2005). Oncogene, 24, 6201-12.)。全長又は部分的な組換えFZD10タンパク質を用いて天然形態のFZD10を認識することができる抗FZD10モノクローナル抗体を作製する複数回の試みが失敗した後、本発明者らは最終的に、Balb/cマウスの足裏への、FZD10を過剰発現するCOS-7生細胞の注射による免疫化を適用し、FACS分析によって生細胞で天然FZD10形態を認識する能力を有していた抗FZD10抗体を産生する2種のハイブリドーマを取得することに成功した。これらの抗体はウェスタンブロットにおいてFZD10タンパク質を検出しなかったので、本発明者らはこれらのMabがFZD10の四次構造を認識すると推定する。
【0040】
92-13及び93-22 Mabのin vivo分布を調査するために、本発明者らは2つの方法を適用した。すなわち、一方は125I及び111In標識化抗体を用いた放射性核種様式に基づくものであり、他方は近赤外線標識化(Alexa647)抗体を用いた蛍光イメージングに基づくものである。近赤外線蛍光(大部分はインドシアニン色素)は現在、この波長の光が生存組織を非常に効率的に透過するため(Chen, X., et al. (2004). Cancer Res, 64, 8009-14.)、診断目的でのin vivoイメージングに広範に使用されている。2つのアプローチから得られた結果は非常に一致したものであり、92-13及び93-22はSYO-1腫瘍細胞に結合するが、他の正常な組織には結合しないことを示した。これらの抗体が臨床応用に適用できるか否かを確認するために、本発明者らはさらに、正常な血液細胞に対する抗体の結合活性を調べた。正常なヒト血液細胞に対する125I標識化92-13及び93-22の結合活性は、3個体全てのドナーで検出できなかった(図1d)。これらの結果は、ヒト末梢血単核細胞を用いたFACS分析の結果(データは示されない)と一致し、これは、FZD10分子への非常に特異的な結合親和性によりSS患者に対する副作用の可能性がほとんどない、これら2種の抗体の臨床上の利用可能性を示唆している。さらに、共焦点顕微鏡を用いたin vitro実験は、細胞表面FZD10への92-13及び93-22 Mabの特異的結合が該抗体のインターナリゼーションを誘導したことを明らかにした(図6)。既に記載されているように(Stein, R., et al. (2001). CritiRev Oncol Hematol, 39, 173-80.; Stein, R., et al. (2005). Clin Cancer Res, 11, 2727-34.)、標識化Mabが結合後にインターナライズされる場合、125I標識化抗体はリソソームで代謝されて、111In標識化抗体はリソソームが留まる標的腫瘍細胞から放散される。図3で観察されるように、腫瘍中の111In標識化抗体及び125I標識化抗体は顕著に異なった(図3a及びb、c及びd)。これらの知見は、92‐13(及び93‐22)MabはFZD10タンパク質を介してSS細胞に特異的にインターナライズできることを示唆する。
【0041】
抗体を癌治療に適用するとき、抗腫瘍活性を発揮させるために以下の3つの機構が考慮される;(i)標的分子が増殖の増強に関与する場合には、抗体の中和が増殖のシグナル伝達をブロックし、次いで腫瘍細胞の増殖を抑制する;(ii)第2の可能性は抗体依存性細胞障害(ADCC)又は補体依存性細胞障害(CDC)を誘導するエフェクター活性である;(iii)第3のケースは、抗体にコンジュゲートされ、標的腫瘍細胞に効率的に送達される放射性核種又は抗腫瘍剤である。本発明者らは標的分子FZD10がSS腫瘍増殖に関与することを既に立証しているが、Mab92-13及び93-22のいずれも、細胞培養培地に添加したときin vitroで(データは示されない)、又は担癌マウスに注射したときin vivoで(データは示されない)、中和作用を示さなかった。
【0042】
抗体と放射性核種又は抗癌剤とのコンジュゲーション、例えばZevalin(イットリウム90とコンジュゲートした抗CD20抗体)及びMylotarg(カリケアマイシンとコンジュゲートした抗CD33抗体)は、抗体に細胞毒性を付与するのに非常に効果的であることが証明されている(Wiseman, G.A. and Witzig, T.E. (2005). Cancer Biother Radiopharm, 20, 185-8.; van der Velden, V.H., et al. (2001). Blood, 97, 3197-204.; Carter, P. (2001). Nat Rev Cancer, 1, 118-29.)。Mylotargは、これがインターナライズされた後、癌細胞内に抗腫瘍剤であるカリケアマイシンを放出することによってその抗腫瘍活性を発揮する(van der Velden, V.H., et al. (2001). Blood, 97, 3197-204.)。実施例中、治療実験のために、90Y-DTPA-92-13コンジュゲートを作製し、その抗腫瘍活性を調べた。マウス異種移植片モデルにおいて、腫瘍は90Y-DTPA-92-13の処置後速やかに縮小された(図7)。注目すべきことに、大容量(>1cm3)の腫瘍を含む腫瘍は、投与後34日まで差を示さず、強力な毒性は観察されなかった。抗FZD10抗体92-13及び93-22は、図6に示されるように、抗原陽性細胞に効率的にインターナライズされる傾向があったので、Mab 92-13及び93-22との抗癌剤のコンジュゲーションはいずれもSS細胞に対する高い抗癌作用を発揮することが期待される。エフェクター活性に関し、キメラ92-13及び93-22はいずれも、FZD10過剰発現性SYO-1細胞に特異的にADCCを誘導したが(図8a及びc)、FZD10陰性LoVo細胞には誘導しなかった(図8b及びd)。特に、キメラ92-13はキメラ93-22と比較して高い細胞毒性の誘導を示したが、その活性はエフェクター細胞のドナーに左右される(おそらくはFc受容体の多型が原因である)。結論として、本発明者らは、FZD10過剰発現性腫瘍細胞上のFZD10にin vitro及びin vivoで特異的に結合することができるモノクローナル抗体の作製に成功した。また、本発明者らは、抗FZD10モノクローナル抗体がSS及びFZD10を過剰発現する他の腫瘍の治療のための新規薬剤治療の開発に大きな可能性を有することを確信している。
【0043】
1.抗体の作製
本発明に使用することができる抗体は、FZD10関連疾患から誘導されるFZD10タンパク質に対して特異的に反応する。本明細書で使用する用語「抗体」は、抗原としてのタンパク質若しくはその部分ペプチドに結合することができる、抗体分子全体、又はそのフラグメント(例えばFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント及びFvフラグメント)を指す。抗体はポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれかであることができる。抗体はまたヒト化若しくはキメラ抗体、又は一本鎖Fv(scFv)抗体であることができる。本発明において使用するための抗体(ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体)は例えば以下のプロセスによって調製することができる。
【0044】
(1)モノクローナル抗体
初めに、本発明に有用な抗体を製造するための抗原を調製する。FZD10タンパク質又はその部分ペプチドは、免疫原タンパク質として使用することができる。あるいは、FZD10タンパク質又はその部分ペプチドを発現する細胞を免疫原としても使用することもできる。本発明において免疫原として使用されるFZD10タンパク質のアミノ酸配列及び該タンパク質をコードするcDNA配列は、GenBankにそれぞれ登録番号BAA84093(配列番号1)及びAB027464(配列番号2)として公共的に入手可能である。免疫原として使用するためのFZD10タンパク質又はその部分ペプチドは、入手可能なアミノ酸配列情報を使用して、固相ペプチド合成法などの当該技術分野で公知の手法に従って合成により調製することができる。FZD10タンパク質の部分ペプチドとして、これに限定されるものではないが、FZD10タンパク質のN末端細胞外ドメイン(FZD10-ECD)に相当する、配列番号1に示すアミノ酸配列の残基1-225を含むペプチドなどが挙げられる。
【0045】
タンパク質若しくはその部分ペプチド、又はこれらを発現する細胞は、FZD10タンパク質又はその部分ペプチドをコードするcDNAの配列情報を、既知の遺伝子組み換え手法に従って用いることで調製することができる。そのような遺伝子組換え手法によるタンパク質又はその部分ペプチド、並びにこれらを発現する細胞の作製は、下記で説明される。
【0046】
タンパク質を製造するための組換えベクターは、適当なベクターに上記cDNA配列を結合することによって取得することができる。形質転換体は、タンパク質製造用の組換えベクターを標的のFZD10タンパク質又はその部分ペプチドが発現できるように宿主中に導入することによって取得することができる。
【0047】
ベクターとして、宿主内で自己複製することができるファージ又はプラスミドが使用される。プラスミドDNAの例として、pCAGGS、pET28、pGEX4T、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19、及び大腸菌(Escherichia coli)由来の他のプラスミドDNA; pUB110、pTP5、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)由来の他のプラスミドDNA;並びにYEp13、YEp24、YCp50及び酵母由来の他のプラスミドDNAなどが挙げられる。ファージDNAの例として、lgt11及びlZAPなどのλファージが挙げられる。さらに、レトロウイルスベクター及びワクシニアウイルスベクターなどの動物ウイルスベクターが使用可能であり、バキュロウイルスベクターなどの昆虫ウイルスベクターも使用可能である。
【0048】
FZD10タンパク質又はその部分ペプチドをコードするDNA(以降、FZD10 DNAとも称する)は、例えば、以下の方法によってベクターに挿入される。この方法では、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニング部位に挿入してベクター内に連結する。
【0049】
プロモーター及びFZD10 DNAの他、所望であれば、エンハンサー及び他のcisエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合部位(RBS)及び他のエレメントのいずれかを、哺乳動物細胞において使用するためのタンパク質の製造用の組換えベクター内に連結することができる。
【0050】
DNA断片をベクター断片に連結するために、既知のDNAリガーゼを使用することができる。DNA断片及びベクター断片をアニールし、連結することにより、タンパク質製造用の組換えベクターを作製することができる。
【0051】
形質転換体にて使用するための宿主は、その中でFZD10タンパク質又はその部分ペプチドを発現させることができる限り特に制限されない。宿主の例として、例えば大腸菌(E.coli)及びバチルス(Bacillus)などの細菌;酵母、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae);動物細胞、例えばCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、及び昆虫細胞などが挙げられる。
【0052】
例えば、細菌を宿主として使用するとき、タンパク質製造用の組換えベクターは、好ましくは、宿主細菌中で自律的に複製可能であり、かつプロモーター、リボソーム結合部位、FZD10 DNA、及び転写終結配列を含むものとする。組換えベクターは、プロモーターを調節するための遺伝子をさらに含んでもよい。大腸菌(Escherichia coli)の例としてEscherichia coli BRLなどが挙げられ、バチルス(Bacillus)の例としてバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)が挙げられる。大腸菌などの宿主中で発現させることができるプロモーターはいずれも本発明で使用することができる。
【0053】
組換えベクターは、当該技術分野で公知の手法のいずれかによって宿主細菌中に導入することができる。そのような手法として、例えば、カルシウムイオン及びエレクトロポレーションを用いる方法などが挙げられる。酵母細胞、動物細胞又は昆虫細胞を宿主として使用するとき、形質転換体は当該技術分野で公知の手法に従って作製することができ、その後FZD10タンパク質又はその部分ペプチドを宿主(形質転換体)中で製造することができる。
【0054】
本発明において免疫原として使用するためのFZD10タンパク質又はその部分ペプチドは、上記のように作製した形質転換体の培養物から取得することができる。「培養物」とは、培養上清、培養細胞、培養微生物及びそれらのホモジネートのいずれかを指す。形質転換体は、宿主を培養する慣用のプロセスによって培養培地中で培養される。
【0055】
大腸菌(Escherichia coli)、酵母又は他の微生物を宿主として使用することによって取得される形質転換体を培養するための培養培地は、炭素源、窒素源、無機塩、及び微生物が利用可能な他の成分を含み、かつ形質転換体が効率的に増殖できる限り、天然培地又は合成培地のいずれかを使用することができる。
【0056】
形質転換体は、一般的に、25℃〜37℃で3〜6時間、好気条件下でかき混ぜながら通気培養又は振とう培養することによって培養される。培養の間、例えば無機酸又は有機酸、及びアルカリ溶液による調整によって、pHは中性付近のレベルに保持される。培養の間、必要に応じて組換え発現ベクター中に挿入された選択マーカーに従ってアンピシリン又はテトラサイクリンなどの抗生物質を培地に添加してもよい。
【0057】
培養後、FZD10タンパク質又はその部分ペプチドが微生物又は細胞内で産生されるとき、タンパク質又はその部分ペプチドは微生物又は細胞をホモジナイズすることによって抽出される。FZD10タンパク質又はその部分ペプチドが微生物又は細胞から分泌されるとき、培養培地もそのまま使用するか、又は例えば遠心分離によって、微生物又は細胞の破片を培養培地から除去する。その後、FZD10タンパク質又はその部分ペプチドは、タンパク質の単離及び精製のための慣用の生化学的方法、例えば硫安分画、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、及びアフィニティークロマトグラフィーなどを単独で又は組合せることによって培養物から単離し、精製することができる。
【0058】
FZD10タンパク質又はその部分ペプチドが得られているかどうかは、例えばSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって確認することができる。
【0059】
次いで、得られたFZD10タンパク質若しくはその部分ペプチド、又は形質転換体をバッファー中に溶解して免疫原を調製する。必要であれば、効果的な免疫化のためにアジュバントをこれに添加することができる。そのようなアジュバントとして、例えば市販されているフロイントの完全アジュバントやフロイントの不完全アジュバントなどが挙げられる。これらのアジュバントはいずれも単独で又は組合せて使用することができる。
【0060】
こうして調製された免疫原はウサギ、ラット又はマウスなどの哺乳動物に投与される。免疫化は主に、静脈、皮下又は腹腔内注射によって行われる。免疫化の間隔は特に制限されないが、哺乳動物は数日から数週間の間隔で1回から3回免疫化される。抗体産生細胞は最後の免疫化後1〜7日間で回収される。抗体産生細胞の例として、脾細胞、リンパ節細胞、及び末梢血細胞などが挙げられる。
【0061】
ハイブリドーマを得るために、抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させる。抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞として、一般的に入手可能な樹立細胞株を使用することができる。好ましくは、使用される細胞株は、非融合形態ではHAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含む)で生存することができず、抗体産生細胞と融合したときのみ生存できるような薬剤選択性及び性質を有するものとする。可能なミエローマ細胞として、例えばP3X63-Ag.8.U1 (P3U1)及びNS-Iなどのマウスミエローマ細胞株などが挙げられる。
【0062】
次いで、ミエローマ細胞と抗体産生細胞とを融合する。融合のために、これらの細胞は、好ましくは5:1の抗体産生細胞:ミエローマ細胞の比で、血清を含まない動物細胞用の培養培地、例えばDMEM及びRPMI-1640培地中で混合され、細胞融合促進剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)などの存在下で融合される。細胞融合は、エレクトロポレーションを用い市販の細胞融合デバイスを用いることによって実施してもよい。
【0063】
次いで、ハイブリドーマを上記融合処理後に細胞から取り上げる。例えば、細胞懸濁液を、例えばウシ胎児血清を含むRPMI-1640培地で適切に希釈した後、マイクロタイタープレートにプレーティングする。各ウェルに選択培地を添加し、選択培地を適切に取換えながら細胞を培養する。その結果、選択培地中での培養の開始後約30日間増殖する細胞をハイブリドーマとして取得することができる。
【0064】
増殖性ハイブリドーマの培養上清を次にFZD10タンパク質又はその部分ペプチドと反応する抗体の存在についてスクリーニングする。ハイブリドーマのスクリーニングは慣用の手法に従って、例えば酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)又はラジオイムノアッセイ(RIA)を用いて実施することができる。融合細胞は、限界希釈により、目的のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを樹立することによってクローニングされる。
【0065】
モノクローナル抗体は、例えば慣用の細胞培養方法によって、又は腹水を産生させることによって、樹立したハイブリドーマから収集することができる。必要であれば、抗体は既知の手法、例えば硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィー又はそれらの組合せなど、上述した抗体収集方法で精製することができる。
【0066】
本発明において有用なモノクローナル抗体のグロブリンタイプは、FZD10タンパク質に特異的に結合でき、IgG、IgM、IgA、IgE及びIgDのいずれかである限り特に制限されない。特にIgG及びIgMが好ましい。
【0067】
本発明において、マウスモノクローナル抗体93-22及び92-13が樹立に成功しており、好ましくは使用される。マウスモノクローナル抗体93-22を産生するハイブリドーマクローン93-22は、Shuichi Nakatsuruにより、産業技術総合研究所(AIST、日本国〒305-8566 茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)のIPOD国際特許生物寄託センターに、2006年6月14日付で寄託番号FERM BP-10620として国際寄託された。また、マウスモノクローナル抗体92-13を産生するハイブリドーマクローン92-13は、Shuichi Nakatsuruによって、AISTのIPOD国際特許生物寄託センターに、2006年6月28日付けで、寄託番号FERM BP-10628として国際寄託された。ハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体は、好ましく本発明で使用することができる。
【0068】
本発明において、組換え型のモノクローナル抗体を使用してもよく、これは慣用の遺伝子組み換え技術に従って(例えばVandamme, A. M. et al., Eur. J. Biochem. (1990) 192, 767-75参照)、ハイブリドーマから抗体遺伝子をクローニングし、該抗体遺伝子を適当なベクターに組込み、宿主に該ベクターを導入し、そして宿主から抗体を産生させることによって製造することができる。
【0069】
より具体的には、抗FZD10マウスモノクローナル抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを抗体産生ハイブリドーマ(例えば上記のもの)から単離する。mRNAの単離は、既知の方法のいずれか、例えばグアニジウム超遠心分離法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry (1979) 18, 5294-9)及びAGPC法(Chomczynski, P. et al., Anal. Biochem. (1987) 162, 156-9)など、によってトータルRNAを調製した後、mRNA Purification Kit(Pharmacia)などを用いてトータルRNAから所望のmRNAを得ることによって行う。あるいは、mRNAはQuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia)を用いて直接調製してもよい。
【0070】
次いで、抗体V領域のcDNAは逆転写酵素によってmRNAから合成される。cDNAの合成は市販のキット、例えばGene RacerTM Kit(Invitrogen)を用いて実施してもよい。cDNAは、5'-Ampli FINDER RACE Kit (Clontech)をPCR法と組合せて用いる5'-RACE法(Frohman, M.A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1988) 85, 8998-9002; Belyavsky, A. et al., Nucleic Acids Res. (1989) 17, 2919-32)によって合成又は増幅してもよい。
【0071】
マウスモノクローナル抗体92-13のH鎖及びL鎖のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号57と59(それぞれ配列番号58及び60に示すヌクレオチド配列によってコードされる)に示す。マウスモノクローナル抗体93-22のH鎖及びL鎖のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号61及び63(それぞれ配列番号62及び64に示すヌクレオチド配列によってコードされる)に示す。目的のマウスモノクローナル抗体のH鎖又はL鎖を増幅するために使用するプライマーを、その配列情報に基づいて、慣用の方法を用いて設計することができる。
【0072】
目的のDNA断片を、生じたPCR産物から単離、精製し、その後ベクターDNAに連結することで組換えベクターを得る。組換えベクターを大腸菌(E.coli)などの宿主に導入し、所望の組換えベクターを含むコロニーを選別する。組換えベクター中の目的のDNAのヌクレオチド配列を、例えば自動化シーケンサーを用いて確認する。
【0073】
抗FZD10抗体V領域をコードするDNAを取得した時点で、このDNAを抗体定常(C)領域をコードするDNAを含む発現ベクター中に組み込む。
【0074】
本発明に使用される抗FZD10抗体の製造のために、抗体遺伝子が発現制御要素(例えばエンハンサー、プロモーター)の制御下で発現され得るように、抗体遺伝子を発現ベクター中に組み込む。宿主細胞を発現ベクターで形質転換して抗体を発現させる。
【0075】
抗体遺伝子の発現において、抗体の重(H)鎖をコードするDNAと軽(L)鎖をコードするDNAとを別個の発現ベクターに組み込んだ後、生じたこれらの組換え発現ベクターで宿主細胞を共形質転換してもよい。あるいは、抗体のH鎖をコードするDNA及びL鎖をコードするDNAの両者を単一の発現ベクターに組み込んだ後、生じた組換え発現ベクターで宿主細胞を形質転換してもよい(例えばWO 94/11523)。
【0076】
抗体遺伝子は既知の方法によって発現させることができる。哺乳動物細胞中での発現のために、慣用の有用なプロモーター、発現される抗体遺伝子及びポリ(A)シグナル(抗体遺伝子の3’末端の下流に位置する)を機能的に連結してもよい。例えば、有用なプロモーター/エンハンサー系として、ヒトサイトメガロウイルス前初期プロモーター/エンハンサー系を使用することができる。
【0077】
他のプロモーター/エンハンサー系、例えばウイルス(例えばレトロウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス及びサルウイルス40(SV40))由来のもの、及び哺乳動物細胞(例えばヒト伸長因子1α(HEF1α))由来のものを、本発明における抗体の発現のために使用し得る。
【0078】
SV40プロモーター/エンハンサー系を使用するとき、遺伝子発現はMullianらの方法(Nature (1979) 277, 108-14.)によって容易に行うことができる。HEF1αプロモーター/エンハンサー系を使用するとき、遺伝子発現はMizushimaらの方法(Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322.)によって容易に行うことができる。
【0079】
大腸菌(E.coli)における発現のために、慣用の有用なプロモーター、目的の抗体を分泌させるためのシグナル配列及び抗体遺伝子を機能的に連結してもよい。プロモーターとして、lacZプロモーター又はaraBプロモーターを使用してもよい。lacZプロモーターを使用するとき、遺伝子発現はWardらの方法(Nature (1098) 341, 544-6.; FASBE J. (1992) 6, 2422-7.)によって行うことができ、araBプロモーターを使用するときは、遺伝子発現をBetterらの方法(Science (1988) 240, 1041-3.)によって行うことができる。
【0080】
抗体の分泌のためのシグナル配列について、目的の抗体を大腸菌(E.coli)の細胞周辺腔に分泌させることを意図するときには、pelBシグナル配列(Lei, S.P. et al., J. Bacteriol. (1987) 169, 4379-83.)を使用することができる。細胞周辺腔に分泌された抗体が単離された後、抗体は適切な立体構造をとるように再フォールディングされる。
【0081】
ウイルス(例えばSV40、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス(BPV))由来の複製起点などを使用することができる。宿主細胞系において遺伝子コピー数を増加させるために、発現ベクターは選択マーカー遺伝子、例えばアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌(E.coli)キサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子及びジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)遺伝子など、をさらに含んでもよい。
【0082】
本発明に使用される抗体の製造のために、真核細胞系及び原核細胞系を含む発現系のいずれかを使用することができる。真核細胞として、動物(例えば哺乳動物、昆虫、糸状菌及び真菌、酵母)の樹立細胞株などが挙げられる。原核細胞として大腸菌(E.coli)細胞などの細菌細胞などが挙げられる。本発明に使用される抗体は、哺乳動物細胞、例えばCHO、COS、ミエローマ、BHK、Vero及びHeLa細胞などで発現されることが好ましい。
【0083】
次いで、形質転換した宿主細胞をin vitro又はin vivoで培養して目的の抗体を産生させる。宿主細胞の培養は既知の方法のいずれかによって行うことができる。本発明で使用することができる培養培地は、DMEM、MEM、RPMI 1640又はIMDM培地であり得る。培養培地は血清補充物質、例えばウシ胎児血清(FCS)などを含んでもよい。
【0084】
組換え抗体の製造において、上記宿主細胞に加えて、トランスジェニック動物を宿主として使用してもよい。例えば、動物のミルク中に内在的に産生されるタンパク質(例えばβカゼイン)をコードする遺伝子の所定の部位に抗体遺伝子を挿入して融合遺伝子を作製する。抗体遺伝子が導入された融合遺伝子を含むDNA断片を非ヒト動物の胚に注射した後、胚を雌動物に導入する。この胚を有する雌動物はトランスジェニック非ヒト動物を産む。目的の抗体はトランスジェニック非ヒト動物又はその子孫からミルク中に分泌される。抗体含有ミルクの量を増加させるために、適当なホルモンをトランスジェニック動物に投与してもよい(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology (1994) 12, 699-702.)。
【0085】
上記のようにして発現及び製造される抗体を細胞又は宿主動物の身体から単離し、精製してもよい。本発明に使用される抗体の単離及び精製はアフィニティーカラム上で行ってもよい。抗体の単離及び精製に慣用される他の方法を使用してもよく、したがって該方法は特に制限されない。例えば、様々なクロマトグラフィー、ろ過、限外ろ過、塩析及び透析を単独で又は組合せて使用して目的の抗体を単離、精製することができる(Antibodies A Laboratory Manual. Ed. Harlow, David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)。
【0086】
(2)キメラ抗体及びヒト化抗体
本発明において、人工的に改変した組換え抗体を使用してもよく、これらにはキメラ抗体及びヒト化抗体などが挙げられる。これらの改変型抗体は既知の方法のいずれかによって調製することができる。例えば「キメラ抗体」の製造のために開発された技術(Morrison et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci., 81: 6851-5.; Neuberger et al., 1984, Nature, 312: 604-8.; Takeda et al., 1985, Nature, 314: 452-4.)を使用することができる。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する分子、例えばマウスmAbに由来する可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域とを有するもの、例えば「ヒト化抗体」など、である。
【0087】
本発明によるキメラ抗体は、抗体V領域をコードするDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAに連結し、連結産物を発現ベクターに組込み、そして生じた組換え発現ベクターを宿主に導入してキメラ抗体を産生させることによって調製することができる。
【0088】
ヒト化抗体も、非ヒト哺乳動物(例えばマウス)の抗体の相補性決定領域(CDR)がヒト抗体のものにグラフトされた、「改造型(reshaped)ヒト抗体」とも称する。そのようなヒト化抗体を製造するための一般的な遺伝子組換え手法も公知である(例えばEP 125023; WO 96/02576)。
【0089】
具体的に、マウス抗体CDRがフレームワーク領域(FR)を介して連結されたDNA配列が設計され、CDRとFRの末端領域と重複する領域を有するように設計された数種のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたPCR法によって合成される。生じたDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAに連結し、連結産物を発現ベクターに組み込む。生じた組換え発現ベクターを宿主に導入することによって、ヒト化抗体を製造する(例えばWO 96/02576)。
【0090】
CDRを介して連結されるFRは、CDRが機能的な抗原結合部位を形成できるように選択される。必要に応じて、抗体V領域のFR中のアミノ酸は、改造型ヒト抗体のCDRが適切な抗原結合部位を形成できるように置換されてもよい(Sato, K. et al., Cancer Res. (1993) 53, 851-6.)。
【0091】
キメラ抗体は、非ヒト哺乳動物抗体由来のV領域と、ヒト抗体由来のC領域とからなる。ヒト化抗体は非ヒト哺乳動物の抗体由来のCDRとヒト抗体由来のFR及びC領域とからなる。ヒトの身体に対するヒト化抗体の抗原性は低減されるため、ヒト化抗体は臨床用途に有用であり得る。
【0092】
本発明で使用されるキメラ抗体又はヒト化抗体の具体例は、CDRがマウスモノクローナル抗体92-13に由来する抗体、又はCDRがマウスモノクローナル抗体93-22に由来する抗体である。そのようなキメラ抗体及びヒト化抗体を製造する方法は下記に記載される。
【0093】
抗FZD10マウスモノクローナル抗体のV領域をコードするヌクレオチド配列を含むDNAをクローニングするために、mRNAはハイブリドーマから単離することができ、L及びH鎖のV領域における各cDNAは上記の逆転写酵素を用いて合成することができる。cDNAの合成において、L若しくはH鎖C領域にハイブリダイズするOligo-dTプライマー又は他の適当なプライマーを用いてもよい。例えばこれに限定されるものではないが、H鎖V領域について配列番号3に示すヌクレオチド配列を有するCH1(IgG2a)プライマーを、L鎖V領域について配列番号4に示すヌクレオチド配列を有するCL1(κ)プライマーを使用することができる。
【0094】
L及びH鎖両者のcDNAの増幅は、市販のキット(例えばInvitrogen社製のGeneRacerTM kit)を用いて又は5'-RACE法(Frohman, M.A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 8998-9002, 1988.; Belyavsky, A. et al., Nucleic Acids Res., 17, 2919-32, 1989.)を含む既知の方法を用いて行うことができる。
【0095】
マウスモノクローナル抗体92-13のV領域のDNAを増幅するための具体的なプライマーとして、H鎖V領域のための配列番号5及び6に示すヌクレオチド配列を有するプライマー、及びL鎖V領域のための配列番号7及び8に示すヌクレオチド配列を有するプライマーなどが挙げられる。これらのプライマーを用いて、配列番号13に示すアミノ酸配列を有するH鎖V領域をコードするDNAと配列番号21に示すアミノ酸配列を有するL鎖V領域をコードするDNAとを増幅することができる。マウスモノクローナル抗体93-22のV領域のDNAを増幅するための具体的なプライマーとして、H鎖V領域のための配列番号53及び54に示すヌクレオチド配列を有するプライマー、及びL鎖V領域のための配列番号55及び56に示すヌクレオチド配列を有するプライマーなどが挙げられる。これらのプライマーを用いて、配列番号29に示すアミノ酸配列を有するH鎖V領域をコードするDNAと配列番号37に示すアミノ酸配列を有するL鎖V領域をコードするDNAとを増幅することができる。
【0096】
次いで、増幅した産物を慣用の手法に従ってアガロースゲル電気泳動に供し、目的のDNA断片を切り出し、回収し、精製し、ベクターDNAに連結する。
【0097】
取得したDNA及びベクターDNAは、既知のライゲーションキットを用いて連結して組換えベクターを構築することができる。ベクターDNAは既知の方法:J. Sambrook, et al., "Molecular Cloning", Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989.で調製してもよい。ベクターDNAを制限酵素で消化し、所望のDNAのヌクレオチド配列を既知の方法によって又は自動化シーケンサーを用いて決定することができる。
【0098】
マウスモノクローナル抗体のL及びH鎖V領域(以後、抗体のL又はH鎖をマウス抗体については「マウスL又はH鎖」と、ヒト抗体については「ヒトL又はH鎖」と称することがある)をコードするDNA断片がクローニングされた時点で、マウスV領域をコードするDNAとヒト抗体定常領域をコードするDNAとを連結して発現させて、キメラ抗体を産生させる。
【0099】
キメラ抗体を調製するための標準的な方法は、クローニングしたcDNA中に存在するマウスリーダー配列とV領域配列とを、哺乳動物細胞の発現ベクター中に既に存在するヒト抗体C領域をコードする配列と連結することを含む。あるいは、クローニングしたcDNA中に存在するマウスリーダー配列とV領域配列とを、ヒト抗体C領域をコードする配列と連結させた後に、哺乳動物細胞発現ベクターに連結する。
【0100】
ヒト抗体C領域を含むポリペプチドは、ヒト抗体のH又はL鎖C領域のいずれであってもよく、例えば、ヒトH鎖についてはCγ1、Cγ2、Cγ3又はCγ4が、L鎖についてはCλ又はCκなどがある。
【0101】
キメラ抗体を調製するために、2種類の発現ベクターを最初に構築する。すなわち、マウスL鎖V領域とヒトL鎖C領域とを発現制御要素(エンハンサー/プロモーター系など)の制御下でコードするDNAを含む発現ベクターと、マウスH鎖V領域とヒトH鎖C領域とを発現制御要素(エンハンサー/プロモーター系など)の制御下でコードするDNAを含む発現ベクターと、を構築する。その後、哺乳動物細胞(例えばCOS細胞)などの宿主細胞をこれらの発現ベクターで共形質転換し、形質転換細胞をin vitro又はin vivoで培養してキメラ抗体を産生させる(例えばWO91/16928参照)。
【0102】
あるいは、クローニングしたcDNA中に存在するマウスリーダー配列及びマウスL鎖V領域とヒトL鎖C領域とをコードするDNA、並びにマウスリーダー配列及びマウスH鎖V領域とヒトH鎖C領域とをコードするDNAを単一の発現ベクター中に導入し(例えばWO94/11523参照)、該ベクターを宿主細胞を形質転換するために使用し、その後、形質転換された宿主をin vivo又はin vitroで培養して所望のキメラ抗体を産生させる。
【0103】
キメラ抗体のH鎖の発現用ベクターは、マウスH鎖V領域をコードするヌクレオチド配列を含むcDNA(以後、「H鎖V領域のcDNA」とも称する)を、ヒト抗体のH鎖C領域をコードするヌクレオチド配列を含むゲノムDNA(以後、「H鎖C領域のゲノムDNA」とも称する)又は該領域をコードするcDNA(以後、「H鎖C領域のcDNA」と称する)を含む適当な発現ベクター中に導入することによって取得することができる。H鎖C領域として、例えばCγ1、Cγ2、Cγ3又はCγ4領域などが挙げられる。
【0104】
H鎖C領域をコードするゲノムDNAを有する発現ベクター、特にCγ1領域をコードするゲノムDNAを有する発現ベクターには、例えばHEF-PMh-gγ1(WO92/19759)及びDHER-INCREMENT E-RVh-PM1-f (WO92/19759)が含まれる。あるいは、ヒト定常領域ライブラリーは、ヒトPBMC(末梢血単核細胞)からのcDNAを用いて既に記載されるように(Liu, A.Y. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.84, 3439-43, 1987; Reff, M.E. et al., Blood, Vol.83, No.2, 435-45, 1994)調製することができる。
【0105】
マウスH鎖V領域をコードするcDNAをこれらの発現ベクターに挿入するとき、適当なヌクレオチド配列をPCR法によって該cDNAに導入することができる。例えば、前記cDNAがその5’末端に適当な制限酵素の認識配列を有し、かつその開始コドンの直前にKozakコンセンサス配列を有するように設計されたPCRプライマーを用いてPCRを行うことで転写効率を改善することができ、また前記cDNAがその3’末端に適当な制限酵素の認識配列を有し、かつゲノムDNAの一次転写産物の適切なスプライシングによりmRNAを生じさせるためのスプライスドナー部位を有するように設計されたPCRプライマーを用いることで、これらの適当なヌクレオチド配列を発現ベクター中に導入することができる。
【0106】
こうして構築されたマウスH鎖V領域をコードするcDNAを適当な制限酵素で処理した後、これを前記発現ベクターに挿入して、H鎖C領域(Cγ1領域)をコードするゲノムDNAを含むキメラH鎖発現ベクターを構築する。
【0107】
こうして構築されたマウスH鎖V領域をコードするcDNAを適当な制限酵素で処理し、前記H鎖C領域Cγ1をコードするcDNAに連結し、そしてpQCXIH (Clontech)などの発現ベクター中に挿入して、キメラH鎖をコードするcDNAを含む発現ベクターを構築する。
【0108】
キメラ抗体のL鎖の発現用ベクターは、マウスL鎖V領域をコードするcDNAとヒト抗体のL鎖C領域をコードするゲノムDNA又はcDNAとを連結し、適当な発現ベクター中に導入することによって取得することができる。L鎖C領域として、例えばκ鎖及びλ鎖などが挙げられる。
【0109】
マウスL鎖V領域をコードするcDNAを含む発現ベクターを構築するとき、認識配列又はKozakコンセンサス配列などの適当なヌクレオチド配列は、PCR法によって前記発現ベクター中に導入することができる。
【0110】
ヒトLλ鎖C領域をコードするcDNAの全ヌクレオチド配列は、DNA合成機によって合成することができ、PCR法によって構築することができる。ヒトLλ鎖C領域は、少なくとも4種の異なるアイソタイプを有することが知られ、各アイソタイプは発現ベクターを構築するために使用することができる。
【0111】
構築されたヒトLλ鎖C領域をコードするcDNAと、マウスL鎖V領域をコードする上記のように構築されたcDNAとを適当な制限酵素部位間で連結し、pQCXIH(Clontech)などの発現ベクター中に挿入することで、キメラ抗体のLλ鎖をコードするcDNAを含む発現ベクターを構築することができる。
【0112】
マウスL鎖V領域をコードするDNAに連結されるべきヒトLκ鎖C領域をコードするDNAは、例えばゲノムDNAを含むHEF-PM1k-gkから構築することができる(WO92/19759参照)。あるいは、ヒト定常領域ライブラリーはヒトPBMC(末梢血単核細胞)からのcDNAを既に記載されるように(Liu, A.Y. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.84, 3439-43, 1987; Reff, M.E. et al., Blood, Vol.83, No.2, 435-45, 1994)用いて調製することができる。
【0113】
適当な制限酵素の認識配列は、PCR法により、Lκ鎖C領域をコードするDNAの5’及び3’末端に導入することができ、上記のように構築されたマウスL鎖V領域をコードするDNA及びLκ鎖C領域をコードするDNAを互いに連結して、pQCXIH (Clontech)などの発現ベクター中に挿入することで、キメラ抗体のLκ鎖をコードするcDNAを含む発現ベクターを構築することができる。
【0114】
マウスモノクローナル抗体のCDRがヒト抗体にグラフトされたヒト化抗体を作製するために、マウスモノクローナル抗体のFRとヒト抗体のFRとの間に高い相同性が存在することが望ましい。したがって、マウス抗FZD10モノクローナル抗体のH及びL鎖のV領域と、Protein Data Bankを用いてその構造が明らかにされている既知の全ての抗体のV領域とを比較する。さらに、これらを同時に、抗体FRの長さ、アミノ酸の相同性などに基づいて、Kabatらにより分類されたヒト抗体サブグループ(HSG:ヒトサブグループ)と比較する(Kabat, E.A. et al, US Dep, Health and Human Services, US Government Printing Offices, 1991)。
【0115】
ヒト化抗体のV領域をコードするDNAを設計するための第1ステップは、設計の基礎としてヒト抗体V領域を選択することである。例えば、マウス抗体V領域のFRと80%を超える相同性を有するヒト抗体V領域のFRは、ヒト化抗体の製造に使用することができる。
【0116】
ヒト化抗体において、該抗体のC領域及びV領域のフレームワーク(FR)領域はヒトに由来し、V領域の相補性決定領域(CDR)はマウスに由来する。ヒト化抗体のV領域を含むポリペプチドは、ヒト抗体のDNA断片を鋳型として入手可能である限り、PCR法によるCDRグラフティングと称する様式で製造することができる。「CDRグラフティング」とは、マウス由来のCDRをコードするDNA断片を作製し、鋳型としてのヒト抗体のCDRと置き換える方法をいう。
【0117】
鋳型として使用されるヒト抗体のDNA断片が入手可能でない場合、データベースに記録されたヌクレオチド配列はDNA合成機で合成することができ、ヒト化抗体のV領域のDNAはPCR法により作製することができる。さらに、アミノ酸配列のみがデータベースに登録されているときには、完全ヌクレオチド配列は、Kabat, E.A.ら(US Dep. Health and Human Services, US Government Printing Offices, 1991)によって報告されている抗体におけるコドンの選択性に関する知識に基づいてアミノ酸配列から推定することができる。このヌクレオチド配列をDNA合成機で合成し、ヒト化抗体V領域のDNAをPCR法によって調製し、適当な宿主に導入した後、これを発現させて所望のポリペプチドを製造することができる。
【0118】
ヒト抗体のDNA断片が鋳型として入手可能であるときの、PCR法によるCDRグラフティングの一般的手順は以下に記載される。
【0119】
第1に、各CDRに対応するマウス由来のDNA断片を合成する。CDR1〜3は、予めクローニングしたマウスH及びL鎖V領域のヌクレオチド配列に基づいて合成する。例えば、ヒト化抗体がマウスモノクローナル抗体92-13に基づいて製造されるとき、H鎖V領域のCDR配列は配列番号15(VH CDR1)、17(VH CDR2)及び19(VH CDR3)に示すアミノ酸配列であることができ、L鎖V領域のCDR配列は配列番号23(VL CDR1)、25(VL CDR2)及び27(VL CDR3)に示すアミノ酸配列であることができる。ヒト化抗体がマウスモノクローナル抗体93-22に基づいて製造されるとき、H鎖V領域のCDR配列は配列番号31(VH CDR1)、33(VH CDR2)及び35(VH CDR3)に示すアミノ酸配列であることができ、L鎖V領域のCDR配列は配列番号39(VL CDR1)、41(VL CDR2)及び43(VL CDR3)に示すアミノ酸配列であることができる。
【0120】
ヒト化抗体のH鎖V領域のDNAは、任意のヒト抗体H鎖C領域、例えばヒトH鎖Cγ1領域のDNAに連結することができる。上述したように、H鎖V領域のDNAは適当な制限酵素で処理して、ヒトH鎖C領域を発現制御要素(エンハンサー/プロモーター系など)下でコードするDNAと連結して、ヒト化H鎖V領域及びヒトH鎖C領域のDNAを含む発現ベクターを作製することができる。
【0121】
ヒト化抗体のL鎖V領域のDNAは、任意のヒト抗体のL鎖C領域、例えばヒトL鎖Cλ領域のDNAと連結することができる。L鎖V領域のDNAは適当な制限酵素で処理し、ヒトLλ鎖C領域を発現制御要素(エンハンサー/プロモーター系など)下でコードするDNAと連結して、ヒト化L鎖V領域とヒトLλ鎖C領域とをコードするDNAを含む発現ベクターを作製することができる。
【0122】
ヒト化抗体のH鎖V領域とヒトH鎖C領域とをコードするDNA、及びヒト化L鎖V領域とヒトL鎖C領域とをコードするDNAを単一の発現ベクター(WO94/11523に開示されるものなど)に導入することができ、該ベクターは宿主細胞を形質転換するために使用することができ、形質転換された宿主をin vivo又はin vitroで培養して、所望のヒト化抗体を産生させることができる。
【0123】
キメラ又はヒト化抗体を製造するために、上述した2種類の発現ベクターを調製するものとする。したがって、キメラ抗体に関し、マウスH鎖V領域とヒトH鎖C領域とを発現制御要素(エンハンサー/プロモーターなど)の制御下でコードするDNAを含む発現ベクターと、マウスL鎖V領域とヒトL鎖C領域とを発現制御要素の制御下でコードするDNAを含む発現ベクターとを構築する。ヒト化抗体に関し、ヒト化H鎖V領域とヒトH鎖C領域とを発現制御要素の制御下でコードするDNAを含む発現ベクターと、ヒト化L鎖V領域とヒトL鎖C領域とを発現制御要素の存在下でコードするDNAを含む発現ベクターとを構築する。
【0124】
次いで、哺乳動物細胞(例えばCOS細胞)などの宿主細胞をこれらの発現ベクターで共形質転換し、生じた形質転換細胞をin vitro又はin vivoで培養してキメラ又はヒト化抗体を産生させることができる(例えばWO91/16928参照)。
【0125】
あるいは、H鎖V及びC領域をコードするDNAとL鎖V及びC領域をコードするDNAとを単一のベクターに連結し、適当な宿主細胞に形質転換し、抗体を製造してもよい。したがって、キメラ抗体の発現において、クローニングしたcDNA中に存在するマウスリーダー配列、マウスH鎖V領域及びヒトH鎖C領域をコードするDNA、並びにマウスリーダー配列、マウスL鎖V領域及びヒトL鎖C領域をコードするDNAは、単一の発現ベクター(例えばWO94/11523に開示されるものなど)に導入することができる。ヒト化抗体の発現において、ヒト化H鎖V領域とヒトH鎖C領域とをコードするDNA、及びヒト化L鎖V領域とヒトL鎖C領域とをコードするDNAを単一の発現ベクター(例えばWO94/11523に開示されるものなど)に導入することができる。そのようなベクターは宿主細胞を形質転換するために使用され、形質転換された宿主はin vivo又はin vitroで培養されて目的のキメラ又はヒト化抗体を産生する。
【0126】
いずれの発現系を本発明のFZD10タンパク質に対するキメラ又はヒト化抗体を製造するために使用してもよい。例えば、真核細胞として、樹立された哺乳動物細胞株などの動物細胞、真菌細胞及び酵母細胞などが挙げられ;原核細胞として大腸菌(Escherichia coli)などの細菌細胞などが挙げられる。好ましくは、本発明のキメラ又はヒト化抗体はCOS又はCHO細胞などの哺乳動物細胞で発現される。
【0127】
哺乳動物細胞中での発現に有用な慣用のプロモーターのいずれを使用してもよい。例えばヒトサイトメガロウイルス(HCMV)前初期プロモーターを使用することが好ましい。さらに、哺乳動物細胞中での遺伝子発現のためのプロモーターとして、ウイルスプロモーター(例えばレトロウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス及びサルウイルス(SV)40のものなど)、哺乳動物細胞由来のプロモーター(例えばヒトポリペプチド鎖伸長因子1α(HEF-1α)のものなど)などでもよい。例えば、SV40プロモーターはMulliganらの方法(Nature, 277, 108-14, 1979)に従って容易に使用することができる。Mizushima, S.らの方法(Nucleic Acids Research, 18, 5322, 1990)はHEF-1αプロモーターと共に容易に使用することができる。
【0128】
複製起点として、SV40、ポリオーマウイルス、アデノウイルス又はウシパピローマウイルス(BPV)由来のものなどが挙げられる。さらに、発現ベクターはホスホトランスフェラーゼAPH(3’)II又はI(neo)、チミジンキナーゼ(TK)、大腸菌(E.coli)キサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)又はジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)の遺伝子を、宿主細胞系における遺伝子コピー数の増加のための選択マーカーとして含んでもよい。
【0129】
こうしてキメラ又はヒト化抗体をコードするDNAで形質転換された形質転換体を培養することにより製造された目的のキメラ又はヒト化抗体は、細胞から単離し、その後、精製してもよい。
【0130】
目的のキメラ又はヒト化抗体の単離及び精製は、プロテインAアガロースカラムを用いることによって行うことができるが、タンパク質の単離及び精製に使用される方法のいずれによって実施してもよく、したがって限定されない。例えば、クロマトグラフィー、限外ろ過、塩析及び透析を場合により選択して又は組合せてキメラ又はヒト化抗体を単離及び精製してもよい。
【0131】
キメラ抗体又はヒト化抗体を単離した後、生じた精製抗体の濃度をELISAによって測定することができる。
【0132】
キメラ抗体又はヒト化抗体の抗原結合活性又は正常細胞に対する結合活性を含む他の活性の測定は、既知の方法のいずれかによって行うことができる(Antibodies A Laboratory Manual, Ed. Harlow, David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)。
【0133】
抗体の抗原結合活性の測定のための方法として、ELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)、EIA(酵素イムノアッセイ)、RIA(ラジオイムノアッセイ)又は蛍光アッセイなどの技術を使用することができる。
【0134】
(3)抗体フラグメント及び改変型抗体
本発明に使用される抗体は、FZD10タンパク質に結合しその活性を阻害できる限り、その任意のフラグメント又は改変型抗体であってもよい。例えば、抗体のフラグメントとして、Fab、F(ab')2、Fv、又は適当なリンカーを介して連結されたH鎖Fvフラグメント若しくはL鎖Fvフラグメントからなる一本鎖Fv(scFv)などがある。具体的に、そのような抗体フラグメントは抗体を酵素(例えばパパイン、ペプシン)で抗体フラグメントに切断することによって、又は抗体フラグメントをコードする遺伝子を構築し、該遺伝子を発現ベクターに挿入し、生じた組換え発現ベクターを適当な宿主に導入して、抗体フラグメントを発現させることによって製造することができる(例えばCo, M. S., et al., J. Immunol. (1994), 152, 2968-76; Better, M. & Horwitz, A.H., Methods in Enzymology (1989), 178, 476-96, Academic Press, Inc.; Pluckthun, A. & Skerra, A., Methods in Enzymology (1989) 178, 497-515, Academic Press, Inc.; Lamoyi, E., Methods in Enzymology (1989) 121, 652-63; Rousseaux, J. et al., Methods in Enzymology (1989) 121, 663-9;及びBird, R.E. et al., Trends Biotechnol. (1991) 9, 132-7参照)。あるいは、Fab発現ライブラリーを構築して(Huse et al., 1989, Science, 246: 1275-81)所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ容易な同定を可能にしてもよい。
【0135】
scFvはリンカー、好ましくはペプチドリンカーを介してH鎖V領域をL鎖V領域に連結することによって製造することができる(Huston, J. S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1988) 85, 5879-83)。scFv中のH鎖V領域及びL鎖V領域は本明細書に記載の抗体のいずれか1つから誘導することができる。V領域に結合するペプチドリンカーは、例えば12-19アミノ酸残基の任意の一本鎖ペプチドであり得る。
【0136】
改変型抗体として、例えば任意の分子(例えばポリエチレングリコール)とコンジュゲートした抗FZD10抗体又はそのフラグメントを使用してもよい。そのような改変型抗体も本発明の「抗体」に包含される。改変型抗体は、抗体の化学的改変によって調製することができる。この目的に適した化学的改変技術は当該技術分野で既に確立されている。
【0137】
2.治療用途
下記に、本発明の抗体を用いてFZD10関連疾患を治療及び/又は予防するための方法及び医薬組成物を記載する。治療の結果は、少なくとも治療した被験体において健康的利益を生じることであり、腫瘍の場合には、これに限定されるものではないが、腫瘍の寛解、腫瘍の症状の緩和、及び腫瘍の転移拡散の制御などが挙げられる。
【0138】
具体的に、本発明による、被験体のFZD10関連疾患を治療及び/又は予防する方法は、上記抗体又はフラグメントをそれを必要とする被験体に投与することを含む。
【0139】
本発明において用語「被験体」とは、FZD10関連疾患に罹患している被験体、及びFZD10関連疾患に罹患している疑いのある被験体をいう。本発明における被験体は、哺乳動物及び鳥類動物を含む動物であり得る。例えば哺乳動物としてヒト、マウス、ラット、サル、ウサギ及びイヌなどを挙げることができる。
【0140】
本発明における用語「FZD10関連疾患」とは、FZD10タンパク質の過剰発現に関連する疾患をいう。具体的に、FZD10関連疾患として、これに限定されるものではないが滑膜肉腫(SS)、直腸結腸癌、胃癌、慢性骨髄性白血病(CML)及び急性骨髄性白血病(AML)などが挙げられる。
【0141】
本明細書に記載される抗体又はそのフラグメントはFZD10タンパク質に特異的に結合することができ、そして抗体又はそのフラグメントが被験体に投与されるとき、被験体中のFZD10タンパク質に結合してFZD10タンパク質の活性を阻害することができる。あるいは、この抗体又はそのフラグメントを治療成分(therapeutic moiety)とコンジュゲートして被験体に投与できるとき、被験体中のFZD10タンパク質を発現する領域(すなわち罹患領域)に送達され、治療成分が罹患領域に選択的に送達され、そこで作用することができる。そのような治療成分は、FZD10関連疾患に対する治療効果を有することについて知られているか又はそのように開発されるであろう治療剤のいずれかであることができ、これに限定されるものではないが放射性同位体標識及び化学療法剤などが挙げられる。治療剤として使用することができる放射性同位体標識は、β線エネルギー及びその放出効率、γ線放出の存在又は不在、そのエネルギー及び放出効率、物理的半減期、並びに標識化手法を含む様々な要因に応じて選択することができる。一般的にイットリウム(90Yなど)及びヨウ素(125I及び131Iなど)に基づく放射性同位体標識を使用することができる。化学療法剤は、FZD10関連疾患を治療することが知られる又は治療するために開発される任意の物質であることができ、これに限定されるものではないが、メトトレキサート、タキソール、メルカプトプリン、チオグアニン、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビシン、パクリタキセル及びドセタキセルなどが挙げられる。本明細書に記載される抗体又はそのフラグメントは、FZD10タンパク質に選択的に結合することができ、かつ正常細胞には結合しないため、抗体若しくはそのフラグメント、又は放射性同位体若しくは化学療法剤によって引き起こされる副作用を効果的に回避することができ、したがって治療力価は高いものであり得る。
【0142】
本明細書に記載される抗体又はそのフラグメントは、FZD10関連疾患を治療又は予防するのに有効な用量で被験体に投与することができる。有効な用量とは、治療される被験体において健康的利益を生じるのに十分な抗体又はそのフラグメントの量を指す。医薬組成物が本発明の抗体を含むときに採用することができる投与用製剤及び投与方法は、以下に記載される。
【0143】
本発明に従って使用するための医薬組成物は、1以上の薬学的に許容し得る担体又は賦形剤を用いて、慣用の様式で製剤化することができる。
【0144】
抗体又はそのフラグメントは注射、例えばボーラス注射又は持続注入による、非経口(すなわち、静脈、筋内)投与用に製剤化することができる。注射用製剤は、保存剤が添加される、単回投与剤形、例えばアンプルで又は複数回容器で、提供することができる。この組成物は懸濁液、溶液、又は油性若しくは水性ビヒクル中の乳液などの形態を採ることができ、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤化用物質を含むことができる。あるいは抗体は、使用前に適当なビヒクル、例えば滅菌のパイロゲン無含水で構成するために、凍結乾燥粉末の形態であることができる。
【0145】
抗体若しくはフラグメント、又はこれとコンジュゲートされた治療成分の毒性及び治療効果は、細胞培養物又は実験動物において、例えばLD50(集団の50%が致死である用量)及びED50(集団の50%において治療上有効な用量)を測定するための、標準的な薬学的手法によって測定することができる。毒性及び治療効果との間の用量比は治療指数であり、比LD/EDとして表現することができる。
【0146】
大きな治療指数を示す抗体又は治療成分が好ましい。毒性の副作用を示す抗体又は成分を使用することができるが、非病変細胞への潜在的な損傷を最小化することで副作用を低減するために、病変細胞の部位にそのような抗体又は部分を標的化する送達系を設計することに留意すべきである。
【0147】
細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトで使用する用量範囲を公式化する上で使用することができる。そのような抗体の用量は、毒性がほとんど又は全くないED50を含む循環血漿濃度の範囲内であることが好ましい。この用量は、採用される剤形、利用される投与経路、並びにコンジュゲートされる治療成分のタイプ及び量に応じてこの範囲で変化することができる。本発明の方法で使用される抗体のいずれかについて、有効な用量は最初に細胞培養アッセイから確立することができる。単回用量は、細胞培養で測定されるIC50(すなわち、症状の50%阻害(half maximal inhibition)を達成する試験抗体の濃度)を含む循環血漿濃度の範囲を達成するために、動物モデルで公式化することができる。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0148】
被験体の症状及び年齢並びに/又は投与経路に応じて、当業者は本発明の医薬組成物の適当な用量を選択することができる。例えば、本発明の医薬組成物は、本発明の抗体が1日に、被験体の体重1kg当たり約3〜約15μg、好ましくは被験体の体重1kg当たり約10〜約15μg、の量で被験体に投与されるような量で投与される。投与間隔及び投与時間は、被験体の症状及び年齢、投与経路、並びに医薬組成物に対する反応を考慮して選択することができる。例えば、医薬組成物は1日に1回から5回、好ましくは1回、5〜10日間被験体に投与することができる。
【0149】
医薬組成物は、全身投与又は局所投与であることができる。病変部位に活性成分を送達するために標的化送達様式で投与することが好ましい。
【0150】
特定の実施形態では、本発明の方法及び組成物は、FZD10関連疾患の治療又は予防のために、非限定的にメトトレキサート、タキソール、メルカプトプリン、チオグアニン、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル及びドセタキセルを含む化学療法剤の1種又は組合せと共に使用される。
【0151】
放射線療法に関し、治療されるFZD10関連疾患のタイプに応じていずれの放射線療法プロトコールを使用することもできる。例えば、これに限定されるものではないが、X線照射を施すことができる。ガンマ線放射性の放射性同位体(ラジウム、コバルト及び他の元素の放射性同位体など)を組織に曝露するために施してもよい。
【0152】
他の実施形態において、化学療法又は放射線療法は、本発明の抗体を含む方法及び組成物の使用後、好ましくは少なくとも1時間、5時間、12時間、1日、1週間、1ヶ月、そしてより好ましくは数ヶ月(例えば最大3ヶ月)の時点で施される。本発明の方法及び組成物を使用する治療の前に、同時に又は後に施される化学療法又は放射線療法は、当該分野で公知の方法のいずれかによって施すことができる。
【0153】
3.診断及び予後予測用途
FZD10タンパク質又はそのフラグメントに対する抗体は、本明細書に記載されるように、診断及び予後予測として使用することができる。そのような診断方法は、FZD10関連疾患の存在又は不在、及び該疾患を有するリスクを検出するための使用することができる。本発明のFZD10関連疾患の診断及び/又は予後予測方法は、本発明の抗体又はそのフラグメントを使用してサンプル中の該疾患に由来するFZD10タンパク質を免疫学的に検出又は測定することを含んでいる。具体的に、本発明による、被験体においてFZD10関連疾患又は該疾患を発症する素因を診断又は予後予測する方法は、
(a) 被験体由来のサンプルとFZD10タンパク質又はそのフラグメントに対する抗体とを接触させるステップ;
(b) サンプル中のFZD10タンパク質を検出するステップ;及び
(c) 対照と比較したFZD10タンパク質の相対存在量に基づいて、被験体が該疾患に罹患しているか又は該疾患を発症するリスクを有するか否かを判定するステップ、を含んでいる。
【0154】
本発明の診断及び/又は予後予測方法は、これが抗体を用いるアッセイ(すなわち免疫学的アッセイ)である限り、いずれの手法に基づいて行うこともできる。したがって、本発明の抗体又はそのフラグメントを前記アッセイで使用する抗体として用いてFZD10タンパク質を検出することができる。例えば、FZD10タンパク質は、免疫組織染色、酵素イムノアッセイ(ELISA及びEIA)などのイムノアッセイ、免疫蛍光アッセイ、ラジオイムノアッセイ(RIA)又はウエスタンブロッティングを用いることによって検出することができる。
【0155】
本発明のFZD10関連疾患の診断及び/又は予後予測方法で試験されるべきサンプルは、FZD10関連疾患に由来するFZD10タンパク質を含む可能性のある生物学的サンプルであれば特に制限されない。サンプルの例として、細胞又は器官の抽出物、組織切片、並びに血液、血清、血漿、リンパ球培養上清、尿、脊髄液、唾液、汗及び腹水などが挙げられる。サンプル、例えば腫瘍組織、腫瘍生検、及び転移組織などのサンプルにおいて、本発明の抗体又はそのフラグメントを用いることによって測定されるFZD10タンパク質の存在量は、FZD10関連疾患の指数として特に有用である。
【0156】
例えば、本明細書に記載される抗体及びそのフラグメントは、FZD10タンパク質を定量的又は定性的に検出するために使用することができる。本発明の抗体(又はそのフラグメント)は、免疫蛍光又は免疫電子顕微鏡の場合のように、例えばFZD10タンパク質のin situ検出のために、さらに組織学的に使用することができる。in situ検出は、被験体から組織学的サンプル、例えばパラフィン包埋した組織切片(外科標本など)、を取り出し、これに標識した本発明の抗体をアプライすることによって行うことができる。抗体(又はそのフラグメント)は、好ましくは、サンプルに標識化抗体(又はそのフラグメント)を重層することによってアプライする。本発明の使用に際し、当業者は広範な組織学的方法(染色手法など)はいずれもそのようなin situ検出を行うために改変することができることを容易に認識するだろう。
【0157】
FZD10タンパク質のためのイムノアッセイは、典型的には、調査する被験体由来のサンプル(生体液、組織抽出物、新鮮なまま回収した細胞、細胞培養でインキュベートされた細胞の溶解物など)を、検出可能に標識された本発明の抗体の存在下でインキュベートすること、及び当該分野で周知の多くの技術のいずれかによって、結合した抗体を検出すること、を含んでいる。
【0158】
サンプルは、ニトロセルロースなどの固相支持体若しくは担体、又は細胞、細胞粒子若しくは可溶性タンパク質を固定化することができる他の固体支持体に接触させかつこれに固定化させることができる。次いで、支持体を適切なバッファーで洗浄し、検出可能に標識されたFZD10に対する抗体で処理することができる。固相支持体は、その後、バッファーで二回洗浄し、非結合の抗体を除去することができる。その後、固体支持体に結合した標識の量は、慣用の手法で検出することができる。
【0159】
用語「固相支持体又は担体」とは、抗原又は抗体を結合することができる任意の支持体をいう。当業者は、抗体又は抗原を結合させるのに適当な多くの担体を知っているか、又は慣用の実験によってこれを確認することができるだろう。
【0160】
所与の多くの抗FZD10抗体の結合活性は、周知の方法に従って測定することができる。当業者は、慣用の実験を使用することによって各測定に効果的な及び最適なアッセイ条件を決定することができるだろう。
【0161】
本発明の抗体(又はそのフラグメント)とFZD10関連疾患の病変部位に由来するFZD10タンパク質との反応をサンプル中で容易に検出するために、この反応は本発明の抗体を標識することによって直接的に、又は標識した二次抗体を使用することによって間接的に検出することができる。ELISAのサンドイッチアッセイや競合アッセイなど、後者の間接的な検出手法は、よりよい感度のために本発明の方法で使用することが好ましい。
【0162】
本発明で使用するための標識の例は以下の通りである。ペルオキシダーゼ(POD)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アミラーゼ、及びビオチン-アビジン複合体を酵素イムノアッセイで使用することができる。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、置換型ローダミンイソチオシアネート、ジクロロトリアジンイソチオシアネート及びAlexa488を免疫蛍光アッセイで使用することができる。トリチウム、ヨウ素(125I及び131Iなど)、及びインジウム(111Inなど)をラジオイムノアッセイで使用することができる。NADH-FMNH2-ルシフェラーゼアッセイ、ルミノール-過酸化水素-POD系、アクリジニウムエステル、及びジオキセタン化合物を免疫蛍光アッセイで使用することができる。
【0163】
標識は慣用の手法に従って抗体に結合させることができる。例えば、標識は、酵素イムノアッセイにおいてグルタルアルデヒド法、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法、又は過ヨウ素酸塩法によって、及びラジオイムノアッセイにおいてクロラミンT法またはBolton-Hunter法によって、抗体に結合させることができる。
【0164】
アッセイは既知の手法(Ausubel, F.M. et al. Eds., Short Protocols in Molecular Biology, Chapter 11 "Immunology" John Wiley & Sons, Inc. 1995)に従って行うことができる。
【0165】
例えば、本発明の抗体を上記の標識で直接的に標識化するとき、サンプルを標識化抗体と接触させることで、FZD10タンパク質と前記抗体との複合体を形成させる。次いで、非結合の抗体を分離し、サンプル中のFZD10タンパク質のレベルを、結合した標識化抗体の量、又は非結合の標識化抗体の量に基づいて測定することができる。
【0166】
標識した二次抗体を使用するとき、本発明の抗体を一回目の反応でサンプルと反応させ、生じた複合体を二回目の反応において標識化二次抗体と反応させる。一回目の反応及び二回目の反応は逆の順序で同時に(いくらかの時間間隔をとる)行うことができる。一回目の反応及び二回目の反応は[FZD10タンパク質]-[本発明の抗体]-[標識化二次抗体]の複合体、又は[本発明の抗体]-[FZD10タンパク質]-[標識化二次抗体]の複合体を産出する。次いで、未結合の標識化二次抗体を分離し、サンプル中のFZD10タンパク質のレベルを、結合した標識化二次抗体の存在量、又は未結合の標識化二次抗体の存在量に基づいて測定することができる。
【0167】
他の実施形態によれば、本発明の抗体は放射性同位体又は蛍光標識で標識され、標識化抗体は被験体に非経口投与される。こうして、FZD10関連疾患の原発性腫瘍及びこれに関連する転移腫瘍の局在を、非侵襲的な様式で迅速に見出すことができる。そのような診断方法は腫瘍のin vivoイメージングとして知られ、当業者はその手法を容易に理解することができる。標識化抗体は、好ましくは静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射又は皮下注射などの非経口経路により、全身又は局所投与することができる。
【0168】
本発明の抗体は、上記の通りFZD10タンパク質と特異的に反応するため、FZD10関連疾患の診断及び/又は予後予測のためのキットで使用することができる。
【0169】
本発明の診断及び/又は予後予測のためのキットは、本明細書に記載の抗体又はそのフラグメントを含んでいる。FZD10関連疾患に罹患している疑いのある被験体からのサンプル中のFZD10タンパク質を本発明の診断及び/又は予後予測のためのキットを用いて検出することにより、被験体がFZD10関連疾患に罹患しているか否かを迅速かつ容易に確認することができる。そのような免疫学的反応を使用する疾患の診断及び/又は予後予測のためのキットは広く知られており、当業者は抗体以外の適切な成分を容易に選択することができる。本発明の診断及び/又は予後予測のためのキットは、これがイムノアッセイの手段である限り、いずれの手段で使用することもできる。
【実施例】
【0170】
実施例:
本発明は以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
以下の実施例で使用した細胞株及び組織標本は下記に記載されるように調製した。具体的に、滑膜肉腫(HS-SY-2、YaFuSS、1973/99、Fuji及びSYO-1)、大腸癌(LoVo、SNU-C4及びSNU-C5)に由来する細胞株、HEK293及びCOS7細胞を、10%ウシ胎児血清及び1%抗生物質/抗真菌溶液を補充した適当な培地中、単層で増殖させ、5%CO2を含む空気下37℃で維持した。原発性滑膜肉腫(SS)サンプルは、インフォームドコンセント後に取得し、切除直後に液体窒素中で瞬間冷凍し、-80℃で保存した。
【0171】
実施例1
抗FZD10モノクローナル抗体の作製
(1)細胞免疫化によるモノクローナル抗体の作製
4週齢の雌Balb/cマウスの足裏に、2x107個のpCAGGS/neo-FZD10-myc/His (Medical and Biological Laboratories, Nagoya, Japan)でトランスフェクトした2x107個のCOS-7細胞を免疫することによって、マウス抗FZD10モノクローナル抗体(Mab)を作製した。pCAGGS/neo-FZD10-myc/Hisの構築は既に報告されており(Nagayama, S., et al. (2005). Oncogene, 24, 6201-12.)、これはFZD10 cDNAのコード配列全体、及びそのC末端のMyc及びHisエピトープタグを発現する。マウスは細胞免疫化の1日前にフロイントの完全アジュバント(Mitsubishi Kagaku Iatron, Inc., Tokyo, Japan)で免疫されていた。免疫化マウス由来の脾細胞を回収し、ミエローマ細胞株と融合させた。ハイブリドーマをサブクローニングし、FZD10の細胞外ドメイン(FZD10のアミノ酸残基1-225)と結合する免疫グロブリンを分泌する能力について細胞ELISAによってアッセイした。細胞ELISAに関し、FZD10-myc/His(FZD10 cDNAの全コード配列、並びにそのC末端のMyc及びHisエピトープタグ)を発現するCOS-7細胞を96ウェルプレートに播種した。その後、ハイブリドーマから取得した50μlの培養上清を前記プレートに添加し、室温で30分間インキュベートした。細胞を洗浄した後、ヤギ抗マウスIgG-POD(Medical and Biological Laboratories, Nagoya, Japan)を1:10000希釈で添加し、室温で30分間インキュベートした。結合した抗体はOD450-620nmで検出した。陽性クローンを特異的結合活性についてさらに分析した。これらのクローンは、クローン39-2及び39-10(WO2005/004912に開示され、5F2と称する)、並びに92-13及び93-22を含んでいる。全てのMabはIgG2aアイソタイプ(IsoStrip Mouse Monoclonal antibody isotyping kit (Roche)を用いて検出される)であった。Mabはさらなる特徴付けのためにプロテインG-セファロースでアフィニティー精製した。
【0172】
マウスモノクローナル抗体93-22を産生するハイブリドーマクローン93-22は、Shuichi Nakatsuruにより、産業技術総合研究所(AIST、日本国〒305-8566 茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)のIPOD国際特許生物寄託センターに、2006年6月14日付で寄託番号FERM BP-10620として国際寄託された。また、マウスモノクローナル抗体92-13を産生するハイブリドーマクローン92-13は、Shuichi Nakatsuruによって、AISTのIPOD国際特許生物寄託センターに、2006年6月28日付けで、寄託番号FERM BP-10628として国際寄託された。
【0173】
(2)放射性核種による抗体の標識化
125I標識化Mabは、クロラミンT法(Arano, Y., et al. (1999). Cancer Res, 59, 128-34.)によって調製した。740kBq/2μlのNa125Iを100μlの0.3Mリン酸ナトリウムバッファー中10μgのMabに添加した。3μlの0.3Mリン酸ナトリウムバッファー中1μgのクロラミンTをさらに添加し、室温で5分間インキュベートした。標識化抗体をBiospin column 6 (Bio-Rad)用いて精製した。
【0174】
111InでMabを標識化するために、100μlの50mMホウ酸バッファー中1mgのMabを、イソチオシアネートベンジルジエチレントリアミン五酢酸(SCN-BZ-DTPA; Macrocyclics)とジメチルホルムアミド中、1:3のモル比でコンジュゲートさせた。37℃で20時間インキュベートした後、MabコンジュゲートをBiospin column 6を用いて精製した。40μlの111Inを60μlの0.25M酢酸バッファー(pH5.5)中でインキュベートし、10μg/μlのMab-DTPAコンジュゲート中に室温で1時間導入した。標識化抗体はBiospin column 6を用いて精製した。
【0175】
90Yをコンジュゲートした92-13を作製するために、92-13をDTPAのリジン残基にコンジュゲートさせた。DTPA-92-13はイットリウムで比活性100μCi/mgまで標識化した。90Y-DTPA-92-13の免疫活性は約70%であった。
【0176】
(3)Alexa647標識化Mabの合成
Alexa-Fluoro647によるMabの標識化は、Alexa647 Monoclonal Antibody Labeling Kit (Molecular Probes, Eugene, Oregon)を製造説明書に従って用いて実施した。Alexa647反応染料はタンパク質の第1級アミンに反応するスクシンイミジルエステル部分を有し、生じたMab-染料コンジュゲートはサイズ排除カラムによって精製した。
【0177】
実施例2
抗FZD10モノクローナル抗体の結合活性
本発明者らは、マウスモノクローナル抗体の結合親和性の評価に2種類の方法、すなわち蛍光染料を用いたフローサイトメトリー分析と125Iを用いた放射能測定、とを適用した。
【0178】
(1)フローサイトメトリー(FACS)分析
4種の抗体39-2及び39-10(WO2005/004912に開示される)、92-13並びに93-22の細胞結合親和性を調査するために、本発明者らはフローサイトメトリー(FACS)実験を行った。間接的蛍光によるフローサイトメトリー分析については、5x106個の細胞の懸濁液を10μg/mlのMab又は非免疫化マウスのIgG(Beckman Coulter)と共に4℃で30分間インキュベートした。PBSで洗浄した後、2μgの蛍光ヤギ抗マウスIgG(Alexa Fluor 488, Molecular Probes, Eugene, Oregon)を添加し、細胞懸濁液をFACScan(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)による分析のために4℃で30分間インキュベートした。直接的な免疫蛍光アッセイについては、過剰量(100μg)の非標識化Mabの存在下又は非存在下で、2μgのAlexa488-Mabと共に4℃で30分間細胞をインキュベートし、FACScanによる分析に供した。
【0179】
細胞株中のFZD10の発現を確認するために、本発明者らはRT-PCRを実施した。RT-PCR実験については、TRIzol試薬(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を用いて細胞株からトータルRNAを抽出し、各トータルRNAの3μgアリコートを逆転写した。PCR増幅は、cDNAを鋳型とし、以下のプライマーを用いて行った:FZD10については5’-TATCGGGCTCTTCTCTGTGC-3’(配列番号9)及び5’-GACTGGGCAGGGATCTCATA-3’(配列番号10);内部対照であるβ2−ミクログロブリン(β2MG)については5’-TTAGCTGTGCTCGCGCTACT-3’(配列番号11)及び5’-TCACATGGTTCACACGGCAG-3’(配列番号12)。
【0180】
図1aに示すように、4種のMab 39-2、39-10、92-13及び93-22は全て、FZD10発現性SS細胞株であるSYO-1、YafuSS、HS-SY-2及びFujiにFZD10用量依存的様式で結合したが、FZD10の転写産物が検出されなかった2種の細胞株1973/99及びLoVoには結合しなかった。下記表1は、これらのMabの相対平均蛍光強度(MFI)と図1bに示すFZD10の発現レベルとの間の相関を示す。これに加え、特に、本発明者らは、92-13及び93-22 MabはFZD10-myc/His構築物でトランスフェクトしたSNU-C5にも結合するが、エンプティーベクターでトランスフェクトしたSNU-C5細胞では結合が検出されないことを立証し(図1c)、これはFZD10タンパク質に対するこれらの92-13及び93-22 Mabの特異的結合を示している。
【0181】
【表1】

【0182】
(2)正常な血液細胞に対する結合活性
これらの抗体が臨床用途に適用できるか否かを確認するために、本発明者らは正常な血液細胞に対する抗体の結合活性をさらに調査した。正常な細胞に対するMabの非特異的結合活性を評価するために、125I標識したMabを100μlの健常者の新鮮な血液と共にインキュベートした。室温で1時間インキュベートした後、細胞ペレットの放射能を上記のようにして測定した。
【0183】
正常なヒト血液細胞に対する125I標識化92-13及び93-22 Mabの結合活性は、3人の個々のドナーの全てで検出できなかったが、39-2及び39-10 Mabの結合活性は3人の個々のドナーの全てで検出された(図1d)。これらの結果は、ヒト末梢血単核細胞を用いたFACS分析の結果(データは示されない)と一致し、これは、FZD10分子に対する非常に特異的な結合親和性により、SS患者に対する副作用の可能性がほとんどない92-13及び93-22抗体のみが臨床上の適用性があることを示唆している。したがって、本発明者らは追加の分析を92-13及び93-22抗体のみに集中させた。
【0184】
(3)追加の分析
さらに、細胞表面上のFZD10分子に対する結合親和性を評価するために、125I標識化Mab(実施例1(2)参照)を用いて結合アッセイを行った。放射能分析については、実施例1(2)で調製した0.5kBq(0.001μgの抗体)125I標識化Mabを、様々な量の標識していない同一のMabと共に100μlの細胞懸濁液に添加した。室温で1時間インキュベートした後、細胞懸濁液を800xgで遠心した。上清を取り除き、細胞ペレットの放射能を測定した。
【0185】
結果は、93-22抗体より92-13抗体の結合親和性がより高い、すなわち同一の条件下で、約33%の92-13が細胞に結合し、約9%の93-22抗体が細胞に結合した、ことを示した(図1e)。結合した抗体の量は、非標識化抗体の添加に伴って用量依存的様式で減少した。
【0186】
本発明者らはその後、フローサイトメトリーを用いた93-22 Mabによる92-13の結合競合分析を行った。いずれのAlexa488標識化抗体の細胞結合も、多量の非標識化抗体(図1f、ii及びiii)によって互いに完全に阻止され、これは92-13及び93-22 MabsはFZD10の非常に類似した又は同一のエピトープを認識するようであることを示唆している。これらの知見は、これらのMabがSS細胞の細胞表面上に発現されたFZD10を特異的に認識することができることを示唆する。
【0187】
実施例3
免疫組織化学
ヒト組織に対する92-13及び93-22の結合特異性を評価するために、本発明者らは凍結組織切片を用いて免疫組織化学分析を行った。凍結された正常な成人のヒト器官の組織切片(BioChain, Hayward, California)を4%パラホルムアルデヒドを用いて4℃で15分間固定し、5μg/ml Mabと共に室温で1時間インキュベートした。その後、マウスENVISION Polymer Reagent (DAKO)を添加し、ペルオキシダーゼ基質(3, 3’-ジアミノベンジジン四塩酸塩)により視覚化した。
【0188】
結果を図2に示す。図2は、抗体なし(a、d、g、j及びm)、92-13(b、e、h、k及びn)並びに93-22(c、f、i、l及びo)による、SSの及び正常なヒト凍結組織切片における免疫組織化学分析を示す。(a-c)、滑膜肉腫;(d-f)、腎臓;(g-i)、肝臓;(j-l)、心臓;(m-o)、脳。予想されたように、本発明者らはSS検体(図2a、b及びc)並びに胎盤(データは示されない)においてFZD10に対する強力な免疫反応性を観察したが、正常な腎臓、心臓、脳及び肝臓では検出しておらず、これはノーザンブロット及びRT-PCR実験の結果(Nagayama, S., et al. (2005). Oncogene, 24, 6201-6212.)と一致している。
【0189】
実施例4
Balb/cマウス異種移植片モデルにおける抗FZD10 Mabの生体分布
in vivoモデルにおける92-13及び93-22の分布は、2種類の独立の方法、すなわち放射性核種イメージング及び蛍光イメージングによってBALB/cマウスで調査した。
(1)in vivo放射性核種イメージング
in vivo実験は、動物施設において協会のガイドラインに従って行った。BALB/cA Jcl-nu マウス(雌、7週齢)の脇腹に0.1ml PBS中のSYO-1腫瘍細胞(5x106個の細胞)を皮下注射(s.c)した。生体分布調査に関し、十分に樹立した腫瘍を保持するマウスに10kBq(0.5〜1μg)の125I標識化Mab及び10kBq(0.5〜1μg)の111In標識化Mabを尾静脈を介して与えた。1時間、24時間、48時間の時点でマウスを安楽死させ、組織の重量及び放射能を測定した。分布は全てのサンプルにつき、組織1g当たりの注射用量の%として表した。生体分布の光学的イメージングのために、SYO-1腫瘍マウスの他に、LoVo腫瘍を保持するマウスを使用した。LoVo腫瘍細胞(1x107個の細胞)を上記の通りにBALB/cA Jcl-nuマウスに皮下注射した。腫瘍が十分に樹立されたとき、マウスをイメージング研究に供した。
【0190】
図3a中の結果は、血液と会合した111In-92-13の放射能が、注射後1時間の時点での1g当たり35%注射用量(%ID/g)から48時間後の12%まで減少したことを示す。肝臓、腎臓、腸、脾臓、膵臓、肺、心臓、胃及び筋肉と会合した111In-92-13の放射能はほとんど一定を維持したか又は観察を通じて減少した(図3a)。腫瘍と会合した111In-92-13の放射性は実験を通じて、注射後1時間の時点での2%ID/gから48時間後の11%ID/gまで蓄積した。一方、図3bは、腫瘍と会合した125I標識化92-13の放射能は有意に増加しないが、血液と会合した放射能は1時間の時点での25%から48時間後には7%に減少し、他の正常な器官と会合した放射能が一定を維持したことを立証する。125I標識化抗体は、おそらくはインターナリゼーション後に細胞内で低下した。111In標識化93-22も注射後48時間の時点でSYO-1腫瘍内に蓄積し(図3c)、125I標識化93-22は非常に少ない蓄積を示しており(図3d)、これは92-13と同様に93-22のインターナリゼーションを示唆している。
【0191】
(2) in vivo蛍光イメージング
in vivo蛍光イメージングはIVISTM Imaging System 100シリーズ(Xenogen, Alameda, CA)を用いて行った。in vivoでのAlexa647-Mab蛍光を得るために、最適化したCy5.5フィルターを使用した。SYO-1腫瘍を保持するマウスに20μgのAlexa647標識化Mabを腹腔内注射し、様々な時点で蛍光イメージングに供した。バックグラウンド蛍光を低減させるために、Mabを注射する前の4日間、アルファルファを含まない食餌をマウスに給餌した。画像を得るとき、マウスを2%のイソフルラン(Abbott Laboratories)で安楽死させ、IVISシステムに置いた。マウスをMab注射後4日目に安楽死させ、腫瘍及び主要器官を切り出し、蛍光画像を得た。
【0192】
図4aに示すように、注射後24時間の時点で腫瘍の位置にかなりの量の蛍光が検出された。腫瘍に結合した蛍光は92-13及び93-22の両Mabで観察された。シグナルは注射後約48時間の時点で最大レベルに達し、注射後96時間の時点では検出可能ではなかった。本発明者らは注射後120時間の時点でこれらのマウスを犠牲にし、腫瘍及びさらに重要な正常器官(肝臓、脾臓、腎臓、膵臓、大腸)におけるその蛍光強度を測定した(図4b及び4c)。切り出した腫瘍において非常に強い蛍光シグナルが観察されたが、正常な器官では蛍光シグナルは検出されなかった。結合特異性を確認するために、本発明者らは抗原陰性細胞株であるLoVoを用いてヌードマウス中に異種移植片を作製し、Alexa647標識化Mabを注射し、蛍光イメージング分析を実施した。LoVo保持マウスでは、蛍光は腫瘍の位置(図5a)にも、切り出した腫瘍又は他の器官(図5b及び5c)のいずれにおいても検出されなかった。これらの結果は、これらのMabがFZD10発現腫瘍細胞にin vivoでも特異的に結合できることを示している。
【0193】
実施例5
抗原陽性細胞内への抗FZD10 Mabのインターナリゼーション
細胞表面への結合後のこれらのMabの分子動態を調査するために、その局在をin vitroイメージングシステムを用いて追跡した。
【0194】
細胞を8ウェルチャンバースライド(Nalge Nunc International, Naperville, IL)にウェル当たり5x104個の細胞密度でプレーティングした。5%CO2を含むエアチャンバー中、37℃で3時間、細胞をMabと共にインキュベートした。細胞表面に結合したMabを酸ストリッピングバッファー(0.1M Glycine, 500mM NaCl, pH2.5)により4℃で10分間取り除き、500mM Tris(pH7.5)で中和した。次いで、細胞を3.7%ホルムアルデヒドにより室温で15分間固定し、0.2%TritonX-100に10分間曝露することによって透過処理し、その後、3%ウシ血清アルブミンにより1時間室温でブロッキングした。細胞にインターナライズされたMabを検出するために、サンプルをAlexa488で標識したヤギ抗マウスIgG(1:700希釈)と共に室温で1時間インキュベートした。スライドをDAPI(Vectashield, Vector Laboratories, Burlingame, CA)に取り付け、Leica TCS SP1共焦点計量器下で分析した。
【0195】
図6に示すように、Mab 92-13及び93-22はいずれも、Mabを細胞と共にインキュベートした後3時間の時点で、Alexa488標識化ヤギ抗マウスIgGを用いて検出された共焦点顕微鏡イメージングにより、SYO-1細胞及びYaFuSS細胞のサイトゾル内に効率的に導入された(図6a〜f)。一方、これらのMabの蛍光シグナルは、FZD10発現のないLoVo細胞ではほとんど検出可能ではなく(図6g〜i)、これは細胞表面FZD10へのMabの特異的結合が抗体のインターナリゼーションを誘導したことを示している。
【0196】
実施例6
Mabの特異的細胞毒性
92-13及び93-22は、培養細胞に直接添加したとき、腫瘍細胞増殖に対して何ら作用しなかった(データは示されない)。治療研究のために、SYO-1腫瘍を実施例4と同じ様式でBALB/cA Jcl-nuマウスで増殖させた。腫瘍の直径をカリパスで測定し、腫瘍体積を既に記載されるように(Nagayama, S., et al. (2005). Oncogene, 24, 6201-12.)以下の式を用いて測定した:0.5x(長径)x(短径)2。腫瘍体積が0.4〜2.8cm3を上回ったとき、皮下SYO-1腫瘍を保持するBalb/cヌードマウスを無作為に治療群に割り当て、尾静脈を介して100μCiの90Y標識化Mab又は対照Mabを静脈内注射した。マウスを計量し、腫瘍直径を記録した。
【0197】
図7は、全てのマウスにおいて、治療直後から追跡のほぼ1週間の間に、腫瘍体積が顕著に低減したことを示す。50μCiの90Y-DTPA-92-13をマウスに与えたとき、1cm3より大きい体積の腫瘍は、治療の2週間後に差を示したが、これらは治療直後より顕著に低減した腫瘍サイズを示した。マウスは、体重の一時的な減少(10〜15%)を示したが、1週間で回復し、目に見える毒性の兆候は観察されなかった(データは示されない)。
【0198】
実施例7
キメラ抗体の作製
マウス92-13及び93-22抗体に対応するキメラ抗体であるch92-13及びch93-22を、CMVプロモーターの制御下のヒトIgG1定常領域に対して各マウス抗体の可変領域配列を置換することによって作製した。トータルRNAをハイブリドーマクローン92-13及び93-22から抽出した。cDNAはトータルRNAからGeneRacerTM Kit (Invitrogen)を用いて合成した。モノクローナル抗体の可変領域の配列は、正方向プライマー(GeneRacerTM5’Primer)と逆方向プライマー:CH1(IgG2a);重鎖用5’-AATTTTCTTGTCCACCTTGGTG-3’(配列番号3)及びCL1(κ);軽鎖用5’-CTAACACTCATTCCTGTTGAAGCTCT-3’(配列番号4)とを用いて増幅した。PCR産物を配列決定し、m92-13可変領域及びm93-22可変領域をコードする配列を決定した。
【0199】
その結果、マウスIg H鎖可変領域及びL鎖可変領域のアミノ酸配列は以下のように決定された:
92-13、H鎖可変領域:
MKCSWVIFFLMAVVTGVNSEVQLQQSGAELVKPGASVKLSCTASGFNINDTYMHWVKQRPEQGLEWIGRIDPANGNTKYDPKFQGKATITADTSSNTAYLQLSSLTSEDTAVYYCARGARGSRFAYWGQGTLVTVSA(配列番号13)(配列番号14のヌクレオチド配列によってコードされる)、及び
92-13、L鎖可変領域:
MSVPTQVLGLLLLWLTDARCDIQMTQSPASLSVSVGETVTITCRASENIYSNLAWYQQKQGKSPQLLVYVATNLADGVPSRFSGSGSGTQYSLKINSLQSEDFGSYYCQHFWGTPYTFGGGTKL(配列番号21)(配列番号22のヌクレオチド配列によってコードされる);及び
93-22、H鎖可変領域:
MGWSRIFLFLLSITAGVHCQVQLQQSGPELVKPGASVKISCKASGYAFSSSWMNWVKQRPGQGLEWIGRIYPGDGDTNYNGKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSVDSAVYFCARGGNYGWFAYWGQGTLVTVSAGS(配列番号29)(配列番号30のヌクレオチド配列によってコードされる)、及び
93-22、L鎖可変領域:
METDTLLLWVLLLWVPGSTGDIVLTQSPASLAVSLGQRATISCRASKSVSTSGYSYMHWYQQKPGQPPKLLIYLASNLESGVPARFSGSGSGTDFTLNIHPVEEEDAATYYCQHSRELYTFGGGTKLGS(配列番号37)(配列番号38のヌクレオチド配列によってコードされる)。
下線はシグナル配列を示している。
【0200】
抗体のCDR(相補性決定領域)配列は以下のように決定された:
92-13、VH CDR1としてINDTYMH(配列番号15)、VH CDR2としてRIDPANGNTKYD(配列番号17)、及びVH CDR3としてGSRFAY(配列番号19)、VL CDR1としてRASENIYSNLA(配列番号23)、VL CDR2としてVATNLAD(配列番号25)、及びVL CDR3としてQHFWGTPY(配列番号27);及び
93-22、VH CDR1としてSSWMN(配列番号31)、VH CDR2としてRIYPGDGDTNYN(配列番号33)、及びVH CDR3としてGGNYGWFAY(配列番号35)、VL CDR1としてRASKSVSTSGYSYMH(配列番号39)、VL CDR2としてLASNLES(配列番号41)、及びVL CDR3としてQHSRELY(配列番号43)。
【0201】
さらに、マウスモノクローナル抗体92-13、93-22及び39-10のH鎖及びL鎖のアミノ酸配列は以下のように決定されている:
92-13、H鎖:配列番号58(配列番号57のヌクレオチド配列によってコードされる);
92-13、L鎖:配列番号60(配列番号59のヌクレオチド配列によってコードされる);
93-22、H鎖:配列番号62(配列番号61のヌクレオチド配列によってコードされる);
93-22、L鎖:配列番号64(配列番号63のヌクレオチド配列によってコードされる);
39-10、H鎖:配列番号66(配列番号65のヌクレオチド配列によってコードされる);
39-10、L鎖:配列番号68(配列番号67のヌクレオチド配列によってコードされる)。
【0202】
決定された配列に従って、m92-13可変領域に特異的なプライマーを設計した:重鎖用5'-AATAGCGGCCGCACCATGAAATGCAGCTGGGTTATCTT-3'(配列番号5)及び5'-AATAGCTAGCTGCAGAGACAGTGACCAGAGTCC-3'(配列番号6)、並びに軽鎖用5'-AATAGCGGCCGCACCATGAGTGTGCCCACTCAGG-3'(配列番号7)及び5'-TTCCAGCTTGGTCCCCCC-3'(配列番号8)。また、m93-22可変領域に特異的なプライマーを設計した:重鎖用5’-AATAGCGGCCGCACCATGGGATGGAGCCGGATCTTT-3’(配列番号53)及び5’-AATAGGATCCTGCAGAGACAGTGACCAGAGTCCCTT-3’(配列番号54)、並びに軽鎖用5’-AATAGCGGCCGCACCATGGAGACAGACACACTCCT-3’(配列番号55)及び5’-AATAGGATCCCAGCTTGGTCCCCCCTCCGAACGT-3’(配列番号56)。キメラ抗体用の発現ベクターを構築するために、2種類のカセットベクターを調製した。ヒトIgG1(CH1-CH3)をコードするDNA断片をpQCXIH(Clontech)(pQCXCHIH)に挿入し、ヒトIgκ(CL1)をコードするDNA断片をpQCXIP(pQCXCLIP)に挿入した。ヒトIgG1又はヒトIgκをコードするDNA断片を取得するために、ヒト定常領域ライブラリーをヒトPBMC(末梢血単核細胞)からのcDNAを用いて、報告された方法(Liu, A.Y. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.84, 3439-43, 1987; Reff, M.E. et al., Blood, Vol.83, No.2, 435-45, 1994)によって調製した。m92-13及びm93-22重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAをPCR増幅し、配列決定し、NotI及びBamHI部位を用いてそれぞれpQCXCHIH及びpQCXCLIP中にサブクローニングした。これらのベクターをCHO細胞に共トランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を500μg/mlのハイグロマイシンと10μg/mlのピューロマイシンとを含むF-12培地中で培養した。細胞がサブコンフルエントまで増殖したとき、培地を血清無含培地(CHO-S-SFMII;GIBCO)に交換し、キメラ抗体をプロテインAアフィニティーカラム(GE Amersham)を用いて培養細胞の上清から精製し、配列決定した。キメラ抗体ch92-13の重鎖の配列は、配列番号45のヌクレオチド配列によってコードされる配列番号46を含み、そしてキメラ抗体ch92-13の軽鎖の配列は配列番号47のヌクレオチド配列によってコードされる配列番号48を含む。キメラ抗体ch93-22の重鎖の配列は配列番号50のヌクレオチド配列によってコードされる配列番号49を含み、そしてキメラ抗体ch93-22の軽鎖の配列は配列番号51のヌクレオチド配列によってコードされる配列番号52を含む。
【0203】
実施例8
キメラ抗体の結合活性
キメラ92-13及び93-22によって誘導される抗体依存性細胞障害(ADCC)活性を既に記載されるように(Nagayama, S., et al. (2005). Oncogene, 24, 6201-6212.)LDH活性を用いて測定した。新鮮なエフェクター細胞をFicoll-Plaque(Amersham Bioscience)によって健康なドナーのヘパリン化末梢血から単離した。エフェクター細胞(E)及び標的細胞(T)(それぞれ5x103/ウェル)を様々なE:T比で、キメラ92-13、キメラ93-22又は非免疫化ヒトIgGと共に、37℃で6時間、96ウェルプレート中の5%FBSで補充した0.1mlのフェノールレッド無含RPMI 1640中で4重に共インキュベートした。培養上清に放出されたLDHは、490nmでの吸光度によって測定した。特異的な細胞毒性%は製品説明書に従って算出した。
【0204】
エフェクター活性に関し、キメラ92-13及び93-22はいずれもFZD10過剰発現性SYO-1細胞に特異的なADCCを誘導したが(図8a及びc)、FZD10陰性LoVo細胞に対しては誘導しなかった(図8b及びd)。特に、キメラ92-13はキメラ93-22に比較して高い細胞毒性の誘導を示したが、これらの活性は、エフェクタードナーに依存しており、これはおそらくはFc受容体の多型が原因である。
【0205】
本明細書中で言及した各特許出願及び特許、並びに上記特許出願及び特許のそれぞれにおいて引用又は言及された各文献は、参照により本明細書に組入れる。さらに、本明細書中で引用された全ての文献、本明細書中で引用された文献中で引用又は言及された全ての文献、並びに本明細書中で引用又は言及された全ての製品についての全ての製品説明書又はカタログは、参照により本明細書に組入れる。
【0206】
記載された本発明の方法及びシステムの様々な改良及び変更は、本発明の範囲及び精神を逸脱することなく当業者に理解されよう。本発明は具体的な好ましい実施形態との関連で記載されているが、特許請求の範囲に記載される発明はそのような具体的な実施例に不当に制限されるべきではなく、これらに対する多くの変更及び付加を本発明の範囲内で行うことができることは理解されるべきである。実際、分子生物学又はこれに関連する分野の当業者に自明な本発明を実施するために記載される様式の様々な変更が、本発明の範囲内であることが意図される。さらに、独立項の特徴において、これに続く従属項の特徴の様々な組合せを本発明の範囲から逸脱することなく構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1−1】図1a〜1fは、2種類の抗FZD10モノクローナル抗体についての結合特異性の特性を示す。図1aは、5種のSS株(SYO-1、YaFuSS、HS-SY-2、Fuji及び1973/99)、及び1種の大腸癌細胞株(LoVo)を用いた、4種の抗体39-2及び39-10(WO2005/004912に開示される)、92-13並びに93-22のフローサイトメトリー分析を示す。実線は、各mAbによって検出された蛍光強度を示し、破線は陰性対照として非免疫化マウスIgGと共にインキュベートした細胞の蛍光強度を示す。
【図1−2】図1bは、図1aに使用したものと同じ腫瘍細胞株におけるFZD10の半定量的RT-PCRを示す。β2-ミクログロブリン遺伝子(β2MG)の発現は内部対照として用いた。
【図1−3】図1cは外因性FZD10に対する92-13(上のパネル)及び93-22(下のパネル)のフローサイトメトリー分析を示す。大腸癌細胞株であるSNU-C5をpCAGGSエンプティベクター(左のパネル)又はpCAGGS-FZD10-myc/His(右のパネル)でトランスフェクトし、トランスフェクションの48時間後に分析した。実線は、各mAbによって検出された蛍光強度を示し、破線は陰性対照として非免疫化マウスIgGと共にインキュベートした細胞の蛍光強度を示す。
【図1−4】図1dは、正常なヒト血液細胞に対する、125Iで標識した39-10、39-2、92-13及び93-22の結合を示す。放射性標識したMabを、非標識の同一の抗体の非存在下(白バー)又は存在下(黒バー)で、3個体(A、B及びC)の正常なヒトの新鮮な各血液と共にインキュベートした。
【図1−5】図1eは、125I標識したMabの結合活性を示す。一定量の放射性標識したMabをSYO-1細胞及び増加量の非標識化抗体と共にインキュベートした。細胞に結合した放射能%を非標識化抗体の量に対してプロットした。黒丸;92-13、白丸;93-22。
【図1−6】図1fは、セルフブロック及びクロスブロックのフローサイトメトリー分析を示す。Alexa-488で標識した92-13(上のパネル)及び93-22(下のパネル)をSYO-1細胞と共に、(i)PBS中で、又は100μgの(ii)非標識の92-13、及び(iii)非標識の93-22の存在下でインキュベートした。影付きのヒストグラムは、各Alexa488標識化Mabによって検出された蛍光強度を示す;破線は陰性対照としてPBSと共にインキュベートした細胞の蛍光強度を示す。
【図2】図2は、抗体なし(a、d、g、j及びm)、92-13(b、e、h、k及びn)、及び93-22(c、f、i、l及びo)を用いたSS及び正常なヒト凍結組織切片における免疫組織化学分析を示す。(a-c)、滑膜肉腫;(d-f)、腎臓;(g-i)、肝臓;(j-l)、心臓;(m-o)、脳。オリジナルの倍率x100。
【図3】図3は、111In標識化及び125I標識化抗体の生体内分布を示す。10kBqの(a)111In標識化92-13、(b)125I標識化92-13、(c)111In-標識化93-22、及び(d)125I標識化93-22をSYO-1腫瘍担持BALB/cヌードマウスに静注した。器官及び腫瘍を1時間(白バー)、24時間(斜線バー)及び48時間(黒バー)の時点で切り出し、放射能を測定した。示されるデータは2つの独立の実験の代表的なデータである。
【図4−1】図4aは、Alexa647標識化92-13又は93-22の注射後のSYO-1腫瘍担持マウスのin vivo蛍光イメージングを示す。蛍光標識化Mabはマウスあたり20μgの用量で腹腔内に投与した。全ての蛍光画像は注射前、注射直後(0時間)、注射後24時間、48時間及び96時間の時点で、60秒間の曝露時間(f/stop=2)で得られた。矢印は腫瘍の位置を示す。S.C.腫瘍は92-13(上のパネル)については背部に位置し、93-22(下のパネル)については胴部に位置した。Alexa647からの蛍光シグナルは右側に示すカラーバーに従って偽色した(pseudo-colored)。93-22(下のパネル)では、矢印は注射の位置を示す。
【図4−2】図4b及び4cは、図4aに示すマウスから切り取った器官及び腫瘍の代表的な画像を示す(4b;92-13、及び4c;93-22)。i、SYO-1腫瘍;ii、肝臓;iii、脾臓;iv、腎臓;v、膵臓;vi、大腸。
【図5−1】図5aは、Alexa647標識化92-13又は93-22の注射後のLoVo腫瘍担持マウスのin vivo蛍光イメージングを示す。蛍光標識化Mabは図4と同様に投与した。全ての蛍光画像は、注射直後(0時間)、注射後48時間、72時間、92時間及び120時間(h)の時点で、60秒間の曝露時間(f/stop=2)で得られた。矢印は腫瘍の位置を示す。S.C.腫瘍は92-13(上のパネル)及び93-22(下のパネル)の両者に関し、右前腕に位置する。
【図5−2】図5b及び5cは、図5aに示すマウスから切り取った器官及び腫瘍の代表的な画像を示す(5b;92-13、及び5c;93-22)。i、LoVo腫瘍;ii、肝臓;iii、脾臓;iv、腎臓;v、膵臓;vi、大腸。
【図6】図6は、共焦点顕微鏡により評価した92-13及び93-22のインターナリゼーションを示す。細胞をPBS(a、d及びg)、50μg/mlの92-13(b、e及びh)又は93-22(c、f及びi)により3時間、37℃、5%CO2下で処理した。細胞表面に結合した抗体は0.1M グリシンバッファー(pH2.5)で酸除去した(acid-stripped)。細胞を固定し、透過処理した後、3%BSAでブロッキングした。細胞内抗体はヤギ抗マウスIgG-Alexa488で検出し、核はDAPIで染色した。(a-c)、SYO-1;(d-f)、YaFuSS;(g-i)Lovo。
【図7】図7は、腫瘍増殖に対する90Y標識化92-13の効果を示す。腫瘍が樹立されたとき(0.4〜2.7cm3)、マウスの尾静脈に90Y標識化92-13(100μCi)を一回投与した。
【図8】図8は、キメラ92-13及び93-22の両者がFZD10過剰発現性SYO-1細胞に対して特異的にADCCを誘導したこと示す。1μg/mlのキメラ93-22抗体(ch93-22)又はキメラ92-13抗体(ch92-13)(様々なエフェクター:標的比)。様々なドナーからのPBMCをエフェクター細胞として使用した。(a)、(c)5人の健康なヒトPBMCドナーによる、SYO-1細胞に対するキメラ92-13のADCC。(b)、(d)2人の健康なヒトPBMCドナーによる、LoVo細胞に対するキメラ93-22のADCC。LDH活性による細胞毒性の定量はNagayama, S., et al. Oncogene, 24, 6201-12.に記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号15、17及び19に示すアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)若しくはその機能的に同等なCDRを含むH(重)鎖V(可変)領域と、配列番号23、25及び27に示すアミノ酸配列を有するCDR若しくはその機能的に同等なCDRを含むL(軽)鎖V領域とを含み、かつFrizzledホモログ10(FZD10)タンパク質若しくはその部分ペプチドに結合することができる、抗体又はそのフラグメント。
【請求項2】
抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体フラグメント及び一本鎖抗体よりなる群から選択される、請求項1記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項3】
抗体はマウス抗体である、請求項1記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項4】
マウス抗体は配列番号57に示すアミノ酸配列を有するH鎖及び/又は配列番号59に示すアミノ酸配列を有するL鎖を含む、請求項3記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項5】
マウス抗体はハイブリドーマクローン92-13(FERM BP-10628)によって産生されるものである、請求項3記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項6】
抗体はキメラ抗体である請求項1記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項7】
キメラ抗体は配列番号13に示すアミノ酸配列を有するH鎖V領域を含む、請求項6記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項8】
キメラ抗体は配列番号46に示すアミノ酸配列を有するH鎖を含む、請求項6又は7記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項9】
キメラ抗体は配列番号21に示すアミノ酸配列を有するL鎖V領域を含む、請求項6記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項10】
キメラ抗体は配列番号48に示すアミノ酸配列を有するL鎖を含む、請求項6又は9記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項11】
キメラ抗体は配列番号13に示すアミノ酸配列を有するH鎖V領域と、配列番号21に示すアミノ酸配列を有するL鎖V領域とを含む、請求項6記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項12】
キメラ抗体は配列番号46に示すアミノ酸配列を有するH鎖と、配列番号48に示すアミノ酸配列を有するL鎖とを含む、請求項6又は11記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項13】
キメラ抗体はヒト抗体C(定常)領域をさらに含む、請求項6〜12のいずれか1項記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項14】
抗体はヒト化抗体である請求項1記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項15】
ヒト化抗体はヒト抗体FR(フレームワーク)領域及び/又はヒト抗体C領域をさらに含む、請求項14記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項16】
配列番号31、33及び35に示すアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)若しくはその機能的に同等なCDRを含むH(重)鎖V(可変)領域と、配列番号39、41及び43に示すアミノ酸配列を有するCDR若しくはその機能的に同等なCDRを含むL(軽)鎖V領域とを含み、Frizzledホモログ10(FZD10)タンパク質又はその部分ペプチドに結合することができる、抗体又はそのフラグメント。
【請求項17】
抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体フラグメント、及び一本鎖抗体よりなる群から選択される、請求項16記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項18】
抗体はマウス抗体である、請求項16記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項19】
マウス抗体は配列番号61に示すアミノ酸配列を有するH鎖及び/又は配列番号63に示すアミノ酸配列を有するL鎖を含む、請求項18記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項20】
マウス抗体はハイブリドーマクローン93-22(FERM BP-10620)によって産生されるものである、請求項18記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項21】
抗体はキメラ抗体である、請求項16記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項22】
キメラ抗体は配列番号29に示すアミノ酸配列を有するH鎖V領域を含む、請求項21記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項23】
キメラ抗体は配列番号50に示すアミノ酸配列を有するH鎖を含む、請求項21又は22記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項24】
キメラ抗体は配列番号37に示すアミノ酸配列を有するL鎖V領域を含む、請求項21記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項25】
キメラ抗体は配列番号52に示すアミノ酸配列を有するL鎖を含む、請求項21又は24記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項26】
キメラ抗体は配列番号29に示すアミノ酸配列を有するH鎖V領域と、配列番号37に示すアミノ酸配列を有するL鎖V領域とを含む、請求項21記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項27】
キメラ抗体は配列番号50に示すアミノ酸配列を有するH鎖と、配列番号52に示すアミノ酸配列を有するL鎖とを含む、請求項21又は26記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項28】
キメラ抗体はヒト抗体C(定常)領域をさらに含む、請求項21〜27のいずれか1項記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項29】
抗体はヒト化抗体である、請求項16記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項30】
ヒト化抗体はヒト抗体FR(フレームワーク)領域及び/又はヒト抗体C領域をさらに含む、請求項29記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項31】
放射性同位体標識又は蛍光標識で標識されている、請求項1〜30のいずれか1項記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項32】
放射性同位体標識はイットリウム90(90Y)、ヨウ素125(125I)及びインジウム111(111In)から選択される、請求項31記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項33】
マウスモノクローナル抗体92-13を産生するハイブリドーマクローン92-13(FERM BP-10628)。
【請求項34】
マウスモノクローナル抗体93-22を産生するハイブリドーマクローン93-22(FERM BP-10620)。
【請求項35】
請求項1〜32のいずれか1項記載の抗体又はフラグメントの有効量を被験体に投与することを含む、被験体におけるFrizzledホモログ10(FZD10)に関連する疾患を治療又は予防する方法。
【請求項36】
FZD10に関連する疾患は、滑膜肉腫(SS)、結腸直腸癌、胃癌、慢性骨髄性白血病(CML)、及び急性骨髄性白血病(AML)から選択される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
被験体において、Frizzledホモログ10(FZD10)に関連する疾患又は該疾患を発症する素因を診断又は予後予測する方法であって、以下のステップ:
(a) 被験体からのサンプル又は検体と、請求項1〜32のいずれか1項記載の抗体又はフラグメントとを接触させるステップ;
(b) サンプル又は検体中のFZD10タンパク質を検出するステップ;及び
(c) 対照と比較したFZD10タンパク質の相対存在量に基づいて、被験体が該疾患に罹患しているか又は発症するリスクを有するか否かを判定するステップ;
を含む、前記方法。
【請求項38】
FZD10に関連する疾患は、滑膜肉腫(SS)、結腸直腸癌、胃癌、慢性骨髄性白血病(CML)、及び急性骨髄性白血病(AML)から選択される、請求項37記載の方法。
【請求項39】
請求項31又は32記載の抗体又はフラグメントの有効量を被験体に投与することを含む、被験体におけるFrizzledホモログ10(FDZ10)タンパク質のin vivoイメージング方法。
【請求項40】
請求項1〜32のいずれか1項記載の抗体又はフラグメント及び薬学的に許容し得る担体又は賦形剤を含む、Frizzledホモログ10(FZD10)に関連する疾患を治療又は予防するための医薬組成物。
【請求項41】
請求項1〜32のいずれか1項記載の抗体又はフラグメントを含む、Frizzledホモログ10(FZD10)に関連する疾患を診断又は予後予測するためのキット。
【請求項42】
請求項31又は32記載の抗体又はフラグメントを含む、Frizzledホモログ10(FZD10)タンパク質のin vivoイメージング用医薬組成物。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図1−3】
image rotate

【図1−4】
image rotate

【図1−5】
image rotate

【図1−6】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4−1】
image rotate

【図4−2】
image rotate

【図5−1】
image rotate

【図5−2】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2009−541204(P2009−541204A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558572(P2008−558572)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際出願番号】PCT/JP2006/317155
【国際公開番号】WO2007/148417
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(502240113)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (142)
【Fターム(参考)】