説明

Fe系金属板及びその製造方法

【課題】{100}面をより高集積化して高磁束密度化し、異種金属元素が濃化して鉄損特性に優れたFe系金属板を提供する。
【解決手段】α−γ変態系のFe系母材金属板の表面と裏面にフェライト生成元素を濃化させて形成した異種金属元素濃化領域と、前記表面に形成された前記異種金属元素濃化領域中に形成されたα単相表面側領域と、前記裏面に形成された前記異種金属元素濃化領域中に形成されたα単相裏面側領域と、前記α単相表面側領域の一部と前記α単相裏面側領域の一部とに跨る結晶粒とを備え、前記α単相表面側領域の割合と前記α単相裏面側領域の割合との和であるα単相領域の割合を面積率で1〜90%とし、前記結晶粒の含有量を面積率で3〜90%とし、前記表面と前記裏面のα−Fe相の面集積度それぞれを、{200}面集積度で30〜99%、{222}面集積度で0.01〜30%とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Fe系金属板及びその製造方法に関する。本発明は、特に、電動機、発電機、変圧器の磁心等の用途に好適であり、これらの磁心の小型化やエネルギー損失低減に貢献する、{200}面集積度が高いFe系金属板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電動機、発電機、変圧器等の磁心には珪素鋼板が用いられている。珪素鋼板には小さな励磁磁場で高磁束密度が得られること、交流励磁磁場において低鉄損であることが求められる。
【0003】
高磁束密度を得るためには、磁化容易方向であるα−Fe相の<100>軸を、使用する磁界方向に集積させることが有効とされている。即ち、鋼板面内にα−Fe相の{100}面を高集積化させる必要がある。
【0004】
圧延面内に{100}面を高集積化させ、高磁束密度が得られるFe系金属板については、次のような技術が知られている。
【0005】
特許文献1には、Si:0.1〜3.5%を含有する珪素鋼板において、熱間仕上げ圧延を通常より高温・強圧下条件にすることで、結晶粒径10μm以上500μm以下に限定し、{100}<001>集積度がランダム組織の10倍以上の集合組織を得る技術が記載されている。この技術により、交流磁心としての用途に好適な優れた磁気特性を有する電磁鋼板が得られる。
【0006】
また、鉄損を低減するために、電気抵抗を大きくして渦電流を減少させたり、磁壁の移動を妨害する介在物を少なくしたりすることが行われてきた。鉄損は、渦電流損とヒステリシス損の和で表されるからである。
【0007】
従来から、渦電流損を低減するため、鋼板の電気抵抗を上げたり、鋼板の薄手化が行われてきた。そして、ヒステリシス損を低減するため、二次再結晶によって結晶粒を粗大化させて、磁壁のピンニングサイトとなる結晶粒界を減らすことが行われてきた。
【0008】
例えば、特許文献2にはSol.Alを25ppm以上300ppm以下含有する二次再結晶粒より構成された一方向性電磁鋼板に冷延と1050℃以上1300℃以下の浸珪処理を行い、高磁束密度と低鉄損を両立する磁気特性を得る技術が記載されている。
【0009】
特許文献3には、板厚をt、平均結晶粒径をdとした場合、0.03mm≦t≦0.15mm、1≦d/t<5であり、かつ、ゴス方位である{110}<001>方位からのずれが15°未満である結晶の、全体に対する面積率が10%以上90%未満であり、鋼板表層から板厚×0.1の深さまでの領域の平均Si濃度が6.0〜6.5質量%、板厚中央部の平均Si濃度が3.8〜5.0質量%である電磁鋼板を得る技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−172382号公報
【特許文献2】特開平2008−169450号公報
【特許文献3】特開2009−235529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1〜3に記載された従来技術では、均一組成で{100}高配向した鋼板の結晶粒径を熱処理条件で粗大化させたり、既に{100}高配向した一方向性電磁鋼板に浸珪処理して低鉄損化させたりしていた。しかしながら、このような均一組成では十分に鉄損を下げることができない。また、方向性電磁鋼板の製品にさらに浸珪処理をするには莫大な工数を要していた。加えて、高磁束密度かつ低鉄損を、高いレベルで両立している技術はなかった。
【0012】
かかる実情に鑑み、本発明は、{100}面をより高集積化して高磁束密度化し、異種金属元素が濃化して鉄損特性に優れたFe系金属板、及び、そのようなFe系金属板を安定的に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、組成が均一でないFe系金属板の鉄損について、鋭意研究、検討を行った。その結果、本発明者らは、異種金属元素としてフェライト生成元素を選択したとき、そのフェライト生成元素が濃化して、Fe系金属板表層の電気抵抗が増加することを見出した。加えて、{100}粒が、Fe系金属板の表裏面付近に存在するα単相表面側領域の一部とα単相裏面側領域の一部とに跨って存在すると、Fe系金属板の表裏面付近で磁壁の数が増加し、鉄損に好影響を及ぼす現象を見出した。
【0014】
この磁壁数の増加は、フェライト生成元素の濃化が局所的な磁歪差を生み、静磁エネルギーと磁壁エネルギーの和を最小にしようとして生じたものと考えられる。そして、この磁壁数の増加は、特に、α単相表面側領域の一部とα単相裏面側領域の一部に跨った結晶粒の鋼板面に平行な面方位が{100}であると大きくなる。
【0015】
ここで、磁壁の数が増加すると、磁化反転の際に磁壁の移動距離が短くなって、表層を流れる渦電流が小さくなる。このため、表層の電気抵抗増加と相まって、磁壁数の増加効果によって、渦電流損失は大きく低減することを知見した。
【0016】
また、このα単相領域へ跨った結晶粒の粒径が粗大であると、板厚中心部では結晶粒界が少なくなり、ヒステリシス損も低減できることを、併せて知見した。
【0017】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、その要旨は次のとおりである。
【0018】
(1)α−γ変態系のFe系母材金属板の表面と裏面にフェライト生成元素を濃化させて形成した異種金属元素濃化領域と、前記表面に形成された前記異種金属元素濃化領域中に形成されたα単相表面側領域と、前記裏面に形成された前記異種金属元素濃化領域中に形成されたα単相裏面側領域と、前記α単相表面側領域の一部と前記α単相裏面側領域の一部とに跨る結晶粒とを備え、
前記α単相表面側領域の割合と前記α単相裏面側領域の割合との和であるα単相領域の割合が面積率で1%以上90%以下であり、前記結晶粒の含有量が面積率で3%以上90%以下であり、前記表面と前記裏面のα−Fe相の面集積度それぞれが、{200}面集積度で30%以上99%以下、{222}面集積度で0.01%以上30%以下であることを特徴とするFe系金属板。
【0019】
(2)前記α−γ変態系のFe系母材金属板の成分組成が、C:1質量ppm〜0.2質量%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなることを特徴とする上記(1)に記載のFe系金属板。
【0020】
(3)前記α−γ変態系のFe系母材金属板の成分組成が、C:1質量ppm〜0.1質量%、Si:0.1〜2.5質量%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなることを特徴とする上記(1)に記載のFe系金属板。
【0021】
(4)前記結晶粒が、前記Fe系金属板の板厚方向断面における圧延方向の粒径をd、前記Fe系金属板の板厚をtとしたとき、0.01mm≦t≦2mm、かつ、0.1t≦d≦5tを満足することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のFe系金属板。
【0022】
(5)前記結晶粒の含有量が、面積率で10%以上90%以下であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のFe系金属板。
【0023】
(6)前記異種金属元素濃化領域に濃化されるフェライト生成元素が、Al、Cr、Ga、Ge、Mo、Si、Sn、Ti、V、W、及びZnのうちから選んだ1種以上の元素であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のFe系金属板。
【0024】
(7)α−γ変態系のFe系母材金属板を冷間加工し、冷間加工前のビッカース硬さをH0、冷間加工後のビッカース硬さをH1としたときのH1−H0を、110Hv以上210Hv以下にして高い歪を付与しつつ、フェライト生成元素を前記Fe系母材金属板の表面と裏面に付着させ、異種金属元素付着金属板とする異種金属元素付着工程と、
前記異種金属元素付着金属板を、A3点以上1300℃以下の温度T1に加熱し、温度T1で0.01〜6000分間保持したのち、さらに、T1以上1300℃以下の温度T2に加熱しし、温度T2で0.01分以上6000分以下で保持したあと、A3点未満の温度へ冷却するに際し、A3点からA3点−50℃までの範囲を、平均冷却速度:50℃/分以下で冷却する熱処理工程と
を有することを特徴とするFe系金属板の製造方法。
【0025】
(8)前記α−γ変態系のFe系母材金属板の成分組成が、C:1質量ppm〜0.2質量%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなることを特徴とする上記(7)に記載のFe系金属板の製造方法。
【0026】
(9)前記α−γ変態系のFe系母材金属板の成分組成が、C:1質量ppm〜0.1質量%、Si:0.1〜2.5質量%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなることを特徴とする上記(7)に記載のFe系金属板の製造方法。
【0027】
(10)前記熱処理工程が、前記異種金属元素付着金属板を、A3点からA3点−10℃までの範囲につき、平均冷却速度:20℃/分以下で冷却することを特徴とする上記(7)〜(9)のいずれかに記載のFe系金属板の製造方法。
【0028】
(11)前記異種金属元素付着工程が、フェライト生成元素として、Al、Cr、Ga、Ge、Mo、Si、Sn、Ti、V、W、及びZnのうちから選んだ1種類以上を、前記Fe系母材金属板の表面と裏面に付着させることを特徴とする上記(7)〜(10)のいずれかに記載のFe系金属板の製造方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、高い周波数の交番磁界を鋼板に印加させたときに生じる鉄損を、著しく低減させることができる。即ち、本発明のFe系金属板においては、高い{200}面集積度により、高磁束密度化が達成される。また、同時に、異種金属であるフェライト生成元素がFe系金属板の表面と裏面に濃化し、表面と裏面に濃化した、これらの異種金属濃化領域を跨ぐ粗大化した結晶粒により、著しい低鉄損化が達成される。
【0030】
また、本発明によれば、既存設備を利用して、高磁束密度で低鉄損のFe系金属板を短時間に、安定して製造することができ、経済性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のFe系金属板の板厚方向断面における金属組織を説明する図である。
【図2】本発明のFe金属板の製造方法の概要を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明のFe系金属板の板厚方向断面における金属組織を説明する図である。図1の符号1は、本発明のFe系金属板を示す。
【0033】
Fe系金属板1は、図1に示したように、α−γ変態系鋼板5の表裏面に異種金属元素濃化領域10a、10bを有する。異種金属元素濃化領域10aのある側を表面、異種金属元素濃化領域10bのある側を裏面と、便宜上するが、逆でもよい。
【0034】
異種金属元素濃化領域10aの中は、α単相表面側領域12a、異種金属元素濃化領域10bの中は、α単相裏面側領域12bとなっている。そして、α単相表面側領域12aの一部と、α単相側裏面側領域12bの一部とに跨る粗大化した結晶粒20を有する。
【0035】
Fe系金属板1の特徴について、組成、α−Fe相の面集積度、異種金属元素の種類、異種金属元素濃化領域の厚さ、α単相表面側領域及びα単相裏面側領域の量(割合)、Fe系金属板の板厚、結晶粒の大きさ、及び、結晶粒の含有量(割合)に分けて説明する。
【0036】
(組成)
Fe系金属板1の組成は、異種金属元素濃化領域10a、10bを除き、A3点を有するα−γ変態系の組成である。即ち、C:1質量ppm〜0.2質量%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなる金属板を基本とする。このような金属板としては、例えば、純鉄又は低炭素鋼があるが、これに限られるものではない。これに、適宜、添加元素を含有させる。例えば、C:1質量ppm〜0.1質量%、Si:0.1〜2.5質量%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなるα−γ変態系成分の組成を有する珪素鋼板である。
【0037】
なお、α−γ変態系成分の組成を有するFe系金属板に含有される不純物は、微量のMn、Ni、Cr、Al、Mo、W、V、Ti、Nb、B、Cu、Co、Zr、Y、Hf、La、Ce、N、O、P、S等である。
【0038】
(α−Fe相の面集積度)
Fe系金属板1の板面に対するα−Fe相の{200}面集積度は、30%以上99%以下とする必要がある。この集積度が30%未満であると、十分に高い磁束密度が得られない。一方、99%を超えると、磁束密度は飽和し、製造も困難になる。好ましくは、50%以上95%以下である。
【0039】
また、{222}面集積度は、0.01%以上30%以下とする必要がある。0.01%未満であると、磁束密度は飽和し、製造も困難になる。一方、30%を超えると、十分に高い磁束密度は得られなくなる。好ましくは、0.01%以上15%以下である。
【0040】
これらの面集積度の測定は、MoKα線によるX線回折によって行うことができる。X線回折法において{100}面は、ブラッグの反射条件により{200}面として反射が得られるため、{100}面のX線反射強度は{200}面集積度と表す。
【0041】
詳細に述べると、各試料について試料表面に対して平行なα−Fe結晶の11ある方位面({110}、{200}、{211}、{310}、{222}、{321}、{411}、{420}、{332}、{521}、{442})の積分強度を測定し、その測定値それぞれを、ランダム方位である試料の理論積分強度で除した後、{200}あるいは{222}強度の比率を百分率で求める。
【0042】
その際、例えば{200}強度比率では、以下の式(I)で表される。
{200}面集積度=[{i(200)/I(200)}/Σ{i(hkl)/I(hkl)}]×100 ・・・(I)
ただし、記号は以下のとおりである。
i(hkl):測定した試料における{hkl}面の実測積分強度
I(hkl):ランダム方位をもつ試料における{hkl}面の理論積分強度
Σ{i(hkl)/I(hkl)}:α−Fe結晶の11の方位面についての和
ここで、ランダム方位をもつ試料の積分強度は、試料を用意して実測してもよい。
【0043】
なお、α−Fe相の面集積度は、Fe系金属板1の表面と裏面のそれぞれについて、上記の内容を満足する必要がある。
【0044】
(異種金属元素の種類)
異種金属元素濃化領域10a、10b中の異種金属元素としてフェライト生成元素を用いると、その元素が拡散した領域はα単相となり、{200}面集積度を高めるための{100}配向した結晶粒をFe系金属板中に存在させおくことができる。
【0045】
また、フェライト生成元素には、Al、As、Be、Cr、Ga、Ge、Mo、P、Sb、Si、Sn、Ti、V、W、Znがあるが、As、Be、PやSbは人体に有害であり、扱いが危険であるため、Al、Cr、Ga、Ge、Mo、Si、Sn、Ti、V、W、Znのうちから、少なくとも1種類以上の元素を選ぶことが好ましい。
【0046】
(異種金属元素濃化領域の厚さ)
異種金属元素濃化領域10a、10bそれぞれの厚さは、Fe系金属板1の板厚をtとしたとき、最大で0.45tとすることが好ましい。0.45tを超えると、十分に渦電流損失を抑えることができず、優れた鉄損特性を得られないことがあるためである。
【0047】
(α単相表面側領域の割合とα単相裏面側領域の割合の和であるα単相領域の割合)
異種金属元素濃化領域10a、10bのうち、異種金属元素との合金化によりα単相の成分となった部分においては、α単相表面側領域12a、α単相裏面側領域12bが形成される。ここで、α単相表面側領域12aの量(割合)は、任意の厚さ断面で観察したFe系金属板1の断面の面積をS0、表面側の異種金属元素濃化領域10aにおける異種金属元素の濃度がC0以上である領域の面積をS1として、S1/S0×100(%)で定義する面積率である。
【0048】
同様に、α単相裏面側領域12bの量(割合)は、S2/S0×100(%)で定義する面積率である。なお、単に、「α単相領域の割合」といった場合には、α単相領域12aの面積率とα単相領域12bの面積率の合計である。即ち、(S1+S2)/S0×100(%)となる。
【0049】
このα単相領域の割合は3%以上である必要がある。3%未満では熱処理後に{200}面集積度を30%以上とすることが困難だからである。一方、α単相領域の割合は、高いほどよい。しかし、α単相領域の割合は、上述したように、Fe系金属板1の断面積S0に対する比である。Fe系金属板1の断面には、結晶粒20などがあるため、α単相領域の割合は、90%を上限とする。ここで、異種金属元素濃度C0は、Feと該異種金属元素の2元系状態図でγ−ループ上の最も大きな濃度である。例えば、AlではC0=0.9質量%である。
【0050】
(Fe系金属板の板厚)
Fe系金属板1の板厚は、図1において、tで示される。tは10μm以上、2mm以下が好ましい。tが10μm以上であれば、Fe系金属板1を積層させて磁心として使用する際に、一枚毎の磁束密度が十分であり、高い磁束密度を有する磁心が得られる。また、2mm以下であると、Fe系金属板1の{200}面集積度が高くなり、高い磁束密度が得られる。
【0051】
(結晶粒の大きさ)
図1に示したように、異種金属元素濃化領域10a、10bの内部は、母材金属板と異種金属元素とが合金化される。この合金化により、Fe系金属板1の表裏面それぞれにα単相表面側領域12a、α単相裏面側12bが形成される。
【0052】
Fe系金属板1の板厚方向断面には、α単相表面側領域12aの一部とα単相裏面側領域12bの一部とに跨る結晶粒20が存在する。任意で選んだFe系金属板1の板厚方向断面における圧延方向の結晶粒径をd、Fe系金属板1の板厚をtとすると、0.1t≦d≦5tであることが好ましい。結晶粒径dが0.1t未満であると、磁壁の移動を妨げる粒界が多くなるため十分な鉄損特性を得られないことがあるからである。一方、5tを超えると、長時間の熱処理が必要であるため、製造コストがかかるからである。なお、この場合の板厚の範囲は、0.01mm≦t≦2mmとする。
【0053】
(結晶粒の含有量(割合))
結晶粒の含有量(割合)は、任意で選んだ熱処理後のFe系金属板1の板厚方向断面の面積における結晶粒20の面積率で定義する。即ち、任意で選んだ熱処理後のFe系金属板1の断面積をT0、同じ断面における熱処理後の結晶粒20の面積をTとして、結晶粒の含有量(割合)を、T/T0×100(%)で定義する。即ち、T/T0×100(%)は、面積率である。
【0054】
結晶粒の含有量(割合)は3%以上とすることが必要である。3%未満では、結晶粒20の表面付近で磁壁の数を増加させることが困難になり易いからである。さらに、磁壁の移動を妨げる粒界が板厚中心部に多く存在するため、十分な鉄損特性を得られないことがあるからである。より優れた鉄損特性を得るためには10%以上とすることが好ましい。
【0055】
一方、結晶粒の含有量(割合)は、高いほどよい。しかし、結晶粒の含有量(割合)は、上述したように、Fe系金属板1の断面積T0に対する比である。Fe系金属板1の断面には、α単相表面側領域12aなどがあるため、結晶粒の含有量(割合)は、90%を上限とする。なお、結晶粒20は、α単相表面側領域12aとα単相裏面側領域12bに跨ることから、結晶粒20とα単相表面側領域12aには重複部分があり、結晶粒20とα単相裏面側領域12bには重複部分がある。したがって、α単相領域の割合と結晶粒の含有量(割合)との和は100%を超えることがある。
【0056】
次に本発明のFe系金属板の製造方法について説明する。
【0057】
(製造方法の概要)
本発明のFe金属板の製造方法の概要を図2に示す。本発明の母材金属板は、α−γ変態系の成分を有するFe系金属板を母材金属板とし、冷間加工中に両面に異種金属元素であるフェライト生成元素を付着させ、異種金属元素付着金属板とする。この異種金属元素付着金属板を、常温からA3点以上1300℃以下の温度T1まで加熱してフェライト生成元素を母材金属板内へ拡散、合金化させ、A3点以上1300℃以下の温度T1まで加熱して、0.01〜6000分間保持する。また、加熱した異種金属元素付着金属板を冷却する過程で、冷却速度を所定以下とすることにより、異種金属濃化領域に跨った結晶粒が得られる。そして、Fe系金属板の板面の{200}面集積度が高くすることができる。以下、詳細に説明する。
【0058】
(冷間加工方法)
母材金属板として用いられるFe系金属板は、A3点を有するα−γ変態系の成分を有しており、高歪みになるように冷間で加工される必要がある。冷間加工によって歪みエネルギーを蓄積することで、再結晶後に{100}配向した組織が得られる。
【0059】
冷間加工の程度は、金属板表面の硬度で制御する。圧延面から測定したビッカース硬さのうち、冷間加工前をH0、冷間加工後をH1として、H1−H0が110Hv以上210Hv以下であると、再結晶後に{100}配向した結晶粒が得られる。特にH1−H0が150Hv以上とすると、低温でも{100}粒が再結晶できるため好ましい。一方、H1−H0を210Hv超にする冷間加工は困難である。
【0060】
冷間加工の方法としては、冷間圧延やショットブラスト等が挙げられる。また、これらを組み合わせでもよい。
【0061】
(フェライト生成元素の付着方法)
母材金属板の表面と裏面に、異種金属元素であるフェライト生成元素を付着させる方法としては、溶融めっきや電解めっき等のめっき法、圧延クラッド法、PVDやCVD等のドライプロセス、さらには粉末塗布等の種々の方法が採用可能である。工業的には、効率のよい、めっき法あるいは圧延クラッド法が適している。
【0062】
フェライト生成元素としては、上述したように、Al、Cr、Ga、Ge、Mo、Sb、Si、Sn、Ti,V、W、及びZnのうちの1種類以上の元素であることが好ましい。
【0063】
フェライト生成元素を付着させた異種金属元素付着金属板は加熱されるが、加熱前の付着厚さは0.05μm以上1000μm以下であることが好ましい。付着厚みが0.05μm以下では十分な{200}面集積度を得ることができないことがある。一方、1000μmを超えると、剥離等の欠陥が発生する可能性がある。
【0064】
また、異種金属元素付着金属板に、追加で冷間加工を行い、さらに歪みエネルギーを累積させることも再結晶後に{100}高配向する組織を得る上で有効である。
【0065】
(熱処理工程)
異種金属元素付着金属板を常温からA3点以上1300℃以下の温度T1まで加熱して、異種金属元素付着金属板を再結晶させるとともに、異種金属元素であるフェライト生成元素を異種金属元素付着金属板の板厚中心方向へ拡散させて、母材金属板成分と合金化させる。T1はA3点以上であれば、フェライト元素の拡散に支障はないが、1300℃を超えると、効果が飽和することになる。
【0066】
また、T1での保持時間は、0.01〜6000分とする必要がある。0.01分未満では、フェライト元素の拡散が十分ではない。一方、6000分を超えると効果が飽和して不経済となる弊害があるからである。
【0067】
1で保持した後の異種金属元素付着金属板の再結晶粒は、{100}に配向しており、その後の{100}面集積度を高めるための芽となる。異種金属元素であるフェライト生成元素と合金化した領域では、{100}に配向したα単相表面側領域12a及びα単相裏面側領域12bとなる。なお、フェライト生成元素と合金化する領域は母材金属板全体でも一部の領域でもよい。
【0068】
次に、T1以上1300℃以下の温度T2まで加熱して、温度T2で保持する。異種金属元素と合金化した領域では、α単相領域であるためγ変態は起こらず、{100}に配向した結晶粒が成長し、{200}面集積度が増加する。
【0069】
合金化していない領域がある場合には、A3点を超えると、α−γ変態が起こり、γ.相となる。金属板はA3点以上1300℃以下の温度で0.01分以上6000分以下の時間で保持してから、冷却を開始する。この条件を満たすと、冷却後に高い{200}面集積度を得ることができる。
【0070】
保持温度T2がT1点未満では、十分な{200}面集積度は得られない。また、1300℃を超す温度で保持すると、異種金属元素の拡散速度が大きく、拡散領域の異種金属元素の濃度がC0を下回るため、α単相領域が所望の割合とならない。また、製品形状が悪くなるため、好ましくない。
【0071】
2での保持時間が0.01分未満では、{200}面集積度が十分ではなく、一方、6000分を超えても、{200}面集積度を向上させる効果は飽和する。
【0072】
2での保持が終了した異種金属元素付着金属板は、所定の速度で冷却される。冷却の過程で、異種金属元素と合金化した領域では、{100}に配向したα単相表面側領域12aとα単相裏面側領域12bとが形成される。
【0073】
冷却開始時点で合金化していない領域、即ち、γ相領域では、γ.からαへと変態する際に、α単相表面側領域12a又はα単相裏面側領域12bに隣接する領域では、{100}配向したα粒の結晶方位を引き継いで変態し、{100}配向した結晶粒20となる。
【0074】
この時、A3点からA3点−50℃まで冷却する際の平均冷却速度は50℃/分以下とする必要がある。この範囲の冷却速度において、隣接する{100}に配向した結晶粒同士が合体・成長し、α単相表面側領域12aの一部とα単相裏面側領域12bの一部に跨る粗大な結晶粒20となり、優れた鉄損特性を得られる。A3点からA3点−50℃までの平均冷却速度が50℃/分を超えると、結晶粒20の成長に十分な時間がなく、優れた鉄損特性が得られない。一方、A3点からA3点−50℃までの平均冷却速度の下限に制限はないが、生産性の観点から1℃/分を下限とすることが好ましい。
【0075】
また、より優れた鉄損特性を得るためには、A3点からA3点−10℃まで冷却する際の平均冷却速度を20℃/分以下とすることが好ましい。一方、A3点からA3点−10℃までの平均冷却速度の下限に制限はないが、生産性の観点から1℃/分を下限とすることが好ましい。
【実施例】
【0076】
本発明を実施例でさらに説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
従来では、加熱温度からA3点未満の室温までの平均冷却速度を0.1℃/sec以上500℃/sec以下としていた。これに対して、本発明の冷却はA3点からA3−50℃の間の平均冷却速度を50℃/min以下とし、これによって本発明のα単相表面側領域12aの一部とα単相裏面側領域12bの一部に跨る粗大な結晶粒20を得た。従来の冷却速度は室温までの平均値であり、高温ほど冷却速度は高くなり、A3点からA3−50℃の間では50℃/minを超えていた。したがって、本発明のα単相表面側領域12aの一部とα単相裏面側領域12bの一部に跨る粗大な結晶粒20は得られなかった。
【0077】
真空溶解炉で鋼を溶解し、表1に示す成分組成に調整したインゴットを鋳造した。インゴットをγ域まで加熱して熱間圧延し、厚さ100mmの熱延板とし、この熱延板を母材金属板とした。なお、この母材金属板のA3点は、鋼種1が911℃、鋼種2が921℃、鋼種3が1014℃であった。
【0078】
【表1】

【0079】
このようにして得られた母材金属板に冷間加工として冷間圧延を行い、厚さ50mmの冷延板とし、次いで、800℃で1時間加熱して焼鈍を行った。なお、ショットブラストを行わない場合のH1−H0は、焼鈍後の時点で測定した。
【0080】
また、一部の焼鈍後の冷延板には、冷間加工として、さらに、ショットブラストを施した。ショットブラストは、直径1〜3mmの鉄ビーズを用いて、両面に5分ずつ連続して行った。
【0081】
冷間圧延のみ、又は、冷間圧延とショットブラストの両方を行った金属板の両面に、発明例においては、異種金属元素として、フェライト生成元素を付着させた。比較例においては、異種金属元素として、オーステナイト生成元素であるNiを付着させた。異種金属元素はEB蒸着法、めっき法及びスパッタ法によって、冷間加工後のFe系金属板に付着させた(皮膜した)。
【0082】
次いで、異種金属元素付着金属板に熱処理を行った。熱処理炉には赤外炉を用い、10-3Paレベルまで真空引きした雰囲気中で熱処理した。熱処理条件は表2、4、6、8中に示した。なお、温度T1での保持は、T1を1000℃、保持時間を0.1〜7500分とした。冷却過程が急冷の場合には、Arガスを吹付けることによって冷却速度を調整した。
【0083】
得られたFe系金属板を次のように評価した。集合組織については、X線回折法で評価した。磁気特性については、SST(Single Sheet Tester)を用いて、5000A/mの磁化力に対する磁束密度B50を求めた。この時、測定周波数は50Hzとした。
【0084】
また、鉄損はJISC 2556に準拠し、単板磁気試験機(SST)でW10/400を求めた。
【0085】
ビッカース硬さは、冷間加工の前と、全ての冷間加工が終わった後に、それぞれ圧延面から測定した。マイクロビッカース硬さ試験機によって、荷重98mN、保持時間10秒とし、10点測定してその平均値をその試験片の硬さとした。冷間加工が終わった後、異種金属元素付着金属板の表面に、付着していない異種金属が残存している場合には、異種金属を除去してから硬さ試験を行った。
【0086】
また、α単相領域の含有量(割合)は次のように定義して求めた。圧延方向に平行な断面における全厚みの視野で、EPMA(Electron Probe Micro-Analysis)法を用いて、Fe含有量と異種金属元素含有量の面分布を測定した。α単相領域の割合は、長手方向の圧延断面の断面で観察した断面の面積をS0、異種金属元素の濃度がC0以上である領域をS1及びS2とし、(S1+S2)/S0×100(%)で定義した。例えば、異種金属元素がAlの場合C0は0.9質量%、Beの場合C0は0.5質量%、Snの場合C0は2.9質量%である。
【0087】
圧延方向の結晶粒径は任意の厚さ断面で、線分法によって求めた。また、結晶粒の含有量(割合)は、任意の厚さ断面の面積をT0、同じ断面における熱処理後の両面のα単相表面側領域12aの一部とα単相裏面側領域12bの一部に跨る結晶粒20の面積の合計をTとして、結晶粒20の含有量(割合)を、T/T0×100(%)で求めた。
【0088】
表2、4、6、8には詳細な製造条件を、表3、5、7、9にはそれによって得られたFe系金属板の{200}面集積度や磁気特性、結晶粒の含有量(割合)等の評価結果を示す。なお、表2、4、6、8において、紙面の都合上、「A3点からA3点−50℃までの平均冷却速度」は、「A3−50℃までの冷却速度」と略記してある。同様に「A3点からA3点−10℃まで平均冷却速度」は、「A3−10℃までの冷却速度」と略記してある。
【0089】
【表2】

【0090】
【表3】

【0091】
【表4】

【0092】
【表5】

【0093】
【表6】

【0094】
【表7】

【0095】
【表8】

【0096】
【表9】

【0097】
表2〜表9から明らかなように、本発明のFe系金属板は、高い{200}面集積度が得られることを確認できた。また、本発明のFe系金属板は、α単相表面側領域12aの一部とα単相裏面側領域12bの一部に跨る粗大な結晶粒20を有しており、高磁束密度かつ低鉄損のFe系金属板が得られていることを確認できた。
【0098】
また、冷間加工は冷間圧延に限らず、冷間圧延とショットブラストの組み合わせであっても、冷間加工の前後でビッカース硬さの差が十分であれば、本発明の高磁束密度かつ低鉄損のFe系金属板が得られることを確認できた。
【0099】
これに対し、異種金属元素を付着させなかった場合や、異種金属元素が、フェライト生成元素ではなく、オーステナイト生成元素の場合には、高磁束密度と低鉄損を両立するFe系金属板は得られなかった。
【0100】
また、試料No.4のように、熱処理の最高温度がA3点以下の場合、十分な{200}面集積度が得られなかった。試料No.10のように、冷却速度が大き過ぎる場合には、α単相表面側領域10aの一部とα単相裏面側領域10bの一部に跨る結晶粒20の大きさが十分でなく、本発明のような、高磁束密度と低鉄損を両立するFe系金属板は得られなかった。
【0101】
そして、母材金属板の組成が、表1の鋼種3のように、α単相系であると、十分に高い{200}面集積度が得られなかった。
【0102】
なお、上述したところは、本発明の実施形態を例示したものにすぎず、本発明は、特許請求の範囲の記載範囲内において種々変更を加えることができる。
【0103】
例えば、冷延板の焼鈍及び酸洗の両方又は一方を省略して、Fe系母材金属板としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明のFe系金属板は、HV車モーター用コア材等へ好適であり、珪素鋼板を用いる場合と比べて、磁気特性と鉄損を著しく改善できるため、HV車等の効率向上やエネルギー損失低減に貢献できる。
【符号の説明】
【0105】
1 Fe系金属板
5 α−γ変態系鋼板(Fe系母材金属板)
10a、10b 異種金属元素濃化領域
12a α単相表面側領域
12b α単相裏面側領域
20 結晶粒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−γ変態系のFe系母材金属板の表面と裏面にフェライト生成元素を濃化させて形成した異種金属元素濃化領域と、前記表面に形成された前記異種金属元素濃化領域中に形成されたα単相表面側領域と、前記裏面に形成された前記異種金属元素濃化領域中に形成されたα単相裏面側領域と、前記α単相表面側領域の一部と前記α単相裏面側領域の一部とに跨る結晶粒とを備え、
前記α単相表面側領域の割合と前記α単相裏面側領域の割合との和であるα単相領域の割合が面積率で1%以上90%以下であり、前記結晶粒の含有量が面積率で3%以上90%以下であり、前記表面と前記裏面のα−Fe相の面集積度それぞれが、{200}面集積度で30%以上99%以下、{222}面集積度で0.01%以上30%以下であることを特徴とするFe系金属板。
【請求項2】
前記α−γ変態系のFe系母材金属板の成分組成が、C:1質量ppm〜0.2質量%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなることを特徴とする請求項1に記載のFe系金属板。
【請求項3】
前記α−γ変態系のFe系母材金属板の成分組成が、C:1質量ppm〜0.1質量%、Si:0.1〜2.5質量%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなることを特徴とする請求項1に記載のFe系金属板。
【請求項4】
前記結晶粒が、前記Fe系金属板の板厚方向断面における圧延方向の粒径をd、前記Fe系金属板の板厚をtとしたとき、0.01mm≦t≦2mm、かつ、0.1t≦d≦5tを満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のFe系金属板。
【請求項5】
前記結晶粒の含有量が、面積率で10%以上90%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のFe系金属板。
【請求項6】
前記異種金属元素濃化領域に濃化されるフェライト生成元素が、Al、Cr、Ga、Ge、Mo、Si、Sn、Ti、V、W、及びZnのうちから選んだ1種以上の元素であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のFe系金属板。
【請求項7】
α−γ変態系のFe系母材金属板を冷間加工し、冷間加工前のビッカース硬さをH0、冷間加工後のビッカース硬さをH1としたときのH1−H0を、110Hv以上210Hv以下にして高い歪を付与しつつ、フェライト生成元素を前記Fe系母材金属板の表面と裏面に付着させ、異種金属元素付着金属板とする異種金属元素付着工程と、
前記異種金属元素付着金属板を、A3点以上1300℃以下の温度T1に加熱し、温度T1で0.01〜6000分間保持したのち、さらに、T1以上1300℃以下の温度T2に加熱し、温度T2で0.01分以上6000分以下で保持したあと、A3点未満の温度へ冷却するに際し、A3点からA3点−50℃までの範囲は、平均冷却速度:50℃/分以下で冷却する熱処理工程と
を有することを特徴とするFe系金属板の製造方法。
【請求項8】
前記α−γ変態系のFe系母材金属板の成分組成が、C:1質量ppm〜0.2質量%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなることを特徴とする請求項7に記載のFe系金属板の製造方法。
【請求項9】
前記α−γ変態系のFe系母材金属板の成分組成が、C:1質量ppm〜0.1質量%、Si:0.1〜2.5質量%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなることを特徴とする請求項7に記載のFe系金属板の製造方法。
【請求項10】
前記熱処理工程が、前記異種金属元素付着金属板を、A3点からA3点−10℃までの範囲につき、平均冷却速度:20℃/分以下で冷却することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のFe系金属板の製造方法。
【請求項11】
前記異種金属元素付着工程が、フェライト生成元素として、Al、Cr、Ga、Ge、Mo、Si、Sn、Ti、V、W、及びZnのうちから選んだ1種類以上を、前記Fe系母材金属板の表面と裏面に付着させることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載のFe系金属板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−214888(P2012−214888A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−73142(P2012−73142)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】