説明

FcγレセプターIIIaに特異的な抗体およびそれを用いたFcγレセプターIIIaの測定方法

【課題】 FcγレセプターIIIa(FcγRIIIa)に特異的に結合する抗体、そのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを提供する。またFcγRIIIaに特異的に結合する抗体を使用してFcγRIIIa量を簡便に測定する方法を提供する。該測定方法を用いて生体試料中のsFcγRIIIa量を測定することにより、慢性関節リュウマチを診断する方法を提供する。
【解決手段】 FcγRIIIaに特異的に結合する抗体、FcγRIIIaに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。FcγRIIIaに特異的に結合する抗体を用い、免疫学的測定方法により測定する。FcγRIIIa量の該測定方法により試料中のsFcγRIIIa量を測定し、その測定結果に基づいて行う、慢性関節リュウマチの診断方法。FcγRIIIaに特異的に結合する抗体を含んでなるFcγRIIIa測定用キット、FcγRIIIaに特異的に結合する抗体を含んでなる慢性関節リュウマチ診断用キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FcγレセプターIIIaに特異的な抗体及びそれを用いたFcγレセプターIIIaの測定方法、並びに該方法で可溶性FcγレセプターIIIaの量を測定することにより、慢性関節リュウマチを診断する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
慢性関節リュウマチ(Rheumatoid Arthritis, 以下、RAと略記する。)は、関節滑膜を病変の主座とする全身性炎症性疾患であり、進行とともに骨、関節の破壊を生じる。本邦の患者数は70〜100万人にのぼり、就労年齢にあたる30〜50歳代女性の発症率が高い為、労働力を削がれることで社会的にも問題となっている。また、RA患者においては疼痛や変形した関節等の肉体面だけでなく、不治の病であるということが精神面においても生活の質(QOL)を低下させている。しかし、最近では種々の治療薬が開発され、発症早期から適切な治療を行うことにより、QOLの低下を防ぐことが可能となってきた。
【0003】
RAの診断は、Lansbury Indexや赤沈、CRP、RF因子等の血液検査、X線検査等の結果から、臨床経験に基づき総合的に判断される。しかし、それらの値は症例毎に個々に異なり、RAの早期診断に充分とは言い難く、RA発症を定量的に評価できる指標の開発が望まれている。
【0004】
一方、Fcγレセプター(FcγRs)は、IgGのFc部分に対するレセプターで、三つのサブグループ、すなわちFcγRI、FcγRII、FcγRIIIに分類される。このうち、FcγRIIIには、FcγRIIIaとFcγRIIIbの2型が存在する。FcγRIIIaは、ナチュラルキラー(natural killer,NK)細胞、Tリンパ球の一部、単球の一部、およびマクロファージに発現する膜貫通型の糖蛋白である(Ravetch, J. V. et al., J. Exp. Med., 170, 481-497, 1989)。NK細胞に発現しているFcγRIIIa(NK細胞型FcγRIIIa。以下、FcγRIIIaNKと略記する。)と、マクロファージに発現しているFcγRIIIa(マクロファージ型FcγRIIIa。以下、FcγRIIIaと略記する。)は、修飾糖鎖に違いがあると考えられている(de Haas, M. et al., J. Immunol., 152, 900-907, 1994)。FcγRIIIaとFcγRIIIaNK(以下、これらを併せてFcγRIIIaと略記する。)は、細胞を活性化すると金属プロテアーゼによって細胞表面から、可溶型 [可溶性FcγRIIIa(以下、sFcγRIIIa)並びに可溶性FcγRIIIaNK(以下、sFcγIIIaNK)とそれぞれ略記し、これらを総称してsFcγRIIIaと略記する。]として放出されることが試験管内で認められている(Harrison, D. et al., J. Immunol., 147, 3459-3465, 1991、Levy, P. C. et al., Am. J. Resp. Cell. Mol. Biol., 5, 307-314, 1991)。
【0005】
また、FcγRIIIbは、GPI(glycosyl-phosphatidyl-inositol)-アンカー型の糖蛋白であり、専ら好中球に発現している(Huizinga, T. W. J. et al., Nature, 333, 667-669, 1988)。FcγRIIIbにはNA1とNA2の2つのアロタイプ(以下、NA1-FcγRIIIb、NA2-FcγRIIIbと略記する。)があり、好中球の活性化およびアポトーシス時に可溶性FcγRIIIb(以下、sFcγRIIIbと略記する。)として放出される(Huizinga, T. W. J. et al., Blood, 75, 213-217, 1990、Homburg, C. H. E., et al., Blood, 85, 532-540, 1995)。
【0006】
総可溶性FcγRIII(以下、総sFcγRIIIと略記する。)は、唾液、滑液、精液、血清および血漿中で検出されている(de Haas, M. et al., J. Immunol., 152, 900-907, 1994、Huizinga, T. W. J. et al., Blood, 75, 213-217, 1990、Huizinga, T. W. J. et al., Br. J. Haematol., 87, 459-463, 1994、Sautes, C. et al., Immunobiol., 185, 207-221, 1992、Galon, J. et al., Eur. J. Immunol., 28, 2101-2107, 1998、Koene, H. R. et al., Br. J. Haematol., 93, 235-241, 1996)。そのうち血漿総sFcγRIIIは主に好中球由来のsFcγRIIIbであり、NK細胞由来のsFcγRIIIaNK並びにマクロファージ由来のsFcγRIIIaは微量と考えられている(de Haas, M. et al., J. Immunol., 152, 900-907, 1994、Huizinga, T. W. J. et al., Br. J. Haematol., 87 459-463, 1994、Masuda, M. et al., J. Rheumatol., 30, 1191-1197, 2003、Masuda, M. et al., Clin. Exp. Immunol., 132, 466-484, 2003)。
【0007】
これまで、sFcγRIIIa の特異的な検出は、Immuno-PCRのように高感度ではあるが煩雑な測定方法を用いらなければならなかった(Masuda, M. et al., Clin. Exp. Immunol., 132, 466-484, 2003、Masuda, M. et al., J. Rheumatol., 30, 1191-1197, 2003)。さらに、これまでsFcγRIIIa測定に用いられていたモノクローナル抗体は、sFcγRIIIaだけでなくNA2-FcγRIIIbとも結合する為 (Masuda, M. et al., Clin. Exp. Immunol., 132, 466-484, 2003、Masuda, M. et al., J. Rheumatol., 30, 1191-1197, 2003)、NA2+表現型の患者を対象としてsFcγRIIIa とsFcγRIIIbを区別して測定することは事実上不可能であった。
【0008】
RAの病変関節部の滑液中ではNK細胞、単球、マクロファージ、リンパ球、形質細胞等の増加、さらには金属プロテアーゼ蛋白の上昇とこれによる細胞間基質の崩壊が観察されている(非特許文献1)。また、病変関節部の滑液から単離したNK細胞では、FcγIIIaの発現量が減少している (非特許文献2、非特許文献3)ことから、活性化された金属プロテアーゼによりNK細胞表面のFcγRIIIaが切断されていると推測される。さらに、RA患者血漿中のsFcγRIIIaは健常者血漿中に比べて増加しているとの報告(非特許文献4、非特許文献5)や、 RA患者血漿中のsFcγRIIIa、sFcγRIIIaが健常者血漿中に比べて増加しているとの報告(非特許文献6)がある。しかし、血漿中のsFcγRIIIaが非常に微量であること、並びにsFcγRIIIaに特異的に結合するがFcγRIIIbには結合しない抗体が得られていなかったことから、簡便で有用なsFcγRIIIa測定方法は報告されていない。
【0009】
【非特許文献1】Brinckerhoff CE, Arthritis Rheum, 34, 1073-1075, 1991
【非特許文献2】Hendrich, C. et al., Arthritis Rheum, 34, 423-431, 1991
【非特許文献3】Tak PP et al., Arthritis Rheum, 37, 1735-43, 1994
【非特許文献4】de Haas, M. et al., J Immunol 152, 900-907, 1994
【非特許文献5】Masuda, M. et al., J Rheumatol, 30, 1191-1197, 2003
【非特許文献6】Masuda, M. et al., Clin Exp Immunol, 132, 466-484, 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した如き状況に鑑みなされたもので、FcγRIIIaに特異的に結合する抗体、そのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを提供することを目的とする。さらに、本発明は、FcγRIIIaに特異的に結合する抗体を使用してFcγRIIIa量を簡便に測定する方法と、該方法により可溶性FcγRIIIa量を測定することにより、RAを早期診断する方法を提供することを目的とする。
【0011】
尚、特に記載しない限り、以下、単に「FcγRIIIa」と記載した場合、FcγRIIIaとsFcγRIIIaを含む場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、これまで得られていなかったFcγRIIIaに特異的な抗体を得るべく鋭意研究の結果、FcγRIIIaには特異的に結合するが、FcγRIIIbには反応性を有さないモノクローナル抗体を得ることができた。さらに、この抗体を用いて生体由来試料(例えば血液、血清、血漿等)中のsFcγRIIIa含量を測定し、この値とRAとの関連を調査したところ、RA患者ではsFcγRIIIaの含量が有意に高くなることを見出し、sFcγRIIIaの含量を測定することによりRAか否かの診断が可能となることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0013】
すなわち本発明は、以下の構成よりなる。
(1)FcγRIIIaに特異的に結合する抗体。
(2)FcγRIIIaに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
(3)FcγRIIIaに特異的に結合する抗体を用い、免疫学的測定方法により測定することを特徴とする、FcγRIIIa量の測定方法。
(4)FcγRIIIaに特異的に結合する抗体と要すればFcγRIIIaに結合する抗体を用い、上記(3)に記載の方法で試料中のsFcγRIIIa量を測定し、その測定結果に基づいて行う、RAの診断方法。
(5)FcγRIIIaに特異的に結合する抗体を含んでなる、FcγRIIIa測定用キット。
(6)FcγRIIIaに結合する抗体と、FcγRIIIaに特異的に結合する抗体を含んでなる、RA診断用キット。
【発明の効果】
【0014】
本発明はFcγRIIIaに特異的に結合する抗体及びこのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、及び該抗体を用いたFcγRIIIa量の測定方法を提供する。該抗体を用いてFcγRIIIa量の測定を行えば、従来よりも簡便で迅速且つ特異的に試料中のFγRIIIa量を測定することが可能である。
【0015】
また、本発明のFcγRIIIa量の測定方法を用いて生体試料中のsFcγRIIIaの量を測定し、その測定結果に基づいてRAか否かを診断することが出来る。
尚、本明細書において、RAか否かを「診断する」場合、FcγRIIIa量の測定結果に基づいて、RAか否かを「判定する」場合を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明にかかるFcγRIIIaに特異的に結合する抗体(以下、抗FcγRIIIa特異抗体という。)は、FcγRIIIa(sFcγRIIIaを含む)とFcγRIIIaNK(sFcγRIIIaNKを含む)の両方に反応性を有する(FcγRIIIaおよびFcγRIIIaNKを認識する)ものであって、FcγRI(sFcγRIを含む)やFcγRII(sFcγRIIを含む)、FcγRIIIb(sFcγRIIIbを含む)等に対して実質上反応性を有さない(FcγRIやFcγRII、FcγRIIIb等を認識しない)ものである。
【0017】
尚、本明細書において、特に記載しない限り、「反応性を有する」、「反応する」、「結合する」、「認識する」は、すべて抗体の反応性(どのようなものに結合し得るか)を示す同義語として用いられる。また、「特異的に結合する」との記載は、ある対象物にのみ結合し、その他の物には結合しないという意味で用いられる。
【0018】
抗FcγRIIIa特異抗体の由来については特に限定されず、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でも何れにても良い。
【0019】
本発明にかかる抗FcγRIIIa特異抗体を取得するため、免疫原として用いられるFcγRIIIaは、例えば、ヒトのクエン酸加血液からパーコール密度勾配遠心処理と向流遠心溶出法(counterflow centrifugal elutriation)により単離したNK細胞を溶解したものから調製することが出来る。蛋白質の精製は、自体公知の方法、例えば抗FcγRIII抗体又は抗FcγRIIIa抗体をコートしたセファロースビーズを用いたアフィニティークロマトグラフィー等の幾つかのクロマトグラフィー技術を組み合わせて行えばよい。
【0020】
また、自体公知の遺伝学的方法により得られた組み換えFcγRIIIaを免疫原として用いることもできる。
【0021】
遺伝学的方法により組み換えFcγRIIIaを調製する方法としては、例えば常法によりFcγRIIIa遺伝子をコードするHuman FcγRIIIa cDNA(GenBank accession No.BC017865)の塩基配列(配列番号1)の3'-末端側領域から選ばれた任意の位置から設計したリバースプライマー、配列番号1の5'-末端から開始コドンまでの間の任意の位置から設計したフォワードプライマー及び鋳型としてHuman FcγRIIIa cDNA(GenBank accession No.BC017865)含むcDNAライブラリー(Human Leucocyte cDNA等)を用いたPCR反応により、目的とするFcγRIIIa遺伝子又はその遺伝子断片を含む配列(例えば配列番号1の43〜672位、配列番号3に示す)のDNA断片を増幅させた後、得られたDNA断片を、常法に従い適当なベクターDNAに組み込み、組み換えベクターを得る。
【0022】
組み換えベクターに組み込まれたDNA断片の塩基配列を解析し、目的とするFcγRIIIa遺伝子又はその断片を含む配列が組み込まれていることを確認する。
【0023】
尚、ベクターに組み込むDNA断片(FcγRIIIa遺伝子又はその断片を含む配列を含む)は、目的によりそのまま、又は所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。
【0024】
ここにおいて用いられる発現ベクターとしては、例えばプラスミドベクター,ファージベクター及びウイルスベクターが包含される。
【0025】
具体的には、例えば、pcDNA3.1/myc-Hisベクター(Invitrogen社製)、pUC119(宝酒造社製)、pBR322(宝酒造社製)、pBluescript II KS+(Stratagene社製)等のプラスミドベクター、λENBL3(Stratagene社製)、λDASHII(フナコシ社製)等のバクテリオファージベクター、Charomid DNA(和光純薬工業(株)製)、Lorist6(和光純薬工業(株)製)等のコスミドベクター等が挙げられる。
【0026】
その他、大腸菌由来のプラスミド(例えばpTrc99A,pKK223,pET3a)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例えばpSH19,pSH15)、λファージ等のバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルス等の動物ウイルス等の他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNA I/Neo、p3×FLAG-CMV-14等も用いることが出来る。
【0027】
尚、検出や精製を容易にするために、目的とするFcγRIIIa蛋白を、他のタグペプチドや蛋白質との融合蛋白として発現させても良い。融合させるタグペプチドとしてはFLAGタグ、3XFLAGタグ、His6タグ等、蛋白質としてはβ−ガラクトシダーゼ(β-Gal)、緑色蛍光蛋白質(GFP)、マルトース結合蛋白質(MBP)等が挙げられる。
【0028】
実際には、オープンリーディングフレームの前後に上記したようなタグペプチドをコードする配列を設計したプライマーを用いてPCR反応を行ったものを発現ベクターにサブクローニングしたり、当該遺伝子と発現ベクターとの間にタグペプチドをコードする配列のリンカーを挿入したり、予めタグペプチドや蛋白質をコードする配列を含む発現ベクターを用いることにより、FcγRIIIa蛋白は、これらのペプチドや蛋白質との融合蛋白質として発現する。例えば、mycエピトープタグ遺伝子、His tag遺伝子を組み込んだpcDNA3.1/myc-Hisベクター(Invitrogen製)を発現ベクターとして用い、その上流にFcγRIIIa遺伝子又はその断片を含む配列を組み込んでおけば、このHis tagあるいはmycエピトープタグの発現を確認することによって、その上流域のFcγRIIIa遺伝子の発現も確認されることになる。
【0029】
得られた組み換えベクターを用いて、例えば、大腸菌(Escherichia coliE.coli)K-12(アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC))、E.coli JM109((株)ニッポンジーン社製)、DH5α((株)ニッポンジーン社製)、VCS257等、好ましくはE.coli K-12を形質転換して形質転換体を得る。
【0030】
形質転換は、例えば、D. M. Morrisonの方法(Method in Enzymology, 68, 326-331, 1979)等により行うことができる。
【0031】
得られた形質転換体を大量培養した後、得られた形質転換体から常法によりプラスミドを回収する。
【0032】
形質転換体の宿主が大腸菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖等、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、酵母エキス、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液等の無機又は有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム等が挙げられる。また、ビタミン類、生長促進因子等を添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
【0033】
形質転換体の宿主が大腸菌である形質転換体を培養する際の培地としては、例えば、LB培地、2×YT培地、M9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journal of Experiments in Molecular Genetics, 431-433, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1972)等が挙げられる。また必要により例えば、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)、3β-インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
【0034】
次いで得られた発現プラスミドを、適当な宿主細胞に導入する。
【0035】
導入体を得るために用いる宿主としては、動物細胞が望ましい。
【0036】
動物細胞としては、例えば、アフリカミドリザル細胞COS-7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(例えばCHO-K1),dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO,マウスL細胞,マウスAtT-20,マウスミエローマ細胞,ラットGH3,ヒトFL細胞等が用いられる。さらに、各種の正常ヒト細胞、例えば肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、NK細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞若しくは間質細胞、又はこれら細胞の前駆細胞、幹細胞若しくは癌細胞等)等を用いることも可能である。
【0037】
得られたプラスミドを動物細胞に導入するには、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール, 263-267, 1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology), 52, 456, 1973)に記載の方法に従って行なうことができる。
【0038】
また、市販の形質導入用試薬を用い、そのプロトコルに従って行うこともできる。GenePulser Xcell(Bio-Rad製)を用いたエレクトロポレーション法がその例として挙げられる。
【0039】
ここで、目的のFcγRIIIa遺伝子配列又はその断片を含む配列を組み込んだ発現プラスミドを導入した導入体が得られたことを確認する方法としては、例えば発現プラスミドを得るために用いたベクターが予め持っている薬剤耐性の遺伝子を利用し、導入体の薬剤耐性を調べ、耐性であることを確認する方法が挙げられる。例えば、pcDNA3.1/myc-Hisベクターを発現ベクターとして用いた場合、該ベクターはネオマイシン耐性(neo)の遺伝子を持っている。そこで、例えばジェネティシンを添加した培地中で培養し、培養された導入体(ネオマイシン耐性株)を、目的のFcγRIIIa遺伝子又はその断片を含む配列を組み込んだ発現プラスミドを導入した導入体であると確認する方法が挙げられる。
【0040】
該導入体が目的とするFcγRIIIa蛋白又はその断片(以下、「組み換えFcγRIIIa蛋白」と記載する。)を生成している(FcγRIIIa遺伝子が発現している)ことを確認するためには、組み換えFcγRIIIa蛋白が該導入体の培養液中に分泌されてくる場合には、その培養液(培養上清)について、例えばタグペプチドに対する抗体を用いた通常の免疫学的測定法(ドットウェスタンブロッティング法、ウェスタンブロッティング法等)を行い、その培養上清中にタグペプチドが発現していることを確認された導入体を選択することにより、目的の組み換えFcγRIIIa蛋白を発現する導入体を取得することが出来る。
【0041】
また、組み換えFcγRIIIa蛋白が、例えば膜貫通型蛋白として発現した場合等、該導入体の培養液中に分泌されてこない場合には、細胞を破壊又は溶解する常法(例えばホモジナイザー等で処理する、適当な界面活性剤等の膜溶解剤で処理する等)にて、得られた導入体を処理し、そのライセート(lysate)を得る。そして、そのライセートについて、上記培養上清について行う場合と同様に通常の免疫学的測定法を行い、同様の方法で目的の組換えFcγRIIIa蛋白を発現する導入体を選択、取得すればよい。
【0042】
さらにまた、培養上清又はライセートについて、例えば抗FcγRIIIa抗体を用いたELISA等の通常の免疫学的測定法を行い、組み換えFcγRIIIa蛋白の存在を確認できた導入体を選択することによって、目的の組み換えFcγRIIIa蛋白を発現する導入体を取得する方法でも良い。
【0043】
FcγRIIIa蛋白は、上記のようにして得られたFcγRIIIa遺伝子又はその断片を含む配列を組み込んだ発現プラスミドを導入した導入体を、栄養培地中で培養し、組み換えFcγRIIIa蛋白を生成させることにより得ることができる。
【0044】
宿主が動物細胞である導入体を培養する際、培地としては、GIT培地(和光純薬工業(株)製)、Opti-MeM培地(GIBCO製)、例えば、約5〜20%のウシ胎児血清(FCS)を含むMEM培地〔サイエンス(Science),122巻,501 (1952)〕,タルベッコ改変イーグル培地(DME培地〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396 (1959)〕),RPMI1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Jounal of the American Medical Association) 199巻,519 (1967)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine),73巻,1 (1950)〕等が用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜120時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0045】
次に、組み換えFcγRIIIa蛋白が培養液中に分泌される場合は、培養終了後、自体公知の方法で導入体と培養上清とを分離し、培養上清を集める。組み換えFcγRIIIa蛋白が例えば膜貫通型蛋白として発現した場合等、該導入体の培養液中に分泌されてこない場合には、前記した如き細胞を破壊又は溶解する常法にて、得られた導入体を処理し、そのライセートを得る。尚、組み換えFcγRIIIa蛋白の精製処理前に、必要に応じ該ライセートを遠心分離等の処理に付すのは任意である。
【0046】
このようにして得られた培養上清中又はライセート中に含まれる組み換えFcγRIIIa蛋白の精製は、自体公知の分離・精製法を適宜組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法等の溶解度の差を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、及びSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法等の主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィー等の荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィー等の特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィー等の疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法等の等電点の差を利用する方法等が用いられる。
【0047】
かくして分離・精製した組み換えFcγRIIIa蛋白の存在は、抗FcγRIIIa抗体等を用いたELISA等により測定して確認することができる。
【0048】
尚、FcγRIIIa蛋白は、Human FcγRIIIa cDNA(GenBank accession No.BC017865、配列番号1で表される塩基配列)中、49位から810位にコードされている。そのうち49位から672位がFcγRIIIa蛋白の細胞外部分をコードし、678位から735位がFcγRIIIa蛋白の細胞膜内部分をコードし、736位から810位がFcγRIIIa蛋白の細胞内部分をコードしている。また、FcγRIIIa遺伝子がコードしているアミノ酸配列を配列番号2に示す。
さらに、Human FcγRIIIa cDNAの塩基配列(配列番号1)及びそれがコードするアミノ酸配列を図6に示す。
【0049】
目的の組み換えFcγRIIIa蛋白を得る方法をより具体的説明すれば、例えば以下の通りである。
【0050】
まず、例えば常法によりFcγRIIIa遺伝子をコードするHuman FcγRIIIa cDNA(GenBank accession No.BC017865)の塩基配列(配列番号1)の3'-末端側領域から選ばれた任意の位置からリバースプライマーを、配列番号1の5'-末端から開始コドンまでの間の任意の位置からフォワードプライマーを設計する。そして該リバースプライマ、フォワードプライマー及び鋳型としてHuman FcγRIIIa cDNA(GenBank accession No.BC017865)を含むcDNAライブラリー(Human Leucocyte cDNA等)を用いた通常のPCR反応を行い、目的とするFcγRIIIa遺伝子又はその遺伝子断片を含む配列を増幅させる。反応は15〜40サイクル行えばよい。
【0051】
得られたDNA断片を、要すればHindIII、NotI等の適当な制限酵素で消化し、例えばpcDNA3.1/myc-Hisベクター等の発現ベクターの、適当な制限酵素サイトに挿入する。尚、該発現ベクターは、形質転換体が目的の遺伝子を組み込んでいるか確認するために、薬剤耐性の遺伝子[例えばネオマイシン耐性(neo)]を組み込んでいてもよい。また、後で行う目的の蛋白質が発現したかを確認するために、予めmycエピトープタグ遺伝子、His tag遺伝子タグペプチド等のタグペプチドをコードする配列を含んでいてもよい。
【0052】
続いて、得られた組換えベクターを用いてE. coli等の細菌等の、宿主を形質転換させ、得られた形質転換体を大量培養後、常法[塩化セシウム密度勾配遠心法、プラスミド精製キット(Qiagen社製)等]によりプラスミドを回収する。このようにして得られた発現プラスミドを例えばGenePulser Xcell(Bio-Rad製)を用いたエレクトロポレーション法により例えばCHO-K1細胞等の適当な宿主細胞に導入する。その後、目的の遺伝子を組み込んだ導入体を薬剤耐性等により選択した後、限界希釈法等の常法によりクローニングする。
【0053】
次いで、目的の組み換えFcγRIIIa蛋白を精製している導入体のクローンを選択するにあたり、該蛋白が導入体の培養上清中に分泌されてくる場合には、クローニングした導入体を培養し、例えばタグペプチドに対する抗体を用い、ドットウェスタンブロッティング法等の常法によりその培養上清中に目的とする組み換えFcγRIIIa蛋白を分泌している陽性クローンを選択する方法により、目的の組み換えFcγRIIIa蛋白を発現する細胞株を取得することができる。
【0054】
また、目的の組み換えFcγTIIIa蛋白が前記したように該導入体の培養液中に分泌されてこない場合には、前記した如き細胞を破壊又は溶解する常法にて、得られた導入体を処理し、ライセートを得る。そして、そのライセートについて、上記培養上清について行う場合と同様に、例えばタグペプチドに対する抗体を用い、ドットウェスタンブロッティング法等の常法により目的とする組み換えFcγRIIIa蛋白を生成している陽性クローンを選択することにより、目的の組み換えFcγRIIIa蛋白を発現する細胞株を取得することができる。
【0055】
目的の組み換えFcγRIIIa蛋白を得るには、該蛋白が導入体の培養上清中に分泌されてくる場合には、得られた組み換えFcγRIIIa蛋白を安定的に発現する細胞株を、培地[例えばGIT培地(和光純薬工業製)]中で100%コンフルエントの状態まで培養後、要すれば別の培地に変え[例えばOpti-MEM培地(GIBCO製)]、培地交換を繰り返して培養上清を回収する。回収した培養上清を、遠心分離、限外ろ過、アフィニティカラムクロマトグラフィー等の蛋白質を生成、濃縮する常法に付すことにより、目的の組み換えFcγRIIIa蛋白を得ることができる。
【0056】
また、該蛋白が該導入体の培養液中に分泌されてこない場合には、得られた組み換えFcγRIIIa蛋白を安定的に発現する細胞株を培養後、前記した如き細胞を破壊又は溶解する常法にて処理し、ライセートを得る。そして、そのライセートについて、上記培養上清について行う場合と同様に、遠心分離、限外ろ過、アフィニティカラムクロマトグラフィー等の蛋白質を生成、濃縮する常法に付すことにより、目的の組み換えFcγRIIIa蛋白を得ることができる。
【0057】
本発明に係る抗FcγRIIIa特異ポリクローナル抗体を得る方法としては、上記した如き方法で得られたFcγRIIIa又はその断片を、常法[例えば免疫実験学入門、第2刷、松橋直ら、(株)学会出版センター、1981等に記載の方法等]に従って、例えば馬、牛、羊、兎、山羊、モルモット、ラット、マウス等の動物に免役する常法により作製すればよい。
【0058】
また、本発明に係る抗FcγRIIIa特異モノクローナル抗体を得る方法としては、上記した如き方法で得られたFcγRIIIa又はその断片を免疫原として免疫した、例えばラット、マウス等の動物の、例えば脾細胞、リンパ球等の免疫感作された細胞と、例えば骨髄腫細胞等の永久的に増殖する性質を有する細胞とを、ケラーとミルシュタインらにより開発された自体公知の細胞融合技術(Nature, 256, 495, 1975)により融合させてハイブリドーマを作製し、測定対象物に特異的なモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマを選択し、該ハイブリドーマを培地中で培養するか、動物の腹腔内に投与して腹水中に抗体を産生させて、該培養物又は腹水より目的のモノクローナル抗体を採取する方法、例えば遺伝子組換え技術等を応用した自体公知の方法(Eur.J.Immunol., 6, 511, 1976)により上記した如き性質を有する抗体を産生する細胞を作製し、この細胞を培養することにより目的のモノクローナル抗体を採取する方法等が挙げられる。
【0059】
上記の如き方法で得られた組み換えFcγRIIIa蛋白を用いて、本発明に係る抗FcγRIIIa特異モノクローナル抗体を得る方法を例に取り、より具体的に述べれば、例えば以下のごとくとなる。
【0060】
すなわち、上記の如き方法により得られた組み換えFcγRIIIa蛋白と、完全(若しくは不完全)フロイントアジュバント等のアジュバントとを混合して懸濁液を作製する。この懸濁液を前述の如き適当な動物に適当量、例えばFcγRIIIa蛋白量として、通常1回量0.1〜100μg、好ましくは0.1〜10μgとなる量で、通常1〜5週間毎に、好ましくは2〜5週間毎に、通常3〜10回、好ましくは3〜8回、皮下、静脈内あるいは腹腔内に投与して免疫する。免疫後、該動物より採血し、その血清がFcγRIIIaと反応することを、例えばFcγRIIIaを不溶性担体に結合させた固相を用いた固相酵素免疫測定法(ELISA法)等の自体公知の方法により確認する。確認後、最終免疫から3〜4日後に免疫化動物から脾臓を摘出し、脾細胞を常法により調製する。得られた脾細胞と、例えばNS-1,Sp2,X63等の骨髄腫細胞とを常法に従い細胞融合し、常法に従って、融合細胞をHAT選択する。選択された融合細胞を培養し、培養上清を、通常のELISA法、間接免疫蛍光法や、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動後、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜を用いるウェスタンブロット免疫染色法等に供して、上記の如き性質を有する抗FcγRIIIa抗体を産生する細胞をさらに選択する。次いで、限界希釈法によるクローニングを数回行い、安定して高力価の抗体を産生することが認められたものを抗FcγRIIIaモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
【0061】
さらに、選択した抗FcγRIIIaモノクローナル抗体がFcγRI、FcγRII、FcγRIIIb等に反応しないことを、該抗体を産生するハイブリドーマ株の培養上清を用いて、例えばFcγRI、FcγRII、FcγRIIIb等を不溶性担体に結合させた固相を用いた固相酵素免疫測定法(ELISA法)等の自体公知の免疫学的測定方法、又は抗体の抗原特異性を評価するフローサイトメトリーや免疫沈降法等の常法により確認することにより、抗FcγRIIIa特異モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
【0062】
次いで常法に従い、得られたハイブリドーマを動物の腹腔内に注射し、腹水中に抗FcγRIIIa特異抗体を産生させる。この腹水を採取し、例えば硫酸アンモニウム塩析、例えばリン酸緩衝液等の緩衝液を用いた透析、例えばDEAE-セルロースクロマトグラフィー、FcγRIIIaアフィニティークロマトグラフィー等の通常この分野で使用される精製方法に従い精製し、本発明に係る抗FcγRIIIa特異モノクローナル抗体を得る。
【0063】
本発明に係るFcγRIIIa特異抗体は、FcγRIIIa、すなわち前記したNK細胞に発現しているFcγRIIIaNK、マクロファージに発現しているFcγRIIIa及びこれらの可溶型(sFcγRIIIaNK、sFcγRIIIa)に特異的に結合する性質を有している。そのため、該FcγRIIIa特異抗体を用いた免疫学的測定方法を行えば、これらの細胞の膜表面に発現したFcγRIIIaの量や、細胞から遊離したsFcγRIIIaの量を特異的に測定することが出来る。
【0064】
なお、モノクローナル抗体のサブクラスの決定は、二重免疫拡散法(臨床検査法提要, 第30版, P.842-843,金原出版株式会社)等の自体公知の方法によって行えばよい。
【0065】
本発明に係る抗FcγRIIIa特異抗体の具体例としては、ハイブリドーマ細胞株MKGR155の産生するモノクローナル抗体MKGR155が挙げられる。ハイブリドーマMKGR155は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(郵便番号305-8566、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、受領日:2004年7月8日、受領番号:FERM ABP-10062 として寄託してある。
【0066】
また、これら抗体は、抗体分子そのものを用いてもよく、必要であればペプシン,パパイン等の酵素を用いて消化してF(ab')、Fab'、あるいはFabとして使用してもよい。
【0067】
本発明に係る、FcγRIIIa量の測定方法としては、本発明に係る抗FcγRIIIa特異抗体を用い、免疫学的測定方法により測定する方法が挙げられる。
【0068】
例えば自体公知の酵素免疫測定法(Enzyme immunoassay、EIA)、酵素結合免疫吸着測定法(Enzyme linked Immunosolvent assay、ELISA)、放射性免疫測定法(Radioimmunoassay、RIA)、化学発光免疫測定法(chemiluminescence immunoassay、CLEIA)、蛍光免疫測定法(Fluoimmunoassay、FIA)、イムノPCR(immuno-polymerase chain reaction)法(Furuya, D. et al., J. Immunol. Methods, 238, 173-180, 2000)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いる測定方法(特開平9-301995号公報)、ハイブリッド酵素を標識物質として用いる方法(特開2002-65283)、蛍光共鳴エネルギー転移技術を用いる方法(Kaj B. et al.,Ckin. Chem, 45, 855-861, 1999)等の、通常この分野で用いられる自体公知の免疫学的方法で測定すればよい。しかし、感度が高く、かつ簡便な測定方法としては化学発光免疫測定法(CLEIA)や蛍光免疫測定法(FIA)を用いることが好ましい。
【0069】
また、上記した如き測定法の測定原理も、サンドイッチ法、競合法、二抗体法等の、何れにても良い。また、不溶性担体等を用い、BF分離を行うヘテロジニアスな方法で測定することも、BF分離を行わないホモジニアスな方法で測定することも可能である。中でも感度が高く、かつ簡便な測定方法としては、本発明に係る抗FcγRIIIa特異抗体と、さらにFcγRIIIaに結合する抗体(抗FcγRIIIa抗体)を組み合わせて使用する、サンドイッチ法による免疫学的測定法を用いることがより好ましい。
【0070】
ホモジニアスな測定方法の一例としては、例えば本発明に係る抗FcγRIIIa特異抗体と抗FcγRIIIa抗体を用い、さらに該抗体のうち何れか一方が複合体を形成しているか否かで標識物質に由来する特異的なシグナル量が変動する物質で標識されている抗体(標識抗体)を用いて、上記した如き測定方法にてサンドイッチ法による免疫学的測定法を実施し、(a)標識されていない抗体と(b)試料中のFcγRIIIaと(c)標識抗体との複合体を形成させ、複合体量に応じたシグナル変化量に基づいて試料中のFcγRIIIa量を測定する方法が挙げられる。また、抗FcγRIIIa特異抗体と抗FcγRIIIa抗体の代わりに、エピトープの異なる二種類の抗FcγRIIIa特異抗体を用いても、同様に試料中のFcγRIIIa量の測定を行うことが出来る。
【0071】
また、不溶性担体を用いたヘテロジニアスな測定方法の例としては、例えば本発明に係る抗FcγRIIIa特異抗体と抗FcγRIIIa抗体の何れか一方が不溶性担体に固定化されており、他方が標識物質で標識されている抗体を用いて、上記した如き測定方法にてサンドイッチ系免疫学的測定法を実施し、形成される、(a)固定化された抗体と(b)試料中のFcγRIIIaと(c)標識抗体との複合体中の、標識物質量に基づいて試料中のFcγRIIIa量を測定する方法が挙げられる。
【0072】
尚、上記した不溶性担体を用いたサンドイッチ系免疫測定法に於いては、(1) 標識FcγRIIIa特異抗体と、不溶性担体に固定化した抗FcγRIIIa 抗体とを用いてもよいし、(2) 標識抗FcγRIIIa抗体と、不溶性担体に固定化した抗FcγRIIIa 特異抗体とを用いてもよいし、(3)抗FcγRIIIa特異抗体と、不溶性担体に固定化した、前記抗FcγRIIIa特異抗体とエピトープが異なる抗FcγRIIIa特異抗体を用いても、FcγRIIIa量の測定を行うことが出来る。
【0073】
本発明に係るFcγRIIIa量の測定方法に用いられる抗FcγRIIIa抗体は、FcγRIIIaと結合する性質を有するものであれば、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIb等に反応性を有するものであっても良く、FcγRIIIaに特異的である必要はない。
【0074】
また、上記抗FcγRIIIa抗体の由来については特に限定されず、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でも何れにても良い。また、FcγRIIIaに結合する性質を有するファージ抗体やアプタマー等進化分子工学を利用して作製された標的特異的な結合分子を上記した如き抗体の代わりに用いることも可能である。これらを単独であるいはこれらを適宜組み合わせて用いる等は任意である。
【0075】
なお、均一の性質を有する抗体の特異性を考慮すると、ポリクローナル抗体よりもモノクローナル抗体の方が好ましい。
【0076】
抗FcγRIIIaポリクローナル抗体を得る方法としては、免疫原としてFcγRIIIa又はその断片を用い、これを常法[例えば免疫実験学入門、第2刷、松橋直ら、(株)学会出版センター、1981]等に記載の方法に従って、例えば馬、牛、羊、兎、山羊、モルモット、ラット、マウス等の動物に免役する常法により作製すればよい。
【0077】
また、抗FcγRIIIaモノクローナル抗体を得る方法としては、免疫原としてFcγRIIIa又はその断片を用い、これを免疫した、例えばラット、マウス等の動物の、例えば脾細胞、リンパ球等の免疫感作された細胞と、例えば骨髄腫細胞等の永久的に増殖する性質を有する細胞とを、ケラーとミルシュタインらにより開発された自体公知の細胞融合技術(Nature, 256, 495, 1975)により融合させてハイブリドーマを作製し、測定対象物に特異的なモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマを選択し、該ハイブリドーマを培地中で培養するか、動物の腹腔内に投与して腹水中に抗体を産生させて、該培養物又は腹水より目的のモノクローナル抗体を採取する方法、例えば遺伝子組換え技術等を応用した自体公知の方法(Eur.J.Immunol., 6, 511, 1976)により上記した如き性質を有する抗体を産生する細胞を作製し、この細胞を培養することにより目的のモノクローナル抗体を採取する方法等が挙げられる。
【0078】
また、これら抗体は、市販品を用いても良いし、必要であればペプシン,パパイン等の酵素を用いて消化してF(ab')、Fab'、あるいはFabとして使用してもよい。
【0079】
また、抗体の代わりに用いるアプタマーの作製には、米国特許第270,163号に記載の方法を用いることができる。
【0080】
尚、免疫原として用いるFcγRIIIaは、例えば、ヒトのクエン酸加血液からパーコール密度勾配遠心処理と向流遠心溶出法(counterflow centrifugal elutriation)により単離したNK細胞を溶解したものから調製することが出来る。蛋白質の精製は、自体公知の方法、例えば抗FcγRIIIa抗体又は抗FcγRIIIa特異抗体をコートしたセファロースビーズを用いたアフィニティークロマトグラフィー等の幾つかのクロマトグラフィー技術を組み合わせて行えばよい。また、自体公知の遺伝学的方法により得られた組み換えFcγRIIIaを免疫原として用いることもできる。
【0081】
抗FcγRIIIaモノクローナル抗体の具体例としては、例えばCLBFcRgranI、CLB-LM6.30、GRM1(de Haas, M. et al., Leukocyte typing V, S.F. Schlossmann et al. eds. Oxford University Press, 811-817, 1995)等、特に好ましくはMKGR248が挙げられる。モノクローナル抗体MKGR248を産生するハイブリドーマMKGR248は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(郵便番号305-8566、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、受領日:2004年7月8日、受領番号:FERM ABP-10063 として寄託してある。なお、CLBFcRgranI、CLB-LM6.30、MKGR248はFcγRIIIaNK、FcγRIIIa、NA1-FcγRIIIb、NA2-FcγRIIIbを認識する。また、GRM1はFcγRIIIaとNA2-FcγRIIIbを認識し、NA1-FcγRIIIbとは反応しない。
【0082】
本発明に係るFcγRIIIa量の測定方法で使用される不溶性担体としては、通常の免疫学的測定法で用いられるものであれば何れも使用可能であるが、例えばポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート、ポリ塩化ビニール、ポリエチレン、ポリクロロカーボネート、シリコーン樹脂、シリコーンラバー等の合成高分子化合物、例えば多孔性ガラス、スリガラス、アルミナ、シリカゲル、活性炭、金属酸化物等の無機物質等が挙げられる。また、これら不溶性担体は、チューブ、ビーズ、ディスク状片、微粒子(ラテックス粒子)、マイクロプレート等多種多様の形態で使用し得る。なかでもマイクロプレートやビーズは、洗浄の容易さおよび多数の試料を同時処理する際の操作性等の点から特に好ましい。
【0083】
また、このような不溶性担体に上記抗体を固定化させる方法としては、自体公知の固定化方法、例えば共有結合により固定化する方法あるいは物理的に吸着させて固定化する方法(特公平5-41946号公報等)等の固定化方法を利用すればよい。
【0084】
より具体的には、抗FcγRIIIa特異抗体又は抗FcγRIIIa抗体を通常0.1μg/mL〜20mg/mL、好ましくは1μg/mL〜5mg/mLの範囲で含む溶液と不溶性担体とを接触させ、適当な温度で所定時間反応させて抗体が結合した不溶性担体(固相)を得る方法が挙げられる。
【0085】
抗FcγRIIIa特異抗体又は抗FcγRIIIa抗体の溶液を調製するための溶媒としては、該抗体が不溶性担体上に吸着あるいは結合するのを妨げる性質を有するものでなければ良く、例えば精製水、例えばpH 5.0〜10.0、好ましくはpH 6.5〜8.5の中性付近に緩衝作用を有する、例えばリン酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド緩衝液、グリシン緩衝液、ホウ酸緩衝液等が好ましい。また、これらの緩衝液中の緩衝剤濃度としては、通常10〜500 mM、好ましくは10〜300 mMの範囲から適宜選択される。また、この溶液中には、該抗体が不溶性担体上に吸着あるいは結合するのを妨げない量であれば、例えば糖類、NaCl等の塩類、界面活性剤、防腐剤、蛋白質等が含まれていても良い。
【0086】
なお、通常この分野で行われているブロッキング処理、すなわち、上述のごとくして得られた抗体が結合した不溶性担体を、さらに該抗体とは無関係の蛋白質、例えば牛血清アルブミン、スキムミルク等の乳蛋白質、卵白アルブミン等を含有する溶液中に浸漬する処理を行うことは、測定時の非特異的反応を防ぐ点から望ましい。
【0087】
本発明において、FcγRIIIa量を測定する場合に用いられる抗FcγRIIIa特異抗体又は抗FcγRIIIa抗体を標識するために用いられる標識物質としては、例えば酵素免疫測定法(EIA)において用いられるアルカリホスファターゼ,β-ガラクトシダーゼ,ペルオキシダーゼ,マイクロペルオキシダーゼ,グルコースオキシダーゼ,グルコース-6-リン酸脱水素酵素,アセチルコリンエステラーゼ,リンゴ酸脱水素酵素,ルシフェラーゼ等の酵素類、例えばRIAで用いられる99mTc,131I,125I,14C,3H等の放射性同位元素、例えば蛍光免疫測定法(FIA)で用いられるフルオレセイン,ダンシル,フルオレスカミン,クマリン,ナフチルアミンあるいはこれらの誘導体等の蛍光性物質、例えばルシフェリン,イソルミノール,ルミノール,ビス(2,4,6-トリフロロフェニル)オキザレート等の発光性物質、例えばフェノール,ナフトール,アントラセンあるいはこれらの誘導体等の紫外部に吸収を有する物質、例えば4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル,3-アミノ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル,2,6-ジ-t-ブチル-α-(3,5-ジ-t-ブチル-4-オキソ-2,5-シクロヘキサジエン-1-イリデン)-p-トリルオキシル等のオキシル基を有する化合物に代表されるスピンラベル化剤としての性質を有する物質等の標識物質等、通常この分野で用いられている標識物質が全て挙げられる。
【0088】
また、上記した如き標識物質を抗体に結合させる(標識する)には、例えば自体公知のEIA、RIAあるいはFIA等において一般に行われている自体公知の標識方法[例えば、医化学実験講座、第8巻、山村雄一監修、第1版、中山書店、1971;図説 蛍光抗体、川生明著、第1版、(株)ソフトサイエンス社、1983;酵素免疫測定法、石川栄治、河合忠、室井潔編、第2版、医学書院、1982等]を適宜利用して行えばよい。また、標識方法として、アビジン(又はストレプトアビジン)とビオチンの反応を利用した常法を利用しても良いことは言うまでもない。
【0089】
アビジン(又はストレプトアビジン)とビオチンの反応を利用する場合、抗体にビオチンを結合させる方法としては、例えば市販のビオチン化試薬、より具体的には例えばスクシンイミド基が導入されたビオチン(例えば、NHS-ビオチン)やN-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)とビオチンをスペーサーを介して結合したもの等を、抗体又は抗原蛋白のアミノ基に反応させる方法(例えばJ.Biol.Chem., 264, 272-279,1989等)、例えば市販のN-[6-(Biotinamide)hexyl]-3'-(2'-pyridyldithio) propionamide(ビオチン-HPDP)やN-Iodoacetyl-N-biotinylhexylenediaminを、抗原又は抗体のチオール基に反応させる方法(例えばAnn. New York Acad. Sci., 254, 203 , 1975等)、ヒドラジノ基が導入されたビオチンを、アルデヒド化された抗原又は抗体のアルデヒド基に反応させる方法(例えばJ. Biol. Chem., 172, 71, 1948、 Biotech. Appl. Biochem., 9, 488-496, 1987 等)等が挙げられる。
【0090】
また、ビオチンによる抗原又は抗体の修飾の程度としては、抗原又は抗体に対してモル比で0.2〜10倍程度、好ましくは1〜5倍程度が挙げられる。ビオチンによる修飾量が多い場合は抗原又は抗体の不溶性が高くなったり、抗原抗体反応が妨げられる等問題が生じ、逆に修飾量が少ない場合は感度が所期の目標に達しない等の問題が生じるため、注意が必要である。
【0091】
酵素標識したアビジン又はストレプトアビジンは市販されているものをそのまま用いることが可能であり、特に品質、精製度を限定するものではない。また、その使用量は、測定対象に対する抗原(又は抗体)に修飾されたビオチン量や測定項目によって異なり、特に限定されるものではないが、反応液中の濃度として通常0.01〜5000μg/L、好ましくは0.1〜1000μg/L、より好ましくは5〜1000μg/Lの範囲から適宜選択される。
【0092】
なお、この溶液中には、通常この分野で安定化剤として使用されているもの、例えば糖類、蛋白質、界面活性剤等が、通常この分野で使用される濃度範囲内で含有されていても良い。
【0093】
また、抗原抗体反応の結果生成する抗原抗体複合物中の標識量を測定する方法としては、標識物質の種類により異なるが、標識物質が有している何らかの方法により検出し得る性質に応じて、それぞれ所定の方法に従い実施すればよい。例えば、標識物質が酵素の場合にはEIAの常法、例えば「酵素免疫測定法」(蛋白質 核酸 酵素 別冊 No.31、北川常廣・南原利夫・辻章夫・石川榮治編集、51〜63,共立出版(株)、1987)等に記載された方法に準じて測定を行えばよく、標識物質が放射性物質の場合にはRIAの常法に従い、該放射性物質の出す放射線の種類および強さに応じて液浸型GMカウンター、液体シンチレーションカウンター、井戸型シンチレーションカウンター、HPLC用カウンター等の測定機器を適宜選択して使用し、測定を行えばよい(例えば医化学実験講座、第8巻、山村雄一監修、第1版、中山書店、1971等)。また、標識物質が蛍光性物質の場合には蛍光光度計等の測定機器を用いるFIAの常法、例えば「図説 蛍光抗体、川生明著、第1版、(株)ソフトサイエンス社、1983」等に記載された方法に準じて測定を行えばよく、標識物質が発光性物質の場合にはフォトカウンター等の測定機器を用いる常法、例えば「酵素免疫測定法」(蛋白質 核酸 酵素 別冊 No.31、北川常廣・南原利夫・辻章夫・石川榮治編集、252〜263、共立出版(株)、1987)等に記載された方法に準じて測定を行えばよい。さらに、標識物質が紫外部に吸収を有する物質の場合には分光光度計等の測定機器を用いる常法によって測定を行えばよく、標識物質がスピンの性質を有する場合には電子スピン共鳴装置を用いる常法、例えば「酵素免疫測定法」(蛋白質 核酸 酵素 別冊 No.31、北川常廣・南原利夫・辻章夫・石川榮治編集、264〜271、共立出版(株)、1987)等に記載された方法に準じてそれぞれ測定を行えばよい。
【0094】
より具体的には、例えば標識物質が酵素である場合は、これを発色試薬と反応させて発色反応に導き、その結果生成する色素量を分光光度計等により測定する方法等の自体公知の方法が挙げられる。
【0095】
このような目的で用いられる発色試薬としては、例えばテトラメチルベンジジン、o-フェニレンジアミン、o-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシド、2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)、N-エチル-N-スルホプロピル-m-アニシジン(ADPS)、p-ニトロフェニルリン酸等、通常この分野で用いられる発色試薬が挙げられる。
【0096】
また、発色反応を停止させるには、例えば反応液に1〜6Nの硫酸等の酵素活性阻害剤を添加する等、通常この分野で行われている反応停止方法を利用すればよい。
【0097】
例えば化学発光物質としては、イソルミノール,ルミノール,アミノエチルイソルミノ−ル,アミノエチルエチルイソルミノ−ル,アミノプロピルイソルミノ−ル,アミノブチルイソルミノ−ル,アミノヘキシルエチルイソルミノ−ル等のルミノ−ル誘導体、ルシフェリン、ビス(2,4,6-トリフロロフェニル)オキザレート等が挙げられる。
【0098】
例えば蛍光物質としては、例えば蛍光イムノアッセイにおいて用いられるフルオレセイン,ダンシル,フルオレスカミン,クマリン,ナフチルアミン,フルオレセインイソチオシアネート,ローダミン,ローダミンXイソチオシアネート,スルフォローダミン101,ルシファーイエロー,アクリジン,アクリジンイソチオシアネート,リボフラビン或いはこれらの誘導体、ユウロピウム(Eu)等が挙げられる。
【0099】
自体公知のHPLCを利用する測定法においては、抗原抗体複合物と遊離の標識FcγRIIIa特異抗体(又は標識FcγRIIIa抗体)とをより明確に分離するために、例えば特開平7-191027号公報、特開平9-901995号公報等に開示された、これらの分離を向上させるための物質(以下、「分離向上物質」と略記する。)を結合させた、FcγRIIIa特異抗体(又はFcγRIIIa抗体等)を用いてもよい。
【0100】
このような目的に用いられる分離向上物質としては、例えばDNA,RNA等の核酸、α−キモトリプシノーゲン,β−ガラクトシダーゼ,リゾチーム,チトクロームC,トリプシンインヒビター等の蛋白質、例えばフェニルアラニン,プロリン,アルギニン,リジン,アスパラギン酸,グルタミン酸等のアミノ酸を含むペプチド、例えば臭素,塩素,沃素等のハロゲン原子、例えばポリエチレングリコール等の合成高分子、例えばポリグルタミン酸,ポリアスパラギン酸,ポリリジン,ポリアルギニン,ポリフェニルアラニン,ポリチロシン等のポリアミノ酸、炭素数3〜10のアルキル鎖、例えばパルミチン酸,オレイン酸,ステアリン酸等の脂肪酸、例えばN-(ε-マレイミドカプロイルオキシ)スクシンイミド[N-(ε-maleimidoaproyloxy) uccinimide](EMCS),N-スクシンイミヂル-6-マレイミドヘキサノエイト(N-Succinimidyl-6- maleimidohexanoate),ビスマレイミドヘキサン(Bismaleimido hexane)(BMH),オクチルアミン等の蛋白質や特定糖鎖結合蛋白質に結合し得る反応基を有し且つ疎水性若しくはイオン性を有する化学物質、例えば特開平9-301995号公報に記載された4-(p-マレイミドフェニル)ブチリルAla-(Tyr(SO3H))5、4-(p-マレイミドフェニル)ブチリルAla-(Tyr(SO3H))8等の強酸残基含有ペプチド等が好ましい。尚、分離向上物質は、抗FcγRIIIa特異抗体や抗FcγRIIIa抗体の性質(例えばpH安定性,疎水度,水溶液への溶解度,等電点等)を考慮した上で適宜選択して用いればよい。
【0101】
分離向上物質と、抗FcγRIIIa特異抗体や抗FcγRIIIa抗体との結合方法も、(1)自体公知のEIA (ELISA)、RIA或いはFIA等において一般に行われている自体公知の標識物質と抗体との結合方法(例えば、医学実験講座、第8巻、山村雄一監修、第1版、中山書店、1971;図説 蛍光抗体、川生明著、第1版、(株)ソフトサイエンス社、1983;酵素免疫測定法、石川栄治、河合忠、宮井潔編、第2版、医学書院、1982、等)、(2)自体公知の物質の修飾および結合方法(例えば、タンパク質の化学修飾〈上〉〈下〉、瓜谷郁三、志村憲助、中村道徳、船津勝編集、第1版、(株)学会出版センター、1981;ポリエチレングリコール修飾タンパク質、稲田祐二他、生化学、第62巻、第11号、P1351-1362、(社)日本生化学会、1990;DNA PROBES, George H.K. and Mark M.M. STOCKTON PRESS,1989、等)等に準じて行えばよい。
【0102】
本発明のFcγRIIIa量の免疫学的測定法として、不溶性担体を用いたサンドイッチ法による免疫学的測定法のうち、化学発光免疫測定法(CLEIA)による生体試料中のsFcγRIIIa量の測定方法を例にとって説明すると、例えば以下のごとくになる。
【0103】
すなわち、生体由来試料を、本発明に係る抗FcγRIIIa 特異抗体(一次抗体)を不溶性担体に固定化した固相と接触させ、4〜40℃で3分〜16時間反応させて不溶性担体上に抗原抗体複合物(固定化抗FcγRIIIa特異抗体-sFcγRIIIa複合物、複合体-1とする。)を生成させる。次に、標識物質を結合した標識抗FcγRIIIa抗体(二次抗体)と4〜40℃で3分〜16時間反応させて標識抗原抗体複合物(固定化抗FcγRIIIa特異抗体-sFcγRIIIa-標識抗FcγRIIIa抗体複合物、複合体-2とする。)を不溶性担体に生成させ、複合体-2中の標識物質量を測定する。得られた標識物質量を、予め濃度既知のsFcγRIIIa溶液について上記と同じ試薬を用い同様の操作を行って得た、標識物質量とsFcγRIIIa濃度との関係を示す検量線にあてはめることにより、試料中のsFcγRIIIa量(濃度)を求めることができる。なお、sFcγRIIIa量(濃度)は、適当な標準(例えば健常者プール血漿)を100 AU(arbitrary units)の量とした相対値として求めてもよい。
【0104】
標識抗体(二次抗体)がビオチン標識抗体である場合には、一次抗体を不溶性担体に固定化した固相と試料を反応させた後、ビオチン標識抗体を反応させて不溶性担体上にビオチン標識抗体と抗原とのビオチン標識抗原抗体複合物を生成させ、次いでペルオキシダーゼ等の酵素で標識した酵素標識ストレプトアビジンと反応させ、該固相上に酵素標識ストレプトアビジン-ビオチン標識抗原抗体複合物を生成させる。次いで標識酵素に対する基質を反応させて、該固相上の酵素標識ストレプトアビジン-ビオチン標識抗原抗体複合物中の標識酵素量を測定する。続いて上記と同様の方法で、検量線から試料中のsFcγRIIIa量を求めることが出来る。
【0105】
本発明のFcγRIIIa量の免疫学的測定法の具体例として、標識抗体としてペルオキシダーゼ(POD)標識二次抗体を用い、化学発光免疫測定法(CLEIA)で、生体由来試料中のsFcγRIIIa量を測定する方法を例にとって説明すると、概略以下の通りである。
【0106】
すなわち、生体由来試料を、本発明の抗FcγRIIIa特異抗体(一次抗体)を不溶性担体に固定化した固相と接触させ、不溶性担体上に抗原抗体複合物(固定化抗FcγRIIIa特異抗体-sFcγRIIIa複合物、複合体-1)を生成させる。次に、POD標識抗FcγRIIIa抗体(二次抗体)と反応させてPOD標識抗体-抗原複合物(固定化抗FcγRIIIa特異抗体-sFcγRIIIa-POD標識抗FcγRIIIa抗体複合物、複合体-2)を不溶性担体上に生成させる。続いて、ルミノール溶液(発光基質)とH2O2溶液を添加し、該不溶性担体上の標識抗原抗体複合物(複合体-2)中の標識活性を化学発光量として測定する。得られた化学発光量を、予め濃度既知のsFcγRIIIa溶液について上記と同じ試薬を用い同様の操作を行って得た、化学発光量とsFcγRIIIa量との関係を示す検量線にあてはめることにより、試料中のsFcγRIIIa量を求めることができる。
【0107】
本発明に係る抗FcγRIIIa特異抗体を用いたFcγRIIIa量の測定方法によれば、NK細胞やマクロファージに発現しているFcγRIIIaの量や、これらの細胞から遊離した可溶型のFcγRIIIaの量を特異的に測定することが出来る。
【0108】
本発明において用いられる試料としては、血液、血清、血漿等の生体由来試料が挙げられる。中でも、sFcγRIIIa等は、それぞれの該白血球より活性化等により放出されるため、採血後の影響が少ないEDTA加血漿が望ましい。尚、EDTA加血漿中のsFcγRIIIa濃度については、室温での放置や凍結融解のくり返しによる影響を受けないと報告されている(Koene, H. R. et al.,Br. J. Haematol., 93, 235-241, 1996)。
【0109】
本発明の測定法において用いられる緩衝液の具体例を挙げると、例えばトリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液、グッド緩衝液等、通常抗原抗体反応を利用した測定法に用いられている緩衝液は全て挙げられ、そのpHとしては抗原抗体反応を抑制しない範囲であれば特に限定されないが、通常5〜9の範囲が好ましい。
【0110】
尚、本発明は、用手法に限らず、自動分析装置を用いた測定系にも十分利用可能であり、容易にかつ迅速に測定を行う事が出来る。なお、自動分析装置を用いて測定を行う場合の試薬類等の組み合わせ等については、特に制約はなく機種に合わせて、或いは、他の要因を考慮にいれて最も良いと思われる試薬類等の組み合わせを適宜選択して用いれば良い。
【0111】
本発明に係るRAの診断方法としては、本発明に係るFcγRIIIa特異抗体と要すれば抗FcγRIIIa抗体を用い、本発明に係るFcγRIIIa量の測定方法で診断すべき試料中のsFcγRIIIaの量を測定し、その結果に基づいて行う方法が挙げられる。
【0112】
例えば、まず本発明の測定方法によって、健常者検体の試料中のsFcγRIIIa量を測定し、その値を基準値(100 arbitrary units(AU))とする。別に同様の方法で診断すべき試料中のsFcγRIIIaの量を測定し、基準値に対する相対値を求める。そしてこの相対値が基準値に対して有意差があるか否かを判定し、有意に高い場合をRAと診断する、診断方法が挙げられる。
【0113】
また、本発明の測定方法によって、健常者検体の試料中のsFcγRIIIa量(吸光度、発光量等の測定値)を測定し、この値を基準値とする。別に、同様の方法で診断すべき試料中のsFcγRIIIaの量(吸光度、発光量等の測定値)を測定する。そして、この値が基準値に対して有意差があるか否かを判定し、有意に高い場合をRAと診断する、診断方法も挙げられる。
【0114】
さらにまた、濃度既知のsFcγRIIIa試料を用い、本発明の測定方法によって測定を行い、得られた測定結果より検量線を作成する。別に健常者検体の試料を用いて本発明の測定方法を行い、検量線から求めたsFcγRIIIa量を統計処理することにより正常範囲を求める。さらに、診断すべき試料を用いて同様に測定を行い、検量線からsFcγRIIIaの量を求める。そして、この値が正常範囲に対して有意に高い場合をRAと診断する、診断方法も挙げられる。
【0115】
有意差の判定に用いる検定の際の統計学的分析方法としては、例えば2群間のデータの差は、フィッシャーの最小有意差法(Fisher's PLSD)による分散分析(ANOVA)等、相関性の検定は、バートレットの検定法(Bartlettt's test)等によって行えばよい。
【0116】
本発明のFcγRIIIa測定用キットとしては、少なくとも先述した如き(1)抗FcγRIIIa特異抗体を含んでなるもの、(2)抗FcγRIIIa特異抗体と、抗FcγRIIIa抗体を含んでなるもの、(3)不溶性担体に固定化された抗FcγRIIIa特異抗体と、標識抗FcγRIIIa抗体を含んでなるもの、(4)不溶性担体に固定化された 抗FcγRIIIa抗体と、標識抗FcγRIIIa特異抗体を含んでなるものが挙げられ、その構成要件の好ましい態様と具体例は上で述べた通りである。
【0117】
本発明のRAを診断するのに用いられるキットは、少なくとも上記した如き(1)抗FcγRIIIa特異抗体を含んでなるもの、(2)抗FcγRIIIa特異抗体と、抗FcγRIIIa抗体を含んでなるもの、(3)不溶性担体に固定化された抗FcγRIIIa特異抗体と、標識抗FcγRIIIa抗体を含んでなるもの、(4)不溶性担体に固定化された抗FcγRIIIa抗体と、標識抗FcγRIIIa特異抗体を含んでなるものが挙げられ、その構成要件の好ましい態様と具体例は上で述べた通りである。

本発明は、FcγRIIIaに特異的に結合する抗FcγRIIIa特異抗体を提供するものであり、これを用いれば、簡便、迅速且つ精度よく、さらに生体由来試料に含有されるFcγRIIIbのアロタイプに左右されることなくFcγRIIIa量を測定することができる。さらに、該抗体を用いてRAの有用なマーカーであるsFcγRIIIa量を測定し、その結果に基づいてRAを診断することにより、イムノPCR等を用いていた従来よりも簡便且つ迅速に、さらに測定対象者のFcγRIIIb表現型を考慮せずにRAの診断を行うことが可能となった。
【0118】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。
【実施例1】
【0119】
[FcγRIIIa蛋白の発現]
(1)FcγRIIIa蛋白遺伝子のクローニング
Human FcγRIIIa cDNA(GenBank accession No.BC017865)の塩基配列(配列番号1)をもとにして、2種類のプライマー用オリゴヌクレオチド(GAAGCTTGGCATCATGTGGCAGCTGCTC)(配列番号4)と(GCGGCCGCTTGGTACCCAGGTGGAAAGAATG)(配列番号5)を合成(SIGMA genesys 社製)した。
次いで、合成した2種類のオリゴヌクレオチドのうち、配列番号4のオリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとして用い、配列番号5のオリゴヌクレオチドをリバースプライマーとして用い、Human Leucocyte cDNA(BioChain Institute, Inc.)を鋳型として、下記の通りPCRを行った。
まず、各0.4μMのフォワードプライマー及びリバースプライマー2 mM 硫酸マグネシウム、dATP、dCTP、dGTP、dTTPおよびPlatinumTaq ポリメラーゼ(Invitrogen社製)を含有する10 mM Tris-HCl緩衝液(pH 8.9)を調製し、PCR用反応液とした。
PCR用反応液25μLに、Human Leucocyte cDNA 1μgを添加したものをPCR用試料として用い、MJ Research社のDNAサーマルサイクラー(DNA Engine PTC200)にて、PCR(94℃、60秒:94℃、15秒、55℃、30秒、68℃、60秒を25サイクル)を行い、FcγRIIIa遺伝子を含む配列(配列番号3、配列番号1の塩基配列中、43位から672位にコードされている。FcγRIIIa蛋白の細胞膜外部分をコードする遺伝子を含む。)を増幅させた。得られた断片をHindIII((株)ニッポン・ジーン社)とNot I((株)ニッポン・ジーン社)で消化し、pcDNA3.1/myc-Hisベクター(Invitrogen製、ネオマイシン耐性遺伝子(neo)を持つ。)のHindIII、Not Iサイトに挿入した。これにより、FcγRIIIa遺伝子を含む配列(配列番号3)に続いて、その下流にmycエピトープタグ遺伝子、His tag遺伝子が配列された配列を持つpcDNA3.1/myc-Hisベクターが得られることになる。続いて得られたFcγRIIIa遺伝子を含む配列(配列番号3)を挿入したpcDNA3.1/myc-Hisベクターを用いてE. coli(JM109)を形質転換し、得られた形質転換体を大量培養後、Qiagen Endofree Maxi Kit(Qiagen製)を用いてプラスミド(発現プラスミド)を回収した。
【0120】
(2)哺乳類培養細胞への遺伝子導入
上記(1)で得られた発現プラスミドを、GenePulser Xcell(Bio-Rad製)を用いたエレクトロポレーション法(Square wave、Voltage:160V、Pulse length:15 mSec、Cuvette:0.2 cm)によりCHO-K1細胞に導入した。目的の導入体はネオマイシン(ジェネテシン)耐性を獲得しているので、導入から24時間後にジェネティシン(和光純薬工業(株)製)を終濃度0.75 mg/mLとなるように培養液に添加し、約2週間ジェネティシン選択培養を行った。その後、限界希釈法によりジェネティシン耐性株のクローニングを行い、ジェネティシン耐性株72クローンを得た。
【0121】
(3)FcγRIIIa蛋白高発現株の選択
上記(2)で得られたジェネティシン耐性株72クローンをOpti−MEM培地(Gibco製)で培養後、培養上清(無血清培地)各200μLをサンプルとして用い、一次抗体として抗His tag抗体(Oncogene製)、二次抗体としてPOD標識抗マウスIgGウサギF(ab')2(和光純薬工業(株)製)、検出試薬としてECL plus(Amersham Bioscience製)を用いてドットウェスタンブロッティングを行い、化学発光の確認された10クローンを選択した。
選択した10クローンをOpti−MEM培地(Gibco製)培養後、培養上清を限外ろ過した10倍濃縮液20μLをサンプルとして用い、SDS-PAGE後、一次抗体として抗His tag抗体、二次抗体としてPOD標識抗マウスIgGウサギF(ab')2、検出試薬としてECL plusを用いてウェスタンプロッティングを行い、蛋白質(FcγRIIIa)の発現を確認した。
すなわち、上記(1)でFcγRIIIa遺伝子を含む配列(配列番号3)に続く下流側にmycエピトープタグ遺伝子、His tag遺伝子があるので、FcγRIIIaは、mycエピトープ及びHis tagと結合した融合蛋白質(FcγRIIIa−mycエピトープ−His tag)として発現する。従って、このHis tagの発現が確認されれば、その上流域のFcγRIIIa遺伝子を含む配列(配列番号3)の発現も確認されることになる。
また、対照としてFcγRIIIa蛋白遺伝子を含む配列(配列番号3)を挿入していないpcDNA3.1/myc-Hisベクターを上記(2)の方法でCHO細胞に導入し、取得したジェネティシン耐性株の培養上清10倍濃縮液20μLを用いて同様に泳動、ウェスタンブロッティングを行った。
【0122】
結果を図1に示す。図1において、レーン1〜10はクローンNo.1〜10の培養上清10倍濃縮液20μLを用いた場合の結果をそれぞれ示す。レーン11はFcγRIIIa遺伝子を含む配列(配列番号3)を挿入していないpcDNA3.1/myc-Hisベクターを上記(2)の方法でCHO細胞に導入し、取得したジェネティシン耐性株の培養上清10倍濃縮液20μLを用いた場合の結果(対照)を示す。
図1から明らかな如く、クローンNo.3とNo.9においてバンドが強く確認された。尚、FcγRIIIa遺伝子を含む配列(配列番号3)を挿入していないpcDNA3.1/myc-Hisベクターを用いたジェネティシン耐性株のレーン11(対照)にはバンドは認められなかった。以上のことより、CHO-K1細胞を用いて、目的のFcγRIIIa(FcγRIIIa全250アミノ酸のうちの1番目〜208番目のアミノ酸までから成る。以下、「組換えFcγRIIIa蛋白」と記載する。)を発現する細胞株を取得することができた。
【実施例2】
【0123】
[抗FcγRIIIa蛋白モノクローナル抗体の作製]
(1)免疫原(組み換えFcγRIIIa蛋白)の調製
実施例1で得られた、組換えFcγRIIIa蛋白を発現するCHO細胞株をGIT培地[和光純薬工業(株)製、10% 牛血清アルブミン(BSA)含有])中で500 cm2フラスコ10枚に100%コンフルエントの状態まで培養後、培地をOpti-MEM培地(GIBCO製、無血清)に置換した。3日間隔で3回培地交換を行い、培養上清を回収して集めた。
上記培養によって得られた培養上清2Lを、3000 rpmで30分間遠心分離し、その上清を限外ろ過により約100 mLにまで濃縮した。該濃縮液を、20 mMリン酸緩衝液(pH 7.4、500 mM NaCl、50 mM 3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホン酸(CHAPS)、40 mMイミダゾール含有)で平衡化した5 mLのChelating Sepharose Fast Flow(Amersham Bioscience製)カラムに供して目的の組み換えFcγRIIIa蛋白を吸着させた。同カラムを20 mMリン酸緩衝液(pH 7.4、500 mM NaCl、100 mMイミダゾール含有)で十分洗浄した後、20 mMリン酸緩衝液(pH 7.4、500 mM NaCl、300 mMイミダゾール含有)を通液して、組み換えFcγRIIIa蛋白を含む画分を得た。
【0124】
(2)抗FcγRIIIaモノクローナル特異抗体の作製
上記(1)で得られた組み換えFcγRIIIa蛋白をフロインド・コンプリート・アジュバンドと混合し、BALB/cマウス(♀)一匹あたり3μgとなるように腹腔内に投与して初回免疫を行った。初回免疫から二週間後に、組み換えFcγRIIIaをフロインド・コンプリート・アジュバンドと混合し、BALB/cマウス(♀)一匹あたり10μgとなるように腹腔内に投与し、二回目の免疫を行い、さらに二週間後、二回目と同様の方法で腹腔内に投与し、三回目の免疫を行った。三回目の免疫から1ヶ月後に、組み換えFcγRIIIa蛋白を生理食塩水と混合し、BALB/cマウス(♀)一匹あたり20μgとなるように腹腔内に投与し、最終免疫を行った。
最終免疫から3日後に脾臓を取り出した。脾臓は滅菌したステンレスメッシュ上でほぐし、ダイゴT培地(和光純薬工業製)に懸濁後、遠心分離操作を繰り返して洗浄した。採取した脾細胞1.5×108個と、ダイゴT培地で脾細胞と同様の方法で洗浄したマウスミエローマ細胞(P3X63Ag8U1)3×10個をダイゴT培地中で混合し、1450 rpmで10分間遠心分離した。
得られた沈査に50%ポリエチレングリコール1540 1 mLを37℃で1分間かけて攪拌しながら徐々に加えて細胞融合させ、さらに37℃のダイゴT培地9 mLを5分間かけて攪拌しながら加えた後、1450 rpmで10分間遠心分離した。得られた融合細胞をHAT培地60 mLに懸濁し、96ウェルのマイクロプレートに0.2 mLずつ分注し、2〜3日間隔でHAT培地を交換しながら培養を続けた。細胞融合から8〜10日後に培養上清を採取し、ELISAを用いて抗FcγRIIIa抗体活性のスクリーニングを行い、抗体活性の強いウェルの細胞について、限界希釈法によるクローニングを行った。クローニング実施から8日後、1コロニー/ウェルの培養上清を採取し、ELISAを用いて抗FcγRIIIa蛋白抗体活性のスクリーニングを行い、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを得た。
これらのクローンの中から、2クローンを選択し、モノクローナル抗体MKGR155を産生するハイブリドーマMKGR155および、モノクローナル抗体MKGR248を産生するハイブリドーマMKGR248と命名した。
【0125】
尚、ハイブリドーマMKGR155は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(郵便番号305-8566、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、受領日:2004年7月8日、受領番号:FERM ABP-10062 として寄託してある。また、ハイブリドーマMKGR248は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(郵便番号305-8566、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、受領日:2004年7月8日、受領番号:FERM ABP-10063 として寄託してある。
【実施例3】
【0126】
[取得モノクローナル抗体の特異性評価]
(1)フローサイトメトリーによる抗体特異性評価
FITC標識したMKGR155、MKGR248、及び比較対照としてMKGR14(抗FcγRIIIaモノクローナル抗体)、CLBFcRgranI(抗FcγRIIIモノクローナル抗体)を用い、末梢血由来のNK細胞、好中球及び単球を含む白血球と氷上で反応させた。反応後、フローサイトメトリー解析を行った。
【0127】
その結果を図2に示す。図2において、(a)はリンパ球、(b)は単球、(c)は好中球と各抗体の反応性をそれぞれ示す。図2より明らかなごとく、取得したモノクローナル抗体MKGR155はFcγRIIIaを発現するNK細胞と単球の一部に反応したが、FcγRIIIbを発現する好中球とは反応しなかった。また、取得したモノクローナル抗体MKGR248は検討した全ての細胞種と反応した。
一方、抗FcγRIIIaモノクローナル抗体MKGR14は単球の一部とは結合したが、好中球やNK細胞とは反応しなかった。FcγRIIIモノクローナル抗体CLBFCRgranIは,検討した全ての細胞種と反応した。
以上のことより、モノクローナル抗体MKGR248はFcγRIIIと結合し、モノクローナル抗体MKGR155はFcγRIIIaに特異的に結合することが確認された。
【0128】
(2)免疫沈降法による抗体特異性評価
4日間培養した単球、好中球、NK細胞を含むLGL分画に50μg/Lのフェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)、1 mM Na-p-トシル-L-リシンクロロメチルケトンおよび40μg/mL大豆トリプシンインヒビターの存在下、1% NP-40(110 mM NaCl,50 mMトリス緩衝液(pH 7.5))をそれぞれ加えて溶解した。
得られた溶解液を、取得したモノクローナル抗体MKGR155,MKGR248,及び比較対照としてCLBFcRgranI(抗FcγRIIIモノクローナル抗体)を固定化したプロテインGセファロース4ファーストフロー(Amersham Bioscience製)、又はMKGR14(抗FcγRIIIaモノクローナル抗体)を固定化したセファロースCL-4Bビーズに加えて、4℃で1時間反応させた。次いで50μg/LのPMSF、1 mM Na-p-トシル-L-リシンクロロメチルケトンおよび40μg/mL大豆トリプシンインヒビターの存在下、1% NP-40(110 mM NaCl,50 mMトリス緩衝液(pH 7.5))で同ビーズを洗浄したのち、還元剤を含まないSDS-PAGEサンプル調製用緩衝液に懸濁して65℃、5分間加熱し、SDS-PAGEに供した。電気泳動後、ニトロセルロース膜にゲル中の蛋白を転写した後、抗FcγRIIIモノクローナル抗体CLB-LM6.30とペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG(Jackson Immuno Research社製)を順次反応させた。膜上のペルオキシダーゼ活性の検出は、ECL検出システム(Boehringer Mannheim GmbH社(ドイツ)製)を用いた。
【0129】
その結果を図3に示す。図3において、(a)はNK細胞溶解液と各抗体とを反応させた場合、(b)は培養単球溶解液と各抗体とを反応させた場合、(c)は好中球溶解液と各抗体とを反応させた場合の結果をそれぞれ示す。図3から明らかな如く、モノクローナル抗体MKGR155はNK細胞と培養単球に発現しているFcγRIIIaと反応したが、好中球に発現しているFcγRIIIbとは反応しなかった。また、モノクローナル抗体MKGR248は、単球、NK細胞、好中球のいずれのFcγRIIIとも反応した。一方、抗FcγRIIIaモノクローナル抗体MKGR14は培養単球に発現しているFcγRIIIaとは反応したが、NK細胞や好中球のFcγRIIIとは反応しなかった。また、FcγRIIIモノクローナル抗体CLBFcRgranIは、単球、NK細胞、好中球のいずれのFcγRIIIとも反応した。
以上の結果から、モノクローナル抗体MKGR248はFcγRIIIに結合する抗体であり、モノクローナル抗体MKGR155はFcγRIIIaに特異的に結合する抗体であることが分かった。
【0130】
また、従来はFcγRIIIaに特異的な抗体が得られていなかったことから、FcγRIIIa量を測定するためには、Immuno-PCR等の、高感度ではあるが煩雑な測定方法を用いなければならなかった。しかし、本発明によってFcγRIIIaに特異的に結合する抗体が得られたことから、該抗体を用いた通常のELISA、EIA等の免疫学的測定方法を行えば、FcγRIIIa(sFcγRIIIaを含む)を特異的に測定することが出来る。
【0131】
さらに、従来sFcγRIIIa測定に用いられていたモノクローナル抗体は、sFcγRIIIaだけでなくNA2-FcγRIIIbとも結合する為、NA2+表現型の患者を対象としてsFcγRIIIaとsFcγRIIIbを区別して測定することは事実上不可能であった。しかし、本発明の抗FcγRIIIa抗体は、FcγRIIIaには特異的に結合するが、FcγRIIIbとは反応しない。従って、該抗体を用いて生体試料中のsFcγRIIIa量を測定すれば、RAの診断に有用なマーカーであるsFcγRIIIaが特異的に測定できるので、従来よりも簡便且つ迅速に、さらに特定対象者のRAの診断をFcγRIIIb表現型を考慮せずにRAの診断を行うことが出来ることが示唆された。
【実施例4】
【0132】
[慢性リュウマチ(RA)患者、変形性関節炎(Osteoarthritis、以下OAと略記する。)患者、および健常者血漿中のsFcγRIIIa濃度の測定]
(1)試料の調製
High Performance Elisa buffer(HPE緩衝液,CLB社、アムステルダム、オランダ)で100倍希釈した各EDTA加血漿を試料とした。尚、EDTA加血漿の由来は以下の通りである。
RA患者EDTA加血漿は、1994年4月から1996年4月までの関西医科大学リュウマチ科の来院患者で、米国リュウマチ協会(American Rheumatism Association, ARA)の基準においてRAと認定された患者43例から得た。対象となるOA患者EDTA加血漿は、関西医科大学来院患者14名より、健常者EDTA加血漿は、和光純薬工業(株)社員32名より得た。また、sFcγRIIIa等の濃度を測定する際に、100 AUを設定するためのプールEDTA加血漿は、任意に病院のスタッフから選んだ者(19-75歳、42.9±14.3歳)から得た。


(2)試薬の調製
・抗FcγRIIIaモノクローナル抗体MKGR155固定化ポリスチレンビーズ
FcγRIIIaに特異的に結合する抗体である抗FcγRIIIaモノクローナル抗体MKGR155の10μg/mL溶液に直径3.2 mmのポリスチレンビーズを浸漬後、非結合部分を2% BSA溶液でブロックすることにより、抗FcγRIIIaモノクローナル抗体MKGR155固定化ポリスチレンビーズを得た。
・POD標識抗FcγRIIIaモノクローナル抗体MKGR248
酵素免疫測定法、石川栄治、河合忠、室井潔編、第2版、医学書院、1982等に示された常法に従って行った。すなわち、FcγRIIIaに結合する抗体である抗FcγRIIIaモノクローナル抗体MKGR248をモル比で10倍量相当のN-Succinimidyl 3-[2-pyridyldithio] propionateとリン酸緩衝食塩水液(PBS)中で反応させた後、Sephadex G-25を用いてゲルろ過を行い、余分のN-Succinimidyl 3-[2-pyridyldithio]propionateを除去した後、DTTで還元してSH化した。これとは別に、PODをモル比で10倍量相当のm-Maleimidobenzyl-N-hydroxysuccinimide esterとPBS中で反応させた後、Sephadex G-25を用いてゲルろ過を行い、余分のm-Maleimidobenzyl-N-hydroxysuccinimide ester を除去してm-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシニミドを導入したPODを得た。さらに両者を反応させることにより、POD標識抗FcγRIIIaモノクローナル抗体MKGR248を得た。
【0133】
(3)測定方法
RA患者、OA患者、および健常者由来のEDTA加血漿中のsFcγRIIIa濃度は、自動化学発光免疫装置Sphere Light180(スフィアライト180、オリンパス社製)を用いて化学発光法で以下のように行った。
抗FcγRIIIaモノクローナル抗体MKGR155固定化ポリスチレンビーズ1個が入った反応槽に、試料140μLを加え、37℃で7分間インキュベートした。PBSで洗浄後、140μLのPOD標識抗FcγRIIIaモノクローナル抗体MKGR248を加えて37℃で7分間インキュベートした。反応後、ポリスチレンビーズをPBSで洗浄後、ルミノール溶液(発光基質)70μLとH2O2溶液70μLを添加し、自動化学発光免疫装置Sphere Light180(スフィアライト180、オリンパス社製)を用いて各試料の化学発光量を測定した。
別に、健常者プールEDTA加血漿中のsFcγRIIIa量を基準値、すなわち100 arbitrary units(AU)に設定し、これをHPE緩衝液で希釈(1/5、1/10、1/20、1/40、1/80、1/160、1/320)した試料についても同様の試薬及び機器を用いて化学発光量を測定し、化学発光量を縦軸、sFcγRIIIa量(AU)を横軸にプロットした検量線を作成した(図4)。この検量線を用いてRA患者、OA患者あるいは健常者EDTA加血漿中のsFcγRIIIa量を求めた。
【0134】
(4)結果
結果を図5に示す。なお、有意差検定はt検定により行った。
図5から明らかなごとく、RA患者のsFcγRIIIa量は、健常者およびOA患者に比して高値であり、健常者とOA患者のsFcγRIIIa量には有意な差が認められなかった。なお、健常者の値に対するRA患者の値の有意水準はp<0.01、OA患者の値に対するRA患者の値の有意水準はp<0.01である。
以上のことから、抗FcγRIIIaモノクローナル抗体MKGR155と抗FcγRIIIaモノクローナル抗体MKGR248を用いて測定したsFcγRIIIaは、RAの診断用マーカーとして有用であることが示唆された。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】実施例1で得られた、FcγRIIIa遺伝子を導入したCHO-HK1細胞クローンの培養上清を電気泳動後ウエスタンブロッティングした結果である。
【図2】実施例3で得られた、フローサイトメトリーによる各抗体の特異性を評価した結果である。図2において、(a)はNK細胞と、(b)は単球と、(c)は好中球と反応した各抗体の結果をそれぞれ示す。
【図3】実施例3で得られた、免疫沈降法により、各抗体の特異性を評価した結果である。図3において、(a)はNK細胞溶解液と各抗体とを反応させた場合、(b)は培養単球溶解液と各抗体とを反応させた場合、(c)は好中球溶解液と各抗体とを反応させた場合の結果をそれぞれ示す。
【図4】実施例4で得られた、化学発光量とsFcγRIIIa量(AU)との関係を示す検量線である。
【図5】実施例4で得られた、RA患者(RA)EDTA加血漿、変形性関節炎(OA)患者EDTA加血漿及び健常者EDTA加血漿中のsFcγRIII量を比較した結果である。
【図6】Human FcγRIIIa cDNAの塩基配列(配列番号1)及びそれがコードするアミノ酸配列を示す。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、FcγRIIIaに特異的に結合する抗FcγRIIIa特異抗体を提供するものであり、これを用いてFcγRIIIa量を測定すれば、イムノPCR法等を用いていた従来よりも、はるかに簡便、迅速かつ精度よく、さらに生体由来試料に含有されるFcγRIIIbのアロタイプに左右されることなくFcγRIIIa量を測定することができる。
さらに、該抗体を用いてRAの有用なマーカーであるsFcγRIIIa量を測定して、その結果を用いれば、従来よりも簡便かつ迅速に、さらに測定対象者のFcγRIIIb表現型を考慮せずにRAの診断を行うことが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FcγレセプターIIIaに特異的に結合する抗体。
【請求項2】
FcγレセプターIIIaに特異的に結合する抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
請求項2に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項4】
FcγレセプターIIIaに特異的に結合する抗体を用い、免疫学的測定方法により測定することを特徴とする、FcγレセプターIIIa量の測定方法。
【請求項5】
FcγレセプターIIIaに特異的に結合する抗体がモノクローナル抗体である、請求項4に記載の測定方法。
【請求項6】
更にFcγレセプターIIIaに結合する抗体を組み合わせて使用することを特徴とする、請求項4に記載の測定方法。
【請求項7】
抗体の何れか一方が標識物質で標識されている請求項6に記載の測定方法。
【請求項8】
抗体の何れか一方が不溶性担体に固定化されており、他方が標識物質で標識されている請求項6に記載の測定方法。
【請求項9】
不溶性担体に固定化された抗体と、試料中の可溶性FcγレセプターIIIaと、標識物質で標識された抗体との複合体を形成させ、当該複合体中の、標識物質量に基づいて試料中の可溶性FcγレセプターIIIa量を測定することを特徴とする、請求項8に記載の測定方法。
【請求項10】
不溶性担体に固定化された抗体と試料とを反応させて該固定化抗体と試料中の可溶性FcγレセプターIIIaとの複合体−1を形成させ、次いで、該複合体−1を、標識物質が結合した抗体と反応させて、複合体−1と該標識物質が結合した抗体との複合体−2を形成させ、更に、該複合体−2中の標識物質量に基づいて試料中の可溶性FcγレセプターIIIa量を測定する請求項8に記載の測定方法。
【請求項11】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項6記載の測定方法。
【請求項12】
FcγレセプターIIIaに特異的に結合する抗体と要すればFcγRIIIaに結合する抗体を用い、請求項4〜11に記載の方法で試料中の可溶性FcγレセプターIIIa量を測定し、その測定結果に基づいて行う、慢性関節リュウマチの診断方法。
【請求項13】
測定結果を予め定められた量と比較して、その結果に基づいて行う請求項12記載の診断方法。
【請求項14】
予め定められた量が、健常者検体由来試料中の可溶性FcγレセプターIIIa量に基づいて定められたものである、請求項13記載の診断方法。
【請求項15】
i)FcγレセプターIIIaに特異的に結合する抗体と、要すればFcγレセプターIIIaに結合する抗体とを用い、請求項4〜11に記載の方法で健常者検体由来試料中の可溶性FcγレセプターIIIa量を測定し、その値を基準値として用い、
ii)FcγレセプターIIIaに特異的に結合する抗体と、要すればFcγレセプターIIIaに結合する抗体とを用い、請求項4〜11に記載の方法で診断すべき試料中の可溶性FcγレセプターIIIa量を測定し、
iii)診断すべき試料中の可溶性FcγレセプターIIIa量が、基準値に対して有意差があるか否かを判定し、有意に高い場合を慢性関節リュウマチであると診断する、請求項12記載の診断方法。
【請求項16】
FcγレセプターIIIaに特異的に結合する抗体を含んでなる、FcγレセプターIIIa測定用キット。
【請求項17】
FcγレセプターIIIaに特異的に結合する抗体がモノクローナル抗体である、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
更にFcγレセプターIIIaに結合する抗体を含んでなることを特徴とする、請求項16に記載のキット。
【請求項19】
抗体の何れか一方が不溶性担体に固定化されており、他方が標識物質で標識されている請求項18に記載のキット。
【請求項20】
不溶性担体に固定化された、FcγレセプターIIIaに特異的に結合するモノクローナル抗体と、標識物質で標識された、FcγレセプターIIIaに結合するモノクローナル抗体とを含んでなる、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
FcγレセプターIIIaに結合する抗体と、FcγレセプターIIIaに特異的に結合する抗体を含んでなる、慢性関節リュウマチ診断用キット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−25695(P2006−25695A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209162(P2004−209162)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000252300)和光純薬工業株式会社 (105)
【Fターム(参考)】