説明

GTPシクロヒドロラーゼ1遺伝子(GCH1)中の疼痛保護的ハプロタイプの診断のためのSNPの使用

本発明は、遺伝子座GCH1のゲノム遺伝子座由来の核酸又はその断片中に、哺乳動物から得られた試料中の少なくとも1つの特定の一塩基多型(SNP)を検出することを含む、哺乳動物中の疼痛に対する遺伝的素因又は感受性を診断するためのインビトロ法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子座GCH1のゲノム遺伝子座由来の核酸又はその断片中に、哺乳動物から得られた試料中の少なくとも1つの特定の一塩基多型(SNP)を検出することを含む、哺乳動物中の疼痛に対する遺伝的素因又は感受性を診断するためのインビトロ法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝的要因が、疼痛の発症と治療における個体間の変異を説明する割合は益々増加している。多型遺伝子は、病的症状において疼痛を発症する個体の感受性、実験的な疼痛刺激に対する個体の応答及び鎮痛性の薬理学的治療に対する個体の応答を媒介する。
【0003】
Kealey C他(Kealey C,Roche S,Claffey E,McKeon P.Linkage and candidate gene analysis of 14q22−24 in bipolar disorder:support for GCHI as a novel susceptibility gene.Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet.2005 Jul5;136(1):75−80)は、14q22−24を双極性障害(BPD)に関連付ける連鎖について記載している。ウェブに基づく14q22−24の候補遺伝子探索によって、BPDに関与している可能性が最も高い候補遺伝子として、D14S281から3’方向に200kbの場所に位置しているGTPシクロヒドロラーゼI(GCHI)が選択された。BPDとGCH1中の新規一塩基多型(SNP)(ATGコドンの上流−959塩基対においてG→A)との間の関連研究も発表されている。
【0004】
IchinoseH他(Ichinose H,Ohye T,Matsuda Y,Hori T,Blau N,Burlina A,Rouse B,Matalon R,Fujita K,Nagatsu T.Characterization of mouse and human GTP cyclohydrolase I genes.Mutations in patients with GTP cyclohydrolase I deficiency.J Biol Chem.1995 Apr 28;270(17):10062−71)は、GTPシクロヒドロラーゼI遺伝子及びmRNAの複数種の性質決定並びに構造解析について記載している。
【0005】
WO2005−048926は、BH4の発現又は活性を低下させる化合物を、外傷性、代謝性又は毒性の末梢神経病変又は疼痛を予防し、抑制し又は治療することを必要としている哺乳動物に投与することによって、例えば、神経因性疼痛、炎症性及び侵害受容性疼痛などの外傷性、代謝性又は毒性の末梢神経病変又は疼痛を予防し、抑制し又は治療するための方法及び組成物を記載している。この抑制は、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、セピアプテリン還元酵素(SPR)若しくはジヒドロプテリジン還元酵素(DHPR)などのBH4合成酵素の何れかの酵素活性を低下させることによって、BH4依存性酵素に対するBH4の補因子機能を拮抗することによって、又は膜結合型受容体へのBH4結合を遮断することによって達成され得る。この出願は、生物学的試料中のBH4又はその代謝物のレベルを測定することによって、哺乳動物中の疼痛又は末梢神経病変を診断するための方法も提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際特許公開2005/048926号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kealey C,Roche S,Claffey E,McKeon P.、Linkage and candidate gene analysis of 14q22−24 in bipolar disorder:support for GCHI as a novel susceptibility gene、Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet.、Jul5;136(1)、2005年、p.75−80
【非特許文献2】Ichinose H,Ohye T,Matsuda Y,Hori T,Blau N,Burlina A,Rouse B,Matalon R,Fujita K,Nagatsu T.、Characterization of mouse and human GTP cyclohydrolase I genes.Mutations in patients with GTP cyclohydrolase I deficiency、J Biol Chem.、270(17)、1995年4月28日、p.10062−71)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
最近、GTPシクロヒドロラーゼ1遺伝子([1];GCH1;図1)中のハプロタイプが、ボランティアにおいて、外科的椎間板切除術後における減少した持続的神経根痛及び低減された実験的疼痛と関連付けられた(2)。この酵素は、カテコールアミン、セロトニン及び一酸化窒素合成に関与する酵素に対する不可欠な補因子であるテトラヒドロバイオプテリンの合成に関して律速である。GTPシクロヒドロラーゼ1は、末梢神経障害後に、一次感覚神経中で上方制御される。その阻害は、神経因性及び炎症性疼痛の様々なモデルにおいて、侵害受容性応答を低減し、テトラヒドロバイオプテリンは無処置動物に疼痛を引き起こし、持続性疼痛をさらに増加させる(2)。テトラヒドロバイオプテリンは、ともに疼痛経路への関与が既に推定されている一酸化窒素及びセロトニン合成のための不可欠な補因子であるので、これらの媒介物質の調節はテトラヒドロバイオプテリンの疼痛発生効果に寄与し得る。理論に拘泥することを望むものではないが、疼痛保護的ハプロタイプの機能的な帰結は、GCH1のmRNA及びタンパク質の低下した上方制御に起因する刺激されたテトラヒドロバイオプテリン合成の低減である。
【0009】
上記に加えて、前記方法の信頼性を増大及び向上させて、特定の患者及び/又は対象に対する潜在的診断能を完全に活用するために、上記に加えて、疼痛保護的表現型の遺伝分析のための信頼できるマーカーが必要とされている。
【0010】
最近、GCH1遺伝子の15の位置から構成されるハプロタイプが、疼痛保護と関連するとして同定された(2)。完全な遺伝情報に基づく診断には、15のDNA位置の同定及びハプロタイプの割付など、研究室での多大な努力を必要とする。従って、疼痛、特に神経因性疼痛の臨床研究及び治療におけるGCH1遺伝学の応用を容易にするために、必要とされる研究室の診断労力が大幅に低減したスクリーニングアッセイが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、その第一の好ましい態様において、哺乳動物から得られた試料中において、遺伝子GCH1のゲノム座位から得られた核酸又はその断片中の少なくとも1つの一塩基多型(SNP)を検出することを含み、前記少なくとも1つのSNPが、SNPrs8007267G>A、rs3783641A>T、rs8007201T>G、rs4411417A>G、rs752688G>A及びrs10483639C>Gからなる群から選択され、好ましくはSNPrs8007267G>A、rs3783641A>T及びrs10483639C>Gからなる群から選択される、哺乳類中の急性及び/又は慢性疼痛を発症する遺伝的素因又は感受性を診断するための方法によって達成される。この方法は、インビトロ、インビボ又はインシチュの方法であり得る。好ましいのは、SNPrs8007267G>A及びrs3783641A>Tであり、rs10483639C>Gと組み合わせるのがより好ましい。
【0012】
15の位置全てに対して遺伝子型が決定された290のDNA試料を用いて、本発明者らは、3つのGCH1DNA位置のみを使用することによって、驚くべきことに、症例の100%において、疼痛保護的ハプロタイプの診断が可能であることを示す。さらに、本発明者らは、100%正確なハプロタイプの割付はコンピュータ内でのハプロタイプ決定を必要とせず、「単純な」SNPを基礎として取得できることを示すことができた。従って、GCH1SNPを15から僅か3つに低下させることによって、疼痛保護的ハプロタイプの遺伝的診断を大幅に容易にするためのスクリーニングアッセイという意図が達成された。さらに、本発明は、以下でさらに詳しく説明されているように、ピロシーケンスアッセイの開発によって達成されたとおり、前記3つのSNPの迅速で、信頼性が高い検出を提供する。
【0013】
(2)から得られた290人の疼痛患者及びそのDNAがピロシーケンスアッセイデザインの役割を果たした629人の無作為に選択された健康なボランティアの両方に関して、3つのSNPの検出された対立遺伝子頻度は、白人の試料に対して公知の対立遺伝子頻度(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/におけるNCBISNPデータベース)に対応していた。3つのSNPの対立遺伝子頻度には、数個の人種間差が存在する。
【0014】
dbSNPrs8007267は、白人、中国人、日本人の間で同様の頻度(14%から18%)を有しているが、アフリカ系アメリカ人での頻度は2倍である(34%、出典:Applied Biosystemsのウェブサイトは、このSNPのdbSNPウェブサイト上のリンクを介して閲覧することができる。)。これに対して、dbSNPrs10483639は、白人以外の上記人種(35%から41%)より、白人において稀である(23%)。ハプロタイプはハプロタイプを構成する最も稀な対立遺伝子より高頻度となることができないので、SNP頻度のこのパターンは、疼痛保護的GCH1ハプロタイプが、現在白人に見出されているより、アフリカ系アメリカ人の間でより高頻度である可能性をもたらす。これに対して、SNP頻度パターンは、白人と比べて、他の人種に対してハプロタイプ頻度の差を示さない。明らかに、ハプロタイプの複雑さは他の人種におけるその頻度の直接的評価を必要とし、現在の推測は、疼痛保護的GCH1ハプロタイプの対立遺伝子頻度に存在し得る人種差に対する感作以上のものを提供することができず、このことは、その臨床的な役割の将来的評価において対処されなければならない。
【0015】
疼痛、特に神経因性疼痛の発症に対する保護と関連する(以下、「疼痛保護的」とも称する。)本発明に従って同定されたGCH1ハプロタイプは、GCH1遺伝的バリアントに基づいて記載された第三のGCH1表現型である。GCH1突然変異と関連する疾病は、コード領域中のGCH1突然変異によって又はエクソン欠失を含む遺伝子の大部分の欠失によって引き起こされる(11、13、14)、DOPA応答性遺伝的進行性ジストニア(11)及び異型フェニルケトン尿症(12)である。これらの稀なGCH1バリアントは、テトラヒドロバイオプテリン補因子欠損によるドーパミン合成又はフェニルアラニン代謝の有害な異常を引き起こす。本発明の疼痛保護的GCH1ハプロタイプは、何れの神経機能障害又は他の明白な病理とも関連していない。
【0016】
疼痛保護的GCH1ハプロタイプを形成するSNPは全て、遺伝子の非コード領域中に局在化している。理論に拘泥するものではないが、それらがプロモーター、イントロン及び3’下流領域中に局在化するということは、それらが減少したGCH1転写又はRNAの安定性を引き起こし得ることを示唆し、これは、疼痛保護的ハプロタイプの保有者由来のフォルスコリンで刺激された単球中で観察された、対照と比べて、より低いGCH1mRNA発現と一致する(2)。
【0017】
疼痛保護に関連する完全なハプロタイプを、信頼性高く検出するために、本発明の基礎を成すスクリーニングアッセイを設計した(2)。3つのSNPの選択は、疼痛保護ハプロタイプに特有である15のGCH1DNA位置の単一の対立遺伝子又はその組み合わせの同定に基づいた。これは、GCH1遺伝子型/表現型の関連を与えるための完全な15の位置のハプロタイプ内の特定のSNPの相対的な機能的重要性とは独立したものである。低い疼痛スコアとの関連の統計学的有意性のレベルが最も高い2つのGCH1SNP、すなわちdbSNPrs8007267G>A及びdbSNPrs3783641A>Tが本発明のスクリーニングアッセイに含まれる。最も好ましいのは、本発明の診断が前記急性及び/又は慢性の疼痛、特に神経因性の疼痛から保護される個体を同定する、本発明の方法である。
【0018】
本発明の方法は、哺乳動物全般において実施することが可能であるが、ヒト試料を用いて本発明の方法を実施することが好ましい。このような試料は、例えば、血液、尿、精液、毛髪又は分析されるべき核酸を少なくとも含有する他の何れかの組織であり得る。
【0019】
本発明の方法の一部である核酸は、DNA、ゲノムDNA、RNA、cDNA、hnRNA及び/又はmRNAであり得る。検出は、配列決定、ミニ配列決定、ハイブリッド形成、制限断片分析、オリゴヌクレオチド連結アッセイ又は対立遺伝子特異的PCRによって達成することができる。
【0020】
適用可能な診断技術には、ミニ配列決定などのDNA配列決定、プライマー伸長、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)とのハイブリッド形成、オリゴヌクレオチド連結アッセイ(OLA)、対立遺伝子特異的プライマーを用いたPCR(ARMS)、ドットブロット分析、フラッププローブ切断アプローチ、制限断片長多型(RFLP)、速度論的PCR及びPCR−SSCP、蛍光インサイチュハイブリッド形成(FISH)、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)分析、サザンブロット分析、一本鎖立体構造分析(SSCA)、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)、温度勾配ゲル電気泳動(TGGE)、変性HPLC(DHPLC)及びRNAse保護アッセイが含まれ(これらに限定されるものではない。)、これらは全て当業者に公知であり、以下でさらに詳しく論述されている。
【0021】
多型/突然変異の存在は、身体の何れかの組織からDNAを抽出することによって決定することができる。例えば、血液を採取し、血液細胞からDNAを抽出し、分析することができる。さらに、胎児の細胞、胎盤の細胞又は羊水の細胞を遺伝子中の突然変異に関して検査することによって、症状の出生前診断が可能である。特異的対立遺伝子の検出を可能とする幾つかの方法が存在し、これらの方法の幾つかが本明細書で論述されている。
【0022】
公知の多型に関しては、各遺伝子型の直接的決定が、通常選択される方法である。今日、産業的な高情報処理遺伝子型決定のための最新式アプローチは、対立遺伝子特異的なプライマー伸長、対立遺伝子特異的ハイブリッド形成、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド連結及びフラッププローブの対立遺伝子特異的切断という4つの異なる機序の1つに依存している(Kwok,Pharmacogenomics 1,95(2000))。配列決定又はミニ配列決定プロトコールは、手動の又は自動化された手段のいずれかによる、プライマー伸長法、例えばゲノムDNA配列決定の一部である。ミニ配列決定(プライマー伸長)技術は、バリアント部位において直接、一塩基だけプライマーを伸長させることによって、特異的塩基において配列を決定することを基礎とする(Landegren et al.,Genome Res.8:769−76(1998))。別の検出法と組み合わされた短い配列反応は、リアルタイムピロリン酸配列決定の性質である(Nyren et al.,Science 281:363(1998))。
【0023】
対立遺伝子特異的ハイブリッド形成プロトコールは、SNP位置に存在する対立遺伝子の1つ又は数個を検出するプローブに依存する。ハイブリッド形成現象の検出のために、幾つかの技術が開発された。5’ヌクレアーゼアッセイ及び分子指標アッセイにおいて、ハイブリッド形成プローブは蛍光標識されており、プローブ結合は、蛍光標識の挙動の変化を介して検出される(Livak,Genet.Anal.14,143(1999);Tyagi et al.,Nat.Biotechnol.16,49(1998))。ハイブリッド形成現象は液相中で又は固体表面に結合されたプローブ若しくは標的を用いて生じ得る。
【0024】
従って、遺伝子型決定目的でアレイ(マイクロチップ)が使用される場合にも、ハイブリッド形成が使用される。核酸分析のこの技術は、本発明に対しても適用できる。アレイは、シリコンチップ上のアレイ中に構築された異なる数千のヌクレオチドプローブから典型的になる。分析されるべき核酸は蛍光標識されており、チップ上のプローブにハイブリッド形成する。この方法は、プローブの数千の同時平行的な処理の1つであり、解析を極めて加速することができる。幾つかの刊行物に、この方法の使用が記載されている(Hacia et al.,Nature Genetics 14,441(1996);Shoemaker et al.,Nature Genetics 14,450(1996);Chee et al.,Science 274,610(1996);DeRisi et al.,Nature Genetics 14,457(1996),Fan et al.,Genome Res,10,853(2000))。
【0025】
対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド連結アッセイは、高い特異性を有する。5’末端又は3’末端において対立遺伝子特異的塩基が異なるオリゴヌクレオチドは、テンプレートのそれぞれのオリゴヌクレオチド末端に完全に結合された場合にのみ、連結反応において加工される。均一アッセイ系を作製するために、この方法は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)標識と組み合わされてきた(Chen et al.Genome Res.8,549(1998))。フラッププローブの対立遺伝子特異的切断は、2つの重複するオリゴヌクレオチドによって作製された構造を切断するために、最近発見されたフラップエンドヌクレアーゼ(クリーバーゼ)の特性を使用する。このアプローチでは、2つの重複するオリゴヌクレオチドが多型部位に結合される。次いで、標的配列と完全に合致するオリゴが切断反応によって検出される(Lyamichev et al.,Nat.Biotechnol.17:292(1999))。
【0026】
特異的な塩基変異を検出する他の方法(対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)ハイブリッド形成など)は、通常、より低い情報処理量を可能にするに過ぎない。対立遺伝子特異的PCRに関しては、本発明に係る特定のGCH1塩基変異の1つに、3’末端でハイブリッド形成するプライマーが使用される。存在する対立遺伝子のみに対して、それぞれのPCR産物が生成される(Ruano and Kidd,Nucleic Acids Res 17,8392(1989))。対立遺伝子特異的PCRの修飾を増加させる特異性は、欧州特許出願公開0332345号及び「Newton et al.,Nucleic Acids Res17,2503(1989)」に開示されているような増幅抵抗性突然変異系(Amplification Refractory Mutation System)である。変異が核酸プロセッシングの特異的認識部位の変化をもたらす場合には、これらの変異を検出するために、制限断片長多型(RFLP)プローブ又はPCR−RFLP法などの酵素法も使用し得る。
【0027】
他のアプローチは、基準配列に関する変化が核酸中に存在することのみを検出することができる。これらの方法の多くは、両SNPバリアントが同じ試料中に存在するときのミスマッチの形成を基礎とする。現在極めて人気のある方法は、ホモ二本鎖分子からヘテロ二本鎖分子を分離するための変性高性能液体クロマトグラフィーの使用である(DHPLC;Oefner,P.J.et al.Am J Hum Genet57(Suppl.),A266(1995))。別の方法は、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)である(Wartell et al.,Nucleic Acids Res18,2699,(1990);Sheffield et al.,Proc Natl Acad Sci USA86,232(1989))。DGGEを使用することによって、DNA中の変異は変性勾配ゲル中での対立遺伝子バリアントの遊走速度の差によって検出することができる。変法は、固定された変性ゲル電気泳動(CDGE(clamped denaturing gel electrophoresis);Sheffield et al.,Am J Hum Genet49,699(1991))、ヘテロ二本鎖分析(HA;White et al.,Genomics4,560(1992))及び化学的ミスマッチ切断(CMC(chemical mismatch cleavage);Grompe et al.Proc Natl Acad Sci USA86,5888(1989))である。イー・コリ(E.coli)のmutSタンパク質など、ヌクレオチドのミスマッチを認識するタンパク質の使用は、ミスマッチが生じたDNA分子を検出するのに役立ち得る(Modrich,Ann.Rev.Genetics,25,229(1991))。mutSアッセイでは、タンパク質は、突然変異体と野生型配列間でのヘテロ二本鎖中にヌクレオチドミスマッチを含有する配列のみに結合する。RNase保護アッセイは、別の選択肢である(Finkelstein et al.,Genomics7,167(1990))。RNAse保護アッセイは、突然変異体断片を2つ又はそれ以上のより小さな断片へ切断させることを含む。別の方法は、一本鎖立体構造多型アッセイ(SSCP;Orita et al.,ProcNatlAcadSciUSA86,2766(1989))を使用することである。基準配列からの遺伝子のDNA配列の変異は、SSCPゲル中の対応するDNA断片のシフトした移動度によって検出される。変異は一本鎖の分子内塩基対合の差を引き起こすので、SSCPは、異なって遊走するバンドを検出する。
【0028】
配列変異の検出に関して上述されている間接的な方法は、罹患した家族の構成員中に以前に見出された配列変異の存在に関して、親戚をスクリーニングするために特に有用である。当業者に公知の小さな配列変異を検出するための他のアプローチを使用することができる。
【0029】
多型/点突然変異の検出は、ゲノム又はcDNAからの増幅(例えばPCR)及び増幅された核酸の配列決定によって、又はGCH1対立遺伝子の分子クローニング及び本分野で周知の技術を用いて対立遺伝子を配列決定することによって達成され得る。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、遺伝子GCH1のヌクレオチド変化の少なくとも1つは、前記哺乳動物の試料から得た遺伝子の前記変化の少なくとも1つを含有する多型/バリアント核酸の別の形態に対して特異的にハイブリッド形成する遺伝子プローブをハイブリッド形成し、ハイブリッド形成産物の存在を検出することによって、試料中で検出され、前記産物の存在は前記試料中の前記塩基配置の存在を示す。
【0031】
本明細書において、例えば、遺伝子プローブは、少なくとも1つのバリアント塩基、好ましくは両バリアント塩基を用いて合成され、単一塩基バリアントの区別を可能とする厳格な条件下で個別にハイブリッド形成される15から50塩基のオリゴマーDNA配列である。あるいは、より低い厳格度の条件下で、分析されるDNA鎖の多型位置に、存在し得る4つの全ての塩基に相当する15から50塩基長の遺伝子プローブの組をハイブリッド形成によるタイプ決定のために使用することができる。この場合には、塩基相補性の異なる程度を用いた全てのハイブリッド形成実験から得られた結果は、バリアント部位における最終のヌクレオチド配置を予想するためのアルゴリズムによって分析する必要がある。
【0032】
好ましいのは、a)増幅されたGCH1核酸を作製するために特異的なプライマーの組を用いて、前記試料中のGCH1核酸の全部又は一部を増幅し、b)増幅された核酸を配列決定し(例えば、ミニ配列決定し)、c)少なくとも1つのSNPの存在を検出し、これにより、前記試料中の前記ヌクレオチドの変化の存在を検出することによって、少なくとも1つのSNPが検出される本発明の方法である。好ましくは、プライマーは、検出可能な標識、例えば、放射性核種、フルオロフォア、ペプチド、酵素、抗原、抗体、ビタミン又はステロイドをさらに含有することができる。
【0033】
好ましくは、遺伝子座当り1つ、2つ又は好ましくは3つの全てのSNP対立遺伝子からなるGCH1のSNP対立遺伝子の組み合わせが検出される。遺伝子GCH1中の統計的に有意な他のSNPとの組み合わせ、例えば、(2)に開示されているように及び/又は以下の表に従ってGCH1中の12の他のSNPから選択されるSNPなどが分析される本発明の方法も好ましい。
【0034】
【表1】

【0035】
KCNS1、OPMR1(例えば、118A>GのSNP)、COMT及びPGHS2(例えば、−765G>AのSNP)の群から選択される遺伝子中の他の統計的に有意なSNPとの組み合わせが分析される本発明の方法も好ましい。好ましくは、この検出によって、0.80を上回る(好ましくは、約0.90を上回る)感受性及び約0.70又はそれ以上、好ましくは約0.9又はそれ以上の特異性を有する疼痛保護的ハプロタイプの検出が可能となる。
【0036】
本発明において、統計学的検定又は別の分類の「感受性」(一般に、真正陽性率とも称される。)という用語は、陽性結果を認識する確率を示す。従って、感受性は、真に存在する陽性結果の合計のうち、陽性として正しく同定された結果(真正陽性)の割合を与える。例えば、疾病を決定するための医学的検査/診断法における感受性は、疾病を有するとして正しく同定された罹病患者の割合を示す。
【0037】
本発明において、統計学的検定又は別の分類の「特異性」(一般に、真正陰性率とも称される。)という用語は、陰性結果を認識する確率を示す。従って、特異性は、真に存在する陰性結果の合計のうち、陰性として正しく同定された結果(真正陰性)の割合を与える。例えば、疾病を決定するための医学的検査/診断法における特異性は、疾病を有さないとして正しく同定された罹病患者の割合を示す。
【0038】
本発明の別の態様は、フォルスコリン、LPSなどでの細胞の刺激を加えて又は細胞の刺激を加えずに、全血及び/又は単離された白血球中のバイオプテリンを分析することをさらに含む、本発明の方法に関する。バイオプテリンの分析のための典型的な方法は、(2)に記載されている。バイオプテリンとのこのような組み合わせ分析は、本発明の方法の機能的な予測性を増加させ、相乗的な増加として最適であることが予測される。
【0039】
本発明の別の態様は、a)上記本発明の方法を実施すること、及びb)工程a)で得られた結果に少なくとも部分的に基づいて、前記哺乳動物に対する鎮痛性物質の有効な投薬量を決定すること、並びにc)前記投薬量を医薬として許容される担体及び/又は希釈剤と混合することを含む、有効な鎮痛性組成物を作製する方法に向けられる。
【0040】
一般に、疼痛の治療及びそれぞれの鎮痛性組成物は当業者に周知であり、本発明は、本発明のこの態様において、患者の他の群に比べて、「個別化された」治療に対して異なって反応し得る個別の患者及び/又は患者の群の疼痛の「個別化された」治療に対する基礎を与える。本発明の方法は、(例えば、過剰投薬による)医薬の望ましくない副作用を低減させるのに役立ち、毒性物質又は依存性物質(例えば、オピオイドなど)の服用量を低下させるのに役立ち、従って、有効でない不必要な治療及び高価な医薬を避けることによって費用を節約するのに役立ち得るという点で特に有利である。鎮痛性物質そのもの及び鎮痛性組成物がどのようにして調合されるかは当業者に周知であり、それぞれの文献中に詳しく記載されている。本発明の方法は、例えば、ウイルス感染(例えば、帯状疱疹、HIV)を有する患者中の慢性的疼痛又は神経毒性である可能性を有する治療(化学療法、放射線照射又は他の薬物)又は神経の損傷を伴う手術(例えば、ヘルニア切除術、乳房切除術)に対するリスクを評価するのに役立つという点で特に有利である。
【0041】
従って、本発明の別の態様は、a)上記本発明の方法、及びb)工程a)で得られた結果に少なくとも部分的に基づいて、前記哺乳動物に鎮痛性物質を与えることを含む、哺乳動物中の疼痛を治療する改善された方法に向けられる。好ましいのは、上記本発明の有効な鎮痛性組成物が投与される本発明の方法である。
【0042】
最後に、本発明は、SNPrs8007267G>A、rs3783641A>T、rs8007201T>G、rs4411417A>G、rs752688G>A及びrs10483639C>Gからなる群から、好ましくはSNPrs8007267G>A、rs3783641A>T及びrs10483639C>Gからなる群から選択される遺伝子GCH1のSNPの少なくとも1つを検出するための少なくとも1つのプローブ及び/又はプライマーの組を含む診断用キット及び/又は研究用キットにも向けられる。キットは、本発明の方法を実施するための酵素、緩衝液及び/又は色素などの他の化合物を含有することができる。別の例において、本発明のキットは、本発明の少なくとも1つのSNP中でチップをベースとする分析を実施することが適切である。キットは、本明細書に記載されている統計解析のためのSNP分析及び/又はソフトウェアを実施するための指示書も含むことができる。
【0043】
本発明において「素因がある」又は「疼痛に対して感受性を有する」とは、検査中の個体が、それぞれ、より短い、より頻度が少ない又はより激しくない疼痛感覚を有する個体と比べて、より長く、より頻繁な又はより激しい疼痛の感覚を体験することを意味するものとする。
【0044】
本発明の別の態様によれば、本発明の方法は、疼痛及び疼痛を伴う症状から保護される個体、すなわち、前記疼痛に罹患する可能性がより低い個体の同定を可能とする。好ましくは、前記遺伝的素因又は感受性は、神経損傷(例えば、外傷性、虚血性、毒性、代謝性、感染性、免疫媒介性、収縮性、変性性など)、炎症(例えば、感染性、免疫媒介性)、虚血又は腫瘍増殖によって引き起こされ又は寄与する疼痛を含む。
【0045】
要約すると、本発明者らは、3つのSNPからなる疼痛保護的GCH1ハプロタイプに対する高情報処理量の自動化可能なスクリーニングアッセイとなる可能性を秘めたアッセイを開発した。情報分析によって、遺伝子型決定されるべきDNA位置の数はこれらの3つまで減少させることができ、ハプロタイプの信頼できる診断をなお可能とすることを示す。これによって、その診断に対する研究室の労力が大幅に減少し、従って、疼痛保護的GCH1ハプロタイプの臨床的な重要性のさらなる調査を容易にする。
【0046】
本発明の目的において、本明細書中に引用されている全ての参考文献は、参照により、その全体が組み込まれる。ここで、添付の図面に関して、以下の実施例において、本発明をさらに説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、GCH1一塩基多型(Ensembleデータベースv.38−2006年4月)の位置の概要を示しており、低い疼痛スコアと有意に関連する一塩基多型は薄い灰色で符号化されている(P<0.05;表1中の各SNPに対する疼痛スコア)。1%を超える頻度を有し、研究された染色体の94%を占める8つのハプロタイプの遺伝子型−表現型の関連を分析した。各ハプロタイプ中の文字は、15のGCH1SNPに対する対立遺伝子である。各ハプロタイプに対する疼痛スコアは、共変量に対して調整された、安静時、歩行後の疼痛の頻度及び手術後におけるそれらの改善を評価する4つの質問から計算された「下肢痛」に対する平均zスコアである。より低いスコアは、より低い疼痛に対応する。強調表示されたハプロタイプ(白)は、7つの他のハプロタイプに比べて、より低い「下肢痛」スコアと関連していた。P0.009。分析の前に、進行中の神経因性疼痛の反映として、本発明者らは、単一の主要評価項目である椎間板切除術後の術後最初の年にわたる持続的下肢痛を指定した。4つの項目により、手術前並びに手術から3ヶ月、6ヶ月及び12ヶ月後に下肢痛を評価した。前週における「下肢痛」の頻度及び「歩行後の下肢痛」の頻度に、なし(0点)、極めて稀(1)、数回(2)、約1/2の回数、(3)、日常的に(4)、ほぼ常に(5)及び常に(6)として評点を与えた。手術以来の「下肢痛」の改善又は「歩行後の下肢痛」の改善には、疼痛が完全に消失(0)、大幅に改善(1)、改善(3)、僅かに改善(3)、ほぼ同じ(4)、僅かに悪化(5)及び大幅に悪化(6)として評点を与えた。各患者における各変数に対して、本発明者らは、最初の年に対する曲線下面積スコアを計算し、0に等しい平均と1に等しい標準偏差を有するzスコアに対して、各変数に対する患者のAUCスコアを標準化した。主要な疼痛結果変数は、これら4つのzスコアの平均であった。方程式:個体の疼痛スコア=(一般的でない対立遺伝子のR1*数)+(R2*共変量)+誤差を用いた回帰分析によって、各SNPに対する遺伝子型−表現型関連性を求めた。(R1、R2=回帰係数)。共変量は、性別、年齢、作業者の補償状況、最初の登録後における手術の遅れ及びShort−Form36(SF−36)一般的健康尺度など、多数の人口学的、心理学的及び環境的因子であった。15のGCH1SNPによって生成される全てのハプロタイプの関数及び関連する共変量の関数として疼痛スコアをモデル化することによって、疼痛スコアとジプロロタイプ(diplolotype)間の関連を評価するために、段階的回帰を適用した。1%を超える頻度を有するハプロタイプのみをモデルに組み入れ、独立した変数として使用した。ハプロタイプが平均疼痛スコアから有意に異なる(P<0.05)疼痛スコアと関連していれば、個別のSNPに対して上述されている類似のモデルを用いた回帰分析によって、表現型−ジプロタイプ関連分析を行った。
【実施例】
【0048】
染色体14q22.1−q22.2上のGCH1遺伝子の配列は、http://www.ensembl.org/Homo sapiens/geneview?db=core;gene=ENSG00000131979において、データベースEnsemblGeneIDENSG00000131979から得た。SNPは、NCBISNPデータベースhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/(dbSNPに受付番号が後続)に従って名付けられる。
【0049】
GCH1遺伝子スクリーニングに対するSNP選択
スクリーニングアッセイのためのGCH1SNPの選択は、(i)疼痛GCH1ハプロタイプに対する識別特性、(ii)腰部椎間板切除術後の最初の12ヶ月にわたる下肢痛の第一義的転帰に対する統計的有意性(2)及び(iii)疼痛保護的ハプロタイプを検出するための得られたスクリーニングアッセイの感受性及び特異性に基づいた。感受性=真正陽性/(真正陽性+偽陰性)及び特異性=真正陰性/(真正陰性+偽陽性)として計算した。
【0050】
当初の(2)GCH1遺伝子データの組は、外科的な椎間板切除術後の患者から得た290のDNA試料からなり、5’−エキソヌクレアーゼ法を用いて、15のGCH1一塩基多型(SNP)がスクリーニングされた(6)。GCH1ハプロタイプは、PHASEを用いたコンピュータ上でのハプロタイプ決定を用いて同定された(http://www.stat.washington.edu/stephens/software.hml)[7.8]。疼痛保護的ハプロタイプ#3(2)は、DNASNP4(dbSNPrs3783641A>T、イントロン1の8900番目のヌクレオチド)のチミンとともに、SNP1(dbSNPrs8007267G>A=GHC1プロモーターSNP−9610G>A)におけるアデニンにより、10の最も高頻度のハプロタイプ(計94.4%に達する。)とは異なる。これらの2つのDNA位置に基づく、疼痛保護的ハプロタイプへの290人の個体の正確な割り当ては、PHASEを用いたコンピュータ上でのハプロタイプ決定によって評価した(7,8)。これは1を下回る特異性をもたらしたので、第三のSNPであるdbSNPrs10483639C>Gをスクリーニングアッセイ中に含めた。これにより、所望される1の検査感受性及び特異性が得られた。
【0051】
ピロシーケンシングスクリーニングアッセイ
DNA抽出
遺伝子型の決定に同意した629人の健康な親戚関係にない白人被験者(年齢27.1+/−5.5歳)から、スクリーニングアッセイを開発するためのDNA試料を得た。被験者は、フランクフルト大学病院で、チラシによって募集した。この手続きは、フランクフルトのヨハン・ウォルフガング・ゲーテ大学の医学施設倫理委員会によって承認された。NH4−ヘパリン管中に血液試料を採取した。BioRobotEZ1Workstatin(Qiagen,Hilden,Germany)上のEZ1DNABlood200μLKitに提供されていた「血液及び体液の遠心プロトコール(blood and body fluid spin protocol)」を用いて、200μLの血液からゲノムDNAを抽出した。
【0052】
アッセイのデザイン
ピロシーケンシング(9,10)では、短いオリゴヌクレオチド(シーケンシングプライマー)は、突然変異に近接した一本鎖DNAに結合し、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)を分配することによって伸長される。分配されたdNTPがDNA配列の次のヌクレオチドと合致すれば、分配されたdNTPはオリゴヌクレオチド中に取り込まれ、ピロリン酸(PPi)が放出される(DNA+dNTP+DNAn+1+PPi)。PPiは、ATPスルフリラーゼに対する基質としてのアデノシン5−ホスホ硫酸(APS)と一緒に使用される。生じたATPは、ルシフェラーゼによって触媒されるルシフェリンのオキシルシフェリンへの転化の引き金を引き、添加されたヌクレオチドの数に比例する強度の光を発する。光はいわゆるプログラム中でピークとして可視化されるのに対して、取り込みが存在しない場合には、ピークは観察されない。
【0053】
目的のGCH1遺伝子セグメント(プロモーター/5’UTR、イントロン1及び3’UTRの一部)のPCR増幅にとって必要なプライマー及びシーケンシングプライマーは、ピロシーケンシングAssay Design Software(バージョン1.0.6;BiotageAB,Uppsala,Sweden)を用いて設計された。
【0054】
SNPdbSNPrs8007267G>Aに対するPCRプライマーは、
フォワード:5’−TGGGGTGAGGGTTGAGTT−3’(配列番号1)及び
リバース:5’−ビオチン−AATGTTAACACAATAGGAGCG−3(配列番号2)であり、
dbSNPrs3783641A>Tに対するPCRプライマーは、
フォワード:5’−GCTATTTGCTTTGTCCACCTCTA−3’(配列番号3)及び
リバース:5−ビオチン−AACCTGGAACTGAGAATTGTTCAC−3’(配列番号4)であり、並びに
dbSNPrs10483639C>Gに対するPCRプライマーは、
フォワード:5’−ATCCTTTCAATCTGGAACTGACTG−3’(配列番号5)及びリバース:5’−ビオチン−GCATTCTAAAATCAGGGAAAATCA−3’(配列番号6)
であった。
【0055】
dbSNPrs8007267G>Aに対するシーケンシングプライマーは、5’−CTTGAATGACTGAAGTTTGG−3’(配列番号7)、
dbSNPrs3783641A>Tに対するシーケンシングプライマーは、5’−CCCACCTGACTCATTT−3’(配列番号8)、
dbSNPrs10483639C>Gに対するシーケンシングプライマーは、5’−GGTGTGTGTATGTACAACTT−3’(配列番号9)であった。
【0056】
GCH1遺伝子に対するプライマーの特異性は、並置によって確認した(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST)。さらに、ソフトウェアは、3つのSNPを検出するためのdNTPの分配順序を規定した。同様に、本明細書に開示されているような他のSNPに対する全てのプライマー配列は、同じ方法を用いて設計することができる。
【0057】
PCR増幅
ポリメラーゼ連鎖反応は、50μLの総容量で行った。PCR増幅後、臭化エチジウム染色されたアガロースゲル上で、数個の試料を制御した。ゲルでは、特異的な産物のバンドが観察された(SNPdbSNPrs8007267G>Aに関しては321塩基対のPCR産物、dbSNPrs3783641A>Tに関しては216塩基対及びdbSNPrs10483639C>Gに関しては161塩基対)。
【0058】
各25μL容量のPCR−テンプレート(ビオチン化された一本鎖及びビオチン化されていない一本鎖)を1つのウェル中にピペット操作で添加し、ストレプトアビジンで被覆されたセファロースビーズ3μL(Amersham Pharmacia Biotech,Uppsala,Sweden)、結合緩衝液37μL及びHPLCによって精製された水15μLの混合物との温置(振盪装置800分−1、5分室温)によって固定化した。特異的複合体は、ストレプトアビジンによって被覆されたセファロースビーズ及びビオチン化された一本鎖から構成される。
【0059】
ビオチン化されていない一本鎖からのこれらの複合体の分離は、Vacuum Prep Worktable(BiotageAB,Uppsala,Sweden)上で行った。真空によって全ての液体を除去した後、特異的複合体を捕捉し、70%エタノール中に5秒間移し、0.2mol/LNaOH中で5秒間変性し、Tris緩衝液で5秒間洗浄した。次いで、10μmol/Lのシーケンシングプライマー0.15μL及び徐冷緩衝液(20mmol/LTris、2mmol/L酢酸マグネシウム四水和物、pH7.6)43.5μLを予め充填したPSQ96PlateLow(BiotageAB,Uppsala,Sweden)に複合体を移した。続いて、PSQ96SamplePrepThermoplateLow(BiotageAB,Uppsala,Sweden)中で、80℃で2分間プレートを加熱し、室温まで冷却した。
【0060】
ピロシーケンシング分析
配列決定は、提供された(PyroGold Reagents Kit for SNP Genotyping and Mutation Analysis,Biotage AB,Uppsala,Sweden)の酵素、基質及びヌクレオチドを用いてPSQ96MA(BiotageAB,Uppsala,Sweden)で行った。全ての緩衝液は、Sepharose Bead Sample Prep Buffer調製(BiotageAB,Uppsala,Sweden)の推奨される操作手順に従って調製した。各SNPのPCRテンプレートの十分な量を、ストレプトアビジンで被覆されたセファロースビーズ(AmershamPharmaciaBiotech,Uppsala,Sweden)を加えた振盪装置中で温置し(10分)、ビオチン化されたテンプレートを対応する0.35μmol/Lシーケンシングプライマー55μL中に移すために、VacuumPrepWorkstation(ピロシーケンシングAB,Uppsala,Sweden)中の70%エタノール及び変性緩衝液を用いて調製した。配列決定は、80℃で2分間の温置後に行った。
【0061】
古典的な配列決定
3つのアッセイによって提供された正しい遺伝的診断を確認するために、野生型(n=XX対照試料)、ヘテロ接合(n=Xx対照試料)及びホモ接合(n=XX対照試料)遺伝子型の計40の試料を旧来の方法で配列決定し(AGOWA,Berlin,Germany)、ピロシーケンシングの際の陽性対照として実行した。
【0062】
3つのSNPによる疼痛保護的な15位置のGCH1ハプロタイプの予想
15のDNA位置を用いた最初のハプロタイプ決定に基づいて、疼痛保護的ハプロタイプの78のヘテロ接合、6つのホモ接合及び206の非保有者を見出した(15.5%の当該ハプロタイプの対立遺伝子頻度に相当する(二項95%信頼区間:12.7%から18・7%)。)。
【0063】
2つのDNA位置(dbSNPrs8007267A及びdbSNPrs3783641T)を含むハプロタイプの割り当てに基づいて、疼痛保護的ハプロタイプの86のヘテロ接合性及び6つのホモ接合性保有者が予想された(16.8%の当該ハプロタイプの対立遺伝子頻度に相当する。)。偽陽性の割り当てが8つ及び偽陰性の割り当ては0であり、ハプロタイプ#3に対するスクリーニング試験の感受性及び特異性は、それぞれ、1及び0.96であった。3つのDNA位置(dbSNPrs8007267A、dbSNPrs3783641T及びdbSNPrs10483639G)を含むハプロタイプの割り当てによって、疼痛保護的ハプロタイプの78のヘテロ接合保有者及び6つのホモ接合保有者全てが正しく予想された(1のスクリーニング試験感受性及び特異性に相当する。)。ホモ接合及びヘテロ接合の被験者の数は、Hardy−Weinberg平衡(χ検定;p>0.05)に従っていた。290mの試料(2)中のdbSNPrs8007267A、dbSNPrs3783641T0及びdbSNPrs10483639G間の連鎖は、それぞれ、D’=0.9、0.81及び0.88、並びにr=0.78、0.61及び0.75によって示された。
【0064】
疼痛保護的ハプロタイプは、コンピュータ上でのハプロタイプ決定なしに、3つのSNPの遺伝的情報から高い信頼性で割り当てることができた。すなわち、全てのホモ接合性保有者はdbSNPrs8007267G>Aに基づいて既に正しく予測することができた。すなわち、ホモ接合性dbSNPrs8007267AA保有者は疼痛保護ハプロタイプに対してホモ接合であったのに対して、dbSNPrs8007267GGは疼痛保護的ハプロタイプを含んでいなかった。ヘテロ接合性dbSNPrs8007267G>Aを用いると、dbSNPrs3783641A>Tからの情報は、疼痛保護的ハプロタイプを検出するための特異性を0.96まで増加させ、dbSNPrs104836390Gからの追加的情報は特異性を1まで増加させた。rs8007267G>A、rs3783641A>T、rs8007201T>G、rs4411417A>G及び/又はrs752688G>Aの組み合わせを分析することによって、類似の効果が達成された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物から得られた試料中において、遺伝子GCH1のゲノム座位から得られた核酸又はその断片中の少なくとも1つの一塩基多型(SNP)を検出することを含み、前記少なくとも1つのSNPが、SNPrs8007267G>A、rs3783641A>T、rs8007201T>G、rs4411417A>G、rs752688G>A及びrsl0483639C>Gからなる群から選択される、哺乳類中の急性及び/又は慢性疼痛を発症する遺伝的素因又は感受性を診断するための方法。
【請求項2】
診断が前記急性及び/又は慢性の疼痛、特に神経因性の疼痛から保護される個体を同定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸がDNA、ゲノムDNA、RNA、cDNA、hnRNA及び/又はmRNAである、請求項1から3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
前記検出が、配列決定、ミニ配列決定、ハイブリッド形成、制限断片分析、オリゴヌクレオチド連結アッセイ又は対立遺伝子特異的PCRによって達成される、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
SNPの組み合わせが約0.80又はそれ以上、好ましくは約0.90又はそれ以上の感受性及び約0.60又はそれ以上、好ましくは約0.90又はそれ以上の特異性での検出を提供する、請求項1から5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
遺伝子GCH1中の統計学的に有意な他のSNPとの組み合わせが分析される、請求項1から6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
KCNS1、OPMR1、COMT及びPGHS2からなる群から選択される遺伝子中の統計学的に有意な他のSNPとの組み合わせが分析される、請求項1から7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
フォルスコリン、LPSなどでの刺激を加えた及び加えない、全血及び/又は単離された白血球中のバイオプテリンの分析をさらに含む、請求項1から8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
a)請求項1から8の何れかに記載の方法を実施すること、及び
b)工程a)で得られた結果に少なくとも部分的に基づいて、前記哺乳動物に対する鎮痛性物質の投薬量を決定すること、並びに
c)前記投薬量を医薬として許容される担体及び/又は希釈剤と混合すること
を含む、有効な鎮痛性組成物を作製する方法。
【請求項11】
a)請求項1から8の何れかに記載の方法、及び
b)工程a)で得られた結果に少なくとも部分的に基づいて、哺乳動物に対して鎮痛性物質を与えること
を含む、哺乳動物中の疼痛を治療する方法。
【請求項12】
請求項9に記載の有効な鎮痛性組成物が投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
SNPrs8007267G>A、rs3783641A>T、rs8007201T>G、rs4411417A>G、rs752688G>A及びrs10483639C>Gからなる群から選択される遺伝子GCH1のSNPの少なくとも1つを検出するための少なくとも1つのプローブ及び/又はプライマーの組を含む診断用キット及び/又は研究用キット。

【図1】
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【公表番号】特表2010−502205(P2010−502205A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527068(P2009−527068)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008039
【国際公開番号】WO2008/028687
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(504371664)ヨハン ヴォルフガング ゲーテ−ウニヴェルジテート フランクフルト アム マイン (5)
【Fターム(参考)】