説明

Gタンパク質共役型受容体変異体及びその選択方法

【課題】本発明者は、界面活性剤中におけるGPCRの安定性の欠如及びGPCRが多数の立体構造で存在する事実という、GPCRを結晶化する試みに関連する2つの重要な課題が存在することを見出した。
【解決手段】安定性が増大したGタンパク質共役型受容体(GPCR)を選択するための方法であって、(a)親GPCRの1つ又は複数の変異体を提供する工程、(b)親GPCRが特定の立体構造を備えている際に前記GPCRに結合するリガンドを選択する工程、(c)前記選択したリガンドの結合に関する前記親GPCRの安定性と比較して、前記GPCR変異体又はその各々が前記リガンド結合に関して増大した安定性を有するか否かを測定する工程、及び(d)前記選択したリガンドの結合に関して親GPCRと比較して増大した安定性を有する変異体を選択する工程を含む、方法を開示する。β−アドレナリン受容体、アデノシン受容体、及びニューロテンシン受容体の変異体も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)変異体及び増大した安定性を有するものを選択する方法に関する。特に、本発明は、それらの各々の親タンパク質と比較して、特定の条件下において増大した安定性を有するGPCR変異体の選択及び調製に関する。その様なタンパク質は結晶化可能である可能性がより高く、そのため、親タンパク質よりも構造決定に適している。それらは、薬剤探索及び開発のための研究にも有用である。
【背景技術】
【0002】
過去20年間に亘って、膜タンパク質の構造決定の速度は次第に向上されてきたが、大半の成功は、真核生物よりもむしろ細菌由来の膜タンパク質の結晶化におけるものであった(非特許文献1)。細菌の膜タンパク質は、大腸菌における標準的な技術を用いて、真核生物の膜タンパク質よりも容易に過剰発現することができ(非特許文献2及び3)、細菌タンパク質は場合によっては界面活性剤により安定であり、界面活性剤に対する安定性は、精製及び結晶化に本質的に必要な条件である。ゲノム配列決定プロジェクトは、特定のトランスポーター又はイオンチャンネルの多数のホモログのクローニング及び発現を可能にし、結晶化の成功率も非常に大きく改善した。しかしながら、現在までに解析されている120の異なる膜タンパク質構造のうち、7種のみの哺乳動物の完全な膜タンパク質の構造が存在し(http://blanco.biomol.uci.edu/)、これらの膜タンパク質の5種が天然の起源から精製されて、界面活性剤の溶液中で安定である。真核生物の膜タンパク質の過剰発現における困難性とは別に、真核生物の膜タンパク質は、多くの場合に、界面活性剤の溶液中において乏しい安定性を示し、それらが即時に変性又は沈殿せずに試験することが可能な結晶化条件の範囲が非常に制限される。理想的には、膜タンパク質は、任意の所定の界面活性剤溶液中において数日間に亘って安定であるべきであるが、回折に利用可能な品質の結晶を成長させるために最も適切な界面活性剤は、最も不安定化する界面活性剤、すなわち、短い脂肪族鎖と小さい若しくは荷電した頭部基と有するものである傾向がある。ヒトの膜タンパク質は医薬産業による治療剤開発に利用するために必要とされており、多くの場合において各種の異なる哺乳動物由来の受容体、チャンネル、及びトランスポーターには実質的に薬理学的な差異が存在する一方で、任意のホモログタンパク質が酵母及び細菌のゲノムには含まれていない可能性があることから、我々が解析したいものもヒトの膜タンパク質の構造である。かくして、結晶化及び構造決定並びに薬剤スクリーニング、バイオアッセイ、及びバイオセンサーにおける用途などの他の目的のために、界面活性剤に安定な真核生物の完全な膜タンパク質の生産を可能にする一般的な戦略の開発が非常に必要とされている。
【0003】
膜タンパク質は、細胞の生存能を保障するために膜において十分に安定であるように進化したが、界面活性剤溶液中で安定であるようには進化せず、このことは、膜タンパク質を人工的に進化させ、界面活性剤に安定な変異体を単離し得ることを示唆している(非特許文献4)。これが、その後、2種の細菌タンパク質、すなわち、ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)(非特許文献5及び6)並びにバクテリオロドプシン(非特許文献7)について実証された。DGKのランダム変異誘発によって、熱安定性を増大する特定の点変異が同定され、組み合わせた際に、天然のタンパク質が55℃で6分の半減期を有するのと比較して、最適な安定変異体が80℃で35分の半減期を有したため、その効果は相加的であった(非特許文献6)。界面活性剤耐性DGK変異体の三量体がSDS中で安定になり、かくして、オリゴマー状態の安定性が熱安定性において重要な役割を担っているようであることが示された。変異誘発の目的は結晶化に適切な膜タンパク質を生産することであるが、DGKの構造は未だ決定されておらず、成功裡に結晶化したという報告は存在しない。へリックスBに沿ったシステインスキャニング変異誘発によるバクテリアオロドプシンに対する更なる試験は、変異によって熱安定性を誘導するアミノ酸残基を予測することは不可能であり、構造における試験の際に、なぜ熱安定性が生じるのか明らかでないことを示した(非特許文献7)。
【0004】
GPCRは、多数の生理プロセスを調節する非常に大きなタンパク質ファミリーを構成し、多数の効果的な薬剤の標的である。かくして、それらは、非常に薬理学的に重要なものである。GPCRの一覧は、参照によって本明細書に取り込むFoord et al (2005) Pharmacol Rev. 57, 279-288に挙げられている。GPCRは一般的には単離した際に不安定であり、数多くの努力が為されたにもかかわらず、例外的に天然に安定であるウシロドプシン以外のものを結晶化することができなかった。
【0005】
GPCRは新薬の開発につながるような標的であり、現在の薬剤の四分の一超がGPCRを標的とすることを示すOverington et al (2006) Nature Rev. Drug Discovery 5, 993-996が特に参照される。
【0006】
GPCRは、アゴニスト及びアンタゴニストなどの各種の薬理学的な種類のリガンドと結合する多数の異なる立体構造で存在し、機能するためにこれらの立体構造の間で循環すると解されている(Kenakin T. (1997) Ann N Y Acad Sci 812, 116-125)。
【0007】
本発明の方法は、210位のThr残基はAla残基で置換された不活性変異体ヒトカンナビノイド受容体1(T210A)に対する[H]CP55940の結合を含むD’Antonaらによって公開された方法を含まないと解されるであろう。
【0008】
本明細書に記載の明らかに過去に公開された文献の記載又は議論は、必ずしも、その文献が従来技術の一部であるか又は一般的な技術常識であると認めるものと解されるべきではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】S. H. White (2004) Protein Sci 13, 1948-1949.
【非特許文献2】C. G. Tate (2001) FEBS Lett 504, 94-98.
【非特許文献3】R. Grisshammer, C. G. Tate (1995) Q Rev Biophys 28, 315-422.
【非特許文献4】J. U. Bowie (2001) Curr Opin Struct Biol 11, 397-402.
【非特許文献5】F. W. Lau, S. Nauli, Y. Zhou, J. U. Bowie (1999) J Mol Biol 290, 559-564.
【非特許文献6】Y. Zhou, J. U. Bowie (2000) J Biol Chem 275, 6975-6979.
【非特許文献7】S. Faham, D. Yang, E. Bare, S. Yohannan, J. P. Whitelegge, J. U. Bowie (2004) J Mol Biol 335, 297-305.
【非特許文献8】Y. Yarden, H. Rodriguez, S. K. Wong, D. R. Brandt, D. C. May, J. Burnier, R. N. Harkins, E. Y. Chen, J. Ramachandran, A. Ullrich, et al (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83, 6795-6799.
【非特許文献9】T. Warne, J. Chirnside, G. F. Schertler (2003) Biochim Biophys Acta 1610, 133-140.
【非特許文献10】E. M. Parker, E. M. Ross (1991) J Biol Chem 266, 9987-9996.
【非特許文献11】E. M. Parker, K. Kameyama, T. Higashijima, E. M. Ross (1991) J Biol Chem 266, 519-527.
【非特許文献12】W. J. Degrip (1982) Methods in Enzymology 81, 256-265.
【非特許文献13】K. Palczewski, T. Kumasaka, T. Hori, C. A. Behnke, H. Motoshima, B. A. Fox, I. Le Trong, D. C. Teller, T. Okada, R. E. Stenkamp, et al (2000) Science 289, 739-745.
【非特許文献14】J. Li, P. C. Edwards, M. Burghammer, C. Villa, G. F. Schertler (2004) J Mol Biol 343, 1409-1438.
【非特許文献15】R. Jaenicke, G. Bohm (1998) Current Opinion in Structural Biology 8, 738-748.
【非特許文献16】J. Tucker, R. Grisshammer (1996) Biochem J 317 ( Pt 3), 891-899.
【非特許文献17】W. Schaffner, C. Weissmann (1973) Anal. Biochem. 56, 502-514.
【非特許文献18】C. G. Tate (1998) Methods Enzymol 296, 443-455.
【非特許文献19】H. M. Weiss, R. Grisshammer (2002) Eur J Biochem 269, 82-92.
【非特許文献20】Rasmussen, S. G., Choi, H. J., Rosenbaum, D. M., Kobilka, T. S., Thian, F. S., Edwards, P. C., Burghammer, M., Ratnala, V. R., Sanishvili, R., Fischetti, R. F., Schertler, G. F., Weis, W. I. and Kobilka, B. K. (2007) Nature 15, 383-387.
【非特許文献21】Cherezov, V., Rosenbaum, D. M., Hanson, M. A., Rasmussen, S. G., Thian, F. S., Kobilka, T. S., Choi, H. J., Kuhn, P., Weis, W. I., Kobilka, B. K. and Stevens, R. C. (2007) Science 318:1258-1265.
【非特許文献22】Minneman, K. P., Weiland, G. A. and Molinoff, P. B. (1980) Mol Pharmacol 17:1-7.
【非特許文献23】Parker, E. M., Swigart, P., Nunnally, M. H., Perkins, J. P. and Ross, E. M. (1995) J Biol Chem 270:6482-6487.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、界面活性剤中におけるGPCRの安定性の欠如及びGPCRが多数の立体構造で存在する事実という、GPCRを結晶化する試みに関連する2つの重要な課題が存在することを見出した。機能するために、GPCRは少なくとも2種の立体構造、すなわち、アゴニスト結合形態とアンタゴニスト結合形態とで循環するように進化しており、これらの2種の立体構造の間の変化がリガンドの非存在下では頻繁に生じ得る。かくして、任意の精製受容体は、複数の立体構造の混合物を構成するであろう。結晶化を試みている間にGPCRにリガンドを単純に添加することでは、それらの構造決定には至らない。したがって、結晶化の可能性を改善するために、本発明者は、GPCRの安定性を改善した変異体を選択し、加えて、好ましくは、その受容体を特定の生物学的に有意義な立体構造に固定した。
【0011】
本発明者は、特に生物学的に有意義な立体構造における、GPCRの安定化が可能であるか否か、及び回折に利用可能な品質の結晶を得る可能性を有意に改善し得るその効果が十分に大きいものであるか否かを調べることとした。実施例1では、シチメンチョウの赤血球由来のβ1アドレナリン受容体(βAR)(非特許文献8)を、多数の理由から本試験の試験対象として選択した。βARは、放射標識された形態における市販の多数のリガンドを用いて十分に開発された薬理作用を有するGタンパク質共役型受容体(GPCR)である。加えて、βARの過剰発現は、特に、バキュロウイルス発現系を用いて成功し、機能的な形態においてミリグラム量において精製し得た(非特許文献9)。実施例2では、ヒトアデノシン受容体を使用し、実施例3では、ラットニューロテンシンを使用した。
【0012】
増大した安定性を有するGPCR変異体を選択するための方法
本発明の第一の態様は、増大した安定性を有するGタンパク質共役型受容体(GPCR)変異体を選択するための方法であって、
(a)親GPCRの1つ又は複数の変異体を提供する工程、
(b)親GPCRが特定の立体構造を備えている際に前記GPCRに結合するリガンドを選択する工程、
(c)前記選択したリガンドの結合に関する親GPCRの安定性と比較して、前記GPCR変異体又はその各々が前記リガンド結合に関して増大した安定性を有するか否かを測定する工程、並びに
(d)前記選択したリガンドの結合に関して、親GPCRと比較して増大した安定性を有する変異体を選択する工程
を含む、方法を提供する。
【0013】
本発明者は、生物学的に有意義な形態(すなわち、薬理学的に有用な形態)におけるGPCRの結晶化可能性を改善するために、前記タンパク質の安定性を増大するだけではなく、前記タンパク質が特定の立体構造にある際に増大した安定性を有することが望ましいと解している。前記立体構造は、選択したリガンドによって決定され、生物学的に有意義な立体構造、特に薬理学的に有意義な立体構造である。かくして、本発明の方法は、特定の立体構造の増大した安定性を有するGPCR変異体を選択するための方法であると解されてよく、それらは増大した熱安定性の立体構造を有してよい。前記方法を使用して、安定な立体構造が固定されたGPCRを変異誘発によって作製してよい。選択されたGPCR変異体は、より高い割合のものが特定の立体構造の状態である点で、親分子よりも純度が高い形態である。したがって、所定の受容体の立体構造に選択的に結合する1つ又は複数のリガンドを使用することによって他の立体構造から分離される当該立体構造の慎重な選択は、本発明の重要な特徴である。前記方法は、より結晶化に供しやすいGPCR変異体を選択するための方法であると解されてもよい。
【0014】
かくして、本発明の方法は、増大した安定性を有するGタンパク質共役型受容体(GPCR)変異体を選択するための方法であって、
(a)親GPCRの1つ又は複数の変異体を提供する工程、
(b)親GPCRが特定の立体構造を備えている際に前記GPCRに結合するリガンドを選択する工程、
(c)前記選択したリガンドの結合に関する同じ特定の立体構造を備えた親GPCRの安定性と比較して、前記GPCR変異体又はその各々が、特定の立体構造を備えている際に、前記リガンドの結合に関して増大した安定性を有するか否かを測定する工程、並びに
(d)前記選択したリガンドの結合に関して、親GPCRと比較して増大した安定性を有する変異体を選択する工程
を含む、方法を含む。
【0015】
Hopkins & Groom (2002) Nature Rev. Drug Discovery 1, 727-730による新薬の開発につながるようなゲノムのレヴューにおいて、表1には、その多数がGPCRであるタンパク質ファミリーの一覧が含まれている。Overington et al (2006) Nature Rev. Drug Discovery 5, 993-996は、薬剤標的のより詳細な記載を提供しており、図1は、四分の一超の現在の薬剤がGPCRを標的とすることを示している。経口薬の186種の全標的のうち、52種のGPCR標的が存在する。
【0016】
本発明において使用するのに適切なGPCRは、β−アドレナリン受容体、アデノシン受容体、特に、アデノシンA2a受容体、及びニューロテンシン受容体(NTR)を含むが、それらに限らない。他の適切なGPCRは当該技術分野においてよく知られており、上述のHopkins & Groom (2002) Nature Rev. Drug Discovery 1, 727-730に挙げられているものを含む。加えて、International Union of Pharmacologyは、GPCRの一覧を作成しており(参照によって本明細書に取り込むFoord et al (2005) Pharmacol. Rev. 57, 279-288、当該一覧は、http://www.iuphar-db.org/GPCR/ReceptorFamiliesForwardにおいて定期的に更新されている)。GPCRは、それらのアミノ酸配列の類似性に基づいて、各種の異なる種類に分類されることに注意されるであろう。それらは、それらが結合する天然のリガンドによるファミリーにも分類される。全てのGPCRが本発明の範囲に含まれる。
【0017】
多数のGPCRのアミノ酸配列(及びそれらをコードするcDNAのヌクレオチド配列)は、例えばGenBankを参照することによって、容易に利用可能である。特に、Foord et al (2005) Pharmacol. Rev. 57, 279-288は、Entrez Gene (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez)に由来するヒトの遺伝子記号並びにヒト、マウス、及びラットの遺伝子IDを挙げている。ヒトゲノムの配列は実質的に完全であるため、ヒトGPCRのアミノ酸配列は、そこから推定し得ることに注意すべきである。
【0018】
GPCRは任意の起源に由来してよいが、真核生物起源に由来することが特に好ましい。哺乳類又は鳥類などの脊椎動物に由来することは特に好ましい。GPCRがラット、マス、ウサギ、若しくはイヌ、又はヒトを除く霊長類若しくはヒト、又はニワトリ若しくはシチメンチョウに由来することが特に好ましい。誤解を避けるために、「由来する」の意味には、cDNA又は遺伝子がその起源に由来する遺伝子材料を用いて元々得られたが、タンパク質がその後に任意の宿主細胞において発現されてよいことを含める。かくして、真核生物のGPCR(鳥類又は哺乳類のGPCR)が、大腸菌などの原核生物の宿主細胞で発現されてよいが、場合によって、鳥類又は哺乳類由来であると解されることは明らかである。
【0019】
ある場合においては、GPCRは、2以上の異なるサブユニットからなってよい。例えば、カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体は、その生理学的なリガンド結合特性を獲得するために、一回膜貫通へリックスタンパク質(RAMP1)の結合を必要とする。GPCRと結合して機能的な複合体を形成又は調節するエフェクタータンパク質、付属タンパク質、補助タンパク質、又はGPCR相互作用タンパク質は当該技術分野においてよく知られており、例えば、受容体キナーゼ、Gタンパク質、及びアレスチンを含む(Bockaert et al (2004) Curr Opinion Drug Discov and Dev 7, 649-657)。
【0020】
親GPCRの変異体は、任意の適切な方法で生産されてよく、任意の適切な形態で提供されてよい。かくして、例えば、親タンパク質の全て又は一部における各アミノ酸残基が独立に他のアミノ酸残基に変換された、親タンパク質の一連の特定の変異体が作製されてよい。例えば、膜を貫通していると予測されるタンパク質の部分に変異を作製することが好都合であってよい。ロドプシンの三次元構造は既知であり(Li et al (2004) J Mol Biol 343, 1409-1438; Palczewski et al (2000) Science 289, 739-745)、当該構造を使用してあるGPCRのモデルを作製することが可能である。かくして、簡便には、GPCRの変異させる部分は、モデルに基づくものであってよい。同様に、疎水性に基づいてGPCRの膜貫通領域のモデルを作製するコンピュータープログラムを利用することも可能であり(Kyle & Dolittle (1982) J. Mol. Biol. 157, 105-132)、タンパク質の変異させる部分を選択する際にその様なモデルを使用してよい。従来の部位指向性変異導入を使用してよく、又は当該技術分野においてよく知られたポリメラーゼ連鎖反応に基づく手法を使用してよい。望ましいものではないが、タンパク質変異体の選択にリボソームディスプレイ法が使用されてもよい。
【0021】
典型的には、選択された各アミノ酸をAlaに置き換える(すなわち、Alaスキャニング変異誘発)が、任意の他のアミノ酸に置き換えてもよい。選択したアミノ酸がAlaである場合は、好都合には、Leuによって置き換えてもよい。代替的には、前記アミノ酸はGlyに置き換えてもよく(すなわち、Glyスキャニング変異誘発)、これは、特定の立体構造にあるタンパク質を固定化してよい隣接するヘリックスのより近接したパッキングを可能にする。選択されたアミノ酸がGlyである場合は、好都合には、Alaによって置き換えてよい。
【0022】
特定の位置における所定のアミノ酸を置き換えるのに使用されるアミノ酸は、典型的には天然のアミノ酸、特に「コード可能な」アミノ酸であるが、非天然アミノ酸(この場合、典型的には、タンパク質は、化学合成又は非天然アミノ酸アシルtRNAを使用して作製される)であってよい。「コード可能な」アミノ酸は、mRNAの翻訳によってポリペプチドに取り込まれるものである。非天然アミノ酸を作製し、又は、例えば、タンパク質の翻訳後修飾若しくは半合成によって共有結合性の化学修飾によって所定の位置に非ペプチド結合を導入することが可能である。これらの翻訳後修飾は、リン酸化、糖鎖付加、又はパルミトイル化などの天然のものであるか又は合成若しくは生合成によるものであってよい。
【0023】
代替的には、前記変異体は、タンパク質全体又はその選択した一部に対するものであってよいランダム変異誘発法によって生産されてよい。ランダム変異誘発法は当該技術分野でよく知られている。
【0024】
好都合には、前記GPCR変異体は、親タンパク質と比較して、1つの置き換わったアミノ酸を有する(すなわち、1つのアミノ酸部位において変異を有する)。このように、単独のアミノ酸を置き換えることによる安定性に対する寄与が評価されてよい。しかしながら、安定性について評価されるGPCR変異体は、親タンパク質と比較して2以上、例えば、2、3、4、5、又は6つの置き換わったアミノ酸を有してもよい。
【0025】
以下により詳細に議論しているように、変異の組み合わせが、本発明の選択方法の結果に基づいて為されてよい。幾つかの特定の態様では、1つの変異を有するタンパク質における変異の組み合わせが、安定性における更なる向上を誘導することが認められた。かくして、本発明の方法は、当該方法を実施して安定性を増大する変異を同定し、当該方法の工程(a)において提供される1つの変異を有するGPCRにおいて同定した変異を組み合わせることによって、繰返し使用されてよいと解されるであろう。かくして、多数の変異を有するタンパク質変異体が、本発明の方法を使用して選択されてよい。
【0026】
親GPCRは、天然のタンパク質である必要はない。好都合には、大腸菌などの適切な宿主生物中で発現することが可能な遺伝子操作を受けたものであってよい。例えば、実施例1に記載の、好都合に操作したシチメンチョウβ−アドレナリン受容体は、切断されており、アミノ酸配列の1〜33残基を欠失している(すなわち、βAR34−424)。親GPCRは、天然のタンパク質の切断型であるか(一方又は両方の末端が切断されている)、又は天然のタンパク質若しくはその断片に対する融合体であってよい。代替的又は付加的に、親GPCRは、天然のGPCRと比較して、例えば、可溶性、タンパク質分解安定性を改善するために修飾されてよい(例えば、切断、ループの欠失、グリコシル化部位の変異、又はシステインなどの反応性アミノ酸側鎖の変異)。いずれにしても、親GPCRは、天然のGPCRに結合することが既知のものである、選択したリガンドに結合することが可能なタンパク質である。好都合には、親GPCRは、適当なリガンドを加えて、Gタンパク質活性化によって影響を受けることが一般的に知られている1つ又は複数の下流の活性の任意のものに作用してよい。
【0027】
しかしながら、前記変異体の安定性は、安定性における増大を評価できるため、親と比較されると解されるであろう。
【0028】
特定の立体構造を備えている親GPCRに結合するリガンドが選択される。典型的には、前記リガンドは、親GPCRの1つの立体構造に結合する(そして、前記GPCRに当該立体構造をとらせる)が、GPCRが採用し得ない他の立体構造に強力に結合することはない。かくして、前記リガンドの存在は、GPCRが特定の立体構造をとらせることを促進すると解されてよい。かくして、本発明の方法は、生物学的に有意義な立体構造(例えば、リガンド結合状態)に捕らわれ、当該立体構造でより安定であるGPCR変異体を選択する方法であると解されてよい。
【0029】
好ましくは、GPCRが工程(c)で備える特定の立体構造が、工程(b)で選択されるリガンドの種類と対応する。
【0030】
好ましくは、前記選択されるリガンドはアゴニストに分類されるリガンド由来のものであり、前記特定の立体構造はアゴニスト立体構造であるか、又は前記選択されるリガンドはアンタゴニストに分類されるリガンド由来のものであり、前記特定の立体構造はアンタゴニスト立体構造である。
【0031】
好ましくは、前記選択されるリガンドはアゴニストに分類されるリガンドに由来し、GPCRが工程(c)で備える特定の立体構造がアゴニスト立体構造である。好ましくは、受容体変異体に対する前記選択されるリガンドの結合親和性は、野生型の受容体に対するもの以上であり、選択されるリガンドに対して顕著に低減した結合を示す変異体は、典型的には、除外される。
【0032】
「リガンド」によって、本願では、GPCRに結合し、且つ、GPCRに特定の立体構造をとらせる任意の分子が含まれる。好ましくは、前記リガンドは、GPCR分子全体の半分超に特定の立体構造をとらせるものである。
【0033】
多数の適切なリガンドが既知である。
【0034】
典型的には、前記リガンドは完全なアゴニストであり、GPCRに結合することが可能であり、例えば、G−タンパク質結合、下流のシグナル伝達現象、又は血管拡張などの生理学的なアウトプットによって測定される、完全な(100%の)生物学的応答を誘導することが可能である。かくして、典型的には、前記生物学的応答は、関連するエフェクター経路の刺激後のG−タンパク質におけるGDP/GTP交換である。前記測定は、典型的には、GDP/GTP交換又はその経路の最終産物(例えば、cAMP、cGMP、又はリン酸イノシトール)のレベルにおける変化である。前記リガンドは、部分的アゴニストであり、GPCRに結合することが可能であり、部分的(<100%)な生物学的応答を誘導することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0035】
前記リガンドは、受容体に結合する分子であり、その基礎的な(すなわち、アゴニストによって刺激されていない)活性を場合によっては0にまでも低減する逆アゴニストであってもよい。
【0036】
前記リガンドは、受容体に結合し、アゴニストの結合を阻害して、生物学的応答を妨げるアンタゴニストであってもよい。逆アゴニスト及び部分的アゴニストは、あるアッセイ条件下では、アンタゴニストとなり得る。
【0037】
上記リガンドは、オルトステリック(orthosteric)であってよく、これは、それらが内在性アゴニストと同じ部位に結合するという意味を含む。または、それらはアロステリック(allosteric)又はアロトピック(allotopic)であってよく、これは、それらがオルトステリック部位と異なる部位に結合するという意味を含む。上記リガンドはシントピック(syntopic)であってよく、これは、それらが同じ又は重複する部位で他のリガンドと相互作用するという意味を含む。それらは、可逆的又は非可逆的であってよい。
【0038】
アンタゴニストに関しては、サーマウンタブル(surmountable)であってよく、これは、アゴニストの最大の効果が、アンタゴニストを用いた事前処理又は同時処理によって低減されないという意味を含み;或いは、それらはインサーマウンタブル(insurmountable)であってよく、これは、アゴニストの最大の効果が、アンタゴニストの事前処理又は同時処理のいずれかによって低減されるという意味をふくみ;或いは、それらはニュートラル(neutral)であってよく、これは、アンタゴニストが逆アゴニスト又は部分的アゴニスト活性を有しないものであるという意味を含む。典型的には、アンタゴニストは、逆アゴニストでもある。
【0039】
本発明に使用するリガンドは、ポジティブアロステリックモジュレータ、ポテンシエーター、ネガティブアロステリックモジュレータ、及びインヒビターなどのアロステリックモジュレータであってもよい。それらは、それら自体でアゴニスト又は逆アゴニストとしての活性を有してよく、又はそれらはアゴニスト又は逆アゴニストの存在下でのみ活性を有してよく、その場合には、GPCRと結合するためにその様な分子と組み合わせて使用される。
【0040】
参照によって本明細書に取り込むNeubig et al (2003) Pharmacol. Rev. 55, 597-606は、各種のリガンドを開示している。
【0041】
好ましくは、上述のリガンドは、低分子の有機又は無機成分であるが、ペプチド又はポリペプチドであってよい。典型的には、前記リガンドが低分子の有機又は無機成分である際は、50から2000、100から1000など、例えば、100から500のMを有する。
【0042】
典型的には、前記リガンドは、mMからpM、例えばμM(マイクロモーラー)からnMの範囲のKでGPCRに結合する。一般的には、最も低いKを有するリガンドが好ましい。
【0043】
有機低分子のリガンドは、当該技術分野においてよく知られており、例えば、以下の実施例を参照のこと。他の低分子のリガンドは、5HT1A受容体において完全なアゴニストである5HT;5HT1A受容体に部分的なアゴニストであるエルトプラジン(Newman-Tancredi et al (1997) Neurophamacology 36, 451-459参照);ドーパミンD2受容体アゴニストである(+)−ブタクラモール及びスピペロン(Roberts & Strange (2005) Br. J. Pharmacol. 145, 34-42参照);並びにCB2のニュートラルアゴニストであるWIN55212−3(Savinainen et al (2005) Br. J. Pharmacol. 145, 636-645)を含む。
【0044】
前記リガンドは、ペプチドミメティック、核酸、ペプチド核酸(PNA)、又はアプタマーであってよい。Na又はZnなどのイオン、オレアミドなどの脂質、又はヘパリンなどの炭水化物であってもよい。
【0045】
前記リガンドは、GPCRに結合するポリペプチドであってよい。そのようなポリペプチド(オリゴペプチド含む)は、典型的には、500から50,000の分子量であるが、それより大きいものであってもよい。前記ポリペプチドは、天然のGPCR相互作用タンパク質又はGPCRと相互作用する他のタンパク質又はその誘導体若しくは断片であってよいが、特定の立体構造にあるGPCRに選択的に結合するものである。GPCR相互作用タンパク質は、シグナル伝達と関連するもの及び輸送に関連するものを含み、多くの場合においては、GPCRのC末端部分のPDZドメインを介して作用する。
【0046】
あるGPCRに結合することが既知のポリペプチドは、Gタンパク質、アレスチン、RGSタンパク質、Gタンパク質受容体キナーゼ、RAMP、14−3−3タンパク質、NSF、ペリプラキン、スピノフィリン、GPCRキナーゼ、レセプターチロシンキナーゼ、イオンチャンネル又はそのサブユニット、アンキリン、並びにShanks又はHomerタンパク質の任意のものを含む。他のポリペプチドは、NMDA受容体サブユニットNR1又はNR2a、カルシオン、又はフィブロネクチンドメインフレームワークを含む。前記ポリペプチドは、フィブリンー1などのGPCRの細胞外ドメインに結合するものであってよい。前記ポリペプチドは、ヘテロオリゴマーにおいて選択したGPCRを結合する他のGPCRであってよい。GPCRにおけるタンパク質−タンパク質相互作用のレヴューは、参照によって本明細書に取り込むMilligan & White (2001) Trends Pharmacol. Sci. 22, 513-518又はBockaert et al (2004) Curr. Opinion Drug Discov. Dev. 7, 649-657において認められる。
【0047】
ポリペプチドリガンドは、好都合には、GPCRに結合する抗体であってよい。用語「抗体」によって、本願では、天然の抗体、モノクローナル抗体、及びそれらの断片が含まれる。単鎖Fv(scFv)分子及びドメイン抗体(dAb)を含む、遺伝子操作した抗体及びその結合特性において抗体様である分子も含む。ラクダ科の動物の抗体及びラクダ科の抗体であって遺伝子操作したものも挙げられてよい。GPCRに結合するその様な分子は当該技術分野において既知であり、任意に、既知の技術を使用して作製されてよい。適切な抗体は、立体構造エピトープを認識する傾向があるため、GPCRに対するラジオイムノアッセイ(RIA)で現在使用されているものである。
【0048】
前記ポリペプチドは、アンキリンリピートタンパク質、アルマジロリピートタンパク質、ロイシンリッチタンパク質、テトラトリオペプチドリピートタンパク質、又は設計アンキリンリピートタンパク質(DARP)などのモジュール構成に基づく結合タンパク質、或いはリポカリン若しくはフィブロネクチンドメイン又はヒトγクリスタリン若しくはヒトユビキチンのいずれかに基づくアフィリンスカフォールド(affilin scaffold)であってもよい。
【0049】
本発明の1つの実施態様では、前記リガンドはGPCRに共有結合し、例えば、G−タンパク質又はアレスチン融合タンパク質などである。幾つかのGPCR(例えば、トロンビン受容体)は、プロテアーゼによってN末端で切断され、新しいN末端はアゴニスト部位と結合する。かくして、その様なGPCRは天然のGPCR−リガンド融合体である。
【0050】
抗体又は他の「ユニバーサルな」結合ポリペプチド(例えば、多数の異なるGPCRに結合することが既知のGタンパク質)の使用は、天然のリガンド及び低分子リガンドが未知の「オーファン」GPCRに対する本発明の方法の使用において特に有利であり得ると解されるであろう。
【0051】
一度リガンドが選択されると、当該選択したリガンドの結合に関して親GPCRと比較して、前記GPCR変異体又はその各々が、前記リガンドの結合に関して増大した安定性を有するか否かが測定される。当該工程(c)は、選択したリガンドによって決定される特定の立体構造について、前記GPCR変異体又はその各々が(親と比較して)増大した安定性を有するか否かを測定するものである。かくして、前記GPCR変異体は、選択したリガンド結合の間に測定されるか又はリガンド結合によって測定される、選択したリガンドの結合の結合に関して増大した安定性を有する。以下に記載するように、増大した安定性が、選択したリガンドの結合の間に評価されることが好ましい。
【0052】
増大した安定性は、好都合には、不安定にする可能性がある曝露条件下(例えば、熱、強力な界面活性剤条件、及びカオトロピック剤など)における、前記変異体の寿命の延長によって測定される。前記曝露条件下における不安定化は、典型的には、変性又は構造の損失の測定によって測定される。以下に記載するように、これは、リガンド結合能の損失又は二次若しくは三次構造の指標の損失によって現れる。
【0053】
以下の図12(特に好ましい実施態様を記載する)に関して記載するように、GPCR変異体の安定性を測定するために使用してよい各種のアッセイ形式が存在する。
【0054】
1つの実施態様では、前記GPCR変異体を、当該変異体の安定性を測定する方法に供する前にリガンドと接触させる(前記GPCR変異体及びリガンドは、試験の間に接触した状態のままである)。かくして、例えば、本発明の方法が、1つの立体構造においてリガンドと結合し、且つ、改善された熱安定性を有するGPCR変異体を選択するために使用される際は、前記受容体を、加熱される前に前記リガンドと接触させ、次いで、加熱後に前記受容体に結合しているリガンドの量を使用して、親受容体との比較における熱安定性を表わしてよい。これによって、変性条件(例えば、熱)に曝露した後にリガンド結合能を保持しているGPCRの量の測定が提供され、これが安定性の指標である。
【0055】
代替的(であるが上記のものよりは好ましいものではない)実施態様では、前記GPCR変異体を、前記リガンドと接触させる前に、前記変異体の安定性を測定する手法に供する。かくして、例えば、本発明の方法が、1つの立体構造においてリガンドと結合し、且つ、改善された熱安定性を有する膜受容体変異体を選択するために使用される際は、前記リガンドと接触させる前に、まず前記受容体を加熱し、次いで、前記受容体に結合したリガンドの量を使用して熱安定性を表わしてよい。そして、これによって、変性条件に曝露した後にリガンド結合能を保持しているGPCRの量の測定が提供される。
【0056】
双方の実施態様において、前記変異体の安定性の比較が、同一の条件下における親分子を参照することによって為されると解されるであろう。
【0057】
これらの実施態様の双方において、選択された変異体は、親タンパク質と比較して、特定の立体構造を備える際に増大した安定性を有するものである。
【0058】
好ましい経路は、特定のGPCRに依存し、リガンドの非存在下におけるタンパク質のとり得る立体構造の数に依存するであろう。図12に記載の実施態様では、所望の立体構造が選択される可能性を増大するため、リガンドが加熱工程の間に存在することが好ましい。
【0059】
したがって、本発明は、増大した熱安定性を有するGPCR変異体を選択するための方法であって、(a)親GPCRの1つ又は複数の変異体を提供する工程、(b)前記親GPCRに結合するアンタゴニスト又はアゴニストを選択する工程、(c)前記アンタゴニスト又はアゴニストの存在下において、特定の温度で特定の時間の後に前記選択したアンタゴニスト又はアゴニストに結合するGPCR変異体の能力を測定することによって、前記変異体又はその各々が親GPCRと比較して増大した熱安定性を有するか否かを測定する工程、及び(d)同一の条件下における親GPCRよりも、特定の温度で特定の時間の後に多くの前記選択したアゴニスト又はアンタゴニストと結合するGPCR変異体を選択する工程を含む、方法、を含むと解されるであろう。工程(c)では、特定の温度における一定の期間が、典型的には、前記選択したアンタゴニスト又はアゴニストと結合するGPCR変異体の能力の測定において使用される。工程(c)では、典型的には、選択した前記アンタゴニスト又はアゴニストの結合が当該温度で一定期間の間に50%低減する(50%の受容体が不活化されていることを示す:「見かけ上の」Tm)温度及び時間が選択される。
【0060】
好都合には、前記リガンドを使用してGPCRをアッセイする(すなわち、前記アッセイを使用して非変性状態であるか否かを測定する)際は、前記リガンドは検出可能に標識、例えば、放射標識又は蛍光標識される。他の実施態様では、リガンド結合は、二次検出系、例えば、抗体又は検出部位に共有結合する他の高親和性結合パートナー、例えば、比色分析において使用されてよい酵素(例えば、アルカリホスファターゼ又はセイヨウワサビペルオキシダーゼ)を使用して、未結合のリガンドの量を測定することによって評価されてよい。FRET法が使用されてもよい。その安定性の測定においてGPCR変異体をアッセイするために使用するリガンドは、前記方法の工程(b)において選択されるものと同じリガンドである必要はないと解されるであろう。
【0061】
リガンド結合能を非変性タンパク質の存在の指標として使用して、親GPCR及びGPCR変異体の安定性を測定することが好都合であるが、他の方法が当該技術分野で知られている。例えば、内在するトリプトファン蛍光の使用又は1−アニリノ−8−ナフタレンスルホネート(ANS)などの外来性の蛍光プローブの使用のいずれかによる、蛍光スペクトルにおける変化が、アンフォールディングの感度の良好な指標であってよく、例えば、Thermofluor(商標)法(Mezzasalma et al, J Biomol Screening, 2007, Apr;12(3):418-428)において説明されている。タンパク質分解に対する安定性、質量分析器によって測定される重水素/水素交換、Blue Native Gel、キャピラリーゾーン電気泳動、円偏光二色性(CD)分光法、及び光散乱を使用して、二次又は三次構造と関連するシグナルの損失によってアンフォールディングを測定してよい。しかしながら、これらの方法の全てが、それらを使用する前に、適度な量(例えば、高いpmol/nmol量)で精製されたタンパク質を必要とするが、実施例に記載の方法は、pmol量の本質的に未精製のGPCRを使用する。
【0062】
好ましい実施態様では、工程(b)において、各々の存在がGPCRに同一の特定の立体構造を備えさせる、2又はそれ以上の同じ種類のリガンドを選択する。かくして、当該実施態様において、同じ種類の1つ又は複数の(天然又は非天然)リガンド(例えば、完全なアゴニスト又は部分的アゴニスト又はアンタゴニスト又は逆アゴニスト)が使用されてよい。平行して又は連続的に当該方法に同じ種類の多数のリガンドを含めることによって、例えば結合部位において親と実質的に異なるが、代償的変化によって依然としてリガンドに結合することが可能な多数の変性を有する受容体の立体構造を、思わず遺伝子操作及び選択する理論的なリスクが最小化される。以下:
1.例えば結合分析、機能分析、又は分光分析によって根拠付けられる共通の薬理学的分類を有する、化学的に異なるリガンドのセット(例えば、n=2から5)を選択する工程(これらのリガンドは、例えば野生型受容体及び/又は変異型受容体を使用する競争結合試験並びに/或いはそれらが共通のファーマコフォアを表わす必要は無いが分子モデリングによって根拠付けられるように、受容体の共通の空間的領域に結合すると解されるべきである);
2.安定性を増大することが意図される1つ又は複数の受容体変異体を作製し、リガンドセットの全てを使用してタイト結合についてアッセイする工程(前記アッセイは、平行、多重、又は連続的に為されてよい);
3.例えば、各リガンドについての結合等温線の測定によって、及びリガンドを用いた安定性のシフトの測定によって(典型的には、野生型と比較してウィンドウが狭い)、安定化された受容体変異体の確実性を確認する工程
を使用して当該リスクを軽減してよい。
【0063】
変異による結合部位に対する影響によって生じる見掛けの親和性における変化に対する監視のために、好ましくは、同じ薬理学的分類を有するが、異なる化学的分類を有するリガンドを使用して、受容体をプロファイルするべきである。典型的には、これらによって、異なる分子認識特性を有するが、同様の親和性におけるシフト(変異体vs親、例えば野生型)が示されるべきである。結合実験は、好ましくは、同じ薬理学的分類内の標識リガンドを使用して実施するべきである。
【0064】
それにもかかわらず、同じ薬理学的分類内のリガンドの複数の化学的分類に特異的な立体構造基質が存在する可能性があり、これらは、その手法において、選択したリガンドの化学的分類に依存して特異的に安定化される可能性があることが認識されるべきである。
【0065】
典型的には、前記選択したリガンドは、親GPCRに対する結合と同様の作用強度でGPCR変異体に結合する。典型的には、GPCR変異体及び親GPCRに対する特定のリガンド結合についてのKd値は、互いに5から10倍、例えば、2から3倍の範囲である。典型的には、親GPCRと比較してGPCR変異体に対するリガンドの結合は、最大で5倍弱く、最大で10倍強いであろう。
【0066】
典型的には、選択された立体構造で安定化された受容体変異体は、親受容体と同程度(典型的には、2から3倍以内)又はそれ以上の親和性で選択したリガンドに結合するはずである。アゴニスト−立体構造変異体について、前記変異体は、典型的には、親GPCRと同じ又はそれ以上の親和性で前記アゴニストと結合し、典型的には、親GPCRと同定又はそれ以下の親和性でアンタゴニストと結合する。同様に、アンタゴニスト−立体構造変異体について、前記変異体は、典型的には、親GPCRと同じ又はそれ以上の親和性でアンタゴニストと結合し、典型的には、親GPCRと同じ又はそれ以下の親和性でアゴニストと結合する。
【0067】
選択するリガンドについての親和性における顕著な低減(典型的には2から3倍超)を示す変異体は、典型的には除外する。
【0068】
典型的には、同じ分類を有する一連のリガンドの結合の序列は同程度であるが、当該序列において1つ又は2つの逆転が存在する可能性があり、あるいは一連のリガンドに異常値が存在する可能性がある。
【0069】
更なる実施態様では、同じ立体構造の受容体に結合する2つ又はそれ以上のリガンド、例えば、アロステリックモジュレータ及びオルトステリックアゴニストを使用してよい。
【0070】
誤解を避けるために、また、実施例から明らかなように、効果的な方法に多数のリガンドを使用することが必要なわけではない。
【0071】
更なる実施態様では、選択したリガンドに結合することが可能であるが、第一のリガンドとは異なる分類のものである第二の選択したリガンドには結合できないか又は親GPCRより弱く結合するGPCR変異体を選択することも有利であってよい。かくして、例えば、GPCR変異体は、選択したアンタゴニストの結合に関して増大した安定性を有するものであることに基づいて選択されるものであってよいが、その様に選択されたGPCR変異体を更に試験して、完全なアゴニストに結合するか(又は親GPCRよりも弱く完全なアゴニストに結合するか)否かを測定する。完全なアゴニストに結合しない(又は結合が低減する)変異体が選択される。このように、1つの特定の立体構造に固定化されているGPCRを更に選択する。
【0072】
選択されたリガンド(本発明の方法の工程(b)で選択したもの)及び上述の更なる(第二の)リガンドが、リガンドの種類の任意のペア、例えば、完全なアゴニストとアンタゴニスト;アンタゴニストと逆アゴニスト;逆アゴニストとアンタゴニスト;逆アゴニストと完全なアゴニスト;及び完全なアゴニストと逆アゴニストなどであってよい。
【0073】
前記受容体変異体が、更なる(第二の)リガンドに対する親受容体の親和性の50%未満の親和性、より好ましくは10%未満、更に好ましくは1%未満又は0.1%未満又は0.01%未満の親和性で更なる(第二の)リガンドに結合することが好ましい。かくして、前記受容体変異体と第二のリガンドとの相互作用のKは、親受容体よりも高い。実施例1に示すように、β−アドレナリン受容体変異体であるβAR−m23(アンタゴニストを使用して本発明の方法によって選択される)は、親よりも3桁弱く(すなわち、Kが1000倍以上)アゴニストに結合する。同様に、実施例2では、アデノシンA2a受容体変異体であるRant21が、親よりも2から4桁弱くアゴニストに結合する。
【0074】
このタイプの対抗選択を使用して、より特異的(及び、そのため、より迅速且つより効率的)に変異誘発法を、リガンドによって決まる純粋な立体構造に対する経路に沿って管理することが可能であるため有用である。
【0075】
好ましくは、GPCR変異体は、構造の完全性を維持している適切な可溶化形態で提供され、機能的形態である(例えば、リガンドに結合することが可能である)。特定のタンパク質について有効な当業者に選択されてよい適当な可溶化系、例えば、適切な界面活性剤(又は他の両親媒性剤)及び緩衝液系を使用する。典型的には、使用してよい界面活性剤は、例えば、ドデシルマルトシド(DDM)又はCHAPS又はオクチルグルコシド(OG)又は他の多数の界面活性剤を含む。コレステロールヘミスクシネート若しくはコレステロール自体又はヘプタン−1,2,3−トリオールなどの他の化合物を含めることも好都合であってよい。グリセロール又はプロリン又はベタインの存在は有用であってよい。GPCRは、一度膜から可溶化されると、アッセイするために十分に安定である必要があることは重要である。幾つかのGPCRについては、DDMは十分であるが、望ましい場合には、グリセロール又は他のポリオールを添加して、アッセイのための安定性を増大させてよい。さらなるアッセイのための安定性は、任意にグリセロールの存在下において、例えば、DDM、CHAPS、及びコレステロールヘミスクシネートの混合物に可溶化することによって達成されてよい。特に不安定なGPCRについては、ジギトニン又はアンフィポール(amphipol)或いは従来の界面活性剤の非存在下において膜から直接GPCRを可溶化することが可能であり、顕著な数の脂質をGPCRに結合させた状態のままとすることによって典型的に安定性を維持する他のポリマーを使用して可溶することが望ましい。機能的な形態の非常に不安定な膜タンパク質を可溶化するために、ナノディスク(nanodisc)を使用してもよい。
【0076】
典型的には、GPCR変異体は、(例えば、大腸菌などの前記変異体を発現させた宿主細胞由来の膜画分の)粗抽出物で提供される。タンパク質変異体が、典型的には少なくとも75%、より典型的には少なくとも80%、又は85%、又は90%、又は95%、又は98%、又は99%のサンプル中に存在するタンパク質を占める形態で提供されてよい。言うまでもなく、典型的には、上述のように可溶化され、多くの場合にGPCR変異体は界面活性剤及び/又は脂質分子と相互作用する。
【0077】
任意の変性又は変性条件に対して、例えば、熱、界面活性剤、カオトロピック剤、又は極端なpHのいずれか1つ又は複数に対して増大した安定性を有するGPCR変異体が選択される。
【0078】
熱に対する安定性(すなわち、熱安定性)に関して、これは、リガンド結合を測定することによって、或いは特定の温度における蛍光、CD、又は光散乱などの分光学的方法によって容易に測定することが可能である。典型的には、GPCRがリガンドに結合する際は、特定の温度においてリガンドに結合するGPCRの能力を使用して、前記変異体の熱安定性を測定してよい。「見かけのT」、すなわち、50%の受容体が所定の条件下で所定の時間(例えば、30分)に亘ってインキュベートした後に、不活化される温度を測定することも好都合であり得る。より高い熱安定性のGPCR変異体は、それらの親と比較してより大きな見かけのTを有する。
【0079】
界面活性剤又はカオトロピックに対する増大した安定性に関しては、典型的には、前記GPCRを、試験界面活性剤又は試験カオトロピック剤の存在下において所定の時間に亘ってインキュベートして、例えば、リガンド結合又は上述の分光学的方法を使用して安定性を測定する。
【0080】
極端なpHに関しては、典型的な試験pHは、例えば、4.5から5.5(低pH)の範囲又は8.5から9.5(高pH)の範囲で選択されるであろう。
【0081】
比較的強力な界面活性剤を結晶化の段階で使用するため、GPCR変異体がその様な界面活性剤の存在下において安定であることが好ましい。ある界面活性剤の「強力」さは、DDM、C11→C10→C→Cマルトシド又はグルコシド、ラウリルジメチルアミンオキシド(LDAO)及びSDSの順である。GPCR変異体がCマルトシド又はグルコシド、Cマルトシド又はグルコシド、LDAO、及びSDSのいずれかに対して良い安定であることが特に好ましく、そのため、これらの界面活性剤を安定性試験に使用することが好ましい。
【0082】
測定の容易性のため、熱安定性を測定することが好ましく、所定の条件に関して親タンパク質と比較して増大した熱安定性を有する変異体を選択する。熱は変性剤としての作用を有し、サンプルを冷却すること、例えば、氷上に置くことで容易に取り除くことが可能であると解されるであろう。熱安定性は、他の変性剤又は変性条件に対する安定性の指針でもある可能性がある。かくして、増大した熱安定性は、変性界面活性剤、特にDDMよりも変成作用が強いもの、例えば、より小さな頭部基及びより短いアルキル鎖並びに/又は荷電した頭部基を有する界面活性剤中の安定性に置き換えられる可能性がある。本発明者は、熱安定性を有するGPCRが強力な界面活性剤に対してもより安定であることを発見した。
【0083】
変性条件として極端なpHを使用する際は、中和剤を添加することによって迅速にこれを取り除くことができると解されるであろう。同様に、カオトロピック剤を変性剤として使用する際は、カオトロピック剤がカオトロピック効果を奏する濃度未満にサンプルを希釈することによって、変性効果を除去し得る。
【0084】
本発明の特定の実施態様では、GPCRは、βアドレナリン受容体(例えば、シチメンチョウ由来)であり、リガンドはアンタゴニストであるジヒドロアルプレノロール(DHA)である。
【0085】
本発明の更に好ましい実施態様では、GPCRがアデノシンA2a受容体(A2aR)(例えば、ヒト由来)であり、リガンドがアンタゴニストであるZM 241385(4−[2−[[7−アミノ−2−(2−フリル)[1,2,4−]−トリアゾロ[2,3−α][1,3,5]トリアジン−5−イル]アミノ]エチル]フェノール)又はアゴニストであるNECA(5’−N−エチルカルボキサミドアデノシン)である。
【0086】
更に好ましい実施態様では、GPCRがニューロテンシン受容体(NTR)(例えば、ラット由来)であり、リガンドがアゴニストであるニューロテンシンである。
【0087】
本発明の第二の態様は、GPCR変異体を調製する方法であって、
(a)本発明の第一の態様に係る方法を実施する工程、
(b)増大した安定性について選択された1つ又は複数のGPCR変異体中の1つ又は複数の変異したアミノ酸残基の位置を同定する工程、及び
(c)同定した位置の1つ又は複数に変異を含むGPCR変異体を合成する工程
を含む、方法を提供する。
【0088】
実施例において認められるように、驚くべきことに、GPCRの内部の単独のアミノ酸に対する変化が、前記タンパク質が特定の立体構造を備える条件下おいて、親タンパク質と比較して前記タンパク質の安定性を増大させる。かくして、本発明の第二の態様に係る方法の第一の実施態様では、親タンパク質の1つのアミノ酸残基がタンパク質変異体では変化している。典型的には、前記アミノ酸残基は、本発明の第一の態様に係る方法において試験した変異体において認められるアミノ酸残基に変化される。しかしながら、任意の他のアミノ酸残基、例えば、任意の天然アミノ酸残基(特に、「コード可能な」アミノ酸残基)又は非天然アミノ酸に置き換えられてよい。一般的には、簡便にするために、アミノ酸残基は、19の他のコード可能なアミノ酸の1つに置き換えられる。好ましくは、本発明の第一の態様において選択した変異体に存在する置き換えられたアミノ酸残基である。
【0089】
実施例で認められるように、安定性における更なる増大が、親タンパク質のアミノ酸の2つ以上を置き換えることによって得られてよい。典型的には、置き換えられたアミノ酸の各々が、本発明の第一の態様に係る方法を使用して同定されたものである。典型的には、同定された各アミノ酸は、タンパク質変異体に存在するアミノ酸に置き換えられてよいが、上述のように、それは任意の他のアミノ酸で置き換えられてもよい。
【0090】
典型的には、GPCR変異体は、親タンパク質と比較して、1から10の置き換えられたアミノ酸、好ましくは1から8、典型的には2から6、例えば、2、3、4、5、又は6の置き換えられたアミノ酸を含む。
【0091】
多数の変異体が、本発明の第一の態様に係る選択方法に供されてよいと解されるであろう。換言すると、多数の変異体が、本発明の第一の態様に係る方法の工程(a)で提供されてよい。本発明の第一及び/又は第二の態様によって、その構造が非常に安定な多数の点変異タンパク質を作製するために選択された多数の変異誘発されたGPCRが作製されてよいと解されるであろう。
【0092】
GPCR変異体は任意の適切な方法によって調製されてよい。好都合には、前記タンパク質変異体は、適切な核酸分子にコードされ、適切な宿主細胞において発現される。前記GPCR変異体をコードする適切な核酸分子は、当該技術分野でよく知られている標準的なクローニング技術、部位特異的突然変異誘発法、及びPCRを用いて作製されてよい。適切な発現系は、細菌又は酵母における構成的又は誘導性の発現系、バキュロウイルス、セムリキ森林熱ウイルス、及びレンチウイルスなどのウイルス発現系、又は昆虫若しくは哺乳動物細胞における一過性トランスフェクションを含む。適切な宿主細胞は、大腸菌、乳酸連鎖球菌、サッカロミセスセレビシアエ、スキゾサッカロミセスポンベ、ピチアパストリス、スポドプテラフルギペルダ、及びトリコプルシアニ細胞を含む。適切な動物宿主細胞は、HEK293、COS、S2、CHO、NSO、及びDT40などを含む。幾つかのGPCRは、機能するために特定の脂質(例えば、コレステロール)を必要とする。その場合には、脂質を含む宿主細胞を選択することが望ましい。加えて又は代替的に、前記脂質は、前記タンパク質変異体の単離及び精製の間に添加してもよい。これらの発現系及び宿主細胞は、本発明の第一の態様に係る方法の工程(a)におけるGPCR変異体について使用してもよいと解されるであろう。
【0093】
遺伝子及びcDNAのクローニング及び操作のため、DNAを変異させるため、及び宿主細胞においてポリヌクレオチドからポリペプチドを発現させるための分子生物学的方法が、参照によって本明細書に取り込む「Molecular cloning, a laboratory manual”, third edition, Sambrook, J. & Russell, D.W. (eds), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY」に例示されているように、当該技術分野においてよく知られている。
【0094】
本発明の第一又は第二の態様の更なる実施態様では、選択又は調製したGPCR変異体がGタンパク質に結合することが可能であるか否かを測定する。前記選択又は調製したGPCR変異体が、親GPCRと同程度の広がり及び/又は親和性の順位で、選択したリガンドと同じ分類の複数のリガンドに結合することが可能であるか否かを測定することも好ましい。
【0095】
本発明の第三の態様は、本発明の第二の態様に係る方法によって調製したGPCR変異体を提供する。
【0096】
本発明は、親GPCRと比較して増大した安定性を有する、特に増大した熱安定性を有するGPCR変異体を含む。
【0097】
β−アドレナリン受容体変異体
β−アドレナリン受容体は当該技術分野においてよく知られている。それらは互いに配列相同性を共有し、アドレナリンに結合する。
【0098】
本発明の第四の態様は、対応する野生型のβ−アドレナリン受容体と比較した際に、図9に記載のシチメンチョウβ−アドレナリン受容体の番号による以下の位置:Ile 55, Gly 67, Arg 68, Val 89, Met 90, Gly 98, Ile 129, Ser 151, Val 160, Gln 194, Gly 197, Leu 221, Tyr 227, Arg 229, Val 230, Ala 234, Ala 282, Asp 322, Phe 327, Ala 334, Phe 338の任意の1つ又は複数に対応する位置で異なるアミノ酸を有する、β−アドレナリン受容体変異体を提供する。
【0099】
β−アドレナリン受容体変異体は、任意のβ−アドレナリン受容体変異体であってよいが、所定のシチメンチョウβ−アドレナリン受容体アミノ酸配列に参照されるアミノ酸の位置の1つ又は複数において変異されている。
【0100】
GPCR変異体が、MacVector及びCLUSTALW(Thompson et al (1994) Nucl. Acids Res. 22, 4673-4680)を使用して測定すると、前記所定のシチメンチョウβ−アドレナリン受容体配列と比較した際に少なくとも20%アミノ酸配列同一性を有する者であることが特に好ましい。より好ましくは、前記受容体変異体は、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%のアミノ酸配列同一性を有する。一般的に、より高い程度のアミノ酸同一性が、天然のリガンドが結合するオルトステリック(「活性」)部位の付近では保存されている。
【0101】
以下の実施例1及び図1に記載のように、親シチメンチョウβ−アドレナリン配列(図9に示す)における以下のアミノ酸残基:Ile 55, Gly 67, Arg 68, Val 89, Met 90, Gly 98, Ile 129, Ser 151, Val 160, Gln 194, Gly 197, Leu 221, Tyr 227, Arg 229, Val 230, Ala 234, Ala 282, Asp 322, Phe 327, Ala 334, Phe 338の個々の置換は、熱安定性の増大を引き起こす。
【0102】
かくして、本発明は、親と比較した際に、これらのアミノ酸残基の1つ又は複数が他のアミノ酸残基によって置き換えられているシチメンチョウβ−アドレナリン受容体変異体を含む。本発明は、親受容体における1つ又は複数の対応するアミノ酸が他のアミノ酸残基に置き換えられている、他の起源に由来するβ−アドレナリン受容体変異体も含む。誤解を避けるために言及すると、前記親は、天然の配列を有するβ−アドレナリン受容体であってよく、又はその切断型であってよく、又は天然のタンパク質又はその断片との融合体であってよく、又はリガンド結合能を保持している天然配列と比較して変異を含有してよい。
【0103】
「対応するアミノ酸残基」によって、シチメンチョウβ−アドレナリン受容体と他のβ−アドレナリン受容体をMacVector及びCLUSTALWを使用して比較する際に、シチメンチョウβ−アドレナリン受容体中の所定のアミノ酸残基に対して整列(アライン)する他のβ−アドレナリン受容体のアミノ酸残基が含まれる。
【0104】
図9は、シチメンチョウβ−アドレナリン受容体とヒトβ1、β2、及びβ3−アドレアなリン受容体との間のアラインメントを示す。
【0105】
ヒトβ1のIle72はシチメンチョウβ−アドレナリン受容体のIle55と対応し;ヒトβ2のIle47はシチメンチョウβ−アドレナリン受容体のIle55と対応し;ヒトβ3のThr51がシチメンチョウβ−アドレナリン受容体のIle55と対応していることが認められる。ヒトβ1、β2、及びβ3における他の対応するアミノ酸残基は図9を参照して容易に同定することが可能である。
【0106】
特定のアミノ酸がAlaに置き換えられることが好ましい。しかしながら、特定のアミノ酸残基がAlaである際は、Leuで置きかえられることが好ましい(例えば、図1におけるシチメンチョウβ−アドレナリン受容体のAla 234、Ala 282、及びAla 334)。
【0107】
さらに大きい安定性が与えられる可能性があるため、β−アドレナリン受容体は、2以上のアミノ酸の位置において、親と比較して異なるアミノ酸を有することが好ましい。特に好ましいヒトβ1受容体変異体は、以下のアミノ酸残基:K85, M107, Y244, A316, F361 及び F372の1つ又は複数が他のアミノ酸残基で置き換えられているものである。典型的には、所定のアミノ酸が、Ala又はVal又はMet又はLeu又はIleで置きかえられる(ただし、それらが既に存在する残基である場合を除く)。
【0108】
上述の3又は4又は5又は6の変異の組み合わせを有するヒトβ1受容体変異体を調製する。
【0109】
特に好ましいヒトβ2受容体変異体は、以下のアミノ酸:K60, M82, Y219, C265, L310 及びF321の1つ又は複数が他のアミノ酸残基で置き換えられているものである。典型的には、所定のアミノ酸残基が、Ala又はVal又はMet又はLeu又はIleで置きかえられる(ただし、それらが既に存在する場合を除く)。
【0110】
上述の3又は4又は5又は6の変異の組み合わせを有するヒトβ2受容体変異体を調製する。図26は、β1−m23における6の熱安定化変異(R68S, M90V, Y227A, A282L, F327A, F338M)は、ヒトβ2受容体に転用して(対応する変異K60S, M82V, Y219A, C265L, L310A, F321M)、ヒトβ2−m23を作製した際の熱安定性に対する効果を示す。ヒトβ2及びβ2−m23のTmは、29℃及び41℃の各々であり、かくして、熱安定化変異を1つの受容体から他の受容体に転用可能であることが例示される。したがって、特に好ましいヒトβ2受容体変異体は、K60S, M82V, Y219A, C265L, L310A, F321Mの変異を含むものである。
【0111】
特に好ましいヒトβ3受容体変異体は、以下のアミノ酸:W64, M86, Y224, P284, A330 及びF341の1つ又は複数が他のアミノ酸残基で置き換えられたものである。典型的には、所定のアミノ酸残基が、Ala又はVal又はMet又はLeu又はIleで置きかえられる(ただし、それらが既に存在する場合を除く)
【0112】
上述の3又は4又は5又は6の変異の組み合わせを有するヒトβ3受容体変異体が、好ましい。
【0113】
特に好ましい変異の組み合わせは、実施例1の表1及び2に詳細に記載しており、本発明は、シチメンチョウβ−アドレナリン受容体変異体を含み、さらに、対応する位置のアミノ酸が他のアミノ酸、典型的には実施例1の表1及び2に示すものと同じアミノ酸に置き換えられているβ−アドレナリン受容体変異体も含む。
【0114】
特に好ましい変異体は、シチメンチョウβ−アドレナリン受容体を参照して挙げられているアミノ酸残基に対応するアミノ酸に変異を含有するものである(R68S, Y227A, A282L, A334L) (下記の表2のm6-10参照); (M90V, Y227A, F338M) (下記の表2のm7-7参照); (R68S, M90V, V230A, F327A, A334L) (下記の表2のm10-8参照); 及び (R68S, M90V, Y227A, A282L, F327A, F338M) (下記の表2のm23参照)。
【0115】
アデノシン受容体変異体
アデノシン受容体は当該技術分野においてよく知られている。それらは互いに配列相同性を共有し、アデノシンに結合する。
【0116】
本発明の第五の態様は、対応する野生型アデノシンと比較した際に、図10に記載のヒトアデノシンA2a受容体の番号付けした以下の位置:Gly 114, Gly 118, Leu 167, Ala 184, Arg 199, Ala 203, Leu 208, Gln 210, Ser 213, Glu 219, Arg 220, Ser 223, Thr 224, Gln 226, Lys 227, His 230, Leu 241, Pro 260, Ser 263, Leu 267, Leu 272, Thr 279, Asn 284, Gln 311, Pro 313, Lys 315, Ala 54, Val 57, His 75, Thr 88, Gly 114, Gly 118, Thr 119, Lys 122, Gly 123, Pro 149, Glu 151, Gly 152, Ala 203, Ala 204, Ala 231, Leu 235, Val 239の任意の1つ又は複数に対応する位置に異なるアミノ酸を有するアデノシン受容体変異体を提供する。
【0117】
アデノシン受容体変異体は任意のアデノシン受容体の変異体であってよいが、所定のヒトアデノシンA2a受容体アミノ酸配列を参照して記載されるアミノ酸位置の1つ又は複数において変異されている。
【0118】
MacVector及びCLUSTALWを使用して測定すると、GPCR変異体が所定のヒトアデノシンA2a受容体配列を比較した際に、少なくとも20%の配列同一性を有するものであることが特に好ましい。好ましくは、GPCR変異体は、少なくとも30%又は少なくとも40%又は少なくとも50%又は少なくとも60%の配列同一性を有する。典型的には、より高い程度の配列保存がアデノシン結合部位に存在する。
【0119】
以下の実施例2に記載するように、(図10に示す)ヒトアデノシンA2a受容体配列の以下のアミノ酸残基:Gly 114, Gly 118, Leu 167, Ala 184, Arg 199, Ala 203, Leu 208, Gln 210, Ser 213, Glu 219, Arg 220, Ser 223, Thr 224, Gln 226, Lys 227, His 230, Leu 241, Pro 260, Ser 263, Leu 267, Leu 272, Thr 279, Asn 284, Gln 311, Pro 313, Lys 315の個々の置き換えは、アゴニストである5’−N−エチルカルボキサミドアデノシン(NECA)を使用して測定した際の熱安定性における増大を引き起こす。
【0120】
(図10に示す)ヒトA2a受容体配列における以下のアミノ酸残基:Ala 54, Val 57, His 75, Thr 88, Gly 114, Gly 118, Thr 119, Lys 122, Gly 123, Pro 149, Glu 151, Gly 152, Ala 203, Ala 204, Ala 231, Leu 235, Val 239の置き換えは、アンタゴニストであるZM 241385(4-[2-[[7-アミノ-2-(2-フリル) [1,2,4]-トリアゾロ[2,3-α][1,3,5]トリアジン-5-イル]アミノ]エチル]フェノール)を使用して測定した際の熱安定性の増大を引き起こす。
【0121】
かくして、本発明は、親と比較すると、これらのアミノ酸残基の1つ又は複数が他のアミノ酸残基に置き換えられているヒトアデノシンA2a受容体変異体を含む。本発明は、親受容体の1つ又は複数の対応するアミノ酸が他のアミノ酸残基に置き換えられている、他の起源に由来するアデノシン受容体変異体も含む。誤解を避けるために言及すると、前記親は、天然の配列を有するアデノシン受容体であってよく、又は切断型であってよく、又は天然のタンパク質若しくはその断片に対する融合体であってよく、又は天然の配列と比較して変異を含有してよいが、リガンド結合能を保持する。
【0122】
「対応するアミノ酸残基」によって、ヒトアデノシン受容体A2a受容体及び他のアデノシン受容体をMacVector及びCLUSTALWを用いて比較する際に、ヒトアデノシンA2a受容体における所定のアミノ酸残基に対して整列(アライン)する他のアデノシン受容体におけるアミノ酸残基が含まれる。
【0123】
図10は、ヒトアデノシンA2a受容体及び3種の他のヒトアデノシン受容体(A2b、A3、及びA1)の間のアラインメントを示す。
【0124】
例えば、A2b受容体(AA2BRと示されている)におけるSer115がA2a受容体のGly114と対応することが認められる。同様に、A受容体(AA3Rと示されている)におけるAla60がA2a受容体におけるAla54に対応することなどが認められる。ヒトアデノシン受容体A2b、A、及びAにおける他の対応するアミノ酸残基は、図10を参照して容易に同定することが可能である。
【0125】
親の特定のアミノ酸がAlaに置き換わることが好ましい。しかしながら、親の特定のアミノ酸残基がAlaである際は、Leuで置き換えることが好ましい。
【0126】
アデノシン受容体変異体が、2以上のアミノ酸の位置において親と比較して異なるアミノ酸を有することが好ましい。特に好ましいヒトアデノシンA2b受容体は、以下のアミノ酸残基:A55, T89, R123, L236 及びV240の1つ又は複数が他のアミノ酸残基で置き換わっているものである。典型的には、所定のアミノ酸残基が、Ala又はVal又はMet又はLeu又はIleで置きかえられる(ただし、それらが既に存在する場合を除く)。
【0127】
3又は4又は5の上述の変異を有するヒトアデノシンA2b受容体変異体が好ましい。
【0128】
特に好ましいヒトアデノシンA3受容体は、以下のアミノ酸残基:A60, T94, W128, L232 及びL236の1つ又は複数が他のアミノ酸残基で置き換えられているものである。典型的には、所定のアミノ酸残基が、Ala又はVal又はMet又はLeu又はIleで置きかえられる(ただし、それらが既に存在する場合を除く)。
【0129】
3又は4又は5の上述の変異を有するヒトアデノシンA3受容体変異体が好ましい。
【0130】
特に好ましいヒトアデノシンA1受容体は、以下のアミノ酸残基:A57, T91, A125, L236, 及びL240の1つ又は複数が他のアミノ酸残基で置き換えられているものである。典型的には、所定のアミノ酸残基が、Ala又はVal又はMet又はLeu又はIleで置きかえられる(ただし、それらが既に存在する場合を除く)。
【0131】
変異の特に好ましい組み合わせは実施例2に詳細に記載している。本発明は、これらのヒトアデノシンA2a受容体、及び対応する位置のアミノ酸が他のアミノ酸、典型的には実施例2に示すものと同じアミノ酸によって置き換えられている他のアデノシン受容体変異体を含む。
【0132】
特に好ましいアデノシン受容体変異体は、ヒトアデノシンA2a受容体を参照して挙げられているアミノ酸残基に対応するアミノ酸に変異を含有するものである(A54L, K122A, L235A) (Rant 17); (A54L, T88A, V239A, A204L) (Rant 19); 及び(A54L, T88A, V239A, K122A) (Rant 21)。
【0133】
ニューロテンシン受容体変異体
ニューロテンシン受容体は当該技術分野において知られている。それらは配列相同性を共有し、ニューロテンシンに結合する。
【0134】
本発明の第六の態様は、対応する野生型のニューロテンシン受容体と比較した際に、図11に記載のラットニューロテンシン受容体の番号付けして記載した以下の位置:Ala 69, Leu 72, Ala 73, Ala 86, Ala 90, Ser 100, His 103, Ser 108, Leu 109, Leu 111, Asp 113, Ile 116, Ala 120, Asp 139, Phe 147, Ala 155, Val 165, Glu 166, Lys 176, Ala 177, Thr 179, Met 181, Ser 182, Arg 183, Phe 189, Leu 205, Thr 207, Gly 209, Gly 215, Val 229, Met 250, Ile 253, Leu 256, Ile 260, Asn 262, Val 268, Asn 270, Thr 279, Met 293, Thr 294, Gly 306, Leu 308, Val 309, Leu 310, Val 313, Phe 342, Asp 345, Tyr 349, Tyr 351, Ala 356, Phe 358, Val 360, Ser 362, Asn 370, Ser 373, Phe 380, Ala 385, Cys 386, Pro 389, Gly 390, Trp 391, Arg 392, His 393, Arg 395, Lys 397, Pro 399の任意の1つ又は複数に対応する位置に異なるアミノ酸を有するニューロテンシン受容体変異体を提供する。
【0135】
MacVector及びCLUSTALWを使用して測定すると、GPCR変異体が所定のラットニューロテンシン受容体配列を比較した際に、少なくとも20%の配列同一性を有するものであることが特に好ましい。好ましくは、GPCR変異体は、少なくとも30%又は少なくとも40%又は少なくとも50%又は少なくとも60%の配列同一性を有する。
【0136】
ニューロテンシン受容体変異体は任意のニューロテンシン受容体変異体であってよいが、所定のラットニューロテンシン受容体アミノ酸配列を参照して言及されるアミノ酸位置の1つ又は複数で変異している。
【0137】
以下の実施例3に記載しているように、(図11及び28に示す)ラットニューロテンシン受容体配列の以下のアミノ酸残基:Leu 72, Ala 86, Ala 90, Ser 100, His 103, Ser 108, Leu 109, Leu 111, Asp 113, Ile 116, Ala 120, Asp 139, Phe 147, Ala 155, Lys 176, Thr 179, Met 181, Ser 182, Phe 189, Leu 205, Thr 207, Gly 209, Gly 215, Leu 256, Asn 262, Val 268, Met 293, Asp 345, Tyr 349, Tyr 351, Ala 356, Phe 358, Ser 362, Ala 385, Cys 386, Trp 391, Arg 392, His 393, Lys 397, Pro 399の個々の置き換えは、ニューロテンシンの不在下について考えた際に熱安定性における増大を引き起こす。
【0138】
以下の実施例3に記載のように、(図11及び28に記載の)ラットニューロテンシン受容体配列における以下のアミノ酸残基:Ala 69, Ala 73, Ala 86, Ala 90, His 103, Val 165, Glu 166, Ala 177, Arg 183, Gly 215, Val 229, Met 250, Ile 253, Ile 260, Thr 279, Thr 294, Gly 306, Leu 308, Val 309, Leu 310, Val 313, Phe 342, Phe 358, Val 360, Ser 362, Asn 370, Ser 373, Phe 380, Ala 385, Pro 389, Gly 390, Arg 395の個々の置き換えは、ニューロテンシンの存在下について考えると、熱安定性における増大を引き起こす。
【0139】
かくして、本発明は、親と比較すると、これらのアミノ酸残基の1つ又は複数が他のアミノ酸残基によって置き換えられているラットニューロテンシン受容体変異体を含む。本発明は、親受容体の1つ又は複数の対応するアミノ酸が他のアミノ酸残基によって置き換えられている他の起源に由来するニューロテンシン受容体変異体も含む。誤解を避けるために言及すると、前記親は、天然の配列を有するニューロテンシン受容体であってよく、又は切断型であってよく、又は天然のタンパク質若しくはその断片に対する融合体であってよく、又は天然の配列と比較して変異を含有してもよいが、リガンド結合能を保持する。
【0140】
「対応するアミノ酸残基」によって、ラットニューロテンシン受容体と他のニューロテンシン受容体とをMacVector及びCLUSTALWとを使用して比較する際に、ラットニューロテンシン受容体における所定のアミノ酸残基に対して整列(アライン)する他のニューロテンシン受容体におけるアミノ酸残基が含まれる。
【0141】
図11は、ラットニューロテンシン受容体と2つのヒトニューロテンシン受容体1及び2との間のアラインメントを示す。例えば、ヒトニューロテンシン受容体1のAla85がラットニューロテンシン受容体のAla86が対応し;ヒトニューロテンシン受容体1のPhe353がラットニューロテンシン受容体のPhe358に対応することなどが認められる。ヒトニューロテンシン受容体1及び2における他の対応するアミノ酸残基は、図11を参照して容易に同定可能である。
【0142】
親の特定のアミノ酸残基がAlaに置き換えられることが好ましい。しかしながら、親の特定のアミノ酸残基がAlaである際は、Leuで置き換えられることが好ましい。
【0143】
ニューロテンシン受容体変異体は、2以上のアミノ酸の位置において、親と比較すると異なるアミノ酸を有することが好ましい。特に好ましいヒトニューロテンシン受容体(NTR1)は、以下のアミノ酸残基:Ala 85, His 102, Ile 259, Phe 337 及びPhe 353の1つ又は複数が他のアミノ酸残基で置き換えられているものである。典型的には、所定のアミノ酸残基がAla又はVal又はMet又はLeu又はIleで置きかえられる(ただし、それらが既に存在する場合を除く)。
【0144】
3又は4又は5の上述の変異を有するヒトニューロテンシン受容体(NTR1)が好ましい。
【0145】
特に好ましいヒトニューロテンシン受容体(NTR2)は、以下のアミノ酸残基:V54, R69, T229, P331 及びF347の1つ又は複数が他のアミノ酸残基で置き換えられているものである。典型的には、所定のアミノ酸残基がAla又はVal又はMet又はLeu又はIleで置きかえられる(ただし、それらが既に存在する場合を除く)。3又は4又は5の上述の変異を有するヒトニューロテンシン受容体(NTR2)が好ましい。
【0146】
特に好ましい変異の組み合わせは、実施例3に詳細に記載している。本発明は、ラットニューロテンシン受容体変異体を含み、さらに、対応する位置のアミノ酸が他のアミノ酸、典型的には実施例3に示すものと同じアミノ酸によって置き換えられている他のニューロテンシン受容体変異体も含む。
【0147】
特に好ましいニューロテンシン受容体変異得体は、ラットニューロテンシン受容体を参照して挙げられているアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基における変異を含有するものである(F358A, A86L, I260A, F342A) (Nag7m); (F358A, H103A, I260A, F342A) (Nag7n)。
【0148】
ムスカリン受容体変異体
ムスカリン受容体は当該技術分野において知られている。それらは配列相同性を共有し、ムスカリンに結合する。
【0149】
本発明の第七の態様は、対応する野生型のムスカリン受容体と比較した際に、図17に記載のヒトムスカリン受容体M1の番号付けした以下の位置:Leu 65, Met 145, Leu 399, Ile 383 及びMet 384の任意の1つ又は複数に対応する位置で異なるアミノ酸を有するムスカリン受容体変異体を提供する。
【0150】
MacVector及びCLUSTALWを使用して測定すると、GPCR変異体が所定のヒトムスカリン受容体配列を比較した際に、少なくとも20%の配列同一性を有するものであることが特に好ましい。好ましくは、GPCR変異体は、少なくとも30%又は少なくとも40%又は少なくとも50%の配列同一性を有する。
【0151】
ムスカリン受容体変異体は、任意のムスカリン受容体の変異体であってよいが、所定のムスカリン受容体アミノ酸配列を参照して挙げられているアミノ酸の位置の1つ又は複数で変異されている。
【0152】
かくして、本発明は、親と比較すると、これらのアミノ酸残基の1つ又は複数が他のアミノ酸残基によって置き換えられたヒトムスカリン受容体変異体を含む。本発明は、親受容体における1つ又は複数の対応するアミノ酸が他のアミノ酸によって置き換えられている他の起源由来のムスカリン受容体変異体も含む。誤解を避けるために言及すると、前記親は、天然の配列を有するムスカリン受容体であってよく、又は切断型であってよく、又は天然のタンパク質又はその断片に対する融合体であってよく、又は天然の配列と比較して変異を含有してよいが、リガンド結合能を保持する。
【0153】
「対応するアミノ酸残基」によって、ヒトムスカリン受容体と他のムスカリン受容体とをMacVector及びCLUSTALWを使用して比較した際に、ヒトムスカリン受容体における所定のアミノ酸に対して整列(アライン)する他のムスカリン受容体におけるアミノ酸残基が含まれる。
【0154】
特定のアミノ酸残基がAlaで置き換えられることが好ましい。しかしながら、特定のアミノ酸残基がAlaである際は、Leuで置き換えられることが好ましい。
【0155】
実施例1から3に示し、且つ、上述しているように、本発明者は、シチメンチョウβ1アドレナリン受容体、ヒトアデノシン受容体、ラットニューロテンシン受容体、及びヒトムスカリン受容体の配列全体に広く分布する熱安定化変異を同定した。図17は、ヒトβ−2ARの配列を有するこれらの配列のアラインメントを提供し、熱安定化変異が前記配列に位置する際に、全部で70のうち11例において、2つの配列が同じ位置に変異を含有している(図17において星印で示す)。かくして、1つ又は複数の安定化変異が1つのGPCRで同定されると、増大した安定性を有する更なるGPCRを、GPCRのアミノ酸配列アラインメント及び対応する1つ又は複数の位置で1つ又は複数の変異を作製することによって産生されてよい。この概念は、シチメンチョウβ1−23の6つの熱安定化変異がヒトβ2受容体に直接転用した図26に明確に例示されている。結果として得られた変異体であるβ2−23は、ヒトβ2受容体よりも12℃高いTmを有していた。
【0156】
したがって、本発明の第八の態様は、親GPCRと比較して増大した安定性を有するGPCR変異体を製造するための方法であって、
(i)第一の親GPCRと比較して増大した安定性を有する第一の親GPCRの1つ又は複数の変異のアミノ酸配列において、1つ又は複数の変異体が第一の親GPCRと比較して少なくとも1つの異なるアミノ酸残基を有する、1つ又は複数の位置を同定する工程、及び
(ii)対応する1つ又は複数の位置において、第二のGPCRを規定するアミノ酸配列に1つ又は複数の変異を作製し、第二の親GPCRと比較して増大した安定性を有する第二の親GPCRの1つ又は複数の変異体を提供する工程
を含む、方法を提供する。
【0157】
第一の親GPCRの1つ又は複数の変異体は、本発明の第一又は第二の態様に係る方法に従って選択又は調製されてよい。したがって、第一の親GPCRの1つ又は複数の変異体は、本発明の第三、第四、第五、第六、又は第七の態様に係る変異体であってよい。したがって、本発明の第八の態様に係る方法を使用して、変異誘発により安定で立体構造が固定されたGPCRを作製するために使用してよい。
【0158】
例えば、特定の立体構造における増大した安定性を有するGPCR変異体の選択の後に、安定化変異を同定し、第二のGPCRの対応する位置のアミノ酸が置き換えられ、第二の親GPCRと比較して特定の立体構造において増大した安定性を有するGPCR変異体を製造することが可能である。
【0159】
誤解を避けるために言及すると、第一の親GPCRは、天然の配列を有するGPCRであってよく、又は切断型であってよく、又は天然のタンパク質若しくはその断片に対する融合体であってよく、又は天然の配列と比較して変異を含有してよいが、リガンド結合能を保持する。
【0160】
典型的には、1つ又は複数の変異体が第一の親GPCRと比較して少なくとも1つの異なるアミノ酸残基を有する、1つ又は複数の位置を同定することは、例えば、Clustal Wプログラム(Thompson et al.,1994)を使用して、それらのアミノ酸配列を親GPCRの配列とアラインメントすることを伴う。
【0161】
「対応する1つ又は複数の位置」によって、例えば、MacVector及びClustal Wを使用して、第一の及び第二のGPCRがアラインメントによって比較される際に、第一のGPCRのアミノ酸配列における位置に整列(アライン)する第二のGPCRのアミノ酸配列における位置を含む。例えば、図17におけるアラインメントで示すように、シチメンチョウβ1−m23における6つの安定化変異であるR68S, M90V, Y227A, A282L, F327A 、及びF338Mが、ヒトβ2受容体における残基であるK60, M82, Y219, C265, L310 、及びF321の各々に対応する位置である。
【0162】
第二のGPCRのアミノ酸配列における対応する1つ又は複数の位置を同定して、それらの位置のアミノ酸を他のアミノ酸で置き換える。典型的には、前記アミノ酸は、第一の親GPCRの変異体における対応する位置のアミノ酸を置き換えたものと同じアミノ酸で置き換えられる(但し、それらのアミノ酸が既にその残基に存在する場合を除く)。例えば、シチメンチョウβ1−m23の68位では(R68S)、アルギニン残基がセリン残基で置き換えられている。したがって、ヒトβ2受容体の対応する位置である60位(K60)において、リジン残基が好ましくはセリン残基で置き換えられる。
【0163】
変異は、例えば、上述のように、且つ、当該技術分野においてよく確立された技術を使用して、アミノ酸配列において作製されてよい。
【0164】
第二のGPCRは任意の他のGPCRであってよいと解されるであろう。例えば、1つの種に由来するGPCRにおける安定化変異は、他の種に由来する第二のGPCRに転用してよい。同様に、1つの特定のGPCRアイソフォームにおける安定化変異は、異なるアイソフォームである第二のGPCRに転用してよい。好ましくは、第二の親GPCRは、第一の親GPCRと同じGPCRの分類又はファミリーのものである。系統発生解析は、タンパク質配列の類似性に基づいて、GPCRを3つの主な分類、すなわち、クラス1、2、及び3に分けており、それらのフェノタイプはロドプシン、セレクチンレセプター、及びメタボトロピックグルタメート受容体の各々である(Foord et al (2005) Pharmacol. Rev. 57, 279-288)。かくして、第二のGPCRは、第一の親GPCRと同じGPCRの分類のGPCRであってよい。同様に、GPCRは、グルタメート及びGABAなどの天然のリガンドによってファミリーに分類されている。かくして、第二のGPCRは、第一の親GPCRと同じGPCRファミリーのものであってよい。GPCRの分類及びファミリーの一覧は、International Union of Pharmacology(Foord et al (2005) Pharmacol. Rev. 57, 279-288)によって作成されており、その一覧はhttp://www.iuphar-db.org/GPCR/ReceptorFamiliesForwardで定期的に更新されている。
【0165】
第二の親GPCRは、第一のGPCRにおける変異の対応する位置を第二のGPCRにおいて決定し得るように、第一の親GPCRと整列(アライン)することが可能でなくてはならないと解されるであろう。かくして、典型的には、第二の親GPCRは、前記第一の親GPCRに対して少なくとも20%の配列同一性を有し、より好ましくは第一の親GPCRに対して少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%の配列同一性を有する。しかしながら、幾つかのGPCRは、低い配列同一性を有しており(例えば、ファミリーB及びCのGPCR)、同時に構造においては非常に似ている。かくして、20%の配列同一性のしきい値は絶対的なものではない。
【0166】
本発明者は、増大した安定性を有するGPCR変異体における1つ又は複数の変異が存在する構造モチーフの同定が、増大した安定性を有する更なるGPCR変異体を製造するのに有用であろうと考えた。
【0167】
したがって、本発明の第九の態様は、親G−タンパク質共役型受容体(GPCR)と比較して増大した安定性を有するGPCRを製造するための方法であって、
(i)第一の親GPCRと比較して増大した安定性を有する第一の親GPCRの1つ又は複数の変異体を提供する工程、
(ii)1つ又は複数の変異体が第一の親GPCRと比較して少なくとも1つの異なるアミノ酸残基を有する、1つ又は複数の構造モチーフを構造膜タンパク質モデルにおいて同定する工程、及び
(iii)第二の親GPCRにおける1つ又は複数の対応する構造モチーフを規定するアミノ酸配列における1つ又は複数の変異を作製し、第二の親GPCRと比較して増大した安定性を有する第二の親GPCRの1つ又は複数の変異を提供する工程
を含む、方法を提供する。
【0168】
1つ又は複数の既知の構造モデルにおいて安定化変異をマッピングすることを使用して、その様な安定化変異を有する特定の構造モチーフを同定してよい。本発明者は、その様なモチーフを同定するために、β2−アドレナリン受容体の構造モデルに対してβ1アドレナリン受容体の安定化変異をマッピングした(Rasmussen et al (2007) Nature 450, 383-387; Cherezov et al (2007) Science 318:1258-65; Rosenbaum et al (2007) Science 318:1266-1273)。例えば、表(vi)は、本発明者がヒトβ2−アドレナリン受容体に対してマッピングしたシチメンチョウβ1−アドレナリン受容体変異体を挙げており、それらが存在する対応する構造モチーフを記載している。実施例4に記載のように、Y227A変異(ヒトβ2受容体のY219に対応する)のヒトβ2アドレナリン受容体に対するマッピングは、変異がヘリックス界面におけるパッキングを改善し得るように、ヘリックス間の界面に位置することを明らかにする(実施例15、16、及び23参照)。同様に、M90V変異(ヒトβ受容体におけるM82に対応する)のヒトβ−受容体に対するマッピングは、ヘリックスがねじれる部分でヘリックス2に変異が存在することを明らかにする(図15、16、及び20参照)。他の変異は、脂質二重膜、疎水性−親水性境界領域、タンパク質結合ポケット、及びループ領域に向いている膜貫通ヘリックス表面を含む更なる構造モチーフに存在することが認められた(表(vi)及び図18−19、21−22、及び24−25)。
【0169】
その様な構造モチーフは、安定化変異を含有することによって、タンパク質の安定性の決定に重要である。したがって、これらのモチーフを変異の標的とすることは、安定化GPCR変異体の産生を容易にするであろう。事実、同じ構造モチーフに2以上の変異がマップされた複数の例が存在する。例えば、シチメンチョウβ1アドレナリン受容体Y227A、V230A、及びA234L変異は、同じヘリックス界面にマップされ、V89L及びM90V変異は同じヘリックスのねじれにマップされ、F327A及びA334L変異は脂質二重膜に向いた同じヘリックス表面にマッピングされた(表(vi))。かくして、1つの安定化変異が同定された際は、変異が存在する構造モチーフの決定は、更なる安定化変異の同定を可能にするであろう。
【0170】
本発明の第九の態様の実施態様では、第一の親GPCRの1つ又は複数の変異体が、本発明の第一、第二、又は第八の態様に係る方法に従って選択又は調製される。したがって、第一の親GPCRの1つ又は複数の変異体が、本発明の第三、第四、第五、第六、又は第七の態様に係る変異体の任意のものであってもよい。したがって、本発明の第九の態様に係る方法は、安定な立体構造が固定されたGPCRを変異誘発によって作製するために使用されてもよい。例えば、特定の立体構造における増大された安定性を有するGPCR変異体の選択の後に、その様な安定化変異が存在する構造モチーフを同定してよい。他のGPCRにおいて、対応する構造モチーフを規定するアミノ酸配列における1つ又は複数の変異を作製することが、次いで、親GPCRと比較して特定の立体構造において増大された安定性を有するGPCR変異体を製造するために使用されてよい。
【0171】
本発明者は、ヒトβー2AR、ラットNTR1、シチメンチョウβ−1AR、hitoアデノシンA2aR、及びヒトムスカリンM1受容体のアミノ酸配列(図17)の多重配列アラインメントを実施し、同定された熱安定化変異(実施例1から3)が前記配列に存在する際は、全部で70のうち11例において、2つの配列が同じ位置で変異を有していることが示されている(図17において星印で示す)。いずれかの理論につなげることを意図しないが、本発明者は、これらの位置の熱安定化変異は、構造膜タンパク質モデルにマッピングするための促進された転用可能性を有するものであるはずである。かくして、1つの実施態様では、第一の親GPCRの変異体は、対応する親受容体と比較した際に、図17に記載のヒトβ2ARの番号付けした以下の位置:Ala 59, Val 81, Ser 143, Lys 147, Val 152, Glu 180, Val 222, Ala 226, Ala 271, Leu 275 及びVal 317の任意の1つ又は複数に対応する位置で異なるアミノ酸を有する、ヒトβ−2AR、ラットNTR1、シチメンチョウβ−1AR、ヒトアデノシンA2aR、又はヒトムスカリンM1受容体である。
【0172】
1つ又は複数の構造モチーフを同定するために、安定化変異を膜タンパク質の既知の構造にマッピングする。
【0173】
「膜タンパク質」によって、細胞又はオルガネラの膜に結合又は接合するタンパク質を意味する。好ましくは、前記膜タンパク質は、膜に持続的に組み込まれ、脂質二重層を物理的に破壊する界面活性剤、非極性溶媒、又は変性剤を用いてのみ除去され得る完全な膜タンパク質である。
【0174】
膜タンパク質の構造モデルは任意の適切な構造モデルであってよい。例えば、前記モデルは、既知の結晶構造であってよい。GPCR結晶構造の例は、ウシロドプシン(Palczewski, K. et al., Science 289, 739-745. (2000))及びヒトβ2アドレナリン受容体(Rasmussen et al, Nature 450, 383-7 (2007); Cherezov et al (2007) Science 318:1258-65; Rosenbaum et al (2007) Science 318:1266-1273)を含む。ヒトβ2アドレナリン受容体構造の座標は、RCSB Protein Data Bankにおいて2rh1, 2r4r 及び2r4sの登録番号で認められる。代替的には、構造モデルは、ホモロジーに基づくか又はde novo構造予測法を使用して、コンピューターによって生成されるモデルであってよい(Qian et al Nature (2007) 450: 259-64)。
【0175】
所定のGPCR変異体の安定化変異は、GPCRに対して十分な構造類似性を有する任意の膜タンパク質の構造モデルにマッピングされてよい。特に、膜タンパク質のドメインは、転用可能な所定の変異について、安定化変異が存在するGPCRドメインに対して十分な構造類似性を有する。
【0176】
タンパク質ドメインは、典型的には、単独のタンパク質として単独で存在するか又は他のドメインとの組み合わせにおける大きなタンパク質の一部であってよい二次構造要素の個別的に折りたたまれた集合として規定される。一般的には、機能的な進化単位である。
【0177】
GPCRは本質的には大きなN末端ドメインを有するものを除く単独のドメインタンパク質である。したがって、典型的には、その構造モデルは、GPCRに対して十分な類似性を有する少なくとも1つのドメインを含む膜タンパク質のものである。
【0178】
構造類似性は、配列同一性の分析によって間接的に又は構造の比較によって直接的に決定されてよい。
【0179】
配列同一性に関しては、変異体が第一の親GPCRと比較して少なくとも1つの異なるアミノ酸残基を有するGPCRドメインをコードするアミノ酸配列を、構造モデルが利用可能な膜タンパク質のドメインをコードするアミノ酸配列と整列(アライン)する。これらの配列の1つ又は複数は、主要保存ドメインに加えて、挿入配列又はN末端若しくはC末端伸長を含有してよい。最適なアラインメントのために、その様な配列は、分析を歪めないように除外する。問題のドメインに亘る十分な配列同一性を有する膜タンパク質を、次いで、変異をマッピングするための構造モデルとして使用してよい。可溶性タンパク質ドメインについては、それらの3D構造は、配列同一性が増大すると100%まで増大する構造保存のレベルとともに、約20%の配列同一性で広範に保存されており、良好には30%超の同一性で保存されていることが示されている(Ginalski,K. Curr Op Struc Biol (2006) 16, 172-177)。かくして、構造膜タンパク質モデルが、第一の親GPCRと比較して少なくとも1つの異なるアミノ酸残基を含有するGPCRドメイン変異体と少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%、さらに好ましくは少なくとも95%又は99%の配列同一性を共有するドメインを含有する膜タンパク質のモデルである。
【0180】
配列同一性は、BLAST又はPSI−BLAST(Altschul et al, NAR (1997), 25, 3389-3402)などのアルゴリズム又はHidden Markov Models (Eddy S et al, J Comput Biol (1995) Spring 2 (1) 9-23)に基づく方法を使用して測定してよい。典型的には、2つのポリペプチドの間の配列同一性の%は、任意の適切なコンピュータープログラム、例えば、University of Wisconsin Genetic Computing GroupのGAPプログラムを使用して測定してよく、配列が最適に整列(アライン)されたポリペプチドに関して同一性の%を計算すると解されるであろう。そのアラインメントは、代替的には、Clustal Wプログラムを使用して実施されてよい(Thompson et al.,1994)。使用するパラメータは、以下:Fast pairwise alignment parameters: K-tuple(word) size; 1, window size; 5, gap penalty; 3, number of top diagonals; 5. Scoring method: x percent. Multiple alignment parameters: gap open penalty; 10, gap extension penalty; 0.05. Scoring matrix: BLOSUMのものであってよい。
【0181】
配列同一性に加えて、構造類似性が、構造モデルの比較によって直接的に決定されてよい。構造モデルを使用して、配列中で連続的であるか又はそうでなくてよい、配列分析のみからは明らかでない構造類似領域を検出してよい。例えば、ファミリーB及びCのGPCRは類似した構造を共有すると解されているが、それらの配列同一性は非常に低い。同様に、水輸送アクアポリンであるホウレンソウSoPip2、大腸菌AqpZ、メタノコッカスAqpM、ラットAqp4、ヒトAqp1、及びヒツジAqp0は、低い配列同一性を共有しているが、それら全ては類似した構造を有する。
【0182】
高い忠実性の構造モデルが、構造が相同的なタンパク質の既知の構造に基づいてモデルを作製するMODELLER(Sali A and Blundell T, J Mol Biol (1993) 234(3) 779-815)などの標準的なソフトウェアパッケージを使用して未知の構造のタンパク質について作製されてよい。その様なモデリングは、配列同一性の増大とともに改善する。典型的には、未知の構造の配列と既知の3D構造の配列との間の配列同一性は、30%超である(Ginalski,K. Curr Op Struc Biol (2006) 16, 172-177)。加えて、配列のみに基づくde novo構造予測法を使用して、未知の構造のタンパク質のモデルを作製してよい(Qian et al, (2007) Nature 450:259-64)。構造を実験的に測定又はモデリングによって導き出すと、構造類似領域が、2以上の3D構造の直接的な比較によって検出されてよい。それらは、例えば、DALI(Holm, L and Sander, C (1996) Science 273, 595-603)などのソフトウェアを使用して検出可能な特定の構造及びトポロジーといった二次的な構造要素を含んでよい。それらは、アミノ酸側鎖及びポリペプチド主鎖の局所的な配列、特定の空間配置における原子の特定のセット若しくは原子のグループを含んでよく、例えば、グラフ理論的表現を使用して検出されてもよい(Artymiuk,P et al, (2005) J Amer Soc Info Sci Tech 56 (5) 518-528)。この手法において、比較するタンパク質又はタンパク質の領域内の原子又は原子のグループが、典型的には、ノードの間の角度及び間隔を表示するグラフのエッジとともにグラフのノードとして表わされる。これらのグラフにおける共通のパターンは、共通の構造モチーフを示す。この手法が拡張されて、水素結合ドナー若しくはアクセプター、疎水性、形状、電荷、又は芳香性などの原子又は原子のグループの任意の記述子を含んでよく、例えば、GRID及び類似性調査のための基礎として使用される当該表示を使用して、その様な記述子にしたがってタンパク質が空間的にマッピングされてよい。前記方法、ソフトウェアの利用可能性、及び使用者の規定するパラメータ、しきい値、及び許容値の選択のためのガイドラインの説明は上述の参考文献に記載している。
【0183】
好ましい実施態様では、構造膜タンパク質モデルは構造GPCRモデルである。GPCRの構造モデルは、第一の親GPCRのモデルであってよいと解されるであろう。例えば、増大された安定性を有するGPCR変異体内の安定化変異は、第一の親GPCR構造及びその様な変異が存在する構造モチーフに直接マッピングされてよい。第一の親GPCRの構造が未知である場合は、他のGPCRの構造モデルを使用してよい。例えば、1つの種に由来するGPCRの安定化変異は、他の種に由来する同じGPCRの既知の構造モデルにマッピングされてよい。同様に、1つの特定のGPCRアイソフォームにおける安定化変異は、他のGPCRアイソフォームの既知の構造モデルにマッピングされてよい。さらに、1つのGPCRに由来する安定化変異は、同じ分類又はファミリーの他のGPCRにマッピングしてよい。GPCRの分類及びファミリーの一覧は、International Union of Pharmacology (Foord et al (2005) Pharmacol. Rev. 57, 279-288)によって作成されており、当該一覧は、http://www.iuphar-db.org/GPCR/ReceptorFamiliesForwardで定期的に更新されている。
【0184】
上述のように、構造モデルが、GPCR変異体が第一の親GPCRと比較して少なくとも1つの異なるアミノ酸を有するドメインに亘って十分な構造類似性を有する任意のGPCRのものであってよいと解されるであろう。かくして、GPCRが、第一の親GPCRと比較して少なくとも1つの異なるアミノ酸残基を含有するタンパク質ドメインに亘って、第一の親GPCRの変異体と少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%、さらに好ましくは少なくとも95%又は99%の配列同一性を共有することが好ましい。しかしながら、発明者は、20%の配列同一性のしきい値は絶対的なものではないと認識している。第一の親GPCRに対して20%未満の配列同一性を有するGPCRは、低い配列同一性が他の類似性、例えば、第一の親GPCRと比較して同じ配列モチーフの存在、同じG−タンパク質に対する結合、又は同じ機能を有すること、或いは同じ疎水性親水性指標のプロットを有することによって相殺される場合に、安定化変異が転用される構造モデルとしても役に立ち得る。
【0185】
構造モデルに対する安定化変異のマッピングは、当該技術分野において既知の適切な任意の方法を使用して実施されてよい。例えば、典型的には、構造モデルが利用可能なGPCRのアミノ酸配列を、第一の親GPCRの変異体のアミノ酸配列と整列(アライン)する。第一の親GPCRと関係する、GPCR変異体の少なくとも1つの異なるアミノ酸残基の1つ又は複数の位置は、構造モデルが利用可能なGPCRのアミノ酸配列に存在してよい。
【0186】
「構造モチーフ」によって、熱安定化変異のGPCR構造モデルにおける位置の三次元的記載を含める。例えば、構造モチーフは、GPCRの内部の任意の二次又は三次構造モチーフであってよい。「三次構造モチーフ」によって、水素結合ドナー若しくはアクセプター、疎水性、形状、電荷、又は芳香性などの原子又は原子のグループの任意の記述子を含める。例えば、タンパク質は、GRID及び構造モチーフを規定するための基礎として使用される当該表示を使用してその様な記述子にしたがって空間的にマッピングされてよい(Baroni et al (2007) J Chem Inf Mod 47, 279-294)。
【0187】
表(vi)は、安定化変異が存在することが認められるシチメンチョウβ1アドレナリン受容体の構造モチーフを挙げている。表から認められるように、変異は多数の異なる位置に存在している。3つの変異が、水性溶媒に接近可能であることが予測されるループ領域に存在する。8つの変異が、膜貫通α−ヘリックスに存在し、脂質二重層に向いており;これらの変異のうち3つが、ヘリックスの末端近辺であり、疎水性−親水性境界層にあると解されてよい。8つの変異は、膜貫通α−ヘリックスの間にあり、そのうち3つはヘリックスのねじれた又は歪められた領域のいずれかに存在し、他の2つの変異は1つのヘリックスに存在するが、変異残基に対する空間に近接したねじれを含む1つ又は複数の他のヘリックスと近接していると認められる。これらの後者の変異は、ねじれ領域内のアミノ酸のパッキングに作用し、熱安定性を生じさせ得る。他の変異は基質結合ポケットに存在する。
【0188】
したがって、1つの実施態様では、構造モチーフは、ヘリックス界面、ヘリックスねじれ、ヘリックスねじれの逆のヘリックス、脂質二重層に向いたヘリックスヒョいう面、疎水性−親水性境界層における脂質二重層に向いたヘリックス表面、ループ領域、又はタンパク質結合ポケットのいずれかである。
【0189】
安定化変異が存在する構造モチーフの同定は、タンパク質安定性におけるモチーフの重要性を示唆する。したがって、対応する1つ又は複数の構造モチーフを規定するアミノ酸配列における1つ又は複数の変異の作製は、第二の親GPCRと比較して増大した安定性を有する第二の親GPCRの1つ又は複数の変異体を提供するはずである。
【0190】
構造モチーフを規定するアミノ酸配列は、タンパク質の二次又は三次構造において結合して構造モチーフを形成する、アミノ酸残基の一次アミノ酸配列である。その様な一次アミノ酸配列が連続的又は非連続的なアミノ酸残基を含んでよいと解されるであろう。かくして、構造モチーフを規定するアミノ酸配列の同定は、関与する残基を決定し、配列を実質的に規定することを伴うであろう。変異は、例えば、上述のように、当該技術分野においてよく確立された技術を使用して、アミノ酸配列において作製されてよい。
【0191】
「対応する1つ又は複数の構造モチーフ」によって、第二の親GPCRに存在する構造モデルにおいて同定される一つ又は複数の類似構造モチーフを意味する。例えば、ヘリックス界面を同定する場合には、第二の親GPCRにおける対応するヘリックス界面は、構造モデルに存在するヘリックスに類似するヘリックスの間の界面であろう。ヘリックスのねじれを同定した場合には、対応するヘリックスのねじれは、構造モデルに存在するねじれたヘリックスに類似するヘリックスにおけるねじれであろう。第二の親GPCRにおける1つ又は複数の類似する構造モチーフは、例えば配列アラインメントによって、構造モデルにおける1つ又は複数のモチーフを規定する第二の親GPCRの配列中の類似のアミノ酸配列を検索することによって同定されてよい。さらに、コンピューターに基づくアルゴリズムは、当該技術分野において広く利用可能であり、アミノ酸配列に基づくタンパク質モチーフの存在の予測に使用されてよい。かくして、アミノ酸配列内の特定のモチーフの相対的な位置及び他のモチーフに関連する位置に基づいて、類似する構造モチーフが容易に同定されてよい。第二の親GPCRの構造モデルが利用可能である場合に、類似する1つ又は複数の構造モチーフがタンパク質の構造に対して直接マッピングされてよいと解されるであろう。典型的には、類似する構造モチーフを規定するアミノ酸配列は、構造モデルにおいてモチーフを規定する配列と少なくとも20%、より好ましくは30%、40%、50%、60%、70%、80%、及び90%、並びにさらに好ましくは95%及び99%の配列同一性を有する。
【0192】
1つの実施態様では、第二の親GPCRは第一の親GPCRである。誤解を避けるために言及すると、第二の親GPCRは、第一の親GPCRの天然の配列を有してよく、又は切断型であってよく、又は天然タンパク質若しくはその断片に対する融合体であってよく、又は天然の配列と比較して変異を含有してよいが、リガンド結合能を保持する。
【0193】
代替的な態様において、第二の親GPCRは、第一の親GPCRではない。例えば、増大した安定性を有する第一の親GPCRの変異体が同定されてよいが、増大した安定性を有する異なるGPCRの変異体を産生することが望ましい。好ましくは、第二の親GPCRは、上述の第一の親GPCRと同じGPCRの分類又はファミリーのものである。しかしながら、第二の親GPCRが任意の既知のGPCRであってよいが、第一の親GPCRの変異体の安定化変異が存在する対応する構造モチーフを含有するように、第一の親GPCRと顕著な構造類似性を共有すると解されるであろう。かくして、典型的には、第二の親GPCRが、第一の親GPCRと少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%の配列同一性を有する。しかしながら、上述のように、幾つかのGPCRは、低い配列同一性を有するが(例えば、ファミリーB及びCのGPCR)、構造において類似する。かくして、20%の配列同一性のしきい値は絶対的なものではない。
【0194】
増大された安定性についてGPCRにおいてスクリーニングされ得る数千の変異体が潜在的に存在するため、安定性に対する寄与において重要であることが既知の特定の変異を標的とすることが有利である。したがって、本発明の第八及び第九の態様に係る方法は、増大した安定性を有するGPCR変異体を選択する方法において使用してよい。特に、本発明の第八又は第九の態様に係る方法を実施して、安定性の決定に重要な構造モチーフを規定する特定のアミノ酸残基又はアミノ酸配列に対する変異を標的としてよい。
【0195】
したがって、1つの実施態様では、本発明の第八又は第九の態様に係る方法は、
(I)特定の立体構造を備えた第二の親GPCRに結合するものであるリガンドを選択する工程、
(II)第二の親GPCRの変異体又はその各々が、特定の立体構造を備える際に、同じ特定の立体構造を備えている第二の親GPCRのリガンド結合についての安定性と比較して、選択したリガンドの結合に関して増大した安定性を有するか否かを測定する工程、及び
(III)選択したリガンドの結合に関して第二の親GPCRと比較して増大した安定性を有する変異体を選択する工程
をさらに含む。
【0196】
工程(I)、(II)、及び(III)は、上述の本発明の第一の態様に係る方法の工程(b)、(c)、及び(c)に対応することに気付くであろう。したがって、安定性を評価するリガンド及び方法は、好ましくは本発明の第一の態様に係る方法に関して上述しているものである。
【0197】
本発明の第十の態様は、本発明の第十の態様に係る方法によって生産される親GPCRと比較して増大した安定性を有するGPCR変異体である。
【0198】
1つの実施態様では、本発明の第十の態様に係るGPCR変異体は、親受容体と比較して、(i)図9に記載のシチメンチョウβ−アドレナリン受容体の番号付けした以下の位置:Ile 55, Gly 67, Arg 68, Val 89, Met 90, Gly 67, Ala 184, Arg 199, Ala 203, Leu 208, Gln 210, Ser 213, Glu 219, Arg 220, Ser 223, Thr 224, Gln 226, Lys 227, His 230, Leu 241, Pro 260, Ser 263, Leu 267, Leu 272, Thr 279, Asn 284, Gln 311, Pro 313, Lys 315、(iii)図11に記載のラットニューロテンシン受容体の番号付けした以下の位置:Ala 69, Leu 72, Ala 73, Ala 86, Ala 90, Ser 100, His 103, Ser 108, Leu 109, Leu 111, Asp 113, Ile 116, Ala 120, Asp 139, Phe 147, Ala 155, Val 165, Glu 166, Lys 176, Ala 177, Thr 179, Met 181, Ser 182, Arg 183, Phe 189, Leu 205, Thr 207, Gly 209, Gly 215, Val 229, Met 250, Ile 253, Leu 256, Ile 260, Asn 262, Val 268, Asn 270, Thr 279, Met 293, Thr 294, Gly 306, Leu 308, Val 309, Leu 310, Val 313, Phe 342, Asp 345, Tyr 349, Tyr 351, Ala 356, Phe 358, Val 360, Ser 362, Asn 370, Ser 373, Phe 380, Ala 385, Cys 386, Pro 389, Gly 390, Trp 391, Arg 392, His 393, Arg 395, Lys 397, Pro 399、並びに(iv)図17に記載のムスカリン受容体の番号付けした以下の位置:Le
u 65, Met 145, Leu 399, Ile 383 及びMet 384の任意の1つ又は複数に対応する位置に少なくとも1つの異なるアミノ酸を有するGPCR変異体である。
【0199】
図17に示すシチメンチョウβ1AR、ヒトアデノシン受容体、ラットニューロテンシン受容体、及びヒトムスカリン受容体アミノ酸配列のアラインメントは、70のうちの11例において、2つの配列が同じ位置、すなわち、図17に記載のヒトβ2ARの番号付けした以下の位置:Ala 59, Val 81, Ser 143, Lys 147, Val 152, Glu 180, Val 222, Ala 226, Ala 271, Leu 275 及びVal 317に変異を含有することを示す。したがって、好ましい実施態様では、本発明の第十の態様に係るGPCR変異体は、親受容体と比較して、これらの位置の任意の1つに異なるアミノ酸を有するものである。
【0200】
1つの実施態様では、本発明の第十の実施態様に係るGPCR変異体は、βアドレナリン受容体変異体である。例えば、β−アドレナリン受容体変異体は、構造モチーフに少なくとも1つの異なるアミノ酸残基を有してよく、前記受容体変異体は、親受容体と比較して、図9に記載のシチメンチョウβ−アドレナリン受容体の番号付けした以下の位置:Ile 55, Gly 67, Arg 68, Val 89, Met 90, Gly 98, Ile 129, Ser 151, Val 160, Gln 194, Gly 197, Leu 221, Tyr 227, Arg 229, Val 230, Ala 234, Ala 282, Asp 322, Phe 327, Ala 334, Phe 338のいずれかに対応する位置に異なるアミノ酸を有する。
【0201】
1つの実施態様では、本発明の第十の態様に係るGPCR変異体は、アデノシン受容体変異体である。例えば、アデノシン受容体変異体は、構造モチーフに少なくとも1つの異なるアミノ酸残基を有してよく、前記受容体変異体は、親受容体と比較して、図10に記載のヒトアデノシンA2a受容体の番号付けした以下の位置:Gly 114, Gly 118, Leu 167, Ala 184, Arg 199, Ala 203, Leu 208, Gln 210, Ser 213, Glu 219, Arg 220, Ser 223, Thr 224, Gln 226, Lys 227, His 230, Leu 241, Pro 260, Ser 263, Leu 267, Leu 272, Thr 279, Asn 284, Gln 311, Pro 313, Lys 315のいずれかに対応する位置に異なるアミノ酸を有する。
【0202】
1つの実施態様では、本発明の第十の態様に係るGPCR変異体はニューロテンシン受容体変異体である。例えば、ニューロテンシン受容体変異体は、構造モチーフに少なくとも1つの異なるアミノ酸残基を有してよく、前記受容体変異体は、親受容体と比較して、図11に記載のラットニューロテンシン受容体の番号付けした以下の位置:Ala 69, Leu 72, Ala 73, Ala 86, Ala 90, Ser 100, His 103, Ser 108, Leu 109, Leu 111, Asp 113, Ile 116, Ala 120, Asp 139, Phe 147, Ala 155, Val 165, Glu 166, Lys 176, Ala 177, Thr 179, Met 181, Ser 182, Arg 183, Phe 189, Leu 205, Thr 207, Gly 209, Gly 215, Val 229, Met 250, Ile 253, Leu 256, Ile 260, Asn 262, Val 268, Asn 270, Thr 279, Met 293, Thr 294, Gly 306, Leu 308, Val 309, Leu 310, Val 313, Phe 342, Asp 345, Tyr 349, Tyr 351, Ala 356, Phe 358, Val 360, Ser 362, Asn 370, Ser 373, Phe 380, Ala 385, Cys 386, Pro 389, Gly 390, Trp 391, Arg 392, His 393, Arg 395, Lys 397, Pro 399のいずれかに対応する位置で異なるアミノ酸を有する。
【0203】
1つの実施態様では、本発明の第十の態様に係るGPCR変異体は、ムスカリン受容体変異体である。例えば、ムスカリン受容体変異体は、構造モチーフに少なくとも1つの異なるアミノ酸残基を有してよく、前記受容体変異体は、図17に記載のヒトムスカリン受容体の番号付けした以下の位置:Leu 65, Met 145, Leu 399, Ile 383 及びMet 384のいずれかに対応する位置において異なるアミノ酸を有する。
【0204】
本発明のGPCR変異体は、熱、界面活性剤、カオトロピック剤、及び極端なpHのいずれか1つに対する増大した安定性を有することが好ましい。
【0205】
本発明のGPCR変異体が増大した熱安定性を有することが好ましい。
【0206】
β−アドレナリン受容体、アデノシン受容体、及びニューロテンシン受容体を含む本発明のGPCR変異体が、それらのリガンドの存在下又は不在下に、親と比較して増大した熱安定性を有することが好ましい。典型的には、リガンドは、アンタゴニスト、完全なアゴニスト、部分的アゴニスト、又は逆アゴニストであり、オルトステリック又はアロステリックのいずれかである。上述のように、リガンドは、抗体などのポリペプチドであってよい。
【0207】
本発明のGPCR変異体、例えば、β−アドレナリン受容体変異体又はアデノシン受容体変異体又はニューロテンシン受容体変異体が、親よりも少なくとも2℃、好ましくは少なくとも5℃、より好ましくは少なくとも8℃、さらに好ましくは少なくとも10℃又は15℃又は20℃安定であることが好ましい。典型的には、親受容体及び受容体変異体の熱安定性は、同じ条件下で測定される。典型的には、熱安定性は、GPCRが特定の立体構造を備えている条件下でアッセイされる。典型的には、当該選択される条件は、GPCRに結合するリガンドの存在下である。
【0208】
本発明のGPCR変異体が、可溶化され、且つ、適切な界面活性剤中で精製される際に、ドデシルマルトシド中で精製されたウシロドプシンと類似の熱安定性を有することが好ましい。GPCR変異体が、30分間に亘る40℃の加熱後に少なくとも50%のリガンド結合活性を保持することが、特に好ましい。GPCR変異体が、30分間に亘る55℃の加熱後に少なくとも50%のリガンド結合活性を保持することが、さらに好ましい。
【0209】
本明細書に開示するGPCR変異体は、結晶化試験に関して有用であり、且つ、薬剤探索プログラムにおいて有用である。それらは、例えば表面プラズモン共鳴又は蛍光に基づく技術による、受容体/リガンド動態及び熱動力学的パラメータの生物物理学的測定において使用されてよい。それらは、リガンド結合スクリーニングに使用してもよく、ハイスループットスクリーニングにおいて又はバイオセンサーチップとして使用するための固体表面に結合させてよい。GPCR変異体を含有するバイオセンサーチップを使用して、分子、特に生体分子を検出してよい。
【0210】
本発明は、本発明のGPCR変異体をコードするポリヌクレオチドも含む。特に、ポリヌクレオチドは、本発明のβ−アドレナリン受容体変異体又はアデノシン受容体変異体又はニューロテンシン受容体変異体をコードするものを含む。前記ポリヌクレオチドは、DNA又はRNAであってよい。典型的には、前記GPCR変異体を発現するために使用しうるベクターなどのベクターに含まれる。適切なベクターは、細菌又は哺乳動物又は昆虫細胞において発現を可能にする及び/又は増殖するものである。
【0211】
本発明は、GPCR変異体をコードするポリヌクレオチドを含有する、細菌又は真核生物細胞などの宿主細胞も含む。適切な細胞は、大腸菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、及び昆虫細胞を含む。
【0212】
本発明を、以下の図面及び実施例を参照してより詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】βARにおけるアミノ酸変化は熱安定性を誘導する。安定性指数は、32℃で30分間に亘ってサンプルを加熱した後に変異体の残存する結合活性の%を示す。全ての値は、βAR34−424(50%、破線で示す)に対して標準化されて、アッセイの間の任意の実験のばらつきを除去する。バーは各変異体の安定性を示す。x軸の文字は、変異に存在するアミノ酸を示す。βAR34−424における本来のアミノ酸及びその位置は下に示す。βAR34−424における同じアミノ酸に対応するバーは同じ色のものであり、最も良好な変異を矢印で示す。誤差は、測定を重複して行って算出し、最も良好な変異体は、その後に再びアッセイして各変異についてのTmを測定し、各変異体についての安定性の正確な順位を得た(実施例1参照)。
【図2】βAR34−424における熱安定化変異に対応する位置であるロドプシンにおける側鎖。βAR34−424における変異アミノ酸残基に対応するロドプシンにおけるアミノ酸残基を、ロドプシン、β1アドレナリン受容体、ニューロテンシン受容体、及びアデノシンA2a受容体の間のアラインメントに基づいて、ロドプシン構造に示す(データ示さず)。同じ膜貫通ヘリックスにおける側鎖は、同じ色の空間充填モデルとして示す。アミノ酸残基の名前及び位置はロドプシンのものである。
【図3】βARにおける熱安定性の進化。βAR−m10−8から出発して、変異の組み合わせを系統的に再配列させて、変異の最適な組み合わせを見出した(表2参照)。
【図4】apo−state又は結合したアンタゴニスト[H]−DHAの含有におけるβAR−m23及びβAR34−424の安定性。リガンドの非存在下(apo−state、破線)においてTmを測定するために、界面活性剤で可溶化した受容体を、結合アッセイを実施する前に、所定の温度で30分に亘ってインキュベートした。アンタゴニストが結合した形態のTm測定のために(連続線)、界面活性剤で可溶化した受容体を、[H]−DHAと事前インキュベートした後に所定の温度でインキュベートした。βAR−m23(丸)及びβAR34−424(四角)。データポイントは、代表的な実験の二回重複した測定によるものである。
【図5】βAR−m23及びβAR34−424に対するアゴニストの競争的結合。結合アッセイをDDM中で部分的に精製した受容体に対して実施した;βAR−m23(三角)及びβAR34−424(四角)。[H]−DHAは部分的に精製した受容体のKの三倍大きい濃度で使用した(方法参照)。[H]−DHA結合は、アゴニストであるノルエピネフリン(a)及びイソプレナリン(b)又はアンタゴニストであるアルプレノロール(c)の濃度の増大とともに競争的であった。異なるリガンドについてのLogEC50及び対応するEC50値は、GraphPad Prismソフトウェアを使用して非線形回帰によって算出し、LogEC50の誤差は10%未満であった。βAR34−424及びβAR−m23に対するリガンド結合のEC50は、ノルエピネフリン、βAR34−424 1.5μM、βAR−m23 3.7mM;イソプレナリン、βAR34−424330nM、βAR−m23 20μM;アルプレノロール、βAR 78nM、βAR−m23 112nM。
【図6】5種の異なる界面活性剤におけるβAR−m23及びβAR34−424の安定性。DDM中で可溶化したβAR−m23(a)及びβAR34−424(b)のサンプルは、各種の異なる界面活性剤:DDM(四角)、DM(三角)、OG(逆三角)、LDAO(菱形)、及びNG(丸)に交換することが可能なNi−NTAアガロースカラムで部分的に精製した。βARはOG、NG、及びLDAO中で非常に不安定であるため、6℃で精製した後に任意の活性を測定することが不可能であった。アッセイは方法に記載のように実施し、曲線及び破線の間の交差下部分でTmを示している。結果は、平行に実施した代表的な実験の二回重複した試験によるものである。(c)βAR−m23変異体の結晶の顕微鏡写真であり、X線回折による良好な秩序を示した。
【図7】βAR34−424の熱安定性曲線(Tm)。結合アッセイを、「方法」に記載したように放射リガンドである[H]−ジヒドロアルプレノロール(DHA)を使用して実施した。サンプルをアッセイの前に異なる温度で30分間に亘って加熱した。Tmは結合が50%まで低減する温度を表わし、その値を破線で示す。データポイントは、単独の試験の二回重複によるものである。この実験を数回繰り返し、同様の結果であった。
【図8】βAR34−424及びβAR−m23の膜の飽和結合アッセイ。結合アッセイは、放射リガンドとして[H]−ジヒドロアルプレノロール(DHA)使用する「方法」に記載のように実施した;βAR34−424(a)及びβAR−m23(b)。スカッチャードプロットは、Bmax及びKについての対応する値とともに差込図として示した。データポイントは、各タンパク質の2つの独立した実験の二回重複によるものである。データは、Prismソフトウェア(GraphPad)を使用して非線形回帰によって分析した。
【図9A】ヒトβ1、β2、及びβ3受容体とシチメンチョウβ−アドレナリン受容体とのアラインメント。
【図9B】ヒトβ1、β2、及びβ3受容体とシチメンチョウβ−アドレナリン受容体とのアラインメント。
【図10A】ヒトアデノシン受容体のアラインメント。
【図10B】ヒトアデノシン受容体のアラインメント。
【図11A】ニューロテンシン受容体のアラインメント。
【図11B】ニューロテンシン受容体のアラインメント。
【図12】受容体熱安定性を測定するために使用するリガンド(+)及びリガンド(−)の2つの異なるアッセイ様式を示すフローチャート。
【図13−1】熱安定性アデノシンA2a受容体変異体であるRant21の薬理学的プロフィール。(A)アンタゴニスト及び(B)アゴニストの可溶化受容体に対する飽和結合。(C−F)アンタゴニストである(C)XAC及び(D)テオフィリン並びにアゴニストである(E)NECA及び(F)R−PIAの濃度の増大による[H]ZM241385結合の阻害;未標識リガンドの不在下における[H]ZM241385(10nM)の結合は100%に設定した。各可溶化受容体は、400mM NaClを含有する結合緩衝液(50mM Tris pH7.5及び0.025% DDM)中で氷上において1時間に亘ってリガンドとインキュベートした(A、C−F)。示されているデータは、三回重複して測定した各データポイントで、2つの独立した実験によるものである。K及びK値は表(iii)に示す。
【図13−2】熱安定性アデノシンA2a受容体変異体であるRant21の薬理学的プロフィール。(A)アンタゴニスト及び(B)アゴニストの可溶化受容体に対する飽和結合。(C−F)アンタゴニストである(C)XAC及び(D)テオフィリン並びにアゴニストである(E)NECA及び(F)R−PIAの濃度の増大による[H]ZM241385結合の阻害;未標識リガンドの不在下における[H]ZM241385(10nM)の結合は100%に設定した。各可溶化受容体は、400mM NaClを含有する結合緩衝液(50mM Tris pH7.5及び0.025% DDM)中で氷上において1時間に亘ってリガンドとインキュベートした(A、C−F)。示されているデータは、三回重複して測定した各データポイントで、2つの独立した実験によるものである。K及びK値は表(iii)に示す。
【図14】熱安定変異体は、野生型受容体と比較した際の加熱に対する、脂質(A)依存性の低減及びDDM(B)のより高い濃度における増大された生存を示す。受容体は、1%DDM(50mM Tris pH7.5及び400mM NaCl)で可溶化し、IMAC工程についてNi−NTAアガロースに固定化した。DDM及び/又は脂質の適当な濃度を含有する緩衝液の交換を、Ni−NTAビーズからの洗浄及び溶出の間に実施した。
【図15】ヒトβ2アドレナリン受容体構造における相同残基(M82、Y219、C265、及びA321)に対する、シチメンチョウβ1アドレナリン受容体におけるM90V、Y227A、A282L、及びF338M m23変異のマッピング(Rasmussen et al (2007) Nature 15;383-387; pdb accession codes 2R4R and 2R4S)が、ヘリックス界面及びヘリックスのねじれの各々に位置することを明らかにする。シチメンチョウβ1アドレナリン受容体における熱安定変異に対応する位置におけるアミノ酸残基を、標識空間充填モデルとして示している。
【図16】ヒトβ2アドレナリン受容体構造における相同残基に対する、シチメンチョウβ1アドレナリン受容体におけるm23のマッピング(Cherezov et al (2007) Science, 318:1258-65; pdb accession code 2RH1)。β2ARのCαトレースが、除去された誘導部分(T4リソザイム)で示される。βAR−m23における6つの変異(R68S, M90V, Y227A, A282L, F327A, F338M)は、ヒトβ2ARにおけるアミノ酸残基K60, M82, Y219, C265, L310, F321と対応する。Lys60は、ヘリックス1の細胞内末端上に位置し、脂質−水界面を向いている。Met82はヘリックス2の中央部付近に存在し、リガンド結合ポケットを向いている;基質であるカラゾロールとMet側鎖との最も近接した間隔は5.7Åである。Tyr219はヘリックス5の細胞内末端に対し、ヘリックス5−ヘリックス6界面に存在する。Cys265はヘリックス5と6の間のループ領域の末端に存在し、膜貫通領域の反対の方向に向いている。Leu310及びPhe321の双方はヘリックス7に存在し、双方が脂質二重層を向いている。
【図17−1】ヒトβ−2AR、ラットNTR、シチメンチョウβ−1AR、ヒトアデノシンA2aR、及びヒトムスカリンM1受容体の多重配列アラインメント。各配列において、熱安定化変異が四角で囲って印を付けている。2以上の配列に生じている変異を星で示す。
【図17−2】ヒトβ−2AR、ラットNTR、シチメンチョウβ−1AR、ヒトアデノシンA2aR、及びヒトムスカリンM1受容体の多重配列アラインメント。各配列において、熱安定化変異が四角で囲って印を付けている。2以上の配列に生じている変異を星で示す。
【図17−3】ヒトβ−2AR、ラットNTR、シチメンチョウβ−1AR、ヒトアデノシンA2aR、及びヒトムスカリンM1受容体の多重配列アラインメント。各配列において、熱安定化変異が四角で囲って印を付けている。2以上の配列に生じている変異を星で示す。
【図18】ヒトβ2AR構造(pdb登録コード2RH1)に対する、シチメンチョウβ1AR変異155Aのマッピング(ヒトβ2ARI47)。変異は、3ヘリックス(H1、H2ねじれ、H7ねじれ)の間の界面に存在する。左:側面図;右:平面図である。
【図19】ヒトβ2AR構造(pdb登録コード2RH1)に対する、シチメンチョウβ1AR変異V89Lのマッピング(ヒトβ2ARV81)。変異は、2ヘリックスのねじれに存在する。ヘリックスは番号付けして、結合したアンタゴニストは空間充填モデルとして示す。シチメンチョウβ1アドレナリン受容体における熱安定化変異に対応する位置のアミノ酸残基は空間充填モデルとして示しており、明確にするために矢印で示す。左:側面図;右:平面図である。
【図20】ヒトβ2AR構造(pdb登録コード2RH1)に対する、シチメンチョウβ1AR変異M90Vのマッピング(ヒトβ2ARM82)。変異は、結合ポケットに対して向いているヘリックス2のねじれに存在する。ヘリックスは番号付けして、結合したアンタゴニストを空間充填モデルとして示す。シチメンチョウβ1アドレナリン受容体における熱安定化変異に対応する位置のアミノ酸残基は、空間充填モデルとして示しており、明確にするために矢印で示す。左:側面図;右:平面図であった。
【図21】ヒトβ2AR構造(pdb登録コード2RH1)に対する、シチメンチョウβ1AR変異I129Vのマッピング(ヒトβ2ARI121)。変異はヘリックス5のねじれの逆に存在する。ヘリックスは番号付けして、結合したアンタゴニストを空間充填モデルとして示す。シチメンチョウβ1アドレナリン受容体における熱安定化変異に対応する位置のアミノ酸残基を空間充填モデルとして示し、明確にするために矢印で示す。左:側面図;右:底面図である。
【図22】ヒトβ2AR構造(pdb登録コード2RH1)に対する、シチメンチョウβ1AR変異F338Mのマッピング(ヒトβ2ARF321)。変異はヘリックス7のねじれに存在する。ヘリックスは番号付けして、結合したアンタゴニストは空間充填モデルとして示す。シチメンチョウβ1アドレナリン受容体における熱安定化変異に対応する位置のアミノ酸残基を空間充填モデルとして示し、明確にするために矢印で示す。左:側面図;右:平面図である。
【図23】ヒトβ2AR構造(pdb登録コード2RH1)に対する、シチメンチョウβ1AR変異Y227Aのマッピング(ヒトβ2ARY219)。変異はヘリックス−ヘリックス界面に存在する。ヘリックスは番号付けして、結合したアンタゴニストは空間充填モデルとして示す。シチメンチョウβ1アドレナリン受容体における熱安定化変異に対応する位置のアミノ酸残基を空間充填モデルとして示し、明確にするために矢印で示す。左:側面図;右:底面図である。
【図24】ヒトβ2AR構造(pdb登録コード2RH1)に対する、シチメンチョウβ1AR変異A282Lのマッピング(ヒトβ2ARC265)。変異はループ領域に存在する。ヘリックスは番号付けして、結合したアンタゴニストは空間充填モデルとして示す。シチメンチョウβ1アドレナリン受容体における熱安定化変異に対応する位置のアミノ酸残基を空間充填モデルとして示し、明確にするために矢印で示す。左:側面図;右:平面図である。
【図25】ヒトβ2AR構造(pdb登録コード2RH1)に対する、シチメンチョウβ1AR変異R68Sのマッピング(ヒトβ2ARK60)。変異は脂質−水境界に存在し、溶媒に向いている。ヘリックスは番号付けして、結合したアンタゴニストは空間充填モデルとして示す。シチメンチョウβ1アドレナリン受容体における熱安定化変異に対応する位置のアミノ酸残基を空間充填モデルとして示し、明確にするために矢印で示す。左:側面図;右:斜視図である。
【図26】3つのβアドレナリン受容体(シチメンチョウβ1(■)、ヒトβ1(▼)、及びヒトβ2(●))並びに2つの熱安定化受容体(シチメンチョウβ1−m23(▲)及びヒトβ2−m23(◆))の熱安定性の比較。β1−m23における6つの熱安定化変異(R68S、M90V、Y227A、A282L、F327A、F338M)を、図9におけるアラインメントに基づいて、ヒトβ2受容体(K60S、M82V、Y219A、C265L、L310A、F321M)に直接転用して、β2−m23を作製した。結果として得られる変異体は、哺乳動物細胞において一過的に発現させて、0.1%ドデシルマルトシドに可溶化して、マイナスリガンドフォーマット(apo状態で加熱し、氷上で停止させ、3H−DHAを添加する)で熱安定性を評価した。シチメンチョウβ1及びβ2−m23の見かけのTmは、23℃及び45℃の各々であり、大腸菌で発現させた受容体において過去に認められているように22℃のΔTmを示した。ヒトβ2及びβ2−m23のTmは、29℃及び41℃の各々であり、apo受容体は12℃で安定化されることが示された。このことは、1つの受容体から他の受容体に熱安定化変異を転用することが可能であるという概念を例示するものであり、この場合には59%の配列同一性を有する。ヒトβ1受容体(Tm〜12℃)は、シチメンチョウβ1受容体よりも非常に低い安定性を示す。
【図27】シチメンチョウβ1アドレナリン受容体、ヒトアデノシン受容体、及びラットニューロテンシン受容体の、ヒトβアドレナリン受容体、ヒトアデノシン受容体、及びヒトニューロテンシン受容体の各々に対する同一性の割合。
【図28A】ニューロテンシン受容体のアラインメント。
【図28B】ニューロテンシン受容体のアラインメント。
【実施例】
【0214】
(実施例1)
界面活性剤耐性形態におけるβ−アドレナリン受容体の立体構造安定化
要約
ヒトゲノムによってコードされる500超の非嗅覚Gタンパク質共役型受容体(GPCR)が存在し、その多くが潜在的な治療標的であると予測されているが、ファミリーの全てを代表するものとしてウシロドプシンのみの構造が利用可能である。GPCR構造決定における進歩の欠落には多数の理由が存在するが、本発明者は、これらの受容体の界面活性剤安定性を改善すること、及び同時にそれらを1つの好ましい立体構造に固定化することが、結晶化の可能性を大幅に改善するであろうと仮説を立てた。GPCR、すなわちβ−アドレアンリン受容体の界面活性剤可溶化熱安定化変異体の単離のための一般的な戦略は、アラニンスキャニング変異誘発、それに続く受容体安定性のアッセイに基づいて開発した。試験した318の変異体のうち、15が安定性における測定可能な増大を示した。最初の変異部位の各々におけるアミノ酸の最適化の後に、最適に安定化した受容体を特定の変異を組み合わせることによって構築した。最も安定な受容体変異体であるβAR−m23は、6つの点変異を有し、天然のタンパク質よりも結合したアンタゴニストの存在下で21℃高いTmを生じさせ、βARm23はウシロドプシンと同程度に安定であった。加えて、βAR−m23は広範な界面活性剤において顕著により安定で、結晶化に理想的であり、リガンドの不在下においてアンタゴニスト立体構造で好適に存在した。
【0215】
結果
β1アドレナリン受容体の熱安定性を増大する単一変異の選択
シチメンチョウ赤血球由来のβARはよく特性決定されており、バキュロウイルス発現系を使用して昆虫細胞において高レベルで発現されるため、構造研究に理想的な対象である(非特許文献10、11)。βARの最も良好な過剰発現は、残基34−424を含有する受容体の切断型を使用して得られ(βAR34−424)(非特許文献9)、これが本研究の出発点として使用された。アラニンスキャニング変異誘発を使用して、変異した際に、受容体の熱安定性を変化させるβAR34−424におけるアミノ酸を規定した;アラニンが配列中に存在する場合には、ロイシン残基に変異させた。全部で318の変異をアミノ酸残基37−369、7つの膜貫通ドメインを含む領域、及びC末端の23アミノ酸残基に作製した;15アミノ酸残基における変異は、DNA鋳型における強力な二次構造によって得られなかった。各変異体の配列決定をして所望の変異のみが存在することを確認した後に、受容体を大腸菌において機能的に発現させ、安定性についてアッセイした。
【0216】
熱安定性についてのアッセイは、受容体を30分間に亘って32℃で加熱し、氷上で反応を停止させ、次いで、アンタゴニストである[H]−ジヒドロアルプレノロールを使用して放射リガンド結合アッセイを実施して未処理の対象と比較して残存する機能的なβAR34−424分子の数を測定することによって、未精製界面活性剤可溶化受容体に対して実施した。非変異βAR34−424をアッセイ前に30分間に亘って32℃で加熱することで、未加熱の対照の約50%まで結合が低減した(図7);変異体についての全てのデータは、実施した全てのアッセイにおいて非変異βAR34−424を対照として含めることによって標準化した。一巡目のスクリーニングにおいて、18の変異が安定性における明らかな増大を示し、加熱後に75%超のアゴニスト結合を保持し、天然のβAR34−424の少なくとも50%のレベルで大腸菌において発現した。これらの変異の更なる安定性の増大の可能性の観点から、18残基の各々を2−5の異なるサイズ又は電荷の代替的なアミノ酸残基に変異させた(図1)。これら18の変異体のうち、12が更なる変化によって改善し、5が他のアミノ酸が存在する場合に更に良好な熱安定性を有し、第一のスクリーニングに由来する1つの変異が擬陽性であったことが明らかになった。加えて、アラニンへの変異では安定化されなかった3つの残基(V89、S151、L221)を広範な他のアミノ酸残基に変異させた;アラニンに変異させた際に熱安定性に影響しなかった2つの位置は、他の変化によっても影響を受けなかった。対照的に、V89はアラニンに変異させた際により低い熱安定性を示したが、Leuに変異させた際は熱安定性が増大した。かくして、最初のアラニンスキャニングは、任意の所定の位置について試験したもののうち最も良好なアミノ酸残基の三分の二を示した。
【0217】
変異された際に熱安定性の最も良好な増大を示した16のアミノ酸残基の各々について予測される位置及び環境を、構造が既知のロドプシンの配列とβAR配列とのアラインメントによって決定した(図2)。これらの残基の14は、膜貫通α−ヘリックスに存在すると予測され、そのうち5つの残基は脂質に向いていると予測され、4つは深く埋め込まれており、残部の残基はヘリックスの間の界面に存在すると予測された。連続的なアミノ酸であるG67及びR68(ロドプシンにおけるV63及びQ64)またはヘリックス5におけるクラスターY227、R229、V230、及びA234(ロドプシンにおけるY223、Q225、L226、及びV230)などの、これらの残基の幾つかは、βAR構造において互いに相互作用していると予測されるだろう。βAR中で相互作用し得る他のアミノ酸残基は、外側のループ2のQ194A及び外側のループ3のD322Aであった(ロドプシンにおけるG182及びP285の各々)。
【0218】
個々の変異の各々がβAR34−424に与えた安定性の増大は、各変異体のTmを測定することによって決定した(結果示さず);ここでTmは30分間に亘って受容体を加熱した後の機能的な結合における50%の低減を与える温度である。8℃までTmを増大させたM90A及びY227Aを除いて、各変異は1から3℃でβAR34−424のTmを増大させた。
【0219】
最適な安定受容体を作製するための変異の組み合わせ
最初に、βARの一次アミノ酸配列において互いに隣接する、熱安定性を改善した変異を組み合わせた。G67A及びR68Sという変異又はヘリックス5の末端の変異の異なる組み合わせ(Y227A、R229Q、V230A、及びA234L)を含有する構築物を発現させて、アッセイした;Tm値(結果示さず)は、βAR34−424のTmよりも1から3℃のみ高く、1つの変異は実際には僅かにより安定でないものであり、一次アミノ酸配列において互いに隣接する変異の組み合わせは大きく熱安定性を改善するものではないことが示唆された。続いて、構造において互いに離れていると予測された変異を組み合わせた。各種のプライマー混合物を使用してPCR反応を実施し、無作為な様式で5つの異なる変異を組み合わせ、次いで、熱安定性について試験した(表1)。これらの組み合わせの最も良好なものは、βAR34−424のTmと比較して10℃より大きくTmを増大させた。幾つかの場合では、個々の変異の連続的な包含でTmに対しては相加的な効果が明らかに存在した。これは一連の3つの変異体、m4−1、m4−7、及びm4−2において認められ、m4−1に対するV230Aの付加はTmを2℃増大させ、m4−7におけるD332Aという付加的な変異はTmをさらに3℃増大させる。Y227A及びM90Aを含有する変異体の全ては、10℃以上のTmの増大を示した。これらの2つの変異が共に、βAR34−424のTmを13℃まで増大させたが(m7−5)、アンタゴニスト結合全体はβAR34−424の50%であり、これらの変異体の発現低下が示唆された。m7−5に対するF338Mの添加は熱安定性を増大しなかったが、大腸菌における機能的な発現のレベルを増大させた。
【0220】
【表1】

【0221】
大腸菌において依然として高レベルで発現した、最も熱安定である得られた変異体は、m6−10、m7−7、及びm10−8であった。これらの変異体は合計して全部で10の異なる変異を含有し、8つの変異はそれらの変異体の少なくとも2種に存在していた。m10−8を鋳型として使用し、m6−10及びm7−7に存在する変異を添加又は置換することによって、変異誘発の二順目を実施した(図3);これらの変異の幾つかはβARの一次アミノ酸配列において非常に近接していたため、上述のように付加的でなかったが、多数の変異はTmをさらに改善した(表2)。例えば、m10−8における2つの変異を交換して、m18を作製すると、49.6℃までTmを上昇させ、A282Lを添加してm23を作製すると、Tmをさらに3℃増大させ52.8℃とした。これによって、これまでで最も熱安定であるβAR34−424が生産され、βAR−m23と称する。
【0222】
【表2】

【0223】
βAR34−424変異体を開発するために使用する熱安定性アッセイは、アンタゴニストの不在下において受容体を加熱することによって実施したが、結合したリガンドが受容体を安定化することがよく知られている。したがって、βAR34−424及びβAR−m23についての安定性アッセイは、加熱工程の間に受容体に結合したアンタゴニストを用いて繰り返した(図4)。予測されるように、インキュベーションの間に結合したアンタゴニストを含有する受容体のTmは、アンタゴニストの不在下における受容体のTmよりも高いものであった。βAR34−424については、結合したアンタゴニストを用いて6℃高く、βAR−m23については、Tmが2℃増えて55℃となった;アンタゴニストが結合した際にβAR−m23について観察された熱安定性のより小さな増大は、当該受容体は既に、βAR34−424よりも、アンタゴニストが結合した状態に類似するより安定な立体構造にあることを示唆する(下記参照)。アンタゴニストが結合したβAR−m23のTmは、2つの独立した研究所によってその構造が解析された(非特許文献12及び13)、ドデシルマルトシド(DDM)中の暗状態のロドプシンのTmに非常に似ている(非特許文献12)。このことは、βAR−m23が結晶化について十分に安定であることを示唆する。
【0224】
βAR−m23の特性決定
6種の変異の効果を同定するためにβAR−m23及びβAR34−424について測定した3種の特徴的な活性は、アンタゴニスト結合の親和性、アゴニスト結合の相対的な効果、βAR−m23のGタンパク質への結合能であった。アンタゴニストである[H]−ジヒドロアルプレノロール(図8)を使用した膜への飽和結合実験は、βAR−m23に対する結合の親和性(K6.5±0.2nM,n=2)がβAR34−424(K2.8±0.1nM,n=2)よりも僅かに低いことを示し、アンタゴニスト結合立体構造ではβARm23の構造に大きなゆらぎが存在することを示唆している。このことは、βAR−m23における変異のいずれも、リガンド結合に関与すると解されているアミノ酸に相当するものではないことと一致する。アンタゴニスト結合と対照的に、βAR−m23によるアゴニスト結合の効果は、βAR34−424よりも3桁弱いものである(図5)。アゴニストであるイソプレナリンの有効性は、天然のアゴニストであるノルエピネフリンよりも、βAR−m23及びβAR34−424において一貫して低く、当該2つの受容体のアゴニスト結合立体構造は類似している可能性を示唆する。しかしながら、βAR34−424と比較した際のβAR−m23におけるアゴニストの効力における大きな低減は、βAR−m23における6種の変異が、アンタゴニストが結合した立体構造に選択的に固定化されていることを示唆する。立体構造の予測からすると、このことは、回折に使用し得る品質の結晶の生産のために立体構造が均一なタンパク質集団を有することが重要であるため、熱安定性に予期せぬ利点を加える。
【0225】
βAR−m23に用いた熱安定性アッセイの全ては、DDMに可溶化した受容体に対して実施した。熱安定化プロセスの目的は、DDMのみではなく各種の異なる界面活性剤中で安定である結晶学的に理想的な受容体を生産することであった。したがって、本発明者は、完全な膜タンパク質の結晶化において選択的に使用される小さな界面活性剤に集中して、各種の異なる界面活性剤中においてβAR−m23及びβARの安定性を試験した。βAR−m23又はβAR34−424を発現する大腸菌から調製した膜をDDM中で可溶化し、Ni−NTAアガロースに結合させ、次いで、DDM、デシルマルトシド(DM)、オクチルグルコシド(OG)、ラウリルジメチルアミンオキシド(LDAO)、又はノニルグルコシド(NG)のいずれかを用いて洗浄した。安定性アッセイを異なる界面活性剤の各々中の受容体に対して実施した(図6)。βAR34−424はDDM及びDMにおいてのみ安定であり、OG、NG、又はLDAOで洗浄した樹脂から溶出した活性受容体は存在しなかった。対照的に、機能的なβAR−m23は全ての界面活性剤中に依然として存在し、Tmを測定し得た。予測されるように、より小さな界面活性剤が、DDM(Tm52℃)又はDM(Tm48℃)のいずれかよりも顕著に変性させ、25℃(NG)、23℃(LDAO)、及び17℃(OG)のTmであった。受容体をDDM又はDMのいずれに可溶化したかにかかわらず、βAR−23及びβAR34−424の間のTmの差は約20℃である;したがって、予測されるTmは約5℃であり、かくして、精製に使用した条件下で受容体が迅速に不活性化したため、活性βAR34−424はNG中においてさえ認められないことは驚くべきことではない。厳しさを増している界面活性剤中における安定性に関して選択するよりも利用するのがかなり単純であるため、βAR−m23の生産に使用した所定の戦略は、熱安定性に基づいて意図的に選択した。しかしながら、βAR34−424の熱安定性の増大は、完全な膜タンパク質の結晶化に理想的な小さな界面活性剤に対する耐性の増大をもたらす。
【0226】
GPCR変異体の結晶化
シチメンチョウβ−アドレナリン受容体の幾つかの異なる構築物を結晶化する以前の試みは失敗した。各種の条件で実験したにもかかわらず、天然の配列並びに幾つかの切断型及びループ欠失構築物の双方の使用によっては、長年に亘って、結晶が得られなかった。
【0227】
しかしながら、βAR−m23に由来する安定化変異を前記構築物に転用すると、幾つかの異なる結晶が、異なる界面活性剤及び異なる条件において得られた。
【0228】
これまで最も研究された結晶は、バキュロウイルス発現系を用いて昆虫細胞において発現させた精製β−36構築物(以下の変化:点変異C116L及びC358Aを含有するシチメンチョウβ受容体のアミノ酸残基34−367;m23の6つの熱安定化点変異;配列ASKRKを用いたアミノ酸残基244−278の置換;C末端His6タグ)を使用して、当該受容体を界面活性剤であるオクチルチオグルコシドに移した後に得られた。使用した沈殿剤は、PEG600又はPEG1000であり、得られた結晶は細長いプレート状であった。
【0229】
実験を実施して、安定化受容体を使用した結晶化条件を規定して、本来の非安定化構築物を使用して結晶が得ることが可能であったか否かを確認した。同様に又はおそらく非常に小さな結晶を得ることが可能であるかもしれないが、実際には、「野生型」(すなわち、変異誘発させる出発構造)は結晶を生じなかった。
【0230】
前記結晶は、空間群C2及び良好に回折するプレート状であり、使用した凍結条件に依存してセル寸法が変化する。
【0231】
一般的には、GPCRが安定化されると、各種のよく知られた各種の構造決定技術に供してよい。最も一般的な膜タンパク質結晶化技術は、多くの場合には市販の機械装置を使用して設定した数千の結晶化条件をまず使用する(非特許文献22)、蒸気拡散(非特許文献20及び21)によるものである。しかしながら、蒸気拡散によって形成される結晶は小さく且つ不規則である場合があるため、次いで付加的な技術を使用してよい。1つの技術は、タンパク質表面の立体構造エピトープに特異的に結合する抗体と膜タンパク質との共結晶化(蒸気拡散による)を伴う(非特許文献23及び24);このことによって、タンパク質の親水性表面を増やし、且つ、強力な結晶接触を形成し得る。第二の代替的な方法は、脂質立方相又は脂質中間相のいずれかと一般的に称される結晶化マトリックスを使用することであり(非特許文献25及び26)、機械的なプラットホームにも開発されている(非特許文献27)。このことは、小さな親水性表面のみを有するタンパク質、例えば、細菌ロドプシンの高品質な結晶の生産に関して成功を確実なものとする(非特許文献28)。膜タンパク質構造は、電子線結晶学によって高分解能で測定されてもよい(非特許文献29)。
【0232】
アラニンスキャニング変異誘発及び熱安定変異体の選択の併用によるβAR34−424からβAR−m23への進化は、結晶学に理想的なGPCRをもたらした。βAR−m23のTmは、アンタゴニストの存在下においてβAR34−424よりも21℃高く、βAR−m23はロドプシンと同様の安定性を有している。βAR−m23のTmの増大は、βAR34−424を不活化する各種の小さな界面活性剤における安定性の増大をもたらす。加えて、使用した選択戦略は、受容体の立体構造の集団は野生型のβAR34−424よりも均一であるため、結晶を得る可能性を改善する選択的にアンタゴニストが結合した立体構造にある受容体をもたらした。かくして、本発明者は、単独の選択法において立体構造を安定化する方法を完成した。
【0233】
本発明者が導入した特定の変異が受容体の熱安定化をもたらす原因は全く明らかではない。ロドプシンにおける対応する位置は、変異したアミノ酸残基は脂質二重層を向いているか、受容体の中心を向いているか、又は2つの環境の間の界面に存在する。複雑な可溶性タンパク質の熱安定化を理解する試みにおける困難性を考慮すると(非特許文献15)、膜タンパク質はより容易に理解されるようではない;本発明者は、変異した際に熱安定性をもたらすβARにおけるアミノ酸残基に特定のパターンは存在しないことを確認した。しかしながら、生産した約5%の変異体は天然の受容体より安定であったため、アラニンスキャニング変異誘発は、迅速に熱安定性変異体を同定する効率的な戦略であることが示される。
【0234】
βAR−m23の生産に本発明者が使用した手法は、界面活性剤可溶化形態における活性を検出するための簡便なアッセイを有する任意の膜タンパク質に等しく適用可能である。本発明者は、最も簡便な主要なパラメータとして、温度の関数としての安定性を選択したが、該手法は、主に安定性、例えば、厳しい界面活性剤、極端なpH、又はカオトロピック塩の存在下における安定性についての試験に容易に拡張可能である。各種のヒト受容体、チャンネル、及びトランスポーターの立体構造安定化は、それらを結晶学により適したものとし、既に結晶化されている膜タンパク質についての分解能も改善するであろう。立体構造安定化が、膜タンパク質結晶化を、現在よりも迅速に成功する可能性が大きい、より扱いやすい問題とすることを可能にすることが望まれる。これによって、製薬業界におけるヒト膜タンパク質の日常的な結晶化を可能にし、薬剤開発への価値のある立体構造の洞察を可能にするはずである。
【0235】
方法
材料
シチメンチョウ由来の切断型のβ1アドレナリン受容体(βAR34−424)(非特許文献9)は、Dr Tony Warne(MRC Laboratory of Molecular Biology,Cambridge,UK)によって快く提供された。34−424残基をコードするβAR構築物は、C116L変異を含有して発現を改善し(非特許文献11)、精製のために10ヒスチジンのC末端タグを含有している。1−[4,6−プロピル−H]−ジヒドロアルプレノロール([H]−DHA)はAmersham Bioscienceによって提供され、(+)L−ノルエピネフリン酒石酸水素塩、(−)イソプレナリン塩酸、(−)アルプレノロール酒石酸塩、及びs−プロプラノロール塩酸はSigmaからのものである。
【0236】
βARの変異誘発
βAR cDNAは、pRGIIIにライゲートし、MalE融合タンパク質としての大腸菌におけるβARの機能的な発現を可能にした(非特許文献16)。変異体は、QuikChange II方法(Stratagene)を用いて、発現プラスミドを鋳型として使用してPCRによって産生した。PCR反応物は、XL10−Gold ultracompetent cell(Stratagene)に形質転換し、個々のクローンを完全に配列決定して、所望の変異のみが存在していることを調べた。異なる変異は、以下の変異:Mut4、G67A、G068A、V230A、D322A、及びF327A;Mut6、R068S、Y227A、A234L、A282L、及びA334L;Mut7、M90V、I129V、Y227A、A282L、及びF338M;Mut10、R68S、M90V、V230A、F327A、及びA334Lを導入する全てのペアのプライマーを含めることによって、PCRによって無作為に組み合わせた。PCR混合物を形質転換して、クローンは配列決定して変異が確かに導入されていることを測定した。
【0237】
タンパク質発現及び膜調製物
βAR及び変異体の発現は、XL10細胞(Stratagene)において実施した。50mlのアンピシリン含有(100μg/ml)2×TY培地の培養物を、OD600=3まで浸透しながら37℃で増殖させ、次いで、0.4mM IPTGを用いて誘導した。誘導した培養物は、4時間に亘って25℃でインキュベートし、次いで、細胞を13,000×gで1分に亘って遠心分離することによって回収し(2mlの一定分量)、−20℃で保存した。アッセイに関しては、細胞を凍結融解(5サイクル)によって破砕し、500μlの緩衝液[20mM Tris pH8、0.4M NaCl、1mM EDTA、及びプロテアーゼインヒビター(Complete(商標)、Roche)]に再懸濁した。100μg/mlリソザイム及びDNアーゼ I(Sigma)を用いて4℃で1時間に亘ってインキュベートした後に、氷上で30分に亘ってサンプルを2%DDMに可溶化した。不溶性物質を遠心分離(15,000×g、2分、4℃)によって除去し、上清を放射リガンド結合アッセイに直接使用した。
【0238】
大規模膜調製のために、βAR及びMut23各々の2L及び6Lの大腸菌培養物を上述のように増殖させた。20分間に亘る5,000×gの遠心分離によって細胞を回収し、液体窒素で凍結させ、−80℃で保存した。1×プロテアーゼインヒビターカクテル(Complete(商標)EDTA−free、Roche)を含有する10mlの20mM Tris pH7.5にペレットを再懸濁した。1mgのDNアーゼI(Sigma)を添加して、終容量を100mlとした。細胞をFrench press(2passages、20,000psi)によって破砕し、12,000×gで45分間に亘って4℃で遠心分離して細胞残屑を除去した。上清(膜)を200,000×gで30分間に亘って4℃で遠心分離した;膜ペレットは15mlの20mM Tris pH7.5に再懸濁して、液体窒素で迅速に凍結した後に1mlの一定分量で−80℃において保存した。タンパク質濃度はアミノブラック法によって測定した(非特許文献17)。これらのサンプルは、融解後に放射リガンド結合アッセイにおいて使用し、上述の2% DDMに可溶化した。
【0239】
競争アッセイに関しては、異なる界面活性剤を試験することと共に、DDM可溶化βARをNi−NTAアガロース(Qiagen)で部分的に精製した。200μlのNi−NTAアガロースを、20mM Tris pH8、0.4M NaCl、20mMイミダゾールpH 8中の2mlの可溶化サンプル(10mg/mlの膜タンパク質)に添加し、1時間に亘って4℃でインキュベートした。インキュベート後に、サンプルを13,000×gで30秒間に亘って遠心分離し、界面活性剤(0.1%DDM、0.1%DM、0.1%LDAO、0.3%NG、又は0.7%OGのいずれか)を含有する250μlの緩衝液(20mM Tris pH8、0.4M NaCl、20mMイミダゾール)で二回洗浄した。
【0240】
受容体は、2×100μlの緩衝液(0.4M NaCl、1mM EDTA、250mMイミダゾールpH8、及び関連の界面活性剤)に溶出した。半精製したβAR34−424及びβAR−m23に対する[H]−DHA結合についてのKは、各々3.7nM及び12.5nMであり、競争アッセイにおいて使用した[H]の終濃度は3倍のKでありβAR34−424については12nMでありβAR−m23については40nMであった。
【0241】
放射リガンド結合及び熱安定性アッセイ
単独の点の結合アッセイは、120μlの終濃度において、20mM Tris pH8、0.4M NaCl、1mM EDTA、0.1%DDM(又は対応する界面活性剤)を50nM[H]−DHA及び20から100μgの膜タンパク質と共に含有した;平衡化は1時間、4℃であった。30分間に亘って特定の温度で[H]−DHAを使用して又は使用せずに、結合アッセイ混合物をインキュベートすることによって、熱安定性を評価した;反応は氷上で実施し、必要であれば[H]−DHAを添加して、さらに1時間平衡化した。受容体結合放射リガンド及び遊離の放射リガンドは、以前に開示されているようにゲル濾過によって分離した(非特許文献18)。非特異的結合は、1μMのs−プロプラノロールの存在下で測定した。飽和曲線は、0.4nMから100nMの広範な[H]−DHA濃度を使用して得られた。競争アッセイは、βAR34−424については12nMの濃度の[H]−DHAを使用して実施し、βAR−m23については40nMの濃度の[H]−DHAを使用して実施し(すなわち、3倍のK)、各種の濃度の未標識のリガンド(0から100mM)を用いて実施した。放射活性はBeckman LS6000液体シンチレーションカウンターで計測し、Prismソフトウェア(GraphPad)を使用して非線形回帰によってデータを分析した。
【0242】
ロドプシン構造におけるβAR−m23熱安定変異の位置
登録コードが1GZM[14]であるロドプシン構造のpdbファイルは、Protein Date Bankウェブサイト(www.pdb.org)からダウンロードし、PyMOLX11Hybrid(DeLano Scientific)プログラムに表示した。βARにおける熱安定変異についての、ロドプシンの対応するアミノ酸残基は、本発明者のよく知っている4つのGPCR、すなわち、ロドプシン、β1アドレナリン受容体、ニューロテンシン受容体、及びアデノシンA2a受容体の間のアラインメントに基づいてロドプシン構造に配置した(非特許文献19)。
【0243】
(実施例2)
増大した熱安定性を有するアデノシンA2a受容体(A2aR)の変異体
1.315の部位特異的変異体を、A2aRの2から316残基の間に作製した。
2.これらの変異体の全てを、加熱工程後のアゴニスト及びアンタゴニスト結合測定アッセイを使用して熱安定性についてアッセイした(図12に記載のリガンド(−)フォーマット)。
a.H−NECA(アゴニスト)と共に測定した際に、26の変異体が改善された熱安定性を示した:G114 A, G118A, L167A, A184L, R199A, A203L, L208A, Q210A, S213A, E219A, R220A, S223A, T224A, Q226A, K227A, H230A, L241A, P260A, S263A, L267A, L272A, T279A, N284A, Q311A, P313A, K315A。
b.H−ZM241385(アンタゴニスト)と共にアッセイした際に、18の変異体が改善された熱安定性を示した:A54L, V57A, H75A, T88A, G114A, G118A, T119A, K122A, G123A, P149A, E151A, G152A, A203L, A204L, A231L, L235A, V239A。
3.変異を組み合わせて、推定上のアンタゴニストの立体構造において変異体を産生した。野生型A2aRはZM241385が結合した状態で31℃のTmを有する。
a.Rant17 A54L+K122A+L235A Tm 48°C (ZM241385 bound)
b.Rant19 A54L,T88A,V239A+A204L Tm 47°C (ZM241385 bound)
c.Rant21 A54L,T88A,V239A+K122A Tm 49°C (ZM241385 bound)
4.アゴニストスクリーニングよる変異を組み合わせたが、+2℃のTmという非常に低レベルの改善のみをもたらした。
【0244】
【表3】

【0245】
【表4】

【0246】
【表5】

【0247】
【表6】

【0248】
【表7】

【0249】
(実施例3)
増大した熱安定性を有するニューロテンシン受容体(NTR)の変異体
1.340部位特異的変異体を、NTRの61から400残基の間に作製した。
2.まず、これらの変異体の全てを、加熱工程後にH−ニューロテンシン(アゴニスト)結合を測定するアッセイを使用して熱安定性についてアッセイした。24の変異体は、熱安定性おける小さいが顕著な増大をもたらした:A356L, H103A, D345A, A86L, A385L, Y349A, C386A, K397A, H393A, I116A, F358A, S108A, M181A, R392A, D113A, G209A, L205A, L72A, A120L, P399A, Y351A, V268A, T207A, A155L, S362A, F189A, N262A, L109A, W391A, T179A, S182A, M293A, L256A, F147A, D139A, S100A, K176A, L111A, A90L, N270A。
3.アゴニストの非存在下における加熱によって熱安定性について試験した変異体を、変異体をH−ニューロテンシンの存在下で加熱する僅かに異なるアッセイを使用して再試験した(図12におけるリガンド(+)フォーマット)。改善された熱安定性を有する変異体は:A69L, A73L, A86L, A90L, H103A, V165A, E166A, G215A, V229A, M250A, I253A, A177L, R183A, I260A, T279A, T294A, G306A, L308A, V309A, L310A, V313A, F342A, F358A, V360A, S362A, N370A, S373A, F380A, A385L, P389A, G390A, R395A。
4.野生型の受容体と比較して顕著に向上した発現レベルを有する変異体も存在し、結晶化のための受容体生産レベルを促進するために使用し得る:A86L, H103A, F358A, S362A, N370A, A385L, G390A。これら全てが熱安定性を増大させた。
5.好ましい組み合わせは、
a. Nag7m F358A+A86L+I260A+F342A Tm 51°C (ニューロテンシン結合)
b. Nag7n F358A+H103A+I260A+F342A Tm 51°C (ニューロテンシン結合)
野生型のNTRは、ニューロテンシンが結合した状態で35℃のTmを有する。
【0250】
(実施例4)
安定化GPCR変異が存在する構造モチーフの同定
β2アドレナリン受容体の構造を決定した(非特許文献20及び21)。それはシチメンチョウβ1受容体と59%同一であったが、はっきりと異なる薬理学的プロフィールを有していた(非特許文献22及び23)。シチメンチョウβ1受容体の安定化変異が存在する構造モチーフを決定するために、本発明者は、ヒトβ2構造に変異をマッピングした(非特許文献21)。
【0251】
MacVectorパッケージにおいてClustalWを使用して、βアドレナリン受容体を最初に整列(アライン)した;シチメンチョウβ1における熱安定化変異を、ヒトβ2配列における対応する残基と同様にハイライトした。ヒトβ2モデル(pdb登録コード2RH1)はPymolで可視化し、所望のアミノ酸を、当該技術分野において既知の標準的な手法によって空間充填モデルとして示した。安定化変異が存在する構造モチーフは、目視検査によって決定した。
【0252】
表(vi)は、βAR−m23の熱安定化変異に対応するβ2受容体における対応する位置及びそれらが存在する構造モチーフの一覧である。
【0253】
表(vi)から認められるように、変異体は、多数の異なる位置に存在している。3つの変異は、水性溶媒に接近可能であることが予測されるループ領域に存在する(ループ)。8の変異は、膜貫通α−ヘリックスに存在し、脂質二重層を示す(脂質);これらの変異の3つはヘリックスの末端付近に存在し、親水性境界層に存在していると解されてよい(脂質境界)。8の変異は膜貫通α−ヘリックスの間の界面に存在することが認められ(ヘリックス−ヘリックス界面)、そのうち3つはヘリックスのねじれた又は曲がった領域内のいずれかに存在し(ねじれ)、他の2つの変異は一つのヘリックスで生じているが、変異した残基に対して空間をあけて近接するねじれを含有する1つ又は複数の他のヘリックスと近接している(反対側のねじれ)。これらの後者の変異は、ねじれた領域内のアミノ酸のパッケージングに影響を与え、熱安定化をもたらし得る。他の変異は、基質結合ポケットに存在する(ポケット)。
【0254】
【表8】

【0255】
その様な構造モチーフは、それらが安定化変異を含有するために、タンパク質安定性の測定において重要である。したがって、これらのモチーフを変異の標的とすることは、安定化したGPCR変異体の産生を容易にする。事実、2以上の変異を同一の構造モチーフにマッピングした幾つかの例が存在する。例えば、Y227A、V230A、及びA234Lといったシチメンチョウβ1アドレナリン受容体における変異は全て、同一のヘリックス界面にマッピングされ、V89L及びM90Vといった変異は同一のヘリックスのねじれにマッピングされ、F327A及びA334Lといった変異は脂質二重層を示す同一のヘリックス表面にマッピングされた(表(vi))。かくして、1つの安定化変異が同定された際における、変異が存在する構造モチーフの決定は、更なる安定化変異の同定を可能にするであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増大した安定性を有するGタンパク質共役型受容体(GPCR)を選択するための方法であって、
(a)親GPCRの1つ又は複数の変異体を提供する工程、
(b)親GPCRが特定の立体構造にある際に前記GPCRに結合するリガンドを選択する工程、
(c)選択したリガンドの結合について親GPCRの安定性と比較して、各GPCR変異体が、前記リガンドの結合について増大した安定性を有するか否かを測定する工程、及び
(d)選択したリガンドの結合について親GPCRと比較して増大した安定性を有する変異体を選択する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つ又は複数の変異体が、工程(c)の前に前記選択したリガンドに接触させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ又は複数の変異体が可溶化された形態で提供される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(c)においてGPCRが備える前記特定の立体構造が、工程(b)において選択されるリガンドの分類に対応する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記選択したリガンドがアゴニストに分類されるリガンドに由来するものであり、且つ、前記特定の立体構造がアゴニスト立体構造であるか、又は前記選択したリガンドがアンタゴニストに分類されるリガンドに由来するものであり、且つ、前記特定の立体構造がアンタゴニスト立体構造である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記選択したリガンドがアゴニストに分類されるリガンドに由来するものであり、且つ、工程(c)でGPCRが備える特定の立体構造がアゴニスト立体構造である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記選択したリガンドについての前記変異体の結合親和性が、実質的に、前記選択したリガンドについての前記親の結合親和性以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が一回又は複数回繰り返され、前記方法の後の回では、工程(a)において、前記増大した安定性を有する選択された変異体が親GPCRである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
熱、界面活性剤、カオトロピック剤、及び極端なpHのいずれか1つ又は複数に対する安定性を増大したGPCR変異体が選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
増大した熱安定性を有するGPCR変異体が選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記リガンドが、完全なアゴニスト、部分的なアゴニスト、逆アゴニスト、及びアンタゴニストのいずれか1つである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記リガンドがGPCRに結合するポリペプチドである、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリペプチドが、抗体、アンキリン、Gタンパク質、RGSタンパク質、アレスチン、GPCRキナーゼ、受容体チロシンキナーゼ、RAMP、NSF、GPCR、NMDA受容体サブユニットNR1若しくはNR2a、又はカルシオン、フィブロネクチンドメインフレームワーク、或いはGPCRに結合するそれらの断片若しくは誘導体のいずれかである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程(b)において、2以上のリガンドを選択し、各々の存在がGPCRに同一の特定の立体構造を備えさせる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
親と比較して、工程(b)で選択したリガンドと異なる分類のリガンドに結合する能力が低減したGPCR変異体を選択する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
GPCRが、β−アドレナリン受容体、アデノシン受容体、及びニューロテンシン受容体のいずれか1つである、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
選択される条件がGPCRのアンタゴニストの存在である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
選択される条件がGPCRのアゴニストの存在である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
GPCR変異体を調製するための方法であって、
(a)請求項1から18のいずれか一項に記載の方法を実施する工程、
(b)増大した安定性に関して選択した1つ又は複数のGPCR変異体における変異した1つ又は複数のアミノ酸残基の位置を同定する工程、及び
(c)同定した1つ又は複数の位置におけるアミノ酸の置き換えを含むGPCR変異体を合成する工程
を含む、方法。
【請求項20】
前記GPCR変異体が、親GPCRと比較して複数の変異を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法によって調製されるGPCR変異体。
【請求項22】
前記選択又は調製されたGPCR変異体がGタンパク質に結合することが可能であるか否かを測定する、請求項1又は19に記載の方法。
【請求項23】
前記選択又は調製されたGPCR変異体が、親GPCRと同程度の広がり及び/又は親和性の順位で、前記選択したリガンドと同じ分類の複数のリガンドに結合することが可能であるか否かを測定する、請求項1又は19に記載の方法。
【請求項24】
対応する野生型のアドレナリン受容体と比較した際に、図9に記載のシチメンチョウβ−アドレナリン受容体の番号付けした以下の位置:Ile 55, Gly 67, Arg 68, Val 89, Met 90, Gly 98, Ile 129, Ser 151, Val 160, Gln 194, Gly 197, Leu 221, Tyr 227, Arg 229, Val 230, Ala 234, Ala 282, Asp 322, Phe 327, Ala 334, 及びPhe 338のいずれか1つ又は複数に対応する位置に異なるアミノ酸を有する、β−アドレナリン受容体変異体。
【請求項25】
図9に記載した配列のシチメンチョウβ−アドレナリン受容体と少なくとも20%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項24に記載のβ−アドレナリン受容体変異体。
【請求項26】
対応する野生型アデノシン受容体と比較した際に、図10に記載のヒトアデノシンA2a受容体の番号付けした以下の位置:Gly 114, Gly 118, Leu 167, Ala 184, Arg 199, Ala 203, Leu 208, Gln 210, Ser 213, Glu 219, Arg 220, Ser 223, Thr 224, Gln 226, Lys 227, His 230, Leu 241, Pro 260, Ser 263, Leu 267, Leu 272, Thr 279, Asn 284, Gln 311, Pro 313, 及びLys 315のいずれか1つ又は複数に対応する位置に異なるアミノ酸を有する、アデノシン受容体変異体。
【請求項27】
図10に記載の配列のヒトアデノシンA2a受容体と少なくとも20%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項26に記載のアデノシン受容体変異体。
【請求項28】
対応する野生型ニューロテンシン受容体と比較した際に、図11に記載のラットニューロテンシン受容体の番号付けした以下の位置:Ala 69, Leu 72, Ala 73, Ala 86, Ala 90, Ser 100, His 103, Ser 108, Leu 109, Leu 111, Asp 113, Ile 116, Ala 120, Asp 139, Phe 147, Ala 155, Val 165, Glu 166, Lys 176, Ala 177, Thr 179, Met 181, Ser 182, Arg 183, Phe 189, Leu 205, Thr 207, Gly 209, Gly 215, Val 229, Met 250, Ile 253, Leu 256, Ile 260, Asn 262, Val 268, Asn 270, Thr 279, Met 293, Thr 294, Gly 306, Leu 308, Val 309, Leu 310, Val 313, Phe 342, Asp 345, Tyr 349, Tyr 351, Ala 356, Phe 358, Val 360, Ser 362, Asn 370, Ser 373, Phe 380, Ala 385, Cys 386, Pro 389, Gly 390, Trp 391, Arg 392, His 393, Arg 395, Lys 397, 及びPro 399のいずれか1つ又は複数に対応する位置に異なるアミノ酸を有する、ニューロテンシン受容体変異体。
【請求項29】
図11に記載の配列のラットニューロテンシン受容体と少なくとも20%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項28に記載のニューロテンシン受容体変異体。
【請求項30】
対応する野生型ムスカリン受容体と比較した際に、図17に記載のヒトムスカリン受容体の番号付けした以下の位置:Leu 65, Met 145, Leu 399, Ile 383、及びMet 384のいずれか1つ又は複数に対応する位置に異なるアミノ酸を有する、ムスカリン受容体変異体。
【請求項31】
図17に記載の配列のヒトムスカリン受容体と少なくとも20%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項30に記載のムスカリン受容体変異体。
【請求項32】
その親GPCRと比較して増大した安定性を有するGPCR変異体を生産するための方法であって、
(i)第一の親GPCRと比較して増大した安定性を有する第一の親GPCRの1つ又は複数の変異体のアミノ酸配列において、1つ又は複数の変異体が前記第一の親GPCRと比較して少なくとも1つの異なるアミノ酸残基を有する1つ又は複数の位置を同定する工程、及び
(ii)対応する1つ又は複数の位置で、第二のGPCRを規定するアミノ酸配列において1つ又は複数の変異を作製して、第二の親GPCRと比較して増大した安定性を有する第二の親GPCRの1つ又は複数の変異体を提供する工程
を含む、方法。
【請求項33】
第一のGPCRの1つ又は複数の変異体が、請求項1から18、22、及び23のいずれか一項に記載の方法にしたがって選択されるか、又は請求項19、20、22、及び23のいずれか一項に記載の方法にしたがって調製される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
第一の親GPCRの1つ又は複数の変異体が、請求項21及び24から31のいずれか一項に記載のものである、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記第二のGPCRが、第一のGPCRと同じGPCRの分類又はファミリーである、請求項32から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記第二のGPCRが、前記第一のGPCRと少なくとも20%の配列同一性を有するGPCRである、請求項32から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
その親GPCRと比較して増大した安定性を有するGPCR変異体を生産するための方法であって、
(i)第一の親GPCRと比較して増大した安定性を有する第一の親GPCRの1つ又は複数の変異体を提供する工程、
(ii)膜タンパク質構造モデルにおいて、1つ又は複数の変異体が第一の親GPCRと比較して少なくとも1つの異なるアミノ酸残基を有する1つ又は複数の構造モチーフを同定する工程、及び
(iii)第二の親GPCRにおいて対応する1つ又は複数の構造モチーフを規定するアミノ酸配列において、1つ又は複数の変異体を作製して、第二の親GPCRと比較して増大した安定性を有する第二の親GPCRの1つ又は複数の変異体を提供する工程
を含む、方法。
【請求項38】
第一の親GPCRの1つ又は複数の変異体が、請求項1から18、22、及び23のいずれか一項に記載の方法にしたがって選択され、請求項19、20、22、及び23のいずれか一項に記載の方法にしたがって調製され、又は請求項32から36のいずれか一項に記載の方法にしたがって生産される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記第一の親GPCRの1つ又は複数の変異体が、請求項21及び24から31のいずれか一項に規定のものである、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
前記膜タンパク質構造モデルが完全な膜タンパク質のモデルである、請求項37から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記完全な膜タンパク質が、変異体が第一の親GPCRと比較して少なくとも一つの異なるアミノ酸を有するタンパク質ドメインにわたって、工程(i)の第一の親GPCRの変異体と少なくとも20%の配列同一性を有する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記完全な膜タンパク質がGPCRである、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
前記GPCRが、第一の親GPCRと同じGPCRの分類又はファミリーのものである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記膜タンパク質構造モデルが、ヒトβアドレナリン受容体又はウシロドプシンのモデルである、請求項37から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記構造モチーフが、ヘリックス界面、ヘリックスのねじれ、ヘリックスのねじれの反対側のヘリックス、脂質二重層に向いたヘリックス表面、疎水性−親水性境界層の脂質二重層を向いたヘリックス表面、ループ領域、又はタンパク質結合ポケットのいずれかである、請求項37から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記第二の親GPCRが前記第一の親GPCRである、請求項37から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記第二の親GPCRが前記第一のGPCRではない、請求項37から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記第二の親GPCRが、前記第一の親GPCRと少なくとも20%の配列同一性を有するGPCRである、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項49】
前記第二のGPCRが、前記第一の親GPCRと同じGPCRの分類又はファミリーのものである、請求項46から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
請求項32から49のいずれか一項に記載の方法であって、
(I)前記第二の親GPCRが特定の立体構造を備える際に、前記GPCRに結合するリガンドを選択する工程、
(II)リガンドの結合について特定の立体構造を備えている際の第二の親GPCRの安定性と比較して、前記第二の親GPCRの変異体が、特定の立体構造を備える際に選択したリガンドの結合について増大した安定性を有するか否かを測定する工程、及び
(III)選択したリガンドの結合に関して、第二の親GPCRと比較して増大した安定性を有する変異体を選択する工程
をさらに含む、方法。
【請求項51】
工程(II)においてGPCRが備える特定の立体構造が、工程(I)で選択したリガンドの分類に対応する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記選択したリガンドがアゴニストに分類されるリガンドに由来するものであり、且つ、前記特定の立体構造がアゴニスト立体構造であるか、又は前記選択したリガンドがアンタゴニストに分類されるリガンドに由来するものであり、且つ、前記特定の立体構造がアンタゴニスト立体構造である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記リガンドが請求項11から13のいずれか一項に規定のものである、請求項50から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記第二のGPCRの1つ又は複数の変異体の結合親和性が、選択したリガンドについての前記第二の親GPCRの結合親和性と実質的に同一であるか又はそれ以上である、請求項50から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
請求項37から54のいずれか一項に記載の方法によって生産される親GPCRと比較して増大した安定性を有する、GPCR変異体。
【請求項56】
前記GPCR変異体が、その親受容体と比較して、以下の(i)図9に記載のシチメンチョウβ−アドレナリン受容体の番号付けした位置:Ile 55, Gly 67, Arg 68, Val 89, Met 90, Gly 98, Ile 129, Ser 151, Val 160, Gln 194, Gly 197, Leu 221, Tyr 227, Arg 229, Val 230, Ala 234, Ala 282, Asp 322, Phe 327, Ala 334, 及びPhe 338、(ii)図10に記載のヒトアデノシンA2a受容体の番号付けした位置:Gly 114, Gly 118, Leu 167, Ala 184, Arg 199, Ala 203, Leu 208, Gln 210, Ser 213, Glu 219, Arg 220, Ser 223, Thr 224, Gln 226, Lys 227, His 230, Leu 241, Pro 260, Ser 263, Leu 267, Leu 272, Thr 279, Asn 284, Gln 311, Pro 313, 及びLys 315、(iii)図11に記載のラットニューロテンシンの番号付けした位置:Ala 69, Leu 72, Ala 73, Ala 86, Ala 90, Ser 100, His 103, Ser 108, Leu 109, Leu 111, Asp 113, Ile 116, Ala 120, Asp 139, Phe 147, Ala 155, Val 165, Glu 166, Lys 176, Ala 177, Thr 179, Met 181, Ser 182, Arg 183, Phe 189, Leu 205, Thr 207, Gly 209, Gly 215, Val 229, Met 250, Ile 253, Leu 256, Ile 260, Asn 262, Val 268, Asn 270, Thr 279, Met 293, Thr 294, Gly 306, Leu 308, Val 309, Leu 310, Val 313, Phe 342, Asp 345, Tyr 349, Tyr 351, Ala 356, Phe 3
58, Val 360, Ser 362, Asn 370, Ser 373, Phe 380, Ala 385, Cys 386, Pro 389, Gly 390, Trp 391, Arg 392, His 393, Arg 395, Lys 397, 及びPro 399、並びに(iv)図17に記載のムスカリン受容体の番号付けした位置:Leu 65, Met 145, Leu 399, Ile 383, 及びMet 384のいずれか1つ又は複数と対応する位置に少なくとも1つの異なるアミノ酸を有する、請求項55に記載のGPCR変異体。
【請求項57】
前記GPCR変異体がβ−アドレナリン受容体変異体である、請求項55に記載のGPCR変異体。
【請求項58】
前記β−アドレナリン受容体変異体が、図9に記載のシチメンチョウβ−アドレナリン受容体の番号付けした以下の位置:Ile 55, Gly 67, Arg 68, Val 89, Met 90, Gly 98, Ile 129, Ser 151, Val 160, Gln 194, Gly 197, Leu 221, Tyr 227, Arg 229, Val 230, Ala 234, Ala 282, Asp 322, Phe 327, Ala 334, 及びPhe 338のいずれかに対応する位置で、前記受容体変異体がその親受容体と比較して異なるアミノ酸を有する構造モチーフに少なくとも1つの異なるアミノ酸残基を有する、請求項57に記載のGPCR変異体。
【請求項59】
前記GPCR変異体がアデノシン受容体変異体である、請求項55に記載のGPCR変異体。
【請求項60】
前記アデノシン受容体変異体が、図10に記載のヒトアデノシンA2a受容体の番号付けした以下の位置:Gly 114, Gly 118, Leu 167, Ala 184, Arg 199, Ala 203, Leu 208, Gln 210, Ser 213, Glu 219, Arg 220, Ser 223, Thr 224, Gln 226, Lys 227, His 230, Leu 241, Pro 260, Ser 263, Leu 267, Leu 272, Thr 279, Asn 284, Gln 311, Pro 313, 及びLys 315のいずれかに対応する位置で、前記受容体変異体がその親受容体と比較して異なるアミノ酸を有する構造モチーフに少なくとも1つの異なるアミノ酸残基を有する、請求項59に記載のGPCR変異体。
【請求項61】
前記GPCR変異体がニューロテンシン受容体変異体である、請求項55に記載のGPCR変異体。
【請求項62】
前記ニューロテンシン受容体変異体が、図11に記載のラットニューロテンシン受容体の番号付けした以下の位置:Ala 69, Leu 72, Ala 73, Ala 86, Ala 90, Ser 100, His 103, Ser 108, Leu 109, Leu 111, Asp 113, Ile 116, Ala 120, Asp 139, Phe 147, Ala 155, Val 165, Glu 166, Lys 176, Ala 177, Thr 179, Met 181, Ser 182, Arg 183, Phe 189, Leu 205, Thr 207, Gly 209, Gly 215, Val 229, Met 250, Ile 253, Leu 256, Ile 260, Asn 262, Val 268, Asn 270, Thr 279, Met 293, Thr 294, Gly 306, Leu 308, Val 309, Leu 310, Val 313, Phe 342, Asp 345, Tyr 349, Tyr 351, Ala 356, Phe 358, Val 360, Ser 362, Asn 370, Ser 373, Phe 380, Ala 385, Cys 386, Pro 389, Gly 390, Trp 391, Arg 392, His 393, Arg 395, Lys 397, 及びPro 399のいずれかに対応する位置で、前記受容体変異体がその親受容体と比較して異なるアミノ酸を有する構造モチーフに少なくとも1つの異なるアミノ酸残基を有する、請求項61に記載のGPCR変異体。
【請求項63】
前記GPCR変異体がムスカリン受容体変異体である、請求項55に記載のGPCR変異体。
【請求項64】
前記ムスカリン受容体変異体が、図17に記載のヒトムスカリン受容体の番号付けした以下の位置:Leu 65, Met 145, Leu 399, Ile 383, 及びMet 384のいずれかに対応する位置で、前記受容体変異体がその親受容体と比較して異なるアミノ酸を有する構造モチーフに少なくとも1つの異なるアミノ酸残基を有する、請求項63に記載のGPCR変異体。
【請求項65】
前記変異体が、熱、界面活性剤、カオトロピック剤、及び極端なpHのいずれか1つに対して増大した安定性を有する、請求項21、24から31、及び55から64のいずれか一項に記載のGPCR変異体。
【請求項66】
親受容体の変異体であって、前記変異体がその親と比較して増大した安定性を有する、請求項21、24から31、及び55から65のいずれか一項に記載のGPCR変異体。
【請求項67】
リガンドが存在する際に、その親と比較して増大した熱安定性を有する、請求項66に記載のGPCR変異体。
【請求項68】
前記GPCR変異体がその親よりも少なくとも1℃安定である、請求項66又は67に記載のGPCR変異体。
【請求項69】
請求項21、24から31、及び55から68のいずれか一項に記載の、受容体変異体などのGPCR変異体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項70】
請求項69に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項71】
可溶化形態にある、請求項21、24から31、及び55から68のいずれか一項に記載の、受容体変異体などのGPCR変異体。
【請求項72】
他のタンパク質を実質的に含まない、請求項21、24から31、及び55から68のいずれか一項に記載の、受容体変異体などのGPCR変異体。
【請求項73】
固体担体に固定化された、請求項21、24から31、55から68、71、及び72のいずれか一項に記載のGPCR変異体。
【請求項74】
請求項21,24から31、55から68、71、及び72のいずれか一項に記載の1つ又は複数のGPCR変異体を固定化した、固体支持体。
【請求項75】
請求項21、24から31、55から68,71、及び72のいずれか一項に記載の受容体変異体などのGPCR変異体の、結晶化のための使用。
【請求項76】
請求項21、24から31、55から68、71、及び72のいずれか一項に記載の受容体変異体などのGPCR変異体の、創薬における使用。
【請求項77】
前記GPCR変異体がリガンド結合スクリーニング又はアッセイ開発に使用される、請求項76に記載の使用。
【請求項78】
請求項21、24から31、55から68、71、及び72のいずれか一項に記載の受容体変異体などのGPCR変異体の、バイオセンサーとしての使用。
【請求項79】
本願の明細書に開示した、増大した安定性を有するGPCR変異体を選択するための任意の新規な方法。
【請求項80】
本願の明細書に開示した、その親と比較して増大した熱安定性を有する、任意の新規暗GPCR変異体。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14】
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【図26】
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【図27】
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【図2】
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【図15】
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【図16】
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【図17−1】
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【図17−2】
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【図17−3】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図28A】
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【図28B】
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【公開番号】特開2011−224018(P2011−224018A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−171887(P2011−171887)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【分割の表示】特願2010−500347(P2010−500347)の分割
【原出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(509264947)ヘプテアズ・セラピューティクス・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】